JP4812213B2 - 微粒子状酸化チタン及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本出願はアメリカ合衆国法典第35巻第111条(b)項の規定に従い、2000年9月15日提出の仮出願第 号の出願日を同第119条(e)項(1)の規定により主張する同第111条(a)項に基づく出願である。
技術分野
本発明は、紫外線遮蔽用途や光触媒用途等に適する微粒子状酸化チタン、好ましくは超微粒子酸化チタン及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は四塩化チタンを原料として気相法により得られる超微粒子の高ルチル含有酸化チタン及びその製造方法に関する。
背景技術
微粒子状酸化チタン、特に超微粒子状酸化チタンの工業的応用分野は極めて広く、紫外線遮蔽材やシリコーンゴムへの添加剤、光触媒等、用途は多岐に亘っている(酸化チタンは日本工業規格(JIS)では「二酸化チタン」と記載されており、一般名として「酸化チタン」も広く使用されているので本明細書中では酸化チタンと略称する)。特に、化粧料や衣料等の分野では紫外線を遮蔽するための用途がますます重要となってきており、遮蔽材として安全性の高さから超微粒子状の酸化チタンが多用されている。遮蔽には、紫外線の吸収と散乱の2つの機能が必要であるが、超微粒子状の酸化チタンはこの2つの機能を併せ持っている。
酸化チタンにはブルッカイト、アナターゼ、ルチルの3つの結晶形があり、アナターゼとルチルが工業的には特に重要である。そして、ルチルのバンドギャップ(励起エネルギーに相当)がアナターゼよりも小さい(光の吸収波長域はアナターゼよりも長波長にある)ので、ルチルは紫外線遮蔽用途に好ましいとされている。しかしながら、実際の紫外線遮蔽用途ではこの吸収以外に粒子径に依存する散乱効果も含めて対処する必要がある。
最近になって、酸化チタンは約400nm以下の紫外線を吸収して最外殻電子を励起させ、そこで発生した電子とホールが粒子表面に到達し、そこで酸素や水と化合して様々なラジカル種を発生し、粒子表面近傍に存在する有機物を分解する作用があることが報告された。そのため、酸化チタンを化粧料等に用いる場合には、一般に微粒子状、特に超微粒子状の酸化チタン表面には表面処理を施すことが広く試みられている。
また、酸化チタンの光励起による光触媒反応を利用するために微粒子状の酸化チタンが使用される。また、紫外線を散乱させる目的で酸化チタンが使用される場合には一次粒子径が約80nmの超微粒子状の酸化チタンが用いられる。一般に、超微粒子の1次粒子径は、明確にされていないが、通常約0.1μm以下の微粒子に対して呼称される。
酸化チタンの製造方法は、大別して四塩化チタンや硫酸チタニルを親水性溶媒中で加水分解する液相法と、四塩化チタンのような揮発性原料を気化させた後、これを酸素あるいは水蒸気のような酸化性ガスと反応させる気相法とがあり、気相法では超微粒子状の酸化チタンは得られるがアナターゼが主相となるものしか得られていない。従って、従来は液相法によりルチル構造の超微粒子状酸化チタンが得られていた。
液相法により製造された酸化チタンの粉末は、一般に凝集が激しいという欠点がある。このため、酸化チタンを化粧料等に供する場合には酸化チタンを強く解砕したり粉砕する必要があり、粉砕等の処理に由来する磨耗物の混入や粒度分布の不均一さ、触感の悪さ等の問題を引き起こしていた。
これまで高ルチル含有酸化チタンの製造方法がいくつか提案されている。例えば、特開平3−252315号公報には気相反応において酸素と水素の混合気体中の水素の比率を変えることで、ルチルの含有比率を調整する製造方法及び、水素濃度を15〜17体積%に調整することでルチルの含有比率が99%以上の高純度酸化チタンを製造する方法が開示されている。また、特開平6−340423号公報には混合ガス中の四塩化チタン、水素及び酸素のモル比を特定混合比率にして製造する高ルチル含有酸化チタン(ルチル含有率は85重量%乃至90重量%)の製造方法が開示されている。
また気相法により製造された酸化チタンの場合でも、従来の気相法では超微粒子状の酸化チタンは得られるものの粒成長した酸化チタン粒子しか得られず、微粒子状、特に超微粒子状の酸化チタンを得るためには酸化チタンを強く解砕したり粉砕する必要があり、液相法の場合と同様の問題点を有していた。さらに、高ルチル含有酸化チタンにあっては、超微粒子状であるとはいえ比表面積が充分ではなく、化粧料をはじめとする各種用途に希求される分散性の点では充分ではなかった。
発明の要約
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の課題は、凝集が極めて少ない高分散性の微粒子状、特に超微粒子状の高ルチル含有酸化チタンを提供することにある。
本発明の他の目的はかかる微粒子状、特に超微粒子状の高ルチル含有酸化チタンの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、気相法において四塩化チタンを不活性ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスと酸化性ガスをそれぞれ予熱し、特定の流速で反応管に供給し、特定の高温滞留時間にて反応させることにより、高ルチル含有酸化チタンであって、かつ、高いBET比表面積を有する特定の特性を有する微粒子状、特に超微粒子状高ルチル含有酸化チタンが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記[1]〜[10]に関する。
[1]気相法で製造されるルチル結晶を含む混晶系酸化チタンにおいて、該酸化チタンが下記一般式、
R≧1300×B−0.95
(式中、RはX線回折法で測定されたルチル含有率(%)を表し、BはBET比表面積(m2/g)を表し、その範囲は15〜200m2/gである。)で表される特性を有することを特徴とする微粒子状酸化チタン。
[2]Bで表されるBET比表面積が40〜200m2/gであることを特徴とする上記第1項に記載の微粒子状酸化チタン。
[3]酸化チタンが、レーザー回折式粒度分布測定法で測定された90%累積重量粒度分布径D90が2.5μm以下のものであることを特徴とする上記第1または2項に記載の微粒子状酸化チタン。
[4]酸化チタンが、ロジン・ラムラー式による分布定数nが1.5以上であることを特徴とする上記第1〜3項のいずれか一項に記載の微粒子状酸化チタン。
[5]四塩化チタンを10体積%以上90体積%以下に不活性ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを、酸素又は水蒸気もしくはこれらを含有する酸化性ガスを用いて高温酸化することにより酸化チタンを製造する気相法であって、900℃以上に予熱された四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスを、それぞれ反応管に20m/秒以上の流速にて供給し、700℃を越える高温滞留時間を3秒以下にて反応させることを特徴とする微粒子状酸化チタンの製造方法。
[6]四塩化チタンを20体積%以上80体積%以下に不活性ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを用いることを特徴とする上記第5項に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法。
[7]四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスを予熱する各々の温度が1,000℃以上であることを特徴とする上記第5または6項に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法。
[8]四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスが同軸平行流ノズルにより反応管内に供給され、かつ外同軸平行流ノズルの内管の内径が50mm以下であることを特徴とする上記第5〜7のいずれか一項に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法。
[9]上記第5〜8項の何れか一項に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする微粒子状酸化チタン。
[10]上記第1〜4および9項のいずれか一項に記載の微粒子状酸化チタンを含むことを特徴とする酸化チタン組成物。
発明を実施するための最良の形態
本発明によれば、四塩化チタンを原料とする気相法によって得られるルチル結晶を含む混晶系酸化チタン(ルチル含有酸化チタンと略称する。)に関し、該ルチル含有酸化チタンの特性として下記式(1)、
R≧1300×B−0.95 (1)
(式中、RはX線回折法で測定されたルチル含有率(%)を表し、BはBET比表面積(m2/g)を表し、その範囲は15〜200m2/gである。)で表される特性を有することを特徴とする。すなわち、本発明の微粒子状、特に超微粒子状ルチル含有酸化チタンは、図2において上記式(1)の条件を満足するルチル含有酸化チタンである。公知の微粒子状または超微粒子状酸化チタンは、ルチル含有酸化チタンであってもルチル含有率vs.BET比表面積の関係において、曲線R=1300×B−0.95の下部にプロットされる領域の特性を有しているものであった。
本発明のルチル含有酸化チタンは、式(1)の特性を満足し、微粒子状、特に超微粒子状であって、その特徴としてBET比表面積の範囲は15〜200m2/g、好ましくは40〜200m2/gの範囲を有するものである。
また、本発明の微粒子状ルチル含有酸化チタンは、粒径が小さくかつ粒度分布がシャープであることが好ましい。本発明においては、分散性の指標としてレーザー回折式粒度分布測定法を採用し粒度分布を測定した。粒度分布の測定手順について以下に説明する。
酸化チタン0.05gに純水50ml及び10%ヘキサメタリン酸ソーダ水溶液100μlを加えたスラリーに、3分間超音波照射(46KHz、65W)する。このスラリーをレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−2000J)にかけて、粒度分布を測定する。このようにして測定された粒度分布における90%累積重量粒度分布径D90の値が小さければ、親水性溶媒に対して良好な分散性を示していると判断される。
本発明の微粒子状酸化チタンは粒度分布の均一性に優れている。本発明において粒度分布の均一性については、ロジン・ラムラー(Rosin−Rammler)式を用い、その分布定数nで規定する。以下に、ロジン・ラムラー式について簡単に説明するが、その詳細についてはセラミック工学ハンドブック((社)日本セラミック協会編、第1版、第596〜598頁)に記載されている。
ロジン・ラムラー式は下記式(2)で表される。
R=100exp(−bDn) (2)
但し、式中Dは粒径を表し、RはDより大きな粒子の数の全粒子数に対する百分率であり、nは分布定数である。
ここで、b=1/Denとおくと、(2)式は
R=100exp{−(D/De)n} (3)
のように書き換えられる。但し、Deは粒度特性数、nは分布定数と呼ばれる定数である。(2)式における定数bは粒度特性数De、すなわちふるい上(ober particle diameter)36.8%(R=1/e=0.368)に対する粒子径と分布定数nとから上式(b=1/Den)によって導かれる定数である。
上記式(2)式または(3)から下記式(4)が得られる。
log{log(100/R)}=nlogD+C (4)
但し、式中Cは定数を表す。上記式(4)から、x軸にlogD、y軸にlog{log(100/R)}の目盛をつけたロジン・ラムラー(RR)線図にそれらの関係をプロットするとほぼ直線となる。その直線の勾配(n)は粒度の均一性の度合いを表し、nの数値が大きいほど粒度分布の均一性に優れていると判断される。
本発明の微粒子状酸化チタンは、90%累積重量粒度分布径D90が2.5μm以下であることが好ましく、ロジン・ラムラー式による分布定数nが1.5以上であることが好ましい。
本発明の微粒子状酸化チタンは、各種組成物の顔料又は光触媒効果を利用した粒子成分として含まれ、具体的には、化粧料、衣料、紫外線遮蔽材又はシリコーンゴム等の各種製品の添加剤として利用できる。
次に図面を参照して本発明の微粒子状酸化チタンの製造方法について説明する。図1は気相法による本発明の微粒子状酸化チタンの製造に用いられる同軸平行流ノズルを備えた反応管の概略模式図である。四塩化チタンを含有するガスは予熱器2で所定温度まで予熱されて、同軸平行流ノズル部1の内管から反応管3へ導入される。なお、本発明においては各々の予熱器2の温度は異なっていてもよい。酸化性ガスは予熱器2で所定温度まで予熱されて同軸平行流ノズル部1の外管から反応管3へ導入される。反応管内に導入されたガスは混合されて反応した後、冷却ガスで急冷され、その後、バグフィルター4に送られて微粒子状酸化チタンが捕集される。
気相法による一般的な酸化チタンの製造方法は公知であり、四塩化チタンを酸素又は水蒸気のような酸化性ガスを用いて、約1,000℃の反応条件下で酸化させると微粒子状酸化チタンが得られる。
気相法における粒子の成長機構には大別して2種類あり、一つは、CVD(化学的気相成長)であり、もう一つは粒子の衝突(合体)や焼結による成長である。本発明の目的とするような微粒子状、特に超微粒子状の酸化チタンを得るためには、いずれの成長時間(成長ゾーン)も短くしなければならない。すなわち、前者の成長においては、予熱温度を高めておいて化学的反応性(反応速度)を高めること等により成長を抑えることができる。後者の成長においては、CVDが完結した後速やかに冷却、希釈等を行い、高温滞留時間を極力小さくすることにより、焼結等による成長を抑えることができる。
一方、ルチル含有率の高い粒子を得ようとすればアナターゼからの熱転位を促進するために、高温滞留時間を充分にとる必要がある。これは、前述の微粒子、特に超微粒子の製造条件に矛盾することとなる。従って、従来、気相法によって得られる、微粒子または超微粒子はアナターゼを主相とするもの又は非晶質のものとなっていた。
本発明においては、上述のように、四塩化チタンを90%以下に不活性ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを、前記酸化性ガスで高温酸化することによって酸化チタンを製造する気相法において、900℃以上に予熱された四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスを、それぞれ反応管に20m/秒以上の流速にて供給し、平均滞留時間を3秒以下にて反応させることにより、BET比表面積vs.ルチル含有率の関係において高ルチル含有率の微粒子状、特に超微粒子状酸化チタンが得られる。
さらに本発明においては、四塩化チタン希釈ガス中の四塩化チタン濃度は、好ましくは10〜90体積%、さらに好ましくは20〜80体積%で使用される。四塩化チタン濃度が10%体積以下であると、反応性が低くルチル含有率が高くならない。また、四塩化チタン濃度が90%体積以上であると、粒子の衝突・焼結が助長され所望の微粒子状、特に超微粒子状酸化チタンが得られない。
四塩化チタンを希釈するガスは四塩化チタンと反応せず、酸化されないものを選択すべきである。具体的には、窒素またはアルゴン等が挙げられる。
四塩化チタン希釈ガスと酸化性ガスの予熱温度は同一温度であっても異なっていてもよいが、各々900℃以上が好ましい。さらに好ましくは1,000℃以上であり、特に好ましくは約1,100℃である。ただし、各々のガスの予熱温度差は小さいほどよいが、目的とする予熱温度が900℃より低いと、ノズル近傍での反応性が低くルチル含有率が高くならない。
四塩化チタン希釈ガスと酸化性ガスを反応管に導入する流速は20m/秒以上が好ましく、さらに好ましくは30m/秒以上であり、特に好ましくは50m/秒以上である。流速を大きくすることによって、両者のガスの混合が促進される。導入温度が900℃以上であれば、混合と同時に反応は完結するので均一核発生が増進され、かつ、反応ゾーン(CVD支配による成長した粒子が形成されるゾーン)を小さくすることができる。流速が20m/秒より小さいと、混合が不十分で所望の微粒子、特に超微粒子にはならない。なお、導入ノズルとしては、同軸平行流、斜交流、十字流等を与えるノズルが採用される。
予熱された四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスが反応管内に供給されて反応管内で乱気流を生じることが好ましい。また、四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスは同軸平行流ノズルにより反応管内にへ供給され、かつ外同軸平行流ノズルの内管の内径は50mm以下であることが好ましい。
一方、原料ガスが反応管に導入され反応が進行すると、本反応が発熱反応であるため、反応温度が1,000℃を越える反応ゾーン(領域)が存在する。装置放熱は多少あるものの、急冷を施さないかぎり酸化チタン粒子は急速に成長してしまう。そこで、本発明においては700℃を越える高温滞留時間を、3秒以下、好ましくは1秒以下、特に好ましくは0.5秒以下に抑え、その後急冷することが好ましい。高温滞留時間が3秒を越えると、粒子の焼結が進行するので好ましくない。
反応後の酸化チタン粒子を急冷する手段としては、反応混合物に多量の冷却空気や窒素等のガスを導入する方法、あるいは水を噴霧する方法等が採用される。
本発明の微粒子状酸化チタン、特に超微粒子状酸化チタンは粒度分布がシャープで、水系の溶媒に対する分散性が優れるため、化粧料や衣料等の分野における紫外線遮蔽用途に好適である。従って、本発明の微粒子状酸化チタンはこれらの分野で使用される公知の担体、添加剤等と混合することにより、紫外線遮蔽用途に使用できる組成物を得ることができる。
実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
11.8Nm3/hr(Nは標準状態を意味する。以下同じ。)のガス状四塩化チタンを4Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、8Nm3/hrの酸素と20Nm3/hr水蒸気を混合した酸化性ガスを1,000℃に予熱し、これらの原料ガスを、図2に示すような反応装置を用い、同軸平行流ノズルを通して石英ガラス製反応器にそれぞれ流速40m/秒、30m/秒にて導入した。700℃を越える高温滞留時間を0.3秒となるように冷却空気を反応管に導入後、テフロン製バグフィルターにて酸化チタンの微粒子粉末を捕集した。
得られた酸化チタン微粒子はBET比表面積が20m2/g、ルチル含有比率(ルチル含有率ともいう。)が92%の微粒子であった。但し、BET比表面積は、島津製作所製の比表面積測定装置(機種はフローソーブII,2300)で測定し、ルチル含有比率はX線回折におけるルチル型結晶に対応するピーク面積(Srと略する。)とアナターゼ型結晶に対応するピーク面積(Saと略する。)から算出した比率(=100×Sr/(Sr+Sa))である。前記ルチル含有率は、式(1)に比表面積20m2/gを代入して算出される値よりもはるかに大きな数値を示した。
また、ここで得られた酸化チタン微粒子の粒度分布について、レーザー回折式粒度分布測定法で90%累積重量粒度分布径D90を測定した結果、1.2μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は2.3であった。
なお、n値はレーザー回折において得られた3点データ、D10、D50、D90をそれぞれRR線図においてR=90%、50%、10%としてプロットし、それら3点の近似直線から求めた。
(実施例2)
8.3Nm3/hrのガス状四塩化チタンを6Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、4Nm3/hrの酸素と15Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,100℃に予熱し、これらの原料ガスを、図2に示すような反応装置を用い、同軸平行流ノズルを通して石英ガラス製反応器にそれぞれ流速35m/秒、50m/秒にて導入した。700℃を越える高温滞留時間を0.2秒となるように冷却空気を反応管に導入後、テフロン製バグフィルターにて酸化チタンの微粒子粉末を捕集した。
得られた酸化チタン微粒子はBET比表面積が55m2/g、ルチル含有率が45%の微粒子であった。このルチル含有率は、式(1)に比表面積55m2/gを代入して算出される値よりもはるかに大きな数値を示した。この粉末のレーザー回折式粒度分布測定法にて測定した粒度分布における90%累積重量粒度分布径D90は1.4μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は2.0であった。
(実施例3)
4.7Nm3/hrのガス状四塩化チタンを16Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、20Nm3/hrの空気と25Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,000℃に予熱し、これらの原料ガスを、図2に示すような反応装置を用い、同軸平行流ノズルを通して石英ガラス製反応器にそれぞれ流速45m/秒、60m/秒にて導入した。700℃を越える高温滞留時間を0.2秒となるように冷却空気を反応管に導入後、テフロン製バグフィルターにて酸化チタンの微粒子粉末を捕集した。
得られた酸化チタン微粒子はBET比表面積が115m2/g、ルチル含有率が20%の微粒子であった。このルチル含有率は、一般式(1)に比表面積115m2/gを代入して算出される値よりもはるかに大きな数値を示した。また、この粉末のレーザー回折式粒度分布測定法にて測定した粒度分布における90%累積重量粒度分布径D90は2.1μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は1.8であった。
(比較例1)
8.3Nm3/hrのガス状四塩化チタンを6Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを800℃に予熱し、4Nm3/hrの酸素と15Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを900℃に予熱し、これらの原料ガスを、図2に示すような反応装置を用い、同軸平行流ノズルを通して石英ガラス製反応器にそれぞれ流速35m/秒、50m/秒にて導入した。700℃を越える高温滞留時間を0.3秒となるように冷却空気を反応管に導入後、テフロン製バグフィルターにて酸化チタンの微粒子粉末を捕集した。
得られた酸化チタン微粒子はBET比表面積が21m2/g、ルチル含有率が26%の微粒子であった。このルチル含有率は、一般式(1)に比表面積21m2/gを代入して算出される値よりもはるかに小さな数値を示した。また、この粉末のレーザー回折式粒度分布測定法にて測定した粒度分布における90%累積重量粒度分布径D90は2.9μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は1.8であった。
(比較例2)
日本アエロジル株式会社製の超微粉酸化チタンP−25を分析したところ、比表面積54m2/g、ルチル含有率は15%であった。このルチル含有率は、一般式(1)に比表面積54m2/gを代入して算出される値よりも小さな数値を示した。また、この粉末のレーザー回折式粒度分布測定法にて測定した粒度分布における90%累積重量粒度分布径D90は3.1μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は1.4であった。
出光興産株式会社製の超微粉酸化チタンIT−Sを分析したところ、比表面積108m2/g、ルチル含有率0%(非晶質)であった。式(1)に比表面積108m2/gを代入して算出される値は約16%を示す。この粉末の粒度分布について、レーザー回折式粒度分布測定法で測定した結果、その90%累積重量粒度分布径D90は6.3μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は1.8であった。
産業上の利用分野
本発明の微粒子状、特に超微粒子状酸化チタンは、BET比表面積(B)vs.ルチル含有率(R)の相関関係において、前記式(1)の条件を満足する。また、本発明の製造方法によって得られる微粒子状のルチル含有酸化チタンは、同等のBET比表面積を示す他の酸化チタンに比べ、はるかに高いルチル含有率を有し分散性に特に優れている。
また、このような特性を有する超微粒子酸化チタンは、レーザー回折式粒度分布測定法で測定された90%累積重量粒度分布径D90が2.5μm以下のものであるのが好ましく、さらにはロジン・ラムラー式による分布定数nが1.5以上のものであるのが好ましい。
本発明の特性を有する微粒子状酸化チタンは、化粧料や衣料等の分野における紫外線遮蔽用途等に好適である。特に、粒度分布がシャープで、水系の溶媒に対する分散性が優れるので解砕工程等が不要もしくは極めて軽微な設備で済み、工業的に非常に大きな実用的価値を有するものである。
本発明はその本質的特徴から逸脱することなく他の特定の実施態様で実施することもできる。従って、本実施形態はすべての点において例示的であり、限定的でなく、本発明の範囲は上述の説明よりもむしろ添付の請求の範囲により示されるものであり、従って請求の範囲の均等の範囲内に入る全ての変更はすべて本発明に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、超微粒子酸化チタンのルチル含有率vs.BET比表面積との関係において、本発明の超微粒子ルチル含有酸化チタンの特性範囲を示す図である。
図2は、実施例において使用された同軸平行流ノズルを備えた反応管の概略模式図である。
Claims (9)
- 気相法で製造されるルチル結晶を含む混晶系酸化チタンにおいて、該酸化チタンが下記一般式、 R≧1300×B−0.95(式中、RはX線回折法で測定されたルチル含有率(%)を表し、BはBET比表面積(m2/g)を表し、その範囲は15〜200m2/gである。)で表される特性を有し、ロジン・ラムラー式による分布定数nが1.5以上であることを特徴とすることを特徴とする微粒子状酸化チタン。
- Bで表されるBET比表面積が40〜200m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の微粒子状酸化チタン。
- 酸化チタンが、レーザー回折式粒度分布測定法で測定された90%累積重量粒度分布径D90が2.5μm以下のものであることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子状酸化チタン。
- 四塩化チタンを10体積%以上90体積%以下に不活性ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを、酸素又は水蒸気もしくはこれらを含有する酸化性ガスを用いて高温酸化することにより酸化チタンを製造する気相法であって、900℃以上に予熱された四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスを、それぞれ反応管に20m/秒以上の流速にて供給し、700℃を越える高温滞留時間を3秒以下にて反応させることを特徴とする微粒子状酸化チタンの製造方法。
- 四塩化チタンを20体積%以上80体積%以下に不活性ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを用いることを特徴とする請求項4に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法。
- 四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスを予熱する各々の温度が1,000℃以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法。
- 四塩化チタン希釈ガス及び酸化性ガスが同軸平行流ノズルにより反応管内に供給され、かつ外同軸平行流ノズルの内管の内径が50mm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法。
- 請求項4〜7のいずれか一項に記載の微粒子状酸化チタンの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする微粒子状酸化チタン。
- 請求項1〜3および8のいずれか一項に記載の微粒子状酸化チタンを含むことを特徴とする酸化チタン組成物。
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