JP2004149391A - 金属酸化物膜形成用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】長時間の保管・貯蔵等によっても原料化合物や金属酸化物等の析出等が認められず、均一な溶液状態を保持することができるといった優れた経時安定性を有し、かつ、生産性や経済性に優れる簡便な方法でより低温で金属酸化物を生成させることができる、金属酸化物膜形成用組成物、および、これを用いた金属酸化物膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物は、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属カルボン酸塩とを出発原料とするか、または、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として基材の表面に金属酸化物を膜として定着させるための金属酸化物膜形成用組成物であって、前記出発原料および/または前記出発原料に由来する成分を必須とすることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物膜形成用組成物、その製造方法、および、それを用いた金属酸化物膜の形成方法に関する。詳しくは、基材の表面に形成させる金属酸化物膜の原料液としての金属酸化物膜形成用組成物、その製造方法、および、それを用いた金属酸化物膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物は、その金属原子の種類や、単一であるか複合であるかなどによって、さまざまな優れた機能を有することが知られており、従来から、その特性を活かして種々の用途に利用されている。さらに、これら金属酸化物を基材の表面に金属酸化物の膜として形成し、各種機能性用途に利用することも提案されてきている。基材表面に金属酸化物の膜を形成させる方法としては、具体的には、▲1▼スパッタや真空蒸着等の気相法により形成する方法、▲2▼金属カルボン酸塩溶液を基材表面に塗布して熱分解する等の熱分解法により形成する方法、▲3▼一旦生成し物性的に安定した金属酸化物粒子を基材表面に塗布して乾燥することにより形成する方法などが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照。)。
【0003】
しかしながら、上記▲1▼の方法においては、気相法を行うのに必要な装置等はコストが高く経済性に劣り、生産性も低く、例えば導電性の金属酸化物膜を形成しようとした場合、かなり高温での処理行う必要があるため基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物膜が得られにくい等の問題がある。上記▲2▼の方法においては、必然的に高温での処理をしなければならないため造膜したい基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物膜が得られにくいという問題がある。また、上記▲3▼の方法においては、通常、粒子間の結合が不十分な多孔質構造となるため、膜の基材表面への密着性や機械的強度が低いうえ、金属酸化物膜の連続性が重要となる導電性等の機能が得られにくいという問題がある。そこで、粒子どうしを結合させた緻密な連続性を有する膜とするために、例えば、塗布後に高温で処理することも考えられるが、結局のところ、上記同様、高温のために基材の種類が制限されてしまうことになり実用性に欠けるという問題がある。
【0004】
以上のような問題を解消するため、本発明者は、従来に無い特定の組み合わせの出発原料(具体的には、アルコールと金属カルボン酸塩、あるいは、カルボキシル基含有化合物と金属アルコキシ基含有化合物)を混合する工程と、これら出発原料やこれら出発原料の予備反応物を加熱する工程とを必須として備える金属酸化物の生成方法を提案しているが、例えば、このような金属酸化物を所定の基材の表面に生成させ膜として形成させる場合等においては、一般的な手順として、上記加熱工程は行わずに予め上記混合工程だけ行って得られる溶液を、金属酸化物生成用の原料液として保管・貯蔵しておき、必要なときに基材の表面に塗布して加熱するなどして用いられている。しかしながら、上記した原料液の保管・貯蔵にあたっては、それが長期間に及ぶと、最終生成物である金属酸化物や原料化合物等が析出してくるようになり、金属酸化物生成用の原料液としては用いることができなくなったり、所望の物性・特性を有する金属酸化物の膜等が得られなくなる、などの経時安定性の面における問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−72011号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平5−339742号公報
【0007】
【特許文献3】
特公平7−115888号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平9−161561号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、長時間の保管・貯蔵等によっても原料化合物や金属酸化物等の析出等が認められず、均一な溶液状態を保持することができるといった優れた経時安定性を有し、かつ、生産性や経済性に優れる簡便な方法でより低温で金属酸化物を生成させることができる、金属酸化物膜形成用組成物、および、これを用いた金属酸化物膜の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、従来に無い特定の組み合わせの出発原料として、金属カルボン酸塩を用いる場合において、あるいは、カルボキシル基含有化合物と金属アルコキシ基含有化合物を用いる場合において、これら出発原料に加えて、さらに多価アルコールやその誘導体も出発原料として用いる金属酸化物膜形成用組成物、および、この組成物を用いた金属酸化物膜の形成方法であれば、上記課題を一挙に解決し得ることを見出し、これを確認して本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物は、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属カルボン酸塩とを出発原料とするか、または、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として基材の表面に金属酸化物を膜として定着させるための金属酸化物膜形成用組成物であって、前記出発原料および/または前記出発原料に由来する成分を必須とすることを特徴とする。
また、本発明にかかる金属酸化物膜の形成方法は、上記本発明の金属酸化物膜形成用組成物を50℃以上の温度にすることにより、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物、および、この組成物を用いる金属酸化物膜の形成方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施することができる。
〔金属酸化物膜形成用組成物〕
本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物(以下、本発明の組成物と称することがある。)は、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、多価アルコール等と称することがある。)と金属カルボン酸塩とを出発原料とするか、または、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として基材の表面に金属酸化物を膜として定着させるための金属酸化物膜形成用組成物であって、前記出発原料および/または前記出発原料に由来する成分を必須とするようにしている。
【0013】
本発明の組成物においては、出発原料を構成する特定の組み合わせとして、金属カルボン酸塩と多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、組み合わせAと称することがある。)、または、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物(以下、組み合わせBと称することがある。)を用いるようにしている。
組み合わせAにおける金属カルボン酸塩としては、具体的には、分子内にカルボキシル基の水素原子が金属原子で置換された結合を少なくとも1つ有する化合物であり、カルボキシル基としては、例えば、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸、芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物などの金属塩;などを好ましく用いることができるが、特にこれらに限定はされるわけではない。なかでも、下記一般式(I):
M(O)(m−x−y−z)/2(OCOR(OH)(OR (I)
(但し、Mはm価の金属原子;Rは、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;Rは、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で表される化合物のように上記した金属カルボン酸塩またはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置換されたものや、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩や、塩基性酢酸塩などを好ましく挙げることができる。なかでも、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩の中の金属飽和カルボン酸塩や金属不飽和カルボン酸塩がより好ましく、さらに好ましくは上記一般式(I)で表される金属(M)カルボン酸塩であり、最も好ましくは金属酢酸塩や金属プロピオン酸塩であり、金属(M)がZnである場合は金属酢酸塩が特に好ましい。なお、上記金属カルボン酸塩は、結晶水を含む金属カルボン酸塩の水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
【0014】
上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)としては(一般式(I)中の金属元素(M)も含む)、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、ランタノイド元素、アクチノイド元素、1B族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族に含まれる金属元素を挙げることができ、これらの中でも、例えば、Sr、Ce、Y、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sn、SbおよびLa等の金属元素が、本発明においては好適である。これらは1種のみでも2種以上併存していてもよい。金属カルボン酸塩としては、上記列挙した以外に、シュウ酸バリウムチタニル等の複合金属カルボン酸塩等も好適である。なお、本明細書においては、周期表は、改訂5版「化学便覧(日本化学会編)」(丸善株式会社より出版)に掲載されている「元素の周期表(1993年)」を用い、族番号は亜族方式により表記する。
【0015】
組み合わせAにおける多価アルコールおよびその誘導体について以下に説明する。
本発明で用いることのできる多価アルコール(以下、化合物▲1▼と称することがある。)とは、分子内に2以上のアルコール性またはフェノール性水酸基を有する化合物をいうとする。例えば、グリセリンモノアセテートのように、誘導体であっても、2個以上の水酸基を有する化合物は、本発明の組成物においては、多価アルコールに含まれるものとする。
多価アルコール誘導体は、上記多価アルコールの誘導体であって、n−1個またはn個(nは多価アルコールの水酸基の数)の水酸基が他の基で置換されている化合物をいう。すなわち、多価アルコール誘導体(以下、化合物▲2▼と称することがある。)は、水酸基の置換数がn−1個である場合は、水酸基を1個有する多価アルコール誘導体(以下、化合物▲2▼−1と称することがある。)、または水酸基の置換数がn個である場合は、水酸基を有しない多価アルコール誘導体(以下、化合物▲2▼−2と称することがある。)である。(これら化合物▲2▼−1および化合物▲2▼−2(それぞれの下位概念にあたる化合物も含む)を合わせて化合物▲2▼と称することがある。)
化合物▲1▼としては、例えば、βジオールまたは隣接した炭素原子に2個の水酸基が結合したもの(以下、化合物▲1▼−1と称することがある。)などが好ましい。
【0016】
化合物▲2▼−1としては、例えば、その置換基のうち少なくとも1個が、炭素数4以上のアルコキシ基(−OR)で置換されたエーテル結合を有する化合物(ただし、Rは、水素または置換基であってもよい。Rが置換基である場合は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。)(以下、化合物▲2▼−1aと称することがある。)、その置換基のうち少なくとも1個が、炭素数1〜3のカルボキシル基(−OC(=O)−R(ただし、Rは、水素または置換基であってもよい。Rが置換基である場合は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。))で置換されたエステル結合を有する化合物(以下、化合物▲2▼−1bと称することがある。)、および、その置換基のうちの少なくとも1個が、炭素数4以上、好ましくは11以上のカルボキシル基(−OC(=O)−R(ただし、Rは、水素または置換基であってもよい。Rが置換基である場合は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。))で置換されたエステル結合を有する化合物(以下、化合物▲2▼−1cと称することがある。)などが好ましいが、なかでも、化合物▲2▼−1a、化合物▲2▼−1bが経時安定性に優れる組成物が得られる点でより好ましい。
【0017】
化合物▲2▼−2としては、例えば、化合物▲1▼、特に化合物▲1▼−1における水酸基が全て炭素数1〜3のカルボキシル基、特に炭素数1〜2のカルボキシル基で置換されたエステル結合を有する化合物(以下、化合物▲2▼−2aと称することがある。)、および、化合物▲2▼−1a、化合物▲2▼−1bおよび化合物▲2▼−1cにおける水酸基が全て炭素数1〜3のカルボキシル基、特に炭素数1〜2のカルボキシル基で置換されたエステル結合を有する化合物(以下、化合物▲2▼−2bと称することがある。)などが好ましい。
以下、上記各種化合物(化合物▲1▼および化合物▲2▼)について、具体例を挙げて示す。
【0018】
化合物▲1▼としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ぺンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール(2−メチルー2,4−ペンタンジオール)、1,3−オクチレングリコール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、シクロぺンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン1,2−ジオール、シクロヘキサン1,4−ジオール等のグリコール類(2個の水酸基が異なる炭素原子に結合している脂肪族、または脂環式化合物);グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール、ペンタエリスリト−ル等の4価アルコール、リビトール、キシリトール等のペンチトール類などの5価アルコール、アリトール、ソルビトール等のヘキシトール類などの6価アルコール、その他1,4−ソルビタン、マルチトール、ラクチトール、グルコースなど、またはこれらの水酸基のうち、1〜n−2個の水酸基が他の基で置換されてなる化合物、たとえば、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステルなどのポリアルコール類(3個以上の水酸基を有する脂肪族、または脂環式化合物);カテコール、ネゾルシン、ヒドロキノンなどの2価フェノール、ピロガロール、フロログルシンなどの3価フェノール等の多価フェノール類(ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素の炭素に直接に水酸基が2個以上結合したもの);フタリルアルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール等の多価芳香族アルコール(芳香族炭化水素の側鎖に水酸基が結合した化合物);ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールなどが挙げられ、なかでもエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン1,2−ジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール、ペンタエリスリトール等のテトリトール類などの4価アルコール、リビトール、キシリトール等のペンチトール類などの5価アルコール、アリトール、ソルビトール等のヘキシトール類などの6価アルコール、その他、1,4−ソルビタン、マルチトール、ラクチトール、グルコース、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、カテコールピロガロールなどの2価、3価フェノール、ヒドロべンゾイン、ベンズピナコールなどが好ましい。
【0019】
化合物▲2▼−1としては、例えば、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノ脂肪酸エスデル、ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステルなどのグリコール、ポリアルキレングリコールのモノエステル化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール、ポリアルキレングリコールのモノエーテル化合物;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリン1,3−ジアセテート、グリセリン1,2−ジメチルエーテル、グリセリン1−エチル−2−プロピルエーテルなどのポリアルコール類の誘導体などが挙げられるが、なかでも化合物▲2▼−1a、化合物▲2▼−1b、化合物▲2▼−1cなどが好ましい。
【0020】
化合物▲2▼−1aとしては、例えば、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。
化合物▲2▼−1bとしては、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピオネート、グリセリン1,3−ジアセテート等が挙げられる。
【0021】
化合物▲2▼−1cとしては、例えば、エチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。
化合物▲2▼−2としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどのグリコールカーボネート類;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレートなどのグリコール、ポリアルキレングリコールのジエステル化合物;メチレングリコールジメチルエーテル、メチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、などのグリコール、ポリアルキレングリコールのジエーテル化合物;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエ、チルエーテルアセテート、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール、アルキレングリコールのエーテル・エステル化合物;グリセリントリグリシジルエーテル、グリセリントリアセテート、グリセリントリラウレートなどのポリアルコール類の誘導体などが挙げられるが、なかでも化合物▲2▼−2a、化合物▲2▼−2bなどが好ましい。
【0022】
化合物▲2▼−2aとしては、例えば、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等が挙げられる。
化合物▲2▼−2bとしては、例えば、化合物▲2▼−1aの炭素数1〜3のカルボキシル基置換化合物として、エチレングリコールn一ブチルエーテルアセテート、プロピレンレングリコールn一ブチルエーテルアセテート;化合物▲2▼−1cの炭素数1〜3のカルボキシル基置換化合物として、ポリエチレングリコール脂肪酸酢酸エステル等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物においては、多価アルコールおよびその誘導体として、上記化合物▲1▼および化合物▲2▼に含まれる各種化合物から選ばれる1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。
組み合わせAにおいては、上記多価アルコールおよびその誘導体に加えて、さらにモノアルコールを用いることができる。本発明に使用できるモノアルコールとしては、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;等を挙げることができる。
【0024】
本発明の組成物を得るにあたり、出発原料となる上記金属カルボン酸塩とアルコールとの使用量に関しては、特に限定はないが、金属カルボン酸塩の金属換算原子数に対するアルコールの(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000となるようにすることが好ましい。また、上記使用量に関しては、金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対するアルコールの(アルコール由来の)水酸基の総数の比が、0.8〜100となるようにすることも好ましく、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
組み合わせBにおける多価アルコールおよびその誘導体は、上記組み合わせAの多価アルコールおよびその誘導体と同様である。
【0025】
組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合物としては、特に限定はないが、例えば、下記一般式(II)で示される化合物、または該化合物が(部分)加水分解・縮合してなる縮合物を挙げることができる。
M’(OR (II)
(但し、M’は、金属原子;Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも1種;nは金属原子Mの価数)
一般式(II)中、Rとしては、水素原子および/またはアルコキシアルキル基の如く置換されていてもよいアルキル基が好ましい。
【0026】
一般式(II)中、金属(M’)としては、上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)を挙げることができ、好ましいものについても同様である。
金属アルコキシ基含有化合物は、上記で説明したもの以外であってもよく、例えば、ヘテロ金属アルコキシド(ヘテロ金属オキソアルコキシ基含有化合物も含む)であってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシドとは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた金属アルコキシドのことである。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸化物からなる金属酸化物膜を得ることができる。
【0027】
組み合わせBにおけるカルボキシル基含有化合物としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸等の鎖式カルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、 アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として上記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有化合物のうち、飽和カルボン酸が好ましく、酢酸が最も好ましい。また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述の反応溶媒としても用いることもできる。
【0028】
本発明の組成物を得るにあたり、出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との使用量に関しては、それらの配合割合(カルボキシル基含有化合物/金属アルコキシ基含有化合物)が、特に限定はされないが、金属アルコキシ基含有化合物に含有されている金属原子Mの平均原子価数Navを用いて、好ましくは下限が0.8Nav超、さらに好ましくは1.2Nav超であり、また、好ましくは上限が10Nav未満である。ここで、平均原子価数Navは、金属アルコキシ基含有化合物として、含有金属元素の異なるp種の金属アルコキシ基含有化合物(含有金属元素がそれぞれM1、M2、M3、・・・、Mpであるp種の金属アルコキシ基含有化合物(2≦p))を併せて用いる場合、下記数式:
【0029】
【数1】
Figure 2004149391
【0030】
(数式中、Niは、金属Miの原子価(価数)を表す。また、Xiは、金属アルコキシ基含有化合物として用いた金属元素Miのモル数を表す。pは2以上の整数である。)
から算出することができる。また、出発原料として用いたカルボキシル基含有化合物の総量に含まれるカルボキシル基の数が、出発原料として用いた金属アルコキシ基含有化合物の総量に含まれるアルコキシ基の数N’に対して、0.8N’超であることが好ましく、1N’〜10N’が特に好ましい。なお、数値範囲を表す際に、数値の後ろに「超」と付した場合は、その数値を含まずそれより大きい数値範囲を示すものとする。
【0031】
本発明の組成物は、必要に応じ溶剤を使用して、前記出発原料を混合すれば、容易に得ることが出来るが、上記出発原料として多価アルコールおよびその誘導体以外の原料の組み合わせを含む場合においては、多価アルコールおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を、他の出発原料を混合する際か、および/または、混合した後に、他の出発原料に添加するようにすることが好ましい。多価アルコールおよびその誘導体を、上述した特定のタイミングで添加し本発明の組成物を得ることによって、前述した本発明の課題を容易に解決することができる。この特定のタイミングについては、特にのちに述べる予備反応物を生成させるために加熱する時点までに添加することによって、前述した本発明の課題をより一層容易に解決することができ、好ましい。
【0032】
本発明の組成物においては、上記出発原料および/または上記出発原料に由来する成分を必須とするようにしている。本発明の組成物は、上記出発原料および/または上記出発原料に由来する成分を含むことにより、長時間の保管・貯蔵等によっても原料化合物や金属酸化物等の析出等が認められず、均一な溶液状態を保持することができるといった優れた経時安定性を有することができる。また、この組成物を用いれば、生産性や経済性に優れる簡便な方法でより低温で金属酸化物を生成させることができる。ここで、上記出発原料および/または上記出発原料に由来する成分とは、上記出発原料を構成する多価アルコール等と金属カルボン酸塩との混合系、または、上記出発原料を構成する多価アルコール等と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系のことをいう。
【0033】
上記出発原料を構成する金属カルボン酸塩と多価アルコール等との混合系とは、該金属カルボン酸塩および多価アルコール等をそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属カルボン酸塩および多価アルコール等のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属カルボン酸塩および多価アルコール等の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属カルボン酸塩と多価アルコール等とがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0034】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物aと称することがある。)は、金属カルボン酸塩と多価アルコール等とから得られるものであって、金属カルボン酸塩と多価アルコール等との反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Aと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Aに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物aは、出発原料としての金属カルボン酸塩でも多価アルコール等でもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Aでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Aが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属カルボン酸塩のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Aの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0035】
また、上記予備反応物aは、例えば、多価アルコール等または多価アルコール等を含む溶媒に金属カルボン酸塩を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属カルボン酸塩と多価アルコール等との混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Aが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下の加熱とにより得られる。予備反応物aは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物aとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、多価アルコール等またはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カルボキシル基の一部がアルコールのアルコキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外にさらに多価アルコール等またはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーを上記混合系にさらに加えて高温状態にすることにより金属酸化物を得ることもできる。
【0036】
金属カルボン酸塩と多価アルコール等との混合系(ひいては、組み合わせAの出発原料から得られる本発明の組成物)は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属カルボン酸塩は、特に限定はされないが、金属カルボン酸塩と多価アルコール等との混合系(ひいては、組み合わせAの出発原料から得られる本発明の組成物)においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0037】
上記出発原料を構成する多価アルコール等と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系とは、多価アルコール等、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物をそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、該多価アルコール等、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、多価アルコール等、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、多価アルコール等と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とがこれらの予備反応物となって存在している状態や、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0038】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物bと称することがある。)は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とから得られるものであって、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Bと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Bに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物bは、出発原料としての金属アルコキシ基含有化合物でもカルボキシル基含有化合物でもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Bでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Bが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属アルコキシ基含有化合物のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Bの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0039】
また、上記予備反応物bは、例えば、カルボキシル基含有化合物、多価アルコール等(誘導体含む)、または、カルボキシル基含有化合物と多価アルコール等を含む溶媒に金属アルコキシ基含有化合物を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物と多価アルコール等との混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Bが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下での加熱とにより得られる。予備反応物bは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物bとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物の金属原子に、多価アルコール等およびカルボキシル基含有化合物が−COOH基または−COO基を介して配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、アルコキシ基の一部が多価アルコール等および/またはカルボキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属アルコキシ基含有化合物が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のアルコキシ基の少なくとも一部を置換してさらにカルボキシル基含有化合物、または、カルボキシル基含有化合物および多価アルコールなどが配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外の方法によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーをさらに加熱することにより金属酸化物を得ることもできる。
【0040】
多価アルコール等と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系(ひいては、組み合わせBの出発原料から得られる本発明の組成物)は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属アルコキシ基含有化合物は、特に限定はされないが、多価アルコール等と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系(ひいては、組み合わせBの出発原料から得られる本発明の組成物)においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0041】
本発明の組成物は、上記多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の前記出発原料に含まれる金属に対する配合割合がモル比で0.1〜8であることが好ましく、0.5〜4がさらに好ましい。モル比が0.1未満である場合には、多価アルコール等の共存効果が現れないおそれがあり、一方、8を越える場合には、金属酸化物膜が高温にしないと生成しなくなるおそれがある。
なかでも、組み合わせAの出発原料を用いる場合の多価アルコールおよびその誘導体の使用量は、上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(金属原子)に対する配合割合がモル比で0.1〜8であることがより好ましく、0.5〜4がさらに好ましい。
【0042】
また、組み合わせBの出発原料を用いる場合の多価アルコールおよびその誘導体の使用量は、上記金属アルコキシ基含有化合物に含まれる金属(金属原子)に対する配合割合がモル比で0.1〜8であることがより好ましく、0.5〜4がさらに好ましい。
本発明の組成物は、前述したように、さらに反応溶媒等を含んでいてもよい。反応溶媒をも用いる場合、その使用量については、特に限定はないが、前記組み合わせAを出発原料とする場合では、出発原料として用いた全ての金属カルボン酸塩、多価アルコールまたはその誘導体、反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属カルボン酸塩の合計使用量の割合が1〜50重量%となるように設定することが好ましい。同様に、前記組み合わせBを出発原料とする場合では、出発原料として用いた全ての多価アルコールおよびその誘導体、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物と、多価アルコールまたはその誘導体と、反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属アルコキシ基含有化合物の合計使用量の割合が1〜50重量%となるように設定することが好ましい。
【0043】
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等の炭化水素;各種ハロゲン化炭化水素;アニソール、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジイソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルおよびアセタール;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトンおよびアルデヒド;アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メチル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メチル、リン酸エステル類等のエステル;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。
【0044】
反応溶媒としては、さらに、モノアルコールを用いてもよい。モノアルコールは、前記と同様のものを使用できる。
反応溶媒としては、さらに、アミンやアルカノールアミン等のアミン類を加えて用いることもできるが、該アミン類は、大量に用いると(具体的には、出発原料を混合したものに含まれる金属の原子数と同量もしくは多い量を用いると)、予備反応物の生成が阻害されたり、金属酸化物の生成反応が阻害されることがある。よって、該アミン類を反応溶媒として使用する場合は、金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物の金属換算原子数に対するモル比で0.1以下となる量を使用することが好ましい。
【0045】
前記組み合わせBを出発原料とする場合は、反応溶媒としては、特に、非水溶媒のうちでも、アルコール性またはフェノール性水酸基を有しない非水溶媒である非アルコール性有機溶媒が好ましく、これを用いた際の反応収率が高い。非アルコール性有機溶媒としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化炭化水素; エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。これらの非アルコール性有機溶媒のなかでも、エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル等が好ましい。
【0046】
本発明の組成物においては、含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、組み合わせAを出発原料として用いた場合、使用した全ての金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好ましく、0.1未満が最も好ましい。同様に、組み合わせBを出発原料として用いた場合、使用した全ての金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
〔金属酸化物膜の成形方法〕
本発明にかかる金属酸化物膜の形成方法(以下、本発明の方法と称することがある。)においては、上記本発明の金属酸化物膜形成用組成物(以下、原料組成物と称することがある。)を用いるようにしており、具体的には、原料組成物を50℃以上の温度にすることにより、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させるようにしている。
【0047】
本発明の方法においては、さらに原料組成物を上記基材に接触させ、この接触系を高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることが好ましい。
具体的には、上記接触系を高温状態にすることが、原料組成物を表面に塗布してなる基材を高温状態にするか、原料組成物に基材を漬けておいて高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法については、前者は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
【0048】
また、本発明の方法においては、さらに原料組成物を、高温状態にしながらか高温状態にしておいて、上記基材の表面に塗布することにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
上記液中析出法(浸漬法)や塗布法については、後に詳述する。
以下、本発明の方法を実施するにあたり、使用する材料の詳細について説明するとともに、操作条件、反応条件等の詳細についても合わせて説明する。
【0049】
本発明の方法において用いることのできる基材、すなわち、金属酸化物膜の被覆対象となり得る基材としては、その材質等は、特に限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂からなるフィルムやシート各種樹脂高分子、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したフィルム等の加工品、などの有機物;各種金属類などが好ましく挙げられる。
【0050】
上記基材の形状・形態としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられるが、用途・使用目的等に応じて選択すればよく、特に限定はされない。また、上記基材は、機能面においても、特に限定はされず、例えば、光学的には透明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn型の半導体あるいは誘電体;磁気的には磁性体、非磁性体;など、用途・使用目的等に応じて選択すればよい。
以下、液中析出法および塗布法について簡単に説明する。
液中析出法とは、原料組成物に基材を漬けておいて(浸けておいた状態で)高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を析出させ成長させて、基材表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物膜を形成させる方法である。
【0051】
塗布法とは、例えば、原料組成物を表面に塗布してなる基材を高温状態にすることにより、その基材の表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物膜を形成させる方法が挙げられ、通常、基材表面への金属酸化物膜の形成過程で同時に揮発性の溶媒成分や反応により生成した水、エステル等を蒸発除去する過程を伴う。もちろん、塗布した後、金属酸化物を形成しない温度で乾燥(蒸発除去)した後、金属酸化物を形成する温度以上で加熱することによっても金属酸化物膜を形成させることができる。特に、予備反応物a、bはこの方法を使っても問題ない。
上記液中析出法および塗布法において、原料組成物として予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須とする液を用いる場合、予備反応物は、常温で長時間、溶解状態で存在し難い場合があるため、予備反応物を含む原料組成物を得たあとは、例えば、速やかに原料組成物に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、速やかに原料組成物を基材に塗布して高温状態にすることが好ましい。原料組成物として予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須とする液を用いる場合は、原料組成物を緩やかに加温しながら予備反応物の溶液状態を保持しておき、原料組成物に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、原料組成物を基材に塗布して高温状態にするのが好ましい。
【0052】
以下、液中析出法について詳細に説明する。
上記液中析出法においては、金属酸化物の生成が完全に終わるまでに、好ましくは金属酸化物の生成反応を開始させるまでに、基材を原料組成物に漬けておけばよく、原料組成物を高温状態となるように昇温させるための加熱等と、原料組成物への基材の浸漬とのタイミングについては、特に限定はされない。例えば、基材を、原料組成物に漬けておいてから加熱する形態などを挙げることができる。
なお、液中析出法においては、原料組成物は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩が多価アルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状など)でもよく、特に限定はされないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため好ましい。また、原料組成物は、前述したように、必要に応じて反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。
【0053】
液中析出法では、前述したように、基材を原料組成物に漬けておいて高温状態にすることで、基材と原料組成物との接触系を高温状態となるようにするが、上記接触系を高温状態にするとは、上記接触系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常、50〜300℃にすることが好ましく、結晶性の金属酸化物膜を得るためには、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃の温度範囲がさらにより好ましい。液中析出法において上記接触系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、原料組成物の出発原料となる多価アルコール等やカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われる。
【0054】
金属酸化物を経済的な時間で生成させるための温度は、原料組成物の出発原料として用いた金属カルボン酸塩の種類や多価アルコール等の種類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、予備反応物の種類により、適宜設定すればよい。
金属酸化物の構造、結晶子や粒状金属酸化物の大きさおよび形状などに関して所望の金属酸化物膜を得ようとした場合、金属カルボン酸塩の種類や多価アルコール等の種類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、予備反応物の種類によって、適宜適切な反応温度を設定することが好ましい。
【0055】
液中析出法においては、通常、金属酸化物を製造する場合に用いられている装置を好ましく使用することができるが、基材を固定する機能を備えたものがより好ましい。例えば、基板(基材)ホルダーを設置してなる回分式反応装置を使用することができる。撹拌の有無や、撹拌条件は特に限定されず、適宜選択すればよい。
液中析出法において、基材と原料組成物との接触系を高温状態にする方法としては、基材を漬けている状態で原料組成物全体を加熱する方法以外に、基材を原料組成物に漬けている状態で基材のみを選択的に加熱する方法などが好ましく挙げられる。なかでも後者の方法は、基材表面での反応が選択的に起こりやすく、基材表面に密着性の高い金属酸化物膜が形成されやすいため好ましい。
【0056】
液中析出法において、上記加熱を行う方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、マイクロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照射による加熱などを好ましく挙げることができる。
以下、塗布法について詳細に説明する。
塗布法においては、具体的には、例えば、▲1▼原料組成物を基材の表面に塗布しておいて該基材を加熱することにより、基材と原料組成物との接触系を高温状態にする方法、▲2▼原料組成物を加熱して高温状態にしながら基材に塗布する方法、▲3▼原料組成物を加熱して高温状態にしておいて基材に塗布する方法、▲4▼基材を高温状態にしておいて、原料組成物を塗布する方法、などを好ましく挙げることができる。なかでも、結晶性の高い金属酸化物膜を得るためには、上記▲1▼のように基材表面に原料組成物を塗布してなるものを高温状態にすることが好ましい。
【0057】
上記▲2▼の方法の具体例としては、例えば、原料組成物を、基材の塗布部分に直結する加熱されたパイプに通して高温状態にし、塗布する方法や、原料組成物を、ロールコーターのパン中で加熱して高温状態にし、該高温状態のまま基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特にこれらに限定はされない。
上記▲3▼の方法の具体例としては、例えば、原料組成物を(耐圧)回分式反応装置などを用いて加熱して高温状態にしておき、基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特に限定されるわけではない。
また、上記▲2▼、▲3▼および▲4▼の方法では、塗布した後、上記▲1▼の方法を組み合わせることが好ましい。
【0058】
なお、塗布法においても、上述した液中析出法と同様に、塗布液として用いる原料組成物は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため好ましい。原料組成物は、必要に応じて反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。
【0059】
塗布法としては、上記▲1▼〜▲4▼などの方法を取り得るが、この▲1▼〜▲4▼の方法において、前記接触系または原料組成物を高温状態にするとは、前記接触系または原料組成物の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常は液中析出法と同様に、50〜300℃にすることが好ましく、結晶性の金属酸化物膜を得るためには、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃の温度範囲がさらにより好ましい。塗布法において前記接触系または原料組成物を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、原料組成物の出発原料となる多価アルコール等やカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われる。
【0060】
さらに、塗布法における塗布液としては、予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須として含む原料組成物を用いることがより好ましい。特に、開放系で塗布および加熱をする場合であって、塗布液が、金属カルボン酸塩と多価アルコール等とが単に混合されてなる原料組成物であるときは、高温状態にするための昇温の際、反応が十分に進む前に多価アルコールが蒸散してしまい、金属酸化物膜中の金属酸化物含有率が低下したり、結晶性の低いものしか得られない場合があるからである。
塗布法を、原料組成物を用いて行う場合、常圧における沸点が成膜温度(上記▲1▼〜▲4▼の方法でいう高温状態の温度)よりも高い溶媒成分を、原料組成物に含有させておくことが好ましい。これにより、透明性に優れた金属酸化物膜や、酸化物含有量高い金属酸化物膜が容易に得られる。上記溶媒成分としては、例えば、沸点が100℃以上の、ケトン、エステル、カルボン酸、カルボン酸無水物等を挙げることができる。この場合、上記溶媒成分の含有量は、原料組成物中の金属に対するモル比で、等モル以上であることが好ましく、より好ましくは2倍モル以上である。上記溶媒成分の含有量が、等モル未満であると、上述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0061】
同様に、塗布法を、原料組成物を用いて行う場合、水と共沸し得る非水成分を、原料組成物に含有させておくことが好ましい。これにより、緻密な金属酸化物膜を、より低温で容易に形成することができ、透明導電膜などの電子伝導性膜や、イオン伝導性膜、熱伝導性膜などの各種機能性膜に関して当該機能により優れたものを経済的に得ることができるため有効である。上記非水成分としては、水と共沸する有機溶媒であればいずれも使用できるが、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、フルアリルアルコール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、共沸温度における共沸組成が上記非水成分濃度が60重量%以下である、水と共存し得る非水成分を用いることが好ましい。この場合、上記非水成分の含有量は、原料組成物中の金属に対するモル比で、等モル以上であること好ましく、より好ましくは2倍モル以上、さらに好ましくは5倍以上である。上記非水成分が、等モル未満であると、緻密でない部分を有する金属酸化物膜が形成されるおそれがある。
【0062】
塗布法においては、基材への塗布の方法としては、具体的には、例えば、原料組成物を、基材表面にバーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法、スピンコート法などの従来公知の成膜方法を用いた方法を好ましく挙げることができるが、特にこれらに限定されるわけではなく、加熱しておいてもよい原料組成物に基材の一部または全部を漬けた後取り出して得られた塗布物を加熱する、いわゆるディッピング法を用いることもできる。
塗布法において、塗布後に高温状態にする(接触系を高温状態にする)場合、その方法は、特に限定されるわけではないが、具体的には、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、熱線(特に、近赤外線)により加熱、マイクロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照射(特に、波長0.3〜0.4μmの紫外線(例えば、高水銀圧ランプにより照射される紫外線))による加熱などを好ましく挙げることができる。また、金属酸化物の層形成に有効な点で、波長0.3μm以下(特に0.2〜0.3μm)の紫外線と波長0.2μm以下の紫外線とを同時に照射することによる加熱も好ましく採用でき、例えば、低水銀ランプやエキシマレーザーを用いればよい。上記加熱により、金属酸化物膜が形成されるとともに、反応溶媒等を揮発させ除去させることができる。また、上記加熱時の雰囲気としては、具体的には、例えば、空気雰囲気、窒素やヘリウムなどの不活性ガス雰囲気、水素などの還元雰囲気など、特に限定されるわけではないが、通常、空気または窒素雰囲気で行うことが好ましい。上記加熱は、基材のみを加熱しても、塗布面のみを加熱しても、基材および塗布面の両方を加熱してもよく、特に限定はされない。
【0063】
塗布法では、高温状態の温度は、前述のように、上記液中析出法と同様であることが好ましいが、前記▲2▼および▲3▼の方法であって、前記▲1▼の方法をさらに組み合わせる場合は、この▲2▼および▲3▼の方法でいう高温状態の温度は、予備反応物aや予備反応物bを生成させる程度の温度が好ましく、具体的には、50℃以上かつ塗布後に高温状態とする際の温度以下であることが好ましい。
塗布法においては、高温状態にする際の加熱等による昇温時間は、特に限定されるわけではなく、具体的には、10秒〜1時間が好ましいが、結晶性を高めたり基材との密着性を高めるなどといった目的で、上記高温状態の温度またはこれとは異なる温度で、さらに熟成を行ってもよい。熟成の温度および時間は、特に限定はなく、適宜選択すればよい。また、熟成の方法は、加熱以外の方法でもよい。
【0064】
本発明の方法においては、膜を構成する金属酸化物(金属酸化物部分)が有機基を有する場合、さらに以下のような処理をすることにより、該有機基を除去することができる。すなわち、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基を分解する処理、液相中での加熱により有機基を分解する処理、酸性または塩基性の水溶液を用いて化学的方法により分解する処理、有機基がカルボキシル基の場合はアルコール存在下での加熱処理、有機基がアルコキシ基の場合は酢酸存在下での加熱処理、有機鎖の切断に有効な波長300nm以下(特に、波長200nm以下)の紫外線による高エネルギー紫外線照射処理、コロナ放電による処理、プラズマ処理などを挙げることができるが、特に限定されるわけではない。上記高エネルギー紫外線照射処理を施す場合は、高圧水銀ランプよりも短波長(高エネルギー)の紫外線を多く含む低圧水銀ランプを用いることが好ましい。
【0065】
本発明の方法においては、得られる金属酸化物膜に微粒子を含むようにすることもできる。
金属酸化物膜に含有させる微粒子としては、特に限定はされないが、例えば、無機系微粒子、有機系微粒子、有機質無機質複合体微粒子、金属微粒子等を好ましく挙げることができる。
上記無機系微粒子としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物や硫化物、セレン化物由来の微粒子を挙げることができる。微粒子の酸化物としては、例えば、本発明の微粒子含有金属酸化物膜のマトリクス成分である金属酸化物に関し後述する単一酸化物、複合酸化物、固溶体酸化物等を好ましく用いることができる。
【0066】
上記有機系微粒子としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、ポリイミド、ポリエステル、シリコーン等の各種高分子由来の微粒子を挙げることができる。
上記金属微粒子としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Co、Fe、Fe−Co合金、Fe−Pt合金、Fe−Si合金等の金属由来の微粒子を挙げることができる。
これら各種微粒子の中でも、金属酸化物膜において微粒子が偏在しにくく高分散させることができる点で、無機系微粒子や金属微粒子がより好ましい。
【0067】
金属酸化物膜に含有させる微粒子の粒子径は、特に限定はされないが、具体的には、100nm以下であることが表面平坦性に優れる膜が得られやすい、膜の透明性が高いなどの理由で好ましく、より好ましくは一次平均粒子径が50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下である。また、微粒子が結晶性微粒子である場合は、XRD測定のウィルソン解析により得られた結晶子径が、50nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。微粒子の粒子径が上記範囲より大きい場合、膜厚の不均一な膜になりやすい、透明性の低い膜になりやすい、微粒子複合効果が不十分となる等のおそれがある。
【0068】
金属酸化物膜に含有させる微粒子としては、各種機能性微粒子を用いることが好ましく、所望の機能を発揮させることにより前述した課題を達成できる。具体的には、導電体、半導体、絶縁体、誘電体、発光体、蛍光体、光吸収体、高屈折率体、低屈折率体、磁性体などとしての機能を有する機能性微粒子が好ましく挙げられる。
金属酸化物膜に含有させる微粒子の形状は、特に限定はされないが、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状、樹枝状、骸晶状などが挙げられるが、一般に、非球状のものが好ましい。
【0069】
金属酸化物膜に微粒子を含むようにする場合、該微粒子の含有割合は、特に限定はされず、膜の用途・使用目的に応じて適宜設定すればよいが、具体的には、0.1〜99重量%となるようにすることが好ましく、より好ましくは1〜90重量%であり、さらに好ましくは10〜50重量%である。上記微粒子の含有割合が、0.1重量%未満の場合は、微粒子含有効果が不十分となるおそれがあり、99重量%を超える場合は、微粒子とマトリクス成分である金属酸化物との複合効果が十分に発揮されなかったり、金属酸化物のバインダーとしての機能が十分に発揮されず微粒子が膜から脱落しやすいなどの問題が発生するおそれがある。
【0070】
上記微粒子を含有する金属酸化物膜を得る方法としては、特に限定はされず、本発明の方法において微粒子を含有させるタイミング等は適宜設定すればよいが、例えば、予め原料組成物に含有させておき、塗布法や液中析出法等を用いて微粒子含有金属酸化物膜を得るようにすることが好ましい。また、得られる金属酸化物膜において微粒子がなるべく均一に分散した状態で含まれるよう、予め原料組成物に微粒子を含有させておく場合はできるだけ均一に分散させておくことが好ましい。
本発明の方法により得られる金属酸化物膜は、基材の表面などに形成され得る金属酸化物の膜であるが、例えば、基材表面上の所望の面積部分に切れ目なく連続的に広がって存在している形態(以下、連続膜と称することがある。)であってもよいし、基材表面上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(以下、不連続膜と称することがある。)であってもよい。不連続膜では、金属酸化物が、基材表面に部分的に存在しているが、それら各部分の大きさ、面積、厚みおよび形状等については特に限定されない。具体的には、例えば、金属酸化物が、基材表面に微細なドット状で存在している形態や、いわゆる海島構造のように存在している形態(上記ドット状ほど微細ではない)や、縞模様状に存在している形態や、これら形態を合わせた形態等が挙げられる。
【0071】
上記連続膜および不連続膜において、膜を構成する金属酸化物の構造としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、所望の大きさの空間を有する多孔質構造や、マクロ的に見てこのような多孔質構造ではない一体的な密実構造(すなわち実質的に緻密な構造)を挙げることができる。また、上記いずれの構造においても、マクロ的に見て、1次粒子としての金属酸化物が集合してなる構造であっても、2次粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であっても、さらに大きく凝集粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であっても、これら形態が混在してなる構造であってもよく、特に限定はされるわけではない。なお、このような金属酸化物の各種構造は、上記不連続膜においては、部分的に存在している個々の膜のすべてが備えている必要は無く、一部の膜のみが備えるものであってもよい。
【0072】
上記1次粒子としての金属酸化物、2次粒子化した金属酸化物、および、さらに大きく凝集粒子化した金属酸化物の形状としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられる。
金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、結晶性の金属酸化物であっても、非結晶性の金属酸化物であってもよく、特に限定はされない。結晶性の金属酸化物とは、規則的な原子配列が周期性をもって認められる結晶子からなる金属酸化物であると定義することができ、電子線回折学的および/またはX線回折学的に、格子定数および/または回折パターンから金属酸化物の同定ができるものをいい、そうでないものは非結晶性の金属酸化物であるとする。導電性、半導体特性、熱伝導性、(光)磁気特性、誘電特性、発光特性、光の吸収、反射特性などの電気機能、磁気機能、半導体機能、光機能などの各種機能に優れる点では、結晶性であることが好ましい。また、上記結晶性の金属酸化物は、単結晶からなるものであっても、多結晶体からなるものであってもよく、特に限定はされない。
【0073】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合は、電気伝導性、熱伝導性、音波伝搬性、光伝送性などの伝導、伝搬、伝送機能膜、高屈折率膜、紫外線吸収や熱線反射等の光選択吸収、反射、透過膜、エレクトロクロミズム膜などとしての機能を発揮させようとするには、本発明の微粒子含有金属酸化物膜が連続膜であることが好ましい。(光)触媒機能膜、色素増感型太陽電池用半導体膜などの大きい表面積が必要とされる膜や、低屈折率膜などとしての機能を発揮させようとするには、金属酸化物が多孔質構造であり、かつ、金属酸化物膜が連続膜であることが好ましいであることが好ましい。また、紫外線発光体や蛍光体などの発光機能膜などとしての機能を発揮させようとする場合は、単結晶からなる金属酸化物膜が連続膜または不連続層であることが好ましい。
【0074】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の配向性については、特に限定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向が被覆対象となる基材等の表面に垂直に配向していても特定の角度をもって配向していても、あるいは、基材表面に沿うように該表面と平行に配向していてもよい。また、全ての結晶子の配向性が揃っていても、ランダムであっても、一部が同じ配向性で残りがランダムであってもよく、特に限定はされないが、結晶子の配向性が揃っている方が、電気や熱の伝導特性;(光)磁気的性質;スピン半導体性質;強誘電性、焦電性、圧電性等の誘電特性;発光特性;電子線放出特性等において優れたものとなるため好ましい。全ての結晶子が基材表面に垂直に配向している金属酸化物からなる金属酸化物膜は、電子線放出素子としての特有の優れた効果を発揮する点で好ましい。
【0075】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の形状は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した樹枝状、骸晶状などが挙げられる。なかでも、結晶子形状が、柱状、特に、太さが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下の柱状、および/または、とがった先端を有するいわゆる先鋭性を有する形状である金属酸化物からなる金属酸化物膜は、発光特性や電子線放出特性に優れる点で好ましい。
【0076】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の大きさについては、特に限定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向の大きさは以下の範囲が好ましい。
すなわち、金属酸化物膜が連続層である場合、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜1μmであることが好ましい。
また、金属酸化物膜が不連続層である場合は、膜中に存在する金属酸化物が単結晶からなるものであれば、各単結晶(各結晶子)の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜10μmであることが好ましく、存在する金属酸化物が多結晶体からなるものであれば、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜100nmであることが好ましい。
【0077】
さらに、金属酸化物膜が不連続膜であり、かつ、存在する金属酸化物が単結晶からなるものである場合であって、発光素子や電子線放出素子として使用する場合は、各結晶子の形状が量子ドット状であり、大きさが10nm以下であること、あるいは、各結晶子の形状が柱状であり、大きさについては長径と短径の比(長径/短径)が2〜100であって短径(太さ)が100nm以下(好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下)であること、が好ましい。さらに、先鋭性を有する結晶子形状であると、電子線放出特性に優れる点でより好ましい。
【0078】
また、金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、可視光に対して透過性が高いことが好ましく、具体的には、金属酸化物膜のバンドギャップが3.1eV以上のエネルギー帯域にあるものが好ましい。このように可視光に対する透過性が高い金属酸化物を用いると、金属酸化物膜として優れた透明導電膜、発光体膜等を設計しやすい。
本発明の方法により得られる金属酸化物膜は、特定の組み合わせの出発原料から得られる金属酸化物を必須とする膜であるが、膜を構成する金属酸化物が結晶性であるか非結晶性であるかに関わらず、金属酸化物膜は、有機基(金属酸化物に直接結合した有機基など)を含むものであってもよいし、有機基が除去されてなるものであってもよい。該有機基は、金属酸化物の原料化合物として用いられる金属カルボン酸塩、金属アルコキシ基含有化合物、多価アルコール等あるいはカルボキシル基含有化合物由来のアルコキシル基やカルボキシル基、および/または、他の原料化合物由来の有機基、の一部であることが好ましい。金属酸化物膜が有機基を含む場合、有機基は、金属酸化物膜全体中、炭素/金属(原子%)で4原子%未満であることが好ましい。一方、有機基が除去されてなる金属酸化物膜としては、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基が分解されたものや、液相中での加熱により有機基が分解されたものや、酸性または塩基性の水溶液による処理や、カルボキシル基であればアルコール処理、アルコキシ基であれば酢酸処理などの化学的方法により除去されたもの、および、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などの物理的により除去されたものが挙げられる。
【0079】
本発明の方法により得られる金属酸化物膜の厚み(被覆対象となる基材等の表面に対して垂直な方向の厚み)は、特に限定はされないが、通常、1nm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜10μmである。特に、得られる金属酸化物膜が多孔質状構造の連続層または不連続層である場合は、10nm〜100μmがより好ましい。上記厚みが1nm未満であると、所望の金属酸化物の機能が発揮されないおそれがあり、1000μmを超えると、機能面においてさらなる向上は見られず、かえってコスト高となったり、厚くなり過ぎて使用しにくくなるおそれがある。
【0080】
本発明の方法により得られる金属酸化物膜においては、該膜を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよく、特に限定はされないが、導電性機能などに優れる点では2種以上の金属元素を含有する複合酸化物あるいは固溶体酸化物が好ましい。以下に、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物それぞれについての具体例を示す。
〔単一酸化物〕
3次元格子構造を有する酸化物として、MO型酸化物(LiO、NaO、KO、RbO;CuO、AgO);MO型酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO;FeO、CoO、NiO、MnO;TiO、VO;BeO、ZnO;NbO;PdO、PtO、CuO、AgO);M型酸化物(Al、Ti、V、Fe、Cr、Rh、Ga;Mn、Sc、 Y、In、Tl;α−Bi、β−Bi、γ−Bi;B;ランタノイド系金属酸化物);MO型酸化物(ZrO、HfO、CeO、ThO、UO;TiO、SnO、VO、CrO、MoO、WO、MnO、GeO;SiO、GeO);MO型酸化物(ReO、WO)が挙げられる。
【0081】
低次元格子構造を有する酸化物として、層状格子構造酸化物(MO型酸化物(CaO);MO型酸化物(PbO、SnO);M型酸化物(V);MO型酸化物(MoO)等);鎖状格子構造酸化物(HgO、SeO、CrO、Sb);分子格子構造酸化物(RuO、OsO、Tc、Sb)が挙げられる。
〔複合酸化物〕
ABO型複合酸化物(LiBO;LiGaO;γ−LiAlO;LiFeO、LiInO、LiScO、LiEuO、LiNiO、LiVO、NaFeO、NaInO;CuCrO、CuFeO、PdCoO、PdCrO、PdRhO、PtCoO);ABO型複合酸化物(ScTiO、ScVO;FeVO、MnFeO、FeCrO、TiVO、FeTiO、CoMnO、CoVO、NiTiO、CdTiO、LiNbO;LiSbO;PbReO、BiYO、AOの最密面を有するABO型酸化物として、BaNiO、ペロブスカイト酸化物(KTaO、NaNbO、BaMnO、SrTiO;BiAlO、PbSnO、BaTiO、PbTiO;LaAlO、LiNiO、BiFeO、KNbO;GdFeO、YFeO、NdGaO、CaTiO)、BaMnO、SrTiO、SrReSrO12、BaRuO等);ABO型複合酸化物(PBO、BeSO;CrVO、ZnCrO;α−MnMoO;CaWO、CaMoO;Bi(MoO、Eu(WO;MNbO、MTaO(M:3価);CaCrO、YVO;CrVO、AlAsO;FeVO、FeWO、MnWO、NiWO;CuWO;CoMoO);AB型複合酸化物(NiCr、CoCr、MnCr、NiFe、CoFe、MnFe、ZnFe;BeSiO;CaFe、CaTi等)などが挙げられる。
【0082】
上記列挙した酸化物以外にも、ケイ酸塩やアルミノケイ酸塩;Mo、W、V、Nb、Ta等のポリ酸であって、異種原子を取り込んだヘテロポリ酸、さらに、Mo、W、V等の一部を異種金属で置換した混合ヘテロポリ酸や、これらの塩等も、複合酸化物として挙げられる。
〔固溶体酸化物〕
固溶体酸化物とは、単一酸化物または複合酸化物に、任意の異種金属を固溶した侵入型または置換型固溶体酸化物と定義される。
上記単一酸化物または複合酸化物が上記金属酸化物Aである場合、固溶させる異種金属は、金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金属カルボン酸塩由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られるためより好ましい。
【0083】
また、上記単一酸化物または複合酸化物が上記金属酸化物Bである場合、固溶させる異種金属は、金属アルコキシ基含有化合物や金属カルボン酸塩に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金属アルコキシ基含有化合物由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られるためより好ましい。
以下、固溶体酸化物について具体的に例示するが、特にこれらに限定はされない。
(1)導電性酸化物
上記金属酸化物に、導電性を高める目的で、ドナーやアクセプターとなる異種金属元素やフッ素、水素などを含有または固溶させることがあるが、これらの酸化物も本発明でいう金属酸化物に含まれる。例えば、ZnOにAl、In、Ga、Si;TiOにTa;FeにTi;BaTiOにLa、Ta;InにSn、Ti;SnOにSb、P、F;MgInにH;というようなn型半導性酸化物にドナーとなる異種金属元素を含有させてなるn型導電性酸化物や、NiOにLi;CoOにLi;FeOにLi;MnOにLi;BiにBa;CrにMg;LaCrOにSr;LaMnOにSr;SrCuにK;というようなp型半導性酸化物にアクセプターとなる異種元素を含有させてなるp型導電性酸化物が挙げられる。さらに、KO−11FeにTiを添加してなるイオン−電子複合伝導体や、イオン伝導体として知られる酸化ジルコニウムにY、Sc等の金属をドープ(固溶)してなる酸化ジルコニウム系固溶体も含まれる。通常、固溶させるドナーあるいはアクセプターの濃度は、母体の金属酸化物の金属に対する原子数比で表して、0.01〜20%、好ましくは0.1〜5%である。これら導電性酸化物は、通常、熱線を含む赤外線吸収または反射機能を有するので、熱線遮蔽材料としても有用である。また、上述のLaMnOにSrを含有させてなるp型導電性酸化物のように、前記したペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物等の複合酸化物中の金属元素の一部を任意の異種金属元素で置換してなるものも含まれる。
【0084】
これらの導電性酸化物のうち、n型導電性酸化物は、熱線を含む赤外線吸収能に優れるので、赤外線遮断材料としても有用である。
(2)希薄磁性半導体酸化物
、TiO、Fe、ZnO、In、SnO、BaTiO、MgInなどの酸化物や、これらに異種金属を固溶してなるか酸素欠陥を導入してなるn型又はp型半導体または導電性の酸化物に、Fe、Cr、Mn、Co、Ni等の磁性金属イオンを固溶させることによって得ることができる。
好ましい磁性金属イオンの濃度は、半導体または導電体の酸化物における金属に対する原子数比で、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、特に好ましくは10〜30%である。
(3)蛍光体酸化物
単一酸化物または複合酸化物などの母体結晶酸化物に、発光中心となる金属イオン又は非金属元素の1種または2種以上を固溶させてなる酸化物である。発光中心となる金属イオンとしては、例えば、Mn(II)、Cr(III)、Ag(I)、Cu(II)、Sb(III)、Sn(II)、Pb(II)、Tl(I)等の典型金属元素のイオンや遷移金属元素のイオンの他、Eu(II)、Eu(III)、Nd(III)、Tb(III)、Pr(III)、Yb(III)、Sm(III)、Ho(III)等のランタノイド金属元素のイオンなどを好ましく用いることができ、非金属元素としては、例えば、FおよびCl等のハロゲン原子などを好ましく用いることができる。また、母体結晶酸化物としては、可視光および/または近赤外線領域の光に対して実質的に吸収のない酸化物が好ましく、ZnO、ZnSiO、Y、SnO、In等がより好ましい。
【0085】
ZnOにMn(II)、Sb(III)をZnに対する原子数比で0.1〜5%固溶させてなる蛍光体は、特に、金属イオンが均一分散した固溶体が得られる点で好ましい。
以下に、金属酸化物が有する各種機能・特性と、それを発揮し得る金属酸化物の具体例を列挙する。
高屈折率機能:酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化クロム、アルミナ、および、これらの酸化物に異種金属をドープしてなるものなど。(これらは反射やぎらつきの防止もできる。)
紫外線吸収機能:酸化チタン、酸化第1鉄、酸化亜鉛、酸化セリウムなど。
【0086】
赤外線吸収機能:酸化インジウムにTiやSn等の4価金属元素またはフッ素を固溶した酸化インジウム系固溶体、酸化第2スズにPやSb等の5価金属元素またはフッ素を固溶した酸化第2スズ系固溶体、および、酸化亜鉛にAlやIn等の3価金属元素を固溶した酸化亜鉛系固溶体など。
電気伝導機能:上記の酸化インジウム、酸化第1スズ、酸化第2スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅などのn型、p型半導体として知られる酸化物およびこれらにドーパントまたはアクセプターとなる金属元素を固溶した固溶体、亜酸化銅、チタンブラック等の如く安定な酸化物を還元処理して得られるような低原子価金属の酸化物などの電子伝導性酸化物;酸化ジルコニウム等のイオン伝導性酸化物。
【0087】
熱伝導機能;アルミナ、酸化亜鉛など。
磁気機能:マンガンフェライト(MnFe)やニッケルフェライト(NiFe)等のフェライト、マグネタイト(Fe)などの強磁性酸化物など。
光触媒機能:酸化チタン、酸化亜鉛など。
熱電変換機能:酸化亜鉛にインジウムをドープしてなるもの、酸化亜鉛にアルミニウムをドープしてなるもの、In−ZnO系ホモロガス化合物など。
光電変換用半導体:酸化チタン、酸化亜鉛など。
【0088】
圧電体:酸化亜鉛など。
表面弾性波素子用:酸化亜鉛など。
透明導電膜:赤外線吸収機能を有する金属酸化物と同様。
蛍光体、発光体:酸化亜鉛や酸化亜鉛にマンガンをドープしてなるもの等の酸化亜鉛系のものなど。(紫外線発光体またはグリーン発光体として用い得る。)
エレクトロルミネッセンス:WOやNaxWO等の酸化タングステン系のものなど。
本発明の方法により得られる金属酸化物膜は、金属酸化物の有する上記各種優れた機能・特性により、各種機能性分野における用途に用いることができる。例えば、透明導電、帯電防止、面状発熱体、熱伝導、導電体、半導体、光吸収体、磁性体、電波吸収、電磁波遮断、希薄磁性半導体、紫外線吸収、熱線反射、高屈折率、低屈折率、反射防止、発光・蛍光体、電子線放出素子、(光)触媒、太陽電池用半導体、電極、光電変換素子、熱電変換素子、表面弾性波素子、(強)誘電体、圧電体、バリスターおよびエレクトロルミネッセンス等の機能・特性を有する膜として、フィルム、ガラス、セラミックスあるいは金属等の基材表面に形成して、機能性フィルム等とし、窓材(自動車用、建築用等)、農業用資材、メモリー素子、光源、表示デバイス、情報通信・伝送の各種デバイス、太陽電池などの各種用途分野で有用な材料として好適に用いることができる。
【0089】
また、前述のように、本発明の方法において微粒子を含有するようにして得られた金属酸化物膜は、金属酸化物の種類と微粒子の種類との組み合わせによっては、加算的効果により若しくは相乗的効果により優れた機能を有する膜にすることができる。例えば、▲1▼膜の透明性がより高くなる点で、金属酸化物と微粒子との屈折率の差が小さくなる組み合わせが好ましく、具体的にはその差が0.2以下であることが好ましい。また、▲2▼機械的強度に優れ透明性の高い膜が得られる点で、膜を構成する金属酸化物の主たる含有金属元素と、微粒子が金属微粒子や金属酸化物等の金属含有微粒子の場合の含有金属元素とが同種であることが好ましく、さらには、▲3▼非常に導電性に優れた導電膜が得られる点で、膜を構成する金属酸化物として電子移動度の高い半導体(例えば、酸化亜鉛、チタニアなど)を用い、微粒子としてキャリア濃度の高い導電性微粒子(例えば、ITO、InをドープしたZnO、SbをドープしたSnO、金属など)を用いることが好ましく、▲4▼ZnS系、MnをドープしたZnOなどの蛍光体微粒子を、該蛍光体微粒子よりもバンドギャップの大きいZnOやIn、SiO等の金属酸化物からなる膜中に分散させて得られる膜は発光効率の高い膜として好ましく、▲5▼Fe、Co、Feなど強磁性体微粒子を、ZnO、TiO、In等の半導体酸化物からなる膜中に分散させて得られる膜は、電子スピンと電子の電荷との相互作用を利用する膜として従来にはない機能性を発現しうる点で好ましく、▲6▼高分子ポリマー微粒子やシリカ系微粒子などの屈折率の低い(n<1.5)微粒子を、屈折率の高い(n>1.8)ZnO、ZrO、In、TiOなどの金属酸化物からなる膜中に分散して得られる膜は、光の透過性、特に直線透過性に優れる膜として好ましい。
【0090】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
以下の実施例および比較例における評価方法、評価基準、測定方法等について、具体的に説明する。
<透明溶液の安定性>
○:調製後、常温で1日静置後に、目視で確認できる析出物が観察されなかった。
【0091】
×:調製後、常温で1日静置後に、目視で確認できる析出物が観察された。
評価○に関し、さらに、静置した場合の安定性を評価した。
A:常温で10日静置後に、目視で確認できる析出物が観察されなかった。
B:常温で10日静置後に、目視て確認できる析出物が観察された。
C:常温で3日静置後に、目視で確認できる析出物が観察された。
<膜の結晶性>
基材等の表面に形成された金属酸化物膜について、薄膜X線回折測定法による測定をし、得られた回折パターンから金属酸化物膜を構成する金属酸化物の結晶性について評価した。また、必要に応じて、透過型電子顕微鏡により観察しながら、電子線回折測定を行った。
【0092】
なお、薄膜X線回折の測定装置および測定条件(走査条件)は以下の通りである。
測定装置:RAD−rX(薄膜測定用アタッチメント使用)(リガク社製)出力:55kV、180mA
X線入射角:通常は0.5°に固定(必要に応じて0.2〜0.5°の範囲内で適宜設定して固定)
2θ:3〜100°
走査速度:2θとして2°/minで走査
<膜の状態>
基材等の表面に形成された金属酸化物膜について、目視で判定した。
【0093】
具体的には、金属酸化物膜の透明性については、
のようにして評価した。
<膜厚>
表面に金属酸化物膜が形成された基板等を、基板の厚み方向に(ガラス)カッター等で切断し、膜の断面をSEMにより観察してSEM像より膜厚を測定した。
「透明溶液の調製」
<Znを含有する組成物>
−実施例1−1−
撹拌機、温度計、窒素ガスパージロ(入口と出口)、還流冷却器を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器を用意した。
【0094】
反応器に、酢酸亜鉛10部、メタノール180部、1,2−ブタンジオール9.8部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、混合物を、常温(19℃)より5℃/分の昇温速度で100℃に昇温し、加圧下100℃で1分加熱し、冷却することにより、透明溶液(1)を得た。
透明溶液(1)の安定性はAであった。
−実施例1−2〜1−33−
実施例1−1において、反応器に仕込んだ混合物組成および仕込み量を表1のようにした以外は、実施例1−1と同様の操作を行うことにより、透明溶液(2)〜(33)を得た。いずれも場合も、100℃以下で透明溶液が生成した。
【0095】
透明溶液(2)〜(33)のそれぞれの安定性を評価し、その結果を表1に示した。
−比較例1−1〜1−5−
実施例1−1において、反応器に仕込んだ混合物組成および仕込み量を表1のようにした以外は、実施例1−1と同様の操作を行うことにより、透明溶液(c1)〜(c5)を得た。いずれも場合も、100℃以下で透明溶液が生成した。透明溶液(c1)〜(c5)のそれぞれの安定性を評価し、その結果を表1に示した。
【0096】
−実施例1−34−
実施例1−1において、反応器内を窒素パージした後、冷却器の上部を開放した状態で、混合物を、常温(19℃)より5℃/分の昇温速度で60℃に昇温し、常圧下60℃で1分加熱し、冷却するようにした以外は、実施例1−1と同様の操作により、透明溶液(34)を得た。
透明溶液(1)の安定性はAであった。
−実施例1−35〜1−40−
実施例1−34において、反応器に仕込んだ混合物組成および仕込み量を表2のようにした以外は、実施例1−34と同様の操作を行うことにより、透明溶液(35)〜(40)を得た。
【0097】
透明溶液(35)〜(40)のそれぞれの安定性を評価し、その結果を表2に示した。
−実施例1−41−
実施例1−1で得られた透明溶液(1)100部について、エパボレータにより液温50〜70℃の加熱下で溶媒を減圧留去しながら、シクロヘキサノールに溶媒置換することにより、透明溶液(41)を得た。
得られた透明溶液(41)の安定性はAであった。また、亜鉛濃度(酢酸亜鉛換算濃度)は11wt%であった。
【0098】
−実施例1−42〜1−52−
表3の「透明溶液No」の欄に示された各透明溶液について、実施例1−41と同様の方法により減圧留去しながら、同表に示す置換溶媒に溶媒置換することにより、透明溶液(42)〜(52)を得た。
透明溶液(35)〜(40)のそれぞれの安定性を評価し、その結果を表3に示した。また、亜鉛濃度(酢酸亜鉛換算濃度)も同表に示した。
<Zn以外の金属を含有する組成物>
−実施例1−53−
実施例1−1において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸インジウム無水物16部を用い、化合物/In=3(モル比)とする以外は、実施例1−1と同様にして、透明溶液(53)を得た。
【0099】
得られた透明溶液(53)の安定性はAであった。
−実施例1−54−
実施例1−3において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸銅(II)無水物10部を用い、化合物/Cu=1(モル比)とする以外は、実施例1−3同様にして、透明溶液(54)を得た。
得られた透明溶液(54)の安定性はAであった。
−実施例1−55−
実施例1−6において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸コバルト(II)無水物10部を用い、化合物/Co=2(モル比)とする以外は、実施例1−6同様にして、透明溶液(55)を得た。
【0100】
得られた透明溶液(55)の安定性はAであった。
−実施例1−56−
実施例1−10において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸マンガン(II)10部を用い、化合物/Mn=1(モル比)とする以外は、実施例1−10と同様にして、透明溶液(56)を得た。
得られた透明溶液(56)の安定性はAであった。
−実施例1−57−
実施例1−10において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸マンガン(III)2水和物14部を用い、化合物/Mn=2(モル比)とする以外は、実施例1−10と同様にして、透明溶液(57)を得た。
【0101】
得られた透明溶液(57)の安定性はAであった。
−実施例1−58−
実施例1−15において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸エルビウム(III)4水和物20部を用い、化合物/Er=6(モル比)とする以外は、実施例1−15と同様にして、透明溶液(58)を得た。
得られた透明溶液(58)の安定性はAであった。
−実施例1−59−
実施例1−5において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸イッテルビウム(III)4水和物20部を用い、化合物/Yb=1(モル比)とする以外は、実施例1−5と同様にして、透明溶液(59)を得た。
【0102】
得られた透明溶液(59)の安定性はAであった。
−実施例1−60−
実施例1−16において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸イットリウム(III)4水和物18部を用い、化合物/Y=3(モル比)とする以外は、実施例1−16と同様にして、透明溶液(60)を得た。
得られた透明溶液(60)の安定性はAであった。
−実施例1−61−
実施例1−8において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸鉄(II)無水物9.6部を用い、化合物/Fe=1(モル比)とする以外は、実施例1−8と同様にして、透明溶液(61)を得た。
【0103】
得られた透明溶液(61)の安定性はAであった。
−実施例1−62−
実施例1−11において、酢酸亜鉛の代わりにアクリル酸鉄(III)無水物15部を用い、化合物/Fe=1.5(モル比)とする以外は、実施例1−11と同様にして、透明溶液(62)を得た。
得られた透明溶液(62)の安定性はAであった。
−実施例1−63−
実施例1−4において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸ランタン(III)1.5水和物19部を用い、化合物/La=1.2(モル比)とする以外は、実施例1−4と同様にして、透明溶液(63)を得た。
【0104】
得られた透明溶液(63)の安定性はAであった。
−実施例1−64−
実施例1−10において、酢酸亜鉛の代わりに酢酸マグネシウム4水和物11部を用い、化合物/Mg=0.2(モル比)とする以外は、実施例1−10と同様にして、透明溶液(64)を得た。
得られた透明溶液(64)の安定性はAであった。
<2種以上の金属を含有する組成物>
−実施例1−65−
実施例1−49で得られた透明溶液(49)100部に、実施例1−53で得られた透明溶液(53)7.55部を添加混合し、ZnとInとを含有する透明溶液(65)(In/Zn=3原子%)を得た。
【0105】
得られた透明溶液(65)の安定性はAであった。
−実施例1−66−
実施例1−1において、反応器内に仕込んだ混合物を、酢酸亜鉛18部、アルミニウムsec−ブトキシド0.025部、メタノール90部、エチレングリコール6部およびエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル90部からなる混合物とした以外は、実施例1−1と同様の操作により、ZnとAlとを含有する透明溶液(66)(Al/Zn=0.1原子%)を得た。
透明溶液(66)の安定性はAであった。
【0106】
−実施例1−67−
実施例1−42で得られた透明溶液(42)100部に、実施例1−55で得られた透明溶液(55)14部を添加混合し、ZnとCoとを含有する透明溶液(67)(Co/Zn=5原子%)を得た。
得られた透明溶液(67)の安定性はAであった。
−実施例1−68−
実施例1−62で得られた透明溶液(62)100部に、実施例1−56で得られた透明溶液(56)46.4部とプロピレンカーボネート20部とを添加混合し、FeとMnとを含有する透明溶液(65)(Fe/Mn=2(原子数比))を得た。
【0107】
得られた透明溶液(68)の安定性はAであった。
−実施例1−69−
実施例1−1において、反応器内に仕込んだ混合物を、チタンテトライソプロポキソド18部、酢酸18部およびエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル284部からなる混合物とし、常温(19℃)より5℃/分の昇温速度で100℃に昇温して加圧下100℃で1分加熱したのを、常温(19℃)より10℃/分の昇温速度で150℃に昇温して加圧下150℃で10分加熱するようにした以外は、実施例1−1と同様の操作により、透明溶液(69)を得た。
【0108】
透明溶液(69)の安定性はAであった。
−実施例1−70〜1−73−
実施例1−69において、反応器に仕込んだ混合物組成および仕込み量を表4のようにした以外は、実施例1−69と同様の操作を行うことにより、透明溶液(70)〜(73)を得た。
透明溶液(70)〜(73)のそれぞれの安定性を評価し、その結果を表4に示した。
−比較例1−6〜1−7−
実施例1−69において、反応器に仕込んだ混合物組成および仕込み量を表4のようにした以外は、実施例1−69と同様の操作を行うことにより、透明溶液(c6)〜(c7)を得た。
【0109】
透明溶液(c6)〜(c7)のそれぞれの安定性を評価し、その結果を表4に示した。
「金属酸化物膜の製造」
−実施例2−1−
実施例1−1で得られた透明溶液(1)を調製した後、その1日後および10日後にそれぞれ、ガラス板にバーコーターで塗布し、塗布後、そのガラス板を乾燥機中で120℃で30分間加熱し、基板(1)を得た。
得られた基板(1)の表面に形成された膜は、調製から1日後に塗布した膜、および、10日後に塗布した膜のいずれにおいても、膜厚は0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認され、また、膜の透明性は、調製から1日後に塗布した膜も10日後に塗布した膜も同等であった。
【0110】
−実施例2−2〜2−23−
実施例2−1において、透明溶液(1)の代わりに実施例1−2〜1−11、1−15〜1−21、1−29〜1−33で得られた透明溶液(2)〜(11)、(15)〜(21)、(29)〜(33)を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、基板(2)〜(23)を得た。
得られた基板(2)〜(23)の表面に形成された膜は、すべて、調製から1日後に塗布した膜、および、10日後に塗布した膜のいずれにおいても、膜厚は0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認され、また、膜の透明性は、調製から1日後に塗布した膜も10日後に塗布した膜も同等であった。
【0111】
−実施例2−24〜2−33−
実施例2−1において、透明溶液(1)の代わりに実施例1−12〜1−14、1−22〜1−28で得られた透明溶液(12)〜(14)、(22)〜(28)を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、基板(24)〜(33)を得た。
得られた基板(24)〜(33)の表面に形成された膜は、すべて、調製から1日後に塗布した膜、および、10日後に塗布した膜のいずれにおいても、膜厚は0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0112】
−実施例2−34〜2−40−
実施例2−1において、透明溶液(1)の代わりに実施例1−34〜1−40で得られた透明溶液(34)〜(40)を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、基板(34)〜(40)を得た。
得られた基板(34)〜(40)の表面に形成された膜は、すべて、調製から1日後に塗布した膜、および、10日後に塗布した膜のいずれにおいても、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0113】
−実施例2−41−
実施例1−41で得られた透明溶液(41)の調製後10日後の溶液を、紫外線照射処理によって親水化したPETフィルムにバーコーターで塗布し、塗布後、このPETフィルムを乾燥機中で120℃で30分間乾燥し、基板(41)を得た。
得られた基板(41)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0114】
−実施例2−42−
実施例1−42で得られた透明溶液(42)の調製後10日後の溶液を、ポリイミドフィルムにバーコーターで塗布し、塗布後、このポリイミドフィルムを乾燥機中で120℃で30分間乾燥し、基板(42)を得た。
得られた基板(42)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−43−
実施例1−43で得られた透明溶液(43)の調製後10日後の溶液を、厚さ2mmのポリカーボネート板にバーコーターで塗布し、塗布後、このポリカーボネート板を乾燥機中で120℃で30分間乾燥し、基板(43)を得た。
【0115】
得られた基板(43)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−44−
実施例1−45で得られた透明溶液(45)の調製後10日後の溶液を、シリカ粒子を蒸着させたPENフィルムにバーコーターで塗布し、塗布後、このPENフィルムを乾燥機中で120℃で30分間乾燥し、基板(44)を得た。
得られた基板(44)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0116】
−実施例2−45−
実施例1−46で得られた透明溶液(46)の調製後10日後の溶液を、低圧水銀ランプで紫外線照射したETFEフィルム(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム)にバーコーターで塗布し、塗布後、このETFEフィルムを乾燥機中で120℃で30分間乾燥し、基板(45)を得た。
得られた基板(45)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0117】
以上、実施例2−1〜2−45で得られた基板(1)〜(45)それぞれについて、分光透過率曲線を測定した結果(島津製作所社製の自記分光光度計(製品名:UV−3100)により測定。)、360〜370nm以下の紫外線を有効に遮断することのできる基板であることが判った。
−比較例2−1−
実施例2−1において、透明溶液(1)の代わりに比較例1−1で得られた透明溶液(c1)を用い、また、その調製後1日後および10日後の透明溶液をそれぞれガラス板に塗布したのを、その調製直後および1日後の透明溶液をそれぞれガラス板に塗布するようにした以外は、実施例2−1と同様の操作により、基板(c1)を得た。
【0118】
得られた基板(c1)の表面に形成された膜は、調製直後に塗布して得られた膜、および、1日後に塗布して得られた膜のいずれにおいても、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認されたが、調製後1日後の透明溶液を塗布して得られた膜は、ガラス板表面上で自粉化し、膜として形成されなかった。
−実施例2−46−
実施例1−65で得られた透明溶液(65)の調製後10日後の溶液を、ガラス板にバーコーターで塗布し、塗布後、このガラス板を乾燥機中で180℃で30分間乾燥し、基板(46)を得た。
【0119】
得られた基板(46)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。また、膜の元素分析により、膜中には、InがZnに対して3原子%含有されていることが確認された。
−実施例2−47−
実施例1−66で得られた透明溶液(66)の調製後10日後の溶液を、ガラス板にバーコーターで塗布し、塗布後、このガラス板を乾燥機中で120℃で30分間乾燥し、基板(47)を得た。
【0120】
得られた基板(47)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。また、膜の元素分析により、膜中には、AlがZnに対して0.1原子%含有されていることが確認された。
−実施例2−48−
実施例1−67で得られた透明溶液(67)の調製後10日後の溶液を、ガラス板にバーコーターで塗布し、塗布後、このガラス板を乾燥機中で150℃で30分間乾燥し、基板(48)を得た。
【0121】
得られた基板(48)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。また、膜の元素分析により、膜中には、CoがZnに対して5原子%含有されていることが確認された。
−実施例2−49−
実施例1−68で得られた透明溶液(68)の調製後10日後の溶液を、ガラス板にバーコーターで塗布し、塗布後、このガラス板を乾燥機中で150℃で30分間乾燥し、基板(49)を得た。
【0122】
得られた基板(49)の表面に形成された膜は、膜厚が0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、フェライトに帰属される回折ピークが確認され、また、膜の結晶性である部分の元素分析により、膜中には、マンガンフェライト(MnFe)結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−50−
実施例1−69で得られた透明溶液(69)を調製した後、その3日後および10日後にそれぞれ、ガラス板にバーコーターで塗布し、塗布後、そのガラス板を乾燥機中で180℃で30分間加熱し、基板(50)を得た。
【0123】
得られた基板(50)の表面に形成された膜は、調製から3日後に塗布して得られた膜、および、10日後に塗布して得られた膜のいずれにおいても、膜厚は0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、アナタース型酸化チタンに帰属される回折ピークが確認され、酸化チタン結晶が生成していることが確認され、また、膜の透明性は、調製から3日後に塗布した膜も10日後に塗布した膜も同等に優れていた。
−実施例2−51〜2−54−
実施例2−50において、透明溶液(69)の代わりに実施例1−70〜1−73で得られた透明溶液(70)〜(73)を用い、乾燥機中での加熱温度と加熱時間を表5のようにした以外は、実施例2−50と同様の操作により、基板(51)〜(54)を得た。
【0124】
得られた基板(51)〜(54)の表面に形成された膜は、すべて、調製から3日後に塗布した膜、および、10日後に塗布した膜のいずれにおいても、膜厚は0.1μmであり、薄膜XRD解析した結果、アモルファスであった。なお、電子線回折で解析した結果、実施例2−53ではアルミナ結晶、実施例2−54ではIn結晶であった。
−比較例2−2−
実施例2−50において、透明溶液(69)の代わりに比較例1−6で得られた透明溶液(c6)を用い、その調製後3日後および10日後にそれぞれガラス板上に塗布したのを、その調製直後および1日後に塗布するようにした以外は、実施例2−50と同様の操作により、基板(c2)を得た。
【0125】
得られた基板(c2)の表面に形成された膜は、調製直後に塗布した膜、および、1日後に塗布した膜のいずれにおいても、膜厚は○○○μmであり、薄膜XRD解析した結果、アナタース型酸化チタンに帰属される回折ピークが確認され、酸化チタン結晶が生成していることが確認されたが、調製後1日後の透明溶液を塗布して得られた膜は、ガラス板表面上で多量の白粉を生じ、膜とは言い難いものであった。
【0126】
【表1】
Figure 2004149391
【0127】
【表2】
Figure 2004149391
【0128】
【表3】
Figure 2004149391
【0129】
【表4】
Figure 2004149391
【0130】
【表5】
Figure 2004149391
【0131】
【発明の効果】
本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物は、これを基材に塗布しておいて機材を加熱するか、基材をこれに浸漬しておいてこれを加熱するなどすれば、基材表面に容易に金属酸化物膜を形成することが出来るので、膜形成が非常に便利になる。すなわち、本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物を用いると、生産性や経済性に優れる簡便な方法でより低温で金属酸化物を生成させることができる。そして、本発明にかかる金属酸化物膜形成用組成物は、出発原料が多価アルコールまたはその誘導体を必須としているので、長時間の保管・貯蔵等によっても原料化合物や金属酸化物等の析出等が認められず、均一な溶液状態を保持することができるといった優れた経時安定性を有する。

Claims (4)

  1. 多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属カルボン酸塩とを出発原料とするか、または、多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として基材の表面に金属酸化物を膜として定着させるための金属酸化物膜形成用組成物であって、前記出発原料および/または前記出発原料に由来する成分を必須とする、ことを特徴とする、金属酸化物膜形成用組成物。
  2. 前記多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の前記出発原料に含まれる金属に対する配合割合がモル比で0.1〜8である、請求項1に記載の金属酸化物膜形成用組成物。
  3. 請求項1または2に記載の金属酸化物膜形成用組成物を得る方法であって、
    多価アルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種は、他の出発原料を混合する際か、および/または、混合した後に、他の出発原料に添加するようにする、
    ことを特徴とする、金属酸化物膜形成用組成物の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の金属酸化物膜形成用組成物を50℃以上の温度にすることにより、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させる、金属酸化物膜の形成方法。
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