JP2007055846A - ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法 - Google Patents

ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】第1の薄膜と、この第1の膜の上に第1の薄膜の平均粒径よりも平均粒径が小さい結晶粒子からなる第2の薄膜を形成して、第1の薄膜の表面に緻密な層を形成し、当該膜の高い平坦性を確保すること。
【解決手段】10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜31と、この第1の薄膜31の上に、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する薄膜の塗布液を塗布し更に焼成することにより形成した、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなる第2の薄膜32と、を積層してABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を形成する。第1の薄膜31は空隙が大きいので、第2の薄膜32の塗布液が、第1の薄膜31の表面側の空隙から入り込み、当該空隙は第2の薄膜32が埋め込まれた状態となって、当該領域は緻密な膜となる。
【選択図】 図7

Description

本発明は、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を持つ例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法に関する。
一般にコンピュータのCPU(中央処理ユニット)への電力供給システムは、消費電力をできるだけ抑えるためにプリント基板上のコンデンサから給電される構成とし、こうすることでCPUが稼働するときだけ電力供給を行うようにしている。しかしCPUの動作速度が急速に向上していることから、やがてCPUの動作時にコンデンサからの給電のタイミングが遅れてしまい、結果としてCPUの動作速度が制限されてしまうことになる。このようにコンデンサからの給電が追いつかなくなる原因は、プリント基板上におけるコンデンサとCPUとの距離を実装の都合上ある程度までしか小さくできないことにある。そこでプリント基板の上に、両面に下部電極と上部電極とが設けられた誘電体薄膜からなるコンデンサを実装し、その上にCPUを載せてこれらを直接接続することにより両者の距離を実質ゼロにしようとする試みがある。
このような誘電体薄膜として注目を集めている材質の一つとしてABOx型ペロブスカイト結晶構造を持つ例えばチタン酸バリウムが知られており、その製法としてゾル、ゲル法が知られている(特許文献1)。ゾル、ゲル法とは、チタン酸バリウムの前駆体である有機金属化合物を含む塗布液、より具体的にはBa、Tiを含む例えば金属アルコキシドと有機溶媒とを含む誘電体膜形成用組成物(ゾルゲル材料)である塗布液を基板上に塗布し、加水分解させて金属−酸素−金属結合を生成することで前駆体膜を形成し、その後加熱してペロブスカイト構造をもつ結晶体からなる焼結体を得る手法である。
この方法により得られた薄膜は、クラック耐性が低く、一回の塗布膜厚が100nm以上になるとクラックが発生し、良好な塗布膜を得ることが困難となるため、一回の塗布膜厚を100nm以下にする必要がある。このように膜厚が小さければコンデンサ容量を大きくすることができるが、反面電極間の距離が小さくなってしまうため、リーク電流が大きくなってしまい、結局コンデンサとしては使い物にならなくなってしまう。
このため、多層塗りを行って、チタン酸バリウム薄膜全体の膜厚を大きくするようにしているが、多層塗りで焼成を重ねると塗布膜中のチタン酸バリウム結晶が粒成長を起こし、表面の凹凸が増大する。このため、膜厚を大きく出来る反面、結晶粒の空隙がリークポイントとなり、逆にリーク電流を増大させる結果になる場合がある。従って、結晶粒の空隙を増大させないような成膜方法の確立が切望されている。
この問題の解決案として、予め結晶化したチタン酸バリウムの結晶粒子サイズを100nm程度にし、塗布する手法が提案されている(非特許文献2)。この手法は、上記のゾルゲル材料を特殊な条件で加水分解、分散させた材料を塗布液として用いる手法であり、この塗布液中には平均粒径100nm以下の粒子が分散されている。ここで説明の便宜上このような薄膜をナノ粒子の薄膜と呼ぶことにすると、ナノ粒子のチタン酸バリウム薄膜を形成する場合には、1層の塗布膜の厚さを大きくできるので、焼成回数を少なくすることが可能であり、従ってチタン酸バリウム結晶の粒成長を抑制することが可能となる。
ここで図26に前記ナノ粒子の薄膜11に下部電極12と上部電極13とを備えたコンデンサについて示す。このナノ粒子の薄膜11は、前記平均粒径100nm以下の粒子が分散されている塗布液を塗布し、その後焼成してペロブスカイト構造を有する結晶体を得ることにより形成されるが、この焼成時に薄膜11はポーラス状態になり、図26に示すように、薄膜を形成する結晶粒子14の間に10nm以上の微小な空隙(ボイド)15が発生する。この際ナノ粒子の薄膜11の結晶粒子は大きいので、この空隙15はゾル、ゲル法により得られるチタン酸バリウムの薄膜に形成される空隙よりも大きいものとなる。
一方焼成の際には、下部電極12となる下地の導電性層例えばプラチナ(Pt)膜が例えば800℃もの高温に加熱されるので、このときの熱拡散によりPtがナノ粒子の薄膜11中に形成された空隙15に入り込んでいく。さらにコンデンサを形成するためには、ナノ粒子の薄膜11の表面に、上部電極13となる導電性層例えばアルミニウム(Al)やニッケル(Ni)の層をスパッタにより形成するが、このときスパッタ粒子もナノ粒子の薄膜11中に形成された空隙15に浸透してしまう。このようにナノ粒子の薄膜11の上層側と下層側から、当該膜11中にPt粒子やAl粒子が取り込まれて行くので、これらの粒子が互いに接触して導電路が形成され、結果としてリーク電流が発生してしまう。
コンデンサ用の誘電体膜として利用するためには、リーク電流を低減するため、膜厚を300nm以上にする必要があり、静電容量を大きくすることができない問題がある。従って薄膜でリーク電流を抑制することができる新たな成膜手法の確立が要求されている。
このためコンデンサの製品化を実現するには、リーク特性をより一層向上させる必要があり、薄膜中への下部電極や上部電極を構成する金属の取り込みをより一層抑える工夫をしなければならない。
特開平8−316433号公報(段落0021) 福岡県工業技術センター研究報告 No14(2004年インターネット掲載)
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、表面が緻密で、かつ薄膜であってもリーク電流が小さいABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜、及びこのような誘電体膜の形成方法を提供することにある。
このため本発明は、10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜の上に、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を形成するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法であって、
前記第2の薄膜を形成する工程は、
基板上に形成された前記第1の薄膜の表面全体に溶剤を塗布する工程と、
次いで第1の薄膜の表面全体に前記溶剤が存在する状態で、前記第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を当該第1の薄膜の中央部に供給すると共に、基板を回転させて塗布液を第1の薄膜の表面に広げる工程と、
その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むことを特徴とする。
また本発明では、前記第2の薄膜を形成する工程は、
当該第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を前記第1の薄膜の中央部に供給し続けることにより周縁部に行き渡らせて塗布液の液盛りを行う工程と、
続いて基板を回転させてその遠心力により塗布液を第1の薄膜の表面に広げる工程と、
その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むものであってもよい。
さらに本発明では、前記第2の薄膜を形成する工程は、
塗布液ノズルを左右方向に移動させて、基板上に形成された前記第1の薄膜の表面に、第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を直線状に塗布する動作と、基板を塗布液ノズルに対して前後方向に予め設定されたピッチで相対的に移動させる動作とを繰り返すことにより、前記第1の薄膜の表面に直線状の塗布液ラインを多数前後方向に並べる工程と、
次いで前記塗布液が塗布された基板を減圧雰囲気に載置して、前記塗布液に含まれる溶剤を蒸発させる減圧乾燥工程と、
その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むものであってもよい。
さらにまた本発明では、前記第2の薄膜を形成する工程は、
塗布液ノズルを左右方向に移動させて、基板上に形成された前記第1の薄膜の表面に、第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を直線状に塗布する動作と、基板を塗布液ノズルに対して前後方向に予め設定されたピッチで相対的に移動させる動作とを繰り返すことにより、前記第1の薄膜の表面に直線状の塗布液ラインを多数前後方向に並べる工程と、
次いで前記塗布液が塗布された基板が置かれる雰囲気を減圧雰囲気に設定する第1の減圧乾燥工程と、
次いで前記塗布液が塗布された基板が置かれる雰囲気を大気圧雰囲気に設定する大気圧工程と、
次いで前記塗布液が塗布された基板が置かれる雰囲気を再び減圧雰囲気に設定して、前記塗布液に含まれる溶剤を蒸発させる第2の減圧乾燥工程と、
その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むものであってもよい。
ここで前記基板上に第1の薄膜を形成する工程は、
第1の塗布液を基板の上に塗布する第1の塗布工程と、
次いで第1の塗布液が塗布された基板を加熱して、この第1の塗布液に含まれる溶剤を蒸発させ、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう第1の加熱工程と、
その後、前記基板を加熱して10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜を得る第1の焼成工程と、を含むものである。
また前記ABOxペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜は、金属種Aがリチウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタンから選ばれる一種以上の金属であり、金属種Bがチタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブから選ばれる一種以上の金属である、ABOX型ペロブスカイト結晶構造を有する薄膜であり、前記第2の薄膜の塗布液は、一種以上の金属を含む金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と溶剤とを含むものである。また前記第1の塗布液は、前記塗布液を加水分解することにより得られる、ABOx(xは1以上の整数)型の結晶構造を有し、平均粒径100nm以下の粒子と溶剤とを含むものである。
以上において本発明のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜は、10nm以上の空隙を有し、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜と、この第1の薄膜の上に、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する薄膜の塗布液を塗布し更に焼成することにより形成した、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜と、を含むものであるが、第1の薄膜はポーラス構造であって多数の空隙を有するので、第1の薄膜の上に第2の薄膜の塗布液を塗布するときに、第1の薄膜の表面側の空隙に前記塗布液が入り込み、これにより第1の薄膜の表面側の空隙は、第2の薄膜で埋め込まれた状態となる。この際、第1の薄膜の空隙に入り込んでいる空気等の気体を除去してから、当該空隙に前記塗布液を浸透させることにより、より第1の薄膜の表面側の空隙に前記塗布液が入り込みやすくなる。このため第1の薄膜の表面には緻密な層が形成され、かつABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の表面の高い平坦性を確保することができる。
またこのABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の両面に下部電極と上部電極を形成してコンデンサを形成した場合には、下部電極を構成する金属層が熱拡散により第1の薄膜の下部側から浸透してきたとしても、第1の薄膜と第2の薄膜との境界付近に緻密な膜が形成されているので、当該境界を越えて第2の薄膜側に浸透して行きにくい。一方第2の薄膜の表面に上部電極を構成する金属層をスパッタしたとしても、このスパッタ粒子が第1の薄膜と第2の薄膜との境界領域を超えて第1の薄膜側に浸透して行きにくい。このため第1の薄膜と第2の薄膜とにより構成されるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜内の電路の形成が抑えられるので、リーク電流の発生を抑制することができる。
先ず本発明のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜について図1に基づいて説明する。このABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜は例えば容量素子(コンデンサ)の誘電体膜として用いられるので、コンデンサに適用した例に基づいて説明する。このコンデンサは、図1(a)に示すように、例えばPtよりなる下部電極21と、例えばAlよりなる上部電極22との間に、例えば第1の薄膜31と、第2の薄膜32とを、第1の薄膜31の上層側に第2の薄膜32が形成されるように、互いに積層して形成したABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を備えて構成されている。
前記第1の薄膜31とは、10nm以上の空隙を有し、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体薄膜(i)である。本発明における第1の薄膜31は、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する平均粒径100nm以下の粒子と有機溶媒とを含む第1の塗布液である誘電体形成用組成物(b)を基板に塗布し、加熱することにより作成してもよく、例えば膜厚は200〜300nm程度である。
また、前記第2の薄膜32とは、金属種A及び金属種Bを含む金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体、および金属水酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の化合物と有機溶媒とを含む塗布液である誘電体形成用組成物(a)を塗布し、700℃〜900℃で焼成することで形成される誘電体薄膜(ii)であり、例えば膜厚は100nm程度である。
ここで前記金属種Aは、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、La(ランタン)から選ばれる一種以上の金属であり、金属種BはTi(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)から選ばれる一種以上の金属である。
さらに本発明では、例えば図1(b)に示すように、前記誘電体膜3として、下部電極21側から第2の薄膜32と、第1の薄膜31と、第2の薄膜32とを互いに積層して形成した膜を用いるようにしてもよいし、例えば図1(c)に示すように、下部電極21側から第1の薄膜31と、第2の薄膜32と、第1の薄膜31とを互いに積層して形成した膜を用いるようにしてもよい。
このようなコンデンサは、例えば図2に示すように、プリント基板23上に実装されると共に、このコンデンサの上にコンピュータのCPU24が搭載され、当該コンデンサとCPU24とが直接接続される構成に適用することを目的にしている。このような構成では、コンデンサとCPU24との距離が実質ゼロになることから、コンデンサからCPU24への給電のタイミングの遅れが抑制され、CPUの動作速度の低下が抑えられる。
続いて本発明のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の形成方法について、図1(a)に示すコンデンサを形成する場合を例にして、図3〜図7を用いて説明する。またここでは、前記誘電体膜3として、金属種AがBaであり、金属種BがTiであるチタン酸バリウム(BaTiO3)薄膜により、第1の薄膜32及び第2の薄膜32を形成する場合を例にして説明する。
先ず表面に例えばPtよりなる下部電極21が形成された基板23の下部電極21の表面に第1の薄膜31を形成する処理を行なう。この処理では、例えば後述する塗布ユニットにおいて、図3(a),(b)に示すように、例えば表面に下部電極21が形成された基板23の裏面側中心部をスピンチャック25により保持し、当該基板23の下部電極21の表面に、第1の薄膜の塗布液である第1の塗布液(誘電体形成用組成物(b))の塗布処理を行なう。
ここで第1の薄膜31は、10nm以上の空隙を有し、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体薄膜(i)であれば、どのように作成してもよいが、ここではABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する平均粒径100nm以下の粒子と有機溶媒とを含む誘電体形成用組成物(b)を塗布し、加熱することにより作成する例を示す。
誘電体形成用組成物(b)は、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する平均粒径100nm以下の粒子を有機溶媒(a)で精製する工程(精製工程)と、精製後の粒子を有機溶媒(a)と分離した後、有機溶媒(b)に分散させる工程(分散工程)とを有する製造方法により製造することができる。
より具体的には、先ず下記の工程(I)及び(II);
(I)前記ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する粒子を構成する金属種Aを含む、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体、金属水酸化物から選ばれる少なくとも一種と、
前記ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する粒子を構成する金属種Bを含む、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体、金属水酸化物から選ばれる少なくとも一種を、有機溶媒に溶解させる溶解工程、
(II)前記溶解工程にて調整した溶液中に水を添加し、溶液中の前駆体を加水分解して結晶粒子を得る加水分解工程、
によりABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する平均粒径100nm以下の粒子を作製する。
その後、当該粒子を用いて、
(III)前記加水分解で得られた結晶粒子を有機溶媒(a)で精製する精製工程、
(IV)精製後の粒子を有機溶媒(a)と分離した後、有機溶媒(b)に分散させる分散工程、
を経て、本発明の誘電体薄膜(i)を形成するための誘電体形成用組成物(b)を製造することができる。
以下に詳細を説明する。
本発明では、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する粒子を構成する、金属種がLi,Na,Ca,Sr,Ba,Laから選ばれる一種以上の金属であり、金属種BがTi,Zr,Ta,Nbから選ばれる一種以上の金属であることが好ましい。これらのうちでは、金属種AがSr,Baから選ばれる一種以上の金属であり、金属種BがTiであることがより好ましい。
前記溶解工程(I)では、原料としてこれらの金属種Aの金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体から選ばれる少なくとも一種と、金属種Bの金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体から選ばれる少なくとも一種とを、常法により有機溶媒に溶解させて使用する。
この際、溶液中の金属種Aの濃度は0.1〜0.7mmol/g、好ましくは0.25〜0.55mmol/g、より好ましくは0.4〜0.5mmol/gであり、金属種Bの濃度は0.1〜0.7mmol/g、好ましくは0.25〜0.55mmol/g、より好ましくは0.4〜0.5mmol/gである。
前記金属アルコキシドとしては、例えばジメトキシバリウム、ジエトキシバリウム、ジプロポキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジブトキシバリウム、ジイソブトキシバリウムなどのバリウムアルコキシドや、
ジメトキシストロンチウム、ジエトキシストロンチウム、ジプロポキシストロンチウム、ジイソプロポキシストロンチウム、ジブトキシストロンチウム、ジイソブトキシストロンチウムなどのストロンチウムアルコキシドや、
テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタン等を好適に使用することができる。
前記金属カルボキシレートとしては、例えば酢酸バリウム、プロピロン酸バリウム、2−メチルプロピオン酸バリウム、ペンタン酸バリウム、2,2−ジメチルプロピオン酸バリウム、ブタン酸バリウム、ヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸バリウム、オクチル酸バリウム、ノナン酸バリウム、デカン酸バリウム等のバリウムカルボキシレートや、
酢酸ストロンチウム、プロピロン酸ストロンチウム、2−メチルプロピオン酸ストロンチウム、ペンタン酸ストロンチウム、2,2−ジメチルプロピオン酸ストロンチウム、ブタン酸ストロンチウム、ヘキサン酸ストロンチウム、2−エチルヘキサン酸ストロンチウム、オクチル酸ストロンチウム、ノナン酸ストロンチウム、デカン酸ストロンチウムなどのストロンチウムカルボキシレート等を好適に使用することができる。
金属錯体としては、例えばチタンアリルアセトアセテートトリイソプロキサイド、チタンジブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロキシサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジブトキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等を好適に使用することができる。
金属水酸化物は、金属原子に水酸化物イオンが配位した化合物であり、下記一般式(1)で表される。
(OH)・xHO ・・・式(1)
〔式(1)中、Mは、Li,Na,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Ta,Nbから選ばれる金属を表しており、aは、金属Mの価数に応じた1〜7の整数である。xは1〜8の整数である。〕
前記金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体を溶解する際に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等を挙げることができる。
前記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
多価アルコール系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
エーテル系溶媒としては、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等を挙げることができる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等を挙げることができる。
エステル系溶媒としては、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、酪酸エチル、オキシイソ酪酸エチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等を挙げることができる。
上記の溶媒は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なおこの溶解工程(I)に精製された溶液は、第2の薄膜の塗布液である誘電体形成用組成物(a)に相当する。
次に加水分解工程(II)において、前記溶解工程(I)で調製した溶液中に水を液体状態で添加することにより、溶液中の前駆体を加水分解して結晶化を行う。加水分解の際には、反応効率の点からは、溶液温度を通常−78℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃、より好ましくは0〜50℃の範囲とすることが望ましい。
また、加水分解の際に、溶液へ添加する水の量は、金属種Aの1モルに対して通常5〜300倍モル、好ましくは10〜200倍モル、より好ましくは20〜100倍モルの量であることが望ましい。このような量で水を添加すると、粒子の結晶性が向上すると共に、分散性も良好となるため好ましい。
さらに、加水分解工程における溶液への水の添加方法は、直接、水のみを溶液中に添加してもよいし、上記の有機溶媒1種を用いて水と混合して添加してもよいし、あるいは上記有機溶媒2種以上を組み合わせて水と混合して添加してもよい。
また、添加する水に触媒が含まれていてもよい。この場合の使用可能な触媒としては、例えば無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸)、有機酸(例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸)等の酸触媒や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の無機または有機アルカリ触媒等を挙げることができる。
水を添加した後、生成する加水分解・縮合物を通常−10〜200℃、好ましくは20〜150℃、より好ましくは30〜100℃の温度に、通常0.5〜200時間、好ましくは1〜100時間、より好ましくは3〜20時間保持することが望ましい。
上記溶解工程(I)、加水分解工程(II)を得ることによりABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する平均粒径100nm以下、好ましくは平均粒径20〜80nmの粒子を得ることができる。
なお精製工程(III)は、前記加水分解工程(II)で得られた結晶粒子を有機溶媒で精製する工程である。結晶粒子を有機溶媒で精製する方法は、精製後、結晶粒子と有機溶媒とを分離することが可能であれば、どのような手法を用いてもよい。結晶粒子の精製方法としては、例えば、有機溶媒を結晶粒子に加え、デカンテーションあるいは遠心分離によって該結晶粒子を沈降させて、上澄液を除去し、再度、有機溶媒を沈降した結晶粒子に加えて加熱する工程を、2〜5回繰り返す方法を用いることができる。精製工程(III)において、使用する有機溶媒としては、アルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等を挙げることができる。これらの有機溶媒については、前記溶解工程(I)の項で例示したものを用いることができる。
また分散工程(IV)は、前記精製工程(III)により精製された結晶粒子を有機溶媒に分散させる工程である。分散工程(IV)では、前記精製工程(III)により得られた結晶粒子を洗液である有機溶媒と分離した後、新たな有機溶媒に投入し、分散させて結晶粒子分散体を作製することができる。この場合、結晶粒子を有機溶媒中に分散させる方法は、該結晶粒子を有機溶媒中に均一に分散させることが可能であれば、どのような手法を用いてもよい。例えば、機械的撹拌、あるいは超音波を使用した撹拌を行ないながら、結晶粒子を溶媒中に分散させる。
分散に用いられる有機溶媒としては、精製工程で用いた有機溶媒として例示したものと同様の、アルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等を挙げることができる。また、分散に用いられる有機溶媒は、精製に用いた有機溶媒と同じでもよく、異なってもよい。結晶粒子分散体の安定性を考慮すると、該結晶粒子分散体中の結晶粒子の含有量は、固形分濃度として結晶粒子分散体全体の1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。
分散工程(IV)では、結晶粒子の分散を容易にするために、精製後の結晶粒子を有機溶媒に分散させる際に、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を分散剤として用いてもよい。かかる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、エチレンジアミンのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン縮合物(プルロニック型)、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリビニルルピロリドン、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー等を使用することができる。分散剤の種類と添加量は、結晶粒子の種類と結晶粒子を分散させる溶媒の種類により適宜選定して使用することができるが、得られる誘電体膜の誘電特性を考慮すると、粒子100gに対して、好ましくは0.001〜10g、より好ましくは0.005〜3g、さらに好ましくは0.01〜1gの範囲である。
こうして作製された第1の塗布液である誘電体形成用組成物(b)を基板の下部電極21の表面に、前記第1の塗布液を塗布するときには、例えば基板23のほぼ中央に、例えば塗布液ノズル26により前記第1の塗布液を供給し(図3(a)参照)、次いで図3(b)、(c)に示すように、基板23をスピンチャック25により例えば2000rpm程度の回転数で回転させることにより、回転の遠心力によって前記第1の塗布液を基板23の周縁側に向けて伸展させ、この後基板23を例えば1500rpm程度の回転数で回転させることにより、余分な第1の塗布液を振り切って、こうして基板23の下部電極21の表面に例えば200nmの厚さの第1の塗布液の塗布膜31aを形成する。
ここで塗布液の変性の様子を模式的に図5に示すと、塗布液をウエハに塗布したときには、図5(a)に示すように、Baを含む化合物とTiを含む化合物との粒子40の大部分は溶媒41中に分散された状態になっており、一部がチタン酸バリウムを生成しているものと推察される。
次いで後述する加熱ユニットにおいて、図4(a)に示すように、基板23の下部電極21の表面に形成された第1の塗布液の塗布膜31aを、例えば250℃で1分間加熱することにより、焼成の前処理であるベーク処理を行ない、前記塗布膜に含まれる有機溶媒40を揮発させる(第1の加熱工程)。このベーク処理により、加水分解が起こって塗布膜がゲル化し、さらに縮重合が起こって、例えば図5(b)に示すように、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムの前駆体膜となるチタン酸バリウムの網状構造が形成されるものと推察される。また有機溶媒40が蒸発するときに、塗布膜中のバインダーの作用により結晶粒子の凝集が発生し、結晶粒子が大きくなる。
続いて後述する加熱炉において、図4(b)に示すように、前記基板23の下部電極21の表面に形成された第1の塗布液の塗布膜31aを、例えば800℃で60分間加熱する(第1の焼成工程)。この焼成処理により、アモルファスな状態から結晶化され、図5(c)に示すように、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウム膜よりなる第1の薄膜31が形成される。ここでこのABOx型ペロブスカイト結晶構造は、酸素の過飽和や不足によりABOxのxは2.5〜3.5になる。
このようにして形成された第1の薄膜31は、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有し、平均粒径50nm以上100nm以下のチタン酸バリウムの結晶粒子を含む薄膜であり、例えば膜厚は200nm〜300nm程度である。また焼成後の第1の薄膜31はポーラス構造であって、10nm以上の大きさの微細な空隙が多数形成されている。
続いてこのようにして形成された第1の薄膜31の表面に、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有するチタン酸バリウムの第2の薄膜32(誘電体薄膜(ii))を形成する。先ず図6(a)に示すように、基板23の第1の薄膜31の表面に、前記第2の塗布液を塗布し、第2の塗布膜32aの形成を行なう(塗布膜形成工程)。本発明は、この第2の塗布膜32aの形成に特徴があるので、後に詳述する。なお第2の塗布液である誘電体形成用組成物(a)は、前記誘電体形成用組成物(b)を作製するときの溶解工程(I)により生成される。この際、誘電体形成用組成物(a)の濃度が大きすぎると、後述するように第1の薄膜31の空隙に誘電体形成用組成物(a)が入り込んでいかないため、誘電体形成用組成物(a)に含まれる金属種Aの濃度が0.1〜0.7mmol/gであり、金属種Bの濃度が0.1〜0.7mmol/gであることが望ましい。さらに後述するように、第1の薄膜31の空隙により誘電体形成用組成物(a)を浸透させるためには、有機溶媒としては、第1の薄膜31に対して濡れ性が良好な、既述のアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等を用いることが望ましい。
次いで図6(b)に示すように、後述する加熱ユニットにおいて、基板23の表面に形成された第2の塗布液の塗布膜32aを、例えば250℃で1分間加熱することにより、焼成の前処理であるベーク処理を行ない、前記塗布膜に含まれる有機溶剤を揮発させる(加熱工程)。このベーク処理により、加水分解と、縮重合が起こって、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムの前駆体膜となるチタン酸バリウムの網状構造が形成される。
続いて図6(c)に示すように、後述する加熱炉において、前記基板23の表面に形成された第2の塗布液の塗布膜32aを、700℃〜900℃の温度例えば800℃で60分間焼成する(焼成工程)。この焼成処理により、アモルファスな状態から結晶化され、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウム膜よりなる第2の薄膜32が形成される。ここでこのABOx型ペロブスカイト結晶構造は、酸素の過飽和や不足によりABOxのxは2.5〜3.5になる。
このようにして形成された第2の薄膜32は、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有し、第1の薄膜31よりも平均粒径が小さいチタン酸バリウムの結晶粒子からなる薄膜であり、前記結晶粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下であって、例えば膜厚は100nm程度である。ここで前記結晶粒子の平均粒径は、本発明者らが、SEM(走査電子顕微鏡、日立ハイテク社製)により撮像した写真に基づいて概算したものである。この第2の薄膜32においても、焼成後はポーラス構造となり、第1の薄膜31の空隙よりもさらに微細な空隙が多数形成されている。
次いで図示しないスパッタ装置にて、図6(d)に示すように、第2の薄膜32の上方側から例えばAl又はNiをスパッタすることにより上部電極22を形成し、こうして図1(a)に示す構成の、下部電極21と上部電極22との間に、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを下側からこの順序で積層してなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を備えたコンデンサが製造される(図6(e)参照)。
このような方法では、第1の塗布液は、第2の塗布液を加水分解して分散させた特殊な溶液であるので、第1の塗布液の塗布膜31aに対してベーク処理を行なって塗布膜31a中の有機溶剤を蒸発させるときに粒子の凝集が起こるので、第1の薄膜31は第2の薄膜32とほぼ同様のプロセスにより形成されるとしても、第1の薄膜31を構成する結晶粒子は平均粒径が50nm以上100nm以下と、第2の薄膜32を構成する結晶粒子よりも大きくなる。このため一回の第1の塗布液の塗布により、例えば200nm〜300nm程度の膜厚を確保することができる。
一方第2の薄膜32は、一回の塗布により、例えば100nm程度の膜厚を確保することができるので、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを1層ずつ積層することにより、300nm〜400nmの厚さのABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を確保することができる。
このようにナノ粒子の薄膜よりなる第1の薄膜31と、通常のゾルゲル法により得られる第2の薄膜32とを組み合わせて設けることにより、所望の厚さのABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を形成するときの積層数を少なくでき、所望のコンデンサ容量を確保しつつ、加熱や焼成の回数を少なくすることによって、チタン酸バリウムの粒成長を抑制し、これが原因となるリーク電流の発生を抑えることができる。
また第1の薄膜31の上層側に第2の薄膜32を形成することにより、第1の薄膜が有する空隙を第2の薄膜で埋めて、第1の薄膜の表面に緻密な層を形成し、かつABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の表面の高い平坦性を確保することができる。つまり第1の薄膜31は既述のように焼成時にポーラス構造となり、薄膜を構成する結晶粒子の平均粒径が50nm以上100nm以下であって、第2の薄膜32を構成する結晶粒子よりもかなり大きいので、図7(a)に第1の薄膜31の表面の一部を示すように、第1の薄膜31中の結晶粒子40,40間に形成される空隙42は10nm以上の大きさがある。このため第1の薄膜31の表面は、ポーラス構造の空隙の存在による凹凸があり、しかも結晶粒子40と空隙42が共に大きいので、平坦性が悪い状態である。
しかしながら第1の薄膜31の空隙42は第2の塗布液に含まれる第2の薄膜32の前駆体となる粒子43よりも大きいので、第1の薄膜31の上層に第2の薄膜32を形成するときに、図7(b)に示すように、第1の薄膜31の表面に第2の塗布液を塗布する工程において、第1の薄膜31の表面側に形成された空隙42に第2の塗布液に含まれる、前記前駆体となる粒子43が入り込み、こうして第1の薄膜31の内部に前記粒子43が浸透していく。これにより例えば図7(c)に示すように、第1の薄膜31の、第2の薄膜32との境界領域では、第1の薄膜31に形成された空隙42に第2の薄膜32が埋め込まれた状態となって、前記第1の薄膜31の空隙42が第2の薄膜32で塞がれ、この領域では、微小な結晶粒子で構成された第2の薄膜よりも膜が緻密なものとなると推察される。
実際に、本発明者らが、TEM(透過電子顕微鏡、日立ハイテク社製)及びSEM(走査電子顕微鏡、日立ハイテク社製)により観察したところ、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液が入り込んでいる様子が観察された。そしてこのように第1の薄膜31の表面に形成された空隙42が第2の塗布膜32により埋め込まれるので、第1の薄膜31の表面の平坦性が向上する。そして第2の薄膜32は、平坦性の高い第1の薄膜31の表面に形成されることから、当該薄膜32の表面の平坦性も確保しやすくなる。
また第1の薄膜31の上に第2の薄膜32を形成することによって、薄膜のリーク特性を向上させることができる。つまり第1の薄膜31の表面には第2の薄膜32が形成されており、この第2の薄膜32の結晶粒子は既述のように平均粒径が20nm程度とかなり小さいので、焼成によりポーラス構造となったとしても、これにより形成される空隙はかなり小さい。
従って第2の薄膜32の表面にAlやNiをスパッタして上部電極22を形成する工程を行なっても、第2の薄膜32の空隙が小さいため、スパッタ粒子が入り込みにくい。このため第1の薄膜31の焼成時や第2の薄膜32の焼成時に、下部電極21のPtが熱拡散により第1の薄膜31の下部側から浸透してきたとしても、このPt粒子とスパッタ粒子とが接触しにくく、これによりこれら粒子の間で導電路が形成されにくくなり、リーク電流の発生が抑えられる。
さらに次のようなことからもリーク特性の向上を図ることができる。つまり第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界には、既述のように緻密な層を形成されているので、下部電極21のPtが熱拡散により第1の薄膜31の下部側から浸透してきたとしても、第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界付近を越えて第2の薄膜32側に浸透して行きにくい。一方第2の薄膜32の表面にAlやNiをスパッタして上部電極22を形成する工程において、仮にAlが第2の薄膜32内に浸透してきたとしても、第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界領域は第2の薄膜32よりも緻密であるので、当該領域を超えて第1の薄膜31側に浸透して行きにくい。このため第1の薄膜31と第2の薄膜32とにより構成されるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の縦方向の導電路の形成が抑えられるので、結果としてリーク電流の発生を抑制することができる。
なお図1(b)や図1(c)に示す構造のコンデンサでは、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを積層することにより、所望の厚さのABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜を得ることができ、これにより所望のコンデンサ容量を確保しつつ、第1の薄膜31の表面に第2の薄膜32が形成されているので、既述のように第1の薄膜31の表面が緻密な膜となり、これによりリーク電流の発生が抑制されると共に、第1の薄膜31の表面の平坦性を高めることができる。
続いて第2の薄膜32の塗布膜形成工程の好適な例について以下に説明する。既述のように本発明では、第1の薄膜31の表面に第2の薄膜32を形成することにより、第1の薄膜31の空隙42に第2の薄膜32を充填するものであるが、第2の薄膜32の塗布液は粘度が高いために、第1の薄膜31の上に直接第2の塗布液をスピンコーティングにより塗布しようとすると、前記第1の薄膜31の空隙42内に浸透して行きにくい。この理由については、第2の塗布液の塗布前には、前記空隙42には空気等の気体が充填された状態であり、この気体が前記空隙42から出て行かないと、第2の塗布液が前記空隙42に浸透して行きにくいためであると推察される。以下にこの点を改善し、第1の薄膜31の空隙42内により浸透しやすい第2の塗布液の塗布手法について記載する。
以下に塗布膜形成工程の第1の実施の形態について説明する。先ずこの方法を実施するための塗布装置である第1の塗布ユニット5について図8を用いて説明すると、図中51は、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wの裏面側中央部を吸引吸着して水平に保持するための、鉛直軸回りに回転自在及び昇降自在に構成されたスピンチャックである。スピンチャック51に保持されたウエハWの周縁外側には、このウエハWを囲むようにして上部側が開口するカップ体52が設けられており、このカップ体52の底部側には凹部状をなす液受け部53がウエハWの周縁下方側に全周に亘って設けられている。図中54aは、塗布液などのドレインを排出するための排液路、54bは排気路である。
図中55は、前記スピンチャック51に保持されたウエハWに対して第2の塗布液を供給するための塗布液ノズル56と、第2の塗布液に含まれる有機溶剤例えばシンナー液を供給するための溶剤ノズル57とを一体に設けたノズルユニットであり、このノズルユニット55は昇降機構58aにより昇降自在、X方向に伸びるガイドレール58bに沿って移動機構58cによりX方向に移動自在に設けられ、ウエハWに対して塗布液やシンナー液を供給する位置(図8(a)に示す位置)と、カップ52の外側の待機位置(図8(b)に示す位置)との間で移動可能に設けられている。
また前記塗布液ノズル56には、バルブV1を備えた塗布液供給路56aを介して第2の塗布液の供給源56bが接続され、溶剤ノズル57には、バルブV2を備えた溶剤供給路57aを介して前記溶剤であるシンナー液の供給源57bが接続されている。この塗布ユニット5は、塗布液をスピンコーティングにより塗布するものであり、上述の第1の薄膜31の第1の塗布液も、この装置を用いて塗布することができる。
続いてこの第1の塗布ユニット5にて行なわれる、第2の塗布膜の塗布膜形成工程の一例について説明する。先ずスピンチャック51をカップ52の上方側に位置させておいて、図示しない搬送手段により搬送されたウエハWを図示しない昇降ピンとの協働作用によりスピンチャック51上に受け渡した後、スピンチャック51を図8(a)に示す処理位置まで下降させる。ここで当該第1の塗布ユニット5に搬送されるウエハWは、ウエハWの上に第1の薄膜31が形成されたものである。
次いで図9(a)に示すように、溶剤ノズル57の先端の吐出口がスピンチャック51に保持されたウエハWの中心に対向するようにノズルユニット55を移動させて、例えばウエハWを回転させない状態で、ウエハWの中心に溶剤ノズル57からシンナー液45を供給する。このようにするとシンナー液45は、ウエハWの中心から外方に向けて同心円状に徐々に広がっていき、ウエハWの全面に塗布された状態になる。
次いで図9(b)に示すように、ウエハW表面にシンナー液45が存在する状態で、塗布液ノズル56の先端の吐出口がスピンチャック51に保持されたウエハWの中心に対向するようにノズルユニット55を移動させて、ウエハWを例えば100〜1000rpm程度の回転数で回転させながら、ウエハWの中心に塗布液ノズル56から第2の塗布液46を供給する。このようにすると第2の塗布液46は、回転の遠心力によりウエハWの中心から外方に向けて進展していき、ウエハWの全面に塗布される。
次いで図9(c)に示すように、ウエハWを例えば1500rpm程度の回転数で回転させることにより、余分な第2の塗布液46を振り切った後、図9(d)に示すように、ウエハWを例えば2000rpm程度の回転数で回転させることにより第2の塗布液46を乾燥させ、こうしてウエハWの第1の薄膜31の表面に例えば180nmの厚さの第2の塗布液の塗布膜32aを形成する。この状態では、第2の塗布膜32a中のBaを含む化合物とTiを含む化合物との粒子の大部分は溶剤中に分散された状態になっており、一部がチタン酸バリウムを生成しているものと推察される。このように塗布膜形成工程を行なった後、既述のような焼成の前処理である加熱工程と、焼成工程とを引き続いて行なうことによって第2の薄膜32が形成される。
このような手法で塗布膜形成工程を行なうと第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46が入り込みやすいという効果がある。つまりシンナー液45を塗布する前は図10(a)に示すように、第1の薄膜31の空隙42に空気44が入りこんでいる状態であるが、このような第1の薄膜31の表面にシンナー液45を塗布すると、シンナー液45は2−メトキシエタノールであるので、図10(b)に示すように、第1の薄膜31の空隙42に入り込んでいる空気44と置換されやすく、第1の薄膜31の空隙42がシンナー液45で満たされている状態となる。
またこの際ウエハWを回転させない状態で、シンナー液45を供給し続けることによって、シンナー液45のウエハWの中心から外方へ向かう液流れを作り、これによってウエハW上の第1の薄膜31の全面にシンナー液45を塗布している。このためウエハWを回転させながらシンナー液45を塗布する場合よりも、シンナー液がゆっくりと浸透されつつ塗布されるので、第1の薄膜31の空隙42中の空気44とシンナー液45との置換が行なわれやすい。なお例えば20rpm以下の低回転であっても、同じ効果でかつ、時間を短縮できる。
そして第1の薄膜31の表面に前記シンナー液45が存在する状態で、第2の塗布液46を塗布すると、図10(c)、図10(d)に示すように、第1の薄膜31の空隙42ではシンナー液45と第2の塗布液46とが置換される。つまり前記シンナー液45と第2の塗布液46との間では、液体と液体との置換であるので、第2の塗布液46と空気44との間のような、液体と気体との置換に比べて格段に速やかに置換が進行する。
このため、第1の薄膜31の表面にシンナー液45を塗布し、このシンナー液45が揮発しないうちに第2の塗布液46を塗布することにより、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46を速やかに充填することができる。これによりこの手法にて塗布膜形成工程を実施した場合には、第2の塗布液46をスピンコーティングにより塗布することにより、第2の塗布液の省量化や塗布時間の短縮等を図りながらも、第1の薄膜43の表面側の空隙42が第2の薄膜32で埋め込まれやすく、このため第1の薄膜32の表面にはより緻密な層が形成され、かつABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の表面の高い平坦性を確保することができる。
またこの誘電体膜3の両面に下部電極21と上部電極22とを形成してコンデンサを形成した場合には、第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界付近により緻密な膜が形成されるので、第1の薄膜31と第2の薄膜32とにより構成される誘電体膜3内の導電路が形成されにくくなり、リーク電流の発生をより抑制することができる。
続いて第2の薄膜32の塗布膜形成工程の第2の実施の形態について説明する。塗布ユニットとしては、例えば図8に記載のものが用いられる。この例の塗布膜形成工程は、先ず上面に第1の薄膜31が形成されたウエハWをスピンチャック51上に受け渡した後、スピンチャック51を図8に示す処理位置まで下降させる。次いで図11(a)に示すように、塗布液ノズル56の先端の吐出口がスピンチャック51に保持されたウエハWのほぼ中心に対向するようにノズルユニット55を移動させて、ウエハWを回転させないか、または10rpm以上の回転数でゆっくりと回転させた状態で、ウエハWの中心に塗布液ノズル56から第2の塗布液46を供給する。このようにすると塗布液46を供給し続けることによって、塗布液46のウエハWの中心から外方へ向かう液流れが作られ、こうして図11(b)に示すように、第2の塗布液46をウエハW上の第1の薄膜31の周縁部まで行き渡らせて、第1の薄膜31の表面に第2の塗布液46の液盛りを行う。この際第2の塗布液46は、例えば厚さ2μm程度に液盛りされる。
次いで図11(c)に示すように、ウエハWを例えば1500rpm程度の回転数で回転させることにより、その遠心力によって第2の塗布液46を第1の薄膜31の表面に広げて、第2の塗布液46を第1の薄膜31の表面に適切な厚さに塗布すると共に、余分な第2の塗布液46を振り切った後、図11(d)に示すように、ウエハWを例えば3000rpm程度の回転数で回転させることにより、第2の塗布液46を乾燥させ、こうしてウエハWの第1の薄膜31の表面に例えば180nmの厚さの第2の塗布液の塗布膜32aを形成する。この状態では、塗布膜中のBaを含む化合物とTiを含む化合物との粒子の大部分は溶剤中に分散された状態になっており、一部がチタン酸バリウムを生成しているものと推察される。このように塗布膜形成工程を行なった後、既述のような焼成の前処理である加熱工程と、焼成工程とを引き続いて行なうことによって第2の薄膜32が形成される。
このような手法によっても、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46が入り込みやすいという効果がある。つまり第2の塗布液46をウエハWを回転させないかゆっくりと回転させた状態で塗布すると、第2の塗布液46はゆっくりとウエハ表面を外方側へ広がっていき、全面に行き渡るまで第2の塗布液46は常に供給され続けることになる。これにより第2の塗布液46の液盛りの間は常に新たなシンナー液45が供給され、また液盛りされる第2の塗布液46の量も多いので、第2の塗布液46中のシンナー液45の揮発が妨げられ、第1の薄膜31の空隙42では、第2の塗布液46中のシンナー液45の存在により第2の塗布液46が前記空隙42に入り込みやすくなる。
つまり第1の薄膜31の空隙42には既述のように空気44が入り込んでいるが、既述のように第2の塗布液46はウエハWの中心から外方側へゆっくりと液盛りされるので、この際、第2の塗布液46に含まれるシンナー液45は、揮発しようとしながら外方側へ進展して行くことから、第2の塗布液の前駆体成分よりも前方側へ進展しやすい。さらに既述のようにシンナー液45は2ーメトキシエタノールであって空気と置換しやすい。このため例えば図12(a),(b)に示すように、第2の塗布液46のゆっくりとした塗布の間に、先ず第2の塗布液46中のシンナー液45と、空隙42内の空気44との置換が起こり、次いで例えば図12(c)に示すように、シンナー液45と第2の塗布液46の残りの成分との置換が行なわれて、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46を速やかに充填することができると推察される。
これに対し第2の塗布液46の塗布をウエハWを回転させながら行なうスピンコーティングでは、第2の塗布液46が急激にウエハWの外方まで広がるように塗布されるので、第2の塗布液46からシンナー液45が揮発しやすい上に、ウエハWを2000rpmもの回転数により回転させると、回転による気流が発生し、さらにシンナー液45の揮発が行なわれやすい状態となるので、第2の塗布液46が広がるとほぼ同時にシンナー液45が乾燥してしまう。このため第2の塗布液46中のシンナー液45が前記空隙42内に入っていけず、結果として第2の塗布液46が前記空隙42に浸透しにくいものと推察される。
このように、第1の薄膜31の表面にウエハWを回転させないか、極めてゆっくりと回転させながら第2の塗布液46を塗布することにより、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46を速やかに充填することができ、これによりこの手法にて塗布膜形成工程を実施した場合には、第1の薄膜43の表面側の空隙42が第2の薄膜32で埋め込まれやすく、このため第1の薄膜32の表面にはより緻密な層が形成され、かつABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の表面の高い平坦性を確保することができる。
またこの誘電体膜3の両面に下部電極21と上部電極22とを形成してコンデンサを形成した場合には、第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界付近により緻密な膜が形成されるので、第1の薄膜31と第2の薄膜32とにより構成される誘電体膜3内の導電路が形成されにくくなり、リーク電流の発生をより抑制することができる。
続いて第2の薄膜32の塗布膜形成工程の第3の実施の形態について説明する。塗布ユニットとしては、例えば図13に示すような、塗布液をいわば一筆書きの要領で塗布する構成の第2の塗布ユニット6が用いられる。図13中61は、ウエハWの裏面側中央部を吸引吸着して水平に保持するための、昇降機構61aにより昇降自在に構成されたウエハ保持部である。また図中60はケース体であり、このケース体60の天板60aにはX方向に伸びるスリット62が形成され、このスリット62内には、塗布液ノズル63が、X方向に移動自在に設けられている。図13中64aはX方向に伸びるガイド部、64bはボールネジ部、64cは塗布液ノズル63が取り付けられ、ボールネジ部64bと螺合する移動体であり、塗布液ノズル63は、モータM2によりボールネジ部64bを回動させることによって、この移動体64cを介してX方向に移動されるようになっている。また塗布液ノズル63は、バルブV3を備えた供給路63aを介して第2の塗布液の供給源63bに接続されている。
一方前記ウエハ保持部61は、モータM1により駆動されるボールネジ部65aにより、ガイド部65bにガイドされながらY方向に移動自在に構成された移動台65cの上に配置されており、Y方向に間欠的に移動できるようになっている。図中66は、ウエハWの周縁領域を覆うと共に塗布膜形成領域に対応する領域が開口しているマスクであり、このマスク66はウエハWの周縁領域や裏面側への塗布液の付着や回り込みを防ぐために設けられている。
このような第2の塗布ユニット6では、例えば図14に示すように、先ず例えばウエハWのY方向の一端側を塗布液ノズル63の真下に位置するように位置させて、ここからウエハW保持部61がウエハWのY方向の他端側に向かってY方向に所定のピッチで間欠的に移動する。一方塗布液ノズル63はウエハWの間欠移動のタイミングに対応してX方向に往復移動する。つまりウエハWが静止しているときに塗布液ノズル63がX方向の一端側から他端側に、ウエハW上に塗布液を吐出しながら移動し、次いでウエハWがウエハ保持部61により所定量(所定ピッチ)だけY方向に移動する。塗布液ノズル63はX方向の他端側で折り返し、X方向の一端側に向かってウエハW上に塗布液を吐出しながら移動する。このようにして第2の塗布液46が一筆書きの要領で塗布される。
続いて前記第2の塗布ユニット6にて第2の塗布液46の塗布処理が行われた後にウエハWが搬送される減圧乾燥ユニット7について図15により説明する。図中70は密閉容器であり、71はウエハWを載置するための載置台、71aはウエハWの裏面側を保持するための突起部である。載置台71には、ウエハWの温度を調節するための温度調節手段72が設けられている。図中73は蓋体、74は蓋体昇降機構であり、この蓋体73はウエハWの搬入出時には上昇し、減圧乾燥を行なうときには下降して、蓋体73と載置台71とにより密閉容器70が構成されるようになっている。この蓋体73の天井部の中心付近には、他端側に真空排気手段である真空ポンプ75が接続されたバルブV4を備えた排気路76が接続されている。この排気路76にはまたバルブV5を備えた供給路77を介してパージガス供給源78が接続されている。
このような減圧乾燥ユニット7では、蓋体73を上昇させた状態でウエハWを図示しない昇降ピンと搬送手段との協働作用により前記突起部71a上に受け渡し、次いで蓋体73を下降させることにより密閉容器70を閉じる。次いでバルブV4を開き、真空ポンプ75を動作させて密閉容器70内を減圧して、ウエハWの乾燥を行なう。こうしてウエハWの減圧乾燥を行なった後、バルブV4を閉じ、バルブV5を開いてパージガス例えばN2ガスを密閉容器70内に流入させて密閉容器70内を大気圧に復帰させる。しかる後、密閉容器70の蓋体73を上昇させてウエハWを搬出し、次工程に搬送するようになっている。
そしてこの例の塗布膜形成工程では次のように行なわれる。つまり例えば図16(a)に示すように、先ず第2の塗布ユニット6にて既述のように、上面に第1の薄膜31が形成されたウエハWに対して一筆書きの要領で第2の塗布液46を塗布する。次いで図16(b)に示すように、第1の薄膜31の表面に第2の塗布液46が塗布されたウエハWを前記減圧乾燥ユニット7に搬送して、既述のように密閉容器70内に載置し、次いで当該密閉容器70内を、温度20℃の条件下で、バルブV4を開いて真空ポンプ75により例えば3分程度減圧する(減圧乾燥工程)。このようにすると、密閉容器70内は、後述するように溶剤であるシンナー液45の揮発が行なわれる第1の圧力例えば100Pa程度より低い圧力まで減圧され、これによりウエハW表面の第2の塗布液46中のシンナー液45の大部分は揮発していく。
ここで密閉容器70内の圧力について図17(a)により説明する。時刻t1にて密閉容器70内の減圧を開始すると、密閉容器70内の圧力は、第1の圧力P1例えば150Pa程度の圧力になる時刻t2までは急激に低下していき、その後は時刻t3まで一定状態となり、時刻t3以降はさらに急激に低下する。ここで密閉容器70内を大気圧から減圧していくと、次第に第1の薄膜31の空隙42に入り込んだ空気44が前記空隙42から吸引された状態で出て行き、第1の圧力P1になると第2の塗布液46から溶剤であるシンナー液45の揮発が開始され、第1の圧力P1である間(時刻t2から時刻t3までの間)は、第2の塗布液46からシンナー液45の揮発が続く。
このようにして第2の塗布液46の減圧乾燥を行なうと、ウエハWの第1の薄膜31の表面に例えば180nmの厚さの第2の塗布液の塗布膜32aが形成される。この状態では、塗布膜中のBaを含む化合物とTiを含む化合物との粒子の一部がチタン酸バリウムを生成しているものと推察される。このように第2の塗布液46の減圧乾燥を行なった後、バルブV4を閉じ、バルブV5を開いて、既述のように密閉容器70内にパージガスを供給して密閉容器70内を大気圧まで戻す。そして蓋体73を開いてウエハWを搬出し、次工程の後述する加熱ユニットまで搬送する。この後ウエハWは、既述のような焼成の前処理である加熱工程が行なわれ、この工程において、第2の塗布膜32aに残存するシンナー液は揮発し、加水分解と、縮重合とが起こって、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムの前駆体膜となるチタン酸バリウムの網状構造が形成される。この後焼成工程を行なうことによって第2の薄膜32が形成される。
このような手法によっても、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46が入り込みやすいという効果がある。つまり第2の塗布液46を塗布した後に行われる減圧乾燥により、例えば図18(a),(b)に示すように、第1の薄膜31の空隙42に入り込んでいる空気44が強制的に押し出された状態となる。こうして空気44が除去された空隙42に第2の塗布液46が入り込んでいき、図18(c)に示すように、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46を速やかに充填することができると推察される。これによりこの手法にて塗布膜形成工程を実施した場合には、第1の薄膜31の表面側の空隙42が第2の薄膜32で埋め込まれやすく、このため第1の薄膜32の表面にはより緻密な層が形成され、かつABOX型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の表面の高い平坦性を確保することができる。
またこの誘電体膜3の両面に下部電極21と上部電極22とを形成してコンデンサを形成した場合には、第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界付近により緻密な膜が形成されるので、第1の薄膜31と第2の薄膜32とにより構成される誘電体膜3内の導電路が形成されにくくなり、リーク電流の発生をより抑制することができる。
続いてこのような第2の塗布ユニット6と、減圧乾燥ユニット7とを用いて行われる第2の薄膜32の塗布膜形成工程の第4の実施の形態について説明する。この手法では、例えば図19(a)に示すように、先ず第2の塗布ユニット6にて既述のように、上面に第1の薄膜31が形成されたウエハWに対して一筆書きの要領で第2の塗布液46を塗布する。次いで図19(b)に示すように、第1の薄膜31の表面に第2の塗布液46が塗布されたウエハWを前記減圧乾燥ユニット7に搬送して、既述のように密閉容器70内に載置し、次いでバルブV4を開いて真空ポンプ75により当該密閉容器70内の減圧を開始し、温度20℃の条件下で、例えば前記第1の圧力P1よりも大きい圧力例えば100Pa程度の圧力まで減圧する(第1の減圧乾燥工程)。ここで第2の塗布液46のシンナー液45の揮発は第1の圧力P1で始まるので、この段階では、第2の塗布液46からシンナー液45が揮発していない状態であると推察される。
次いで図19(c)に示すように、バルブV4を閉じ、バルブV5を開いて当該密閉容器70内にパージガスを供給し、密閉容器70内を大気圧に戻す(大気圧工程)。続いて再び図19(d)に示すように、バルブV5を閉じ、バルブV4を開いて真空ポンプ75により当該密閉容器70内の減圧を開始し、温度20℃の条件下で、密閉容器70内の圧力が第1の圧力P1例えば100Paより低い圧力になるまで、例えば5程度減圧する(第2の減圧乾燥工程)。これにより密閉容器70内の圧力が第1の圧力P1となった段階で、第2の塗布液のシンナー液45の揮発が開始されるので、この工程が行なわれると、ウエハW表面の第2の塗布液46中のシンナー液45の大部分は揮発する。
ここで密閉容器70内の圧力について図17(b)により説明する。時刻t4にて密閉容器70内の減圧を開始すると、密閉容器70内の圧力は、既述のように急激に低下していくが、当該圧力が第1の圧力P1になる前のタイミングで当該容器70内にパージガスを供給することにより、時刻t6の段階では当該容器70内の圧力は大気圧に戻される。この際密閉容器70内を大気圧から減圧すると、既述のように第1の薄膜31の空隙42に入り込んでいる空気44が当該空隙42から押し出されて除去される。次いで再び時刻t6にて密閉容器70内の減圧を開始すると、密閉容器70内の圧力は、既述のように急激に低下していき、時刻t7で第1の圧力P1になると、第2の塗布液46中のシンナー液45の揮発が開始される。次いで時刻t8まで前記シンナー液45の揮発が行われ、その後は前記密閉容器70内の圧力がさらに急激に低下する。
このようにして第2の塗布液46の減圧乾燥を行なうと、ウエハWの第1の薄膜31の表面に例えば180nmの厚さの第2の塗布液の塗布膜32aが形成され、この状態では、塗布膜中のBaを含む化合物とTiを含む化合物との粒子の一部がチタン酸バリウムを生成しているものと推察される。
このように第2の塗布液46の減圧乾燥を行なった後、既述のように密閉容器70内にパージガスを供給して密閉容器70内を大気圧まで戻す。そして蓋体73を開いてウエハWを搬出し、次工程の後述する加熱ユニットまで搬送する。この後ウエハWに対して、既述のような焼成の前処理である加熱工程が行なわれ、この工程において、第2の塗布膜32aに残存するシンナー液は揮発し、加水分解と、縮重合とが起こって、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムの前駆体膜となるチタン酸バリウムの網状構造が形成される。この後焼成工程を行なうことによって第2の薄膜32が形成される。
このような手法によっても、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46が入り込みやすいという効果がある。つまりこの手法では、第2の塗布液46を塗布した後に、1回目の減圧乾燥を行い、次いで一旦ウエハWが置かれる雰囲気を大気圧に戻し、再び2回目の減圧乾燥を行なうようにしている。ここで1回目の減圧乾燥では、密閉容器70内は前記第1の圧力P1よりも大きい圧力までしか減圧しないので、第2の塗布液46からのシンナー液45の揮発は起こらずに、図20(a)に示すように、第1の薄膜31の空隙42に入り込んでいる空気44のみが除去される。
そして続いて一旦減圧した密閉容器70を大気圧に戻すと、図20(b)に示すように、前記空隙42内から抜けきらなかった空気44が圧縮し、小さくなるが、その際に空隙42が大きくなるので、ここに第2の塗布液46が入り込んでいく。続いて再び密閉容器70を減圧することで、図20(c)に示すように、前記空隙42からさらに空気44が抜けると共にシンナー液45が揮発していく。こうして空気44が除去された空隙42に第2の塗布液46が入り込んでいき、これにより図20(d)に示すように、第1の薄膜31の空隙42に第2の塗布液46を速やかに充填することができると推察される。
このようにこの手法にて塗布膜形成工程を実施した場合には、第1の薄膜43の表面側の空隙42が第2の薄膜32で埋め込まれやすく、このため第1の薄膜32の表面にはより緻密な層が形成され、かつABOX型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の表面の高い平坦性を確保することができる。
またこの誘電体膜3の両面に下部電極21と上部電極22とを形成してコンデンサを形成した場合には、第1の薄膜31と第2の薄膜32との境界付近により緻密な膜が形成されるので、第1の薄膜31と第2の薄膜32とにより構成される誘電体膜3内の導電路が形成されにくくなり、リーク電流の発生をより抑制することができる。
続いてABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の形成装置の一例について図21及び図22を参照しながら説明する。図中S1はキャリアステーションであり、例えば25枚の基板であるウエハWを収納したキャリアCを載置するキャリア載置部81と、載置されたキャリアCとの間でウエハWの受け渡しを行なうための受け渡し手段82とが設けられている。この受け渡し手段82の奥側には筐体83にて周囲を囲まれる処理部S2が接続されている。処理部S2の中央には主搬送手段84が設けられており、これを取り囲むように例えば奥を見て右側には複数の塗布装置をなす第1の塗布ユニット5及び/又は第2の塗布ユニット6が、左側、手前側、奥側には加熱・冷却系のユニット等を多段に積み重ねた棚ユニットU1,U2,U3が夫々配置されている。前記塗布ユニット5(6)としては、第1の塗布液の塗布処理を行なう塗布ユニットと、第2の塗布液の塗布処理を行なう塗布ユニットとして別の塗布ユニットを用意してもよいし、同じ塗布ユニットを用いて塗布液のみを変えるようにしてもよい。
棚ユニットU1,U2,U3は、塗布ユニットの前処理及び後処理を行なうためのユニット等を各種組み合わせて構成されるものであり、その組み合わせは塗布ユニット5(6)にて表面に塗布液が塗られたウエハWを加熱(ベーク)して塗布液中の溶剤を揮発させる加熱装置をなす加熱ユニット9や、前記減圧乾燥ユニット7、ウエハWの受け渡し渡しユニット等が含まれる。加熱ユニット9としては、第1の薄膜31を形成するときの加熱処理を行なう加熱ユニットと、第2の薄膜32を形成するときの加熱処理を行なう加熱ユニットとして別の加熱ユニットを用意してもよいし、同じ加熱ユニットを用いて夫々の加熱処理を行うようにしてもよい。また上述した主搬送手段84は例えば昇降及び前後に移動自在で且つ鉛直軸周りに回転自在に構成されており、塗布ユニット及び棚ユニットU1,U2,U3を構成する各ユニット間でウエハWの受け渡しを行なうことが可能となっている。
この装置のウエハWの流れについて説明すると、先ず外部から表面に下部電極21が形成されたウエハWが収納されたキャリアCがキャリア載置部81に載置され、受け渡し手段82により、キャリアC内からウエハWが取り出され、棚ユニットU3の棚の一つである受け渡しユニットを介して主搬送手段84に受け渡される。次いで第1の塗布液の塗布処理を行なう塗布ユニットにてウエハW上の下部電極21の表面に第1の塗布液が塗布される。その後ウエハWは第1の塗布液が塗布されたウエハWに対して加熱処理を行なう加熱ユニット9に搬送され、第1の加熱処理が行われる。次いでウエハWは主搬送手段84、受け渡し手段82によりキャリア載置部81上のキャリアC内に戻され、次工程の焼成処理を行なう装置に搬送され、ここで第1の焼成処理が行われて、第1の薄膜31が形成される。
そして第1の焼成処理が行われたウエハWは、再び例えばキャリアC内に収納されてキャリア載置部81に載置され、キャリアC内から取り出されて第2の塗布液の塗布処理を行なう塗布ユニット5(6)に搬送され、ここでウエハW上の第1の薄膜31の表面に第2の塗布液46が塗布される。その後ウエハWは必要な場合には減圧乾燥ユニット7に搬送され、次いで第2の塗布液46が塗布されたウエハWに対して加熱処理を行う加熱ユニット9に搬送されて、加熱処理が行われる。次いでウエハWは主搬送手段84、受け渡し手段82によりキャリア載置部81上のキャリアC内に戻され、次工程の焼成処理を行なう装置に搬送され、ここで焼成処理が行われて、第2の薄膜32が形成される。
続いて本発明に係る加熱ユニット9、焼成処理を行う装置の一例について、夫々図23、図24を用いて簡単に説明する。加熱ユニット9については図23に示すように、ウエハWは筐体90内の冷却プレート91上に搬入され、この冷却プレート91により熱板92に搬送される。そしてウエハWが熱板92上に載置されると、図23(b)に示すように整流用の天板93が下降して、Oリング94を介して天板93の周縁部と熱板92が設けられる基台95の周縁部とが密着することによりウエハWの周囲が密閉空間となる。しかる後、例えばガス供給部96から前記空間内にガスを供給しながら、吸引機構97により当該天板93の中央部の排気口98から吸引排気を行い、こうして図中矢印で示すようなウエハWの外周から中央に向かう気流を形成しながら加熱処理が行われるようになっている。
また焼成処理を行なう焼成装置については、例えば図24に示すように、例えば二重管構造の縦型の反応管100内に、ウエハWを多数枚搭載したウエハボート101を搬入して、例えばガス供給管102から前記反応管100内にガスを供給すると共に、吸引手段103により反応管100の吸引排気を行いながら、反応管100の外側に設けられた加熱手段104によりウエハWを加熱する構成の縦型熱処理炉や、横型熱処理炉等の加熱炉が用いられる。
以上において、上述の第2の薄膜32の塗布膜形成工程の第3の実施の形態の減圧乾燥工程及び第4の実施の形態の第1及び第2の減圧乾燥工程では、第1の薄膜31表面に第2の塗布液46が塗布されたウエハWが置かれる雰囲気を、前記第1の薄膜31の空隙42に入り込む空気44は除去されるが、前記第2の塗布液46からシンナー液が蒸発しない程度の減圧雰囲気に設定するようにしてもよいし、ウエハWが置かれる雰囲気を、前記第2の塗布液46からシンナー液が蒸発する減圧雰囲気に設定しながら、第2の塗布液46に多くのシンナー液が残存する状態で減圧乾燥工程を終了するようにしてもよい。
続いて前記ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3の電気特性を確認するために行なった実験例について説明する。
(実施例1)
先ず図25に示す構造の電気特性測定用サンプルを以下の手法で作製する。つまりシリコン基板111の表面を酸化させて、シリコン基板111の上層側に例えば厚さ100nmのSiO2膜112を形成し、その上に下部電極であるPt層113を成膜する。Pt層113の厚さは30nm程度である。
そしてPt層113の上面に測定対象となるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を形成した後、この誘電体膜3の上面に上部電極であるアルミニウム(Al)層114又はNi層を成膜し、このAl層114を例えば直径0.25mm〜10mm程度の円板状にパターニングする。次いで誘電体膜3を図25に示す形状にパターニングして、Pt層113を露出させる。
また測定対象となる誘電体膜3は、ABO3ペロブスカイト構造のチタン酸バリウムよりなる厚さ200nmの第1の薄膜31の上に、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムよりなる厚さ100nmの第2の薄膜32を積層したものであり、これら第1の薄膜31及び第2の薄膜32は、上述の塗布膜形成工程の第1の実施の形態に記載した手法により形成されている。
このようにして形成された測定用サンプルに対して、誘電体膜3のリーク電流を測定する場合には、室温にて、Pt層113とAl層114との間に、測定器115例えば電源と電流計とを接続して、これらの間に例えば2Vのバイアス電圧を15秒間印加し、そのときに誘電体膜3に流れる単位面積当たりの電流の平均値を検出することにより行なう。
また誘電体膜3の電気容量を測定する場合には、室温にて、Pt層113とAl層114との間に、測定器115例えば電源と電流計とを接続して、例えばバイアス電圧が0V又は1V、Vrms(容量測定用交流電圧)が10mV、周波数が1kHz〜1MHzの条件で、Pt層113とAl層114との間に電圧を印加し、その時に流れる電流と周波数との関係により電気容量を求めることにより行なう。
この結果、前記誘電体膜3として第1の薄膜31と第2の薄膜32とを積層した構成のものを用いた場合には、リーク電流は、9.8×10−9A/cmであり、電気容量は、1.5μF/cm であった。
(実施例2)
前記誘電体膜3として、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを積層した構成であって、第2の薄膜32の塗布膜を上述の塗布膜形成工程の第2の実施の形態に記載した手法により形成されたABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムを備える構成の測定用サンプルを作製し、実施例1と同様に、リーク電流と電気容量とを測定した。この結果、リーク電流は、9.4×10−9A/cmであり、電気容量は、1.46μF/cm であった。
(実施例3)
前記誘電体膜3として、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを積層した構成であって、第2の薄膜32の塗布膜を上述の塗布膜形成工程の第3の実施の形態に記載した手法により形成されたABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムを備える構成の測定用サンプルを作製し、実施例1と同様に、リーク電流と電気容量とを測定した。この結果、リーク電流は、9.7×10−9A/cmであり、電気容量は、1.62μF/cm であった。
(実施例4)
前記誘電体膜3として、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを積層した構成であって、第2の薄膜32の塗布膜を上述の塗布膜形成工程の第4の実施の形態に記載した手法により形成されたABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムを備える構成の測定用サンプルを作製し、実施例1と同様に、リーク電流と電気容量とを測定した。この結果、リーク電流は、9.8×10−9A/cmであり、電気容量は、1.64μF/cm であった。
(比較例1)
前記誘電体膜3として、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを積層した構成であって、第2の薄膜32の第2の塗布液46を第1の薄膜31と同様の条件で、第1の薄膜31の表面に直接第2の塗布液46をスピンコーティングにより塗布することにより形成した測定用サンプルを作製し、実施例1と同様に、リーク電流と電気容量とを測定した。なお第2の薄膜32は、第2の塗布液を第1の薄膜31と同様の条件にてスピンコーティングにより塗布した後、加熱工程と焼成工程とを行うことにより形成されている。この結果、リーク電流は、8.1×10−8A/cmであり、電気容量は、1.2μF/cm であった。
(比較例2)
前記誘電体膜3として、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムよりなる厚さ200nmの第1の薄膜31のみを備える構成の測定用サンプルを作製し、実施例1と同様に、リーク電流と電気容量とを測定した。なお第1の薄膜31は、上述の実施の形態に記載した手法により形成されている。この。結果、リーク電流は、1.3×10−2A/cmであり、電気容量は、0.9μF/cm であった。
(比較例3)
前記誘電体膜3として、ABOx型ペロブスカイト結晶構造のチタン酸バリウムよりなる厚さ100nmの第2の薄膜32のみを備える構成の測定用サンプルを作製し、実施例1と同様に、リーク電流と電気容量とを測定した。なお第2の薄膜32は、上述の実施の形態に記載した手法により形成されている。この結果、リーク電流は、2.8×10−3/cmであり、電気容量は、0.7μF/cm であった。
これらの結果により、前記誘電体膜3として、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを備えた構成(実施例1〜4、比較例1)のものを用いた場合には、第1の薄膜31のみを備えた構成(比較例2)や、第2の薄膜32のみを備えた構成(比較例3)を用いた場合よりも、電気容量が大きく、リーク電流が小さくなることが確認された。また前記誘電体膜3として、第1の薄膜31と第2の薄膜32とを備えた構成であっても、第2の薄膜32の塗布膜を本発明の塗布膜形成工程の手法にて形成した場合には(実施例1〜4)、第1の薄膜31と同様の手法で形成した場合(比較例1)に比べて電気容量が大きく、リーク電流が小さくなることが確認された。これにより、第1の薄膜31と、この上層側に形成された第2の薄膜32とよりなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜3を、本発明の塗布膜形成工程の手法を用いて形成した場合は、コンデンサの強誘電体薄膜として用いた場合に高い電気特性を確保できることが理解される。
以上において本発明の強誘電体膜は、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜であれば、チタン酸バリウム以外に、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム等により構成してもよい。
本発明のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜を備えたコンデンサの一例を示す断面図である。 前記コンデンサをプリント基板に実装する例を示す断面図である。 図1に示すコンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。 図1に示すコンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。 ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の変性の様子を示す工程図である。 図1に示すコンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。 前記ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の作用を説明するための断面図である。 第2の薄膜の塗布膜形成工程の第1の実施の形態にて用いられる第1の塗布ユニットの一例を示す断面図である。 前記塗布膜形成工程の第1の実施の形態を示す工程図である。 前記塗布膜形成工程の第1の実施の形態の作用を説明するための工程図である。 前記塗布膜形成工程の第2の実施の形態を示す工程図である。 前記塗布膜形成工程の第2の実施の形態の作用を説明するための工程図である。 前記塗布膜形成工程の第3の実施の形態及び第4の実施の形態にて用いられる第2の塗布ユニットの一例を示す断面図と平面図である。 前記第2の塗布ユニットにて行われる塗布液の塗布の様子を説明するための斜視図である。 前記塗布膜形成工程の第3の実施の形態及び第4の実施の形態にて用いられる減圧乾燥ユニットの一例を示す断面図である。 前記塗布膜形成工程の第3の実施の形態を示す工程図である。 減圧乾燥ユニットの密閉容器の圧力の経時変化を示す特性図である。 前記塗布膜形成工程の第3の実施の形態の作用を説明するための工程図である。 前記塗布膜形成工程の第4の実施の形態を示す工程図である。 前記塗布膜形成工程の第4の実施の形態の作用を説明するための工程図である。 ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成装置の一例を示す平面図である。 前記誘電体膜の形成装置の斜視図である。 前記誘電体膜の塗布膜の加熱処理を行うための加熱装置の一例を示す断面図である。 前記誘電体膜の塗布膜の焼成処理を行うための加熱炉の一例を示す断面図である。 本発明の効果を確認するために行なった実験で用いられる測定用サンプルを説明するための斜視図である。 チタン酸バリウム膜のナノ粒子の薄膜を説明するための断面図である。
符号の説明
21 下部電極
22 上部電極
23 プリント基板
24 CPU
25 スピンチャック
26 塗布液ノズル
3 ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜
31 第1の薄膜
31a 第1の塗布膜
32 第2の薄膜
32a 第2の塗布膜
40 結晶粒子
41 溶剤
42 空隙
44 空気
45 シンナー液
46 第2の塗布液
S1 キャリアステーション
S2 処理部
5,6 塗布ユニット
51 スピンチャック
52 カップ体
56 塗布液ノズル
57 溶剤ノズル
61 ウエハ保持部
63 塗布液ノズル
7 減圧乾燥ユニット
70 密閉容器
75 真空ポンプ
9 加熱ユニット
91 冷却プレート
92 熱板
W 半導体ウエハ

Claims (8)

  1. 10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜の上に、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を形成するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法であって、
    前記第2の薄膜を形成する工程は、
    基板上に形成された前記第1の薄膜の表面全体に溶剤を塗布する工程と、
    次いで第1の薄膜の表面全体に前記溶剤が存在する状態で、第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を当該第1の薄膜の中央部に供給すると共に、基板を回転させて前記塗布液を第1の薄膜の表面に広げる工程と、
    その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
    しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むことを特徴とするABOx型ペロブスカイト構造の誘電体膜の形成方法。
  2. 10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜の上に、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を形成するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法であって、
    前記第2の薄膜を形成する工程は、
    当該第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を、基板上に形成された前記第1の薄膜の中央部に供給し続けることにより周縁部に行き渡らせて前記塗布液の液盛りを行う工程と、
    続いて基板を回転させてその遠心力により前記塗布液を第1の薄膜の表面に広げる工程と、
    その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
    しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むことを特徴とするABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
  3. 10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜の上に、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を形成するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法であって、
    前記第2の薄膜を形成する工程は、
    塗布液ノズルを左右方向に移動させて、基板上に形成された前記第1の薄膜の表面に、第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を直線状に塗布する動作と、基板を塗布液ノズルに対して前後方向に予め設定されたピッチで相対的に移動させる動作とを繰り返すことにより、前記第1の薄膜の表面に直線状の塗布液ラインを多数前後方向に並べる工程と、
    次いで前記塗布液が塗布された基板を減圧雰囲気に載置して、前記塗布液に含まれる溶剤を蒸発させる減圧乾燥工程と、
    その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
    しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むことを特徴とするABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
  4. 10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜の上に、その平均粒径が前記第1の薄膜の結晶粒子の平均粒径よりも小さい結晶粒子からなるABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を形成するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法であって、
    前記第2の薄膜を形成する工程は、
    塗布液ノズルを左右方向に移動させて、基板上に形成された前記第1の薄膜の表面に、第2の薄膜の前駆体と溶剤とを含む塗布液を直線状に塗布する動作と、基板を塗布液ノズルに対して前後方向に予め設定されたピッチで相対的に移動させる動作とを繰り返すことにより、前記第1の薄膜の表面に直線状の塗布液ラインを多数前後方向に並べる工程と、
    次いで前記塗布液が塗布された基板が置かれる雰囲気を減圧雰囲気に設定する第1の減圧乾燥工程と、
    次いで前記塗布液が塗布された基板が置かれる雰囲気を大気圧雰囲気に設定する大気圧工程と、
    次いで前記塗布液が塗布された基板が置かれる雰囲気を再び減圧雰囲気に設定して、前記塗布液に含まれる溶剤を蒸発させる第2の減圧乾燥工程と、
    その後、前記基板を加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう加熱工程と、
    しかる後、前記基板を加熱工程よりも高い温度で加熱して、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第2の薄膜を得る焼成工程と、を含むことを特徴とするABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
  5. 前記基板上に第1の薄膜を形成する工程は、
    第1の塗布液を基板の上に塗布する第1の塗布工程と、
    次いで第1の塗布液が塗布された基板を加熱して、この第1の塗布液に含まれる溶剤を蒸発させ、ABOx型ペロブスカイト結晶構造の前駆体膜を得るための焼成の前処理を行なう第1の加熱工程と、
    その後、前記基板を加熱して10nm以上の空隙を有するABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する第1の薄膜を得る第1の焼成工程と、を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
  6. 前記ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜は、金属種Aがリチウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタンから選ばれる一種以上の金属であり、金属種Bがチタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブから選ばれる一種以上の金属である、ABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する薄膜であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
  7. 前記第2の薄膜の塗布液は、一種以上の金属を含む金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と溶剤とを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
  8. 前記第1の薄膜の第1の塗布液は、前記第2の薄膜の塗布液を加水分解することにより得られる、ABOx(xは1以上の整数)型の結晶構造を有し、平均粒径100nm以下の粒子と溶剤とを含むことを特徴とする請求項5に記載のABOx型ペロブスカイト結晶構造を有する誘電体膜の形成方法。
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