本発明は、結晶化装置、結晶化方法、および位相変調素子に関し、特に所定の光強度分布を有するレーザ光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置に関するものである。
従来、たとえば液晶表示装置(Liquid-Crystal-Display:LCD)の画素に印加する電圧を制御するスイッチング素子などに用いられる薄膜トランジスタ(Thin-Film-Transistor:TFT)は、非晶質シリコン(amorphous-Silicon)層や多結晶シリコン(poly-Silicon)層に形成されている。
多結晶シリコン層は、非晶質シリコン層よりも電子又は正孔の移動度が高い。したがって、多結晶シリコン層にトランジスタを形成した場合、非晶質シリコン層に形成する場合よりも、スイッチング速度が速くなり、ひいてはディスプレイの応答が速くなる。また、周辺LSIを薄膜トランジスタで構成することが可能になる。さらに、他の部品の設計マージンを減らせるなどの利点がある。また、ドライバ回路やDACなどの周辺回路は、ディスプレイに組み入れる場合に、それらの周辺回路をより高速に動作させることができる。
多結晶シリコンは結晶粒の集合からなるが、単結晶シリコンに比べると電子又は正孔の移動度が低い。また、多結晶シリコンに形成された多数の薄膜トランジスタは、チャネル部における結晶粒界数のバラツキが問題となる。そこで、最近、電子又は正孔の移動度を向上させ且つチャネル部における結晶粒界数のバラツキを少なくするために、大粒径の結晶化シリコンを生成する結晶化方法が提案されている。
従来、この種の結晶化方法として、多結晶半導体膜または非晶質半導体膜と平行に近接させた位相シフタにエキシマレーザ光を照射して結晶化半導体膜を生成する「位相変調ELA(Excimer Laser Annealing)法」が知られている。位相変調ELA法の詳細は、たとえば非特許文献1に開示されている。
位相変調ELA法では、位相シフタの位相シフト部に対応する点において光強度がほぼ0の逆ピークパターン(中心において光強度がほぼ0で周囲に向かって光強度が急激に増大するパターン)の光強度分布を発生させ、この逆ピークパターンの光強度分布を有する光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射する。その結果、光強度分布に応じて溶融領域に温度勾配が生じ、光強度がほぼ0の点に対応して最初に凝固する部分に結晶核が形成され、その結晶核から周囲に向かって結晶が横方向に成長(以降、「ラテラル成長」もしくは「ラテラル方向成長」とよぶ)することにより大粒径の単結晶粒が生成される。
従来、特許文献1には、位相シフトマスク(位相シフタ)を介して発生させた逆ピークパターンの光強度分布を有する光を半導体膜に照射して結晶化を行う技術が開示されている。また、非特許文献2には、位相シフタと光吸収分布とを組み合わせて発生させた凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を有する光を半導体膜に照射して結晶化を行う技術が開示されている(関連する記載を参照)。
特開2000−306859号公報
表面科学Vol.21、 No.5、 pp.278-287、 2000
井上、中田、松村、「シリコン薄膜の振幅・位相制御エキシマレーザ溶融再結晶化法−新しい2−D位置制御大結晶粒形成法−」,電子情報通信学会論文誌,社団法人電子情報通信学会,Vol.J85-C, No.8, pp.624-629, 2002年8月
特許文献1に開示されているように位相シフタを用いて逆ピークパターンの光強度分布を形成する従来技術では、位相シフト部に対応する部分に逆ピークパターンの光強度分布が形成される。しかしながら、光強度が直線状に増大しないため、結晶の成長が途中で終了し易い。また、逆ピークパターンの光強度分布の周辺に余分な凹凸分布が発生するため、逆ピークパターンの光強度分布をアレイ化して結晶粒をアレイ状に生成することができない。
なお、位相シフタに対する照明光の角度分布を調節したり、位相シフタの配置位置を設計したりすることにより、得られる光強度分布を理想的な分布に近づけることは可能かもしれない。しかしながら、その設計を解析的に見通しをもって行うことはできないし、例え解析的な設計が実現可能だとしてもかなり複雑な設計条件になることが予想される。
一方、非特許文献2に開示されているように位相シフタと光吸収分布とを組み合わせる従来技術では、結晶化するための凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を得ることができる。しかしながら、ラテラル方向に大粒径の結晶を成長させることは困難である。連続的に変化する光吸収分布を有する膜を成膜することは一般に困難である。また、特に結晶化のための強度の非常に大きい光は、被結晶化膜を照射したとき光吸収による熱や化学変化により光吸収分布を有する膜の膜材料の劣化を生じ易いので望ましくない。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することのできる結晶化装置および結晶化方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、非単結晶半導体膜に所定の光強度分布を有する光束を照射して結晶化する結晶化装置であって、
所定の周期で配置されて互いにほぼ同じパターンを有する複数の単位領域からなる位相変調素子と、該位相変調素子を介した光束を2つの非干渉性の光束に分割するための光束分割素子と、前記位相変調素子と前記非単結晶半導体膜との間に配置された結像光学系とを備え、
前記位相変調素子の前記単位領域は、一定の位相を有する基準面と、前記単位領域の中心近傍に配置されて前記基準面に対して第1位相差を有する第1位相領域と、該第1位相領域の近傍に配置されて前記基準面に対して前記第1位相差とは絶対値がほぼ等しく且つ符号の異なる第2位相差を有する第2位相領域とを有し、
隣り合う2つの単位領域の間では、前記基準面は互いにほぼ同じ位相差を有し、前記第1位相領域は前記基準面に対して互いにほぼ反転した位相差を有し、前記第2位相領域は前記基準面に対して互いにほぼ反転した位相差を有することを特徴とする結晶化装置を提供する。
本発明の第2形態では、所定の光強度分布を有する光束の照射により非単結晶半導体膜を溶融し、該非単結晶半導体膜の溶融部が凝固する過程で単一の成長性の結晶核を周期的に発生させ、前記成長性の結晶核を中心として放射状に結晶成長させて結晶粒アレイ膜を形成する結晶化装置であって、
前記所定の光強度分布は、所定の周期で配列されて互いにほぼ同じ二次元的な分布を有する複数の単位分布領域を有し、
前記単位分布領域は、その中心近傍において光強度の最も小さい領域から周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布と、該逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布とを有することを特徴とする結晶化装置を提供する。
本発明の第3形態では、所定の光強度分布を有する光束の照射により非単結晶半導体膜を溶融し、該非単結晶半導体膜の溶融部が凝固する過程で単一の成長性の結晶核を周期的に発生させ、前記成長性の結晶核を中心として放射状に結晶成長させて結晶粒アレイ膜を形成する結晶化方法であって、
前記所定の光強度分布は、所定の周期で配列されて互いにほぼ同じ二次元的な分布を有する複数の単位分布領域を有し、
前記単位分布領域は、その中心近傍において光強度の最も小さい領域から周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布と、該逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布とを有することを特徴とする結晶化方法を提供する。
本発明の第4形態では、第1形態または第2形態の結晶化装置あるいは第3形態の結晶化方法により結晶化された、デバイスを作製するための基板上の半導体膜であって、
前記半導体膜の結晶組織が4μm乃至20μmの周期的な間隔で配列された結晶粒からなり、且つ該結晶粒の内部に双晶粒界のみを含むことを特徴とする半導体膜を提供する。
本発明の第5形態では、絶縁基板上に形成された半導体膜と、該半導体膜の一面に重ねられたゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜を介して前記半導体膜に重ねられたゲート電極とを含む積層構成を有するトップゲート型の薄膜トランジスタであって、
前記半導体膜の結晶組織が4μm乃至20μmの周期的な間隔で配列された結晶粒からなり、且つ該結晶粒の内部に双晶粒界のみを含むことを特徴とする薄膜トランジスタを提供する。
本発明の第6形態では、絶縁基板上に形成されたゲート電極と、該ゲート電極の一面に重ねられたゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極を覆うように重ねられた半導体膜とを含む積層構成を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタであって、
前記半導体膜の結晶組織が4μm乃至20μmの周期的な間隔で配列された結晶粒からなり、且つ該結晶粒の内部に双晶粒界のみを含むことを特徴とする薄膜トランジスタを提供する。
本発明の第7形態では、所定の間隙を介して互いに接合された一対の基板と、該一対の基板の間隙に保持された電気光学物質とを有し、前記一対の基板のうちの一方の基板には対向電極が形成され、前記一対の基板のうちの他方の基板には画素電極および該画素電極を駆動するための薄膜トランジスタが形成され、前記薄膜トランジスタは半導体膜と該半導体膜の一面にゲート絶縁膜を介して重ねられたゲート電極とにより形成されている表示装置であって、
前記半導体膜の結晶組織が4μm乃至20μmの周期的な間隔で配列された結晶粒からなり、且つ該結晶粒の内部に双晶粒界のみを含むことを特徴とする表示装置を提供する。
本発明の第8形態では、所定の周期で配置されて互いにほぼ同じパターンを有する複数の単位領域からなる位相変調素子であって、
前記単位領域は、一定の位相を有する基準面と、前記単位領域の中心近傍に配置されて前記基準面に対して第1位相差を有する第1位相領域と、該第1位相領域の近傍に配置されて前記基準面に対して前記第1位相差とは絶対値がほぼ等しく且つ符号の異なる第2位相差を有する第2位相領域とを有し、
互いに隣り合う2つの単位領域の間において、前記基準面は互いにほぼ同じ位相を有し、前記第1位相領域は前記基準面に対して互いにほぼ反転した位相を有し、前記第2位相領域は前記基準面に対して互いにほぼ反転した位相を有することを特徴とする位相変調素子を提供する。
本発明によれば、1ショットのレーザアニールで位置制御された大粒径結晶粒アレイ組織の高品質な結晶質の半導体薄膜が得られる。本発明で得られた半導体膜を使った薄膜トランジスタは、従来のポリシリコン薄膜トランジスタよりも、移動度が高くしきい電圧のばらつきも小さい。本発明の薄膜トランジスタを液晶ディスプレイ、有機EL等の表示装置に適用すれば、周辺回路に高機能の演算素子等を形成することが可能になり、システム・オン・パネル化に向け、本発明の効果は大きい。また、位相変調素子と光束分割素子とを光路中に挿入するだけの方法なので、光学系が複雑にならず調整に時間がかからない。また、焦点深度が深いのでプロセスマージンが広くなり、量産にも適している。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。また、図2は、図1の照明系の内部構成を概略的に示す図である。図1および図2を参照すると、本実施形態の結晶化装置は、入射光束を位相変調して所定の光強度分布を有する光束を形成するための位相変調素子1と、入射光束を偏光状態の異なる非干渉性の2つの光束に分割するための光束分割素子2(本実施形態では複屈折素子2E)とを備えている。
なお、位相変調素子1は、その位相パターン面(段差を有する面)が光束分割素子2と対向するように、光束分割素子2と近接して配置されている。なお、位相変調素子1と光束分割素子2とを一体に構成してもよい。位相変調素子1および光束分割素子2の構成および作用については後述する。また、本実施形態の結晶化装置は、位相変調素子1を照明するための照明系3を備えている。
照明系3は、たとえば図2に示す光学系で248nmの波長を有する光を供給するKrFエキシマレーザ光源3aを備えている。光源3aとして、XeClエキシマレーザ光源やYAGレーザ光源のような被結晶化処理体を溶融するエネルギー光線を出射する性能を有する他の適当な光源を用いることもできる。光源3aから供給されたレーザ光は、ビームエキスパンダ3bを介して拡大された後、第1フライアイレンズ3cに入射する。こうして、第1フライアイレンズ3cの後側焦点面には複数の光源が形成され、これらの複数の光源からの光束は第1コンデンサー光学系3dを介して、第2フライアイレンズ3eの入射面を重畳的に照明する。
その結果、第2フライアイレンズ3eの後側焦点面には、第1フライアイレンズ3cの後側焦点面よりも多くの複数の光源が形成される。第2フライアイレンズ3eの後側焦点面に形成された複数の光源からの光束は、第2コンデンサー光学系3fおよび絞り3gを介して、位相変調素子1を重畳的に照明する。ここで、第1フライアイレンズ3cおよび第1コンデンサー光学系3dは、第1ホモジナイザを構成し、この第1ホモジナイザにより光源3aから供給されたレーザ光について位相変調素子1上での入射角度に関する均一化が図られる。
また、第2フライアイレンズ3eおよび第2コンデンサー光学系3fは第2ホモジナイザを構成し、この第2ホモジナイザにより第1ホモジナイザからの入射角度が均一化されたレーザ光について位相変調素子1上での面内各位置での光強度に関する均一化が図られる。なお、第1フライアイレンズ3cまたは第2フライアイレンズ3eに代えて、一対のシリンドリカルフライアイレンズを用いることもできる。ここで、シリンドリカルフライアイレンズは、ある平面において屈折力を有し且つその平面と直交する平面において無屈折力の複数のシリンドリカルレンズ要素により構成されている。
こうして、照明系3は、ほぼ均一な光強度分布を有するレーザ光により位相変調素子1を照射する。位相変調素子1で位相変調されたレーザ光は、結像光学系4を介して、被処理基板5に入射する。ここで、結像光学系4は、位相変調素子1の位相パターン面と被処理基板5とを光学的に共役に配置している。換言すれば、被処理基板5は、位相変調素子1の位相パターン面と光学的に共役な面(結像光学系4の像面)に設定されている。結像光学系4は、正レンズ群4aと正レンズ群4bとの間に開口絞り4cを備えている。
開口絞り4cは、開口部(光透過部)の大きさの異なる複数の開口絞りを有し、これらの複数の開口絞り4cは光路に対して交換可能に構成されていてもよい。あるいは、開口絞り4cは、開口部の大きさを連続的に変化させることのできる虹彩絞りを有していてもよい。いずれにしても、開口絞り4cの開口部の大きさ(ひいては結像光学系4の像側開口数NA)は、後述するように、被処理基板5の半導体膜上において所要の光強度分布を発生させるように設定されている。なお、結像光学系4は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
また、被処理基板5は、基板上に、下層絶縁膜、半導体薄膜、上層絶縁膜の順に成膜することにより構成されている。すなわち、被処理基板5は、たとえば液晶ディスプレイ用板ガラスの上に化学気相成長法(CVD)により下地絶縁膜、非単結晶膜例えば非晶質シリコン膜およびキャップ膜が順次形成されたものである。下地絶縁膜およびキャップ膜は、絶縁膜例えばSiO2である。下地絶縁膜は、非晶質シリコン膜とガラス基板が直接接触してNaなどの異物が非晶質シリコン膜に混入するのを防止し、非晶質シリコン膜の溶融温度が直接ガラス基板に伝熱されるのを防止する。非晶質シリコン膜は、結晶化される半導体膜である。
キャップ膜は、非晶質シリコン膜が入射光を吸収して熱となりその一部が伝わることにより加熱され、この熱を蓄熱する。この蓄熱効果は、光ビームの入射が遮断されたとき、非晶質シリコン膜の被照射面において高温部が相対的に急速に降温するが、この降温勾配を緩和させ、大粒径の横方向の結晶成長を促進させる。被処理基板5は、真空チャックや静電チャックなどにより基板ステージ6上において予め定められた所定の位置に位置決めされて保持されている。
図3は、本実施形態の実施例1における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。実施例1の位相変調素子1は、5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子であり、所定の周期で二次元的に配置されて互いに同じパターンを有する複数の単位領域1aにより構成されている。図3では、説明を簡単にするために、隣り合う2つの正方形状の単位領域1aを示している。各単位領域1aの一辺は、結像光学系4の像面における換算値で5μmである。以下、位相変調素子1の寸法については、結像光学系4の像面における換算値で示す。
単位領域1aは、一定の位相を有する基準面(図中空白の部分)1aaと、単位領域1aの中心近傍に配置された第1位相領域1abおよび第2位相領域1acと、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に配置された第1ドット領域1ad,1aeおよび第2ドット領域1af,1agとを備えている。ここで、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acは、半径が1.1μmの円を4等分して得られる扇形形状のパターンであり、その頂点同士が単位領域1aの中心で接するように配置されている。
また、第1ドット領域1adおよび第2ドット領域1afは、一辺が0.5μmの正方形ドットパターンであり、単位領域1aの中心(第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点)から等しい距離だけ離れて配置されている。一方、第1ドット領域1aeおよび第2ドット領域1agは、一辺が0.3μmの正方形ドットパターンであり、単位領域1aの中心から等しい距離だけ離れて配置され、且つ第1ドット領域1adおよび第2ドット領域1afよりも単位領域1aの中心から離れた位置に配置されている。また、単位領域1aは、対角線B−Bや対角線C−Cに関して対称なパターンを有する。
そして、図中左側の単位領域1aでは、第1位相領域1abおよび第1ドット領域1ad,1aeが基準面1aaに対して−60度の位相(基準面1aaでの位相(変調量)を0度と基準化したときの相対的な位相差)を有し、第2位相領域1acおよび第2ドット領域1af,1agが基準面1aaに対して+60度の位相を有する。逆に、図中右側の単位領域1aでは、第1位相領域1abおよび第1ドット領域1ad,1aeが基準面1aaに対して+60度の位相を有し、第2位相領域1acおよび第2ドット領域1af,1agが基準面1aaに対して−60度の位相を有する。
すなわち、実施例1の位相変調素子1において隣り合う2つの単位領域1aの間では、基準面1aaは互いに同じ位相を有するが、第1位相領域1ab、第2位相領域1ac、第1ドット領域1ad,1ae、および第2ドット領域1af,1agは基準面1aaに対して互いに反転した位相(絶対値が等しく且つ符号の異なる位相)を有する。なお、第1ドット領域1ad,1aeおよび第2ドット領域1af,1agは、結像光学系4の点像分布範囲の半径よりも光学的に小さいドット形状を有する。
実施例1において、光束分割素子2が介在しない場合、結像光学系4の焦点位置(フォーカス位置)に位置決めされた被処理基板5の表面には、図4に示すような光強度分布が形成される。すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図4(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図4(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図4(c)に示すような光強度分布が形成される。
なお、本実施形態の各実施例では、結像光学系4の像側開口数NAが0.13であり、照明シグマ値(照明系の開口数/結像光学系4の物体側開口数)が0.43に設定されている。また、図4において、縦軸は光強度であってその最大値を1に規格化としたときの相対値を示し、横軸は単位領域1aの中心に対応する点からの距離(μm)を示している。なお、以下の光強度分布の表記は、図4と同様である。図4(a)を参照すると、第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点(単位領域1aの中心)に対応して光強度の最も小さいボトムピークが形成されることがわかる。
また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。また、第1ドット領域1ad,1aeおよび第2ドット領域1af,1agの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。なお、ドット領域1ad,1ae,1af,1agの作用については、後述の実施例3において詳細に説明する。位相変調素子1の位相段差パターンは、例えば石英ガラス基板に所要の位相に対応する厚さ分布を形成することにより製造することができる。石英ガラス基板の厚さの変化は、選択エッチングやFIB(Focused Ion Beam)加工により形成することができる。
図5は、本実施形態の各実施例における光束分割素子の構成および作用を説明する図である。図5(a)を参照すると、本実施形態の光束分割素子2は、例えばその結晶光学軸2aが光軸に対して所定の角度θをなすように設定された複屈折性の平行平面板からなる複屈折素子2Eである。複屈折素子2Eを形成する複屈折性の光学材料として、たとえば水晶、方解石、フッ化マグネシウムなどを用いることができる。
図5(a)に示すように、たとえばランダム偏光状態の光線Gが光軸と平行に複屈折素子2Eに入射すると、図5(a)の紙面に垂直な方向を偏光方向とする直線偏光状態の光線すなわち正常光線o(黒丸で表示)は複屈折素子2Eの屈折作用を受けることなく直進して、光軸と平行に射出される。一方、図5(a)の紙面における水平方向を偏光方向とする直線偏光状態の光線すなわち異常光線e(直線で表示)は、複屈折素子2Eの入射界面で屈折されて光軸とφの角度をなす方向に進んだ後、複屈折素子2Eの射出界面で屈折されて光軸と平行に射出される。この現象は広く知られたものであり、例えば、辻内順平著、朝倉書店出版の「光学概論II」の第5章や、工藤恵栄および上原富美哉著、現代工学社出版の「基礎光学<光線光学・電磁光学>」などに詳述されている。
このとき、複屈折素子2Eから光軸と平行に射出される正常光線oと異常光線eとの距離すなわち分離幅(離間距離)dは、複屈折素子2Eを形成する光学材料の種類、結晶光学軸との方向、切り出し方、複屈折素子2Eの光軸方向の寸法すなわち厚さなどに依存する。図5(b)は位相変調素子1上の1点が、複屈折素子2Eにより、二点に分離されて観察される様子を示した図である。なお、複屈折素子2Eによる分離幅dは結像光学系4の物体側における値であり、結像光学系4の像面における分離幅は、分離幅dに結像光学系4の倍率(たとえば1/5)を乗じた値になる。
一軸結晶材料により形成された平行平面板状の複屈折素子2Eに垂直に光線を入射させた場合の分離幅dは、次の式(a)により表わされる。
d=tanφ×t (a)
ただし、tanφ=(no2−ne2)sinθ・cosθ/(ne2cos2θ+no2sin2θ)
なお、式(a)において、noは正常光線oの屈折率であり、neは異常光線eの屈折率である。また、上述したように、φは異常光線eと入射界面の法線(すなわち光軸)との角度であり、θは結晶光学軸2aと入射界面の法線との角度であり、tは複屈折素子2Eの厚さである。一例として、248nmの波長を有する光およびθ=45度に設定された水晶製の複屈折素子2Eを用いる場合、分離幅d=25μmを得るに必要な複屈折素子2Eの厚さtを求めてみると、波長248nmの光に対する水晶の屈折率はne=1.6124,no=1.6016であるから、複屈折素子2Eの厚さt=3697μmとなる。
本実施形態では、複屈折素子2Eを介して入射光束が偏光状態の異なる非干渉性の2つの光束に分割されるので、被処理基板5の表面上には互いに離間した2つの光強度分布の合成に対応する所定の光強度分布が形成されることになる。このとき、複屈折素子2Eへの入射光束がランダム偏光状態であれば、複屈折素子2Eを介して分割された2つの光束の強度が互いにほぼ等しくなる。また、複屈折素子2Eを介して分割された2つの光束が複像作用により被処理基板5の表面で重ね合わされるとき、2つの光束は互いに干渉しないので単純に光強度の和として合成される。
こうして、位相変調素子1の図中右側の単位領域1aを通過した正常光線oにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布と、図中左側の単位領域1aを通過した異常光線eにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布とが重ね合わされて合成される。その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図6に示すような光強度分布が形成される。図6において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
また、結像光学系4の焦点位置から10μmだけ結像光学系4側へデフォーカスして位置決めされた被処理基板5の表面には、図7に示すような光強度分布が形成される。図7において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。図6および図7を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。
図8は、本発明における半導体薄膜の結晶化過程を概略的に示している。図8において破線で示す矩形状の領域は、被処理基板5の表面上において位相変調素子1の1つの単位領域1aに対応する単位基板領域(実施例1では5μm角の正方形状の領域)10である。単位基板領域10では、まず凝固初期に、溶融領域12の中心近傍において結晶核の発生と消滅とを繰り返した後に、結晶核が凝集して成長可能な臨界径以上となり、単一の成長性の結晶核11が発生する。この成長性の結晶核11は、時間の経過に従って放射状に全方向に成長し、固液界面14が広がっていく。
本発明の半導体薄膜のレーザアニールによる結晶化は超急冷凝固系であるため、発生した結晶核の面方位を維持しながら全方向に成長することはない。例えば<110>方向のように比較的成長速度の大きな結晶方向には、発生した結晶核の面方位をそのまま保ちながら成長する。しかしながら、例えば<111>方向のように最密面が積み重なっていかなければならない成長速度の比較的小さな結晶方向には、同心円放射状に広がる温度勾配に従い、成長速度の大きな方向と同様の速度で成長するため、成長途中で双晶変態することで成長速度のより大きな面方位に向きを変えて成長する。結果として、最終的な組織では、結晶粒の中に双晶粒界13が入る。この双晶粒界13は、結晶粒界15とは、その形成過程が異なる。
図9は、図8に示す結晶化過程を実現するのに適した光強度分布の一例を概略的に示している。図9(a)に示す光強度分布は、図9(b)に示す単位基板領域10の対角線10aに沿った分布である。なお、図9(b)において、破線16a,16bは光強度(または温度)の等高線を示している。図9(a)に示す光強度分布では、単位基板領域10の中心近傍において光強度が最も小さく、この光強度の最も小さいボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成され、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成されている。
図9(a)に示すようなロート形の光強度分布を有するレーザ光を被処理基板5に照射すると、被処理基板5の半導体薄膜が光を吸収して、光のエネルギーが熱に変換する結晶化開始時の半導体薄膜の温度分布も図9(a)に示すようになり、単位基板領域10の中心領域にのみ成長性の結晶核11が発生する。光強度分布には、結晶成長の開始と密接に関係した閾値αがある。光強度がα値以下の部分では半導体膜(Si)は融けないか、あるいは融けても表面の一部しか融けないためにポリシリコンの状態にとどまり、光強度がα値を越えたところから結晶成長が開始する。
したがって、光強度分布の底における光強度の値がこのα値よりもわずかに下回ることが望ましい。具体的に、光強度分布のボトムピークの強度は、相対値で0.2〜0.7であることが好ましい。ボトムピークの強度が0.2未満になると小さくなりすぎて、中心部分だけ結晶化することなくアモルファスのままになってしまう。また、ボトムピークの強度が0.7を越えると大きくなりすぎて、中心部分にのみ成長性の結晶核を発生させることができない。なお、結晶化過程をさらに良好に実現するには、光強度分布のボトムピークの強度が0.5〜0.6であることが好ましい。
中心近傍のボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布は、光強度の最小値(すなわちボトムピークにおける光強度の値)に最大値と最小値との差の約2/5を加えた光強度までの範囲であることが好ましい。図9(a)に示す光強度分布の場合、光強度の最小値に最大値と最小値との差の2/5を加えた光強度が相対値で0.76となる。
この光強度0.76における光強度分布のピーク幅W1は、0.5μm〜1.5μmであることが好ましい。ピーク幅W1が0.5μm未満になると小さくなりすぎて、光強度の最小位置である中心に周囲の熱が拡散して、最低温領域が広がってしまい、成長性の結晶核を単一にすることができない。また、ピーク幅W1が1.5μmを越えて大きくなりすぎると、結晶化開始時の最低温領域が広がってしまい、成長性の結晶核を単一にすることができない。
図9(a)に示すように、逆ピーク状の分布の周囲では、光強度が緩やかに増大すること、すなわち中心から離れるに従って外側に向かって線形的に光強度が増大するようなロート形の傾斜状分布になることが好ましい。これは、単位基板領域10の中心に発生した成長性の結晶核11を放射状に成長させて、単位基板領域10の内部を1つの結晶粒にするためである。このようなロート形の傾斜状分布にすると、外側に向かう温度勾配も線形的になるので、結晶の成長が途中で停止することなく、さらに大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。逆ピーク状の分布の周囲に凹凸分布が存在し、光強度が急峻に大きくなっているピークが存在すると、半導体薄膜がレーザ光を吸収する際にこの領域の温度が上がりすぎてしまい、膜破壊しやすくなってしまう。
ここで、再び図6および図7を参照すると、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.51から約0.61へ上昇し、ピーク幅W1が約1.09μmから約1.33μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も上述の所望範囲内で変化していることがわかる。したがって、実施例1では、図8に示すような結晶化過程を実現することができ、ひいては結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
図10は、位相変調素子における単位領域の配列パターンと形成される結晶組織のアレイパターンとの関係の一例を模式的に示している。図10(a)に示す位相変調素子1の単位領域1aの配列パターンでは、簡単のための単位領域1aの中心近傍に配置された扇形形状の第1位相領域1abおよび第2位相領域1acだけを示している。また、図10(a)に示す結晶組織のアレイパターンでは、結晶粒界15を実線で示し、双晶粒界13を破線で示している。
位相変調素子1の1つの単位領域1aに対応して、1つの正方形状の結晶粒が形成される。すなわち、所定の周期で格子状に配置された複数の単位領域1aに対応して、複数の正方形状の結晶粒が格子状にアレイ化して形成されて品質の良い結晶化半導体薄膜となる。そして、結晶粒の内部には、双晶粒界13のみを含むことになる。このように、成長性の結晶核11の発生位置を制御することにより、結晶粒の位置も二次元的に制御することができる。
図11は、位相変調素子における単位領域の配列パターンと形成される結晶組織のアレイパターンとの関係の別の例を模式的に示している。図11(a)では、図10(a)とは異なり、複数の単位領域1aが、ひいては第1位相領域1abおよび第2位相領域1acが所定の周期で正三角頂点状に配置されている。その結果、対応する結晶組織では、図11(b)に示すように複数の円形状の結晶粒が正三角頂点状にアレイ化して形成される。この場合も、結晶粒の内部には双晶粒界13のみを含むことになり、結晶粒の位置も二次元的に制御することができる。
図10や図11に示す位相変調素子1の単位領域1aの間隔は、最終的に形成する結晶組織の結晶粒径と密接な関係がある。位相変調素子1の単位領域1aの間隔は、結像光学系4の像面における換算値で4μm〜20μmであることが望ましい。単位領域1aの間隔が4μm未満になると小さくなりすぎて、結晶粒アレイの粒径が小さくなり、品質の良い結晶化半導体薄膜にならない。また、単位領域1aの間隔が20μmを超えると大きくなりすぎて、結晶成長が途中で止まってしまうため、半導体膜のほぼ全面を覆うような結晶粒アレイにならない。
単位領域1aの中心に配置する位相段差の反転した位相領域1ab,1acの形状は必ずしも扇形である必要はなく、四角形等の多角形状であっても良い。また、位相領域1ab,1acの面積は、単一結晶核のみを発生させるために、図9(a)に示す光強度分布においてピーク幅W1が十分に狭くなるように設定すればよい。具体的に、位相領域(1ab,1ac)の全体的な大きさを2.2(=1.1×2)μmに設定しているが、0.3μm乃至3μmの大きさに設定することが好ましく、2.0μm乃至2.4μmの大きさに設定することがさらに好ましい。位相領域1ab,1acの面積に関する最適値は、用いる結晶化装置の光学系と密接に関係する。位相領域1ab,1acの位相段差は、図9(a)に示す光強度分布におけるボトムピークの光強度の相対値と関係があるが、0.2〜0.7になるように決定すればよい。
実施例1では、図1に示す結晶化装置において図3に示す構成を有する位相変調素子1を用いて、被処理基板5上の半導体(Si)薄膜を結晶化した。被処理基板5上で、たとえば図6に示す光強度分布と図7に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。図6および図7に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
図12は、本実施形態の実施例2における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。実施例2の位相変調素子1は実施例1と同様に、5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子であり、実施例1と類似の構成を有する。しかしながら、実施例2では、一辺が0.5μmの正方形ドットパターンからなる第1ドット領域1adおよび第2ドット領域1afに代えて、一辺が0.3μmの正方形ドットパターンからなる第1ドット領域1ahおよび第2ドット領域1aiが設けられている点だけが実施例1と相違している。以下、実施例1との相違点に着目して、実施例2を説明する。
実施例2において、光束分割素子2が介在しない場合、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図13に示すような光強度分布が形成される。すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図13(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図13(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図13(c)に示すような光強度分布が形成される。
図13(a)を参照すると、第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点(単位領域1aの中心)に対応して光強度の最も小さいボトムピークが形成されることがわかる。また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。また、第1ドット領域1ah,1aeおよび第2ドット領域1ai,1agの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
実際には複屈折素子2Eを介して入射光束が偏光状態の異なる非干渉性の2つの光束に分割されるので、位相変調素子1の図中右側の単位領域1aを通過した正常光線oにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布と、図中左側の単位領域1aを通過した異常光線eにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布とが重ね合わされて合成される。その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図14に示すような光強度分布が形成される。図14において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
また、結像光学系4の焦点位置から10μmだけ結像光学系4側へデフォーカスして位置決めされた被処理基板5の表面には、図15に示すような光強度分布が形成される。図15において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。図14および図15を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.5から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.01μmから約1.14μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。なお、実施例2で得られた合成光強度分布では、ピーク幅W1が実施例1よりも若干小さくなっている。
実施例2では、図1に示す結晶化装置において図12に示す構成を有する位相変調素子1を用いて、被処理基板5上の半導体(Si)薄膜を結晶化した。被処理基板5上で、たとえば図14に示す光強度分布と図15に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。図14および図15に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
図16は、本実施形態の実施例3における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。実施例3の位相変調素子1は実施例1と同様に、5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子であり、実施例1と類似の構成を有する。しかしながら、実施例3では、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に配置されたドットパターンが実施例1と相違している。以下、実施例1との相違点に着目して、実施例3を説明する。
実施例3の位相変調素子1では、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に、結像光学系4の点像分布範囲の半径よりも光学的に小さい0.5μm角の正方形状の単位セル(図面の明瞭化のために図中右側の単位領域1aだけに図示)1ajを縦横に且つ稠密に仮想設定している。そして、横断線A−Aよりも図中上側の複数の単位セル1ajの中に第1ドット領域1akが設けられ、横断線A−Aよりも図中下側の複数の単位セル1ajの中に第2ドット領域1amが設けられている。ただし、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周辺の単位セル1ajの中にはドット領域が設けられていない。また、単位領域1aは、対角線B−Bや対角線C−Cに関して対称なパターンを有する。
ここで、図中左側の単位領域1aでは、第1位相領域1abおよび第1ドット領域1akが基準面1aaに対して−60度の位相を有し、第2位相領域1acおよび第2ドット領域1amが基準面1aaに対して+60度の位相を有する。逆に、図中右側の単位領域1aでは、第1位相領域1abおよび第1ドット領域1akが基準面1aaに対して+60度の位相を有し、第2位相領域1acおよび第2ドット領域1amが基準面1aaに対して−60度の位相を有する。
また、単位セル1aj中の第1ドット領域1akの占有面積率および単位セル1aj中の第2ドット領域1amの占有面積率は、第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点(単位領域1aの中心)から離れるにしたがって小さくなるように構成されている。後述するように、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの占有面積率を単位領域1aの中心から離れるにしたがって小さくなるように設定することにより、逆ピーク状の分布から離れるにしたがって大きくなるようなロート形で傾斜状の分布を実現している。
実施例3において、光束分割素子2が介在しない場合、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図17に示すような光強度分布が形成される。すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図17(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図17(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図17(c)に示すような光強度分布が形成される。
図17(a)を参照すると、第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点(単位領域1aの中心)に対応して光強度の最も小さいボトムピークが形成されることがわかる。また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。また、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
実際には複屈折素子2Eを介して入射光束が偏光状態の異なる非干渉性の2つの光束に分割されるので、位相変調素子1の図中右側の単位領域1aを通過した正常光線oにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布と、図中左側の単位領域1aを通過した異常光線eにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布とが重ね合わされて合成される。その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図18に示すような光強度分布が形成される。図18において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
また、結像光学系4の焦点位置から10μmだけ結像光学系4側へデフォーカスして位置決めされた被処理基板5の表面には、図19に示すような光強度分布が形成される。図19において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。図18および図19を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.5から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.01μmから約1.14μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。実施例3で得られた合成光強度分布では、傾斜状の分布において光強度が実施例1および実施例2よりも緩やかに変化しており、図9(a)に類似した分布が得られた。
実施例3では、図1に示す結晶化装置において図16に示す構成を有する位相変調素子1を用いて、被処理基板5上の半導体(Si)薄膜を結晶化した。被処理基板5上で、たとえば図18に示す光強度分布と図19に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。図18および図19に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
以下、ドット領域1akおよび1amの占有面積率を単位領域1aの中心から離れるにしたがって小さくなるように設定することにより逆ピーク状の分布から離れるにしたがって光強度が大きくなるような傾斜状の分布が得られる原理について説明する。図20は、ドット領域の占有面積率と光強度分布とに関する原理を説明する図である。一般に、位相変調素子1による結像の光振幅分布U(x,y)は、次の式(1)で表わされる。なお、式(1)において、T(x,y)は位相変調素子1の複素振幅透過率分布を、*はコンボリューション(たたみ込み積分)を、ASF(x,y)は結像光学系4の点像分布関数をそれぞれ示している。ここで、点像分布関数とは、結像光学系による点像の振幅分布と定義する。
U(x,y)=T(x,y)*ASF(x,y)・・・(1)
なお、位相変調素子1の複素振幅透過率分布Tは、振幅が均一であることから、次の式(2)で表わされる。なお、式(2)において、T0は一定の値であり、φ(x,y)は位相分布を示している。
T=T0eiφ(x,y)・・・(2)
また、結像光学系4が均一円形瞳を有し且つ無収差である場合、点像分布関数ASF(x,y)に関して次の式(3)に示す関係が成立する。なお、式(3)において、J1はベッセル(Bessel)関数を、λは光の波長を、NAは上述したように結像光学系4の像側開口数をそれぞれ示している。
ASF(x,y) ∝ 2J1(2π/λ・NA・r)/(2π/λ・NA・r)・・(3)
ただし、r=(x2+y2)1/2
図20(a)に示す結像光学系4の点像分布関数は、図20(b)に示すものであり、直径Rの円筒形4e(図20中破線で示す)で近似すると、図20(c)に示す位相変調素子1上の直径R’(直径Rに光学的に対応する値)の円内の複素振幅分布を積分したものが、像面4f上の複素振幅を決定する。上述したように、像面4fに結像された結像の光振幅すなわち光強度は位相変調素子1の複素振幅透過率分布と点像分布関数とのコンボリューションで与えられる。点像分布関数を円筒形4eで近似して考えると、図20(c)に示す円形の点像分布範囲R内で位相変調素子1の複素振幅透過率を均一重みで積分した結果が、像面4fでの複素振幅になり、その絶対値の二乗が光強度となる。なお、結像光学系4での点像分布範囲Rとは、点像分布関数によって描かれた図20(b)の曲線の0点4iとの交点4j内の範囲をいう。
したがって、点像分布範囲R内で位相の変化が少ないほど光強度は大きくなり、逆に位相の変化が大きいほど光強度は小さくなる。この点は、図20(d)に示すように単位円4g内での位相ベクトル4hの和で考えると理解しやすい。像面4fを物体例えば半導体膜とした場合、図20(b)の点像分布関数は、図20(f)に示すような点像分布関数となる。図21は、点像分布範囲R内での位相の変化と光強度との典型的な関係を示す図である。図21(a)は、4つの領域の位相値がすべて0度の場合を示す図であり、0度方向の4つの位相ベクトル5gの和が振幅4Eに対応し、その二乗が光強度16Iに対応することになる。
図21(b)は、2つの領域の位相値が0度であり、他の2つの領域の位相値が90度の場合を示す図であり、0度方向の2つの位相ベクトルと90度方向の2つの位相ベクトルとの和が振幅2√2Eに対応し、その二乗が光強度8Iに対応することになる。図21(c)は、位相値が0度の領域と位相値が90度の領域と位相値が180度の領域と位相値が270度の領域の場合を示す図であり、0度方向の位相ベクトル5sと90度方向の位相ベクトル5tと180度方向の位相ベクトル5uと270度方向の位相ベクトル5vとの和が振幅0Eに対応し、その二乗が光強度0Iに対応することになる。
図22は、結像光学系4における瞳関数と点像分布関数との関係を示す図である。一般に、点像分布関数は、瞳関数のフーリエ変換で与えられる。具体的には、結像光学系4が均一円形瞳を有し且つ無収差である場合、点像分布関数ASF(x,y)は上述の式(3)により表わされる。しかしながら、結像光学系4に収差が存在する場合や、均一円形瞳以外の瞳関数を有する場合はこの限りではない。
均一円形瞳で無収差の場合、点像分布関数が最初に0となるまでの中央領域(すなわちエアリーディスク)の半径R/2は、次の式(4)で表わされることが知られている。
R/2=0.61λ/NA (4)
本明細書において、点像分布範囲Rとは、図20(b),図22(b)に示すように点像分布関数F(x)が最初に0となるまでの円形状の中央領域を意味している。図21を参照して明らかなように、結像光学系の点像分布範囲Rに光学的に対応する円の中に複数(図21では4つ)の位相変調単位が含まれていると、複数の位相ベクトル5gの和により光の振幅を、ひいては光の強度を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。その結果、比較的複雑な光強度分布を比較的容易に得ることができる。
したがって、本発明では、光強度を自由に制御するために、位相変調素子1の位相変調単位は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さいことが必要である。換言すれば、結像光学系4の像側における位相変調素子1の位相変調単位の大きさは、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも小さいことが必要である。ここで、位相変調単位とは、例えば上述したセル型の場合は、セルの一番短い一辺の大きさであり、ピクセル型の場合は一辺の長さを表す。
図23は、図16に示す位相変調素子のドット領域に対応するセル型の構成を概略的に示す図である。図23(a)を参照すると、この位相変調素子は、第1の位相値φ1を有する第1領域(図中斜線部で示す)21aと第2の位相値φ2を有する第2領域(図中空白部で示す)21bとを有する。また、この位相変調素子は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さいサイズの複数のセル(図中矩形状の破線で示す)21を有する。
図23(a)に示すように、各セル21内における位相値φ1(0度)の第1領域21aと位相値φ2(60度)の第2領域21bとの占有面積率がセル毎に変化している。換言すれば、位相値φ1の第1領域21aと位相値φ2の第2領域21bとの占有面積率が位置によって変化する位相分布を有する。さらに具体的には、セル内における位相値φ2の第2領域21bの占有面積は、図中左側のセルにおいて最も大きく、図中右側のセルにおいて最も小さく、その間において単調に変化している。位相変調素子1への入射光は、矢印21cで示すように図23において、紙面の上面から裏面方向に透過する。
以上のように、図23に示す位相変調素子は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さいサイズの位相変調単位(セル)21に基づく位相分布を有する。したがって、各位相変調単位21における第1領域21aと第2領域21bと占有面積率を、すなわち2つの位相ベクトルの和を適宜変化させることにより、被処理基板上に形成される光強度分布を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。第1および第2の位相値φ1、φ2の位相変調素子1の製造は、例えば石英ガラスに厚さを第1および第2の位相値φ1、φ2が形成されるように選択することにより位相変調素子1を製造することができる。石英ガラスの厚さの変化は、選択エッチングやFIBにより形成することができる。
図24は、図16に示す位相変調素子のドット領域とは異なるピクセル型の構成を概略的に示す図である。図24を参照すると、この位相変調素子1は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さい複数の矩形状のピクセル22を有する。これらの複数のピクセル22は縦横に且つ稠密に配置され、各ピクセル22はそれぞれ一定の位相値を有する。具体的には、第1の位相値φ1(たとえば0度)を有する第1ピクセル(図中斜線部で示す)22aと、第2の位相値φ2(たとえば60度)を有する第2ピクセル(図中空白部で示す)22bとを有する。位相変調素子1への入射光は、矢印22cで示すように図24において紙面の上面から裏面方向に透過する。
図24に示すように、結像光学系4の点像分布範囲Rに光学的に対応する単位範囲(図中破線の円で示す)当りの同一位相値のピクセル数が単位範囲毎に変化している。換言すれば、図23と同様に、位相値φ1の第1領域としての第1ピクセル22aと位相値φ2の第2領域としての第2ピクセル22bとの占有面積率が位置によって変化する位相分布を有する。
以上のように、図24に示す位相変調素子は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さいサイズの位相変調単位(ピクセル)22に基づく位相分布を有する。したがって、結像光学系4の点像分布範囲Rに光学的に対応する単位範囲(不図示)における第1ピクセル22aと第2ピクセル22bとの占有面積率を、すなわち複数の位相ベクトルの和を適宜変化させることにより、被処理基板上に形成される光強度分布を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。
図25は、本実施形態の実施例4における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。実施例4の位相変調素子1は、実施例3と類似の構成を有する。しかしながら、実施例4の位相変調素子1は、実施例1〜実施例3とは異なり、10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子である。また、実施例4では、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に配置されたドットパターンが実施例3と相違している。以下、実施例3との相違点に着目して、実施例4を説明する。
実施例4の位相変調素子1では、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に、結像光学系4の点像分布範囲の半径よりも光学的に小さい1.0μm角の正方形状の単位セル(不図示)を縦横に且つ稠密に仮想設定している。そして、横断線A−Aよりも図中上側の複数の単位セルの中に第1ドット領域1akが設けられ、横断線A−Aよりも図中下側の複数の単位セルの中に第2ドット領域1amが設けられている。ただし、単位領域1aの中央の縦横ライン上にはドット領域が設けられていない。また、単位領域1aは、対角線B−Bや対角線C−Cに関して対称なパターンを有する。
すなわち、実施例3ではドット領域の中心間隔が0.5μmであるのに対し、実施例4ではドット領域の中心間隔が1.0μmである。また、実施例4では、逆ピーク状の分布の近傍において光強度の比較的急峻な変化を保つために、1つの単位領域1aにおいて第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲の3つの第1ドット領域1akaおよび3つの第2ドット領域1amaを0.4μm角に設定している。なお、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの占有面積率を単位領域1aの中心から離れるにしたがって小さくなるように設定している点も実施例3と同様である。
実施例4において、光束分割素子2が介在しない場合、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図26に示すような光強度分布が形成される。すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図26(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図26(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図26(c)に示すような光強度分布が形成される。
図26(a)を参照すると、第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点(単位領域1aの中心)に対応して光強度の最も小さいボトムピークが形成されることがわかる。また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。また、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
実際には複屈折素子2Eを介して入射光束が偏光状態の異なる非干渉性の2つの光束に分割されるので、位相変調素子1の図中右側の単位領域1aを通過した正常光線oにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布と、図中左側の単位領域1aを通過した異常光線eにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布とが重ね合わされて合成される。その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図27に示すような光強度分布が形成される。図27において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
また、結像光学系4の焦点位置から10μmだけ結像光学系4側へデフォーカスして位置決めされた被処理基板5の表面には、図28に示すような光強度分布が形成される。図28において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。図27および図28を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.54から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.24μmから約1.50μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。
実施例4では、図1に示す結晶化装置において図25に示す構成を有する位相変調素子1を用いて、被処理基板5上の半導体(Si)薄膜を結晶化した。被処理基板5上で、たとえば図27に示す光強度分布と図28に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。図27および図28に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
図29は、本実施形態の実施例5における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。実施例5の位相変調素子1は実施例4と同様に、10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子であり、実施例4と類似の構成を有する。しかしながら、実施例5では、1つの単位領域1aにおいて第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲のすべて(図では5つ)の第1ドット領域1akaおよびすべて(図では5つ)の第2ドット領域1amaを0.4μm角に設定している点だけが実施例4と相違している。以下、実施例4との相違点に着目して、実施例5を説明する。
実施例5において、光束分割素子2が介在しない場合、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図30に示すような光強度分布が形成される。すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図30(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図30(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図30(c)に示すような光強度分布が形成される。
図30(a)を参照すると、第1位相領域1abと第2位相領域1acとの接点(単位領域1aの中心)に対応して光強度の最も小さいボトムピークが形成されることがわかる。また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。また、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
実際には複屈折素子2Eを介して入射光束が偏光状態の異なる非干渉性の2つの光束に分割されるので、位相変調素子1の図中右側の単位領域1aを通過した正常光線oにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布と、図中左側の単位領域1aを通過した異常光線eにより被処理基板5の表面上に形成される光強度分布とが重ね合わされて合成される。その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図31に示すような光強度分布が形成される。図31において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
また、結像光学系4の焦点位置から10μmだけ結像光学系4側へデフォーカスして位置決めされた被処理基板5の表面には、図32に示すような光強度分布が形成される。図32において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。図31および図32を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.53から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.30μmから約1.50μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。実施例5で得られた合成光強度分布では、その異方性が実施例4よりも小さくなっている。
実施例5では、図1に示す結晶化装置において図29に示す構成を有する位相変調素子1を用いて、被処理基板5上の半導体(Si)薄膜を結晶化した。被処理基板5上で、たとえば図31に示す光強度分布と図32に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。図31および図32に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
なお、上述の実施形態の各実施例において、光強度分布は設計の段階でも計算できるが、実際の被処理面での光強度分布を観察して確認しておくことが望ましい。そのためには、被処理基板の被処理面を光学系で拡大し、CCDなどの撮像素子で入力すれば良い。使用光が紫外線の場合は、光学系が制約を受けるため、被処理面に蛍光板を設けて可視光に変換しても良い。また、上述の実施形態の各実施例では、位相変調素子1について具体的な構成例を例示したが、位相変調素子1の構成については本発明の範囲内において様々な変形例が可能である。
ところで、上述の実施形態の各実施例において、複屈折素子2Eを位相変調素子1の近傍に配置している。しかしながら、これに限定されることなく、複屈折素子2Eを位相変調素子1と被処理基板5との間に配置することにより、上述の複像効果を有効に発生させることができる。具体的には、複屈折素子2Eを位相変調素子1と結像光学系4との間に配置するか、あるいは結像光学系4と被処理基板5との間に配置することが望ましい。また、複屈折素子2Eの光入射面を表面加工することにより所望する位相差を得るための段差を設けて、複屈折素子2Eの機能と位相変調素子1の機能とを一体化することも可能である。即ち、光学変調手段と光束分割手段とを一体に形成してもよい。
また、上述の実施形態の各実施例では、複屈折素子2Eが1枚の複屈折性の平行平面板により構成されているので、正常光線oと異常光線eとで光路長が異なる。このため、複屈折素子2Eを介して分割された2つの光束の間に位相差が生じ、この2つの光束の結像位置が光軸方向に分離してしまう。この問題を回避するための、光束分割素子2として、結晶光学軸が光軸に対してそれぞれ所定の角度をなすように設定された複屈折性の一対の平行平面板からなるサバール(Savart)板を用いることができる。あるいは、位相差による結像位置の分離問題を回避するために、光束分割素子2として、いわゆるフランコン(Francon)によるサバール板の変形を用いることができる。
また、上述の実施形態の各実施例では、光束分割素子2として、位相変調素子1の近傍に配置された複屈折素子2Eを用いている。しかしながら、これに限定されることなく、複屈折素子2Eに代えて、結像光学系4の瞳面またはその近傍に配置されたウォラストンプリズムを用いることができる。ウォラストンプリズムは、結晶光学軸が光軸に対してそれぞれ所定の角度をなすように設定された複屈折性の一対の偏光プリズムにより構成される。
図33は、本実施形態にかかるボトムゲート型薄膜トランジスタの製造プロセスを示す工程図である。なお、本実施例では、便宜上Nチャネル型の薄膜トランジスタの製造方法を示すが、Pチャネル型でも不純物種(ドーパント種)を変えるだけで全く同様である。ここでは、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造方法を示す。まず、図33(a)に示す様に、ガラスなどからなる絶縁基板100の上にAl,Ta,Mo,W,Cr,Cu又はこれらの合金を100〜300nmの厚みで形成し、パターニングしてゲート電極101に加工する。
次いで、図33(b)に示す様に、ゲート電極101の上にゲート絶縁膜を形成する。本実施形態では、ゲート絶縁膜は、ゲート窒化膜102(SiNX)/ゲート酸化膜103(SiO2)の二層構造を用いた。ゲート窒化膜102は、SiH4ガスとNH3ガスとの混合物を原料気体として用い、プラズマCVD法(PE−CVD法)で成膜した。なお、プラズマCVDに代えて常圧CVDあるいは減圧CVDを用いてもよい。本実施形態では、ゲート窒化膜102を50nmの厚みで堆積した。ゲート窒化膜102の成膜に連続して、ゲート酸化膜103を約200nmの厚みで成膜する。
更に、ゲート酸化膜103の上に連続的に、非晶質シリコンからなる半導体薄膜104を約50〜200nmの厚みで成膜した。さらに半導体薄膜104の上に、SiO2からなる絶縁膜140を300nmの厚みで成膜した。二層構造のゲート絶縁膜と非晶質半導体薄膜104と絶縁膜140とは、成膜チャンバの真空系を破らず連続成膜した。以上の成膜でプラズマCVD法を用いた場合には、400〜450°Cの温度で窒素雰囲気中1時間程度の加熱処理により脱水素アニールし、非晶質半導体薄膜104に含有されていた水素を放出する。
次に、例えば実施例1〜5に示した方式の本発明の方法に従って、レーザ光150を照射し、非晶質半導体薄膜104を結晶化する。レーザ光150としては、エキシマレーザビームを用いることができる。レーザ光150の照射領域を調整した後、照射領域に位相変調素子の周期的なパターンを転写することができるようにレーザ光150のフォーカスを合わせて照射し、更に重複しない様に領域をずらして繰り返し照射して、所定の面積を結晶化する。続いて、絶縁膜140をエッチング等の方法により剥離する。
次いで、図33(c)に示す様に、薄膜トランジスタのVthを制御する目的で、Vthイオンインプランテーションを必要に応じて行う。本実施例では、B+をドーズ量が5×1011〜4×1012/cm2 程度となるようにイオン注入した。このVthイオンインプランテーションでは、10KeVで加速されたイオンビームを用いた。続いて、前工程で結晶化された多結晶半導体薄膜105の上に、例えばプラズマCVD法でSiO2を約100nm〜300nmの厚みで形成する。本実施例では、シランガスSH4と酸素ガスとをプラズマ分解してSiO2を堆積した。
この様にして成膜されたSiO2を所定の形状にパターニングして、ストッパー膜106に加工する。この場合、裏面露光技術を用いて、ゲート電極101と整合する様にストッパー膜106をパターニングしている。ストッパー膜106の直下に位置する多結晶半導体薄膜105の部分は、チャネル領域Chとして保護される。前述した様に、チャネル領域Chには、予めVthイオンインプランテーションによりB+イオンが比較的低ドーズ量で注入されている。続いて、ストッパー膜106をマスクとしてイオンドーピングにより不純物(例えばP+イオン)を半導体薄膜105に注入し、LDD領域を形成する。この時のドーズ量は、例えば5×1012〜1×1013/cm2であり、加速電圧は例えば10KeVである。
更に、ストッパー膜106及びその両側のLDD領域を被覆する様にフォトレジストをパターニング形成した後、これをマスクとして不純物(例えばP+イオン)を高濃度で注入し、ソース領域S及びドレイン領域Dを形成する。不純物注入には、例えばイオンドーピング(イオンシャワー)を用いることができる。これは、質量分離を掛けることなく電界加速で不純物を注入するものであり、本実施例では1×1015/cm2程度のドーズ量で不純物を注入し、ソース領域S及びドレイン領域Dを形成した。加速電圧は、例えば10KeVである。なお、図示しないが、Pチャネルの薄膜トランジスタを形成する場合には、Nチャネル型薄膜トランジスタの領域をフォトレジストで被覆した後、不純物をP+イオンからB+イオンに切り換えドーズ量1×1015/cm2程度でイオンドーピングすればよい。
なお、ここでは、質量分離型のイオンインプランテーション装置を用いて不純物を注入してもよい。この後、RTA(急速熱アニール)160により、多結晶半導体薄膜105に注入された不純物を活性化する。場合によっては、エキシマレーザを用いたレーザ活性化アニール(ELA)を行っても良い。この後、半導体薄膜105とストッパー膜106の不要な部分を同時にパターニングし、素子領域毎に薄膜トランジスタを分離する。
最後に、図33(d)に示す様に、SiO2を約100〜200nmの厚みで成膜して、層間絶縁膜107とする。層間絶縁膜107の形成後、SiNXをプラズマCVD法で約200〜400nm成膜して、パシベーション膜(キャップ膜)108とする。この段階で、窒素ガス又はフォーミングガス中又は真空中雰囲気下において350〜400°C程度で1時間加熱処理し、層間絶縁膜107に含まれる水素原子を半導体薄膜105中に拡散させる。この後、コンタクトホールを開口し、Mo,Alなどを100〜200nmの厚みでスパッタした後、所定の形状にパターニングして配線電極109に加工する。
更に、アクリル樹脂などからなる平坦化層110を1μm程度の厚みで塗布した後、コンタクトホールを開口する。平坦化層110の上にITOなどからなる透明導電膜をスパッタした後、所定の形状にパターニングして画素電極111に加工する。図10に示すような大粒径結晶粒アレイの結晶粒の位置に合わせてチャネルを形成するので、高移動度の優れた薄膜トランジスタが形成される。
図34は、本実施形態にかかるトップゲート型薄膜トランジスタの製造プロセスを示す工程図である。なお、本実施例では、実施例6と異なり、トップゲート構造の薄膜トランジスタを作製している。まず、図34(a)に示す様に、絶縁基板100の上に、バッファ層となる二層の下地膜106a,106bをプラズマCVD法により連続成膜する。一層目の下地膜106aはSiNXからなり、その膜厚は500nmである。
又、二層目の下地膜106bはSiO2からなり、その膜厚は同じく500nmである。このSiO2からなる下地膜106bの上に、非晶質シリコンからなる半導体薄膜104を50〜200nmの厚みでプラズマCVD法もしくはLPCVD法により成膜する。さらに、SiO2からなる絶縁膜140を200nmの厚みで成膜する。非晶質シリコンからなる半導体薄膜104の成膜にプラズマCVD法を用いた場合には、膜中の水素を脱離させる為に、窒素雰囲気中で400〜450°Cの条件で1時間程度アニールする。
次に、例えば実施例1〜5に示した方式の本発明の方法に従って、非晶質半導体薄膜104を結晶化する。レーザ光150の照射領域を調整した後、照射領域に位相変調素子の周期的なパターンの配列を転写することができるようにレーザ光150のフォーカスを合わせて照射し、更に重複しない様に領域をずらして繰り返し照射して、所定の面積を結晶化する。続いて絶縁膜140をエッチング等の方法で剥離する。
ここで、必要ならば、前述した様にVthイオンインプランテーションを行ない、B+イオンを例えばドーズ量5×1011〜4×1012/cm2程度で半導体薄膜104に注入する。この場合の加速電圧は、10KeV程度である。続いて、図34(b)に示す様に、結晶化したシリコン半導体薄膜105をアイランド状にパターニングする。この上に、プラズマCVD法、常圧CVD法、減圧CVD法、ECR−CVD法、スパッタ法などでSiO2を10〜400nm成長させ、ゲート絶縁膜103とする。本実施例では、ゲート絶縁膜103の厚みを100nmにした。
次いで、ゲート絶縁膜103の上に、Al,Ti,Mo,W,Ta,ドープト多結晶シリコンなど、あるいはこれらの合金を200〜800nmの厚みで成膜し、所定の形状にパターニングしてゲート電極101に加工する。次いで、P+イオンを質量分離を用いたイオン注入法で半導体薄膜105に注入し、LDD領域を設ける。このイオン注入はゲート電極101をマスクとして絶縁基板100の全面に対して行う。ドーズ量は、6×1012〜5×1013/cm2である。加速電圧は、例えば90KeVである。
なお、ゲート電極101の直下に位置するチャネル領域Chは保護されており、Vthイオンインプランテーションで予め注入されたB+イオンがそのまま保持されている。LDD領域に対するイオン注入後、ゲート電極101とその周囲を被覆する様にレジストパターンを形成し、P+イオンを質量非分離型のイオンシャワードーピング法で高濃度に注入し、ソース領域S及びドレイン領域Dを形成する。この場合のドーズ量は、例えば1×1015/cm2程度である。加速電圧は、例えば90KeVである。ドーピングガスには、水素希釈の20%PH3ガスを用いた。
CMOS回路を形成する場合には、Pチャネル薄膜トランジスタ用のレジストパターンを形成後、ドーピングガスを5〜20%のB2H6/H2ガス系に切り換え、ドーズ量を1×1015〜3×1015/cm2程度、加速電圧は例えば90KeVでイオン注入すればよい。なお、ソース領域S及びドレイン領域Dの形成は、質量分離型のイオン注入装置を用いてもよい。この後、半導体薄膜105に注入されたドーパントの活性化処理となる。この活性化処理は、実施例6と同様に、紫外線ランプを使ったRTA160を用いることができる。
最後に、図34(c)に示す様に、ゲート電極101を被覆する様にPSGなどからなる層間絶縁膜107を成膜する。この層間絶縁膜107の成膜後、SiNXをプラズマCVD法で約200〜400nm堆積しパシベーション膜(キャップ膜)108とする。この段階で、窒素ガス中において350°Cの温度で1時間程度アニールし、層間絶縁膜107に含有された水素を半導体薄膜105中に拡散させる。この後、コンタクトホールを開口する。
更に、パシベーション膜108の上にAl−Siなどをスパッタリングで成膜した後、所定の形状にパターニングして配線電極109に加工する。更に、アクリル樹脂などからなる平坦化層110を約1μmの厚みで塗工後、これにコンタクトホールを開口する。平坦化層110の上にITOなどからなる透明導電膜をスパッタリングし、所定の形状にパターニングして画素電極111に加工する。
図34に示した実施例7では、図33の実施例6で説明した方法と同様にして非晶質半導体薄膜を結晶化させる。但し、トップゲート構造である本実施例の場合は、ボトムゲート構造である実施例6と異なり、ゲート電極のパターンが形成される前の段階で結晶化を行う為、ガラスなどからなる絶縁基板の収縮については実施例6よりも許容度が大きい。そのため、より大出力のレーザ照射装置を用いて結晶化処理を行うことができる。図10に示すような大粒径結晶粒アレイの結晶粒の位置に合わせてチャネルを形成するので、高移動度の優れた薄膜トランジスタが形成される。
図35は、実施例6又は実施例7に係る薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型表示装置の一例を示す。図示する様に、本表示装置は、一対の絶縁基板201,202と両者の間に保持された電気光学物質203とを備えたパネル構造を有する。電気光学物質203としては、液晶材料が広く用いられている。下側の絶縁基板201には、画素アレイ部204と駆動回路部とが集積形成されている。駆動回路部は、垂直駆動回路205と水平駆動回路206とに分かれている。
また、絶縁基板201の周辺部上端には、外部接続用の端子部207が形成されている。端子部207は、配線208を介して垂直駆動回路205及び水平駆動回路206に接続している。画素アレイ部204には、行状のゲート配線209と列状の信号配線210とが形成されている。両配線の交差部には、画素電極211と、これを駆動する薄膜トランジスタ212とが形成されている。薄膜トランジスタ212のゲート電極は対応するゲート配線209に接続し、ドレイン領域は対応する画素電極211に接続し、ソース領域は対応する信号配線210に接続している。
ゲート配線209は、垂直駆動回路205に接続している。一方、信号配線210は、水平駆動回路206に接続している。画素電極211をスイッチング駆動する薄膜トランジスタ212及び垂直駆動回路205と水平駆動回路206とに含まれる薄膜トランジスタは、本発明に従って作製されたものであり、従来に比較して移動度が高くなっている。従って、駆動回路ばかりでなく更に高性能な処理回路を集積形成することも可能である。
以上の本発明の結晶化方法により作製した結晶化半導体薄膜は、薄膜トランジスタに適用され、移動度が高いという優れたTFT特性を示すので、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)やEL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどの駆動回路や、メモリ(SRAMやDRAM)やCPUなどの集積回路などに適用可能である。
本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。
図1の照明系の内部構成を概略的に示す図である。
実施例1の位相変調素子の構成を概略的に示す図である。
実施例1において光束分割素子を用いないときに位相変調素子により得られる光強度分布を示す図である。
本実施形態の各実施例における光束分割素子の構成および作用を説明する図である。
実施例1において位相変調素子と光束分割素子とにより焦点位置で得られる光強度分布を示す図である。
実施例1において位相変調素子と光束分割素子とによりデフォーカス位置で得られる光強度分布を示す図である。
本発明における半導体薄膜の結晶化過程を概略的に示す図である。
図8に示す結晶化過程を実現するのに適した光強度分布の一例を概略的に示す図である。
位相変調素子における単位領域の配列パターンと形成される結晶組織のアレイパターンとの関係の一例を模式的に示す図である。
位相変調素子における単位領域の配列パターンと形成される結晶組織のアレイパターンとの関係の別の例を模式的に示す図である。
本実施形態の実施例2における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。
実施例2において光束分割素子を用いないときに位相変調素子により得られる光強度分布を示す図である。
実施例2において位相変調素子と光束分割素子とにより焦点位置で得られる光強度分布を示す図である。
実施例2において位相変調素子と光束分割素子とによりデフォーカス位置で得られる光強度分布を示す図である。
本実施形態の実施例3における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。
実施例3において光束分割素子を用いないときに位相変調素子により得られる光強度分布を示す図である。
実施例3において位相変調素子と光束分割素子とにより焦点位置で得られる光強度分布を示す図である。
実施例3において位相変調素子と光束分割素子とによりデフォーカス位置で得られる光強度分布を示す図である。
ドット領域の占有面積率と光強度分布とに関する原理を説明する図である。
点像分布範囲R内での位相の変化と光強度との典型的な関係を示す図である。
結像光学系における瞳関数と点像分布関数との関係を示す図である。
図16に示す位相変調素子のドット領域に対応するセル型の構成を概略的に示す図である。
図16に示す位相変調素子のドット領域とは異なるピクセル型の構成を概略的に示す図である。
本実施形態の実施例4における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。
実施例4において光束分割素子を用いないときに位相変調素子により得られる光強度分布を示す図である。
実施例4において位相変調素子と光束分割素子とにより焦点位置で得られる光強度分布を示す図である。
実施例4において位相変調素子と光束分割素子とによりデフォーカス位置で得られる光強度分布を示す図である。
本実施形態の実施例5における位相変調素子の構成を概略的に示す図である。
実施例5において光束分割素子を用いないときに位相変調素子により得られる光強度分布を示す図である。
実施例5において位相変調素子と光束分割素子とにより焦点位置で得られる光強度分布を示す図である。
実施例5において位相変調素子と光束分割素子とによりデフォーカス位置で得られる光強度分布を示す図である。
本実施形態にかかるボトムゲート型薄膜トランジスタの製造プロセスを示す工程図である。
本実施形態にかかるトップゲート型薄膜トランジスタの製造プロセスを示す工程図である。
本実施形態にかかる表示装置の構成を概略的に示す斜視図である。
符号の説明
1 位相変調素子
1a 位相変調素子の単位領域
2 光束分割素子
2E 複屈折素子
3 照明系
3a KrFエキシマレーザ光源
3b ビームエキスパンダ
3c,3e フライアイレンズ
3d,3f コンデンサー光学系
4 結像光学系
4c 開口絞り
5 被処理基板
6 基板ステージ
10 単位基板領域
11 成長性結晶核
12 溶融領域
13 双晶粒界
14 固液界面
15 結晶粒界