JP2004349433A - 結晶化装置、結晶化方法およびデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することのできる結晶化装置。
【解決手段】互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイ(1)と、レンズアレイを照明するための照明系(2)とを備えている。照明系は、レンズアレイを介して半導体膜(3)に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成するために、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向からレンズアレイに照射する。
【選択図】 図1
【解決手段】互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイ(1)と、レンズアレイを照明するための照明系(2)とを備えている。照明系は、レンズアレイを介して半導体膜(3)に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成するために、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向からレンズアレイに照射する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶化装置、結晶化方法およびデバイスに関する。特に、本発明は、所定の光強度分布を有するレーザ光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置および結晶化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば液晶表示装置(Liquid−Crystal−Display:LCD)の画素に印加する電圧を制御するスイッチング素子などに用いられる薄膜トランジスタ(Thin−Film−Transistor:TFT)は、非晶質シリコン(amorphous−Silicon)層や多結晶シリコン(poly−Silicon)層に形成されている。
【0003】
多結晶シリコン層は、非晶質シリコン層よりも電子又は正孔の移動度が高い。したがって、多結晶シリコン層にトランジスタを形成した場合、非晶質シリコン層に形成する場合よりも、スイッチング速度が速くなり、ひいてはディスプレイの応答が速くなる。また、周辺LSIを薄膜トランジスタで構成することが可能になる。さらに、他の部品の設計マージンを減らせるなどの利点がある。また、ドライバ回路やDACなどの周辺回路は、ディスプレイに組み入れる場合に、それらの周辺回路をより高速に動作させることができる。
【0004】
多結晶シリコンは結晶粒の集合からなるが、単結晶シリコンに比べると電子又は正孔の移動度が低い。また、多結晶シリコンに形成された多数の薄膜トランジスタは、チャネル部における結晶粒界数のバラツキが問題となる。そこで、最近、電子又は正孔の移動度を向上させ且つチャネル部における結晶粒界数のバラツキをなくすために、大粒径の結晶化シリコンを生成する結晶化方法が提案されている。
【0005】
従来、この種の結晶化方法として、多結晶半導体膜または非晶質半導体膜と平行に近接させた位相シフターにエキシマレーザ光を照射して結晶化半導体膜を生成する「位相制御ELA(Excimer Laser Annealing)法」が知られている。位相制御ELA法の詳細は、たとえば「表面科学Vol.21, No.5, pp.278−287, 2000」に開示されている。
【0006】
位相制御ELA法では、位相シフターの位相シフト部に対応する点において光強度がほぼ0の逆ピークパターン(中心において光強度がほぼ0で周囲に向かって光強度が急激に増大するパターン)の光強度分布を発生させ、この逆ピークパターンの光強度分布を有する光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射する。その結果、光強度分布に応じて溶融領域に温度勾配が生じ、光強度がほぼ0の点に対応して最初に凝固する部分に結晶核が形成され、その結晶核から周囲に向かって結晶が横方向に成長(以降、「ラテラル成長」もしくは「ラテラル方向成長」とよぶ)することにより大粒径の単結晶粒が生成される。
【0007】
従来、特開2000−306859号公報には、位相シフトマスク(位相シフター)を介して発生させた逆ピークパターンの光強度分布を有する光を半導体膜に照射して結晶化を行う技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−306859号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術では、直線状(または曲線状)の位相シフト段差を組み合わせた位相シフターにより光強度分布を生成する。このため、位相シフターの1つの単位要素を介して形成される光強度分布は、基本的に均一な光強度分布の中に光強度の非常に小さい部分が存在するような分布である。したがって、輝点を組み合わせてパターンを生成する場合と比べて設計の自由度が少なく、たとえば、黒の領域(光強度の非常に小さい領域)の中に1点だけ白の領域(所定の光強度を有する領域)を有するようなパターンを生成することはできない。また、位相シフターの1つの単位要素を介して形成される光強度分布は、基本的に線状であり、点状のパターン、例えば、黒の領域の中に1点だけ白の領域を有するようなパターンを生成することはできない。
【0010】
後述するように、結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成するには、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布が好適である。しかしながら、位相シフターを用いる従来技術では、上述の理由により、結晶化に適した凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を得ることができない。
【0011】
なお、結晶化に適した光強度分布を得るために、従来のクロムマスクや位相シフトマスクなどを介して投影露光する方法も考えられる。しかしながら、これらの方法は、基本的にはバイナリパターンを生成するものであり、階調を有するパターンを生成することはできない。また、結晶化に適した光強度分布を得るために、階調を有するパターンを生成することのできる光吸収材料をマスクに用いることも考えられる。しかしながら、半導体膜の結晶化のために必要な大きな光強度(たとえば100mJ/cm2)に耐え得る材料はなく、また光吸収に起因する発熱等の問題もあり、その実現には困難を伴う。
【0012】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、結晶核からの十分な長さのラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することのできる結晶化装置、結晶化方法およびデバイスを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイと、
前記レンズアレイを照明するための照明系とを備え、
前記照明系は、前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成するために、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向から前記レンズアレイに照射することを特徴とする結晶化装置を提供する。
【0014】
この構成では、レンズアレイに照射する各光束の光強度を意図的に制御することにより、半導体膜の表面に任意の光強度分布を形成することができる。具体的には、たとえば凹型パターンの光強度分布と、この凹型パターンの光強度分布で光強度の小さい部分における逆ピークパターンの光強度分布との合成光強度分布、すなわち凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を形成することができる。その結果、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
【0015】
第1形態の好ましい態様によれば、前記多結晶半導体膜または前記非晶質半導体膜は、前記レンズアレイの後側焦点またはその近傍に配置されている。また、前記レンズアレイは、二次元的に且つ稠密に配置された複数のレンズ要素からなることが好ましい。
【0016】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記レンズアレイの互いに隣接する2つのレンズ要素を介して前記多結晶半導体膜または前記非晶質半導体膜上に形成される2つの光パターンは互いにほぼ接する。また、前記レンズ要素は、屈折型のレンズ要素または回折型のレンズ要素であることが好ましい。
【0017】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記照明系は、光の通過位置によって透過率の異なる透過率変調素子を有する。この場合、前記照明系はフライアイレンズを有し、前記透過率変調素子は前記フライアイレンズの射出面の近傍に配置されていることが好ましい。
【0018】
あるいは、第1形態の好ましい態様によれば、前記照明系は、所定面に入射する光束の光強度分布を制御するためのホログラムとを有する。この場合、前記照明系はフライアイレンズを有し、前記ホログラムは前記フライアイレンズに入射する光束の光強度分布を制御することが好ましい。
【0019】
本発明の第2形態では、互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイに対して、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向から照射し、前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射することにより結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化方法を提供する。この場合も結晶化装置の場合と同様に、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布に基づいて、結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
【0020】
本発明の第3形態では、第1形態の結晶化装置または第2形態の結晶化方法を用いて製造されたことを特徴とするデバイスを提供する。この場合、結晶核からの十分なラテラル成長を実現して得られた大粒径の結晶化半導体膜に基づいて、良好な半導体デバイスや液晶表示デバイスなどを製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の基本原理を説明する図である。図1(a)を参照すると、互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素1aからなるレンズアレイ1の後側焦点またはその近傍に、多結晶半導体膜(または非晶質半導体膜)が形成された被処理基板3が位置決めされている。そして、レンズアレイ1には、光強度の異なる複数の光束が互いに異なる方向から照射されている。
【0022】
以下、説明を簡単にするために、5つの光束a〜eが互いに異なる方向からレンズアレイ1に照射されているものとする。また、光束aは光軸と平行な(すなわち光軸と0度の角度をなす)平行光束であり、光束b,c,d,eはそれぞれ光軸とΔθ,2Δθ,3Δθ,4Δθの角度をなす平行光束であるものとする。各光束a〜eは、各レンズ要素1aによりそれぞれ集光され、被処理基板3の表面(露光面)に集光してスポットを形成する。
【0023】
このとき、各光束a〜eにおいて入射角度をθとし、各レンズ要素1aのレンズの後側主点と被処理基板3の表面との間隔をdとし、被処理基板3の表面において各レンズ要素1aの光軸に対応する中心点から当該レンズ要素1aを介して形成されるスポットの中心までの距離をLとすると、次の式(1)に示す関係が成立する。
L=d×tanθ≒d×θ (1)
【0024】
このように、互いに異なる入射角θを有する5つの光束a〜eは、1つのレンズ要素1aを介して、被処理基板3の表面に5つの光束スポットを形成する。このとき、入射角度間隔Δθとスポット間隔ΔLとの間には、次の式(2)に示す関係が成立する。
ΔL=d×Δθ (2)
【0025】
すなわち、光束aにより形成されるスポットの中心は上記中心点と一致し、光束b,c,d,eにより形成されるスポットの中心は上記中心点からそれぞれΔL,2ΔL,3ΔL,4ΔLだけ離れることになる。また、スポットの大きさすなわちスポット径(円形の場合には直径)Rは、光の波長をλとし、各レンズ要素1aの開口数をNAとすると、回折限界により次の式(3)により表わされる。
R=1.22×λ/NA (3)
【0026】
こうして、光束の入射角度間隔Δθを十分小さくすることによりスポット間隔ΔLがスポット径Rの半分程度以下になるように設定すると、すなわち次の式(4)で表わされる条件式を、ひいては次の式(5)で表わされる条件式を満足するように設定すると、複数のスポットの集合が実質的に連続的な光強度分布を形成することになる。
ΔL<R/2 (4)
d×Δθ<0.61×λ/NA (5)
【0027】
ただし、上述の条件式(5)を満たさなくても、次の3つの方法によりスポット径Rを大きくすることにより、実質的に連続的な光強度分布を形成することが可能である。第1は、各光束を平行光束ではなく散乱させる方法である。第2は、被処理基板3の表面をレンズアレイ1の後側焦点から光軸方向に位置ずれ(デフォーカス)させる方法である。第3は、レンズアレイ1を構成する各レンズ要素1aに意図的な収差を付与する方法である。
【0028】
各光束a〜eが互いに同じ光強度を有する場合、1つのレンズ要素1aを介して被処理基板3の表面に形成される光強度分布はほぼ均一になる。しかしながら、各光束a〜eの光強度を意図的に制御すれば、被処理基板3の表面に任意の光強度分布を形成することができる。具体的には、光束aの光強度が最も小さく、光束eの光強度が最も大きく、光束aから光束eに向かって光強度が次第に大きくなるように適宜設定することにより、図1(b)に示すような光強度分布を形成することができる。なお、ここでの説明にはレンズアレイ1に入射する光束の入射角度が一次元的に分布する例を用いているが、実際には二次元的に分布することも可能である。図1(c)は二次元的に分布させた場合の例である。これについては実施例において詳述する。
【0029】
図1(b)および(c)に示す光強度分布は、凹型パターンの光強度分布10と、この凹型パターンの光強度分布10で光強度の小さい部分における逆ピークパターンの光強度分布11との合成光強度分布、すなわち凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布10,11である。凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布では、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布11の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布10における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。また、図1(c)に示すような二次元分布の場合は、逆ピークパターンの光強度分布11の作用により、結晶核の形成位置を、ひいては結晶成長開始点を二次元的に位置制御することができるという利点もある。
【0030】
さらに、互いに隣接する2つのレンズ要素1aを介して形成される2つの光強度分布(光パターン)が互いにほぼ接するように設定することにより、アレイ化された光強度分布を生成することが可能となり、高い充填率で結晶粒をアレイ状に生成することができる。
【0031】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。また、図3は、図1の照明系においてフライアイレンズの射出面の近傍に配置された透過率変調素子の構成を概略的に示す図である。図2を参照すると、本実施形態の結晶化装置は、二次元的に且つ稠密に配置された多数のレンズ要素(図2では不図示)1aからなるレンズアレイ1を照明するための照明系2を備えている。
【0032】
照明系2は、たとえば248nmの波長を有する光を供給するKrFエキシマレーザ光源2aを備えている。なお、光源2aとして、XeClエキシマレーザ光源やYAGレーザ光源のような他の適当な光源を用いることもできる。光源2aから供給されたレーザ光は、ビームエキスパンダ2bを介して拡大された後、第1フライアイレンズ2cに入射する。第1フライアイレンズ2cは、例えば複数の平凸レンズの組である。
【0033】
こうして、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面2c−pには複数の光源が形成され、これらの複数の光源からの光束は第1コンデンサー光学系2dを介して、第2フライアイレンズ2eの入射面を重畳的に照明する。その結果、第2フライアイレンズ2eの後側焦点面2e−pには、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面2c−pよりも多くの複数の光源が形成される。第2フライアイレンズ2eの後側焦点面2e−pに形成された複数の光源からの光束は、第2コンデンサー光学系2fを介して、レンズアレイ1を重畳的に照明する。第2フライアイレンズ2eは、例えば両凸レンズの組である。第2フライアイレンズ2eの後側焦点面2e−p近傍には、透過率変調素子2gが設けられる。
【0034】
ここで、第1フライアイレンズ2cおよび第1コンデンサー光学系2dは、第1ホモジナイザを構成し、この第1ホモジナイザにより光源2aから供給されたレーザ光についてレンズアレイ1の入射面上での入射角度に関する均一化が図られる。また、第2フライアイレンズ2eおよび第2コンデンサー光学系2fは第2ホモジナイザを構成し、この第2ホモジナイザにより第1ホモジナイザからの入射角度が均一化されたレーザ光についてレンズアレイ1の入射面上での面内各位置での光強度に関する均一化が図られる。レンズアレイ1の入射面は、第2コンデンサー光学系2fの後側焦点面に設けられる。
【0035】
レンズアレイ1を構成する各レンズ要素1aを通過したレーザ光は、被処理基板3の表面においてそれぞれ所定の光強度分布を有する光パターンを形成する。被処理基板3は、たとえば液晶ディスプレイ用板ガラスの上に化学気相成長法(CVD)により下地膜および非晶質シリコン膜が順次形成されたものである。被処理基板3は、真空チャックや静電チャックなどにより基板ステージ4上において予め定められた所定の位置に位置決めされて保持されている。
【0036】
上述したように、第1フライアイレンズ2cの作用により、第2フライアイレンズ2eの出射面またはその近傍には、比較的均一な光強度分布が形成される。本実施形態では、第2フライアイレンズ2eの射出面の近傍に、光の通過位置によって透過率の異なる透過率変調素子2gが配置されている。透過率変調素子2gは、図3に示すように、第2フライアイレンズ2eの各レンズエレメントにそれぞれ対応するように位置決めされた複数の開口部(光透過部)を有する。なお、図3において、斜線部は遮光部を示し、空白部は光透過部を示している。図3に示す透過率変調素子の例は、図1(b)に示した光強度分布を光軸に対して回転することにより得られる二次元的光強度分布を生成するための例である。
【0037】
具体的には、透過率変調素子2gにおいて、光軸AXに位置するレンズエレメントに対応する開口部が最も小さく、光軸AXから最も離れたレンズエレメントに対応する開口部が最も大きく設定されている。また、レンズエレメントが光軸AXから離れれば離れるほど、対応する開口部が大きくなるように設定されている。ここで、光軸AXに位置するレンズエレメントおよびこれに対応する最も小さな開口部を通過する光束は、光軸AXと0度の角度をなしてレンズアレイ1の入射面に入射する光強度の最も小さい平行光束になり、図1の光束aに対応することになる。
【0038】
一方、光軸AXから最も離れたレンズエレメントおよびこれに対応する最も大きな開口部を通過する光束は、光軸AXと最も大きな角度をなしてレンズアレイ1の入射面に入射する光強度の最も大きい平行光束になり、図1の光束eに対応することになる。また、その他のレンズエレメントおよびこれに対応する開口部を通過する光束は、レンズエレメントが光軸AXから離れれば離れるほど、レンズアレイ1への入射角度および光強度の大きい平行光束になり、図1の光束b〜eに対応することになる。透過率変調素子2gを透過した光束は、光強度と進行方向の異なる複数の光束となり、前記レンズアレイ1に照射される。
【0039】
こうして、本実施形態では、第2フライアイレンズ2eの射出面の近傍に配置された透過率変調素子2gの開口率分布により、たとえば図1(b)および(c)に示すような凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布が被処理基板3の表面に形成される。その結果、結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。また、逆ピークパターンの光強度分布の作用により、結晶核の形成位置を、ひいては結晶生成位置を二次元的に位置制御することができる。このとき結晶成長を開始する光強度が、逆ピークパターンの光強度分布11の内側にくるように設定することが望ましい。
【0040】
さらに、互いに隣接する2つのレンズ要素1aを介して形成される2つの光パターンが互いにほぼ接するように設定することにより、アレイ化された光強度分布を生成することができ、高い充填率で結晶粒をアレイ状に生成することができる。
【0041】
なお、上述の実施形態では、透過率変調素子2gが所定の開口率分布を有するように形成されている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえばSiOXNY等の半透過材料を用いて所定の厚さ分布を有する薄膜を形成することにより光透過率分布を制御してもよい。また、反射多層膜の反射率の分布により光透過率分布を制御する方法や、回折効率の分布により光透過率分布を制御する方法も可能である。
【0042】
図4は、本実施形態の変形例にかかる照明系の構成を概略的に示す図である。図4の変形例にかかる照明系は、図1の実施形態における照明系と類似の構成を有する。しかしながら、図4の変形例では、第1フライアイレンズ2cに代えてホログラム2hを配置し且つ透過率変調素子2gの設置を省略している点が図1の実施形態と基本的に相違している。以下、図1の実施形態との相違点に着目して、図4の変形例を説明する。
【0043】
図4を参照すると、ホログラム2hは第1コンデンサー光学系2dの前側焦点またはその近傍に配置され、第2フライアイレンズ2eの入射面は第1コンデンサー光学系2dの後側焦点またはその近傍に配置されている。ホログラム2hの像は、第2フライアイレンズ2eの出射面上に結像され、ホログラムを光源と考えると基本的なケーラー照明の構成となる。なお、第2フライアイレンズ2eの出射面全体における光強度分布は、第2フライアイレンズ2eの入射面における光強度分布と実質的に同じである。図4の配置ではホログラム2hと第2フライアイレンズ2eの入射面は光学的フーリエ変換の関係にある。したがってこの配置においては、ホログラム2hはフーリエ変換ホログラムが最適である。
【0044】
そこで、図4の変形例では、たとえば図1(b)および(c)に示すような凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を被処理基板3の表面に形成するのに必要な面光源の光強度分布、ひいては第2フライアイレンズ2eの入射面における光強度分布を、フーリエ変換ホログラム2hの作用により実現する。換言すれば、フーリエ変換ホログラム2hの作用により第2フライアイレンズ2eの入射面に形成される光強度分布を制御し、ひいては被処理基板3の表面に所望の光強度分布、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を形成する。
【0045】
なお、フーリエ変換ホログラムについては、辻内順平著,「ホログラフィー」,しょう華房,p25などに記載されている。また、ホログラム作成方法として計算機ホログラムを用いる方法が有力であるが、その設計方法は、「計算機ホログラムの最適化手法」,O plus E,No.204,p83などに記載されている。また、計算機ホログラム以外にも、所定の光学系、例えばフーリエ変換光学系と透過率変調素子とを組み合わせた光学系を用いて感光材料に記録する方法も可能である。もちろん、照明系2の光学系を対応した配置にすることにより、フーリエ変換ホログラム以外のホログラムを利用することもできる。
【0046】
ところで、ホログラムが完全でない場合には不要な0次光が発生し、この不要0次光は第2フライアイレンズ2eの光軸AXに位置する中央レンズエレメントに入射する。この場合、中央レンズエレメントに透過率フィルターを設けることにより、あるいは中央レンズエレメントの入射光または射出光を完全に遮ることにより、不要0次光の問題を解決することができる。なお、結晶化に必要な非常に大きな光強度に耐えるために、光透過材料の表面に凹凸の形で干渉縞を形成するレリーフホログラムと呼ばれる方法を用いることが望ましい。
【0047】
図5は、図1の実施形態の数値実施例における透過率変調素子の開口率分布を示す図である。また、図6は、図1の実施形態の数値実施例において被処理基板の表面に形成される光強度分布を模式的に示す図である。数値実施例では、KrFエキシマレーザ光源2aから供給されるレーザ光の波長λを0.248μmと想定している。また、10μm×10μmの正方形状のレンズ要素1aを縦横に且つ稠密に21個×21個=441個配置することによりレンズアレイ1が構成されているものと想定している。
【0048】
また、レンズアレイ1の焦点距離(ひいては各レンズ要素1aの焦点距離)fを60μmと想定し、各レンズ要素1aのレンズ主点と被処理基板3の表面との間隔dを60μmと想定し、入射角度間隔Δθを0.0083rad(ラジアン)と想定している。その結果、レンズアレイ1の開口数NAは約0.083(NA≒5/60)になり、スポット径Rは約1.8μm(R=1.22×0.248/0.083)になり、スポット間隔ΔLは約0.5μm(ΔL=d×Δθ=60×0.0083)になる。
【0049】
また、第2フライアイレンズ2eの射出面に配置された透過率変調素子2gは図5に示すような開口率分布を有するものと想定している。なお、透過率変調素子2gの開口率分布は縦方向のセンターラインおよび横方向のセンターラインに関して対称であり、図5には透過率変調素子2gの約1/4の領域の開口率分布だけを示している。この21個×21個=441個の配置はフライアイレンズの配置に対応している。図5を参照すると、透過率変調素子2gにおいて、第2フライアイレンズ2eの光軸AXに位置する中央レンズエレメントに対応する開口率が0で最も小さく、光軸AXから横方向に最も離れたレンズエレメントに対応する開口率が1で最も大きく設定されている。
【0050】
こうして、数値実施例では、入射角度間隔Δθを十分小さくすることによりスポット間隔ΔLがスポット径Rの半分以下になるように設定されている。その結果、図6に示すように、被処理基板3の表面には、実質的に連続的な光強度分布、すなわち凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布が形成された。なお、図6に示す光強度の値は各光束によるスポット単独の光強度値を図示したものである。光強度分布の微細な形状まで得るには、スポットの光強度分布およびスポット間隔の影響を考慮して計算する必要がある。
【0051】
なお、上述の実施形態において、レンズアレイ1を構成するレンズ要素は屈折型のレンズ要素に限定されることなく、たとえば回折型のレンズ要素を用いてレンズアレイ1を構成することもできる。
【0052】
また、上述の実施形態において、レンズアレイ1と被処理基板3との間に結像光学系を介在させる変形例も可能である。この場合、結像光学系によりレンズアレイ1の後側焦点面と被処理基板3の表面とが光学的にほぼ共役に配置されることになる。なお、結像光学系は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
【0053】
なお、以上の説明ではレンズアレイ1に対する入射光束は離散的な有限個数の平行光束の集合としていたが、入射角度により連続的に変化する単一の散乱光束でもよい。この構成を実現する場合は、例えば図2においてフライアイレンズ2eの代わりに拡散板を配置し、また透過率変調素子2gは離散的な透過率分布を有するものではなく連続的な透過率分布を有するものとすればよい。ただしこの場合、透過率変調素子2gは開口率を変調するものではなく、直接透過率を変調するものでなくてはならない。
【0054】
また、上述の実施形態において、光強度分布は設計の段階でも計算できるが、実際の被処理面での光強度分布を観察して確認しておくことが望ましい。そのためには、被処理基板3の被処理面を光学系で拡大し、CCDなどの撮像素子で入力すれば良い。使用光が紫外線の場合は、光学系が制約を受けるため、被処理面に蛍光板を設けて可視光に変換しても良い。
【0055】
図7は、本実施形態の結晶化装置を用いて結晶化された領域に電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。図7(a)に示すように、絶縁基板80(例えば、アルカリガラス、石英ガラス、プラスチック、ポリイミドなど)の上に、下地膜81(例えば、膜厚50nmのSiNおよび膜厚100nmのSiO2積層膜など)および非晶質半導体膜82(例えば、膜厚50nm〜200nm程度のSi,Ge,SiGeなど)を、化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜した被処理基板3を準備する。そして、図1に示す結晶化装置を用いて、非晶質半導体膜82の表面の一部もしくは全部例えば予め定められた領域に、レーザ光83(例えば、KrFエキシマレーザ光やXeClエキシマレーザ光など)を照射する。
【0056】
こうして、図7(b)に示すように、大粒径の結晶を有する多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84が生成される。次に、図7(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84を例えば薄膜トランジスタを形成するための領域となる島状の半導体膜85に加工し、表面にゲート絶縁膜86として膜厚20nm〜100nmのSiO2膜を化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜する。さらに、図7(d)に示すように、ゲート絶縁膜上にゲート電極87(例えば、シリサイドやMoWなど)を形成し、ゲート電極87をマスクにして不純物イオン88(Nチャネルトランジスタの場合にはリン、Pチャネルトランジスタの場合にはホウ素)をイオン注入する。その後、窒素雰囲気でアニール処理(例えば、450°Cで1時間)を行い、不純物を活性化して島状の半導体膜85にソース領域91、ドレイン領域92を形成する。次に、図7(e)に示すように、層間絶縁膜89を成膜してコンタクト穴をあけ、チャネル90でつながるソース91およびドレイン92に接続するソース電極93およびドレイン電極94を形成する。
【0057】
以上の工程において、図7(a)および(b)に示す工程で生成された多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84の大粒径結晶の位置に合わせて、チャネル90を形成する。以上の工程により、多結晶トランジスタまたは単結晶化半導体に薄膜トランジスタ(TFT)を形成することができる。こうして製造された多結晶トランジスタまたは単結晶化トランジスタは、液晶表示装置(ディスプレイ)やEL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどの駆動回路や、メモリ(SRAMやDRAM)やCPUなどの集積回路などに適用可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、レンズアレイに照射する各光束の光強度を意図的に制御することにより、半導体膜の表面に任意の光強度分布、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を形成することができる。その結果、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本原理を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】図1の照明系においてフライアイレンズの射出面の近傍に配置された透過率変調素子の構成を概略的に示す図である。
【図4】本実施形態の変形例にかかる照明系の構成を概略的に示す図である。
【図5】図1の実施形態の数値実施例における透過率変調素子の開口率分布を示す図である。
【図6】図1の実施形態の数値実施例において被処理基板の表面に形成される光強度分布を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態の結晶化装置を用いて電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。
【符号の説明】
1 レンズアレイ
1a レンズアレイを構成する各レンズ要素
2 照明系
2a KrFエキシマレーザ光源
2b ビームエキスパンダ
2c,2e フライアイレンズ
2d,2f コンデンサー光学系
2g 透過率変調素子
2h ホログラム
3 被処理基板
4 基板ステージ
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶化装置、結晶化方法およびデバイスに関する。特に、本発明は、所定の光強度分布を有するレーザ光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置および結晶化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば液晶表示装置(Liquid−Crystal−Display:LCD)の画素に印加する電圧を制御するスイッチング素子などに用いられる薄膜トランジスタ(Thin−Film−Transistor:TFT)は、非晶質シリコン(amorphous−Silicon)層や多結晶シリコン(poly−Silicon)層に形成されている。
【0003】
多結晶シリコン層は、非晶質シリコン層よりも電子又は正孔の移動度が高い。したがって、多結晶シリコン層にトランジスタを形成した場合、非晶質シリコン層に形成する場合よりも、スイッチング速度が速くなり、ひいてはディスプレイの応答が速くなる。また、周辺LSIを薄膜トランジスタで構成することが可能になる。さらに、他の部品の設計マージンを減らせるなどの利点がある。また、ドライバ回路やDACなどの周辺回路は、ディスプレイに組み入れる場合に、それらの周辺回路をより高速に動作させることができる。
【0004】
多結晶シリコンは結晶粒の集合からなるが、単結晶シリコンに比べると電子又は正孔の移動度が低い。また、多結晶シリコンに形成された多数の薄膜トランジスタは、チャネル部における結晶粒界数のバラツキが問題となる。そこで、最近、電子又は正孔の移動度を向上させ且つチャネル部における結晶粒界数のバラツキをなくすために、大粒径の結晶化シリコンを生成する結晶化方法が提案されている。
【0005】
従来、この種の結晶化方法として、多結晶半導体膜または非晶質半導体膜と平行に近接させた位相シフターにエキシマレーザ光を照射して結晶化半導体膜を生成する「位相制御ELA(Excimer Laser Annealing)法」が知られている。位相制御ELA法の詳細は、たとえば「表面科学Vol.21, No.5, pp.278−287, 2000」に開示されている。
【0006】
位相制御ELA法では、位相シフターの位相シフト部に対応する点において光強度がほぼ0の逆ピークパターン(中心において光強度がほぼ0で周囲に向かって光強度が急激に増大するパターン)の光強度分布を発生させ、この逆ピークパターンの光強度分布を有する光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射する。その結果、光強度分布に応じて溶融領域に温度勾配が生じ、光強度がほぼ0の点に対応して最初に凝固する部分に結晶核が形成され、その結晶核から周囲に向かって結晶が横方向に成長(以降、「ラテラル成長」もしくは「ラテラル方向成長」とよぶ)することにより大粒径の単結晶粒が生成される。
【0007】
従来、特開2000−306859号公報には、位相シフトマスク(位相シフター)を介して発生させた逆ピークパターンの光強度分布を有する光を半導体膜に照射して結晶化を行う技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−306859号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術では、直線状(または曲線状)の位相シフト段差を組み合わせた位相シフターにより光強度分布を生成する。このため、位相シフターの1つの単位要素を介して形成される光強度分布は、基本的に均一な光強度分布の中に光強度の非常に小さい部分が存在するような分布である。したがって、輝点を組み合わせてパターンを生成する場合と比べて設計の自由度が少なく、たとえば、黒の領域(光強度の非常に小さい領域)の中に1点だけ白の領域(所定の光強度を有する領域)を有するようなパターンを生成することはできない。また、位相シフターの1つの単位要素を介して形成される光強度分布は、基本的に線状であり、点状のパターン、例えば、黒の領域の中に1点だけ白の領域を有するようなパターンを生成することはできない。
【0010】
後述するように、結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成するには、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布が好適である。しかしながら、位相シフターを用いる従来技術では、上述の理由により、結晶化に適した凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を得ることができない。
【0011】
なお、結晶化に適した光強度分布を得るために、従来のクロムマスクや位相シフトマスクなどを介して投影露光する方法も考えられる。しかしながら、これらの方法は、基本的にはバイナリパターンを生成するものであり、階調を有するパターンを生成することはできない。また、結晶化に適した光強度分布を得るために、階調を有するパターンを生成することのできる光吸収材料をマスクに用いることも考えられる。しかしながら、半導体膜の結晶化のために必要な大きな光強度(たとえば100mJ/cm2)に耐え得る材料はなく、また光吸収に起因する発熱等の問題もあり、その実現には困難を伴う。
【0012】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、結晶核からの十分な長さのラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することのできる結晶化装置、結晶化方法およびデバイスを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイと、
前記レンズアレイを照明するための照明系とを備え、
前記照明系は、前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成するために、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向から前記レンズアレイに照射することを特徴とする結晶化装置を提供する。
【0014】
この構成では、レンズアレイに照射する各光束の光強度を意図的に制御することにより、半導体膜の表面に任意の光強度分布を形成することができる。具体的には、たとえば凹型パターンの光強度分布と、この凹型パターンの光強度分布で光強度の小さい部分における逆ピークパターンの光強度分布との合成光強度分布、すなわち凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を形成することができる。その結果、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
【0015】
第1形態の好ましい態様によれば、前記多結晶半導体膜または前記非晶質半導体膜は、前記レンズアレイの後側焦点またはその近傍に配置されている。また、前記レンズアレイは、二次元的に且つ稠密に配置された複数のレンズ要素からなることが好ましい。
【0016】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記レンズアレイの互いに隣接する2つのレンズ要素を介して前記多結晶半導体膜または前記非晶質半導体膜上に形成される2つの光パターンは互いにほぼ接する。また、前記レンズ要素は、屈折型のレンズ要素または回折型のレンズ要素であることが好ましい。
【0017】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記照明系は、光の通過位置によって透過率の異なる透過率変調素子を有する。この場合、前記照明系はフライアイレンズを有し、前記透過率変調素子は前記フライアイレンズの射出面の近傍に配置されていることが好ましい。
【0018】
あるいは、第1形態の好ましい態様によれば、前記照明系は、所定面に入射する光束の光強度分布を制御するためのホログラムとを有する。この場合、前記照明系はフライアイレンズを有し、前記ホログラムは前記フライアイレンズに入射する光束の光強度分布を制御することが好ましい。
【0019】
本発明の第2形態では、互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイに対して、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向から照射し、前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射することにより結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化方法を提供する。この場合も結晶化装置の場合と同様に、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布に基づいて、結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
【0020】
本発明の第3形態では、第1形態の結晶化装置または第2形態の結晶化方法を用いて製造されたことを特徴とするデバイスを提供する。この場合、結晶核からの十分なラテラル成長を実現して得られた大粒径の結晶化半導体膜に基づいて、良好な半導体デバイスや液晶表示デバイスなどを製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の基本原理を説明する図である。図1(a)を参照すると、互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素1aからなるレンズアレイ1の後側焦点またはその近傍に、多結晶半導体膜(または非晶質半導体膜)が形成された被処理基板3が位置決めされている。そして、レンズアレイ1には、光強度の異なる複数の光束が互いに異なる方向から照射されている。
【0022】
以下、説明を簡単にするために、5つの光束a〜eが互いに異なる方向からレンズアレイ1に照射されているものとする。また、光束aは光軸と平行な(すなわち光軸と0度の角度をなす)平行光束であり、光束b,c,d,eはそれぞれ光軸とΔθ,2Δθ,3Δθ,4Δθの角度をなす平行光束であるものとする。各光束a〜eは、各レンズ要素1aによりそれぞれ集光され、被処理基板3の表面(露光面)に集光してスポットを形成する。
【0023】
このとき、各光束a〜eにおいて入射角度をθとし、各レンズ要素1aのレンズの後側主点と被処理基板3の表面との間隔をdとし、被処理基板3の表面において各レンズ要素1aの光軸に対応する中心点から当該レンズ要素1aを介して形成されるスポットの中心までの距離をLとすると、次の式(1)に示す関係が成立する。
L=d×tanθ≒d×θ (1)
【0024】
このように、互いに異なる入射角θを有する5つの光束a〜eは、1つのレンズ要素1aを介して、被処理基板3の表面に5つの光束スポットを形成する。このとき、入射角度間隔Δθとスポット間隔ΔLとの間には、次の式(2)に示す関係が成立する。
ΔL=d×Δθ (2)
【0025】
すなわち、光束aにより形成されるスポットの中心は上記中心点と一致し、光束b,c,d,eにより形成されるスポットの中心は上記中心点からそれぞれΔL,2ΔL,3ΔL,4ΔLだけ離れることになる。また、スポットの大きさすなわちスポット径(円形の場合には直径)Rは、光の波長をλとし、各レンズ要素1aの開口数をNAとすると、回折限界により次の式(3)により表わされる。
R=1.22×λ/NA (3)
【0026】
こうして、光束の入射角度間隔Δθを十分小さくすることによりスポット間隔ΔLがスポット径Rの半分程度以下になるように設定すると、すなわち次の式(4)で表わされる条件式を、ひいては次の式(5)で表わされる条件式を満足するように設定すると、複数のスポットの集合が実質的に連続的な光強度分布を形成することになる。
ΔL<R/2 (4)
d×Δθ<0.61×λ/NA (5)
【0027】
ただし、上述の条件式(5)を満たさなくても、次の3つの方法によりスポット径Rを大きくすることにより、実質的に連続的な光強度分布を形成することが可能である。第1は、各光束を平行光束ではなく散乱させる方法である。第2は、被処理基板3の表面をレンズアレイ1の後側焦点から光軸方向に位置ずれ(デフォーカス)させる方法である。第3は、レンズアレイ1を構成する各レンズ要素1aに意図的な収差を付与する方法である。
【0028】
各光束a〜eが互いに同じ光強度を有する場合、1つのレンズ要素1aを介して被処理基板3の表面に形成される光強度分布はほぼ均一になる。しかしながら、各光束a〜eの光強度を意図的に制御すれば、被処理基板3の表面に任意の光強度分布を形成することができる。具体的には、光束aの光強度が最も小さく、光束eの光強度が最も大きく、光束aから光束eに向かって光強度が次第に大きくなるように適宜設定することにより、図1(b)に示すような光強度分布を形成することができる。なお、ここでの説明にはレンズアレイ1に入射する光束の入射角度が一次元的に分布する例を用いているが、実際には二次元的に分布することも可能である。図1(c)は二次元的に分布させた場合の例である。これについては実施例において詳述する。
【0029】
図1(b)および(c)に示す光強度分布は、凹型パターンの光強度分布10と、この凹型パターンの光強度分布10で光強度の小さい部分における逆ピークパターンの光強度分布11との合成光強度分布、すなわち凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布10,11である。凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布では、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布11の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布10における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。また、図1(c)に示すような二次元分布の場合は、逆ピークパターンの光強度分布11の作用により、結晶核の形成位置を、ひいては結晶成長開始点を二次元的に位置制御することができるという利点もある。
【0030】
さらに、互いに隣接する2つのレンズ要素1aを介して形成される2つの光強度分布(光パターン)が互いにほぼ接するように設定することにより、アレイ化された光強度分布を生成することが可能となり、高い充填率で結晶粒をアレイ状に生成することができる。
【0031】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。また、図3は、図1の照明系においてフライアイレンズの射出面の近傍に配置された透過率変調素子の構成を概略的に示す図である。図2を参照すると、本実施形態の結晶化装置は、二次元的に且つ稠密に配置された多数のレンズ要素(図2では不図示)1aからなるレンズアレイ1を照明するための照明系2を備えている。
【0032】
照明系2は、たとえば248nmの波長を有する光を供給するKrFエキシマレーザ光源2aを備えている。なお、光源2aとして、XeClエキシマレーザ光源やYAGレーザ光源のような他の適当な光源を用いることもできる。光源2aから供給されたレーザ光は、ビームエキスパンダ2bを介して拡大された後、第1フライアイレンズ2cに入射する。第1フライアイレンズ2cは、例えば複数の平凸レンズの組である。
【0033】
こうして、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面2c−pには複数の光源が形成され、これらの複数の光源からの光束は第1コンデンサー光学系2dを介して、第2フライアイレンズ2eの入射面を重畳的に照明する。その結果、第2フライアイレンズ2eの後側焦点面2e−pには、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面2c−pよりも多くの複数の光源が形成される。第2フライアイレンズ2eの後側焦点面2e−pに形成された複数の光源からの光束は、第2コンデンサー光学系2fを介して、レンズアレイ1を重畳的に照明する。第2フライアイレンズ2eは、例えば両凸レンズの組である。第2フライアイレンズ2eの後側焦点面2e−p近傍には、透過率変調素子2gが設けられる。
【0034】
ここで、第1フライアイレンズ2cおよび第1コンデンサー光学系2dは、第1ホモジナイザを構成し、この第1ホモジナイザにより光源2aから供給されたレーザ光についてレンズアレイ1の入射面上での入射角度に関する均一化が図られる。また、第2フライアイレンズ2eおよび第2コンデンサー光学系2fは第2ホモジナイザを構成し、この第2ホモジナイザにより第1ホモジナイザからの入射角度が均一化されたレーザ光についてレンズアレイ1の入射面上での面内各位置での光強度に関する均一化が図られる。レンズアレイ1の入射面は、第2コンデンサー光学系2fの後側焦点面に設けられる。
【0035】
レンズアレイ1を構成する各レンズ要素1aを通過したレーザ光は、被処理基板3の表面においてそれぞれ所定の光強度分布を有する光パターンを形成する。被処理基板3は、たとえば液晶ディスプレイ用板ガラスの上に化学気相成長法(CVD)により下地膜および非晶質シリコン膜が順次形成されたものである。被処理基板3は、真空チャックや静電チャックなどにより基板ステージ4上において予め定められた所定の位置に位置決めされて保持されている。
【0036】
上述したように、第1フライアイレンズ2cの作用により、第2フライアイレンズ2eの出射面またはその近傍には、比較的均一な光強度分布が形成される。本実施形態では、第2フライアイレンズ2eの射出面の近傍に、光の通過位置によって透過率の異なる透過率変調素子2gが配置されている。透過率変調素子2gは、図3に示すように、第2フライアイレンズ2eの各レンズエレメントにそれぞれ対応するように位置決めされた複数の開口部(光透過部)を有する。なお、図3において、斜線部は遮光部を示し、空白部は光透過部を示している。図3に示す透過率変調素子の例は、図1(b)に示した光強度分布を光軸に対して回転することにより得られる二次元的光強度分布を生成するための例である。
【0037】
具体的には、透過率変調素子2gにおいて、光軸AXに位置するレンズエレメントに対応する開口部が最も小さく、光軸AXから最も離れたレンズエレメントに対応する開口部が最も大きく設定されている。また、レンズエレメントが光軸AXから離れれば離れるほど、対応する開口部が大きくなるように設定されている。ここで、光軸AXに位置するレンズエレメントおよびこれに対応する最も小さな開口部を通過する光束は、光軸AXと0度の角度をなしてレンズアレイ1の入射面に入射する光強度の最も小さい平行光束になり、図1の光束aに対応することになる。
【0038】
一方、光軸AXから最も離れたレンズエレメントおよびこれに対応する最も大きな開口部を通過する光束は、光軸AXと最も大きな角度をなしてレンズアレイ1の入射面に入射する光強度の最も大きい平行光束になり、図1の光束eに対応することになる。また、その他のレンズエレメントおよびこれに対応する開口部を通過する光束は、レンズエレメントが光軸AXから離れれば離れるほど、レンズアレイ1への入射角度および光強度の大きい平行光束になり、図1の光束b〜eに対応することになる。透過率変調素子2gを透過した光束は、光強度と進行方向の異なる複数の光束となり、前記レンズアレイ1に照射される。
【0039】
こうして、本実施形態では、第2フライアイレンズ2eの射出面の近傍に配置された透過率変調素子2gの開口率分布により、たとえば図1(b)および(c)に示すような凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布が被処理基板3の表面に形成される。その結果、結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。また、逆ピークパターンの光強度分布の作用により、結晶核の形成位置を、ひいては結晶生成位置を二次元的に位置制御することができる。このとき結晶成長を開始する光強度が、逆ピークパターンの光強度分布11の内側にくるように設定することが望ましい。
【0040】
さらに、互いに隣接する2つのレンズ要素1aを介して形成される2つの光パターンが互いにほぼ接するように設定することにより、アレイ化された光強度分布を生成することができ、高い充填率で結晶粒をアレイ状に生成することができる。
【0041】
なお、上述の実施形態では、透過率変調素子2gが所定の開口率分布を有するように形成されている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえばSiOXNY等の半透過材料を用いて所定の厚さ分布を有する薄膜を形成することにより光透過率分布を制御してもよい。また、反射多層膜の反射率の分布により光透過率分布を制御する方法や、回折効率の分布により光透過率分布を制御する方法も可能である。
【0042】
図4は、本実施形態の変形例にかかる照明系の構成を概略的に示す図である。図4の変形例にかかる照明系は、図1の実施形態における照明系と類似の構成を有する。しかしながら、図4の変形例では、第1フライアイレンズ2cに代えてホログラム2hを配置し且つ透過率変調素子2gの設置を省略している点が図1の実施形態と基本的に相違している。以下、図1の実施形態との相違点に着目して、図4の変形例を説明する。
【0043】
図4を参照すると、ホログラム2hは第1コンデンサー光学系2dの前側焦点またはその近傍に配置され、第2フライアイレンズ2eの入射面は第1コンデンサー光学系2dの後側焦点またはその近傍に配置されている。ホログラム2hの像は、第2フライアイレンズ2eの出射面上に結像され、ホログラムを光源と考えると基本的なケーラー照明の構成となる。なお、第2フライアイレンズ2eの出射面全体における光強度分布は、第2フライアイレンズ2eの入射面における光強度分布と実質的に同じである。図4の配置ではホログラム2hと第2フライアイレンズ2eの入射面は光学的フーリエ変換の関係にある。したがってこの配置においては、ホログラム2hはフーリエ変換ホログラムが最適である。
【0044】
そこで、図4の変形例では、たとえば図1(b)および(c)に示すような凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を被処理基板3の表面に形成するのに必要な面光源の光強度分布、ひいては第2フライアイレンズ2eの入射面における光強度分布を、フーリエ変換ホログラム2hの作用により実現する。換言すれば、フーリエ変換ホログラム2hの作用により第2フライアイレンズ2eの入射面に形成される光強度分布を制御し、ひいては被処理基板3の表面に所望の光強度分布、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を形成する。
【0045】
なお、フーリエ変換ホログラムについては、辻内順平著,「ホログラフィー」,しょう華房,p25などに記載されている。また、ホログラム作成方法として計算機ホログラムを用いる方法が有力であるが、その設計方法は、「計算機ホログラムの最適化手法」,O plus E,No.204,p83などに記載されている。また、計算機ホログラム以外にも、所定の光学系、例えばフーリエ変換光学系と透過率変調素子とを組み合わせた光学系を用いて感光材料に記録する方法も可能である。もちろん、照明系2の光学系を対応した配置にすることにより、フーリエ変換ホログラム以外のホログラムを利用することもできる。
【0046】
ところで、ホログラムが完全でない場合には不要な0次光が発生し、この不要0次光は第2フライアイレンズ2eの光軸AXに位置する中央レンズエレメントに入射する。この場合、中央レンズエレメントに透過率フィルターを設けることにより、あるいは中央レンズエレメントの入射光または射出光を完全に遮ることにより、不要0次光の問題を解決することができる。なお、結晶化に必要な非常に大きな光強度に耐えるために、光透過材料の表面に凹凸の形で干渉縞を形成するレリーフホログラムと呼ばれる方法を用いることが望ましい。
【0047】
図5は、図1の実施形態の数値実施例における透過率変調素子の開口率分布を示す図である。また、図6は、図1の実施形態の数値実施例において被処理基板の表面に形成される光強度分布を模式的に示す図である。数値実施例では、KrFエキシマレーザ光源2aから供給されるレーザ光の波長λを0.248μmと想定している。また、10μm×10μmの正方形状のレンズ要素1aを縦横に且つ稠密に21個×21個=441個配置することによりレンズアレイ1が構成されているものと想定している。
【0048】
また、レンズアレイ1の焦点距離(ひいては各レンズ要素1aの焦点距離)fを60μmと想定し、各レンズ要素1aのレンズ主点と被処理基板3の表面との間隔dを60μmと想定し、入射角度間隔Δθを0.0083rad(ラジアン)と想定している。その結果、レンズアレイ1の開口数NAは約0.083(NA≒5/60)になり、スポット径Rは約1.8μm(R=1.22×0.248/0.083)になり、スポット間隔ΔLは約0.5μm(ΔL=d×Δθ=60×0.0083)になる。
【0049】
また、第2フライアイレンズ2eの射出面に配置された透過率変調素子2gは図5に示すような開口率分布を有するものと想定している。なお、透過率変調素子2gの開口率分布は縦方向のセンターラインおよび横方向のセンターラインに関して対称であり、図5には透過率変調素子2gの約1/4の領域の開口率分布だけを示している。この21個×21個=441個の配置はフライアイレンズの配置に対応している。図5を参照すると、透過率変調素子2gにおいて、第2フライアイレンズ2eの光軸AXに位置する中央レンズエレメントに対応する開口率が0で最も小さく、光軸AXから横方向に最も離れたレンズエレメントに対応する開口率が1で最も大きく設定されている。
【0050】
こうして、数値実施例では、入射角度間隔Δθを十分小さくすることによりスポット間隔ΔLがスポット径Rの半分以下になるように設定されている。その結果、図6に示すように、被処理基板3の表面には、実質的に連続的な光強度分布、すなわち凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布が形成された。なお、図6に示す光強度の値は各光束によるスポット単独の光強度値を図示したものである。光強度分布の微細な形状まで得るには、スポットの光強度分布およびスポット間隔の影響を考慮して計算する必要がある。
【0051】
なお、上述の実施形態において、レンズアレイ1を構成するレンズ要素は屈折型のレンズ要素に限定されることなく、たとえば回折型のレンズ要素を用いてレンズアレイ1を構成することもできる。
【0052】
また、上述の実施形態において、レンズアレイ1と被処理基板3との間に結像光学系を介在させる変形例も可能である。この場合、結像光学系によりレンズアレイ1の後側焦点面と被処理基板3の表面とが光学的にほぼ共役に配置されることになる。なお、結像光学系は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
【0053】
なお、以上の説明ではレンズアレイ1に対する入射光束は離散的な有限個数の平行光束の集合としていたが、入射角度により連続的に変化する単一の散乱光束でもよい。この構成を実現する場合は、例えば図2においてフライアイレンズ2eの代わりに拡散板を配置し、また透過率変調素子2gは離散的な透過率分布を有するものではなく連続的な透過率分布を有するものとすればよい。ただしこの場合、透過率変調素子2gは開口率を変調するものではなく、直接透過率を変調するものでなくてはならない。
【0054】
また、上述の実施形態において、光強度分布は設計の段階でも計算できるが、実際の被処理面での光強度分布を観察して確認しておくことが望ましい。そのためには、被処理基板3の被処理面を光学系で拡大し、CCDなどの撮像素子で入力すれば良い。使用光が紫外線の場合は、光学系が制約を受けるため、被処理面に蛍光板を設けて可視光に変換しても良い。
【0055】
図7は、本実施形態の結晶化装置を用いて結晶化された領域に電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。図7(a)に示すように、絶縁基板80(例えば、アルカリガラス、石英ガラス、プラスチック、ポリイミドなど)の上に、下地膜81(例えば、膜厚50nmのSiNおよび膜厚100nmのSiO2積層膜など)および非晶質半導体膜82(例えば、膜厚50nm〜200nm程度のSi,Ge,SiGeなど)を、化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜した被処理基板3を準備する。そして、図1に示す結晶化装置を用いて、非晶質半導体膜82の表面の一部もしくは全部例えば予め定められた領域に、レーザ光83(例えば、KrFエキシマレーザ光やXeClエキシマレーザ光など)を照射する。
【0056】
こうして、図7(b)に示すように、大粒径の結晶を有する多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84が生成される。次に、図7(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84を例えば薄膜トランジスタを形成するための領域となる島状の半導体膜85に加工し、表面にゲート絶縁膜86として膜厚20nm〜100nmのSiO2膜を化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜する。さらに、図7(d)に示すように、ゲート絶縁膜上にゲート電極87(例えば、シリサイドやMoWなど)を形成し、ゲート電極87をマスクにして不純物イオン88(Nチャネルトランジスタの場合にはリン、Pチャネルトランジスタの場合にはホウ素)をイオン注入する。その後、窒素雰囲気でアニール処理(例えば、450°Cで1時間)を行い、不純物を活性化して島状の半導体膜85にソース領域91、ドレイン領域92を形成する。次に、図7(e)に示すように、層間絶縁膜89を成膜してコンタクト穴をあけ、チャネル90でつながるソース91およびドレイン92に接続するソース電極93およびドレイン電極94を形成する。
【0057】
以上の工程において、図7(a)および(b)に示す工程で生成された多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84の大粒径結晶の位置に合わせて、チャネル90を形成する。以上の工程により、多結晶トランジスタまたは単結晶化半導体に薄膜トランジスタ(TFT)を形成することができる。こうして製造された多結晶トランジスタまたは単結晶化トランジスタは、液晶表示装置(ディスプレイ)やEL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどの駆動回路や、メモリ(SRAMやDRAM)やCPUなどの集積回路などに適用可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、レンズアレイに照射する各光束の光強度を意図的に制御することにより、半導体膜の表面に任意の光強度分布、たとえば凹型パターン+逆ピークパターンの光強度分布を形成することができる。その結果、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を逆ピークパターンの光強度分布の中心へ極力近づけることができ、凹型パターンの光強度分布における光強度の変化方向に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本原理を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】図1の照明系においてフライアイレンズの射出面の近傍に配置された透過率変調素子の構成を概略的に示す図である。
【図4】本実施形態の変形例にかかる照明系の構成を概略的に示す図である。
【図5】図1の実施形態の数値実施例における透過率変調素子の開口率分布を示す図である。
【図6】図1の実施形態の数値実施例において被処理基板の表面に形成される光強度分布を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態の結晶化装置を用いて電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。
【符号の説明】
1 レンズアレイ
1a レンズアレイを構成する各レンズ要素
2 照明系
2a KrFエキシマレーザ光源
2b ビームエキスパンダ
2c,2e フライアイレンズ
2d,2f コンデンサー光学系
2g 透過率変調素子
2h ホログラム
3 被処理基板
4 基板ステージ
Claims (13)
- 互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイと、
前記レンズアレイを照明するための照明系とを備え、
前記照明系は、前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成するために、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向から前記レンズアレイに照射することを特徴とする結晶化装置。 - 互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイと、
前記レンズアレイを照明するための照明系とを備え、
前記照明系は、前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成するために、連続的な入射角度を有し且つ入射角度により光強度の異なる光束を前記レンズアレイに照射することを特徴とする結晶化装置。 - 前記多結晶半導体膜または前記非晶質半導体膜は、前記レンズアレイの後側焦点またはその近傍に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶化装置。
- 前記レンズアレイは、二次元的に且つ稠密に配置された複数のレンズ要素からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の結晶化装置。
- 前記レンズアレイの互いに隣接する2つのレンズ要素を介して前記多結晶半導体膜または前記非晶質半導体膜上に形成される2つの光パターンは互いにほぼ接することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の結晶化装置。
- 前記レンズ要素は、屈折型のレンズ要素または回折型のレンズ要素であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の結晶化装置。
- 前記照明系は、光の通過位置によって透過率の異なる透過率変調素子を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の結晶化装置。
- 前記照明系はフライアイレンズを有し、前記透過率変調素子は前記フライアイレンズの射出面の近傍に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の結晶化装置。
- 前記照明系は、所定面に入射する光束の光強度分布を制御するためのホログラムとを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の結晶化装置。
- 前記照明系はフライアイレンズを有し、前記ホログラムは前記フライアイレンズに入射する光束の光強度分布を制御することを特徴とする請求項9に記載の結晶化装置。
- 互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイに対して、光強度の異なる複数の光束を互いに異なる方向から照射し、
前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射することにより結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化方法。 - 互いに隣接するように配置された複数のレンズ要素からなるレンズアレイに対して、連続的な入射角度を有し且つ入射角度により光強度の異なる光束を照射し、
前記レンズアレイを介して多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射することにより結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化方法。 - 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の結晶化装置あるいは請求項11または12に記載の結晶化方法を用いて製造されたことを特徴とするデバイス。
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JP2003144251A JP2004349433A (ja) | 2003-05-22 | 2003-05-22 | 結晶化装置、結晶化方法およびデバイス |
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-
2003
- 2003-05-22 JP JP2003144251A patent/JP2004349433A/ja not_active Abandoned
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