本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態に係る結晶化装置の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、第1実施の形態の結晶化装置は、被処理基板6の予め定められた領域を照明する照明光学系2と、これら被処理基板6と照明光学系2との間の光路上に位置した透過型振幅変調マスク1と、この透過型振幅変調マスク1と被処理基板6との間の光路上に位置した位相シフタすなわち位相シフトマスク4と、透過型振幅変調マスク1と位相シフトマスク4との間の光路上に配置された第1結像光学系3と、位相シフトマスク4と被処理基板6との間の光路上に配置された第2結像光学系5とを有する。照明光学系2は透過型振幅変調マスク1に照明光を射出する。
被処理基板6の表面は、第1結像光学系3と第2結像光学系5とを介して、透過型振幅変調マスク1の射出面と光学的に共役な関係となるように位置決めされている。また、被処理基板6の表面は、位相シフトマスク4の位相シフト面411(図1中下側の面)と光学的に共役な面(第2結像光学系5の像面)から光軸に沿って離れている。第1結像光学系3及び第2結像光学系5は、屈折型の光学系、反射型の光学系、屈折反射型の光学系のいずれであってもよい。
第1実施の形態においては、被処理基板6は、例えば液晶ディスプレイ用板ガラスの上に化学気相成長法により下地膜及び非晶質シリコン膜を形成することにより得られる。被処理基板6は、真空チャックや静電チャックなどにより基板ステージ7上において所定の位置に保持されている。
図2は、図1の照明光学系2の内部構成を概略的に示す図である。図2に示すように、照明光学系2は、例えば248nmの波長を有する光ビームを供給するKrFエキシマレーザからなる光源2aと、この光源2aからのレーザ光ビームを拡大するビームエキスパンダ2bと、複数の凸レンズが平面上に配列されて構成されている第1及び第2のフライアイレンズ2c,2eと、第1及び第2のコンデンサー光学系2d,2fとを備えている。なお、光源2aとして、XeClエキシマレーザ光源のような他の適当な光源を用いることもできる。
図2に概略的に示すように、光源2aから射出した光ビームは、ビームエキスパンダ2bを介して拡大され、第1フライアイレンズ2cに入射する。第1フライアイレンズ2cに入射した光ビームは、第1のフライアイレンズ2cの各凸レンズにより集光作用を受けるので、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面には実質的に複数の点光源が形成される。これら複数の点光源からの光ビームは、第1コンデンサー光学系2dを介して、第2フライアイレンズ2eの入射面を重畳的に照明する。
複数の点光源から第2フライアイレンズ2eに入射した光ビームは、それぞれ第2フライアイレンズ2eの凸レンズにより集光作用を受けるので、第2フライアイレンズ2eの後側焦点面には、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面よりも多くの複数の点光源が形成される。これら第2フライアイレンズ2eの後側焦点面に形成された複数の点光源からの光ビームは、さらに第2コンデンサー光学系2fに入射する。
第1フライアイレンズ2c及び第1コンデンサー光学系2dは、第1ホモジナイザを構成しており、透過型振幅変調マスク1上での入射角度に関して均一化する。同様に、第2フライアイレンズ2e及び第2コンデンサー光学系2fは、第2ホモジナイザを構成しており、透過型振幅変調マスク1上での面内位置に関して均一化する。したがって、照明光学系2からは、ほぼ均一な光強度分布を有する光ビームが重畳的に射出される。このようにして、照明光学系2は、均一な光強度分布を有する光ビームを射出する。この光ビームは透過型振幅変調マスク1の入射面を照明する。
図3は、第1実施の形態に係る透過型振幅変調マスク1の構成及び作用を説明する図である。また、図4は、第1実施の形態に係る透過型振幅変調マスク1の製造工程を示す図である。図3及び図4では、図面の明瞭化のために透過型振幅変調マスク1の基本単位部分だけを示しているが、透過型振幅変調マスク1は実際にはこの基本単位部分が透過率分布の方向(x方向)に沿って一次元的に並んで配置されている。
透過型振幅変調マスク1は、図3(A)に示すように、一定の厚さを有する平行平板形状の光透過部1aと、全体的に正弦波形状に変化する厚さを有する光吸収部1bとを有し、これら光透過部1aと光吸収部1bとは例えば一体的に形成されている。光吸収部1bを形成している光吸収材(光遮蔽材)は、例えばハーフトーン型位相シフトマスクに用いられる材料、すなわちMoSi、MoSiON、ZrSiO、a−Carbon、SiN/TiN、TiSiN、Crなどである。透過型振幅変調マスク1は、図3(B)に示すように、照明光学系2からの均一な光強度分布を有するレーザ光ビームの光強度を変調する。
次に、図4を参照して、透過型振幅変調マスク1の製造工程の一例について説明する。まず、例えば図4(A)に示すように石英ガラスからなる光透過部1a上に光吸収膜1e例えばZrSiOが均一に成膜された後、光吸収膜1eの表面にレジスト1fが塗布される。次に、ドーズ量を連続的に変えて電子ビーム描画及び現像処理を施し、図4(B)に示すように連続的な断面正弦波状曲面形状を有するレジスト膜1gを形成する。次に、このレジスト膜1gをマスクとして、ドライエッチング技術を用いて光吸収膜1eのエッチングを行うことにより、連続的な曲面形状の表面を有する光吸収部1bを備えた図4(C)に示すような透過型振幅変調マスク1が形成される。上記マスク1の製造工程において、例えば光吸収膜1eの形成及びパターニングを複数回に亘って繰り返すことにより、段差形状の表面(例えば8レベル段差で近似された表面)を有する光吸収部1bを備えた透過型振幅変調マスク1が形成されてもよい。この透過型振幅変調マスクは、正弦波状の光強度分布を有する透過光を射出する。
図5Aは、位相シフトマスク4の基本単位部分の構成例を概略的に示す図である。図5Aに示したように、位相シフトマスク4の基本単位部分は、例えば、夫々厚さの異なる4つの矩形状の第1ないし第4領域4a〜4dを含む位相シフト面を有しており、第1領域4aと第3領域4c、及び第2領域4bと第4領域4dがそれぞれ対角に位置して設けられている。対角に位置する2つの矩形状領域4a−4cと4b−4dは、例えばそれぞれ透過した光ビームの間にπの位相差を与える。すなわち、位相シフトマスク4は、第1ないし第4領域4a〜4dが順次厚くなる階段状の形状を有する。各領域4a〜4dの段差は、エッチングにより形成されても、堆積により形成されても良い。
具体例としては、例えば位相シフトマスク4が248nmの波長を有する光ビームに対して1.5の屈折率を有する石英ガラスで形成されている場合、第1領域4aと第2領域4bとの間には124nmの段差が付与され、第1領域4aと第3領域4cとの間には248nmの段差が付与され、第1領域4aと第4領域4dとの間には372nmの段差が付与されている。また、各領域4a〜4d同士の境界線である4つの位相シフト線の交点近傍は、位相シフト部4eとなる。透過型振幅変調マスク1における光吸収部1bの下方に凸部の中心1dは、位相シフトマスク4の位相シフト部4eに対応するように位置決めされている。
なお、図5Aでは、位相シフト部4eを有する側の面である位相シフト面が、図面の明瞭化のために位相シフトマスク4の上側面に形成されているように示したが、位相シフトマスク4の位相シフト面は、第2結像光学系5側(照明光学系2側とは反対側、すなわち出射側で図1中下側)の面に形成されている。
図5Bは、位相シフトマスク4の他の例で、図5Aの基本単位部分を4個平面上に配置したマスクを示す上面図である。図5Bに示す位相シフトマスク4は、複数の基本単位部分を二次元的に、すなわち2×2のマトリックス状に配置することにより構成されている。
第1実施の形態に係る位相シフトマスク4は、異なる厚さの4つの領域4a〜4dを有するが、例えば図5Cに示すように透過した光ビームにπの位相差を与える2つの異なる厚さの領域を有していてもよい。位相シフトマスク4が2つの領域を有する場合、これら2つの領域は、一本の軸に沿って交互に一次元的に配列されており、位相シフト部は2種類の領域の境界に位置している。
なお、位相シフトマスクとしては説明したものに限定されるわけではなく、また二次元的なパターンも用いることができる。
照明光学系2から射出されたほぼ均一な光強度分布を有する光ビームは、透過型振幅変調マスク1を透過して光強度の振幅変調作用を受ける。透過型振幅変調マスク1の射出面1cから射出した光ビームは、図3に示すように、光吸収部1bの凸部の中心に対応する位置において光強度が最も低く、中心から離れるにしたがって光強度が高くなり、また、光吸収部1bの凹部の中心に対応する位置において光強度が最も高くなるような光強度分布、すなわち上に凹型パターンの光強度分布を有する。透過型振幅変調マスク1は、上に凹型パターンの光強度分布の幅寸法が液晶の画素の幅と等しくなるように設定することが好ましい。
透過型振幅変調マスク1から射出した光強度変調された光ビームは、第1結像光学系3を介して位相シフトマスク4を照明する。位相シフトマスク4を透過した光ビームは、第2結像光学系5を介して被処理基板6に照射される。
図6は、第1実施の形態における位相シフトマスク4の基本的作用を説明するため一部を拡大して示す断面図である。以下、照明光学系2と位相シフトマスク4との間の光路上に透過型振幅変調マスク1が介在しない場合、すなわちほぼ均一な光ビームが入射した場合における位相シフトマスク4の基本的作用を説明する。
位相シフトマスク4では、隣接する2つの領域間の位相差がπ/2に設定されているので、位相シフト線412に対応する位置では光強度が減少するが0にはならない。一方、位相シフト線412の交点を中心とする円形領域の複素透過率の積分値が0になるように設定されているので、この交点すなわち位相シフト部4eに対応する位置では光強度がほぼ0になる。
したがって、複数の基本単位部分を有する位相シフトマスク4を透過した光ビームの光強度分布は、図6に示すように、被処理基板6上では、位相シフトマスク4の各位相シフト部4eに対応する点において光強度が最小ピーク値で例えばほぼ0で、位相シフト部4eから離れるにしたがって急激に光強度が高くなる逆ピークパターンの光強度分布を周期的に有する。すなわち、この周期的な逆ピークパターンの光強度分布の最小となる位置は、位相シフト部4eによって定められる。なお、周期的な逆ピークパターンの光強度分布は、x−z平面及びy−z平面の双方においてほぼ同じプロファイルを有する。また、逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法は、位相シフトマスク4と被処理基板6との距離(すなわちデフォーカス量)の1/2乗に比例して変化する。
前述したように、図6に示すような逆ピークパターンの光強度分布のみを周期的に有する光ビームを半導体膜に照射した場合、逆ピークパターン部分の間の中間部おいて、結晶核から周囲に向かって開始したラテラル成長が停止してしまう。第1実施の形態に係る結晶化装置は、結晶核からの十分なラテラル成長を実現するために、照明光学系2と位相シフトマスク4との間の光路上に、透過型振幅変調マスク1と第1結像光学系3とを有する。
図7A及び図7Bは、透過型振幅変調マスク1と位相シフトマスク4とを透過した光ビームの被処理基板6上で得られる光強度分布を示す図である。第1実施の形態では、上述したように、透過型振幅変調マスク1は、均一な光強度分布を有する光ビームを振幅変調して、図3(B)に示すような上に凹型パターンの光強度分布を周期的に有する光ビームに変換する機能を有する。一方、位相シフトマスク4は、均一な光強度分布を有する光ビームを、図6に示すような逆ピークパターンの光強度分布を周期的に有する光ビームに変換する機能を有する。
第1実施の形態に係る結晶化装置は、透過型振幅変調マスク1と位相シフトマスク4とを有するので、被処理基板6に達した光ビームは、これら透過型振幅変調マスク1と位相シフトマスク4との両方の作用を受けている。したがって、被処理基板6の半導体膜上に照射された光ビームは、同じ周期で分布している逆ピークパターンの光強度分布と上に凹型パターンの光強度分布との積で表される図7Aに示すような2段逆ピークパターンの光強度分布を周期的に有する。この周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布では、上述の逆ピークパターンの光強度分布に対応するように、位相シフト部4eに対応する点において光強度がほぼ0で、この点から離れるにしたがって放射状に光強度が高くなって所定の値に達する。すなわち、この周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布の最小となる位置は、位相シフト部4eの位置によって定められる。
第1実施の形態において、周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布は、上述のx−z方向の周期的な上に凹型パターンの光強度分布とy−z方向の周期的な上に凹型パターンの光強度分布とに対応しており、図8に示すように、隣接する逆ピークパターン部分の間の中間部は、y方向には一様であり、x方向に沿ってのみほぼ単調に増加している。また、2段逆ピークパターンの光強度分布は、逆ピークパターン部分と上に凹型パターン部分との間において傾きが減じる変曲点を有する。
2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6に照射されると、光強度が最小となる点、すなわちほぼ0の点(位相シフト部4eに対応する点)に対応した部分に結晶核が形成される。これを詳しく述べると、逆ピークパターンの光強度分布において傾きの大きな位置に結晶核は発生する。逆ピークパターン部分の中心部に多結晶が生成し、その後その外側の結晶が核となり結晶が成長する。結晶が成長する位置は一般に傾きの大きな位置となる。
次に、結晶核から、光強度勾配(すなわち温度勾配)の大きいx方向に沿ってラテラル成長が開始される。2段逆ピークパターンの光強度分布では、中間部において光強度が減少する部分が実質的に存在しないので、ラテラル成長が結晶核から途中で停止することなくピークまで達し、大きな結晶の成長を実現することができる。特に、第1実施の形態では、逆ピークパターン部分と上に凹型パターン部分との間において傾きが減じる変曲点が存在するので、2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6の半導体膜に照射されると、2段逆ピークパターンの光強度分布の中心部から幅寸法にわたる広い領域で結晶化する。また、2段逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法は、例えば液晶の画素ピッチと等しくすることによって、各画素に対して単結晶を成長させることができる。即ち、各画素に形成された単結晶か領域には、薄膜トランジスタからなるスイッチングトランジスタを形成することができる。
以上により、第1実施の形態では、結晶核からの十分なラテラル成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。第1実施の形態に係る結晶化装置により生成された結晶は大粒径であるので、ラテラル成長の方向(x方向)に高い電子又は正孔の移動度を有する。したがって、ラテラル成長の方向にトランジスタのソースドレインを配置することにより、良好な特性のトランジスタを製造することができる。
なお、第1実施の形態において、位相シフトマスク4と被処理基板6との間に位置した第2結像光学系5には、非常に高い解像度及び結像性能が必要とされるが、透過型振幅変調マスク1と位相シフトマスク4との間に位置した第1結像光学系3には、それほど高い解像度及び結像性能は必要とされない。換言すると、透過型振幅変調マスク1の作用により被処理基板6の表面に形成される上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームは、第1結像光学系3及び第2結像光学系5の解像度の影響をあまり敏感に受けないが、位相シフトマスク4の作用により被処理基板6の表面に形成される逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームは、第2結像光学系5の解像度の影響を非常に敏感に受ける。
したがって、第1実施の形態においては、位相シフトマスク4の位相シフト面を第2結像光学系5側に形成することが好ましい。このような構成では、第1結像光学系3が位相シフトマスク4のガラス基板部分を含むことになるので、これの収差の影響を受けて結像性能が低下し易いが、第2結像光学系5は、位相シフトマスク4のガラス基板部分を含まないことになるので、これの収差の影響を受けることなく高い解像度及び結像性能を確保することができる。
図9は、第1実施の形態の第1変形例に係る結晶化装置を概略的に示す図である。第1実施の形態の第1変形例は、第1実施の形態と類似の構成を有するが、第1変形例に係る結晶化装置は、透過型振幅変調マスク1に代えて開口型振幅変調マスク11を有している点で第1実施の形態と基本的に相違している。また、図10は、この開口型振幅変調マスク11の上面図と、この開口型振幅変調マスク11の作用を説明する図である。以下、第1実施の形態との相違点に着目して、第1変形例を説明する。なお、図9においては、図面の明瞭化のために、照明光学系2の内部構成の図示を省略している。
第1実施の形態の第1変形例に係る開口型振幅変調マスク11は、一定の厚さを有する光透過部材から構成されており、この光透過部材の表面(例えば第1結像光学系3側の面すなわち射出面)には、図10に示すように、多数の微小透過領域と多数の微小遮光領域とが、中央部分が遮光され両端部に向かって透過度が高くなるパターンで分布している。具体的には、開口型振幅変調マスク11は、例えば一辺の長さがsの正方形状のクロムからなる微小遮光領域が石英ガラス基板上にスパッタされた後、パターニングすることによって形成されている。
なお、図10では、図面の明瞭化のために開口型振幅変調マスク11の基本単位部分だけを示しているが、開口型振幅変調マスク11は実際にはこの基本単位部分が開口率分布の方向(x方向)に沿って一次元的に繰り返された配置を有する。また、図10では、開口率分布のパターンは、一定寸法の正方形要素の組み合わせとして構成されているが、これに限定されない。例えば、長さや幅が変化する長方形の組み合わせなど、任意のパターンが用いられてよい。また、開口型振幅変調マスク11は、光透過部材を有さず、例えば金属板に開口部を設けただけであってもよい。
開口型振幅変調マスク11の基本単位部分における微小透過領域及び微小遮光領域の分布、すなわち開口率分布を形成するパターンは、基本単位部分の中央において開口率が最も小さく、基本単位部分の中央から離れるにしたがって開口率が大きくなるように設定されている。また、開口型振幅変調マスク11の基本単位部分において開口率分布が最も小さい部分は、位相シフトマスク4の基本単位部分における位相シフト部4eに対応するように位置決めされている。したがって、開口型振幅変調マスク11は、ほぼ均一な光強度分布を有する光ビームを振幅変調して、位相シフト部4eに対応する領域において光強度が最も低く、この領域から離れるにしたがって光強度が高くなる上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームに変換する機能を有する。
また、第1変形例では、開口型振幅変調マスク11の射出面(光ビームが上に凹型パターンの光強度分布を有する面)が、第1結像光学系3と第2結像光学系5とを介して、被処理基板6の表面と光学的に共役な関係に結合されるように配置されている。したがって、位相シフトマスク4が介在しない状態では、被処理基板6の表面に照射される光ビームは、開口型振幅変調マスク11の射出面における場合と同様に、位相シフト部4eに対応する領域において光強度が最も低く、この領域から離れるにしたがって光強度が高くなる上に凹型パターンの光強度分布を有する。
なお、上に凹型パターンの光強度分布は、x−z平面において図10に示すようなほぼ曲線状のプロファイルを有するが、y−z平面におけるプロファイルは一様である。また、上に凹型パターンの光強度分布の幅寸法は、液晶の画素ピッチと等しくなるように設定することが好ましい。
第1変形例に係る結晶化装置は、開口型振幅変調マスク11と位相シフトマスク4とを有するので、被処理基板6上に達する光ビームは、これら開口型振幅変調マスク11と位相シフトマスク4との両方の作用を受ける。したがって、被処理基板6の半導体膜上に照射される光ビームは、第1実施の形態と同様に、同じ周期で分布している逆ピークパターンの光強度分布と上に凹型パターンの光強度分布との積で表される図7Aに示すような2段逆ピークパターンの光強度分布を周期的に有する。この周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布では、上述の逆ピークパターンの光強度分布に対応するように、位相シフト部4eに対応する領域において光強度がほぼ0で、この領域から離れるにしたがって放射状に急に光強度が高くなって所定の値に達する。すなわち、この周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布の最小となる位置は、位相シフト部4eの位置によって定められる。
第1変形例においても第1実施の形態と同様に、開口型振幅変調マスク11と位相シフトマスク4との両方の作用により2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6の半導体膜上に照射されるので、ラテラル成長が結晶核から途中で停止することなくピークまで達し、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
なお、第1変形例では、開口型振幅変調マスク11の開口率分布が連続的ではなく離散的(段差的)に変化するので、開口型振幅変調マスク11の作用により振幅変調された光ビームが被処理基板6の半導体膜上に照射されたとき、この光ビームの上に凹型パターンの光強度分布には、微細なムラが発生し易い。しかし、上に凹型パターンの光強度分布に微細なムラが発生しても、光強度分布が温度分布に変換されたときに光強度分布の微細なムラが平均化されて温度分布の微細なムラとして実質的に残らなければ、微細なムラの影響を無視することができる。
上に凹型パターンの光強度分布の微細なムラの発生を実質的に抑えるために、第1結像光学系3の解像度が開口の単位寸法sよりも大きく(低く)なるように、次の条件式(1)を満足することが好ましい。
s<1.22×λ/NA1 (1)
ここで、λは照明光学系2から射出される光ビームの中心波長であり、NA1は第1結像光学系3の射出側の開口数である。すなわち、条件式(1)において不等号記号の右側の値は、第1結像光学系3の解像度R1を示している。
したがって、第1変形例では、第1結像光学系3の解像度をある程度低く設定することにより、開口型振幅変調マスク11における開口率分布が離散的(段差的)に変化していても、図10に示すように、滑らかに変化する上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームを被処理基板6の半導体膜上に照射させることができる。あるいは、被処理基板6の半導体膜上に形成される上に凹型パターンの光強度分布における微細なムラの発生を実質的に抑えるために、第1結像光学系3に意図的に適度な収差が付与されてもよい。また、開口型振幅変調マスク11に照射されるレーザ光によりクロムが劣化し易い場合には、第1結像光学系3を縮小型の光学系として構成することによって、照射されるレーザ光の照度を相対的に低下させることが好ましい。
図11は、第1実施の形態の第2変形例に係る結晶化装置を概略的に示す図である。第1実施の形態の第2変形例は、第1実施の形態と類似の構成を有するが、第2変形例に係る結晶化装置は、透過型振幅変調マスク1に代えて位相変調マスクである集光発散素子12を有している点で第1実施の形態と基本的に相違している。また、図12は、この集光発散素子12を示す側面図と、この集光発散素子12の作用を説明する図である。以下、第1実施の形態との相違点に着目して、第2変形例を説明する。なお、図11においても、図面の明瞭化のために、照明光学系2の内部構成の図示を省略している。
図12に示すように、集光発散素子12の基本単位部分は、光ビームの射出側に突出した2つの凸部と、これら凸部に挟まれた凹部とを有し、これら凸部と凹部とは、全体的にほぼ正弦波形状の屈折面12aを形成している。2つの凸部は、集光発散素子12に入射した光ビームを集光する集光屈折面12cであり、凹部は、光ビームを発散させる発散屈折面12bである。これら集光屈折面12cと発散屈折面12bとによって、集光発散素子12の基本単位部分は、x方向に沿って一次元的な屈折機能を有する。
集光発散素子12の正弦波形状の屈折面12aのうち、発散屈折面12bの中心は、位相シフトマスク4の基本単位部分の位相シフト部4eに対応し、また、集光屈折面12cの中央部分(すなわち、最も突出した中心線)は、上記第1ないし第4領域のy方向に平行なそれぞれの中心線に対応するように、集光発散素子12と位相シフトマスク4とが位置決めされている。
なお、図12では図面の明瞭化のために集光発散素子12の基本単位部分だけを示しているが、集光発散素子12は実際にはこの基本単位部分が屈折機能を有する方向(x方向)に沿って一次元的に繰り返された形態を有する。
集光発散素子12の基本単位部分に入射した均一な光強度分布を有する光ビームのうち、発散屈折面12bを透過した光ビームは発散作用を受け、また、集光屈折面12cを透過した光ビームは集光作用を受け、集光発散素子12の射出面から第1結像光学系3側にわずかに間隔を隔てた所定面12dに達する。集光発散素子12を透過した光ビームは、所定面12dにおいて、図12に示すように、各位相シフト部4eにおいて光強度が最も低く、位相シフト部4eから離れるにしたがって光強度が高くなる上に凹型パターンの光強度分布を周期的に有する。具体的には、上に凹型パターンの光強度分布は、発散屈折面12bの中心に対応する位置において光強度が最も低く、集光屈折面12cの中心に対応する位置において光強度が最も高い。
なお、上に凹型パターンの光強度分布は、x−z平面において図12に示すような曲線状のプロファイルを有するが、y−z平面におけるプロファイルは一様である。また、上に凹型パターンの光強度分布の幅寸法は、液晶の画素ピッチと等しくなるように設定することが好ましい。
第2変形例において、集光発散素子12の屈折面は、一次元的に屈折機能を有するが、これに限定されることなく、直交する2つの方向に沿って二次元的に屈折機能を有していてもよい。この場合、集光発散素子12の作用により被処理基板6上に形成される上に凹型パターンの光強度分布では、直交する2つの平面において同様の凹型パターンのプロファイルを有する。
所定面12dは、第1結像光学系3と第2結像光学系5とを介して、被処理基板6の表面と光学的に共役な関係となるように配置されている。したがって、位相シフトマスク4が介在しない状態では、照明光学系2からの均一な光強度分布を有する光ビームは、位相変調マスクである集光発散素子12によって変換され、上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6の表面に照射される。
第2変形例に係る結晶化装置は、集光発散素子12と位相シフトマスク4とを有するので、被処理基板6に達した光ビームは、これら集光発散素子12と位相シフトマスク4との両方の作用を受けている。したがって、被処理基板6の半導体膜上に照射された光ビームは、同じ周期で分布している逆ピークパターンの光強度分布と上に凹型パターンの光強度分布との積で表される図7Aに示すような2段逆ピークパターンの光強度分布を周期的に有する。この周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布では、上述の逆ピークパターンの光強度分布に対応するように、位相シフト部4eに対応する点において光強度がほぼ0で、この点から離れるにしたがって放物線状に急に光強度が高くなって所定の値に達する。すなわち、この周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布の最小となる位置は、位相シフト部4eの位置によって定められる。
第2変形例においても第1実施の形態と同様に、集光発散素子12と位相シフトマスク4との両方の作用により2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6の半導体膜上に照射されるので、ラテラル成長が結晶核から途中で停止することなくピークまで達し、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
集光発散素子12を製造するには、例えば石英ガラス基板の表面にレジストを塗布し、ドーズ量を連続的に変えて電子ビーム描画及び現像処理を施して、連続的な曲面形状を有するレジスト膜を生成する。その後、ドライエッチング技術を用いて、連続的な曲面形状の屈折面を有する集光発散素子12が形成される。なお、上記製造工程において、例えばレジスト膜の形成及びパターニングを複数回に亘って繰り返すことにより、段差形状の屈折面を有する集光発散素子12が形成されてもよい。
図13Aは、段差形状の屈折面を有する集光発散素子12を示す図である。また、図13Bは、位相シフトマスク4上で得られる光ビームの上に凹型パターンの光強度分布に関するシミュレーション結果を示す図である。図13A及び図13Bに示すように、集光発散素子12が段差形状の屈折面(例えば8レベル段差で近似された屈折面)を有する場合、集光発散素子12の射出側の所定面12dにおける光ビームの光強度分布は滑らかに変化しない。しかし、第2変形例では、第1結像光学系3の解像度をある程度低く設定することによって、集光発散素子12の屈折面を段差で近似しても、図13Cに示すように滑らかに変化する上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームが、被処理基板6の半導体膜上に照射され得る。
なお、集光発散素子12は、連続的な曲面やその多段近似に限定されることなく、位相差にして0〜2πの範囲を折り返した「キノフォーム」として構成されていてもよい。また、集光発散素子12に屈折面を付与することなく、光学材料の屈折率分布によりその集光発散作用を実現してもよい。この場合、光強度により屈折率が変調されるフォトポリマーや、ガラスのイオン交換などの従来技術を使用することができる。また、ホログラムもしくは回折光学素子を用いて、集光発散素子12と等価な光変換作用を実現してもよい。
図14は、第1実施の形態の第3変形例に係る結晶化装置を概略的に示す図である。また、図15は、図14の照明光学系2を概略的に示す図である。第1実施の形態の第3変形例は、第1実施の形態と類似の構成を有するが、第3変形例に係る結晶化装置は、透過型振幅変調マスク1の代わりにマイクロレンズアレイ13を配置するとともに、照明光学系2の照明瞳面またはその近傍に、光強度分布形成素子である透過フィルター14を有している点で第1実施の形態と基本的に相違している。以下に、第1実施の形態との相違点に着目して、第3変形例を説明する。
図14に示すように、第3変形例では、第1実施の形態における透過型振幅変調マスク1の位置にマイクロレンズアレイ13が配置されている。また、図15に示すように、照明光学系2において第2フライアイレンズ2eの後側焦点面(すなわち照明瞳面)またはその近傍に、透過フィルター14が配置されている。
図16は、照明瞳面またはその近傍に配置された透過フィルター14の構成を概略的に示す図である。透過フィルター14は、例えば透過率が50%の円形状の中央領域14aと、この中央領域14aを包囲するように形成された透過率がほぼ100%の円環状の周辺領域14bとを有する。すなわち、照明瞳面またはその近傍において、中央領域14aを透過した光ビームの光強度は比較的低く、周辺領域14bを透過した光ビームの光強度は比較的高い。したがって、照明光学系2からは、均一であるが、周辺よりも中央のほうが低い光強度分布を有する光ビームが重畳的に射出される。
なお、透過フィルター14の中央領域14aは、例えば透過率に応じた厚さのクロム膜(あるいはZrSiO膜など)をスパッタ法などにより形成した後、エッチングなどによってパターニングすることによって形成されている。この構成の場合、遮光材料としてのクロムは、一部の光を反射し、一部の光を吸収する。
透過フィルター14の中央領域14aは、例えば透過率に応じた厚さのクロム膜(あるいはZrSiO膜など)をスパッタ法などにより形成した後、エッチングなどによってパターニングすることにより得られる。遮光材料としてのクロムは、一部の光を反射し、一部の光を吸収する。また、中央領域14aは、使用波長の光を部分的に反射するように設計された多層膜を形成しパターニングすることによっても得られる。
反射材料としての多層膜を用いる場合、不要光の吸収によって発熱することがないという利点があるが、反射光が迷光となってフレアの原因にならないように考慮する必要がある。また、中央領域14aと周辺領域14bとの間では、位相差が実質的に発生しないように、遮光材料や反射材料の種類及びその厚さなどを調整する必要がある。なお、第3変形例において、中央領域14aは円形状であるが、三角形や矩形などの他の形状であってもよい。
図17は、マイクロレンズアレイ13の基本単位部分を概略的に示す図である。図17を参照すると、マイクロレンズアレイ13の基本単位部分である微小レンズ要素(光学要素)13aは、第1結像光学系3側に突出した球面状などの二次曲面状の屈折面13bを有する。この屈折面13bによって、マイクロレンズアレイ13の微小レンズ要素13aは、x方向及びy方向に沿って二次元的な集光機能を有する。また、各微小レンズ要素13aの屈折面13bの中心が位相シフトマスク4の基本単位部分の位相シフト部4eに対応するように位置決めされている。なお、図17では、図面の明瞭化のためにマイクロレンズアレイ13の基本単位部分だけを示しているが、マイクロレンズアレイ13の微小レンズ要素13aは、二次元的に(縦横にかつ稠密に)配置されている。
マイクロレンズアレイ13の微小レンズ要素13aに入射した光ビームは、屈折面13bを通って集光作用を受け、微小レンズ要素13aの焦点面(すなわち、マイクロレンズアレイ13の後側焦点面)にスポット状の光ビームが形成される。このように、マイクロレンズアレイ13は、照明光学系2と位相シフトマスク4との間の光路上に配置されて、照明光学系2から入射した光ビームを複数の光ビームに波面分割し、波面分割された各光ビームを、対応する位相シフト部4eまたはその近傍へ集光するための波面分割素子を構成している。第3変形例では、マイクロレンズアレイ13の後側焦点面13cは、第1結像光学系3と第2結像光学系5とを介して、被処理基板6の表面と光学的に共役な関係となるように配置されている。
図18は、透過フィルター14とマイクロレンズアレイ13との両方の作用により後側焦点面13cにおける光ビームの光強度分布を説明する図である。図18に示すように、透過フィルターを介してマイクロレンズアレイ13を透過した光ビームは、垂直に入射する光ビームが少なく、斜めから入射する光ビームが相対的に多くなる。したがって、この光ビームは、後側焦点面13cでは、各位相シフト部4eにおいて光強度が最も小さく、位相シフト部4eから離れるにしたがって光強度が高くなる上に凹型パターンの光強度分布を有する。具体的には、上に凹型パターンの光強度分布は、屈折面13bの中心に対応する位置において光強度が最も低く、屈折面13bの両端部に対応する位置において光強度が最も高い。
なお、この上に凹型パターンの光強度分布は、x−z平面及びy−z平面の双方において同様のプロファイルを有する。また、上に凹型パターンの光強度分布の幅寸法は、液晶の画素ピッチと等しくなるように設定することが好ましい。
図19は、透過フィルター14とマイクロレンズアレイ13と位相シフトマスク4との協働作用により被処理基板上に得られる光強度分布を示す図である。上述したように、透過フィルター14は、均一な光強度分布を有する光ビームを、中心において光強度が最も小さく、中心から離れるにしたがって光強度が高くなる上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームに変換する機能を有する。マイクロレンズアレイ13は、入射した光ビームを、所定の領域のみに照射されるスポット状の光ビームに変換する機能を有する。さらに、位相シフトマスク4は、均一な光強度分布を有する光ビームを均一な光強度分布を有する光ビームを、図7Bに示すような逆ピークパターンの光強度分布を有する光に変換する機能を有する。
また、上述したように、位相変調マスクとしてのマイクロレンズアレイ13の後側焦点面13cと被処理基板6の表面とが光学的に共役な関係となるように配置されている。したがって、位相シフトマスク4が介在しない状態では、均一な光強度分布を有する光ビームがマイクロレンズアレイ13を透過すると、被処理基板6の表面には、上に凹型パターンの光強度分布を有する光ビームが照射される。
第3変形例に係る結晶化装置は、透過フィルター14と、マイクロレンズアレイ13と、位相シフトマスク4とを有するので、被処理基板6に達する光ビームは、これら部材の3つの作用を受ける。したがって、被処理基板6の半導体膜上に達する光ビームは、所定の領域にのみ照明されるスポット状の光ビームに変換されており、同じ周期で分布している逆ピークパターンの光強度分布と、上に凹型パターンの光強度分布との積で表される図19に示すような2段逆ピークパターンの光強度分布を有する。この2段逆ピークパターンの光強度分布では、上述の逆ピークパターンの光強度分布に対応するように、位相シフト部4eに対応する点において光強度がほぼ0で、この点から離れるにしたがって急な放物線状に光強度が高くなって所定の値に達する。すなわち、この2段逆ピークパターンの光強度分布の最小となる位置は、位相シフト部4eの位置によって定められる。
第1実施の形態の各変形例において、2段逆ピークパターンの光強度分布は、上述のx−z方向の周期的な上に凹型パターンの光強度分布とy−z方向の周期的な上に凹型パターンの光強度分布とに対応しており、図20に示すように、隣接する逆ピークパターン部分の間の中間部は、x方向及びy方向に沿ってほぼ単調に増加している。また、2段逆ピークパターンの光強度分布は、逆ピークパターン部分と上に凹型パターン部分との間において傾きが減じる変曲点を有する。
各変形例においても第1実施の形態と同様に、2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6に照射されると、光強度が最小となる点、すなわちほぼ0の点(位相シフト部4eに対応する点)に対応した部分に結晶核が形成される。これを詳しく述べると、逆ピークパターンの光強度分布において傾きの大きな位置に結晶核は発生する。逆ピークパターン部分の中心部に多結晶が生成し、その後その外側の結晶が核となり結晶が成長する。結晶の成長する位置は一般に傾きの大きな位置となる。
次いで、結晶核から、光強度勾配(すなわち温度勾配)の大きいx方向に沿ってラテラル成長が開始される。2段逆ピークパターンの光強度分布では、中間部において光強度が減少する部分が実質的に存在しないので、ラテラル成長が結晶核から途中で停止することなくピークまで達し、大きな結晶の成長を実現することができる。特に、第1実施の形態では、逆ピークパターン部分と上に凹型パターン部分との間において傾きが減じる変曲点が存在するので、2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6の半導体膜に照射されると、2段逆ピークパターンの光強度分布の中心部から幅寸法にわたる広い領域で結晶化する。したがって、2段逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法を液晶の画素ピッチと等しくすることによって、各画素に対して単結晶を生成することができる。
以上により、第1実施の形態の各変形例では、結晶核からの十分なラテラル成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。第1実施の形態に係る結晶化装置により生成された結晶は大粒径であるので、ラテラル成長の方向(x方向)に高い電子移動度を有する。したがって、ラテラル成長の方向にトランジスタのソースドレインを配置することにより、良好な特性のトランジスタを製造することができる。
また、第3変形例では、マイクロレンズアレイ13に入射した光が多数の微小レンズ要素13aによって波面分割され、各微小レンズ要素13aを介して集光された光ビームはスポット状に形成される。したがって、照明光学系2から供給される光の大部分を所望のトランジスタ領域のみの結晶化に寄与させることができ、光効率の良好な結晶化を実現することができる。
第3変形例では、マイクロレンズアレイ13の微小レンズ要素13aの屈折面13bが球面状であるが、x方向とy方向との曲率が異なる形状であってもよい。屈折面13bのx方向とy方向との曲率が異なると、スポット状の光ビーム領域は楕円形状になる。この楕円形状の長軸及び短軸は、x方向とy方向とにおける2段逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法に対応しているので、スポット状の光ビーム領域を楕円形状に形成した場合、逆ピークパターン部分における光強度の勾配がx方向とy方向とで異なる。したがって、屈折面13bの曲率を設定することにより、各方向に沿って、ラテラル成長の度合を変えることができる。
第3変形例では、波面分割素子としてのマイクロレンズアレイ13が、二次元的に配置して構成された複数の光学要素(微小レンズ要素)13aを有し、各光学要素13aは二次曲面状の屈折面13bを介して二次元的な集光機能を有する。しかしながら、これに限定されることなく、例えば図21に示すようなマイクロシリンドリカルレンズアレイ13’を用いてもよい。マイクロシリンドリカルレンズアレイ13’は、所定の方向に沿って一次元的に配置された複数の光学要素13’aを有し、各光学要素13’aは所定の方向に沿って一次元的な集光機能を有する屈折面13’bを有する。この場合、マイクロシリンドリカルレンズアレイ13’の使用に合わせて、図22に示すような透過フィルター15を用いることが望ましい。
透過フィルター15は、例えば50%の透過率を有する細長い矩形状の中央領域15aと、この中央領域15aを挟むように形成されたほぼ100%の透過率を有する一対の半円形状の周辺領域15bとを備えている。この透過フィルター15の中央領域15aの長手方向と、マイクロシリンドリカルレンズアレイ13’の各微小シリンドリカルレンズ要素13’aの長手方向とは、光学的に対応するように設定されている。中央領域15aは、ほぼ平行な弦によって規定されているが、これに限定されず、他の形状であってもよい。
マイクロシリンドリカルレンズアレイ13’に入射した光ビームは、多数の微小シリンドリカルレンズ要素13’aによって波面分割され、各微小シリンドリカルレンズ要素を介して集光された光ビームは、被処理基板6上において各トランジスタ領域を包囲するスリット状(線状)の光ビームを形成する。
したがって、被処理基板6上において照射されるスリット状の光ビームの光強度分布は、スリットの短辺方向に沿って図23に示すような2段逆ピークパターンのプロファイルを有し、長手方向に沿って一様なプロファイルを有する。すなわち、マイクロシリンドリカルレンズアレイ13’及び透過フィルター15を透過して被処理基板6に照射される光ビームは、図23に示すような光強度分布が得られる。
図23に示すような2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6に照射されると、光強度が最小となる点、すなわちほぼ0の点において結晶核が形成され、次いで、この結晶核から光強度勾配のある方向(図22において横方向)に沿ってラテラル成長が開始される。図23に示すような2段逆ピークパターンの光強度分布では、中間部において光強度が減少する部分が実質的に存在しないので、ラテラル成長が結晶核から途中で停止することなくピークまで達し、大きな結晶の成長を実現することができる。
なお、第3変形例では、マイクロレンズアレイ13及びマイクロシリンドリカルレンズアレイ13’における屈折面を連続的な曲面形状に形成してもよいし、あるいは段差形状に形成してもよい。また、連続的な曲面やその多段近似に限定されることなく、位相差にして0〜2πの範囲を折り返した「キノフォーム」として分割波面素子を構成することもできる。また、分割波面素子に屈折面を付与することなく、光学材料の屈折率分布によりその作用を実現してもよい。この場合、光強度により屈折率が変調されるフォトポリマーや、ガラスのイオン交換などの従来技術を使用することができる。また、ホログラムもしくは回折光学素子を用いて、分割波面素子を実現してもよい。
また、第1実施の形態及び各変形例では、位相シフトマスク4と被処理基板6との間の光学上に第2結像光学系5が介在しており、被処理基板6と第2結像光学系5との間隔も比較的大きく確保されているので、被処理基板6のアブレーションに起因して位相シフトマスク4が汚染されることがない。したがって、被処理基板6におけるアブレーションの影響を受けることなく良好な結晶化を実現することができる。
さらに、第1実施の形態及び各変形例では、被処理基板6と第2結像光学系5との間隔が比較的大きく確保されているので、被処理基板6と第2結像光学系5との間の光路上に位置検出のための検出光を導入して、被処理基板6と第2結像光学系5との位置関係を調整することが容易である。
図24は、本発明の第2実施の形態に係る結晶化装置を概略的に示す図である。第2実施の形態は、第1実施の形態と類似の構成を有するが、第2実施の形態では、位相シフトマスク4と被処理基板6との間の光路上から第2結像光学系5を取り除いている点で第1実施の形態と基本的に相違している。以下、第1実施の形態との相違点に着目して、第2実施の形態を説明する。なお、図21において、図面の明瞭化のために、照明光学系2の内部構成の図示を省略している。
図24に示すように、第2実施の形態では、位相シフトマスク4と被処理基板6とが平行に近接して(例えば数μm〜数百μm)配置されている。また、被処理基板6の表面は、第1結像光学系3を介して、透過型振幅変調マスク1の射出面と光学的に共役な関係となるように配置されている。位相シフトマスク4は、透過型振幅変調マスク1が介在しない状態では、均一な光強度分布を有する光ビームを、図7Aに示すように位相シフト部4eに対応する領域において光強度の最も小さい逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームに変換する機能を有する。逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法は、位相シフトマスク4と被処理基板6との距離(すなわちデフォーカス量)の1/2乗に比例して変化する。
第2実施の形態においても第1実施の形態と同様に、透過型振幅変調マスク1と位相シフトマスク4との両方の作用により2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームが被処理基板6の半導体膜上に照射されるので、ラテラル成長が結晶核から途中で停止することなくピークまで達し、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。なお、透過型振幅変調マスク1の代わりに、開口型振幅変調マスク11、集光発散素子12、並びに、マイクロレンズアレイ13及び透過フィルター14を用いて、それぞれ第2の実施形態の変形例とすることができる。
図25は、本発明の第3実施の形態に係る結晶化装置を概略的に示す図である。第3実施の形態は、第1実施の形態と類似の構成を有するが、第3実施の形態では、位相シフトマスク4の位相シフト面と被処理基板6の表面とが、第2結像光学系5を介して光学的に共役な関係となるように配置されている点で第1実施の形態と基本的に相違している。以下、第1実施の形態との相違点に着目して、第3実施の形態を説明する。なお、図25において、図面の明瞭化のために、照明光学系2の内部構成の図示を省略している。
図25に示すように、位相シフトマスク4の位相シフト面と被処理基板6の表面とが第2結像光学系5を介して光学的に共役な関係に配置されている。また、被処理基板6の表面は、第1結像光学系3と第2結像光学系5とを介して、透過型振幅変調マスク1の射出面と光学的に共役な関係になるように配置されている。
第3実施の形態に係る結像光学系5は、開口絞り5aを有し、この開口絞り5aは、結像光学系5の瞳面に配置されている。開口絞り5aは、開口部(光透過部)の大きさの異なる複数の開口絞りを有し、これら複数の開口絞りは光路に対して変換可能に構成されている。あるいは、開口絞り5aは、開口部の大きさを連続的に変化させることのできる虹彩絞りを有していてもよい。開口絞り5aの開口部の大きさ(すなわち、結像光学系5の像側開口数)は、被処理基板6の半導体膜上において周期的な2段逆ピークパターンの光強度分布を発生させるように設定されている。2段逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法は、液晶の画素ピッチと等しくなるように設定されることが好ましい。
位相シフトマスク4の作用により被処理基板6の半導体膜上に形成される逆ピークパターンの光強度分布の幅寸法は、第2結像光学系5の解像度R2と同程度になる。第2結像光学系5の解像度R2は、使用光の波長をλとし、第2結像光学系5の像側開口数をNA2とすると、R2=kλ/NA2で規定される。ここで、定数kは、位相シフトマスク4を照明する照明光学系2の仕様や、光源から供給される光ビームのコヒーレンスの程度、解像度の定義にもよるが、ほぼ1に近い値である。このように、第3実施の形態では、第2結像光学系5の像側開口数NAを小さくして、第2結像光学系5の解像度を低下させると、逆ピークパターンの光強度分布幅寸法が大きくなる。
つまり、位相シフト面で変換された光ビームの光強度分布の逆ピークパターン部分は、位相シフト面上では狭い幅寸法を有し、位相シフト面からある程度離れた面上において好適な幅寸法を有する。第3実施の形態では、位相シフト面上の光強度分布を第2結像光学系5によって低い解像度で被処理基板6の半導体膜上に転送するため、被処理基板6に照射される光ビームの光強度分布の逆ピークパターン部分は被処理基板6の半導体膜上において好適な幅寸法を有する。
また、第3実施の形態では、位相シフトマスク4と被処理基板6との間の光学上に第2結像光学系5が介在しており、被処理基板6と第2結像光学系5との間隔も比較的大きく確保されているので、被処理基板6のアブレーションに起因して位相シフトマスク4が汚染されることがない。したがって、被処理基板6におけるアブレーションの影響を受けることなく良好な結晶化を実現することができる。
さらに、第3実施の形態では、被処理基板6と第2結像光学系5との間隔が比較的大きく確保されているので、被処理基板6と第2結像光学系5との間の光路上に位置検出のための検出光を導入して、被処理基板6と第2結像光学系5との位置関係を調整することが容易である。
上述の各実施の形態では、位相シフトマスク4が、0,π/2,π,3π/2の位相に対応する4つの矩形状の領域から構成されているが、これに限定されることなく、位相シフトマスク4について様々な変形例が可能である。例えば、3以上の位相シフト線からなる交点(位相シフト部)を有し、この交点を中心とする円形領域の複素透過率の積分値がほぼ0であるような位相シフトマスク4を用いてもよい。また、図26に示すように、位相シフト部に対応する円形状の段差を有し、この円形状の段差部分の透過光とその周囲の透過光との位相差がπになるように設定された位相シフトマスク4を用いてもよい。
光強度分布は設計の段階でも計算できるが、実際の被処理面(被露光面)での光強度分布を観察して確認しておくことが望ましい。そのためには、被処理面を光学系で拡大し、CCDなどの撮像素子で入力すれば良い。使用光が紫外線の場合は、光学系が制約を受けるため、被処理面に蛍光板を設けて可視光に変換しても良い。
図27は、各実施の形態の結晶化装置を用いて電子デバイスを作製する工程を示している。図27(A)に示すように、絶縁基板20(例えば、アルカリガラス、石英ガラス、プラスチック、ポリイミドなど)の上に、下地膜21(例えば、膜厚50nmのSiN及び膜厚100nmのSiO2積層膜など)及び非晶質半導体膜22(例えば、膜厚50nm〜200nm程度のSi,Gc,SiGeなど)を、化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜することにより、被処理基板6を準備する。
成膜された非晶質半導体膜22の表面の一部もしくは全部には、上記結晶化装置を用いて、レーザ光23(例えば、KrFエキシマレーザ光やXeClエキシマレーザ光など)を照射する。本発明の各実施の形態に係る結晶化装置は、2段逆ピークパターンの光強度分布を有する光ビームを照射するので、図27(B)に示すように、従来の結晶化装置を用いて生成された多結晶半導体膜に比べて大粒径の結晶を有する多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜24を生成する。
非晶質半導体膜22が比較的広い表面を有しており、結晶化装置による一回の照射が表面の一部のみを照射する場合、非晶質半導体膜22の表面全体の結晶化は、結晶化装置と非晶質半導体膜22を相対的に直交する2方向に動かすことによって行われる。
例えば、非晶質半導体膜22に対して結晶化装置が直交する2方向に移動可能であり、結晶化装置を移動ささせながら非晶質半導体膜22の表面に光ビームを照射してもよい。または、非晶質半導体膜22が設けられた被処理基板が直交する2方向に移動可能なステージに載置されており、固定された結晶化装置に対して、このステージを移動させることによって、非晶質半導体膜22の表面に光ビームが照射されるようにしてもよい。あるいは、一方向にのみ移動可能なアームに支持された結晶化装置に対して、これと直交する方向に非晶質半導体膜22が設けられた被処理基板を移動させるようにした結晶化装置において、結晶化装置と被処理基板とを相対的に直交する2方向に移動させることによって非晶質半導体膜22の表面に光ビームを照射してもよい。
次に、図27(C)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜24を島状の半導体膜25に加工し、ゲート絶縁膜26として膜厚20nm〜100nmのSiO2膜を化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜する。さらに、図27(D)に示すように、ゲート電極27(例えば、シリサイドやMoWなど)を形成し、ゲート電極27をマスクにして不純物イオン28(Nチャネルトランジスタの場合にはリン、Pチャネルトランジスタの場合にはホウ素)を注入する。その後、窒素雰囲気でアニール処理(例えば、450℃で1時間)を行い、不純物を活性化する。
次に、図27(E)に示すように、層間絶縁膜29を成膜してコンタクト穴をあけ、チャネル30でつながるソース31及びドレイン32に接続するソース電極33及びドレイン電極34を形成する。このとき、図27(A)及び図27(B)に示す工程において生成された多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜24の大粒径結晶の位置に合わせて、チャネル30を形成する。
以上の工程により、多結晶トランジスタまたは単結晶化半導体トランジスタを形成することができる。こうして製造された薄膜トランジスタは、液晶ディスプレスやEL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなど表示装置の駆動回路や、メモリ(SRAMやDRAM)やCPUなどの集積回路などに適用可能である。
1…透過型振幅変調マスク、2…照明光学系、2a…光源、2b…ビームエキスパンダ、2c、2e…フライアイレンズ、2d、2f…コンデンサー光学系、3…第1結像光学系、4…位相シフトマスク、5…第2結像光学系、6…被処理基板、7…基板ステージ、11…開口型振幅変調マスク、12…集光発散素子、13…マイクロレンズアレイ、14、15…透過フィルター。