JP2009094121A - 光照射装置、結晶化装置、結晶化方法、およびデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】 デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、所望のディップ状の光強度分布を所望の位置に安定的に形成することのできる結晶化装置。
【解決手段】 180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有し、入射光を位相変調する光変調素子(1)と、光変調素子を照明する照明系(2)と、光変調素子により位相変調された光に基づいて所定の光強度分布を所定面に形成する結像光学系(3)と、結像光学系の瞳位置に配置されて第1領域を通過する第1光束と第2領域を通過する第2光束とを互いに非干渉性にする空間フィルター(6)とを備えている。
【選択図】 図16
【解決手段】 180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有し、入射光を位相変調する光変調素子(1)と、光変調素子を照明する照明系(2)と、光変調素子により位相変調された光に基づいて所定の光強度分布を所定面に形成する結像光学系(3)と、結像光学系の瞳位置に配置されて第1領域を通過する第1光束と第2領域を通過する第2光束とを互いに非干渉性にする空間フィルター(6)とを備えている。
【選択図】 図16
Description
本発明は、光照射装置、結晶化装置、結晶化方法、およびデバイスに関する。特に、本発明は、所定の光強度分布を有する光を非単結晶半導体膜に照射して結晶化半導体膜を生成する技術に関するものである。
従来、たとえば液晶表示装置(Liquid-Crystal-Display:LCD)の表示画素を選択するスイッチング素子などに用いられる薄膜トランジスタ(Thin-Film-Transistor:TFT)は、非晶質シリコン(amorphous-Silicon)や多結晶シリコン(poly-Silicon)を用いて形成されている。
多結晶シリコンは、非晶質シリコンよりも電子または正孔の移動度が高い。したがって、多結晶シリコンを用いてトランジスタを形成した場合、非晶質シリコンを用いて形成する場合よりも、スイッチング速度が速くなり、ひいてはディスプレイの応答が速くなる。また、周辺LSIを薄膜トランジスタで構成することが可能になる。さらに、他の部品の設計マージンを減らせるなどの利点がある。また、ドライバ回路やDACなどの周辺回路をディスプレイに組み入れる場合に、それらの周辺回路をより高速に動作させることができる。
多結晶シリコンは結晶粒の集合からなるため、例えばTFTトランジスタを形成した場合、チャネル領域に結晶粒界が形成され、この結晶粒界が障壁となり単結晶シリコンに比べると電子または正孔の移動度が低くなる。また、多結晶シリコンの基板に形成された多数の薄膜トランジスタは、チャネル部に形成される結晶粒界数が各薄膜トランジスタ間で異なり、これがバラツキとなって周辺回路であればその設計マージンを狭くしたり、液晶表示装置であれば表示ムラの原因となったりする。そこで、最近、電子または正孔の移動度を向上させ且つチャネル部における結晶粒界数のバラツキを少なくするために、少なくとも1個のチャネル領域を形成できる大きさの大粒径の結晶化シリコンを生成する結晶化方法が提案されている。
従来、この種の結晶化方法として、位相シフター(光変調素子)にエキシマレーザ光を照射し、それによるフレネル回折像もしくは結像光学系による結像を非単結晶半導体膜(多結晶半導体膜または非単結晶半導体膜)に照射して結晶化半導体膜を生成する「位相制御ELA(Excimer Laser Annealing)法」が知られている。位相制御ELA法の詳細は、たとえば表面科学Vol.21, No.5, pp.278-287, 2000に開示されている。
位相制御ELA法では、位相シフターの位相シフト部に対応する点において光強度が周辺よりも低い逆ピークパターン(中心において光強度が最も低く周囲に向かって光強度が急激に増大する、例えば、V字型のパターン)の光強度分布を発生させ、この逆ピーク状の光強度分布を有する光を非単結晶半導体膜に照射する。その結果、被照射領域内において光強度分布に応じて溶融領域に温度勾配が生じ、光強度が最も低い点に対応して最初に凝固する部分もしくは溶融しない部分に結晶核が形成され、その結晶核から周囲に向かって結晶が横方向に成長(以降、「ラテラル成長」または「横方向成長」と呼ぶ)することにより大粒径の単結晶粒が生成される。
本出願人は、180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有する光変調素子を用いる結晶化装置および方法において、深い焦点深度に基づいて所望の逆ピーク状(ディップ状)の光強度分布を所望する位置に安定的に形成することができ、且つ半導体膜に高い充填率で結晶粒を形成することのできる技術を提案している(特許文献1、特許文献2を参照)。
特許文献1および2に記載されているように、180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有する光変調素子を用いると、結像光学系の像面位置にフォーカス状態で形成されるディップ状の光強度分布は、ほぼ左右対称であり、その最小光強度(ボトム強度)はある程度大きくなる。これに対し、結像光学系の像面位置から上下に微小移動したデフォーカス位置にデフォーカス状態で形成されるディップ状の光強度分布の左右対称性は、大きく崩れ、そのボトム強度の位置が移動する。
なお、被処理基板には、デフォーカスの原因となる板厚偏差が不可避的に存在する。このように、デフォーカス状態で形成されるディップ状の光強度分布の左右対称性が大きく崩れ、しかもデフォーカス方向に依存して左右対称性の崩れ方が逆になるため焦点深度が浅く(狭く)なってしまう。また、デフォーカスによりボトム強度の位置が面内で移動するので、生成される結晶粒の位置も所望する位置からシフトしてしまう。
特許文献1および2に記載された従来技術では、光束分割素子の作用により入射光束を偏光状態の異なる2つの光束に分割し、互いに離間した2つのディップ状の光強度分布の合成に対応する所定の光強度分布を半導体膜基板の表面に形成することにより、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく所望のディップ状の光強度分布を所望の位置に安定的に形成している。本発明は、特許文献1および2に記載された課題と同じ課題を、特許文献1および2とは異なる新規な構成に基づいて解決しようとするものである。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、所望のディップ状の光強度分布を所望の位置に安定的に形成することのできる結晶化装置および結晶化方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有し、入射光を位相変調する光変調素子と、
前記光変調素子を照明する照明系と、
前記光変調素子により位相変調された光に基づいて所定の光強度分布を所定面に形成する結像光学系と、
前記結像光学系の瞳位置に配置されて第1領域を通過する第1光束と第2領域を通過する第2光束とを互いに非干渉性にする空間フィルターとを備えている光照射装置を提供する。
前記光変調素子を照明する照明系と、
前記光変調素子により位相変調された光に基づいて所定の光強度分布を所定面に形成する結像光学系と、
前記結像光学系の瞳位置に配置されて第1領域を通過する第1光束と第2領域を通過する第2光束とを互いに非干渉性にする空間フィルターとを備えている光照射装置を提供する。
本発明の第2形態では、第1形態の光照射装置と、前記所定面に非単結晶半導体膜を保持するためのステージとを備え、前記所定面に保持された非単結晶半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置を提供する。
本発明の第3形態では、第1形態の光照射装置を用いて、前記所定面に保持された非単結晶半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化方法を提供する。
本発明の第4形態では、第2形態の結晶化装置または第4形態の結晶化方法を用いて製造されたデバイスを提供する。
本発明の結晶化装置および結晶化方法では、結像光学系の瞳位置に配置された空間フィルターの作用により、第1領域を通過する第1光束と第2領域を通過する第2光束とを互いに非干渉性にする。具体的には、空間フィルターは、瞳位置において複素振幅の絶対値が最大となる最大回折光成分と、それ以外の回折光成分とを互いに非干渉性にする。
その結果、半導体膜基板にはデフォーカスの原因となる板厚偏差が不可避的に存在するが、本発明の原理の説明および実施形態の説明において後述するように、半導体膜の表面に形成されるディップ状の光強度分布はデフォーカスの影響をほとんど受けない。こうして、本発明では、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、所望のディップ状の光強度分布を所望の位置に安定的に形成することができ、ひいては半導体膜上に形成される結晶粒の充填率を高めることができる。
以下、本発明の実施形態の具体的な説明に先立って、本発明の基本的な原理について説明する。図1を参照すると、180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有する典型的な光変調素子であるライン・アンド・スペース(以下、「L/S」という)型の位相段差の光変調素子11で位相変調された光が、結像光学系12を介して、その像面12a上に結像している。図1において、照明光は光変調素子11に対して平行光の状態で垂直入射するものとし、L/S型の位相段差のx方向に沿った周期構造のピッチをPとし、位相段差の位相差(位相段差量)をθとしている。
照明光は光変調素子11のL/S型の位相段差によりx方向に回折され、そのうちの比較的次数の小さい回折光だけが、結像光学系12の瞳位置(開口絞りASの位置)12bを通過して像面12aでの結像に寄与する。図1では、0次光、±1次回折光、および±2次回折光が瞳位置12bを通過している様子が例示的に示されている。瞳位置12bにおける複素振幅分布は、L/S型の位相段差の複素振幅透過率分布g(x)のフラウンホーファー回折、すなわちフーリエ変換により求められる。すなわち、瞳位置12bにおけるn次光成分の複素振幅Enは、次の式(1)で表される。
ここで、位相段差の複素振幅透過率分布g(x)は、次の式(2)および(3)で表されるものとする。すなわち、着目する位相段差のx方向位置が、結像光学系12の光軸AXと一致しているものとする。
式(2)および(3)を式(1)に代入することにより、瞳位置12bにおけるn次光成分の複素振幅Enは、次の式(4)〜(6)で表される。
図2に、式(4)〜(6)から得られる瞳位置12bでの複素振幅分布を模式的に示す。ただし、共通の定数eiθ/2は省略して、0次光の複素振幅E0が正の実数、すなわち位相0となるようにした。従って、結像光学系12の像面12aにおいて位相段差に対応する位置での波面は、図3に示すようになる。図3では、Enが正の実数、すなわち位相0となる0次光,−1次光および−3次光の波面を実線で示し、Enが負の実数、すなわち位相πとなる+1次光および+3次光の波面を破線で示し、±5次光以上の高次回折光の波面の図示を省略している。
図3を参照すると、0次光を除き、次数の絶対値が同じで符号の異なる2つの回折光の波面構造は位相段差の位置に関して反対称であることが分かる。すなわち、+n次回折光の波面構造と−n次回折光の波面構造とは位相段差の位置に関して反対称である。このことは、図示を省略した±5次光以上の高次回折光についても同様である。そのため、0次光がなければ、複素振幅分布は位相段差の位置に対して反対称であり、強度分布は位相段差の位置に対して対称となる。ところが、0次光が加わることによりこれらの対称性は成り立たなくなる。こうして、0次光がなければ結像光学系12の像面12aに形成される光強度分布の左右対称性はデフォーカスに対して安定であるが、0次光があるため光強度分布の左右対称性がデフォーカスに対して不安定である(左右対称性がデフォーカスに応じて変化する)ことがわかる。
図4(a)に、結像光学系12の像面12aから5μmだけ離れた面に第1デフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図4(b)に、結像光学系12の像面12aにフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図4(c)に、結像光学系12の像面12aから5μmだけ結像光学系寄りの面に第2デフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図4(a)〜図4(c)に示す光強度分布は、所定の条件に基づく計算により得られたものである。
上記計算は、光の波長λが0.308μmであり、光変調素子11のL/S型の位相段差量θが90度であり、L/S型の位相段差のピッチPが16μmであり、結像光学系12が等倍光学系であってその開口数NAが0.15であるという条件に基づくものである。この条件では、±7次光までが結像光学系12の瞳位置12bを通過する。図4(a)〜図4(c)を参照すると、フォーカス状態では左右対称なディップ状の光強度分布が得られるが、デフォーカスにより光強度分布の左右対称性が崩れることがわかる。
図5(a)に、0次光以外の回折光が第1デフォーカス状態で形成する光強度分布および0次光のみが第1デフォーカス状態で形成する光強度分布を示す。図5(b)に、0次光以外の回折光がフォーカス状態で形成する光強度分布および0次光のみがフォーカス状態で形成する光強度分布を示す。図5(c)に、0次光以外の回折光が第2デフォーカス状態で形成する光強度分布および0次光のみが第2デフォーカス状態で形成する光強度分布を示す。図5(a)〜図5(c)を参照すると、0次光以外の回折光が形成する光強度分布も、0次光のみが形成する光強度分布も、デフォーカスの影響をほとんど受けないことがわかる。
図6(a)に、0次光以外の回折光が第1デフォーカス状態で形成する光強度分布と0次光のみが第1デフォーカス状態で形成する光強度分布とを強度的に加算して得られる光強度分布を示す。図6(b)に、0次光以外の回折光がフォーカス状態で形成する光強度分布と0次光のみがフォーカス状態で形成する光強度分布とを強度的に加算して得られる光強度分布を示す。図6(c)に、0次光以外の回折光が第2デフォーカス状態で形成する光強度分布と0次光のみが第2デフォーカス状態で形成する光強度分布とを強度的に加算して得られる光強度分布を示す。
図6(a)〜図6(c)を参照すると、結像光学系12の像面12aにおいて0次光以外の回折光と0次光とが互いに干渉しなければ、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、ディップ状の光強度分布のボトム強度を所望の位置および値に保ちつつ、ディップ状の光強度分布の左右対称性を安定的に保つことができることが分かる。しかしながら、通常の結像では、0次光以外の回折光と0次光とが互いに干渉し、強度的に加算された光強度分布ではなく、振幅的に合成された光強度分布が得られる。
なお、上述の説明では、複素振幅透過率分布g(x)が式(2)および(3)に示すような位相段差、すなわち図7(a)に示すような「二段型」の位相段差を想定している。しかしながら、「二段型」の位相段差に限定されることなく、図7(b)に示すような「階段型」の位相段差や、図7(c)に示すような「傾斜型」の位相段差等も考えられる。「階段型」の位相段差や「傾斜型」の位相段差の場合も、瞳位置12bにおける複素振幅分布は、複素振幅透過率分布g(x)のフーリエ変換により求められる。
「階段型」の位相段差(段数は2π/θ)の場合、瞳位置12bにおけるn次光成分の複素振幅Enは、次の式(7)および(8)で表される。なお、式(7)および(8)において、mは整数である。また、「傾斜型」の位相段差の場合、瞳位置12bにおけるn次光成分の複素振幅Enは、次の式(9)で表される。
θ=π/2で4段の「階段型」の位相段差の場合に、式(7)および(8)から得られる瞳位置12bでの複素振幅分布を図8(a)に模式的に示す。「傾斜型」の位相段差の場合に、式(9)から得られる瞳位置12bでの複素振幅分布を図8(b)に模式的に示す。図8(a)および図8(b)では、n次光成分の複素振幅Enの中の係数は省略し、中央のピークが正の実数になるように、すなわち位相0となるようにしている。
位相段差の型の違いおよび位相段差量θの値の違いにより多少の差はあるものの、これらの位相段差により得られる瞳位置での複素振幅分布には、以下の共通の特徴がある。第1の特徴は、中央に「複素振幅の絶対値が最大になる回折成分」があることである。θはπ以下であると考えてよいから、その成分は、「二段型」および「傾斜型」では0次光成分であり、「階段型」では1次回折光成分である。
第2の特徴は、回折次数nの絶対値が増えるにしたがって、複素振幅は基本的に1/nの形で減衰することである。実際には、複素振幅Enの分母にθの項があるため、1/nに正確には比例しないが、θはπ以下であると考えてよいから、そのずれは小さい。第3の特徴は、回折次数nの正側の列では複素振幅の符号は互いに等しく、負側の列では複素振幅の符号は互いに等しく、正側の列と負側の列とでは複素振幅の符号が互いに異なる。第4の特徴は、「複素振幅の絶対値が最大になる回折成分」の複素振幅は、回折次数nの正側の列もしくは負側の列のいずれかにおける複素振幅と符号が等しい。
これらの特徴を考えると、「階段型」の位相段差や「傾斜型」の位相段差の場合も、「二段型」の位相段差の場合と同様な考察が成り立ち、デフォーカスによりディップ状の光強度分布が左右非対称になることが理解できる。また、「階段型」の位相段差や「傾斜型」の位相段差の場合も、「結像光学系の瞳位置において複素振幅の絶対値が最大となる回折光成分」と、それ以外の他の回折光成分とを互いに非干渉性にすることにより、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、ディップ状の光強度分布のボトム強度を所望の位置および値に保ちつつ、ディップ状の光強度分布の左右対称性を安定的に保つことができることが理解される。
本発明では、上述の考察および知見に基づき、複素振幅の絶対値が最大となる最大回折光成分とそれ以外の回折光成分とを互いに非干渉性にする空間フィルターを、結像光学系の瞳位置に付設する。その結果、空間フィルターの作用により、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、ディップ状の光強度分布のボトム強度を所望の位置および値に保ちつつ、ディップ状の光強度分布の左右対称性を安定的に保つことが可能になる。すなわち、本発明では、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、所望のディップ状の光強度分布を所望の位置に安定的に形成することができる。
なお、結像光学系の瞳位置に空間フィルターを挿入することにより、解像度の向上(apodisation)、位相物体の可視化(位相差顕微鏡)、画像処理等を実現する方法は、古くから知られている。この点については、文献「久保田広、他著、光学技術ハンドブック、朝倉書店、P172」、「鶴田著、応用光学I、培風館、P256」などを参照することができる。
また、複素振幅透過率分布を有する空間フィルター、すなわち位相と振幅とを変調する空間フィルターを結像光学系の瞳位置に挿入することにより、焦点深度(DOF)を拡大する技術が、文献「H.Fukuda et al., J. Vac. Sci. Technol. B9 (6), Nov/Dec 1991, p3113.」に記載されている。ただし、上述の文献には、2つの光束を互いに非干渉性にする空間フィルター、180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有する光変調素子を介して得られるディップ状の光強度分布に言及する記載はない。
次に、結像光学系の瞳位置において第1光束と第2光束とを互いに非干渉性にする空間フィルターについて説明する。以下、空間フィルターの説明の理解を容易にするために、光変調素子11として、「二段型」の位相段差を有する光変調素子を用いるものとする。図9は、波長板を用いるタイプの空間フィルターの構成および作用を概略的に示す図である。図9に示す空間フィルター21は、0次光が通過し且つ0次光以外の回折光が通過しない領域に配置された波長板31と、波長板31を支持する平行平面状の透明基板41とにより構成されている。波長板31は、例えば光学密着や融着により透明基板41に貼り合わされている。
例えば照明光が直線偏光であり且つ波長板31として1/2波長板を用いる場合、空間フィルター21に入射する0次光(最大回折光成分)の偏光方向が90度回転し、空間フィルター21に入射する0次光以外の回折光の偏光方向は変化しない。その結果、空間フィルター21を経た0次光(図中破線で示す)と0次光以外の回折光(図中実線で示す)とは互いに非干渉性になる。
なお、図10(a)に示すように、0次光が通過し且つ0次光以外の回折光が通過しない第1領域に配置された第1波長板32と、0次光以外の回折光が通過し且つ0次光が通過しない第2領域に配置されて第1波長板32とは進相軸の方向の異なる第2波長板33とを備えた空間フィルター22を用いることができる。具体的には、例えば照明光が直線偏光である場合、第1波長板32として1/4波長板または1/2波長板を用い、第2波長板33として第1波長板32とは進相軸の方向の異なる1/4波長板または1/2波長板を用いることができる。
あるいは、図10(b)に示すように、0次光以外の回折光が通過し且つ0次光が通過しない領域に配置された一対の波長板34を備えた空間フィルター23を用いることができる。具体的には、例えば照明光が直線偏光である場合、波長板34として1/2波長板を用いることができる。波長板を用いるタイプの空間フィルターでは、空間フィルターを経た0次光と0次光以外の回折光とを、偏光方向が互いに直交する直線偏光にするか、あるいは右回り円偏光と左回り円偏光とにすればよい。
一般に、波長板を用いるタイプの空間フィルターは、0次光(第1光束)および0次光以外の回折光(第2光束)のうちの少なくとも一方の偏光状態を変化させる偏光変化部材を有し、この偏光変化部材は、0次光が通過する領域(第1領域)および0次光以外の回折光が通過する領域(第2領域)のうちの少なくとも一方の領域に配置された波長板を有する。なお、波長板31〜34を支持する透明基板41の設置は必須ではなく、その設置を省略することもできる。上記空間フィルターの実施例では、第1波長板32を長方形状、第2波長板33を円弧状にして円板状の空間フィルターを形成した例について説明したが他の形状でもよい。第1波長板32は0次光の全体を含む形状であることが望ましい。
図11は、光源のコヒーレント長以上の光路差を付与するタイプの空間フィルターの構成および作用を概略的に示す図である。図11に示す空間フィルター24は、0次光が通過し且つ0次光以外の回折光が通過しない領域に配置された透明板35を備えている。透明板35の厚さtは、光源のコヒーレント長Lcを、透明板35を形成する光学材料の屈折率nから1.0を引いた値で割った値、すなわちLc/(n−1)以上であればよい。
例えば波長308nmのレーザ光を射出するXeClエキシマレーザ光源のコヒーレント長Lcは0.5mm程度であるから、透明板35の所要の厚さtは約1.0mmとなる。光路差付与部材としての透明板35の作用により、0次光(透明板35を通過する第1光束)と0次光以外の回折光(透明板35を通過しない第2光束)との間に光源のコヒーレント長以上の光路差が付与される。その結果、空間フィルター24を経た0次光(図中破線で示す)と0次光以外の回折光(図中実線で示す)とは互いに非干渉性になる。
あるいは、図12に示すように、0次光以外の回折光が通過し且つ0次光が通過しない領域に配置された一対の透明板36を備えた空間フィルター25を用いることができる。この場合も、透明板36を所要の厚さに設定することにより、0次光と0次光以外の回折光との間に光源のコヒーレント長以上の光路差が付与され、ひいては空間フィルター25を経た0次光と0次光以外の回折光とは互いに非干渉性になる。なお、透明板35,36を別の透明基板に光学密着や融着により貼り合わせてもよい。
なお、上述の説明では、発明の理解を容易にするために、単一の点光源からの光で光変調素子を照明している。実際には、光源に起因する結像面での光強度の不均一性を解消するために、単一点光源ではなく、互いに位置の異なる複数の点光源からの光で光変調素子を照明することが求められることがある。その場合には、結像光学系の瞳において各点光源に対応する位置に波長板または透明板を配置することにより空間フィルターを構成すればよい。
すなわち、光変調素子を照明する照明系が複数の点の集合からなる射出瞳分布を有する場合、各点に対応する0次光(第1光束の集合)および0次光以外の回折光(第2光束の集合)とを互いに非干渉性にするように空間フィルターを構成すればよい。このとき、照明系は、各点に対応する0次光(第1光束の集合)と0次光以外の回折光(第2光束の集合)とが結像光学系の瞳位置において互いに重ならないような射出瞳分布を有することが好ましい。この点について、図13を参照して具体的に説明する。
図13は、3×3の点光源に対応するように結像光学系の瞳位置に3×3の波長板を配置することにより空間フィルターを構成した例を概略的に示す図である。ここで、例えば3×3の点光源からの照明光が直線偏光である場合、図9に示す空間フィルター21の構成と同様に、3×3の波長板37として1/2波長板を用いることができる。このとき、各点光源からの照明光により生成される奇数次回折光(1次回折光,3次回折光,・・・)と、他の点光源からの照明光により生成される0次光とが、結像光学系の瞳位置で互いに重ならないことが望ましい。
これは、1次回折光および3次回折光が波長板37を通過することなく、0次光だけが波長板37を通過するように構成するためである。図13では、点光源からの照明光により生成される1次回折光が結像光学系の瞳を通る位置43および3次回折光が瞳を通る位置44を、0次光が瞳を通る位置45の中間に位置決めしている。これを実現させるためには、以下の式(10)を満たせばよい。式(10)において、Dは照明系の射出瞳における点光源の間隔である。
図14および図15は、空間フィルターの他の一般的な構成例を概略的に示す図である。図14および図15において、黒丸は最大回折光成分(例えば0次光)が瞳位置を通過する位置を、ハッチングを施した領域は波長板または透明板を示している。また、図14において、両方向矢印は光変調素子における位相段差の周期構造による回折方向を示している。
図14(a)〜図14(c)では、位相段差の周期構造による回折方向に沿って他の最大回折光成分が重ならないように配慮している。一方、図15(a)〜図15(c)に示す空間フィルターでは、光変調素子上で位相段差の周期の方向が縦横に混在していても対応できるように、波長板または透明板を等方的に配置している。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図16は、本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。図17は、図16の照明系の内部構成を概略的に示す図である。図16および図17を参照すると、本実施形態の結晶化装置は、入射光束を位相変調して所定の光強度分布を有する光束を形成するための光変調素子1と、光変調素子1を照明するための照明系2と、結像光学系3と、被処理基板4を保持するための基板ステージ5と、結像光学系3の瞳位置に配置された空間フィルター6とを備えている。
光変調素子1の構成および作用については後述する。照明系2は、たとえば308nmの波長を有するレーザ光を供給するXeClエキシマレーザ光源2aを備えている。光源2aとして、KrFエキシマレーザ光源やYAGレーザ光源のように被処理基板4を溶融するエネルギー光線を出射する性能を有する他の適当な光源を用いることもできる。光源2aから供給されたレーザ光は、ビームエキスパンダ2bを介して拡大された後、第1フライアイレンズ2cに入射する。
こうして、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面には複数の小光源が形成され、これらの複数の小光源からの光束は第1コンデンサー光学系2dを介して、第2フライアイレンズ2eの入射面を重畳的に照明する。その結果、第2フライアイレンズ2eの後側焦点面には、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面よりも多くの複数の小光源が形成される。第2フライアイレンズ2eの後側焦点面に形成された複数の小光源からの光束は、第2コンデンサー光学系2fを介して、光変調素子1を重畳的に照明する。
第1フライアイレンズ2cと第1コンデンサー光学系2dとにより、第1ホモジナイザが構成されている。この第1ホモジナイザにより、光源2aから射出されたレーザ光について、光変調素子1上での入射角度に関する均一化が図られる。また、第2フライアイレンズ2eと第2コンデンサー光学系2fとにより、第2ホモジナイザが構成されている。この第2ホモジナイザにより、第1ホモジナイザからの入射角度が均一化されたレーザ光について、光変調素子1上での面内各位置での光強度に関する均一化が図られる。
光変調素子1により位相変調されたレーザ光は、結像光学系3を介して、被処理基板4に入射する。ここで、結像光学系3は、光変調素子1の位相パターン面と被処理基板4とを光学的に共役に配置している。換言すれば、被処理基板4(厳密には被処理基板4の被照射面)は、光変調素子1の位相パターン面と光学的に共役な面(結像光学系3の像面)に設定されている。
結像光学系3は、例えば、正レンズ群3aと、正レンズ群3bと、これらのレンズ群の間に配置された開口絞り3cとを備えている。開口絞り3cの位置、すなわち結像光学系3の瞳位置には、空間フィルター6が配置されている。空間フィルター6の構成および作用については後述する。開口絞り3cの開口部(光透過部)の大きさ(ひいては結像光学系3の像側開口数NA)は、被処理基板4の半導体膜上(被照射面)において所要の光強度分布を発生させるように設定されている。なお、結像光学系3は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
被処理基板4は、基板上に、下層絶縁膜、非単結晶半導体薄膜、上層絶縁膜の順に成膜することにより構成されている。さらに詳細には、本実施形態では、被処理基板4は、たとえば液晶ディスプレイ用板ガラスの上に、化学気相成長法(CVD)により、下地絶縁膜、非単結晶半導体膜(例えば非晶質シリコン膜)、およびキャップ膜が順次形成されたものである。下地絶縁膜およびキャップ膜は、絶縁膜、例えばSiO2膜である。下地絶縁膜は、非晶質シリコン膜とガラス基板とが直接接触して、ガラス基板中のNaなどの異物が非晶質シリコン膜に混入するのを防止し、非晶質シリコン膜の熱が直接ガラス基板に伝わるのを防止する。
非晶質シリコン膜は、結晶化される半導体膜である。キャップ膜は、非晶質シリコン膜に入射する光ビームの一部により加熱され、この加熱された温度を蓄熱する。この蓄熱効果は、光ビームの入射が遮断されたとき、非晶質シリコン膜の被照射面において高温部が相対的に急速に降温するが、この降温勾配を緩和させ、大粒径の横方向の結晶成長を促進させる。被処理基板4は、真空チャックや静電チャックなどにより基板ステージ5上において予め定められた所定の位置に位置決めされて保持されている。
図18は、本実施形態における光変調素子の構成を概略的に示す図である。本実施形態の光変調素子1の基本パターン1P(図中破線で囲む矩形状の領域)は、帯状領域1Aと帯状領域1Bとにより構成されている。図示を省略したが、基本パターン1Pは、例えばX方向およびY方向に沿って二次元的に繰り返し形成されている。帯状領域1Aでは、図中斜線部で示す矩形状の領域1Aaが−90度の位相値を有し、図中空白部で示す領域1Abが0度の位相値を有する。
一方、帯状領域1Bでは、図中斜線部で示す矩形状の領域1Baが+90度の位相値を有し、図中空白部で示す領域1Bbが0度の位相値を有する。ここで、基準となる位相値0度に対して、+90度は90度の位相進みを、−90度は90度の位相遅れを意味している。本明細書では、平面波が入射した光変調素子の直後の波面を考え、光の進行方向にシフトしている場合にその領域を「位相進み」側の領域とし、逆に光源側にシフトしている場合にその領域を「位相遅れ」側の領域と定義する。
帯状領域1Aおよび1Bでは、結像光学系3の像面換算で1μm×1μmのサイズを有する正方形状のセル(単位領域)が、縦横に且つ稠密に8個×16個並んでいる。結像光学系3の像面換算でのセルのサイズ1μm×1μmは、結像光学系3の点像分布範囲の半径よりも小さく設定されている。帯状領域1Aでは、各セルにおける領域1Aaの占有面積率(すなわち各セルにおける領域1Aaと1Abとの割合)が、Y方向に沿って変化している。具体的には、Y方向に沿った領域1Aaの占有面積率は、帯状領域1Aの中央において最も大きく、その両端に向かって減少している。
同様に、帯状領域1Bでは、各セルにおける領域1Baの占有面積率(すなわち各セルにおける領域1Baと1Bbとの割合)が、Y方向に沿って変化している。具体的には、Y方向に沿った領域1Baの占有面積率は、帯状領域1Bの中央において最も大きく、その両端に向かって減少している。このように、光変調素子1の基本パターン1Pは、X方向に沿ってディップ状の光強度分布を形成し且つY方向に沿ってV字状の勾配光強度分布を形成する変調パターンを有する。
図19は、本実施形態における空間フィルターの構成を概略的に示す図である。本実施形態の空間フィルター6は、光源2aのコヒーレント長Lc以上の光路差を付与するタイプの空間フィルターであって、0次光が通過し且つ0次光以外の回折光が通過しない領域に配置された透明板6aと、透明板6aを支持する平行平面状の透明基板6bとにより構成されている。透明板6aは、例えば光学密着や融着により透明基板6bに貼り合わされている。
本実施形態の数値実施例では、図18に示す光変調素子1を用いて被処理基板4上に形成される光強度分布を計算により求めた。計算条件は、以下の通りである。すなわち、光の波長は308nm(0.308μm)であり、結像光学系3は等倍の光学系であり、その開口数は0.15である。また、照明系2の射出側開口数は0.075である。したがって、コヒーレンスファクター(照明σ値;照明系2の射出側開口数/結像光学系3の物体側開口数)は、0.5(=0.075/0.15)である。
結像光学系3は、焦点距離fが200mmの正レンズ群3aと、焦点距離fが200mmの正レンズ群3bとにより構成されている。光変調素子1における基本パターン1PのX方向の繰り返し周期Pは16μmであるから、空間フィルター6での0次光(最大回折光成分)と1次回折光との間隔D01は、次の式により求められる。
D01=f×λ/P=200mm×0.308μm/16μm=3.85mm
D01=f×λ/P=200mm×0.308μm/16μm=3.85mm
そこで、幅(X方向寸法)が3.85mmで且つ厚さが1.5mmの合成石英製の長尺の透明板6aを、平行平面状の透明基板6bに光学密着で貼り付けることにより、空間フィルター6を構成している。空間フィルター6は、内径が60(=2×200×0.15)mmの開口絞り3cの開口部の位置(すなわち瞳位置)に配置されている。
本実施形態の数値実施例では、照明系2の射出瞳において、Y方向に沿って直線状に延びる連続的な光源またはY方向に沿って直線状に点在する複数の小光源が形成されているものとする。この場合、光変調素子1により生成される回折光のうち、−7次回折光〜+7次回折光が結像光学系3の瞳位置を通過するが、空間フィルター6の作用により0次光(最大回折光成分)と0次光以外の回折光とが分離され非干渉化される。
本実施形態の数値実施例では、計算の結果、図20に示すような光強度分布が得られた。図20(a)に、数値実施例において結像光学系3の像面から5μmだけ離れた面に第1デフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図20(b)に、数値実施例において結像光学系3の像面にフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図20(c)に、数値実施例において結像光学系3の像面から5μmだけ結像光学系寄りの面に第2デフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。
また、比較例として、本実施形態の数値実施例の構成から空間フィルターだけを取り除いた状態で得られる光強度分布を計算により求めた。図21(a)に、比較例において結像光学系3の像面から5μmだけ離れた面に第1デフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図21(b)に、比較例において結像光学系3の像面にフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。図21(c)に、比較例において結像光学系3の像面から5μmだけ結像光学系寄りの面に第2デフォーカス状態で形成される光強度分布を示す。
図20および図21では、図18において破線で示す矩形状の基本パターン領域1Pに対応して被処理基板4上に形成される光強度分布を、光強度の等高線(すなわち等強度線)で示している。図20および図21を参照すると、光変調素子1の基本パターン1Pにより位相変調された光により、X方向に沿ってディップ状の光強度分布が形成され、且つY方向に沿ってV字状の勾配光強度分布が形成されることがわかる。
空間フィルターを用いない比較例では、図21(b)に示すように、フォーカス状態において左右対称なディップ状の光強度分布が得られる。しかしながら、図21(a)および図21(c)に示すように、デフォーカスによりディップ状の光強度分布の左右対称性が大きく崩れ、ボトム強度の位置がX方向に沿って移動する。このように、比較例では、デフォーカス状態で形成されるディップ状の光強度分布の左右対称性が大きく崩れ、しかもデフォーカス方向に依存して左右対称性の崩れ方が逆になるため焦点深度が浅く(狭く)なる。また、デフォーカスによりボトム強度の位置が面内で移動するので、生成される結晶粒の位置も所望する位置からシフトしてしまう。
これに対し、空間フィルター6を用いる本実施形態の数値実施例では、図20(a)〜図20(c)に示すように、フォーカス状態で得られる左右対称なディップ状の光強度分布が、デフォーカスにより変化することがほとんどない。すなわち、本実施形態の数値実施例では、デフォーカスの影響をほとんど受けることなく、ディップ状の光強度分布のボトム強度を所望の位置および値に保ちつつ、ディップ状の光強度分布の左右対称性を安定的に保つことができる。
なお、図18に示す光変調素子1を実際に作製し、作製した光変調素子1および結像光学系3を用いて被処理基板4上に形成される光強度分布を計測した。計測の結果、空間フィルター6を用いた場合に図20に示す光強度分布とほぼ同じ結果を、空間フィルター6を用いない場合に図21に示す光強度分布とほぼ同じ結果を得た。空間フィルター6を用いない場合、2〜3μm程度のデフォーカス状態で生成された結晶粒の形が左右非対称になった。これに対し、空間フィルター6を用いた場合、10μm程度のデフォーカス状態でも、ディップ状の光強度分布の左右対称性が保たれ、生成される結晶粒に大きな変化はなかった。
図22は、本実施形態の結晶化装置を用いて結晶化された領域に電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。図22(a)に示すように、透明の絶縁基板80(例えば、アルカリガラス、石英ガラス、プラスチック、ポリイミドなど)の上に、下地膜81(例えば、膜厚50nmのSiNおよび膜厚100nmのSiO2積層膜など)および非晶質半導体膜82(例えば、膜厚50nm〜200nm程度のSi,Ge,SiGeなどの半導体の膜)および不図示のキャップ膜82a(例えば、膜厚30nm〜300nmのSiO2膜など)を、化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜した被処理基板5を準備する。そして、本実施形態にしたがう結晶化装置を用いて、非晶質半導体膜82の表面の予め定められた領域に、レーザ光83(例えば、KrFエキシマレーザ光やXeClエキシマレーザ光など)を照射する。
こうして、図22(b)に示すように、大粒径の結晶を有する多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84が生成される。次に、キャップ膜82aをエッチングにより半導体膜84から除去した後、図22(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84を例えば薄膜トランジスタを形成するための領域となる島状の半導体膜85に加工し、表面にゲート絶縁膜86として膜厚20nm〜100nmのSiO2膜を化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜する。さらに、図22(d)に示すように、ゲート絶縁膜上にゲート電極87(例えば、シリサイドやMoWなど)を形成し、ゲート電極87をマスクにして不純物イオン88(Nチャネルトランジスタの場合にはリン、Pチャネルトランジスタの場合にはホウ素)をイオン注入する。その後、窒素雰囲気でアニール処理(例えば、450°Cで1時間)を行い、不純物を活性化して島状の半導体膜85にソース領域91、ドレイン領域92を形成する。次に、図22(e)に示すように、層間絶縁膜89を成膜してコンタクト穴をあけ、チャネル90でつながるソース91およびドレイン92に接続するソース電極93およびドレイン電極94を形成する。
以上の工程において、図22(a)および(b)に示す工程で生成された多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84の大粒径結晶の位置に合わせて、即ち、結晶粒内にチャネル90を形成する。以上の工程により、多結晶トランジスタまたは単結晶化半導体に薄膜トランジスタ(TFT)を形成することができる。こうして製造された多結晶トランジスタまたは単結晶化トランジスタは、液晶表示装置(ディスプレイ)やEL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどの駆動回路や、メモリ(SRAMやDRAM)やCPUなどの集積回路などに適用可能である。
1 光変調素子
2 照明系
2a 光源
2b ビームエキスパンダ
2c,2e フライアイレンズ
2d,2f コンデンサー光学系
3 結像光学系
4 被処理基板
5 基板ステージ
6,21〜26 空間フィルター
6a,35,36 透明板
6b,41 透明基板
2 照明系
2a 光源
2b ビームエキスパンダ
2c,2e フライアイレンズ
2d,2f コンデンサー光学系
3 結像光学系
4 被処理基板
5 基板ステージ
6,21〜26 空間フィルター
6a,35,36 透明板
6b,41 透明基板
Claims (11)
- 180度と実質的に異なる位相差の位相段差を有し、入射光を位相変調する光変調素子と、
前記光変調素子を照明する照明系と、
前記光変調素子により位相変調された光に基づいて所定の光強度分布を所定面に形成する結像光学系と、
前記結像光学系の瞳位置に配置されて第1領域を通過する第1光束と第2領域を通過する第2光束とを互いに非干渉性にする空間フィルターとを備えている光照射装置。 - 前記第1光束は、前記瞳位置において複素振幅の絶対値が最大となる最大回折光成分であり、
前記第2光束は、前記最大回折光成分以外の回折光成分である請求項1に記載の光照射装置。 - 前記空間フィルターは、前記第1光束および前記第2光束のうちの少なくとも一方の偏光状態を変化させる偏光変化部材を有する請求項1または2に記載の光照射装置。
- 前記偏光変化部材は、前記第1領域および前記第2領域のうちの少なくとも一方の領域に配置された波長板を有する請求項3に記載の光照射装置。
- 前記空間フィルターは、前記第1光束と前記第2光束との間に光源のコヒーレント長以上の光路差を付与する光路差付与部材を有する請求項1または2に記載の光照射装置。
- 前記照明系は、複数の点の集合からなる射出瞳分布を有し、
前記空間フィルターは、前記射出瞳分布の各点に対応する前記第1光束の集合と、前記射出瞳分布の各点に対応する前記第2光束の集合とを互いに非干渉性にする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光照射装置。 - 前記照明系は、前記第1光束の集合と前記第2光束の集合とが前記瞳位置において互いに重ならないような射出瞳分布を有する請求項6に記載の光照射装置。
- 前記光変調素子は、第1方向に沿ってディップ状の光強度分布を形成し且つ前記第1方向と直交する第2方向に沿ってV字状の勾配光強度分布を形成する変調パターンを有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光照射装置。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光照射装置と、前記所定面に非単結晶半導体膜を保持するためのステージとを備え、前記所定面に保持された非単結晶半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光照射装置を用いて、前記所定面に保持された非単結晶半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化方法。
- 請求項9に記載の結晶化装置または請求項10に記載の結晶化方法を用いて製造されたデバイス。
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JP2007260748A JP2009094121A (ja) | 2007-10-04 | 2007-10-04 | 光照射装置、結晶化装置、結晶化方法、およびデバイス |
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JP2010251761A (ja) * | 2009-04-16 | 2010-11-04 | Asml Netherlands Bv | デバイス製造方法およびリソグラフィ装置 |
-
2007
- 2007-10-04 JP JP2007260748A patent/JP2009094121A/ja not_active Abandoned
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