JP4711166B2 - 結晶化装置、および結晶化方法 - Google Patents
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Description
したがって、多結晶シリコン層にトランジスタを形成した場合、非晶質シリコン層に形成する場合よりも、スイッチング速度が速くなり、ひいてはディスプレイの応答が速くなる。また、周辺LSIを薄膜トランジスタで構成することが可能になる。さらに、他の部品の設計マージンを減らせるなどの利点がある。また、ドライバ回路やDACなどの周辺回路は、ディスプレイに組み入れる場合に、それらの周辺回路をより高速に動作させることができる。
本発明の位相変調素子によれば、複数の正方形状の結晶粒が格子状にアレイ化して形成された結晶化半導体薄膜を作製することができる。
こうして、1ショットのレーザアニールで位置制御された大粒径結晶粒アレイ組織の高品質な結晶質の半導体薄膜が得られる。本発明で得られた半導体膜を使った薄膜トランジスタは、従来のポリシリコン薄膜トランジスタよりも、移動度が高くしきい電圧のばらつきも小さい。本発明の薄膜トランジスタを液晶ディスプレイ、有機EL等の表示装置に適用すれば、周辺回路に高機能の演算素子等を形成することが可能になり、システム・オン・パネル化に向け、本発明の効果は大きい。また、位相変調素子と光束分割素子とを光路中に挿入するだけの方法なので、光学系が複雑にならず調整に時間がかからない。また、焦点深度が深いのでプロセスマージンが広くなり、量産にも適している。
換言すれば、被処理基板5は、位相変調素子1の位相パターン面と光学的に共役な面(結像光学系4の像面)に設定されている。結像光学系4は、正レンズ群4aと正レンズ群4bとの間に開口絞り4cを備えている。
あるいは、開口絞り4cは、開口部の大きさを連続的に変化させることのできる虹彩絞りを有していてもよい。いずれにしても、開口絞り4cの開口部の大きさ(ひいては結像光学系4の像側開口数NA)は、後述するように、被処理基板5の半導体膜上において所要の光強度分布を発生させるように設定されている。なお、結像光学系4は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
下地絶縁膜は、非晶質シリコン膜とガラス基板が直接接触してNaなどの異物が非晶質シリコン膜に混入するのを防止し、非晶質シリコン膜の溶融温度が直接ガラス基板に伝熱されるのを防止する。非晶質シリコン膜は、結晶化される半導体膜である。
図3では、説明を簡単にするために、隣り合う2つの正方形状の単位領域1aを示している。各単位領域1aの一辺は、結像光学系4の像面における換算で5μmである。以下、位相変調素子1の寸法については、結像光学系4の像面における換算値で示す。
逆に、図中右側の単位領域1aでは、第1位相領域1abおよび第1ドット領域1ad,1aeが基準面1aaに対して+60度の位相を有し、第2位相領域1acおよび第2ドット領域1af,1agが基準面1aaに対して−60度の位相を有する。
なお、ドット領域1ad,1ae,1af,1agの作用については、後述の実施例3において詳細に説明する。位相変調素子1の位相段差パターンは、例えば石英ガラス基板に所要の位相に対応する厚さ分布を形成することにより製造することができる。石英ガラス基板の厚さの変化は、選択エッチングやFIB(Focused Ion Beam)加工により形成することができる。
なお、複屈折素子2Eによる分離幅dは結像光学系4の物体側における値であり、結像光学系4の像面における分離幅は、分離幅dに結像光学系4の倍率(たとえば1/5)を乗じた値になる。
d=tanφ×t(a)
ただし、tanφ=(no2−ne2)sinθ・cosθ/(ne2cos2θ+no2sin2θ)
一例として、248nmの波長を有する光およびθ=45度に設定された水晶製の複屈折素子2Eを用いる場合、分離幅d=25μmを得るに必要な複屈折素子2Eの厚さtを求めてみると、波長248nmの光に対する水晶の屈折率はne=1.6124,no=1.6016であるから、複屈折素子2Eの厚さt=3697μmとなる。
図6および図7を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。
図8において破線で示す矩形状の領域は、被処理基板5の表面上において位相変調素子1の1つの単位領域1aに対応する単位基板領域(実施例1では5μm角の正方形状の領域)10である。単位基板領域10では、まず凝固初期に、溶融領域12の中心近傍において結晶核の発生と消滅とを繰り返した後に、結晶核が凝集して成長可能な臨界径以上となり、単一の成長性の結晶核11が発生する。この成長性の結晶核11は、時間の経過に従って放射状に全方向に成長し、固液界面14が広がっていく。
例えば<110>方向のように比較的成長速度の大きな結晶方向には、発生した結晶核の面方位をそのまま保ちながら成長する。しかしながら、例えば<111>方向のように最密面が積み重なっていかなければならない成長速度の比較的小さな結晶方向には、同心円放射状に広がる温度勾配に従い、成長速度の大きな方向と同様の速度で成長するため、成長途中で双晶変態することで成長速度のより大きな面方位に向きを変えて成長する。結果として、最終的な組織では、結晶粒の中に双晶粒界13が入る。この双晶粒界13は、結晶粒界15とは、その形成過程が異なる。
図9(a)に示す光強度分布では、単位基板領域10の中心近傍において光強度が最も小さく、この光強度の最も小さいボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成され、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成されている。
光強度分布には、結晶成長の開始と密接に関係した閾値αがある。光強度がα値以下の部分では半導体膜(Si)は融けないか、あるいは融けても表面の一部しか融けないためにポリシリコンの状態にとどまり、光強度がα値を越えたところから結晶成長が開始する。
また、ボトムピークの強度が0.7を越えると大きくなりすぎて、中心部分にのみ成長性の結晶核を発生させることができない。なお、結晶化過程をさらに良好に実現するには、光強度分布のボトムピークの強度が0.5〜0.6であることが好ましい。
また、ピーク幅W1が1.5μmを越えて大きくなりすぎると、結晶化開始時の最低温領域が広がってしまい、成長性の結晶核を単一にすることができない。
このようなロート形の傾斜状分布にすると、外側に向かう温度勾配も線形的になるので、結晶の成長が途中で停止することなく、さらに大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。逆ピーク状の分布の周囲に凹凸分布が存在し、光強度が急峻に大きくなっているピークが存在すると、半導体薄膜がレーザ光を吸収する際にこの領域の温度が上がりすぎてしまい、膜破壊しやすくなってしまう。
したがって、実施例1では、図8に示すような結晶化過程を実現することができ、ひいては結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
その結果、対応する結晶組織では、図11(b)に示すように複数の円形状の結晶粒が正三角頂点状にアレイ化して形成される。この場合も、結晶粒の内部には双晶粒界13のみを含むことになり、結晶粒の位置も二次元的に制御することができる。
単位領域1aの間隔が4μm未満になると小さくなりすぎて、結晶粒アレイの粒径が小さくなり、品質の良い結晶化半導体薄膜にならない。また、単位領域1aの間隔が20μmを超えると大きくなりすぎて、結晶成長が途中で止まってしまうため、半導体膜のほぼ全面を覆うような結晶粒アレイにならない。
また、位相領域1ab,1acの面積は、単一結晶核のみを発生させるために、図9(a)に示す光強度分布においてピーク幅W1が十分に狭くなるように設定すればよい。具体的に、位相領域(1ab,1ac)の全体的な大きさを2.2(=1.1×2)μmに設定しているが、0.3μm乃至3μmの大きさに設定することが好ましく、2.0μm乃至2.4μmの大きさに設定することがさらに好ましい。
位相領域1ab,1acの面積に関する最適値は、用いる結晶化装置の光学系と密接に関係する。位相領域1ab,1acの位相段差は、図9(a)に示す光強度分布におけるボトムピークの光強度の相対値と関係があるが、0.2〜0.7になるように決定すればよい。
図6および図7に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
しかしながら、実施例2では、一辺が0.5μmの正方形ドットパターンからなる第1ドット領域1adおよび第2ドット領域1afに代えて、一辺が0.3μmの正方形ドットパターンからなる第1ドット領域1ahおよび第2ドット領域1aiが設けられている点だけが実施例1と相違している。以下、実施例1との相違点に着目して、実施例2を説明する。
すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図13(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図13(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図13(c)に示すような光強度分布が形成される。
また、第1ドット領域1ah,1aeおよび第2ドット領域1ai,1agの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図14に示すような光強度分布が形成される。図14において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図14および図15を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。
具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.5から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.01μmから約1.14μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。
なお、実施例2で得られた合成光強度分布では、ピーク幅W1が実施例1よりも若干小さくなっている。
被処理基板5上で、たとえば図14に示す光強度分布と図15に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような5μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。
図14および図15に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
しかしながら、実施例3では、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に配置されたドットパターンが実施例1と相違している。以下、実施例1との相違点に着目して、実施例3を説明する。
ただし、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周辺の単位セル1ajの中にはドット領域が設けられていない。また、単位領域1aは、対角線B−Bや対角線C−Cに関して対称なパターンを有する。
逆に、図中右側の単位領域1aでは、第1位相領域1abおよび第1ドット領域1akが基準面1aaに対して+60度の位相を有し、第2位相領域1acおよび第2ドット領域1amが基準面1aaに対して−60度の位相を有する。
後述するように、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの占有面積率を単位領域1aの中心から離れるにしたがって小さくなるように設定することにより、逆ピーク状の分布から離れるにしたがって大きくなるようなロート形で傾斜状の分布を実現している。
すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図17(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図17(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図17(c)に示すような光強度分布が形成される。
また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。
また、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図18に示すような光強度分布が形成される。図18において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図19において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図18および図19を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。
具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.5から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.01μmから約1.14μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。
実施例3で得られた合成光強度分布では、傾斜状の分布において光強度が実施例1および実施例2よりも緩やかに変化しており、図9(a)に類似した分布が得られた。
図18および図19に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
図20は、ドット領域の占有面積率と光強度分布とに関する原理を説明する図である。
一般に、位相変調素子1による結像の光振幅分布U(x,y)は、次の式(1)で表わされる。
なお、式(1)において、T(x,y)は位相変調素子1の複素振幅透過率分布を、*はコンボリューション(たたみ込み積分)を、ASF(x,y)は結像光学系4の点像分布関数をそれぞれ示している。
ここで、点像分布関数とは、結像光学系による点像の振幅分布と定義する。
U(x,y)=T(x,y)*ASF(x,y)・・・(1)
なお、式(2)において、T0は一定の値であり、φ(x,y)は位相分布を示している。
T=T0eiφ(x,y)・・・(2)
なお、式(3)において、J1はベッセル(Bessel)関数を、λは光の波長を、NAは上述したように結像光学系4の像側開口数をそれぞれ示している。
ASF(x,y)∝2J1(2π/λ・NA・r)/(2π/λ・NA・r)・・(3)
ただし、r=(x2+y2)1/2
上述したように、像面4fに結像された結像の光振幅すなわち光強度は位相変調素子1の複素振幅透過率分布と点像分布関数とのコンボリューションで与えられる。
点像分布関数を円筒形4eで近似して考えると、図20(c)に示す円形の点像分布範囲R内で位相変調素子1の複素振幅透過率を均一重みで積分した結果が、像面4fでの複素振幅になり、その絶対値の二乗が光強度となる。
なお、結像光学系4での点像分布範囲Rとは、点像分布関数によって描かれた図20(b)の曲線の0点4iとの交点4j内の範囲をいう。
この点は、図20(d)に示すように単位円4g内での位相ベクトル4hの和で考えると理解しやすい。
像面4fを物体例えば半導体膜とした場合、図20(b)の点像分布関数は、図20(f)に示すような点像分布関数となる。
図21は、点像分布範囲R内での位相の変化と光強度との典型的な関係を示す図である。
図21(a)は、4つの領域の位相値がすべて0度の場合を示す図であり、0度方向の4つの位相ベクトル5gの和が振幅4Eに対応し、その二乗が光強度16Iに対応することになる。
図21(c)は、位相値が0度の領域と位相値が90度の領域と位相値が180度の領域と位相値が270度の領域の場合を示す図であり、0度方向の位相ベクトル5sと90度方向の位相ベクトル5tと180度方向の位相ベクトル5uと270度方向の位相ベクトル5vとの和が振幅OEに対応し、その二乗が光強度OIに対応することになる。
具体的には、結像光学系4が均一円形瞳を有し且つ無収差である場合、点像分布関数ASF(x,y)は上述の式(3)により表わされる。
しかしながら、結像光学系4に収差が存在する場合や、均一円形瞳以外の瞳関数を有する場合はこの限りではない。
R/2=0.61λ/NA(4)
図21を参照して明らかなように、結像光学系の点像分布範囲Rに光学的に対応する円の中に複数(図21では4つ)の位相変調単位が含まれていると、複数の位相ベクトル5gの和により光の振幅を、ひいては光の強度を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。
その結果、比較的複雑な光強度分布を比較的容易に得ることができる。
換言すれば、結像光学系4の像側における位相変調素子1の位相変調単位の大きさは、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも小さいことが必要である。
ここで、位相変調単位とは、例えば上述したセル型の場合は、セルの一番短い一辺の大きさであり、ピクセル型の場合は一辺の長さを表す。
また、この位相変調素子は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さいサイズの複数のセル(図中矩形状の破線で示す)21を有する。
換言すれば、位相値φ1の第1領域21aと位相値φ2の第2領域21bとの占有面積率が位置によって変化する位相分布を有する。
さらに具体的には、セル内における位相値φ2の第2領域21bの占有面積は、図中左側のセルにおいて最も大きく、図中右側のセルにおいて最も小さく、その間において単調に変化している。
位相変調素子1への入射光は、矢印21cで示すように図23において、紙面の上面から裏面方向に透過する。
したがって、各位相変調単位21における第1領域21aと第2領域21bと占有面積率を、すなわち2つの位相ベクトルの和を適宜変化させることにより、被処理基板上に形成される光強度分布を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。
第1および第2の位相値φ1、φ2の位相変調素子1の製造は、例えば石英ガラスに厚さを第1および第2の位相値φ1、φ2が形成されるように選択することにより位相変調素子1を製造することができる。
石英ガラスの厚さの変化は、選択エッチングやFIBにより形成することができる。
図24を参照すると、この位相変調素子1は、結像光学系4の点像分布範囲Rの半径R/2よりも光学的に小さい複数の矩形状のピクセル22を有する。
これらの複数のピクセル22は縦横に且つ稠密に配置され、各ピクセル22はそれぞれ一定の位相値を有する。
具体的には、第1の位相値φ1(たとえば0度)を有する第1ピクセル(図中斜線部で示す)22aと、第2の位相値φ2(たとえば60度)を有する第2ピクセル(図中空白部で示す)22bとを有する。
位相変調素子1への入射光は、矢印22cで示すように図24において紙面の上面から裏面方向に透過する。
換言すれば、図23と同様に、位相値φ1の第1領域としての第1ピクセル22aと位相値φ2の第2領域としての第2ピクセル22bとの占有面積率が位置によって変化する位相分布を有する。
したがって、結像光学系4の点像分布範囲Rに光学的に対応する単位範囲(不図示)における第1ピクセル22aと第2ピクセル22bとの占有面積率を、すなわち複数の位相ベクトルの和を適宜変化させることにより、被処理基板上に形成される光強度分布を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。
しかしながら、実施例4の位相変調素子1は、実施例1〜実施例3とは異なり、10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子である。
また、実施例4では、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲に配置されたドットパターンが実施例3と相違している。以下、実施例3との相違点に着目して、実施例4を説明する。
そして、横断線A−Aよりも図中上側の複数の単位セルの中に第1ドット領域1akが設けられ、横断線A−Aよりも図中下側の複数の単位セルの中に第2ドット領域1amが設けられている。
ただし、単位領域1aの中央の縦横ライン上にはドット領域が設けられていない。また、単位領域1aは、対角線B−Bや対角線C−Cに関して対称なパターンを有する。
また、実施例4では、逆ピーク状の分布の近傍において光強度の比較的急峻な変化を保つために、1つの単位領域1aにおいて第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲の3つの第1ドット領域1akaおよび3つの第2ドット領域1amaを0.4μm角に設定している。
なお、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの占有面積率を単位領域1aの中心から離れるにしたがって小さくなるように設定している点も実施例3と同様である。
すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図26(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図26(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図26(c)に示すような光強度分布が形成される。
また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。
また、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図27に示すような光強度分布が形成される。
図27において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図28において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図27および図28を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。
具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.54から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.24μmから約1.50μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。
被処理基板5上で、たとえば図27に示す光強度分布と図28に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。
図27および図28に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
実施例5の位相変調素子1は実施例4と同様に、10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製するための位相変調素子であり、実施例4と類似の構成を有する。
しかしながら、実施例5では、1つの単位領域1aにおいて第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの周囲のすべて(図では5つ)の第1ドット領域1akaおよびすべて(図では5つ)の第2ドット領域1amaを0.4μm角に設定している点だけが実施例4と相違している。
以下、実施例4との相違点に着目して、実施例5を説明する。
すなわち、位相変調素子1の単位領域1aの中央を横断する線A−Aに対応する横断線に沿って図30(a)に示すような光強度分布が形成され、図中左側の単位領域1aの図中右上がりの対角線B−Bに対応する斜線に沿って図30(b)に示すような光強度分布が形成され、図中右側の単位領域1aの図中左上がりの対角線C−Cに対応する斜線に沿って図30(c)に示すような光強度分布が形成される。
また、第1位相領域1abおよび第2位相領域1acの作用により、ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が急激に増大する逆ピーク状の分布が形成される。
また、第1ドット領域1akおよび第2ドット領域1amの作用により、逆ピーク状の分布から周囲に向かって放射状に緩やかに光強度が増大する傾斜状分布が形成される。
その結果、結像光学系4の焦点位置に位置決めされた被処理基板5の表面には、図31に示すような光強度分布が形成される。
図31において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図32において、(a)は被処理基板5の表面上において重ね合わされた合成光強度分布を立体的に示す図であり、(b)は単位領域1aの横断線A−Aに対応する横断線に沿った合成光強度分布を示す図である。
図31および図32を参照すると、被処理基板5の表面が結像光学系4の焦点位置に対してある程度デフォーカスしても、位相変調素子1と複屈折素子2Eとの協働作用により、合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されていることがわかる。
具体的に、結像光学系4の焦点位置に対して被処理基板5が10μmデフォーカスすると、ボトムピークの相対値が約0.53から約0.62へ上昇し、ピーク幅W1が約1.30μmから約1.50μmに増大しているが、ボトムピークの相対値もピーク幅W1も前述の所望範囲内で変化していることがわかる。
実施例5で得られた合成光強度分布では、その異方性が実施例4よりも小さくなっている。
被処理基板5上で、たとえば図31に示す光強度分布と図32に示す光強度分布との間の光強度分布を有するレーザ光が形成され、図8に示す結晶化過程を経て、図10(b)に示すような10μm角の結晶粒アレイ半導体薄膜を作製することができた。
図31および図32に示すように、被処理基板5が結像光学系4に対してデフォーカスしても被処理基板5上で合成された光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度が確保されているので、均一性の良い結晶粒アレイ半導体薄膜が得られた。
そのためには、被処理基板の被処理面を光学系で拡大し、CCDなどの撮像素子で入力すれば良い。
使用光が紫外線の場合は、光学系が制約を受けるため、被処理面に蛍光板を設けて可視光に変換しても良い。
また、上述の実施形態の各実施例では、位相変調素子1について具体的な構成例を例示したが、位相変調素子1の構成については本発明の範囲内において様々な変形例が可能である。
しかしながら、これに限定されることなく、複屈折素子2Eを位相変調素子1と被処理基板5との間に配置することにより、上述の複像効果を有効に発生させることができる。
具体的には、複屈折素子2Eを位相変調素子1と結像光学系4との間に配置するか、あるいは結像光学系4と被処理基板5との間に配置することが望ましい。
また、複屈折素子2Eの光入射面を表面加工することにより所望する位相差を得るための段差を設けて、複屈折素子2Eの機能と位相変調素子1の機能とを一体化することも可能である。即ち、光学変調手段と光束分割手段とを一体に形成してもよい。
このため、複屈折素子2Eを介して分割された2つの光束の間に位相差が生じ、この2つの光束の結像位置が光軸方向に分離してしまう。
この問題を回避するための、光束分割素子2として、結晶光学軸が光軸に対してそれぞれ所定の角度をなすように設定された複屈折性の一対の平行平面板からなるサバール(Savart)板を用いることができる。
あるいは、位相差による結像位置の分離問題を回避するために、光束分割素子2として、いわゆるフランコン(Francon)によるサバール板の変形を用いることができる。
しかしながら、これに限定されることなく、複屈折素子2Eに代えて、結像光学系4の瞳面またはその近傍に配置されたウォラストンプリズムを用いることができる。
ウォラストンプリズムは、結晶光学軸が光軸に対してそれぞれ所定の角度をなすように設定された複屈折性の一対の偏光プリズムにより構成される。
なお、本実施例では、便宜上Nチャネル型の薄膜トランジスタの製造方法を示すが、Pチャネル型でも不純物種(ドーパント種)を変えるだけで全く同様である。
ここでは、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造方法を示す。
まず、図33(a)に示す様に、ガラスなどからなる絶縁基板100の上にAl,Ta,Mo,W,Cr,Cu又はこれらの合金を100〜300nmの厚みで形成し、パターニングしてゲート電極101に加工する。
本実施形態では、ゲート絶縁膜は、ゲート窒化膜102(SiNX)/ゲート酸化膜103(SiO2)の二層構造を用いた。
ゲート窒化膜102は、SiH4ガスとNH3ガスとの混合物を原料気体として用い、プラズマCVD法(PE−CVD法)で成膜した。なお、プラズマCVDに代えて常圧CVDあるいは減圧CVDを用いてもよい。
本実施形態では、ゲート窒化膜102を50nmの厚みで堆積した。ゲート窒化膜102の成膜に連続して、ゲート酸化膜103を約200nmの厚みで成膜する。
さらに半導体薄膜104の上に、SiO2からなる絶縁膜140を300nmの厚みで成膜した。
二層構造のゲート絶縁膜と非晶質半導体薄膜104と絶縁膜140とは、成膜チャンバの真空系を破らず連続成膜した。
以上の成膜でプラズマCVD法を用いた場合には、400〜450°Cの温度で窒素雰囲気中1時間程度の加熱処理により脱水素アニールし、非晶質半導体薄膜104に含有されていた水素を放出する。
レーザ光150としては、エキシマレーザビームを用いることができる。
レーザ光150の照射領域を調整した後、照射領域に位相変調素子の周期的なパターンを転写することができるようにレーザ光150のフォーカスを合わせて照射し、更に重複しない様に領域をずらして繰り返し照射して、所定の面積を結晶化する。
続いて、絶縁膜140をエッチング等の方法により剥離する。
前述した様に、チャネル領域Chには、予めVthイオンインプランテーションによりB+イオンが比較的低ドーズ量で注入されている。続いて、ストッパー膜106をマスクとしてイオンドーピングにより不純物(例えばP+イオン)を半導体薄膜105に注入し、LDD領域を形成する。この時のドーズ量は、例えば5×1012〜1×1013/cm2であり、加速電圧は例えば10KeVである。
本実施例では、ゲート絶縁膜103の厚みを100nmにした。
この場合のドーズ量は、例えば1×1015/cm2程度である。加速電圧は、例えば90KeVである。ドーピングガスには、水素希釈の20%PH3ガスを用いた。
Claims (6)
- 非単結晶半導体膜にボトムピークから周囲に向かって放射状に増大する逆ピーク状の光強度分布を有するレーザ光束を照射して結晶化する結晶化装置であって、
予め定められた周期で配置されて互いに同じパターンを有する複数の単位領域からなりランダム偏光状態の前記逆ピーク状の光強度分布を有する光束を出射する位相変調素子と、
該位相変調素子を介したランダム偏光状態の光束を偏光状態が異なる2つの非干渉性の光束に分割するための光束分割素子と、
前記位相変調素子と前記非単結晶半導体膜との間に配置された結像光学系と、
該結像光学系の焦点位置に位置決めされて前記非単結晶半導体膜が設けられた被処理基板の表面に、前記光束分割素子で分割された2つの光束が複像作用により重ね合わされた合成光強度分布が形成されるように、前記被処理基板を保持する保持ステージとを備え、
前記位相変調素子の前記単位領域は、一定の位相を有する基準面と、
前記単位領域の中心に配置されて前記基準面に対して第1位相差を有する第1位相領域と、
該第1位相領域に頂点同士が接して配置されて前記基準面に対して前記第1位相差とは絶対値が等しく且つ符号の異なる第2位相差を有し、
前記第1位相領域に接する接点に対応して前記逆ピーク状の光強度分布のボトムピークを形成し、前記第1位相領域との作用により前記ボトムピークから放射状に光強度を増加させるための第2位相領域とを有し、
隣り合う2つの単位領域の間では、前記基準面は互いに同じ位相差を有し、
前記第1位相領域は前記基準面に対して互いに反転した位相差を有し、
前記第2位相領域は前記基準面に対して互いに反転した位相差を有し、
前記被処理基板が前記結像光学系に対してデフォーカスしても、前記位相変調素子と前記光束分割素子との協働作用により、
前記合成光強度分布はあまり変化することなく、深い焦点深度を得ることを特徴とする結晶化装置。 - 前記位相変調素子には複数の単位領域が設けられ、各単位領域に設けられた前記第1位相領域および前記第2位相領域が予め定められた周期で正三角頂点状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の結晶化装置。
- 前記第1位相領域および前記第2位相領域の位相段差は、
前記光強度分布における光強度の最大値を1に規格化としたとき、ボトムピークの光強度が相対値で0.2〜0.7となるように定められていることを特徴とする請求項1に記載の結晶化装置。 - 前記光強度分布の幅は0.5μm乃至1.5μmであることを特徴とする請求項1または3に記載の結晶化装置。
- 前記位相変調素子の単位領域は予め定められた周期で格子状に配置され、前記単位領域の周期的な間隔は、前記結像光学系の像面における換算値で4μm〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の結晶化装置。
- 予め定められた光強度分布を有する光束の照射により非単結晶半導体膜を溶融し、該非単結晶半導体膜の溶融部が凝固する過程で結晶核を中心として放射状に結晶成長させて結晶粒アレイ膜を形成する結晶化方法であって、
ボトムピークから周囲に向かって放射状に光強度が増大する逆ピーク状の前記光強度分布を有するランダム偏光状態のレーザ光束を形成する工程と、
前記ランダム偏光状態のレーザ光束を、偏光状態が異なり且つ強度が等しい非干渉性の2つの光束に分割する工程と、
前記2つの光束を結像光学系により前記非単結晶半導体膜の表面で光強度の和として重ね合わせて、前記非単結晶半導体膜に結晶粒アレイを形成する工程とを有することを特徴とする結晶化方法。
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