以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した場合について説明するための図である。図1において、2は内燃機関(エンジン)本体、4は吸気通路、6は排気ガス通路を夫々示す。排気ガス通路6には排気ガス浄化装置10が設けられるが、この部分に設置される排気ガス浄化装置10としては、図2及び図3を参照して後述するような種々のものを用いることができる。
電子制御ユニット(ECU)8は、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の形式のディジタルコンピュータからなり、各種センサや駆動装置と信号をやり取りして機関回転数や吸入空気量等の制御に必要なパラメータを算出すると共に、算出されたパラメータに基づいて燃焼空燃比制御(燃料噴射量制御)や点火時期制御等の機関の運転に関する種々の制御を行なう。
図2及び図3は、図1に示されている排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する、排気ガス浄化装置10の構成の例を模式的に示した説明図である。ここで、排気ガスは矢印で示されているように図の左側から右側に向かって流れる。図2には三元触媒12を1つ具備するものが示されており、図2(a)、図2(b)、図2(c)は夫々、排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ(もしくは排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ)が設けられていないもの、三元触媒12の上流に上流側空燃比センサ14が設けられているもの、三元触媒12の下流に下流側空燃比センサ16が設けられているものを示している。
一方、図3には三元触媒18、20を2つ具備するもの、より詳細には三元触媒18、20が排気系に直列に二箇所に別れて設けられているものが示されており、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)は夫々、空燃比センサが設けられていないもの、上流側三元触媒18の上流に上流側空燃比センサ14が設けられているもの、上流側三元触媒18と下流側三元触媒20との間に中間空燃比センサ15が設けられているもの、下流側三元触媒20の下流に下流側空燃比センサ16が設けられているものを示している。
そして後述するように、本発明の実施形態では、用いられる排気ガス浄化装置10の構成により、三元触媒(以下、単に「触媒」という)12、18、20が酸素を充分に保持している酸化状態にあるか、酸素を充分に保持していない還元状態にあるかの判定の方法(すなわち、触媒状態の判定方法)が異なることになる。
なお、図2及び図3に示された排気ガス浄化装置の各構成のうち空燃比センサを有するものについては、空燃比センサ14、15、16の出力が電子制御ユニット8に伝達されるように構成されている。
ところで、本実施形態においては、上記内燃機関が搭載された車両が減速状態(例えば、エンジンブレーキ状態)にあると判定された時に、内燃機関への燃料の供給を停止する「燃料カット」が行われるようになっている。より詳細には、本実施形態では、車両が減速状態にあって、アクセル開度がゼロであり且つ機関回転数が所定回転数以上の時には原則として燃料カットが実施されるようになっている。
また、本実施形態においては、上述したような燃料カットを実施するための条件(減速状態、アクセル開度ゼロ、機関回転数が所定回転数以上)が成立しても、上記触媒12、18、20の温度が予め定めた温度以上である場合には、上記燃料カットの実施が禁止されるようになっている。これは、触媒12、18、20の温度が高い時に燃料カットが実施されることによって触媒12、18、20が高温且つ酸素過多の状態に置かれるのを防止して、触媒の劣化抑制を図るためである。
ところが、従来、このように燃料カットの実施を禁止するようにした場合において、減速後の車両停止時に異臭、より詳細には硫化水素(H2S)臭がするという問題があった。そしてこの問題は以下のような理由で生じるものと考えられる。すなわち、内燃機関の排気系に設けられている触媒(例えば、三元触媒)は一般に、流通する排気ガスの空燃比がリーンである場合には燃料中の硫黄成分が燃焼して生じた硫黄酸化物(SOx)を同触媒中に保持する作用を有する。また、このような触媒は、同触媒に充分な酸素が保持されている場合(すなわち、触媒が「酸化状態」にある場合)には、流通する排気ガスの空燃比が理論空燃比である場合においても、排気ガス中の硫黄酸化物を同触媒中に保持することができる。そして、このような作用により、燃焼空燃比(すなわち、燃焼室内における空燃比)を理論空燃比として内燃機関が運転される通常時には、排気ガス中の硫黄酸化物は排気系に設けられた触媒の保持能力まで保持されることになる。
その一方で上記触媒は、触媒に充分な酸素が保持されていない場合(すなわち、触媒が「還元状態」にある場合)において、流通する排気ガスの空燃比がリッチもしくは理論空燃比になると、それまで触媒中に保持していた硫黄酸化物を放出するという性質を有している。そしてこのように排気ガス中に放出された硫黄酸化物は燃料の燃焼過程並びに触媒反応過程で生じた水素と反応して硫化水素となるため、それが外部へ放出された場合に異臭(硫化水素臭)を生じることになる。
また、このような硫化水素による異臭は、車両の走行中は排気ガスが拡散し易いので問題となることは少ないが、車両が停止状態にある場合には、排気ガスの拡散が生じにくくなるので、異臭が周辺に漂って車両の乗員に不快感を与え易くなる。
上記のように減速時における燃料カットの実施が禁止された場合について考えてみると、従来技術においては燃料カットが禁止されると燃焼空燃比を理論空燃比とした運転が行なわれるようになっているため、減速中に触媒を流通する排気ガスの空燃比はリーンにならず、結果として外部へ硫化水素が放出されやすい状態となる。特に、減速前に出力増大や触媒温度の低下を目的として燃料が増量され、燃焼空燃比がリッチである状態が続いていた場合には、触媒に充分な酸素が保持されていないため、外部へ硫化水素が放出される可能性はより高くなる。また、減速の結果、車両速度が相当に低下した場合もしくは車両が停止状態になった場合には、上述したように排気ガスの拡散が生じにくくなるために上記異臭の問題が生じる可能性は一層高くなる。
そこで、本実施形態においては、上記のような異臭の問題に対応すべく、減速状態、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態において特別な運転制御(より詳細には、燃焼空燃比制御)を行なって上記のような異臭の発生を抑制するようにしている。この運転制御は、簡単に言えば、燃焼空燃比がリッチになるようにして上記内燃機関の運転を行なう燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合に燃料カットが禁止される場合には、同減速状態において、もしくは同減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なうようにするというものである。
本実施形態において実施される上記運転制御の具体的な説明の前に、ここで先ず、同運転制御において、上記予め定めた期間を決定する上で必要とされる触媒状態(酸化状態であるか、還元状態であるか)について判定する方法を説明する。上述したようにこの判定方法は、用いられる排気ガス浄化装置10の構成により異なる。図4から図6は、用いられる排気ガス浄化装置10の構成によって異なる判定方法の夫々を実施するための制御ルーチンを示すフローチャートである。これらの制御ルーチンは内燃機関の運転中、繰り返し実施されており、現在の触媒状態を判定するようにされている。
先ず、図4のフローチャートで示される判定方法は、排気ガス浄化装置10が、図2(a)及び図2(b)、並びに図3(a)及び図3(b)に示されるような構成を有している場合に適用されるものである。すなわち、空燃比センサが設けられていないか、または、上流側空燃比センサ14が設けられている場合に適用されるものである。
図4に示される制御ルーチンがスタートすると、先ずステップ101において、燃焼空燃比がリッチになるようにして内燃機関の運転を行なう燃料増量運転が実施されているか否かが判定される。なお、このような燃料増量運転は、出力増大や触媒温度の低下を目的として行なわれる。
上記燃料増量運転の実施中であるか否かの判定は、空燃比センサが設けられていない場合には、内燃機関の運転制御に用いられる現在の目標燃焼空燃比に基づいて行なわれる。また、上流側空燃比センサ14が設けられている場合には、その出力の示す空燃比に基づいて行なわれる。すなわち、何れの場合においても、判定に用いられる空燃比がリッチである場合には、燃料増量運転の実施中であると判定され、判定に用いられる空燃比がリッチでない場合には、燃料増量運転の実施中ではないと判定される。
ステップ101において燃料増量運転の実施中であると判定された場合には、ステップ103に進み、触媒状態が還元状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが0とされる(還元状態判定)。一方、ステップ101において燃料増量運転の実施中ではないと判定された場合には、ステップ105に進み、燃料増量運転終了後の吸入空気量の積算値TGaS1が、予め定めた吸入空気量の積算値a1より多いか否かが判定される。
ステップ105において、上記積算値TGaS1が上記積算値a1より多いと判定された場合には、ステップ107に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。一方、ステップ105において上記積算値TGaS1が上記積算値a1以下であると判定された場合には、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値)が維持される。
以上の説明からも明らかなように、ステップ105で判定基準となる上記積算値a1は、上記積算値TGaS1がその値よりも大きくなれば触媒総てが酸化状態になったと判定される値であり、このような趣旨を考慮して予め実験等によって決定される。また、上記積算値TGaS1等を求めるための吸入空気量としては、内燃機関の運転状態等から推定される吸入空気量を用いてもよいし、エアーフローメータを設け、その検出値を用いるようにしてもよい。
なお、ここでは燃料増量運転終了後の吸入空気量の積算値TGaS1を基準として触媒状態の判定が行なわれたが、その代わりに例えば、燃料増量運転終了後の経過時間を基準にして触媒状態の判定を行なうようにしてもよい。すなわち、例えば、燃料増量運転終了後の経過時間が予め定めた判定基準となる経過時間を超えた場合に、触媒状態が酸化状態であるという判定をすると共に、触媒状態フラグXLEANを1とする。
次に図5のフローチャートで示される判定方法について説明する。この判定方法は、排気ガス浄化装置10が、図3(c)に示されるような構成を有している場合に適用されるものである。すなわち、触媒18、20が排気系に直列に二箇所に別れて設けられており、それら触媒18、20の間に中間空燃比センサ15が設けられている場合に適用されるものである。
図5に示される制御ルーチンがスタートすると、先ずステップ201において、燃料増量運転が実施されているか否かが判定される。この判定は、上記中間空燃比センサ15のみが設けられている場合には、内燃機関の運転制御に用いられる現在の目標燃焼空燃比に基づいて行なわれる。また、上記中間空燃比センサ15に加えて図3(b)に示されるような上流側空燃比センサも設けられている場合には、上流側空燃比センサの出力の示す空燃比に基づいて判定するようにしてもよい。何れの場合においても、判定に用いられる空燃比がリッチである場合には、燃料増量運転の実施中であると判定され、判定に用いられる空燃比がリッチでない場合には、燃料増量運転の実施中ではないと判定される。
ステップ201において燃料増量運転の実施中であると判定された場合には、ステップ203に進み、触媒状態が還元状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが0とされる(還元状態判定)。更に、この場合には、中間空燃比センサ15の出力がリッチを示しているとされ、中間センサ判定フラグXMLが0とされる(リッチ判定)。一方、ステップ201において燃料増量運転の実施中ではないと判定された場合には、ステップ205に進み、上記中間センサ判定フラグXMLが0であるか否かが判定される。このステップは本制御ルーチンが前回行なわれた時の判定結果を確認するためのものである。
ステップ205において上記中間センサ判定フラグXMLが0であると判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、中間空燃比センサ15の出力がリッチを示しているとされた場合であり、この場合にはステップ207に進んで、現在の中間空燃比センサ15の出力がリーンを示すようになったか否かが判定される。一方、ステップ205において上記中間センサ判定フラグXMLが0でない(すなわち、1である)と判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、中間空燃比センサ15の出力がリーンを示していた場合であり、この場合にはステップ211に進む。
上記ステップ207において、現在の中間空燃比センサ15の出力がリーンを示していると判定された場合には、ステップ209に進んで上記中間センサ判定フラグXMLが1とされ(リーン判定)、ステップ211に進む。一方、上記ステップ207において、現在の中間空燃比センサ15の出力がリーンを示していないと判定された場合には、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態及び中間空燃比センサ出力の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値及び中間センサ判定フラグXMLの値)を維持したまま今回の制御ルーチンが終了する。
ステップ211に進むと、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後における吸入空気量の積算値TGaS2が、予め定めた吸入空気量の積算値a2より多いか否かが判定される。そして、ステップ211において、上記積算値TGaS2が上記積算値a2より多いと判定された場合には、ステップ213に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。一方、ステップ211において上記積算値TGaS2が上記積算値a2以下であると判定された場合には、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値)が維持される。
なおここで、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した場合には、上流側触媒18については酸化状態になっていると考えられる。したがって、判定基準となる上記積算値a2は、より詳細には、上記積算値TGaS2がその値よりも大きくなれば下流側触媒20も酸化状態になったと判定される値であると言え、このような趣旨を考慮して予め実験等によって決定される。また、上記積算値TGaS1の場合と同様に、上記積算値TGaS2を求めるための吸入空気量としては、内燃機関の運転状態等から推定される吸入空気量を用いてもよいし、エアーフローメータを設け、その検出値を用いるようにしてもよい。
また、ここでは上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後における吸入空気量の積算値TGaS2を基準として触媒状態の判定が行なわれたが、その代わりに例えば、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後の経過時間を基準にして触媒状態の判定を行なうようにしてもよい。すなわち、例えば、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後の経過時間が予め定めた判定基準となる経過時間を超えた場合に、触媒状態が酸化状態であるという判定をすると共に、触媒状態フラグXLEANを1とする。
次に図6のフローチャートで示される判定方法について説明する。この判定方法は、排気ガス浄化装置10が、図2(c)または図3(d)に示されるような構成を有している場合に適用されるものである。すなわち、下流側空燃比センサ16が設けられている場合に適用されるものである。
図6に示される制御ルーチンがスタートすると、図4及び図5に示される制御ルーチンの場合と同様、先ずステップ301において、燃料増量運転が実施されているか否かが判定される。この判定は、上記下流側空燃比センサ16のみが設けられている場合には、内燃機関の運転制御に用いられる現在の目標燃焼空燃比に基づいて行なわれる。また、上記下流側空燃比センサ16に加えて図2(b)または図3(b)に示されるような上流側空燃比センサ14も設けられている場合には、上流側空燃比センサ14の出力の示す空燃比に基づいて判定するようにしてもよい。何れの場合においても、判定に用いられる空燃比がリッチである場合には、燃料増量運転の実施中であると判定され、判定に用いられる空燃比がリッチでない場合には、燃料増量運転の実施中ではないと判定される。
ステップ301において燃料増量運転の実施中であると判定された場合には、ステップ303に進み、触媒状態が還元状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが0とされる(還元状態判定)。更に、この場合には、下流側空燃比センサ16の出力がリッチを示しているとされ、下流側センサ判定フラグXDLが0とされる(リッチ判定)。一方、ステップ301において燃料増量運転の実施中ではないと判定された場合には、ステップ305に進み、上記下流側センサ判定フラグXDLが0であるか否かが判定される。このステップは本制御ルーチンが前回行なわれた時の判定結果を確認するためのものである。
ステップ305において上記下流側センサ判定フラグXDLが0であると判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、下流側空燃比センサ16の出力がリッチを示しているとされた場合であり、この場合にはステップ307に進んで、現在の下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示すようになったか否かが判定される。一方、ステップ305において上記下流側センサ判定フラグXDLが0でない(すなわち、1である)と判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示していた場合であり、この場合には本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態及び下流側空燃比センサ出力の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値及び下流側センサ判定フラグXDLの値)を維持したまま今回の制御ルーチンが終了する。より詳細には、この場合には、触媒状態は酸化状態(XLEAN=1)であり、下流側空燃比センサ出力はリーンを示している(XDL=1)という判定結果が維持される。
上記ステップ307において、現在の下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示していると判定された場合には、ステップ309に進んで上記下流側センサ判定フラグXDLが1とされる(リーン判定)と共に、続くステップ311において触媒状態が酸化状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。一方、上記ステップ307において、現在の下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示していないと判定された場合には、上記ステップ305において上記下流側センサ判定フラグXDLが0でない(すなわち、1である)と判定された場合と同様に、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態及び下流側空燃比センサ出力の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値及び下流側センサ判定フラグXDLの値)を維持したまま今回の制御ルーチンが終了する。但し、この場合には、触媒状態は還元状態(XLEAN=0)であり、下流側空燃比センサ出力はリッチを示している(XDL=0)という判定結果が維持されることになる。
以上のように、図6のフローチャートで示される判定方法では、下流側空燃比センサ16の出力を用いて触媒状態が判定される。このようにすることにより、触媒全体、特に触媒が排気系に直列に二箇所に別れて設けられている場合には、下流側に設けられた触媒まで総てが酸化状態になったことを確実に判定することができる。また、逆に、触媒が排気系に直列に二箇所に別れて設けられている場合において、この判定方法によって触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、下流側に設けられた触媒までもが酸化状態にあると判定されたと言える。
次に、本実施形態において、上述したような異臭の問題に対応すべく、減速状態もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態において実施される運転制御について、図7を参照しつつ説明する。図7はこの運転制御を実施するための制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU8により一定時間毎の割込みによって実施される。
この制御ルーチンがスタートすると、まず、ステップ401において、燃料カット実施基本条件が成立しているか否かが判定される。本実施形態における燃料カット実施基本条件は、車両が減速状態にあることとアクセル開度がゼロであるということである。ステップ401において燃料カット実施基本条件が成立していないと判定された場合には、ステップ411に進み、機関回転数及びアクセル開度等に応じて燃焼空燃比が決定される通常運転が実施されると共に、燃料カット実施フラグXFCが0とされ、本制御ルーチンが終了する。
一方、ステップ401において燃料カット実施基本条件が成立していると判定された場合には、ステップ403に進み、車両が減速を開始した時の触媒の温度CTが、予め定めた温度Tc未満であるか否かが判定される。後の説明から明らかになるが、この判定は、触媒の温度が高い時に燃料カットが実施されて触媒が高温且つ酸素過多の状態に置かれるのを防止するために行なわれるものである。上記温度Tcは、このような趣旨に基づいて予め実験等によって決定され、例えば800℃である。また、上記触媒温度CTは触媒12、18、20に温度センサを設け、その出力に基づいて決定するようにしてもよいし、排気ガス温度を検出してその温度に基づいて決定するようにしてもよい。あるいは、減速前の内燃機関の運転状態もしくは運転履歴から推定するようにしてもよい。
ステップ403において上記触媒温度CTが上記予め定めた温度Tc未満であると判定された場合には、ステップ405に進み、機関回転数NEが予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きいか否かが判定される。この判定は、機関回転数NEが低い時に燃料カットが開始され、エンストを起こしてしまうのを防止するために行なわれるものであり、上記予め定めた第1機関回転数Ec1は、このような趣旨に基づいて予め実験等によって決定される。
ステップ405において機関回転数NEが上記予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きいと判定された場合には、ステップ407に進んで燃料カットが実施されると共に燃料カット実施フラグXFCが1とされ、本制御ルーチンが終了する。一方、ステップ405において機関回転数NEが上記予め定めた第1機関回転数Ec1以下であると判定された場合には、ステップ409に進んで燃料カット実施フラグXFCが1であるか否かが判定される。この判定は、すなわち燃料カットの実施中であるか否かの判定である。
ステップ409において、燃料カット実施フラグXFCが1ではない、すなわち燃料カットの実施中ではないと判定された場合には、ステップ411に進み通常運転が実施される。つまり、この場合は、機関回転数NEが低いために燃料カットが開始されるとエンストを起こす恐れのある場合であり、燃料カットは行なわずに通常運転が実施される。一方、ステップ409において、燃料カット実施フラグXFCが1である、すなわち燃料カットの実施中であると判定された場合には、ステップ410に進み、機関回転数NEが予め定めた第2機関回転数Ec2よりも大きいか否かが判定される。ここで、この第2機関回転数Ec2は、上記第1機関回転数Ec1よりも小さい値である。
そして、ステップ410において、機関回転数NEが上記予め定めた第2機関回転数Ec2よりも大きいと判定された場合には、そのまま、すなわち燃料カットを実施している状態で本制御ルーチンが終了する。一方、ステップ410において機関回転数NEが予め定めた第2機関回転数Ec2以下であると判定された場合にはステップ411に進み、燃料カットが中止されて通常運転に戻る。この場合、燃料カットが中止されて通常運転が開始され、燃料カット実施フラグXFCが0にされて本制御ルーチンが終了する。
このように、本実施形態では、燃料カットを開始するか否かを判定する機関回転数Ec1とは別に燃料カットを中止するか否かを判定する機関回転数Ec2(<Ec1)が設定されている。そして、このように燃料カットの実施に関する機関回転数の条件についてヒステリシスを設けることにより、燃料カットの開始と中止が繰り返されるのを抑制することができる。
一方、ステップ403において、上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であると判定された場合は、触媒劣化の抑制のために燃料カットが禁止される場合であり、この場合にはステップ413に進んで、触媒状態フラグXLEANが1であるか否かが判定される。この判定は、すなわち触媒状態が酸化状態であるか否かの判定である。ステップ413において、触媒状態フラグXLEANが1である、すなわち触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、ステップ421に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する。つまり、この場合には、減速状態において、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、空燃比が理論空燃比になるようにした運転を実施した状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。なお、この場合、上記のように理論空燃比運転が実施されても、触媒が酸化状態にあるため、異臭の発生は抑制される。
一方、ステップ413において、触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、ステップ415に進み、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が実施され、更にステップ417に進む。つまり、この場合には、減速状態において、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、空燃比がリーンになるようにした運転を実施した状態でステップ417に進む。
ステップ417においては、上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLが、予め定めた吸入空気量の積算値Gcより多いか否かが判定される。そしてステップ417において、上記積算値TGaLが上記積算値Gcより多いと判定された場合には、ステップ419に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。そしてこの場合、更にステップ421に進んで、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が開始され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。一方、ステップ417において、上記積算値TGaLが上記積算値Gc以下であると判定された場合には、そのまま、すなわち上記リーン運転を実施している状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
なお、以上の説明から明らかなように、ステップ417で判定基準となる上記積算値Gcは、上記積算値TGaLがその値よりも大きくなれば触媒が酸化状態になったと判定され、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えが行なわれる値であり、このような趣旨を考慮して予め実験等によって決定される。また、上記積算値TGaLを求めるための吸入空気量としては、内燃機関の運転状態等から推定される吸入空気量を用いてもよいし、エアーフローメータを設け、その検出値を用いるようにしてもよい。
以上、説明したように本実施形態においては、車両が減速状態になった時に触媒温度が高く燃料カットが禁止される場合において、触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が実施されるようになっている。ここで、車両が減速状態である時に触媒状態が還元状態である(XLEAN=0)と判定されるのは、図4から図6を参照して行なった説明から明らかなように、空燃比がリッチになるようにして内燃機関の運転を行なう燃料増量運転が実施された後予め定めた条件が満たされるまでの期間、すなわち予め定めた期間である。したがって、換言すれば、本実施形態においては、燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合に燃料カットが禁止される場合には、同減速状態において、もしくは同減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれるようになっていると言える。
そして、このように燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれると、排気系に設けられた触媒に流入する排気ガスの空燃比もリーンになるので、触媒への酸素供給量が増加され、減速後に触媒が還元状態になっていて硫化水素が外部へ放出されやすい状態となることが抑制される。そしてこの結果、減速後における異臭の発生を抑制することができる。また、この場合、触媒への酸素供給量が増加されるものの、燃料カットが実施された場合程酸素過多の状態にはならず、触媒劣化の抑制も図ることができる。つまり、本実施形態によれば、触媒劣化の抑制と異臭発生の抑制との両立を図ることができる。
ところで、流通する排気ガスの空燃比がリーンである場合には触媒12、18、20の窒素酸化物(NOx)に対する浄化率が低下するが、この傾向は、触媒が完全に酸化状態になっている場合に特に顕著である。その一方、触媒が完全に酸化状態になっている場合には、減速後における硫化水素による異臭の発生は抑制される。
例えば、図3に示された構成のように触媒18、20が内燃機関の排気系に直列に二箇所に別れて設けられている場合、下流側に設けられた触媒20が上記酸化状態にあると判定される場合には両触媒18、20が完全に上記酸化状態になっていると考えられる。したがって、このような場合には、流通する排気ガスの空燃比がリーンであると排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化が充分に行なえない一方、減速後における硫化水素による異臭の発生は抑制される。すなわち、このような場合には、上記のような減速状態における、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおける燃焼空燃比をリーンとした運転は行なわないようにするのが望ましい。
この点、本実施形態においては、図4から図6を参照して説明したように下流側に設けられた触媒20を含めて触媒総てが上記酸化状態にあると判定された時に触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)ようになっており、また、触媒状態フラグXLEANが1である場合には、上記のような減速状態における、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおける燃焼空燃比をリーンとした運転が行なわれないようにされている。したがって、本実施形態によれば、窒素酸化物(NOx)の浄化が不充分となるのを抑制しつつ、減速後における硫化水素による異臭の発生を抑制することができる。
なお、上述の説明では上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLを基準として触媒状態の判定が行なわれ、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えを行なうか否かが決定されたが、その代わりに例えば、上記リーン運転開始後の経過時間(すなわち、上記リーン運転の継続時間)を基準にして触媒状態の判定を行ない、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えを行なうか否かを決定するようにしてもよい。すなわち、例えば、上記リーン運転開始後の経過時間が予め定めた判定基準となる経過時間Pcを超えた場合に、触媒状態が酸化状態であるという判定をすると共に触媒状態フラグXLEANを1とし、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えを行なうようにする。
また、上記ステップ417で判定基準となる上記積算値Gcや上述した判定基準となる経過時間Pcは、上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合や触媒の劣化度に応じて変化させてもよい。すなわち、例えば、上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、また、触媒の劣化度が高い程、上記積算値Gcや経過時間Pcの値を小さくする。
上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、触媒に供給される酸素量は多くなる。また、触媒の劣化度が高い程、触媒の保持する酸素量(最大酸素保持量)は少なくなる傾向がある。したがって、上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、また、触媒の劣化度が高い程、触媒は酸化状態になり易いと言える。そこで、上述したように上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、また、触媒の劣化度が高い程、上記積算値Gcや経過時間Pcの値を小さくすれば、より適切に触媒状態の判定を行なうことが可能になる。そしてこれにより、触媒が酸素過多の状態に置かれて劣化が進行するのを抑制することができる。
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、その構成及び作用効果に関して上述した実施形態と共通する部分を多く有しており、これら共通する部分については原則として説明を省略する。
図8を参照して次に説明する実施形態においては、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時には、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転を行なう場合よりも吸入空気量が増加されるようになっている。図8はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図8で示された部分を図7に示された制御ルーチンの点線で囲われた部分Aと置き換えることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図8に示されている制御ルーチンにおいて、ステップ513、515、517、519、521における制御内容は夫々、図7に示された制御ルーチンにおけるステップ413、415、417、419、421における制御内容とほぼ同じである。図8に示されているように、本実施形態においてステップ513で触媒状態フラグXLEANが1である、すなわち触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、ステップ521に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
一方、ステップ513で触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、ステップ514aに進み、現在の車両の速度(車速)SPDが予め定めた車速Siより大きいか否かが判定される。ここで上記予め定めた車速Siは、現在の車両の状態が減速状態にあるのか、それとも車両がほぼ停止しアイドリング状態にあるのかを判定するためのものであり、例えば、5km/hとされる。
そしてステップ514aにおいて上記車速SPDが上記予め定めた車速Siよりも大きいと判定された場合には、車両が減速状態にあるとされてステップ514b、ステップ515と進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転を行なう場合よりも吸入空気量Gaが所定割合Du%だけ増加されたリーン運転(減速状態)が実施される。一方、ステップ514aにおいて上記車速SPDが上記予め定めた車速Si以下であると判定された場合には、アイドリング状態にあるとされてステップ514c、ステップ515と進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転を行なう場合よりも吸入空気量Gaが所定割合Iu%だけ増加されたリーン運転(アイドリング状態)が実施される。以上の説明からも明らかであるが、ここで、Du及びIuは夫々、減速状態にある場合及びアイドリング状態にある場合についての吸入空気量Gaの増加率であり、予め実験等によって適切な値を求めておく。
ステップ515に続くステップ517においては、上述したステップ417と同様に、上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLが、予め定めた吸入空気量の積算値Gcより多いか否かが判定される。そしてステップ517において、上記積算値TGaLが上記積算値Gcより多いと判定された場合には、ステップ519に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に触媒状態フラグXLEANが1とされ(酸化状態判定)、次いでステップ520において吸入空気量Gaの増加制御が中止される。そしてこの場合、更にステップ521に進んで、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が開始され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。一方、ステップ517において、上記積算値TGaLが上記積算値Gc以下であると判定された場合には、そのまま、すなわち上記リーン運転を実施している状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
以上のように、本実施形態では、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時には、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転を行なう場合よりも吸入空気量が増加されるようになっている。そして、このようにすることによって、触媒への酸素供給量を増加してより迅速に触媒を還元状態から酸化状態にすることができるので、減速後における異臭の発生をより確実に抑制することができる。また、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なっている場合における失火の可能性を低減することができる。
なお、本実施形態において、上記吸入空気量Gaを増加する制御を実施している状態で図7のステップ411に相当するステップに進んで通常運転が開始される場合には、当然のことながら、通常運転を開始する際に上記吸入空気量Gaを増加する制御は中止される。
次に図9を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時間が長くなるようにされている。図9はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図9で示された部分を図7に示された制御ルーチンの点線で囲われた部分Aと置き換えることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図9に示されている制御ルーチンにおいて、ステップ613、615、617、619、621における制御内容は夫々、図7に示された制御ルーチンにおけるステップ413、415、417、419、421における制御内容とほぼ同じである。図9に示されているように、本実施形態においてもステップ613で触媒状態フラグXLEANが1である、すなわち触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、ステップ621に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
一方、ステップ613で触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、ステップ614に進み、触媒の最大酸素保持量Cmaxに応じて、後述するステップ617において判定基準として用いられる吸入空気量Gaの積算値Gcが決定される。なお、上述したように触媒の最大酸素保持量Cmaxは、触媒の劣化度が高い程少なくなる傾向があるため、このステップ614における上記積算値Gcの決定は、触媒の劣化度に応じた決定であるとも言える。
この積算値Gcの決定には、例えば図10に示されるようなマップが用いられる。これは、上記最大酸素保持量Cmaxの各値に対応する適切な上記積算値Gcを予め求めてマップにしたものである。図10のマップに示されているように、通常、上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記積算値Gcは多くなる傾向がある。これは、上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、触媒が還元状態から酸化状態になるまでに必要な酸素量が多いからである。
なお、ここで上記最大酸素保持量Cmaxは様々な方法で推定することができる。すなわち、例えば、燃料カット等が実施されて触媒が酸化状態にされた後に燃焼空燃比をリッチにした運転が行なわれた場合において、リッチ運転開始後、触媒から流出する排気ガスの空燃比がリッチになるまでの時間を測定することによって推定することができる。つまりこの場合、上記排気ガスの空燃比がリッチになるまでの時間が長い程、上記最大酸素保持量Cmaxは多いと推定される。
ステップ614において上記積算値Gcが決定されると、ステップ615に進み、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が実施され、更にステップ617に進む。ステップ617においては、上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLが、上記ステップ614において決定された上記積算値Gcより多いか否かが判定される。そしてステップ617において、上記積算値TGaLが上記積算値Gcより多いと判定された場合には、ステップ619に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。そしてこの場合、更にステップ621に進んで、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が開始され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。一方、ステップ617において、上記積算値TGaLが上記積算値Gc以下であると判定された場合には、そのまま、すなわち上記リーン運転を実施している状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
そして、ここで上記積算値Gcは上述したように上記最大酸素保持量Cmaxが多い程多くなる傾向があるので、本制御ルーチンを実施した場合には、結果として触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時間が長くなることになる。そして、このように上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記リーン運転を行なう時間が長くなるようにすることで、触媒をより確実に酸化状態にすることができ、異臭の発生をより確実に抑制することができる。
次に図11を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時の燃焼空燃比のリーンの度合が大きくなるようにされている。図11はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図11で示された部分を図7に示された制御ルーチンの点線で囲われた部分Aと置き換えることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図11に示されている制御ルーチンにおいて、ステップ713、715、717、719、721における制御内容は夫々、図7に示された制御ルーチンにおけるステップ413、415、417、419、421における制御内容とほぼ同じである。図11に示されているように、本実施形態においてもステップ713で触媒状態フラグXLEANが1である、すなわち触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、ステップ721に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
一方、ステップ713で触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、ステップ714に進み、触媒の最大酸素保持量Cmaxに応じて、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう場合の燃焼空燃比λeが決定される。なお、上述したように触媒の最大酸素保持量Cmaxは、触媒の劣化度が高い程少なくなる傾向があるため、このステップ714における上記燃焼空燃比λeの決定は、触媒の劣化度に応じた決定であるとも言える。
この燃焼空燃比λeの決定には、例えば図12に示されるようなマップが用いられる。これは、上記最大酸素保持量Cmaxの各値に対応する適切な上記燃焼空燃比λeを予め求めてマップにしたものである。図12のマップに示されているように、通常、上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比λeのリーンの度合は大きくなる傾向がある。これは、上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、触媒が還元状態から酸化状態になるまでに必要な酸素量が多いため、触媒が還元状態から酸化状態になるまでの時間を充分に短く維持するためには、上記燃焼空燃比λeのリーンの度合を大きくする必要があるためである。
ステップ714において上記燃焼空燃比λeが決定されると、ステップ715に進み、燃焼空燃比が上記ステップ714において決定された燃焼空燃比λeになるようにしたリーン運転が実施され、更にステップ717に進む。ステップ717においては、上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLが、予め定めた吸入空気量の積算値Gcより多いか否かが判定される。そしてステップ717において、上記積算値TGaLが上記積算値Gcより多いと判定された場合には、ステップ719に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。そしてこの場合、更にステップ721に進んで、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が開始され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。一方、ステップ717において、上記積算値TGaLが上記積算値Gc以下であると判定された場合には、そのまま、すなわち上記リーン運転を実施している状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
以上のように、本制御ルーチンを実施した場合には、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時の燃焼空燃比のリーンの度合が大きくなる。そして、このようにすると、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、触媒により多くの酸素を供給することになるので、触媒をより確実に酸化状態にすることができ、異臭の発生をより確実に抑制することができる。
次に図13を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時並びに燃料カットを実施する時の吸入空気量が多くなるようにされる。図13はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図13に示された制御ルーチン(一部)のX−X間に図8に示された制御ルーチン(一部)を組み入れることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図13に示されている制御ルーチンにおいて、ステップ801、803、805、807、809、810、811における制御内容は夫々、図7に示された制御ルーチンにおけるステップ401、403、405、407、409、410、411における制御内容とほぼ同じである。図13に示されているように本実施形態においては、ステップ801において燃料カット基本条件が成立していると判定されるとステップ802に進み、そこで触媒の最大酸素保持量Cmaxに応じて、減速状態においてリーン運転する場合、アイドリング状態においてリーン運転する場合、燃料カットを実施する場合の夫々について、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転を行なう場合を基準とした吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuが決定される。なお、上述したように触媒の最大酸素保持量Cmaxは、触媒の劣化度が高い程少なくなる傾向があるため、このステップ802における上記吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuの決定は、触媒の劣化度に応じた決定であるとも言える。
この吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuの決定には、例えば図14に示されるようなマップが用いられる。これは、上記最大酸素保持量Cmaxの各値に対応する適切な上記吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuを予め求めてマップにしたものである。図14のマップに示されているように、通常、上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記上記吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuは大きくなる傾向がある。これは、上記最大酸素保持量Cmaxが多い程、触媒が還元状態から酸化状態になるまでに必要な酸素量が多いため、触媒が還元状態から酸化状態になるまでの時間を充分に短くするためには、吸入空気量Gaをより多くする必要があるためである。
そして、これまでの説明及び図13並びに図8から明らかであると思われるので詳しい説明は省略するが、本実施形態においては、このステップ802において決定された吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuに従って、減速状態においてリーン運転する場合、アイドリング状態においてリーン運転する場合、燃料カットを実施する場合の夫々において吸入空気量Gaが増加される(ステップ514b、514c、808)。
その結果、本制御ルーチンを実施した場合には、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時並びに燃料カットを実施する時の吸入空気量が多くなる。そして、このようにすると、触媒の最大酸素保持量Cmaxが多い程、触媒により多くの酸素を供給することになるので、触媒をより確実に酸化状態にすることができ、異臭の発生をより確実に抑制することができる。
なお、本実施形態において、上記吸入空気量Gaを増加する制御を実施している状態でステップ811に進んで通常運転が開始される場合には、当然のことながら、通常運転を開始する際に上記吸入空気量Gaを増加する制御は中止される。
また、ここでは上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時並びに燃料カットを実施する時の両方について上記最大酸素保持量Cmaxに応じて吸入空気量Gaを増加する場合を例に挙げて説明したが、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時にのみ上記のように吸入空気量Gaを増加するようにしてもよい。
更に、排気ガス浄化装置10が図3(c)のような構成を有している場合において、中間空燃比センサ15の出力が空燃比がリーンであることを示した後においては、下流側触媒20の最大酸素保持量Cmaxdに応じて上記吸入空気量Gaの増加率Du、Iu、Fuを決定するようにしてもよい。
また、この場合において、上記下流側触媒20の最大酸素保持量Cmaxdを、上流側触媒18の最大酸素保持量Cmaxuから推定するようにしてもよい。すなわち、一般に下流側触媒20は上流側触媒18より比べ温度が低くなるため、同種の触媒を用いている場合には、下流側触媒20の劣化度合は上流側触媒18の劣化度合よりも低くなる。従って、上記下流側触媒20の最大酸素保持量Cmaxdは上流側触媒18の最大酸素保持量Cmaxuよりもやや大きくなり、これをマップ化すると例えば図15のようになる。そして、このようなマップを事前に作成しておけば、上記下流側触媒20の最大酸素保持量Cmaxdを、上流側触媒18の最大酸素保持量Cmaxuから推定することができる。
次に図16を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、車両の減速状態における減速の度合が大きい程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時並びに燃料カットを実施する時の吸入空気量が多くなるようにされている。図16はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図16に示された制御ルーチン(一部)のX−X間に図8に示された制御ルーチン(一部)を組み入れることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図16を参照すると、この制御ルーチンは、図13に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図13のステップ802に相当するステップ902aの後にステップ902bが設けられている点のみが異なっている。このステップ902bにおいては、車速変化の度合(加速度)ΔSPDが求められ、その車速変化の度合ΔSPDに応じて、ステップ902aで決定された減速状態においてリーン運転する場合の吸入吸気量Gaの増加率Du及び燃料カットを実施する場合の吸入吸気量Gaの増加率Fuが補正される。より具体的には、ステップ902aで決定された吸入吸気量Gaの増加率Du、Fuに上記車速変化の度合ΔSPDに応じて決定される補正係数kspdが乗算されて、補正後の増加率Du、Fuが求められる。
ここで、上記補正係数kspdは例えば図17に示されるようなマップを用いて決定される。これは、上記車速変化の度合ΔSPDの各値に対応する適切な上記補正係数kspdを予め求めてマップにしたものである。図17のマップに示されているように、通常、上記車速変化の度合ΔSPDの値が小さい程、すなわち減速の度合が大きい程、上記補正係数kspdは大きくなる傾向がある。これは、減速の度合が大きい程、車両が短時間に停止状態になる可能性があるため、異臭の発生を確実に抑制するためには供給する酸素量を多くして触媒をより迅速に還元状態から酸化状態にする必要があるからである。
そして、図16並びに図8から明らかであるように、本実施形態においては、ステップ902bで補正された吸入空気量Gaの増加率Du、Fuに従って、減速状態においてリーン運転する場合及び燃料カットを実施する場合の夫々において吸入空気量Gaが増加される(ステップ514b、908)。
その結果、本制御ルーチンを実施した場合には、車両の減速状態における減速の度合が大きい程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時並びに燃料カットを実施する時の吸入空気量が多くなる。そして、このようにすると、上記減速状態における減速の度合が大きい程、触媒をより迅速に酸化状態にすることができ、異臭の発生をより確実に抑制することができる。
なお、本実施形態においても、上記吸入空気量Gaを増加する制御を実施している状態でステップ911に進んで通常運転が開始される場合には、当然のことながら、通常運転を開始する際に上記吸入空気量Gaを増加する制御は中止される。
また、ここでは上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時並びに燃料カットを実施する時の両方について上記減速状態における減速の度合に応じて吸入空気量Gaを増加する場合を例に挙げて説明したが、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時にのみ上記のように吸入空気量Gaを増加するようにしてもよい。
更に、本実施形態と同様の考え方により、上記車両の減速状態における減速の度合が大きい程、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時の燃焼空燃比のリーンの度合が大きくされるようにしてもよい。これまでの説明から明らかであると思われるので、詳細な説明は省略するが、このようにしても、上記減速状態における減速の度合が大きい程、触媒をより迅速に酸化状態にすることができ、異臭の発生をより確実に抑制することができる。
次に図18を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、車速が予め定めた車速未満である場合にのみ、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行われるようになっている。図18はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図18で示された部分を図7に示された制御ルーチンの点線で囲われた部分Aと置き換えることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図18を参照すると、この制御ルーチンは図8に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図8のステップ513に相当するステップ1013の前にステップ1012が設けられている点のみが異なっている。このステップ1012においては、現在の車速SPDが予め定めた車速Sh未満であるか否かが判定される。ここで上記予め定めた車速Shは、現在の車速が車両停止までに比較的時間がかかる程高速であるか否かを判定するためのものであり、例えば、60km/hとされる。
ステップ1012において、上記車速SPDが上記予め定めた車速Sh以上であると判定された場合には、車速が比較的高いとされてステップ1021に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。つまり、この場合には燃焼空燃比がリーンになるようにした運転は行われない。一方、ステップ1012において、上記車速SPDが上記予め定めた車速Sh未満であると判定された場合には、ステップ1013に進み、触媒状態フラグXLEANが1であるか否かが判定される。そして、ここで触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行われることになる。
以上のように、本実施形態では、車速が予め定めた車速Sh未満である場合にのみ、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行われるようになっている。そしてこのようにすることによって、触媒劣化をより一層抑制しつつ異臭の発生の抑制を図ることができる。
すなわち、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれると、触媒に酸素が供給されるため、触媒劣化を招く恐れがある。したがって、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転は、異臭発生抑制の観点から必要な最低限度で行なわれるのが望ましい。
そして、異臭発生抑制の観点からは、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転は、車両停止時までに触媒が酸化状態になるように行なわれればよい。したがって、車速が比較的高い場合には、減速状態になっても必ずしもこの運転を行なう必要はなく、ある程度車速が低下した時点で、車両停止時までに触媒を酸化状態にできるように行なえばよい。また、車速が比較的高い場合に上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれないようにすることによって、例えば高速走行時において一瞬アクセルを戻した場合等に上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれて触媒に無駄に酸素が供給され触媒が劣化されるのを抑制することができる。
以上のようなことから、本実施形態によれば、上記予め定めた車速Shを適切に設定することにより、触媒劣化をより一層抑制しつつ異臭の発生の抑制を図ることができる。
なお、本実施形態においても、吸入空気量Gaを増加する制御を実施している状態で図7のステップ411に相当するステップに進んで通常運転が開始される場合には、当然のことながら、通常運転を開始する際に上記吸入空気量Gaを増加する制御は中止される。
次に図19を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。
上述した実施形態のように燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時に吸入空気量が増加されると、発生トルクの増加や機関回転数の上昇等が生じて減速性の悪化やアイドリング回転数の上昇を招く恐れがある。このようなことを抑制するために、本実施形態においては、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時に燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転を行なう場合よりも吸入空気量が増加された時には、点火時期が遅角されるようになっている。すなわち、本実施形態では、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なう時に吸入空気量が増加される場合には、点火時期が遅角されて燃焼が悪化され、上記のような減速性の悪化やアイドリング回転数の上昇等を抑制するようにしている。
図19はこのような運転制御を実施するための制御ルーチン(一部)の一例を示すフローチャートである。図19で示された部分を図7に示された制御ルーチンの点線で囲われた部分Aと置き換えることで、または、図13もしくは図16に示された制御ルーチン(一部)のX−X間に組み入れることで、本実施形態の運転制御を実施するための制御ルーチン全体を得ることができる。
図19を参照すると、この制御ルーチンは、図8に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図8のステップ514bに相当するステップ1114bの後にステップ1114dが設けられている点、図8のステップ514cに相当するステップ1114cの後にステップ1114eが設けられている点、及び、図8のステップ520に相当するステップ1120において吸入空気量Gaの増加制御を中止するのに加えて点火時期遅角補正制御も中止するようになっている点が異なっている。
上記ステップ1114d及び1114eでは、夫々の前のステップで開始された吸入空気量Gaの増加制御の増加率Du、Iuに応じた点火時期の遅角補正制御が開始されるようになっている。この結果、本実施形態では、リーン運転実施中に吸入空気量Gaの増加制御の増加率Du、Iuに応じて点火時期が遅角される。
なお、ここで、上記遅角補正制御の補正量の決定には、例えば図20(a)、(b)に示されるようなマップを用いることができる。これらは、上記吸入空気量Gaの増加率Du、Iuの各値に対応する適切な上記遅角補正制御の補正量(遅角補正量)を予め求めてマップにしたものである。図20(a)が減速状態にある場合の吸入空気量Gaの増加率Duに対してのものであり、図20(b)がアイドリング状態にある場合の吸入空気量Gaの増加率Iuに対してのものである。図20のマップに示されているように、通常、上記吸入空気量Gaの増加率Du、Iuが大きい程、上記遅角補正量は大きくなる(すなわち、より遅角される)傾向がある。これは、上記吸入空気量の増加率Du、Iuが大きい程、それに伴う発生トルクの増加や機関回転数の上昇の程度が大きいため、それを抑制するために点火時期の遅角補正量をより大きくする必要があるからである。
以上のように、本制御ルーチンを実施した場合には、リーン運転実施中に吸入空気量Gaの増加制御の増加率Du、Iuに応じて点火時期が遅角される。そしてこれにより、吸入空気量Gaの増加制御に伴う減速性の悪化やアイドリング回転数の上昇等を抑制することができる。
なお、本実施形態において、吸入空気量Gaの増加制御及び点火時期の遅角補正制御を実施している状態で図7のステップ411または図13のステップ811、もしくは図16のステップ911に相当するステップに進んで通常運転が開始される場合には、当然のことながら、通常運転を開始する際に上記吸入空気量Gaの増加制御及び点火時期の遅角補正制御は中止される。
次に図21を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、車両の減速状態における減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きい場合には、触媒温度に基づく燃料カットの禁止がなされないようになっている。図21はこのような運転制御を実施するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図21を参照すると、この制御ルーチンは、図7に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図7のステップ401に相当するステップ1201の後にステップ1202aとステップ1202bが設けられている点が異なっている。
上記ステップ1202aにおいては、現在の車速変化の度合ΔSPDの値が予め定めた車速変化の度合ΔScよりも小さいか否か、すなわち現在の減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きいか否かが判定される。ステップ1202aにおいて現在の減速の度合が予め定めた減速の度合よりも小さい(すなわち、あまり急激な減速ではない)と判定された場合には、図7のステップ403に対応するステップ1203に進み、触媒温度CTに基づいて燃料カットの実施可否が判断される。
一方、ステップ1202aにおいて現在の減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きい(すなわち、急激な減速である)と判定された場合には、次にステップ1202bに進み、ブレーキが作動しているか否かが判定される。ステップ1202bにおいてブレーキが作動していないと判定された場合には、ステップ1203に進み、触媒温度CTに基づいて燃料カットの実施可否が判断される。
一方、ステップ1202bにおいてブレーキが作動していると判定された場合には、運転者に停止する意思があると判定され、ステップ1203を飛ばして図7のステップ403に相当するステップ1205に進む。つまりこの場合には、触媒温度CTに基づく燃料カットの実施可否判断(ステップ1203)は行わず、次の段階である機関回転数NEに基づく燃料カットの実施可否判断(ステップ1205)のみが行われる。したがって、この場合にはたとえ触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、燃料カットは禁止されないことになる。
このように、本実施形態においては、車両の減速状態における減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きい場合には、触媒温度CTに基づく燃料カットの禁止がなされないようになっている。そして、このようにすることにより、車両の減速度合が大きく車両停止までの時間が短い場合には、触媒温度CTに拘わらず燃料カットが実施され触媒がより迅速に酸化状態にされるので、異臭をより確実に抑制することができる。
なお、本実施形態における上記ステップ1202bは、運転者の停止の意思を再確認するためのステップであり、省略することができる。但し、上記ステップ1202bを入れて急減速する場合のうちブレーキの作動が伴う場合にのみ触媒温度CTに基づく燃料カットの禁止を行わないようにしておくと、触媒温度CTに拘わらず燃料カットが実施される時には必ずブレーキが作動して急減速されている場合であるため、この燃料カット実施に伴うトルクショックを感じ難くなるという利点がある。
次に図22を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なった場合における機関回転数変動が予め定めた回転数変動よりも大きい場合には、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転に切替えられるようになっている。
図22はこのような運転制御を実施するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図22を参照すると、この制御ルーチンは、図7に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図7のステップ415に相当するステップ1315の前後にステップ1314、1316a、1316bが設けられている点と図7のステップ407、410、411に夫々相当するステップ1307、1310、1311の後の部分にステップ1312が設けられている点とが異なっている。
図22に示されているように、本実施形態において、ステップ1313で触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、ステップ1314に進み、回転数変動フラグXΔNEが0であるか否かが判定される。この回転数変動フラグXΔNEは、簡単に言えば、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なった場合における内燃機関の回転数変動ΔNEが許容範囲内にあるか否かを示すものである。より具体的には本実施形態の場合、この回転数変動フラグXΔNEは、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なった場合における内燃機関の回転数変動ΔNEがその許容範囲を表す予め定めた回転数変動ΔEc以上である場合に後述するステップ1316bにおいて1とされ、燃料カットが実施された場合や通常運転が実施された場合等のように制御が上記ステップ1307、1310、1311の何れかからステップ1312に進むとそこで0とされる。
ステップ1314において上記回転数変動フラグXΔNEが0ではない、すなわち回転数変動フラグXΔNEが1であると判定された場合(すなわち、それまでに上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なった場合における内燃機関の回転数変動ΔNEが許容範囲内にないと判定されていた場合)には、ステップ1321に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
一方、ステップ1314において上記回転数変動フラグXΔNEが0であると判定された場合には、ステップ1315に進み、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が実施される。そして、そのリーン運転が実施された状態でステップ1316aに進み、その時の内燃機関の回転数変動ΔNEが予め定めた回転数変動ΔEc未満であるか否かが判定される。
ステップ1316aにおいて上記回転数変動ΔNEが判定基準となる上記予め定めた回転数変動ΔEc未満であると判定された場合には、図4のステップ417に相当するステップ1317に進む。この場合、ステップ1317において上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLが、予め定めた吸入空気量の積算値Gcより多いと判定されない限り上記リーン運転が継続される。
一方、ステップ1316aにおいて上記回転数変動ΔNEが判定基準となる上記予め定めた回転数変動ΔEc以上であると判定された場合には、ステップ1316bに進んで上記回転数変動フラグXΔNEが1とされる。そして更にステップ1321に進んで上記理論空燃比運転が実施され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。つまり、この場合には、上記リーン運転が禁止され、同リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えが行われる。
以上のように、本制御ルーチンを実施した場合には 上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なった場合における機関回転数変動ΔNEが予め定めた回転数変動ΔEcよりも大きい場合には、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転に切替えられるようになっている。そしてこのようにすることによって、上記燃焼空燃比がリーンになるようにした運転を行なうことに伴う失火及びエンストを防止することができる。