以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した場合について説明するための図である。図1において、2は内燃機関(エンジン)本体、3は内燃機関本体2に取り付けられた変速機、4は吸気通路、6は排気ガス通路を夫々示す。排気ガス通路6には排気ガス浄化装置10が設けられるが、この部分に設置される排気ガス浄化装置10としては、図2及び図3を参照して後述するような種々のものを用いることができる。
電子制御ユニット(ECU)8は、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の形式のディジタルコンピュータからなり、各種センサや駆動装置と信号をやり取りして機関回転数や吸入空気量等の制御に必要なパラメータを算出すると共に、算出されたパラメータに基づいて燃料カットを含む燃料噴射量制御(もしくは燃焼空燃比制御)や点火時期制御等の機関の運転に関する種々の制御を行なう。
図2及び図3は、図1に示されている排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する、排気ガス浄化装置10の構成の例を模式的に示した説明図である。ここで、排気ガスは矢印で示されているように図の左側から右側に向かって流れる。図2には三元触媒12を1つ具備するものが示されており、図2(a)、図2(b)、図2(c)は夫々、排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ(もしくは排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ)が設けられていないもの、三元触媒12の上流に上流側空燃比センサ14が設けられているもの、三元触媒12の下流に下流側空燃比センサ16が設けられているものを示している。
一方、図3には三元触媒18、20を2つ具備するもの、より詳細には三元触媒18、20が排気系に直列に二箇所に別れて設けられているものが示されており、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)は夫々、空燃比センサが設けられていないもの、上流側三元触媒18の上流に上流側空燃比センサ14が設けられているもの、上流側三元触媒18と下流側三元触媒20との間に中間空燃比センサ15が設けられているもの、下流側三元触媒20の下流に下流側空燃比センサ16が設けられているものを示している。
そして後述するように、本発明の実施形態では、用いられる排気ガス浄化装置10の構成により、三元触媒(以下、単に「触媒」という)12、18、20が酸素を充分に保持している酸化状態にあるか、酸素を充分に保持していない還元状態にあるかの判定の方法(すなわち、触媒状態の判定方法)が異なることになる。
なお、図2及び図3に示された排気ガス浄化装置の各構成のうち空燃比センサを有するものについては、空燃比センサ14、15、16の出力が電子制御ユニット8に伝達されるように構成されている。
ところで、本実施形態においては、上記内燃機関が搭載された車両が減速状態(例えば、エンジンブレーキ状態)にあると判定された時に、内燃機関への燃料の供給を停止する「燃料カット」が行われるようになっている。より詳細には、本実施形態では、車両が減速状態にあって、アクセル開度がゼロであり且つ機関回転数が所定回転数より大きい時には原則として燃料カットが実施されるようになっている。
また、本実施形態においては、上述したような燃料カットを実施するための条件(減速状態、アクセル開度ゼロ、機関回転数が所定回転数以上)が成立しても、上記変速機3のギヤ位置が高速ギヤ(例えば、5段変速の変速機における4速や5速、もしくは6段変速の変速機における5速や6速)にあり且つ上記触媒12、18、20の温度が予め定めた温度以上である場合には、上記燃料カットの実施が禁止されるようになっている。これは、触媒12、18、20の温度が高い時に燃料カットが実施されることによって触媒12、18、20が高温且つ酸素過多の状態に置かれるのを防止して、触媒の劣化抑制を図るためである。またここで、ギヤ位置が高速ギヤにある場合にのみ上記燃料カットの実施を禁止するようになっているのは、燃料カットの実施が禁止されると車両の減速感が得られなくなることや、一般に高速走行時に触媒温度が高くなること等を考慮して、より好適な場合にのみ燃料カットの実施を禁止するようにするためである。
ところが、従来、上記のようにして燃料カットの実施を禁止するようにした場合において、減速後の車両停止時に異臭、より詳細には硫化水素(H2S)臭がするという問題があった。そしてこの問題は以下のような理由で生じるものと考えられる。すなわち、内燃機関の排気系に設けられている触媒(例えば、三元触媒)は一般に、流通する排気ガスの空燃比がリーンである場合には燃料中の硫黄成分が燃焼して生じた硫黄酸化物(SOx)を同触媒中に保持する作用を有する。また、このような触媒は、同触媒に充分な酸素が保持されている場合(すなわち、触媒が「酸化状態」にある場合)には、流通する排気ガスの空燃比が理論空燃比である場合においても、排気ガス中の硫黄酸化物を同触媒中に保持することができる。そして、このような作用により、燃焼空燃比(すなわち、燃焼室内における空燃比)を理論空燃比として内燃機関が運転される通常時には、排気ガス中の硫黄酸化物は排気系に設けられた触媒に保持されることになる。
その一方で上記触媒は、触媒に充分な酸素が保持されていない場合(すなわち、触媒が「還元状態」にある場合)において、流通する排気ガスの空燃比がリッチもしくは理論空燃比になると、それまで触媒中に保持していた硫黄酸化物を放出するという性質を有している。そしてこのように排気ガス中に放出された硫黄酸化物は燃料の燃焼過程で生じた水素と反応して硫化水素となるため、それが外部へ放出された場合に異臭(硫化水素臭)を生じることになる。
また、このような硫化水素による異臭は、車両の走行中は排気ガスが拡散し易いので問題となることは少ないが、車両が停止状態にある場合には、排気ガスの拡散が生じにくくなるので、異臭が周辺に漂って車両の乗員に不快感を与え易くなる。
例えば、ギヤ位置を高速ギヤに維持したまま減速が行なわれ、上記のように燃料カットの実施が禁止された場合について考えてみると、従来技術においては燃料カットが禁止されると燃焼空燃比を理論空燃比とした運転が行なわれるようになっているため、減速中に触媒を流通する排気ガスの空燃比はリーンにならず、結果として外部へ硫化水素が放出されやすい状態となる。特に、減速前に出力増大や触媒温度の低下を目的として燃料が増量され、燃焼空燃比がリッチである状態が続いていた場合には、触媒に充分な酸素が保持されていないため、外部へ硫化水素が放出される可能性はより高くなる。また、減速の結果、車両速度が相当に低下した場合もしくは車両が停止状態になった場合には、上述したように排気ガスの拡散が生じにくくなるために上記異臭の問題が生じる可能性は一層高くなる。
そこで、本実施形態においては、上記のような異臭の問題に対応すべく、車両の速度に基づいた特別な運転制御を行なって異臭の発生を抑制するようにしている。この運転制御は、簡単に言えば、燃焼空燃比がリッチになるようにして上記内燃機関の運転を行なう燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、上記車両の速度が予め定めた車速以下である場合には、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記内燃機関の排気系に設けられた触媒の温度が予め定めた温度以上であっても、燃料カットを禁止しないようにするというものである。
本実施形態において実施される上記運転制御の具体的な説明の前に、ここで先ず、同運転制御において、上記予め定めた期間を決定する上で必要とされる触媒状態(酸化状態であるか、還元状態であるか)について判定する方法を説明する。上述したようにこの判定方法は、用いられる排気ガス浄化装置10の構成により異なる。図4から図6は、用いられる排気ガス浄化装置10の構成によって異なる判定方法の夫々を実施するための制御ルーチンを示すフローチャートである。これらの制御ルーチンは内燃機関の運転中、繰り返し実施されており、現在の触媒状態を判定するようにされている。
先ず、図4のフローチャートで示される判定方法は、排気ガス浄化装置10が、図2(a)及び図2(b)、並びに図3(a)及び図3(b)に示されるような構成を有している場合に適用されるものである。すなわち、空燃比センサが設けられていないか、または、上流側空燃比センサ14が設けられている場合に適用されるものである。
図4に示される制御ルーチンがスタートすると、先ずステップ101において、燃焼空燃比がリッチになるようにして内燃機関の運転を行なう燃料増量運転が実施されているか否かが判定される。なお、このような燃料増量運転は、出力増大や触媒温度の低下を目的として行なわれる。
上記燃料増量運転の実施中であるか否かの判定は、空燃比センサが設けられていない場合には、内燃機関の運転制御に用いられる現在の目標燃焼空燃比に基づいて行なわれる。また、上流側空燃比センサ14が設けられている場合には、その出力の示す空燃比に基づいて行なわれる。すなわち、何れの場合においても、判定に用いられる空燃比がリッチである場合には、燃料増量運転の実施中であると判定され、判定に用いられる空燃比がリッチでない場合には、燃料増量運転の実施中ではないと判定される。
ステップ101において燃料増量運転の実施中であると判定された場合には、ステップ103に進み、触媒状態が還元状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが0とされる(還元状態判定)。一方、ステップ101において燃料増量運転の実施中ではないと判定された場合には、ステップ105に進み、燃料増量運転終了後の吸入空気量の積算値TGaS1が、予め定めた吸入空気量の積算値a1より多いか否かが判定される。
ステップ105において、上記積算値TGaS1が上記積算値a1より多いと判定された場合には、ステップ107に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。一方、ステップ105において上記積算値TGaS1が上記積算値a1以下であると判定された場合には、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値)が維持される。
以上の説明からも明らかなように、ステップ105で判定基準となる上記積算値a1は、上記積算値TGaS1がその値よりも大きくなれば触媒総てが酸化状態になったと判定される値であり、このような趣旨を考慮して予め実験等によって決定される。また、上記積算値TGaS1等を求めるための吸入空気量としては、内燃機関の運転状態等から推定される吸入空気量を用いてもよいし、エアーフローメータを設け、その検出値を用いるようにしてもよい。
なお、ここでは燃料増量運転終了後の吸入空気量の積算値TGaS1を基準として触媒状態の判定が行なわれたが、その代わりに例えば、燃料増量運転終了後の経過時間を基準にして触媒状態の判定を行なうようにしてもよい。すなわち、例えば、燃料増量運転終了後の経過時間が予め定めた判定基準となる経過時間を超えた場合に、触媒状態が酸化状態であるという判定をすると共に、触媒状態フラグXLEANを1とする。
次に図5のフローチャートで示される判定方法について説明する。この判定方法は、排気ガス浄化装置10が、図3(c)に示されるような構成を有している場合に適用されるものである。すなわち、触媒18、20が排気系に直列に二箇所に別れて設けられており、それら触媒18、20の間に中間空燃比センサ15が設けられている場合に適用されるものである。
図5に示される制御ルーチンがスタートすると、先ずステップ201において、燃料増量運転が実施されているか否かが判定される。この判定は、上記中間空燃比センサ15のみが設けられている場合には、内燃機関の運転制御に用いられる現在の目標燃焼空燃比に基づいて行なわれる。また、上記中間空燃比センサ15に加えて図3(b)に示されるような上流側空燃比センサも設けられている場合には、上流側空燃比センサの出力の示す空燃比に基づいて判定するようにしてもよい。何れの場合においても、判定に用いられる空燃比がリッチである場合には、燃料増量運転の実施中であると判定され、判定に用いられる空燃比がリッチでない場合には、燃料増量運転の実施中ではないと判定される。
ステップ201において燃料増量運転の実施中であると判定された場合には、ステップ203に進み、触媒状態が還元状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが0とされる(還元状態判定)。更に、この場合には、中間空燃比センサ15の出力がリッチを示しているとされ、中間センサ判定フラグXMLが0とされる(リッチ判定)。一方、ステップ201において燃料増量運転の実施中ではないと判定された場合には、ステップ205に進み、上記中間センサ判定フラグXMLが0であるか否かが判定される。このステップは本制御ルーチンが前回行なわれた時の判定結果を確認するためのものである。
ステップ205において上記中間センサ判定フラグXMLが0であると判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、中間空燃比センサ15の出力がリッチを示しているとされた場合であり、この場合にはステップ207に進んで、現在の中間空燃比センサ15の出力がリーンを示すようになったか否かが判定される。一方、ステップ205において上記中間センサ判定フラグXMLが0でない(すなわち、1である)と判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、中間空燃比センサ15の出力がリーンを示していた場合であり、この場合にはステップ211に進む。
上記ステップ207において、現在の中間空燃比センサ15の出力がリーンを示していると判定された場合には、ステップ209に進んで上記中間センサ判定フラグXMLが1とされ(リーン判定)、ステップ211に進む。一方、上記ステップ207において、現在の中間空燃比センサ15の出力がリーンを示していないと判定された場合には、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態及び中間空燃比センサ出力の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値及び中間センサ判定フラグXMLの値)を維持したまま今回の制御ルーチンが終了する。
ステップ211に進むと、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後における吸入空気量の積算値TGaS2が、予め定めた吸入空気量の積算値a2より多いか否かが判定される。そして、ステップ211において、上記積算値TGaS2が上記積算値a2より多いと判定された場合には、ステップ213に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。一方、ステップ211において上記積算値TGaS2が上記積算値a2以下であると判定された場合には、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値)が維持される。
なおここで、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した場合には、上流側触媒18については酸化状態になっていると考えられる。したがって、判定基準となる上記積算値a2は、より詳細には、上記積算値TGaS2がその値よりも大きくなれば下流側触媒20も酸化状態になったと判定される値であると言え、このような趣旨を考慮して予め実験等によって決定される。また、上記積算値TGaS1の場合と同様に、上記積算値TGaS2を求めるための吸入空気量としては、内燃機関の運転状態等から推定される吸入空気量を用いてもよいし、エアーフローメータを設け、その検出値を用いるようにしてもよい。
また、ここでは上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後における吸入空気量の積算値TGaS2を基準として触媒状態の判定が行なわれたが、その代わりに例えば、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後の経過時間を基準にして触媒状態の判定を行なうようにしてもよい。すなわち、例えば、上記中間空燃比センサ15の出力が排気ガスの空燃比がリーンであることを示した後の経過時間が予め定めた判定基準となる経過時間を超えた場合に、触媒状態が酸化状態であるという判定をすると共に、触媒状態フラグXLEANを1とする。
次に図6のフローチャートで示される判定方法について説明する。この判定方法は、排気ガス浄化装置10が、図2(c)または図3(d)に示されるような構成を有している場合に適用されるものである。すなわち、下流側空燃比センサ16が設けられている場合に適用されるものである。
図6に示される制御ルーチンがスタートすると、図4及び図5に示される制御ルーチンの場合と同様、先ずステップ301において、燃料増量運転が実施されているか否かが判定される。この判定は、上記下流側空燃比センサ16のみが設けられている場合には、内燃機関の運転制御に用いられる現在の目標燃焼空燃比に基づいて行なわれる。また、上記下流側空燃比センサ16に加えて図2(b)または図3(b)に示されるような上流側空燃比センサ14も設けられている場合には、上流側空燃比センサ14の出力の示す空燃比に基づいて判定するようにしてもよい。何れの場合においても、判定に用いられる空燃比がリッチである場合には、燃料増量運転の実施中であると判定され、判定に用いられる空燃比がリッチでない場合には、燃料増量運転の実施中ではないと判定される。
ステップ301において燃料増量運転の実施中であると判定された場合には、ステップ303に進み、触媒状態が還元状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが0とされる(還元状態判定)。更に、この場合には、下流側空燃比センサ16の出力がリッチを示しているとされ、下流側センサ判定フラグXDLが0とされる(リッチ判定)。一方、ステップ301において燃料増量運転の実施中ではないと判定された場合には、ステップ305に進み、上記下流側センサ判定フラグXDLが0であるか否かが判定される。このステップは本制御ルーチンが前回行なわれた時の判定結果を確認するためのものである。
ステップ305において上記下流側センサ判定フラグXDLが0であると判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、下流側空燃比センサ16の出力がリッチを示しているとされた場合であり、この場合にはステップ307に進んで、現在の下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示すようになったか否かが判定される。一方、ステップ305において上記下流側センサ判定フラグXDLが0でない(すなわち、1である)と判定される場合は、本制御ルーチンが前回行なわれた時に、下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示していた場合であり、この場合には本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態及び下流側空燃比センサ出力の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値及び下流側センサ判定フラグXDLの値)を維持したまま今回の制御ルーチンが終了する。より詳細には、この場合には、触媒状態は酸化状態(XLEAN=1)であり、下流側空燃比センサ出力はリーンを示している(XDL=1)という判定結果が維持される。
上記ステップ307において、現在の下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示していると判定された場合には、ステップ309に進んで上記下流側センサ判定フラグXDLが1とされる(リーン判定)と共に、続くステップ311において触媒状態が酸化状態であるという判定がなされ、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。一方、上記ステップ307において、現在の下流側空燃比センサ16の出力がリーンを示していないと判定された場合には、上記ステップ305において上記下流側センサ判定フラグXDLが0でない(すなわち、1である)と判定された場合と同様に、本制御ルーチンが前回行なわれた時の触媒状態及び下流側空燃比センサ出力の判定結果(すなわち、触媒状態フラグXLEANの値及び下流側センサ判定フラグXDLの値)を維持したまま今回の制御ルーチンが終了する。但し、この場合には、触媒状態は還元状態(XLEAN=0)であり、下流側空燃比センサ出力はリッチを示している(XDL=0)という判定結果が維持されることになる。
以上のように、図6のフローチャートで示される判定方法では、下流側空燃比センサ16の出力を用いて触媒状態が判定される。このようにすることにより、触媒全体、特に触媒が排気系に直列に二箇所に別れて設けられている場合には、下流側に設けられた触媒まで総てが酸化状態になったことを確実に判定することができる。また、逆に、触媒が排気系に直列に二箇所に別れて設けられている場合において、この判定方法によって触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、下流側に設けられた触媒までもが酸化状態にあると判定されたと言える。
次に、上述したような異臭の問題に対応すべく、本実施形態において実施される運転制御について図7を参照しつつ説明する。図7はこの運転制御を実施するための制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU8により一定時間毎の割込みによって実施される。
この制御ルーチンがスタートすると、まず、ステップ401において、燃料カット実施基本条件が成立しているか否かが判定される。本実施形態における燃料カット実施基本条件は、車両が減速状態にあることとアクセル開度がゼロであるということである。ステップ401において燃料カット実施基本条件が成立していないと判定された場合には、ステップ411に進み、機関回転数及びアクセル開度等に応じて燃焼空燃比が決定される通常運転が実施されると共に、燃料カット実施フラグXFCが0とされ、本制御ルーチンが終了する。
一方、ステップ401において燃料カット実施基本条件が成立していると判定された場合には、ステップ403に進み、車両が減速を開始した時の触媒の温度CTが、予め定めた温度Tc未満であるか否かが判定される。後の説明から明らかになるが、この判定は、触媒の温度が高い時に燃料カットが実施されて触媒が高温且つ酸素過多の状態に置かれるのを防止するために行なわれるものである。上記温度Tcは、このような趣旨に基づいて予め実験等によって決定され、例えば800℃である。また、上記触媒温度CTは触媒12、18、20に温度センサを設け、その出力に基づいて決定するようにしてもよいし、排気ガス温度を検出してその温度に基づいて決定するようにしてもよい。あるいは、減速前の内燃機関の運転状態もしくは運転履歴から推定するようにしてもよい。
ステップ403において上記触媒温度CTが上記予め定めた温度Tc未満であると判定された場合には、ステップ405に進み、機関回転数NEが予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きいか否かが判定される。この判定は、機関回転数NEが低い時に燃料カットが開始され、エンストを起こしてしまうのを防止するために行なわれるものであり、上記予め定めた第1機関回転数Ec1は、このような趣旨に基づいて予め実験等によって決定される。
ステップ405において機関回転数NEが上記予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きいと判定された場合には、ステップ407に進んで燃料カットが実施されると共に燃料カット実施フラグXFCが1とされ、本制御ルーチンが終了する。一方、ステップ405において機関回転数NEが上記予め定めた第1機関回転数Ec1以下であると判定された場合には、ステップ409に進んで燃料カット実施フラグXFCが1であるか否かが判定される。この判定は、すなわち燃料カットの実施中であるか否かの判定である。
ステップ409において、燃料カット実施フラグXFCが1ではない、すなわち燃料カットの実施中ではないと判定された場合には、ステップ411に進み通常運転が実施される。つまり、この場合は、機関回転数NEが低いために燃料カットが開始されるとエンストを起こす恐れのある場合であり、燃料カットは行なわずに通常運転が実施される。一方、ステップ409において、燃料カット実施フラグXFCが1である、すなわち燃料カットの実施中であると判定された場合には、ステップ410に進み、機関回転数NEが予め定めた第2機関回転数Ec2よりも大きいか否かが判定される。ここで、この第2機関回転数Ec2は、上記第1機関回転数Ec1よりも小さい値である。
そして、ステップ410において、機関回転数NEが上記予め定めた第2機関回転数Ec2よりも大きいと判定された場合には、そのまま、すなわち燃料カットを実施している状態で本制御ルーチンが終了する。一方、ステップ410において機関回転数NEが予め定めた第2機関回転数Ec2以下であると判定された場合にはステップ411に進み、燃料カットが中止されて通常運転に戻る。この場合、燃料カットが中止されて通常運転が開始され、燃料カット実施フラグXFCが0にされて本制御ルーチンが終了する。
このように、本実施形態では、燃料カットを開始するか否かを判定する機関回転数Ec1とは別に燃料カットを中止するか否かを判定する機関回転数Ec2(<Ec1)が設定されている。そして、このように燃料カットの実施に関する機関回転数の条件についてヒステリシスを設けることにより、燃料カットの開始と中止が繰り返されるのを抑制することができる。
一方、ステップ403において、上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であると判定された場合は、ステップ412に進んで変速機3のギヤ位置が高速ギヤにあるか否かが判定される。後の説明から明らかになるが、このステップの存在により、車両の減速感を得る必要がないこと及び一般に触媒温度が高く燃料カットの実施を禁止する必要性が高いこと等から上記燃料カットの実施を禁止するのにより好適である変速機のギヤ位置が高速ギヤにある場合にのみ上記燃料カットの実施が禁止されるようになる。
なお、ここでの判定に用いる現在のギヤ位置は、ギヤ位置を検知するセンサを設けておき、それに基づいて求めてもよいし、あるいは、機関回転数と車速との関係から推定するようにしてもよい。
ステップ412において変速機3のギヤ位置が高速ギヤにはないと判定された場合には、ステップ405に進み、上述したようなそこからの制御が実施される。すなわち、この場合には、機関回転数NEが上記予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きければ燃料カットが実施される。一方、ステップ412において変速機3のギヤ位置が高速ギヤにあると判定された場合には、ステップ413に進み、触媒状態フラグXLEANが1であるか否かが判定される。この判定は、すなわち触媒状態が酸化状態であるか否かの判定である。
ステップ413において、触媒状態フラグXLEANが1である、すなわち触媒状態が酸化状態であると判定された場合には、ステップ425に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する。つまり、この場合には、減速状態において、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、空燃比が理論空燃比になるようにした運転を実施した状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。なお、この場合、上記のように理論空燃比運転が実施されても、触媒が酸化状態にあるため、異臭の発生は抑制される。
一方、ステップ413において、触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合には、ステップ415に進み、現在の車速SPDが予め定めた車速Shより大きいか否かが判定される。ここで上記予め定めた車速Shは、現在の車速が車両が停止することを考慮すべき速度であるか否かを判定するためのものであり、例えば、50km/hとされる。
ステップ415において現在の車速SPDが上記予め定めた車速Sh以下であると判定された場合には、ステップ405に進み、上述したようなそこからの制御が実施される。すなわち、この場合、機関回転数NEが上記予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きければ燃料カットが実施される。つまり、この場合には、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記触媒の温度CTが上記予め定めた温度Tc以上であっても、燃料カットが禁止されないようになっている。
一方、ステップ415において現在の車速SPDが上記予め定めた車速Shより大きいと判定された場合には、ステップ417に進み、燃料カット実施フラグXFCが0であるか否かが判定される。この判定は燃料カットの実施中であるか否かを判定するためのものである。
ステップ417において、燃料カット実施フラグXFCが0ではない、すなわち燃料カットの実施中であると判定された場合には、ステップ405に進み、上述したようなそこからの制御が実施される。一方、ステップ417において、燃料カット実施フラグXFCが0である、すなわち燃料カットの実施中ではないと判定された場合には、ステップ419に進み、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が実施され、更にステップ421に進む。つまり、この場合には、減速状態において、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、空燃比がリーンになるようにした運転を実施した状態でステップ421に進む。
ステップ421においては、上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLが、予め定めた吸入空気量の積算値Gcより多いか否かが判定される。そしてステップ421において、上記積算値TGaLが上記積算値Gcより多いと判定された場合には、ステップ423に進み、触媒状態が酸化状態であるという判定がなされると共に、触媒状態フラグXLEANが1とされる(酸化状態判定)。そしてこの場合、更にステップ425に進んで、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が開始され、本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。一方、ステップ421において、上記積算値TGaLが上記積算値Gc以下であると判定された場合には、そのまま、すなわち上記リーン運転を実施している状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
なお、以上の説明から明らかなように、ステップ421で判定基準となる上記積算値Gcは、上記積算値TGaLがその値よりも大きくなれば触媒が酸化状態になったと判定され、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えが行なわれる値であり、このような趣旨を考慮して予め実験等によって決定される。また、上記積算値TGaLを求めるための吸入空気量としては、内燃機関の運転状態等から推定される吸入空気量を用いてもよいし、エアーフローメータを設け、その検出値を用いるようにしてもよい。
以上、説明したように本実施形態においては、車両が減速状態になった時に変速機3のギヤ位置が高速ギヤにあると共に触媒温度CTが予め定めた温度Tcより高く、本来であれば燃料カットが禁止される場合であっても、触媒状態フラグXLEANが1ではない、すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態であると判定された場合において、上記車両の速度SPDが予め定めた車速Sh以下である場合には、燃料カットを禁止しないようにされている。ここで、車両が減速状態である時に触媒状態が還元状態である(XLEAN=0)と判定されるのは、図4から図6を参照して行なった説明から明らかなように、燃焼空燃比がリッチになるようにして内燃機関の運転を行なう燃料増量運転が実施された後予め定めた条件が満たされるまでの期間、すなわち予め定めた期間である。したがって、換言すれば、本実施形態においては、燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、上記車両の速度が予め定めた車速以下である場合には、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、燃料カットを禁止しないようになっていると言える。
そして、上記のようにすると、ギヤ位置を高速ギヤにしたままで減速した場合であっても、上記車両の速度が上記予め定めた車速以下となった時には燃料カットを実施することができる。そしてこれにより、車両停止時までに触媒に酸素を供給することができ、減速後に触媒が還元状態になっていて硫化水素が外部へ放出されやすい状態となることが抑制される。そしてこの結果、減速後における異臭の発生を抑制することができる。
なお、上述の説明では上記リーン運転開始後の吸入空気量の積算値TGaLを基準として触媒状態の判定が行なわれ、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えを行なうか否かが決定されたが、その代わりに例えば、上記リーン運転開始後の経過時間(すなわち、上記リーン運転の継続時間)を基準にして触媒状態の判定を行ない、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えを行なうか否かを決定するようにしてもよい。すなわち、例えば、上記リーン運転開始後の経過時間が予め定めた判定基準となる経過時間Pcを超えた場合に、触媒状態が酸化状態であるという判定をすると共に触媒状態フラグXLEANを1とし、上記リーン運転から上記理論空燃比運転への切替えを行なうようにする。
また、上記ステップ421で判定基準となる上記積算値Gcや上述した判定基準となる経過時間Pcは、上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合や触媒の劣化度に応じて変化させてもよい。すなわち、例えば、上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、また、触媒の劣化度が高い程、上記積算値Gcや経過時間Pcの値を小さくする。
上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、触媒に供給される酸素量は多くなる。また、触媒の劣化度が高い程、触媒の保持する酸素量(最大酸素保持量)は少なくなる傾向がある。したがって、上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、また、触媒の劣化度が高い程、触媒は酸化状態になり易いと言える。そこで、上述したように上記リーン運転時の燃焼空燃比のリーンの度合が高い程、また、触媒の劣化度が高い程、上記積算値Gcや経過時間Pcの値を小さくすれば、より適切に触媒状態の判定を行なうことが可能になる。そしてこれにより、触媒が酸素過多の状態に置かれて劣化が進行するのを抑制することができる。
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、その構成及び作用効果に関して上述した実施形態と共通する部分を多く有しており、これら共通する部分については原則として説明を省略する。
図8を参照して次に説明する実施形態においては、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、上記車両の速度が予め定めた車速以下であり且つブレーキが作動している場合には燃料カットを禁止しないようになっている。
図8はこのような運転制御を実施するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図8を参照すると、この制御ルーチンは、図7に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図7のステップ415に相当するステップ515において現在の車速SPDが予め定めた車速Sh以下であると判定された場合に行なわれる(もしくは行なわれ得る)制御としてステップ516a、516b、516cが設けられている点と、図7のステップ411に相当するステップ511において通常運転が実施される際に燃料カット実施フラグXFCが0とされるのに加え、後述するブレーキ作動フラグXBRKが0とされる点が異なっている。
すなわち、本実施形態において、上記ステップ515で現在の車速SPDが予め定めた車速Sh以下であると判定された場合には、ステップ516aに進む。このステップ516aにおいては、ブレーキが作動している否かが判定される。そして、ステップ516aにおいてブレーキが作動していると判定された場合には、ステップ516bに進んでブレーキ作動フラグXBRKが1とされ、更に図7のステップ405に相当するステップ505に進む。すなわち、この場合には、機関回転数NEが予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きければ燃料カットが実施される。つまり、この場合には、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ触媒の温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、燃料カットが禁止されないようになっている。
一方、ステップ516aにおいてブレーキが作動していないと判定された場合には、ステップ516cに進み、ブレーキ作動フラグXBRKが0であるか否かが判定される。この判定は、すなわち本制御ルーチンが前回実施された時にブレーキが作動していたか否かの判定である。そしてステップ516cにおいて、ブレーキ作動フラグXBRKが0ではない、すなわち1であると判定された場合には図7のステップ405に相当するステップ505に進んで上述したようなそこからの制御が実施され、ブレーキ作動フラグXBRKが0であると判定された場合には図7のステップ419に相当するステップ519に進んでリーン運転が実施され、それ以降のステップへと制御が進むことになる。
以上の説明及び図8から理解されるように、本実施形態では、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、上記車両の速度が予め定めた車速以下であり且つブレーキが作動している場合には、燃料カットを禁止しないようになっている。そしてこのようにすることによって、触媒の劣化の進行を抑制することができると共に、上記異臭をより確実に抑制することが可能となる。
すなわち、本来燃料カットを禁止する場合に燃料カットを禁止しないようにすると、触媒が高温且つ酸素過多の状態に置かれて劣化する恐れがある。そのため、上記のように燃料カットを禁止しないようにするのは、上記異臭の問題が生じる可能性の高い場合のみにするのが望ましい。そして、上記異臭の問題は、車両の走行中は排気ガスが拡散し易いために生じ難いが、車両の速度が相当に低下した場合もしくは車両が停止状態になった場合には、排気ガスが拡散し難くなるために生じ易くなる。
以上のようなことから、上記のように燃料カットを禁止しないようにするのは車両の速度が相当に低下するもしくは車両が停止状態になる可能性の高い場合のみにするのが望ましいと言える。
この点、本実施形態では、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、上記車両の速度が予め定めた車速以下であり且つブレーキが作動している場合に、上記燃料カット禁止手段が燃料カットを禁止しないようにされている。ブレーキが作動している場合は運転者に減速または停止の意思がある場合であり、車両の速度が相当に低下するもしくは車両が停止状態になる可能性が高い。したがって、本実施形態によれば、より異臭の問題の発生し易い時にのみ燃料カットを禁止しないようにされるので、触媒の劣化の進行を抑制することができるのである。
また、ブレーキが作動している場合には車両停止までの時間が短いため、異臭を確実に抑制するためには、より迅速に触媒を酸化状態にする必要があるが、本実施形態では、この場合に燃料カットを実施することができる。燃料カットが実施されると、空気がそのまま排気系へ流れることになるので、触媒へより多くの酸素を迅速に供給することができる。したがって、本実施形態によれば、上記異臭をより確実に抑制することが可能となる。
次に図9を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、上記車両の速度が予め定めた車速以下であり且つ上記車両の減速状態における減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きい場合には燃料カットを禁止しないようになっている。
図9はこのような運転制御を実施するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図9を参照すると、この制御ルーチンは、図8の制御ルーチンと同様、図7に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図7のステップ415に相当するステップ615において現在の車速SPDが予め定めた車速Sh以下であると判定された場合に行なわれる(もしくは行なわれ得る)制御としてステップ616a、616b、616cが設けられている点と、図7のステップ411に相当するステップ611において通常運転が実施される際に燃料カット実施フラグXFCが0とされるのに加え、後述する急減速フラグXDSが0とされる点が異なっている。
すなわち、本実施形態において、上記ステップ615で現在の車速SPDが予め定めた車速Sh以下であると判定された場合には、ステップ616aに進む。このステップ616aにおいては、現在の車速変化の度合(加速度)ΔSPDの値が予め定めた車速変化の度合ΔScよりも小さいか否か、すなわち現在の減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きいか否かが判定される。そして、ステップ516aにおいて現在の減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きい(すなわち、急激な減速である)と判定された場合には、ステップ616bに進んで急減速フラグXDSが1とされ、更に図7のステップ405に相当するステップ605に進む。すなわち、この場合には、機関回転数NEが予め定めた第1機関回転数Ec1よりも大きければ燃料カットが実施される。つまり、この場合には、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ触媒の温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、燃料カットが禁止されないようになっている。
一方、ステップ616aにおいて現在の減速の度合が予め定めた減速の度合と同じか、それよりも小さい(すなわち、あまり急激な減速ではない)と判定された場合には、ステップ616cに進み、急減速フラグXDSが0であるか否かが判定される。この判定は、すなわち本制御ルーチンが前回実施された時に減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きかったか否か(すなわち、急激な減速であったか否か)の判定である。そしてステップ616cにおいて、急減速フラグXDSが0ではない、すなわち1であると判定された場合には図7のステップ405に相当するステップ605に進んで上述したようなそこからの制御が実施される。一方、急減速フラグXDSが0であると判定された場合には図7のステップ419に相当するステップ619に進んでリーン運転が実施され、それ以降のステップへと制御が進むことになる。
以上の説明及び図9から理解されるように、本実施形態では、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ上記触媒温度CTが予め定めた温度Tc以上であっても、上記車両の速度が予め定めた車速以下であり且つ上記車両の減速状態における減速の度合が予め定めた減速の度合よりも大きい場合には燃料カットを禁止しないようになっている。そしてこのようにすることによって、図8を参照しつつ説明した実施形態と同様に、触媒の劣化の進行を抑制することができると共に、上記異臭をより確実に抑制することが可能となる。
すなわち、減速の度合が大きい場合には、ブレーキが作動された場合と同様、車両の速度が相当に低下するもしくは車両が停止状態になる可能性が高いといえる。したがって、本実施形態によれば、より異臭の問題の発生し易い時にのみ上記燃料カット禁止手段が燃料カットを禁止しないようにされて触媒の劣化の進行を抑制することができる。
また、減速の度合が大きい場合には、ブレーキが作動された場合と同様、車両停止までの時間が短いため、異臭を確実に抑制するためには、より迅速に触媒を酸化状態にする必要がある。この点、本実施形態によれば、減速の度合が大きいために車両停止までの時間が短く、より迅速に触媒を酸化状態にする必要がある時に燃料カットを実施して触媒へより多くの酸素を迅速に供給できるので、上記異臭をより確実に抑制することが可能となる。
次に図10を参照しつつ、更に他の実施形態について説明する。この実施形態においては、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置がニュートラルである場合に燃料カットが実施されない場合には、上記減速状態において、もしくは上記減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれるようになっている。
図10はこのような運転制御を実施するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図10を参照すると、この制御ルーチンは、図7に示されている制御ルーチンとほぼ同じであって、図7のステップ412に相当する位置にあるステップ712における制御内容が異なっている点と、図7のステップ413に相当するステップ713において触媒状態フラグXLEANが1ではないと判定された場合に行なわれる制御としてステップ714が設けられている点が異なっている。
すなわち、本実施形態において、ステップ703(図7のステップ403に相当)で車両が減速を開始した時の触媒の温度CTが予め定めた温度Tc以上であると判定された場合には、上記ステップ712に進み、変速機3のギヤ位置が高速ギヤまたはニュートラルにあるか否かが判定される。この判定は実質的には、変速機3のギヤ位置が中低速ギヤにあるか否かの判定である。
ステップ712において、変速機3のギヤ位置が高速ギヤまたはニュートラルにはない、すなわち中低速ギヤにあると判定された場合には、図7のステップ405に相当するステップ705に進んで上述したようなそこからの制御が実施される。一方、ステップ712において、変速機3のギヤ位置が高速ギヤまたはニュートラルにあると判定された場合には、図7のステップ413に相当するステップ713に進み、触媒状態フラグXLEANが1であるか否かが判定される。
ステップ713において、触媒状態フラグXLEANが1である(すなわち触媒状態が酸化状態である)と判定された場合には、図7のステップ425に相当するステップ725に進み、燃焼空燃比が理論空燃比になるようにした運転(理論空燃比運転)が実施され、本制御ルーチンが終了する。つまり、この場合には、減速状態において、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、空燃比が理論空燃比になるようにした運転を実施した状態で本制御ルーチンが終了する(より詳細には、本制御ルーチンが再度始めから実施される)。
一方、ステップ713において、触媒状態フラグXLEANが1ではない(すなわち触媒状態フラグXLEANが0であって触媒状態が還元状態である)と判定された場合にはステップ714に進み、変速機3のギヤ位置が高速ギヤにあるか否かが判定される。この判定は実質的には、変速機3のギヤ位置がニュートラルにあるか否かの判定であると言える。
ステップ714において、変速機3のギヤ位置が高速ギヤにある、すなわちニュートラルにはないと判定された場合には、図7のステップ415に相当するステップ715に進んで現在の車速SPDが予め定めた車速Shより大きいか否かが判定され、上述したようなそこからの制御が実施される。
一方、ステップ714において、変速機3のギヤ位置が高速ギヤにはない、すなわちニュートラルにあると判定された場合には、図7のステップ417に相当するステップ717に進んで燃料カット実施フラグXFCが0であるか否かが判定される。そして、そこで燃料カット実施フラグXFCが0ではない、すなわち燃料カットの実施中であると判定された場合には、上記ステップ705に進む。
一方、ステップ717において、燃料カット実施フラグXFCが0である、すなわち燃料カットの実施中ではないと判定された場合には、図7のステップ419に相当するステップ719に進み、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が実施され、更に図7のステップ421に相当するステップ721に進む。つまり、この場合には、減速状態において、もしくは減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、空燃比がリーンになるようにした運転を実施した状態でステップ721に進む。
以上の説明及び図10から理解されるように、本実施形態では、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置がニュートラルである場合に燃料カットが実施されない場合には、上記減速状態において、もしくは上記減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転が行なわれるようになっている。そしてこのようにすることによって、減速後における異臭の発生をより確実に抑制することが可能となる。
すなわち、変速機のギヤ位置が高速ギヤにあり且つ触媒の温度が予め定めた温度以上である場合には燃料カットが禁止されるようになっている場合において、変速機のギヤ位置がニュートラルである場合には燃料カットが禁止されることはないが、燃料カットを実施するための他の条件との関係で、結果として燃料カットが行なわれない場合も起こり得る。すなわち、例えば、本実施形態並びに上述した他の実施形態のように燃料カットの実施に伴うエンストの発生を防止するために、機関回転数NEが所定回転数以下である場合には燃料カットを実施しないように設定されている場合、機関回転数NEがこの所定回転数以下であると燃料カットは実施されない。変速機のギヤ位置がニュートラルにされた場合には機関回転数NEが急激に低下するため、上記のような設定なされている場合、結果として燃料カットが実施されない可能性が高い。そして、燃料カットが実施されないと、車両停止に至るまでの間、例えば燃焼空燃比を理論空燃比とした運転が行なわれる可能性があり、この場合には触媒を流通する排気ガスの空燃比がリーンにならないので、結果として車両停止時において触媒に保持されていた硫黄酸化物が硫化水素となって外部へ放出されやすい状態となり、異臭の問題が生ずる可能性がある。
これに対し、本実施形態では、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置がニュートラルである場合に燃料カットが実施されない場合には、上記減速状態において、もしくは上記減速状態とそれに続くアイドリング状態とにおいて、燃焼空燃比がリーンになるようにした運転(リーン運転)が行なわれるようになっている。上記リーン運転が行なわれると、触媒に流入する排気ガスの空燃比がリーンになるため、触媒に酸素が供給される。したがって、本実施形態によれば、上記燃料増量運転が実施された後予め定めた期間内に減速状態になった場合において、変速機のギヤ位置がニュートラルである場合においても、上記リーン運転によって触媒に確実に酸素を供給することができ、その結果減速後に触媒が還元状態になっていて硫化水素が外部へ放出されやすい状態となることを確実に抑制することができる。そして、これにより、減速後における異臭の発生をより確実に抑制することができる。