JP2005343226A - 船外機のオイルパン構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】アシスト装置を装備することなく容易に人力でチルトアップ操作を履行可能な船外機のオイルパン構造を提供するにある。
【解決手段】エンジンの下部にオイルパン4を備えた4サイクルエンジンを搭載すると共に、ブラケット装置を介して船体に装着された船外機において、オイルパン4の前側に潤滑オイルの貯溜部81を形成し、この貯溜部81の後方に排気通路83および冷却水の通路124を形成したものである。
【選択図】 図10

Description

本発明は、船外機のオイルパン構造に関する。
船外機は、未使用時にはブラケット装置のチルト軸を中心にチルトアップした状態で保管することが一般的である。重量のかさむ中・大型の船外機はこのチルトアップ操作を電気的に行うPTT装置(パワー・チルト&トリム)装置が備えられている。
一方、小・中型の船外機にはこのようなPTT装置が備えられておらず、専ら人力でチルトアップ操作を行っているが、例え小・中型の船外機であっても相当な重量があり、人力でチルトアップ操作を行うのが困難な場合がある。そこで、人力によるチルトアップ操作を補助するために、例えばガスアシストシリンダ等のアシスト装置を装備した船外機がある。(例えば特許文献1参照)。
特開平7−81682号公報(段落番号[0018]、[0035]および図6)
しかしながら、このようなアシスト装置を装備するとチルトアップ操作は容易になる反面、船外機全体の重量が増加し、またコストも増加する。
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、アシスト装置を装備することなく容易に人力でチルトアップ操作を履行可能な船外機のオイルパン構造を提供することを目的とする。
本発明に係る船外機のオイルパン構造は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、エンジンの下部にオイルパンを備えた4サイクルエンジンを搭載すると共に、ブラケット装置を介して船体に装着された船外機において、上記オイルパンの前側に潤滑オイルの貯溜部を形成し、この貯溜部の後方に排気通路および冷却水の通路を形成したものである。
また、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、上記船外機を、上記ブラケット装置に設けられたチルト軸を軸に上下方向に傾動可能に軸支すると共に、上記エンジン下面と上記オイルパン上面との合せ面を、上記チルト軸を通る水平線より上方に設けたものである。
さらに、上述した課題を解決するために、請求項3に記載したように、アッパーマウントユニットを介して上記船外機を上記ブラケット装置に取り付けると共に、このアッパーマウントユニットの取り付け部を上記オイルパンの、上記潤滑オイル貯溜部の両側部に形成したものである。
そして、上述した課題を解決するために、請求項4に記載したように、上記エンジンの動弁機構をOHV形式としたものである。
本発明に係る船外機のオイルパン構造によれば、重心がチルト軸に近づくので、従来必要であったアシスト装置等を使用しなくても船外機のチルトアップ操作が容易に行える。また、重心を高めることができて船外機のチルトアップ操作を容易にする。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明を適用した船外機の実施形態を示す左側面図であり、図1に示すように、この船外機1は水冷4サイクルV型二気筒エンジン2を備える。このエンジン2はその内部にクランクシャフト3が略垂直に配置されたいわゆる縦型エンジンである。
エンジン2の下方には潤滑オイル(図示せず)を貯留するオイルパン4が配置される。そして、エンジン2およびオイルパン4の周囲はエンジンカバー5によって覆われる。エンジンカバー5は、例えば上下に分割可能に形成され、エンジン2の下半分およびオイルパン4の周囲を覆うロアーカバー6と、このロアーカバー6に上方から覆い被さってエンジン2の上半分を覆うアッパーカバー7とから構成される。ロアーカバー6は例えば左右に分割可能に構成され、例えば船外機1側に固定されると共に、アッパーカバー7はロアーカバー6に上方から着脱自在に取り付けられる。さらに、アッパーカバー7の後上方にはエンジンカバー5内に外気を導く外気取り入れ口8が後方に向かって開口するように設けられる。
オイルパン4の下方にはドライブシャフトハウジング9が設置される。オイルパン4およびドライブシャフトハウジング9内にはエンジン2の出力軸であるドライブシャフト10が略垂直に配置され、その上端部がクランクシャフト3の下端部に連結される。ドライブシャフト10はドライブシャフトハウジング9内を下方に向かって延び、ドライブシャフトハウジング9の下部に設けられたギヤケース11内のベベルギヤ12およびプロペラシャフト13を介して推進装置であるプロペラ14を駆動するように構成される。
船外機1にはブラケット装置15が取り付けられ、このブラケット装置15を介して船外機1が船体16のトランサム16aに装着される。ブラケット装置15は主にスイベルブラケット17およびクランプブラケット18から構成され、スイベルブラケット17は船体16のトランサム16aに、クランプブラケット18は船外機1にそれぞれ固定される。
スイベルブラケット17は、詳細には図示しないが左右一対のクランプブラケット18間に架設されたチルト軸19を軸に上下方向に傾動可能に軸支され、このスイベルブラケット17内にステアリングシャフト20が鉛直方向に、且つ回動自在に軸支される。そして、このステアリングシャフト20の上下端にステアリングブラケット21およびマウントブラケット22がそれぞれ回動一体に設けられる。
エンジン2下面とオイルパン4上面との合せ面23は、上記チルト軸19を通る水平線24より上方に設けられる。また、オイルパン4には左右一対のアッパーマウントユニット25が設けられ、ステアリングブラケット21に連結される。さらに、ドライブシャフトハウジング9の両側部には一対のロアーマウントユニット26が設けられ、マウントブラケット22に連結される。
ステアリングブラケット21の前端には前方に向かって延びるステアリングハンドル(図示せず)が取り付けられ、このステアリングハンドルを左右に振ることにより船外機1はブラケット装置15に対しステアリングシャフト20を中心に左右に操舵可能になる。また、チルト軸19を中心に上方に向かってチルトおよびトリム操作も可能になる。さらに、この船外機1のブラケット装置15には上述した操舵操作の荷重を任意に設定可能なステアリングアジャスタ27も備えられる。なお、ステアリングブラケット21はステアリングハンドルが取り付けられる代わりに、図示しないリンク機構やケーブル等を介して図示しない操舵輪に連結されるようにしてもよい。
エンジン2は上下方向に分割可能に構成され、オイルパン4の上方に設置されるクランクケース28と、このクランクケース28の上面に設置されるシリンダブロック29とから構成される。上述したように、エンジン2内にはクランクシャフト3が略垂直に配置され、クランクシャフト3の下部はクランクケース28に、クランクシャフト3の上部はシリンダブロック29にそれぞれベアリング30,31によって軸支される。
クランクシャフト3の上端部はシリンダブロック29外上方に突出し、この突出した端部に発電用のフライホイールマグネト装置32が装着される。また、フライホイールマグネト装置32の上面にはエンジン2を手動で始動させる手段であるリコイルスタータ33が配置される。さらに、これらのリコイルスタータ33およびフライホイールマグネト装置32はフライホイールカバー34によって上方から覆われる。そして、リコイルスタータ33作動用のスタータグリップ35がエンジンカバー5の前側に突出して設けられる。一方、シリンダブロック29の前部にはエンジン2を自動で始動させる手段であるスタータモータ36が配置される。なお、リコイルスタータ33およびスタータモータ36から構成されるエンジン始動手段は必ずしも両方必要ではなく、いずれか一方だけでもよい。
図2はエンジン2の右側面図であり、図3はエンジン2の後面図である。また、図4は図1のIV矢視図、すなわちエンジン2の上面図である。さらに、図5はリコイルスタータ33、フライホイールマグネト装置32およびフライホイールカバー34を取り外した状態のエンジン2上面図である。そして、図6は図1のVI−VI線に沿う断面図である。
図1〜図6に示すように、シリンダブロック29には、船外機1の幅方向且つ後方に向かって平面視V字状に拡開する左右一対のシリンダ37L,37Rが形成され、各シリンダ37L,37Rの後方にはシリンダヘッド38L,38Rが、各シリンダヘッド38L,38Rの後方にはヘッドカバー39L,39Rがそれぞれ水平方向に接続されて設けられる。また、左右のシリンダ37L,37Rのうちの一方、本実施形態においては船体16の進行方向に向かって右側(右舷側)のシリンダ37Rは左側(左舷側)のシリンダ37Lより上方にオフセットして配置される。
各シリンダヘッド38L,38Rにはシリンダブロック29の各シリンダ37L,37Rに整合する燃焼室40がそれぞれのシリンダ37L,37Rに対応して形成され、各燃焼室40にはそれぞれ外方から点火プラグ41が結合される。そして、シリンダ37L,37R内にはピストン42が水平方向に摺動自在に挿入され、ピストン42とクランクシャフト3とがコンロッド43によって連結されてピストン42の往復ストロークがクランクシャフト3の回転運動に変換されるようになっている。
一方、シリンダヘッド38L,38R内には燃焼室40に繋がる吸気ポート44と排気ポート45とが形成される。吸気ポート44はシリンダヘッド38L,38R内を燃焼室40から上方に向かって延び、シリンダヘッド38L,38Rの上面にその入口46が開口される。一方、排気ポート45はシリンダヘッド38L,38R内を燃焼室40から下方に向かって延び、シリンダヘッド38L,38Rの下面にその出口47が開口される。また、シリンダヘッド38L,38R内には両ポート44,45を開閉する吸・排気バルブ48,48が配置され、さらにクランクシャフト3後方の、左右のシリンダ37L,37Rの分岐部、すなわちVバンク49のシリンダブロック29側内部にはこれらのバルブ48,48を開閉させるカムシャフト50がクランクシャフト3と平行に、すなわち略垂直に配置される。
クランクシャフト3の下部にはカムシャフト50を駆動するカムドライブギヤ51が設けられると共に、カムシャフト50の下部にはカムドリブンギヤ52が設けられ、両ギヤ51,52の間に配置されたカムアイドルギヤ53を介して両ギヤ51,52は作動連結され、クランクシャフト3の回転がカムシャフト50に伝達される。また、カムシャフト50には上から順に右舷側シリンダ37R吸気用カム54a、左舷側シリンダ37L吸気用カム54b、右舷側シリンダ37R排気用カム54c、左舷側シリンダ37R排気用カム54d、そして後述する燃料ポンプ55の駆動用カム54eが配設される。なお、カムアイドルギヤ53はクランクケース28側にて片持ち支持状態で軸支されると共に、上方にオフセット配置されたシリンダ37R側、本実施形態においては船体16の進行方向に向かって右側(右舷側)にオフセットして配置される。
そして、このエンジン2はOHV(オーバーヘッドバルブ)形式の動弁機構56を備え、カムシャフト50が回転することによりカム54a〜54dのプロフィールがシリンダ37L,37Rの、Vバンク49側の側部に配置されたプッシュロッド57をその軸方向に進退させ、シリンダヘッド38L,38R内に揺動自在に設けられるロッカアーム58を揺動運動させる。そして、このロッカアーム58の揺動運動によってシリンダヘッド38L,38R内の吸・排気バルブ48,48が開閉操作される。
ところで、カムシャフト50の内部にはエンジン2の始動時に燃焼室40内の圧縮を抜いて始動性を容易にするデコンプ(デコンプレッション)装置59が配設される。
図7は、カムシャフト50の拡大縦断面図である。また、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図であり、図9(a)および(b)は図7のIX−IX線に沿う断面図である。図7〜図9に示すように、カムシャフト50はその内部が中空構造に形成され、この空間内にやはりその内部が中空構造に形成されたデコンプカムシャフト60が周方向に回動自在に挿入される。なお、中空構造に形成された両方のシャフト50,60の内部空間はオイル通路として機能する。
一方、カムシャフト50に設けられたカムドリブンギヤ52上には遠心力で作動するプレート状のセントリフューガルアーム62(以下単にアームと略する)が設けられる。アーム62はその基端部がカムドリブンギヤ52上に揺動自在に軸着されると共に、自由端にはスプリング63が接続される。アーム62はカムシャフト50が停止時、すなわちエンジン2が停止時には図8の実線に示すようにカムシャフト50に当接するように付勢される一方、エンジン2が始動してカムシャフト50が回転し、所定の回転数に達すると、アーム62は遠心力によって基端部を中心にカムドリブンギヤ52の径方向に揺動する(図8の二点鎖線で示す)。
デコンプカムシャフト60にはその径方向に突出するピン64が設けられ、このピン64の突出端にアーム62の自由端部が係合される。そしてエンジン2が始動して所定の回転数においてアーム62が遠心力によって揺動すると、このアーム62の揺動に連動してデコンプカムシャフト60がカムシャフト50の内部で周方向に回動する。
一方、カムシャフト50上に設けられた複数のカム54a〜54eのうち、例えば右舷側シリンダ37R排気用カム54cのカムベースサークル65にはその外周面と内周面とを連通する穴66が穿設され、この穴66にはスチールボール67が挿入されてストッパ部材68によりこの穴66内に保持される。
エンジン2が停止時から所定の回転数に達するまでは、図9(a)に示すように、スチールボール67はデコンプカムシャフト60の外周面によってカムベースサークル65の外周面から突出するように押され、この突出部分がプッシュロッド57を押すことによりエンジン2の始動時に燃焼室40内の圧縮を抜くように作動する。一方、エンジン2が始動してカムシャフト50が回転し、所定の回転数に達すると、アーム62の揺動に連動してデコンプカムシャフト60をカムシャフト50の内部で周方向に回動させるが、デコンプカムシャフト60の、外周面の一部には切欠69が形成され、図9(b)に示すように、デコンプカムシャフト60が回動してその切欠69の位置が穴66の位置と一致することによりスチールボール67は穴66内に収納され、カムベースサークル65の外周面から突出しなくなってデコンプ作動を中止する。
両シリンダヘッド38L,38Rの上面に開口された吸気ポート44の入口46には吸気マニフォールド70の下流側が接続される。また、Vバンク49のエンジン2上方、且つエンジン中心線71上には一基のキャブレタ72がその吸気通路73を前後方向に向けた状態で配置され(図4参照)、キャブレタ72の後方側である吸気通路73の下流側に吸気マニフォールド70の上流側が接続される。吸気マニフォールド70は、キャブレタ72との接続部から後方に延びた後、途中で左右に分岐して下方に向かって湾曲しながらそれぞれの吸気ポート44の入口46に接続される。なお、詳細には図示しないが、キャブレタ72の代わりに燃料噴射装置を備えたスロットルボディを装備することも可能である。
キャブレタ72前方(上流側)の、前記フライホイールカバー34上面には吸気サイレンサ74が配置される。吸気サイレンサ74の空気取り入れ口75は例えば右舷側に下方に向けて設けられ、キャブレタ72の右側方の空間から空気を取り入れるように構成される。また、吸気サイレンサ74の内部は縦壁76によって迷路構造の空気通路77に構成され、この空気通路77の下流端にキャブレタ72の吸気通路73の上流側が接続される。さらに、アッパーカバー7の内面にはその後上方に設けられた外気取り入れ口8から取り入れた外気をエンジンカバー5内に導く外気導入ダクト78が設けられ、この外気導入ダクト78はキャブレタ72を挟んで吸気サイレンサ74の空気取り入れ口75の反対側、本実施形態においては左舷側に配置される。
水平方向に接続されたシリンダブロック29とシリンダヘッド38L,38Rとの下面には略板状の前記クランクケース28が接続される。クランクケース28にはその上下方向に貫通する左右一対の排気通路79が形成され、これらの排気通路79の上側開口がシリンダヘッド38L,38Rの下面に開口した排気ポート45の出口47に接続される。そして、このクランクケース28の下面に前記オイルパン4の上面が接続される。
図10はオイルパン4の上面図であり、図11はオイルパン4の下面図である。図1、図10および図11に示すように、オイルパン4の前部には前記ドライブシャフト10が挿通されるシャフト孔80が上下方向に穿設され、このシャフト孔80の後方、オイルパン4の前部寄りに潤滑オイルの貯溜部81が形成される。また、潤滑オイル貯溜部81の両側部には前記左右一対のアッパーマウントユニット25の取り付け部82が形成され、これらの取り付け部82の斜め後ろ後方にはこのオイルパン4を上下方向に貫通する左右一対の排気通路83が形成される。
オイルパン4に形成されたこれらの排気通路83の上部開口はクランクケース28の下面に開口した排気通路79の出口に接続されると共に、オイルパン4に形成された排気通路83の下部開口はドライブシャフトハウジング9内に臨んで開口される。さらに、オイルパン4の中央最後部には排気レリーズ室84が形成される。
シリンダブロック29の左舷側側面にはオイルパン4内に潤滑オイルを補給するためのオイル給油口85が形成され、オイルレベルゲージ86を一体に備えたオイルキャップ87によって着脱自在に塞がれる。そして、オイルパン4内の潤滑オイルは潤滑装置によってエンジン2内部の要部に導かれる。カムシャフト50の下端に位置するクランクケース28の下面には凹み88が鋳抜き形成され、その開口部がプレート89によって覆われて凹み88の内部にポンプ室90が形成されると共に、ポンプ室90内にはカムシャフト50の下端に連結されて駆動されるオイルポンプ91が収納される。
一方、上方にオフセット配置された、本実施形態においては船体16の進行方向に向かって右側(右舷側)のシリンダ37R側面には潤滑オイルを濾過するオイルフィルタ92が配置される。オイルフィルタ92は、シリンダブロック29の右舷側側面にエンジン2前方に向けて、且つその軸線93が右舷側シリンダ37Rの軸線94と直角になるように配置されると共に、略水平方向に着脱可能に取り付けられる。
そして、詳細には図示しないが、上記ポンプ室90からこのオイルフィルタ92への第一オイル通路95がポンプ室90同様クランクケース28の下面に鋳抜き形成された凹み(図示せず)をプレート89によって覆うことにより形成される。また、この第一オイル通路95の下流端からは第二オイル通路96が上方にオフセット配置された右舷側のシリンダ37R側方のシリンダブロック29内をオイルフィルタ92に向かって延びる。なお、詳細には図示しないが第一オイル通路95の途中にはオイルリリーフ孔が上向きに開口したチェックバルブ(いずれも図示せず)が配置される。
オイルフィルタ92によって濾過された潤滑オイルは、シリンダブロック29内にクランクシャフト3と平行に延設されたメインギャラリ97を経てクランクシャフト3の上下を軸支するベアリング30,31に供給される。クランクシャフト3の上側を軸支するベアリング30に供給された潤滑オイルの一部はクランクシャフト3内に形成されたオイル穴98を通ってクランクピン99に供給され、コンロッド43の大端部43aを潤滑する。
また、クランクシャフト3の下側を軸支するベアリング31に供給された潤滑オイルの一部はクランクケース28内に形成された第三オイル通路100を通ってカムシャフト50の下側ジャーナル50aに供給される。前述したように、カムシャフト50およびデコンプカムシャフト60の内部は中空構造に形成されてオイル通路として機能しており、カムシャフト50の下側ジャーナル50aに供給された潤滑オイルはこのジャーナル50aに形成されたオイル穴101から両方のシャフト50,60の内部を通ってカムシャフト50の上端から溢れ出してカムシャフト50上に形成された各カム54a〜54eを潤滑する。
一方、ロッカアーム58等の動弁系部品の潤滑はブローバイガスをシリンダヘッド38L,38Rに導くことによって行われる。ブローバイガスは、シリンダ37L,37R内で発生する圧力を伴ったガスがピストン42とシリンダ37L,37Rとの間の隙間を通って微量づつクランクケース28内に漏出したものであり、プッシュロッド57の収納スペース102等を通ってシリンダヘッド38L,38R内に導かれる。ブローバイガス中には噴霧状のオイル分が混入しているため、オイル分をガス分から分離するためのブリーザ室103が設けられる。ブリーザ室103は、図5に示すように、両シリンダヘッド38L,38Rの上面に開口された吸気ポート44の入口近傍に形成された迷路構造の凹部104を、図4に示すように、吸気マニフォールド70のシリンダヘッド38L,38Rへの取り付け部82に一体に形成された蓋体105で覆うことにより形成される。
ブリーザ室103内によって気液分離されたブローバイガスは、オイル分がシリンダヘッド38L,38R内に還流される。また、吸気マニフォールド70のシリンダヘッド38L,38Rへの取り付け部82の蓋体105および吸気サイレンサ74にはそれぞれユニオン106,107が設けられ、これらのユニオン106,107がブリーザホース108によって接続されてブリーザ室103内のガス分は吸気サイレンサ74に還流させて燃焼室40内にて再燃焼される。
ところで、この船外機1に搭載されるエンジン2は、前述したように水冷式の冷却構造を備える。冷却装置の具体的な構造例としては、例えばギヤケース11の側面に取水口109が形成され、この取水口109から取り入れられる海水や湖水等の冷却水がドライブシャフト10によって駆動されるウォータポンプ110によってウォータチューブ111を介してオイルパン4の下部に向かって圧送される。
オイルパン4の下部に導かれた冷却水は、オイルパン4下面に形成された冷却水導入口112から通路130を経てオイルパン4の右舷側面に形成されたウォータプレッシャバルブ室113へ導かれる。ウォータプレッシャバルブ室113には分岐穴114が形成され、冷却水圧が所定値以上となるとウォータプレッシャバルブ115が開いて、ウォータプレッシャバルブ115を通過した冷却水は戻し穴131からドライブシャフトハウジング9内に戻されると共に、冷却水圧が所定値以下でウォータプレッシャバルブ115が閉じている場合、冷却水はウォータプレッシャバルブ室113をそのまま通過して分岐穴114からオイルパン4の底面や側面に形成された冷却水通路116を経由してオイルパン4を上下方向に貫通する左右一対の排気通路83の周囲に形成された排気冷却用ウォータジャケット117に導かれる。
冷却水はその後これらの排気通路83の全周を冷却しながら、クランクケース28の排気通路79の周囲に形成された他の排気冷却用ウォータジャケット118に導かれ、シリンダヘッド38L,38Rおよびシリンダ37L,37Rに形成されたエンジン2冷却用ウォータジャケット119に導かれ、エンジン2を冷却する。エンジン2を冷却した冷却水は、左右のシリンダ37L,37R上部からVバンク49間中央に配置されたサーモスタット120を収納するサーモスタット室121に導かれる。サーモスタット室121に導かれた冷却水は、所定の水温以上に達するとサーモスタット120を通過し、Vバンク49間のシリンダブロック29に一体に形成された冷却水戻り通路122を通り、クランクケース28の左右の排気通路79間に形成された冷却水戻り通路123、オイルパン4の潤滑オイルの貯溜部81後方に位置する左右の排気通路83間に形成された冷却水戻り通路124を経てドライブシャフトハウジング9内に排水され、排気ガスと共に機外に排出される。
左右のシリンダ37L,37Rに挟まれたVバンク49間、且つ吸気マニフォールド70下方の空間には燃料系の補器を構成する機械式の燃料ポンプ55が配置され、プッシュロッド125を介してカムシャフト50に形成された燃料ポンプ駆動用カム54eによって駆動される。また、燃料ポンプ55上方の、左右のシリンダヘッド38L,38R間には他の燃料系の補器を構成する燃料フィルタ126が配置される。
ところで、この船外機1はその整備性の向上を図るため、例えば図2および図3に示すように、エンジンカバー5の上下の分割ライン、すなわちアッパーカバー7とロアーカバー6との合せ面127は、低い方にオフセットされた、本実施形態においては右側シリンダ37Rのヘッドカバー39Rの、外方下側の締結部材(例えばボルト128)位置、オイルフィルタ92、オイルレベルゲージ86を備えたオイルキャップ87の把持部87aおよび点火プラグ41より低い位置になるよう後下がりに設定され、着脱可能なアッパーカバー7を取り外すことのみで各部へのアクセスを容易にするものである。
次に、本実施形態の作用について説明する。
オイルパン4の前側に潤滑オイルの貯溜部81を形成し、この貯溜部81の後方にこのオイルパン4を上下方向に貫通する左右一対の排気通路83およびこれらの排気通路83間に形成された冷却水戻り通路124を形成したことにより、重量物である潤滑オイルが船外機1の前側に溜まる。その結果、重心がチルト軸19に近づくので、従来必要であったアシスト装置(図示せず)等を使用しなくても船外機1のチルトアップ操作が容易に行える。
また、エンジン2下面とオイルパン4上面との合せ面23を、チルト軸19を通る水平線24より上方に設けたことにより、オイルパン4が高い位置に配置されることになる。その結果、重心が高くなるので、やはり船外機1のチルトアップ操作が容易に行える。
さらに、オイルパン4の、潤滑オイル貯溜部81の両側部に左右一対のアッパーマウントユニット25の取り付け部82を形成したことにより、潤滑オイルを貯溜部81内においてさらに前側に溜めることができ、重心がさらにチルト軸19に近づく。
そして、エンジン2にOHV(オーバーヘッドバルブ)形式の動弁機構56を装備したことにより、重量物であるカムシャフト50を前方のクランクシャフト3寄りに配置でき、また、シリンダヘッド38L,38Rやヘッドカバー39L,39Rを小型軽量化することもできるので、重心が前方寄りになって、従来必要であったアシスト装置等を使用しなくても船外機1のチルトアップ操作が容易に行える。
本発明に係る船外機のオイルパン構造の一実施形態を示す船外機の左側面図。 エンジンの右側面図。 エンジンの後面図。 図1のIV矢視図(エンジンの上面図)。 リコイルスタータ、フライホイールマグネト装置およびフライホイールカバーを取り外した状態のエンジン上面図。 図1のVI−VI線に沿う断面図。 カムシャフトの拡大縦断面図。 図7のVIII−VIII線に沿う断面図。 (a)および(b)は図7のIX−IX線に沿う断面図。 オイルパンの上面図。 オイルパンの下面図。
符号の説明
1 船外機
2 V型エンジン
3 クランクシャフト
4 オイルパン
15 ブラケット装置
16 船体
19 チルト軸
23 オイルパン上面とエンジン下面との合せ面
24 チルト軸を通る水平線
25 アッパーマウントユニット
28 クランクケース
29 シリンダブロック
37L,37R シリンダ
38L,38R シリンダヘッド
49 Vバンク
56 OHV形式の動弁機構
81 潤滑オイルの貯溜部
82 アッパーマウントユニットの取り付け部
83 オイルパン内の排気通路
124 オイルパン内の冷却水戻り通路

Claims (4)

  1. エンジンの下部にオイルパンを備えた4サイクルエンジンを搭載すると共に、ブラケット装置を介して船体に装着された船外機において、上記オイルパンの前側に潤滑オイルの貯溜部を形成し、この貯溜部の後方に排気通路および冷却水の通路を形成したことを特徴とする船外機のオイルパン構造。
  2. 上記船外機を、上記ブラケット装置に設けられたチルト軸を軸に上下方向に傾動可能に軸支すると共に、上記エンジン下面と上記オイルパン上面との合せ面を、上記チルト軸を通る水平線より上方に設けた請求項1記載の船外機のオイルパン構造。
  3. アッパーマウントユニットを介して上記船外機を上記ブラケット装置に取り付けると共に、このアッパーマウントユニットの取り付け部を上記オイルパンの、上記潤滑オイル貯溜部の両側部に形成した請求項1または2記載の船外機のオイルパン構造。
  4. 上記エンジンの動弁機構をOHV形式とした請求項1、2または3記載の船外機のオイルパン構造。
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