JP4206763B2 - 船外機 - Google Patents

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JP4206763B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気の熱害を回避するように構成された船外機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば特開平5−278684号公報(特許文献1参照)や、特開平9−41930号公報(特許文献2参照)に記載されているように、4サイクル形式のV型エンジンが縦置きに搭載された従来の船外機の多くは、エンジンが載置されるエンジンホルダーの左右両側を主排気通路が縦貫し、その間に挟まれてオイルパンが設置されるレイアウトとなっている。
【0003】
また、特開平9−41930号公報に示されるように、船舶の停船時に排気ガスを外部に排出するためのレリーズ排気通路がエンジンホルダーとドライブシャフトハウジングとの間に画成される空間を利用して形成され、比較的低い位置に設けられていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−278684号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−41930号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにオイルパンが左右両側の主排気通路の間に挟まれて設置されていたため、排気熱によりオイルパン内のオイル温度が上昇しやすいという問題があった。
【0007】
同じく、船外機の機体と船尾側への固定部であるクランプブラケットとを連結するエンジンマウントにも排気熱がエンジンホルダーを伝わって及びやすく、ゴムブッシュを備えてなるエンジンマウントの劣化が早められる傾向があった。
【0008】
また、レリーズ排気通路が比較的低い位置に設けられていたため、船体の喫水位置が高い場合にはレリーズ排気通路の出口に加わる水圧が高くなり、例えば低速航行中に追い波を受けた場合にエンスト等に至る懸念があった。
【0009】
さらに、従来の多くの船外機では、エンジンを冷却し終えた冷却水がほぼオイルパンレベルの高さで主排気通路(排気膨張室)に合流していたため、その合流位置が高く、これにより排気ガスが水を巻き込みやすく、その結果レリーズ排気通路より水が放出されて音を発生するという問題があった。
【0010】
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、オイルパン内のオイルおよびエンジンマウントに排気熱による熱害が及ぶことを阻止するとともにレリーズ排気をスムーズにし、かつレリーズ排気通路からの水の放出を防止し、併せてエンジンのコンパクト化および部品点数の削減と、組立性、整備性、製造性ならびにレイアウト性の向上を図ることのできる船外機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る船外機は、請求項1に記載したように、エンジンの下部にエンジンホルダーとオイルパンブロックとドライブシャフトハウジングが順に組み付けられ、上記エンジンの排気ガスが上記エンジンホルダーとオイルパンブロックの内部に設けられた主排気通路を通って上記ドライブシャフトハウジング内部の排気膨張室に導かれるように構成された船外機において、上記オイルパンブロックの内部を隔壁によって前後複数の有底箱状の部屋に区画し、前方の部屋を排気室とし、後方の部屋をオイルパンとする一方、上記排気室内に上記オイルパンブロックとは別体に形成した排気ブロックを設置し、この排気ブロックの内部に上記主排気通路を形成するとともに、上記排気ブロックの周囲と排気室の内壁との間に主排気通路の周囲を取り囲む冷却水貯留部を設け、この冷却水貯留部にエンジン冷却水の一部を通して冷却水を満たしたことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、排気室とオイルパンとが区画されることにより排気熱がオイルパンに伝わりにくくなるため、排気熱によるオイルパン内のオイル温度上昇を防止することができる。
【0014】
また、上記構成とすれば、主排気通路の周囲を取り囲む冷却水貯留部に冷却水が満たされることにより排気熱がオイルパンに対して断熱されるため、排気熱によるオイルパン内のオイル温度上昇を一層効果的に防止することができる。
【0015】
さらに、上記構成によれば、前記オイルパンブロックの排気室を有底箱状に形成し、オイルパンブロックとは別体に形成した排気ブロックを排気室内に設置してこの排気ブロックの内部に前記主排気通路を形成し、排気ブロックの周囲と排気室の内壁との間に前記冷却水貯留部を設けたため、主排気通路回りをコンパクトに構成して組立性の向上を図るとともに、オイルパンブロックの中空形状を無くして製造を容易にすることができる。
【0016】
そして、本発明に係る船外機は、請求項2に記載したように、前記排気ブロックの内部に上がり冷却水室とレリーズ排気膨張室とを形成し、上がり冷却水室に冷却水を満たしたことを特徴とするため、主排気通路の効率の良い冷却と排気ブロック回りのコンパクト化と部品点数の減少に貢献することができる。
【0017】
また、本発明に係る船外機は、請求項3に記載したように、前記エンジンホルダーに設けられるエンジンマウントを前記冷却水貯留部と前記上がり冷却水室の少なくとも一方の上方に配置したことを特徴とするため、排気ガスの熱がエンジンホルダーを伝わってエンジンマウントに及びにくくなり、よってエンジンマウントの早期劣化を回避することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る船外機は、請求項4に記載したように、前記エンジンホルダーの内部にレリーズ排気通路を形成したことを特徴とするため、レリーズ排気通路の位置が高くなり、船体の喫水位置が高い場合でもレリーズ排気通路に水がかかりにくく、レリーズ排気をスムーズにすることができる。
【0019】
そして、本発明に係る船外機は、請求項5に記載したように、前記エンジンを冷却し終えた冷却水の流下通路の出口を前記オイルパンを挟んで前記排気室の反対側に設けたことを特徴とし、これによれば上記流下通路の出口と主排気通路との間にオイルパンが介在し、その結果エンジンを冷却し終えた冷却水が排気ガスに合流する位置がオイルパンよりも下方の低い位置となるため、排気ガスが水を巻き込みにくくなってレリーズ排気通路より水が放出されにくくなり、結果的にレリーズ排気通路からの水の放出を防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る船外機は、請求項6に記載したように、前記エンジンホルダーの後部にレリーズ排気通路と冷却水経路洗浄用のフラッシュ通路とを開口させたことを特徴とし、これによればレリーズ排気通路とフラッシュ通路とが共に後方に開口するので整備性およびレイアウト性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る船外機の一例を示す左側面図である。この船外機1は、その最上部にエンジン2が搭載され、エンジン2の下部にエンジンホルダー3とオイルパンブロック4とドライブシャフトハウジング5とロアーハウジング6が順に組み付けられ、エンジン2からドライブシャフトハウジング5の中腹までが合成樹脂製のアッパーカバー8とミドルカバー9とロアーカバー10により覆われている。
【0023】
エンジン2は、例えば水冷4サイクルV型6気筒形式であり、そのクランクシャフト12を鉛直方向に向けて縦置き、かつクランクケース13が前側、左右一対のシリンダーヘッド14が後側となるようにエンジンホルダー3上に固定されている。
【0024】
クランクシャフト12の回転はドライブギヤ16とドリブンギヤ17に減速されてドライブシャフト18に伝達され、ドライブシャフト18の回転がべべルギヤ機構19を経てプロペラシャフト20とプロペラ21に伝達される。そして、常に一方向に回転するドライブシャフト18の回転が前後進切換機構22により正逆に切り替えられ船体を前進または後進させる。
【0025】
エンジンホルダー3とドライブシャフトハウジング5には、それぞれ左右一対のエンジンマウント24,25が設けられ、図2と図3にも示すように、上側のエンジンマウント24はアッパーステアリングブラケット26に連結され、下側のエンジンマウント25はロアーステアリングブラケット27に連結されている。エンジンマウント24は筒状のゴムクッション28にアンカーボルト29が挿通された構成である。
【0026】
アッパーステアリングブラケット26とロアーステアリングブラケット27は鉛直に延びるパイロットシャフト31の上端と下端にそれぞれ回転一体に固定され、パイロットシャフト31はスイベルブラケット32に回転自在に軸支され、スイベルブラケット32がスイベルシャフト33を介してクランプブラケット34に軸支され、クランプブラケット34が船体の船尾部35に固定される。
【0027】
アッパーステアリングブラケット26には図示しない操舵装置のリンケージが接続されて船外機1の操舵がなされる。また、船体に対する船外機1の角度を調整する図示しないパワーチルトアンドトリム機構がクランプブラケット34付近に設けられる。
【0028】
図3は図2のIII-III矢視によるエンジンホルダー3の上面図、図4は図2のIV-IV矢視によるエンジンホルダー3の下面図、図5は図2のV-V矢視によるオイルパンブロック4の上面図、図6は図2のVI矢視によるエンジンホルダー3の後面図である。
【0029】
図3に示すように、エンジンホルダー3の上面にはエンジン2の下面に密着する平坦なシール面40が形成され、上面略中央部には上側のエンジンマウント24,24が設置されるマウントホルダー41が形成され、このマウントホルダー41はマウントリッド42で液密に閉塞される。マウントホルダー41とマウントリッド42にはドライブシャフト挿通口43が形成され、ここにドライブシャフト18が挿通される。
【0030】
また、マウントホルダー41の左右両側方に排気管接続口45,45が形成されてエンジン2の左右バンクに設けられた図示しない排気マニフォールドに整合し、その周囲にはエンジン2側に連通する冷却水ジャケット46,46が形成されている。
【0031】
一方、図4に示すようにエンジンホルダー3の下面にはオイルパンブロック4の上面に密着するシール面48と、後述する排気ブロック76の上面に密着するシール面49が形成されている。また、シール面49に囲まれるようにして幅方向中央部にレリーズ排気通路入口51が下方に開口するように形成され、このレリーズ排気通路入口51からレリーズ排気通路52が後方に向って延びている。
【0032】
レリーズ排気通路52はエンジンホルダー3の幅方向中央部の内部に形成され、その後端がエンジンホルダー3の後面に開口する(図6参照)。さらにエンジンホルダー3の内部には冷却水経路洗浄用のフラッシュ通路53(図4参照)と、エンジン2を冷却し終えた冷却水を下方に流すための流下通路54,55(図2、図6参照)が水平に形成され、これらの通路53,54,55もエンジンホルダー3の後面に開口している。
【0033】
図2に示すように下側の流下通路55はL字形に屈折して図4と図7にも示すようにエンジンホルダー3最後部の下面に開口し、オイルパンブロック4の後部には流下通路55に整合する流下通路56が形成されている。
【0034】
エンジンホルダー3の内部に形成された上下の流下通路54,55はエンジンホルダー3の後面にリヤカバー58が固定されることにより1本の連続した通路となる。またリヤカバー58にはフラッシュ通路53に整合するフラッシュポート59と、オイルパンブロック4の後面に固定される排気レリーズカバー60内部の最終レリーズ室61にレリーズ排気通路52の末端部を導く図示しない通路が形成されている。なお、最終レリーズ室61には後方に開口するレリーズ排気出口62が設けられている。
【0035】
フラッシュポート59は通常はプラグ63で閉塞されているが、船外機1の点検整備時等にはプラグ63を取り外してフラッシュポート59内に高圧水を注入することにより各冷却水通路やウォータージャケットの洗浄(フラッシング)を行う。
【0036】
図5に示すように、オイルパンブロック4は、その内部が隔壁66によって前後二つの有底箱状の部屋に区画されており、前側の部屋が排気室67とされ、後側の部屋がオイルパン68とされている。排気室67の底部には排気管接続口69が形成され、その前方に冷却水通路接続口70が形成され、オイルパンブロック4の上面にはエンジンホルダー3下面のシール面48に密着するシール面71が形成され、排気管接続口69の周囲にはシール面72が形成されている。
【0037】
オイルパン68にはオイルが貯留され、エンジンホルダー3の下面に固定されて下方に垂下するオイルストレーナー74(図2、図7参照)がオイル中に没し、オイルストレーナー74の他端はエンジンホルダー3またはエンジン2側に形成された図示しないオイル通路によりオイルポンプ(非図示)に接続される。エンジン2が作動するとオイルポンプも駆動され、オイルパン68内に貯留されたオイルがオイルストレーナー74より汲み上げられてエンジン2の各潤滑部に供給される。
【0038】
図2に示すように、排気室67にはオイルパンブロック4とは別体に形成された排気ブロック76が設置される。この排気ブロック76は、図7にも示すように左右二本の排気管77,77と、上がり冷却水室78と、レリーズ排気膨張室79と、上部固定フランジ80と、下部固定フランジ81とを備えて構成されており、排気管77,77の内部が主排気通路82,82となっている。
【0039】
左右の排気管77,77は上下に延び、その間隔は上方が広く下方が狭くされ、排気管77,77の間に上がり冷却水室78が一体に設けられる。上がり冷却水室78の平面形状は図4に示すシール面49の内周形状とほぼ同一であり、レリーズ排気膨張室79は上がり冷却水室78と隔壁66とに囲まれるが上がり冷却水室78には連通していない。
【0040】
図2と図7に示すように、上がり冷却水室78から下方に突出する丸パイプ状の冷却水上がり通路83が設けられている。この冷却水上がり通路83は排気管77,77とともに下部固定フランジ81を貫通している。
【0041】
排気ブロック76は、その上部固定フランジ80がエンジンホルダー3下面のシール面49に密着し、下部固定フランジ81が排気室67底部のシール面72に密着するように固定される。左右の排気管77,77の上端部はエンジンホルダー3の左右の排気管接続口45,45に密に挿入され、排気管77,77の下端部は排気室67底部の排気管接続口69に密に挿入され、冷却水上がり通路83の下端部が冷却水通路接続口70に密に挿入される。
【0042】
排気ブロック76のレリーズ排気膨張室79は上部が開放されていてエンジンホルダー3下面のレリーズ排気通路入口51に整合する。さらに、図2に示すようにレリーズ排気膨張室79の底部にはドライブシャフトハウジング5内部の排気膨張室84に連通するレリーズ排気連通路85が設けられている。
【0043】
エンジン2の排気ガスは、左右のシリンダーヘッド14に設けられた排気マニフォールドから排出されてエンジンホルダー3の排気管接続口45,45と排気ブロック76の主排気通路82,82(排気管77,77)とを通り、排気膨張室84に導かれてここで膨張、消音され、その後プロペラシャフト20の周囲に形成された図示しない排出通路を通ってプロペラ21の中央部から水中に排出される。
【0044】
船舶の停船時には排気膨張室84の背圧が高まるため排気膨張室84からの排気が不可能になる。このため排気膨張室84に排出された排気ガスはレリーズ排気連通路85からレリーズ排気膨張室79内に流れ、ここで膨張した後にレリーズ排気通路入口51よりレリーズ排気通路52に流れ、さらに排気レリーズカバー60内部の最終レリーズ室61に流れて一層膨張した後にレリーズ排気出口62から外部に放出される。
【0045】
そして、排気ブロック76の周囲と排気室67の内壁との間の空間が冷却水貯留部88となる。この冷却水貯留部88には、後述するようにエンジン2を冷却する冷却水の一部が通されて冷却水が満たされる。また、エンジンホルダー3に設けられるエンジンマウント24,24(マウントホルダー41)は上がり冷却水室78と冷却水貯留部88の上方に配置されている。
【0046】
図2に示すように、ロアーハウジング6の上面にはドライブシャフト18の回転により直接駆動されるウォーターポンプ89が設置され、このウォーターポンプ89から上方に延びる冷却水吐出管90の上端が排気室67底部の冷却水通路接続口70に下方から接続され、ウォーターポンプ89から吐出された冷却水が冷却水吐出管90と冷却水通路接続口70と冷却水上がり通路83を経て上がり冷却水室78に供給され、上がり冷却水室78が冷却水で満たされる。
【0047】
図4に示すように、エンジンホルダー3の下面には、左右の排気管接続口45,45に隣接し、かつシール面49の枠の内側に位置する左右一対の冷却水排出口91,91が設けられ、この冷却水排出口91,91が排気管接続口45,45の周囲を囲む冷却水ジャケット46,46(図3参照)に連通する。上がり冷却水室78を満たした冷却水は冷却水排出口91,91と冷却水ジャケット46,46を通ってエンジン2側に形成された図示しない冷却水ジャケットに流れ、エンジン2の各部を冷却する。
【0048】
エンジン2を冷却し終えた冷却水は、エンジン2下面の冷却水流下口(非図示)よりエンジンホルダー3後部上面に流れ落ち、複数の排水口92…より流下通路54に流れ、さらに流下通路55と56を通って出口93よりドライブシャフトハウジング5の排気膨張室84内部に流れ落ちる。図2に示すように、流下通路56の出口93はオイルパン68を挟んで排気室67の反対側、即ちここではオイルパン68の後側に設けられている。
【0049】
図5に示すように、冷却水通路接続口70の近傍にリリーフバルブ95とリリーフ孔96が設けられており、例えば図示しないサーモスタットが開く前等に水圧が上昇するとリリーフバルブ95が開弁し、冷却水通路接続口70を流れる冷却水の一部がリリーフ孔96を通って冷却水貯留部88に流れ込む。
【0050】
また、エンジンホルダー3には、排気管接続口45,45の周囲を囲む冷却水ジャケット46,46(図3参照)に連通する冷却水流入口97,97(図4参照)が形成されており、さらに図5に示すように排気室67の左右両側付近には切欠98,98が形成されている。このため、冷却水ジャケット46,46を流れる冷却水の一部が冷却水流入口97,97と切欠98,98を経て冷却水貯留部88に流入する。
【0051】
このように、冷却水貯留部88には冷却水通路接続口70と冷却水ジャケット46,46から冷却水が流入し、冷却水貯留部88の内部が冷却水で満たされる。そして、排気ブロック76の排気管77,77の周囲が上がり冷却水室78と冷却水貯留部88とにより囲まれているため、排気管77,77が効率良く冷却され、かつ周囲に対して断熱がなされる。
【0052】
冷却水貯留部88に溜まった冷却水は、図5に示すように排気室67(冷却水貯留部88)内の高所に開口するように設けられたオーバーフロー排水口99より排気膨張室84に排水される。
【0053】
以上のように構成された船外機1では、オイルパンブロック4の内部が隔壁66により排気室67とオイルパン68とに区画されたため、主排気通路82,82(排気管77,77)を通る排気ガスの熱がオイルパン68に対して断熱される。このため、排気熱によるオイルパン68内のオイル温度上昇を防止することができる。
【0054】
隔壁66は、図2に示すように排気室67の後壁とオイルパン68の前壁とからなり、その間に空気層が介在するため、この空気層により排気ガスの熱がオイルパン68に対して一層効果的に断熱される。
【0055】
しかも、排気室67内では主排気通路82,82の周囲を取り囲む冷却水貯留部88が設けられ、この冷却水貯留部88にエンジン冷却水の一部が通されて冷却水で満たされるため、主排気通路82,82を通る排気ガスの熱をオイルパン68を始めとする周辺部分に対してより一層効果的に断熱することができる。
【0056】
また、排気室67を有底箱状に形成してその内部にオイルパンブロックとは別体に形成した排気ブロック76を設け、この排気ブロック76に主排気通路82,82を形成し、冷却水貯留部88を排気ブロック76の周囲と排気室67の内壁との間に形成したため、主排気通路82,82を形成する排気ブロック76回りをコンパクトに構成して船外機1の組立性を向上させるとともに、オイルパンブロック4の中空形状を無くしてその製造を容易にすることができる。
【0057】
そして、排気ブロック76の内部に上がり冷却水室78とレリーズ排気膨張室79とを形成し、上がり冷却水室78に冷却水を満たしたため、冷却水貯留部88による冷却と上がり冷却水室78による冷却との相乗効果により一層効率良く主排気通路82,82やレリーズ排気膨張室79を冷却するとともに、排気ブロック76回りのコンパクト化と部品点数の減少に大きく貢献することができる。
【0058】
さらに、エンジンマウント24,24を冷却水貯留部88と上がり冷却水室78の上方に配置したため、主排気通路82,82を通る排気ガスの熱がエンジンホルダー3を伝わってエンジンマウント24,24に及びにくくなり、よって熱を嫌うゴム製のエンジンマウント24,24の早期劣化を回避することができる。
【0059】
また、レリーズ排気通路52をエンジンホルダー3の内部に形成したため、レリーズ排気通路52の高さを十分に高くすることができ、これにより船体の喫水位置が高い場合でもレリーズ排気通路52に水がかかりにくくなり、レリーズ排気をスムーズに行うことができる。
【0060】
さらに、エンジン2を冷却し終えた冷却水が通る流下通路56の出口93がオイルパン68を挟んで排気室67の反対側に設けられているので、主排気通路82,82と出口93との間にオイルパン68が介在し、その結果エンジン2を冷却し終えた冷却水が主排気通路82,82から排出された排気ガスに合流する位置がオイルパン68の下方、即ちレリーズ排気通路52の高さよりも格段に低い位置となる。このため、レリーズ排気通路52に流れる排気ガスが水を巻き込みにくくなってレリーズ排気通路52より水が放出されにくくなり、結果的にレリーズ排気出口62からの水の放出と騒音の発生を防止することができる。
【0061】
また、エンジンホルダー3の後部まで延びたレリーズ排気通路52と冷却水経路洗浄用のフラッシュ通路53とが共に後方に向って開口するので船外機1の整備性およびレイアウト性が極めて良く、しかも船外機1を二機がけで船体に装着する場合であってもフラッシング作業を容易に行うことができる。
【0062】
なお、本実施形態ではエンジン2が水冷4サイクルV型6気筒形式とされているが、本発明はこのエンジン形式のみに限らず他の形式の4サイクルエンジンを搭載した船外機にも幅広く適用することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る船外機よれば、オイルパン内のオイルおよびエンジンマウントに排気熱による熱害が及ぶことを阻止するとともに、レリーズ排気をスムーズにし、かつレリーズ排気通路からの水の放出を防止し、併せてエンジンのコンパクト化および部品点数の削減と、組立性、整備性、製造性ならびにレイアウト性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る船外機の一例を示す左側面図。
【図2】本発明の一実施形態を示す船外機の部分縦断面図。
【図3】図2のIII-III矢視によるエンジンホルダーの上面図。
【図4】図2のIV-IV矢視によるエンジンホルダーの下面図。
【図5】図2のV-V矢視によるオイルパンブロックの上面図。
【図6】図2のVI矢視によるエンジンホルダーの後面図。
【図7】エンジンホルダーと排気ブロックを斜め下方から見た斜視図。
【符号の説明】
1 船外機
2 エンジン
3 エンジンホルダー
4 オイルパンブロック
5 ドライブシャフトハウジング
24 エンジンマウント
52 レリーズ排気通路
53 フラッシュ通路
56 流下通路
67 排気室
68 オイルパン
76 排気ブロック
78 上がり冷却水室
79 レリーズ排気膨張室
82 主排気通路
84 排気膨張室
88 冷却水貯留部
93 流下通路の出口

Claims (6)

  1. エンジンの下部にエンジンホルダーとオイルパンブロックとドライブシャフトハウジングが順に組み付けられ、上記エンジンの排気ガスが上記エンジンホルダーとオイルパンブロックの内部に設けられた主排気通路を通って上記ドライブシャフトハウジング内部の排気膨張室に導かれるように構成された船外機において、上記オイルパンブロックの内部を隔壁によって前後複数の有底箱状の部屋に区画し、前方の部屋を排気室とし、後方の部屋をオイルパンとする一方、上記排気室内に上記オイルパンブロックとは別体に形成した排気ブロックを設置し、この排気ブロックの内部に上記主排気通路を形成するとともに、上記排気ブロックの周囲と排気室の内壁との間に主排気通路の周囲を取り囲む冷却水貯留部を設け、この冷却水貯留部にエンジン冷却水の一部を通して冷却水を満たしたことを特徴とする船外機。
  2. 前記排気ブロックの内部に上がり冷却水室とレリーズ排気膨張室とを形成し、上がり冷却水室に冷却水を満たしたことを特徴とする請求項1に記載の船外機。
  3. 前記エンジンホルダーに設けられるエンジンマウントを前記冷却水貯留部と前記上がり冷却水室の少なくとも一方の上方に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の船外機。
  4. 前記エンジンホルダーの内部にレリーズ排気通路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の船外機。
  5. 前記エンジンを冷却し終えた冷却水の下流通路の出口を前記オイルパンを挟んで前記排気室の反対側に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の船外機。
  6. 前記エンジンホルダーの後部にレリーズ排気通路と冷却水経路洗浄用のフラッシュ通路とを開口させたことを特徴とする請求項1に記載の船外機。
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