JP2005330553A - 成膜装置及び成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的簡易に磁場発生源を配置し、かつ成膜時における膜質の向上を図ることができる成膜装置及び成膜方法を提供すること。
【解決手段】 成膜されるべきフィルム基材4の側を陰極4とし、この陰極4とこれに対向した陽極8との間に発生する電界22の作用下で炭化水素ガス20を分解し、フィルム基材4上に成膜を行うように構成されたプラズマCVD成膜装置において、陽極8に関し陰極4とは反対側に磁場発生部17が配置され、この磁場発生部17によってフィルム基材4の表面上に電界22の方向と交差する方向に磁場ベクトル23aが発生するように構成されたことを特徴とするプラズマCVD成膜装置24A。
【選択図】 図2

Description

本発明は、成膜装置及び成膜方法に関し、CVD法(化学的気相成長法:Chemical Vapor Deposition)による炭素保護膜の成膜に好適な成膜装置及び成膜方法に関するものである。
磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体は、例えばオ−ディオ機器、ビデオ機器、コンピュ−タ等に用いられ、その需要は著しく伸びてきている。磁気記録媒体の一つである磁気テープについては、ロール・ツウ・ロールの製造方法(巻き出しロールと巻き取りロールとの間で非磁性支持体を走行させながら成膜処理を行う方法)による安価及び大量生産性に伴う低コスト、更には高記録容量、記録保持信頼性から、画像記録、データストリーマーとして広く用いられている。
従来より、磁気記録媒体としては、非磁性支持体上に酸化物磁性粉末又は合金磁性粉末等の粉末磁性材料を、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等の有機バインダー中に分散せしめた磁性塗料を塗布、乾燥することにより作成された、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が広く使用されている。
これに対して、高密度磁気記録への要求の高まりと共に、Co−Ni合金、Co−Cr合金、Co−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段〔(真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等のいわゆるPVD技術(物理的蒸着法:Physical Vapor Deposition )〕によってポリエステルフィルムやポリアミド、ポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に被着した、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体が提案され、注目を集めている。
このように、磁気テープは主として、記録媒体となる磁性層を磁性塗料の塗布、乾燥によって形成する塗布型テープと、真空蒸着等により形成する例えば蒸着テープとに分けられる。
後者の蒸着テープにおいては、保磁力や角型比に優れ、磁性層の厚みを極めて薄くできるため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さく、また、短波長での電磁変換特性に優れるばかりでなく、金属磁性層中に非磁性材料であるバインダーを混入する必要がないために金属磁性材料の充填密度を高めることができるなど、数々の利点を有している。
この種の磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させ、より大きな出力を得ることができるようにするために、磁気記録媒体の金属磁性層を形成するに際し、金属磁性層を斜めに蒸着する、いわゆる斜方蒸着が提案され、実用化されている。
ところで、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体では、一層の高密度記録化を目的として、スペーシング損失を少なくするために媒体が平滑化される傾向にある。しかし、磁性層表面が平滑であると、磁気ヘッドやガイドローラー等の摺動部材に対する実質的な接触面積が大きくなり、従って、例えば媒体と磁気ヘッドとの間の摩擦力が大きくなって、凝着現象(いわゆる張り付き)が起き易く、走行性や耐久性に欠けるなど、媒体に生ずる剪断応力は大きくなり、問題点が多い。
例えば、8ミリビデオデッキに挿入された8ミリテープは、10個以上のガイドピンを通って、ドラムに巻き付けられる。その際、ピンチローラーとキャプスタンによってテープテンションとテープ走行速度は一定に保たれていて、例えばテンションは約20g、走行速度は約0.5cm/sである。
この走行系において、テープの磁性層はステンレス製の固定されたガイドピンと接触する構造になっている。そのために、テープ表面の摩擦が大きくなると、テープがスティックスリップを起こして、いわゆるテープ鳴きという現象が起き、再生画面のひきつれを起こす。
また、テープとヘッドとの相対速度は非常に大きく、特にポーズ状態では同じ場所での高速接触となるので、金属磁性層の摩耗の問題が生じ、再生出力の低下につながっている。特に、金属磁性層を蒸着で形成した蒸着テープの場合、この金属磁性層は非常に薄いので、この問題は更に助長される。
一方、ハードディスク装置では、CSS(コンタクト・スタート・ストップ)といって、回転前には磁気ヘッドは磁気ディスクに接触しており、ディスクが高速で回転を始めると、発生する空気流によって浮上するタイプの装置である。従って、起動停止又は起動時には媒体が擦って走行するので、そのときの摩擦の増加が大きな問題となっている。
商品レベルの信頼性を保つには、CSS操作を2万回行った後の摩擦係数が特に0.5以下であることが望まれる。また、高速で回転しているので、ヘッドと媒体によるヘッドクラッシュ等の発生も課題の一つである。
このように、摺動耐久性が厳しくなる状況の中で、特に、耐久性を向上させる目的で、金属磁性層の表面に保護膜を形成する技術の検討がなされてきた。
このような保護膜としては、カーボン膜(炭素膜:以下、同様)、石英(SiO)膜、ジルコニア(ZrO2)膜等がある。
特に、カーボン膜よりも硬度が大きいダイヤモンドライクカーボン(DLC:ダイヤモンド構造を主とするカーボン)膜は優れた保護膜であり、スパッタリング法、CVD法等で成膜される。
スパッタリング法とは、電場や磁場を利用してアルゴンガス等の不活性ガスの電離(プラズマ化)を行い、更に、電離したイオンを加速することにより得られる運動エネルギーによって、ターゲットの原子を叩き出す。そして、その叩き出された原子が対向する基板上に堆積し、目的とする保護膜を形成する物理的プロセスである。
一方、CVD法とは、気相での成長を利用した薄膜形成技術の一つであり、成膜物質を含有するガスの高温空間等における化学反応を利用して、原料ガスを分解させることにより成膜物質を生成させ、この成膜物質を基体上に堆積させる方法である。CVD法を用いた装置の代表的なものとして、プラズマCVD装置が挙げられる。
そして、蒸着テープは、例えば高分子フィルムからなる基材上に金属磁性層、保護膜及び潤滑層を順次形成する工程を経て作製されるものである。その内、金属磁性層は真空蒸着法にて、Co又はCo−Ni等を電子ビームにて溶解、蒸発させ、基材上に凝縮させて堆積し、更に、金属磁性層上にはヘッド等との摺動に対する耐久性向上のため保護膜を形成する必要があり、スパッタ法又はプラズマCVD法により、DLC(Diamond Like Carbon)保護膜を成膜している。
このDLC保護膜の成膜工程において、プラズマCVD法はスパッタ法に比べて膜質操作性が高くて必要な膜質を得易く、更に、成膜レートも高くて生産性に富むことから、蒸着テープを製造する際の保護膜の成膜プロセスに用いられている。
蒸着テープの製造工程に用いるプラズマCVD法においては、例えば、基材上に形成されたCo又はCo−Oからなる金属磁性層を陰極とし、対向位置に陽極を配し、これらの電極間に原料ガスとなる炭化水素ガス又は分解促進のためのアルゴンガスを添加したプロセスガスを満たす。この方法は、両電極間の電界で誘起されるプラズマによりプロセスガスを分解し、陰極上に、グラファイトに代表されるsp2構造とダイヤモンドに代表されるsp3構造とからなる炭素をマクロ的に非晶質に積層させる成膜方法である。
こうした成膜方法において、生産性向上のための成膜レートの向上、又はヘッドとの相対速度の向上による耐久性アップのために膜質改善が必要とされている。
例えば、プラズマCVD法において、プラズマに磁場を作用させてプラズマ密度を上昇させることは、プロセスガスの分解、再結合を促進すると考えられ、成膜レートの向上及び膜質の改善に繋がるものと期待できる。
このようにプラズマに対して磁場を作用させる例は多種に亘り、例えば、電子をトラップして炭化水素ガスへの衝突頻度を増加させるためには、物理上、発生する電界方向に直交する方向に磁場ベクトル成分を有する磁力線を発生させることが必要であり、特に電圧降下の大きい(電界の強い)陰極、即ちフィルム基板の表面の金属磁性層の近傍が有効である。
蒸着テープの製造工程の特徴であるロール・ツウ・ロールの成膜方法においては、例えば、高分子フィルムからなる基材に対して保護膜の成膜時には基材を冷却する必要があり、冷却用ロールと基材フィルムとを同期して接触回転させながら成膜源(プラズマ発生領域)を通過させる。冷却用メインロールによる冷却は、例えば、真空槽の外部からロータリージョイント等を介してロールの内部に循環供給される冷媒との熱交換により行われる。
この場合、金属磁性層(陰極)付きのフィルム基材に対する電界に直交する方向(即ち、基材の表面方向)に磁力線を発生させることが、成膜される保護膜の膜質の改善に効果的である。こうした成膜装置として、冷却用ロールの内部に磁場発生源を設置する装置が知られている(後述の特許文献1を参照)。
この公知技術によれば、図9に示すように、マグネトロンプラズマCVD装置74において、複数個の磁気回路52が、メインロール50に対向して配置されるアノード電極(陽極)58の大きさに対応する範囲で、メインロール50の内部に設けられている。それぞれの磁気回路52は均一な磁束を発生することができるように各取付支持板55に取り付けられている。
このようにして、各磁気回路52から非磁性体のメインロール50を通して発生する磁束に補捉された電子により、走行するフィルム基材54の表面近傍でマグネトロン放電が生じて基材54の表面に保護膜が成膜される。
この装置74においては、メインロール50の内部を二重壁構造とし、プラズマ発生領域56から分離した雰囲気である大気圧領域57とするために、大気導入菅51をメインロール50の内部に連結している。また、メインロール50の内部に磁気回路52が固定され、メインロール50のみが回転されるようになっている。また、アノード電極58はメインロール50の表面の一部に沿って対向するように配置されており、複数のガス導入菅53を備えている。
そして、この導入菅53からフィルム基材54の表面に炭化水素ガス70及びキャリアガス71との混合ガスが導入される。かくして、高周波放電が持続され、かつ、磁気回路52によりメインロール50の外部で磁束が発生した領域(プラズマ発生領域56の一部)においてマグネトロン放電が起こる。
特開平11−61416号公報(第3頁左欄30行目〜第4頁左欄20行目、図3)
しかし、上記の特許文献1に基づくプラズマCVD装置74は、既存の装置を大きく改造する必要があり、その改造が大掛かりなものとなり、コストを上昇させてしまう。しかも、この改造された構造においては、成膜速度や膜質等の改善について余り考慮されていない。
他方、磁場発生源を陰極の周辺であって成膜源(プラズマ発生領域)の外部に設置することも考えられるが、成膜源のサイズが大きくなると、磁場発生源から成膜源内部へ行くに従って磁場強度の減衰が大きくなり、成膜源の外部と内部とで磁場強度差が大きくなってしまう。これにより、磁場が有効に作用する領域が成膜源の一部分に限られてしまうと共に、その磁場強度分布によって膜厚分布(膜厚の面内ばらつき)が生じるといった問題がある。
本発明は、上述した従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡易に磁場発生源を配置し、かつ特に膜質の向上を図ることができる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
即ち、本発明は、成膜されるべき被成膜体の側を陰極とし、この陰極とこれに対向した陽極との間に発生する電界によるプラズマの作用下で原料ガスを分解して、前記被成膜体上に成膜を行うように構成された成膜装置において、前記陽極に関し前記陰極とは反対側に磁場発生源が配置され、この磁場発生源によって前記被成膜体の表面上に前記電界の方向と交差する方向に磁場が作用するように構成されたことを特徴とする成膜装置に係わるものである。
本発明は又、成膜されるべき被成膜体の側を陰極とし、この陰極とこれに対向した陽極との間に発生する電界によるプラズマの作用下で原料ガスを分解して、前記被成膜体上に成膜を行う成膜方法において、前記陽極に関し前記陰極とは反対側に磁場発生源を配置し、この磁場発生源によって前記被成膜体の表面上に前記電界の方向と交差する方向に磁場を作用させることを特徴とする成膜方法に係わるものである。
本発明によれば、前記陽極に関し前記陰極とは反対側に前記磁場発生源が配置されるために、前記陰極の内側に配置する場合に比べて、比較的簡易に磁場発生源を配置して成膜装置を容易に構成することができる。
そして、前記磁場発生源によって前記被成膜体表面上に前記電界の方向と交差する方向(特に直交する方向)に磁場が作用するように構成されているために、原料ガスの分解、再結合を促進し、特に成膜された膜の膜質の向上を図ることができると共に、十分な強度の磁場を広範囲に作用させることができる。
本発明においては、本発明の効果を確実に得る上で、減圧雰囲気中、プラズマ発生下で前記原料ガスの分解を伴う化学的気相成長法により成膜が行われ、前記プラズマの発生領域の近傍にて、前記プラズマが直接接触しない前記陽極の背面側に永久磁石又は電磁石等の前記磁場発生源が配置され、前記被成膜体の表面近傍で、前記電界の方向とは直交する方向にベクトル成分を有するように前記磁場が作用するのが望ましい。
この場合、高電圧を印加する前記陽極及び前記磁場発生源とアースとの間の電気的干渉を防止し、前記プラズマの発生領域を前記陽極と前記陰極との間に限定して効率良くプラズマを発生させるために、前記磁場発生源が、前記陽極と電気的に接続されて同電位とされた状態で、電気的絶縁構造を介して容器内に配置されかつこの容器外の真空槽のアース電位部分とも電気的に絶縁されているのが望ましい。
またこの場合、前記容器の内空間のうち、前記陰極と前記陽極との間がプラズマ発生空間であり、前記磁場発生源の側が原料ガス導入空間であり、この原料ガス導入空間から導入された前記原料ガスが前記陽極のガス通過部を通して前記プラズマ発生空間に導かれる構造とするのが望ましい。
ここでは、磁場発生源のスペースを確保しつつプラズマ発生空間でのガス圧の均一化を保持することを両立させる上で、前記原料ガスの通過部が設けられた前記磁場発生源のヨーク部は、磁束密度が飽和し難くてガス透過性の十分な断面形状を有することが望ましい。
この場合、原料ガス導入空間からプラズマ発生空間にガスを導入し易くするために、前記陽極及び前記磁場発生源が共にガス透過性の多孔構造体からなるのが望ましい。
更に、前記被成膜体が磁気記録媒体用の金属磁性層付きの非磁性支持体であり、前記金属磁性層上に非晶質炭素からなる保護膜が成膜されるのがよい。この保護膜は、炭化水素系のガスの分解によって成膜されるのが望ましい。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面の参照下に具体的に説明する。
図1について、本実施の形態によるプラズマCVD装置24A(成膜装置)の構成を説明する。この装置24Aは、金属磁性薄膜からなる陰極としての磁性層を有する磁気記録媒体用のフィルム基材4を巻き出しながら、磁性層上に表面保護膜としてのカーボン膜(特にDLC膜)を成膜するロール・ツウ・ロール方式の装置である。
このプラズマCVD装置24Aにおいては、磁気記録媒体用の磁性層付きのフィルム基材4は、巻き出しロール2から、ロール走行系12を構成するガイドローラ3a、3b、3c、反応管9(容器)に対向配置された冷却用メインロール5、ガイドローラ3d、3e、3f及び巻き取りロール1の順に順次搬送される。なお、この搬送系によってフィルム基材4が支持されながら搬送されるが、このフィルム基材の金属磁性層が陰極として機能する。但し、簡略化のために、フイルム基材を陰極4として図示する。
反応管9の内部には、ガス通過性の十分なメッシュ部8aからなる陽極8がロール5と対向して組み込まれており、この陽極8にはDC(直流)電源10により+500〜2000V程度の電圧が印加される。また、炭化水素を主成分とする原料ガス(例えばエチレンガス又はプロピレンガス)20は、キャリアガス21と混合され、バルブ15aを介して反応管背面部19から反応管9内に導入される。
反応管9に対向して、円筒状の回転可能なメインロール5が微小な隙間部7(例えば1mm程度)を置いて設置されている。この装置24Aの真空槽6の内部は、バルブ15bを介して真空ポンプ16により例えば0.5Pa以下の減圧雰囲気に保持されている。
また、ガス導入部18から導入される炭化水素を主成分とするガス(エチレンガス等の成膜原料)20は、反応管9内のプラズマ発生領域36で生じる直流電界で誘起されるプラズマによって分解され、メインロール5で順次搬送されるフィルム基材4の金属磁性層上に堆積して、保護膜となるカーボン膜(DLC膜)を成膜する。
このフィルム基材4には、例えば、厚みが10μm程度であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はアラミド等の高分子材料からなり、前工程の真空蒸着において、例えばCoOからなる金属磁性層を200nmの厚さ(表面抵抗は150Ω/sq)を表面に形成している。
また、保護膜成膜時にプラズマ輻射熱によりフィルム基材4が熱変形するのを抑制するために、ロール走行系12において温度制御された冷却用メインロール5を設け、フィルム基材4と接触させて同期回転させることにより、除熱を行っている。
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)の原料となるエチレン、プロピレン、アセチレン、トルエン等の炭化水素ガスと、キャリアガス21である例えばアルゴンガスとの混合ガスからなるプロセスガスは、ガス導入部18から所定流量に制御されて反応管背面部19よりガス導入領域35に導入され、磁場発生部17のガス通過性の多孔部14、更には陽極8のメッシュ部8aを通過して、陰極4側へ流動し、冷却用メインロール5と反応管9との隙間部7を介して真空槽6内に拡散され、排気される。
ここで、冷却用メインロール5と反応管9との間の隙間部7の幅等を真空槽6の外部より変化させることにより、真空槽6内と反応管9内との間に圧力差を設けることができ、導入するガスを所定のプロセスガス圧に制御することができる。
また、陽極8は、その背面より導入するプロセスガスを通過させ、かつ印加電圧を電極面内で均一にするために金属のメッシュ部8a(ガス通過部)を有している。この金属メッシュ部8aの構成材料は、その背面側に設置する磁場発生部17の磁気的影響を抑制するために、例えば、電気良導体であって非磁性材である安価な銅やオーステナイト系ステンレス材料等であることが好ましい。
陽極8と磁場発生部17とは互いに電気的に接続されて同電位であり、反応管9及び真空槽6とは部分的に図示した絶縁層25(絶縁構造)を介して絶縁されている。なお、反応管9内において、陽極8と陰極4との間には直線状の矢印で示す電界22が発生し、かつ磁場発生源の永久磁石11によって破線の曲線状の矢印で示す磁場23が発生している状況を図示している。
実際には、反応管9の内面全体は、この内部のプラズマ発生領域36でプラズマを効果的に発生させるために絶縁層25で覆われ、かつ熱的な強度を持たせるために反応管9は、セラミックス又は石英等の材料で構成することが好ましい。
図2について、上記の磁場23の発生状況を詳しく説明すると、フィルム基材4上の金属磁性層からなる陰極4と陽極8との間のプラズマ発生領域36に電源10による直流電界22を発生させた状態において、永久磁石11とヨーク13とからなる磁場発生部17(磁気回路:磁場発生源)により、例えば、中央の永久磁石11のN極から隣接する永久磁石11のS極に向かって漏洩磁場23を発生させる。その結果、フィルム基材の金属磁性層の表面上にはこれに沿って、電界22の方向に対して交差する方向、特に直交する方向23aに磁場23のベクトル成分が生じる。
ここで、例えば、陰極4と陽極8との電極間距離を60mmとして設置する場合に、磁場の強度(磁束密度)は、陽極8の表面付近で約70mTとなり、フィルム基材4の陰極の表面上では、約3.3mT(電界に直交する成分の強度:約2.6mT)の磁場が発生する。なお、例えば、陰極4と陽極8との電極間距離を180mmとして設置する場合には、陰極4の表面上での磁場の強度は約0mTとなる。
フィルム基材4の陰極の表面上では磁界の強度は弱くなるが、この近傍の磁力線の一部がフィルム基材4の陰極の一部を通過することにより、フィルム基材4の陰極の表面上では電界22の方向に対して直交する方向に磁場23aが発生し易くなる。
陽極8の背面側より導入されるプロセスガスは、ヨーク13の多孔部14、ガス導入領域35及びメッシュ部8aを順次介して、反応管9内のプラズマ発生領域36に均一に分散させるために、プロセスガスの導入孔に多孔の分散板を設けることによりプロセスガスの均一分散を図ることが考えられる。しかし、この分散板と磁場発生源との間にはスペース的な制約があることから、飽和磁束密度以下になるような断面積で永久磁石11を保持するヨーク13に上記のガス分散板と同様の構造の多孔部14を設けることによって、ヨークとしての性能とガス分散性能とを兼ね備えた機能をヨーク13に持たせている。
なお、永久磁石11は、断面積が減少すると磁束密度が飽和し易くなるので、可能な限り断面積が大きい方が望ましい。
図3には、磁場発生部17を構成する永久磁石(マグネット)11とヨーク13とから成る磁気回路と、陽極8とを分解して示す。この図におけるII−II'線に沿う断面が図2に相当している。
プラズマ発生領域36と磁場発生部17との間に設けられる陽極8は、メッシュ部8aと、このメッシュ部を支持する支持枠部26とからなる。また、ガス導入領域35を形成する永久磁石11は、枠部27とこの枠部27内に配置されるH型部28とからなる。また、ヨーク13は、例えば板状の鉄板にガスを通過させるための複数の孔としての多孔部14を有している。鉄製ヨーク13は、漏洩磁場が磁場発生部17の背部に発生するのを防止するものである。
ここで、永久磁石(マグネット)11の材質には、プラズマからの輻射熱に対する熱的安定性が必要となることから、フェライト又はサマリウムコバルト等を使用することが好ましい。本実施の形態では、例えば、異方性フェライト材(表面磁束密度170mT)からなる永久磁石11と、鉄製ヨーク13とによって磁気回路を構成している。
こうした磁気回路を構成する磁場発生部17は、高電圧を印加する陽極8の背面側に設置するが、陽極8と電気的に接触させることにより、両者間での絶縁処理を施す必要をなくしている。
図4には、プラズマCVD装置24Aによって、基材29(非磁性支持体)上に金属磁性層30が形成されたフィルム基材4上に表面保護膜31を成膜し、これを巻き取った後に巻き出して、所望の幅にスプライシングして作製された磁気テープ等の磁気記録媒体32を示す。
図5には、上記した永久磁石11の代わりに、コア34にコイル33を巻回してなる電磁石を磁場発生部17として用いたプラズマCVD装置24Bとしたこと以外は、上述した実施の形態と同様である。
陽極8の背面側に設置する磁場発生源17については、安価であって限定されたスペースに対して発生する磁場強度を強くできる永久磁石11による磁気回路が適しているが、本実施の形態のように、コイル33を用いた電磁石により磁気回路を構成することも可能である。
このような電磁石によって磁場を発生させると、コイル33に流す電流によって発生する磁場強度を自在に変化させることができ、フィルム基材(陰極)4の表面近傍における磁場強度を電極間距離等の条件に合わせて変更することにより、磁場強度を制御することができる。
その他、本実施の形態においては、上述したと同様の作用及び効果を得ることができる。
以上に説明したように、本実施の形態によれば、陽極8に関し金属磁性層からなる陰極4とは反対側に、永久磁石11とヨーク13とからなる磁気回路部、又は電磁石による磁気回路、即ち磁場発生部17が配置されているために、比較的簡易に磁場発生部17を配置して、磁場と電界の双方の作用下で効率良くプラズマCVDを行えるプラズマCVD装置24A、24Bを構成することができる。特に、磁場発生部17を陽極8の背面側に設置しているので、磁場による効果を得るためのプラズマCVD装置の改造を、最小限に留めることが可能である。
この場合、磁場発生部17によってフィルム基板(陰極)4の表面上に電界22の方向と交差する方向に磁場ベクトル23aが発生するように構成されているために、電界によるプラズマ発生時に反応ガスの分解物のトラップにより、電圧降下の生じやすい陰極表面上に成膜される保護膜の膜質を向上させることができる。
また、陽極8と磁場発生部17とを電気的に接続して同電位としかつ反応管9及び真空槽6と絶縁することにより、高電圧を印加する陽極8、この陽極8に隣接する磁場発生部17及びアース源との間の電気的干渉を容易に解消することができる。
更に、磁場発生部17を上記した多孔構造にすることにより、磁場発生部17のスペースを確保することと、反応管9内でガス圧が不均一となることを防止することとを両立させることが可能である。
次に、本実施の形態で成膜された表面保護膜であるDLC膜31を詳細に評価した結果を説明する。
図6は、DLC膜について、一般的なラマン分光法にて測定した炭素組成を示す。ここで用いる入射光は波長514.5nmのアルゴンガス励起レーザーであり、反射散乱光の測定波数を1000cm-1から1800cm-1として強度スペクトルの分析を行った。
代表的なDLCの強度スペクトルは、波数が1350cm-1近辺(D−band)と1525cm-1近辺(G−band)とにピークを有する曲線形状であり、前者は炭素の結合構造としてディスオーダーエリア(Ad)でsp3構造に起因し、後者はグラファイトエリア(Ag)でsp2構造に起因する。更に、バックグランドエリア(B)のベースライン、及びAd+Agで表される、ディスオーダーエリア(Ad)とグラファイトエリア(Ag)との面積和が示されている(特開2000−207736を参照)。
ここで、ラマン分光法による測定法の原理を簡単に説明すると、一般に、ラマン散乱測定装置は、励起光源、試料部、分散系、検出器の主として4つの部分からなり、励起光にはイオンガスレーザが用いられ、試料部は試料照射、散乱光の集光の光学系からなっている。
ラマン散乱光は集光レンズ又は集光ミラーで分光器スリット上に集められる。この散乱光は単一分光器を直列に接続したダブルモノクロメータで分散され、検出器で検知される。検出器には光電子倍増菅が使用されるが、近年、光マルチチャンネル検出器が用いられるようになっている。光マルチチャンネル検出器はスペクトルを同時測定できるので、測定時間が数秒で済むという利点を有する。
このようにして得られるラマンスペクトルは物質に固有であるので、これにより物質の固定ができる。又、ある特定の波長におけるラマン散乱強度、物質量に比例する。
カーボン素材を構造的に分類すると、ダイヤモンド、グラファイト及びその中間状態にあると考えられるアモルファスカーボンに分けることができる。ラマン分光法はこれらのカーボンに対して特異的に高感度であり、存在量の変化に敏感に反応する。
ここで、このラマン分光法を用いた評価方法として、1000cm-1から1800cm-1の波数間にて得られ強度スペクトルを、2つのガウス関数(Ad及びAg)と直線(B)との重ね合わせで近似して、図6に示す3領域の面積値Ad、面積値Ag及び面積Bから、比率Ad/Ag、比率(Ad+Ag)/B、及び面積和(Ad+Ag)を求めた。
一般に、Ad/AgはDLCの硬さに相当し、(Ad+Ag)/BはDLCの耐摩耗性に相関があると言われており(特開2001−423529を参照)、これらを膜質とした。
また、面積和(Ad+Ag)はDLCの膜厚に相関があると言われており(特開2000−207736を参照)、結果においては、この相関関数より算出される換算値を膜厚として表している。
次に、例えば図1〜図3に示したプラズマCVD装置を用いて、非磁性支持体上に金属磁性薄膜が設けられているフィルム基材4上にDLC膜を成膜した具体例を説明する。
この成膜条件は下記の通りであった。
原料ガス : C24/Ar=110sccm/28sccm
反応圧力(反応管内): 30Pa
導入電力(放電電圧): DC1.2kV
磁場発生源 : 異方性フェライト永久磁石(表面磁束密度170 mT)、鉄製ヨーク
磁場発生源による磁場が存在する場合と存在しない場合とについて、電極4−8間距離を変化させたときのDCL膜の膜質及び成膜速度を比較した。
図7は、Ad/Ag(DLCの硬度に相当)と電極間距離との相関性(A)、(Ad+Ag)/B(DLCの耐摩耗性に相当)と電極間距離との相関性(B)、及び、成膜速度と電極間距離との相関性(C)をそれぞれ示す。
まず、図7(A)に示すように、磁場が存在する場合、電極間距離が60mmのときにはAd/Agは約0.53であり、電極間距離が180mmのときにはAd/Agは約0.58であることから、電極間距離を増加させると、DLCの硬度に相当するAd/Agは僅かに増加する。
これに対し、磁場が存在しない場合、電極間距離が60mmのときにはAd/Agは約0.56であり、電極間距離が180mmのときにはAd/Agは約0.56であることから、電極間距離を増加させても、DLCの硬度に相当するAd/Agには変化は見られないと言える。
従って、この結果から、磁場が存在する場合に、電極間距離を増加させると、DLCの硬度が磁場なしの場合に比べて僅かに増加することが分かる。
次に、図7(B)に示すように、磁場が存在する場合、電極間距離が60mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.83であり、電極間距離が180mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.5であることから、電極間距離を減少させると、DLCの耐摩耗性に相当する(Ad+Ag)/Bは著しく増大する。
これに対し、磁場が存在しない場合、電極間距離が60mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.48であり、電極間距離が180mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.48であることから、電極間距離を増加させても、DLCの耐摩耗性に相当する(Ad+Ag)/Bには変化は見られない。
この結果により、磁場が存在する場合と存在しない場合とで、電極間距離が180mmのときには差異は殆ど見られないが、電極間距離がそれより小さくなるに従って磁場が存在する方が(Ad+Ag)/Bが増大し、DLCの耐摩耗性が大きく向上し、特に電極間距離が60mmのときには、磁場なしの場合の約1.7倍又はそれ以上となる。従って、磁場が存在する場合には、電極間距離を180mm以下とし、減少させることにより、DLCの耐摩耗性を著しく向上させることができる。
次に、図7(C)に示すように、成膜速度と電極間距離との関係では、磁場が存在する場合、電極間距離が60mmのときには成膜速度は約780nm/minであり、電極間距離が180mmのときには成膜速度は約710nm/minであることから、電極間距離を増加させると、成膜速度は僅かに減少する。
これに対し、磁場が存在しない場合、電極間距離が60mmのときには成膜速度は約670nm/minであり、電極間距離が180mmのときには成膜速度は約680nm/minであることから、電極間距離を増加させても、成膜速度には殆ど変化は見られない。
この結果により、磁場が存在する場合と存在しない場合とで、電極間距離が180mmのときには差異は殆ど見られないが、電極間距離が60mmのときには磁場が存在する場合は磁場なしの場合に比べての成膜速度が約1.2倍となるので、磁場が存在する場合には電極間距離を減少させることにより成膜速度を向上させることができる。
図7に示した結果から、磁場とプラズマとの相乗効果によってDLCの膜質を向上させることが可能であり、ラマン分光評価により得られるDLCの特性として、硬度に相当するAd/Agの比率がほぼ変化しないで、(Ad+Ag)及び(Ad+Ag)/Bのそれぞれの値を増加させて耐摩耗性を向上させることができる。そして、(Ad+Ag)から換算される膜厚から、成膜レートを約1.2倍にすることもできることが分かる。
次に、上記において、原料ガスの種類によってDLC膜の膜質及び成膜レートが変化するか否かを検討した。
この成膜条件は下記の通りであった。
原料ガス : C24/Ar=110sccm/28sccm
: C36/Ar=110sccm/28sccm
反応圧力(反応管内) : 30Pa
導入電力(放電電圧) : DC1.2kV
磁場発生源 : 上記と同様
図8には、この条件で、磁場を存在させた場合、C24又はC36を用いて成膜されたDLC膜について、Ad/Agと電極間距離との相関性(A)、(Ad+Ag)/Bと電極間距離との相関性(B)、及び、成膜速度と電極間距離との相関性(C)をそれぞれ示す。
まず、図8(A)に示すように、C24を使用する場合、電極間距離が60mmのときにはAd/Agは約0.53であり、電極間距離が180mmのときにはAd/Agは約0.58であることから、電極間距離を増加させると、DLCの硬度に相当するAd/Agは僅かに増加する。
また、C36を使用する場合、電極間距離が60mmのときにはAd/Agは約0.6であり、電極間距離が180mmのときにはAd/Agは約0.57であることから、電極間距離を増加させると、DLCの硬度に相当するAd/Agは減少する。
この結果により、C24を使用する場合とC36を使用する場合とで、電極間距離が180mmのときには差異は殆ど見られないが、電極間距離が60mmのときにはC24を使用する場合のAd/AgよりもC36を使用する場合のAd/Agが大きくなり、約1.1倍となり、C36を使用する場合には、電極間距離を減少させることによりDLCの硬度を向上させることができる。
次に、図8(B)に示すように、C24を使用する場合、電極間距離が60mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.83であり、電極間距離が180mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.5であることから、電極間距離を減少させると、DLCの耐摩耗性に相当する(Ad+Ag)/Bは著しく向上する。
また、C36を使用する場合、電極間距離が60mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.78であり、電極間距離が180mmのときには(Ad+Ag)/Bは約0.35であることから、電極間距離を減少させると、C24の場合よりも値は低いが、DLCの耐摩耗性に相当する(Ad+Ag)/Bは著しく向上する。
この結果により、C24を使用する場合とC36を使用する場合とでは共に、DLCの耐摩耗性が、電極間距離が180mmのときから電極間距離が60mmのときにかけて、電極間距離を減少させるにつれて大きく向上し、DLCの耐摩耗性を著しく向上させることができる。特に、C24を使用する場合にはより向上させることができる。
次に、図8(C)に示すように、C24を使用する場合、電極間距離が60mmのときには成膜速度は約780nm/minであり、電極間距離が180mmのときには成膜速度は約720nm/minであることから、電極間距離を増加させると成膜速度は減少する。
また、C36を使用する場合、電極間距離が60mmのときには成膜速度は約1100nm/minであり、電極間距離が180mmのときには成膜速度は約1040nm/minであることから、電極間距離を増加させると成膜速度は減少する。
この結果により、C24を使用する場合とC36を使用する場合とでは、C36を使用する場合の方がAd/Ag及び成膜速度が大きく、C24を使用する場合の方が(Ad+Ag)/Bが大きくなる。
以上、本発明を実施の形態とその具体例について説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、永久磁石11と鉄製ヨークとの大きさ、形状、配置、材質、磁場強度等は、陽極8とフィルム基材(陰極)4との電極間距離等の条件に応じて変化させることができる。
また、反応管9のガス導入部18を、反応管9の側面から導入できるように設けてもよい。
また、絶縁フィルム等の金属層を有さない基材に対してDLCを成膜する時には、金属製の冷却用メインロール5を陰極として用いることができる。
また、保護膜を形成される被成膜体は、フィルム状のみならず板状であってよく、固定式等であってもよい。
また、磁場発生部17の構造として、永久磁石11と、コイル33及びコア34からなる電磁石とを組み合わせることもできる。
また、プラズマCVD装置としては、公知のプラズマ発生方法が適用可能である。例えば、熱陰極から放出された電子が陽極に流入するまでに気体分子と衝突し、これをイオン化或いは励起してプラズマを作る熱電子放電形、冷陰極にイオンが流入する時に引き出された電子が、陽極に向かって直進して流入するまでに気体分子と衝突してプラズマを作る2極放電形、マグネトロン放電形に代表されるような磁場収束形、高周波コイルを設けることで高周波電磁誘導によりプラズマを作る無電極形、マイクロ波を利用するECR形(Electron Cyclotron Resonance)等が挙げられる。
また、上記炭化水素系のガス20には、上記以外にも、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、トルエンなどを使用することができ、これらの原料を用いても、カーボン膜(アモルファス構造を主とするカーボン膜)、DLC膜(ダイアモンド構造を主とするカーボン膜)、ダイヤモンド膜などの炭素を主体とする薄膜を得ることが十分に可能である。
特に、この保護膜はDLC膜であることが好ましく、CVD法等でカーボン膜を形成したのち、高エネルギーのイオン(例えば、窒素イオン)をカーボン膜に照射することにより、DLC化を促進させることが可能である。
また、保護膜としては、カーボン膜以外にも、一般に使用されている他の原料を使用して保護膜を形成することも十分に可能である。例示すれば、CrO2、Al23、BN、Co酸化物、MgO、SiO2、Si34、SiNx、SiC、SiNx−SiO2、ZrO2、TiO2、TiC等が挙げられる。これらは単層膜であってもよいし、多層膜又は複合膜であってもよい。
また、非磁性支持体上には、強磁性金属材料を被着することにより、金属磁性薄膜が磁性層として形成されているが、この金属磁性材料としては、通常の蒸着テープ等に使用されるものであれば、如何なるものであってもよい。
例示すれば、Fe、Co、Ni等の強磁性金属やFe−Co、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Pt、Mn−Bi、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−Cr、等の強磁性合金が例示される。これらは、単層膜であっても、多層膜であってもよい。
更には、非磁性支持体と金属磁性薄膜間、あるいは多層膜の場合には、各層間の付着力向上及び保磁力の制御のため、下地層又は中間層を設けてもよい。
また、金属磁性薄膜の形成手段としては、真空下で強磁性材料を加熱蒸発させ、非磁性支持体上に沈着させる真空蒸着法や、強磁性材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーティング法、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こし、生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタリング法等、いわゆるPVD(Physical Vapor Deposition )技術を使用してもよい。
また、非磁性支持体としても公知の材料を使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル類の他、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂等が挙げられる。その形態も何ら限定されるものではなく、テープ状、シート状、ドラム状等いかなる形態であってもよい。
また、上述の金属磁性薄膜型の磁気記録媒体において、バックコート層等が必要に応じて形成されていてもよい。即ち、公知の方法と同様に、カーボン等の非磁性顔料を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の結合剤及び有機溶剤と共に混練することによってバックコート層用塗料を調製し、これを非磁性支持体の磁性層とは反対側の面に塗布することによって形成されるが、このとき使用される結合剤や有機溶剤はいずれも、従来公知のものが使用可能であり、何ら限定されるものではない。
また、上記した金属薄膜型の磁気記録媒体だけでなく、微細な磁性粒子と樹脂結合剤とを含む磁性塗料を非磁性支持体上に塗布し、これを磁性層とした、いわゆる塗布型の磁気記録媒体に適用してもよい。
なお、本発明は、磁気記録媒体以外に、光学的装置及び素子、半導体装置等に薄膜、例えば表面保護膜を成膜する場合にも適用可能である。
本発明の第1の実施の形態によるプラズマCVD装置の概略断面図である。 同、磁場発生部の拡大断面図である。 同、磁場発生部の分解斜視図である。 同、磁気記録媒体の断面図である。 本発明の第2の実施の形態によるプラズマCVD装置の概略断面図である。 DLCの強度スペクトルを表すグラフである。 本発明に基づいて成膜するに際し、磁場が存在する場合と存在しない場合とについて、Ad/Ag(DLCの硬度に相当)と電極間距離との相関性を表すグラフ(A)、(Ad+Ag)/B(DLCの耐摩耗性に相当)と電極間距離との相関性を表すグラフ(B)、及び、成膜速度と電極間距離との相関性を表すグラフ(C)である。 同、原料ガス種を変化させた場合について、Ad/Ag(DLCの硬度に相当)と電極間距離との相関性を表すグラフ(A)、(Ad+Ag)/B(DLCの耐摩耗性に相当)と電極間距離との相関性を表すグラフ(B)、及び、成膜速度と電極間距離との相関性を表すグラフ(C)である。 従来例によるプラズマCVD装置の概略断面図である。
符号の説明
1…巻き取りロール、2…巻き出しロール、
3a、3b、3c、3d、3e、3f…ガイドローラ、
4…フィルム基材(陰極)、5…冷却用メインロール、6…真空槽、
7…隙間部、8…陽極、8a…メッシュ部、9…反応管、10…DC電源、
11…永久磁石(マグネット)、13…ヨーク、14…多孔部、
16…真空ポンプ、17…磁場発生部、18…ガス導入部、19…反応管背面、
20…炭化水素ガス、21…キャリアガス、22…電界、23…磁場、
24A、24B…プラズマCVD装置、25…絶縁層、26…支持枠部、
27…枠部、28…H字部、29…基材、30…金属磁性層、
31…表面保護膜、32…磁気記録媒体、33…コイル、34…コア、
35…ガス導入領域、36…プラズマ発生領域

Claims (17)

  1. 成膜されるべき被成膜体の側を陰極とし、この陰極とこれに対向した陽極との間に発生する電界の作用下で原料ガスを分解して、前記被成膜体上に成膜を行うように構成された成膜装置において、前記陽極に関し前記陰極とは反対側に磁場発生源が配置され、この磁場発生源によって前記被成膜体の表面上に前記電界の方向と交差する方向に磁場が作用するように構成されたことを特徴とする成膜装置。
  2. 減圧雰囲気中、プラズマ発生下で前記原料ガスの分解を伴う化学的気相成長法により成膜が行われ、前記プラズマの発生領域の近傍にて、前記プラズマが直接接触しない前記陽極の背面側に前記磁場発生源が配置され、前記被成膜体の表面近傍で、前記電界の方向とは直交する方向に前記磁場が作用する、請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記磁場発生源が、前記陽極と電気的に接続されて同電位とされた状態で、電気的絶縁構造を介して容器内に配置されかつこの容器外の真空槽とも電気的に絶縁されている、請求項2に記載の成膜装置。
  4. 前記容器の内空間のうち、前記陰極と前記陽極との間がプラズマ発生空間であり、前記磁場発生源の側が原料ガス導入空間であり、この原料ガス導入空間から導入された前記原料ガスが前記陽極のガス通過部を通して前記プラズマ発生空間に導かれる、請求項3に記載の成膜装置。
  5. 前記原料ガスの通過部が設けられた前記磁場発生源のヨーク部は、磁束密度が飽和し難くてガス透過性の十分な断面形状を有する、請求項4に記載の成膜装置。
  6. 前記陽極及び前記磁場発生源が共にガス透過性の多孔構造体からなる、請求項5に記載の成膜装置。
  7. 前記磁場発生源が永久磁石又は電磁石からなる、請求項1に記載の成膜装置。
  8. 前記被成膜体が磁気記録媒体用の金属磁性層付きの非磁性支持体であり、前記金属磁性層上に非晶質炭素からなる保護膜が成膜される、請求項1に記載の成膜装置。
  9. 炭化水素系のガスの分解によって、前記保護膜が成膜される、請求項8に記載の成膜装置。
  10. 成膜されるべき被成膜体の側を陰極とし、この陰極とこれに対向した陽極との間に発生する電界の作用下で原料ガスを分解して、前記被成膜体上に成膜を行う成膜方法において、前記陽極に関し前記陰極とは反対側に磁場発生源を配置し、この磁場発生源によって前記被成膜体の表面上に前記電界の方向と交差する方向に磁場を作用させることを特徴とする成膜方法。
  11. 減圧雰囲気中、プラズマ発生下で前記原料ガスの分解を伴う化学的気相成長法により成膜を行い、前記プラズマの発生領域の近傍にて、前記プラズマが直接接触しない前記陽極の背面側に前記磁場発生源を配置し、前記被成膜体の表面近傍で、前記電界の方向とは直交する方向に前記磁場を作用させる、請求項10に記載の成膜方法。
  12. 前記磁場発生源を、前記陽極と電気的に接続して同電位とした状態で、電気的絶縁構造を介して容器内に配置しかつこの容器外の真空槽とも電気的に絶縁する、請求項11に記載の成膜方法。
  13. 前記容器の内空間のうち、前記陰極と前記陽極との間でプラズマを発生させ、前記磁場発生源の側に原料ガスを導入し、この導入された原料ガスを前記陽極のガス通過部から前記陰極と前記陽極との間に導く、請求項12に記載の成膜方法。
  14. 前記陽極及び前記磁場発生源を共にガス透過性の多孔構造体によって形成する、請求項13に記載の成膜方法。
  15. 前記磁場発生源として永久磁石又は電磁石を用いる、請求項10に記載の成膜方法。
  16. 前記被成膜体が磁気記録媒体用の金属磁性層付きの非磁性支持体であり、前記金属磁性層上に非晶質炭素からなる保護膜を成膜する、請求項10に記載の成膜装置。
  17. 炭化水素系のガスの分解によって、前記保護膜を成膜する、請求項16に記載の成膜装置。
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