JP2005290191A - 樹脂組成物、電子部品、コイル体及びインダクタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 膜厚が厚くても十分な密着性を有する硬化膜を形成可能な樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する本発明の樹脂組成物は、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−とを含有するものである。これにより、得られる硬化膜中に気泡が残存したり、ボイドが形成されたりすることが十分に抑制される。その結果、この硬化膜は、膜厚が厚いものであっても、十分に優れた密着性を確保することが可能となる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物、電子部品、コイル体及びインダクタに関する。
従来、熱硬化性樹脂組成物は、接着剤、塗料、電子材料などの分野を中心として広く使用されている。そのなかでもフェノール樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物などは、電子材料の分野において接着剤や電子部品の封止材料として使用されている(例えば、特許文献1参照)。
エポキシ樹脂組成物は、例えば、主剤であるエポキシ樹脂と、フェノール系樹脂と、無機酸などの硬化剤とから構成されるが、機械的強度の向上などを意図してシリカなどの無機材料との複合材料として使用される場合も多い。この場合、無機材料と有機材料との親和性を高めて硬化物の機械的強度、耐湿性、接着性等を向上させるために、エポキシ樹脂組成物にはシランカップリング剤が一般に添加されている。
また、近年、接着剤としての使用を意図して、有機材料と無機材料とを複合化したアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭63−236305号公報 特開2002−249539号公報
しかしながら、上記の特許文献1及び2に記載のようなエポキシ樹脂組成物を接着剤として使用すると、かかる樹脂組成物の混合・分散時や加熱硬化時に気泡が発生し、接着剤から得られる硬化膜中にその気泡が残存し、また、ボイドが形成される。こうなると、硬化膜の機械的強度が著しく低下する。
本発明者らの知見によれば、上述した特許文献1及び2に記載のエポキシ樹脂組成物においては、硬化膜の膜厚が100μmよりも厚くなると、硬化膜中における気泡の残存やボイドの形成が顕著になり、これらに起因してクラックが生ずる傾向にある。このため、接着面における密着性が不十分となり、また、気泡の発生によりハンドリング性が低下するということを、本発明者らは見出した。
特に、インダクタなどの電子部品に設けられた部材間の接着には、気密性向上のための封止を兼ね、かつ強固にその構成部材を接着するためにある程度の膜厚をもった硬化膜を形成させる場合がある。しかしながら、従来のエポキシ樹脂組成物を上述の部材間の接着に用いると、気泡の残存やボイドの形成に起因して、接着に供される部材が所望通りに配置され難くなる。このため、電子部品の気密性が低下して、所望の各種電気的特性を得難くなる。
本発明は、このような実情にかんがみてなされたものであり、膜厚が厚くても十分な密着性を有する硬化膜を形成可能な樹脂組成物、並びにこれを用いて形成された電子部品、コイル体及びインダクタを提供することを目的とする。
本発明者らは上記問題を解決することを目的として、樹脂組成物の硬化膜中において気泡が残存しボイドが形成される要因を検討したところ、気泡の残存やボイドの形成は、樹脂組成物の加水分解性基に起因することを見出した。更に詳細に検討を進めたところ、樹脂組成物に特定物質を含有せしめることで上記問題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−とを含有することを特徴とする。
本発明によれば、樹脂組成物に多孔質フィラ−を含有せしめることで、樹脂組成物の混合・分散時や加熱硬化時に、加水分解性基が加水分解や脱水縮合して発生するガスや熱硬化性樹脂が縮合する際に発生するガスを、多孔質フィラ−に吸着させることが可能になる。このため、硬化膜中での気泡の残存やボイドの形成、及びこれらに起因したクラックの発生が抑制される。したがって、樹脂組成物は硬化膜の膜厚の如何に拘わらず十分な密着力を有することができる。ここで、本発明における「加水分解性基」とは、樹脂の側鎖又は末端に結合する加水分解性を有する基を意味する。
また、本発明において、熱硬化性樹脂はシラン変性熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、上述した効果が顕著に得られる。ここで、シラン変性熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂にシリル基又はシロキシ基(シロキサン基)が導入されたものが挙げられる。
また、熱硬化性樹脂はシラン変性エポキシ樹脂を含むことが好ましく、このシラン変性エポキシ樹脂は下記一般式(1)で表されるものが好ましく、下記一般式(2)で表されるものがより好ましい。
Figure 2005290191
ここで、式(1)中、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基又はプロぺノキシ基を示し、m及びnはそれぞれ正の整数を示す。
Figure 2005290191
ここで、式(2)中、m及びnはそれぞれ正の整数を示す。
さらに、熱硬化性樹脂はシラン変性フェノール樹脂を含むことが好ましく、このシラン変性フェノール樹脂は下記一般式(3)で表されるものが好ましく、下記一般式(4)で表されるものがより好ましい。
Figure 2005290191
ここで、式(3)中、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基又はプロぺノキシ基を示す。m及びnはそれぞれ正の整数を示す。]
Figure 2005290191
ここで、式(4)中、m及びnはそれぞれ正の整数を示す。
本発明者らの知見によれば、樹脂組成物の硬化膜中における気泡の残存やボイドの形成は、上記特許文献1に記載のシランカップリング剤を配合したエポキシ樹脂組成物よりも、上記特許文献2に記載のアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の方が顕著であり、発泡体である硬化物しか得られない。これに対し、本発明の樹脂組成物においては、シラン変性エポキシ樹脂及び/又はシラン変性フェノール樹脂と、多孔質フィラ−とを組み合わせることで、硬化膜中における気泡の残存やボイドの形成、及びこれらに起因したクラックの発生を抑制することができる。
特に上記一般式(1)又は(3)で表される熱硬化性樹脂を用いると、その傾向が一層顕著となり、さらに上記一般式(2)又は(4)で表される熱硬化性樹脂を用いると、その傾向が特に顕著となる。
また、上述した多孔質フィラ−の平均粒径は、1μm以上であると好適である。こうすれば、樹脂組成物の硬化膜の膜厚を容易に所望の膜厚とすることができる。ここで、本発明における「平均粒径」とは二次粒子の平均粒径を意味し、光散乱法により測定することができる。
さらに、上述した多孔質フィラ−の細孔径は、0.2〜2nmであることが好ましい。このようにすれば、熱硬化性樹脂の加水分解性基などに起因して発生するガス(例えば、水やアルコール)を一層効率的に吸着することができる。ここで、本発明における「細孔径」とは平均細孔径を意味し、気体吸着法や水銀圧入法により測定することができる。
また、上述した多孔質フィラ−の比表面積は、300m/g以上であると更に有用である。こうすることにより、単位重量当たりの吸着能を高めることが可能になるため、水やアルコール等を一段と効率的に吸着することができる。ここで、本発明における「比表面積」は、気体吸着法により測定することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、接着剤として使用することができる。この接着剤は上述した樹脂組成物からなるものであるため、加熱硬化時における気泡の発生が抑制されている。このため、部材間の隙間への注入や、部品の少なくとも一部を封入する場合のように比較的膜厚の厚い硬化膜が必要とされるときにおいても、気泡の残存やボイドの形成、及びこれらに起因したクラックの発生が十分抑制することができる。したがって、本発明の樹脂組成物からなる接着剤は、十分な密着性を有することができる。
本発明はまた、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物からなる硬化物で少なくとも一部が被覆された被着体を備えており、かつ上記硬化物の膜厚が100μm以上であることを特徴とする電子部品を提供する。従来の硬化物においては、上述のように硬化物の膜厚が100μmよりも厚くなると、硬化膜中における気泡の残存やボイドの形成が顕著になり、これらに起因してクラックが生ずることがあった。これに対し、本発明の樹脂組成物からなる硬化物は、100μm以上の膜厚を有する場合であっても加熱冷却に伴う膨張収縮に起因した応力が十分に緩和されている。このため、本発明の電子部品は、その被着体の被覆面における気泡の残存やボイドの形成に起因した剥離やクラックが抑制される。なお、本発明の電子部品としては、例えば、インダクタ、コネクタ、リレー、コンデンサ、スイッチ、トランスが挙げられる。また、被着体としては、例えば、接着剤で接着される必要のある部品が挙げられる。具体的には、電子部品がインダクタである場合、それを構成するコイル、コア、端子などの部品が挙げられる。ここで、「硬化物」とは、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる固体材料を意味し、その形状は特に限定されず、膜状であっても、板状であってもよい。
本発明はさらに、磁性材料からなる本体コアと、該本体コアに捲回された巻線と、を備えるコイル体の少なくとも一部が、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物からなる硬化物で被覆されていることを特徴とするコイル体を提供する。かかる硬化物は上述した本発明の樹脂組成物から得られるものであるため、加熱冷却に伴う膨張収縮に起因した応力が十分に緩和されている。したがって、本発明のコイル体は、その被覆面に剥離やクラックが抑制された強固な硬化物を形成することができる。なお、本発明のコイル体としては、例えば、コイル部品が挙げられ、この場合の本体コアは磁心となる。
本発明はまた、磁性材料からなる有底筒体と、該有底筒体内に収容されたコイル体と、磁性材料からなる蓋体と、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物の硬化物と、を備え、上記有底筒体の開口及び上記蓋体が、上記硬化物で接着されていることを特徴とするインダクタを提供する。
このように本発明の接着剤を使用することで、有底筒体と蓋体との接着面において加熱硬化時の気泡の発生に起因した硬化膜の膨張による有底筒体と蓋体とのズレなどが生じ難くなるので、所望通りに有底筒体と蓋体とを接着することができる。このため、有底筒体と蓋体とを気密封止することが可能になる。したがって、インダクタのインダクタンスの著しい低下を防止することができる。
本発明によれば、膜厚が厚くても十分な密着性を有する硬化膜を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。また、この樹脂組成物を用いて形成された電子部品、コイル体及びインダクタを提供することが可能になる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−とを含有するものである。
まず、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂について説明する。かかる熱硬化性樹脂は、主鎖を構成する熱硬化性樹脂の末端又は側鎖に、加水分解性を有する基が結合した構造を有している。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらのなかで、熱硬化性樹脂としては、電子材料の接着性に優れる点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。また、加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、プロぺノキシ基等が挙げられる。さらに、これらの基がシリル基又はシロキサン基に結合したものであってもよい。これらの中では、取り扱いの容易性などから、アルコキシシリル基又はアルコキシシロキサン基が好ましい。ここで、アルコキシシロキサン基とは、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を構成している少なくとも1つのSi原子にアルコキシ基が結合している基をいう。
ここで、アルコキシ基としては、例えば、−ORで表される基が挙げられ、アセトキシ基としては、例えば、−OC(O)Rで表される基が挙げられる。また、オキシム基としては、例えば、−ON=C(Rで表される基が挙げられ、プロぺノキシ基としては、例えば、−OC(R)=CHで表される基が挙げられる。なお、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基を示し、Rが2つある場合には、それぞれのRが同一であっても異なっていてもよい。
また、加水分解性基を有するエポキシ樹脂としては、加水分解性を有するシラン変性エポキシ樹脂が好ましい。このシラン変性エポキシ樹脂は、例えば、以下のようにして得ることができる。先ず、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、クレゾール、レゾルシン、ナフトール、ヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、エピクロロヒドリンとを反応させてエポキシ樹脂を得る。次いで、このエポキシ樹脂の側鎖に存在する水酸基に、加水分解性を有するシラン化合物、例えば、アルキルトリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランを縮合反応させる。なお、加水分解性を有するシラン化合物の代わりにその部分加水分解物を用いることにより、エポキシ樹脂の側差に加水分解性を有するシロキサン基を導入することができる。
このようにして得られるエポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)は、好ましくは100〜500、より好ましくは100〜400、更に好ましくは100〜300である。なお、かかるエポキシ樹脂は、商業的に入手することができ、例えば、コンポセランE201、コンポセランE202、コンポセランE102、コンポセランE103(以上、荒川化学工業(株)製、商品名)等が挙げられる。
加水分解性基を有するフェノール樹脂としては、加水分解性を有するシラン変性フェノール樹脂が好ましい。このシラン変性フェノール樹脂は、例えば、以下のようにして得ることができる。先ず、フェノール、クレゾール、キシレノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、ホルマリン、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒドとを付加縮合させてフェノール樹脂を得る。次いで、このフェノール樹脂の末端又は側鎖に存在する水酸基に、加水分解性を有するシラン化合物、例えば、アルキルトリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランを縮合反応させる。なお、上述と同様に、加水分解性を有するシラン化合物の代わりにその部分加水分解物を用いることにより、フェノール樹脂の末端又は側鎖に加水分解性を有するシロキサン基を導入することができる。
このようにして得られるフェノール樹脂のフェノール性水酸基当量(g/eq)は、好ましくは100〜500、より好ましくは100〜400、更に好ましくは100〜300である。なお、かかるエポキシ樹脂は、商業的に入手することができ、例えば、コンポセランP501、コンポセランP502(以上、荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、このような構造のシラン変性エポキシ樹脂又はシラン変性フェノール樹脂は、主鎖を構成するエポキシ樹脂又はフェノール樹脂の熱的に弱い部位にシリル基又はシロキサン基を導入した構造を有しており、且つソル・ゲル反応により架橋可能な加水分解性基を有しているために、優れた耐熱性を有することができる。
また、シラン変性エポキシ樹脂としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましく、下記一般式(2)で表されるものがより好ましい。
Figure 2005290191
Figure 2005290191
シラン変性フェノール樹脂としては、下記一般式(3)で表されるものが好ましく、下記一般式(4)で表されるものがより好ましい。
Figure 2005290191
Figure 2005290191
上記一般式(1)及び(3)中、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、プロぺノキシ基を示し、アルコキシ基が好ましい。また、上記一般式(1)〜(4)中、m及びnはそれぞれ正の整数を示す。mは好ましくは1〜10、より好ましくは1〜7であり、nは好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。
なお、樹脂組成物においては、樹脂組成物の粘度やポットライフに影響を与えない範囲で、加水分解性を有する熱硬化性樹脂を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、加水分解性を有する熱硬化性樹脂と、これ以外の樹脂とを組み合わせて使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂としてシラン変性フェノール樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂と併用してもよい。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
次に、多孔質フィラーについて説明する。
多孔質フィラーとしては、多孔性の固体材料であれば特に制限はなく、例えば、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、多孔性シリカ、アルミナ、酸化チタン、モレキュラシーブ、軽石、凝灰岩、流絞岩、石英安山岩、レティキュライト(reticulite)、スコリア、ラピリ(火山礫)、集塊岩、パーライト(真珠岩)、ピューミサイト(pumicite)、石炭、骨炭、木炭が挙げられる。これらの中でも、樹脂成分との相溶性の点から、ゼオライト、多孔性シリカ、アルミナが好ましい。
また、多孔質フィラーの平均粒径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2〜10μm、更に好ましくは4〜8μmである。かかる平均粒径が1μm未満であると、発生ガスの吸着能が低下し、所望の膜厚を有する硬化膜を得難くなる傾向にある。なお、樹脂組成物中での分散性の観点から、かかる平均粒径の上限は10μmであることが望ましい。
さらに、多孔質フィラ−の細孔径は、好ましくは0.2〜2nm、より好ましくは0.2〜1.5nm、更に好ましくは0.2〜1nmである。かかる細孔径が0.2nm未満であると、樹脂組成物の混合・分散時や加熱硬化時に発生するガスの吸着が不十分となる傾向がある。一方、また、かかる細孔径が2nmを超えると、硬化剤成分等を吸着し、熱硬化性樹脂の硬化性が低下する傾向がある。また、かかる細孔径を好適範囲とすることで、アルコールや水が会合したとしても効率的に吸着することができる。
またさらに、多孔質フィラ−の比表面積は、好ましくは300m/g以上、より好ましくは500m/g以上、更に好ましくは600m/g以上である。かかる比表面積が300m/g未満であると樹脂組成物の混合・分散時や加熱硬化時に発生するガスの吸着が不十分となる傾向がある。なお、樹脂の流動性の観点から、かかる比表面積の上限は1000m/gであることが望ましい。
多孔質フィラーの含有量は、樹脂組成物の全質量基準で、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。多孔質フィラーの含有量が10質量%未満であると、熱硬化性樹脂の加水分解性基が加水分解や脱水縮合して発生するガスの吸着が不十分となる傾向がある。一方、かかる含有量が70質量%を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて流動性等のハンドリング性が低下する傾向がある。
本実施形態に係る樹脂組成物は、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と多孔質フィラ−とを必須成分とするものであるが、樹脂組成物の粘度やポットライフに影響を与えない範囲で、必要に応じて硬化剤、その他添加剤を含有することができる。
硬化剤としては、従来公知の硬化剤を配合することができる。硬化剤としては、例えば、フェノール類、イミダゾール類(その誘導体を含む)、ジシアンジアミド、アミン類、酸無水物類が挙げられる。これらのうちの少なくとも1種の硬化剤を配合することで、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進することができる。
フェノール類としては、例えば、ザイロック型フェノール、ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダーゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−プロピル−2−イチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フエニルイミダゾール、1−アジン−2−メチルイミダゾール、1−アジン−2−ウンデシルイミダゾールなどが挙げられる。アミン類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール、1,8ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロペリット酸などが挙げられる。
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。硬化剤の含有量が5質量部未満であると、熱硬化性樹脂の硬化反応が不十分となり架橋密度が低下する傾向がある。一方、かかる含有量が50質量部を超えると、硬化時の発熱が大きくなり、その熱応力により接着力が低下する可能性がある。
また、熱硬化性樹脂の加水分解性基を加水分解縮合させること目的としてゾル・ゲル硬化触媒を含有することができる。ゾル・ゲル硬化触媒としては、オクチル酸スズ、スズ酸カリウム、スズ酸ナトリウムが挙げられる。
ゾル・ゲル硬化触媒の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5〜7質量部、より好ましくは1〜5質量部、更に好ましくは1〜3質量部である。硬化剤の含有量が0.5質量部未満であると、熱硬化性樹脂の加水分解性基のゾル・ゲル反応が不十分となり架橋密度が低下する傾向がある。一方、かかる含有量が7質量部を超えると、含有量に見合うだけの硬化反応の促進効果が得られず経済的に不利になる傾向がある。
また、添加剤として、必要に応じてアルコキシシラン化合物を含有してもよい。アルコキシシラン化合物を含有することで、エポキシ樹脂と多孔質フィラ−との親和性を高めて硬化物の機械的強度、耐湿性、接着性等を向上させることができる。アルコキシシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシランなどが挙げられる。
アルコキシシラン化合物の含有量は、熱硬化性樹脂の全質量基準で、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.2〜2質量部、更に好ましくは0.5〜1質量部である。硬化剤の含有量が0.1質量部未満であると、硬化物の機械的強度、耐湿性、接着性等が不十分となる傾向がある。一方、かかる含有量が3質量部を超えると、含有量に見合うだけの硬化物の機械的強度、耐湿性、接着性等の向上効果が得られず経済的に不利になる傾向がある。
(接着剤)
本実施形態にかかる接着剤は、上述した樹脂組成物からなるものである。かかる樹脂組成物は、多孔質フィラーを含有することで、混合・分散時又は加熱硬化時における気泡の発生が抑制されている。このため、かかる接着剤から得られる硬化膜は、膜厚の如何に拘わらず硬化膜中に気泡の残存やボイドの形成、及びこれらに起因したクラックの発生が十分に抑制されている。したがって、電子部品の接着を目的としてかかる接着剤を使用すれば、電子部品の部材間の隙間を硬化膜の膜厚の如何に拘わらず十分な密着性をもって気密封止することができる。更に本実施形態の接着剤により、耐熱性に優れ、接着強度の高い高強度、高信頼性の電子部品を提供することができる。
(インダクタ及びコイル体)
次に、インダクタについて説明する。図1は、本実施形態にかかるインダクタの概略斜視図である。図2は、本実施形態にかかるインダクタのI−I方向に沿ってとられた断面図である。本実施形態にかかるインダクタ10は、蓋体1と、有底筒体3と、コイル体5と、接着層7とを備える。蓋体1と有底筒体3とは、磁性材料であるNi−Zn系のフェライト材から構成されている。接着層7は、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物からなる接着剤の硬化物で構成されている。接着層7の側面には、蓋体1の外周部が接着している。また、接着層7の底面には、有底筒体3の開口端が接着している。接着層7の膜厚は、特に限定されないが、例えば、1mm程度である。このように、蓋体1及び有底筒体3の開口は接着層7を介して接着されており、有底筒体3の開口が接着層7と蓋体1とで密封されている。また、蓋体1と有底筒体3との接着形態としては、図3に示すように蓋体1と有底筒体3とが当接することなく接着層7を介して接着されていてもよい。
図4(a)、(b)は、それぞれ本実施形態にかかるコイル体の例を示す断面図である。図4(a)に示すコイル体5は、絶縁材料が被覆された銅からなる巻線2がドラム型の本体コア4に捲回されたものである。図4(b)に示すコイル体5は、絶縁材料が被覆された銅からなる巻線2が筒状の本体コア4に捲回されたものである。なお、コイル体の構造は、図4(a)、(b)に限定されるものではない。また、巻線2は、これを本体コア4に固定するために上述した本実施形態の樹脂組成物からなる硬化物で被覆されていてもよい。
このように本実施形態にかかるインダクタ10は、蓋体1と有抵筒体3とが接着層7を介して接着されている。この接着層7の膜厚は1mm程度と電子部品の接着層としては比較的厚いものであるが、接着層7中の気泡の残存やボイドの形成、及びこれらに起因したクラックの発生が十分に抑制されている。これにより、気泡やボイドに起因する接着層7の体積膨張が抑制され、蓋体1及び有底筒体3間にズレなどを生ずることなく所望通りの接着が可能になる。したがって、蓋体1と有底筒体3とが十分な密着性を有しているので、インダクタ10のインダクタンスの低下が防止される。
次に、インダクタ10の製造方法を説明する。まず、蓋体1、有底筒体3、コイル体5及び接着剤を準備する。接着剤としては、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−とを含有する樹脂組成物を使用する。次いで、有抵筒体3にコイル体5を収容した後、有底筒体3に蓋体1を載置する。次に、蓋体1及び有底筒体3の隙間に接着剤を塗布し、熱硬化させる。これにより、熱硬化された接着剤は、接着層7を形成する。なお、接着剤の塗布には、ディスペンサー等を使用することができる。このようして、インダクタ10が製造される。
上記実施形態においては、インダクタ10の蓋体1及び有底筒体3の接着に本発明の接着剤を使用する場合を説明した。本発明の接着剤は、比較的膜厚の厚い接着層7を形成することを目的に好適に使用することができ、インダクタ以外の他の電子部品、例えば、コネクタ、リレー、コンデンサ、スイッチ、トランスなどの接着に使用することができる。また、半導体素子の封止材料としても適用可能である。さらに、上記実施形態においては、インダクタ10の有底筒体3内に収容されたコイル体5として、当該コイル体の少なくとも一部が上述した本実施形態の樹脂組成物からなる硬化物により被覆されたものを用いてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(樹脂組成物の調製)
シラン変性エポキシ樹脂100質量部(コンポセランE201、荒川化学工業(株)製)、硬化剤25質量部(MY24、味の素ファインテクノ(株)製)、ゾル・ゲル硬化触媒2.7質量部(オクチル酸スズ)、及び樹脂組成物の全質量基準で20質量%の多孔質フィラー(ゼオライト(NA−110P、平均粒径2.9μm、細孔径0.4nm、比表面積600m/g、日本化学工業(株)製)を混合容器に秤量して、常温で1分間手混合した後、擂潰機で30分間混合した。次いで、自公転方式のミキサーで2分間攪拌した後、2分間脱泡を行い、実施例1の樹脂組成物を得た。
(実施例2〜6及び比較例1、2)
各材料及び配合量を表1に記載のものに代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例2〜6及び比較例1、2の樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、表1中の硬化剤、ゾル・ゲル硬化触媒の配合量は、シラン変性エポキシ樹脂又はシラン変性フェノール樹脂100質量部に対する質量(質量部)を意味し、多孔質フィラーの配合量は、樹脂組成物の全質量基準の割合(質量%)を意味する。
Figure 2005290191
シラン変性エポキシ樹脂:コンポセランE201、荒川化学工業(株)製、商品名
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:828、JER製、商品名
シラン変性フェノール樹脂:コンポセランE501、荒川化学工業(株)製、商品名
イミダゾール系潜在性硬化剤:PN23、味の素ファインテクノ(株)製、商品名
アミン系潜在性硬化剤:MY24、味の素ファインテクノ(株)製、商品名
多孔質フィラ−:ゼオライト(NA−110P、平均粒径2.9μm、細孔径0.4nm、比表面積600m/g、日本化学工業(株)製、商品名)
多孔質フィラ−:ゼオライト(NA−114P、平均粒径1.4μm、細孔径0.4nm、比表面積600m/g、日本化学工業(株)製、商品名)
多孔質フィラ−:ゼオライト(CA−110P、平均粒径2.9μm、細孔径0.5nm、比表面積600m/g、日本化学工業(株)製、商品名)
多孔質フィラ−:ゼオライト(CA−114P、平均粒径1.9μm、細孔径0.5nm、比表面積600m/g、日本化学工業(株)製、商品名)
多孔質フィラ−:ゼオライト(CX−110P、平均粒径7.6μm、細孔径0.8nm、比表面積600m/g、日本化学工業(株)製、商品名)
(発泡性試験)
アルミ製の容器(φ3cm×高さ1cmm)に、実施例1〜6及び比較例1、2で得た樹脂組成物20gを投入し、150℃/30分で硬化させ、得られた硬化物の発泡状態を以下の評価基準に従い目視で観察した。試験結果を表2に示す。
評価基準:
◎:気泡が硬化物中にほとんど観察されない。
○:小さな気泡が硬化物の所々に観察される。
△:小さな気泡が硬化物全体に観察される。
×:発泡により硬化物に亀裂が生じている。
Figure 2005290191
(インダクタンスの測定)
Ni−Zn系のフェライト材からなる有底筒体に予め芯径3mm、40ターンのコイル体を作製した後、円盤状の蓋体を有底筒体上に載置した。有抵筒体の寸法は、10mm角であり、高さは6mmである。コイル体のコイルの巻き数は40回である。蓋体は、直径8mmである。次に、蓋体1及び有底筒体3の隙間に実施例6で得た接着剤を塗布し、150℃で30分熱硬化させて、インダクタを作製した。次いで、LCRメータを用いて、100kHz、0.25mAの条件でインダクタのインダクタンスLsを測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2005290191
本発明にかかるインダクタの一例を示す概略斜視図である。 本発明にかかるインダクタの一例を示す断面図である。 本発明にかかるインダクタの他の例を示す断面図である。 (a)、(b)は、それぞれ本発明にかかるインダクタのコイル体の例を示す断面図である。
符号の説明
1…蓋体、3…有底筒体、5…コイル体、7…接着層、10…インダクタ。

Claims (12)

  1. 加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記熱硬化性樹脂がシラン変性熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記熱硬化性樹脂がシラン変性エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. 前記シラン変性エポキシ樹脂が下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
    Figure 2005290191
    [式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基又はプロぺノキシ基を示す。m及びnはそれぞれ正の整数を示す。]
  5. 前記熱硬化性樹脂がシラン変性フェノール樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記シラン変性フェノール樹脂が下記一般式(3)で表されるものであることを特徴とする請求項5記載の樹脂組成物。
    Figure 2005290191
    [式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基又はプロぺノキシ基を示す。m及びnはそれぞれ正の整数を示す。]
  7. 前記多孔質フィラ−の平均粒径が1μm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記多孔質フィラ−の細孔径が0.2〜2nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記多孔質フィラ−の比表面積が300m/g以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物からなる硬化物で少なくとも一部が被覆された被着体を備えており、かつ前記硬化物の膜厚が100μm以上であることを特徴とする電子部品。
  11. 磁性材料からなる本体コアと、該本体コアに捲回された巻線と、を備えるコイル体の少なくとも一部が、加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物からなる硬化物で被覆されていることを特徴とするコイル体。
  12. 磁性材料からなる有底筒体と、
    該有底筒体内に収容されたコイル体と、
    磁性材料からなる蓋体と、
    加水分解性基を有する熱硬化性樹脂と、多孔質フィラ−と、を含有する樹脂組成物の硬化物と、
    を備え、
    前記有底筒体の開口及び前記蓋体が、前記硬化物で接着されていることを特徴とするインダクタ。
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