以下、本実施形態に係るガスバリア用塗料組成物及び発光装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[ガスバリア用塗料組成物]
本実施形態のガスバリア用塗料組成物は、水分を吸着する多孔性物質を蛍光体の周囲に配設し、水分と蛍光体との接触を少なくすることにより、蛍光体の劣化を抑制する封止材を得ることができるものである。なお、本明細書において、「ガスバリア用塗料組成物」を「塗料組成物」ともいう。
本実施形態のガスバリア用塗料組成物は、光透過性を有する硬化性樹脂の前駆体と、当該硬化性樹脂の前駆体に分散した、多孔性物質としてのゼオライトとを含有している。後述するように、当該前駆体が硬化してなる硬化性樹脂の内部に、ゼオライトと蛍光体とが分散することにより、硬化性樹脂に浸入した水分がゼオライトにより吸着されて固定化される。このため、硬化性樹脂の内部で、水分と蛍光体との水和反応が抑制されることから、蛍光体の劣化を低減することが可能となる。
ガスバリア用塗料組成物が硬化してなる硬化性樹脂は、光透過性を有することが好ましく、可視光線に対して高い透過性を有する樹脂であることが特に好ましい。硬化性樹脂は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。後述するように、これら樹脂は可視光線の透過率が高く、容易に硬化するため、発光素子を封止する封止材のマトリクス樹脂として好適である。そのため、塗料組成物に含まれる硬化性樹脂の前駆体は、シリコーン樹脂前駆体、アクリル樹脂前駆体、エポキシ樹脂前駆体及びポリカーボネート樹脂前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
シリコーン樹脂は、シロキサン結合からなる直鎖状高分子が架橋することで三次元網状構造となっている樹脂である。シリコーン樹脂としては、側鎖が例えばメチル基で構成されるジメチル系シリコーンや、一部分が芳香族系分子に置換されている芳香族系シリコーンがある。
なお、シリコーン樹脂は、前駆体であるアルコキシシランを加水分解した後に脱水縮合させて得られる縮合物からなるものであってもよい。アルコキシシランの具体例としては、例えば、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、エチルジメチルメトキシシランが挙げられる。メチルジエチルメトキシシラン、エチルジメチルエトキシシラン、メチルジエチルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシランも挙げられる。また、メチルジフェニルメトキシシラン、エチルジフェニルメトキシシラン、メチルジフェニルエトキシシラン、エチルジフェニルエトキシシラン、tert−ブトキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシランも挙げられる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランも挙げられる。N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランも挙げられる。メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、N−β−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランも挙げられる。トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシランも挙げられる。なお、アルコキシシランは一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、ガスバリア用塗料組成物においてシリコーン樹脂前駆体を使用する場合、シリコーン樹脂前駆体を重合させるための硬化剤を使用することが好ましい。
また、シリコーン樹脂前駆体としては、全ての成分が一つの包装になっている一液型と、主剤と硬化剤が別々の包装になっている二液型が存在するが、本実施形態ではいずれも使用することができる。
アクリル樹脂は、前駆体である(メタ)アクリル系モノマーを重合させたものである。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートも挙げられる。また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートも挙げられる。ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートも挙げられる。なお、(メタ)アクリル系モノマーは一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、ガスバリア用塗料組成物において、アクリル樹脂前駆体を使用する場合、アクリル樹脂前駆体を重合させるための重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方を用いることができる。光重合開始剤としては、例えばベンゾインエーテル系、ケタール系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、及びチオキサントン系からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾ化合物,過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、ベンゼンスルホン酸エステル及びアルキルスルホニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上含む、前駆体としてのプレポリマーを、硬化剤で硬化した樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いることができる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂を用いることもできる。さらに、これらのエポキシ樹脂を種々の材料で変性させた変性エポキシ樹脂等も使用することができる。また、これらのエポキシ樹脂の臭素化物、塩素化物等のハロゲン化物も用いることができる。エポキシ樹脂は、これらのうちの一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であれば、如何なる化合物を用いることができる。公知のエポキシ硬化剤を適宜用いることができるが、特にアミノ基、酸無水物基、ヒドロキシフェニル基を有する化合物が適している。例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、有機酸ヒドラジット、アミンイミド、脂肪族アミン、芳香族アミン、3級アミン、ポリアミンの塩、マイクロカプセル型硬化剤、イミダゾール型硬化剤、酸無水物、フェノールノボラック等が挙げられる。硬化剤は、これらのうちの一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、前駆体である二価フェノールと、ホスゲン又は炭酸ジエステル化合物とを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体、及びこれらの共重合体である芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂としては、二酸化炭素と前駆体であるエポキシドとの共重合体によって得られる脂肪族ポリカーボネート樹脂も挙げられる。さらにポリカーボネート樹脂としては、これらを共重合した芳香族−脂肪族ポリカーボネートも挙げられる。なお、ポリカーボネート樹脂は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
ガスバリア用塗料組成物は、空気中の水分を吸着する多孔性物質として、ゼオライトを含んでいる。水分を吸着する多孔性物質としては、ゼオライトの他にも、カーボンブラックなどのカーボン粒子、並びにモンモリロナイトなどの粘土粒子が挙げられる。ただ、カーボン粒子及び粘土粒子に比べて、ゼオライトは、塗料組成物を硬化して得られる封止材の光線透過率を高めることができる。そのため、塗料組成物に含まれる多孔性物質としては、ゼオライトを用いることが好ましい。
ガスバリア用塗料組成物に含まれるゼオライトは、結晶内にナトリウムイオンを含むことが好ましい。ゼオライトの骨格内に含まれる陽イオンとしては、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)などが挙げられる。ここで、カリウムイオンのイオン径はナトリウムイオンよりも大きいため、ゼオライトの結晶構造が同じである場合には、カリウムイオンを含有するゼオライトの方が細孔径は小さくなる。その結果、カリウムイオンを含有するゼオライトは、ナトリウムイオンを含有するゼオライトよりも、細孔内で水分を吸着する機能が低下する。また、カルシウムイオンを含有するゼオライトは、ナトリウムイオンを含有するゼオライトよりも水蒸気との親和性が低く、水分の吸着性能に劣る。そのため、本実施形態では、水分を効率的に吸着する観点から、ゼオライトは結晶内にナトリウムイオンを含むことが好ましい。
ガスバリア用塗料組成物に含まれるゼオライトは、平均細孔径(Å)と比表面積(cm3/g)との積が1600cm3・Å/g以上であることが好ましい。ゼオライトの平均細孔径と比表面積との積が大きいほど、ゼオライトが有効に水分を吸着することができる面積が増大する。そして、平均細孔径(Å)と比表面積(cm3/g)との積が1600cm3・Å/g以上である場合には、塗料組成物からなる封止材に浸入した水分を効率的に吸着することが可能となる。なお、ゼオライトの平均細孔径及び比表面積は、窒素ガス吸着法により求めることができる。
ここで、ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、SiO2四面体とAl2O3四面体とが三次元網目状に結合した鉱物である。そして、結晶骨格中のシリカとアルミナの比率が変わると、水分との親和性が変化し、水分吸着量も変化する。そのため、塗料組成物に含まれるゼオライトは、シリカに対するアルミナの比率(SiO2/Al2O3)が1以上であることが好ましい。SiO2/Al2O3≧1の場合には、ゼオライトが親水性となることから、水分吸着量を高めることが可能となる。なお、シリカに対するアルミナの比率(SiO2/Al2O3)の上限は、水分吸着量が高まるならば特に限定されないが、例えばSiO2/Al2O3は10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
ガスバリア用塗料組成物に含まれるゼオライトの粒子径は、特に限定されない。ただ、ゼオライトの粒子径が小さい場合には、塗料組成物からなる封止材の内部で、ゼオライトが高分散する。その結果、水分とゼオライトが接触しやすくなり、水分の吸着性を高めることができる。そのため、塗料組成物に含まれるゼオライトの平均粒子径は、10000nm以下であることが好ましく、5000nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。なお、ゼオライトの平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば10nmとすることができる。そのため、ゼオライトの平均粒子径は10nm〜100nmであることが特に好ましい。なお、ゼオライトの平均粒子径(D50)は、例えば動的光散乱法により測定することができる。
ガスバリア用塗料組成物において、硬化性樹脂に対するゼオライトの添加量は0.1〜50質量%であることが好ましい。ゼオライトの添加量がこの範囲内であることにより、封止材の内部でゼオライトが高分散し、水分とゼオライトが接触しやすくなることから、水分の吸着性を高めることができる。また、ゼオライトの添加量がこの範囲内であることにより、ガスバリア用塗料組成物が硬化してなる封止材の光線透過率が高まるため、光の取り出し効率を向上させることができる。なお、硬化性樹脂に対するゼオライトの添加量は3〜50質量%であることがより好ましい。
ガスバリア用塗料組成物は、硬化性樹脂の前駆体に分散した蛍光体をさらに備えることが好ましい。塗料組成物に蛍光体を添加することにより、得られる封止材の内部で、ゼオライトと蛍光体が高分散する。そして、硬化性樹脂に浸入した水分がゼオライトにより吸着されることから、蛍光体と水分との接触が抑制され、蛍光体の劣化を防ぐことが可能となる。また、塗料組成物に蛍光体を分散させることにより、得られる封止材で蛍光体が高分散状態となることから、蛍光体が励起光を吸収しやすくなり、蛍光体の波長変換効率を高めることが可能となる。
蛍光体としては、発光素子から発せられた一次光を吸収し、当該一次光よりも長波長側にシフトした二次光を出射するものを用いることができる。このような蛍光体としては、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
青色蛍光体は、発光素子の一次光により励起され、青色光を出射する。緑色蛍光体及び黄色蛍光体も発光素子の一次光により励起され、それぞれ緑色光及び黄色光を出射する。青色蛍光体は470nm〜500nmの波長領域に発光ピークを持ち、緑色蛍光体は500nm〜540nmの波長領域に発光ピークを持ち、黄色蛍光体は545nm〜595nmの波長領域に発光ピークを持つものである。青色蛍光体としては、例えばBaMgAl10O17:Eu2+、CaMgSi2O6:Eu2+、Ba3MgSi2O8:Eu2+、Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+などが挙げられる。緑色蛍光体としては、例えば(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+,Mn2+が挙げられる。黄色蛍光体としては、例えば(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、(Y,Gd)3Al5O12:Ce3+、α−Ca−SiAlON:Eu2+が挙げられる。
赤色蛍光体は、発光素子や、緑色蛍光体及び黄色蛍光体の少なくとも一方の光により励起され、赤色光を出射する。そして、赤色蛍光体は、600nm〜650nmの波長領域に発光ピークを持つものである。赤色蛍光体としては、例えばSr2Si5N8:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、SrAlSi4N7:Eu2+、CaS:Eu2+、La2O2S:Eu3+、Y3Mg2(AlO4)(SiO4)2:Ce3+が挙げられる。
なお、ガスバリア用塗料組成物に含まれる蛍光体の平均粒子径は特に限定されないが、例えば1μm〜50μmとすることができる。蛍光体の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
本実施形態のガスバリア用塗料組成物は、ゼオライトを分散させるために、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、液体の塗料組成物においてゼオライトを分散させることが可能であれば特に限定されない。界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
硬化性樹脂の前駆体及びゼオライトを混合する際、塗料組成物に分散溶媒を添加して、塗布しやすいように粘度を調整することが好ましい。粘度調整用の分散溶媒としては、水及び有機溶剤の少なくとも一方を使用することができる。有機溶剤は特に限定されないが、塗膜作成時に揮発しやすいものを適宜選択することが好ましい。有機溶剤としては、例えば芳香族炭化水素類(トルエン及びキシレンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンなど)を挙げることができる。さらに、脂肪族炭化水素類(ヘキサン及びヘプタンなど)、エーテル類(テトラヒドロフランなど)、アミド系溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルアセトアミド(DMAc)など)、酢酸メチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの有機溶剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
次に、本実施形態のガスバリア用塗料組成物の製造方法について説明する。塗料組成物は、上述の硬化性樹脂の前駆体及びゼオライト、並びに必要に応じて添加する蛍光体、界面活性剤及び分散溶媒を混合することにより調製することができる。混合条件は特に限定されず、大気中、常温で混合することができる。また、硬化性樹脂の前駆体、ゼオライト、蛍光体、界面活性剤及び分散溶媒の混合順序も特に限定されない。
このように、本実施形態のガスバリア用塗料組成物は、光透過性を有する硬化性樹脂の前駆体と、硬化性樹脂の前駆体に分散したゼオライトとを備える。ゼオライトは、結晶内にナトリウムイオンを含み、平均細孔径と比表面積との積が1600cm3・Å/g以上であり、さらにシリカに対するアルミナの比率(SiO2/Al2O3)が1以上である。また、ガスバリア用塗料組成物は、硬化性樹脂の前駆体に分散した蛍光体をさらに備えることが好ましい。
ガスバリア用塗料組成物中の硬化性樹脂の前駆体が重合して硬化することにより、発光装置の封止材を得ることができる。そして、当該封止材では、蛍光体とゼオライトが高分散し、蛍光体の周囲にゼオライトが配設する構成となっている。そのため、封止材の外部から硬化性樹脂に浸入した水分は、ゼオライトにより吸着されて固定化され、水分と蛍光体との水和反応が抑制される。そして、蛍光体が加水分解して劣化することを抑制できることから、蛍光体の発光効率を長期間に亘り高い状態に維持し、出力光の色バランスを良好にすることが可能となる。
また、ガスバリア用塗料組成物において、ゼオライトは、結晶内にNaイオンを含み、平均細孔径と比表面積との積が1600cm3・Å/g以上であり、さらにSiO2/Al2O3が1以上である。このようなゼオライトは、硬化性樹脂中に分散しても水分の吸着能が高いことから、蛍光体の劣化を効率的に抑制することが可能となる。
なお、本実施形態のガスバリア用塗料組成物の用途は、発光装置の封止材に限定されない。つまり、ガスバリア用塗料組成物が硬化してなるガスバリア性樹脂組成物は、水分の吸着性能及び光線透過率が良好である。そのため、ガスバリア性樹脂組成物を膜状に成形し、例えば電気・電子部品の保護膜として使用することができる。また、このような保護膜では蛍光体は不要であることから、ガスバリア用塗料組成物は蛍光体を含まなくてもよい。
[発光装置]
次に、本実施形態に係る発光装置について説明する。本実施形態の発光装置は、基板と、基板上に配置された発光素子と、上述のガスバリア用塗料組成物が硬化してなり、かつ、発光素子を封止する封止材とを備える。
本実施形態の発光装置は、発光素子を封止する封止材として、ガスバリア用塗料組成物を硬化してなるガスバリア性樹脂組成物を用いている。そして、ガスバリア性樹脂組成物の内部は、水分の吸着性能が高いゼオライトが高分散していることから、蛍光体の水和反応による劣化を抑制することが可能となる。また、ガスバリア性樹脂組成物のマトリクス樹脂である硬化性樹脂は、可視光線の透過率が高いことから、発光素子から発せられる一次光及び蛍光体によって波長変換された二次光を効率的に出射することができる。
発光装置における封止材は、次のように製造することができる。まず、液状のガスバリア用塗料組成物を発光素子の表面に塗布する。塗布方法は特に限定されず、例えば液状のガスバリア用塗料組成物を発光素子の表面に滴下することにより、塗布することができる。また、ガスバリア用塗料組成物を膜状に塗布するには、塗工法や印刷法を用いることができる。
塗料組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥処理を行い、塗料組成物中の分散溶媒を除去してもよい。なお、乾燥条件は、分散溶媒が除去される条件ならば特に限定されず、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。
次に、ガスバリア用塗料組成物中の硬化性樹脂の前駆体を重合する。重合方法は、硬化性樹脂の前駆体の種類により適宜選択することが好ましい。硬化性樹脂の前駆体が加熱により重合する場合には、塗料組成物を加熱して、硬化性樹脂の前駆体を重合させる。なお、加熱温度は特に限定されず、硬化性樹脂の前駆体が重合を開始する温度とすることができる。
ガスバリア用塗料組成物が光重合開始剤を含む場合には、活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂の前駆体を重合させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線の少なくともいずれか一つを用いることができる。これらの活性エネルギー線のうち、硬化性及び樹脂劣化の防止の観点から紫外線又は電子線を用いることが好ましい。また、ガスバリア用塗料組成物が熱重合開始剤を含む場合には、塗料組成物を加熱して、硬化性樹脂の前駆体を重合させる。なお、加熱温度は特に限定されず、使用する熱重合開始剤が分解して活性種を発生する温度とすることができる。
このように、ガスバリア用塗料組成物中の硬化性樹脂の前駆体が重合して硬化することにより、ガスバリア性樹脂組成物からなる封止材を得ることができる。
本実施形態に係る発光装置について、さらに詳細に説明する。図1及び図2は発光装置10の外観を示しており、図3は発光装置10の内部構造を示している。なお、図3では、図2における封止材13及びダム材14を取り除き、発光素子12の配列及び配線パターンなどの内部構造を示している。
図1乃至図4に示すように、本実施形態の発光装置10は、基板11と、LEDチップからなる複数の発光素子12と、封止材13と、ダム材14とを備える。発光装置10は、基板11に発光素子12が直接実装された、いわゆるCOB(Chip On Board)構造のLEDモジュールである。
基板11は、配線15が設けられた基板である。なお、配線15並びに後述する電極15a及び電極15bは、発光素子12に電力を供給するために、金属により形成される。基板11は、例えば、メタルベース基板、セラミック基板、又は樹脂を基材とする樹脂基板を用いることができる。
メタルベース基板としては、例えば、表面に電気絶縁膜が形成された、アルミニウム合金基板、鉄合金基板、又は銅合金基板などを用いることができる。セラミック基板としては、酸化アルミニウムからなるアルミナ基板、又は窒化アルミニウムからなる窒化アルミニウム基板などを用いることができる。また、樹脂基板としては、例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂とからなるガラスエポキシ基板などを用いることができる。
基板11として、光反射率が高い基板、例えば光反射率が90%以上の基板を用いてもよい。光反射率の高い基板を用いることで、発光素子12が発する光を基板11の表面で反射させることができる。その結果、発光装置10の光取り出し効率を向上させることが可能となる。このような基板としては、例えばアルミナを基材とする白色セラミック基板が挙げられる。
また、基板11として、光透過率が高い透光性基板を用いてもよい。このような基板としては、多結晶のアルミナや窒化アルミニウムからなる透光性セラミック基板、ガラスからなる透明ガラス基板、水晶からなる水晶基板、サファイアからなるサファイア基板、又は透明樹脂材料からなる透明樹脂基板が挙げられる。
なお、図1乃至図3に示すように、本実施形態の基板11は矩形となっているが、基板11の形状は特に限定されず、円形であってもよい。
発光素子12としては、例えば380nm〜500nmの波長範囲内に主な発光ピークを有し、青色の光を出射する青色LED素子、及び/又は、紫色の光を出射する紫色LED素子を用いることができる。このような発光素子12としては、例えば窒化ガリウム系のLED素子が挙げられる。なお、発光装置10は、少なくとも1つの発光素子12を備えればよい。
基板11上には、複数の発光素子12からなる発光素子列が複数設けられている。図3に示すように、構造的には、円形に対応して発光素子列が7列、基板11上に設けられている。なお、電気的には、12個の直列接続された発光素子12からなる発光素子列が5列、基板11上に設けられている。これら5列の発光素子列は並列接続されており、電極15aと電極15bとの間に電力が供給されることにより発光する。
発光素子12同士は、主に、ボンディングワイヤ16によってChip To Chipで電気的に接続される。ボンディングワイヤ16は、発光素子12同士を電気的に接続する給電用のワイヤである。なお、ボンディングワイヤ16並びに上述の配線15、電極15a及び電極15bを構成する金属材料は特に限定されないが、金、銀又は銅などを用いることができる。
ダム材14は、基板11上に設けられ、封止材13を塞き止めるための部材である。ダム材14には、例えば、電気絶縁性を有する熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂などが用いられる。より具体的には、ダム材14には、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、又はポリフタルアミド(PPA)樹脂などが用いられる。
ダム材14は、発光装置10の光取り出し効率を高めるために、光反射性を有することが望ましい。そのため、ダム材14には、白色の樹脂を用いることが好ましい。なお、ダム材14の光反射性を高めるために、ダム材14の中には、TiO2、Al2O3、ZrO2及びMgOなどの粒子が含まれてもよい。
発光装置10において、ダム材14は、平面視した場合、複数の発光素子12を囲むように円環状に形成される。そして、ダム材14に囲まれた領域の内部には、封止材13が設けられる。なお、ダム材14は円環状に限定されず、例えば矩形状に形成されてもよい。
封止材13は、複数の発光素子12を封止する封止材である。具体的には、封止材13は、複数の発光素子12、ボンディングワイヤ16及び配線15の一部を封止する。なお、封止材13は、上述のガスバリア用塗料組成物が硬化することにより形成される。
発光装置10において、発光素子12が発した一次光は封止材13を透過し、当該一次光の一部は封止材13に含まれる蛍光体18に吸収される。蛍光体18は、吸収した一次光により励起されて、一次光よりも長波長の二次光を放射する。そして、蛍光体18に吸収されなかった一次光と、蛍光体18によって波長変換された二次光は、封止材13中で混色される。これにより、封止材13から、例えば白色光が出射される。
ここで、図4に示すように、封止材13では、蛍光体18とゼオライト19が高分散しており、蛍光体18の周囲にゼオライト19が配設する構成となっている。そのため、封止材13の外部から硬化性樹脂を透過した水分は、ゼオライト19により吸着されて固定化され、水分と蛍光体18との水和反応が抑制される。そして、蛍光体18が加水分解して劣化することを抑制できることから、蛍光体18の発光効率を長期間に亘り高い状態に維持することが可能となる。
次に、上述の発光装置10を用いた照明装置100を、図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6に示すように、照明装置100は、例えば、住宅の天井に埋め込まれることにより下方に光を照射する、ダウンライトなどの埋込型照明装置である。そして、照明装置100は発光装置10を備える。照明装置100は、さらに、基部110と枠体部120とが結合されることで構成される略有底筒状の器具本体と、当該器具本体に配置された反射板130及び透光パネル140とを備える。
基部110は、発光装置10が取り付けられる取付台であるとともに、発光装置10で発生する熱を放熱するヒートシンクである。基部110は、金属材料を用いて略円柱状に形成されており、本実施形態ではアルミダイカスト製である。基部110の上部(天井側部分)には、上方に向かって突出する複数の放熱フィン111が一方向に沿って互いに一定の間隔をあけて設けられている。これにより、発光装置10で発生する熱を効率よく放熱させることができる。
枠体部120は、内面に反射面を有する略円筒状のコーン部121と、コーン部121が取り付けられる枠体本体部122とを有する。コーン部121は、金属材料を用いて成形されており、例えば、アルミニウム合金などを絞り加工又はプレス成形することによって作製することができる。枠体本体部122は、硬質の樹脂材料又は金属材料によって成形されている。枠体部120は、枠体本体部122が基部110に取り付けられることによって固定されている。
反射板130は、内面に反射機能を有する円錐台状の反射部材である。反射板130は、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成することができる。なお、反射板130は、金属材料ではなく、硬質の白色樹脂材料によって形成してもよい。
透光パネル140は、光拡散性及び透光性を有する透光部材である。透光パネル140は、枠体部120と反射板130との間に配置された平板プレートであり、反射板130に取り付けられている。透光パネル140は、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明樹脂材料によって円盤状に形成することができる。なお、照明装置100は、透光パネル140を備えなくてもよい。透光パネル140を備えないことで、照明装置100から出射される光の光束を高めることができる。
図6に示すように、照明装置100には、発光装置10を点灯させるための電力を供給する点灯装置150と、商用電源からの交流電力を点灯装置150に中継する端子台160とが接続される。点灯装置150は、具体的には、端子台160から中継される交流電力を直流電力に変換して発光装置10に出力する。
点灯装置150及び端子台160は、器具本体とは別体に設けられた取付板170に固定される。取付板170は、金属材料からなる矩形板状の部材を折り曲げて形成されており、その長手方向の一端部の下面に点灯装置150が固定されるとともに、他端部の下面に端子台160が固定される。取付板170は、器具本体の基部110の上部に固定された天板180と連結される。
以上説明したように、照明装置100は、発光装置10と、発光装置10を点灯させるための電力を供給する点灯装置150とを備える。なお、本実施形態では、照明装置として、ダウンライトが例示されたが、本実施形態はスポットライトなどの他の照明装置として実現されてもよい。
以下、実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は当該実施例に限定されるものではない。
[サンプルの調製]
(実施例1)
まず、ゼオライトとして、平均粒子径が3000nm、平均細孔径が13Å、比表面積が600cm3/g、置換イオンがNa+、SiO2/Al2O3比が2.5であるゼオライトaを準備した。そして、ゼオライトaをイオン交換水中に10質量%添加した後、あわとり練太郎(株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで攪拌することにより、イオン交換水中にゼオライトaを分散させたゼオライト分散液を得た。
次に、メチルシリケートオリゴマーに、重合触媒であるジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)を20質量%添加した後、適量のメタノールで希釈することにより、樹脂前駆体溶液を得た。なお、メチルシリケートオリゴマーとしては、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマーである三菱ケミカル株式会社製、MKC(登録商標)シリケート MS57を用いた。ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)は、マツモトファインケミカル株式会社製、オルガチックス(登録商標)ZC−580を使用した。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトaの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、200℃で60分間加熱してメチルシリケートオリゴマーを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例2)
まず、ゼオライトとして、平均粒子径が4000nm、平均細孔径が4Å、比表面積が400cm3/g、置換イオンがNa+、SiO2/Al2O3比が1であるゼオライトbを準備した。そして、ゼオライトbをイオン交換水中に10質量%添加した後、あわとり練太郎を用いて2000rpmで攪拌することにより、イオン交換水中にゼオライトbを分散させたゼオライト分散液を得た。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトbの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と実施例1の樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、200℃で60分間加熱してメチルシリケートオリゴマーを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例3)
まず、ゼオライトとして、平均粒子径が3000nm、平均細孔径が7Å、比表面積が760cm3/g、置換イオンがNa+、SiO2/Al2O3比が2.7であるゼオライトcを準備した。そして、ゼオライトcをイオン交換水中に10質量%添加した後、あわとり練太郎を用いて2000rpmで攪拌することにより、イオン交換水中にゼオライトcを分散させたゼオライト分散液を得た。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトcの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と実施例1の樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、200℃で60分間加熱してメチルシリケートオリゴマーを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例4)
まず、ゼオライトとして、平均粒子径が80nm、平均細孔径が4Å、比表面積が400cm3/g、置換イオンがNa+、SiO2/Al2O3比が1であるゼオライトdを準備した。そして、ゼオライトdをイオン交換水中に10質量%添加した後、あわとり練太郎を用いて2000rpmで攪拌することにより、イオン交換水中にゼオライトdを分散させたゼオライト分散液を得た。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトdの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と実施例1の樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、200℃で60分間加熱してメチルシリケートオリゴマーを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例5)
まず、実施例1と同様に、イオン交換水中にゼオライトaを分散させたゼオライト分散液を得た。
次に、2官能メタクリレートモノマーであるグリセリンジメタクリレートに、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを3質量%添加した後、適量のメタノールで希釈することにより、樹脂前駆体溶液を得た。なお、グリセリンジメタクリレートとしては、新中村化学工業株式会社製、製品名701を用いた。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンは、BASF社製、IRGACURE(登録商標)184を使用した。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトaの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、80℃で60分間加熱し、さらに紫外線を積算光量3000mJ/cm2で照射した。このようにして、グリセリンジメタクリレートを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例6)
得られる硬化性樹脂に対するゼオライトaの添加量が35質量%となるように、ゼオライト分散液と樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得たこと以外は実施例5と同様にして、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例7)
まず、実施例1と同様に、イオン交換水中にゼオライトaを分散させたゼオライト分散液を得た。
次に、樹脂前駆体溶液として、A液及びB液からなる2液タイプの付加硬化型シリコーンゴム溶液を準備した。なお、付加硬化型シリコーンゴム溶液としては、信越化学工業株式会社製、フォトデバイス用透明封止樹脂、製品名KER−2500(A/B)を用いた。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトaの添加量が3質量%となるように、ゼオライト分散液と樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。バーコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、100℃で60分間加熱して重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(実施例8)
まず、実施例1と同様に、イオン交換水中にゼオライトaを分散させたゼオライト分散液を得た。
次に、樹脂前駆体溶液として、エポキシ樹脂溶液を準備した。なお、エポキシ樹脂溶液としては、DIC株式会社製、高耐久性・柔軟強靭エポキシ樹脂、EPICLON(登録商標)EXA−4816を用いた。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトaの添加量が15質量%となるように、ゼオライト分散液と樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、100℃で60分間加熱して重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(比較例1)
まず、ゼオライトとして、平均粒子径が4000nm、平均細孔径が3Å、比表面積が400cm3/g、置換イオンがK+、SiO2/Al2O3比が1であるゼオライトeを準備した。そして、ゼオライトeをイオン交換水中に10質量%添加した後、あわとり練太郎を用いて2000rpmで攪拌することにより、イオン交換水中にゼオライトeを分散させたゼオライト分散液を得た。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトeの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と実施例1の樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、200℃で60分間加熱してメチルシリケートオリゴマーを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
(比較例2)
まず、ゼオライトとして、平均粒子径が4000nm、平均細孔径が5Å、比表面積が400cm3/g、置換イオンがCa2+、SiO2/Al2O3比が1であるゼオライトfを準備した。そして、ゼオライトfをイオン交換水中に10質量%添加した後、あわとり練太郎を用いて2000rpmで攪拌することにより、イオン交換水中にゼオライトfを分散させたゼオライト分散液を得た。
そして、得られる硬化性樹脂に対するゼオライトfの添加量が50質量%となるように、ゼオライト分散液と実施例1の樹脂前駆体溶液とを混合して混合溶液を得た。スピンコート法により混合溶液を基材上に塗布した後、大気中、200℃で60分間加熱してメチルシリケートオリゴマーを重合させることにより、本例の膜状サンプルを得た。
各例で使用したゼオライトの平均粒子径、平均細孔径、比表面積、置換イオン、SiO2/Al2O3比、及び平均細孔径と比表面積との積、並びに得られる硬化性樹脂を表1に纏めて示す。また、得られたサンプル中のゼオライト添加量、及びサンプル膜厚を表2に纏めて示す。
[評価]
(水蒸気吸着量測定)
マイクロトラック・ベル株式会社製の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELLSORPを使用し、各例のサンプルにおける水蒸気の吸着量を測定した。具体的には、各例のサンプル約0.1gを、測定装置に付属のサンプル管に入れた後、測定装置の所定位置にセットした。そして、各例のサンプルの水蒸気吸着量を、室温にて測定した。各例のサンプルの水蒸気吸着量を表2に合わせて示す。
なお、水蒸気吸着量が350cm3/g以上の場合には、水和反応による蛍光体の経時的劣化が十分に抑制されることから、水蒸気吸着量が350cm3/g以上の場合を合格とした。
(光線透過率測定)
株式会社日立製作所製、分光光度計U−4100を用い、各例の膜状サンプルに対し、波長380nm〜700nmの透過率測定を行った。各例のサンプルの透過率を表2に合わせて示す。
表2に示すように、実施例1乃至8で使用したゼオライトは、結晶内にNaイオンを含み、平均細孔径と比表面積との積が1600cm3・Å/g以上であり、さらにシリカに対するアルミナの比率(SiO2/Al2O3)が1以上である。その結果、得られたサンプルの水蒸気吸着量は350cm3/g以上となることから、水和反応による蛍光体の劣化が十分に抑制されることが分かる。
また、実施例1,5乃至8より、硬化性樹脂の種類を変えてゼオライトの含有量を低減した場合でも、ゼオライトが高い水蒸気吸着能を示すことから、蛍光体の劣化が抑制できることが分かる。
さらに、実施例2及び4より、ゼオライトの粒子径に関わらず、平均細孔径と比表面積との積が1600cm3・Å/g以上の場合には、ゼオライトが高い水蒸気吸着能を示し、蛍光体の劣化が抑制できることが分かる。なお、実施例2及び4より、ゼオライトの平均粒子径が小さい場合には、水蒸気吸着量が多くなることが分かる。つまり、ゼオライトの平均粒子径が小さいほど、硬化性樹脂の内部でゼオライトが高分散することから、ゼオライトと水との接触性が高まり、水蒸気吸着量が多くなると推測される。
これに対して、実施例2及び比較例1より、ゼオライトの結晶内にカリウムイオンを含む場合には、ゼオライトの平均細孔径が減少し、平均細孔径と比表面積との積が1600cm3・Å/g未満となる。その結果、比較例1のサンプルは、水蒸気吸着量が350cm3/g未満となることから、水和反応による蛍光体の経時的劣化が十分に抑制できないことが分かる。
また、比較例2より、たとえ平均細孔径と比表面積との積が1600cm3・Å/g以上であっても、カルシウムイオンを含むゼオライトは、水蒸気との親和性が低く、水蒸気吸着能に劣る。このため、比較例2のサンプルは、水蒸気吸着量が350cm3/g未満となることから、水和反応による蛍光体の経時的劣化が十分に抑制できないことが分かる。
なお、表2より、実施例のサンプルは、可視光領域の光線透過率が83%以上となり、可視光の透過率が高いことが分かる。そのため、実施例のサンプルは、発光素子を封止する封止材として好適に用いられることが分かる。
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。