JP2005194287A - 血管静止性ジペプチド薬学的組成物およびその使用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 新生血管形成を一時的にダウンレギュレートする(すなわち、一時的な血管静止を誘導する)ための無毒性の処置が利用可能にすること。
【解決手段】 新生血管形成に関与する病的状態を有する被験体を処置する方法であって、該被験体に、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的調製物を、新生血管形成を阻害するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法であって、1つの実施形態において、上記R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドが、L-Glu-L-Trpであり、他の実施形態において、上記状態が、血管腫であり、別の実施形態において、上記状態が、血管形成性悪性腫瘍または血管形成性良性腫瘍であり、さらに別の実施形態において、上記状態が、脳血管障害回復後の新生血管形成;頭部外傷による新生血管形成;血管形成術後の再狭窄;または熱外傷もしくは低温外傷による新生血管形成である、方法。
【選択図】 なし

Description

発明の背景
本発明は、一般には、血管静止(angiostatic)特性を有するペプチドを含む薬学的組成物に関し、より特定すると、トリプトファン含有ジペプチドの薬学的組成物およびその使用方法に関する。
新生血管形成(neovascularization)、すなわち、新血管の発生は、胚形成の初期に引き起こされ、そしてまた創傷治癒、組織再造形の間、およびおそらく血管系の維持の通常の過程において引き起こされる。新生血管形成に関与するプロセスは、少なくとも以下のプロセスを包含する:内皮細胞および血管周囲細胞の活性化;基底膜分解;内皮細胞および血管周囲細胞の移動および増殖;新しい毛細血管腔の形成;新しい血管の周囲での血管周囲細胞の出現;新しい基底膜の発達;毛細血管わな形成;新しい血管の分化を伴う退縮の存続;毛細血管網形成;および最終的にはより大きな微細血管への網の組織化。
特定のサイトカインが、新生血管形成をダウンレギュレートすることが知られる。このサイトカインは、インターロイキン-12(IL-12)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、インターフェロンα(IFN-α)、および血小板因子4(PF-4)を包含する。しかし、サイトカイン療法を伴う臨床経験は、これらの化合物のいくらかの毒性のために問題があることが分かった。
疾患の種々の続発症において血管形成(angiogenesis)がある役割を果たすかまたは直接関与する、多数の病的状態が存在する。これらは、例えば、癌における腫瘍の新生血管形成;血管腫の創出;種々の肝疾患に関連した新生血管形成;ホルモンの過剰に関連した血管形成不全;糖尿病の新血管続発症;高血圧に対する新血管続発症;脳血管障害回復後の新生血管形成;頭部外傷による新生血管形成;慢性肝臓感染症における新生血管形成;血管形成術後の再狭窄;および熱外傷または低温外傷による新生血管形成を包含する。
血管形成は健常な血管系の維持のために確かに必要であるが、臨床医学では、新生血管形成を一時的にダウンレギュレートする(すなわち、一時的な血管静止を誘導する)ための無毒性の処置が利用可能になることが高く評価される。
発明の要旨
L-Glu-L-Trpは、免疫細胞の産生を刺激し、そして免疫不全状態におけるそれらの数値関係を正常化することが知られる。(例えば、WO89/06134、WO92/17192、およびWO93/08815を参照のこと)。しかし、ここで、このジペプチドがまた、免疫不全状態におけるその効果とは別に、血管静止活性を有することが見出された。インビトロでの研究の結果は、低レベルのL-Glu-L-Trpジペプチドが胚形成の間のニワトリ絨毛尿膜の新生血管形成を阻害することを示した。動物研究において、L-Glu-L-Trpは、C57BL/6マウスにおいて皮下注射したとき、ルイス肺腫瘍の新生血管形成を阻害し、そしてSwiss-Websterマウスにおける肉腫180の増殖を阻害した。
従って、本発明は、新生血管形成に関与する病的状態を有する被験体を、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的調製物を被験体に、新生血管形成を阻害するのに有効な量で投与することにより処置する方法を提供する。1つの実施態様では、本発明は、新生血管形成に関与する病的状態を有する被験体の処置のための医薬の製造におけるR’-Glu-Trp-R’’ジペプチドの使用を提供する。
特に、本発明は、新生血管形成に関与する、以下の病的状態を有する被験体を処置する方法を提供する:血管腫;血管形成性の悪性および良性の腫瘍(例えば、髄膜の腫瘍、大脳内腫瘍、肉腫、骨肉腫、軟組織腫瘍(例えば、食道および気管の腫瘍)を包含する);肝臓の物質誘導性新生血管形成(薬物、アルコール、または物質の乱用摂取に対して二次的に誘導された血管形成を包含する);ホルモン(例えば、エストロゲン)の過剰に関連した血管形成不全;糖尿病の新血管続発症(例えば、漿液性中心性網脈絡膜症);高血圧に対する新血管続発症;脳血管障害回復後の新生血管形成;頭部外傷による新生血管形成;慢性肝臓感染症(例えば慢性肝炎);血管形成術後の再狭窄;および熱外傷または低温外傷による新生血管形成(例えば、火傷または凍傷)。ジペプチドは、健常な免疫系を有する被験体(すなわち、免疫無防備(immune compromised)でない)および免疫無防備である被験体の両方において、この活性を示す。
(項目1)新生血管形成に関与する病的状態を有する被験体を処置する方法であって、該被験体に、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的調製物を、新生血管形成を阻害するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
(項目2)前記R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドが、L-Glu-L-Trpである、項目1に記載の方法。
(項目3)前記状態が、血管腫である、項目2に記載の方法。
(項目4)前記状態が、血管形成性悪性腫瘍または血管形成性良性腫瘍である、項目2に記載の方法。
(項目5)前記状態が、脳血管障害回復後の新生血管形成;頭部外傷による新生血管形成;血管形成術後の再狭窄;または熱外傷もしくは低温外傷による新生血管形成である、項目2に記載の方法。
(項目6)前記状態が、肝臓の物質誘導性新生血管形成;ホルモンの過剰に関連した脈管形成不全;糖尿病の新血管続発症;高血圧に対する新血管続発症;または慢性肝臓感染症に関連した新生血管形成である、項目2に記載の方法。
(項目7)体重1kg当たり約0.5μgから体重1kg当たり約1mgの用量を前記被験体に投与する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目8)前記有効な量が約1μg/kgから約50μg/kg体重である、項目7に記載の方法。
(項目9)前記用量が、1日から約30日間の期間にわたり毎日投与される、項目7に記載の方法。
(項目10)前記薬学的調製物が筋肉内または鼻腔内投与される、項目7に記載の方法。
(項目11)0.001%から0.01%のL-Glu-L-Trpを含有する注射溶液の形態の薬学的調製物を投与する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目12)錠剤、坐剤、カプセル剤、眼フィルム、吸入剤、粘膜スプレー、点鼻剤、点眼剤、歯科用ペースト、軟膏、または水溶性ベースクリームを含む単位用量形態の調製物を投与する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目13)前記単位用量形態が、0.01mgの前記R’-Glu-Trp-R’’から本質的になる、項目12に記載の方法。
(項目14)前記被験体に血管作用薬を投与する工程をさらに包含する、項目2に記載の方法。
(項目15)前記血管作用薬が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターまたはカリウムチャンネル開放剤(PCO)である、項目14に記載の方法。
(項目16)前記被験体が腫瘍を罹患しており、前記方法が化学療法剤を投与する工程をさらに包含する、項目2に記載の方法。
(項目17)前記被験体が免疫無防備でない、項目2に記載の方法。
発明の詳細な説明
本発明は、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的なGlu-Trp調製物を提供する。本明細書中で用いられるR’-Glu-Trp-R’’ジペプチドとは、ジペプチドL-Glu-L-Trpおよびその誘導体またはアナログをいう。
本明細書中で用いられるR’-Glu-Trp-R’’ジペプチドの誘導体は、このジペプチドがR’および/またはR’’部分(moiety)の共有結合により誘導体化されているジペプチドを包含する。これは、例えば、ジペプチドの薬学的に受容可能な塩、アミド、イミド、エステル、無水物、エーテル、メチルまたはエチル−アルキルエステル、アルキル、アリールまたは混合アルキル/アリール誘導体(ここで、式量は約5000ダルトン未満であるか、または1000ダルトン未満である)、ジペプチドおよびそのアミノ酸配列中にglu-trpを含む約20アミノ酸未満または約10アミノ酸未満のペプチドの多量体型または環状型を包含する。代表的な例は、HEW、EWEW、GEW、EWKHG、EWKKHG、EW-NH-NH-GHK-NH、Ac-L-Glu-L-Trp-OH、Suc-EW、Cpr-EW、But-EW、RKEWY、RKEW、KEWY、KEWおよびpEWを包含する。
本明細書中で用いられるR’-Glu-Trp-R’’ジペプチドのアナログは、L-アミノ酸がD-アミノ酸に置換されているアナログ(例えば、L-Glu-D-Trp、D-Glu-L-Trp、またはD-Glu-D-Trp)およびトリプトファンのアナログ(例えば、5-ヒドロキシ-トリプタミン、5-ヒドロキシ-インドール酢酸)およびピロールアナログ(ピロール環の窒素が炭素で置換されている)を包含する。
L-Glu-Trp-Lは、本発明では最も好ましいR’-Glu-Trp-R’’ジペプチドである。本明細書中では、L-Glu-L-Trpはまた、「EW」および「EWジペプチド」と交換可能に称される。一文字表記の慣例を用いれば、最初に示されたアミノ酸がアミノ末端であり、最後に示されたアミノ酸がカルボキシル末端である。
本明細書中で用いられる「新生血管形成」とは、新しい血管の生成をいう。新しい血管が形成されるプロセスは、以下のプロセスを包含し得る:内皮細胞および血管周囲細胞の活性化;基底膜分解;内皮細胞および血管周囲細胞の移動および増殖(すなわち、細胞分裂);新しい毛細血管腔の形成;新しい血管の周囲での血管周囲細胞の出現;新しい基底膜の発達;毛細血管わな形成;退縮の存続および新しい血管の分化を伴う;ならびに毛細血管網形成、そして最終的には、より大きな微細血管への組織化。本明細書中で用いられる(例えば、血管芽における)内皮細胞増殖のプロセスは、「血管形成」と称され、そしてサブプロセスとして新生血管形成に関連している。疾患の代表的な臨床診断徴候は、分類され、編纂されている(例えば、International Classification of Diseases, ICD-9-CM, Washington, D.C.1989を参照のこと)。新生血管形成の代表的な実験室指標は、例えば、血管造影図、CATスキャンおよび音波検査図、ならびに内視鏡検査および/または毛細管顕微鏡検査手順による視覚検査において採集されたデータを包含する(が、これらに限定されない)。
本明細書中で用いられる用語「血管静止」、「血管静止性」および「新生血管形成の阻害」は、組織における新生血管形成の速度または程度が処置前の値から処置後の値に減少することを意味する。血管静止は、上記の疾患活性の実験室的または臨床的な指標を用いて決定され得る。血管静止は、新生血管形成に関与する1つ以上のサブプロセス(例えば、内皮または血管の平滑筋細胞の増殖または移動)を阻害することに関与し得る。
本明細書中で用いられる「新生血管形成に関与する病的状態」とは、新生血管形成またはその危険性が1構成要素である病的状態をいう。これは、限定されずに、以下を包含する:新生血管形成が原発性病状である病状(例えば、血管腫);新生血管形成は原発性病状でないが、それに寄与する病状(例えば、腫瘍の新生血管形成);および新生血管形成が原発性疾患の続発症である病状(例えば、糖尿病における漿液性中心性網膜症)。
本明細書中で用いられる用語「被験体」とは、哺乳動物(ヒトおよび非ヒト霊長類を含む)、家畜動物および家畜(domestic animals and livestock)、毛皮獣など、例えば、イヌ、ネコ、齧歯類、鳥類、ウマ、ウシ、ブタ、魚などをいう。本発明の実施態様は、それらを必要とする被験体における使用のための治療的および予防的な処置方法を包含する。
本明細書中で用いられる用語「免疫無防備」とは、標準的な臨床診断指標により測定した際に、正常数未満の1種以上の免疫細胞(例えば、NK細胞、T4またはT8 Tリンパ球、Bリンパ球、または貪食細胞)を有するヒトをいう。それはまた、このような細胞の標準的な機能性試験(例えば、免疫グロブリンの産生、走化性、混合白血球反応または遅延過敏症アッセイ)により決定した際に、免疫細胞の機能低下を有する個体を包含する。免疫無防備個体はしばしば、通常でないまたは予期されない日和見感染を呈する。
「ポリペプチド」とは、16より多くから数百までのアミノ酸長のアミノ酸の順列(例えば、タンパク質)を意味することが意図される。
本明細書中で用いられる「異常」とは、健常個体で記録された値の範囲外である新生血管形成の実験室指標をいう。
本明細書中で用いられる「正常化」とは、処置後、正常健常被験体で記録された値の正常範囲内に戻る、新生血管形成の実験室的または臨床的な指標における変化をいう。血管欠損がなく、かついかなる凝血、フィブリン溶解、または血管系にも既知の欠陥のない被験体を、本明細書中では交換可能に「正常被験体」という。
本明細書中で用いられる用語「調節剤」および「調節する」は、正常被験体または無防備被験体における新生血管形成または血管形成を減少させる薬剤およびプロセスを意味する。
R’-Glu-Trp-R’’処置は、新生血管形成または血管形成の速度または程度の減少を誘導する目的で、それを必要とする被験体に、R’-Glu-Trp-R’’の薬学的調製物を送達する方法を意味することが意図される。
1つの本発明の好ましい実施態様では、R’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物を、新生血管形成または血管形成の1つ以上の臨床的または実験室的な指標を減少させるのに十分な量および時間で癌患者に投与し、それによりそのように処置された患者の臨床状態の改善を行う。この方法は、腫瘍における新生血管形成を減少させ、腫瘍への血液供給を阻害し、そしてそれにより腫瘍の増殖を阻害する。
好ましい実施態様では、処置レジメは、体重1kg当たり約0.5μgから体重1kg当たり約1mgの用量で、1日から約30日間の期間にわたり毎日、被験体に投与することからなる。好ましい実施態様では、被験体用量は、1日単回筋肉内用量のR’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物(筋肉内)または1日単回鼻腔内用量のR’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物(鼻腔内)のいずれかとして投与される。被験体用量は、好ましくは、約0.001%〜約0.01%のR’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物を含有する滅菌溶液、注射溶液、吸入溶液、点鼻溶液、または粘膜スプレー溶液として処方される。あるいは、R’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物の処方は、好ましくは、単位用量送達形態(例えば、錠剤、坐剤、カプセル剤、眼フィルム)、またはペーストもしくは軟膏(例えば、歯科用ペースト、皮膚軟膏、または水溶性クリームベース)に取り込まれ得る。最も好ましい単位用量形態は、R’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物の約0.01mgの送達用である。
本発明の方法は、ヒトおよび家畜動物における病態生理学的状態の処置において種々の予防用途および治療用途を見出す。特定の実施態様では、本発明の方法は、自己移植または同種異系移植の前に生じ得るような、内皮細胞培養物および血管組織のインビトロでの維持の間における用途を見出す。本方法は、R’-Glu-Trp-R’’化合物を含む培養培地において組織を培養することにより、インビトロで内皮細胞培養物または血管組織培養物を維持することを包含する。本発明の維持方法は、血管組織を維持し、そして外科的除去の間に生じる組織外傷および組織培養中の貯蔵により引き起こされた炎症変化を減少させるという利点を有する。
代表的な予防的処置レジメでは、本発明の組成物が、新生血管形成の発達を受けやすいか、またはそうでなければその危険性のある患者に、例えば、再発性原発性腫瘍またはその転移細胞の新生血管形成を防止するための手術後使用において、投与される。「予防有効用量」は、本明細書中では、組織部位に血管静止効果を生じるのに十分な量を意味するように使用される。ここで、この量は、患者の健康状態および体重に依存するが、一般には、治療用途について本明細書中に記載される範囲内にある。予防的投与は、合併症としての新生血管形成または血管形成を含む疾患続発症(例えば、糖尿病性網膜症)の危険性のある被験体に、特に望ましいかもしれない。
本発明の実施態様は、R’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物が単独でまたは第2の薬剤と組み合わせて投与される治療処置レジメ(すなわち、「組み合わせ療法」)を包含する。代表的な組み合わせ療法は、R’-Glu-Trp-R’’組成物が1つ以上の抗生物質、抗炎症剤、または化学療法化合物と共に投与される療法を包含する。本発明の組成物は、第2の処置様式と併用して、または個別に(例えば、異なる時間に、または異なる注射または錠剤で)のいずれかで投与され得る。しばしば、R’-Glu-Trp-R’’は、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、化学療法剤などとの組み合わせ療法で投与される。R’-Glu-Trp-R’’との例示的な組み合わせ処置は、例えば、当該分野で周知の抗炎症剤を含み得る。
R’-Glu-Trp-R’’との例示的な組み合わせ処置はまた、第2の薬剤としての血管作用薬の投与を包含し得る。代表的な血管作用薬は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、カリウムチャンネル開放剤(PCO)などのクラスにおける薬物を包含する。
R’-Glu-Trp-R’’との例示的な組み合わせ癌処置は、第2の薬剤としての化学療法剤の投与を包含する。R’-Glu-Trp-R’’との処置は、コルチコステロイド療法と関連した望ましくない副作用(例えば、新生血管形成)を減少させるのに有効であり得る。代表的な化学療法剤は、当該分野において周知である。
当業者は、患者の臨床症状に合わせて時期および投薬量を調整する。このような知識は、数十年にわたって蓄積されており、そして医学文献および医学書に報告されている。組み合わせ療法または単一薬剤療法において本発明の方法を開始する時期は、医者の臨床的な判断次第である。
経験的療法は、歴史的、人口統計学的、および疫学的な情報に基づいて最も一般的なまたは同様に原因となる因子を処置するように設計された療法である。経験的療法は、しばしば、広範な治療可能性をカバーするように設計された多重治療剤の使用を含み得る。実験室試験データが入手可能であれば、治療法の選択は、その疾患をより特定して処置するために調整され得る。なぜならば、臨床症候群の処置は、非常に頻繁に、経験的に開始されるからである。むしろ、新しい治療方法は、特定の臨床症候群について試験されるべきである。
医薬開発の分野では、療法の前臨床試験は、ただ1つの状態においてではなく、関心のある複数の因子または状態において療法の効果を評価する。種々の(時に疑わしい)研究の結果は、特定の疾患に関連した危険性の医学知識に照らして、特定の療法の利益および危険性に関して考慮される。
症候群を有する全ての患者が単一療法によって治癒するわけではないが、その代わりに、その治療がポジティブで好ましい結果を有する一部の患者が存在し得ることが、通常である。一部の患者が本発明の療法から好ましい結果を獲得し得る臨床症候群の例を、以下の数箇所の段落に開示する。
本発明の薬学的組成物は、非経口、局所、皮下、筋肉内、鞘内、経口、鼻腔内、腹腔内、または局部の投与(例えばクリーム中で皮膚上に)、あるいは予防的および/または治療的処置が意図される。好ましくは、本発明の組成物は、非経口、筋肉内または鼻腔内投与される。本明細書中の本発明のR’-Glu-Trp-R’’組成物は、非常に低い投薬量レベルで、かつ毒性なしに所望の効果を提供するという利点を有する。従って、急性発症での療法の目的は、組織中のR’-Glu-Trp-R’’の濃度を迅速に増加させることであり得る(例えば、ボーラス静脈内注射または注入による)。あるいは、他の場合では、長期にわたってR’-Glu-Trp-R’’を送達することが望ましいかもしれない。
R’-Glu-Trp-R’’を含有する本発明の組成物は、血流中への吸収を可能にする様式で処方され得る。本発明の組成物は、もはや組成物の存在に依存しない細胞プロセスに実質的に変化をもたらす、細胞レベルの変化を誘導する血管調節剤である。ペプチドの効果が、ペプチドのやや急速な分解(例えば、5分以内)にもかかわらず、長期(すなわち、数週間から数ヶ月)に持続し得ることが観察された。本発明のR’-Glu-Trp-R’’化合物はそれ自身が、それらが通常用いられる低濃度で水溶性であるが、これらは、好ましくは、薬学的に受容可能な薬剤(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、または亜鉛)で形成されたそれらの酸またはアルカリ塩の形態で用いられる。本発明のR’-Glu-Trp-R’’組成物の自由に可溶な塩はまた、例えば、タンニン酸もしくはパルモイン酸(palmoicacid)のようなわずかに水溶性の薬学的に受容可能な塩での改変、またはより大きなキャリアに共有結合させた持続放出処方物中に取り込むことにより、または持続放出性カプセルなどの中に取り込むことにより、体液中で低溶解度の塩に変換され得る。
本発明のR’-Glu-Trp-R’’薬学的調製物は、遊離ペプチドとして、または水溶性の薬学的に受容可能な塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、または亜鉛の塩)の形態で用いられ得る。本発明のジペプチドは、組成物に独立して活性を与える他の有効成分と共に投与され得ることが理解される。薬学的に受容可能な塩は、従来の方法により、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチド(またはそのアゴニスト)から好都合に調製され得る。従って、このような塩は、例えば、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドを所望の薬学的に受容可能な金属水酸化物または他の金属塩基の水溶液で処理し、そして得られた溶液をエバポレートして(好ましくは、窒素雰囲気中で減圧下で)乾燥させることにより、調製され得る。あるいは、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドの溶液を所望の金属に対するアルコキシドと混合し得、そして続いて溶液をエバポレートして乾燥させ得る。薬学的に受容可能な水酸化物、塩基、およびアルコキシドは、この目的のために、陽イオンを有するものを包含する。これらは、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムを包含する(がこれらに限定されない)。他の代表的な薬学的に受容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩(valarate)、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩(tosulate)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩などを包含する。
非経口投与については、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア中に溶解したR’-Glu-Trp-R’’ジペプチド、あるいはそれらの重合体、多量体、もしくは環状型または誘導体の溶液を含む薬学的調製物を提供する。種々の水性キャリアが用いられ得、例えば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどであり、これらは安定度を増強するタンパク質および/または糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)を含む。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌され得る。得られた水溶液は、使用のために梱包され得るか、無菌条件下で濾過されて凍結乾燥され得、凍結乾燥した調製物は、投与前に滅菌水溶液と組み合わされる。組成物は、生理的状態に近づけるのに必要とされる薬学的に受容可能な補助物質を含有し得る。薬学的に受容可能な補助物質としては、例えば、pH調整剤、pH緩衝化剤、浸透圧調整剤などが挙げられ、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどである。貯蔵期間および薬物動態学半減期を増大させるためにR’-Glu-Trp-R’’ジペプチド、アナログ、誘導体、アゴニストなどを安定化することが望ましいかもしれない。貯蔵期間安定性は、賦形剤を添加することにより改善される:例えばa)疎水性剤(例えば、グリセロール);b)糖(例えば、スクロース、マンノース、ソルビトール、ラムノース、キシロース);c)複合炭化水素(例えば、ラクトース);および/またはd)静菌剤。ペプチドの薬物動態学的半減期は、キャリアのペプチド、ポリペプチド、および炭化水素への化学的誘導体化による結合(例えば、側鎖またはNもしくはC末端残基の結合)、またはアミノ酸を別のアミノ酸に化学的に変化させること(上記)により改変される。薬物動態学的半減期および薬力学はまた、a)カプセル化(例えば、リポソーム中);b)水素添加の程度の調節(例えば、ペプチドのグリコシル化の程度およびタイプの調節による);およびc)ペプチドの静電荷および疎水性の調節により改変され得る。
本発明によるR’-Glu-Trp-R"ジペプチドを含む組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)に適切な、適合可能な製薬中で投与され得る。調製物は、従来の薬学的操作(例えば、滅菌)に供され得、そしてアジュバント(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤など)を含み得る。
R’-Glu-Trp-R"ジペプチド組成物は、代表的には、約0.5μg/kg〜約1mg/kg、好ましくは約1μg/kg〜約50μg/kgの用量で生物学的に活性である。薬学的組成物中のR’-Glu-Trp-R"ジペプチドの濃度は、変化し得(すなわち、約0.001重量%から15または20重量%程度までも)、そして主に液体容量、粘度などにより、処置の特定の必要性および患者への投与様式に従って選択される。新生血管形成を阻害するのに有効な量で有効成分を有する注射溶液として筋肉内で利用される場合、例えば、約0.001〜0.01重量%のR’-Glu-Trp-R"である。錠剤、カプセル剤、または坐剤の形態で調製される場合、錠剤、坐剤、またはカプセル剤1つあたり約0.1mgのR’-Glu-Trp-R"の量で有効成分が存在することが好ましい。この注射形態のための薬学的に受容可能なビヒクルは、任意の薬学的に受容可能な溶媒(例えば、0.9%塩化ナトリウム水溶液、蒸留水、ノボカイン溶液、リンゲル液、グルコース溶液など)であり得る。このような形態では、カプセル剤、坐剤、または錠剤はまた、他の従来の賦形剤およびビヒクル(例えば、充填剤、デンプン、グルコースなど)を含み得る。局所用調製物では、R’-Glu-Trp-R"ジペプチドは、一般に、尿素に基づく緩和剤、石油に基づく軟膏などの中に、約0.1〜10,000ppm、好ましくは約1〜1000ppm、そして最も好ましくは約10〜100ppmの濃度で含まれる。非経口、経口、および局所により投与され得る化合物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、そして例えば、本明細書中に参考として援用されるRemington’sPharmaceutical Science, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, PA(1985)に詳細に記載される。
筋肉内経路および鼻腔内経路は、本願発明のR’-Glu-Trp-R"組成物の投与のために好ましい。筋肉内投与のための本願発明の組成物の好ましい投薬量の1つは、成人については1用量あたり約50μg〜100μgのR’-Glu-Trp-R"(300μg〜1000μgの総処置治療);1歳までの幼児については1用量あたり約10μg、1〜3歳の幼児については1用量あたり約10μg〜20μg;4〜6歳の幼児については1用量あたり約20μg〜30μg、7〜14歳の児童については1用量あたり約50μgである。先述の投薬量はすべて、患者の必要性に依存して3〜10日の処置のために有用である。処置は、必要に応じて、通常1〜6カ月以内で繰り返され得る。別の好ましい実施態様では、R’-Glu-Trp-R"薬学的調製物の処置用量約10μg/kg〜約1mg/kgが、約6日間〜約10日間の期間(しかし、必要に応じて、担当医の判断により約30日間まで)にわたって被験体に毎日投与された。1つの好ましい治療過程では、R’-Glu-Trp-R"は、1〜100μg/kgの投薬量で毎日、5〜7日間筋肉内投与され、その後、同じ注射レジメを繰り返す前に1〜6カ月間の休止期間をおく。
R’-Glu-Trp-R"組成物は、単回用量または複数回用量のいずれかで、単独で投与され得るか、または薬学的に受容可能なキャリアと共に処方され得る。適切な薬学的キャリアは、不活性な固体希釈剤または充填剤、滅菌水溶液、および種々の無毒性有機溶媒を含む。薬学的組成物は、R’-Glu-Trp-R"ジペプチドと薬学的に受容可能なキャリア(および必要に応じて抗生物質)とを組合わせることにより形成される。次いで、本願発明の組合せ治療剤は、種々の投薬形態(例えば、錠剤、トローチ剤、シロップ剤、注射可能な溶液など)で容易に投与される。組合せ治療剤はまた、R’-Glu-Trp-R"ジペプチド(例えば、L-Glu-L-Trp)を、同じ単位投薬形態で含み得る。所望であれば、薬学的キャリアは、さらなる成分(例えば、調味料、バインダー、賦形剤など)を含み得る。
従って、経口投与の目的のためには、種々の賦形剤(例えば、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、およびリン酸カルシウム)を含む錠剤が、種々の崩壊剤(例えば、デンプン、そして好ましくはジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、および特定の複雑なシリケート)と共に、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン、およびアラビアゴム)と一緒に用いられ得る。さらに、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および滑石)は、しばしば、錠剤化の目的に有用である。同様のタイプの固体組成物はまた、塩および固く詰めたゼラチンカプセルのフィラーとして用いられ得る。この目的に好ましい物質は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールを含む。エリキシルの水性懸濁物が経口投与に望ましい場合、その中の必須な活性のR’-Glu-Trp-R"ジペプチド成分は、希釈剤(例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびそれらの組合せ)と一緒に、種々の甘味または調味剤、着色物質または染料、および必要に応じて乳化剤または懸濁剤と組合わされ得る。
非経口投与のために、R’-Glu-Trp-R"の胡麻油もしくは落花生油または水性ポリプロピレングリコール溶液ならびに以前に記載された対応する水溶性の薬学的に受容可能な金属塩の滅菌生理食塩水溶液が用いられ得る。このような水溶液は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈液は最初に充分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内の注射に特に適切である。用いられる滅菌水性媒体は、当業者に周知の標準的技術によりすべて容易に入手可能である。さらに、上記の化合物を、すぐにこの目的に好適な適切な溶液を用いて(例えば、配置したカテーテルを介して)局所投与することが可能である。
このように処置された被験体の50%より多くに治療効果をもたらすのに適切な量は、「治療有効量」と定義される。急性状態の処置は一般に、約3〜10日にわたって生じる。慢性状態の処置または予防的処置は、同じ過程を有するが、約1〜6カ月以上もの長い間の後に繰り返され得る。いくつかの例では、組成物を、約2〜約20日間の期間、好ましくは約3〜約14日間、さらに好ましくは約4〜約10日間、毎日、断続的に投与することが望ましいかもしれない。これは、少なくとも約15日間、好ましくは約20日間、または約1〜6カ月以上もの長さで繰り返される。
R’-Glu-Trp-R"組成物の送達経路は、処置が必要とされる疾患および部位により決定される。局所適用のために、局所部位に(例えば、この部位の組織中に針を配置することにより)または例えば、外科的除去の後で腫瘍部位に含浸包帯を配置することにより、R’-Glu-Trp-R"組成物を適用することが好ましいかもしれない。しかし、他の疾患については、R’-Glu-Trp-R"組成物を全身的に投与することが望ましいかもしれない。他の徴候のためには、R’-Glu-Trp-R"組成物などは、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、および皮内注射により、ならびに気管支内点滴注入(例えば、ネブライザーで)、経皮送達(例えば、皮膚パッチ中の脂溶性キャリアで)、または胃腸送達(例えば、カプセル剤または錠剤で)により送達され得る。
一般に、このR’-Glu-Trp-R"組成物の酸付加塩(例えば、L-Gly-L-Lys)、薬学的に受容可能な酸を有する組成物は、このR’-Glu-Trp-R"組成物自身に生物学的に等価である。
好ましい治療的組成物、接種材料、経路、および投薬量は、もちろん、臨床的徴候によって変化する。筋肉内注射のために、接種材料は代表的には、ペプチドを生理学的に受容可能な希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはリン酸緩衝化生理食塩水)中に懸濁することにより乾燥したペプチド(またはペプチド結合体)から調製される。投薬量におけるいくらかの変化は、処置される患者の状態に依存して必ず生じ、そして医師が、いずれの事象においても、個々の患者に適切な用量を決定する。単位用量あたりのペプチドの有効量は、なかでも、体重、生理機能、および選択された接種レジメに依存する。ペプチドの単位用量は、(キャリアが用いられる場合)キャリアの重量を除いた、ペプチドの重量をいう。有効な処置は、組織部位で細胞の微小環境のR’-Glu-Trp-R"ジペプチド(例えば、L-Glu-L-Trp)の濃度が10−5M〜10−9Mに達した場合に達成される。当業者は、この治療への患者の応答をモニターし、そしてそれにより投薬量を調整するために臨床的および研究室的しるし(上記)を使用し得る。R’-Glu-Trp-R"ジペプチド、アゴニスト、アンタゴニストなどの薬物動態学および薬物動力学は異なる患者において変化するので、組織において治療濃度を達成するために最も好ましい方法は、投薬量を徐々に上昇させ、そして臨床的および研究室的しるし(上記)をモニターすることである。このように治療の用量漸増レジメのための最初の用量は、投与経路に依存する。約200〜400ダルトンの分子量を有するR’-Glu-Trp-R"ジペプチドの静脈内投与のためには、約0.5μg/kg体重の最初の投薬量が投与され、そして投薬量は、用量漸増レジメの各間隔ごとに濃度を10倍増加で上昇させる。
錠剤、カプセル剤、または坐剤の形態で提供される場合、錠剤、坐剤、またはカプセル剤1つあたり約0.1mgの量で有効成分が存在することが好ましい。このような形態で提供される場合、カプセル剤、坐剤、または錠剤はまた、他の従来の賦形剤およびビヒクル(例えば、充填剤、デンプン、グルコースなど)を含み得る。
都合の良いことには、このR’-Glu-Trp-R"ジペプチドは、現在通常利用可能である、任意の多くの自動化された技術により合成される。一般的にいって、これらの技術は、アミノ酸の連続付加により次第に大きな分子を生成する段階的合成を含む。アミノ酸は、あるアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基との間の縮合によってペプチド結合を形成することにより共に結合される。これらの反応を制御するために、一方のアミノ酸のアミノ基と他方のアミノ酸のカルボキシル基とをブロックすることが必要である。ブロックする基は、(すなわち、形成されたペプチド結合のラセミ化または加水分解により)ペプチドに有害な影響を与えない容易な除去のために選択されるべきである。カルボキシル基を有するアミノ酸(例えば、Asp、Glu)またはヒドロキシル基を有するアミノ酸(例えば、Ser、ホモセリン、およびチロシン)もまた、縮合の前にブロッキングを必要とする。
ペプチド合成のための広範囲の種々の手順が存在し、通常は固相合成法が好ましい。この手順では、アミノ酸は樹脂粒子に結合され、そしてペプチドは、伸長鎖への保護アミノ酸の連続的付加により段階的な様式で作製される。Merrifieldにより記載された技術の改変法が通常使用される。例示的な自動化固相法では、ペプチドは、カルボキシ末端アミノ酸を、ジビニルベンゼンと架橋している不溶性のポリスチレン樹脂に共有結合した有機リンカー(例えば、PAM、4-オキシメチルフェニルアセトアミドメチル)へロードすることにより合成される。t-Bocでのブロックは、末端アミンを保護するために使用され、そしてヒドロキシル基およびカルボキシル基は、通常O-ベンジル基でブロックされる。合成は、自動ペプチド合成機(AppliedBiosystems, Foster City, CA、例えば、430-A型)で達成される。合成後、産物は、樹脂から取り出され、そして確立された方法(Bergot,B.J.およびS.N.McCurdy, Applied Biosystems Bulletin, 1987)に従ってフッ化水素酸またはトリフルオロメチルスルホン酸を用いてブロック基を除去し得る。通常の合成は、0.5ミリモルのペプチド−樹脂を生成し得る。切断および精製後の収率は、約60〜70%である。例えば、Glxの活性化エステルのアミノおよび側鎖を保護した誘導体は、そのC末端で固相に連結された側鎖を保護したTrpと反応させる。α-アミノ保護基の除去後、ペプチドは、固相から切断され得るか、または別のアミノ酸を同様の様式で付加され得る。さらなるアミノ酸が連続的に付加される。ペプチドは、高酸性切断(これはまた、典型的に保護基を除去する)により切断される。
次いで、ペプチドは、単離および凍結乾燥され、そして将来の使用のために保存され得る。ペプチド合成の適切な技術は、StewartおよびYoung, Solid Phase Peptide Synthesis, 第2版, Pierce ChemicalCompany, 1984; およびTamら, J.Am.Chem.Soc.,105: 6442 (1983)に詳細に記載される。
産物ペプチドの精製は、例えば、ペプチドを有機溶媒(例えば、メチル-ブチルエーテル)から結晶化させ、その後蒸留水に溶解させ、そして(分子量が約500より大きければ)透析し、分子量500未満であれば、薄層クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、凍結乾燥、または逆相HPLC(例えば、溶媒として0.1%トリフルオロ酢酸およびアセトニトリルを含むC18カラムを用いて)により達成される。精製したペプチドは、凍結乾燥され、使用まで乾燥状態で保存される。代表的なR’-Glu-Trp-R"薬学的調製物は、精製されたジペプチドL-Glu-L-Trpであり、これは白色粉末(凍結乾燥されている場合;さもなければ、これは結晶である)を含み、水、DMFに可溶であり;クロロホルムおよびエーテルに不溶である。[α22=+12.6;C=0.5HO。R=0.65(ブタノール:酢酸:水=3:1:1)。UV(275±5nm、max)。NMR(500MHz):0.001mol/lのペプチド溶液、Trp(3.17;3.37;4.57;7.16;7.24;7.71;7.49);Glu(1.90;1.96;2.21;3.72)。
代表的には、グルタミン酸の活性化エステルのアミノおよび側鎖保護誘導体を、保護されたL-トリプトファンと反応させる。保護基の除去および従来の精製(例えば、薄層クロマトグラフィーまたはGLクロマトグラフィーによる)の後、ペプチドは、例えば、凍結乾燥、ゲル精製などにより精製され得る。
任意の特定の作用機構に拘束されることは望まないが、このトリプトファン含有ペプチドは、内皮細胞上の特定の細胞EWレセプターと可逆的に結合することがが可能であると考えられる。このようなレセプターの一つは、リンパ球、内皮細胞、および特定の上皮細胞上にも存在する、遍在性「CD2」細胞表面決定基と定義される。CD2(および他のEWレセプター)へのEWジペプチドの結合が、レセプターのコンホメーション変化を誘引することが可能であると考えられる。これは、アデニレートシクラーゼのアップレギュレーションおよび細胞内cAMPの増加を開始し得る。L-Glu-L-Trpは、炎症性メディエーター(例えば、TNF-αおよびIL-1)が内皮細胞および血管周囲細胞の活性化および増殖を誘発する細胞機構をダウンレギュレートすることによりその効果を発揮することが可能であると現在考えられる。活性化は、血管炎における炎症性細胞の結合に関与するアドへジンの細胞表面発現に変化をもたらすが、一方、増殖は、新生血管形成に関与する。炎症性メディエーターに誘導される内皮効果のL-Glu-L-Trpダウンレギュレーションは、1つ以上の細胞チロシンキナーゼの脱リン酸化を含み得る。このようなダウンレギュレーションが、内皮アドへジン、セレクチン、および/またはインテグリン(例えば、ELAM、VCAMなど)の合成または細胞表面発現における変化をもたらし得るようだと考えられる。トリプトファン含有ジペプチドにより誘導される後者の細胞変化は、炎症性細胞(例えば、リンパ球、好中球、および/または単球)が血管炎の部位に局在化する能力の減少をもたらし得る。
本明細書中で使用する場合、アミノ酸の表記は、Arch.Biochem.Biophys. 115: 1-12, 1966で公表されたIUPAC-IUB勧告による。これは、以下のアミノ酸の1文字表記である:L、Leu、ロイシン;V、Val、バリン;Y、Tyr、チロシン;D、Asp、アスパラギン酸;W、Trp、トリプトファン;P、Pro、プロリン;I、Ileu、イソロイシン;G、Gly、グリシン;M、Met、メチオニン;E、Glu、グルタミン酸;T、Thr、トレオニン;K、Lys、リジン;N、Asn、アスパラギン;R、Arg、アルギニン;Q、Gln、グルタミン;A、Ala、アラニン;C、Cys、システイン;S、Ser、セリン;F、Phe、フェニルアラニン;H、His、ヒスチジン;C、Cys、システイン;S,Ser、セリン。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるが、どのような方法においても、本発明のその範囲または精神を制限することは意図していない。
実施例1
L-Glu-L-Trpの変異原性および毒性の欠如:薬物動態および生体分布
プロトコルA
急性毒性研究
要旨:約10,000倍の治療投薬量であるように計算された投薬量で筋肉内注射された場合、全身状態、行動、動き、心臓生理機能、および呼吸生理機能、ならびに病状全体をモニターすることにより決定したところ、L-Glu-L-Trpは、マウス、モルモット、ニワトリ、およびイヌで無毒性であった。
プロトコルB
慢性毒性研究
要旨:28日間の期間、1回の筋肉内または静脈内で毎日注射された場合、行動、摂食、体重、毛皮の状態、粘膜、赤血球数および白血球数、心臓生理機能、および呼吸生理機能、肝機能および腎機能、ならびに病状全体をモニターすることにより決定したところ、L-Glu-L-Trpは、副作用を有さなかった。腎機能を、水負荷の後の利尿の評価により決定した。特定の他の実験のために、イヌおよびラットを、10、20、30、および60日後に屠殺し、そして検査した。
プロトコルC
薬物動態および生体内分布:GLP研究
14C放射標識したL-Glu-L-Trp(110μg/kg)を、Sprague-Dawleyラットに鼻腔内投与した。血液および組織のサンプルを、別々の0.5、2、8、または24時間で採取し、そしてインタクトなL-Glu-L-Trpの量をHPLCにより決定した。組織サンプルは、パックされた赤血球、白血球、肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓、胸腺、脳、筋肉、皮膚、脂肪、眼、卵巣、精巣、顎下リンパ節、および内容物を有する胃腸管を含んだ。鼻腔内投与した14C-L-Glu-L-Trpは、1gの14Cあたり0.349μgeq.時間の血漿Cmaxで迅速に吸収された。インタクトな化合物は、30分では、5〜101ng/mLの範囲の感度で血中に全く検出されなかった。このことは、30分未満の血中半減期を示唆する。組織の排除半減期を、18.7時間であると決定した。
実施例2
絨毛尿膜(CAM)アッセイでの血管形成に対するL-Glu-L-Trpの阻害効果
簡略には、8日齢のニワトリ胚を卵から取り出し、そして滅菌ペトリ皿に配置した。個々の濾紙ディスクを、滅菌0.14M NaCl中に溶解した7.5μlのL-Glu-L-Trpの様々なストック溶液に浸し、1枚のディスクあたり0.001、0.01、0.1、1.0、10、100、500、および1000μgの最終試験濃度を達成した。ディスクを風乾し、次いで、それぞれの胚の表面に反転して置いた。胚の血管形成を、48時間のインキュベーション後に、以下の表1にまとめた類別尺度を用いて評価した。
Figure 2005194287
この実験では、生理食塩水をネガティブコントロールとして供し、そして10μg/ディスクのヘパリンをポジティブコントロールとして供した。ペンタペプチドであるTyr-Ala-Glu-Glu-Lys(TAEEK)を、特異性コントロール(すなわち、新生血管形成に対する試験濃度のペプチドの可能な非特異的効果のために)として供した。それぞれの試験濃度について9〜12枚の試験ディスクおよび対応する数の別の胚を、(各)82個のポジティブおよびネガティブコントロールの胚と一緒に用いた。結果を以下の表にまとめる。
Figure 2005194287
この結果は、生理食塩水中10ng〜1000μgのL-Glu-L-Trpで処置した胚における血管分布の30〜88%の減少を示す。10〜1000μgの用量で達成された阻害のレベルは、ヘパリン(10μg)のレベルに近かった。胚の血管分布に対するコントロールのペンタペプチドTAEEKのいくつかの推定の非特異的効果がより高い用量(すなわち、100〜1000μg)で観察されたが、この効果は、L-Glu-L-Trpで達成された効果と同様には顕著ではなく、そして推定的な非特異的効果は、より低い用量では観察されなかった。これらの結果をひとまとめにして考えると、ニワトリの胚組織における血管形成の過程に対するL-Glu-L-Trpの効果が示唆される。
実施例3
Lewisガンの新生血管形成の阻害
C57BL/6マウス(0日齢)の両方の脇腹に皮内注射(0.1ml)した場合に、Lewis肺ガン細胞(5×10個)は、視認可能な高度に血管形成した腫瘍節を7日以内に生成した。腫瘍を切り出すことにより、腫瘍の血管形成の程度を、腫瘍塊から広がる大きな血管の数を計数することによって、顕微鏡的に決定し得る。独立研究を、(以下のように)GLP承認された契約研究機関(GLPapproved contract research organization)で行った。
生理食塩水をネガティブコントロールとして用い、そしてCytoxanをポジティブコントロールとして用いた。ポジティブコントロールのCytoxan(200mg/kg)を、2日目にのみ投与した。L-Glu-L-Trpでの試験処置を、腫瘍注射後1日目から開始して毎日筋肉内投与し、そして5日間継続した(すなわち、6日目まで)。L-Glu-L-Trpを、125、250、500、1000および2000μg/kg/用量の用量で投与した。ネガティブコントロールの生理食塩水を、同様に、毎日5日間のスケジュールで腹腔内投与した。10匹のマウス(20個の腫瘍)を、試験薬剤またはコントロール薬剤のそれぞれの用量で評価した。結果を、以下の表にまとめる。
Figure 2005194287
この結果は、CytoxanまたはL-Glu-L-Trpのいずれかでの処置の結果として、明らかな統計的に有意な新生血管形成の阻害を示す。L-Glu-L-Trpの低用量(第4〜7群)は、血管形成を阻害するのに、高用量(第3群)よりも有効であった。逆の用量−応答プロフィール(すなわち、高用量のとき低活性)は、このアッセイにおける他の生物学的応答改変物(例えば、IFN-αまたはIL-12)で以前に観察された成績に一致する。
すべての処置は、充分に寛容され、そして体重の減少も死亡も全く記録されなかった。
実施例4
L-Glu-L-Trpの抗腫瘍活性:肉腫180
新生血管形成は、腫瘍の増殖に必要である。L-Glu-L-Trpの抗腫瘍活性を、独立の契約調査機関で評価した。肉腫180腫瘍(ATCC CCL-8 CCRF S-180 II)を、2×10細胞/0.1mlをSwiss-Websterマウスのそれぞれの背面脇腹に筋肉内注射することにより誘導した。群は、10匹の動物(20個の腫瘍)からなった。L-Glu-L-Trpを、10μg/kg、75μg/kg、250μg/kg、または1000μg/kgのいずれかの1回の0.1ml用量で投与した。腫瘍サイズを、罹患した肢を外科的に取り出し、そして計量し、そして正常なコントロール(非腫瘍)肢の重量とその重量とを比較することにより評価した。第1の予防的薬物レジメ(PDR-1)は、−5日目に開始し、そして−1日目で終了する、5回の連続的な毎日の腹腔内注射からなった。第2の予防的薬物レジメ(PDR-2)は、−5日目に開始し、そして−1日目で終了する、左背面脇腹(腫瘍部位)への5回の連続的な毎日の筋肉内注射からなった。肉腫180細胞を、0日目に筋肉内注射した。生理食塩水0.1mlを、ネガティブコントロールとして供した。
Figure 2005194287

表5に表す結果は、腹腔内または筋肉内で、250μg/kgおよび1000μg/kgの用量でL-Glu-L-Trpを用いる予防的処置が、その後の筋肉内腫瘍増殖を阻害したことを示す。興味深いことに、局所的な筋肉内部位に送達された処置から全身的阻害効果を引き出すことが可能なようである。なぜなら、左背面脇腹へ送達された筋肉内処置が、右脇腹におけるその後の腫瘍増殖を阻害した(すなわち、第8および9群)からである。この結果は、上記の実施例2および3において観察された新生血管形成の阻害と一致する。
本発明は、新生血管形成を阻害するための実質的に新規な方法を提供する。特定の実施例が提供されているが、上記の記載は例示であり、そして限定的ではない。本明細書を検討すれば、本発明の多くの変形は当業者には明らかになる。従って、本発明の範囲は、上記の記載によって決定されるのではなく、添付の請求の範囲をそれらの等価物の完全な範囲と一緒に参照して決定されるべきである。

Claims (1)

  1. 新生血管形成に関与する病的状態を有する被験体を処置する方法であって、該被験体に、R’-Glu-Trp-R’’ジペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的調製物を、新生血管形成を阻害するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
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