JP2005146010A - エンジン油用潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温清浄性に優れるエンジン油用潤滑油組成物、特に排出ガス後処理装置装着エンジンに好適な、リン、金属、硫黄の1〜3種を低減又は実質的に含まないエンジン油用潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のエンジン油用潤滑油組成物は、潤滑油基油に、無灰分散剤(A)と、無灰酸化防止剤(B)と、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を有する3級アミン化合物及び/又は炭素数6〜30のアルキル基を有する3級ポリエーテルアミン化合物からなる3級アミン化合物(C)とを含む添加剤を配合したことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高温清浄性に優れるエンジン油用潤滑油組成物に関し、詳しくは高温清浄性に優れる、リン、硫黄、金属のいずれか1〜3種を、低減した又は実質的に含有しないエンジン油用潤滑油組成物に関する。
エンジン油の分野においては、摩耗防止剤兼酸化防止剤であるジチオリン酸亜鉛が50年以上にも渡り使用され続け、現在においても必須のエンジン油添加剤として認識されている。
ところで、近年の環境問題を背景に、自動車等のエンジンには、酸化触媒、三元触媒、NOx吸蔵型還元触媒等が使用されており、最近になってDPF等のディーゼルパティキュレート除去装置の装着が義務付けられるなど、排出ガス規制がより強化されていく状況にある。
このような状況の中、上記のような排出ガス後処理装置に対し、エンジン用の潤滑油が与える影響について多くの検討がなされている。例えば、特許文献1〜15において、排出ガス後処理装置への負荷を低減するために、低リン又は無リンエンジン油、低灰又は無灰エンジン油あるいは低硫黄又は無硫黄エンジン油が検討されている。
しかしながら、無リンエンジン油においては、上記ジチオリン酸亜鉛の代わりに摩耗防止性能を維持するための硫黄含有添加剤を多量に配合するために高温清浄性が悪化し、また、低灰エンジン油においては、ジチオリン酸亜鉛が必須として配合され、低リン化やさらなる高温清浄性の向上が困難である。また、金属系清浄剤を多量に配合したエンジン油組成物は高温清浄性に優れるが、逆にこれを低減した又は配合しない低灰エンジン油は、高温清浄性が不十分である。
従って、高温清浄性に極めて優れる、リン、硫黄、金属のいずれか1〜3種の含有量が低減された又は実質的に含有しないエンジン油用潤滑油組成物の開発が望まれている。
特開昭62−253691号公報 特開平6−41568号公報 特表平1−500912号公報 特開昭63−304095号公報 特開昭63−304096号公報 特開昭62−243692号公報 特表昭62−501917号公報 特表昭62−501572号公報 特開2000−63862号公報 特開2002−206096号公報 特開2003−073685号公報 特開平8−48989号公報 特開平8−253782号公報 特開平9−111275号公報 特開2000−256690号公報
本発明の課題は、リン、金属あるいは硫黄のいずれか又は全部を低減又は実質的に含有させなくても高温清浄性に極めて優れるエンジン油用潤滑油組成物を提供することにある。
本発明の別の課題は、リン、金属あるいは硫黄のいずれか又は全部を低減又は実質的に含有させなくても高温清浄性に極めて優れ、その特性維持を更に向上させたエンジン油用潤滑油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、無灰分散剤、無灰酸化防止剤及び特定のアミン化合物を含有するエンジン油が、高温清浄性に極めて優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、潤滑油基油に、無灰分散剤(A)と、無灰酸化防止剤(B)と、式(1)で表されるアミン化合物(C1)及び/又は式(2)で表されるアミン化合物(C2)からなるアミン化合物(C)とを含む添加剤を配合したことを特徴とするエンジン油用潤滑油組成物が提供される。
Figure 2005146010
(式(1)中、R1は炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2及びR3はそれぞれ個別に炭素数1〜30のアルキル基を示す。式(2)中、R4は炭素数6〜30のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ個別に炭素数1〜4のアルキレン基を示し、x及びyはそれぞれ個別に1〜8の整数を示す。)
本発明のエンジン油用潤滑油組成物は、高温清浄性に優れるだけでなく、リン、金属、硫黄による排出ガス後処理装置への影響懸念を低減又は払拭することができ、二輪車及び四輪車用ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等排出ガス後処理装置を装着したエンジン用に好適に用いることができる。また、高温清浄性だけでなく、酸化安定性にも優れ、長期の使用にも耐えうるので、このような性能が要求される潤滑油、例えば、自動又は手動変速機油、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受油、冷凍機油、グリース等の潤滑油への適用も可能である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物に用いる潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油及び/又は合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等が例示できる。
鉱油系基油において全芳香族含有量は、特に制限はないが、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。上記基油の全芳香族含有量が15質量%を越える場合は、酸化安定性が劣るため、好ましくない。
ここで全芳香族含有量とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味する。通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン、及びこれらのアルキル化物、ベンゼン環が四環以上縮合した化合物、又はピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
鉱油系基油中の硫黄分量は、特に制限はないが、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。鉱油系基油の硫黄分を低減することで、より高温清浄性に優れる組成物が得られる。
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、又はジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、又はペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;マレイン酸ジブチル等のジカルボン酸類と炭素数2〜30のα−オレフィンとの共重合体、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、又は芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれら2種以上の混合物等が例示できる。
本発明に用いる潤滑油基油としては、鉱油系基油、合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑基油の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
本発明に用いる潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、1mm2/s以上、20mm2/s以下が好ましく、2mm2/s以上、10mm2/s以下がより好ましい。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm2/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が1mm2/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるためそれぞれ好ましくない。
潤滑油基油の蒸発損失量は、NOACK蒸発量で20質量%以下が好ましく、16質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油基油の蒸発損失が大きいだけでなく、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、オイル消費量が増加するだけでなく、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。ここでNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定される潤滑油の蒸発量を測定したものである。
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は80以上が好ましく、100以上が更に好ましく、120以上が最も好ましい。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものやコンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。潤滑油基油の粘度指数が80未満では、低温粘度特性が悪化するため好ましくない。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物に用いる無灰分散剤(A)(以下、(A)成分ということがある)は、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400、好ましくは60〜350の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、マンニッヒ系分散剤あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
前記含窒素化合物又はその誘導体のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は、潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するためそれぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
(A)成分としては、例えば、以下の(A1)成分〜(A3)成分から選択される1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(A1)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体、
(A2)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体、
(A3)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体。
(A1)成分としては、式(3)又は(4)で示される化合物等が例示できる。
Figure 2005146010
式(3)中、R20は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、hは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。一方、式(4)中、R21及びR22は、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、特に好ましくはポリブテニル基である。またiは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
(A1)成分には、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した式(3)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した式(4)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが含まれるが、本発明の組成物には、それらのいずれも、あるいはこれらの混合物が含まれていても良い。
これら(A1)成分であるコハク酸イミドの製法は特に制限はなく、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を、無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得られる。
ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
(A2)成分としては、具体的には式(5)で表される化合物等が例示できる。
Figure 2005146010
式(5)中、R23は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、jは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
この(A2)成分であるベンジルアミンの製法は特に制限はなく、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、又はエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを、フェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドと、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、又はペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンとをマンニッヒ反応により反応させることにより得られる。
(A3)成分としては、具体的には、式(6)で表される化合物等が例示できる。
24‐NH−(CH2CH2NH)k−H (6)
式(6)中、R24は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、kは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
この(A3)成分であるポリアミンの製法は特に制限はなく、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、又はペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得られる。
前記(A)成分の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、例えば、前述の含窒素化合物に炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸若しくはこれらの無水物、又はエステル化合物;炭素数2〜6のアルキレンオキサイド;ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる含酸素有機化合物による変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の含窒素化合物にリン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるリン酸変性化合物;前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の含窒素化合物に含酸素有機化合物による変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物等が挙げられる。これらの誘導体の中でもアルケニルコハク酸イミドのホウ酸変成化合物は耐熱性、酸化防止性に優れ、本発明の潤滑油組成物においても塩基価維持性をより高めるために有効である。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物において、(A)成分の含有量は、組成物全量基準で、通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは4〜15質量%である。(A)成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、高温清浄性に対する効果が少なく、一方、20質量%を越える場合は、組成物の低温流動性が大幅に悪化するためそれぞれ好ましくない。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物に用いる無灰酸化防止剤(B)(以下、(B)成分ということがある)は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。該(B)成分を上述の(A)成分及び後述する(C)成分と併用することで相乗的に組成物の高温清浄性を高めることができる。
(B)成分としてのフェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N'−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2'−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
(B)成分としてのアミン系酸化防止剤としては、例えば、芳香族アミン化合物、アルキルジフェニルアミン、アルキルナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン等の潤滑油用として一般に使用されている公知のアミン系酸化防止剤が挙げられる。ここで、アルキル基とは炭素数1〜30、好ましくは3〜20、特に好ましくは4〜10のアルキル基を示す。
(B)成分としては、上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とを組合せて配合することが好ましい。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物において(B)成分の含有量は、組成物全量基準で通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。その含有量が20質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な高温清浄性が得られないため好ましくない。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物に用いるアミン化合物(C)(以下、(C)成分ということがある)は、前記式(1)で表されるアミン化合物(C1)(以下、(C1)成分ということがある)及び/又は前記式(2)で表されるアミン化合物(C2)(以下、(C2)成分ということがある)である。
式(1)中、R1は炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2及びR3はそれぞれ個別に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を示す。
一方、式(2)中、R4は炭素数6〜30のアルキル基、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ個別に炭素数1〜4のアルキレン基、好ましくは2又は3のアルキレン基、x及びyはそれぞれ個別に1〜8、好ましくは1〜4、特に好ましくは1又は2の整数を示す。
式(1)及び(2)において炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が例示できる。
式(1)及び(2)において炭素数6〜30のアルケニル基としては、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等(これらは直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)等が例示できる。
式(1)及び(2)において炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基等(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が例示できる。
(C)成分としては、例えば、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、オレイルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン等の炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基と、炭素数1〜30のアルキル基を2つ有する3級アミン;ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミン、ドデシルジ(ポリオキシエチレン)アミン、テトラデシルジ(ポリオキシエチレン)アミン、オクタデシルジ(ポリオキシエチレン)アミン、ドデシルジ(ポリオキシプロピレン)アミン、テトラデシルジ(ポリオキシプロピレン)アミン、オクタデシルジ(ポリオキシプロピレン)アミン等の炭素数6〜30のアルキル基と、(ポリ)オキシアルキレン基を2つ有する3級アミン等が挙げられる。
これらの中では、特に炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基と、炭素数1〜8のアルキル基2つを有する3級アミンが好ましい。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物において(B)成分の含有量は、組成物全量基準で通常0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明においては、上記(A)、(B)及び(C)成分を併用することで、300℃のような高温での清浄性に優れた組成物が得られ、これら3成分を主成分とする添加剤を含有させることにより、リン、硫黄、金属のいずれか1〜3種を低減又は実質的に含有しないエンジン油用潤滑油組成物とすることができる。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物には、本発明の効果をより高めるため、あるいは要求される性能上、必要に応じて、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で各種の他の潤滑油添加剤を配合することができる。
他の潤滑油添加剤としては、例えば、炭素数6〜30の炭化水素基を有する、脂肪族1級又は2級アミン系無灰摩擦調整剤(D1)(以下、(D1)成分ということがある)、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤(D2)(以下、(D2)成分ということがある)、脂肪酸アミド系無灰摩擦調整剤(D3)(以下、(D3)成分ということがある)、脂肪族エーテル系無灰摩擦調整剤(D4)(以下、(D4)成分ということがある)及び脂肪族アルコール系無灰摩擦調整剤(D5)(以下、(D5)成分ということがある)の少なくとも1種からなる無灰摩擦調整剤(D)(以下、(D)成分ということがある)、金属系清浄剤(E)(以下、(E)成分ということがある)、硫黄及び/又はリン系摩耗防止剤(F)(以下、(F)成分ということがある)及びこれらの混合物からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
(D)成分を配合することにより、リン、硫黄、金属を増加させることなく高温清浄性を維持又は更に向上させると共に、省燃費性、摩耗防止性を更に付与することができる。
(D)成分において、炭素数6〜30の炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分枝状のアルキル基又はアルケニル基等が挙げられる。具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらは直鎖状でも分枝状でもよい);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらは直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)等が例示できる。
(D1)成分としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族モノアミン、直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族ポリアミン、又はこれら脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が挙げられ、具体的には、ドデシルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン等の1級アミン、ドデシルメチルアミン、オレイルメチルアミン、ドデシルモノ(ポリエチレンオキシド)アミン等の2級アミン等が例示できる。
(D2)成分としては、炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステル等が挙げられ、具体的には、グリセリン(モノ、ジ又はトリ)エステル、ソルビタン(モノ、ジ又はトリ)エステル等が例示できる。
(D3)成分としては、炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が挙げられ、具体的には、オレイン酸アミド等が例示できる。
(D4)成分としては、炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の炭化水素基を有する脂肪族エーテル等が挙げられ、具体的には、オレイルエーテル、ステアリルエーテル等が例示できる。
(D5)成分としては、炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコール等が挙げられ、具体的には、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ジオール類、アルキレングリコール類等が例示できる。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物において(D)成分を配合する場合には、(D1)〜(D5)成分の中から任意に選ばれた1種又は2種以上の化合物を含有させることができ、その含有量は、組成物基準で通常0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。
(E)成分は、高温清浄性を維持又は更に向上させると共に、酸中和性能を更に付与することができる。
(E)成分としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、スルホネート、サリシレート、フェネート、ホスホネート等の公知の金属系清浄剤が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、特にカルシウム、マグネシウムが好ましく、更にはカルシウムが好ましい。
(E)成分の全塩基価(過塩素酸法)は特に制限はなく、通常0〜500mgKOH/gである。従って、(E)成分としては、中性、塩基性又は過塩基性の金属系清浄剤から選ばれる1種又は2種以上が使用できる。
(E)成分としては、より高温清浄性に優れる点でアルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレートの使用が好ましく、アルカリ土類金属サリシレート、特に中性アルカリ土類金属サリシレートの使用が望ましい。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物において(E)成分を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、金属元素換算量で好ましくは0.005〜0.3質量%、より好ましくは0.01〜0.15質量%である。(E)成分の金属元素換算量での含有量が0.3質量%を超える場合は、組成物の硫酸灰分量が高くなり、排出ガス後処理装置への影響が懸念されるため好ましくない。また、0.005質量%未満の場合、(E)成分併用の意味がない。
(F)成分は、高温清浄性を維持又は更に向上させると共に、摩耗防止性を更に付与することができる。
(F)成分は、潤滑油に一般に使用される公知のものが使用でき、例えば、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、及びこれらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、チアゾール類、チアジアゾール類、ジスルフィド類、ポリスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化エステル類、硫化油脂類等又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物において(F)成分を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、硫黄を含有する化合物の場合、その有効成分に起因する硫黄含有量は、硫黄元素換算量で0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が特に好ましい。また、リンを含有する化合物の場合は、リン元素換算量で0.06質量%以下が好ましく、0.04質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が特に好ましい。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物には、上記(A)〜(F)成分以外のその他の添加剤が配合されていても良い。その他の添加剤としては、例えば、(B)成分以外の酸化防止剤、(D)成分以外の摩擦調整剤に加えて、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、又は着色剤等が挙げられる。
(B)成分以外の酸化防止剤としては、例えば、油溶性の銅オレート系、モリブデンアミン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
(D)成分以外の摩擦調整剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、二硫化モリブデン等が挙げられる。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤、オレフィン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−ジエン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤又はポリアルキルスチレン系粘度指数向上剤等が挙げられる。これらの粘度指数向上剤の重量平均分子量は、通常800〜1000000、好ましくは100000〜900000である。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、又はフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
前記その他の添加剤を本発明の組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、(B)成分以外の酸化防止剤、(D)成分以外の摩擦調整剤ではそれぞれ0.01〜2質量%、粘度指数向上剤では0.1〜20質量%、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲が好ましい。
本発明のエンジン油用潤滑油組成物は、上述のとおり、潤滑油基油に、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む添加剤を主成分として含有するエンジン油用潤滑油組成物であり、実質的に金属含有化合物、硫黄含有化合物、リン含有化合物を含有しない、高温清浄性に極めて優れ、本質的に排出ガス浄化装置への影響を与えないエンジン油用潤滑油組成物とすることができる。また、本発明のエンジン油用潤滑油組成物は、必要に応じ、上述した各種添加剤を何ら制限なく配合することができるが、排出ガス浄化装置への影響を極力回避することを目的として、以下の(a)〜(c)のいずれか1つ又は2つ以上の要件を満たすことが特に望ましい。
(a)リン含有量が0.02質量%以下、好ましくは0.01質量%、特に好ましくはリンを実質的に含有しない。
(b)硫酸灰分量が0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは金属を実質的に含有しない。
(c)硫黄含有添加剤の有効成分に起因する硫黄の含有量が0.15質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは実質的に当該硫黄を含有しない。
即ち、本発明においては、上記(a)〜(c)のいずれか1つ又は2つ以上の要件を満たすことにより、低リンエンジン油、無リンエンジン油、低灰エンジン油、無灰(金属不含有)エンジン油、低硫黄エンジン油、無硫黄(硫黄含有添加剤不含有)エンジン油のいずれか、又は複数の要件を満たす、高温清浄性に極めて優れるエンジン油用潤滑油が得られる。
ここで、(b)要件における硫酸灰分量とは、JIS K2272の5.「硫酸灰分の試験方法」に規定される方法により測定される値を示し、主として金属含有添加剤に起因する値である。
以下に本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
尚、表中の各成分は以下のとおりである。
1)潤滑油基油:水素化分解鉱油(100℃動粘度:4.2mm2/s、硫黄分:0.001質量%、粘度指数:120)
2)無灰分散剤(A):ポリブテニルコハク酸イミド及びホウ素化ポリブテニルコハク酸イミド
3)無灰酸化防止剤(B):フェノール系及びアミン系酸化防止剤
4)アミン化合物(C)
アミン化合物(C1-a):C12H25-N(CH3)2
アミン化合物(C1-b):R-N(CH3)2(ここで、Rは炭素数8〜18(主成分は炭素数12及び/又は14のアルキル基)のヤシアルキル基を示す)
アミン化合物(C1-c):C18H37-N(CH3)2
アミン化合物(C2-a):ポリエチレングリコールラウリルアミン(C12H25-N(C2H4O)xH・(C2H4O)yH)
アミン化合物(C2-b):ポリエチレングリコールステアリルアミン(C18H37-N(C2H4O)xH・(C2H4O)yH)
5)比較のためのアミン化合物
1級アミン化合物(a):C12H25-NH2
1級アミン化合物(b):R-NH2(ここで、Rは炭素数8〜18(主成分は炭素数12及び/又は14のアルキル基)のヤシアルキル基を示す)
1級アミン化合物(c):C18H35-NH2
アルケニルポリエーテルアミン(d):ポリエチレングリコールオレイルアミン(C18H35-N(C2H4O)xH・(C2H4O)yH)
6)無灰摩擦調整剤(D)
無灰摩擦調整剤(D1):オレイルアミン
無灰摩擦調整剤(D2):オレイン酸グリセライド(モノ、ジ、トリの混合物)
無灰摩擦調整剤(D3):オレイン酸アミド
7)金属系清浄剤(E)
金属系清浄剤(E1):過塩基性カルシウムスルホネート(全塩基価:300mgKOH/g)
金属系清浄剤(E2):過塩基性カルシウムフェネート(全塩基価:250mgKOH/g)
金属系清浄剤(E3):過塩基性カルシウムサリシレート(全塩基価:170mgKOH/g)
金属系清浄剤(E4):中性カルシウムサリシレート(全塩基価:70mgKOH/g)
8)硫黄及び/又はリン含有摩耗防止剤(F)
摩耗防止剤(F1):下記構造式で示されるチアジアゾール
Figure 2005146010
摩耗防止剤(F2):硫化油脂
摩耗防止剤(F3):硫化油脂
摩耗防止剤(F4):硫化オレイン酸メチルエステル
摩耗防止剤(F5):ジtert−ドデシルポリスルフィド
摩耗防止剤(F6):下記構造式で示されるβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸
Figure 2005146010
摩耗防止剤(F7):ジアルキルジチオリン酸亜鉛
摩耗防止剤(F8):酸性リン酸エステルのアミン塩
9)その他の添加剤:粘度指数向上剤及び消泡剤
実施例1〜7、比較例1〜7
表1に示す組成の本発明にかかるエンジン油用潤滑油(実施例1〜7)、比較用のエンジン油用潤滑油(比較例1〜7)をそれぞれ調製した。これらは無リン、無灰(金属不含有、硫酸灰分:0.1質量%以下)、無硫黄(硫黄系添加剤不含有)のエンジン油用潤滑油である。
得られた各エンジン油用潤滑油に対し、JPI−5S−5599に準拠し、300℃においてホットチューブ試験を行った。評点は無色透明(汚れなし)を10点、黒色不透明を0点とし、この間をあらかじめ1刻みで作成した標準チューブを参照して評価した。結果を表1に示す。
Figure 2005146010
表1の結果から、本発明にかかるエンジン油用潤滑油は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の併用により極めて優れた高温清浄性を示すことがわかる。一方、(A)成分及び(B)成分の併用系(比較例1)、(A)成分及び(C)成分の併用系(比較例2)、(B)成分及び(C)成分の併用系(比較例3)では、300℃における評点はいずれも0であり、3成分を併用して初めて本発明の効果が得られることがわかる。
また、(C)成分の変わりに1級アミンを使用した場合(比較例4〜6)、アルケニル基を有するポリエーテルアミンを使用した場合(比較例7)でも同様に本発明の効果が全く得られないことがわかる。
実施例8〜10、比較例8〜10
表2に示す組成の本発明にかかるエンジン油用潤滑油(実施例8〜10)、比較用のエンジン油用潤滑油(比較例8〜10)をそれぞれ調製した。これらは上記表1の潤滑油に、更に(D)成分を併用したものであり、同様に無リン、無灰(金属不含有、硫酸灰分:0.1質量%以下)、無硫黄(硫黄系添加剤不含有)のエンジン油用潤滑油である。得られた各エンジン油用潤滑油に対し、実施例1〜7と同様にホットチューブ試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2005146010
表2の結果から、(D)成分を併用した場合(実施例8〜10)は高温清浄性が更に高まることがわかる。一方、(C)成分を使用せずに(A)成分、(B)成分及び(D)成分を併用した場合(比較例8〜10)では、300℃における評点は0となり、本発明の効果が全く得られないことがわかる。
実施例11〜15、比較例11〜13、参考例1〜2
表3に示す組成の本発明にかかるエンジン油用潤滑油(実施例11〜15)、比較用のエンジン油用潤滑油(比較例11〜13)及び参考のエンジン油用潤滑油(参考例1〜2)をそれぞれ調製した。これらは上記表1の潤滑油に、更に(E)成分を併用したものであり、無リン、低灰(硫酸灰分:0.5質量%以下)、低硫黄又は無硫黄(硫黄系添加剤不含有)のエンジン油用潤滑油である。
得られた各エンジン油用潤滑油に対し、JPI−5S−5599に準拠し、280℃においてホットチューブ試験を行った。評点は無色透明(汚れなし)を10点、黒色不透明を0点とし、この間をあらかじめ1刻みで作成した標準チューブを参照して評価した。尚、高性能ディーゼルエンジン油の規格であるJASO DH−1規格では、280℃における評点が7.0以上であれば合格レベルであるので、評点が7.0以上であれば優れたエンジン油用潤滑油といえる。
Figure 2005146010
表3の結果から、本発明にかかるエンジン油用潤滑油は、評点がいずれも8以上であり、優れた高温清浄性を示すことがわかる。一方、(C)成分を併用しない場合(比較例11〜13)ではいずれも本発明の効果が得られないことがわかる。また、(C)成分を使用せず、(E)成分を使用した参考例1、(E)成分と(F)成分を併用した参考例2のエンジン油用潤滑油の評点は、8又は7と高いが、(C)成分を併用(実施例14及び15)することで、更に優れた高温清浄性を示すことがわかる。
実施例16〜26、比較例14
表4に示す組成の本発明にかかるエンジン油用潤滑油(実施例16〜26)、比較用のエンジン油用潤滑油(比較例14)をそれぞれ調製した。これらは上記表1の潤滑油に、更に(F)成分を併用したものであり、低リン又は無リン、低灰又は無灰(硫酸灰分:0.1質量%以下)、低硫黄(硫黄系添加剤起因の硫黄含有量:0.15質量%以下)のエンジン油用潤滑油である。得られた各潤滑油に対し、実施例11〜15と同様にホットチューブ試験を行った。結果を表4に示す。
Figure 2005146010
表4の結果から、本発明にかかるエンジン油用潤滑油(実施例16〜26)は、いずれも評点が7.0以上であり、優れた高温清浄性を有している。それに対し、(C)成分を使用せず、(F)成分(例えばβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸)を含有するエンジン油用潤滑油(比較例14)は、高温清浄性が著しく劣るものの、(C)成分を併用することで格段に高温清浄性が改善されることがわかる(実施例21)。尚、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用した実施例23〜26を比較すると、リン含有量が0.03質量%以上、硫黄含有量が0.6質量%以上である実施例25及び26の組成物の評点はJASO DH−1規格合格レベルの7.0以上で優れた高温清浄性を示すが、リン含有量を0.025質量%以下又は硫黄含有量を0.05質量%以下とすることで、より高温清浄性に優れる組成物が得られることがわかる(実施例23、24)。
本発明にかかるエンジン油用潤滑油は、上記性能以外にも酸化安定性に極めて優れており、長期の使用に耐えうるロングドレイン油としても有用である。

Claims (4)

  1. 潤滑油基油に、無灰分散剤(A)と、無灰酸化防止剤(B)と、式(1)で表されるアミン化合物(C1)及び/又は式(2)で表されるアミン化合物(C2)からなるアミン化合物(C)とを含む添加剤を配合したことを特徴とするエンジン油用潤滑油組成物。
    Figure 2005146010
    (式(1)中、R1は炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2及びR3はそれぞれ個別に炭素数1〜30のアルキル基を示す。式(2)中、R4は炭素数6〜30のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ個別に炭素数1〜4のアルキレン基を示し、x及びyはそれぞれ個別に1〜8の整数を示す。)
  2. 無灰分散剤(A)の配合割合が組成物全量基準で0.1〜20質量%、無灰酸化防止剤(B)の配合割合が組成物全量基準で0.01〜20質量%、及びアミン化合物(C)の配合割合が組成物全量基準で0.01〜3質量%であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. 前記添加剤が、炭素数6〜30の炭化水素基を有する、脂肪族1級又は2級アミン系無灰摩擦調整剤(D1)、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤(D2)、脂肪酸アミド系無灰摩擦調整剤(D3)、脂肪族エーテル系無灰摩擦調整剤(D4)及び脂肪族アルコール系無灰摩擦調整剤(D5)の少なくとも1種からなる無灰摩擦調整剤(D)、金属系清浄剤(E)、硫黄及び/又はリン系摩耗防止剤(F)及びこれらの混合物からなる群より選択される1種又は2種以上を更に含むことを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
  4. 以下の(a)〜(c)のいずれか1又は2以上の要件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
    (a)リン含有量が0.02質量%以下、
    (b)硫酸灰分量が0.5質量%以下、
    (c)硫黄含有添加剤の有効成分に起因する硫黄の含有量が0.15質量%以下。

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