JP2005128278A - 位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及びパターン転写方法 - Google Patents

位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及びパターン転写方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ArFエキシマレーザ用マスクとして、欠陥検査も可能となるよう透過率の波長依存性が小さく、単一のドライエッチングガスで加工可能な位相シフトマスクブランク、それを用いたいそうシフトマスク、及びパターン転写方法を提供する。
【解決手段】 基板上に位相シフト多層膜を具備する位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト多層膜が、少なくとも1層の金属、金属とケイ素、又は不飽和金属化合物からなる光吸収機能膜と、少なくとも1層の位相シフト機能膜とからなり、前記光吸収機能膜の波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加すると共に、前記光吸収機能膜の膜厚を15nm以下とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体集積回路等の製造などに用いられる位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスク、特に、露光波長の光を減衰させるハーフトーン型の位相シフトマスク、その素材として用いられる位相シフトマスクブランク、及びパターン転写方法に関する。
IC、LSI又はVLSI等の半導体集積回路の製造をはじめとして、広範囲な用途に用いられているフォトマスクは、基本的には透光性基板上にクロムを主成分とする遮光膜を有するフォトマスクブランクの該遮光膜に、フォトリソグラフィー法を応用して紫外線や電子線等を使用することにより、所定のパターンを形成したものである。近年では半導体集積回路の高集積化等の市場要求に伴ってパターンの微細化が急速に進み、これに対して露光波長の短波長化を図ることにより対応してきた。
しかしながら、露光波長の短波長化は解像度を改善する反面、焦点深度の減少を招き、プロセスの安定性が低下し、製品の歩留まりに悪影響を及ぼすという問題があった。このような問題に対して有効なパターン転写法の一つとして位相シフト法があり、微細パターンを転写するためのマスクとして位相シフトマスクが使用されている。
この位相シフトマスク(ハーフトーン型位相シフトマスク)は、例えば、図16(A),(B)に示されるように、基板1上に位相シフト膜2’が成膜された位相シフトマスク上のパターン部分を形成している位相シフター部2aと、位相シフター部2aが存在しない基板が露出している基板露出部1aからなり、両者を透過してくる光の位相差を約180°とすることで、パターン境界部分の光の干渉により、干渉した部分で光強度はゼロとなり、転写像のコントラストを向上させることができるものである。また、位相シフト法を用いることにより、必要な解像度を得るための焦点深度を増大させることが可能となり、クロム膜等からなる一般的な遮光パターンをもつ通常のマスクを用いた場合に比べて、解像度の改善と露光プロセスのマージンを向上させることが可能なものである。
上記位相シフトマスクは、位相シフター部の光透過特性によって、完全透過型位相シフトマスクとハーフトーン型位相シフトマスクとに実用的には大別することができる。完全透過型位相シフトマスクは、位相シフター部の光透過率が基板露出部と同等であり、露光波長に対して透明なマスクである。ハーフトーン型位相シフトマスクは、位相シフター部の光透過率が基板露出部の数%〜数十%程度のものである。
図17にハーフトーン型位相シフトマスクブランク、図18にハーフトーン型位相シフトマスクの基本的な構造をそれぞれ示す。図17のハーフトーン型位相シフトマスクブランクは基板1のほぼ全面にハーフトーン位相シフト膜2’を形成したものである。また、図18のハーフトーン型位相シフトマスクは、上記位相シフト膜2’をパターン化したもので、基板1上のパターン部分を形成する位相シフター部2a、位相シフターの存在しない基板露出部1aからなる。ここで、位相シフター部2aを透過した光は基板露出部1aを通過した光に対して位相がシフトされるが、位相シフター部2aの透過率は被転写基板上のレジストに対しては感光しない光強度に設定される。従って、露光光を実質的に遮断する遮光機能を有する。
上記ハーフトーン型位相シフトマスクとしては、構造が簡単で製造が容易な単層型のハーフトーン型位相シフトマスクがある。この単層型のハーフトーン型位相シフトマスクとしては、MoSiO、MoSiON等のMoSi系の材料からなる位相シフト膜を有するものなどが提案されている(例えば、特許文献1:特開平7−140635号公報参照)。
このように、ハーフトーン型位相シフトマスクは、簡便に高解像度を得るための有効な手段であるが、マスクを使用して露光を行う波長(露光波長)とマスク自体の欠陥などを検査する波長(検査波長)の違いから次のような問題が指摘されている。
ハーフトーン位相シフトマスクに一般に使用される金属とケイ素の酸化窒化物膜は、照射される光の波長が長いほど透過率が高くなる性質をもつ。また、露光波長と検査波長とを比較すると検査波長の方が長い場合が一般的である。例えば、露光波長193nmのArFエキシマレーザー用マスクの場合、その欠陥検査機で使用される波長は、露光波長である193nmよりも長波長の260nm付近(特に、266nm程度)が一般的である。更に、欠陥検査機では、基板露出部と位相シフター部との間にコントラストがなければ検査することができない。そのため、検査波長に対する位相シフター部の透過率が50%を超えると、基板露出部との透過率の差が小さくなり、検査に十分なコントラストが得難くなり、十分な精度で欠陥検査ができなくなる。上記のような検査波長と露光波長との違いによる問題は、透過率だけではなく反射率においても問題となる。
このように、ハーフトーン位相シフト膜は、透過率、反射率の波長依存性が小さいことが望まれる。この問題を解決する方法として、位相シフト膜を多層化し、位相シフト機能を有する透明膜(酸化膜などが使用される)と光吸収機能を有する金属膜とを組合せた構造が検討されている。しかしながら、この構成の従来の位相シフト膜は、位相シフト機能を有する透明膜と光吸収機能膜を有する金属膜のドライエッチング特性が大幅に異なることから、マスク製造において、複数のエッチングガスを組合せたエッチングプロセスが必要となり、マスク製造コストの増加(設備の高額化、工程数増加、歩留まりの低下など)が問題となる。
また、この構成のハーフトーン位相シフト膜では、透過率と反射率の両方の波長依存性を同時に小さくすることが実現できていないという問題、更に、位相シフト機能を有する透明膜と光吸収機能を有する金属膜とを組合せたものでは、レーザーによる欠陥修正機を使用した場合、光吸収機能を有する膜のみにレーザーのエネルギーが集中し、満足な修正が行えないといった問題も抱えている。
特開平7−140635号公報
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、透過率の波長依存性が小さく、単一のドライエッチングガスで加工可能な位相シフトマスクブランク、それを用いた位相シフトマスク、及びパターン転写方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、基板上に位相シフト多層膜を具備する位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜を、少なくとも1層の金属、金属とケイ素、又は金属若しくは金属とケイ素を主要構成元素とする酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物若しくは窒化炭化物の不飽和金属化合物からなる光吸収機能膜と、少なくとも1層の金属又は金属とケイ素を含有する酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物又は窒化炭化物からなる位相シフト機能膜とで構成し、光吸収機能膜を、波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加するものとすると共に、光吸収機能膜の膜厚を15nm以下とすることにより、この位相シフトマスクブランクが、透過率の波長依存性が小さく、単一のドライエッチングガスで加工可能なものとなることを見出した。
この場合、光吸収機能膜を1層としてこれを基板に隣接して設けること、又は光吸収機能膜を2層としてこれらのうちの一方を基板に隣接して設けることにより、欠陥があった場合にもレーザーにより良好に修正可能であること、また、光吸収機能膜を2層とすることにより、反射率の波長依存性も小さくすることが可能となり、マスク製造工程で一般に使用される光学検出式の欠陥検査機での検査が可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、以下の位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクを提供する。
請求項1:
基板上に位相シフト多層膜を具備する位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト多層膜が、少なくとも1層の金属、金属とケイ素、又は金属若しくは金属とケイ素を主要構成元素とする酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物若しくは窒化炭化物の不飽和金属化合物からなる光吸収機能膜と、少なくとも1層の金属又は金属とケイ素を含有する酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物又は窒化炭化物からなる位相シフト機能膜とからなり、前記光吸収機能膜の波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加すると共に、前記光吸収機能膜の膜厚が15nm以下であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
請求項2:
前記光吸収機能膜の消衰係数kが、157〜260nmの波長範囲において0.5以上であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
請求項3:
前記光吸収機能膜が1層であり、かつ該光吸収機能膜が基板に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の位相シフトマスクブランク。
請求項4:
前記光吸収機能膜が2層であり、かつ該2層の光吸収機能膜のうちの一方が基板に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の位相シフトマスクブランク。
請求項5:
前記2層の光吸収機能膜のうちの他方の前記位相シフト多層膜表面側の界面が、前記位相シフト多層膜の表面から深さ68.75nm以内に位置するように設けられていることを特徴とする請求項4記載の位相シフトマスクブランク。
請求項6:
前記位相シフト多層膜上に、クロム系遮光膜及び/又はクロム系反射防止膜を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の位相シフトマスクブランク。
請求項7:
請求項1乃至6のいずれか1項記載の位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜をパターン形成してなることを特徴とする位相シフトマスク。
請求項8:
位相シフトマスク上に形成されたパターンを被転写体上に転写する方法であって、請求項7記載の位相シフトマスクを240〜270nmの波長の光にて欠陥検査することにより選定された良品を用いることを特徴とするパターン転写方法。
請求項9:
位相シフトマスク上に形成されたパターンを被転写体上に転写する方法であって、請求項7記載の位相シフトマスクを用い、450〜600nmの波長の光にてアライメント調整を行うことを特徴とするパターン転写方法。
本発明の位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜は、透過率の波長依存性が小さく、かつ単一のドライエッチングガスで加工可能なものであり、露光波長及び検査波長双方に対して良好な透過率を与えることから、本発明の位相シフトマスクブランク及びこれから得られる位相シフトマスクは、露光波長の更なる短波長化に対応し得る優れたものとなる。
本発明においては、特に、光吸収機能膜を1層としてこれを基板に隣接して設けること、又は光吸収機能膜を2層としてこれらのうちの一方を基板に隣接して設けることにより、欠陥があった場合にもレーザーにより良好に修正可能なものとなる。また、光吸収機能膜を2層とすることにより、反射率の波長依存性も小さくすることが可能となり、マスク製造工程で一般に使用される光学検出式の欠陥検査機での検査が可能となる。
以下、本発明について更に詳述する。
本発明の位相シフトマスクブランクは、基板上に位相シフト多層膜を具備する位相シフトマスクブランクであり、前記位相シフト多層膜が、少なくとも1層の金属、金属とケイ素、又は金属若しくは金属とケイ素を主要構成元素とする酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物若しくは窒化炭化物の不飽和金属化合物からなる光吸収機能膜と、少なくとも1層の金属又は金属とケイ素を含有する酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物又は窒化炭化物からなる位相シフト機能膜とからなり、前記光吸収機能膜の波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加すると共に、前記光吸収機能膜の膜厚が15nm以下のものである。
本発明の位相シフトマスクブランクには、位相シフト多層膜として、石英、CaF2等の露光光が透過する基板上に位相シフト多層膜が形成されている。
一般に、位相シフトマスクブランクの位相シフト膜として用いられる金属化合物や金属ケイ素化合物の透過率は、光の波長に依存する。例えば、ハーフトーン位相シフト膜として一般的に使用されているモリブデンとケイ素とを含む酸化窒化膜の場合、波長約300nm以下の範囲では、波長が長くなるに従って透過率が急激に増大する。言い換えれば、これは、消衰係数kが波長が長くなるに従って減少することになる。
透過率がこのような傾向を示す場合、例えばF2レーザ(157nm)用に透過率を設定した位相シフト膜を有する位相シフトマスクの検査を、157nmを超える波長を検査波長とする欠陥検査機を用いて欠陥検査しようとすると、検査波長に対する透過率が高いため、基板露出部とのコントラストが十分に得られず、満足な検査ができないという状況に陥る。
この問題を解決するために、本発明においては、位相シフト多層膜内に、157〜260nmの波長における消衰係数kが波長が長くなるに従って増加するという特性を有する光吸収機能膜を導入する。
即ち、本発明においては、主に光を吸収する機能を担う膜(光吸収機能膜)を少なくとも1層、主に位相シフト機能を担い、僅かに光を吸収する膜(位相シフト機能膜)を少なくとも1層組合せて位相シフト多層膜とし、光吸収機能膜をその波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加する金属、金属とケイ素、又は金属若しくは金属とケイ素を主要構成元素とする酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物若しくは窒化炭化物の不飽和金属化合物、位相シフト機能膜を金属又は金属とケイ素を含有する酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物又は窒化炭化物で構成することにより、157nmを超える波長、例えば240〜270nmの波長を検査波長としても、透過率が急激に増大しないため、露光波長を超える波長を検査波長として有効な欠陥検査を精度よく実施することが可能となる。
このように、本発明の位相シフト多層膜は、露光波長に対して要求される透過率特性を維持しつつ、露光波長よりも長波長である検査波長に対しても要求される透過率特性を示すという相反する要求を満たす位相シフト膜である。
この場合、特に、光吸収機能膜の消衰係数kが、157〜260nmの波長範囲において0.5以上、特に1以上であることが好ましい。
このような位相シフト多層膜を具備する位相シフトマスクブランクとして具体的な例を挙げれば、例えば、図1に示されるように、基板1上に1層の光吸収機能膜21と1層の位相シフト機能膜22を形成したものが挙げられる。また、図2に示されるような、基板1上に光吸収機能膜21を形成し、この上に第1の位相シフト機能膜221と第2の位相シフト機能膜222を順に形成したもの、図3に示されるような、基板1上に第1の位相シフト機能膜221を形成し、この上に光吸収機能膜21を形成し、更にこの上に、第2の位相シフト機能膜222を形成したもののような3層構造のものを挙げることもできる。更には、図4に示されるような、基板1上に第1の光吸収機能膜211、第1の位相シフト機能膜221、第2の光吸収機能膜212、第2の位相シフト機能膜222を順に形成した4層構造のものも好適である。この場合、特に、光吸収機能膜と位相シフト機能膜とを交互に2層づつ積層したものが好ましい。
本発明においては、光吸収機能膜として金属、金属とケイ素、又は金属若しくは金属とケイ素を主要構成元素とする酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物若しくは窒化炭化物の不飽和金属化合物からなるものを用いるが、例えば、図5に示されるように、モリブデンやシリコンの単体膜の透過率は、280nm付近以下では、波長が長くなるに従って透過率が減少(即ち、消衰係数kが波長が長くなるに従って増加)している。この点から、金属又は金属とケイ素からなる材料が、位相シフト多層膜の透過率の波長依存性を小さくするのに有効であり、更には、金属又は金属とケイ素に対して軽元素の含有量が少ない金属化合物、即ち、酸素、窒素及び炭素の含有量が化学量論量よりも少ない組成の不飽和金属化合物も、位相シフト多層膜の透過率の波長依存性を小さくするのに有効である。
本発明の光吸収機能膜を構成する金属、金属とケイ素、又は不飽和金属化合物における金属としては、遷移金属及びランタノイドの中から選ばれる任意の元素を単独または複数で用いることができ、Mo,Zr,Ta,Cr,Hfが好ましく、Mo,Zrが特に好ましい。
本発明においては、化合物を構成する元素が代表的な価数をとって電荷が過不足なくバランスしている場合を化学量論量とし、このような元素構成比を有する金属化合物を飽和金属化合物とする。この場合、例えば金属として例示されるMoは6価(6+)、Zrは4価(4+)、Taは5価(5+)、Crは3価(3+)、Hfは4価(4+)とし、ケイ素(Si)は4価(4+)とする。一方、軽元素は、酸素(O)を2価(2−)、窒素(N)を3価(3−)、炭素を4価(4−)とする。従って、例えば、モリブデンとケイ素との比が1:2の酸化物の場合、化学量論組成はMoSi27、モリブデンとケイ素との比が1:1の窒化物の場合、化学量論組成はMoSiN10/3となる。
一方、金属化合物を構成する軽元素、即ち、酸素、窒素及び炭素の含有量が、化学量論量より少なく、上述した価数で決定される見かけの電荷バランスが崩れているものを不飽和金属化合物という。例えば、モリブデンとケイ素との比が1:2の酸化物の場合、平均組成式がMoSi27-a(式中、aは0<a<7を満たす正数)であるもの、モリブデンとケイ素との比が1:1の窒化物の場合、平均組成式がMoSiN(10/3)-b(式中、bは0<a<(10/3)を満たす正数)であるものが不飽和金属化合物となる。
このように、軽元素の量が減少すると、見かけ上の電荷のバランスが崩れるが、ホールなどの陽電荷が発生したり、金属の価数が変化する(例えばMoが6価(6+)から3価(3+)に変化したりする)ことにより、実際は電荷のバランスが保たれることになる。
また、光吸収機能膜を構成する不飽和金属化合物としては、不飽和金属シリサイド酸化物、不飽和金属シリサイド酸化窒化物、不飽和金属シリサイド酸化窒化炭化物が好ましく、その組成は、不飽和金属シリサイド酸化物の場合は、M(金属)=0.2〜80原子%、Si=19〜90原子%、O=0.1〜60原子%、不飽和金属シリサイド酸化窒化物の場合は、M(金属)=0.2〜80原子%、Si=19〜90原子%、O=0.1〜50原子%、N=0.1〜50原子%、不飽和金属シリサイド酸化窒化炭化物の場合は、M(金属)=0.2〜80原子%、Si=19〜90原子%、O=0.1〜45原子%、N=0.1〜45原子%、C=0.1〜30原子%であることが好ましい。
このような光吸収機能膜は、形成する光吸収機能膜の組成に合わせて適宜選択した金属ターゲット、シリコンターゲット、金属シリサイドターゲットを用い、ネオン、アルゴン、クリプトン等の不活性ガス雰囲気下でスパッタリングすることにより形成することができ、光吸収機能膜を不飽和金属化合物とする場合は、スパッタリングガスに、酸素を含むガス、窒素を含むガス、炭素を含むガスを適宜導入し、反応性スパッタリングにより形成すればよい。反応性スパッタリングの技術を用いれば、酸素、窒素、炭素の組成比を適宜調整することが可能となることから、光学特性の調整が可能であり、設計の自由度が増す。
一方、本発明において、位相シフト機能膜は、金属又は金属とケイ素を含有する酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物又は窒化炭化物からなるが、酸素、窒素及び炭素の含有量が化学量論量である組成の飽和金属化合物であることが好ましい。飽和金属化合物からなる位相シフト機能膜は、薬品耐性に優れている点からも好ましい。
本発明の位相シフト機能膜を構成する金属としては、遷移金属及びランタノイドの中から選ばれる任意の元素を単独または複数で用いることができ、Mo,Zr,Ta,Cr,Hfが好ましく、Mo,Zrが特に好ましい。
また、位相シフト機能膜としては、金属シリサイド酸化物、金属シリサイド酸化窒化物、金属シリサイド酸化窒化炭化物が好ましく、その組成は、金属シリサイド酸化物の場合は、M(金属)=0.2〜25原子%、Si=10〜42原子%、O=30〜60原子%、金属シリサイド酸化窒化物の場合は、M(金属)=0.2〜25原子%、Si=10〜57原子%、O=2〜20原子%、N=5〜57原子%、金属シリサイド酸化窒化炭化物の場合は、M(金属)=0.2〜25原子%、Si=10〜57原子%、O=2〜20原子%、N=5〜57原子%、C=0.5〜30原子%であることが好ましい。
このような位相シフト機能膜は、形成する位相シフト機能膜の組成に合わせて適宜選択した金属ターゲット、シリコンターゲット、金属シリサイドターゲットを用い、ネオン、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスと共に、酸素を含むガス、窒素を含むガス、炭素を含むガスを適宜導入した反応性スパッタリングにより形成することができる。
また、本発明においては、光吸収機能膜と位相シフト機能膜とを上述したような構成とすると共に、光吸収機能膜の膜厚(光吸収機能膜が2層以上ある場合は、その各々の膜厚)を15nm以下、好ましくは10nm以下、更に好ましくは6nm以下、特に好ましくは2.5nm以下、とりわけ好ましくは1.25nm以下とすることにより、位相シフト多層膜が、光吸収機能膜と位相シフト機能膜とを積層した多層膜であるにもかかわらず、それら2層のエッチング速度を実質上問題とならない程度として単一のドライエッチングガス、特にフッ素系ガスで加工できる。
従来の位相シフト膜において、金属膜はフッ素系ガスでのエッチング工程におけるストッパー層として使用される場合があり、この場合、金属膜のエッチングには塩素系ガスを使用する必要があったが、本発明の位相シフト多層膜では、ドライエッチングに使用するガス種を、光吸収機能膜と位相シフト機能膜とで変更する必要がなく、位相シフト機能膜のエッチングに好適な単一のドライエッチングガスで、光吸収機能膜のエッチングも可能であり、単純な構成のドライエッチングプロセスでマスクを製造することが可能である。
また、位相シフトマスクにおいては、レーザー光を使用して位相シフト膜の欠陥を修正することがあるが、本発明において、位相シフト多層膜を構成する光吸収機能膜はレーザーエネルギーを吸収しやすいが、位相シフト機能膜はレーザーエネルギーを吸収し難いものとなる場合があり、これにより、位相シフト多層膜にレーザー光を照射しても部分的に膜の除去が行われず、修正の信頼性が低下するといった問題を引き起こす場合がある。
本発明においては、光吸収機能膜を1層としてこれを基板に隣接して設けること、又は光吸収機能膜を2層としてこれらのうちの一方を基板に隣接して設けることが好適である。このようにすることにより、上述したような光吸収機能膜と位相シフト機能膜との間のレーザー吸収特性に差があっても、レーザー照射によってエネルギーを吸収しやすい光吸収機能膜を基板表面から除去するのと同時に、位相シフト多層膜を剥離することが可能となるため、レーザーにより欠陥を良好に修正することが可能である。
また、位相シフトマスクブランクを用いたマスク製造工程においては、波長550nm付近の光を用い、その反射によりパターン認識を行う場合があるが、基板露出部と位相シフター部との間のコントラストは、反射率の差によって生ずるため、位相シフター部(位相シフト膜)の反射率は10%以上であることが望ましい。しかしながら、光吸収機能膜を基板に隣接して設ける構成をとった場合、光の干渉の影響で550nm付近における反射率が検査機で要求される10%を下回る場合がある。
本発明においては、特に、光吸収機能膜を2層としてこれらのうちの一方を基板に隣接して設け、2層の光吸収機能膜のうちの他方の位相シフト多層膜表面側の界面を、位相シフト多層膜の表面から深さ68.75(137.5/2)nm以内、好ましくは深さ34.375(137.5/4)nm以内に位置するように設けることが好ましい。これにより、吸収機能膜を基板に隣接して設ける構成をとった場合であっても550nm付近における反射率を10%以上にすることが可能となる。
また、本発明においては、位相シフト多層膜上に、クロム系遮光膜及び/又はクロム系反射防止膜を設けたものも好適である。このようなものとしては、図6に示されるような、位相シフト多層膜2上に、クロム系遮光膜3を設けた位相シフトマスクブランク、図7に示されるような、位相シフト多層膜2上に、クロム系遮光膜3を設け、このクロム系遮光膜3からの反射を低減させるクロム系反射防止膜4をクロム系遮光膜3上に更に形成した位相シフトマスクブランク、更には、図8に示されるような、基板1側から位相シフト多層膜2、第1のクロム系反射防止膜4、クロム系遮光膜3、第2のクロム系反射防止膜4’の順に形成した位相シフトマスクブランクが挙げられる。なお、図6〜8において21は光吸収機能膜、22は位相シフト機能膜である。
この場合、クロム系遮光膜又はクロム系反射防止膜としては、クロム酸化炭化物(CrOC)膜、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)膜又はこれらを積層したものを用いることが好ましい。
このようなクロム系遮光膜又はクロム系反射防止膜は、クロム単体又はクロムに酸素、窒素、炭素のいずれか、又はこれらを組合せたものを添加したターゲットを用い、ネオン、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスに炭素源として二酸化炭素ガスを添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタリングにより成膜することができる。
具体的には、CrONC膜を成膜する場合にはスパッタガスとしてはCH4,CO2,CO等の炭素を含むガスと、NO,NO2,N2等の窒素を含むガスと、CO2,NO,O2等の酸素を含むガスのそれぞれ1種以上を導入するか、これらにAr,Ne,Kr等の不活性ガスを混合したガスを用いることもできる。特に、炭素源及び酸素源ガスとしてCO2ガスまたはCOガスを用いることが基板面内均一性、製造時の制御性の点から好ましい。導入方法としては各種スパッタガスを別々にチャンバー内に導入してもよいし、いくつかのガスをまとめて又は全てのガスを混合して導入してもよい。
なお、CrOC膜は、Crが20〜95原子%、特に30〜85原子%、Cが1〜30原子%、特に5〜20原子%、Oが1〜60原子%、特に5〜50原子%であることが好ましく、また、CrONC膜は、Crが20〜95原子%、特に30〜80原子%、Cが1〜20原子%、特に2〜15原子%、Oが1〜60原子%、特に5〜50原子%、Nが1〜30原子%、特に3〜20原子%であることが好ましい。
本発明の位相シフトマスクは、上記のような位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜をパターン形成してなるものである。
例えば、具体的な例を挙げれば、図9に示されるような、図1に示される本発明の位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜2をパターン形成したものが挙げられる。この位相シフトマスクには、パターン化された位相シフター部2aとその間の基板露出部1aが設けられている。
図9に示されるような位相シフトマスクを製造する場合は、図10(A)に示されるように、上記のようにして基板1上に位相シフト多層膜2を形成した後、レジスト膜5を形成し、図10(B)に示されるように、レジスト膜5をリソグラフィー法によりパターンニングし、更に、図10(C)に示されるように、位相シフト多層膜2をエッチングした後、図10(D)に示されるように、レジスト膜5を剥離する方法が採用し得る。この場合、レジスト膜の塗布、パターンニング(露光、現像)、エッチング、レジスト膜の除去は、公知の方法によって行うことができるが、本発明の位相シフト多層膜は、単一のエッチングガスでエッチングが可能である。
なお、位相シフト多層膜上にクロム系遮光膜及び/又はクロム系反射防止膜(クロム系系膜)を形成した場合には、露光に必要な領域のクロム系遮光膜及び/又はクロム系反射防止膜をエッチングにより除去し、位相シフト多層膜を表面に露出させた後、上記同様に位相シフト多層膜をパターンニングすることにより、図11に示されるような基板表面側外周縁部にクロム系膜(図11の場合はクロム系遮光膜3)が残った位相シフトマスクを得ることもできる。また、クロム系膜の上にレジストを塗布し、パターンニングを行い、クロム系膜と位相シフト多層膜をエッチングでパターンニングし、更に露光に必要な領域のクロム系膜のみを選択エッチングにより除去し、位相シフトパターンを表面に露出させて、位相シフトマスクを得ることもできる。
本発明の位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスク上に形成された位相シフト多層膜は、透過率の波長依存性が小さく、かつ単一のドライエッチングガスで加工可能なものであり、露光波長及び検査波長双方に対して良好な透過率を与えるものであることから、本発明の位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクは、特に限定されるものではないが、より透過率の波長依存性が小さいものが要求されるArFエキシマレーザー露光用の高透過率ハーフトーン位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスク、F2レーザー露光用のハーフトーン位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクとして好適である。
更に、このようにして得られた位相シフトマスクは、波長240〜270nm程度、例えば、現在、欠陥検査波長として一般に用いられている波長260〜270nmの光を用いた欠陥検査、特に、ArFエキシマレーザー露光用の高透過率ハーフトーン位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスク、F2レーザー露光用のハーフトーン位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスク等の欠陥検査において、信頼性の高い検査が可能である。また、260nmよりも短波長の光、例えば、波長240nm程度の光を検査光として用いれば、より信頼性の高い検査が可能である。
このように、本発明の位相シフトマスクは、これを用いて位相シフトマスク上に形成されたパターンを被転写体上に転写する際に、240〜270nmの波長の光による欠陥検査により位相シフトマスクの良、不良を検査することができ、これにより良好な位相シフトマスク(良品)を選定することができることから、欠陥不良マスクを従来以上の高い精度で排除することが可能であり、その結果、工程歩留まりを向上させ、品質を安定化させることが可能となる。
また、本発明の位相シフトマスクは、450〜600nmの波長において10%程度の反射率が得られる。そのため、位相シフトマスク上のパターンを波長450〜600nmの光で認識してアライメント調整を行うことが可能であり、これにより高精度な露光が可能となる。
以下、実験例、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実験例1〜4]
石英基板上にMoとZrとSiとを含む不飽和金属化合物薄膜を形成し、その消衰係数kの波長依存性について評価した。不飽和金属化合物薄膜の成膜は以下のとおりである。
スパッタガスとして表1に示す各種ガスを表1に示す流量で導入した。上記ガス導入時、スパッタチャンバー内のガス圧が0.1Paになるように設定した。Mo5ZrSi54(焼結体)ターゲットに500Wの放電電力を印加して、基板を30rpmで回転させながらMoZrSi系不飽和金属化合物膜を成膜した。この膜の消衰係数kの波長依存性を評価した結果を図12に示す。なお、ガス流量は、全て、0℃、1013hPa(1気圧)における値である(以下、同じ)。
図12に示されるように、スパッタ成膜時に酸素や窒素を少量添加して得られる不飽和金属化合物膜が、波長157〜260nmの波長領域において波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加することが確認された。
[実施例1]
以下に示す方法により、基板上に図2に示されるような3層構造の位相シフト多層膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
まず、石英基板上に光吸収機能膜を成膜した。このとき、スパッタガスとしてArガスを15cm3/minで導入した。上記ガス導入時、スパッタチャンバー内のガス圧が0.15Paになるように設定した。MoSi2(焼結体)ターゲットに560W、Si(単結晶)ターゲットに1000Wの放電電力を印加して、基板を30rpmで回転させながら厚さ2.5nmのモリブデンとケイ素からなる膜(MoSi膜)を成膜し、光吸収機能膜とした。成膜には、図13に示すような2つのターゲットを設けた直流スパッタ装置を用いた(以下の成膜において同じ)。なお、図13中、1は基板、101はチャンバー、102aはMoSi2ターゲット、102bはシリコンターゲット、103はスパッタガス導入口、104は排気口、105は基板回転台、106a,106bは電源である。
次に、第1の位相シフト機能膜を成膜した。放電電力を、MoSi2ターゲットを200W、Siターゲットを1000Wに変更し、スパッタガスを15cm3/minのAr、100cm3/minのN2及び1cm3/minのO2の混合ガスに変更し、ガス圧力0.25Paにて厚さ40nmのモリブデンとケイ素を含有する飽和化合物膜(MoSiON膜)を成膜した。
更に、第2の位相シフト機能膜を成膜した。放電電力を、MoSi2ターゲットを200W、Siターゲットを1000Wに変更し、スパッタガスを5cm3/minのAr、50cm3/minのN2及び1cm3/minのO2の混合ガスに変更し、ガス圧力0.1Paにて厚さ45nmのモリブデンとケイ素を含有する飽和化合物膜(MoSiON膜)を成膜した。
この場合、この位相シフト多層膜は、波長193nm(ArFエキシマレーザー)における位相差が180°、透過率が18%となるように設計されている。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜について、以下の方法で評価した。
透過率の波長依存性
分光光度計により、光を透明基板側から入射させた場合の位相シフト多層膜の透過率を測定した。結果を図14に示す。図14に示されるように、260nm付近における透過率は40%程度と低い値を示している。
ドライエッチング特性
CF4によるドライエッチング(CF4:O2=80:1(SCCM) 60W 2Pa 4分)を行い、その断面を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、エッチング断面形状は良好であり、光吸収機能膜と位相シフト機能膜との間に段差は確認されなかった。
反射率の波長依存性
分光光度計により、光を膜面側から入射させた場合の位相シフト多層膜の反射率を測定した。結果を図14に示す。図14に示されるように、この位相シフト多層膜は、400nmよりも長波長で反射率が10%を下回る結果となった。
レーザーによる修正容易性
位相シフト多層膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト多層膜は、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できることが確認された。
これらの結果から、この位相シフト多層膜は、400nm以上の波長の光に対して反射率が10%未満を示すものの、欠陥検査で必須となる260nm付近における透過率が40%程度であり、欠陥検査への適合性において優れている。また、CF4による単一のドライエッチングプロセスでパターンニングが可能であり、更に、レーザーによる修正も確実に行うことが可能であり、マスク製造プロセスに適合した、優れた位相シフト膜であることがわかる。
[実施例2]
以下に示す方法により、基板上に図4に示されるような4層構造の位相シフト多層膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
この位相シフト多層膜は、まず、石英基板上に第1の光吸収機能膜を、厚さ1.25nmとした以外は実施例1の光吸収機能膜と同様の条件にて成膜し、次いで、第1の位相シフト機能膜を実施例1と同様の条件にて成膜し、次いで、第2の光吸収機能膜を第1の光吸収機能膜と同様の条件にて成膜し、最後に、第2の位相シフト機能膜を実施例1と同様の条件にて成膜したものである。
この場合、この位相シフト多層膜は、波長193nm(ArFエキシマレーザー)における位相差が180°、透過率が18%となるように設計されている。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜について、以下の方法で評価した。
透過率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の透過率を測定した。結果を図14に示す。図14に示されるように、260nm付近における透過率は40%程度と低い値を示している。
ドライエッチング特性
実施例1と同様の方法によりエッチングを行い、その断面を観察した。その結果、エッチング断面形状は良好であり、光吸収機能膜と位相シフト機能膜との間に段差は確認されなかった。
反射率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の反射率を測定した。結果を図14に示す。図14に示されるように、この位相シフト多層膜は、400nmよりも長波長で反射率が10%以上となっており、反射率によりコントラストを得る検査機において十分検査可能な位相シフト膜であることが確認された。
レーザーによる修正容易性
位相シフト多層膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト多層膜は、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できることが確認された。
これらの結果から、この位相シフト多層膜は、波長193〜600nmという広い範囲の光に対して反射率が10%以上を示すと共に、欠陥検査で必須となる260nm付近における透過率が40%程度であり、欠陥検査への適合性において特に優れている。また、CF4による単一のドライエッチングプロセスでパターンニングが可能であり、更に、レーザーによる修正も確実に行うことが可能であり、マスク製造プロセスに適合した、優れた位相シフト膜であることがわかる。
[実施例3]
以下に示す方法により、基板上に図3に示されるような3層構造の位相シフト多層膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
この位相シフト多層膜は、実施例1における光吸収機能膜、第1の位相シフト機能膜及び第2の位相シフト機能膜と同様の膜を、基板側から第1の位相シフト機能膜、光吸収機能膜、第2の位相シフト機能膜の順に、各々実施例1と同様の条件で成膜したものである。
この場合、この位相シフト多層膜は、波長193nm(ArFエキシマレーザー)における位相差が180°、透過率が18%となるように設計されている。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜について、以下の方法で評価した。
透過率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の透過率を測定した。結果を図14に示す。図14に示されるように、260nm付近における透過率は40%程度と低い値を示している。
ドライエッチング特性
実施例1と同様の方法によりエッチングを行い、その断面を観察した。その結果、エッチング断面形状は良好であり、光吸収機能膜と位相シフト機能膜との間に段差は確認されなかった。
反射率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の反射率を測定した。結果を図14に示す。図14に示されるように、この位相シフト多層膜は、400nmよりも長波長で反射率が10%以上となっており、反射率によりコントラストを得る検査機において十分検査可能な位相シフト膜であることが確認された。
レーザーによる修正容易性
位相シフト多層膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト多層膜は、ほとんどの場合、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できるが、稀に透明基板上に位相シフト膜の一部が残存することがあることが確認された。
これらの結果から、この位相シフト多層膜は、波長193〜600nmという広い範囲の光に対して反射率が10%以上を示すと共に、欠陥検査で必須となる260nm付近における透過率が40%程度であり、欠陥検査への適合性において特に優れている。また、CF4による単一のドライエッチングプロセスでパターンニングが可能であり、更に、レーザーによる修正も実質的に可能であり、マスク製造プロセスに適合した、優れた位相シフト膜であることがわかる。
[実施例4]
以下に示す方法により、基板上に図2に示されるような3層構造の位相シフト多層膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
この位相シフト多層膜は、光吸収機能膜を以下の条件で成膜した以外は、実施例1と同様の方法で成膜したものである。光吸収機能膜の成膜条件は以下のとおりである。
スパッタガスとして15cm3/minのAr、5cm3/minのN2及び1cm3/minのO2の混合ガスを導入した。上記ガス導入時、スパッタチャンバー内のガス圧が0.15Paになるように設定した。MoSi2(焼結体)ターゲットに560W、Si(単結晶)ターゲットに1000Wの放電電力を印加して、基板を30rpmで回転させながら厚さ6nmのモリブデンとケイ素を主要構成元素とする不飽和化合物膜(MoSiON膜(MoSiリッチ膜))を成膜し、光吸収機能膜とした。
この場合、この位相シフト多層膜は、波長193nm(ArFエキシマレーザー)における位相差が180°、透過率が18%となるように設計されている。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜について、以下の方法で評価した。
透過率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の透過率を測定した。この位相シフト多層膜の260nm付近における透過率は42%程度と低い値を示していた。
ドライエッチング特性
実施例1と同様の方法によりエッチングを行い、その断面を観察した。その結果、エッチング断面形状は良好であり、光吸収機能膜と位相シフト機能膜との間に段差は確認されなかった。
反射率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の反射率を測定した。この位相シフト多層膜では、450nmよりも長波長で反射率が10%を下回る結果となった。
レーザーによる修正容易性
位相シフト多層膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト多層膜は、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できることが確認された。
これらの結果から、この位相シフト多層膜は、450nm以上の波長の光に対して反射率が10%未満を示すものの、欠陥検査で必須となる260nm付近における透過率が42%程度であり、欠陥検査への適合性において優れている。また、CF4による単一のドライエッチングプロセスでパターンニングが可能であり、更に、レーザーによる修正も確実に行うことが可能であり、マスク製造プロセスに適合した、優れた位相シフト膜であることがわかる。
[実施例5]
以下に示す方法により、基板上に図2に示されるような3層構造の位相シフト多層膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
この位相シフト多層膜は、光吸収機能膜を以下の条件で成膜した以外は、実施例1と同様の方法で成膜したものである。光吸収機能膜の成膜条件は以下のとおりである。
スパッタガスとして15cm3/minのAr、8cm3/minのN2及び1cm3/minのO2の混合ガスを導入した。上記ガス導入時、スパッタチャンバー内のガス圧が0.15Paになるように設定した。MoSi2(焼結体)ターゲットに560W、Si(単結晶)ターゲットに1000Wの放電電力を印加して、基板を30rpmで回転させながら厚さ15nmのモリブデンとケイ素を主要構成元素とする不飽和化合物膜(MoSiON膜(MoSiリッチ膜))を成膜し、光吸収機能膜とした。
この場合、この位相シフト多層膜は、波長193nm(ArFエキシマレーザー)における位相差が180°、透過率が18%となるように設計されている。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜について、以下の方法で評価した。
透過率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の透過率を測定した。この位相シフト多層膜の260nm付近における透過率は44%程度と低い値を示していた。
ドライエッチング特性
実施例1と同様の方法によりエッチングを行い、その断面を観察した。その結果、エッチング断面は、光吸収機能膜と位相シフト機能膜との間に僅かに段差を有するものの、実用上問題の無いレベルであった。
反射率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト多層膜の反射率を測定した。この位相シフト多層膜では、470nmよりも長波長で反射率が10%を下回る結果となった。
レーザーによる修正容易性
位相シフト多層膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト多層膜は、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できることが確認された。
これらの結果から、この位相シフト多層膜は、470nm以上の波長の光に対して反射率が10%未満を示すものの、欠陥検査で必須となる260nm付近における透過率が44%程度であり、欠陥検査への適合性は十分である。また、CF4による単一のドライエッチングプロセスでパターンニングが可能であり、更に、レーザーによる修正も確実に行うことが可能であり、マスク製造プロセスに適合した、優れた位相シフト膜であることがわかる。
[比較例1]
以下に示す方法により、基板上に単層の位相シフト膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
スパッタガスとして5cm3/minのAr、50cm3/minのN2及び2cm3/minのO2の混合ガスを導入した。上記ガス導入時、スパッタチャンバー内のガス圧が0.1Paになるように設定した。MoSi2(焼結体)ターゲットに200W、Si(単結晶)ターゲットに1000Wの放電電力を印加して、基板を30rpmで回転させながら厚さ70nmのモリブデンとケイ素を含有する飽和化合物膜(MoSiON膜)を成膜した。
この場合、この単層の位相シフト膜は、波長193nm(ArFエキシマレーザー)における位相差が180°、透過率が18%となるように設計されている。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、以下の方法で評価した。
透過率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト膜の透過率を測定した。結果を図15に示す。図15に示されるように、260nm付近における透過率は50%を超えており、欠陥検査機による検査は困難である。
ドライエッチング特性
実施例1と同様の方法によりエッチングを行い、その断面を観察した。その結果、本例の膜は単層であるため、エッチング断面形状は良好であった。
反射率の波長依存性
実施例1と同様の方法により位相シフト膜の反射率を測定した。結果を図15に示す。図15に示されるように、この位相シフト膜は、290〜360nmの波長範囲で反射率が10%を下回る結果となった。
レーザーによる修正容易性
位相シフト膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト膜は、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できることが確認された。
これらの結果から、この位相シフト膜は、400nm以上の波長の光に対して反射率が10%未満を示し、欠陥検査で用いられる260nm付近における透過率が50%を超えており、欠陥検査機による検査が実質的に不可能なものである。欠陥検査工程は、マスク製造において非常に重要な工程であるが、260nmより短波長で測定可能な欠陥検査機は、非常に高価であり、実用的なものは実質的に無いと言える現状にあっては、260nm付近における透過率が50%を超えることは致命的である。従って、この構成の位相シフト膜は、ArFエキシマレーザー露光用高透過率ハーフトーン位相シフトマスクやF2レーザー露光用ハーフトーン位相シフトマスクに適用することは困難である。
[比較例2]
以下に示す方法により、基板上に図2に示されるような3層構造の位相シフト多層膜を成膜した位相シフトマスクブランクを作製した。
この位相シフト多層膜は、光吸収機能膜の厚さを18nmとした以外は実施例1と同様の条件にて成膜したものである。
以上の方法により得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜について、以下の方法で評価した。この場合、透過率が実施例と異なるため、ドライエッチング特性とレーザーによる修正容易性のみ評価した。
ドライエッチング特性
実施例1と同様の方法によりエッチングを行い、その断面を観察した。その結果、光吸収機能膜と第1の位相シフト機能膜との間にエッチング速度の違いによる明らかな段差が確認された。更に、光吸収機能膜のエッチング速度の低下によるエッチング時間の増加が確認された。このことから、マスク面内のパターンムラの発生が懸念される。
レーザーによる修正容易性
位相シフト多層膜にレーザー光を照射し、所望の領域のみ膜が除去可能であるかどうかを確認した。その結果、この位相シフト多層膜は、透明基板を露呈させた状態で、所望の領域のみ完全に除去できることが確認された。
従って、この位相シフト多層膜を単一のエッチングガスでパターニングすることは困難である。
本発明の位相シフトマスクブランクの構造の一例を示す断面図である。 本発明の位相シフトマスクブランクの構造の他の例を示し、位相シフト多層膜の光吸収機能膜が1層であり、光吸収機能膜が基板に隣接して設けられているものの断面図である。 本発明の位相シフトマスクブランクの構造の別の例を示し、位相シフト多層膜の光吸収機能膜が1層であり、光吸収機能膜が基板に隣接せずに設けられているものの断面図である。 本発明の位相シフトマスクブランクの構造の更に別の例を示し、位相シフト多層膜の光吸収機能膜が2層であり、該2層の光吸収機能膜のうちの一方が基板に隣接して設けられているものの断面図である。 Mo及びSiの透過率の波長依存性を示すグラフである。 クロム系遮光膜を設けた位相シフトマスクブランクの構造を示す断面図である。 クロム系遮光膜及びクロム系反射防止膜を設けた位相シフトマスクブランクの構造を示す断面図である。 第1のクロム系反射防止膜、クロム系遮光膜及び第2のクロム系反射防止膜を設けた位相シフトマスクブランクの構造を示す断面図である。 本発明の位相シフトマスクの一例を示す断面図である。 位相シフトマスクの製造方法を説明するための図であり、(A)はレジスト膜を形成した状態、(B)はレジスト膜をパターンニングした状態、(C)はエッチングを行った状態、(D)はレジスト膜を除去した状態を示す図である。 本発明の位相シフトマスクの他の例を示す断面図である。 MoZrSi系の不飽和金属化合物膜の消衰係数kの波長依存性を示すグラフである。 実施例及び比較例で用いた直流スパッタ装置の概略図である。 実施例1〜3の位相シフトマスクブランクの透過率及び反射率の波長依存性を示すグラフである。 比較例1の位相シフトマスクブランクの透過率及び反射率の波長依存性を示すグラフである。 ハーフトーン型位相シフトマスクの原理を説明する図であり、(B)は(A)のX部の部分拡大図である。 従来の位相シフトマスクブランクの構造を示す断面図である。 従来の位相シフトマスクの構造を示す断面図である。
符号の説明
1 基板
1a 基板露出部
2 位相シフト多層膜
2’ 位相シフト膜
2a 位相シフター部
21,211,212 光吸収機能膜
22,221,222 位相シフト機能膜
3 クロム系遮光膜
4,4’ クロム系反射防止膜
5 レジスト膜

Claims (9)

  1. 基板上に位相シフト多層膜を具備する位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト多層膜が、少なくとも1層の金属、金属とケイ素、又は金属若しくは金属とケイ素を主要構成元素とする酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物若しくは窒化炭化物の不飽和金属化合物からなる光吸収機能膜と、少なくとも1層の金属又は金属とケイ素を含有する酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物又は窒化炭化物からなる位相シフト機能膜とからなり、前記光吸収機能膜の波長157〜260nmの光に対する消衰係数kが、波長157nmから260nmに向かうに従って増加すると共に、前記光吸収機能膜の膜厚が15nm以下であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
  2. 前記光吸収機能膜の消衰係数kが、157〜260nmの波長範囲において0.5以上であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
  3. 前記光吸収機能膜が1層であり、かつ該光吸収機能膜が基板に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の位相シフトマスクブランク。
  4. 前記光吸収機能膜が2層であり、かつ該2層の光吸収機能膜のうちの一方が基板に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の位相シフトマスクブランク。
  5. 前記2層の光吸収機能膜のうちの他方の前記位相シフト多層膜表面側の界面が、前記位相シフト多層膜の表面から深さ68.75nm以内に位置するように設けられていることを特徴とする請求項4記載の位相シフトマスクブランク。
  6. 前記位相シフト多層膜上に、クロム系遮光膜及び/又はクロム系反射防止膜を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の位相シフトマスクブランク。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項記載の位相シフトマスクブランクの位相シフト多層膜をパターン形成してなることを特徴とする位相シフトマスク。
  8. 位相シフトマスク上に形成されたパターンを被転写体上に転写する方法であって、請求項7記載の位相シフトマスクを240〜270nmの波長の光にて欠陥検査することにより選定された良品を用いることを特徴とするパターン転写方法。
  9. 位相シフトマスク上に形成されたパターンを被転写体上に転写する方法であって、請求項7記載の位相シフトマスクを用い、450〜600nmの波長の光にてアライメント調整を行うことを特徴とするパターン転写方法。
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