JP2005082534A - イオン性液体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アルキルイミダゾリウムカチオン以外のカチオンを用いて、難揮発性、難燃性という特性は維持しつつ、ハロゲンフリーでかつ融点が十分に低く、室温で液体であるイオン性液体を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1):
(C17・RXSO (1)
(式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表す。)
で表されることを特徴とするイオン性液体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、イオン性液体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、その化学構造中にハロゲンを含まないイオン性液体、並びにその製造方法に関する。
従来から1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)クロリドとAlClを混合することによりいわゆるイオン性液体、すなわちイオン結晶が融解した状態の液体が生成することは知られており、このようなイオン性液体は従来の有機溶媒系とは異なる難揮発性、難燃性というユニークな特性を持っている。さらに、近年、AlCl アニオンの代わりに含フッ素アニオン(例えば、N(CFSO 、CFSO 、BF 、PF )を用いることにより、より耐水性が高く、取り扱いの容易なイオン性液体が得られることが提案されている(Bonhote,P.et al.,Inorg.Chem.,35,1168−1178(1996)(非特許文献1)参照)。
このような従来のイオン性液体を構成するカチオンとしては、EMIに代表されるアルキルイミダゾリウムカチオン、アルキルピリジニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、アルキルホスフォニウムカチオン等が一般的であるが、イオン性液体を構成するアニオンとしては、上記のAlCl アニオンや含フッ素アニオンといったハロゲン含有アニオンを使用せざるを得ない場合が多かった。すなわち、系の融点を下げるためには、ハロゲンの強い電子吸引効果により負電荷を非局在化することで局所的なイオン結合を弱めるためにハロゲン含有アニオンを使用する必要があるということがいわば当業者の技術常識であった。
一方、イオン性液体はその難揮発性の性質により媒体の環境への拡散を最小限に止めることができるため、環境低負荷型のいわゆるグリーン溶媒として高い関心を集めている。しかし、イオン性液体を環境に配慮した真のグリーン溶媒として扱うためには、ハロゲンを含まないイオンを用いたハロゲンフリーのイオン性液体の作製が不可欠である。そのため、このような観点から、硝酸アニオンや酢酸アニオンのような非ハロゲン系アニオンを用いてイオン性液体を作製した例が報告されている(大野弘幸監修「イオン性液体」株式会社シー・エム・シー出版、p.169〜171、2003年2月1日発行(非特許文献2)参照)。
しかしながら、このような非ハロゲン系アニオンを用いてハロゲンフリーのイオン性液体を得ようとすると、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)カチオン以外のカチオンでは得られるイオン性液体の融点が高くなってしまうという問題があり、他のカチオンを用いたハロゲンフリーのイオン性液体であって融点が十分に低いものは未だ見出されていなかった。
Bonhote,P.et al.,Inorg.Chem.,35,1168〜1178(1996) 大野弘幸監修「イオン性液体」株式会社シー・エム・シー出版、p.169〜171、2003年2月1日発行
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アルキルイミダゾリウムカチオン以外のカチオンを用いて、難揮発性、難燃性という特性は維持しつつ、ハロゲンフリーでかつ融点が十分に低く、室温で液体であるイオン性液体を提供すること、並びにそのようなイオン性液体を効率良くかつ確実に得ることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カチオンとしてテトラオクチルアンモニウムカチオンを用い、かつ、アニオンとして特定のアルキル硫酸アニオン又はアルキルベンゼンスルホン酸アニオンを用いることにより、ハロゲンフリーでかつ融点が十分に低いイオン性液体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のイオン性液体は、下記一般式(1):
(C17・RXSO (1)
(式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表す。)
で表されることを特徴とするものである。
また、本発明のイオン性液体の製造方法は、下記一般式(2):
RXSOM (2)
(式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表し、Mは1価の金属を表す。)
で表される化合物と、下記一般式(3):
(C17NZ (3)
(式中、Zはハロゲンを表す。)
で表される化合物とを、水と極性溶媒との混合溶媒中でイオン交換反応せしめた後、前記極性溶媒及び水を除去し、下記一般式(1):
(C17・RXSO (1)
(式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表す。)
で表されるイオン性液体を得ることを特徴とする方法である。
なお、本発明のイオン性液体は、アニオンの負電荷が局在化しているにもかかわらず融点が十分に低く、室温にて液体である。その具体的な理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のイオン性液体においてはアニオン、カチオン共に分子量が大きいため、1分子(塩)当たりのイオン結合の強さが、分子量が大きい分だけ見かけ上低減する。そのことが、アニオンの負電荷が局在化しているにもかかわらず室温で液状であることの理由の1つであると本発明者らは推察する。また、本発明のイオン性液体におけるカチオンの電荷はN原子に局在化しているが、比較的長鎖であるオクチル基を複数有しているため、立体化学的にイオン結合の距離が長くなる。そのことも、本発明のイオン性液体が室温で液状を示すことの要因の1つであると本発明者らは推察する。
本発明によれば、アルキルイミダゾリウムカチオン以外のカチオンを用いて、難揮発性、難燃性という特性は維持しつつ、ハロゲンフリーでかつ融点が十分に低く、室温で液体であるイオン性液体を提供することが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、前記本発明のイオン性液体を効率良くかつ確実に得ることが可能となる。
以下、本発明のイオン性液体をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明のイオン性液体は、下記一般式(1):
(C17・RXSO (1)
で表されるものである。そして、前記一般式(1)中のRは炭素数8〜14のアルキル基を表し、具体的には直鎖又は分岐鎖状のオクチル基、直鎖又は分岐鎖状のノニル基、直鎖又は分岐鎖状のデシル基、直鎖又は分岐鎖状のウンデシル基、直鎖又は分岐鎖状のドデシル基、直鎖又は分岐鎖状のトリデシル基、直鎖又は分岐鎖状のテトラデシル基が挙げられ、特にドデシル基が好ましい。Rが炭素数7以下のアルキル基の場合は融点が室温(約25℃)以上となり、他方、炭素数15以上のアルキル基の場合は粘度が非常に高くなる。
また、前記一般式(1)中のXは式−O−で表される基又はフェニレン基を表す。従って、前記一般式(1)で表されるイオン性液体は、テトラオクチルアンモニウムカチオンと炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキル硫酸アニオンとの塩、又はテトラオクチルアンモニウムカチオンと炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸アニオンとの塩である。なお、アンモニウムカチオンのアルキル基の炭素数が7以下の場合は融点が室温(約25℃)以上となり、他方、炭素数が9以上の場合は粘度が非常に高くなると共に融点が室温(約25℃)以上となる。
このような本発明のイオン性液体はハロゲンフリーであり、しかも融点が十分に低いという優れた特性を有しており、その融点は25℃以下程度であることが好ましい。また、本発明のイオン性液体は、揮発しにくく(難揮発性)かつ引火しにくい(難燃性)というイオン性液体本来の特性も有しており、それ以外の特性は特に制限されないが、粘度が5000mPa・s以下(E型粘度計、標準ローター使用、50rpm、25℃)であることが好ましい。
次に、本発明のイオン性液体の製造方法をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明のイオン性液体の製造方法においては、先ず、下記一般式(2):
RXSOM (2)
で表される化合物と、下記一般式(3):
(C17NZ (3)
で表される化合物とを、水と極性溶媒との混合溶媒中でイオン交換反応せしめる。
前記一般式(2)中のR及びXは前記一般式(1)中のR及びXと同義であり、Mは1価の金属を表す。このような1価の金属は特に制限されないが、アルカリ金属が好ましく、中でもナトリウム、リチウム、カリウムが好ましい。従って、前記一般式(2)で表される化合物は、炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキル硫酸塩又は炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩であり、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、前記一般式(3)中のZはハロゲンを表し、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンが挙げられる。従って、前記一般式(3)で表される化合物は、テトラオクチルアンモニウムのハロゲン化物であり、臭化テトラオクチルアンモニウム等が挙げられる。
ここで用いられる極性溶媒は、生成するイオン性液体を溶解するものであればよく、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等が挙げられ、ハロゲンを含む塩との分離を容易に行なうために極性溶媒としては揮発性が高いものが好ましい。また、水と極性溶媒との混合比率は特に制限されないが、水:極性溶媒の比率(体積比)が1:0.5〜2であることが好ましい。
また、前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物との混合比率は、前者:後者の比率(モル比)が1:0.9〜1.1であることが好ましく、1:1(等モル)程度であることが特に好ましい。更に、水と極性溶媒との混合溶媒中の前記一般式(2)で表される化合物及び前記一般式(3)で表される化合物の濃度は特に制限されないが、一般的には各化合物の濃度が0.1〜2mol/リットル程度であることが好ましい。
前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物とを前記混合溶媒に溶解せしめて混合すればイオン交換反応が進行し、混合溶液(反応液)中に前記一般式(1)で表される化合物とハロゲン化金属塩が生成する。その反応条件は特に制限されないが、一般的に反応温度は20〜50℃程度、反応時間は0.5〜10日間程度であることが好ましい。
次に、本発明のイオン性液体の製造方法においては、前記一般式(1)で表される化合物が生成した反応液から極性溶媒及び水を除去する。その際、前記一般式(1)で表される化合物は極性溶媒に優先的に溶解して水には溶解しないことから、極性溶媒が除去される従って前記反応液はイオン性液体(油相)と水相とに分離する。また、ハロゲン化金属塩及び未反応の原料化合物は水に優先的に溶解することから、前記反応液から水を除去することによってハロゲン化金属塩及び未反応の原料化合物も水と共に除去され、前記一般式(1)で表されるイオン性液体のみが得られることとなる。なお、前記反応液から極性溶媒及び水を除去する方法は特に限定されず、例えば反応液から先ず極性溶媒を揮発させて除去した後に水を分離除去する方法等が採用される。また、必要に応じて精製工程(例えば、純水による洗浄)、乾燥工程(例えば、減圧下(約40mmHg以下)、80〜110℃で数時間減圧乾燥)を更に実施してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(テトラオクチルアンモニウムドデシル硫酸)
テトラオクチルアンモニウムブロマイド0.02mol(10.94g)とドデシル硫酸ナトリウム0.02mol(5.77g)とを容量200mLのビーカーの中でアセトン25mLと純水25mLとの混合溶媒に溶解せしめた。得られた混合溶液(反応液)を大気中にて室温(約25℃)で7日間放置したところ、この反応液は水相と油相に分離した。更に、60℃の熱風乾燥炉中で4時間放置してアセトンを完全に揮発させた後、分液ロートを用いて水相を除去した。次いで、得られた油相に純水100mLを添加して水洗した後、水相を除去した。この精製操作を3回行なった後、得られた油相に対して減圧下(約40mmHg)、90℃で4時間の減圧乾燥処理を施し、液状化合物を得た。得られた液状化合物の収率は95%であった。
得られた液状化合物のH−NMR分析を行なったところ、そのNMRスペクトルは以下の通り:
δ(ppm)=4.01(2H、t)、3.26(8H、t)、1.53(68H、m)、0.88(15H、t)
であり、得られた液状化合物は本発明のイオン性液体であるテトラオクチルアンモニウムドデシル硫酸であることが確認された。
また、本実施例で得られたイオン性液体(テトラオクチルアンモニウムドデシル硫酸)の融点は19.9℃、粘度は1100mPa・s(E型粘度計、標準ローター使用、50rpm、25℃)、電気伝導度は2.7×10−5S/cmであった。更に、本実施例で得られたイオン性液体は、前記減圧乾燥処理の際に揮発・散逸することがなく、またTG(熱減量)を測定した際にも250℃まで重量の減少が認められなかったことから、難揮発性であり、それ故に難燃性であることが確認された。
(テトラオクチルアンモニウムドデシルベンゼンスルホン酸)
ドデシル硫酸ナトリウムの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.02mol(6.97g)を用いた以外は実施例1と同様にして液状化合物を得た。
得られた液状化合物のH−NMR分析を行なったところ、そのNMRスペクトルは以下の通り:
δ(ppm)=7.81(2H、d)、7.05(2H、d)、3.27(8H、t)、1.53(70H、m)、0.88(15H、t)
であり、得られた液状化合物は本発明のイオン性液体であるテトラオクチルアンモニウムドデシルベンゼンスルホン酸であることが確認された。
また、本実施例で得られたイオン性液体(テトラオクチルアンモニウムドデシルベンゼンスルホン酸)の融点は−10℃、粘度は1720mPa・s(E型粘度計、標準ローター使用、50rpm、25℃)、電気伝導度は6.5×10−6S/cmであった。更に、本実施例で得られたイオン性液体は、前記減圧乾燥処理の際に揮発・散逸することがなく、またTG(熱減量)を測定した際にも245℃まで重量の減少が認められなかったことから、難揮発性であり、それ故に難燃性であることが確認された。
比較例
(テトラオクチルアンモニウム−p−トルエンスルホン酸)
ドデシル硫酸ナトリウムの代わりにp−トルエンスルホン酸ナトリウム0.02mol(3.88g)を用いた以外は実施例1と同様にして化合物(テトラオクチルアンモニウム−p−トルエンスルホン酸)を得た。
得られた化合物は室温(約25℃)で固体であり、融点は57.5℃(DSC)であった。
以上説明した通り、本発明のイオン性液体は、アルキルイミダゾリウムカチオン以外のカチオンを用いておりかつハロゲンフリーであるにも拘らず、難揮発性、難燃性という従来の有機溶媒系とは異なるユニークな特性は維持しつつ、融点が十分に低く、室温で液状を維持できるものである。従って、本発明のイオン性液体は、反応溶媒や抽出溶媒として有用であり、しかもハロゲンフリーであるため環境低負荷型のいわゆるグリーン溶媒として非常に有用である。また、本発明のイオン性液体の製造方法は、このように環境に配慮した反応溶媒や抽出溶媒として有用な本発明のイオン性液体を効率良くかつ確実に得る方法として有用である。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1):
    (C17・RXSO (1)
    (式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表す。)
    で表されることを特徴とするイオン性液体。
  2. 下記一般式(2):
    RXSOM (2)
    (式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表し、Mは1価の金属を表す。)
    で表される化合物と、下記一般式(3):
    (C17NZ (3)
    (式中、Zはハロゲンを表す。)
    で表される化合物とを、水と極性溶媒との混合溶媒中でイオン交換反応せしめた後、前記極性溶媒及び水を除去し、下記一般式(1):
    (C17・RXSO (1)
    (式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を表し、Xは式−O−で表される基又はフェニレン基を表す。)
    で表されるイオン性液体を得ることを特徴とするイオン性液体の製造方法。
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