JP2005071979A - 非水系電解液二次電池用セパレータ及びそれを用いた非水系電解液二次電池 - Google Patents

非水系電解液二次電池用セパレータ及びそれを用いた非水系電解液二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成されたセパレータを用いた非水系電解液二次電池のサイクル特性等の電池性能を改善する。
【解決手段】 無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成され、セパレータ中に含有されるハロゲン元素、特に塩素元素が10ppm以下で且つ、鉄元素が100ppm以下である非水系電解液二次電池用セパレータ。このセパレータを用いた非水系電解液二次電池。

Description

本発明は、非水系電解液二次電池用セパレータ及びそれを用いた非水系電解液二次電池に関するものである。
詳しくは、本発明は、無機フィラーを含有するセパレータ中に含有される特定の不純物を減らすことにより、これらの不純物が原因で生じる微少短絡の形成や集電体の腐食などを抑制し、サイクル特性等の電池性能に優れた二次電池を実現する非水系電解液二次電池用セパレータと、このセパレータを用いた非水系電解液二次電池に関するものである。
電気製品の軽量化、小型化に伴ない高いエネルギー密度を持ち且つ軽量な非水電解液二次電池であるリチウム二次電池が広い分野で使用されている。リチウム二次電池は、コバルト酸リチウムに代表されるリチウム化合物などの正極活物質を含有する活物質層を集電体上に形成させた正極と、黒鉛などに代表されるリチウムの吸蔵・放出が可能な炭素材料などの負極活物質を含有する活物質層を集電体上に形成させた負極と、LiPF6等のリチウム塩等の電解質を通常非プロトン性の非水系溶媒に溶解した非水電解液と、高分子多孔質膜からなるセパレータとから主として構成される。
リチウム二次電池で使用されるセパレータには、両極間のイオン伝導を妨げないこと、電解液を保持できること、電解液に対して耐性を有すること、などの要件を満たすことが求められ、主としてポリエチレンやポリプロピレンからなる高分子多孔質膜が用いられている。
従来、高分子多孔質膜を製造する方法としては、例えば以下の手法が公知技術として知られている。
(1) 高分子材料に後工程で容易に抽出除去可能な可塑剤を加えて成形を行い、その後可塑剤を適当な溶媒で除去して多孔化する抽出法(特開平7−029563号公報)。
(2) 結晶性高分子材料を成形した後、構造的に弱い非晶部分を選択的に延伸して微細孔を形成する延伸法(特開平7−304110号公報)。
(3) 高分子材料に無機フィラーを加えて成形を行い、その後の延伸操作により高分子材料と無機フィラーとの界面を剥離させて微細孔を形成する界面剥離法(特開平7−149937号公報)。
高分子多孔質膜を得る方法として上述の(1)の抽出法は、大量の廃液を処理する必要があり、環境・経済性の両面において問題がある。また抽出工程で発生する膜の収縮のために均等な膜を得ることが難しく、歩留まりなど生産性においても問題がある。(2)の延伸法は、延伸前の結晶相・非晶相の構造制御のために、長時間の熱処理が必要であり、生産性の面で問題がある。
これに対して、(3)の界面剥離法は、廃液の発生などはなく、環境・経済性の両面において優れた方法である。また、高分子材料と無機フィラーとの界面は延伸操作により容易に剥離することができるため、熱処理などの前処理を必要とせずに高分子多孔質膜を得ることができ、生産性の面でも優れた手法である。
特開平7−029563号公報 特開平7−304110号公報 特開平7−149937号公報
しかしながら、(3)の界面剥離法によって得られる高分子多孔質膜を二次電池のセパレータとして適用した場合、電池性能、特に高温でのサイクル特性の低下を引き起こすことが多く、このため、界面剥離法による従来の高分子多孔質膜を二次電池のセパレータとして実用化することが難しかった。
従って、本発明は、環境・経済性及び生産性に優れた界面剥離法によって得られた高分子多孔質膜で構成されたセパレータを非水系電解液二次電池に適用した場合であっても、サイクル特性等の電池性能に優れた非水系電解液二次電池を実現することを目的とする。
本発明(請求項1)の非水系電解液二次電池用セパレータは、無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成された非水系電解液二次電池用セパレータであって、セパレータ中に含有されるハロゲン元素が10ppm以下で且つ、鉄元素が100ppm以下であることを特徴とする。
本発明(請求項2)の非水系電解液二次電池用セパレータは、無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成された非水系電解液二次電池用セパレータであって、セパレータ中に含有される塩素元素が10ppm以下で且つ、鉄元素が100ppm以下であることを特徴とする。
本発明(請求項5)の非水系電解液二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極、電解質を非水溶媒中に含有する電解液、及びセパレータを有する非水系電解液二次電池において、セパレータとして、このような本発明のセパレータを用いたことを特徴とする。
本発明者等は、界面剥離法によって得られる高分子多孔質膜では、無機フィラーがそのままフィルム中に残ることから、主に無機フィラー中に同伴されてフィルム中に混入する不純物の影響に着目して鋭意検討した結果、セパレータに含まれる特定の不純物を所定量以下に抑えることにより、電池性能の低下、特に高温でのサイクル特性の低下を抑制できることを見出し、本発明に至った。
即ち、後述する比較例2に示すように、従来の界面剥離法で用いられる無機フィラーとして工業的に製造されているものの多くが、自然採石を原料として調製されることから、ハロゲン元素、鉄元素といった不純物を含み、この結果、従来の界面剥離法で製造された高分子多孔質膜は不純物としてハロゲン元素や鉄元素を含むものとなる。本発明者らは、このような、主に無機フィラーに同伴されて不可避的に持ち込まれていたセパレータ中の不純物元素に着目し、これらがセパレータに含有されることによって引き起こされる影響を検討し、不純物のうち、特にハロゲン元素と鉄元素が電池性能に悪影響を及ぼすことを見出した。
セパレータ中に含有されるハロゲン元素と鉄元素が電池性能の低下をもたらすメカニズムの詳細は明らかではないが、まず、鉄元素については、セパレータから電解液中にFeが溶出すると、これが負極表面で析出して微少な短絡が形成される結果、充放電効率の低下やサイクル特性劣化が起こるものと考えられる。また、ハロゲン元素については、セパレータから電解液中にハロゲン元素が溶出すると、電池の外缶や、集電体の腐食が促進され、これにより電池性能の低下をもたらすことが考えられる。
なお、セパレータを構成する高分子多孔質膜に含有されるハロゲン元素及び鉄元素は、主に無機フィラーに含有されて不可避的に持ち込まれるものが多く、従って、本発明のセパレータは、界面剥離法により製造された無機フィラーを含有する高分子多孔質膜より構成されるセパレータに対して好適に適用されるが、本発明は、上述の如く、セパレータから電解液中に溶出する不純物に起因する電池性能の低下を防止するものであり、従って、界面剥離法により製造された高分子多孔質膜よりなるセパレータに限らず、他の方法で製造された高分子多孔質膜よりなるセパレータにも有効であることは言うまでもない。
後述の実施例及び比較例の結果からも明らかなように、本発明によれば、無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成された、ハロゲン元素と鉄元素含有量が少ない非水系電解液二次電池用セパレータにより、電池性能、特に高温でのサイクル特性に優れ、性能の安定した非水系電解液二次電池が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[本発明のセパレータの不純物含有量]
本発明の非水系電解液二次電池用セパレータは、無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成されたセパレータであって、セパレータ中に含有されるハロゲン元素或いは塩素元素が10ppm以下で且つ、鉄元素が100ppm以下であることを特徴とする。
このセパレータ中のハロゲン元素及び鉄元素の含有濃度は次のような方法で定量することができ、後述の実施例及び比較例では、下記(i)、(ii)の方法で、セパレータを構成する高分子多孔質膜中のハロゲン元素と鉄元素を定量した。
(i) セパレータ中のハロゲン元素の定量
試料(セパレータを構成する高分子多孔質膜)2gに純水25mlを添加して15分間超音波抽出する。超音波抽出には、例えば、シャープ(株)製超音波洗浄機「UT-104 SILENT SONIC」(出力は中程度)を用いることができる。その後、抽出液を濾過し、濾液を測定溶液としてイオンクロマトグラフィーにてハロゲン元素を定量する。
(ii) セパレータ中の鉄元素の定量
試料(セパレータを構成する高分子多孔質膜)5gに三菱化学(株)製36%EL用塩酸10mlと純水20mlを添加して30分間煮沸抽出を行う。その後、抽出液を濾過し、濾液を測定溶液としてICP発光分析装置にてFeを定量する。
本発明のセパレータは、このようにして測定されるセパレータ中のハロゲン元素、特に塩素元素の含有量の上限が10ppm以下、好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。ハロゲン元素、特に塩素元素の含有量がこの上限値を超えると、電解液中に溶出したCl等のハロゲン元素により電池缶や集電体の腐食が促進されやすくなり、電池性能低下の原因となる。
また、本発明のセパレータは、このようにして測定されるセパレータ中の鉄元素の含有量の上限が100ppm以下、好ましくは80ppm以下、更に好ましくは70ppm以下である。塩素元素の含有量が、この上限値を超えると、電解液中に溶出したFeが負極表面に析出して微少短絡が形成されやすくなり、充放電効率の低下やサイクル特性劣化の原因となる。
セパレータ中のハロゲン元素及び鉄元素の含有量の下限は特に制限はないが、ハロゲン元素及び鉄元素の含有量を過度に低くすることは、後述の如く、セパレータ中のハロゲン元素及び鉄元素の含有量を低減するための無機フィラーの精製等の工程数が徒に多くなり、また、高分子多孔質膜の製造も困難となる一方で、ハロゲン元素及び鉄元素の含有量は、上記上限値を下回っていれば、電池性能を確保することができることから、セパレータ中のハロゲン元素、特に塩素元素の含有量については、下限は5ppm程度、鉄元素の含有量については下限は50ppm程度であれば許容される。
[本発明のセパレータの構成成分及び物性等]
本発明のセパレータを構成する高分子多孔質膜の基材樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、後述する無機フィラーが均等に分散されうるものであれば特に限定されることはないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐溶剤性、可撓性のバランスに優れていることから、特に好ましいのはポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又は1−デセン等のモノオレフィン重合体や、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又は1−デセンと4−メチル−1−ペンテン又は酢酸ビニル等の他のモノマーとの共重合体等を主成分とするものが挙げられ、具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。本発明においては、上記ポリオレフィン樹脂の中でも高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを用いるのが好ましい。上記ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。
このような熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、下限が通常5万以上、中でも10万以上、上限が通常50万以下、好ましくは40万以下、更に好ましくは30万以下、中でも20万以下程度であれば良い。この上限を超えると、充填剤添加による流動性の低下に加えて樹脂の溶融粘度が高くなるため溶融成形が困難となる。また、成形物が得られた場合であっても、充填剤が樹脂中に均等に分散されず、界面剥離による孔形成が不均一となるため、好ましくない。この下限を下回ると、機械的強度が低下するため好ましくない。
本発明に係る高分子多孔質膜に含まれる無機フィラーの種類は、セパレータ中のハロゲン元素及び鉄元素含有量を本発明で限定する値以下に抑えることができるものであれば、特に限定されることはなく、一般的な無機フィラーを用いることができるが、電解液との反応性が低いもの、中でもリチウム二次電池で用いられるカーボネート系有機電解液を分解しない性質を有するものが好ましい。そのような無機フィラーとしては、難水溶性の硫酸塩、アルミナ等が挙げられるが、例えば硫酸バリウムやアルミナが好適に用いられ、特に硫酸バリウムが好適に用いられる。ここに云う難水溶性とは、25℃の水に対する溶解度が5mg/l以下であることを指す。
一般に充填剤として用いられることの多い炭酸カルシウムなどの炭酸塩や酸化チタン、シリカなどは、後述するようにリチウム二次電池の非水電解液成分の分解を招くため好ましくない。ここで有機電解液成分の分解とは、1M LiPFのEC/EMC=3:7(体積比)の混合非水溶媒溶液よりなる電解液に、電解液1ml当たり充填剤を0.5gの比率で添加して85℃、72時間保持した後の電解液中のリチウムイオンの濃度が0.75mmol/g以下に減少することと定義する。リチウムイオンの量はイオンクロマト法により測定される。なお、72時間の保持中に電解液は外気に接しないように密閉容器に入れる必要がある。これは空気中の水分と反応して電解液成分の分解が進むためである。
下表に電解液(1M LiPF/(EC+EMC)(3:7,容量比))に各種充填剤を上述の条件下で添加して保持した結果を示す。充填剤を添加しなかった電解液のイオン組成と比較して硫酸バリウムやアルミナは殆ど組成の変化が見られず、本発明における無機フィラーとして好適なことが分かる。これに対して炭酸カルシウムや炭酸リチウムなどの炭酸塩、或いはシリカや酸化チタンはリチウムイオンの著しい減少やフッ酸生成によるフッ素イオンの増加が見られ、本発明における無機フィラーとして好ましくないことが分かる。
Figure 2005071979
上記無機フィラーの粒径としては、平均粒径の下限が通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上で、上限が通常10μm以下、好ましくは5μm以下、更に好ましくは2μm以下である。平均粒径が10μmを超えると、延伸で形成される孔の径が大きくなりすぎ、延伸破断やフィルム強度の低下を招いて好ましくない。また、平均粒径が0.1μmより小さいとフィラーが凝集しやすくなるため、基材樹脂に均等にフィラーを分散させることが難しくなる。
本発明においては、上記条件に適合する無機フィラーであれば1種を単独で用いることもでき、2種以上を混合して用いることもできる。
本発明に係る高分子多孔質膜中の上記無機フィラーの配合量は、下限が熱可塑性樹脂100重量部に対して通常40重量部以上、好ましくは50重量部以上、中でも60重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、上限が熱可塑性樹脂100重量部に対して通常300重量部以下、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。高分子多孔質膜中の熱可塑性樹脂100重量部に対する無機フィラーの配合量が40重量部未満であると連通孔を形成することが難しく、セパレータとしての機能を発現することが困難となる。また、300重量部を超えるとフィルム成形時の粘度が高くなり加工性に劣るばかりでなく、多孔化のための延伸時にフィルム破断を生じるため好ましくない。なお、本発明においては、多孔質膜の作製の際に配合した無機フィラーは、実質的に成形された多孔質膜中に残るため、上記の無機フィラーの配合量範囲は、多孔質膜中の無機フィラー含有量範囲となる。
無機フィラーとしては、熱可塑性樹脂への分散性を高めるために表面処理剤により表面処理されているものを用いることもできる。この表面処理としては、熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂の場合、例えばステアリン酸等の脂肪酸又はその金属塩、或いはポリシロキサンやシランカップリング剤による処理が挙げられる。
本発明に係る高分子多孔質膜の成形時には、前記熱可塑性樹脂との相溶性を有する低分子量化合物を添加しても良い。この低分子量化合物は熱可塑性樹脂の分子間に入り込み、分子間の相互作用を低下させると共に結晶化を阻害し、その結果、シート成形時の樹脂組成物の延伸性を向上させる。また、低分子量化合物は熱可塑性樹脂と無機フィラーとの界面接着力を適度に高めて、延伸による孔の粗大化を防止する作用を奏すると共に、熱可塑性樹脂と無機フィラーとの界面接着力を高めることでフィルムからの無機フィラーの脱落を防止する作用を奏する。
この低分子量化合物としては分子量200〜3000のものが好適に用いられ、より好ましくは200〜1000のものが用いられる。この低分子量化合物の分子量が3000を超えると低分子量化合物が熱可塑性樹脂の分子間に入りにくくなるため、延伸性の向上効果が不充分となる。また、分子量が200未満では、相溶性は上がるが、低分子量化合物が高分子多孔質膜表面に析出する、いわゆるブルーミングが起こりやすくなり、膜性状の悪化やブロッキングを起こしやすくなり好ましくない。
低分子量化合物としては、熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂の場合、脂肪族炭化水素又はグリセライドなどが好ましく使われる。特に、ポリオレフィン樹脂がポリエチレンの場合は、流動パラフィンや低融点ワックスが好ましく用いられる。
本発明に係る高分子多孔質膜の成膜材料としての樹脂組成物における、上記低分子量化合物の配合量は、下限が熱可塑性樹脂100重量部に対し通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、上限が熱可塑性樹脂100重量部に対し通常20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。低分子量化合物の配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、低分子量化合物を配合することによる上記効果が十分に得られず、また20重量部を超えると熱可塑性樹脂の分子間の相互作用を低下させ過ぎて、十分な強度が得られなくなる。また、シート成形時に発煙が生じたり、スクリュー部分での滑りが生じて、安定なシート成形が難しくなる。
本発明に係る高分子多孔質膜の成膜材料としての樹脂組成物には、更に必要に応じて熱安定剤等の他の添加剤を添加することができる。上記添加剤としては、公知のものであれば特に制限されず用いられる。これらの添加剤の配合量は、樹脂組成物の全量に対して、通常0.05〜1重量%である。
本発明に係る高分子多孔質膜の多孔度は、高分子多孔質膜の空孔率の下限として通常30%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上であり、上限として通常80%以下、好ましくは70%以下、更に好ましくは65%以下、特に好ましくは60%以下である。空孔率が30%未満であるとイオンの透過性が充分でなく、セパレータとしての機能を果たすことができず、好ましくない。また、空孔率が80%を超えると、フィルムの実強度が低くなるため、電池作成時の破断や活物質による突き抜けと短絡が生じ、好ましくない。
なお、高分子多孔質膜の空孔率とは、以下の計算式によって算出される値である。
空孔率Pv(%)=100×(1−w/〔ρ・S・t〕)
S:高分子多孔質膜の面積
t:高分子多孔質膜の厚み
w:高分子多孔質膜の重さ
ρ:高分子多孔質膜の真比重
なお、高分子多孔質膜を構成する成分i(樹脂やフィラーなど)のブレンド重量をWi、比重をρiとすると、真比重ρは以下の式で求められる(式中でΣは全ての成分の和を表す。)。
ρ=ΣWi/Σ(Wi/ρi)
本発明に係る高分子多孔質膜の厚みの上限値は、通常100μm以下、中でも50μm以下、好ましくは40μm以下であり、下限値は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上である。厚みが5μm未満であると、実強度が低いため、電池の作成時の破断や活物質による突き抜けと短絡が生じ、好ましくない。また、厚みが100μmを超えるとセパレータの電気抵抗が高くなるため、電池の容量が低下し、好ましくない。厚みを5〜100μmの範囲とすることにより、良好なイオン透過性を有するセパレータとすることができる。
また、本発明に係る高分子多孔質膜は、ガーレー透気度の下限値が20秒/100cc以上、特に100秒/100cc以上で、上限値が500秒/100cc以下、特に300秒/100cc以下であることが好ましい。ガーレー透気度がこの下限値を下回る場合は、空孔率が高すぎるか厚みが薄すぎることが多く、前述の通りフィルムの実強度が低くなって電池作成時の破断や活物質による突き抜けと短絡が生じて好ましくない。この上限値を超える場合は、イオンの透過性が充分でなく、セパレータとしての機能を果たすことができず、好ましくない。なお、ガーレー透気度は、JIS P8117に準拠して測定され、1.22kPa圧で100ccの空気が膜を透過する秒数を示す。
[セパレータの製造方法]
次に、本発明のセパレータの製造方法を説明するが、それに先立ち、無機フィラーを含有する高分子多孔質膜よりなるセパレータの一般的な製造方法について説明する。
<一般的なセパレータの製造方法>
無機フィラーを含有する高分子多孔質膜の製造方法としては特に制限はなく、下記の抽出法(1)、延伸法(2)、及び界面剥離法(3)が挙げられるが、特に好ましいのは界面剥離法である。
(1) 抽出法:高分子材料と、無機フィラーと、後工程で溶媒抽出除去が可能な可塑剤とを混合してなる樹脂組成物を溶融し、これを押出成形などの成形法により膜状に成形した後、これを溶媒で処理して可塑剤を除去することにより、多孔化する。
(2) 延伸法:結晶性高分子材料に無機フィラーを混合してなる樹脂組成物を溶融し、これを押出成形などの成形法により膜状に成形した後、延伸することにより、構造的に弱い非晶部分を切断することにより微細孔を形成する。
(3) 界面剥離法:高分子材料に無機フィラーを混合してなる樹脂組成物を溶融し、これを押出成形などの成形法により膜状に成形した後、延伸することにより、高分子材料と無機フィラーとの界面を剥離させて微細孔を形成する。
上記製造方法のうち、抽出法では、成形の際に無機フィラーを高分子材料側に選択的に含有させることは難しく、可塑剤部分に含有された無機フィラーが抽出時に可塑剤と共に除去されてしまうため、界面剥離法に比較すると効率的でない。また、延伸法においては、高分子材料に無機フィラーを含有させると、非晶部分以外に高分子材料と無機フィラー界面でも延伸による開孔が生じるため、本質的に界面剥離法と異ならなくなる。従って、本発明では界面剥離法を採用することが好ましい。
なお、高分子多孔質膜の製造は、より具体的には、次のような方法で行われる。
まず、無機フィラーと熱可塑性樹脂、及び必要に応じて添加される低分子量化合物や酸化防止剤等の添加剤の所定量を配合し、溶融混練することにより樹脂組成物を調製する。ここで上記樹脂組成物はヘンシェルミキサー等によって予備混合を行い、しかる後に通常用いられる一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ミキシングロール又は二軸混練機等を用いて調製しても良く、或いは予備混練を省略して直接上記押出機等で樹脂組成物を調製しても良い。
次いで、上記樹脂組成物をシート成形する。シート成形は通常用いられるTダイによるTダイ法や円形ダイによるインフレーション法により行うことができる。
次いで、成形されたシートの延伸を行う。該延伸には、シートの引き取り方向(MD)に延伸する縦一軸延伸、テンター延伸機等により横方向(TD)に延伸する横一軸延伸、MDへの一軸延伸後引き続きテンター延伸機等によりTDに延伸する逐次二軸延伸法、又は縦方向及び横方向を同時に延伸する同時二軸延伸法がある。上記一軸延伸はロール延伸により行うことができる。上記延伸は、シートを構成する樹脂組成物が所定の延伸倍率に容易に延伸でき、かつ樹脂組成物が融解して孔を閉塞させ連通性を失わせることのない任意の温度で行うことができるが、好ましくは樹脂の融点−70℃〜樹脂の融点−5℃の温度範囲で延伸される。延伸倍率は必要とされる孔径や強度に応じて任意に設定されるが、好ましくは少なくとも一軸方向に1.2倍以上の延伸を行う。
<本発明のセパレータの製造方法>
次に、ハロゲン元素含有量又は塩素元素含有量が10ppm以下で、鉄元素含有量が100ppm以下の本発明のセパレータを製造する方法について説明する。
本発明のセパレータを構成する高分子多孔質膜は、具体的には、上述した従来の一般的な高分子多孔質膜と同様な方法で製造されるが、本発明においては、このようにして製造されるセパレータ中のハロゲン元素又は塩素元素含有量を10ppm以下とすると共に鉄元素含有量を100ppm以下とするために、高分子多孔質膜の製造原料中に含まれて高分子多孔質膜中に持ち込まれる不純物や、高分子多孔質膜の製造工程で高分子多孔質膜中に混入する不純物を次のような方法で低減する。
[1] ハロゲン元素及び鉄元素含有量が低減された無機フィラーを用いて高分子多孔質膜を製造する。
前述の如く、通常、無機フィラーは自然鉱石を原料として製造されるため、必然的に鉄やハロゲン元素などの不純物が、例えば鉄であれば数百ppm、ハロゲン元素であれば数十ppm程度不可避的に混入してくる。このため、製造された無機フィラーについて、精製、水洗などの工程を経て上述の不純物を低減する。或いは、無機フィラーの製造工程に化学合成を組み入れることにより、無機フィラーの不純物量を低減する。なお、化学合成を組み込まれる場合、合成途中でハロゲン化物が生成するような工程は最終製品にハロゲン元素が多量に残存するため、好ましくない。
自然鉱石を原料として製造された無機フィラーを水洗する場合、例えば20〜100℃程度の高い水中に投入して攪拌するなどの方法を採用することができる。この場合、洗浄水中には硫酸や硝酸などのハロゲン元素及び鉄を含まない薬剤を添加して洗浄効果を高めるようにしても良い。洗浄水の酸の濃度は1〜20重量%が好ましい。薬剤を添加した水で洗浄する場合は、最後に更に純水で仕上げ洗浄することが好ましい。
また、自然鉱石を原料として製造される無機フィラーを精製する方法としては、例えば、粉砕した鉱石を空気中や水中で比重の違いによって分離する方法を採用することができる。
また、化学合成工程を組み入れる場合には、例えば、硫酸バリウムフィラーの場合であれば、原料鉱石である重晶石を還元培焼して得られる硫化バリウムを硫酸ナトリウム又は硫酸と反応させることにより製造することができる。また、アルミナフィラーであれば原料鉱石であるボーキサイトに水酸化ナトリウムを加えてアルミン酸ナトリウムとし、これを加水分解して水酸化アルミニウムを沈殿させ、これを高温焼成して製造することもできる。
無機フィラーは、このように、水洗又は精製、或いは化学合成工程を組み込むことにより、これを配合して製造された高分子多孔質膜よりなるセパレータ中のハロゲン元素又は塩素元素含有量と鉄元素含有量が、前述の本発明で規定する上限値以下となるように、不純物含有量を低減する。
この無機フィラーの不純物含有量は、従って、高分子多孔質膜への無機フィラー配合量によっても異なり、無機フィラー配合量が少ない場合には、無機フィラーの不純物含有量は比較的多くても良く、また、無機フィラー配合量が多い場合には、無機フィラーの不純物含有量は極力少なくする必要がある。
本発明では、前述した無機フィラー配合量、即ち、熱可塑性樹脂100重量部に対して40〜300重量部、好ましくは60〜200重量部、より好ましくは100〜150重量部の無機フィラー配合量において、無機フィラーのハロゲン元素又は塩素元素含有量の上限が通常30ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは15ppm以下で、鉄元素含有量の上限が通常300ppm以下、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下となるように不純物含有量を低減することが好ましい。無機フィラーの不純物含有量の下限は、前述のセパレータ中の不純物含有量の下限と同様の理由から、ハロゲン元素又は塩素元素含有量7ppm程度、鉄元素含有量70ppm程度である。
なお、無機フィラー中のハロゲン元素及び鉄元素の含有濃度は、前述のセパレータ(高分子多孔質膜)中の不純物含有濃度と同様に次のような方法で定量することができ、後述の実施例及び比較例では、下記(iii)、(iv)の方法で無機フィラー中のハロゲン元素と鉄元素を定量した。
(iii) 無機フィラー中のハロゲン元素の定量
試料(無機フィラー)2gに、純水25mlを添加して15分間超音波抽出する。超音波抽出には、例えば、シャープ(株)製超音波洗浄機「UT-104 SILENT SONIC」(出力は中程度)を用いることができる。その後、抽出液を濾過し、濾液を測定溶液としてイオンクロマトグラフィーにてハロゲン元素を定量する。
(iv) 無機フィラー中の鉄元素の定量
試料(無機フィラー)5gに、三菱化学(株)製36%EL用塩酸10mlと純水20mlを添加して30分間煮沸抽出を行う。その後、抽出液を濾過し、濾液を測定溶液としてICP発光分析装置にてFeを定量する。
なお、セパレータに含まれる無機フィラー中の不純物含有量も、上記と同様の方法で測定することができる。この場合には、セパレータを構成する高分子多孔質膜のマトリックス樹脂を高温で焼き、採取される灰分より無機フィラーを分取し、上記と同様の定量を行えば良い。
[2] 高分子多孔質膜の基材樹脂として、ハロゲン元素及び鉄元素含有量が低減された樹脂を用いる。
高分子多孔質膜の基材樹脂として用いる熱可塑性樹脂には、その重合反応工程において、触媒由来の塩素元素が4〜5ppm程度混入する恐れがある。
従って、熱可塑性樹脂の製造時に例えば触媒活性を上げる、反応時間を長くする、或いは反応温度を上げるなどの方法で、少ない触媒使用量で重合を行い、熱可塑性樹脂中に残存する触媒量を低減して触媒由来の不純物を低減する。
本発明のセパレータの製造においては、上記[1]及び[2]の不純物低減方法のいずれを採用しても良く、これらを共に採用して高分子多孔質膜を製造しても良いが、セパレータ中のハロゲン元素及び鉄元素は、主として無機フィラーに由来することから、少なくとも上記[1]の不純物低減方法を採用することが好ましい。
[非水系電解液二次電池]
次に、上述のような本発明の非水系電解液二次電池用セパレータを用いる本発明の非水系電解液二次電池について説明する。本発明の非水系電解液二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極、電解質を非水溶媒中に含有する電解液、及びセパレータを有する。
本発明の非水系電解液二次電池に使用される電解液の非水系溶媒としては、非水系電解液二次電池の溶媒として公知の任意のものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート(ジアルキルカーボネートのアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい);テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル;酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
非水系電解液の溶質であるリチウム塩としては、任意のものを用いることができる。例えば、LiClO、LiPF及びLiBF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO及びLiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩などが挙げられる。これらのうち、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO又はLiN(CSO、特にLiPF又はLiBFが好ましい。なお、リチウム塩についても1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらのリチウム塩の非水系電解液中の濃度の下限値としては、通常0.5mol/l以上、中でも0.75mol/l以上、上限値としては、通常2mol/l以下、中でも1.5mol/l以下である。リチウム塩の濃度がこの上限値を超えると非水系電解液の粘度が高くなり、電気伝導率も低下する。また、下限値を下回ると電気伝導率が低くなるので、上記濃度範囲内で非水系電解液を調製することが好ましい。
なお、本発明に係る非水系電解液には、必要に応じて他の有用な成分、例えば従来公知の過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等の各種の添加剤を含有させても良い。
高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物などが挙げられる。非水系電解液がこれらの助剤を含有する場合、その濃度は、通常0.1〜5重量%である。
正極は、通常、正極活物質とバインダーを含有する活物質層を集電体上に形成させたものが用いられる。
正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料などのリチウムを吸蔵及び放出可能な材料が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
バインダーとしては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
正極活物質層中のバインダーの割合は、下限値が通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、上限値が通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。バインダーの割合が少ないと、活物質を十分に保持できないので、正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、逆に多すぎると電池容量や導電性を下げることになる。
正極活物質層は、通常、導電性を高めるため導電剤を含有する。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛の微粒子や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素微粒子等等の炭素質材料を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。正極活物質層中の導電剤の割合は、下限値が通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、上限値が通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。導電剤の割合が少ないと導電性が不十分になることがあり、逆に多すぎると電池容量が低下することがある。
正極活物質層には、その他、増粘剤等の通常の活物質層の添加剤を含有させることができる。
増粘剤は電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としては、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
正極の集電体には、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
正極は、前述の正極活物質とバインダーと導電剤、必要に応じて添加されるその他の添加剤とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布して乾燥することにより形成することができる。スラリー化のために用いる溶媒としては、通常はバインダーを溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン,N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が用いられるがこれらに限定されない。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで活物質をスラリー化することもできる。
このようにして形成される正極活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。なお、塗布・乾燥によって得られた活物質層は、活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化するのが好ましい。
負極は、通常、負極活物質とバインダーを含有する活物質層を集電体上に形成させたものが用いられる。
負極活物質としては様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料;酸化錫、酸化珪素等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属酸化物材料;リチウム金属;種々のリチウム合金などを用いることができる。これらの負極活物質は、1種を単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。
バインダーとしては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
負極活物質層中の上述のバインダーの割合は、下限値が通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、上限値が通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。バインダーの割合が少ないと、活物質を十分に保持できないので負極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、逆に多すぎると電池容量や導電性を下げることになる。
負極活物質層は、通常、導電性を高めるため導電剤を含有する。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛の微粒子や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素微粒子等等の炭素質材料を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。負極活物質層中の導電剤の割合は、下限値が通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、上限値が通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。導電剤の割合が少ないと導電性が不十分になることがあり、逆に多すぎると電池容量が低下することがある。
負極活物質層には、その他、増粘剤等の通常の活物質層の添加剤を含有させることができる。
増粘剤は電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としては、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
負極は、前述の負極活物質とバインダーと導電剤、必要に応じて添加されるその他の添加剤とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布して乾燥することにより形成することができる。
スラリー化する溶媒としては、通常はバインダーを溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン,N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が用いられるがこれらに限定されない。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで活物質をスラリー化することもできる。
このようにして形成される負極活物質層の厚さは、通常、10〜200μm程度である。なお、塗布・乾燥によって得られた活物質層は、活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化するのが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、上述した正極と、負極と、非水系電解液と、本発明のセパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。更に、必要に応じて外装ケース等の他の構成要素を用いることも可能である。
その電池形状は特に制限されず、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。一般的に採用されている形状の例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ、シート電極及びセパレータを積層したラミネートタイプなどが挙げられる。また、電池を組み立てる方法も特に制限されず、目的とする電池の形状に合わせて、通常用いられている各種方法の中から適宜選択することができる。
以上、本発明のリチウム二次電池の一般的な実施形態について説明したが、本発明のリチウム二次電池は上記実施形態に制限されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、各種の変形を加えて実施することが可能である。
本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の小型機器、及び、電気自動車、ハイブリッド自動車等の大型機器を挙げることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
<高分子多孔質膜の製造>
高密度ポリエチレン〔三井化学社製「HI−ZEX7000FP」、重量平均分子量:20万、密度;0.956g/cm3、メルトフローレート;0.04g/10min〕100重量部、軟質ポリプロピレン〔出光石油化学社製「PER R110E」、重量平均分子量:33万〕15.6重量部、硬化ひまし油〔豊国製油社製「HY−CASTOR OIL」、分子量938〕9.4重量部、無機フィラーとして硫酸バリウム〔堺化学社製「B−55」平均粒径0.66μm〕187.5重量部を配合して溶融混練し、得られた樹脂組成物を温度210℃でインフレーション成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均105μmであった。次に、得られた原反シートを70℃でシート長手方向(MD)に1.31倍、次いで110℃で幅方向(TD)に2.95倍の逐次延伸を行い、膜厚25μm、空孔率60%、ガーレー透気度110秒/100ccの高分子多孔質膜を得た(なお、ガーレー透気度は、JIS P8117に準じてB型ガーレーデンソーメーター(東洋精機製作所製)を使用して測定した。)。得られた高分子多孔質膜と無機フィラーとして用いた硫酸バリウムに含有されるハロゲン(Cl)とFeを前述の定量方法に従って、それぞれ定量した結果は、表2に示す通りであった。
<電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)に、十分に乾燥したLiPFを1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。
<正極の作製>
正極活物質としてLiCoOを用い、LiCoO85重量部にカーボンブラック6重量部及びポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製商品名「KF−1000」)9重量部を加えて混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散し、スラリー状とした。これを、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布し、乾燥後、プレス機により正極活物質層の密度が3.0g/cmになるようにプレスして正極とした。
<負極の作製>
負極活物質として天然黒鉛粉末を用い、天然黒鉛粉末94重量部にポリフッ化ビニリデン6重量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散させてスラリー状とした。これを負極集電体である厚さ18μmの銅箔の片面に均一に塗布し、乾燥後、プレス機により負極活物質層の密度が1.5g/cmになるようにプレスして負極とした。
<電池の組立>
上記高分子多孔質膜をセパレータとして、上記電解液、正極及び負極と共に用いて2032型コインセルを作製した。即ち、正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて電解液を含浸させた正極を収容し、その上に電解液を含浸させた直径18.8mmのセパレータを介して直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて電解液を含浸させた負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封することによりコイン型電池を作製した。ここで電池部材への電解液の含浸は、各部材を電解液に2分間浸漬することより行った。
<電池の評価>
25℃において0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)に相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.2V−定電流定電圧充電(CCCV充電)(0.05Cカット)後、0.2Cに相当する定電流値で3V放電を行った。さらに、60℃で充放電電流値が2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を100サイクル行い、各サイクル時の放電容量の変化を調べた。結果を表2に示した。
〔実施例2〕
無機フィラーとして硫酸バリウム〔堺化学社製「BA」平均粒径8μm〕を使用したこと以外は実施例1と同様にして、膜厚30μm、空孔率68%、ガーレー透気度50秒/100ccの高分子多孔質膜を得た。得られた高分子多孔質膜と無機フィラーとして用いた硫酸バリウムに含有されるハロゲン(Cl)とFeを、前述の定量方法に従ってそれぞれ定量した結果は、表2に示す通りであった。
この高分子多孔質膜をセパレータとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型電池を組み立て、同様に評価を行って、結果を表2に示した。
〔実施例3〕
硫酸バリウム〔堺化学社製「BC」平均粒径10μm〕を5重量%硫酸で1時間抽出後濾過して純水で洗浄し、更に、純水中で30分間の超音波抽出後濾過して純水で洗浄した。この洗浄後の硫酸バリウムを120℃で1時間乾燥した後、更に、120℃で真空乾燥を12時間行った。以上の処理を行った硫酸バリウムを無機フィラーとして使用したこと以外は実施例1と同様にして膜厚34μm、空孔率67%、ガーレー透気度40秒/100ccの高分子多孔質膜を得た。得られた高分子多孔質膜と無機フィラーとして用いた硫酸バリウムに含有されるハロゲン(Cl)とFeを、前述の定量方法に従ってそれぞれ定量した結果は、表2に示す通りであった。
この高分子多孔質膜をセパレータとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型電池を組み立て、同様に評価を行って、結果を表2に示した。
〔比較例1〕
無機フィラーとして硫酸バリウム〔堺化学社製「B−1」平均粒径0.8μm〕を使用したこと以外は実施例1と同様にして、膜厚22μm、空孔率62%、ガーレー透気度100秒/100ccの高分子多孔質膜を得た。得られた高分子多孔質膜と無機フィラーとして用いた硫酸バリウムに含有されるハロゲン(Cl)とFeを、前述の定量方法に従ってそれぞれ定量した結果は、表2に示す通りであった。
この高分子多孔質膜をセパレータとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型電池を組み立て、同様に評価を行って、結果を表2に示した。
〔比較例2〕
無機フィラーとして硫酸バリウム〔堺化学社製「BC」平均粒径10μm〕を使用したこと以外は実施例1と同様にして、膜厚33μm、空孔率66%、ガーレー透気度40秒/100ccの高分子多孔質膜を得た。得られた高分子多孔質膜と無機フィラーとして用いた硫酸バリウムに含有されるハロゲン(Cl)とFeを、前述の定量方法に従ってそれぞれ定量した結果は、表2に示す通りであった。
この高分子多孔質膜をセパレータとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型電池を組み立て、同様に評価を行って、結果を表2に示した。
Figure 2005071979
表2よりセパレータについて、ハロゲン元素、特に塩素元素と鉄元素という、特定の不純物含有量を制限することにより、高温でのサイクル特性を改善することができることが分かる。
一般に、ハロゲンイオンは金属表面の不動態を溶解して金属酸化物を金属ハロゲン化物へ変える。金属ハロゲン化物は溶解し易いため腐食が進行する。よって塩化物イオンの結果に代表されるように、ハロゲン濃度が高いと缶や集電体の腐食が進行してサイクル特性などの電池特性が低下するものと考えられる。
従って、実施例1〜3の結果より、ハロゲン元素全般について制限することより、同様の発明の効果が奏されると考えられる。
本発明は、非水系電解液二次電池の性能、特に、サイクル特性の向上に有用である。

Claims (5)

  1. 無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成された非水系電解液二次電池用セパレータであって、セパレータ中に含有されるハロゲン元素が10ppm以下で且つ、鉄元素が100ppm以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池用セパレータ。
  2. 無機フィラーを含有する高分子多孔質膜で構成された非水系電解液二次電池用セパレータであって、セパレータ中に含有される塩素元素が10ppm以下で且つ、鉄元素が100ppm以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池用セパレータ。
  3. 無機フィラーが、硫酸バリウム及びアルミナからなる群から選ばれたものを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解液二次電池用セパレータ。
  4. 高分子多孔質膜が、熱可塑性樹脂膜であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池用セパレータ。
  5. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極、電解質を非水溶媒中に含有する電解液、及びセパレータを有する非水系電解液二次電池において、セパレータとして、請求項1ないし4のいずれかに記載のセパレータを用いたことを特徴とする非水系電解液二次電池。
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