JP4586375B2 - 非水系電解液二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は非水系電解液二次電池に係り、詳しくは、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極及び正極と、セパレータと、非水系溶媒及びリチウム塩を含有する非水系電解液とを備えてなる非水系電解液二次電池であって、高い放電容量を達成しつつ、サイクル特性にも優れた非水系電解液二次電池に関する。
電気製品の軽量化、小型化に伴ない高いエネルギー密度を持ち、且つ軽量な非水系電解液二次電池であるリチウム二次電池が広い分野で使用されている。リチウム二次電池は、通常、コバルト酸リチウムに代表されるリチウム化合物などの正極活物質を含有する活物質層を集電体上に形成させた正極と、黒鉛などに代表されるリチウムの吸蔵・放出が可能な炭素材料などの負極活物質を含有する活物質層を集電体上に形成させた負極と、LiPF等のリチウム塩等の電解質を通常非プロトン性の非水系溶媒に溶解した非水系電解液と、高分子多孔質膜からなるセパレータとから主として構成される。
従来の典型的なリチウム二次電池は、負極活物質として炭素材を用い、リチウムをイオン状態で炭素材中に挿入(インターカレーション)及び脱離(デインターカレーション)させることにより充放電を繰り返している。しかしながら、炭素材に対するリチウムイオンの挿入量を高めることは困難であり、二次電池としての充放電容量を高めることができないという問題がある。例えば、黒鉛を炭素質材料として用いると、リチウム金属はCLiの組成となり、この物質の理論充放電容量は372Ah/kgである。これは、リチウム金属における理論充放電容量の数分の一でしかない。
そこで、より高容量を発現できる負極材料として、リチウムと合金化可能な金属もしくは金属化合物を含有する材料を用いることが試みられている。例えば、特許文献1には、負極活物質としてシリコン等のリチウムと合金化可能な金属を用いることによって、放電容量の向上した非水系電解液二次電池を得ることが記載されている。
なお、リチウム二次電池で使用されるセパレータには、両極間のイオン伝導を妨げないこと、電解液を保持できること、電解液に対して耐性を有すること、などの要件を満たすことが求められ、主としてポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる高分子多孔質膜が用いられている。従来、これらの高分子多孔質膜を製造する方法としては、例えば以下の手法が公知技術として知られている。
(1) 高分子材料に後工程で容易に抽出除去可能な可塑剤を加えて成形を行い、その後可塑剤を適当な溶媒で除去して多孔化する抽出法(特許文献2)。
(2) 結晶性高分子材料を成形した後、構造的に弱い非晶部分を選択的に延伸して微細孔を形成する延伸法(特許文献3)。
(3) 高分子材料に充填剤を加えて成形を行い、その後の延伸操作により高分子材料と充填剤との界面を剥離させて微細孔を形成する界面剥離法(特許文献4)。
しかしながら(1)の抽出法は、大量の廃液を処理する必要があり、環境・経済性の両面において問題がある。また抽出工程で発生する膜の収縮のために均等な膜を得ることが難しく、歩留まりなど生産性においても問題がある。(2)の延伸法は、延伸前の結晶相・非晶相の構造制御により孔径分布を制御するために、長時間の熱処理が必要であり、生産性の面で問題がある。
これに対して、(3)の界面剥離法は、廃液の発生などはなく、環境・経済性の両面において優れた方法である。また、高分子材料と充填剤との界面は延伸操作により容易に剥離することができるため、熱処理などの前処理を必要とせずに多孔質膜を得ることができ、生産性の面でも優れた手法である。
しかし、従来、充填剤を含有したセパレータは、表面に突出した充填剤の存在により電極との密着性が悪く、電極間距離の不均一による電極間抵抗の不均一を生じてリチウムデンドライトなどの発生が生じ易く、安全性に劣ると考えるのが常識的であり、このために、上記(3)の方法で製造された充填材を含むセパレータが実用化された例はなかった。
前述の特許文献1においても、セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの単独の微多孔膜、或いはそれらを貼り合わせた膜や、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロースなどの不織布が使用されると記載され、実施例においても、ポリエチレン製微多孔膜を使用している。このものは、一般に、上記(1)の抽出法か上記(2)の延伸法によって工業的に製造される。しかも、特許文献1では、リチウムと合金化可能な金属を負極に使用する場合のセパレータの影響について何ら触れられていない。
特開平10−223221号公報 特開平7−029563号公報 特開平7−304110号公報 特開2002−201298号公報
特許文献1に記載されるように、リチウムと合金化可能な金属或いは金属化合物を負極として用いる場合、リチウムの吸蔵に伴う体積変化に起因し、後述の比較例1に示すように、サイクル時の放電容量が著しく低下するという問題があった。
従って、本発明は、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物を負極として用いたことによる高容量化を達成しつつ、サイクル時の放電容量の低下が少ない非水系電解液二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特に、リチウム合金化した際に体積膨張率の大きい金属又は金属化合物であって、リチウム合金化した際の、該金属及び該金属化合物の、重量当たり或いは体積当たりの理論容量密度が一定値以上のものを負極とした場合において、セパレータとして、無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂よりなる多孔質膜を組み合わせて使用することにより、高容量化を達成しつつ、かつ、サイクル時の放電容量の低下が小さい非水系電解液二次電池を提供することができることを見出して本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極及び正極と、セパレータと、非水系溶媒及びリチウム塩を含有する非水系電解液とを備えてなる非水系電解液二次電池において、該セパレータが、無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂よりなる多孔質膜を有し、該負極がリチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物を含有し、
i) 該金属又は該金属化合物のリチウム合金化物の、該金属又は該金属化合物に対する、体積膨脹率(以下、「リチウム合金化物の体積膨張率」と称す場合がある。)が、1.2以上6.0以下であり、かつ
ii) (a)該金属又は該金属化合物のリチウム合金化物中のリチウム量から換算される理論容量の、該金属及び該金属化合物の重量当たりの比率(以下、「重量当たりの容量密度」と称す場合がある。)が、0.4Ah/g以上4.0Ah/g以下であるか、
(b)該金属又は該金属化合物のリチウム合金化物中のリチウム量から換算される理論容量の、該金属又は該金属化合物の体積当たりの比率(以下、「体積当たりの容量密度」と称す場合がある。)が、0.7Ah/cc以上2.3Ah/cc以下であるか
の少なくともいずれか一方を満たし、該セパレータは2軸延伸法により得られ、該セパレータの平均保液量変化率が15%/分以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池に存する(請求項1)。
本発明において、特定のセパレータと、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物を含有する負極とを組み合わせることによるサイクル特性の向上効果の作用機構の詳細は明らかではないが、本発明で用いる特定のセパレータは、従来一般的に用いられているセパレータに比べて電解液の保液性が高く、このため負極の体積膨張に対しても十分に追随して電解液を安定に保存し得ることにより、良好なサイクル特性が発現されるものと推定される。
即ち、特許文献1に記載されるように、従来、リチウム二次電池に用いられるセパレータは抽出法或いは延伸法により得られるものが一般的である。このような方法により得られた膜は、本発明が特徴とする無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂よりなる多孔質膜とは異なり、保液量の変化速度が大きく、電解液をセパレータ中に保持する能力が低く、後述する比較例1に示すように、リチウム合金化した際に体積膨張率の大きい金属又は金属化合物であって、リチウム合金化した際の、該金属及び該金属化合物の、重量当たり或いは体積当たりの容量密度が一定値以上のものを負極として用いた場合に良好なサイクル特性を得ることができない。
これに対して、本発明でセパレータとして用いる無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂よりなる多孔質膜は、後述の如く、例えば界面剥離法により、比較的孔径の大きな多孔質膜として容易に製造することができ、しかも、このものは保液性が良好である。
本発明で用いるセパレータが保液性に優れる理由としては次のことが考えられる。即ち、セパレータ中の電解液の移動は微細な孔中を液が浸透していくいわゆる毛細管流動ととらえることができる。毛細管流動では孔径が小さいほど浸透距離が大きくなるので液が浸透しやすいと考えられるが、逆に外圧などにより液が外に出るときはこの浸透し易さのため保液性が低くなるものと考えられる。本発明で用いる充填剤を含有するセパレータは、前記(1),(2)の方法で製造される、特許文献1で用いられるようなセパレータに比較して、孔径が大きく液の浸透性においては若干劣るが、いったん浸透した後は液が移動しにくいため液が膜中に保持されやすいものと考えられる。また、充填剤を含有していることにより、セパレータ全体の誘電率が増大するため、極性溶媒である電解液との相互作用により充填剤と電解液との化学的な親和性が向上し、このことがセパレータにおける電解液の保持能力を高める効果を奏することも考えられる。さらには、本発明で用いるセパレータは、充填剤の存在により形成されるセパレータ表面の凹凸により、電池内において、極板とセパレータ間に隙間を形成するため、この隙間にさらに多くの電解液を保持することが可能である。
以上のように、本発明では、保液性が極めて良好な特定のセパレータを用いることにより、負極がリチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物を含み、リチウム合金化した際の体積膨張の大きい二次電池において、電解液を安定に保持し、サイクル時の負極の膨張収縮に伴う電解液の枯渇、偏在等の電解液の欠乏を補うことで、サイクル特性の低下を抑制する。
なお、前述の如く、充填剤を含有したセパレータは、表面に突出した充填剤の存在により電極との密着性が悪く電極間距離の不均一による電極間抵抗の不均一を生じてリチウムデンドライトなどの発生が生じ易く、安全性に劣ると考えられ、実用化された例はなく、特許文献1においても、このような充填剤を含まない微孔性ポリエチレン膜をセパレータとして用いているが、このような微孔性ポリエチレン膜セパレータでは、本発明におけるセパレータの有するような物性を達成することができず、本発明の効果を得ることができない。
本発明においては、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物を含有する負極に対して、従来使用されていない特定のセパレータを組み合わせることにより、上述の作用機構で優れた効果を得ることができる。
本発明において、上記リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物としては、Al、Si、Zn、Ga、Ge、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Pb、及びBiよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属又は当該金属の化合物が挙げられる(請求項2)。
また、上記負極は、厚み100μm以下の薄膜であることが好ましく(請求項3)、このような負極としては、リチウムと合金形成可能な金属を含む原料を気相中に放出し、集電体上に堆積させて形成した薄膜電極(請求項4)、或いは集電体上に、リチウムと合金形成可能な金属を含む粒子と結着剤とを含有する薄層を有する薄膜電極(請求項5)が挙げられる。
この負極は、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物が、該金属以外の金属及び炭素質物の少なくとも1種との複合材料として含まれるものであっても良い(請求項6)。
また、上記セパレーターは、厚みが5μm以上100μm以下、空孔率が30%以上80%以下、ASTM F316−86により定められる平均孔径が0.05μm以上10μm以下、JIS P8117により定められるガーレー透気度が20秒/100cc以上700秒/100cc以下であることが好ましい(請求項7)。
また、上記非水系電解液中のリチウム塩は含フッ素リチウム塩であり、非水系溶媒は環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含有することが好ましい(請求項8)。また、上記正極の活物質はリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい(請求項9)。
本発明によれば、高容量化を達成しつつ、かつ、サイクル時の放電容量が低下しにくい非水系電解液二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の非水系電解液二次電池は、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極及び正極と、以下に詳述する特定のセパレータと、非水系溶媒、及びリチウム塩を含有する非水系電解液とを備えてなり、負極がリチウムと合金形成可能な、特定の条件を満たす金属又は金属化合物を含有するものである。
[セパレータ]
<セパレータの構成成分及び物性等>
本発明のセパレータを構成する多孔質膜の基材樹脂としての熱可塑性樹脂は、後述する無機充填剤が均等に分散されうるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。上記ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。
これらの中でも、耐熱性、耐溶剤性、可撓性のバランスに優れていることから、特に好ましいのはポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又は1−デセン等のモノオレフィン重合体や、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又は1−デセンと4−メチル−1−ペンテン又は酢酸ビニル等の他のモノマーとの共重合体等を主成分とするものが挙げられ、具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。本発明においては、上記ポリオレフィン樹脂の中でもポリエチレン又はポリプロピレンを用いるのが好ましい。
このような熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、下限が通常5万以上、中でも10万以上、上限が通常50万以下、好ましくは40万以下、さらに好ましくは30万以下、中でも20万以下程度であれば良い。この上限を超えると、充填剤添加による流動性の低下に加えて樹脂の溶融粘度が高くなるため溶融成形が困難となる。また、成形物が得られた場合であっても、充填剤が樹脂中に均等に分散されず、界面剥離による孔形成が不均一となるため、好ましくない。この下限を下回ると、機械的強度が低下するため好ましくない。
本発明に係る高分子多孔質膜に含まれる無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、ゼオライト、ガラス粉等が挙げられ、中でも、リチウム二次電池で用いられるカーボネート系有機電解液を分解しないことから、特に硫酸バリウム、アルミナが好適である。
無機充填剤の粒径としては、数基準平均粒径の下限が、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、中でも0.2μm以上であり、上限は通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、中でも1μm以下であることが好ましい。無機充填剤の数基準平均粒径が10μmを超えると、延伸で形成される孔の径が大きくなりすぎ、電解液の浸透性が悪くなるため、好ましくない。また、孔径が大きくなることにより、延伸破断やフィルム強度の低下を招きやすい。また、数基準平均粒径が10μmを超えるとセパレータ表面の粒子個数が少なすぎて極板とセパレータとの間の隙間が充分に形成されないため、この面でも電解液の保持性が低下する可能性が高い。数基準平均粒径が0.01μmより小さいと充填剤が凝集し易くなるため、基材樹脂に均等に充填剤を分散させることが難しくなりやすい。また、仮に均等に分散できても延伸で形成される孔の径が小さすぎるため、前述の(1)抽出法及び(2)延伸法で得られるセパレータの孔径と大差がなくなり、本発明で意図する保液性が充分に高められず、好ましくない。また粒径が小さすぎるため極板とセパレータとの間の隙間が充分に形成されないため、この面でも電解液の保持性が低下する可能性が高い。
本発明においては、上記条件に適合する無機充填剤であれば1種を単独で用いることもでき、2種以上を混合して用いることもできる。
本発明に係る高分子多孔質膜中の上記無機充填剤の配合量は、下限が熱可塑性樹脂100重量部に対して通常40重量部以上、好ましくは50重量部以上、中でも60重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、上限が熱可塑性樹脂100重量部に対して通常300重量部以下、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。高分子多孔質膜中の熱可塑性樹脂100重量部に対する無機充填剤の配合量が40重量部未満であると連通孔を形成することが難しく、セパレータとしての機能を発現することが困難となる。また、300重量部を超えるとフィルム成形時の粘度が高くなり加工性に劣るばかりでなく、多孔化のための延伸時にフィルム破断を生じるため好ましくない。なお、本発明においては、多孔質膜の作製の際に配合した充填剤は、実質的に成形された多孔質膜中に残るため、上記の充填剤の配合量範囲は、多孔質膜中の充填剤含有量範囲となる。
無機充填剤としては、熱可塑性樹脂への分散性を高めるために表面処理剤により表面処理されているものを用いることもできる。この表面処理としては、熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂の場合、例えばステアリン酸等の脂肪酸又はその金属塩、或いはポリシロキサンやシランカップリング剤による処理が挙げられる。
本発明に係る高分子多孔質膜の成形時には、前記熱可塑性樹脂との相溶性を有する低分子量化合物を添加しても良い。この低分子量化合物は熱可塑性樹脂の分子間に入り込み、分子間の相互作用を低下させると共に結晶化を阻害し、その結果、シート成形時の樹脂組成物の延伸性を向上させる。また、低分子量化合物は熱可塑性樹脂と無機充填剤との界面接着力を適度に高めて、延伸による孔の粗大化を防止する作用を奏すると共に、熱可塑性樹脂と無機充填剤との界面接着力を高めることでフィルムからの無機充填剤の脱落を防止する作用を奏する。
この低分子量化合物としては分子量200〜3000のものが好適に用いられる。この低分子量化合物の分子量が3000を超えると低分子量化合物が熱可塑性樹脂の分子間に入りにくくなるため、延伸性の向上効果が不充分となる。また、分子量が200未満では、相溶性は上がるが、低分子量化合物が高分子多孔質膜表面に析出する、いわゆるブルーミングが起こりやすくなり、膜性状の悪化やブロッキングを起こしやすくなり好ましくない。
低分子量化合物としては、熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂の場合、脂肪族炭化水素又はグリセライドなどが好ましく使われる。特に、ポリオレフィン樹脂がポリエチレンの場合は、流動パラフィンや低融点ワックスが好ましく用いられる。
本発明に係る高分子多孔質膜の成膜材料としての樹脂組成物における、上記低分子量化合物の配合量は、下限が熱可塑性樹脂100重量部に対し通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、上限が熱可塑性樹脂100重量部に対し通常20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。低分子量化合物の配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、低分子量化合物を配合することによる上記効果が十分に得られず、また20重量部を超えると熱可塑性樹脂の分子間の相互作用を低下させ過ぎて、十分な強度が得られなくなる。また、シート成形時に発煙が生じたり、スクリュー部分での滑りが生じて、安定なシート成形が難しくなる。
本発明に係る高分子多孔質膜の成膜材料としての樹脂組成物には、さらに必要に応じて熱安定剤等の他の添加剤を添加することができる。上記添加剤としては、公知のものであれば特に制限されず用いられる。これらの添加剤の配合量は、樹脂組成物の全量に対して、通常0.05〜1重量%である。
本発明に係る高分子多孔質膜の多孔度は、高分子多孔質膜の空孔率の下限として通常30%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であり、上限として通常80%以下、好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下である。空孔率が30%未満であるとイオンの透過性が充分でなく、セパレータとしての機能を果たすことができず、好ましくない。また、空孔率が80%を超えると、フィルムの実強度が低くなるため、電池作成時の破断や活物質による突き抜けと短絡が生じ、好ましくない。
なお、高分子多孔質膜の空孔率とは、以下の計算式によって算出される値である。
空孔率Pv(%)=100×(1−w/〔ρ・S・t〕)
S:高分子多孔質膜の面積
t:高分子多孔質膜の厚み
w:高分子多孔質膜の重さ
ρ:高分子多孔質膜の真比重
なお、高分子多孔質膜を構成する成分i(樹脂や充填剤など)のブレンド重量をWi、比重をρiとすると、真比重ρは以下の式で求められる(式中でΣは全ての成分の和を表す。)。
真比重ρ=ΣWi/Σ(Wi/ρi)
本発明に係る高分子多孔質膜の厚みの上限値は、通常100μm以下、好ましくは40μm以下であり、下限値は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上である。厚みが5μm未満であると、実強度が低いため、電池の作成時の破断や活物質による突き抜けと短絡が生じ、好ましくない。また、厚みが100μmを超えるとセパレータの電気抵抗が高くなるため、電池の容量が低下して好ましくない。また、厚みが100μmを超えると電池内に入れられる活物質量が減るため、電池全体の容量も低下して好ましくない。セパレータの厚みを5〜100μmの範囲とすることにより、良好なイオン透過性を有するセパレータとすることができる。
本発明に係る高分子多孔質膜の平均孔径の下限は0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.2μm以上である。また、上限は10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下であり、中でも1μm以下が好ましい。平均孔径が0.05μmより小さいと多孔質膜の連通性を充分に確保することが難しくなり、10μmよりも大きいと実用的なフィルム強度を確保することが難しくなるため好ましくない。高分子多孔質膜の孔径は、後述の通り無機充填剤の特性(粒径等)や充填量を必要に応じて選択することで任意に変えることができる。なお、ここで高分子多孔質膜の平均孔径はASTM F316−86より定められる。
また、本発明に係る高分子多孔質膜は、ガーレー透気度の下限値が20秒/100cc以上、特に100秒/100cc以上で、上限値が700秒/100cc以下、特に300秒/100cc以下であることが好ましい。ガーレー透気度がこの下限値を下回る場合は、空孔率が高すぎるか厚みが薄すぎることが多く、前述の通りフィルムの実強度が低くなって電池作成時の破断や活物質による突き抜けと短絡が生じて好ましくない。この上限値を超える場合は、イオンの透過性が充分でなく、セパレータとしての機能を果たすことができず、好ましくない。なお、ガーレー透気度は、JIS P8117に準拠して測定され、1.22kPa圧で100ccの空気が膜を透過する秒数を示す。
さらに、本発明に係る高分子多孔質膜は、以下のようにして求められる平均保液量変化率が通常15%/分以下、好ましくは12%/分以下、より好ましくは10%/分以下である。平均保液量変化率が15%/分を超えると十分な保液性が得られず、特定のセパレータを用いたことによる電解液の保液性の確保によるサイクル特性の向上効果を十分に得ることができない。なお、この平均保液量変化率は低いほど保液性が高いことを示し好ましいが、その下限としては5%/分程度で十分である。
<セパレータの平均保液量変化率>
4cm×4cmの大きさに切り出したセパレータの重量を測定する。次にセパレータを電解液に浸漬して電解液が充分に浸透した後、引き上げて表面に付着した電解液を拭き取り重量を測定する。浸漬前の重量との差を浸透した電解液の重量とする。さらに30秒ごとに、2分間、重量の変化を測定して下表に示すように平均保液量変化率を算出する。
Figure 0004586375
<セパレータの製造方法>
リチウム二次電池で使用されるセパレータには、両極間のイオン伝導を妨げないこと、電解液を保持できること、電解液に対して耐性を有すること、などの要件を満たすことが求められ、従来においては、主としてポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる高分子多孔質膜が用いられ、これらの高分子多孔質膜を製造する方法としては、前述の如く、(1)抽出法、(2)延伸法、(3)界面剥離法がある。
しかしながら(1)の抽出法は、可塑剤として高分子材料と相溶性が良いものを選ぶ必要があるため抽出、或いはその後に延伸を行っても充分に大きな孔を形成することができず、このため得られるセパレータの保液性は充分ではない。また、相溶性の悪い可塑剤を添加して孔を大きくする方法も公知技術として知られているが、この方法では、成形が不安定となって性状のよいフィルムを得ることが難しい。なお、いずれの方法であっても、抽出工程において大量の廃液を処理する必要があり、環境・経済性の両面において問題がある。また抽出工程で発生する膜の収縮のために均等な膜を得ることが難しく、歩留まりなど生産性においても問題がある。(2)の延伸法は、結晶ドメイン間の非晶部分のみを選択的に延伸するため、高倍率の延伸が難しい。そのため、孔径を大きくすることが難しく、得られるセパレータの保液性が低くなると言う欠点がある。また延伸前の結晶相・非晶相の構造制御により孔径分布を制御するために、長時間の熱処理が必要であり、生産性の面で問題がある。
これに対して、(3)の界面剥離法は、(1),(2)の方法に比較して高分子材料と充填剤との界面を延伸操作により容易に剥離することができるため、熱処理などの前処理を必要とせずに孔径の大きな多孔質膜を容易に製造することができる。このように孔径の大きなセパレータは、前述のように電解液の保液性が良く、負極の膨張収縮によるサイクル特性低下の防止に有効である。また、廃液の発生などはなく、環境・経済性の両面において優れた方法である。
従って、本発明のセパレータは、好ましくは界面剥離法で製造され、より具体的には、次のような方法で製造される。
まず、無機充填剤と熱可塑性樹脂、及び必要に応じて添加される低分子量化合物や酸化防止剤等の添加剤の所定量を配合し、溶融混練することにより樹脂組成物を調製する。ここで、上記樹脂組成物はヘンシェルミキサー等によって予備混合を行い、しかる後に通常用いられる一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ミキシングロール又は二軸混練機等を用いて調製しても良く、或いは予備混練を省略して直接上記押出機等で直接樹脂組成物を調製しても良い。
次いで、上記樹脂組成物をシート成形する。シート成形は通常用いられるTダイによるTダイ法や円形ダイによるインフレーション法により行うことができる。
次いで、成形されたシートの延伸を行う。該延伸には、シートの引き取り方向(MD)に延伸する縦一軸延伸、テンター延伸機等により横方向(TD)に延伸する横一軸延伸、MDへの一軸延伸後引き続きテンター延伸機等によりTDに延伸する逐次二軸延伸法、又は縦方向及び横方向を同時に延伸する同時二軸延伸法がある。上記一軸延伸はロール延伸により行うことができる。上記延伸は、シートを構成する樹脂組成物が所定の延伸倍率に容易に延伸でき、かつ樹脂組成物が融解して孔を閉塞させ連通性を失わせることのない任意の温度で行うことができるが、好ましくは樹脂の融点−70℃〜樹脂の融点−5℃の温度範囲で延伸される。延伸倍率は必要とされる孔径や強度に応じて任意に設定されるが、好ましくは少なくとも一軸方向に1.2倍以上の延伸を行う。なお、この延伸倍率の上限については特に制限はないが、通常一軸方向に7倍以下である。この上限を超える延伸を行うと、得られる多孔質膜の空孔率が高くなり過ぎて強度が低下し、実用に耐えなくなるおそれがある。
[非水系電解液]
本発明の非水系電解液二次電池に使用される非水系電解液は、非水系溶媒とリチウム塩を含有するものである。
<非水系溶媒>
本発明の非水系電解液二次電池に使用される電解液の非水系溶媒としては、非水系電解液二次電池の溶媒として公知の任意のものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート等の環状カーボネート(好ましくは炭素数3〜5のアルキレンカーボネート);ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルカーボネート)等の鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル;酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
上記例示溶媒の中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合した混合非水系溶媒が、充放電特性、電池寿命等の電池性能全般を高める観点から好ましい。また、上記混合非水系溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをそれぞれ非水系溶媒全体の15体積%以上含み、且つ、それらの体積の合計が非水系溶媒全体の70体積%以上となるように混合することが好ましい。
上記の環状カーボネート及び鎖状カーボネートを混合した混合非水系溶媒に用いられる環状カーボネートとしては、アルキレン基の炭素数が2以上4以下のアルキレンカーボネートが好ましい。その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましい。
また、上記の環状カーボネート及び鎖状カーボネートを混合した混合非水系溶媒に用いられる鎖状カーボネートとしては、炭素数が1以上4以下のアルキル基を有するジアルキルカーボネートが好ましい。その具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートが好ましい。
これらの環状カーボネート及び鎖状カーボネートは各々独立に、1種のみを単独で使用しても良く、複数種を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。混合非水系溶媒の環状カーボネートの割合は15体積%以上、特に20〜50体積%で、鎖状カーボネートの割合は30体積%以上、特に40〜80体積%で、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの含有比率は、環状カーボネート:鎖状カーボネート=1:1〜4(体積比)であることが好ましい。
さらに、上記の混合非水系溶媒は、製造されるリチウム電池の電池性能を低下させない範囲であれば、環状カーボネート及び鎖状カーボネート以外の溶媒を含んでいても良い。混合非水系溶媒中における環状カーボネート及び鎖状カーボネート以外の溶媒の割合は、通常30体積%以下、好ましくは10体積%以下である。
<リチウム塩>
非水系電解液の溶質であるリチウム塩としては、任意のものを用いることができる。例えば、LiClO、LiPF、LiBF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩などが挙げられる。これらのうち、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO等の含フッ素リチウム塩、特にLiPF、LiBFが好ましい。なお、リチウム塩についても1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらのリチウム塩の非水系電解液中の濃度の下限値としては、通常0.5mol/l以上、中でも0.75mol/l以上、上限値としては、通常2mol/l以下、中でも1.5mol/l以下である。リチウム塩の濃度がこの上限値を超えると非水系電解液の粘度が高くなり、電気伝導率も低下する。また、この下限値を下回ると電気伝導率が低くなるので、上記濃度範囲内で非水系電解液を調製することが好ましい。
<その他の添加剤>
本発明に係る非水系電解液には、非水系溶媒、及びリチウム塩以外に、必要に応じて他の有用な成分、例えば従来公知の炭酸ビニレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸フェニルエチレン、コハク酸無水物等の負極被膜形成剤、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の正極保護剤、脱酸剤、脱水剤、過充電防止剤等の各種の添加剤を含有させても良い。
[正極]
正極としては、通常、正極活物質と結着剤を含有する活物質層を集電体上に形成させたものが用いられる。
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、その種類に制限はない。好ましい例としては、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiCoOなどのリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiOなどのリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnOなどのリチウム・マンガン複合酸化物等が挙げられる。これらのリチウム遷移金属複合酸化物は、主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置き換えると、安定化させることができるので好ましい。これらの正極活物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
正極活物質層中の結着剤の割合は、下限値が通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、上限値が通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。結着剤の割合が少ないと、活物質を十分に保持できないので、正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、逆に多すぎると電池容量や導電性を下げることになる。
正極活物質層は、通常、導電性を高めるため導電剤を含有する。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛の微粒子や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素微粒子等等の炭素質材料を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
正極活物質層中の導電剤の割合は、下限値が通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、上限値が通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。導電剤の割合が少ないと導電性が不十分になることがあり、逆に多すぎると電池容量が低下することがある。
正極活物質層には、その他、増粘剤等の通常の活物質層の添加剤を含有させることができる。
増粘剤は電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としては、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
正極の集電体には、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
正極は、前述の正極活物質と結着剤と導電剤、必要に応じて添加されるその他の添加剤とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布して乾燥することにより形成することができる。スラリー化のために用いる溶媒としては、通常、結着剤を溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が用いられるがこれらに限定されない。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで活物質をスラリー化することもできる。
このようにして形成される正極活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。なお、塗布・乾燥によって得られた活物質層は、活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化するのが好ましい。
[負極]
本発明に係る負極は、リチウムと合金形成可能な金属もしくは金属化合物を含有し、かつ、
i) リチウム合金化物の体積膨張率が、1.2以上6.0以下で、かつ
ii) 重量当たりの容量密度が、0.4Ah/g以上4.0Ah/g以下であるか、体積当たりの容量密度が、0.7Ah/cc以上2.3Ah/cc以下であるかのいずれか少なくとも一方を満たす
ものである。
上記i)の条件は、非水系電解液二次電池として典型的な、リチウム二次電池の充電時に起こる、金属又は金属化合物のリチウム吸蔵による合金化の際の膨張しやすさを示すものである。
また、上記ii)の条件は、リチウム合金化した際の、該金属又は該金属化合物の、重量当たり又は体積当たりの、理論容量密度が一定値以上のもの、つまり、リチウム吸蔵による負荷の大きさの最低水準を示す値である。
つまり、金属又は金属化合物が、上記i)及びii)を満たすということは、非水系電解液二次電池の負極として作用するに当たって、特に、充放電に伴う体積変化の継続的負荷が大きいことを表しており、このような特定の金属又は金属化合物を用いる場合に、特定のセパレータとの組合せが重要であることが本発明の特徴である。
以下に上記i),ii)の条件について、更に詳細に説明する。
i)の説明
体積膨張率は、金属或いは金属化合物Mへのリチウム吸蔵に伴う体積の変化率であり、次のようにして求める。
金属或いは金属化合物Mがリチウムを吸蔵して形成されるリチウム合金LiM(xはMとリチウムが合金化する際の組成比に応じて決まる係数である)の組成比が既知の場合、次式を用いて算出される。リチウム合金の組成比は、参考文献1“BINARY ALLOY PHASE DIAGRAMS (Thaddeus B. Massalski)”に掲載されている数値を用いることができる。
体積膨脹率=((WLi×x+W)/ρLiM)/(W/ρ
Li、Wはリチウム及び金属或いは金属化合物Mのモル重量であり、ρ、ρLiMは金属或いは金属化合物M及びリチウム合金化物LiMの密度である。
リチウム合金化物の密度は、参考文献1より得られる合金組成に対し、Li単体及び金属或いは金属化合物単体の密度を比例配分して求められる。
ii)の説明
ii)の(a)(重量当たりの容量密度)の説明
金属又は金属化合物Mのリチウム合金化物中のリチウム量から換算される理論容量の、該金属又は該金属化合物の重量当たりの比率である。この重量当たりの容量密度(Ah/g)はリチウム合金の組成比より得られる係数x及び金属或いは金属化合物Mのモル重量Wを用いて次式により算出される。リチウム合金の組成は参考文献1に掲載されている数値を用いることができる。また、Fはファラデー定数(=96485C/mol)である。
重量当たりの容量密度=(F×x)/W/3600
ii)の(b)(体積当たりの容量密度)の説明
金属又は金属化合物Mのリチウム合金化物中のリチウム量から換算される理論容量の、該金属及び該金属化合物のリチウム合金化物体積当たりの比率である。この体積当たりの容量密度(Ah/cc)は、リチウム合金の組成比より得られる係数x、リチウム合金化物の密度ρLiM、及び各物質のモル重量を用いて次式により算出される。リチウム合金の組成は参考文献1に掲載されている数値を用いることができる。リチウム合金化物の密度は、参考文献1より得られる合金組成に対し、Li単体及び金属或いは金属化合物単体の密度を比例配分して求められる。Fはファラデー定数(=96485C/mol)である。
体積当たりの容量密度=ρLiM(F×x)/(WLi×x+W)/3600
なお、リチウムと合金形成可能な金属の代表例であるAl、Si、Zn、Ga、Ge、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Pb、Biの各値を示すと次の表の通りである。
Figure 0004586375
本発明に係る負極の上記体積膨張率の下限は1.2以上、中でも2.0以上、特に3.0以上であり、上限は6.0以下である。体積膨張率がこの下限を下回ると、体積膨張の変化率が小さく、本発明の効果が得られにくい割に、高い放電容量が得られない。また、現在までに、リチウムと合金形成可能な金属もしくは金属化合物において体積膨張率が6.0を上回るものは知られていない。
本発明に係る負極の上記重量当たりの容量密度の下限は0.4Ah/g以上、中でも0.5Ah/g以上、特に1.0Ah/g以上で、上限は4.0Ah/g以下である。重量当たりの容量密度がこの下限を下回ると、充放電による負荷が小さく、本発明の効果が得られにくい割に、高い放電容量が得られない。また、現在までに、リチウムと合金形成可能な金属もしくは金属化合物において、重量当たりの容量密度が4.2Ah/gを上回るものは知られていない。
また、本発明に係る負極の上記体積当たりの容量密度の下限は0.7Ah/cc以上、中でも0.8Ah/cc以上、特に1.0Ah/cc以上で、上限は2.3Ah/cc以下である。体積当たりの容量密度がこの下限を下回ると、充放電による負荷が小さく、本発明の効果が得られにくい割に、高い放電容量が得られない。また、現在までに、リチウムと合金形成可能な金属もしくは金属化合物において体積当たりの容量密度が2.5Ah/ccを上回るものは知られていない。
本発明に係る負極は、リチウムと合金形成可能な金属及び金属化合物、好ましくは、Al、Si、Zn、Ga、Ge、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Pb、Bi、及びこれらの金属の化合物のうちの1種のみで構成されていても良く、これらの2種以上を組み合わせて構成されていても良い。
本発明に係る負極材としては、本発明の効果が損なわれない限り、このようなリチウムと合金形成可能な金属及び金属化合物以外の負極材と併用することもできる。この場合、併用し得る他の負極材としては、リチウムと合金形成可能な金属及び金属化合物以外の金属及び金属化合物、例えば、Cu、Ni等のリチウムと合金を形成しない金属或いはその化合物等や、炭素質物、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛質物、アセチレンブラック、ケッチャンブラック石油系ピッチの焼成物等の非晶質物、フラーレン、ナノチューブ等の炭素材、或いは黒鉛質と非晶質の混合物や複合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの他の負極材を併用する場合、その使用割合は、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物に対して、通常、95重量%以下程度である。
なお、リチウムと合金形成可能な金属化合物、或いは他の負極材の金属化合物としては、各金属の酸化物、窒化物、炭化物等を用いることができる。
本発明に係る負極の形態は問わないが、通常は次のものが挙げられる。
(A) リチウムと合金形成可能な金属、或いは場合によってこれとその他の金属や必要に応じて導電剤を合わせて含有する電極
(B) 集電体上にリチウムと合金形成可能な金属、或いは場合によってこれとその他の金属や必要に応じて導電剤を合わせて含有する薄層を有する薄膜電極
(C) 集電体上に、リチウムと合金形成可能な金属を含む粒子、或いは場合によってこれと炭素質物やその他の金属の粒子と、更に必要に応じて結着剤や導電剤とを含有する薄層を有する薄膜電極
負極の集電体には、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属箔を用いることができる。また必要に応じてこれらの集電体に表面処理を行うことも可能である。
負極の厚み、即ち、上記(A)〜(C)における電極又は薄膜電極の厚み(集電体の厚みを含まない)は、特に限定されるものではないが通常200μm以下が一般的である。特に100μm以下の薄膜において、負極の体積膨張の影響が大きく、本発明の効果が得られやすい。
なお、負極の厚みの下限は、高い放電容量を得るためには通常1μm程度であることが好ましい。
本発明に係る負極は、例えば次のようにして作製される。
上記(A)の形態の負極の作製:リチウムと合金形成可能な金属を含む粒子、或いは場合
によってこれと炭素質物やその他の金属の粒子を、必要に
応じて導電剤と共に焼結する。
上記(B)の形態の負極の作製:集電体上に、リチウムと合金形成可能な金属、或いは、
場合によってその他の金属を合わせて含有する場合はそれ
らを含む原料を気層中に放出し、集電体上に堆積し形成す
る。
上記(C)の形態の負極の作製:リチウムと合金形成可能な金属を含む粒子、或いは場合
によってこれと炭素質物やその他の金属の粒子を、必要に
応じて結着剤や導電剤と共に分散した分散液を、集電体上
に塗布、乾燥する。
ここで、該金属粒子、該炭素質物粒子、該その他金属の粒子の形状としては、通常、ワイヤー状、球状、鱗片状、不定形状の粒子が用いられる。
また、分散媒としては、通常、結着剤を溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が用いられるがこれらに限定されない。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで活物質をスラリー化することもできる。
また、結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、複数種を併用しても良い。
また、導電剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラックなどの非晶質炭素や黒鉛構造炭素などの炭素材、ニッケル、銅、銀、チタン、白金、アルミニウム、コバルト、鉄、クロムなどが用いられる。
[電池構成]
本発明のリチウム二次電池は、上述した正極と、負極と、非水系電解液と、セパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。さらに、必要に応じて外装ケース等の他の構成要素を用いることも可能である。
その電池形状は特に制限されず、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。一般的に採用されている形状の例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ、シート電極及びセパレータを積層したラミネートタイプなどが挙げられる。また、電池を組み立てる方法も特に制限されず、目的とする電池の形状に合わせて、通常用いられている各種方法の中から適宜選択することができる。
以上、本発明のリチウム二次電池の一般的な実施形態について説明したが、本発明のリチウム二次電池は上記実施形態に制限されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、各種の変形を加えて実施することが可能である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
<セパレータの製造>
高密度ポリエチレン〔三井化学社製「HI−ZEX7000FP」、重量平均分子量:20万、密度;0.956g/cm、メルトフローレート;0.04g/10min〕100重量部、軟質ポリプロピレン〔出光石油化学社製「PER R110E」、重量平均分子量:33万〕8.8重量部、硬化ひまし油〔豊国製油社製「HY−CASTOR
OIL」、分子量938〕8.8重量部、無機充填剤として硫酸バリウム〔数基準平均粒径0.17μm〕117.6重量部を配合して溶融混練し、得られた樹脂組成物を温度210℃でインフレーション成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均110μmであった。次に、得られた原反シートを90℃でシート長手方向(MD)に4倍、次いで120℃で幅方向(TD)に2.9倍の逐次延伸を行い、膜厚25μm、空孔率61%、平均孔径0.19μm、ガーレー透気度85秒/100ccの高分子多孔質膜を得た。この高分子多孔質膜をセパレータAとする。なお延伸の過程で、高分子多孔質膜からの無機充填剤の脱落は認められなかった。
このセパレータAについて、前述の測定方法で求めた平均保液量変化率は表3に示す通りであった。
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、精製したエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比3:7で混合し、混合溶媒を作製した。この混合溶媒に対し、十分に乾燥したLiPFを1.0mol/lの割合となるように溶解させ、非水系電解液とした。
<正極の作製>
正極活物質としてLiCoOを用い、LiCoO85重量部にカーボンブラック6重量部及びポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製商品名「KF−1000」)9重量部を加えて混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散し、スラリー状とした。これを、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布し、乾燥後、プレス機により正極活物質層の密度が3.0g/cmになるようにプレスして正極とした。
<負極の作製>
電解銅箔(厚み18μm、基板表面粗さRa=0.33μm)を用い、RFスパッタリング法により、この電解銅箔上にシリコン薄膜を形成し負極とした。RFスパッタリングの条件は、スパッタガス(Ar)流量100sccm、反応圧力40mTorrとし、シリコン薄膜は厚みが5μmとなるまで堆積させた。この負極の体積膨脹率、重量当たりの容量密度、体積当たりの容量密度は下記の通りであった。
体積膨脹率:4.1
重量当たりの容量密度:4.0Ah/g
体積当たりの容量密度:2.3Ah/cc
<電池の組立>
上記セパレータAと、上記非水系電解液、正極及び負極とを用いて2032型コインセルを作製した。即ち、正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて電解液を含浸させた正極を収容し、その上に電解液を含浸させた直径18.8mmのセパレータを介して直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて電解液を含浸させた負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封することによりコイン型電池を作製した。ここで電池部材への電解液の含浸は、各部材を電解液に2分間浸漬することより行った。
<電池の評価>
1)初期充放電
25℃において0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)に相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.2V−定電流定電圧充電(CCCV充電)(0.05Cカット)後、0.2Cに相当する定電流値で3V放電を行った。
2)サイクル試験
上記1)初期充放電を行なった電池に対して、充電上限電圧4.2Vまで2Cの定電流定電圧法で充電した後、放電終止電圧3.0Vまで2Cの定電流で放電する充放電サイクルを1サイクルとし、このサイクルを15サイクル繰り返した。サイクル試験は25℃において行っている。このサイクル試験の1サイクル目の放電容量に対する15サイクル目の放電容量の割合をサイクル維持率として表3に示した。
〔実施例2〕
高密度ポリエチレン〔三井化学社製「HI−ZEX7000FP」、重量平均分子量:20万、密度;0.956g/cm、メルトフローレート;0.04g/10min〕100重量部、軟質ポリプロピレン〔出光石油化学社製「PER R110E」、重量平均分子量:33万〕8.8重量部、硬化ひまし油〔豊国製油社製「HY−CASTOR OIL」、分子量938〕8.8重量部、無機充填剤として硫酸バリウム〔数基準平均粒径0.18μm〕176.5重量部を配合して溶融混練し、得られた樹脂組成物を温度210℃でインフレーション成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均105μmであった。次に、得られた原反シートを90℃でシート長手方向(MD)に4倍、次いで120℃で幅方向(TD)に2.9倍の逐次延伸を行い、膜厚26μm、空孔率64%、平均孔径(ASTM F316−86により定められる平均孔径)0.27μm、ガーレー透気度(JIS P8117により定められるガーレー透気度)44秒/100ccの高分子多孔質膜を得た。この高分子多孔質膜をセパレータBとする。なお延伸の過程で、高分子多孔質膜からの無機充填剤の脱落は認められなかった。
このセパレータBについて、前述の測定方法で求めた平均保液量変化率は表3に示す通りであった。
セパレータBを用いる以外は実施例1と同様の手順でコイン型電池を作製し、同様にその評価を行い、結果を表3に示した。
〔比較例1〕
粘度平均分子量100万のポリエチレン25重量部とパラフィンワックス(平均分子量389)75重量部の混合物を、40mmφ二軸押出機を用いて押出温度170℃、で押出しインフレーション法で原反フィルムを作成した。得られた原反フィルムを60℃のイソプロパノール中に浸漬してパラフィンワックスを抽出除去した。得られたフィルムをロール延伸機を用いて90℃の温度で2.0倍に縦延伸後、テンター延伸機にて100℃の温度で6.0倍に延伸を行い、膜厚22μm、空孔率50%、平均孔径0.04μm、ガーレー透気度440秒/100ccの多孔質膜を得た。この高分子多孔質膜をセパレータCとする。
このセパレータCについて、前述の測定方法で求めた平均保液量変化率は表3に示す通りであった。
セパレータCを用いる以外は実施例1と同様の手順でコイン型電池を作製し、同様にその評価を行い、結果を表3に示した。
なお、比較例1のセパレータCは、充填剤の有無の効果を明確にするために、実施例1及び2のセパレータA,Bに対して、面積延伸倍率を同程度(約12倍)としてある。
Figure 0004586375
上記表3から明らかなように、熱可塑性樹脂中に無機充填剤を含有するセパレータを備えた実施例1、2のリチウム二次電池は、抽出法によって得られた無機充填剤を含有しない孔径の小さなセパレータを使用した比較例1よりも良好なサイクル特性を示した。
前述の如く、比較例1で用いた抽出法によるセパレータCは、実施例1,2で用いた界面剥離法により製造したセパレータA,Bと、同等の厚みの原反シートを同等の面積延伸倍率(約12倍)で延伸して得られたものであるが、その平均孔径が大きく異なり、セパレータA,Bでは平均孔径0.19μm、0.27μmであるのに対して、セパレータCは0.04μmである。また、セパレータA,Bは平均保液量変化率がそれぞれ11.3%/分、9.2%/分と、電解液の保液性に優れるのに対して、セパレータCは平均保液量変化率が17.2%/分と保液性に劣る。このように平均孔径が大きく異なり、また保液性においても全く異なることによって、孔径が大きく、保液性も良好なセパレータA,Bを用いた実施例1,2では、浸液後の毛細管流動による液移動を抑制し、また充填剤による化学的親和性効果等により保液性が向上し、サイクル時の負極の膨脹収縮に伴う電解液の枯渇、偏在等が抑制され、優れたサイクル特性を得ることができる。これに対して、孔径が小さく、保液性も劣るセパレータCを用いた比較例1では、このような効果は得られず、サイクル特性が低下する。
なお、抽出法による成膜においては、延伸倍率を上げても厚密化(延伸による厚み方向の収縮)か生じるために、得られる多孔質膜の孔径はそれほどは大きくならず、却って孔径が小さくなることもあるため、保液性向上に有効なセパレータを実現することは困難である。
このようなサイクル特性の向上効果は、シリコンと同様に高い体積膨脹率を示し、かつ、高い重量当たりもしくは体積当たりの容量密度を有するSn,Al,Ag、Pb等についても、同様に期待されるものである。
本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の小型機器、及び、電気自動車、ハイブリッド自動車等の大型機器などを挙げることができる。
特に、本発明のリチウム二次電池は、高容量を達成しつつ、優れたサイクル特性を有することから、各種情報通信端末や移動体など、高容量が要求され、かつ繰り返し使用される用途において、とりわけ優れた効果が得られる。

Claims (10)

  1. リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極及び正極と、セパレータと、非水系溶媒及びリチウム塩を含有する非水系電解液とを備えてなる非水系電解液二次電池において、
    該セパレータが、無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂よりなる多孔質膜を有し、
    該負極が、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物を含有し、
    i) 該金属又は該金属化合物のリチウム合金化物の、該金属又は該金属化合物に対する体積膨脹率が、1.2以上6.0以下であり、
    かつ
    ii) 下記条件(a)及び/又は条件(b)を満たし、
    (a) 該金属又は該金属化合物のリチウム合金化物中のリチウム量から換算される理論容量の、該金属又は該金属化合物の重量当たりの比率が、0.4Ah/g以上4.0Ah/g以下
    (b) 該金属又は該金属化合物のリチウム合金化物中のリチウム量から換算される理論容量の、該金属又は該金属化合物の体積当たりの比率が、0.7Ah/cc以上2.3Ah/cc以下
    該セパレータは2軸延伸法により得られ、該セパレータの平均保液量変化率が15%/分以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  2. 請求項1に記載の非水系電解液二次電池において、該リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物が、Al、Si、Zn、Ga、Ge、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Pb、及びBiよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属又は当該金属の化合物であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  3. 請求項1又は2に記載の非水系電解液二次電池において、該負極が、厚み100μm以下の薄膜であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該負極が、リチウムと合金形成可能な金属を含む原料を気相中に放出し、集電体上に堆積させて形成した薄膜電極であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該負極が、集電体上に、リチウムと合金形成可能な金属を含む粒子と結着剤とを含有する薄層を有する薄膜電極であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該負極が、リチウムと合金形成可能な金属又は金属化合物と、該金属以外の金属及び炭素質物の少なくとも1種との複合材料を含むことを特徴とする非水系電解液二次電池。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該セパレータは、厚みが5μm以上100μm以下、空孔率が30%以上80%以下、ASTM F316−86により定められる平均孔径が0.05μm以上10μm以下、JIS P8117により定められるガーレー透気度が20秒/100cc以上700秒/100cc以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該セパレータの無機充填剤の配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100重量部以上であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該リチウム塩が含フッ素リチウム塩であり、該非水系溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含有することを特徴とする非水系電解液二次電池。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池において、該正極が、リチウム遷移金属複合酸化物を活物質とすることを特徴とする非水系電解液二次電池。
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