JP2005034187A - 揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】常温での蒸気圧は前記揮散性薬剤Aよりも前記揮散性薬剤Bのほうが低く、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している揮散性薬剤Aが前記湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放され、揮散性薬剤Aが一定量以下になった時、揮散性薬剤Bが外部へと徐放され、利用者が揮散性薬剤Bの臭気を感じることによって揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを検知できる揮散性薬剤徐放部材。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、揮散性薬剤を外部の湿度環境変化によって徐放させる揮散性薬剤徐放部材に関するものであり、季節の変動あるいはその場の雰囲気湿度環境が変化して、カビ、菌が繁殖することを防止したいような分野には広く適用可能である。たとえば浴室、更衣室、下駄箱、フードストッカー、物置、地下収納庫、またビル空調用の加湿用通路、換気用通路等にも適用可能である。特に空気調和機の室内機を冷房運転した後、常に清潔な状態に保つのに有効である。
【0002】
【従来の技術】
充填された揮散性薬剤を長期間にわたって徐放させるための技術は種々雑多と提案されてきている。一般的には多孔性の材料物質中に含浸させて毛細管現象によって徐々に揮散させる方法である。その多孔性物質とはゼオライト、シルカゲルのような無機化合物であったり、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロースの発泡体あるいは繊維束であったりしていた。さらにシクロデキストリンと呼ばれる有機物の小さな孔に包接させて徐放させるような方法もある(例えば特許文献1、2参照)。またマイクロカプセル化して徐放性を具現化する方法もある(例えば特許文献3、4参照)。
【0003】
これら揮散性薬剤に対して薬剤の揮散終了をインジケートする方法としては一般的に薬剤自体の重量変化量を検知するのではなく、リファレンスとして時間経過で色変化するものを追加添付してそれを利用者が識別することで薬剤の終了と告知している。この方法はよくピレスロイド系の防虫忌避剤の分野で採用されている。
【0004】
しかしながら、揮散性薬剤の重量変化量を管理しているわけではないので、使用環境によってはまだ薬剤が残存しているのに揮散性薬剤の終了をインジケートする場合も発生するという課題を有していた。
【0005】
これら従来の方式は揮散性薬剤の残量そのものを管理して薬剤の終了をインジケートしていなかったので、本発明者らは使用環境によって薬剤の残量が変化した場合にも揮散性薬剤の残量を二次的に管理することで正確に薬剤の終了を告知できる方法を提案してきた。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−176733号公報
【特許文献2】
特開平6−40890号公報
【特許文献3】
特開平6−9377号公報
【特許文献4】
特開平6−65064号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、揮散性薬剤が揮散性薬剤徐放部材から放出され、薬剤の残量がどのくらいであるのか、利用者は独自に判断することができなかった。そのため揮散性薬剤徐放部材を非透過性フィルムで包装された状態から開封して使用を開始した時の日付を記録しておき、所定の期間が過ぎたら交換するという方法しかなかった。そのため利用環境の違いによって仮に揮散性薬剤徐放部材内部に揮散性薬剤がまだ十分に残っていても揮散性薬剤徐放部材としての品質を保証するためには新品のものと交換してもらわなければならない。そのため揮散性薬剤徐放部材内部に揮散性薬剤がまだ十分に残っていることを確認できれば、利用者の判断で使用期間を延長して使用することができていたにもかかわらず、交換するという無駄を生じていた。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に対して、利用者が簡単に独自の判断で揮散性薬剤徐放部材内部の揮散性薬剤残量を確認できる揮散性薬剤徐放部材とそれを利用した空気調和機を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の揮散性薬剤徐放部材は、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、常温での蒸気圧は前記揮散性薬剤Aよりも前記揮散性薬剤Bのほうが低く、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜の間に揮散した前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bの蒸気が滞留するための空間部を設け、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとが揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している揮散性薬剤Aが前記湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放され、揮散性薬剤Aが一定量以下になった時、揮散性薬剤Bが外部へと徐放され、利用者が揮散性薬剤Bの臭気を感じることによって揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを検知できることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
第1の発明の実施の形態における揮散性薬剤徐放部材は、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、常温での蒸気圧は前記揮散性薬剤Aよりも前記揮散性薬剤Bのほうが低く、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜の間に揮散した前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bの蒸気が滞留するための空間部を設け、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとが揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している揮散性薬剤Aが前記湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放され、揮散性薬剤Aが一定量以下になった時、揮散性薬剤Bが外部へと徐放され、利用者が揮散性薬剤Bの臭気を感じることによって揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを検知できる。前記構成により、常温での蒸気圧は揮散性薬剤Aよりも揮散性薬剤Bのほうが低いので、揮散性薬剤Aが揮散性薬剤Bよりも揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放される。しかし揮散性薬剤Aが一定量以下になると蒸気圧が低下してくるため、今度は揮散性薬剤Bだけが外部へと徐放され始める。その結果利用者は今まで感じなかった揮散性薬剤Bの臭気を感ずることによって、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを容易に識別判断できる。
【0011】
第2の発明の実施の形態における空気調和機は、少なくとも熱交換器と、前記熱交換器により温度調節された風を室内へ吹出すための室内ファンとを有する室内機において、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、常温での蒸気圧は前記揮散性薬剤Aよりも前記揮散性薬剤Bのほうが低く、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜の間に揮散した前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bの蒸気が滞留するための空間部を設け、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとが揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している揮散性薬剤Aが前記湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放され、揮散性薬剤Aが一定量以下になった時、揮散性薬剤Bが外部へと徐放され、利用者が揮散性薬剤Bの臭気を感じることによって揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを検知できる揮散性薬剤徐放部材を、前記熱交換器近傍の上流側に配置した。上記構成により、冷房運転終了後には揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜が室内機内部の高湿度雰囲気を感じて内部からの薬剤放出量が多くなる。その時常温での蒸気圧は揮散性薬剤Aよりも揮散性薬剤Bのほうが低いので、揮散性薬剤Aが揮散性薬剤Bよりも湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放される。しかし揮散性薬剤Aが一定量以下になると蒸気圧が低下してくるため、今度は揮散性薬剤Bだけが外部へと徐放され始める。その結果利用者は今まで感じなかった揮散性薬剤Bの臭気を感ずることによって、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを容易に識別判断できる。
【0012】
第3の発明の実施の形態における揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機は、揮散性薬剤Aの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以下であり、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になった時放出される、揮散性薬剤Bの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以上である。これによって揮散性薬剤Aの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以下であるため、利用者は薬剤Aの臭気による不快感はなく、薬剤Aによる効用を受けることができる。また、単独では揮散性薬剤Bの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以上であるため、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になった時には揮散性薬剤Bの揮散性薬剤徐放部材からの放出によって利用者は揮散性薬剤Bの臭気を感じて揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを容易に判断できる。
【0013】
第4の発明の実施の形態における揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機は、揮散量制御膜内部に配置された揮散性薬剤Aと揮散量制御膜内部に配置された揮散性薬剤Bとが個別に湿度感受性膜内部に配置されている。これによって揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを個別に揮散量制御膜内に分包するので揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとが相溶性を有するもの同士であっても蒸気圧特性に影響を及ぼさず、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとが個別の蒸気圧特性で空間部に滞留した状態とすることができる。その結果湿度感受性膜から揮散性薬剤Aが優先的に徐放された後にまだ残存している揮散性薬剤Bが徐放することによって利用者は揮散性薬剤Bの臭気を感じとることができる。
【0014】
第5の発明の実施の形態における揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機は、揮散性薬剤Aがアリルイソチオシアネートであり、揮散性薬剤Bがl−メントールまたはd−リモネンである。最初は蒸気圧が高いアリルイソチオシアネートが優先的に放出されるが、アリルイソチオシアネートの残量が一定量以下になるとl−メントールまたはd−リモネンだけが放出されることによって、l−メントールまたはd−リモネンの臭気を利用者が感じ取ってアリルイソチオシアネートの残量が一定量以下になったことを識別判断できる。
【0015】
第6の発明の実施の形態における揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機は、薬剤の揮散量を制御する膜がポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはそれらの複合ラミネートフィルムである。液体の薬剤の揮散量を制御する一次制御膜としてポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはそれらの複合ラミネートフィルムを使用することで十分な徐放効果を得ることができる。
【0016】
第7の発明の実施の形態における揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機は、湿度感受性膜が表面にビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造である。ビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造である湿度感受性膜を使用することで湿度に対して鋭敏な湿度感受性の膜を提供できる。
【0017】
第8の発明の実施の形態における空気調和機は、揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜面を熱交換器の上流側面と向い合わせとなるように配置した。揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜面を熱交換器側に向けることによって、熱交換器側からの湿度上昇を迅速に感じて、薬剤の徐放応答性を向上させることができる。
【0018】
【実施例】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施例1)
図1は本実施例を示す揮散性薬剤徐放部材の正面外観図であり、図2は揮散性薬剤徐放部材の側面断面構成図である。
【0020】
1はキャストポリプロピレン(CPP) 370μm/エチレンビニルアルコール共重合ポリマー(EVOH) 60μm/CPP 370μmの共押し出しシート、厚み0.8mmを真空成形して作製した容器であり、内寸法は50×170×10mmである。2は揮散性薬剤Aとなるアリルイソチオシアネート15gとセルロースエチルエーテルを重量比8:1で混合することによって粘度15000cps程度に増粘化させた後、炭酸カルシウム粉末の槽に移してダンゴ状態とした。3はアリルイソチオシアネートの揮散制御膜となるラミネートフィルムのピロー包装体であり、一次制御膜となり、ダンゴ状態となったアリルイソチオシアネート2を延伸ポリプロピレン(OPP) 30μmとポリエチレン(LDPE) 70μmとのラミネートフィルムに対してLDPE側をヒートシールにてピロー包装化したものである。4は揮散性薬剤Bとなるd−リモネン10gとセルロースエチルエーテルを重量比4:1で混合することによって粘度80000cps程度に増粘化させた後、二酸化チタン粉末の槽に移してダンゴ状態とした。5はd−リモネンの揮散制御膜となるラミネートフィルムのピロー包装体であり、一次制御膜となり、ダンゴ状態となったd−リモネン4を延伸ポリプロピレン(OPP) 30μmとポリエチレン(LDPE) 70μmとのラミネートフィルムに対してLDPE側をヒートシールにてピロー包装化したものである。6はビスコース加工紙を表面上に配設した湿度感受性膜であり、二次制御膜となる。湿度感受性膜6はCPPフィルム 30μm/LDPEフィルム 15μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース膜を7g/m2の塗布量で形成させたものを使用した。湿度感受性膜6は外周部、5mm巾で容器1にPP側をヒートシールで溶着接合されている。7はピロー包装体3とピロー包装体5と湿度感受性膜6とで形成される空間部であり、その空間内容積は35mlである。ラミネートフィルムのピロー包装体3とピロー包装体5は容器1の内面底部にLDPEをホットメルト(図示せず)することによって位置固定を行った。
【0021】
揮散したアリルイソチオシアネート蒸気とd−リモネン蒸気はラミネートフィルム3とラミネートフィルム5で揮散量を抑制されながら、空間部7へと至り、二次制御膜となる湿度感受性膜6に対する薬剤透過量はラミネートフィルムよりも小さいのである程度高濃度の薬剤が滞留する状態となる。この時アリルイソチオシアネートとd−リモネンを比較した場合、たとえば25℃においてアリルイソチオシアネートの蒸気圧は約5mmHgであり、d−リモネンの蒸気圧は約2mmHgであるため、空間部7ではアリルイソチオシアネートが優先的に揮散滞留することになる。湿度感受性膜6によって低湿度の場合にはアリルイソチオシアネート蒸気およびd−リモネン蒸気は、分圧の和が飽和蒸気圧となる濃度に近い状態のままで空間部7にずっと維持される。しかし湿度が高くなるとアリルイソチオシアネート蒸気およびd−リモネン蒸気が湿度感受性膜6を通過して外部へと放出されやすくなる。湿度感受性膜6は湿度変化によって膜組織が膨潤し、緩んだ構造となり、アリルイソチオシアネート分子およびd−リモネン分子が透過して外部へと放出されやすくなる。この放出量分を補充するためにアリルイソチオシアネート蒸気およびd−リモネン蒸気がさらにラミネートフィルム3と5を通過して空間部7へと揮散する。このような構成の揮散性薬剤徐放部材によって、30℃、相対湿度95%条件にて湿度感受性膜からアリルイソチオシアネートを100mg/日レベルで継続して放出させ、気相防かび効果を提供することが可能となった。また揮散性薬剤徐放部材からの薬剤放出特性はアリルイソチオシアネートの残量が初期に対して10wt%以下になるまでほとんど変化することがなかった。
【0022】
図3に実施例1で得られた揮散性薬剤徐放部材のアリルイソチオシアネートおよびd−リモネンの放出特性を示した。アリルイソチオシアネートの残量が低減してき、放出量が低下してくると空間部でのアリルイソチオシアネート分圧が減少するのでd−リモネンの揮散、放出が強調されるようになるので利用者はd−リモネンの臭気を感じて、結果としてアリルイソチオシアネートの残量が少なくなってきたことを認識可能となる。
【0023】
次に空気調和機の室内機に本実施例による揮散性薬剤徐放部材を使用した場合について説明する。
【0024】
図4は、本実施例を示す空気調和機の室内機断面構成図である。吸い込みグリル8、9を通じて室内空気を吸い込み、吸い込んだ空気は熱交換器10、11によって冷却、除湿された後、クロスフローファン12によって吸い込み送風されながら、最終吹出し口13から室内空間に冷風を提供する。吹出し口13には上下偏向羽根14が配設され、室内空間への吹出し方向をコントロールしている。この時、熱交換器10、11によって除湿された結露水は熱交換器アルミニウムフィンをつたって、ドレンパン部15、16へと至る。ドレンパン部15は室内機台枠17に一体物として構成され、ドレンパン部16は吹出しグリル18に一体物として構成される。ドレンパン部15に溜まった結露水は台枠17を介してドレンパン部16側に流れて水受けされ、最終的にはドレン口(図示せず)を経由して外部へと排出される。熱交換器10、11のアルミニウムフィンには熱交換性能の高効率化を図るため、縦スリットが設けられた構造を有している。そのために結露した水はスリット部で表面張力によって水膜を形成して、ドレンパン部15、16へとすぐには滴下し難い構造のため、アルミニウムフィンが乾くスピードが遅くなってしまう。たとえば25℃、相対湿度90%の環境雰囲気では、熱交換器アルミニウムフィンが乾くのに数十時間を要してしまい、なかなか乾燥しない。この時室内機空間、特に熱交換器10、11で構成される送風回路内部は相対湿度95%以上の雰囲気に曝され、カビが非常に繁殖しやすい環境条件となっている。19は揮散性薬剤徐放部材であり、熱交換器11に近接した下部上流側に配置され、揮散性薬剤徐放部材19の湿度感受性膜6側が熱交換器に向かい合う構成とした。このことによって冷房、除湿運転停止後、上下偏向羽根14が閉状態になるとともに、高湿度状態となった空気が室内機全体に充満して湿度感受性膜6に達すると、揮散性薬剤徐放部材19の内部からアリルイソチオシアネート1が熱交換器11側へ拡散し、アルミニウムフィン間を通過しながら、上下偏向羽根14が閉状態となっているので熱交換器10、11で構成された空間部等へと徐々に拡散、堆積して充満する。この結果室内機内部は熱交換器10、11で構成された空間底部で3〜5ppm程度、上部低濃度の空間でも1ppm以上のアリルイソチオシアネート蒸気を滞留させることが可能となる。揮散性薬剤徐放部材19の空間部7に滞留している高濃度のアリルイソチオシアネート蒸気が湿度感受性膜7を透過して500〜5000倍の空間へと拡散していく構成である。アリルイソチオシアネートの閾値は10ppm程度であるので匂いを感じないレベルの滞留濃度である。これによって室内空間に存在するCladosporium、Alternaria、Aspergillus、Penicillium、Rhizopusと言った一般的なカビには十分な防カビ効果を得ることができた。防カビの効果を得るためには室内機へのアリルイソチオシアネート蒸気を0.5ppm以上にすることが望ましく、人間の閾値である10ppm以下にすることが実用上望ましい。
【0025】
本実施例で使用したセルロースエチルエーテルは精製パルプを原料として苛性ソーダにてアルカリセルロース化された後、エチルクロライドを反応させてグルコース内の水酸基をエトキシル基に置換したものであり、化学反応式を(化1)に示した。外観は白色の粉末であり、ほとんど無臭に近い特性を有している。セルロースエチルエーテルで薬剤を固形化または増粘化させるためには重量平均分子量に依存し、具体的には10万以上のものが好ましかった。またアリルイソチオシアネートあるいはd−リモネンとセルロースエチルエーテルとの重量比を2:1にすることで固形化でき、重量比が大きくなるにしたがって徐々に低粘度化し、10:1よりも小さいと揮散性薬剤の原液に対してそれほど増粘しているとは言えない。したがって液体の揮散性薬剤を固形化または増粘化させるためにはセルロースエチルエーテルとの重量比は2:1〜10:1が好ましいと言える。
【0026】
【化1】
【0027】
(実施例2)
図5に本実施例を示す揮散性薬剤徐放部材の正面外観図であり、図6は揮散性薬剤徐放部材a−a´線での側面断面構成図である。20は揮散性薬剤Aとなるアリルイソチオシアネートを吸収して膨潤したポリウレタン連続多孔質体である。具体的には35×35×10のポリウレタン連続多孔質体、かさ密度0.35g/ml、平均気孔径30μm、気孔率70%にアリルイソチオシアネート20gを吸収させて約50×50×14に膨潤した。21はポリウレタン連続多孔質体20の外装となるラミネートシートのピロー包装体であり、ポリプロピレン 30μmとポリエチレン 70μmとのラミネートシートに対してポリエチレン側をヒートシールにてピロー包装化したものであり、一次制御膜となる。22は揮散性薬剤Bとなるl−メントールの結晶粒であり、23は外装となるラミネートシートのピロー包装体であり、ポリプロピレン 30μmとポリエチレン 70μmとのラミネートシートに対してポリエチレン側をヒートシールにてピロー包装化したものであり、一次制御膜となる。24はそれを充填するための半透明なポリプロピレン、厚み2mmからなる容器であり、射出成形で加工した。容器の内寸法は55×55×35mmである。本体容器24内部に下側がl−メントールのピロー包装体23、上側がアリルイソチオシアネートのピロー包装体21となるように配置されている。25は本体容器24に対する蓋であり、これも半透明なポリプロピレン、厚み2mmからなる。蓋25の中央部に大きな窓を有し、長手方向の渡しとなるように2ヶ所にリブ26が形成され、蓋25の表面側中央部には30×30mmの湿度感受性膜27が配置され、リブ26によってピロー包装体21と23の容器内部での位置固定と湿度感受性膜27に対する補強の役目を果たしている。湿度感受性膜27はビスコース加工紙を延伸ポリプロピレン 30μm/ポリエチレン 40μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース膜を7g/m2の塗布量で形成させたラミネート構造のものを使用し、湿度感受性膜27の外周部は蓋25にポリプロピレン側をヒートシールで溶着接合されている。ヒートシール巾は3mmである。本体容器24と蓋25は超音波接合によって接合されている。28はピロー包装体21と23と本体容器24と蓋25とで形成される空間部であり、その空間容積は約15mlである。
【0028】
ポリウレタン連続多孔質体20から揮散したアリルイソチオシアネートはピロー包装体21で揮散量を抑制されながら、空間部28で滞留しながら、湿度感受性膜27によって低湿度の場合にはアリルイソチオシアネートの外部への蒸気放出がある程度抑制されるが、湿度が高くなるとアリルイソチオシアネート蒸気が湿度感受性膜27を通過して外部へと放出されやすくなる。揮散性薬剤徐放部材の内部にアリルイソチオシアネートが十分残存する間は蒸気圧の低いl−メントールの徐放量が抑制されるが、アリルイソチオシアネートの残量が一定以下になると空間部でのアリルイソチオシアネート分圧が減少するのでl−メントールの揮散量も増大してき、利用者はl−メントールの臭気を感じとることによってアリルイソチオシアネートの残量が少なくなったことを識別、判断できた。図7に実施例2で得られた揮散性薬剤徐放部材のアリルイソチオシアネートおよびl−メントールの放出特性を示した。
【0029】
本実施例で得られた揮散性薬剤徐放部材は内容積150リットルのシューズボックスに適用して革靴等にかびを発生させることなく、十分な機能を得ることができた。
【0030】
実施例では、薬剤を充填する容器として多層ラミネートシートあるいは半透明なポリプロピレン樹脂を使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。この他に充填する薬剤との耐薬品性を鑑みて問題のない材料を選択すればよい。この他、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、メチルペンテン樹脂等が使用できる。
【0031】
実施例では、液体の揮散性薬剤をセルロースエチルエーテルで増粘化させてピロー包装体に収納したり、ポリウレタン連続多孔質体に吸収させてピロー包装体に収納したりして使用したが、液体の揮散性薬剤を直接ピロー包装体に収納のは難しいので、ある程度ハンドリング性を良くしてピロー包装体に収納して供することが好ましい。液体の揮散性薬剤を増粘化させるものとして(化2)に示すようなポリビニルブチラールを使用することもできる。l−メントールのように常温で固体結晶のものはそのまま一次制御膜内にピロー包装化すればよい。
【0032】
【化2】
【0033】
実施例では、薬剤の揮散量を制御する一次制御膜としてポリプロピレンとポリエチエンの複合ラミネートフィルムを使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。その他にポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルムを単独もしくは複合してラミネート構造のフィルムとして使用することもできる。また一次制御膜は内部に充填する揮散性薬剤の透過量を考慮しながら、用途に合わせて選択することが好ましい。
【0034】
実施例では、湿度感受性膜として表面にビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造を使用したが、ビスコース加工紙は低湿度条件では非常にリジッドな膜構造となっているのに対して、多湿条件下でビスコースが膨潤して緩んだ構造と変化するため、内部から揮散性薬剤が透過しやすくなる。したがって湿度感受性膜として優れた特性を有していた。
【0035】
実施例では、揮散性薬剤Aとしてアリルイソチオシアネートを使用し、揮散性薬剤Bとしてl−メントールまたはd−リモネンを使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。常温での蒸気圧が揮散性薬剤Aよりも揮散性薬剤Bのほうが低い構成であればよく、また揮散性薬剤Bだけの徐放特性によって利用者が揮散性薬剤Bを認識できることが好ましい。揮散性薬剤徐放部材の空間部で揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bを滞留させ、必要に応じて揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bが徐放されるが、先に揮散性薬剤Aがなくなってしまうためにその後揮散性薬剤Bの揮散量が増大して利用者が揮散性薬剤Bを認識できるようになる。アリルイソチオシアネートは低濃度の揮散量にて抗菌、防カビ効果が得られるような薬剤であり、応用範囲が広いのでアリルイソチオシアネートの残量インジケート機能として本発明の揮散性薬剤徐放部材構成を有効に活用可能であった。
【0036】
実施例では、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bは別々に分包する形態としたが、揮散性薬剤Aの残存量低下から揮散性薬剤Bの揮散量増大へとスムーズに移行させるためには揮散性薬剤同士が共沸混合の影響を受けないように揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bは個別にピロー包装化とすることが好ましい。
【0037】
実施例では、一般的なセパレート型空気調和機の室内機への適用、シューズボックスへの適用について説明したが、本発明による揮散性薬剤徐放部材の用途はこれに限られるものではない。季節の変動あるいはその場の雰囲気湿度環境が変化して、カビ、菌が繁殖することを防止したいような分野には広く利用できる。たとえば浴室、更衣室、フードストッカー、物置、地下収納庫等に使用できる。またビル空調用の加湿用通路、換気用通路等にも応用可能である。
【0038】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、常温での蒸気圧は揮散性薬剤Aよりも揮散性薬剤Bのほうが低いので、揮散性薬剤Aが揮散性薬剤Bよりも揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放される。しかし揮散性薬剤Aが一定量以下になると蒸気圧が低下してくるため、今度は揮散性薬剤Bが外部へと徐放され始める。その結果利用者は今まで感じなかった揮散性薬剤Bの臭気を感ずることによって、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを容易に判断できた。揮散性薬剤Aの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以下であるため、利用者は薬剤Aの臭気による不快感なく、薬剤Aによる効用を受けることができる。また、単独では揮散性薬剤Bの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以上であるため、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になった時には揮散性薬剤Bの揮散性薬剤徐放部材からの放出によって利用者は揮散性薬剤Bの臭気を感じて揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを容易に判断できた。揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを個別に揮散量制御膜内に分包することで揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとが相溶性を有するもの同士であっても蒸気圧特性に影響を及ぼさず、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとが個別の蒸気圧特性で揮散することができた。揮散性薬剤Aがアリルイソチオシアネートであり、揮散性薬剤Bがl−メントールまたはd−リモネンであることによって最初はアリルイソチオシアネートが優先的に放出され、アリルイソチオシアネートの残量が一定量以下になるとl−メントールまたはd−リモネンが放出されることによってl−メントールまたはd−リモネンの臭気を利用者が感じてアリルイソチオシアネートの残量が一定量以下になったことを判断できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の揮散性薬剤徐放部材の正面外観図
【図2】実施例1の揮散性薬剤徐放部材の側面断面構成図
【図3】実施例1で得られた揮散性薬剤徐放部材のアリルイソチオシアネートとd−リモネンの放出特性グラフ
【図4】実施例1の空気調和機の室内機断面構成図
【図5】実施例2の揮散性薬剤徐放部材の正面外観図
【図6】実施例2の揮散性薬剤徐放部材の側面断面構成図
【図7】実施例2で得られた揮散性薬剤徐放部材のアリルイソチオシアネートとl−メントールの放出特性グラフ
【符号の説明】
2 アリルイソシアネート
3、5、21、23 ピロー包装体(ラミネートフィルム)
4 d−リモネン
6、27 湿度感受性膜
7、28 空間部
10、11 熱交換器
19 揮散性薬剤徐放部材
20 ポリウレタン連続多孔質体
22 l−メントール
Claims (8)
- 揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、常温での蒸気圧は前記揮散性薬剤Aよりも前記揮散性薬剤Bのほうが低く、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜の間に揮散した前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bの蒸気が滞留するための空間部を設け、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとが揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している揮散性薬剤Aが前記湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放され、揮散性薬剤Aが一定量以下になった時、揮散性薬剤Bが外部へと徐放され、利用者が揮散性薬剤Bの臭気を感じることによって揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを検知できることを特徴とする揮散性薬剤徐放部材。
- 少なくとも熱交換器と、前記熱交換器により温度調節された風を室内へ吹出すための室内ファンとを有する室内機において、揮散性薬剤Aと揮散性薬剤Bとを、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、常温での蒸気圧は前記揮散性薬剤Aよりも前記揮散性薬剤Bのほうが低く、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとの透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜の間に揮散した前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bの蒸気が滞留するための空間部を設け、前記揮散性薬剤Aと前記揮散性薬剤Bとが揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している揮散性薬剤Aが前記湿度感受性膜から外部へ優先的に徐放され、揮散性薬剤Aが一定量以下になった時、揮散性薬剤Bが外部へと徐放され、利用者が揮散性薬剤Bの臭気を感じることによって揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になったことを検知できる揮散性薬剤徐放部材を、前記熱交換器近傍の上流側に配置したことを特徴とする空気調和機。
- 揮散性薬剤Aの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以下であり、揮散性薬剤Aの残量が一定量以下になった時放出される、揮散性薬剤Bの揮散性薬剤徐放部材からの放出量が閾値以上であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機。
- 揮散量制御膜内部に配置された揮散性薬剤Aと揮散量制御膜内部に配置された揮散性薬剤Bとが個別に湿度感受性膜内部に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機。
- 揮散性薬剤Aがアリルイソチオシアネートであり、揮散性薬剤Bがl−メントールまたはd−リモネンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機。
- 薬剤の揮散量を制御する膜がポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはそれらの複合ラミネートフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機。
- 湿度感受性膜が表面にビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機。
- 揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜面を熱交換器の上流側面と向い合わせとなるように配置したことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
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