JP3743361B2 - 揮散性薬剤徐放部材とそれを用いた空気調和機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、揮散性の薬剤を外部の湿度環境変化によって徐放させる揮散性薬剤徐放部材に関するものであり、季節の変動あるいはその場の雰囲気湿度環境が変化して、カビ、菌が繁殖することを防止したいような分野には広く適用可能である。たとえば浴室、更衣室、下駄箱、フードストッカー、物置、地下収納庫、またビル空調用の加湿用通路、換気用通路等にも適用可能である。特に空気調和機の室内機を冷房運転した後、常に清潔な状態に保つのに有効である。
【0002】
【従来の技術】
充填された液体状のものを長期間にわたって徐放させるための技術は種々雑多と提案されてきている。一般的には多孔性の材料物質中に含浸させて毛細管現象によって徐々に揮散させる方法である。その多孔性物質とはゼオライト、シルカゲルのような無機化合物であったり、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロースの発泡体あるいは繊維束であったりしていた。さらにシクロデキストリンと呼ばれる有機物の小さな孔に包接させて徐放させるような方法も特開平5−176733号公報、特開平6−40890号公報に提案されている。またマイクロカプセル化して徐放性を具現化する方法も特開平6−9377号公報、特開平6−65064号公報、特開平7−89848号公報、特開平9−911号公報、特開平9−12447号公報、特開平9−57091号公報等で提案されている。
【0003】
また吸い上げ体を使用した場合には、防虫忌避剤の分野あるいは芳香剤の分野でよく用いられる方法として、吸い上げ体をヒータで加熱し、揮散速度をさらに向上させることも特開昭55−57502号公報、特開昭63−240738号公報等で提案されている。
【0004】
これら従来の方式は揮散性薬剤を外部の湿度環境に応じて徐放するものではなかったので、本発明者らはビスコース膜を利用して揮散性薬剤を必要な場合に有効に徐放させる方法を提案してきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では低湿度環境と高湿度環境との放出量の差が3〜6倍程度と大きいものであったが、中間域での薬剤放出量特性が低かった。したがって、60%RHレベルの低湿度でも発育するようなカビには効果が弱いという危険性を有していた。本来であれば薬剤の放出量特性が湿度に対してリニア性を有する揮散性薬剤徐放部材の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に対して、低湿度から高湿度雰囲気に対してリニア放出量特性向上を図るものであり、このことによって薬剤の効果的な活用が図れ、湿度に敏感でリニア放出量特性を有する揮散性薬剤徐放部材を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題に対して、揮散性薬剤を容器内部に配置し、前記容器の少なくとも一部に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質が含有されている揮散性薬剤徐放部材である。
【0008】
上記構成により、潮解性物質を湿度感受性膜の表面層に含有させることによって、たとえば25℃、60%RHにおいて従来よりも湿気への感受性が高まり、湿度感受性膜のベースを構成するビスコース膜へ効果的に水分を供給でき、その結果ビスコース膜が膨潤した構造となり、揮散性薬剤徐放部材内部の薬剤がビスコース膜を透過しやすくさせることが可能となる。高湿度雰囲気では当然ながら従来同様な薬剤の放出量特性を保有させることができる。また、製造工程においても潮解性物質を湿度感受性膜の表面層に含有させることによって、特に冬場に製造されたものが夏場の市場で保管された場合にも湿度感受性膜が湿度を保持しやすいので、湿度感受性膜が湿気を保持した状態で包装されるので、その結果として保管中に湿度感受性膜の破れることを防止するという効果も奏する。
【0009】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、揮散性薬剤を容器内部に配置し、前記容器の少なくとも一部に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質が含有されている揮散性薬剤徐放部材である。
【0010】
請求項2記載の発明は、揮散性薬剤を前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質が含有され、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜との間に揮散した前記薬剤の蒸気が滞留するための空間部を設けられ、前記薬剤が揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している薬剤が前記湿度感受性膜から外部へ徐放される揮散性薬剤徐放部材である。
【0011】
請求項3記載の発明は、揮散性薬剤を容器内部に配置し、前記容器の少なくとも一部に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層にシリカゲルが含有されている揮散性薬剤徐放部材である。
【0012】
請求項4記載の発明は、揮散性薬剤を前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層にシリカゲルが含有され、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜との間に揮散した前記薬剤の蒸気が滞留するための空間部を設けられ、前記薬剤が揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している薬剤が前記湿度感受性膜から外部へ徐放される揮散性薬剤徐放部材である。
【0013】
請求項5記載の発明は、少なくとも熱交換器と、前記熱交換器により温度調節された風を室内へ吹出すための室内ファンとを有する室内機において、揮散性薬剤を前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質またはシリカゲルが含有され、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜との間に揮散した前記薬剤の蒸気が滞留するための空間部を設けられ、前記薬剤が揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している薬剤が前記湿度感受性膜から外部へ徐放される揮散性薬剤徐放部材を前記熱交換器近傍の上流側に配置した空気調和機である。
【0014】
請求項6記載の発明は、潮解性物質が塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化リチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化リチウムの単独あるいは複合物である揮散性薬剤徐放部材である。
【0015】
請求項7記載の発明は、潮解性物質を湿度感受性膜の表面上に0.2〜1g/m2で含有させてなる揮散性薬剤徐放部材である。
【0016】
請求項8記載の発明は、シリカゲルが平均細孔径10〜100オングストロームである揮散性薬剤徐放部材である。
【0017】
請求項9記載の発明は、シリカゲルを湿度感受性膜の表面上に0.5〜5g/m2で含有させてなる揮散性薬剤徐放部材である。
【0018】
請求項10記載の発明は、薬剤がアリルイソチオシアネート、ティーツリー油またはユーカリ油である揮散性薬剤徐放部材である。
【0019】
請求項11記載の発明は、湿度感受性膜が表面にビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造である揮散性薬剤徐放部材である。
【0020】
請求項12記載の発明は、薬剤の揮散量を制御する膜がポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの内の1つまたはそれらの複合ラミネートフィルムである揮散性薬剤徐放部材である。
【0021】
請求項13記載の発明は、薬剤の放出量が30℃、相対湿度95%で20〜200mg/日である揮散性薬剤徐放部材である。
【0022】
請求項14記載の発明は、薬剤の放出量が30℃、相対湿度20%で10mg/日以下である揮散性薬剤徐放部材である。
【0023】
請求項15記載の発明は、揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜面を熱交換器の上流側面と向い合わせとなるように配置した空気調和機である。
【0024】
【実施例】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施例1)
図1は本実施例で使用する湿度感受性膜を配置した揮散性薬剤徐放部材の上面外観図であり、図2は図1におけるA−A´線での側面断面構成図である。1は薬剤となるアリルイソチオシアネートを吸収して膨潤したポリウレタン連続多孔質体である。具体的には60×40×6mmのポリウレタン連続多孔質体、かさ密度0.35g/ml、平均気孔径30μm、気孔率70%にアリルイソチオシアネート45gを吸収させて約84×56×8.4mmに膨潤した。2はそれを充填するための半透明なポリプロピレン、厚み2mmからなる本体容器であり、射出成形にて加工した。容器の内寸法は90×60×20mmである。3は本体容器2に対する蓋であり、これも半透明なポリプロピレン、厚み2mmからなり、蓋3中央部には大きな窓があり、その大きな窓に対して十文字にリブ4が形成され、蓋3の表面側中央部には70×40mmの湿度感受性膜5が配置され、リブ4によってポリウレタン連続多孔質体1を本体容器2の底面部に位置固定するとともに湿度感受性膜5に対する補強の役目を果たしている。湿度感受性膜5はビスコース加工紙をポリエチレン/延伸ポリプロピレン/ポリエチレンにラミネートしたものである。具体的にはポリエチレン 40μm/延伸ポリプロピレン 30μm/ポリエチレン 40μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース水溶液(セルロース濃度6wt%、アルカリ濃度3.3wt%)を10g/m2の塗布量で形成させた後、硫酸浴中で再生脱硫し、水洗後乾燥させた。その後塩化カルシウム10wt%水溶液をビスコース膜上に0.2ml噴霧後、しばらく放置後に再度乾燥させた。その結果、塩化カルシウムのビスコース膜への含有量は0.7g/m2である。湿度感受性膜5の外周部は蓋3にポリエチレン側をヒートシールで溶着接合されている。ヒートシール巾は3mmである。本体容器2と蓋3は超音波接合によって接合されている。6はポリウレタン連続多孔質体1と本体容器2と蓋3とで形成される空間部であり、その空間内容積は約65mlである。
【0026】
揮散性薬剤徐放部材の徐放機構について説明する。ポリウレタン連続多孔質体から揮散したアリルイソチオシアネート蒸気は空間部6で飽和蒸気圧濃度までに達せられる。たとえば25℃においてアリルイソチオシアネートの蒸気圧は約5mmHgであるため、空間部における飽和蒸気濃度は最大約6600ppmとなる。湿度感受性膜5によって低湿度の場合にはアリルイソチオシアネートの外部への蒸気放出がある程度抑制されるため、空間部6は飽和蒸気圧濃度に近い状態のままでずっと維持される。しかし湿度が高くなるとアリルイソチオシアネート蒸気が湿度感受性膜5を通過して外部へと放出されやすくなる。湿度感受性膜5は湿度変化によって膜組織が膨潤し、緩んだ構造となり、アリルイソチオシアネート分子が透過して外部へと放出されやすくなる。この放出量分を補充するためにはポリウレタン連続多孔質体1から揮散したアリルイソチオシアネートがさらに揮散して空間部6へと充満する必要がある。
【0027】
(実施例2)
本実施例で使用した揮散性薬剤徐放部材は実施例1とほぼ同様な構成を有しているので詳細な説明は省略し、異なる部分についてだけ説明を加える。本比較例では湿度感受性膜として湿度感受性膜はビスコース加工紙をポリエチレン/延伸ポリプロピレン/ポリエチレンにラミネートしたものである。具体的にはポリエチレン 40μm/延伸ポリプロピレン 30μm/ポリエチレン 40μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース水溶液(セルロース濃度6wt%、アルカリ濃度3.3wt%)を10g/m2の塗布量で形成させた後、硫酸浴中で再生脱硫し、水洗後乾燥させた。その後平均粒径15mm、20wt%のシリカゾル水溶液(日産化学工業製;スノーテックスN)をビスコース膜上に0.5g噴霧後、しばらく放置後に再度乾燥させた。その結果、シリカゲルのビスコース膜への含有量は3.5g/m2である。
【0028】
(比較例1)
本比較例で使用した揮散性薬剤徐放部材は実施例1とほぼ同様な構成を有しているので詳細な説明は省略し、異なる部分についてだけ説明を加える。本比較例では湿度感受性膜として湿度感受性膜はビスコース加工紙をポリエチレン/延伸ポリプロピレン/ポリエチレンにラミネートしたものである。具体的にはポリエチレン 40μm/延伸ポリプロピレン 30μm/ポリエチレン 40μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース水溶液(セルロース濃度6wt%、アルカリ濃度3.3wt%)を10g/m2の塗布量で形成させた後、硫酸浴中で再生脱硫し、水洗後乾燥させた。
【0029】
実施例1,2および比較例1で得られた揮散性薬剤徐放部材について、25℃における薬剤放出量と湿度感受性特性との関係を測定し、その結果を図1に示した。
【0030】
図1から明らかなように、比較例1では80%RH付近を越えると急激に薬剤放出量が増加するような特性であったものに比べて、実施例1,2はともに比較例1よりも湿度変化に対してリニア性が高く、60%RH付近での薬剤放出量も多くなっている。その結果比較的60%RH付近でも発生しやすいようなカビに対しても効果的に防カビ作用を発揮させることができた。また20%RHに対する95%RHの薬剤放出量も増大させることができ、湿度感受性を向上させることも可能となった。
【0031】
実施例1,2によって得られた揮散性薬剤徐放部材を内容積1m3のシューズボックス上段部に配置して使用した結果、約1年間にわたってカビの発生を抑制できることを確認した。シューズボックスの換気係数、使用環境の風土にもよるが、このような揮散性薬剤徐放部材をシューズボックスに使用することで、雨の日に使った革靴をそのまま収納してしまってもカビが発生してしまうようなことをなくすことができた。
【0032】
(実施例3)
図4は本実施例で使用する湿度感受性膜を配置した揮散性薬剤徐放部材の上面外観図であり、図5は図4におけるB−B´線での側面断面構成図であり、図6は図4におけるC−C´線での側面断面構成図である。7は薬剤となるアリルイソチオシアネートを吸収して膨潤したポリウレタン連続多孔質体である。具体的には35×71×2mmのポリウレタン連続多孔質体、かさ密度0.35g/ml、平均気孔径30μm、気孔率70%にアリルイソチオシアネート15.5gを吸収させて約50×100×2.8mmに膨潤した。8はポリウレタン連続多孔質体7の外装となるラミネートフィルムのピロー包装体であり、PET 9μm/ポリプロピレン 15μm/ポリエチレン 30μmとのラミネートフィルムに対してポリエチレン側をヒートシール巾5mmにてピロー包装化したものであり、一次制御膜となる。9はそれを充填するための透明なポリエチレンテレフタレート、厚み2mmからなる本体容器であり、射出成形にて加工した。容器の内寸法は55×140×10mmである。10は本体容器9に対する蓋であり、これも透明なポリエチレンテレフタレート、厚み2mmからなる。蓋10の中央部に大きな窓を有し、長手方向の渡しとなるように2ヶ所にリブ11が形成され、蓋10の表面側中央部には45×130mmの湿度感受性膜12が配置され、リブ11によってピロー包装体8の容器内部で底面側に位置固定と湿度感受性膜12に対する補強の役目を果たしている。湿度感受性膜12はビスコース加工紙をポリエチレン/延伸ポリプロピレン /ポリエチレン/PETにラミネートしたものである。具体的にはポリエチレン 20μm/延伸ポリプロピレン 10μm/ポリエチレン 15μm/PET9μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース水溶液(セルロース濃度6wt%、アルカリ濃度3.3wt%)を10g/m2の塗布量で形成させた後、硫酸浴中で再生脱硫し、水洗後乾燥させた。その後臭化リチウム10wt%水溶液をビスコース膜上に0.5ml噴霧後、しばらく放置後に再度乾燥させた。その結果、臭化リチウムのビスコース膜への含有量は0.85g/m2である。湿度感受性膜12の外周部は蓋10にPET側をヒートシールで溶着接合されている。ヒートシール巾は3mmである。本体容器9と蓋10は超音波接合によって接合されている。13はピロー包装体8と本体容器9と蓋10とで形成される空間部であり、その空間内容積は約45mlである。
【0033】
揮散性薬剤徐放部材の徐放機構について説明する。ポリウレタン連続多孔質体7から揮散したアリルイソチオシアネートはラミネートフィルム8で揮散量を抑制されながら、ラミネートフィルム8と湿度感受性膜12とで形成される空間部13へと至る。たとえば25℃においてアリルイソチオシアネートの蒸気圧は約5mmHgであるため、一次制御膜内部はすぐに飽和蒸気濃度は最大約6600ppmとなり、空間部13はそれに対してある程度の濃度勾配を有しながら、アリルイソチオシアネート蒸気が充満し、二次制御膜からの放出量が小さければ、ある程度雰囲気温度に対する蒸気圧特性まで揮散量が増大し、最終的には空間部13をほぼ飽和蒸気圧濃度までに達せられる。湿度感受性膜12によって低湿度の場合にはアリルイソチオシアネートの外部への蒸気放出がある程度抑制されるため、空間部13は飽和蒸気圧濃度に近い状態のままでずっと維持される。しかし湿度が高くなるとアリルイソチオシアネート蒸気が湿度感受性膜12を通過して外部へと放出されやすくなる。湿度感受性膜12は湿度変化によって膜組織が膨潤し、緩んだ構造となり、アリルイソチオシアネート分子が透過して外部へと放出されやすくなる。この放出量分を補充するためにはポリウレタン連続多孔質体7から揮散したアリルイソチオシアネートがさらにラミネートフィルムのピロー包装体8を通過して空間部13へと充満する必要がある。この時湿度感受性膜12から外部へのアリルイソチオシアネート放出速度とポリウレタン連続多孔質体7から揮散したアリルイソチオシアネートが空間部13へ透過してくるアリルイソチオシアネート揮散速度を比較すると後者のほうが速いので、アリルイソチオシアネートの放出量が不足することはない。また揮散性薬剤徐放部材から薬剤放出特性はアリルイソチオシアネートの残量が初期に対して10wt%以下になるまでほとんど変化することがなかった。
【0034】
次に空気調和機の室内機に本実施例よって得られた揮散性薬剤徐放部材を使用した場合について説明する。
【0035】
図7は、本実施例を示す空気調和機の室内機断面構成図である。吸い込みグリル14、15を通じて室内空気を吸い込み、吸い込んだ空気は熱交換器16、17によって冷却、除湿された後、クロスフローファン18によって吸い込み送風されながら、最終吹出し口19から室内空間に冷風を提供する。吹出し口19には上下偏向羽根20が配設され、室内空間への吹出し方向をコントロールしている。この時、熱交換器16、17によって除湿された結露水は熱交換器アルミニウムフィンをつたって、ドレンパン部21、22へと至る。ドレンパン部21は室内機台枠23に一体物として構成され、ドレンパン部22は吹出しグリル24に一体物として構成される。ドレンパン部21に溜まった結露水は台枠23を介してドレンパン部22側に流れて水受けされ、最終的にはドレン口(図示せず)を経由して外部へと排出される。熱交換器16,17のアルミニウムフィンには熱交換性能の高効率化を図るため、縦スリットが設けられた構造を有している。そのために結露した水はスリット部で表面張力によって水膜を形成して、ドレンパン部21,22へとすぐには滴下し難い構造のため、アルミニウムフィンが乾くスピードが遅くなってしまう。たとえば25℃、90%RHの環境雰囲気では、熱交換器アルミニウムフィンが乾くのに数十時間を要してしまい、なかなか乾燥しない。この時室内機空間、特に熱交換器16,17で構成される送風回路内部は相対湿度95%以上の雰囲気に曝され、カビが非常に繁殖しやすい環境条件となっている。25は揮散性薬剤徐放部材であり、熱交換器17に近接した下部上流側に配置され、揮散性薬剤徐放部材25の湿度感受性膜12側が熱交換器に向かい合う構成とした。このことによって冷房、除湿運転停止後、上下偏向羽根20が閉状態になるとともに、高湿度状態となった空気が室内機全体に充満して湿度感受性膜12に達すると、揮散性薬剤徐放部材25の内部からアリルイソチオシアネートが熱交換器17側へ拡散し、アルミニウムフィン間を通過しながら、上下偏向羽根20が閉状態となっているので熱交換器16、17で構成された空間部等へと徐々に拡散、堆積して充満する。この結果室内機内部は熱交換器16、17で構成された空間底部で3〜5ppm程度、上部低濃度の空間でも1ppm以上のアリルイソチオシアネート蒸気を滞留させることが可能となる。揮散性薬剤徐放部材25の空間部13に滞留している高濃度のアリルイソチオシアネート蒸気が湿度感受性膜12を透過して500〜5000倍の空間へと拡散していく構成である。アリルイソチオシアネートの閾値は10ppm程度であるので匂いを感じないレベルの滞留濃度である。これによって室内空間に存在するCladosporium、Alternaria、Aspergillus、Penicillium、Rhizopusと言った一般的なカビには十分な防カビ効果を得ることができた。防カビの効果を得るためには室内機へのアリルイソチオシアネート蒸気を0.5ppm以上にすることが望ましく、人間の閾値である10ppm以下にすることが実用上望ましい。
【0036】
(実施例4)
本実施例で使用した揮散性薬剤徐放部材は実施例3とほぼ同様な構成を有しているので詳細な説明は省略し、異なる部分についてだけ説明を加える。本比較例では湿度感受性膜としてビスコース加工紙をポリエチレン/延伸ポリプロピレン/ポリエチレン/PETにラミネートしたものである。具体的にはポリエチレン 20μm/延伸ポリプロピレン 20μm/ポリエチレン 15μm/PET 9μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース水溶液(セルロース濃度6wt%、アルカリ濃度3.3wt%)を10g/m2の塗布量で形成させた後、硫酸浴中で再生脱硫し、水洗後乾燥させた。その後平均粒径15nm、20wt%のシリカゾル水溶液(日産化学工業製;スノーテックスN)をビスコース膜上に1.25g噴霧後、しばらく放置後に再度乾燥させた。その結果、シリカゲルのビスコース膜への含有量は4.3g/m2である。
【0037】
(比較例2)
本比較例で使用した揮散性薬剤徐放部材は実施例3とほぼ同様な構成を有しているので詳細な説明は省略し、異なる部分についてだけ説明を加える。本比較例では湿度感受性膜としてビスコース加工紙をポリエチレン/延伸ポリプロピレン/ポリエチレン/PETにラミネートしたものである。具体的にはポリエチレン 20μm/延伸ポリプロピレン 20μm/ポリエチレン 15μm/PET 9μm上にレーヨン/パルプ不織布を介してビスコース水溶液(セルロース濃度6wt%、アルカリ濃度3.3wt%)を10g/m2の塗布量で形成させた後、硫酸浴中で再生脱硫し、水洗後乾燥させた。
【0038】
実施例3、4および比較例2で得られた揮散性薬剤徐放部材について、25℃における薬剤放出量と湿度感受性特性との関係を測定し、その結果を図7に示した。
【0039】
図7から明らかなように、比較例2では80%RH付近を越えると急激に放出量が増加するような特性であったものに比べて、実施例3,4はともに比較例2よりも湿度変化に対してリニア性が高く、60%RH付近での薬剤放出量も多くなっている。その結果比較的低湿度雰囲気でも発生しやすいようなカビに対しても効果的に防カビ作用を発揮させることができた。また20%RHに対する95%RHの薬剤放出量も増大させることができ、湿度感受性を向上させることも可能となった。
【0040】
実施例1〜4、比較例1、2の揮散性薬剤徐放部材を雰囲気温度15℃、50%RHの条件下で製造した後、ポリエチレン 40μm/ナイロン 20μm/アルミニウム箔 7μm/ポリエチレン 40μmからなるラミネート構造からなる非透過性フィルムをまず三方をヒートシール巾10mmにて熱溶着させた後に、揮散性薬剤徐放部材を挿入して開放部分をヒートシールして密封状態とした。その後60℃の恒温槽に2週間放置した。
その後恒温槽から非透過性フィルムで包装された揮散性薬剤徐放部材を取り出して、30℃まで冷却の後、非透過性フィルムを破って揮散性薬剤徐放部材を取り出してビスコース膜の状態を観察した。その結果実施例1〜4のビスコース膜にひび割れ、破れは発生していなかった。しかし比較例1、2には部分的にひび割れを生じていた。これらの結果から明らかなように湿度感受性膜の表面層に潮解性物質あるいはシルカゲルを含有させることで雰囲気中の湿気を吸湿しやすくなり、湿度感受性膜の表面層に吸湿された湿気が60℃の雰囲気になった時もビスコース膜の柔軟性を維持できたものと考えられる。
【0041】
実施例1では塩化カルシウム、実施例3では臭化リチウムを使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。この他に、塩化リチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化リチウムを単独あるいは混合物として使用することができる。また湿度感受性膜の表面上に含有させる量は0.2〜1g/m2が好ましかった。0.2g/m2以下では潮解性物質を湿度感受性膜に意図的に含有させた効果が小さく、1g/m2以上では低湿度条件でも潮解性物質が湿分を捕集する効果が強くなりすぎ、湿度感受性膜のリニア特性がくずれ、逆カーブとなり60%RH付近の薬剤放出量が目論見よりも多くなり好ましくなくなった。さらに20%RH以下の低湿度側で潮解性物質の結晶粉が湿度感受性膜から脱離しやすくなることもあった。
【0042】
実施例2、4ではシリカゾル水溶液を噴霧後に乾燥して湿度感受性膜の表面層にシリカゲルを分散担持させた。湿度感受性膜のベースとなるビスコース膜に環境雰囲気中の湿気を積極的に捕集して供給するためには、シリカゲルの有している細孔径は平均細孔径10〜100オングストロームの物理物性を有するものが好ましかった。また湿度感受性膜の表面上に含有させる量は0.5〜5g/m2が好ましかった。0.5g/m2以下では潮解性物質を湿度感受性膜に意図的に含有させた効果が小さく、5g/m2以上では低湿度条件でも潮解性物質が湿分を捕集する効果が強くなりすぎ、湿度感受性膜のリニア特性がくずれ、逆カーブとなり60%RH付近の薬剤放出量が目論見よりも多くなり好ましくなくなった。
【0043】
実施例では、揮散性薬剤を専らポリウレタンの連続多孔質体に吸収保持させて使用したが、本発明では揮散性薬剤をいかなる形態で部材の本体容器となるものに収納、充填しようと自由である。一般的には液体の薬剤は本実施例のように液体吸収体に吸収させるか、薬剤に可溶性の高分子物質、たとえばエチルセルロース、ブチラール樹脂を添加して増粘化あるいは固形化させて使用すると揮散性薬剤徐放部材を製造する時に作業性が向上する。
【0044】
実施例では、薬剤の揮散量を制御する膜としてポリプロピレンとポリエチエンの複合ラミネートフィルムを使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。その他にポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムを単独もしくは複合化してラミネート構造のフィルムとして使用することもできる。
【0045】
実施例では、専らアリルイソチオシアネートを使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。ティーツリー油、ユーカリ油等が使用できる。また低濃度の揮散量にて抗菌、防カビ効果が得られるような薬剤であれば本発明の揮散性薬剤徐放部材の薬剤として利用可能である。
【0046】
実施例では、薬剤に対する非透過性フィルムとして、ポリエチレン/ナイロン6/アルミニウム箔/ポリエチレン構造からなるものを使用したが、本発明で使用できるものはこの限りではない。しかし一般的には非透過性フィルムとしては5〜10μm程度のアルミニウム箔が内層されたラミネート構造フィルムを使用する。これらラミネートフィルムに対して四方向を十分なヒートシール巾、たとえば巾10mmで包装することで、揮散性薬剤徐放部材を長期間にわたって保管することが可能となった。
【0047】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項1、2記載の発明によれば、潮解性物質を湿度感受性膜の表面層に含有させることによって、たとえば25℃、60%RHにおいて従来よりも湿気への感受性が高まり、湿度感受性膜のベースを構成するビスコース膜へ効果的に水分を供給でき、その結果ビスコース膜が膨潤した構造となり、揮散性薬剤徐放部材内部の薬剤がビスコース膜を透過しやすくさせることが可能となった。高湿度雰囲気では当然ながら従来同様な放出特性を保有させることができた。また、製造工程においても潮解性物質を湿度感受性膜の表面層に含有させることによって、特に冬場に製造されたものが夏場の市場で保管された場合にも湿度感受性膜が湿度を保持しやすいので、湿度感受性膜が湿気を保持した状態で包装されるので、その結果として湿度感受性膜が保管中に破れることを防止するという効果も奏した。
【0048】
請求項3、4記載の発明によれば、シリカゲルを湿度感受性膜の表面層に含有させることによって、たとえば25℃、60%RHにおいて従来よりも湿気への感受性が高まり、湿度感受性膜のベースを構成するビスコース膜へ効果的に水分を供給でき、その結果ビスコース膜が膨潤した構造となり、揮散性薬剤徐放部材内部の薬剤がビスコース膜を透過しやすくさせることが可能となった。高湿度雰囲気では当然ながら従来同様な放出特性を保有させることができた。また、製造工程においてもシリカゲルを湿度感受性膜の表面層に含有させることによって、特に冬場に製造されたものが夏場の市場で保管された場合にも湿度感受性膜が湿度を保持しやすいので、湿度感受性膜が湿気を保持した状態で包装されるので、その結果として湿度感受性膜が保管中に破れることを防止するという効果も奏した。
【0049】
請求項5記載の発明によれば、低湿度から高湿度雰囲気に対して薬剤のリニア放出量特性を有する揮散性薬剤徐放部材を使用した空気調和機を提供でき、夏場でも室内機内部にカビが発生することを防止することができた。
【0050】
請求項6記載の発明によれば、潮解性物質に塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化リチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化リチウムの単独あるいは混合物を使用することで60%RH付近の薬剤放出特性を向上でき、低湿度から高湿度雰囲気に対して薬剤のリニア放出量特性を有する揮散性薬剤徐放部材を提供できた。
【0051】
請求項7記載の発明によれば、潮解性物質を湿度感受性膜の表面上に0.2〜1g/m2で含有させることで60%RH付近の薬剤放出特性を潮解性物質の含有量で自由にコントロールでき、揮散性薬剤徐放部材の薬剤放出特性に大きな自由度を提供することができた。
【0052】
請求項8記載の発明によれば、シリカゲルの平均細孔径を10〜100オングストロームとすることで湿度感受性膜の60%RH付近の湿度に対する水分捕集量を増大させることができ、その結果として薬剤放出量も増大させることができ、低湿度から高湿度雰囲気に対して薬剤のリニア放出量特性を有する揮散性薬剤徐放部材を提供できた。
【0053】
請求項9記載の発明によれば、シリカゲルを湿度感受性膜の表面上に0.5〜5g/m2で含有させることで60%RH付近の薬剤放出特性をシリカゲルの含有量で自由にコントロールでき、揮散性薬剤徐放部材の薬剤放出特性に大きな自由度を提供することができた。
【0054】
請求項10記載の発明によれば、アリルイソチオシアネート、ティーツリー油、ユーカリ油を薬剤とすることで天然成分を利用した、低濃度による、環境にやさしい抗菌、防カビ効果を提供できた。
【0055】
請求項11記載の発明によれば、ビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造である湿度感受性膜を使用することで湿度に対してビスコースが膨潤して、緩んだ構造となり、薬剤を効果的に放出させる鋭敏な湿度感受性膜を提供できた。
【0056】
請求項12記載の発明によれば、液体の薬剤の揮散量を制御する一次制御膜としてポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの内の1つまたはそれらの複合ラミネートフィルムを使用することで十分な徐放効果を得ることができた。
【0057】
請求項13記載の発明によれば、薬剤の放出量が30℃、相対湿度95%で20〜200mg/日であれば、薬剤の種類にもよるが人間の閾値と対比しても同等かそれ以下のレベルで徐放することで薬剤の目的効果を得ることができるので、利用者にも好印象を与えることができた。
【0058】
請求項14記載の発明によれば、薬剤の放出量が30℃、相対湿度30%で10mg/日以下であれば、低湿度条件での無駄な薬剤の放出を抑制することができるので、取り替え交換期間を長期にすることができた。
【0059】
請求項15記載の発明によれば、揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜面を熱交換器側に向けることによって、熱交換器側からの湿度上昇を迅速に感じて、薬剤の徐放応答性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の揮散性薬剤徐放部材の上面外観図
【図2】 実施例1の揮散性薬剤徐放部材のA−A'線での側面断面構成図
【図3】 実施例1、2および比較例1の揮散性薬剤徐放部材の薬剤放出量と湿度感受性特性との関係図
【図4】 実施例3の揮散性薬剤徐放部材の上面外観図
【図5】 実施例3の揮散性薬剤徐放部材のB−B'線での側面断面構成図
【図6】 実施例3の揮散性薬剤徐放部材のC−C'線での側面断面構成図
【図7】 実施例3、4および比較例2の揮散性薬剤徐放部材の薬剤放出量と湿度感受性特性との関係図
【図8】 実施例3の空気調和機の室内機断面構成図
【符号の説明】
1 ポリウレタン連続多孔質体
2 本体容器
5 湿度感受性膜
6 空間部
7 ポリウレタン連続多孔質体
8 ラミネートシートのピロー包装体
9 本体容器
12 湿度感受性膜
13 空間部
14 吸い込みグリル
15 吸い込みグリル
16 熱交換器
17 熱交換器
18 クロスフローファン
19 吹出し口
25 揮散性薬剤徐放部材
Claims (15)
- 揮散性薬剤を容器内部に配置し、前記容器の少なくとも一部に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質が含有されていることを特徴とする揮散性薬剤徐放部材。
- 揮散性薬剤を前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質が含有され、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜との間に揮散した前記薬剤の蒸気が滞留するための空間部を設けられ、前記薬剤が揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している薬剤が前記湿度感受性膜から外部へ徐放されることを特徴とする揮散性薬剤徐放部材。
- 揮散性薬剤を容器内部に配置し、前記容器の少なくとも一部に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層にシリカゲルが含有されていることを特徴とする揮散性薬剤徐放部材。
- 揮散性薬剤を前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層にシリカゲルが含有され、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜との間に揮散した前記薬剤の蒸気が滞留するための空間部を設けられ、前記薬剤が揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している薬剤が前記湿度感受性膜から外部へ徐放されることを特徴とする揮散性薬剤徐放部材。
- 少なくとも熱交換器と、前記熱交換器により温度調節された風を室内へ吹出すための室内ファンとを有する室内機において、揮散性薬剤を前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜内部に配置し、前記揮散量制御膜の外装に湿度変化によって前記薬剤の透過量が変化する湿度感受性膜を具備し、前記湿度感受性膜の表面層に潮解性物質またはシリカゲルが含有され、前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜との間に揮散した前記薬剤の蒸気が滞留するための空間部を設けられ、前記薬剤が揮散して前記揮散量制御膜と前記湿度感受性膜とで形成された前記空間部で一定の蒸気濃度以下に保たれながら、外部の湿度環境変化に応じて前記空間部に滞留している薬剤が前記湿度感受性膜から外部へ徐放される揮散性薬剤徐放部材を前記熱交換器近傍の上流側に配置したことを特徴とする空気調和機。
- 前記潮解性物質が塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化リチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化リチウムの単独あるいは混合物であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記潮解性物質を湿度感受性膜の表面上に0.2〜1g/m2で含有させてなることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記シリカゲルが平均細孔径10〜100オングストロームであることを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記シリカゲルを湿度感受性膜の表面上に0.5〜5g/m2で含有させてなることを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記薬剤がアリルイソチオシアネート、ティーツリー油またはユーカリ油であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記湿度感受性膜が表面にビスコース加工紙を含んでなるラミネート構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記薬剤の揮散量を制御する揮散量制御膜がポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはそれらの複合ラミネートフィルムであることを特徴とする請求項2、4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記薬剤の放出量が30℃、相対湿度95%で20〜200mg/日であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記薬剤の放出量が30℃、相対湿度20%で10mg/日以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮散性薬剤徐放部材。
- 前記揮散性薬剤徐放部材の湿度感受性膜面を熱交換器の上流側面と向い合わせとなるように配置したことを特徴とする請求項5に記載の空気調和機。
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