JP2004293383A - エンジンにおけるカム軸駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの組立作業や保守点検作業が容易にできるようにし、かつ、これが簡単な構成で達成されるようにする。
【解決手段】エンジン１が、ガスケット１１を有するエンジン本体２と、このエンジン本体２の上部に支承される動弁機構１９のカム軸と、このカム軸をクランク軸１６に連動連結させるタイミングチェーン２６と、上下方向に延びてその一端部３７側がクランク軸１６と平行な軸心３８回りで回動Ｃ，Ｄ可能となるようエンジン本体２に枢支され、この回動Ｃ，Ｄで上記タイミングチェーン２６に接合するテンションアーム３４とを備える。ガスケット１１の一部分をエンジン本体２の外方に一体的に突出させて突出片４８を成形し、テンションアーム３４がその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアーム３４が突出片４８に当接して、所定回動位置以上の回動が阻止されるようにする。
【選択図】 図１
【解決手段】エンジン１が、ガスケット１１を有するエンジン本体２と、このエンジン本体２の上部に支承される動弁機構１９のカム軸と、このカム軸をクランク軸１６に連動連結させるタイミングチェーン２６と、上下方向に延びてその一端部３７側がクランク軸１６と平行な軸心３８回りで回動Ｃ，Ｄ可能となるようエンジン本体２に枢支され、この回動Ｃ，Ｄで上記タイミングチェーン２６に接合するテンションアーム３４とを備える。ガスケット１１の一部分をエンジン本体２の外方に一体的に突出させて突出片４８を成形し、テンションアーム３４がその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアーム３４が突出片４８に当接して、所定回動位置以上の回動が阻止されるようにする。
【選択図】 図１
Description
【０００１】
【発明が属する技術分野】
本発明は、カム軸をクランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、このタイミングチェーンに適度の引張力を与えるテンションアームとを備え、このテンションアームの自由な回動を阻止するようにしたエンジンにおけるカム軸駆動装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
【０００３】
【特許文献１】特開平８−１２１１８８号公報
【０００４】
上記エンジンにおけるカム軸駆動装置には、従来、上記特許文献１で示されたものがある。この特許文献１によれば、エンジンはエンジン本体と、軸心がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体の下部に支承されるクランク軸と、上記エンジン本体の上部に支承される動弁機構のカム軸と、このカム軸を上記クランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、上下方向に延びてその一端部側が上記クランク軸と平行な軸心回りで回動可能となるよう上記エンジン本体に枢支され、この回動で上記タイミングチェーンに接合するテンションアームとを備えている。
【０００５】
上記エンジンが駆動するとき、上記クランク軸に上記タイミングチェーンを介し動弁機構のカム軸が連動させられ、かつ、これらカム軸にカム係合する吸、排気弁が連動させられ、もって、上記エンジンの駆動が続けられる。この場合、上記テンションアームは、上記タイミングチェーンに接合して、主に過大なたるみを防止し、これにより、このタイミングチェーンが無用に振動するということが防止されて騒音の発生が防止され、かつ、上記クランク軸からカム軸への動力伝達が円滑になされる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記エンジンの組立時や保守点検時に、上記テンションアームが自由状態にあるとき、このテンションアームの一端部側は、このテンションアームの自重によりエンジン本体の外側方に向って自由に回動しようとする。ここで、このテンションアームは寸法の長いものであるため、このテンションアームの自由な回動を許容しておくと、その後において、上記エンジン本体に対する他の機器の組み付け時に、上記テンションアームが邪魔になるおそれがある。
【０００７】
そこで、上記エンジン本体に枢支される上記テンションアームの自由な回動を仮に阻止する仮阻止手段を設けて、これをエンジンの組立時に用いることが考えられるが、これでは、エンジンの組立作業が極めて煩雑になると考えられる。
【０００８】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、エンジンの組立作業や保守点検作業が容易にできるようにし、かつ、これが簡単な構成で達成されるようにすることを課題とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のエンジンにおけるカム軸駆動装置は、次の如くである。なお、この項において各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「発明の実施の形態」の項の内容に限定解釈するものではない。
【００１０】
請求項１の発明は、エンジン本体２が、シリンダブロック５と、このシリンダブロック５の上面に固着されるシリンダヘッド８と、これらシリンダブロック５の上面とシリンダヘッド８の下面との間に介設されるガスケット１１とを備え、軸心１５がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体２の下部に支承されるクランク軸１６と、上記エンジン本体２の上部に支承される動弁機構１９のカム軸２０，２１と、このカム軸２０，２１を上記クランク軸１６に連動連結させるタイミングチェーン２６と、上下方向に延びてその一端部３７側が上記クランク軸１６と平行な軸心３８回りで回動Ｃ，Ｄ可能となるよう上記エンジン本体２に枢支され、この回動Ｃ，Ｄで上記タイミングチェーン２６に接合するテンションアーム３４とを備えたエンジンにおいて、
【００１１】
上記ガスケット１１の一部分を上記エンジン本体２の外方に一体的に突出させて突出片４８，５０を成形し、上記テンションアーム３４がその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアーム３４が上記突出片４８，５０に当接して、上記所定回動位置以上の回動が阻止されるようにしたものである。
【００１２】
請求項２の発明は、請求項１の発明に加えて、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端を上記ガスケット１１側に位置させたものである。
【００１３】
請求項３の発明は、請求項１の発明に加えて、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端を外方に位置させたものである。
【００１４】
請求項４の発明は、請求項１から３のうちいずれか１つの発明に加えて、上記ガスケット１１の面に沿った方向に直交する上記突出片４８，５０の端面５５に上記テンションアーム３４が面接触して上記突出片４８，５０に当接するようにしたものである。
【００１５】
請求項５の発明は、請求項１から４のうちいずれか１つの発明に加えて、上記タイミングチェーン２６をその外方から覆って上記エンジン本体２に固着されるチェーンカバー４４を備えたエンジンにおいて、
【００１６】
上記クランク軸１６の径方向で、上記突出片４８を上記チェーンカバー４４の内面近傍に位置させたものである。
【００１７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
【００１８】
図２，３において、符号１は自動車など車両に搭載される多（４）気筒４サイクルエンジン（内燃機関）で、このエンジン１は車体に支持されるエンジン本体２を備えている。
【００１９】
上記エンジン本体２は、各軸心３がそれぞれほぼ鉛直方向で互いに平行に延びる複数のシリンダ孔４を有するシリンダブロック５と、このシリンダブロック５の下面に固着されてこのシリンダブロック５の下部と協同してクランクケースを形成するバルクヘッド７と、上記シリンダブロック５の上面に固着されるシリンダヘッド８と、このシリンダヘッド８の上面に固着されるシリンダヘッドカバー９と、上記バルクヘッド７の下面に固着されその内部に潤滑油が溜められるオイルパン１０と、上記シリンダブロック５の上面とシリンダヘッド８の下面との間に介設されてこれら両面間をシールするガスケット１１と、上記エンジン本体２の各構成部品５，７―１１を上記シリンダ孔４の軸心３に直交する方向で互いに精度よく位置決めするノックピン１２とを備えている。上記の場合、シリンダブロック５の下部は上記クランクケースの上部ケースに相当し、上記バルクヘッド７は上記クランクケースの下部ケースに相当する。
【００２０】
上記シリンダブロック５の上面、上記シリンダヘッド８の下面、および上記ガスケット１１は、それぞれ上記シリンダ孔４の軸心３に直交する方向に平坦に延び、上記ガスケット１１は複数枚（３枚）のステンレス金属製の薄板を互いに重ね合わせることにより成形されている。
【００２１】
上記エンジン１は、上記各シリンダ孔４に軸方向に摺動可能に嵌入されるピストン１４と、軸心１５がほぼ水平方向に延びこの軸心１５回りに回転可能となるよう上記エンジン本体２の下部に支承されるクランク軸１６と、このクランク軸１６と上記ピストン１４とを互いに連動連結させる連接棒１７とを備え、上記エンジン本体２の下部は上記シリンダブロック５の下部とバルクヘッド７とで構成され、上記クランク軸１６は上記シリンダブロック５とバルクヘッド７との間に挟まれてこれらに支承されている。
【００２２】
上記エンジン本体２の上部を構成する上記シリンダヘッド８には不図示の吸気弁および排気弁と、これら各弁を開閉弁動作可能とさせる動弁機構１９とが支承され、この動弁機構１９は、上記各弁にカム係合する吸、排気カム軸２０，２１を備え、これら各カム軸２０，２１の軸心は上記クランク軸１６の軸心１５と平行に延びている。
【００２３】
上記カム軸２０，２１を上記クランク軸１６に連動連結させるチェーン巻掛手段２３が設けらている。このチェーン巻掛手段２３は、上記クランク軸１６の一端部に支持される駆動鎖車２４と、この駆動鎖車２４の上方に位置して上記各カム軸２０，２１の各一端部にそれぞれ支持される従動鎖車２５と、上下方向に長く延びてこれら駆動鎖車２４と各従動鎖車２５とに巻き掛けられる無端帯形状のタイミングチェーン２６とを備えている。上記クランク軸１６および各カム軸２０，２１の各一端部と、チェーン巻掛手段２３とは、上記クランク軸１６の軸方向におけるエンジン本体２の一端部の竪壁２７から外方に突出させられており、この竪壁２７は、上記シリンダブロック５、バルクヘッド７、およびシリンダヘッド８の各竪壁２７により構成されている。
【００２４】
上記駆動鎖車２４から両従動鎖車２５，２５に至る上記タイミングチェーン２６の両部分のうちの一方の部分は、上記クランク軸１６と共に回転駆動する駆動鎖車２４により上記従動鎖車２５側から駆動鎖車２４側に向い引張されて下方移動Ａさせられる引張側部分２８であり、他方の部分は、上記駆動鎖車２４により引張させられた後に、上記従動鎖車２５に戻されるよう上方移動Ｂさせられる緩み側部分２９である。
【００２５】
上記チェーン巻掛手段２３は、上記エンジン本体２の竪壁２７の外方近傍に配置され、かつ、上記クランク軸１６の軸心１５に沿った視線でみて（図１―３）、上記タイミングチェーン２６の引張側部分２８と緩み側部分２９とを左右から挟むよう配置され、これら引張側部分２８と緩み側部分２９とに所定の引張力を与え、および／もしくは過大なたるみを防止する左右一対のテンションアーム３３，３４を備えている。
【００２６】
上記テンションアーム３３，３４のうちの一方のテンションアーム３３は、上記タイミングチェーン２６の引張側部分２８に沿うよう上下方向に長く延びて、上記竪壁２７に上下一対の締結具３５，３５により固着され、上記引張側部分２８に圧接状に接合させられている。他方のテンションアーム３４は、上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９に沿うよう上下方向に長く延びて、その上端部である一端部３７側が上記クランク軸１６の軸心１５と平行な軸心３８回りで左右に回動Ｃ，Ｄ可能となるよう上記テンションアーム３４の下端部である他端部３９が枢支軸４０により上記エンジン本体２のシリンダブロック５の竪壁２７に枢支されている。上記他方のテンションアーム３４は、上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の竪壁２７の外面よりも外方に配置され、上記クランク軸１６の軸心１５に沿った視線でみて（図１―３）、上記テンションアーム３４はその回動Ｃでこのテンションアーム３４の回動端部が上記エンジン本体２の外側方に突出可能とされている。
【００２７】
上記エンジン本体２側に支持され、上記テンションアーム３４を上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９に圧接させるよう上記テンションアーム３４を押圧して回動Ｄさせ、かつ、上記緩み側部分２９への上記テンションアーム３４の圧接力を自動調整可能とする押圧手段４１が設けられている。
【００２８】
上記チェーン巻掛手段２３と各テンションアーム３３，３４を、上記クランク軸１６の軸方向における外方から開閉可能に覆って上記エンジン本体２に対し締結具４３により着脱可能に固着されるチェーンカバー４４が設けられている。上記押圧手段４１は、上記チェーンカバー４４を上記クランク軸１６の径方向におけるその外方から内部に向けて貫通した状態で上記チェーンカバー４４に支持され、つまり、上記押圧手段４１はチェーンカバー４４を介しエンジン本体２に支持されている。上記チェーンカバー４４は、上記チェーン巻掛手段２３等をその外方から覆う板状のカバー本体４５と、このカバー本体４５の外縁部から上記エンジン本体２側に向けて一体的に突出し、上記エンジン本体２の竪壁２７の外縁部に上記締結具４３により締結されるフランジ部４６とを備え、上記カバー本体４５は全体として偏平な皿形状をなしている。
【００２９】
上記エンジン１が駆動するとき、上記クランク軸１６に上記チェーン巻掛手段２３のタイミングチェーン２６を介し動弁機構１９の各カム軸２０，２１が連動させられ、これら各カム軸２０，２１にカム係合する吸、排気弁が連動させられ、もって、上記エンジン１の駆動が続けられる。この場合、上記テンションアーム３４は、上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９に接合して、主に過大なたるみを防止し、これにより、このタイミングチェーン２６の緩み側部分２９が無用に振動するということが防止されて、騒音の発生が防止され、かつ、上記クランク軸１６から各カム軸２０，２１への動力伝達が円滑になされる。
【００３０】
図１，４において、上記クランク軸１６の軸心１５に沿った視線でみて（図１）、上記テンションアーム３４の長手方向の中途部は上記ガスケット１１を横切っており、上記エンジン本体２の竪壁２７の外縁部近傍における上記ガスケット１１の一部分が上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の竪壁２７の外方に一体的に突出させられて突出片４８が成形されている。
【００３１】
上記エンジン１の組立時など、上記エンジン本体２に対し押圧手段４１やチェーンカバー４４を組み付けていない状態で、上記テンションアーム３４がその自重で回動Ｃして所定回動位置（図１，４中一点鎖線）に達したとき、このテンションアーム３４の長手方向の中途部４９が上記突出片４８に当接して、上記所定回動位置以上の回動Ｃが阻止されるようになっている。
【００３２】
上記テンションアーム３４が上記所定回動位置に達した状態では、このテンションアーム３４に邪魔されずに、上記エンジン本体２の竪壁２７に対し上記チェーンカバー４４が着脱可能とされている。上記エンジン本体２の竪壁２７にチェーンカバー４４を固着させ、このチェーンカバー４４に上記押圧手段４１を支持させれば、この押圧手段４１は上記テンションアーム３４を前記のように押圧して回動Ｄさせる。
【００３３】
なお、図４中二点鎖線で示すように、上記ガスケット１１の他の一部分を上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の竪壁２７の外方に一体的に突出させて他の突出片５０を成形し、上記テンションアーム３４がその自重で上記回動Ｃとは反対方向に回動Ｄして他の所定回動位置（図４中三点鎖線）に達したとき、このテンションアーム３４の長手方向の中途部４９が上記突出片５０に当接して、上記他の所定回動位置以上の回動Ｄが阻止されるようにしてもよい。
【００３４】
上記構成によれば、エンジン１の組立作業や保守点検作業時に、上記テンションアーム３４が自由状態にあるとき、このテンションアーム３４を所定回動位置にさせて上記突出片４８，５０に当接させ、これにより、テンションアーム３４のそれ以上の自由な回動Ｃ，Ｄを阻止させておけば、その後において、上記エンジン本体２に対する他の機器であるチェーンカバー４４と押圧手段４１の組み付け時に、上記テンションアーム３４が邪魔になるということは防止され、よって、上記エンジン１の組立等の作業が容易にできることとなる。
【００３５】
しかも、上記したテンションアーム３４の自由な回動Ｃ，Ｄの阻止は、上記ガスケット１１の一部を一体的に突出させた突出片４８，５０により達成されることから、部品点数の増加が抑制され、よって、上記したエンジン１の組立等の作業の容易化は、簡単な構成で達成される。
【００３６】
また、上記突出片４８，５０は、上記エンジン本体２の外方に突出していて視認し易いため、エンジン１の組立作業時に、上記シリンダブロック５とシリンダヘッド８との間にガスケット１１が介設されているということの確認は上記突出片４８，５０の視認により容易にすることができ、よって、この点でも、エンジン１の組立等の作業がより容易にできる。
【００３７】
また、上記シリンダブロック５、シリンダヘッド８、およびガスケット１１はノックピン１２により互いの位置決めが精度よくなされているため、上記ガスケット１１から一体的に突出された突出片４８，５０により、上記テンションアーム３４を所定回動位置に位置決めさせたとき、この位置決めは精度よくでき、その分、上記エンジン１の組立等の作業は更に容易にできる。
【００３８】
図４において、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端が上記ガスケット１１側に位置させられている。
【００３９】
このため、上記エンジン１の組立等の作業時に、例えば、組み付け中の他の機器が上記突出片４８，５０の突出端に接触しようとしても、この接触以前に上記テンションアーム３４の外側面５３に上記機器が接触しがちとなって、上記突出片４８，５０に接触することが抑制される。よって、シール機能上、強度と剛性が低いガスケット１１から突出した上記突出片４８，５０は外力により変形し易いものではあるが、エンジン１の組立等の作業中に上記突出片４８，５０が外力を受けて変形するということは抑制され、これによっても、エンジン１の組立等の作業はより容易にできる。
【００４０】
なお、図４中一点鎖線で示すように、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端を外方に位置させてもよい。
【００４１】
このようにすれば、上記エンジン１の平面視における上記突出片４８，５０の面積が大きくなることから、上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９の上方移動Ｂに伴いオイルパン１０側からの潤滑油が上方に飛散しようとしても、この飛散は上記突出片４８，５０により抑制されて、直ちに上記オイルパン１０内に戻される。よって、常時、このオイルパン１０内に所定量の潤滑油が確保されて、この潤滑油は有効に用いられる。
【００４２】
図１において、上記突出片４８，５０は上記ガスケット１１の面に沿った方向に突出していて、この方向に直交する上記突出片４８，５０の端面５５に、上記テンションアーム３４の中途部４９が面接触して上記突出片４８，５０に当接することとされている。
【００４３】
このため、上記突出片４８，５０が上記テンションアーム３４から受ける外力は、概ね上記突出片４８，５０の面に沿った方向、つまり、その厚さ方向に比べて、強度と剛性とが大きい方向に向うこととなる。よって、前記したように突出片４８，５０は外力により変形し易いものではあるが、この変形が抑制されて、上記テンションアーム３４は所定回動位置でそれ以上の回動Ｃ，Ｄが、強固に、かつ、精度よく阻止される。
【００４４】
図４において、上記タイミングチェーン２６をその外方から覆って上記エンジン本体２に固着されるチェーンカバー４４を備えたエンジン１において、上記クランク軸１６の径方向のうち、水平方向で、上記突出片４８は上記チェーンカバー４４のフランジ部４６の内面近傍に位置させられている。
【００４５】
このため、上記チェーンカバー４４により上記チェーン巻掛手段２３のタイミングチェーン２６等をその外方から覆って、上記チェーンカバー４４を上記エンジン本体２の所定位置に位置決めし、かつ、固着させようとするとき、上記突出片４８を上記チェーンカバー４４の固着のためのガイドとして利用することができる。よって、その分、上記エンジン１の組立等の作業が、簡単な構成で更に容易にできる。
【００４６】
なお、以上は図示の例によるが、上記各シリンダ孔４の軸心３は鉛直線に対し傾斜していてもよい。また、上記テンションアーム３４はその下端部である他端部３９側が回動Ｃ，Ｄするよう上端部である一端部３７を上記エンジン本体２のシリンダブロック５もしくはシリンダヘッド８に枢支させてもよい。また、上記テンションアーム３４は上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の中途部に配置されるものであってもよい。また、突出片５０はなくてもよい。
【００４７】
【発明の効果】
本発明による効果は、次の如くである。
【００４８】
請求項１の発明は、エンジン本体が、シリンダブロックと、このシリンダブロックの上面に固着されるシリンダヘッドと、これらシリンダブロックの上面とシリンダヘッドの下面との間に介設されるガスケットとを備え、軸心がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体の下部に支承されるクランク軸と、上記エンジン本体の上部に支承される動弁機構のカム軸と、このカム軸を上記クランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、上下方向に延びてその一端部側が上記クランク軸と平行な軸心回りで回動可能となるよう上記エンジン本体に枢支され、この回動で上記タイミングチェーンに接合するテンションアームとを備えたエンジンにおいて、
【００４９】
上記ガスケットの一部分を上記エンジン本体の外方に一体的に突出させて突出片を成形し、上記テンションアームがその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアームが上記突出片に当接して、上記所定回動位置以上の回動が阻止されるようにしてある。
【００５０】
このため、エンジンの組立作業や保守点検作業時に、上記テンションアームが自由状態にあるとき、このテンションアームを所定回動位置にさせて上記突出片に当接させ、これにより、テンションアームのそれ以上の自由な回動を阻止させておけば、その後において、上記エンジン本体に対する他の機器の組み付け時に、上記テンションアームが邪魔になるということは防止され、よって、上記エンジンの組立等の作業が容易にできることとなる。
【００５１】
しかも、上記したテンションアームの自由な回動の阻止は、上記ガスケットの一部を一体的に突出させた突出片により達成されることから、部品点数の増加が抑制され、よって、上記したエンジンの組立等の作業の容易化は、簡単な構成で達成される。
【００５２】
また、上記突出片は、上記エンジン本体の外方に突出していて視認し易いため、エンジンの組立作業時に、上記シリンダブロックとシリンダヘッドとの間にガスケットが介設されているということの確認は上記突出片の視認により容易にすることができ、よって、この点でも、エンジンの組立等の作業がより容易にできる。
【００５３】
請求項２の発明は、上記クランク軸の軸方向における上記テンションアームの外側面よりも、上記突出片の突出端を上記ガスケット側に位置させてある。
【００５４】
このため、上記エンジンの組立等の作業時に、例えば、組み付け中の他の機器が上記突出片の突出端に接触しようとしても、この接触以前に上記テンションアームの外側面に上記機器が接触しがちとなって、上記突出片に接触することが抑制される。よって、シール機能上、強度と剛性が低いガスケットから突出した上記突出片は外力により変形し易いものではあるが、エンジンの組立等の作業中に上記突出片が外力を受けて変形するということは抑制され、これによっても、エンジンの組立等の作業はより容易にできる。
【００５５】
請求項３の発明は、上記クランク軸の軸方向における上記テンションアームの外側面よりも、上記突出片の突出端を外方に位置させている。
【００５６】
このため、上記エンジンの平面視における上記突出片の面積が大きくなることから、上記タイミングチェーンの上方移動に伴い潤滑油が上方に飛散しようとしても、この飛散は上記突出片により抑制されて、直ちに所定部位に戻され、この潤滑油は有効に用いられる。
【００５７】
請求項４の発明は、上記ガスケットの面に沿った方向に直交する上記突出片の端面に上記テンションアームが面接触して上記突出片に当接するようにしてある。
【００５８】
このため、上記突出片が上記テンションアームから受ける外力は、概ね上記突出片の面に沿った方向、つまり、その厚さ方向に比べて、強度と剛性とが大きい方向に向うこととなる。よって、前記したように突出片は外力により変形し易いものではあるが、この変形が抑制されて、上記テンションアームは所定回動位置でそれ以上の回動が、強固に、かつ、精度よく阻止される。
【００５９】
請求項５の発明は、上記タイミングチェーンをその外方から覆って上記エンジン本体に固着されるチェーンカバーを備えたエンジンにおいて、
【００６０】
上記クランク軸の径方向で、上記突出片を上記チェーンカバーの内面近傍に位置させている。
【００６１】
このため、上記チェーンカバーによりタイミングチェーンをその外方から覆って、上記チェーンカバーを上記エンジン本体の所定位置に位置決めし、かつ、固着させようとするとき、上記突出片を上記チェーンカバーの固着のためのガイドとして利用することができる。よって、その分、上記エンジンの組立等の作業が、簡単な構成で更に容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図３の部分拡大図である。
【図２】エンジンの全体正面図である。
【図３】エンジン本体とチェーン巻掛手段等の正面図である。
【図４】図３の４‐４線矢視図である。
【符号の説明】
１ エンジン
２ エンジン本体
３ 軸心
４ シリンダ孔
５ シリンダブロック
７ バルクヘッド
８ シリンダヘッド
１０ オイルパン
１１ ガスケット
１２ ノックピン
１５ 軸心
１６ クランク軸
１９ 動弁機構
２０ カム軸
２１ カム軸
２３ チェーン巻掛手段
２４ 駆動鎖車
２５ 従動鎖車
２６ タイミングチェーン
２７ 竪壁
２８ 引張側部分
２９ 緩み側部分
３４ テンションアーム
３７ 一端部
３８ 軸心
３９ 他端部
４０ 枢支軸
４１ 押圧手段
４３ 締結具
４４ チェーンカバー
４５ カバー本体
４６ フランジ部
４８ 突出片
４９ 中途部
５０ 突出片
５３ 外側面
５５ 端面
Ａ 下方移動
Ｂ 上方移動
Ｃ 回動
Ｄ 回動
【発明が属する技術分野】
本発明は、カム軸をクランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、このタイミングチェーンに適度の引張力を与えるテンションアームとを備え、このテンションアームの自由な回動を阻止するようにしたエンジンにおけるカム軸駆動装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
【０００３】
【特許文献１】特開平８−１２１１８８号公報
【０００４】
上記エンジンにおけるカム軸駆動装置には、従来、上記特許文献１で示されたものがある。この特許文献１によれば、エンジンはエンジン本体と、軸心がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体の下部に支承されるクランク軸と、上記エンジン本体の上部に支承される動弁機構のカム軸と、このカム軸を上記クランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、上下方向に延びてその一端部側が上記クランク軸と平行な軸心回りで回動可能となるよう上記エンジン本体に枢支され、この回動で上記タイミングチェーンに接合するテンションアームとを備えている。
【０００５】
上記エンジンが駆動するとき、上記クランク軸に上記タイミングチェーンを介し動弁機構のカム軸が連動させられ、かつ、これらカム軸にカム係合する吸、排気弁が連動させられ、もって、上記エンジンの駆動が続けられる。この場合、上記テンションアームは、上記タイミングチェーンに接合して、主に過大なたるみを防止し、これにより、このタイミングチェーンが無用に振動するということが防止されて騒音の発生が防止され、かつ、上記クランク軸からカム軸への動力伝達が円滑になされる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記エンジンの組立時や保守点検時に、上記テンションアームが自由状態にあるとき、このテンションアームの一端部側は、このテンションアームの自重によりエンジン本体の外側方に向って自由に回動しようとする。ここで、このテンションアームは寸法の長いものであるため、このテンションアームの自由な回動を許容しておくと、その後において、上記エンジン本体に対する他の機器の組み付け時に、上記テンションアームが邪魔になるおそれがある。
【０００７】
そこで、上記エンジン本体に枢支される上記テンションアームの自由な回動を仮に阻止する仮阻止手段を設けて、これをエンジンの組立時に用いることが考えられるが、これでは、エンジンの組立作業が極めて煩雑になると考えられる。
【０００８】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、エンジンの組立作業や保守点検作業が容易にできるようにし、かつ、これが簡単な構成で達成されるようにすることを課題とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のエンジンにおけるカム軸駆動装置は、次の如くである。なお、この項において各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「発明の実施の形態」の項の内容に限定解釈するものではない。
【００１０】
請求項１の発明は、エンジン本体２が、シリンダブロック５と、このシリンダブロック５の上面に固着されるシリンダヘッド８と、これらシリンダブロック５の上面とシリンダヘッド８の下面との間に介設されるガスケット１１とを備え、軸心１５がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体２の下部に支承されるクランク軸１６と、上記エンジン本体２の上部に支承される動弁機構１９のカム軸２０，２１と、このカム軸２０，２１を上記クランク軸１６に連動連結させるタイミングチェーン２６と、上下方向に延びてその一端部３７側が上記クランク軸１６と平行な軸心３８回りで回動Ｃ，Ｄ可能となるよう上記エンジン本体２に枢支され、この回動Ｃ，Ｄで上記タイミングチェーン２６に接合するテンションアーム３４とを備えたエンジンにおいて、
【００１１】
上記ガスケット１１の一部分を上記エンジン本体２の外方に一体的に突出させて突出片４８，５０を成形し、上記テンションアーム３４がその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアーム３４が上記突出片４８，５０に当接して、上記所定回動位置以上の回動が阻止されるようにしたものである。
【００１２】
請求項２の発明は、請求項１の発明に加えて、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端を上記ガスケット１１側に位置させたものである。
【００１３】
請求項３の発明は、請求項１の発明に加えて、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端を外方に位置させたものである。
【００１４】
請求項４の発明は、請求項１から３のうちいずれか１つの発明に加えて、上記ガスケット１１の面に沿った方向に直交する上記突出片４８，５０の端面５５に上記テンションアーム３４が面接触して上記突出片４８，５０に当接するようにしたものである。
【００１５】
請求項５の発明は、請求項１から４のうちいずれか１つの発明に加えて、上記タイミングチェーン２６をその外方から覆って上記エンジン本体２に固着されるチェーンカバー４４を備えたエンジンにおいて、
【００１６】
上記クランク軸１６の径方向で、上記突出片４８を上記チェーンカバー４４の内面近傍に位置させたものである。
【００１７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
【００１８】
図２，３において、符号１は自動車など車両に搭載される多（４）気筒４サイクルエンジン（内燃機関）で、このエンジン１は車体に支持されるエンジン本体２を備えている。
【００１９】
上記エンジン本体２は、各軸心３がそれぞれほぼ鉛直方向で互いに平行に延びる複数のシリンダ孔４を有するシリンダブロック５と、このシリンダブロック５の下面に固着されてこのシリンダブロック５の下部と協同してクランクケースを形成するバルクヘッド７と、上記シリンダブロック５の上面に固着されるシリンダヘッド８と、このシリンダヘッド８の上面に固着されるシリンダヘッドカバー９と、上記バルクヘッド７の下面に固着されその内部に潤滑油が溜められるオイルパン１０と、上記シリンダブロック５の上面とシリンダヘッド８の下面との間に介設されてこれら両面間をシールするガスケット１１と、上記エンジン本体２の各構成部品５，７―１１を上記シリンダ孔４の軸心３に直交する方向で互いに精度よく位置決めするノックピン１２とを備えている。上記の場合、シリンダブロック５の下部は上記クランクケースの上部ケースに相当し、上記バルクヘッド７は上記クランクケースの下部ケースに相当する。
【００２０】
上記シリンダブロック５の上面、上記シリンダヘッド８の下面、および上記ガスケット１１は、それぞれ上記シリンダ孔４の軸心３に直交する方向に平坦に延び、上記ガスケット１１は複数枚（３枚）のステンレス金属製の薄板を互いに重ね合わせることにより成形されている。
【００２１】
上記エンジン１は、上記各シリンダ孔４に軸方向に摺動可能に嵌入されるピストン１４と、軸心１５がほぼ水平方向に延びこの軸心１５回りに回転可能となるよう上記エンジン本体２の下部に支承されるクランク軸１６と、このクランク軸１６と上記ピストン１４とを互いに連動連結させる連接棒１７とを備え、上記エンジン本体２の下部は上記シリンダブロック５の下部とバルクヘッド７とで構成され、上記クランク軸１６は上記シリンダブロック５とバルクヘッド７との間に挟まれてこれらに支承されている。
【００２２】
上記エンジン本体２の上部を構成する上記シリンダヘッド８には不図示の吸気弁および排気弁と、これら各弁を開閉弁動作可能とさせる動弁機構１９とが支承され、この動弁機構１９は、上記各弁にカム係合する吸、排気カム軸２０，２１を備え、これら各カム軸２０，２１の軸心は上記クランク軸１６の軸心１５と平行に延びている。
【００２３】
上記カム軸２０，２１を上記クランク軸１６に連動連結させるチェーン巻掛手段２３が設けらている。このチェーン巻掛手段２３は、上記クランク軸１６の一端部に支持される駆動鎖車２４と、この駆動鎖車２４の上方に位置して上記各カム軸２０，２１の各一端部にそれぞれ支持される従動鎖車２５と、上下方向に長く延びてこれら駆動鎖車２４と各従動鎖車２５とに巻き掛けられる無端帯形状のタイミングチェーン２６とを備えている。上記クランク軸１６および各カム軸２０，２１の各一端部と、チェーン巻掛手段２３とは、上記クランク軸１６の軸方向におけるエンジン本体２の一端部の竪壁２７から外方に突出させられており、この竪壁２７は、上記シリンダブロック５、バルクヘッド７、およびシリンダヘッド８の各竪壁２７により構成されている。
【００２４】
上記駆動鎖車２４から両従動鎖車２５，２５に至る上記タイミングチェーン２６の両部分のうちの一方の部分は、上記クランク軸１６と共に回転駆動する駆動鎖車２４により上記従動鎖車２５側から駆動鎖車２４側に向い引張されて下方移動Ａさせられる引張側部分２８であり、他方の部分は、上記駆動鎖車２４により引張させられた後に、上記従動鎖車２５に戻されるよう上方移動Ｂさせられる緩み側部分２９である。
【００２５】
上記チェーン巻掛手段２３は、上記エンジン本体２の竪壁２７の外方近傍に配置され、かつ、上記クランク軸１６の軸心１５に沿った視線でみて（図１―３）、上記タイミングチェーン２６の引張側部分２８と緩み側部分２９とを左右から挟むよう配置され、これら引張側部分２８と緩み側部分２９とに所定の引張力を与え、および／もしくは過大なたるみを防止する左右一対のテンションアーム３３，３４を備えている。
【００２６】
上記テンションアーム３３，３４のうちの一方のテンションアーム３３は、上記タイミングチェーン２６の引張側部分２８に沿うよう上下方向に長く延びて、上記竪壁２７に上下一対の締結具３５，３５により固着され、上記引張側部分２８に圧接状に接合させられている。他方のテンションアーム３４は、上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９に沿うよう上下方向に長く延びて、その上端部である一端部３７側が上記クランク軸１６の軸心１５と平行な軸心３８回りで左右に回動Ｃ，Ｄ可能となるよう上記テンションアーム３４の下端部である他端部３９が枢支軸４０により上記エンジン本体２のシリンダブロック５の竪壁２７に枢支されている。上記他方のテンションアーム３４は、上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の竪壁２７の外面よりも外方に配置され、上記クランク軸１６の軸心１５に沿った視線でみて（図１―３）、上記テンションアーム３４はその回動Ｃでこのテンションアーム３４の回動端部が上記エンジン本体２の外側方に突出可能とされている。
【００２７】
上記エンジン本体２側に支持され、上記テンションアーム３４を上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９に圧接させるよう上記テンションアーム３４を押圧して回動Ｄさせ、かつ、上記緩み側部分２９への上記テンションアーム３４の圧接力を自動調整可能とする押圧手段４１が設けられている。
【００２８】
上記チェーン巻掛手段２３と各テンションアーム３３，３４を、上記クランク軸１６の軸方向における外方から開閉可能に覆って上記エンジン本体２に対し締結具４３により着脱可能に固着されるチェーンカバー４４が設けられている。上記押圧手段４１は、上記チェーンカバー４４を上記クランク軸１６の径方向におけるその外方から内部に向けて貫通した状態で上記チェーンカバー４４に支持され、つまり、上記押圧手段４１はチェーンカバー４４を介しエンジン本体２に支持されている。上記チェーンカバー４４は、上記チェーン巻掛手段２３等をその外方から覆う板状のカバー本体４５と、このカバー本体４５の外縁部から上記エンジン本体２側に向けて一体的に突出し、上記エンジン本体２の竪壁２７の外縁部に上記締結具４３により締結されるフランジ部４６とを備え、上記カバー本体４５は全体として偏平な皿形状をなしている。
【００２９】
上記エンジン１が駆動するとき、上記クランク軸１６に上記チェーン巻掛手段２３のタイミングチェーン２６を介し動弁機構１９の各カム軸２０，２１が連動させられ、これら各カム軸２０，２１にカム係合する吸、排気弁が連動させられ、もって、上記エンジン１の駆動が続けられる。この場合、上記テンションアーム３４は、上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９に接合して、主に過大なたるみを防止し、これにより、このタイミングチェーン２６の緩み側部分２９が無用に振動するということが防止されて、騒音の発生が防止され、かつ、上記クランク軸１６から各カム軸２０，２１への動力伝達が円滑になされる。
【００３０】
図１，４において、上記クランク軸１６の軸心１５に沿った視線でみて（図１）、上記テンションアーム３４の長手方向の中途部は上記ガスケット１１を横切っており、上記エンジン本体２の竪壁２７の外縁部近傍における上記ガスケット１１の一部分が上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の竪壁２７の外方に一体的に突出させられて突出片４８が成形されている。
【００３１】
上記エンジン１の組立時など、上記エンジン本体２に対し押圧手段４１やチェーンカバー４４を組み付けていない状態で、上記テンションアーム３４がその自重で回動Ｃして所定回動位置（図１，４中一点鎖線）に達したとき、このテンションアーム３４の長手方向の中途部４９が上記突出片４８に当接して、上記所定回動位置以上の回動Ｃが阻止されるようになっている。
【００３２】
上記テンションアーム３４が上記所定回動位置に達した状態では、このテンションアーム３４に邪魔されずに、上記エンジン本体２の竪壁２７に対し上記チェーンカバー４４が着脱可能とされている。上記エンジン本体２の竪壁２７にチェーンカバー４４を固着させ、このチェーンカバー４４に上記押圧手段４１を支持させれば、この押圧手段４１は上記テンションアーム３４を前記のように押圧して回動Ｄさせる。
【００３３】
なお、図４中二点鎖線で示すように、上記ガスケット１１の他の一部分を上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の竪壁２７の外方に一体的に突出させて他の突出片５０を成形し、上記テンションアーム３４がその自重で上記回動Ｃとは反対方向に回動Ｄして他の所定回動位置（図４中三点鎖線）に達したとき、このテンションアーム３４の長手方向の中途部４９が上記突出片５０に当接して、上記他の所定回動位置以上の回動Ｄが阻止されるようにしてもよい。
【００３４】
上記構成によれば、エンジン１の組立作業や保守点検作業時に、上記テンションアーム３４が自由状態にあるとき、このテンションアーム３４を所定回動位置にさせて上記突出片４８，５０に当接させ、これにより、テンションアーム３４のそれ以上の自由な回動Ｃ，Ｄを阻止させておけば、その後において、上記エンジン本体２に対する他の機器であるチェーンカバー４４と押圧手段４１の組み付け時に、上記テンションアーム３４が邪魔になるということは防止され、よって、上記エンジン１の組立等の作業が容易にできることとなる。
【００３５】
しかも、上記したテンションアーム３４の自由な回動Ｃ，Ｄの阻止は、上記ガスケット１１の一部を一体的に突出させた突出片４８，５０により達成されることから、部品点数の増加が抑制され、よって、上記したエンジン１の組立等の作業の容易化は、簡単な構成で達成される。
【００３６】
また、上記突出片４８，５０は、上記エンジン本体２の外方に突出していて視認し易いため、エンジン１の組立作業時に、上記シリンダブロック５とシリンダヘッド８との間にガスケット１１が介設されているということの確認は上記突出片４８，５０の視認により容易にすることができ、よって、この点でも、エンジン１の組立等の作業がより容易にできる。
【００３７】
また、上記シリンダブロック５、シリンダヘッド８、およびガスケット１１はノックピン１２により互いの位置決めが精度よくなされているため、上記ガスケット１１から一体的に突出された突出片４８，５０により、上記テンションアーム３４を所定回動位置に位置決めさせたとき、この位置決めは精度よくでき、その分、上記エンジン１の組立等の作業は更に容易にできる。
【００３８】
図４において、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端が上記ガスケット１１側に位置させられている。
【００３９】
このため、上記エンジン１の組立等の作業時に、例えば、組み付け中の他の機器が上記突出片４８，５０の突出端に接触しようとしても、この接触以前に上記テンションアーム３４の外側面５３に上記機器が接触しがちとなって、上記突出片４８，５０に接触することが抑制される。よって、シール機能上、強度と剛性が低いガスケット１１から突出した上記突出片４８，５０は外力により変形し易いものではあるが、エンジン１の組立等の作業中に上記突出片４８，５０が外力を受けて変形するということは抑制され、これによっても、エンジン１の組立等の作業はより容易にできる。
【００４０】
なお、図４中一点鎖線で示すように、上記クランク軸１６の軸方向における上記テンションアーム３４の外側面５３よりも、上記突出片４８，５０の突出端を外方に位置させてもよい。
【００４１】
このようにすれば、上記エンジン１の平面視における上記突出片４８，５０の面積が大きくなることから、上記タイミングチェーン２６の緩み側部分２９の上方移動Ｂに伴いオイルパン１０側からの潤滑油が上方に飛散しようとしても、この飛散は上記突出片４８，５０により抑制されて、直ちに上記オイルパン１０内に戻される。よって、常時、このオイルパン１０内に所定量の潤滑油が確保されて、この潤滑油は有効に用いられる。
【００４２】
図１において、上記突出片４８，５０は上記ガスケット１１の面に沿った方向に突出していて、この方向に直交する上記突出片４８，５０の端面５５に、上記テンションアーム３４の中途部４９が面接触して上記突出片４８，５０に当接することとされている。
【００４３】
このため、上記突出片４８，５０が上記テンションアーム３４から受ける外力は、概ね上記突出片４８，５０の面に沿った方向、つまり、その厚さ方向に比べて、強度と剛性とが大きい方向に向うこととなる。よって、前記したように突出片４８，５０は外力により変形し易いものではあるが、この変形が抑制されて、上記テンションアーム３４は所定回動位置でそれ以上の回動Ｃ，Ｄが、強固に、かつ、精度よく阻止される。
【００４４】
図４において、上記タイミングチェーン２６をその外方から覆って上記エンジン本体２に固着されるチェーンカバー４４を備えたエンジン１において、上記クランク軸１６の径方向のうち、水平方向で、上記突出片４８は上記チェーンカバー４４のフランジ部４６の内面近傍に位置させられている。
【００４５】
このため、上記チェーンカバー４４により上記チェーン巻掛手段２３のタイミングチェーン２６等をその外方から覆って、上記チェーンカバー４４を上記エンジン本体２の所定位置に位置決めし、かつ、固着させようとするとき、上記突出片４８を上記チェーンカバー４４の固着のためのガイドとして利用することができる。よって、その分、上記エンジン１の組立等の作業が、簡単な構成で更に容易にできる。
【００４６】
なお、以上は図示の例によるが、上記各シリンダ孔４の軸心３は鉛直線に対し傾斜していてもよい。また、上記テンションアーム３４はその下端部である他端部３９側が回動Ｃ，Ｄするよう上端部である一端部３７を上記エンジン本体２のシリンダブロック５もしくはシリンダヘッド８に枢支させてもよい。また、上記テンションアーム３４は上記クランク軸１６の軸方向で上記エンジン本体２の中途部に配置されるものであってもよい。また、突出片５０はなくてもよい。
【００４７】
【発明の効果】
本発明による効果は、次の如くである。
【００４８】
請求項１の発明は、エンジン本体が、シリンダブロックと、このシリンダブロックの上面に固着されるシリンダヘッドと、これらシリンダブロックの上面とシリンダヘッドの下面との間に介設されるガスケットとを備え、軸心がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体の下部に支承されるクランク軸と、上記エンジン本体の上部に支承される動弁機構のカム軸と、このカム軸を上記クランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、上下方向に延びてその一端部側が上記クランク軸と平行な軸心回りで回動可能となるよう上記エンジン本体に枢支され、この回動で上記タイミングチェーンに接合するテンションアームとを備えたエンジンにおいて、
【００４９】
上記ガスケットの一部分を上記エンジン本体の外方に一体的に突出させて突出片を成形し、上記テンションアームがその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアームが上記突出片に当接して、上記所定回動位置以上の回動が阻止されるようにしてある。
【００５０】
このため、エンジンの組立作業や保守点検作業時に、上記テンションアームが自由状態にあるとき、このテンションアームを所定回動位置にさせて上記突出片に当接させ、これにより、テンションアームのそれ以上の自由な回動を阻止させておけば、その後において、上記エンジン本体に対する他の機器の組み付け時に、上記テンションアームが邪魔になるということは防止され、よって、上記エンジンの組立等の作業が容易にできることとなる。
【００５１】
しかも、上記したテンションアームの自由な回動の阻止は、上記ガスケットの一部を一体的に突出させた突出片により達成されることから、部品点数の増加が抑制され、よって、上記したエンジンの組立等の作業の容易化は、簡単な構成で達成される。
【００５２】
また、上記突出片は、上記エンジン本体の外方に突出していて視認し易いため、エンジンの組立作業時に、上記シリンダブロックとシリンダヘッドとの間にガスケットが介設されているということの確認は上記突出片の視認により容易にすることができ、よって、この点でも、エンジンの組立等の作業がより容易にできる。
【００５３】
請求項２の発明は、上記クランク軸の軸方向における上記テンションアームの外側面よりも、上記突出片の突出端を上記ガスケット側に位置させてある。
【００５４】
このため、上記エンジンの組立等の作業時に、例えば、組み付け中の他の機器が上記突出片の突出端に接触しようとしても、この接触以前に上記テンションアームの外側面に上記機器が接触しがちとなって、上記突出片に接触することが抑制される。よって、シール機能上、強度と剛性が低いガスケットから突出した上記突出片は外力により変形し易いものではあるが、エンジンの組立等の作業中に上記突出片が外力を受けて変形するということは抑制され、これによっても、エンジンの組立等の作業はより容易にできる。
【００５５】
請求項３の発明は、上記クランク軸の軸方向における上記テンションアームの外側面よりも、上記突出片の突出端を外方に位置させている。
【００５６】
このため、上記エンジンの平面視における上記突出片の面積が大きくなることから、上記タイミングチェーンの上方移動に伴い潤滑油が上方に飛散しようとしても、この飛散は上記突出片により抑制されて、直ちに所定部位に戻され、この潤滑油は有効に用いられる。
【００５７】
請求項４の発明は、上記ガスケットの面に沿った方向に直交する上記突出片の端面に上記テンションアームが面接触して上記突出片に当接するようにしてある。
【００５８】
このため、上記突出片が上記テンションアームから受ける外力は、概ね上記突出片の面に沿った方向、つまり、その厚さ方向に比べて、強度と剛性とが大きい方向に向うこととなる。よって、前記したように突出片は外力により変形し易いものではあるが、この変形が抑制されて、上記テンションアームは所定回動位置でそれ以上の回動が、強固に、かつ、精度よく阻止される。
【００５９】
請求項５の発明は、上記タイミングチェーンをその外方から覆って上記エンジン本体に固着されるチェーンカバーを備えたエンジンにおいて、
【００６０】
上記クランク軸の径方向で、上記突出片を上記チェーンカバーの内面近傍に位置させている。
【００６１】
このため、上記チェーンカバーによりタイミングチェーンをその外方から覆って、上記チェーンカバーを上記エンジン本体の所定位置に位置決めし、かつ、固着させようとするとき、上記突出片を上記チェーンカバーの固着のためのガイドとして利用することができる。よって、その分、上記エンジンの組立等の作業が、簡単な構成で更に容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図３の部分拡大図である。
【図２】エンジンの全体正面図である。
【図３】エンジン本体とチェーン巻掛手段等の正面図である。
【図４】図３の４‐４線矢視図である。
【符号の説明】
１ エンジン
２ エンジン本体
３ 軸心
４ シリンダ孔
５ シリンダブロック
７ バルクヘッド
８ シリンダヘッド
１０ オイルパン
１１ ガスケット
１２ ノックピン
１５ 軸心
１６ クランク軸
１９ 動弁機構
２０ カム軸
２１ カム軸
２３ チェーン巻掛手段
２４ 駆動鎖車
２５ 従動鎖車
２６ タイミングチェーン
２７ 竪壁
２８ 引張側部分
２９ 緩み側部分
３４ テンションアーム
３７ 一端部
３８ 軸心
３９ 他端部
４０ 枢支軸
４１ 押圧手段
４３ 締結具
４４ チェーンカバー
４５ カバー本体
４６ フランジ部
４８ 突出片
４９ 中途部
５０ 突出片
５３ 外側面
５５ 端面
Ａ 下方移動
Ｂ 上方移動
Ｃ 回動
Ｄ 回動
Claims (5)
- エンジン本体が、シリンダブロックと、このシリンダブロックの上面に固着されるシリンダヘッドと、これらシリンダブロックの上面とシリンダヘッドの下面との間に介設されるガスケットとを備え、軸心がほぼ水平方向に延びて上記エンジン本体の下部に支承されるクランク軸と、上記エンジン本体の上部に支承される動弁機構のカム軸と、このカム軸を上記クランク軸に連動連結させるタイミングチェーンと、上下方向に延びてその一端部側が上記クランク軸と平行な軸心回りで回動可能となるよう上記エンジン本体に枢支され、この回動で上記タイミングチェーンに接合するテンションアームとを備えたエンジンにおいて、
上記ガスケットの一部分を上記エンジン本体の外方に一体的に突出させて突出片を成形し、上記テンションアームがその自重で所定回動位置に達したとき、このテンションアームが上記突出片に当接して、上記所定回動位置以上の回動が阻止されるようにしたエンジンにおけるカム軸駆動装置。 - 上記クランク軸の軸方向における上記テンションアームの外側面よりも、上記突出片の突出端を上記ガスケット側に位置させた請求項１に記載のエンジンにおけるカム軸駆動装置。
- 上記クランク軸の軸方向における上記テンションアームの外側面よりも、上記突出片の突出端を外方に位置させた請求項１に記載のエンジンにおけるカム軸駆動装置。
- 上記ガスケットの面に沿った方向に直交する上記突出片の端面に上記テンションアームが面接触して上記突出片に当接するようにした請求項１から３のうちいずれか１つに記載のエンジンにおけるカム軸駆動装置。
- 上記タイミングチェーンをその外方から覆って上記エンジン本体に固着されるチェーンカバーを備えたエンジンにおいて、
上記クランク軸の径方向で、上記突出片を上記チェーンカバーの内面近傍に位置させた請求項１から４のうちいずれか１つに記載のエンジンにおけるカム軸駆動装置。
Priority Applications (4)
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