JP3654587B2 - カバー部材の接合面シール構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのオイルパンと接合するカバー部材の接合面シール構造に関し、詳しくは、液状ガスケットの使用に好適なカバー部材の接合面シール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、部材間の接合面をシールする場合、一方の部材の接合面にシート状ガスケットを位置決めし、この接合面に他方の部材の接合面を重ねて両者の間にシート状ガスケットを挟み込み、この状態で両部材を締結することにより、部材間の接合面をシールする。
【0003】
しかしながら、前記のようなシート状ガスケットを使用して接合面をシールする場合、シート状ガスケットの位置決め作業が煩雑であり、作業性が悪い。ことに、特許第2563123号公報に記載されているエンジンのように、半円状凹面を有するオイルパンの接合面と、前記半円状凹面に対応する半円状凸面を有するシリンダブロックの接合面とをシールする場合、接合面の平坦部に対応したシート状ガスケットと、半円状凹面(半円状凸面)に対応したシート状ガスケットとを併用する必要も生じ、また、両シート状ガスケットの接続部分のシール不良を解消する対策も必要となるため、その作業性は著しく煩雑となる。このような問題は、クランクシャフトの導出穴の周囲にオイルパンとの平坦な接合面から半円状に膨出する膨出部を備えたカバー部材の接合面のシール構造においても同様に発生する。
【0004】
ここで、前記のようにクランクシャフトの導出穴の周囲にオイルパンとの平坦な接合面から半円状に膨出する膨出部を備えたカバー部材の接合面をシールする場合、シート状ガスケットに代えて液状ガスケットを使用すると、位置決め作業が不要となるため、作業性を著しく改善することができる。この場合、液状ガスケットは、シール不良が発生しないように、平坦な接合面から半円状の膨出部の周面に亘って途切れることなく連続して塗布する。そして、液状ガスケットがある程度固化した状態でカバー部材をオイルパンに締結する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のようなカバー部材の接合面をシールする場合、半円状の膨出部の両側部分の周面はカバー部材の締結方向に沿って切り立っているため、オイルパンと締結によっても十分な面圧が得られず、シール不良を起こす恐れがある。また、液状ガスケットを使用した場合には、平坦な接合面と半円状の膨出部の周面との境界部のエッジ部分で液状ガスケットが分断され、その部分にシール不良が発生する恐れもある。
【0006】
そこで、本発明は、クランクシャフトのシャフト導出穴の周囲にオイルパンとの平坦な接合面から膨出する膨出部を備えたカバー部材の接合面を確実にシールすることができるカバー部材の接合面シール構造を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する手段として、本発明に係るカバー部材の接合面シール構造は、エンジンのクランクシャフトの端部を導出させるシャフト導出穴を有し、このシャフト導出穴の周囲にオイルパンとの平坦接合面から膨出する膨出部を備えたカバー部材の接合面シール構造であって、前記膨出部から所定間隔を開けてその両側にオイルパンとの締結部を設けると共に、前記膨出部には、前記シャフト導出穴に沿った円弧状接合面と、この円弧状接合面の接線方向に沿って前記締結部へ向かう傾斜接合面と、前記傾斜接合部と前記締結部との連結部分の内側に設けられた肉抜き部と、前記傾斜接合面に連続して、前記シャフト導出穴の上半部を囲む形態でその周囲の壁部に形成された湾曲断面部と、を設け、前記傾斜接合面と、これに連続する前記平坦接合面および円弧状接合面をガスケットを介してオイルパンに接合することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るカバー部材の接合面シール構造では、カバー部材の平坦接合面と、これに連続する膨出部の傾斜接合面および円弧状接合面をガスケットを介してオイルパンに接合するため、オイルパンとの締結によりガスケットには十分な面圧が作用し、カバー部材の接合面が確実にシールされる。また、カバー部材の接合面にはエッジ部分が存在しないため、液状ガスケットを使用した場合においても、オイルパンとの締結により液状ガスケットが分断される恐れがなく、液状ガスケットの使用に好適である。さらに、膨出部は、傾斜接合面が剛性の高い締結部および湾曲断面部に連結されているため、剛性が高く、その内側に肉抜き部を設けて軽量化しているにも拘わらず、十分な振動抑制機能を発揮する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係るカバー部材の接合面シール構造の実施の形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態に係るカバー部材の接合面シール構造が適用されるエンジンの斜視図、図2は図1に示したエンジンの分解斜視図である。
【0010】
一実施形態に係るカバー部材の接合面シール構造は、例えば図1に示す車両用のエンジン1に適用される。このエンジン1は、例えばSOHC(シングルオーバヘッドカムシャフト)型の直列4気筒エンジンであり、シリンダブロック2の上端にはシリンダヘッド3、シリンダヘッドカバー4が順次接合され、シリンダブロック2の下端にはボックス状のオイルパン5が接合される。そして、このエンジン1の一端部には、一実施形態に係るカバー部材としてのチェーンケース6が装着されている。
【0011】
図2に示すように、前記シリンダブロック2は、1列に配列された4個のシリンダボア2Aを有し、各シリンダボア2Aには、クランクシャフト7にコンロッド8を介して連結されたピストン9がそれぞれ摺動自在に嵌挿される。そして、前記クランクシャフト7は、一体型ベアリングキャップ10によってシリンダブロック2の下部に回転自在に組み付けられる。このクランクシャフト7のシリンダブロック2から突出する一端部には、クランクスプロケット11およびクランクプーリ12が固定される。
【0012】
前記シリンダヘッドカバー4で覆われるシリンダヘッド3の上部空間3Aには、カムシャフト13が回転自在に支持されて収容される。このカムシャフト13の一端部はシリンダヘッド3の一端部から突出し、その一端部にはカムスプロケット14が固定されている。そして、このカムシャフト13側のカムスプロケット14と、前記クランクシャフト7側のクランクスプロケット11との間には、図1に示すようにタイミングチェーン15が巻回されている。なお、図1に示すエンジン1においては、クランクプーリ12によりベルト16を介して駆動されるエアコン装置用のコンプレッサ17がオイルパン5に固定され、同様に前記ベルト16を介して駆動されるACジェネレータ18がシリンダブロック2に固定されている。また、オイルパン5には、オイルフィルタ19が着脱自在に装着されている。
【0013】
前記オイルパン5は、平均肉厚が2.5mm程度のアルミニウム合金の鋳物製であり、図2に示すようにボックス状に形成され、その上端にはフランジ部5Aが形成されている。そして、このフランジ部5Aの上面には、前記シリンダブロック2およびチェーンケース6の下端の接合面に接合される接合面5Bが形成されている。
【0014】
前記チェーンケース6は、肉厚が2.5〜3.0mm程度の薄肉に設定されたアルミニウム合金の鋳物製であり、クランクシャフト7からカムシャフト13への伝動機構を構成する前記クランクスプロケット11、タイミングチェーン15、カムスプロケット14等を覆う状態でシリンダブロック2、シリンダヘッド3およびオイルパン5に跨って接合される。このチェーンケース6の下端部には、前記クランクシャフト7の一端部を導出させるシャフト導出穴6Aが形成されている。このシャフト導出穴6Aには、図示しないオイルシールを介してクランクシャフト7の一端部が回転自在に嵌合され、このシャフト導出穴6Aからチェーンケース6の外部に導出されたクランクシャフト7の一端部に前記クランクプーリ12が固定される。
【0015】
図3に示すように、前記チェーンケース6の外周縁部には、前記シリンダブロック2およびシリンダヘッド3にボルトを介して締結するための複数の締結ボス部6Bが形成されている。また、チェーンケース6の下端中央部には、膨出部としての湾曲凸部6Cが平坦接合面6Dからオイルパン5側に膨出して一体に形成されている。この湾曲凸部6Cには、前記平坦接合面6Dの延長線上に中心点をおいて前記シャフト導出穴6Aが開口されている。
【0016】
前記湾曲凸部6Cは、シャフト導出穴6Aの円周に沿った円弧状接合面6C1が頂部に形成され、この円弧状接合面6C1の両側にその接線方向に沿って後記する締結部へ向かう傾斜接合面6C2が連続して形成されたものであり、左右の傾斜接合面6C2は、平坦接合面6Dに円弧状凹面6Eを介して滑らかに連続している。また、この左右の傾斜接合面6C2は、前記シャフト導出穴6Aの上半部を囲む円弧状の形態でその周囲の壁部に形成され剛性の高い湾曲断面部6Jに連続している。そして、この膨出部としての湾曲凸部6Cは、シャフト導出穴6Aの周囲を補強するように厚肉に形成されており、湾曲凸部6Cの円弧状凹面6Eの内側部分には、軽量化のために肉抜き部6Hが設けられている。
【0017】
一方、前記オイルパン5の一端部のフランジ部5Aには、前記チェーンケース6の湾曲凸部6Cの輪郭に合致する輪郭の湾曲凹部5Cが形成されている。この湾曲凹部5Cの輪郭をなす湾曲凹面は、接合面5Bの一部としてその平坦部に円弧状凸面5Dを介して滑らかに連続している。
【0018】
また、前記オイルパン5側の円弧状凸面5Dと、前記チェーンケース6側の円弧状凹面6Eとを強固に接合して十分な面圧を確保するため、オイルパン5側の円弧状凸面5Dの近傍にはフランジ部5Aを貫通するボルト挿通孔5Eが形成され、チェーンケース6側の円弧状凹面6Eの近傍にはフランジ部6Fを貫通するボルト挿通孔6Gが形成されている。前記ボルト挿通孔5Eは、円弧状凸面5Dの近傍の接合面5Bの平坦部に開口し、前記ボルト挿通孔6Gは、円弧状凹面6Eの近傍の平坦接合面6Dに開口しており、これらでオイルパン5のフランジ部5Aとチェーンケース6のフランジ部6Fとの締結部が構成されている。そして、この締結部へ向かって前記湾曲凸部6Cの傾斜接合面6C2が形成されている。
【0019】
以上のような構成のエンジン1において、図3に示すように一実施形態のカバー部材の接合面シール構造が適用されたチェーンケース6をオイルパン5の接合面5Bに接合に当たり、両者の間は、位置決め作業の不要な、例えばシリコン樹脂系の液状ガスケットによりシールする。この場合、液状ガスケットは、シール不良が発生しないように、オイルパン5の接合面5Bにおける平坦部から円弧状凸面5Dを介して湾曲凹部5Cの湾曲凹面へと連続してムラ無く均一に塗布する。そして、液状ガスケットがある程度固化した状態で、オイルパン5の接合面5Bにチェーンケース6の平坦接合面6D、円弧状凹面6E、円弧状接合面6C1および傾斜接合面6C2を重ね、オイルパン5のフランジ部5Aとチェーンケース6のフランジ部6Fとを締結する。すなわち、オイルパン5のフランジ部5A側のボルト挿通孔5Eからチェーンケース6のフランジ部6F側のボルト挿通孔6Gへと図示しない締結ボルトを挿通し、その上端部に図示しないナットを螺合してフランジ部5Aとフランジ部6Fとを締結する。
【0020】
このようなオイルパン5のフランジ部5Aとチェーンケース6のフランジ部6Fとの締結作業により、液状ガスケットには十分な面圧が作用し、カバー部材としてのチェーンケース6は、膨出部である湾曲凸部6Cの円弧状接合面6C1、傾斜接合面6C2から円弧状凹面6Eを介して連続する平坦接合面6Dまでの接合面が確実にシールされる。また、この接合面には、エッジ部分が存在しないため、液状ガスケットが途中で分断される恐れがなく、こと点からも接合面が確実にシールされる。
【0021】
また、このようにオイルパン5のフランジ部5Aとチェーンケース6のフランジ部6Fとを締結する図示しない締結ボルトは、オイルパン5側の円弧状凸面5Dの近傍に配置されたボルト挿通孔5Eおよびチェーンケース6側の円弧状凹面6Eの近傍に配置されたボルト挿通孔6Gに挿通されるため、オイルパン5側の円弧状凸面5Dとチェーンケース6側の円弧状凹面6Eとを強固に接合する。その結果、オイルパン5側の円弧状凸面5Dとチェーンケース6側の円弧状凹面6Eとが液状ガスケットにより一層確実にシールされる。
【0022】
さらに、膨出部としての湾曲凸部6Cは、傾斜接合面6C2が剛性の高い締結部および湾曲断面部6Jに連結されているため、剛性が高く、その内側に肉抜き部6Hを設けて軽量化しているにも拘わらず、十分な振動抑制機能を発揮する。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るカバー部材の接合面シール構造によれば、カバー部材の平坦接合面と、これに連続する膨出部の傾斜接合面および円弧状接合面をガスケットを介してオイルパンに接合するため、オイルパンとの締結によりガスケットには十分な面圧が作用し、カバー部材の接合面を確実にシールすることができる。また、カバー部材の接合面にはエッジ部分が存在しないため、液状ガスケットを使用した場合においても、オイルパンとの締結により液状ガスケットが分断される恐れがなく、液状ガスケットの使用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るカバー部材の接合面シール構造が適用されるエンジンの斜視図である。
【図2】図1に示したエンジンの分解斜視図である。
【図3】一実施形態に係るカバー部材の接合面シール構造を示すオイルパンおよびチェーンケースの分解正面図である。
【符号の説明】
1 :エンジン
2 :シリンダブロック
3 :シリンダヘッド
4 :シリンダヘッドカバー
5 :オイルパン
5A:フランジ部
5B:接合面
5C:湾曲凹部
5D:円弧状凸面
5E:ボルト挿通孔
6 :チェーンケース
6A:シャフト導出穴
6B:締結ボス部
6C:湾曲凸部
6C1:円弧状接合面
6C2:傾斜接合面
6D:平坦接合面
6E:円弧状凹面
6F:フランジ部
6G:ボルト挿通孔
6H:肉抜き部
6J:湾曲断面部
7 :クランクシャフト
Claims (1)
- エンジンのクランクシャフトの端部を導出させるシャフト導出穴を有し、このシャフト導出穴の周囲にオイルパンとの平坦接合面から膨出する膨出部を備えたカバー部材の接合面シール構造であって、
前記膨出部から所定間隔を開けてその両側にオイルパンとの締結部を設けると共に、
前記膨出部には、前記シャフト導出穴に沿った円弧状接合面と、
この円弧状接合面の接線方向に沿って前記締結部へ向かう傾斜接合面と、
前記傾斜接合部と前記締結部との連結部分の内側に設けられた肉抜き部と、
前記傾斜接合面に連続して、前記シャフト導出穴の上半部を囲む形態でその周囲の壁部に形成された湾曲断面部と、
を設け、
前記傾斜接合面と、これに連続する前記平坦接合面および円弧状接合面をガスケットを介してオイルパンに接合することを特徴とするカバー部材の接合面シール構造。
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