JP3781346B2 - エンジンのカバー部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのカバー部材に関し、詳しくは、クランクシャフトの振動に応じて発生する騒音を十分に低減できるように改良されたエンジンのカバー部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用のOHC(オーバヘッドカムシャフト)型エンジンにおいては、クランクシャフトからカムシャフトへの伝動機構を覆うカバー部材がシリンダブロック等に締結して装着されている。この種のカバー部材のうち、クランクシャフトの端部を導出させるシャフト導出穴が開口されたカバー部材においては、通常、シャフト導出穴とクランクシャフトの端部との間にオイルシール等が介設される。また、実開平5−92451号公報に記載のように、クランクシャフトの端部を囲んで設けられたカバー部材には、二重の円弧状リブや放射状リブが形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のようにシャフト導出穴とクランクシャフトの端部との間にオイルシール等が介設されるカバー部材では、クランクシャフトの回転に伴なう振動がオイルシール等を介してシャフト導出穴の周縁部に伝達されるため、その周囲の壁部が振動して騒音を発生する。ここで、外周縁部がシリンダブロック等に締結されるカバー部材は、軽量化のため薄肉化されていると、その薄肉化された壁部にいわゆる膜振動が発生し、大きな騒音が発生する。
【0004】
もっとも、カバー部材の壁部の中央部にもクランクシャフト周囲に複数個所にわたってシリンダブロック等への締結部を設けるか、あるいは、カバー部材の壁部にクランクシャフトを囲む多重の円弧状リブや放射状リブを形成するなどの対策を講じれば、壁部の膜振動を抑制して騒音を低減することも可能である。しかしながら、前者の対策においては、カバー部材の組付工数や組付部品点数が増加するという問題がある。また、後者の対策においては、多重の円弧状リブや放射状リブによってカバー部材が重量化するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、クランクシャフトの振動に応じて発生する騒音を十分に低減することができ、しかも軽量化を達成することができるエンジンのカバー部材を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する手段として、本発明に係るエンジンのカバー部材は、エンジンのクランクシャフトの端部に設けられた伝動機構を覆うカバー部材であって、前記クランクシャフトの端部を導出させるシャフト導出穴を有し、このシャフト導出穴の周囲の壁部には、シャフト導出穴を囲む円弧状の形態で湾曲断面部が形成されている。そして、少なくともシリンダブロックに締結される締結ボス部を外周縁部に有し、この締結ボス部と前記シャフト導出穴の周縁部とを連結する放射状リブが前記湾曲断面部に連結して形成されている。さらに、前記湾曲断面部は、前記放射状リブにより、複数の湾曲部に分断されている。
【0007】
本発明に係るエンジンのカバー部材では、クランクシャフトの回転に伴ないその端部付近からシャフト導出穴の周囲の壁部に伝達されるクランクシャフトの振動は、前記壁部のシャフト導出案穴を囲む湾曲断面部により減衰されて抑制される。その結果、クランクシャフトの振動に応じて発生する騒音が十分に低減される。しかも、このカバー部材では、前記湾曲断面部を含めて壁部を薄肉化することができるため、軽量化を達成することが可能である。
【0008】
また、放射状リブおよび湾曲断面部によって前記シャフト導出穴の周囲の壁部の剛性が高められ、さらに湾曲断面部が放射状リブにより複数の湾曲部に分断されることで、クランクシャフトの振動に応じて発生する騒音がより一層低減される。
【0009】
また、本発明のエンジンのカバー部材において、前記シャフト導出穴から導出されたクランクシャフトの端部に固定されるクランクプーリの内面側に設けられた環状凹部内に膨出するように前記湾曲断面部が形成されていると、クランクプーリをカバー部材に近接して配置することにより、エンジンをコンパクトに構成することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係るエンジンのカバー部材の実施の形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態に係るエンジンのカバー部材が適用されるエンジンの斜視図、図2は図1に示したエンジンの分解斜視図である。
【0011】
一実施形態に係るエンジンのカバー部材は、例えば図1に示す車両用のエンジン1に適用される。このエンジン1は、SOHC(シングルオーバヘッドカムシャフト)型の直列4気筒エンジンであり、シリンダブロック2の上端にはシリンダヘッド3、シリンダヘッドカバー4が順次接合され、シリンダブロック2の下端にはオイルパン5が接合される。そして、このエンジン1の一端部には、一実施形態に係るカバー部材としてのチェーンケース6が前記シリンダブロック2とシリンダヘッド3とに跨って装着される。
【0012】
図2に示すように、前記シリンダブロック2は、1列に配列された4個のシリンダボア2Aを有し、各シリンダボア2Aには、クランクシャフト7にコンロッド8を介して連結されたピストン9がそれぞれ摺動自在に嵌挿される。そして、前記クランクシャフト7は、一体型ベアリングキャップ10によってシリンダブロック2の下部に回転自在に組み付けられる。このクランクシャフト7のシリンダブロック2から突出する一端部には、クランクスプロケット11およびクランクプーリ12が固定されている。
【0013】
前記シリンダヘッドカバー4で覆われるシリンダヘッド3の上部空間3Aには、カムシャフト13が回転自在に支持されて収容される。このカムシャフト13の一端部はシリンダヘッド3の一端部から突出し、その一端部にはカムスプロケット14が固定されている。そして、このカムシャフト13の一端部のカムスプロケット14と、前記クランクシャフト7の一端部のクランクスプロケット11との間には、図1に示すようにタイミングチェーン15が巻回されており、これらでクランクシャフト7からカムシャフト13への伝動機構が構成されている。なお、図1に示すエンジン1には、クランクプーリ12によりベルト16を介して駆動されるエアコン装置用のコンプレッサ17およびACジェネレータ18が付設されている。
【0014】
前記チェーンケース6は、肉厚が2.5〜3.0mm程度の薄肉に設定されたアルミニウム合金製の鋳物からなり、クランクシャフト7からカムシャフト13への伝動機構である前記クランクスプロケット11、タイミングチェーン15、カムスプロケット14等を覆う状態でシリンダブロック2とシリンダヘッド3とに跨って装着される。このチェーンケース6の下端部には、図2に示すように、クランクシャフト7の一端部を導出させるシャフト導出穴6Aが形成されている。このシャフト導出穴6Aには、図示しないオイルシールを介してクランクシャフト7の一端部が回転自在に嵌合され、このシャフト導出穴6Aからチェーンケース6の外部に導出されたクランクシャフト7の一端部に前記クランクプーリ12が固定される。
【0015】
ここで、図3に示すように、前記チェーンケース6の外周縁部には、前記シリンダブロック2およびシリンダヘッド3にボルトを介して締結するための複数の締結ボス部6Bが形成されている。そして、このチェーンケース6の下端部に形成された前記シャフト導出穴6Aの周囲の壁部内面には、シャフト導出穴6Aの上半部を囲む円弧状の形態で湾曲断面部6Cが形成されている。また、この湾曲断面部6Cに対しシャフト導出穴6Aの径方向に相互間隔を開けて円弧状リブ6Dが形成されている。さらに、前記複数の締結ボス部6Bのうち、少なくともチェーンケース6の下半部に配置された各締結ボス部6Bとシャフト導出穴6Aの周縁部の環状肉厚部6Eとを連結する複数の放射状リブ6Fが形成されており、各放射状リブ6Fは前記湾曲断面部6Cおよび円弧状リブ6Dに交差して連結することにより、シャフト導出穴6Aの周囲の壁部の剛性を高めている。
【0016】
前記シャフト導出穴6Aの周縁部の環状肉厚部6Eは、その下半部がチェーンケース6の下端のフランジ部6Gから膨出している。この環状肉厚部6Eの剛性を高めるため、環状肉厚部6Eの膨出部の両側部分は、斜めに延びる連結リブ6Hによって前記湾曲断面部6Cに連結されている。このような環状肉厚部6Eを有するチェーンケース6において、シャフト導出穴6Aの周囲の壁部は、軽量化のために肉厚が1.5mm程度の薄肉に設定されており、この壁部に形成される湾曲断面部6Cは、シャフト導出穴6Aの周縁部の環状肉厚部6Eから伝達される振動を効果的に減衰させるように、シャフト導出穴6Aの上半部を囲む半円弧状に配置されている。
【0017】
前記湾曲断面部6Cは、図3および図4に示すように、チェーンケース6の外面側に膨出する断面形状の複数の湾曲部6C1が所定間隔(例えば5mm程度)を開けて半円弧状に配列された帯状を呈し、その幅は13mm程度に設定されている。この湾曲断面部6Cは、振動をより効果的に減衰させるように、単純に連続する半円弧状の帯状ではなく、複数の湾曲部6C1により細かく分断された半円弧状の帯状に構成されている。
【0018】
ここで、図4に示すように、前記シャフト導出穴6Aからチェーンケース6の外部に導出されたクランクシャフト7の一端部に固定されるクランクプーリ12には、肉抜き用の環状凹部12A、12Bがその内面および外面に形成されている。これに対応して、チェーンケース6のシャフト導出穴6Aの周囲の湾曲断面部6Cは、クランクプーリ12の内面側に形成された環状凹部12A内に膨出するように配置されている。この湾曲断面部6Cの各湾曲部6C1の断面形状は、振動をより効果的に減衰させるように、湾曲断面部6Cの半径方向に沿った断面形状と周方向に沿った断面形状とが異なる形状とされている。すなわち、湾曲断面部6Cの半径方向に沿った各湾曲部6C1の断面形状は、曲率の大きい湾曲断面形状に設定されており、その半径方向の内側部分は外側部分よりチェーンケース6の外面側に設定されている。一方、湾曲断面部6Cの周方向に沿った断面形状は、図5に示すように曲率の小さい湾曲断面形状に設定されている。
【0019】
一方、図3に示すように、前記円弧状リブ6Dは、シャフト導出穴6Aから伝達される振動を前記湾曲断面部6Cと共に効果的に減衰させるように、湾曲断面部6Cを囲む半円弧状に形成されている。この円弧状リブ6Dは、幅が5mm程度に設定されており、図4に示すように、チェーンケース6の内面側への突出高さは5mm程度に設定され、外面側への突出高さは2.5mm程度に設定されている。
【0020】
また、前記複数の放射状リブ6Fは、図3に示すように、シャフト導出穴6Aを中心として30°前後の角度間隔で配置されており、その幅は5mm程度に設定されている。各放射状リブ6Fの突出高さは、図4に示すように、円弧状リブ6Dの外側では円弧状リブ6Dと同一面をなすように設定され、円弧状リブ6Dの内側では円弧状リブ6Dより若干2〜3mm程度低く設定されて前記環状肉厚部6Eと同一面をなしている。
【0021】
なお、図3および図4に示すように、前記チェーンケース6のシャフト導出穴6Aの周囲を除いた部分の壁部内面には、突出高さの高い補剛用リブ6Iが適宜の個所に配置して形成されている。また、図3に示すように、チェーンケース6の左右方向一側には、遮熱板6Jが一体に突設されている。
【0022】
以上のように構成されたエンジン1は、図4に示すように、チェーンケース6の外面側に膨出する湾曲断面部6Cがクランクプーリ12の内面側の環状凹部12A内に膨出するように配置されているため、クランクプーリ12をチェーンケース6に近接して配置することができ、エンジン1をコンパクトに構成することができる。
【0023】
前記エンジン1の運転状態において、クランクシャフト7の回転に伴なう振動は、図示しないオイルシールを介してチェーンケース6のシャフト導出穴6Aの周縁部の環状肉厚部6Eに伝達され、さらに、その周囲の壁部に伝達される。ここで、前記環状肉厚部6Eは、その周囲の壁部に形成された剛性の高い湾曲断面部6Cに連結リブ6Hを介して連結されることで剛性が高められている。また、前記湾曲断面部6Cは、振動をより効果的に減衰させるように、複数の湾曲部6C1により細かく分断された半円弧状の帯状に構成されている。しかも、湾曲断面部6Cの各湾曲部6C1の断面形状は、振動をより効果的に減衰させるように、湾曲断面部6Cの半径方向に沿った断面形状と周方向に沿った断面形状とが異なる形状とされている。このため、チェーンケース6の環状肉厚部6Eからその周囲の壁部に伝達される振動は、湾曲断面部6Cにより効果的に減衰されて抑制される。
【0024】
従って、一実施形態のカバー部材としてのチェーンケース6においては、軽量化のためシャフト導出穴6Aの周囲の壁部の肉厚が1.5mm程度の薄肉に設定されているにも拘わらず、前記壁部の膜振動が効果的に抑制され、クランクシャフト7の振動に応じて発生する騒音が十分に低減される。そして、このチェーンケース6は、前記湾曲断面部6Cを含めてその壁部を薄肉化することができるため、軽量化を達成することができる。
【0025】
ここで、一実施形態のカバー部材としてのチェーンケース6においては、その外周縁部に配置された各締結ボス部6Bと環状肉厚部6Eとを連結する複数の放射状リブ6Fが前記湾曲断面部6Cに連結して形成されており、シャフト導出穴6Aの周囲の壁部の剛性が高められている。このため、クランクシャフト7の振動に応じて発生する騒音がより一層低減される。また、シャフト導出穴6Aの周囲の壁部には、前記湾曲断面部6Cを囲む半円弧状の円弧状リブ6Dが形成されているため、環状肉厚部6Eからその周囲の壁部に伝達される振動は、湾曲断面部6Cおよび円弧状リブ6Dにより2段階に減衰されて十分に抑制される。
【0026】
このように、一実施形態のカバー部材としてのチェーンケース6は、シャフト導出穴6Aの周囲の壁部の剛性が高いため、クランクシャフト7の回転数センサの取付け部材として好適である。この場合、回転数センサの取付けボスに前記放射状リブ6Fを連結することで、回転数センサの振動をより効果的に抑制することができる。
【0027】
なお、前記チェーンケース6の湾曲断面部6Cは、チェーンケース6の内面側に膨出する断面形状の複数の湾曲部を所定間隔で配列して構成してもよい。また、チェーンケース6の外面側に膨出する断面形状の湾曲部と、チェーンケース6の内面側に膨出する断面形状の湾曲部とを交互に配列し、あるいは適宜の順序で配列して湾曲断面部6Cを構成してもよい。
【0028】
また、チェーンケース6の円弧状リブ6Dは、チェーンケース6の内面側への突出高さを低く、外面側への突出高さを高く設定してもよいし、チェーンケース6の内面または外面の何れか一方にのみ突出するように形成してもよい。
【0029】
本発明の動弁系カバー部材は、エンジン1のクランクシャフト7からカムシャフト13への伝動機構がクランクシャフトプーリ、タイミングベルト、カムシャフトプーリ等で構成される場合、これらを覆うベルトカバーケースとして適用される。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るエンジンのカバー部材によれば、クランクシャフトの回転に伴ないその端部付近からシャフト導出穴の周囲の壁部に伝達されるクランクシャフトの振動は、前記壁部のシャフト導出穴を囲む湾曲断面部により減衰されて抑制される。従って、クランクシャフトの振動に応じて発生する騒音を十分に低減することができる。しかも、このカバー部材によれば、前記湾曲断面部を含めて壁部を薄肉化することができるため、軽量化を達成することができる。
【0031】
また、放射状リブおよび湾曲断面部によって前記シャフト導出穴の周囲の壁部の剛性が高められ、さらに湾曲断面部が放射状リブにより複数の湾曲部に分断されることで、クランクシャフトの振動に応じて発生する騒音をより一層低減することができる。
【0032】
また、本発明のエンジンのカバー部材において、前記シャフト導出穴から導出されたクランクシャフトの端部に固定されるクランクプーリの内面側に設けられた環状凹部内に膨出するように前記湾曲断面部が形成されている場合、クランクプーリをカバー部材に近接して配置することができる。従って、この場合には、エンジンをコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの動弁系カバー部材が適用されるエンジンの斜視図である。
【図2】図1に示したエンジンの分解斜視図である。
【図3】図2に示した動弁系カバー部材の内面を示す背面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【符号の説明】
1 :エンジン
2 :シリンダブロック
3 :シリンダヘッド
4 :シリンダヘッドカバー
5 :オイルパン
6 :チェーンケース(カバー部材)
6A:シャフト導出穴
6B:締結ボス部
6C:湾曲断面部
6D:円弧状リブ
6E:環状肉厚部
6F:放射状リブ
6G:フランジ部
6H:連結リブ
7 :クランクシャフト
11 :クランクスプロケット
12 :クランクプーリ
12A:環状凹部
13 :カムシャフト
14 :カムスプロケット
15 :タイミングチェーン
Claims (2)
- エンジンのクランクシャフトの端部に設けられた伝動機構を覆うカバー部材であって、前記クランクシャフトの端部を導出させるシャフト導出穴を有し、このシャフト導出穴の周囲の壁部には、シャフト導出穴を囲む円弧状の形態で湾曲断面部が形成され、少なくともシリンダブロックに締結される締結ボス部を外周縁部に有し、この締結ボス部と前記シャフト導出穴の周縁部とを連結する放射状リブが前記湾曲断面部に連結して形成され、前記湾曲断面部は、前記放射状リブにより、複数の湾曲部に分断されていることを特徴とするエンジンのカバー部材。
- 請求項1に記載されたエンジンのカバー部材であって、前記シャフト導出穴から導出されたクランクシャフトの端部に固定されるクランクプーリの内面側に設けられた環状凹部内に膨出するように前記湾曲断面部が形成されていることを特徴とするエンジンのカバー部材。
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