JPH0629488Y2 - エンジンの軸受装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、軽合金製母材に鉄系材料の主軸受キャップを
鋳込んでなる一体型のエンジンの軸受装置に関する。

（従来技術） 従来、例えば特開昭６０−２１９４３６号公報に記載さ
れているように、シリンダブロックの下部に取り付けら
れるアルミ合金製の母材に鉄系材料の主軸受キャップを
鋳ぐるむことによって剛性を高めるようにしたエンジン
の軸受装置が知られている。

しかし、このようにアルミ合金製の母材に鉄系材料の主
軸受キャップを鋳ぐるんで軸受装置を形成する場合に、
鉄系材料の主軸受キャップの下部を完全にアルミ合金で
覆ったのでは、ボルト締付力を十分に大きくすることは
できない。そこで、主軸受キャップのボルトボス部を延
長してその下端面に取付ボルトの座面を形成することに
よって締付力を確保することが考えられ、そのような構
造の剛性の高い軸受装置を得るための製造方法等が従来
から提案されている。

ところで、上記のように主軸受キャップのボルトボス部
を延長してその下端面に座面を形成した場合には、オイ
ルが母材と主軸受キャップとの境の微小間隙から滲み出
てしまう。そこで、外部へのオイル漏れを防ぐために
は、主軸受キャップ取付ボルトの座面をすべて覆う形で
軸受け装置下面にオイルパンを取り付けることが必要と
なる。また、一方で、自動変速機付のエンジンの場合に
は、シリンダブロックの後端に自動変速機のケーシング
を取り付けた後でクランク軸の後端に設けられているド
ライブプレートを自動変速機のトルクコンバータカバー
にねじ止めする関係上、オイルパン後端部と自動変速機
のケーシングとの間にドライブプレート取付用の工具を
差し込める作業スペースが必要であるということから、
オイルパン合わせ面の後端部を、一体型の軸受装置にお
ける自動変速機連結側の端部に最も近い取付ボルト用座
面よりも前方に位置せしめて上記作業スペースを確保す
るという提案もなされているが、この提案を上記のよう
に主軸受キャップのボルトボス部を延長してその下端面
の座面を形成した一体型の軸受装置に適用した場合に
は、自動変速機連結側の端部に最も近いボルト座面の周
囲からのオイル漏れを防ぐことができないことになる。

逆に、軽合金製母材に鉄系材料の主軸受キャップを鋳込
み、主軸受キャップのボルトボス部を延長してその下端
面に主軸受キャップ取付ボルトの座面を形成した一体型
の軸受装置において、母材と主軸受キャップとの境から
のオイルの漏れを防ぐためにオイルパン合わせ面の後端
部を自動変速機連結端ぎりぎりに位置せしめたのでは、
ドライブプレート取り付けのための作業スペースを確保
することが難しい。

（考案の目的） 本考案は上記問題点に鑑みてなされたものであって、軽
合金製母材に鉄系材料の主軸受キャップを鋳込んでなる
一体型のエンジンの軸受装置において、主軸受キャップ
のボルトボス部を延長しその下端面に主軸受キャップ取
付ボルトの座面を形成することによって取付ボルト締付
力の向上を図るとともに、変速機連結側の端部に作業ス
ペースを確保しつつ、軽合金母材と鉄系材料との境界部
からのオイル漏れを確実に防ぐことを目的とする。

（考案の構成） 上記目的を達成するため、本考案では、アルミニウム合
金等軽合金製母材に鋳鉄等鉄系材料の主軸受キャップを
鋳込んで、シリンダブロックとオイルパンとの間に介設
される一体型のエンジンの軸受装置を形成し、主軸受キ
ャップのボルトボス部を延長してその下端面に主軸受キ
ャップ取付ボルトの座面を形成した。また、変速機連結
側の端部に最も近い上記座面の前記端部側外周に沿って
オイルパン合わせ面を形成した。

（作用） 主軸受キャップを一体に連結した軸受装置がシリンダブ
ロックとオイルパンとの間に介設されることにより、シ
リンダブロックの下部および主軸受キャップは補強さ
れ、エンジンの爆発力やピストンの慣性力に対する剛性
が高まる。

また、主軸受キャップのボルトボス部が延長されその下
端面に主軸受キャップ取付ボルトの座面が形成されてい
るため、ボルト締付力を十分に高めることができる。

さらに、オイルパン合わせ面が変速機連結側の端部に最
も近いボルト座面の前記端部側外周に沿って形成されて
いるため、変速機連結側端部の座面周辺からのオイル漏
れを防ぐためのオイルパンの張り出しが最小限で済み、
変速機連結側端部に作業スペースが確保される。

（実施例） 以下、実施例を図面に基づいて説明する。

第１図乃至第３図は本考案の一実施例を示している。

この実施例のエンジンの軸受装置１は、第１図に示すよ
うに、半円弧状の軸受部２ａおよびその両端から下方に
延びるボルトボス部２ｂ，２ｃからなる鋳鉄製の主軸受
キャップ２をアルミニウム製母材３に一体に鋳込んだも
のであって、ボルトボス部２ｂ，２ｃの下端は母材から
露出し、そこに取付ボルトの座面２ｄ，２ｅが形成され
ている。この軸受装置１はシリンダブロック（図示せ
ず）の下面にボルト連結され、また、その下端には第２
図および第３図に示すオイルパン４が取り付けられる。

軸受装置１の下端には各主軸受キャップ２のボルト座面
２ｄ，２ｅを囲んで環状のオイルパン合わせ面５が形成
されている。そして、オイルパン合わせ面５は、第２図
（底面図）に示すように、後側つまり変速機連結側の端
部６に最も近い座面２ｄ，２ｅの付近でこれら座面の前
記端部６側外周に沿って形成され（５ａ，５ｂ）、ま
た、これら座面２ｄ，２ｅの間では、これら座面２ｄ，
２ｅよりも前方に位置するよう形成されている（５
ｃ）。また、これらの座面２ｄ，２ｅの外側でもオイル
パン合わせ面５は両座面２ｄ，２ｅ間の形成位置と並ぶ
位置に形成されて（５ｄ，５ｅ）、これらが座面外周の
合わせ面部分をバイパスするような形でつながっている
（５ｆ，５ｇ）。したがって、これら後端側の一対の座
面２ｄ，２ｅは合わせ面５によって完全に囲まれた形に
なっている。

第３図（第２図のＴ−Ｔ断面図）に示すように、オイル
パン４は変速機連結側の端部においてボルト座面２ｄ，
２ｅの外周および前方のオイルパン合わせ面５（５ａ，
５ｆ）にシール状態で当接し、ボルト７で固定される。
したがって、これら端部の座面２ｄ，２ｅおよび取付ボ
ルト８の周囲は完全に密閉された状態となり、母材３と
ボルトボス部２ｃ，２ｄの間隙から滲み出るオイルが外
部に漏れるのが阻止される。また、このように端部の座
面２ｄ，２ｅの外周に沿ってオイルパン合わせ面が設け
られるため、この部分に取り付けられるオイルパンの占
有スペースは小さく抑えられ、したがって、変速機との
間に、ドライブプレート等を取り付けるための作業スペ
ースが確保できる。

なお、上記実施例においては、変速機連結側の端部に最
も近い主軸受キャップ取付ボルトの座面を完全に取り囲
む形にオイルパン合わせ面を形成したが、端部側のスペ
ースに余裕があって合わせ面の巾を十分に取れる場合に
は、端部側外周のみを囲む一部突出した形のオイルパン
合わせ面とすることもできる。その場合には、母材とボ
ルトボス部の間隙から漏れるオイルはオイルパンの中に
回収できる。

本考案はその他いろいろな態様で実施することができ
る。

（考案の効果） 本考案は以上のように構成されているので、軽合金製母
材に鉄系材料の主軸受キャップを鋳込んでなる一体型の
エンジンの軸受装置において、主軸受キャップ取付ボル
トの締付力を向上させることができるとともに、軽合金
と鉄系材料との境界部から滲み出るオイルが外部に漏れ
るのを確実に防ぎ、また、変速機連結側端部にドライブ
プレート等を取り付けるための作業スペースを確保する
ことができる。

また、その他、母材と鉄系材料との接合形状が簡単にな
るといった効果や、走行中の飛石から端部の主軸受取付
ボルトを保護して、ボルト頭部が打痕により変形し分解
時のサービス性を低下させるのを防止することができる
といった効果も生ずる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例の軸受装置の全体図、第２図
は同実施例の装置の底面図、第３図は第２図のＴ−Ｔ断
面図である。 １：軸受装置、２：主軸受キャップ、２ｂ，２ｃ：ボル
トボス部、２ｄ，２ｅ：座面、３：母材、４：オイルパ
ン、５：オイルパン合わせ面、６：端部（変速機連結
側）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】軽合金製母材に鉄系材料の主軸受キャップ
   が鋳込まれシリンダブロックとオイルパンとの間に介設
   される一体型のエンジンの軸受装置において、主軸受キ
   ャップのボルトボス部を延長してその下端面に主軸受キ
   ャップ取付ボルトの座面を形成するとともに、変速機連
   結側の端部に最も近い上記座面の前記端部側外周に沿っ
   てオイルパン合わせ面を形成したことを特徴とするエン
   ジンの軸受装置。