JPH0531254Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は、例えばエンジンのシリンダブロツク
とクランクケースなどのように、互いに分割して
形成された中空体を一体的に接続するための接続
構造に関する。

〈従来の技術〉 シリンダブロツクとクランクケースのように、
互いに分割形成された中空体同士を接合する構造
として、互いの対向面を平面加工した上で、開口
の周縁部にガスケツトを介装し、かつ両接合部分
の側方に突設された複数の耳片に穿設された孔に
ボルトを挿通締結することにより、両者を一体的
に結合する構造が一般的に用いられている。

他方、比較的高い鋳造精度が得られるダイキヤ
スト成形による成形体の場合、製造コスト低減化
の観点から、接合面に機械加工を施さず、鋳放し
の状態で組付けを行なうことがある。この場合、
接合面の平面度が機械加工を施すものに比して劣
ることから、例えば、本考案と同一出願人による
実願昭61−018109号明細書に於て、耳片の外周側
に設けたリブと、接合面の開口周縁に沿う突条と
によりガスケツトの押圧力を高め、これによりシ
ール性を確保するようにした構造が提案されてい
る。

〈考案が解決しようとする問題点〉 ところで、軽量化を推進しようとすると、剛性
の増大には限度があり、接合面を非加工とし、前
記したような接合面とガスケツトとの相対的な変
形によりシール性を確保しようとすると、ボルト
の締付けにて接合面を圧接することにより、特に
互いに隣合うボルト間部分の歪みが中空体の内面
にまで及んでしまうことが考えられる。特にシリ
ンダブロツクの場合には、エンジン性能の向上や
騒音低減の上からは、可及的にシリンダの真円度
を高める要望が強く、上記のような歪みの発生は
好ましいことではない。

このような従来技術の不都合に鑑み、本考案の
主な目的は、ボルト締付けによる歪みの発生を抑
制し、しかも充分なシール性を確保することので
きる中空体の接続構造を提供することにある。

〈問題点を解決するための手段〉 このような目的は、本考案によれば、鋳造形成
してなる複数の中空体同士を、これらの互いに対
向する開口周縁部端面の全周に渡つて設けられた
当接面間にガスケツトを挾設し、かつ前記開口周
縁部に開設された複数のボルト孔にそれぞれ挿通
したボルトをもつて一体的に接続する構造に於
て、前記ボルト孔の少なくとも中心が、前記当接
面の内周輪郭よりも内側に設けられると共に、前
記複数の中空体の少なくとも一方の前記当接面の
前記ボルト孔近傍に突部が形成されていることを
特徴とする中空体の接続構造を提供することによ
り達成される。

〈作用〉 このようにすれば、ボルトの締結力は、専らボ
ルト周辺の、特にボルトより外側の部分にて受け
ることとなり、中空体の内周面にまで歪みの及ぶ
ことが回避される。

〈実施例〉 以下に添付の図面を参照して本考案を特定の実
施例について詳細に説明する。

第１図は本考案に基づき構成されたクランク室
圧縮型の２サイクルエンジンを示している。この
エンジン１は、片持ち式クランク軸を有する単気
筒エンジンであり、アルミニウム合金などをダイ
キヤスト成形してなるシリンダブロツク２及びク
ランケース３を、両者の接合面にガスケツト４を
挾設した上で図示されない連結ボルトにより一体
的に締結して構成されている。

シリンダブロツク２は、シリンダヘツド部分２
ａとシリンダ室部分２ｂとが一体成形されてお
り、特に、シリンダ室部分２ｂは、シリンダスリ
ーブを設けない構成とされている。そして、シリ
ンダヘツド部分２ａの端部に点火プラグ５が螺着
され、シリンダ室部分２ｂの内部にピストン６が
往復摺動自在なように挿入されている。また、シ
リンダヘツド部分２ａの内面とピストン６の端面
との間に燃焼室７が郭成され、シリンダ室部分２
ｂの中間部に掃気ポート８ａが設けられている。
この掃気ポート８ａは、シリンダ室部分２ｂの内
壁面に設けられた掃気通路８ｂを介してクランク
ケース３内に連通している。

クランクケース３には、片持ち式のクランク軸
９が回転自在なように支持されている。クランク
軸９は、カウンタウエート９ａ及び平歯車９ｂを
一体的に形成してなり、かつコンロツド１０を介
してピストン６に連結されている。また、クラン
クケース３の内部には、クランク軸９の平歯車９
ｂに噛合してクランク軸９と共に回転するガバナ
装置１１が設けられている。

クランクケース３の一端には、気化器１２と共
に、気化器１２の吸気道に連通する吸気通路１３
が、通しボルト１４を介して一体的に締結結合さ
れている。

このエンジン１は、公知の２サイクルエンジン
と同様にして、ガバナ装置１１の作用により、負
荷の軽重に応じて定回転速度を維持して運転され
る。

第２図は、クランクケース３側のシリンダブロ
ツク２との接合面を示している。ダイキヤスト成
形による鋳放しであつて良いこの接合面には、ガ
スケツト４に対する当接面１５が、接合面の外周
縁に沿つて適宜な幅をもつて全周に渡つて形成さ
れている。この当接面１５の内周縁（第２図に想
像線を含む輪郭線Ｌにて示す）よりも内側の部分
には、締付けボルトを螺着するボルト孔１６が、
対角方向に４個設けられている。また、ガスケツ
ト４の当接面１５であつて、各ボルト孔１６に隣
接する部分、即ち当接面１５上に於けるシリンダ
中心に対するボルト孔１６より外側の部分には、
当接面１５の他の部分より僅かに（0.08〜0.15
mm）突出する突部１７が形成されている（第３
図）。

上記構成のようにシリンダスリーブを設けない
シリンダブロツクの場合、剛性を高めるためには
肉厚を増大させねばならず、アルミニウム合金を
用いることによる軽量化の効果が減殺されてしま
う。また、シリンダブロツク２とクランクケース
３との接合面に機械加工を施すことは、ダイキヤ
スト成形により製造コストを低減しようとする要
望を満足する上には望ましくない。

しかるに、鋳放しで得られる接合面の平面度に
て接合面のシール性を確保し得るようにガスケツ
トを圧接した場合、ガスケツトの変形によりシー
ル性は得られるものの、接合面間のギヤツプの不
均一による圧接力分布のばらつきは避けられな
い。従つて、例えば、互いに隣り合うボルト間の
部分がより突出している場合を想定すると、ボル
トの締付けによる接合部の歪みがシリンダの内周
面にまで及んでしまい、シリンダの真円度に悪影
響を及ぼすことが考えられる。

そこで本考案に於ては、積極的に締付ボルトの
外側部分に突部を設け、ボルトの締結力による圧
接力を、専らボルト周辺のシリンダ中心から遠い
位置にて受けるようにして、シリンダの内周部に
歪みの及ぶことがないようにしている。特に、ガ
スケツト４との当接面１５をボルト孔１６より外
側とすることにより、第４図に示すように、ボル
トの締付けにより予想されるシリンダ内周面の変
形を、むしろプラス側となるようにすることを企
図し得る。

また、突部１７の突出寸法としては、ガスケツ
ト４の変形の範囲内に設定しておけば良い。

尚、本考案は、上記実施例に限定されるもので
はなく、締付け歪みの制御を要求される中空体の
接続部に等しく適用し得る。

〈考案の効果〉 このように本考案によれば、接合部の内周面を
歪ませることなく接合面に強い圧接力を与えるこ
とができ、中空体を高精度にかつ洩れのないよう
に結合し得ることから、非加工面の接合による不
本意な歪みの発生を好適に抑制することが可能と
なり、ダイキヤスト成形によるエンジンなどの製
造行程を簡略化する上に多大な効果を奏すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案が適用される２サイクルエンジ
ンの縦断面図である。第２図は第１図に於ける
−線に沿う端面図である。第３図は第２図の
−線に沿う部分拡大断面図である。第４図は接
合部に発生する変形を誇張して示す説明図であ
る。 １……エンジン、２……シリンダフロツク、２
ａ……シリンダヘツド部分、２ｂ……シリンダ室
部分、３……クランクケース、４……ガスケツ
ト、５……点火プラグ、６……ピストン、７……
燃焼室、８ａ……掃気ポート、８ｂ……掃気通
路、９……クランク軸、９ａ……カウンタウエー
ト、９ｂ……平歯車、１０……コンロツド、１１
……ガバナ装置、１２……気化器、１３……吸気
通路、１４……通しボルト、１５……当接面、１
６……ボルト孔、１７……突部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 鋳造形成してなる複数の中空体同士を、これら
   の互いに対向する開口周縁部端面の全周に渡つて
   設けられた当接面間にガスケツトを挾設し、かつ
   前記開口周縁部に開設された複数のボルト孔にそ
   れぞれ挿通したボルトをもつて一体的に接続する
   構造に於て、 前記ボルト孔の少なくとも中心が、前記当接面
   の内周輪郭よりも内側に設けられると共に、 前記複数の中空体の少なくとも一方の前記当接
   面の前記ボルト孔近傍に突部が形成されているこ
   とを特徴とする中空体の接続構造。