JP2004240321A - キャリア芯材、被覆キャリア、電子写真用二成分系現像剤および画像形成方法 - Google Patents

キャリア芯材、被覆キャリア、電子写真用二成分系現像剤および画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】本発明のキャリア芯材は、融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)と融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴としている。また、本発明の二成分系現像剤は上記キャリア芯材を樹脂被覆した被覆キャリアとトナー粒子とを含有するものであり、本発明の画像形成方法では、交番電界を用いて、感光体上に形成された静電潜像を上記の二成分系現像剤を用いて現像する。
【効果】本発明によれば、高磁化であり、かつ低電界から高電界まで広範囲にわたって電荷リークが生じないキャリア芯材、被覆キャリアが得られ、本発明の二成分系現像剤によれば、良好な画像を形成することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方法あるいは静電印刷方法などにより形成された静電潜像を現像する際に用いられる二成分系現像剤用のキャリア芯材、このキャリア芯材から形成される樹脂で被覆された被覆キャリア、この被覆キャリアを含有する二成分系現像剤およびこの二成分系現像剤を好適に使用することができる画像形成方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
電子写真現像方法は、現像剤中のトナー粒子を感光体上に形成された静電潜像に付着させて現像する方法であり、この方法で使用される現像剤は、現像剤としてトナー粒子とキャリア粒子とを含有する二成分系現像剤およびトナー粒子のみを用いる一成分系現像剤に分けられる。
【0003】
こうした現像剤のうちで、トナー粒子とキャリア粒子を含有する二成分系現像剤を用いた現像方法としては、古くはカスケード法などが採用されていたが、現在では、マグネットロールを用いる磁気ブラシ法が主流である。
このような二成分系現像剤において、キャリア粒子は、現像剤が充填されている現像ボックス内において、トナー粒子と共に攪拌されることによって、トナー粒子に所望の電荷を付与し、さらにこのように電荷を帯びたトナー粒子を感光体の表面に搬送して感光体上にトナー像を形成するための担体物質である。マグネットに保持されて現像ロールに残ったキャリア粒子は、この現像ロールから再び現像ボックスに戻り、新たなトナー粒子と混合攪拌され、このようにキャリア粒子は一定期間繰り返して使用される。
【0004】
二成分系現像剤は、一成分系現像剤とは異なり、キャリア粒子はトナー粒子と混合・攪拌され、トナー粒子を帯電させ、さらに搬送するとの機能を有しており、現像剤を設計する際の制御性が良い。従って、二成分系現像剤は高画質が要求されるフルカラー現像装置および画像維持の信頼性、耐久性が要求される高速印刷を行う装置等に適している。
【0005】
このようにして使用される二成分系現像剤においては、画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等の画像特性が、初期の段階から所定の値を示し、しかもこの特性が耐刷期間中に変動せず、安定に維持されることが必要であり、これらの特性を安定に維持するためには、二成分系現像剤中に含有されるキャリア粒子の特性が安定していることが必要になる。
【0006】
二成分系現像剤を形成するキャリア粒子として、従来は、酸化被膜鉄粉および樹脂被覆鉄粉などの鉄粉キャリアが使用されていた。このような鉄粉キャリアは、磁化が高く、導電性も高いことから、ベタ部の再現性のよい画像が得られやすいからである。しかしながら、これらの鉄粉キャリアは、自重が重く、また磁化が高すぎるために、現像ボックス内でトナー粒子に非常に強い攪拌ストレスがかかり、鉄粉キャリアの表面にトナーが融着する、所謂トナースペントが発生しやすく、このようなトナースペントが発生し、有効なキャリア表面積が減少することにより、トナー粒子との摩擦帯電能力が低下しやすくなる。また、樹脂被膜鉄粉キャリアでは、耐久時ストレスにより被覆した樹脂が剥離しやすく、被覆樹脂が剥離すると高導電性で絶縁破壊電圧が低い芯材(鉄粉)が露出し、感光体上に形成された静電潜像を電荷リークによって破壊してしまい、ベタ部にハケスジなどが発生し、均一な画像が得られにくいなど耐久性に劣る。これらの理由から、酸化被膜鉄粉および樹脂被覆鉄粉などの鉄粉キャリアは現在ではほとんど使用されなくなってきている。
【0007】
例えば、特許文献1(特開昭59−48774公報)に記載のように酸化被膜鉄粉あるいは樹脂被覆鉄粉に代わって、Cu−ZnフェライトやNi−Znフェライト等のソフトフェライトの樹脂被覆キャリアが使用されてきている。このようなソフトフェライトを芯材とする樹脂被覆キャリアは磁化が低いために、現像磁気ブラシの穂を柔らかく形成することができ、形成される画像の縦横線の再現性がよくなる。
【0008】
また、このようなソフトフェライトを芯材とする樹脂被覆キャリアは、絶縁破壊電圧が高いために、電荷のリークが生じにくく、高画質の画像を形成することができる。
また、画像の高品質化および現像ボックスの精度向上に伴って、キャリア粒子だけでなくトナー粒子の小粒子化も進んでおり、トナー粒子として、平均粒子径が5〜10μmのトナー粒子を使用することが主流になってきており、さらに将来に向かって、平均粒子径が5μm以下のトナー粒子の使用も検討され始めている。
【0009】
そして、このように小粒径のトナー粒子に摩擦により所望の電荷を付与するために、キャリア粒子は高い比表面積を有していることが必要になり、キャリア粒子も小粒子化してきている。具体的には、平均粒子径が35〜60μmの球状フェライトが使用されるようになってきた。
こうした二成分系現像剤自体の改良とは別に、二成分系現像剤を使用する環境も変化しており、二成分系現像剤もその使用環境の変化に対応するように改変されている。
【0010】
例えば、アナログ方式であった現像方式は、デジタル現像方式に移行しており、また、一般のオフィスでもネットワーク化が進み、従来は限られた部門で利用されていたフルカラー画像も一般的になってきている。フルカラー画像は、これまで一般的に使用されてきた白黒画像と比較して、画像面積が多いことから、ベタ部およびハーフトーン部などにおける均一性、階調性、解像度などの特性をさらに向上させる必要がある。
【0011】
このようなベタ部およびハーフトーン部における均一性、階調性、解像度を向上させ、また、トナーの移行速度を促進させるために、画像形成方法として、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である、所謂、交番電界を用いる方法を採用するのが有利である。
【0012】
このような交番電界を用いた現像方法では、直流電界の上に交流電界を重畳するために、現像剤には瞬間的に強い電界がかかる。このように印加される交番電界によって、電荷のリークが生じやすく、形成された静電潜像が乱されやすく、特に従来から使用されてきた現像剤では、ベタ部あるいはハーフトーン部においてむらの発生、白斑などの画像欠陥が生じやすい。
【0013】
こうした印加された交番電界のような高電界下における電荷のリークを抑えるためには、キャリア粒子の絶縁破壊を防止することが必要であり、キャリア粒子としてキャリア芯材の表面に樹脂被覆層を有したキャリアを使用することが望ましい。しかしながら、こうした樹脂被覆キャリアで使用される樹脂は、比較的少量であり、樹脂被覆層の厚さは薄く、また、キャリア芯材を完全に被覆しているとも限らないので、このような樹脂被覆層を設けたとしても、このようにして形成された樹脂被覆層によって電荷リークが完全に防止されない。すなわち、このようにキャリア粒子を樹脂被覆することにより、低電界ではキャリア粒子が高い電気抵抗を示すが、高電界においては、芯材自体の影響を受け、電荷リークを生ずることがある。特に、キャリア芯材として鉄粉あるいはマグネタイトといった低電気抵抗芯材を使用した場合には、こうした傾向が著しい。また、比較的絶縁破壊電圧が高いとされている従来のCu−Znフェライト粒子、Ni−Znフェライト粒子、特許文献2(特開平8−69131号公報)に記載されているようなフェライト粒子を用いても、均一でかつ忠実な画像再現性が得られにくいのが現状である。
【0014】
また、例えば特許文献3(特開平6−51563号公報)、特許文献4(特開平6−35231号公報)には、キャリアの磁気を例えば30〜150emu/cm程度に弱めることにより、現像極での磁場において磁気ブラシが柔らかくなり潜像に対して忠実な画像が得られると記載されている。このようにキャリアの磁化を弱めることにより、磁気ブラシがやわらかくなり、比較的良好な画像が得られやすくなるものの、近年の高画質化における高度な画像再現性を満たすには至っていない。
【0015】
さらに、特許文献5(特開平7−181744号公報)には、キャリア芯材の表面を被覆する際に、Zrアルコキシドなどの部分加水分解ゾルを用いて表面処理することにより得られる電子写真キャリアが開示されている。このようにして形成された被覆層は、極めて硬いために、使用期間中に被覆層が剥がれることなく安定した画像を形成することができると記載されている。しかしながら、最近の現像ストレスの強いコンパクトな現像装置においては、被覆層の剥離によりキャリア芯材が露出し、電荷リークが発生するなど、充分な耐久性が得られないことが多い。
【0016】
また、特許文献6(特開平5−197214号公報)には、炭化水素溶媒中でキャリア芯材表面をTiまたはZrからなる高活性触媒成分で接触処理し、この表面にオレフィン系モノマーを重合させて、キャリア芯材表面がカーボンブラックを含有するポリオレフィン系樹脂で被覆されたキャリアが開示されている。このキャリアは、耐久性、耐ストレス性、耐環境性に優れていると記載されている。しかしながら、この公報に記載されているキャリアは、キャリア芯材の表面をポリオレフィンで被覆した被覆キャリアであり、ストレスの大きい高速機では、表面被覆剤が剥離し、充分な耐久性が得られない。
【0017】
さらに、特許文献7(特開平8−194338号公報)には、トナーの高帯電性を維持し、キャリア付着および濃度むらを防止し発色安定性を高める目的で、特定の成分を含有するフェライトキャリアが開示されている。この公報には、また、粒子表面の結晶成長度、凹凸の制御および粒子密度の制御のために、特定の成分を含有するフェライトキャリア成分に、周期律表IA、IIA、IIIA、IVA、VA、IIIBおよびVB族から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物を添加したキャリアが開示されている。しかしながら、このような添加元素を無作為に選択した場合、高磁化を保ったまま、高電界下における電荷リークを抑制することはできない。また、この公報に記載されているような、粒子表面の結晶成長度、凹凸の制御および粒子密度を制御するだけでは、電荷リークの抑制、交番電界下あるいは高電界下におけるベタ印刷やハーフトーンの均一性を確保することは極めて困難である。このようにこの公報は、高電界下における電荷リークを抑制することを意図したものではなく、さらにその示唆もなく本発明とは全く異なるものである。
【0018】
さらに特許文献8(特許第3168377号公報)には、特定のキャリア抵抗及び流動性を有するキャリアを使用することで、高画像濃度、ハイライト再現性、細線再現性等に優れた高画質化が達成できることが開示されている。また、この公報に記載されているキャリアは、Biを添加することにより、キャリア芯材の高抵抗化を図ることを特徴としており、添加していない場合には低抵抗になってしまい、また添加量が多すぎると表面を含めて均一なフェライト相が達成できないために、トナーの帯電安定化が達成できないことが開示されている。しかしながら、この様にBiを添加することのみによって得られるとされている高抵抗なキャリアでは、電荷リークに対する強度が充分に得られず、また絶縁破壊電圧が低く潜像の乱れを充分に抑制することは困難であり、さらに本公報において良好とされている様な、表面を含めて均一なフェライトは、特に高電界下における電荷リーク現象を防ぐことができないため、近年高まる高画質化の要求に応えることはできなかった。
【0019】
【特許文献1】
特開昭59−48774号公報
【特許文献2】
特開平8−69131号公報
【特許文献3】
特開平6−51563号公報
【特許文献4】
特開平6−35231号公報
【特許文献5】
特開平7−181744号公報
【特許文献6】
特開平5−197214号公報
【特許文献7】
特開平8−194338号公報
【特許文献8】
特許第3168377号公報
【0020】
【発明の目的】
本発明は、ハーフトーンの忠実な再現、階調性、解像力、ベタ印刷における均一性に優れ、高品位な画像品質を長期間にわたって維持できる電子写真用キャリアを形成することができるキャリア芯材を提供することを目的としている。
また、本発明は、ハーフトーンの忠実な再現、階調性、解像力、ベタ印刷における均一性に優れ、高品位な画像品質を長期間にわたって維持できる樹脂で被覆した電子写真用キャリアを提供することを目的としている。
【0021】
さらに、本発明は、ハーフトーンの忠実な再現、階調性、解像力、ベタ印刷における均一性に優れ、高品位な画像品質を長期間にわたって維持できる電子写真用現像剤を提供することを目的としている。
またさらに、本発明は、上記のような電子写真用現像剤を用いて、交番電界下で、感光体上に形成された静電潜像を現像する画像形成方法を提供することを目的としている。
【0022】
【発明の概要】
本発明のキャリア芯材は、融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)と融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の被覆キャリアは、キャリア芯材と該芯材を被覆する樹脂被覆層とからなり、該キャリア芯材は、融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)と融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴としている。
【0024】
さらに、本発明の電子写真用二成分系現像剤は、上記のような被覆キャリアと、平均粒子径が3〜15μmの範囲内にあるトナー粒子とを含有することを特徴としている。
またさらに、本発明の画像形成方法は、感光体上に形成された静電潜像を、交番電界下において、上記の電子写真用二成分系現像剤を用いて現像することを特徴としている。
【0025】
本発明のキャリア芯材を用いて形成された被覆キャリアは、キャリア芯材中に、融点の異なる金属酸化物が少なくとも2種類含有されており、これらの含有量を調整することにより、高電界下においても電荷リークがなく、かつ高磁化の被覆キャリアを製造することができる。
さらに、このような高電界下においても電荷リークがなく、かつ高磁化の被覆キャリアを用いる二成分現像剤は、交番電界による画像形成法において、効率よく画像を形成することができる。
【0026】
【発明の具体的な説明】
次に本発明の電子写真現像剤用のキャリア芯材、被覆キャリア、二成分系現像剤および画像形成方法について、具体的に説明する。
本発明のキャリア芯材は、融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)と融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴としている。
【0027】
すなわち、本発明のキャリア芯材中には、フェライト成分中に、融点の異なる少なくとも2種類の金属酸化物が含有されている。そして、このキャリア芯材を構成するフェライト成分中には(MO)で表される金属酸化物の一部がフェライトに固溶されない状態で独立して存在していることが好ましい。
本発明のキャリア芯材に含有される低融点酸化物(MO)は、1000℃以下の融点を有する酸化物である。さらに本発明においてはこの低融点酸化物(MO)の融点が、550〜900℃の範囲内にある酸化物を用いることが好ましく、600〜850℃が特に好ましい。上記のような融点を有する低融点酸化物(MO)を用いることより、高融点酸化物(MO)を粒子内に分散させることができる。
【0028】
このような低融点酸化物(MO)の例としては、PbO、Bi、Sb、V、P等を挙げることができる。これらの低融点酸化物(MO)は単独であるいは組み合わせて使用することができる。特に、本発明ではこの低融点酸化物(MO)として、Bi、Sb、P、Vを単独であるいは組み合わせて使用することが好ましい。またさらに好ましくはBi、P、Vを単独であるいは組み合わせて使用する。
【0029】
この低融点酸化物(MO)は、このキャリア芯材を形成するフェライト(100重量部)中に0重量%を超え12重量%以下の量、好ましくは、0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.02〜3重量%の範囲内の量で含有されている。本発明のキャリア芯材中におけるこの低融点酸化物(MO)の量が12重量%を超えると、磁化が著しく低下し好ましくない。本発明のキャリア芯材において、フェライト成分にはこの低融点酸化物(MO)が必須成分として含有されており、この低融点酸化物(MO)の含有量は極微量であってもよいが、好ましくは、本発明のキャリア芯材がこの低融点酸化物(MO)を0.01重量%以上の量で含有することにより、本発明のキャリア芯材がより高磁化であり、高電界下においても電荷リークを起こさない、優れた電気特性を示すようになる。
【0030】
本発明のキャリア芯材に含有される高融点酸化物(MO)は、1800℃以上の融点を有する酸化物である。さらに本発明において高融点酸化物(MO)として、融点が1800〜3500℃の範囲内にある酸化物を使用することが好ましく、更に好ましくは1850〜3300℃である。このような高融点酸化物(MO)を含有させることにより、キャリア芯材を形成するフェライト組成中に完全に固溶されることはなく、少なくとも一部は、粒子内に独立して分散させることができる。
【0031】
また、本発明において、高融点酸化物(MO)を構成する金属(M)についての電気抵抗率が通常は10−5Ω・cm以上、好ましくは3×10−5Ω・cm以上、特に好ましくは4×10−5Ω・cm以上の金属(M)の酸化物である。このような高い電気抵抗率を有する金属(M)を用いることにより、その酸化物である高融点酸化物(MO)が導電性を阻害し電荷リークを抑制できる。電気抵抗率が10−5Ω・cmより低いと、高電界下における電荷リークを抑制する効果が充分得られない。ここで、高融点酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率は金属データブック(日本金属学会編)による。
【0032】
また、この高融点酸化物(MO)の少なくともその一部をフェライトに固溶せず存在させることにより、より効果的に導電性を阻害し、電荷リークを抑制できる。この高融点酸化物(MO)は、低融点酸化物(MO)と共に用いることによって、このような効果を得ることができる。これは、フェライトの焼結過程において、低融点酸化物(MO)が溶融し液相を発現させることによって結晶成長が進む際に、高融点酸化物(MO)は粒子内に分散するとともに、その一部が粒界相中にも存在するようになるためである。このような効果により、高い電気抵抗率を持つ金属(M)によって構成される高融点酸化物(MO)が粒界相における絶縁性を高くすることができ、したがって本発明のキャリア芯材を用いて形成された被覆キャリアが、低電界から高電界まで、広範囲にわたって電荷リークを引き起こさないような、優れた電気特性を有するようになる。
【0033】
このようにフェライト成分に固溶されずに独立して高融点酸化物(MO)を存在させることにより、フェライトの結晶間の導電性を阻害する働きを有し、高磁化でありながら、高電界下においても電荷リークのない被覆キャリアを形成可能なキャリア芯材を形成することができる。特に、この高融点酸化物(MO)は、キャリア芯材の表面近傍よりもキャリア芯材の粒子内部に高い含有率で存在させることにより、粒子内部の抵抗が寄与するような高電界下における電荷リーク現象を抑制でき、より高磁化であり、高電界下においても電荷リークのない被覆キャリアを製造するのに適したキャリア芯材を得ることができる。また、このように独立して存在する高融点酸化物(MO)は、低融点酸化物(MO)と共に含有させることが重要であるが、その含有量を調整することにより、粒子内に分散させることができる上に、表面近傍の含有率を調整することができる。この様な作用により、本発明のキャリア芯材が、高磁化で、かつ低電界から高電界まで広範囲にわたって、また耐刷によって樹脂被覆が摩耗しても電荷のリークが生じにくい被覆キャリアを形成するのに適した芯材になる。
【0034】
上記のような高融点酸化物(MO)の例としては、ZrO、TiO、Ti、TiO、Taを挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。特に、本発明では高融点酸化物(MO)として、ZrO、TiO、Taを単独であるいは組み合わせて使用することが好ましい。また、さらに好ましくは、ZrOを使用する。
【0035】
この高融点酸化物(MO)は、このキャリア芯材を形成するフェライト(100重量部)中に0重量%を超え12重量%以下の量、好ましくは、0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.02〜3重量%の範囲内の量で含有されている。本発明のキャリア芯材中におけるこの低融点酸化物(MO)の量が12重量%を超えると、磁化が著しく低下し好ましくない。本発明のキャリア芯材において、フェライト成分にはこの高融点酸化物(MO)が必須成分として含有されており、この高融点酸化物(MO)の含有量は極微量であってもよいが、好ましくは、本発明のキャリア芯材がこの高融点酸化物(MO)を0.01重量%以上の量で含有することにより、本発明のキャリア芯材がより高磁化であり、高電界下においても電荷リークを起こさない、優れた電気特性を示すようになる。
【0036】
ここで、高融点酸化物(MO)がフェライト中に固溶せず独立して分散されているかは、図1の例に示されるように、X線回折によってフェライト化されていない元素ピークが検出されることによって明確になる。
本発明において、キャリア芯材を示す式(A)
(MO)(Fe ・・・(A)
(ただし、式(A)において、yおよびzはモル%を表し、40≦z<100、y+z=100であり、
MはFe、Cu、Zn、Mn、Mg、Ni、Sr、Ca、及びLiから選ばれる金属を表し、MOはそれらの酸化物から選ばれる1種または2種以上の組み合わせを表す。)に対し、該金属酸化物(MO)以外から選ばれる低融点酸化物(MO)及び高融点酸化物(MO)を含有させることが好ましい。前記のようなフェライトは磁化や抵抗を所望の範囲にコントロールし易く、また前記の低融点酸化物(MO)及び高融点酸化物(MO)を固溶させにくい。前記フェライト組成式中のzは40モル%以上100モル%未満の範囲内の量で含有している。特に本発明のキャリア芯材が良好なフェライト構造を形成し、高融点酸化物(MO)と低融点酸化物(MO)の効果を得やすくするためには、このキャリア芯材中に、Feは40〜90モル%の範囲内の量で含有されていることが望ましい。40モル%未満であると、低磁化粒子が発生し易くキャリア付着の原因となる。また、MOはFeO、MnO、MgO、CaO、LiO及びSrOよりなる群から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが好ましい。これらの酸化物は磁化のコントロールがし易く、特に低融点酸化物(MO)及び高融点酸化物(MO)の効果が得られやすい。
【0037】
また、本発明において、キャリア芯材中にSiOが含有されると、前述したような高融点酸化物(MO)と低融点酸化物(MO)の働きを阻害するためか、絶縁性の粒界相を均一かつ有効に形成させることが難しく、電荷リークを抑制しにくくなる。また、磁化(Ms)が低下し、残留磁化(Mr)および保磁力(Hc)は高くなりすぎる傾向があり、本発明ではSiOを添加しないことが好ましい。
【0038】
本発明のキャリア芯材において、低融点酸化物(MO)および高融点酸化物(MO)の量は、キャリア芯材中における低融点酸化物(MO)/高融点酸化物(MO)の重量比が通常は0.01〜50、好ましくは0.05〜20、特に好ましくは0.1〜10の範囲内になるように調整される。この比が上記範囲を逸脱して小さいとキャリア芯材中の高融点酸化物(MO)に対する低融点酸化物(MO)の量が不足し、高融点酸化物(MO)が芯材中に分散しにくく、また粒界に集まりにくいため、絶縁性が低くなる。またこの比が上記範囲を逸脱して大きいと、高融点酸化物(MO)の量が相対的に少ないため、粒界相における絶縁性が低くなる。
【0039】
また、本発明のキャリア芯材中における低融点酸化物(MO)と高融点酸化物(MO)との合計重量[(MO)+(MO)]は、極微量であってもよいが、このキャリア芯材の重量を100重量%としたときに、好ましくは0重量%を超え24重量%未満、好ましくは0.02〜20重量%、特に好ましくは0.04〜3重量%の範囲内に調整する。この値が上記範囲を逸脱して少ないとこれらの成分の添加効果が発現せず、特に電荷リークの抑制効果が発現しない。また、上記範囲を逸脱して多いと、キャリア芯材を形成するフェライトの組成に乱れが生じ、このキャリア芯材の磁化が低下しすぎる。
【0040】
このようなキャリア芯材の体積平均粒子径は、通常は、15〜70μm、好ましくは20〜50μmの体積平均粒子径を有している。また、このようなキャリア芯材は、10μmより小さい微細粒子の含有率が、通常は3重量%以下、好ましくは1重量%以下であり、さらに90μmよりも大きい粗大粒子の含有率が、通常は3重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
また、本発明で使用されるキャリア芯材のBET比表面積は、通常は200〜2000m/gの範囲内にあり、好ましくは300〜1800m/gの範囲内にある。
【0041】
このフェライトキャリア芯材の電気抵抗率は通常は10Ω・cm以上であり、好ましくは10〜1012Ω・cmの範囲内にあり、さらに好ましくは10〜1011Ω・cmの範囲内にある。
キャリア芯材および被覆キャリアの電気抵抗は、例えば、図2に示すような電気抵抗測定機を用いて測定することができる。図2において、付番1は試料(キャリア芯材、被覆キャリア)、付番2は磁極、付番3は電極(真鍮板)、付番4は絶縁材(フッ素樹脂板)である。
【0042】
図2に示すように、磁極間間隔が2.0mmになるようにN極とS極とを対向させ、非磁性の平行平板電極(面積10×40mm)に試料200mgを秤量し充填した。磁極(表面磁束密度:1500Gauss、対向電極面積:10×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、印加電圧1000Vにおけるキャリアの電気抵抗を絶縁電気抵抗計または電流計を用いて測定する。ここで電気抵抗率は下記式によって計算する。
【0043】
電気抵抗率(Ω・cm)=抵抗値(Ω;測定値)×測定サンプルの電極接触面積(cm)/電極間隔(cm)
これによって、20000V/cmという高電界下における電気抵抗率が算出される。
このようなキャリア芯材は、そのまま被覆キャリアとして使用することもできるし、またこのキャリア芯材の表面が酸化被膜処理されていてもよい。酸化被膜処理を施したキャリア芯材についてX線回折によりその構造を調べると、酸化被膜処理をすることにより、フェライトキャリア芯材最表面から中心方向に数μmにかけてスピネル構造以外にFeの存在率が高い層が形成されることが確認できる。このような層を形成することにより、高電圧の印加によっても、このキャリア芯材が絶縁破壊を起こすことがなく、電荷リークを抑制できる。このようにFeの存在率が高い層(酸化被膜層)が、フェライトキャリア芯材表面から50nm以上に深さにまで達していることが好ましく、さらにこの深さが0.1〜3μmの範囲内にあることが特に好ましい。そして、このFeの存在率が高い層が、粒子径の表面から、粒子径の1/1000〜1/5の深さにまで及んでいることが好ましい。
【0044】
このような粒子の表面に酸化被膜を施したフェライト芯材の電気抵抗率は、通常は10Ω・cm以上であり、好ましくは10〜1013Ω・cmの範囲内にあり、さらに好ましくは10〜1012Ω・cmの範囲内にある。
本発明のキャリア芯材は優れた磁気特性を有しており、このキャリア芯材の磁気特性は、例えば、積分型B−Hトレーサー(BHU−60型、理研電子(株)製)を使用して測定することができる。この装置に試料約1gを充填してこのキャリア芯材についての磁気ヒステリシスループを形成させ、このヒステリシスループから磁化(Ms)、残留磁化(Mr)および保磁力(Hc)を算定することができる。
【0045】
このようにして測定された本発明のキャリア芯材の1000k/4π・A/m(1000エルステッド)における磁化(Ms)は、通常は40〜100Am/kg(40〜100emu/g)であり、好ましくは50〜95Am/kg(50〜95emu/g)、さらに好ましくは65〜95Am/kg(65〜95emu/g)であり、1000k/4π・A/m(1000エルステッドにおける残留磁化(Mr)は、通常は20Am/kg(20emu/g)以下、好ましくは15Am/kg(15emu/g)以下、特に好ましくは5Am/kg(5emu/g)以下であり、保磁力(Hc)は、通常は50k/4π・A/m(50エルステッド)以下、好ましくは30k/4π・A/m(30エルステッド)以下、特に好ましくは15k/4π・A/m(15エルステッド)以下である。磁化が上記範囲を逸脱して低すぎるとキャリア付着が生じやすくなり、また高すぎると形成される磁気ブラシの穂が硬くなり、ハケスジなどが生じやすくなり、高品位の画像が形成しにくくなり、また残留磁化、保磁力が高すぎると、現像剤の流動性が悪く、トナーとの摩擦帯電の立ち上がりが悪くなり、トナー飛散やかぶりといった現象が起こりやすくなる。
【0046】
本発明のキャリア芯材は、このキャリア芯材中に含有される高融点酸化物(MO)の融点よりも高い温度に加熱する熱履歴を有していないことが好ましい。すなわち、本発明のキャリア芯材には、高融点酸化物(MO)の一部が他の成分には固溶されずに独立に分散して存在していることが好ましく、本発明のキャリア芯材中に高融点酸化物(MO)を他の成分から独立した形態で分散させるためには、このキャリア芯材を製造する工程における最高加熱温度を、この高融点酸化物(MO)の融点以下に、好ましくは融点未満に設定することが望ましい。このように加熱温度を調整することにより、本発明のキャリア芯材から形成された被覆キャリアにおいて、高電界下においても電荷リークがなく、またさらには、磁化と電気抵抗率とをそれぞれ独立に好適範囲に調整することができるようになる。
【0047】
本発明の電子写真用キャリア(被覆キャリア)は、通常は、上記のようなフェライト成分からなるキャリア芯材と、この表面に形成された樹脂被膜とからなる。
本発明の電子写真用キャリアには、通常は、上記のようなフェライト成分からなるキャリア芯材の表面に樹脂被膜が形成されている。ここで樹脂被膜を形成する被覆樹脂としては、従来から知られている各種の樹脂を用いることが可能である。このような被覆樹脂の例としては、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素−アクリル樹脂、フッ素−エポキシ樹脂、アクリル−スチレン樹脂およびシリコーン樹脂;ならびに、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、または、フッ素樹脂などの樹脂で変性された変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0048】
このような樹脂は、キャリア芯材に対して通常は0.01〜10.0重量%、好ましくは0.3〜7.0重量%、さらに好ましくは0.5〜3.0重量%の量で使用される。被覆量が0.01重量%未満ではキャリア表面に均一な被覆層を形成することが難しく、また10.0重量%を超えるとキャリア同士の凝集が発生しやすくなり、歩留まり悪化等の生産性の低下とともに、現像装置内での現像剤の流動性あるいは現像剤の帯電量等の現像剤特性が変動する原因となりやすい。
【0049】
このようなキャリア芯材を被覆する樹脂被膜は現像装置内におけるトナーの撹拌やドクターブレードとの衝突により大きなストレスを受けるため、剥離しやすく、またその摩耗も著しい。こうした装置内においてトナー粒子がキャリア表面に付着するスペント現象も起こり易い。
したがって、キャリア芯材を被覆する樹脂としては、長期にわたって安定した現像剤特性を保ち、現像装置内における苛酷な条件によっても影響を受けにくい樹脂であることが好ましく、このような特性を有する樹脂として下記式(I)および/または(II)で表される構造を形成しうる樹脂を使用することが特に好ましい。このような構造を有する樹脂を使用することにより、耐摩耗性、耐剥離性、耐スペント性が良好になるだけでなく、被覆キャリアが撥水性になりやすい。
【0050】
【化1】
Figure 2004240321
【0051】
上記式(I)および(II)において、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基を示す。
上記式(I)、(II)で表される構造を有する樹脂の例としては、ストレートシリコーン樹脂が挙げられ、他の有機基との変性をしてもよく、変性樹脂としてはアクリル変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂およびフッ素変性シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらを組み合わせて使用する場合には、これらの樹脂によりキャリアに付与される極性を考慮して使用される。
【0052】
また、これらの樹脂の密着性を向上させるために、オキシム型等の架橋剤を含有させることができる。
さらに、上記キャリア芯材の被覆樹脂中には、帯電制御剤としてシランカップリング剤を含有することが好ましい。芯材露出面積が比較的低くなるように樹脂被覆を制御した場合、電子写真用の被覆キャリアの帯電能力が低下することがあるが、このような場合、シランカップリング剤を使用することにより、電子写真用の被覆キャリアの帯電能力を制御することがきる。帯電能力の調整のために使用できるカップリング剤の種類に限定は無いが、負極性トナーを使用する場合の被覆キャリアにはアミノシランカップリング剤が好ましく、正極性トナーを使用する場合の被覆キャリアにはフッ素系シランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤は、被覆剤として用いる樹脂100重量部に対して、通常は0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜50重量部の範囲内の量で使用される。
【0053】
また、本発明では上記被覆キャリアの被覆剤中に導電性微粒子を添加して被覆キャリアの電気抵抗率を調整することができる。すなわち、本発明の電子写真用の被覆キャリアは、樹脂の被覆量が多くなると被覆キャリアの電気抵抗率が過度に高くなることがあり、このような場合、現像剤の現像能力が低下することがある。このような場合において、被覆キャリアの被覆剤中に少量の導電性微粒子を配合して被覆キャリアの電気抵抗率を調整することができる。しかしながら、導電性微粒子は導電性が高く、その電気抵抗率は、被覆樹脂や芯材に比べ低抵抗であるため、添加量が多すぎるとこの導電性微粒子に起因して、被覆キャリアからの電荷リークが生じることがある。従って、このような導電性微粒子の添加量は、被覆樹脂の固形分に対して、通常は0.25〜20.0重量%、好ましくは0.5〜15.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。
【0054】
本発明においては、導電性微粒子としては、例えば、導電性カーボンや酸化チタン、酸化スズ等の酸化物を使用することができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
本発明の被覆キャリアの磁気特性は、上記キャリア芯材における磁気特性を測定するのと同様の方法により測定することができ、本発明の被覆キャリアについて1000k/4π・A/m(1000エルステッド)における磁化(Ms)は、通常は、40〜100Am/kg(40〜100emu/g)であり、好ましくは50〜95Am/kg(50〜95emu/g)、さらに好ましくは65〜95Am/kg(65〜95emu/g)である。
【0055】
本発明の被覆キャリアにおいて、上記のようにして測定した磁化が40Am/kg(40emu/g)未満であると、ハーフトーンの再現性や、階調性は比較的良好となるが、キャリア付着が発生しやすくなる。また100Am/kg(100emu/g)を超えると、磁気ブラシの穂が硬くなり、ハケスジ等の画像欠陥が生じ易く、また良好な階調性、解像性が得られず、高品位な画像を得ることができない。
【0056】
また、本発明の被覆キャリアの1000k/4π・A/m(1000エルステッド)における残留磁化(Mr)は、通常は20Am/kg(20emu/g)以下、好ましくは15Am/kg(15emu/g)以下、特に好ましくは5Am/kg(5emu/g)以下であり、保磁力(Hc)は、通常は50k/4π・A/m(50エルステッド)以下、好ましくは30k/4π・A/m(30エルステッド)以下、特に好ましくは15k/4π・A/m(15エルステッド)以下である。残留磁化、保磁力が高すぎると、現像剤の流動性が悪く、トナーとの摩擦帯電の立ち上がりが悪くなり、トナー飛散やかぶりといった現象が起こりやすくなる。
【0057】
さらに、本発明の被覆キャリアの電気抵抗率は、10Ω・cm以上であり、好ましくは10〜1014Ω・cmの範囲内にあり、特に好ましくは10〜1013Ω・cmの範囲内にある。
上記のような被覆キャリアの平均粒子径は、通常は15〜70μmの範囲内、好ましくは20〜50μmの範囲内にある。また、この被覆キャリアの635メッシュ通過率は、通常は10重量%以下である。さらに、この被覆キャリアの635メッシュ通過率が3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
【0058】
本発明の被覆キャリアの平均粒子径が70μmを超えると、ベタムラやハーフトーンの均一性が悪くなりやすく、高画質を得にくくなる。また平均粒子径が15μm未満になると、キャリア付着が発生し易くなる。さらに、本発明の被覆キャリアにおける635メッシュ通過率が10重量%を超えないように粒子径を揃えることにより、感光体への被覆キャリアの付着を防止することができ、特にフルカラーの場合に発生しやすい白斑による画像欠陥の発生を有効に防止することができる。
【0059】
なお、本発明において、キャリア芯材および被覆キャリアの平均粒子径は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定した値である。また、635メッシュ通過率は、エッピング社製q/mメ−タ−にて635メッシュ金網を用いて測定した。すなわち、635メッシュ金網を用いた測定セルに被覆キャリア2cmを充填し、1050±5mbarの吸引圧で90秒間吸引し、吸引前後の重量減比率を635メッシュ通過率とした。
【0060】
本発明の電子写真用キャリアは、高融点酸化物(MO)、低融点酸化物(MO)、Feおよび好ましくは金属酸化物(MO)を形成しうる金属化合物を酸化物換算で前記の範囲内になるように混合し、焼成することにより製造することができる。
なおFe源としては、酸化鉄を用いることができる他、鋼の酸洗浄液を焙焼した物および天然の磁鉄鉱を焙焼した物等を用いることもできる。
【0061】
上記のような原料成分を秤量し、粉砕混合する。この粉砕混合の方法は湿式でも、乾式でもよい。湿式の例を示すと、湿式ボ−ルミルまたは湿式振動ミル等を使用することができる。この粉砕混合工程における粉砕時間は、通常は1時間以上、好ましくは1〜20時間である。
このようにして得られた粉砕物を乾燥させた後、ロータリーキルンなどで仮焼成する。
【0062】
この仮焼成は、使用する高融点酸化物(MO)の融点よりも低い温度に粉砕物を加熱することによって行われる。また、この仮焼成は、粉砕物を、通常は700〜1200℃の範囲内、好ましくは800〜1000℃の範囲内の温度に、通常は0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間保持ことによって行われる。この仮焼成を行うことにより、得られるキャリアの見掛け密度が高くなる。したがって、見掛け密度の低い電子写真用キャリアを得ようとする場合には、この仮焼成工程を省略することができる。
【0063】
こうして仮焼成を行った後、仮焼成物を再び粉砕する。この粉砕は、湿式で行うことが好ましく、通常は上記仮焼成物を再び水に分散させて粉砕する。この粉砕には、湿式ボ−ルミルまたは湿式振動ミル等を用いることができる。この粉砕工程においては、粉砕物の粒子径(平均値)が通常は15μm以下、好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下になるように粉砕する。湿式ボ−ルミルまたは湿式振動ミル等を用いた湿式粉砕では、粉砕時間は、通常は0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0064】
このようにして粉砕を行った後、必要により分散剤、バインダーなどを添加し例えばスプレードライヤーなどの乾燥・造粒装置を用いて含有される水分を除去し乾燥させた後、粒度調整する。
本発明ではこうして得られた造粒物を本焼成する。本焼成は、使用する高融点酸化物(MO)の融点よりも低い温度で造粒物を加熱することによって行われる。すなわち、上記のような造粒物を通常は1000〜1500℃、好ましくは1100〜1350℃の温度に保持することによって行われる。このような焼成条件において、焼成時間は、通常は1〜24時間、好ましくは2〜10時間である。
【0065】
また、この本焼成における酸素濃度は得られるフェライトキャリアの表面の酸化状態に影響を与えることから、本焼成においては、焼成装置内の酸素含有率を所定の範囲内に制御する。特に本発明では、この焼成装置内における酸素濃度は、通常は5容量%以下、好ましくは0〜3容量%の範囲内、特に好ましくは0.1〜1容量%の範囲内に調整されることが望ましい。
【0066】
上記のようにして得られたキャリア芯材はそのまま樹脂被覆することもできるが、キャリア芯材を大気雰囲気下で加熱して酸化被膜処理を施し、電気抵抗率の調整を行う。この酸化被膜処理は、使用する高融点酸化物(MO)の融点よりも低い温度で加熱することによって行われる。例えば、酸化被膜処理は、大気雰囲気下で、既存のロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用いて、キャリア芯材を通常は300〜700℃、好ましくは450〜650℃の温度に加熱する。この温度が300℃未満であると酸化被膜処理の効果が顕著ではなく、700℃を超えると磁化が低下する。
【0067】
このような条件で1〜180分間、好ましく10〜120分間処理することにより、キャリア芯材がさらに高電気抵抗率を有するようになる。なお、本発明のキャリア芯材は、上記のような酸化被膜処理の前に、必要に応じて250℃以下の温度で還元処理を行ってもよい。
こうして得られた焼成物を、解砕し、分級する。分級方法としては、風力分級、篩濾過法、沈降法などを挙げることができる。このようにしてキャリア芯材の粒径を所望の範囲内に粒度調整することが好ましい。
【0068】
また、分級後にあるいは分級する前に、低磁化粒子を除去するために磁力選鉱することが好ましい。
上記のようにして製造されたキャリア芯材を樹脂で被覆することにより被覆キャリアを製造する。ここで使用する被覆樹脂としては前述の樹脂を使用することができる。
【0069】
上述のような被覆樹脂を用いて被覆する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等により被覆することができる。被覆率を向上させるためには、流動床による方法が好ましい。
樹脂をキャリア芯材に被覆後、焼き付けする場合には、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉を使用することができ、さらにこのような炉を使用せずに、マイクロウェーブを用いて焼き付けすることもできる。
【0070】
焼き付けの温度は、使用する高融点酸化物(MO)の融点よりも低い温度であり、使用する樹脂により異なるが、通常は使用する樹脂の融点又はガラス転移点以上の温度に加熱することが必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等を用いる場合には、これらの樹脂が充分に硬化するまで加熱温度を保持することが好ましい。このようにして被覆層を形成した後、この被覆キャリアは、必要により解砕し、分級する。分級方法としては、風力分級、メッシュ濾過法、沈降法などを利用することができる。
【0071】
本発明の二成分系現像剤は、上記のような被覆キャリアとトナー粒子とからなる。本発明で使用するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
【0072】
トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、さらにはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独または混合して用いられる。
【0073】
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料および4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
着色剤(色材)としては、従来から知られている染料およびまたは顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
【0074】
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤および重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、例えば、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させ、塩析によって得られた粒子を、濾過し、洗浄し、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥したトナー粒子に外添剤を添加する。
【0075】
さらに、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
【0076】
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
【0077】
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料及びまたは顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエローおよびフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤は、例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等の表面改質剤を用いてその表面が改質されていてもよい。
【0078】
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及び、ノニオン系界面活性剤を使用することができる。
ここで、アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。さらに、カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、例えば、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
【0079】
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤の使用量は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼすことから、単量体の分散安定性が確保され、かつ重合トナー粒子の環境依存性に過度の影響を及ぼしにくい上記範囲内の量で使用することが好ましい。
【0080】
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれをも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物等を挙げることができる。
【0081】
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
さらに、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改良剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
【0082】
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
さらに、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素微粒子、アクリル微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0083】
重合トナー粒子を製造する際に、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
上記のようにして製造されたトナー粒子の平均粒子径は、3〜15μm、好ましくは5〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子の平均粒子径が3μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しカブリやトナー飛散を引き起こしやすくなり、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
【0084】
上記のようにして製造された被覆キャリアおよびトナー粒子を混合することにより、本発明の電子写真用現像剤を得ることができる。この場合、現像剤中におけるトナー粒子の含有濃度、即ちトナー濃度は、5〜15%に設定することが好ましい。5%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
【0085】
上記のようにして製造された二成分系現像剤は、有機光導電体層を有する感光体に形成されている静電潜像を反転現像する現像方式の電子写真方式(コピー機、プリンター、FAX、印刷機等)の装置で使用することができる。特に潜像を保持するための感光体と対向する磁気ブラシの現像領域で、現像部に交流成分と直流成分を有するバイアス電界を付与しながら潜像をトナー粒子で現像する画像形成法に適している。
【0086】
本発明の二成分系現像剤は、このような現像方式で使用することができる。特に、本発明の二成分系現像剤は、上述した交番電界を用いるフルカラー機等の現像剤として適している。
【0087】
【発明の効果】
本発明のキャリア芯材および被覆キャリアは、高融点酸化物(MO)および低融点酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であり、好ましくは所定の組成を有するフェライト中に、これらの金属酸化物の少なくとも一部が固溶されない状態で分散している。このようなフェライト芯材および被覆キャリアは、高磁化であると同時に低電界から高電界まで広範囲にわたって電荷リークがない、優れた電気特性を示す。
【0088】
さらに本発明の二成分系現像剤は、上記のような被覆キャリアとトナー粒子とからなり、この二成分系現像剤を用いることにより交番電界を利用した現像方式においても良好な画像を形成することができる。
【0089】
【実施例】
次に本発明を実施例を示して説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0090】
【実施例1】
MnOが47モル%、MgOが3モル%、Feが50モル%になるようにMnO、MgOおよびFeを秤量し、さらにこれらの金属酸化物100重量部に対して、3重量部のBi(融点824℃)および3重量部のZrO(融点2715℃)を秤量して添加した。
【0091】
なお、金属データブック(日本金属学会編)によると、Mnの電気抵抗率は、1.60×10−4Ω・cmであり、Mgの電気抵抗率は、3.9×10−6Ω・cmであり、Biの電気抵抗率は、1.16×10−4Ω・cmであり、Zrの電気抵抗率は、4.46×10−5Ω・cmである。
この混合物を湿式ボールミルで5時間混合、粉砕後、ロータリーキルンを用いて、950℃で1時間保持し、仮焼成を行った。
【0092】
こうして得られた仮焼成物を、湿式ボールミルで7時間粉砕し、平均粒径を1.5μmとした。
上記のようにして得られたスラリーに分散剤およびバインダーを適量添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥した後、この造粒物を、電気炉で温度1,250℃、酸素濃度0.3%の条件で6時間保持し、本焼成を行った。
【0093】
得られた焼成物を、解砕後、分級して粒度調整を行い、キャリア芯材を得た。キャリア芯材の平均粒子径は42.1μmであった。
このようにして得られたキャリア芯材中における低融点酸化物(MO)と高融点酸化物(MO)との重量換算含有率比((MO)/(MO))は、1.00であり、上記キャリア芯材中における低融点酸化物(MO)と高融点酸化物(MO)との合計の重量換算含有率((MO)+(MO))は、6重量%である。また、このようにして得られたキャリア芯材についてX線回折により分析したところ、高融点酸化物(MO)の少なくとも一部は形成されたフェライト成分には固溶されずに微細な粒子を形成してキャリア芯材中に含有されており、さらに蛍光X線定量分析において、X線発生電圧を可変させて測定したところ、高融点酸化物(MO)は、キャリア芯材の表面近傍よりも内部に高い含有率で含有されていた。
【0094】
一方、被覆する樹脂は、水:300部、トルエン500部、低級アルコール(ブタノール・プロピルアルコール混合液):100部中にクロロシラン(CHSiCl:9モル、(CHSiCl:1モルの比率で混合したクロロシラン):100部を滴下、混合後、分液し水層除去後、さらに低沸点成分を除去し、下記式(I)及び(II)からなる20%シリコーン樹脂を合成した。このシリコーン樹脂の固形分100重量部に対し、下記式(III)で表される化合物を20重量部、下記式(IV)で表される化合物を3重量部、さらに下記式(V)で表される化合物を10重量部添加し、よく撹拌混合し、被覆用シリコーン樹脂を調製した。この被覆用シリコーン樹脂をさらにトルエンで10%溶液に希釈し、被覆液とした。
【0095】
【化2】
Figure 2004240321
【0096】
上記のようにして得られたフェライト粒子からなるキャリア芯材100重量部に対し、上記に記載したシリコーン樹脂溶液を固形比換算で被覆量が、1.5重量部になるまで、流動床を用いてキャリア芯材に塗布し、乾燥後、さらに250℃で3時間焼き付けを行い、被覆キャリア(キャリア1)を製造した。
このようにして得られた被覆キャリアと、ミノルタ(株)製の市販のCF−70用トナー(マゼンダ、シアン、イエロー、ブラック)とを、それぞれのトナー濃度が10重量%になるように混合して二成分系現像剤を調整した。なお、これらのトナーの平均粒子径は、9.8μmである。このトナーを形成する樹脂成分はポリエステル樹脂であり、荷電制御剤として、サリチル酸Zn錯体を含有している。
【0097】
得られたキャリア芯材の組成を表1に、キャリア芯材の磁気特性、各工程別の電気抵抗率、被覆キャリアの平均粒子径、635メッシュ通過率、電気抵抗率、磁気特性を表2に示す。また、この被覆キャリアを用いて調製された二成分現像剤での耐刷試験後の画像評価(ベタ均一性、ハーフトーン均一性、階調性、解像度、キャリア付着(白斑))およびこれらを基にした二成分現像剤総合評価を表3に示す。
【0098】
(キャリア芯材及び被覆キャリアの磁気特性)
キャリア芯材及び被覆キャリアの磁気特性は、積分型B−Hトレーサー(BHU−60型、理研電子(株)製)を用いて次のようにして測定した。
まず、測定は、測定試料に印可磁場を加え、3000k/4π・A/m(3000エルステッド)まで掃引し、次いで、印加磁場を減少させ、ヒステリシスカーブを描き、得られたヒステリシスカーブから、1000k/4π・A/m(1000エルステッド)時の磁化と残留磁化、保磁力を算出する。
【0099】
(キャリア芯材および被覆キャリアの電気抵抗率測定)
キャリア芯材および被覆キャリアの電気抵抗率は、図2に示すような電気抵抗測定機を用いて測定した。図2において、付番1は試料(キャリア芯材、被覆キャリア)、付番2は磁極、付番3は電極(真鍮板)、付番4は絶縁材(フッ素樹脂板)である。
【0100】
図2に示すように、磁極間間隔が2.0mmになるようにN極とS極とを対向させ、非磁性の平行平板電極(面積10×40mm)に試料200mgを秤量し充填した。磁極(表面磁束密度:1500Gauss、対向電極面積:10×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、印加電圧1000Vにおけるキャリアの電気抵抗を絶縁電気抵抗計または電流計を用いて測定した。ここで電気抵抗率は下記式によって計算した。
【0101】
電気抵抗率(Ω・cm)=抵抗値(Ω;測定値)×測定サンプルの電極接触面積(cm)/電極間隔(cm)
これによって、20000V/cmという高電界下における電気抵抗率が算出される。
(キャリアの平均粒子径)
キャリアの平均粒子径は、日機装(株)製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定した。
【0102】
(実写評価)
得られた二成分系現像剤について、市販の装置(CF−70、ミノルタ(株)製)を用い、3万枚(1千枚を1Kと表記し、例えば3万枚を30Kと表記することもある)耐刷試験を行った。その際の耐刷後の画像評価(ベタ均一性、ハーフトーン均一性、階調性、解像度、キャリア付着(白斑))およびこれらを基にした二成分現像剤の総合評価を表3に示す。表3の評価は、ランク付けにて行った。「CC」以上が実用上問題ないレベルである。具体的な評価方法を以下に示す。
【0103】
(ベタ均一性)
適正露光条件下で現像を行い、ベタ部の均一性の評価を行い、目視によるランク付けを行った。
AA:非常に均一である
BB:均一でムラがない
CC:若干ムラがあるが使用可能レベル
DD:ムラが目立ち不均一
EE:ムラが非常に多く不均一
(ハーフトーン均一性)
適正露光条件下で現像を行い、ハーフトーン均一性の評価を行い、ランク付けを行った。
AA:非常に均一である
BB:均一でムラがない
CC:若干ムラがあるが使用可能レベル
DD:ムラが目立ち不均一
EE:ムラが非常に多く不均一
(階調性)
適正露光条件下で現像を行い、階調性を観察し、ランク付けを行った。
AA:非常に良い
BB:良い
CC:使用可能レベル
DD:悪い
EE:非常に悪い
(解像度)
適正露光条件下で現像を行い、解像度を観察し、ランク付けを行った。
AA:非常に良い
BB:良い
CC:使用可能レベル
DD:悪い
EE:非常に悪い
(キャリア飛散)
画像上のキャリア付着、白斑のレベルを評価した。
AA:A3用紙10枚中に白斑が無いこと
BB:A3用紙10枚中に1〜5個
CC:A3用紙10枚中に6〜10個
DD:A3用紙10枚中に11〜20個
EE:A3用紙10枚中に21個以上
(総合評価)
耐刷試験30K後の画像評価および耐刷試験を通しての総合評価をランク付けした。
AA:耐刷30Kを通じて、初期と変化なく非常に良好な画像を維持している。
BB:耐刷30Kを通じて、各項目で、初期に比べ若干変化はあるものの、実用上問題なく、良好なレベル。
CC:耐刷30Kを通じて、各項目で変化はあるものの実用上は問題ないレベル。
DD:耐刷30Kを通じて、各項目で変化が大きく、実用不可なレベル。
EE:初期から実用上不可なレベルの項目がある、または、変化が大きく耐刷30Kに至らない不可なレベル。
【0104】
【実施例2〜4および比較例1〜4】
実施例1において、使用する原料を表1に記載するように変えた以外は同様にしてキャリア芯材を製造した。なお、実施例2では、本焼成によりキャリア芯材を製造した後、さらに500℃で加熱して表面を酸化被膜処理してキャリア芯材を製造した。
さらに製造したキャリア芯材を用いた以外は実施例1と同様にして被覆キャリアを製造した。
【0105】
得られた被覆キャリアを用いて実施例1と同様にして二成分系現像剤を調整した。
得られたキャリア芯材、被覆キャリアの特性を表2に示す。さらに、二成分系現像剤について実施例1と同様にして測定した特性を表2に示す。
なお、金属データブック(日本金属学会編)によると、Tiの電気抵抗率は、5.5×10−5Ω・cmである。
【0106】
【表1】
Figure 2004240321
【0107】
【表2】
Figure 2004240321
【0108】
【表3】
Figure 2004240321

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のキャリア芯材の一例のX線回折のチャートを示す図であり、高融点酸化物(MO)は、フェライト化されていない元素ピークとして現れている。
【図2】図2は、本発明において使用した電気抵抗測定機を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・試料(キャリア芯材、被覆キャリア)
2・・・磁極
3・・・真鍮板
4・・・フッ素樹脂板

Claims (33)

  1. 融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)と融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴とするキャリア芯材。
  2. 上記キャリア芯材中に(MO)で表される金属酸化物の一部が独立して存在することを特徴とする請求項第1項記載のキャリア芯材。
  3. 上記キャリア芯材中における(MO)と(MO)との重量換算含有率比((MO)/(MO))が0.01〜50の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項または第2項に記載のキャリア芯材。
  4. 上記キャリア芯材の平均粒子径が15〜70μmの範囲内にあることを特徴とする請求項第1項乃至第3項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  5. 次式(A)で表される組成を有するフェライト成分;
    (MO)(Fe ・・・(A)
    (ただし、式(A)において、yおよびzはモル%を表し、40≦z<100、y+z=100であり、
    MはFe、Cu、Zn、Mn、Mg、Ni、Sr、Ca及びLiから選ばれる金属を表し、MOはそれらの酸化物から選ばれる1種または2種以上の組み合わせを表す。)中に、上記金属酸化物(MO)以外から選ばれる金属酸化物であって、
    融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)及び融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有することを特徴とするキャリア芯材。
  6. 上記キャリア芯材中に(MO)で表される金属酸化物の一部が独立して存在することを特徴とする請求項第5項記載のキャリア芯材。
  7. 上記キャリア芯材中における(MO)と(MO)との重量換算含有率比((MO)/(MO))が0.01〜50の範囲内にあることを特徴とする請求項第5項または第6項に記載のキャリア芯材。
  8. 上記キャリア芯材の平均粒子径が15〜70μmの範囲内にあることを特徴とする請求項第5項乃至第7項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  9. 上記(MO)で表される金属酸化物を構成する金属(M)の電気抵抗値率が10−5Ω・cm以上であることを特徴とする請求項第5項乃至8項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  10. 上記(MO)で表される金属酸化物が、FeO、MnO、MgO、CaO、LiO及びSrOよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物であることを特徴とする請求項第5項乃至第9項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  11. 上記キャリア芯材中における(MO)と(MO)との合計の重量換算含有率((MO)+(MO))が0.02〜24重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項乃至第10項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  12. 上記キャリア芯材中に含有される(MO)で表される金属酸化物が、該キャリア芯材の粒子表面近傍に比べ粒子内部に高含有率で含有されていることを特徴とする請求項第1項乃至第11項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  13. 上記(MO)で表される金属酸化物の融点が550〜900℃の範囲内にあり、(MO)で表される金属酸化物の融点が1800〜3500℃の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項乃至第12項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  14. 上記キャリア芯材が、該キャリア芯材に含有される(MO)で表される金属酸化物の融点よりも高温に加熱される熱履歴を経ていないことを特徴とする請求項第1項乃至第13項のいずれかの項に記載のキャリア粒子。
  15. 上記キャリア芯材の電気抵抗率が10Ω・cm以上であることを特徴とする請求項第1項乃至第14項のいずれかの項に記載のキャリア芯材。
  16. キャリア芯材と該芯材を被覆する樹脂被覆層とからなり、該キャリア芯材は、融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)と融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有し、該金属酸化物(MO)を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴とする被覆キャリア。
  17. キャリア芯材と該芯材を被覆する樹脂被覆層とからなり、該キャリア芯材は、次式(A)で表される組成を有するフェライト成分;
    (MO)(Fe ・・・(A)
    (ただし、式(A)において、yおよびzはモル%を表し、40≦z<100、y+z=100であり、
    MはFe、Cu、Zn、Mn、Mg、Ni、Sr、Ca及びLiから選ばれる金属を表し、MOはそれらの酸化物から選ばれる1種または2種以上の組み合わせを表す。)中に、上記金属酸化物(MO)以外から選ばれる金属酸化物であって、
    融点が1000℃以下である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)及び融点が1800℃以上である少なくとも一種類の金属酸化物(MO)を含有することを特徴とする被覆キャリア。
  18. 上記(MO)で表される金属酸化物を構成する金属(M)の電気抵抗率が10−5Ω・cm以上であることを特徴とする請求項第17項に記載の被覆キャリア。
  19. 上記(MO)で表される金属酸化物が、FeO、MnO、MgO、CaO、LiO及びSrOよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物であることを特徴とする請求項第17項または第18項に記載の被覆キャリア。
  20. 上記被覆キャリアを形成するキャリア芯材中に(MO)で表される金属酸化物の一部が独立して存在することを特徴とする請求項第16項乃至第19項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  21. 上記被覆キャリアを形成するキャリア芯材中における(MO)と(MO)との重量換算含有率比((MO)/(MO))が0.01〜50の範囲内にあることを特徴とする請求項第16項乃至第20項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  22. 上記被覆キャリアを形成するキャリア芯材中における(MO)と(MO)との合計の重量換算含有率((MO)+(MO))が0.02〜24重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項第16項乃至第21項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  23. 上記被覆キャリアを形成するキャリア芯材中に含有される(MO)で表される金属酸化物が、該キャリア芯材の粒子表面近傍に比べ粒子内部に高濃度で含有されていることを特徴とする請求項第16項乃至第22項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  24. 上記(MO)で表される金属酸化物の融点が550〜900℃の範囲内にあり、(MO)で表される金属酸化物の融点が1800〜3500℃の範囲内にあることを特徴とする請求項第16項乃至第23項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  25. 上記被覆キャリアは、キャリア芯材100重量部に対して、0.01〜10重量部の量の樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項第16項乃至第24項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  26. 上記被覆キャリアの平均粒子径が15〜70μmの範囲内にあることを特徴とする請求項第16項乃至第25項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  27. 上記被覆キャリアの電気抵抗率が10Ω・cm以上であることを特徴とする請求項第16項乃至第26項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  28. 上記被覆キャリアが、該被覆キャリアを形成するキャリア芯材に含有される(MO)で表される金属酸化物の融点よりも高温に加熱される熱履歴を経ていないことを特徴とする請求項第16項乃至第27項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  29. 上記被覆キャリアを形成するキャリア芯材の電気抵抗率が10Ω・cm以上であることを特徴とする請求項第16項乃至第28項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  30. 上記被覆キャリアの1000k/4π・A/m(1000エルステッド)における磁化が40〜100Am/kg(40〜100emu/g)の範囲内にあることを特徴とする請求項第16項乃至第29項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  31. 上記被覆キャリアを形成する樹脂が、シリコーン系熱硬化樹脂であることを特徴とする請求項第16項乃至第30項のいずれかの項に記載の被覆キャリア。
  32. 上記請求項第16項乃至第31項のいずれかの項に記載の被覆キャリアと、平均粒子径が3〜15μmの範囲内にあるトナー粒子とを含有することを特徴とする電子写真用二成分系現像剤。
  33. 交番電界を用いて、前記請求項第32項記載の電子写真用二成分系現像剤によって静電潜像を現像することを特徴とする画像形成方法。
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