JP2004208340A - スイッチング電源回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】力率改善機能を備えるワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、コストダウン及び回路の小型軽量化を図る。
【解決手段】ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた複合共振形コンバータにおいて、直流入力電圧(Ei)を生成する整流回路について、AC150V以下では倍電圧整流回路で、AC150V以上では等倍電圧整流回路となるように切り換え制御を行う構成とする。力率改善は、一次巻線より一次側スイッチング出力を入力するように構成された電圧帰還用トランスにおいて、二次巻線に励起されるスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還して整流電流を断続することにより、交流入力電流の導通角を拡大するようにして行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、力率改善のための回路を備えたスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波の比較的大きい電流及び電圧に耐えることができるスイッチング素子の開発によって、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。
スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
【0003】
ところで、一般に商用電源を整流すると平滑回路に流れる電流は歪み波形になるため、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。
また、歪み電流波形となることによって発生する高調波を抑圧するための対策が必要とされている。
【0004】
そこで、スイッチング電源回路において力率を改善する力率改善手段として、整流回路系においてPWM制御方式の昇圧型コンバータを設けて力率を1に近付ける、いわゆるアクティブフィルタを設ける方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
図17の回路図は、このようなアクティブフィルタの基本構成を示している。
この図においては、商用交流電源ACにブリッジ整流回路Diを接続している。このブリッジ整流回路Diの正極/負極ラインに対しては並列に出力コンデンサCoutが接続される。ブリッジ整流回路Diの整流出力が出力コンデンサCoutに供給されることで、出力コンデンサCoutの両端電圧として、直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷10に入力電圧として供給される。
【0006】
また、力率改善のための構成としては、図示するようにして、インダクタL、高速リカバリ型のダイオードD、抵抗Ri、スイッチング素子Q、及び乗算器11を備える。
インダクタL、ダイオードDは、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。
抵抗Riは、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子(一次側アース)と出力コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。
また、スイッチング素子Q1は、この場合には、MOS−FETが選定されており、図示するようにして、インダクタLとダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
【0007】
乗算器11に対しては、フィードフォワード回路として、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLwが接続され、フィードバック回路として電圧検出ラインLVが接続される。
乗算器11は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流レベルを検出する。
また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。
そして、乗算器11からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
【0008】
電流検出ラインLIから乗算器11に対しては、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流が入力される。乗算器11では、この電流検出ラインLIから入力された整流電流レベルを検出する。また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
【0009】
乗算器11では、先ず、上記のようにして電流検出ラインLIから検出した整流電流レベルと、上記電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分と乗算する。そして、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した交流入力電圧の波形とによって、交流入力電圧VACと同一波形の電流指令値を生成する。
【0010】
さらに、この場合の乗算器11では、上記電流指令値と実際の交流入力電流レベル(電流検出ラインL1からの入力に基づいて検出される)を比較し、この差に応じてPWM信号についてPWM制御を行い、PWM信号に基づいたドライブ信号を生成する。そして、スイッチング素子Qは、このドライブ信号によってスイッチング駆動される。この結果、交流入力電流は交流入力電圧と同一波形となるように制御されて、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。また、この場合には、乗算器によって生成される電流指令値は、整流平滑電圧の変動差分に応じて振幅が変化するように制御されるため、整流平滑電圧の変動も抑制されることになる。
【0011】
図18(a)は、上記図17に示したアクティブフィルタ回路に入力される入力電圧Vin及び入力電流Iinを示している。電圧Vinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電圧波形に対応し、電流Iinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電流波形に対応する。ここで、電流Iinの波形は、ブリッジ整流回路Diの整流出力電圧(電圧Vin)と同じ導通角となっているが、これは、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diに流れる交流入力電流の波形も、この電流Iinと同じ導通角となっていることを示す。つまり、ほぼ1に近い力率が得られている。
【0012】
また、図18(b)は、出力コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)Pchgの変化を示す。出力コンデンサCoutは、入力電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、入力電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。
図18(c)は、上記出力コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。この充放電電流Ichgは、上記図18(b)の入出力エネルギーPchgの波形と同位相となっていることからも分かるように、出力コンデンサCoutにおけるエネルギーPchgの蓄積/放出動作に対応して流れる電流である。
【0013】
上記充放電電流Ichgは、入力電流Vinとは異なり、交流ライン電圧(商用交流電源AC)の第2高調波とほぼ同一の波形となる。交流ライン電圧には、出力コンデンサCoutとの間のエネルギーの流れによって、図18(d)に示すようにして、第2高調波成分にリップル電圧Vdが生じる。このリップル電圧Vdは、無効なエネルギー保存のために、図18(c)に示す充放電電流Ichgに対して、90°の位相差を有する。出力コンデンサCoutの定格は、第2高調波のリップル電流と、その電流を変調するブースト・コンバータ・スイッチからの高周波リップル電流を処理することを考慮して決定するようにされる。
【0014】
また、図19には、図17の回路構成を基として、基本的なコントロール回路系を備えたアクティブフィルタの構成例を示している。なお、図17と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子間には、スイッチングプリレギュレータ15が備えられる。このスイッチングプリレギュレータ15は、図17においては、スイッチング素子Q、インダクタL、及びダイオードDなどにより形成される部位となる。
【0015】
そして、乗算器11を含むコントロール回路系は、他に、電圧誤差増幅器12、除算器13、二乗器14を備えて成る。
電圧誤差増幅器12では、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutを、分圧抵抗Rvo−Rvdにより分圧してオペアンプ15の非反転入力に入力する。オペアンプ15の反転入力には基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ15では、基準電圧Vrefに対する分圧された直流電圧Voutの誤差に応じたレベルの電圧を、帰還抵抗Rvl、コンデンサCvlによって決定される増幅率により増幅して、誤差出力電圧Vveaとして除算器13に出力する。
【0016】
また、二乗器14には、いわゆるフィードフォワード電圧Vffが入力される。このフィードフォワード電圧Vffは、入力電圧Vinを平均化回路16(Rf11,Rf12,Rf13,Cf11,Cf12)により平均化した出力(平均入力電圧)とされる。二乗器14では、このフィードフォワード電圧Vffを二乗して除算器13に出力する。
【0017】
除算器13では、電圧誤差増幅器12からの誤差出力電圧Vveaについて、二乗器14から出力された平均入力電圧の二乗値により除算を行い、この除算結果としての信号を乗算器11に出力する。
つまり、電圧ループは、二乗器14、除算器13、乗算器11の系から成るものとされる。そして、電圧誤差増幅器12から出力される誤差出力電圧Vveaは、乗算器11で整流入力信号Ivacにより乗算される前の段階で、平均入力電圧(Vff)の二乗により除算されることになる。この回路によって、電圧ループの利得は、平均入力電圧(Vff)の二乗として変化することなく、一定に維持される。平均入力電圧(Vff)は、電圧ループ内において順方向に送られる開ループ補正の機能を有する。
【0018】
乗算器11には、上記除算器11により誤差出力電圧Vveaを除算した出力と、抵抗Rvacを介したブリッジ整流回路Diの正極出力端子(整流出力ライン)の整流出力(Iac)が入力される。ここでは、整流出力を電圧によるのではなく、電流(Iac)として示している。乗算器11では、これらの入力を乗算することによって、電流プログラミング信号(乗算器出力信号)Imoを生成して出力する。これは、図17にて説明した電流指令値に相当する。出力電圧Voutは、この電流プログラミング信号の平均振幅を可変することで制御される。つまり、電流プログラミング信号の平均振幅の変化に応じたPWM信号が生成され、このPWM信号に基づいたドライブ信号によってスイッチング駆動が行われることによって、出力電圧Voutのレベルをコントロールするものである。
したがって、電流プログラミング信号は、入力電圧と出力電圧を制御する平均振幅の波形を有する。なお、アクティブフィルタは、出力電圧Voutのみではなく、入力電流Vinも制御するようになっている。そして、フィードフォワード回路における電流ループは、整流ライン電圧によってプログラムされるということがいえるので、後段のコンバータ(負荷10)への入力は抵抗性になる。
【0019】
図20は、上記図19に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、AC100V系とAC200V系の両者の交流入力電圧(商用交流電源)に対応する、いわゆるワイドレンジ対応(ワールドワイド仕様)とされている。また、負荷電力300W以上の条件に対応可能な構成を採っている。また、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
【0020】
この図20に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続され、この後段にブリッジ整流回路Diが接続される。
また、ブリッジ整流回路Diの整流出力ラインには、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを図示するようにして接続して成るノーマルモードノイズフィルタ4が接続される。
【0021】
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、上記チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcと、高速リカバリ型の整流ダイオードD10の直列接続を介して、平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。この平滑コンデンサCiは、図17,図19における出力コンデンサCoutに相当する。
また、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcとダイオードD10は、それぞれ、図17に示したインダクタLとダイオードDに相当する。
また、この図における整流ダイオードD10には、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
【0022】
スイッチング素子Q11,Q12から成るスイッチング素子の組は、図17におけるスイッチング素子Q10に相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合には、2つのスイッチング素子Q11,Q12を1組としており、これらのスイッチング素子Q11,Q12を、それぞれ、パワーチョークコイルLpcと高速リカバリ型の整流ダイオードD10の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に並列に挿入するようにしている。
【0023】
このようにして、2つのスイッチング素子を備えるのは、信頼性確保のためである。
つまり、例えば交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れるドレイン電流が総合で14Ap程度と非常に高くなる。そこで、2つのスイッチング素子を並列に接続することで、各スイッチング素子に流れるドレイン電流のピークレベルを抑えているものである。
この場合のスイッチング素子Q11,Q12には、MOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q11,Q12の各ゲート−ソース間には、それぞれ、ゲート−ソース間抵抗R52,R54が接続されている。
【0024】
アクティブフィルタコントロール回路20は、この場合には力率を1に近付けるように力率改善を行うアクティブフィルタの動作を制御するもので、例えば1石の集積回路(IC)とされている。
この場合、アクティブフィルタコントロール回路20は、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成される。図**に示した乗算器11、誤差電圧増幅器12、除算器13、及び二乗器14などに相当する回路部は、このアクティブフィルタコントロール回路20内に搭載される。
【0025】
この場合、フィードバック回路は平滑コンデンサCiの両端電圧(整流平滑電圧Ei)を分圧抵抗R55,R56,R57により分圧した電圧値を、アクティブフィルタコントロール回路20の端子T1に入力するようにして形成される。
【0026】
また、フィードフォワード回路としては、先ず、抵抗R58を介して整流出力が端子T3に入力される。これによって、交流入力電圧波形の検出と、平均化回路のための対応するフィードフォワード回路が形成されている。
また、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子と一次側アース間に挿入される抵抗R61との接続点から、抵抗R60を介して、端子T6に対して整流電流レベルを入力するようにしている。つまり、図20における電流検出ラインLIに相当するラインとしてのフィードフォワード回路が形成されている。
【0027】
また、端子T4には、起動抵抗Rsを介したブリッジ整流回路Diの正極の整流出力が、起動電圧として入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、電源起動時において、この端子T4に入力される起動電圧によって起動される。
また、パワーチョークコイルPCCにおいては、インダクタLpcとトランス結合された巻線N5が巻装されている。この巻線N5に励起された交番電圧は、ダイオードD11及びコンデンサC11とから成る半波整流回路により所定の低圧直流電圧に変換されるが、上記端子T4には、この低圧直流電圧も入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、上記起動電圧により起動した後は、この低圧直流電圧を電源として入力して動作するようになっている。
また、端子T5は、抵抗R59を介して、一次側アースと接続されている。
【0028】
端子T2からは、スイッチング素子を駆動するためのドライブ信号が出力される。そして、この端子T2に対しては、トランジスタQ21,Q21及びツェナーダイオードZDから成る、いわゆるトーテムポール回路が接続されている。この場合のトーテムポール回路は、1つのドライブ信号によって2つのスイッチング素子Q11,Q12を駆動するのに必要な電力を得るためにドライブ信号を増幅することと、周知のようにして、MOS−FETとしてのスイッチング素子Q11,Q12を安定して高速スイッチングすることを目的として設けられている。
このトーテムポール回路から出力されたドライブ信号は、分岐して、それぞれ抵抗R51,R53を介してスイッチング素子Q11,Q12のゲートに対して出力される。
スイッチング素子Q11では、上記のようにして印加されるドライブ信号に応じて、ゲート−ソース間抵抗R52の両端にゲート電圧が発生するようになっている。そして、ゲート電圧が閾値以上となることでオンとなり、閾値以下となるとオフとなるようにしてスイッチング動作を行う。
スイッチング素子Q12も同様にして、ドライブ信号によってゲート−ドレイン抵抗R54の両端電圧であるゲート電圧が閾値以上/以下で変化するのに応じて、上記スイッチング素子Q11と同じオン/オフタイミングでスイッチング動作を行う。
【0029】
そして、上記したスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング駆動は、図17及び図19により説明したようにして、整流出力電流の導通角が、整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるように、PWM制御に基づくドライブ信号によって行われる。整流出力電流の導通角が整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるということは、即ち、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となることであり、結果的に、力率がほぼ1となるように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。実際においては、力率PF=0.99〜0.98となる特性が得られている。
【0030】
また、この図20に示すアクティブフィルタコントロール回路20によっては、整流平滑電圧Ei(図19では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲で定電圧化するようにも動作する。つまり、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。
上記交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲は、商用交流電源AC100V系と200V系を連続的にカバーするものであり、従って、後段のスイッチングコンバータには、商用交流電源AC100V系と200V系とで、同じレベルで安定化された直流入力電圧(Ei)が供給されることとなる。つまり、図20に示す電源回路は、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応の電源回路としても構成されている。
【0031】
アクティブフィルタの後段の電流共振形コンバータは、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
【0032】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
スイッチング素子Q1,Q2は、ドライブ回路21によって、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動される。また、ドライブ回路21は、後述する二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じてスイッチング周波数を可変制御し、これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化を図るようにされる。
【0033】
絶縁コンバータトランスPITは、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の端部は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は、直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって直列共振回路を形成する。この直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0034】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には二次巻線N2が巻装される。
この場合の二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCOから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCOの両端電圧として二次側直流出力電圧EOが得られる。この二次側直流出力電圧EOは、図示しない負荷側に供給されるとともに、ドライブ回路21のための検出電圧としても分岐して入力される。前述もしたように、ドライブ回路21は、入力される二次側直流出力電圧EOのレベルに基づいて、二次側直流出力電圧EOが安定化されるようにスイッチング周波数を可変するようにしてスイッチング素子Q1,Q2を駆動する。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化を行う。
【0035】
図21は、先に図19に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成としての、他の例を示している。
この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=85V〜288Vに対応する。
つまり、この図に示す電源回路も、この図20に示した回路と同様に、商用交流電源についてAC100V系とAC200V系の両者の交流入力電圧に対応する、いわゆるワイドレンジ対応とされている。ただし、対応可能な負荷電力としては600W以上とされている。また、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
このような、より重負荷の条件に対応するものとされる図21に示す電源回路は、例えばプラズマディスプレイパネルを備えたテレビジョン受像機、モニタ装置などに搭載される。
なお、図20と同一部分には同一符号を付すこととして、ここでは、主として、図20の電源回路との相違点について説明する。
【0036】
この場合の商用交流電源ACラインにも、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
【0037】
また、図21の電源回路では、商用交流電源ACを整流する整流回路として、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2が設けられる。これらブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極入力端子と負極入力端子は、商用交流電源ACの正/負極ラインに対して共通に接続される。また、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子どうしと、負極出力端子どうしが接続されるようになっている。このようにして、商用交流電源ACに対しては、2段のブリッジ整流回路が備えられていることになる。
【0038】
また、この場合のノーマルモードノイズフィルタ4は、上記ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子と負極出力端子間に、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CN,CNを図示するようにして接続して形成されている。つまり、図20の電源回路におけるノーマルモードノイズフィルタ4が2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを備えるのに対して、この図21におけるノーマルモードノイズフィルタ4では、フィルタコンデンサCNが1組追加されており、ノイズ抑制効果を強化するようにしている。後述するようにして、図21に示す回路では、より重負荷の条件に対応するために、アクティブフィルタのスイッチング素子数を増加させている。これによって、スイッチングノイズの発生量は増加することになるが、上記のようにしてノーマルモードノイズフィルタ4としてのノイズ抑制効果を強化することで、スイッチングノイズの増加を解消しているものである。
【0039】
また、この場合には、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子は、上記チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCC−1のインダクタLpc1と、パワーチョークコイルPCC−2のインダクタLpc2の直列接続を介して、並列接続された2本の高速リカバリ型の整流ダイオード[D10//D10]のアノードの接続点と接続される。整流ダイオード[D10//D10]のカソードの接続点は、平滑コンデンサCiA,CiBの各正極端子に接続される。
平滑コンデンサCiA,CiBは、図示するようにして、2本で1組となるようにして並列に接続されている。平滑コンデンサCiA,CiBの正極端子は、上記もしているように、整流ダイオード[D10//D10]−インダクタLpc2−インダクタLpc1−チョークコイルLNの直列接続を介して、ブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極出力端子に対して接続される。また、平滑コンデンサCiA,CiBの負極端子は、ブリッジ整流回路Di1,Di2の各負極出力端子(一次側アース)に対して接続される。
【0040】
上記平滑コンデンサ[CiA//CiB]の組は、図17,図19における出力コンデンサCoutに相当する。従って、この場合においては、この並列接続された平滑コンデンサ[CiA//CiB]の組の両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られることになる。この整流平滑電圧Eiが、後段の各コンバータ部201、202、203に対して直流入力電圧として供給される。
また、パワーチョークコイルPCC−1、PCC−2のインダクタLpc1,Lpc2の直列接続は、図17に示したインダクタLに相当する。ダイオード[D10//D10]は、図17に示したダイオードDに相当する。
また、この図におけるダイオードD10//D10の並列回路に対しては、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
【0041】
スイッチング素子Q11,Q12,Q13から成るスイッチング素子の組は、図17におけるスイッチング素子Qに相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合には、3つのスイッチング素子Q11,Q12,Q13を1組としており、これらのスイッチング素子Q11,Q12,Q13を、それぞれ、パワーチョークコイルLpc2と高速リカバリ型の整流ダイオード[D10//D10]の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に並列に挿入するようにしている。
【0042】
このようにして、3つのスイッチング素子を備えるのは、信頼性確保のためである。
つまり、負荷電力Po=600W以上程度の重負荷の条件である場合、例えば交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れる総合的なドレイン電流(スイッチング電流)がより高くなる。そこで、この場合には、3つのスイッチング素子を並列に接続することで、各スイッチング素子に流れるドレイン電流のピークレベルを抑えているものである。
この場合のスイッチング素子Q11,Q12,Q13には、MOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q11,Q12,Q13の各ゲート−ソース間には、それぞれ、ゲート−ソース間抵抗R52,R54,R64が接続されている。
【0043】
さらには、先に説明した整流回路系の接続態様を、図20の電源回路と比較してみると、図21に示した回路では、先ず、パワーチョークコイルを1組追加して2組(PCC−1,PCC−2)としていることが分かる。
また、高速リカバリ型の整流ダイオードD10についても、1本追加して2本備えることとして、これら2本の整流ダイオードD10を並列接続している。
さらに、整流平滑電圧Eiを供給する平滑コンデンサとしても、1本追加して2本(CiA,CiB)備えることとし、これらの平滑コンデンサを並列に設けるようにしている。
このような部品の追加も、負荷電力の条件が300W以上から600W以上にまで重くなったことに応じて、例えば回路に流れる電流が増加することに対応して行われるものである。
【0044】
この図21に示すアクティブフィルタコントロール回路20も、力率をほぼ1に近づけるようにアクティブフィルタの動作を制御する。この場合には、例えば図20と同様のICにより構成されている。
なお、このアクティブフィルタコントロール回路20の各端子(T1〜T6)と接続される周辺回路の構成は図20と同様とされているので、ここでの説明は省略する。
【0045】
そして、図21に示す回路において、アクティブフィルタコントロール回路20によりスイッチング素子Q11,Q12,Q13をスイッチング駆動することによっては、図20の場合と同様に、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となるように制御され、結果的に、力率が1に近づくようにして力率改善が図られる。実際においては、負荷電力Po=600W時において、力率PF=0.995程度となる特性が得られる。
【0046】
また、この図21に示すアクティブフィルタとしても、整流平滑電圧Ei(図19では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲で定電圧化するように動作する。従って、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。つまり、図21に示す電源回路も、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応を可能としている。
【0047】
そして、この図に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件(負荷電力600W以上)に対応するために、平滑コンデンサ[CiA//CiB]を直流入力電圧として動作電源とする複数の電流共振形コンバータが並列に設けられている。この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの電流共振形コンバータが設けられており、それぞれ、所定レベルに安定化された二次側直流出力電圧EO1、EO2、EO3を出力可能とされている。
【0048】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
【0049】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ゲート−ソース間には、それぞれゲート−ソース間抵抗RG1,RG2が挿入されている。
【0050】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。
【0051】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0052】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2の端子Vsに対して、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が接続される。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるようにレベルシフトされる。
【0053】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0054】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0055】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0056】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線N2が巻装される。
この場合の二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧EO1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧E01のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0057】
なお、第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、ゲート−ソース間抵抗RG3,RG4、コントロールIC2,絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1,二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1、整流ダイオードDO3,D04、平滑コンデンサCO2を備え、上記第1コンバータ部201と同様の接続態様による構成を採る。
【0058】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、ゲート−ソース間抵抗RG5,RG6、コントロールIC2,絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1,二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1を備え、第1コンバータ部201と同様の接続態様による一次側構成を採る。
但し、第3コンバータ部203の絶縁コンバータトランスPIT−3の二次側においては、図示するようにして、二次巻線N2に対して整流ダイオードDO5,D06,D07,D08及び平滑コンデンサCO3,CO4を接続していることで、整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路と、整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路との2組の両波整流回路が形成されることになる。
整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路によっては二次側直流出力電圧EO3が生成される。整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路によっては、二次側直流出力電圧EO3よりも低圧レベルの二次側直流出力電圧E04が生成される。
【0059】
ここで、第1コンバータ部201の二次側直流出力電圧EO1が対応する負荷電力は300W、第2コンバータ部202の二次側直流出力電圧EO2が対応する負荷電力は200W、第3コンバータ部203の二次側直流出力電圧EO3,E04により対応する負荷電力は100Wとなっており、これにより、総合的に負荷電力Po=600W以上に対応可能に構成されているものである。
【0060】
【特許文献1】
特開平6−327246(図11)
【0061】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの説明から分かるように、先行技術として図20及び図21に示した電源回路は、従来から知られている図17及び図19に示したアクティブフィルタを実装して構成されている。このような構成を採ることによって、力率改善が図っている。また、図20及び図21に示す電源回路は、それぞれ負荷電力300W以上、負荷電力600W以上の条件の下で、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作する、いわゆるワイドレンジ対応としている。
【0062】
しかしながら、上記図20及び図21に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、図20に示す電源回路についてみると、電力変換効率としては、図に示しているように、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
そして、AC100V系時に対応する交流入力電圧VAC=100Vの条件では、ηAC→DC=94%、ηDC→DC=96%であり、総合効率は90.2%となる。
これに対して、AC200V系時に対応する交流入力電圧VAC=240Vの条件では、ηAC→DC=97%、ηDC→DC=96%となり、総合効率は93.1%となる。つまり、交流入力電圧VAC=240V時に対して、交流入力電圧VAC=100V時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0063】
上記した電力変換効率の低下という問題は、同じくアクティブフィルタを備える、図21に示す電源回路においても同様である。
図21に示す電源回路についても、電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータ(第1、第2、第3コンバータ部201,202,203)のDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
そして、第1、第2、第3コンバータ部201,202,203におけるDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)は、96%程度である。
また、負荷電力Po=600Wの条件のもとで、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は、交流入力電圧VAC=100V時では、94%、交流入力電圧VAC=230W時では97%となる。
従って、総合電力変換効率としては、交流入力電圧VAC=100V時では、
94%×96%=90.2%
となる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、
97%×96%=93.1%
となる。
また、交流入力電力は、交流入力電圧VAC=100V時では665.2W、交流入力電力230V時では、644.5Wとなる。
つまり、図21に示す電源回路においても、交流入力電圧VAC=230V(AC100V系)時に対して、交流入力電圧VAC=100V(AC200V系)時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0064】
また、図20及び図21に示す回路では、上記した電力変換効率の特性を下回ることが無いように、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)ついては、例えば交流入力電圧VAC=100V〜230V(又は240V)の範囲で、94%〜97%で維持されるように設計する必要がある。
そして、図20に示すアクティブフィルタであれば、スイッチング素子Q11,Q12及び高速リカバリ型の整流ダイオードD10がスイッチング動作を行うことになる。また、図21に示すアクティブフィルタでは、スイッチング素子Q11,Q12,Q13及び高速リカバリ型の整流ダイオードD10//D10の並列回路がスイッチング動作を行うことになる。
これらのスイッチング動作は、dv/di,di/dtによるもので、ハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きいため、比較的重度のノイズ抑制対策が必要となる。
【0065】
この必要性から、先ず、図20に示す電源回路のアクティブフィルタを例に挙げれば、スイッチングのための半導体素子については、2組のスイッチング素子Q11,Q12を並列接続して、スイッチング素子に流れるドレイン電流(スイッチング出力電流)のピークレベルを抑制して信頼性を確保する必要が生じる。
しかしながら、これに対して、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20は、ドライブ信号の出力端子として、端子T2の1つしか備えていない。このために、アクティブフィルタコントロール回路20からのドライブ信号出力を分岐して各スイッチング素子Q11,Q12に印加する必要があるが、そのままでは電力が不足して高い信頼性でもってスイッチング素子を駆動することが難しい。そこで、図20にも示したように、トランジスタQ21,Q22を備えたトーテムポール回路が必要となるが、これによっても、部品点数が増加していることになる。
【0066】
さらに、図20に示す回路では、商用交流電源ACのラインに対して、2組のラインフィルタートランスLFTと、3組のアクロスコンデンサによるラインノイズフィルタを形成している。つまり、2段以上のラインノイズフィルタが必要となっている。
また、整流出力ラインに対しては、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサCN,CNから成るノーマルモードノイズフィルタ4を設けている。さらに、整流用の高速リカバリ型のダイオードD10の並列回路に対しては、RCスナバ回路を設けている。
このようにして、実際の回路としては、非常に多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
【0067】
そして、図21に示す電源回路のアクティブフィルタでは、図20の電源回路よりも重負荷の条件に対応するために回路に流れる電流量がさらに増加する。このために、スイッチングのための半導体素子は3組(スイッチング素子Q11,Q12,Q13)に増加する。さらには、高速リカバリ型の整流ダイオードD10についても2本に増加する必要が生じてくる。
また、ノーマルモードノイズフィルタ4を形成する素子としては、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサCNとなり、ここでもフィルタコンデンサCNとしてのフィルムコンデンサが1つ増加する。
さらには、図21の回路のように重負荷に対応する場合、RCスナバ回路を形成する抵抗Rsnは、セメント抵抗などを採用することになって大型となる。
このように、図21に示す回路では、重負荷の条件に対応するために、さらにコストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化が助長されることになる。
【0068】
さらに、図20及び図21に示す電源回路の構成では、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20によって動作するスイッチング素子Q11,Q12,及びQ13のスイッチング周波数は50KHzであるのに対して、後段の電流共振形コンバータのスイッチング周波数は70KHz〜150KHzの範囲となっている。これにより、1次側アース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0069】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成する。
つまり、先ず、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源のレベルに応じて、商用交流電源レベルの等倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する等倍電圧整流動作と、商用交流電源レベルの2倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する倍電圧整流動作とで切り換えが行われる整流平滑手段を備える。
また、上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、上記各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスを備える。
また、少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路を備える。
また、上記各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。
また、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段を備える。
また、上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された定電圧制御手段を備える。
また、上記スイッチング手段によるスイッチング出力が入力される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される二次巻線とによって形成される電圧帰還用トランスを備える。
また、上記電圧帰還用トランスの二次巻線に励起される交番電圧を利用して、上記整流平滑手段に備えられたスイッチング用ダイオードにより整流電流成分を断続して力率を改善するように構成される力率改善回路とを備えることとしている。
【0070】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路は、一次側スイッチングコンバータとして、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた構成を採っていることになる。また、力率改善は、電圧帰還用トランスにより伝達されたスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還して整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図る構成が採られる。
そして、ワイドレンジ対応とするのにあたっては、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑手段について、商用交流電源レベルに応じて等倍電圧整流動作と倍電圧整流動作とで整流動作の切り換えが行われるように構成する。
これにより、例えば力率改善回路を備える電源回路としてワイドレンジ対応の構成とするのにあたっては、スイッチングコンバータへの直流入力電圧の安定化を図るアクティブフィルタを備える必要は無いこととなる。
【0071】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図20に示した回路と同様に、負荷電力Po=300W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
【0072】
この図1に示す電源回路においては、先ず商用交流電源ACのラインに対して、各1組のアクロスコンデンサCL及びラインフィルタトランスLFTとから成る、ラインノイズフィルタが接続される。つまり、この場合には、1段のラインノイズフィルタのみが設けられる。
そして、商用交流電源ACのラインにおいては、上記ラインノイズフィルタの後段に対して、1組のフィルタコンデンサCNが並列に接続される。このフィルタコンデンサCNは、次に説明するブリッジ整流回路Diの整流出力ラインに発生するノーマルモードノイズを抑制するためのものとされる。
【0073】
この場合、商用交流電源から整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路系は、ブリッジ整流回路Diと、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を備えて成る。平滑コンデンサCi1,Ci2は同じキャパシタンスを有する。
上記ブリッジ整流回路Diの正極入力端子は、図示するようにして、力率改善回路3内における電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBを介して商用交流電源ACの正極ラインと接続される。また、負極入力端子は、後述するリレースイッチS1の端子t3に対して接続される。また、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
なお、この第1の実施の形態の場合、後述する力率改善回路3の動作として、スイッチング周期に対応してスイッチングを行うようにして整流電流I1を流すために、上記ブリッジ整流回路Diを形成するそれぞれのダイオード(Da、Db、Dc、Dd)としては、高速リカバリ型ダイオードが選定されているものとする。
【0074】
平滑コンデンサCi1,Ci2は、図示するようにして、平滑コンデンサCi1の正極端子と、平滑コンデンサCi2の負極端子とが接続されるようにして直列に接続される。そして、平滑コンデンサCi1側の正極端子は、上記もしたように、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と接続される。平滑コンデンサCi2側の負極端子は一次側アースに接続される。整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)は、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧として得られる。
【0075】
リレースイッチS1は、上記した整流平滑回路の整流動作をAC100V系とAC200V系とで切り換えるために設けられる。
このリレースイッチS1は、図のように端子t1が、フィルタコンデンサCNにおける商用交流電源ACの負極ライン側の端子に接続され、端子t2が平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点に対して接続される。また、端子t3が、上記したようにしてブリッジ整流回路Diの負極入力端子に接続される。
【0076】
リレースイッチS2は、後述するようにAC100V系時に対応して、ブリッジ整流回路Diを形成するダイオードDa、Db、Dc、Ddを、[Da、Db]、[Dc、Dd]の組に並列接続するために設けられる。
このリレースイッチS2としては、端子t1が上記ブリッジ整流回路Diの負極入力端子と上記リレースイッチS1の端子t3との接続点に対して接続され、端子t2がブリッジ整流回路Diの正極入力端子と接続される。また、端子t3は、フィルタコンデンサCNにおける商用交流電源ACの負極ライン側の端子に接続されている。
【0077】
上記したリレースイッチS1、S2としては、端子t1に対して端子t2又は端子t3が択一的に接続されるようにして切り換えが行われる、いわゆる2接点となっている。また、これらリレースイッチS1、S2における端子t2、t3の切り換え動作は、次に説明するように、整流回路切換モジュール5に接続されたリレーRLの駆動状態に応じて行われるものとなる。
【0078】
整流回路切換モジュール5は、リレーRLを駆動することで、上記したリレースイッチS1、及びリレースイッチS2をAC100V系とAC200V系とで切り換えるために設けられる。このために、整流回路切換モジュール5の検出端子T11には、図のように整流平滑電圧Eiが入力されるようになっている。
つまり、先ず、整流平滑電圧Eiのラインと一次側アース間に対し、図のように抵抗R1と、さらにこの抵抗R1と直列に接続された分圧抵抗R2―R3の直列接続回路を挿入する。その上で、上記分圧抵抗R2―R3の直列接続回路の分圧点と、上記検出端子T11を接続するものである。
これにより、上記検出端子T11には、上記整流平滑電圧Eiに応じたレベルの電圧が得られるようになる。そして、整流平滑電圧Eiのレベルは、商用交流電源ACのレベルに応じた変化を示すものとなることから、この整流回路切換モジュール5では、上記検出端子T11に得られた電圧レベルに基づいて、商用交流電源ACのレベルを検出することが可能となる。
【0079】
また、リレー駆動端子T12,T13間に対してはリレーRLが接続される。このリレーRLは、自身の導通状態に応じて、リレースイッチS1、及びリレースイッチS2の接点切り換え動作を制御するようにされる。
なお、ここでは、リレーRLが導通状態(AC100V系時)では、リレースイッチS1及びリレースイッチS2においては、共に端子t1に対して端子t2が接続される状態となるように切り換えが行われる。また、リレーRLが非導通状態(AC200V系時)では、リレースイッチS1及びリレースイッチS2では、共に端子t1に対して端子t3が接続される状態となるように切り換えが行われるようにされている。
また、整流回路切換モジュール5の電源入力端子T14には5Vの低圧直流電圧が入力されている。整流回路切換モジュール5は、この電源入力端子T14に入力された直流電圧を入力電源として動作するようになっている。端子T15は、整流回路切換モジュール5のアースラインを一次側アースに接地させるための端子である。
【0080】
この整流回路切換モジュール5では、上記のようにして検出端子T11に入力される整流平滑電圧Eiに応じた電圧レベルと、所定の基準電圧とを比較する。検出端子T11に入力される電圧レベルは、交流入力電圧VAC=150V以上であるときには上記基準電圧以上となり、交流入力電圧VACが150V以下であるときには上記基準電圧以下となる。つまり、基準電圧は、交流入力電圧VAC=150Vに対応したレベルとなっている。
そして、整流回路切換モジュール5は、分圧レベルが基準電圧以下であるときには、リレーRLをオンとし、基準電圧以上であるときには、リレーRLをオフとするように駆動する。
【0081】
ここで、例えばAC100V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以下に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合、上記整流回路切換モジュール5においては、検出端子T11に入力される電圧レベルが上記基準電圧以下となることから、リレーRLがオンとされるように制御される。そして、これに伴い、リレースイッチS1、及びリレースイッチS2としては、共に端子t1に対して端子t2が接続されるように制御されるようになる。
【0082】
このようにして、AC100V系に対応する交流入力電圧が入力され、リレースイッチS1、リレースイッチS2にて、共に端子t1に対して端子t2が接続される状態において、整流平滑回路における電流の流れを次の図3及び図4を参照して説明する。なお、これらの図においては、図1に示した整流平滑回路における電流の流れを模式的に示している。
先ず、リレースイッチS1側において、上記のように端子t1に対して端子t2が接続される状態が得られると、これら図3及び図4を参照してもわかるように、商用交流電源ACの負極ラインと、平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点とが接続された状態となる。このため、この場合は交流入力電圧VACが正の期間では、図3に示すようにブリッジ整流回路Diによる整流出力が、平滑コンデンサCi1のみに充電される整流電流経路が形成される。
これに対し、交流入力電圧VACが負の期間では、図4に示すようにブリッジ整流回路Diによる整流出力が、平滑コンデンサCi2のみに充電される整流電流経路が形成される。
このようにして整流動作が行われる結果、平滑コンデンサCi1,Ci2の各両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルが生じることになる。従って、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧である整流平滑電圧Eiとしては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルが得られる。つまり、いわゆる倍電圧整流回路が形成されるものである。
【0083】
また、この場合(AC100V系)、上記のようにリレースイッチS2側において端子t1に対して端子t2が接続されることによっては、図3及び図4を参照してわかるように、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と負極入力端子とが、この端子t1−端子t2の接続を介して接続されるようになる。そして、これにより、先に説明したように交流入力電圧VACが正の期間(図3参照)では、ダイオードDa及びダイオードDbの組を介して整流電流が出力されるようになり、負の期間(図4参照)では、ダイオードDc及びダイオードDdの組を介して出力される。つまり、ブリッジ整流回路Diを形成するダイオードが、[Da、Db],[Dc、Dd]の組に並列に接続されるものである。
【0084】
このように図1に示す回路では、AC100V系時において、リレースイッチS2の切り換え動作によりダイオードDa〜Ddが[Da、Db],[Dc、Dd]の組に並列接続され、交流入力電圧VACが正/負となる期間に整流電流が必ず2つのダイオードを介して出力されるようになる。
つまり、本実施の形態では、AC200V系時よりも整流電流のレベルが大きいとされるAC100V系時に対応して、上記のようなリレースイッチS2の切り換えを行うことにより、高レベルの整流電流が流れる際に、上記ブリッジ整流回路Diを形成する1つのダイオードに負担が集中するのを防止するようにしているものである。
そして、これにより、ブリッジ整流回路Diを形成するそれぞれのダイオードとして、耐電流容量の比較的低いダイオードを選定することを可能とし、部品コストの削減を図っているものである。
【0085】
続いて、AC200V系であるのに対応して、例えば交流入力電圧VAC=150V以上に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合、検出端子T11に入力される電圧レベルが基準電圧以上となるので、整流回路切換モジュール5は、リレーRLをオフとする。これに応じてリレースイッチS1、リレースイッチS2の双方では、端子t1に対して端子t2が接続される状態が得られるようになる。
このようにして、リレースイッチS1及びリレースイッチS2において、端子t1に対して端子t3が接続される状態では、図1にも示すように、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子と商用交流電源ACの負極ラインが接続されるのと同等の状態が得られるようになる。また、上述もしたように、ブリッジ整流回路Diにおける正極入力端子は、商用交流電源ACの正極ラインと二次巻線NBを介して接続されている。
これにより、この場合の整流平滑回路においては、交流入力電圧VACが正/負となる各期間において、交流入力電圧VACをブリッジ整流回路Diにより整流して平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路に整流電流を充電する動作が得られる。つまり、通常のブリッジ整流回路を備えた全波整流回路による整流動作が得られる。
従って、この場合は平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiが得られるようになる。
【0086】
このようにして、本実施の形態のスイッチング電源回路では、上記したような整流回路切換モジュール5、リレーRL、及びリレースイッチS1の動作により、商用交流電源AC100V系の場合には、倍電圧整流動作により交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiが生成されるようになる。また、商用交流電源AC200V系の場合には、例えば全波整流回路による等倍電圧整流動作によって、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiが生成されるようになる。
つまり、商用交流電源AC100V系の場合と、AC200V系の場合とで、結果的に同等レベルの整流平滑電圧Eiが得られるようにしており、これによって、ワイドレンジ対応としているものである。
これにより、本実施の形態のスイッチング電源回路では、ワイドレンジ対応とするにあたってアクティブフィルタを不要としているものである。
【0087】
上記のような整流平滑回路の動作によって生成される、整流平滑電圧Eiを入力して動作するスイッチングコンバータとしては、この場合、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0088】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0089】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0090】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0091】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0092】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号が印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図2(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図2(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0093】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図2(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図2(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図2(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0094】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCpにおける充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0095】
絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。
この絶縁トランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に対して、一次側並列共振コンデンサC1と、後述する力率改善回路3内における電圧帰還用トランスVFTの一次巻線NAとを介して接続される。また、他端は一次側アースに接続される。
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1によっては、一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0096】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた形式を採っていることになる。本明細書では、このようなスイッチングコンバータについて、複合共振形コンバータということにする。
【0097】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1の組と、次に説明する二次巻線N2を、EE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
そして、EE型コアの中央磁脚に対しては1.0mm〜1.5mmのギャップを形成するようにしている。これによって、0.7〜0.8程度の結合係数による疎結合の状態を得るようにしている。
【0098】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2が巻装されている。この二次巻線N2には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCOから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCOの両端電圧として二次側直流出力電圧EOが得られる。この二次側直流出力電圧EOは、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0099】
制御回路1は、例えば二次側の直流出力電圧EOのレベルに応じて、そのレベルが可変される電流又は電圧を制御出力として得る。この制御出力は、コントロールIC2の制御端子Vcに対して出力される。
コントロールIC2では、制御端子Vcに入力された制御出力レベルに応じて、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号とについて、互いに交互にオン/オフさせるタイミングを保たせたうえで、各ドライブ信号の周波数を同期させた状態で可変するように動作する。
これにより、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数は、制御端子Vcに入力された制御出力レベル(つまり二次側直流出力電圧レベル)に応じて、可変制御されることになる。
スイッチング周波数が可変されることによっては、一次側直列共振回路における共振インピーダンスが変化することになる。このようにして共振インピーダンスが変化することによっては、一次側の直列共振回路の一次巻線N1に供給される電流量が変化して二次側に伝送される電力も変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧E0のレベルが変化することとなって定電圧制御が図られることになる。
【0100】
そして、図1に示す電源回路においては、これまで説明した構成に対して、力率改善のための力率改善回路3が備えられる。
この図に示す力率改善回路3は、先に説明したようにして、高速リカバリ型ダイオード(Da、Db、Dc、Dd)を備えて、整流電流I1を断続するようにされるブリッジ整流回路Diを含むものとされる。また、商用交流電源ACのライン側において、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と負極入力端子間に並列に挿入されるフィルタコンデンサCNを含むものとされる。
【0101】
このフィルタコンデンサCNにおける商用交流電源ACの正極ライン側の一端と、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子との間には、図示するように電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBを挿入するようにしている。そして、この電圧帰還用トランスVFTの一次側に対しては、一次巻線NAが巻装され、この一次巻線NAは、先にも説明したように一次側直列共振コンデンサC1と絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1との間に挿入されている。
【0102】
この電圧帰還用トランスVFTの構造としては、例えば図7に示すようにして、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアが備えられる。そして、一次側と二次側の巻装領域が互いに独立するようにして分割された上で一体化されたボビンBに対して、一次巻線NAと、二次巻線NBをそれぞれの巻装領域に対して巻装している。
そして、この図に示すように、本実施の形態としての電圧帰還用トランスVFTの中央磁脚に対してはギャップを形成するものとしている。この場合のギャップGとしては、Gap=1.5mm程度を設け、これによって、結合係数が0.7〜0.8程度の疎結合の状態を得るようにしている。
【0103】
上記のように構成される力率改善回路3の動作を、次の図5及び図6の波形図を参照して説明する。
なお、これらの波形図として、図5では、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=300Wの条件下での、また、図6では、交流入力電圧VAC=230V、負荷電力Po=300Wの条件下での測定結果をそれぞれ示している。
先ず、図5を参照して、商用交流電源がAC100V系とされる場合に対応して力率改善回路3において得られる動作を説明する。
図5において、先ず、AC100V系に対応して、例えば図5(a)に示すような交流入力電圧VACが入力されているとすると、商用交流電源ACの正極ラインに得られる交流入力電流IACとしては、図5(b)に示す波形により、上記交流入力電圧VACが正/負の期間において正極性/負極性となるようにして流れる。
そして、この場合、ブリッジ整流回路Diの正極出力ラインに得られる整流電流I1としては、図5(d)に示すようにして、交流入力電圧VACが正の期間において、正極性によって流れるようにされる。
【0104】
また、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線N2には、一次巻線NAに得られる交番電圧に基づいて、図5(e)に示す波形の電圧V2が得られるが、この電圧V2は、正/負のピークとなる期間においてスイッチング周期に応じた交番電圧が生じている。この波形は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力としての、一次側直列共振電流が電圧帰還用トランスVFTの一次巻線NAから二次巻線NBに励起されることで得られる。つまり、一次側スイッチングコンバータの出力は、一次巻線N1と三次巻線N3の磁気結合を介して、力率改善回路3側に電圧帰還される構成となっている。そして、この図5(e)に示した波形による電圧V2が得られることにより、力率改善回路3内においては、図5(f)に示すスイッチング周期による交番電流I2が流れる。
また、この場合、フィルタコンデンサCNにおける、商用交流電源ACの正極ライン側の一端と、電圧帰還用トランスVFTにおける二次巻線NBの一端との接続点の電位V1としては、図5(c)に示すような波形が得られる。
【0105】
ここで、上記図5(a)に示した交流入力電圧VACが正の期間では、交流入力電圧IACは、正極性の交番電流I2となって電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBを介してブリッジ整流回路Diの正極入力端子を流れるようになる。そして、この場合(AC100V系時)は、先の図3、図4にも示したように、リレースイッチS1、及びリレースイッチS2では共に端子t1に対して端子t2が接続される状態が得られていることから、上記のようにブリッジ整流回路Diの正極入力端子に流れた正極性の交番電流I2は、ブリッジ整流回路Diを形成する高速リカバリ型ダイオードDaに流入する成分と、リレースイッチS2(端子t2−端子t1)を介して高速リカバリ型ダイオードDbに流入する成分とに分岐される。
このようにして交番電流I2が流れることにより、この場合は、上記高速リカバリ型ダイオードDa,Dbの組が、交番電流I2を断続するようにしてスイッチング動作することとなる。
【0106】
これに対し、交流入力電圧VACが負の期間では、負極性の交流入力電流IACは、図4にも示したように、平滑コンデンサCi2を介した後、ブリッジ整流回路Diの高速リカバリ型ダイオードDcと、高速リカバリ型ダイオードDdの経路で流れる。すなわち、この場合はこれら高速リカバリ型ダイオードDc,Ddによってスイッチング(断続)が行われる。そして、このようにしてスイッチングされた成分は、負極性の交番電流I2として力率改善回路3内を流れた後、商用交流電源ACの正極ラインを介してフィルタコンデンサCNに流れることになる。
【0107】
このようにして、本実施の形態では、電圧帰還されるスイッチング出力によって、整流ダイオードである高速リカバリ型ダイオード[Da,Db][Dc,Dd]の各組をスイッチング動作させている。つまり、交番電流I2を断続させている。これにより、整流出力電圧レベルが平滑コンデンサCiの両端電圧よりも低いとされる期間にも平滑コンデンサCiへの充電電流が流れるようにされる。
この結果、交流入力電流IACの平均的な波形が交流入力電圧の波形に近づくことになって、図5(b)に示すようにして交流入力電流IACの導通角が拡大され、力率改善が図られることになる。
【0108】
続いて、図6を参照し、商用交流電源がAC200V系とされる場合に対応して得られる動作について説明する。
先ず、AC200V系に対応して、例えば図6(a)に示すような交流入力電圧VACが入力されているとすると、この場合も交流入力電流IACとしては、図6(b)に示す波形により、上記交流入力電圧VACが正/負の期間において正極性/負極性となるようにして流れる。
そして、この場合は、ブリッジ整流回路Diの正極出力ラインに得られる整流電流I1としては、交流入力電圧VACが正/負となるのに対応して図6(d)に示すような波形により流れる。
【0109】
また、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBに得られる電圧V2としては、この場合も図6(e)に示すようにスイッチング周期に応じた交番電圧が生じ、また、力率改善回路3内において流れる交番電流I2としても、図6(f)に示すようにスイッチング周期による波形が得られる。
また、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と三次巻線N3の端部との接続点における電位V1としては、図6(c)に示すような波形が得られている。
【0110】
この場合(AC230V)も、交流入力電圧VACが正の期間では、正極性の交流入力電流IACは、正極性の交番電流I2としてブリッジ整流回路Diの正極入力端子に流れる。そして、この場合は、図1を参照してもわかるようにリレースイッチS1、リレースイッチS2の状態としては、端子t1に対して端子t3が接続されることになる。このため、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子に流れた交番電流I2としては、高速リカバリ型ダイオードDaを流れた後に平滑コンデンサ(Ci1−Ci2)に流入するものとなる。そして、このように平滑コンデンサに流れた電流は、ブリッジ整流回路Diを形成する高速リカバリ型ダイオードDdを流れた後、リレースイッチS1(端子t3−端子t1)及びリレースイッチS2(端子t1−端子t3)を介してフィルタコンデンサCNに流れるようになる。つまり、この場合の交番電流I2としては、高速リカバリ型ダイオードDa、Ddにより整流電流が断続されることで得られるものとなる。
一方、交流入力電圧VACが負の期間においては、負極性の交流入力電流IACは、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子から、高速リカバリ型ダイオードDbを流れた後、平滑コンデンサCi1→Ci2に流れる。そして、平滑コンデンサを流れた電流は、この場合、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子から高速リカバリ型ダイオードDcに流れた後に、負極性の交番電流I2として力率改善回路3内を流れて商用交流電源ACの正極ライン側からフィルタコンデンサCNに流入するようになる。
従って、交番電流I2は、この場合、高速リカバリ型ダイオードDb、Dcにより整流電流が断続されることで得られるものとなる。
【0111】
このようにして、AC200V系とされる場合は、交番電流I2(電圧帰還されるスイッチング出力)は、高速リカバリ型ダイオード [Da、Dd] [Db、Dc]によりスイッチング(断続)されることになる。そしてこれにより、この場合においても、整流出力電圧レベルが平滑コンデンサCiの両端電圧よりも低いとされる期間にも平滑コンデンサCiへの充電電流が流れるようになる。
【0112】
このようにして、図1に示した構成による力率改善回路3によっては、AC100V系時(VAC=100V)とAC200V系時(VAC=230V)とで共に、整流電流成分が断続されるようになり、交流入力電流IACの導通角が拡大されて力率の改善が図られるものとなる。
【0113】
図8には、図1に示した構成による電源回路の特性として、負荷電力Po=0〜300Wの変動に対する力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。
なお、この図においては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧整流回路とした場合の特性を実線により示し、全波整流回路とした場合の特性を破線により示している。また、図5の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路とした場合は、交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件、全波整流動作とした場合は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。
【0114】
また、参考として、この図5に示す実験結果を得るにあたっての、図1に示した回路の各部の定数を示しておく。
・絶縁コンバータトランスPIT:EER−42のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=33T(ターン)
二次巻線N2:センタータップを分割位置として25T+25T
・電圧帰還用トランスVFT:EER−28のフェライトコア、ギャップ長Gap=1.5mm、結合係数k=0.73
一次巻線NAのインダクタンスLA=130μH
二次巻線NBのインダクタンスLB=100μH
【0115】
この図5に示すように、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、負荷電力Po=25W〜300Wの範囲で、力率PF=0.75〜0.89となる。また、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、負荷電力Po=125W〜300Wの範囲で力率PF=0.75〜0.77となっている。
この結果から、図1に示す電源回路においては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。
また、この際、負荷電力Po=300W〜25Wに対する整流平滑電圧Eiの変動幅ΔEiとしては、交流入力電圧VAC=100Vの条件でΔEi=62V、交流入力電圧VAC=230Vの条件ではΔEi=50Vとなる特性が得られている。
【0116】
ここで、本実施の形態である図1の電源回路と、先行技術としての図20の電源回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図1に示した回路では、電圧帰還方式による力率改善改善回路3を備える構成としていることでアクティブフィルタが省略される。アクティブフィルタは、1組のコンバータを構成するものであり、図20による説明からも分かるように、実際には、2本のスイッチング素子と、これらを駆動するためのIC、及びトーテムポール回路等を始め、多くの部品点数により構成される。
これに対して、図1に示す電源回路に備えられる力率改善回路3は、ブリッジ整流回路Diとして高速リカバリ型ダイオードを用いる構成とすることにより、追加部品としては電圧帰還用トランスVFTと、フィルタコンデンサCN、リレースイッチS1及びS2を備えているのみであるから、アクティブ回路と比較すれば非常に少ない部品点数となっている。
これにより、図1に示す電源回路としては、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応の電源回路として、図20に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
【0117】
また、図1に示す電源回路では、共振形コンバータ及び力率改善回路3の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作であるから、図20に示したアクティブフィルタと比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
このため、図1にも示したように、各1組のラインフィルタトランスLFTとアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、図1にも示しているように、1つのフィルタコンデンサCNのみにより対策を行っている。
このようにしてノイズフィルタとしての部品点数が削減されることによっても、電源回路のコストダウンと、回路基板の小型軽量化は促進される。
【0118】
また、図20に示す電源回路の総合電力変換効率は、前段のアクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC/DC)とにより決定されるものであった。これに対して、図1に示す電源回路は、アクティブフィルタを前段に備えていないから、総合電力変換効率は、この電流共振形コンバータのAC−DC電力変換効率として見ればよいことになる。
これにより、図1に示す電源回路の総合電力変換効率としては、図20に示す電源回路よりも大幅に向上されることになる。
なお、図1に示す回路において、負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=100Vの条件での総合電力変換効率(AC−DC電力変換効率)は92.7%であり、図20に示した回路と比較して、交流入力電力は9.0W低減しているという結果が得られた。また、負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、総合電力変換効率(AC−DC電力変換効率)は95.5%であり、この場合の交流入力電力は8.1W低減する。
【0119】
また、図1に示す電源回路の場合、一次側のスイッチングコンバータのスイッチング周波数は、交流入力電圧VAC及び負荷電力の変化などに応じて、定電圧化のために例えば70KHz〜150KHzの範囲で変化するのであるが、このスイッチングコンバータを形成する各スイッチング素子Q1,Q2は、同期してスイッチング動作する。従って、一次側アース電位としては、図20の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定することとなる。
【0120】
続いては、第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成について、図9を参照して説明する。なお、この図において、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0121】
先ず、この図9に示す電源回路においても、整流平滑回路に対して、図示するように整流回路切り換えのためのリレースイッチS1を備えるようにしている。この場合のリレースイッチS1としても、図1に示したものと同様、端子t1がフィルタコンデンサCNの商用交流電源ACの負極ライン側の端部に対して接続され、端子t2が平滑コンデンサCi1とCi2との接続点に対して接続されている。また、端子t3がブリッジ整流回路Diの負極入力端子に対して接続されている。
また、この場合もリレースイッチS1としては、リレーRLがオンとされる(AC100系時)のに応じて、端子t1に対して端子t2が接続されるようになり、リレーRLがオフとなる(AC200V系時)のに応じては、端子t1に対して端子t3が接続されるようになっている。
【0122】
また、第2の実施の形態では、上記したリレースイッチS1と共に、リレーRLにより切り換えが制御されるリレースイッチとして、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBの巻数を切り換えるためのリレースイッチS3を備えるようにしている。このリレースイッチS3としても、端子t1に対して、端子t2と端子t3が択一的に切り換えられる2接点のものが採用される。
この場合、力率改善回路3を形成する電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBとしては、タップ出力が設けられることで、巻線部NB1と巻線部NB2とに分割される。そして、このタップ出力が上記リレースイッチS3の端子t2に接続される。また、巻線部NB2側の端部がリレースイッチS3の端子t3に接続される。さらに、リレースイッチS3の端子t1は、後述する高速リカバリ型ダイオードD1を介してブリッジ整流回路Diの正極入力端子に対して接続されている。
なお、このリレースイッチS3としても、上記リレースイッチS1と同様、リレーRLがオンとされた場合(AC100系時)には端子t1に対して端子t2が接続されるようになり、リレーRLがオフとなった場合(AC200V系時)には、端子t1に対して端子t3が接続されるようになっている。
【0123】
この場合の上記電圧帰還用トランスVFTの構造例を図10に示すが、この場合も先の図7において示したもの同様、E型コアCR1、CR2によるEE型コアの巻装領域に対して、一次側が一次巻線NA、二次側が二次巻線NB(巻線部NB1+巻線部NB2)となるように巻装している。そして、中央磁脚に対してはギャップG=1.5mm程度を設けるようにし、これによって、結合係数が0.7〜0.8程度の疎結合の状態を得るようにしている点も、図7の場合と同様となる。
【0124】
また、この図9に示す電源回路においては、ブリッジ整流回路Diを形成する4つのダイオードとして、低速リカバリ型ダイオードを用いるようにしている。そして、第1の実施の形態ではブリッジ整流回路Diを形成していた高速リカバリ型ダイオードにより整流電流を断続するようにしていたものを、力率改善回路3内に設けた1組の高速リカバリ型ダイオード(D1、D2)により行うようにしている。つまり、高速リカバリ型ダイオードD1、D2は、後述するようにして整流電流をスイッチングしながら導通させる、整流ダイオードとしての機能を有する。
上記高速リカバリ型ダイオードD1としては、図示するようにブリッジ整流回路Diの正極入力端子に対してカソードが接続される。そして、そのアノードにはもう1つの高速リカバリ型ダイオードD2のカソードが接続され、さらにこの高速リカバリ型ダイオードD2のアノードは一次側アースに接地されている。
【0125】
このように構成される第2の実施の形態としての電源回路においては、以下のような動作が得られることとなる。
先ず、商用交流電源ACが、AC100V系とされる場合に対応して得られる動作について説明する。
この場合、交流入力電圧VACが正の期間では、交番電流I2としての整流電流が、力率改善回路3を含む整流電流経路内を流れるようになる。そして、先にも説明したようにリレースイッチS3側では、AC100V系であるのに対応して端子t1に対し端子t2が接続されるようになるため、正極性の交番電流I2は、[電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBの巻線部NB1−リレースイッチS3の端子t2−端子t1]を介し、高速リカバリ型ダイオードD1を流れるようになる。交番電流I2の交番波形は、この高速リカバリ型ダイオードD1が、上記二次巻線NBに発生する交番電圧によりスイッチング動作を行うことで得られるものである。
このように高速リカバリ型ダイオードD1を流れた交番電流I2は、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子に流入し、ダイオードDaを介して流れることにより整流電流I1として平滑コンデンサCi1に流れるようになる。
そして、この場合、リレースイッチS1側においても端子t1に対して端子t2が接続されていることから、平滑コンデンサCi1に流れた電流はリレースイッチS1の端子t2−端子t1の接続を介してフィルタコンデンサCNに流入する。
【0126】
これに対し、交流入力電圧VACが負の期間では、整流電流は、上記したリレースイッチS1の端子t1−端子t2の接続を介し、平滑コンデンサCi2に流れるようになる。そして、この平滑コンデンサCi2に流れた電流は、この場合、一次側アースを介して高速リカバリ型ダイオードD2によりスイッチング(断続)されて流れるようになる。
高速リカバリ型ダイオードD2に流れた電流は、上記したリレースイッチS3の端子t1−端子t2の接続を介し、電圧帰還用トランスVFTの巻線部NB2を流れ、交番電流I2として力率改善回路3内を流れる。そして、この交番電流I2は、商用交流電源ACの負極ラインに流れるようになる。
【0127】
このように、商用交流電源ACとして100V系が入力されている場合は、交流入力電圧VACが正の期間では、ブリッジ整流回路DiにおけるダイオードDaによる整流動作が行われて、整流電流が平滑コンデンサCi1に対して充電される。また、交流入力電圧VACが負の期間では、力率改善回路3内に設けられた高速リカバリ型ダイオードD2によって整流動作が行われて、整流電流が平滑コンデンサCi2に対して充電されるようになる。
そして、このように、交流入力電圧VACが正/負となる期間において、それぞれ平滑コンデンサCi1、Ci2において充電が行われることにより、AC100V系時に対応した整流動作としては、倍電圧整流動作が行われるものとなる。
【0128】
また、上記説明によれば、交流入力電圧VACが正の期間では、力率改善回路3内において整流電流成分は高速リカバリ型ダイオードD1を介して流れるようにされる。また、交流入力電圧VACが負の期間では、整流電流成分は高速リカバリ型ダイオードD2を介して流れるようにされている。
つまり、この場合は、力率改善回路3内において設けられた高速リカバリ型ダイオードD1、D2により整流電流成分が断続されるようになるものであり、これにより図9に示す回路では力率改善が図られているものである。
【0129】
続いて、商用交流電源ACとして200V系が入力されている場合について説明すると、この場合も、交流入力電圧VACが正の期間では、整流電流は交番電流I2として力率改善回路3内を流れるようになる。そして、この場合(AC200V系時)のリレースイッチS3側では、端子t1に対して端子t3が接続されるようになるため、交番電流I2は、[電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NB(巻線部NB1+巻線部NB2)−端子t3−端子t1]を介し、高速リカバリ型ダイオードD1を流れるようになる。
高速リカバリ型ダイオードD1を流れた交番電流I2は、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子−ダイオードDaを介して流れた後、整流電流I1として平滑コンデンサCi1−Ci2に流れるようになる。そして、この場合はリレースイッチS1側でも端子t1に対して端子t3が接続されていることから、平滑コンデンサCiに流れた電流は、一次側アースを介してブリッジ整流回路DiにおけるダイオードDdを流れた後、リレースイッチS1の端子t3−端子t1の接続を介してフィルタコンデンサCNに流入するようになる。
【0130】
また、交流入力電圧VACが負の期間では、整流電流は上記したリレースイッチS1の端子t1−端子t3の接続を介し、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子からダイオードDdに流れるようになる。そして、ダイオードDdを流れた電流は、整流電流I1として平滑コンデンサ(Ci1−Ci2)に流れるようになる。
平滑コンデンサに流れた電流は、この場合も一次側アースを介して高速リカバリ型ダイオードD2に流れるようになる。そして、高速リカバリ型ダイオードD2に流れた電流は、上記したリレースイッチS3の端子t1−端子t3の接続を介し、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBを流れ、交番電流I2として力率改善回路3内を流れる。そして、この交番電流I2は、商用交流電源ACの負極ラインに流れるようになる。
【0131】
このように、商用交流電源ACとして200V系が入力された場合も、交流入力電圧VACが正の期間はブリッジ整流回路DiにおけるダイオードDaのみにより整流動作が行われ、また、交流入力電圧VACが負の期間では高速リカバリ型ダイオードD2によってのみ整流動作が行われるもとなる。そして、この場合、上記のように整流電流は平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路に対して充電される。
つまり、図9に示す回路においては、先の図1に示した回路とは異なり、AC200V系に対応してはブリッジ整流回路Diにおける全波整流によらない整流動作により、等倍電圧整流動作が行われているものである。
【0132】
また、この場合の力率改善回路3においても、交流入力電圧VACが正/負となる期間で、整流電流成分がそれぞれ高速リカバリ型ダイオードD1、D2を介して流れるようにされている。すなわち、この場合も、これら高速リカバリ型ダイオードD1、D2により整流電流成分が断続(スイッチング)されるものとなる。
【0133】
このようにして、図9に示す電源回路においては、AC100V系と200V系とで共に、力率改善回路3に設けられた2つの高速リカバリ型ダイオード(D1、D2)により整流電流成分が断続され、力率の改善が図られている。
【0134】
なお、図9に示した回路における各部の動作波形としては、上記したような動作が行われる結果、先に図1に示した回路の場合とほぼ同等の動作波形が得られるものとなる。つまり、この図9に示した回路構成によっても、図1に示した回路と、結果的にほぼ同等の力率改善動作が得られるものとなる。
【0135】
ここで、上述もしたように、この図9に示す力率改善回路3に対しては、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBの巻数を切り換えるためのリレースイッチS3が備えられている。そして、上記説明によれば、交流入力電圧VAC=150V以下(AC100V系)である場合に対応しては、このリレースイッチS3では、端子t1に対して端子t2が接続される。また、VAC=150V以上(AC200V系)となり、リレーRLがオフとなるのに応じては、端子t1に対して端子t3が接続される。
【0136】
リレースイッチS3において、AC100V系に対応し、上記のように端子t1に対して端子t2が接続されることによっては、電圧帰還用トランスVFTを形成する二次巻線NBとしては、巻線部NB1のみが有効とされることになる。
これに対し、上記のようにAC200V系に対応し、端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、上記二次巻線NBとしては、巻線部NB1と巻線部NB2とを直列接続した巻線が有効とされることになる。
【0137】
このようにして、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBとしての巻線数が変化すれば、この二次巻線NBと一次巻線NAとの巻線比が変化することになって、二次巻線NBに励起されて整流電流経路に帰還されるべき交番電圧レベルも変化することになる。
そして、上記のようにしてAC200V系時に二次巻線NBの巻線数が増加することによっては、二次巻線NBに励起される交番電圧レベルも上昇して、整流電流経路に帰還される交番電圧レベルも増加することになる。これによっては、力率改善回路3において帰還されるエネルギーが増加するために、より高い力率を得ることが可能となる。
つまり、先の第1の実施の形態の電源回路では、AC100V系時と比較した場合にAC200V系時の力率が低下していたものであるが、この第2の実施の形態ではこの特性を改善しているものである。
【0138】
図11は、第2の実施の形態の電源回路の特性として、負荷電力Po=0〜300Wの変動に対する力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。なお、この図においても、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧整流回路とした場合の特性を実線により示し、全波整流回路とした場合の特性を破線により示している。
また、この場合にも、図11の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路としたときの特性は交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件とし、また、全波整流回路としたときの特性は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。
【0139】
また、参考として、この図11に示す実験結果を得るにあたっての、図9に示した回路の各部の定数を示しておく。
・絶縁コンバータトランスPIT:EER−42のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=33T(ターン)
二次巻線N2:センタータップを分割位置として25T+25T
・電圧帰還用トランスVFT:EER−28のフェライトコア、ギャップ長Gap=1.5mm、結合係数k=0.73
一次巻線NAのインダクタンスLA=100μH
二次巻線NBの巻線部NB1のインダクタンスLB1=72μH
二次巻線NBの巻線部NB2のインダクタンスLB2=33μH
・一次側直列共振コンデンサC1=0.033μF
・フィルタコンデンサCN=1μF
【0140】
この図11と、先に図8に示した第1の実施の形態の回路の測定結果とを比較してわかるように、図9に示した第2の実施の形態回路では、交流入力電圧VAC=230Vの条件において、特に負荷電力Po=150W近傍までの力率PFが向上している。このことからも、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBの巻線数を増加させることによって、200V系時における力率PFがより改善していることがわかる。そして、この場合は、交流入力電圧VAC=230Vの条件下では、図示するように負荷電力Po=70W〜300Wまでの範囲で力率PF>0.75となる。
また、この場合、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、負荷電力Po=15W〜300Wの範囲で力率PF>0.75となっている
この結果から、図9に示す電源回路においては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。
【0141】
また、この際、整流平滑電圧Eiの変動幅であるΔEiとしては、負荷電力Po=300W〜25Wに対し、交流入力電圧VAC=100Vの条件でΔEi=63Vとなる特性が得られている。
また、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、ΔEi=32Vとなる特性が得られ、図1に示した第1の実施の形態の回路の場合のΔEi=50Vと比較して、整流平滑電圧Eiの変動幅が大幅に減少するものとなる。
これは、図9に示した回路では電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBの巻線数がAC200V系時に増加するようにされていることによる。つまり、このように二次巻線NBとしての巻線数が増加することにより、二次巻線NBのインダクタンスが増加するようにされ、整流電流経路に帰還される電流量が減少する。
そして、これにより平滑コンデンサCiに充電される電流量も減少し、整流平滑電圧Eiのリップル成分が減少して変動幅ΔEiも減少するようになるものである。
このように、整流平滑電圧Eiの変動幅が減少することによっては、図1に示した回路では平滑コンデンサCiとして250Vの耐圧品を選定していたものを、第2の実施の形態では200Vの耐圧品を選定することが可能となり、部品コストの削減、回路面積の省スペース化が図られる。
【0142】
また、図9に示した回路において、実験によれば、負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=100Vの条件での総合電力変換効率(AC−DC電力変換効率)は92.9%であり、図20に示した回路と比較して、交流入力電力は9.4W低減しているという結果が得られた。また、負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、総合電力変換効率(AC−DC電力変換効率)は95.5%であり、この場合の交流入力電力は8.1W低減することとなる。
【0143】
図12は、第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
第3の実施の形態としての電源回路は、先に説明した第1の実施の形態の電源回路の構成を基本として、負荷電力600W以上に対応可能な構成としたものである。この図12に示す電源回路は、例えば、比較的重負荷の条件への対応が要求されるプラズマディスプレイパネルを備えたテレビジョン受像機や、モニタ装置などに搭載される。
なお、この図12において、既に第1の実施の形態で説明した部分については同一の符号を付して説明を省略するものとし、図1に示す回路との相違点のみについて説明する。
【0144】
図12において、先ずこの第3の実施の形態としての電源回路においては、商用交流電源ACを整流する整流回路として、図示するように2つのブリッジ整流回路Di1,Di2が設けられる。
【0145】
上記ブリッジ整流回路Di1は、高速リカバリ型のダイオードDa1、Db1、Dc1、Dd1を備え、これらが図1の場合と同様の接続形態により接続される。
この場合も、このブリッジ整流回路Di1の負極入力端子と、平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点との間には、図1の場合と同様にリレースイッチS1が挿入される。そして、このリレースイッチS1は、図1の場合と同様にして設けられた整流回路切り換えモジュール5とリレーRLによりその切り換えが制御される。つまり、商用交流電源ACが100V系と200V系とで動作可能なワイドレンジ対応の構成を採るものである。
また、この場合も、ブリッジ整流回路Di1の正極入力端子は、図示する電圧帰還用トランスVFT−1の二次巻線NBaを介して商用交流電源ACの正極ラインに接続されている。
【0146】
ブリッジ整流回路Di2は、高速リカバリ型のダイオードDa2、Db2、Dc2、Dd2を備え、上記ブリッジ整流回路Di1と同様の接続形態により構成される。
このブリッジ整流回路Di2の負極入力端子は、商用交流電源ACの負極ラインに対して接続される。つまりこの場合、上記ブリッジ整流回路Di1とこのブリッジ整流回路Di2の負極入力端子は、図示するように商用交流電源ACの負極ラインに対して共通に接続されている。
また、ブリッジ整流回路Di2の正極入力端子は、図示する電圧帰還用トランスVFT−2の二次巻線NBbと、この二次巻線NBbと並列に接続される電圧帰還用トランスVFT−3の二次巻線NBcとを介して商用交流電源ACの正極ラインに接続されている。
また、このブリッジ整流回路Di2の正極出力端子は、図示するように、上記ブリッジ整流回路Di1の正極出力端子と平滑コンデンサCi1の接続点に対して接続され、負極出力端子は二次側アースに接地される。
【0147】
また、この場合、商用交流電源ACのラインに挿入されるノーマルモードノイズ抑制用のフィルタコンデンサCNとしては、2つのフィルタコンデンサCN、CNが設けられ、ノイズ抑制効果を強化するようにしている。
【0148】
そして、この図に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件(負荷電力600W以上)に対応するために、平滑コンデンサ[Ci1−Ci2]を直流入力電圧として動作電源とする、複数の電流共振形コンバータが並列に設けられる。この図では、第1コンバータ部CVT1、第2コンバータ部CVT2、第3コンバータ部CVT3の3つの電流共振形コンバータが設けられており、それぞれ、所定レベルに安定化された二次側直流出力電圧EO1、EO2、EO3を出力するようにされている。
【0149】
上記第1コンバータ部CVT1の構成としては、スイッチング素子Q1、Q2、クランプダイオードDD1、DD2、コントロールIC2、一次側直列共振コンデンサC1、部分共振コンデンサCp、絶縁コンバータトランスPIT−1(一次巻線N1,二次巻線N2)、整流ダイオードDO1,D02、平滑コンデンサCO1、及び制御回路1のそれぞれが、図1に示した接続形態により接続されているものとなる。
但し、この場合、図1に示したコンバータ部とは異なり、スイッチング素子Q1、及びスイッチング素子Q2のゲートに対しては、それぞれ図のように抵抗R4、抵抗R5が挿入される。また、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のゲート−ソース間には、それぞれゲート−ソース間抵抗R6、R7が挿入されるものとなる。
【0150】
また、上記第2コンバータ部CVT2としては、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3、DD4、抵抗R8、抵抗R9ゲート−ソース間抵抗R10、R11、コントロールIC2、一次側直列共振コンデンサC1、部分共振コンデンサCp、絶縁コンバータトランスPIT−2、整流ダイオードDO3,D04、平滑コンデンサCO2、及び制御回路1を備え、上記第1コンバータ部CVT1と同様の接続態様による構成を採る。
【0151】
第3コンバータ部CVT3は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、ゲート−ソース間抵抗R14,R15、コントロールIC2,一次側直列共振コンデンサC1、部分共振コンデンサCp、絶縁コンバータトランスPIT−3を備え、第1コンバータ部CVT1と同様の接続態様による一次側構成を採る。
但し、第3コンバータ部CVT3の絶縁コンバータトランスPIT−3の二次側においては、図示するようにして二次巻線N2に対して整流ダイオードDO5,D06,D07,D08及び平滑コンデンサCO3,CO4を接続していることで、整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路と、整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路との2組の両波整流回路が形成されることになる。
整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路によっては二次側直流出力電圧EO3が生成される。整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路によっては、二次側直流出力電圧EO3よりも低圧レベルの二次側直流出力電圧E04が生成される。
【0152】
なお、上記構成において、第1コンバータ部CVT1の二次側直流出力電圧EO1が対応する負荷電力は300W、第2コンバータ部CVT2の二次側直流出力電圧EO2が対応する負荷電力は200W、第3コンバータ部CVT3の二次側直流出力電圧EO3,E04により対応する負荷電力は100Wとなっており、これにより、総合的に負荷電力Po=600W以上に対応可能とされている。
また、上記コンバータ部CVT1〜CVT3に備えられる各コントロールIC2としては、コンバータ部CVT1〜CVT3により生成される直流出力電圧EO1、EO2、EO3が、それぞれ200V、90V、24Vとなるようにスイッチング周波数を制御するようにされている。
【0153】
ここで、この図に示す電源回路では、図示するように第1の力率改善回路3A、第2の力率改善回路3B、第3の力率改善回路3Cの3つの力率改善回路が備えられるものとなる。
上記第1の力率改善回路3Aは、ブリッジ整流回路Di1、フィルタコンデンサCN、CN、電圧帰還用トランスVFT−1を含んで構成される。
この第1の力率改善回路3Aにおける上記電圧帰還用トランスVFT−1の一次巻線NAaは、図示する第1コンバータ部CVT1の一次側直列共振コンデンサC1と、絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1との間に挿入される。これにより第1コンバータ部CVT1のスイッチング出力がこの一次巻線NAaに得られるようになっている。そして、このように電圧帰還用トランスVFT−1の一次巻線NAaに得られたスイッチング出力が、上記二次巻線NBaに励起されてブリッジ整流回路Di1側に電圧帰還されるようになっている。
つまり、この場合、この第1の力率改善回路3Aは、第1コンバータ部CVT−1のスイッチング出力を電圧帰還して力率の改善を図る構成を採る。
【0154】
また、上記第2の力率改善回路3Bは、ブリッジ整流回路Di2、フィルタコンデンサCN、CN、電圧帰還用トランスVFT−2を含んで構成される。
この場合、上記電圧帰還用トランスVFT−2の一次巻線NAbは、第2コンバータ部CVT2における一次側直列共振コンデンサC1と、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1との間に挿入される。そして、これにより、一次巻線NAbに得られる第2コンバータ部CVT2のスイッチング出力が、二次巻線NBbを介して上記ブリッジ整流回路Di2側に帰還されるようになっている。
つまり、この第2の力率改善回路3Bは、第2コンバータ部CVT2のスイッチング出力を電圧帰還して力率改善を図る構成とされている。
【0155】
上記第3の力率改善回路3Cは、ブリッジ整流回路Di2、フィルタコンデンサCN、CN、及び電圧帰還用トランスVFT−3を含むものとされる。
つまり、この場合、この第3の力率改善回路3Cと、上記した第2の力率改善回路3Bとは、図中に2点鎖線で囲んだようにブリッジ整流回路Di2とフィルタコンデンサCN、CNを共有するものとされている。
そして、この第3の力率改善回路3Cにおいては、上記電圧帰還用トランスVFT−3の一次巻線NAcが、第3コンバータ部CVT3における一次側直列共振コンデンサC1と、絶縁コンバータトランスPIT−3の一次巻線N1との間に挿入される。つまり、上記電圧帰還用トランスVFT−3によって第3コンバータ部CVT3のスイッチング出力が上記ブリッジ整流回路Di2側に帰還されるものとなる。
従ってこの場合、この第3の力率改善回路3Cは、第3コンバータ部CVT3のスイッチング出力を電圧帰還して力率改善を図る構成とされている。
【0156】
上記構成による第3の実施の形態の電源回路における動作を、図14、図15に示す波形図を参照して説明する。
これらの図において、図14では交流入力電圧VAC=100Vの条件下での、また、図15では交流入力電圧VAC=230Vの条件下での測定結果をそれぞれ示している。
先ず、図14を参照して、商用交流電源がAC100V系とされる場合に対応して力率改善回路3A、3Bにおいて得られる動作を説明する。
図14において、この場合も、AC100V系に対応しては、例えば図14(a)に示すような交流入力電圧VACと、図14(b)に示す交流入力電流IACの波形が得られる。そして、この場合も、ブリッジ整流回路Di1の正極出力ラインに得られる整流電流I1としては、図14(d)に示すようにして交流入力電圧VACが正の期間において正極性によって流れるようにされる。
また、第1の力率改善回路3A内には、図14(f)に示すようなスイッチング周期による交番電流I2が流れる。
【0157】
また、フィルタコンデンサCNの正極端子と一次側アース間の電位V1は、図14(c)に示すように、交流入力電圧VACに応じた正弦波が得られている。そして、第2、第3の力率改善回路(3B、3C)を構成するブリッジ整流回路Di2の正極入力端子と一次側アース間の電位V2としては、図14(e)に示すように正/負のピークとなる期間においてスイッチング周期に応じた交番電圧が生じている。
このことからも、これら第2、第3の力率改善回路(3B、3C)では、それぞれ第2コンバータ部CVT2、第3コンバータ部CVT3のスイッチング出力が、電圧帰還用トランスVFT−2、VFT−3を介して電圧帰還されていることがわかる。
【0158】
ここで、第3の実施の形態の電源回路において、商用交流電源AC=100V系時、交流入力電圧VACが正の期間では、正極性の交流入力電流IACは、電圧帰還用トランスVFT−1の二次巻線NB1を介して第1の力率改善回路3A内を流れる交番電流I2となる成分と、商用交流電源の正極ラインから分岐して第2、第3の力率改善回路(3B、3C)を流れる成分とに分流する。
上記交番電流I2として流れた成分は、第1の実施の形態の場合と同様、[ブリッジ整流回路Di1の高速リカバリ型ダイオードDa1−平滑コンデンサCi1−リレースイッチS1]の経路でフィルタコンデンサCNに流入する。これにより、第1の力率改善回路3A側においては、ブリッジ整流回路Di1の高速リカバリ型ダイオードDa1が、上記交番電流I2を断続するようにしてスイッチング動作することとなる。
【0159】
また、上記のように第2、第3の力率改善回路(3B、3C)側に分流した成分は、電圧帰還用トランスVFT−2と電圧帰還用トランスVFT−3とに分岐して流れる。そして、これら電圧帰還用トランスVFT−2、VFT−3に流れた成分は、共にブリッジ整流回路Di2の正極入力端子から高速リカバリ型ダイオードDa2に流入するようになる。
これにより、第2の力率改善回路3B、及び第3の力率改善回路3C側では、上記高速リカバリ型ダイオードDa2により整流電流成分がスイッチングされるようになる。
【0160】
これに対し、交流入力電圧VACが負の期間では、負極性の交流入力電流IACの成分は、リレースイッチS1を介して平滑コンデンサCi2に流れた後、第1の力率改善回路3Aを構成するブリッジ整流回路Di1の高速リカバリ型ダイオードDc1に流れる。そして、この高速リカバリ型ダイオードDc1を流れた電流は、第1の力率改善回路3A内を交番電流I2として流れ、電圧帰還用トランスVFT−1の二次巻線NBaを介してフィルタコンデンサCNに流入する。
これにより、第1の力率改善回路3A側では、この場合、上記高速リカバリ型ダイオードDc1により整流電流成分がスイッチングされるようになる。
【0161】
また、この場合、上記のように平滑コンデンサCi2を流れた電流は、第2、第3の力率改善回路(3B、3C)を構成するブリッジ整流回路Di2の高速リカバリ型ダイオードDc2にも分岐して流れる。そして、このように高速リカバリ型ダイオードDc2を流れた電流は、電圧帰還用トランスVFT−2の二次巻線NBb(第2の力率改善回路3B)、VFT−3の二次巻線NBc(第3の力率改善回路3C)に分岐して流れた後、それぞれフィルタコンデンサCNに流入する。
すなわち、この場合、第2の力率改善回路3B、及び第3の力率改善回路3C側では、上記高速リカバリ型ダイオードDc2により整流電流成分がスイッチングされるようになる。
【0162】
このようにして、図12に示した回路では、第1の力率改善回路3Aにおいて、電圧帰還用トランスVFT−1により電圧帰還される第1コンバータ部CVT1のスイッチング出力によって、高速リカバリ型ダイオードDa1,Dc1をスイッチング動作させている。
また、これと共に、第2の力率改善回路3Bにおいては、電圧帰還用トランスVFT−2により電圧帰還される第2コンバータ部CVT2のスイッチング出力によって高速リカバリ型ダイオードDa2,Dc2をスイッチング動作させている。さらに、第3の力率改善回路3Cにおいては、電圧帰還用トランスVFT−3により電圧帰還される第3コンバータ部CVT3のスイッチング出力によって、同様に高速リカバリ型ダイオードDa2,Dc2をスイッチング動作させている。
これにより、図12に示す電源回路においては、これら3つの力率改善回路3A、3B、3Cによって力率の改善を図るようにされている。
【0163】
続いて、図15に示す交流入力電圧VAC=230V時の場合においては、交流入力電圧VACの波形は例えば図15(a)に示すようになり、また、交流入力電流IACとしては、図15(b)に示す波形により流れる。
そして、この場合のブリッジ整流回路Diの正極出力ラインに得られる整流電流I1としては、交流入力電圧VACが正/負となるのに対応して図15(d)に示すような波形により流れる。また、第1の力率改善回路3A内において流れる交番電流I2としては、この場合も図15(f)に示すようにスイッチング周期による波形が得られる。
【0164】
また、この場合のフィルタコンデンサCNの正極端子と一次側アース間の電位V1としても、図15(c)に示すように交流入力電圧VACに応じた正弦波が得られ、また、第2、第3の力率改善回路(3B、3C)を構成するブリッジ整流回路Di2の正極入力端子と一次側アース間の電位V2としても、図15(e)に示すように正/負のピークとなる期間においてスイッチング周期に応じた交番電圧が生じるものとなる。
【0165】
この場合(AC230V時)も、交流入力電圧VACが正の期間では、正極性の交流入力電流IACは、正極性の交番電流I2としてブリッジ整流回路Di1の正極入力端子から高速リカバリ型ダイオードDa1に流入する。そして、この場合、高速リカバリ型ダイオードDa1を流れた電流は、平滑コンデンサ(Ci1−Ci2)に流れる。
さらに、上記平滑コンデンサCiを流れた電流は、ブリッジ整流回路Di1の高速リカバリ型ダイオードDd1を流れた後、商用交流電源ACの負極ラインを介してフィルタコンデンサCNに流れるようになる。
これにより、この場合の第1の力率改善回路3A側では、上記高速リカバリ型ダイオードDa1とDd1とにより整流電流成分がスイッチングされるようになる。
【0166】
また、この場合も、上記正極性の交流入力電流IACの成分は、商用交流電源ACの正極ラインから分岐して第2、第3の力率改善回路(3B、3C)側にも分流する。そして、このようにして分流した電流は、電圧帰還用トランスVFT−2の二次巻線NBb(第2の力率改善回路3B)、VFT−3の二次巻線NBc(第3の力率改善回路3C)に分岐して流れた後、それぞれブリッジ整流回路Di2の高速リカバリ型ダイオードDa2に流入する。
さらに、この場合、先に説明したようにして平滑コンデンサ(Ci1−Ci2)に流れた電流が、ブリッジ整流回路Di2の高速リカバリ型ダイオードDd2にも分岐して流れるものとなる。そして、この電流は商用交流電源ACの負極ラインを介してフィルタコンデンサCNに流入するようになる。
すなわち、この場合、第2、第3の力率改善回路(3B、3C)側では、高速リカバリ型ダイオードDa2、Dd2の組により整流電流成分がスイッチングされることになる。
【0167】
一方、交流入力電圧VACが負の期間においては、負極性の交流入力電流IACの成分は、ブリッジ整流回路Di1の負極入力端子から高速リカバリ型ダイオードDb1を流れた後、平滑コンデンサ(Ci1−Ci2)に流れる。そして、平滑コンデンサを流れた電流は、この場合、ブリッジ整流回路Di1の負極出力端子から高速リカバリ型ダイオードDc1に流れた後に、負極性の交番電流I2として第1の力率改善回路3A内を流れて商用交流電源ACの正極ライン側からフィルタコンデンサCNに流入するようになる。
従って、この場合、第1の力率改善回路3A側では高速リカバリ型ダイオードDb1、Dc1により整流電流がスイッチングされるものとなる。
【0168】
また、この場合、上記交流入力電流IACの成分は、第2、第3の力率改善回路(3B、3C)を構成するブリッジ整流回路Di2の高速リカバリ型ダイオードDb2にも分岐して流れるようになる。
また、さらにこの場合、上記のように平滑コンデンサに流れた電流は、一次側アースを介し、ブリッジ整流回路Di2の高速リカバリ型ダイオードDc2にも流れるようになる。そして、このようにダイオードDc2を流れた電流は、電圧帰還用トランスVFT−2の二次巻線NBb(第2の力率改善回路3B)、電圧帰還用トランスVFT−3の二次巻線NBc(第3の力率改善回路3C)をそれぞれ介して、商用交流電源ACの正極ラインからフィルタコンデンサCNに流入する。
つまり、この場合の第2、第3の力率改善回路(3B、3C)側においては、上記高速リカバリ型ダイオードDb2、Dc2により整流電流成分がスイッチングされる。
【0169】
このようにして、図12に示した構成による電源回路においては、第1の力率改善回路3A、及び第2の力率改善回路3B、第3の力率改善回路3Cによって、AC100V系時(VAC=100V)とAC200V系時(VAC=230V)とで共に整流電流成分が断続されるようになる。そして、これにより、先にも説明したように交流入力電流IACの導通角が拡大されて力率の改善が図られるものとなる。
【0170】
図16には、図12に示した第3の実施の形態としての電源回路の特性として、負荷電力Po=0〜600Wの変動に対する力率PF、及び整流平滑電圧Eiの総合特性を示している。
なお、この図においても、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧整流回路とした場合の特性を実線により示し、全波整流回路とした場合の特性を破線により示している。また、図16の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路とした場合は、交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件、全波整流動作とした場合は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。
【0171】
また、参考として、この図16に示す実験結果を得るにあたっての、図12に示した回路の各部の定数を示しておく。
・第1コンバータ部CVT1
絶縁コンバータトランスPIT−1:EER−42のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=35T(ターン)
二次巻線N2:センタータップを分割位置として25T+25T
一次側直列共振コンデンサC1=0.039μF
・第2コンバータ部CVT2
絶縁コンバータトランスPIT−2:EER−40のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=40T(ターン)
二次巻線N2:センタータップを分割位置として18T+18T
一次側直列共振コンデンサC1=0.039μF
・第3コンバータ部CVT3
絶縁コンバータトランスPIT−3:EER−35のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=30T(ターン)
二次巻線N2:各巻線部5T×4=20T
一次側直列共振コンデンサC1=0.068μF
・電圧帰還用トランスVFT−1:EE−28のフェライトコア、ギャップ長Gap=1.5mm、結合係数k=0.73
一次巻線NAaのインダクタンスLA=120μH
二次巻線NBaのインダクタンスLB=80μH
・電圧帰還用トランスVFT−2:EE−28のフェライトコア、ギャップ長Gap=1.5mm、結合係数k=0.73
一次巻線NAbのインダクタンスLA=120μH
二次巻線NBbのインダクタンスLB=80μH
・電圧帰還用トランスVFT−3:EE−22のフェライトコア、ギャップ長Gap=1.5mm、結合係数k=0.72
一次巻線NAcのインダクタンスLA=100μH
二次巻線NBcのインダクタンスLB=130μH
【0172】
この図16に示すように、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、負荷電力Po=25W〜600Wの範囲で、力率PF>0.75となり、我が国(日本)の高調波歪規制をクリアする。また、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、負荷電力Po=300W〜600の範囲での力率の値であれば、欧州の高調波歪規制を満足する。
このように、力率特性としては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。
【0173】
また、実験によれば、図12に示した回路における総合的な電力変換効率ηAC→DCは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=600W時にηAC→DC=92.3%であり、交流入力電力は先に図21に示した従来の回路よりも15.4W低減する結果が得られた。
また、交流入力電圧VAC=230V、負荷電力Po=600W時には、総合的な電力変換効率ηAC→DC=94.1%となり、交流入力電力は従来よりも6.9W低減する結果が得られた。
このようにして、同じ負荷電力Po=600W以上の条件に対応し、力率改善を図る電源回路として、図12に示した実施の形態と図21に示した先行技術としての電源回路とを比較すると、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電力変換効率が大幅に向上していることがわかる。
【0174】
なお、図12に示した回路における、各コンバータ部ごとの特性としては、以下のような結果が得られた。
先ず、第1コンバータ部CVT1では、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=300W時において、力率PF=0.80、電力変換効率ηAC→DC=93.4%となり、交流入力電圧VAC=230V、負荷電力Po=300W時では、力率PF=0.78、電力変換効率ηAC→DC=95.1%となる。
第2コンバータ部CVT2では、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時において、力率PF=0.82、電力変換効率ηAC→DC=92.4%となり、交流入力電圧VAC=230V、負荷電力Po=200W時では、力率PF=0.75、電力変換効率ηAC→DC=93.0%となる。
また、第3コンバータ部CVT3では、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=100W時において、力率PF=0.81、電力変換効率ηAC→DC=91.5%となり、交流入力電圧VAC=230V、負荷電力Po=100W時では、力率PF=0.78、電力変換効率ηAC→DC=94.1%となった。
【0175】
また、この図12に示した電源回路についても、同等の負荷条件に対応する図21の回路と比較すれば、力率改善のための回路構成としては、アクティブフィルタから、より少ない部品点数の力率改善回路(3A、3B、3C)となる。また、ノイズ抑制のための各種部品も削減される。これにより、部品点数の削減による低コスト化及び電源回路の小型軽量化が図られることになる。
【0176】
そして、この図12に示す回路としても、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することは無いから、一次側アース電位は安定する。
【0177】
なお、図12に示す第3の実施の形態としての電源回路に対しても、図9に示した第2の実施の形態としての構成を付加することができる。つまり、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBについて、AC100V系時とAC200V系時とで巻線数が変更されるようにして切り換えを行い、これによって、AC200V系時における力率の値を高めることが可能となる。
図12に示す回路の場合、この二次巻線NBの巻線数切り換えの構成を適用するのにあたっては、それぞれの電圧帰還用トランスVFT(VFT−1〜3)に備えるようにすることが考えられる。また、例えばメインとなる第1コンバータ部CVT1の電圧帰還用トランスVFT−1においてのみ、二次巻線NBaの巻線数切り換えの構成を備えるようにしても、AC200V系時における力率の改善効果は充分に得ることが可能である。
【0178】
続いては、図13の回路図を用いて第4の実施の形態としての電源回路について説明する。
この第4の実施の形態の電源回路としては、先に図9に示した第2の実施の形態としての電源回路の構成を基本として、先の図12の回路のように例えば負荷電力600W以上の重負荷の条件に対応可能に構成したものである。
なお、この図においても先の図9、図12にて既に説明した部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0179】
図13において、この場合も商用交流電源ACに対しては、先の図12に示した回路と同等の接続形態により、2つのブリッジ整流回路(Di1、Di2)が備えられる。但し、この場合は図9に示した第2の実施の形態の場合と同様、上記ブリッジ整流回路を形成するそれぞれのダイオード(Da、Db、Dc、Dd)としては、低速リカバリ型が選定される。
【0180】
また、この場合の力率改善回路3としては、直流出力電圧EO1を生成する第1コンバータ部CVT1に対して設けられた第1の力率改善回路3Aと、直流出力電圧EO2を生成する第2コンバータ部CVT2に対して設けられた第2の力率改善回路3Bとの2つの回路が形成される。
【0181】
また、この図において、各コンバータ部(CVT1、CVT2)の二次側には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対して、図示するように二次側並列共振コンデンサC2を並列に挿入するようにしている。
つまり、この図13に示す回路では、一次側と二次側とで共に共振動作が得られるように構成されているものである。
【0182】
また、さらにこの場合、第2コンバータ部CVT2の二次側における、整流ダイオードDO3と平滑コンデンサCO2との接続点に対しては、図のように[DC−DCコンバータ6//DC−DCコンバータ7]の並列接続回路が接続される。
これらDC−DCコンバータ6、7は、それぞれ図示する平滑コンデンサCO3、平滑コンデンサCO4を備え、所定の電圧レベルに安定化された直流出力電圧EO3、直流出力電圧EO4をそれぞれ生成するように構成される。
つまり、この図13に示す回路においては、上記第1コンバータ部CVT1、及び第2コンバータ部CVT2によりそれぞれ生成される直流出力電圧E01、EO2と共に、これらDC−DCコンバータ6、7により生成される直流出力電圧EO3、EO4を出力するように構成されているものである。
【0183】
そして、この第4の実施の形態においては、上記した2つの力率改善回路(3A、3B)に対し、高速リカバリ型ダイオードD1、高速リカバリ型ダイオードD2を、それぞれ図9の場合と同様に挿入する。
すなわち、図示するようにブリッジ整流回路Di1、Di2の正極入力端子に対して、それぞれの高速リカバリ型ダイオードD1のカソードを接続し、そのアノードに対して、それぞれの高速リカバリ型ダイオードD2のカソードを接続する。そして、さらにこれら高速リカバリ型ダイオードD2のアノードをそれぞれ一次側アースに接地するものである。
【0184】
このように構成される第4の実施の形態としての電源回路においては、先の図9にて説明したように、交流入力電圧VACが正の期間では各高速リカバリ型ダイオードD1により整流電流成分が断続されるようになる。
また、交流入力電圧VACが負の期間においても、先の図9におい説明した場合と同様、各高速リカバリ型ダイオードD2により整流電流成分が断続されるようになる。
このようにして、この図13に示す電源回路においても、AC100V系と200V系とで共に、2つの力率改善回路(3A、3B)に設けられた高速リカバリ型ダイオード(D1、D2)のそれぞれの組により、整流電流成分が断続され力率の改善が図られるものとなる。
【0185】
そして、このような動作が行われる結果、この図13に示した回路における各部の動作波形としても、先に図12に示した回路の場合とほぼ同等の動作波形が得られるものとなる。つまり、この図13に示した回路構成によっても、図12に示した回路と結果的にほぼ同等の力率改善動作が得られており、この図13に示した回路構成によっても、上記図12に示した回路と同等の効果が得られるものである。
【0186】
なお、この場合も、図13に示す第4の実施の形態としての電源回路に対しては、図9に示した第2の実施の形態としての構成を付加することができる。つまり、電圧帰還用トランスVFTの二次巻線NBについて、AC100V系時とAC200V系時とで巻線数が変更されるようにして切り換えを行い、これによって、AC200V系時における力率の値を高めることが可能となる。
この場合、先にも説明したようにこの二次巻線NBの巻線数切り換えの構成を、電圧帰還用トランスVFT−1、VFT−2の双方に備えるようにしてもよいし、例えば実用上充分な力率が得られるのであればメインとなる第1コンバータ部CVT1の電圧帰還用トランスVFT−1においてのみ備えるようにしてもよい。
【0187】
なお、本発明としては、これまでに説明した電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0188】
また、力率改善回路3の構成としても、上記各実施の形態として示したもの以外に限定されるものではなく、これまでに本出願人が提案してきた各種の電圧帰還方式による回路構成として、倍電圧整流回路に適用可能なものを採用することも可能である。
【0189】
また、第1の実施の形態として図1に示した回路においても、第2の実施の形態として図9に示したようにしてリレースイッチS3を設けるようにし、電圧帰還用トランスVFTにおける二次巻線NBの巻き線数が切り換えられるように構成されてもよい。
【0190】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明は、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、アクティブフィルタを備えない構成を採る。これにより、例えばアクティブフィルタによって力率改善を図る場合よりも電力変換効率が向上されるという効果を有している。
【0191】
また、本発明の電源回路としては、アクティブフィルタを構成するための多数の部品素子が不要となる。また、電源回路を構成する電流共振形コンバータ、及び力率改善回路はソフトスイッチング動作であり、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタを強化する必要もなくなる。
このために、先行技術と比較しては、部品点数が大幅に削減されることになって、電源回路サイズの小型/軽量化を図ることが可能となる。また、それだけコストダウンが図られることにもなる。
【0192】
さらには、アクティブフィルタが省略されたことで、一次側アース電位の干渉が無くなるので、一次側アース電位も安定することとなって、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態の電源回路におけるスイッチング素子のゲート−ソース間電圧を示す波形図である。
【図3】第1の実施の形態の電源回路において、AC100V系に対応した整流平滑回路の電流の流れを模式的に示す図である。
【図4】第1の実施の形態の電源回路において、AC100V系に対応した整流平滑回路の電流の流れを模式的に示す図である。
【図5】第1の実施の形態の電源回路における要部の動作を、商用交流電源周期により示す波形図である。
【図6】第1の実施の形態の電源回路における要部の動作を、商用交流電源周期により示す波形図である。
【図7】第1の実施の形態の電源回路における力率改善回路内に備えられる電圧帰還用トランスの構造例を示す断面図である。
【図8】第1の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図9】第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図10】第2の実施の形態の電源回路における力率改善回路内に備えられる電圧帰還用トランスの構造例を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図12】第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図13】第4の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図14】第3の実施の形態の電源回路における要部の動作を、商用交流電源周期により示す波形図である。
【図15】第3の実施の形態の電源回路における要部の動作を、商用交流電源周期により示す波形図である。
【図16】第3の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図17】アクティブフィルタの基本的回路構成を示す回路図である。
【図18】図17に示すアクティブフィルタにおける動作を示す波形図である。
【図19】アクティブフィルタのコントロール回路系の構成を示す回路図である。
【図20】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【図21】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 制御回路、2 コントロールIC、3 力率改善回路、3A 第1の力率改善回路、3B 第2の力率改善回路、5 整流回路切換モジュール、Di(Di1、Di2) ブリッジ整流回路、Ci1,Ci2 平滑コンデンサ、Q1,Q2 スイッチング素子、PIT(PIT−1〜3) 絶縁コンバータトランス、C1一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1 一次巻線、RL リレー、S1,S2、S3 リレースイッチ、D1,D2 高速リカバリ型ダイオード、CN フィルタコンデンサ、C2 二次側並列共振コンデンサ、VFT(VFT−1〜3) 電圧帰還用トランス、NA(NAa〜NAc) 一次巻線、NB(NBa〜NBc) 二次巻線、NB1、NB2 巻線部、LFT ラインフィルタトランス、CL アクロスコンデンサ

Claims (6)

  1. 商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源のレベルに応じて、商用交流電源レベルの等倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する等倍電圧整流動作と、商用交流電源レベルの2倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する倍電圧整流動作とで切り換えが行われる整流平滑手段と、
    上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、
    上記各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
    少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスと、
    少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、
    上記各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路と、
    上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、
    上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された定電圧制御手段と、
    上記スイッチング手段によるスイッチング出力が入力される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される二次巻線とによって形成される電圧帰還用トランスと、
    上記電圧帰還用トランスの二次巻線に励起される交番電圧を利用して、上記整流平滑手段に備えられたスイッチング用ダイオードにより整流電流成分を断続して力率を改善するように構成される力率改善回路と、を備えることを特徴とするスイッチング電源回路。
  2. 上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、
    上記各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
    少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスと、
    少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、
    上記各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路と、
    上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、
    上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された定電圧制御手段と、
    から成るコンバータ部をさらに1以上備えると共に、上記コンバータ部に対しては、
    上記スイッチング手段によるスイッチング出力が入力される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される二次巻線とによって形成される電圧帰還用トランスと、
    上記電圧帰還用トランスの二次巻線に励起される交番電圧を利用して、上記整流平滑手段に備えられるスイッチング用ダイオードにより整流電流成分を断続して力率を改善するように構成される力率改善回路とが備えられている、ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  3. 上記整流平滑手段は、上記スイッチング用ダイオードとしての高速リカバリ型ダイオードによるブリッジ整流回路を備え、
    上記力率改善回路は、上記整流平滑手段に備えられる上記高速リカバリ型ダイオードにより整流電流成分を断続して力率を改善するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  4. 上記整流平滑手段における整流動作が商用交流電源のレベルに応じて倍電圧整流動作に切り換えられるのに対応して、上記ブリッジ整流回路を形成する高速リカバリ型ダイオードが、2つ1組に並列接続されるように切り換える整流電流経路切換手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源回路。
  5. 上記力率改善回路は、上記商用交流電源が正の期間に形成される整流電流経路に挿入される上記スイッチング用ダイオードとしての第1の高速リカバリ型ダイオードと、上記商用交流電源が負の期間に形成される整流電流経路に挿入される上記スイッチング用ダイオードとしての第2の高速リカバリ型ダイオードとを備えることにより、上記正の期間における整流電流を上記第1の高速リカバリ型ダイオードにより断続し、上記負の期間における整流電流を上記第2の高速リカバリ型ダイオードにより断続して力率を改善するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  6. 上記商用交流電源のレベルに応じて、上記電圧帰還用トランスの二次巻線としての巻数を切り換える巻線切換手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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