JP2004266954A - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】力率改善機能を備えるスイッチング電源回路として、電力変換効率の向上、コストダウン及び回路の小型軽量化を図る。
【解決手段】整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ(第1,第2コンバータ部101,102)を複数備える。このスイッチングコンバータは、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた複合共振形コンバータである。そして、直流入力電圧(Ei)を生成する整流回路については、倍電圧全波整流回路となるように切り換え制御を行う構成とする。力率改善は、力率改善用トランス(疎結合トランスVFT)によって、各複合共振形コンバータのスイッチング出力を整流電流経路に電圧帰還することで行う。
【選択図】 図1
【解決手段】整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ(第1,第2コンバータ部101,102)を複数備える。このスイッチングコンバータは、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた複合共振形コンバータである。そして、直流入力電圧(Ei)を生成する整流回路については、倍電圧全波整流回路となるように切り換え制御を行う構成とする。力率改善は、力率改善用トランス(疎結合トランスVFT)によって、各複合共振形コンバータのスイッチング出力を整流電流経路に電圧帰還することで行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、力率改善のための回路を備えたスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波の比較的大きい電流及び電圧に耐えることができるスイッチング素子の開発によって、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。
スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
【0003】
ところで、一般に商用電源を整流すると平滑回路に流れる電流は歪み波形になるため、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。
また、歪み電流波形となることによって発生する高調波を抑圧するための対策が必要とされている。
そこで、力率改善のための構成を付加したスイッチング電源回路が各種提案されている。このようなスイッチング電源回路の1つとして、商用交流電源ラインに対してパワーチョークコイルを直列に挿入することで、交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図るように構成した、いわゆるチョークインプット方式のものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、近年においては、テレビジョン受像機、モニタ装置としてプラズマディスプレイなどが普及してきている。このようなプラズマディスプレイに備えられる電源回路としては、例えば負荷電力600W程度の、これまでのテレビジョン受像機やモニタ装置の電源回路よりも重負荷の条件に対応することが要求される。
【0005】
図7は、プラズマディスプレイなどに搭載され、約600Wの負荷電力に対応可能な電源回路として、チョークインプット方式による力率改善機能を付加した構成例を示している。また、この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=85V〜144Vの範囲に対応する。つまり、例えばAC100V系の商用交流電源に対応する。
【0006】
この図に示す電源回路の場合には、先ず、商用交流電源ACの正/負の各ラインに対してパワーチョークコイルPCHをそれぞれ直列に挿入している。ここで、商用交流電源ACの正/負の何れか一方のラインのみではなく、両ラインにパワーチョークコイルPCHを挿入することとしているのは、負荷電力600W程度の比較的重負荷の条件に対応して充分な力率改善効果が得られるようにするためである。
このようにして、商用交流電源ACのラインに対してパワーチョークコイルPCHを挿入することで、周知のようにして、パワーチョークコイルPCHのインダクタンスの作用によって、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diを形成する整流ダイオードに流入する交流入力電流は、その高調波が抑制されることになる。つまり、交流入力電流IACの導通角が拡大されて力率改善が図られる。
【0007】
また、商用交流電源ACに対しては、2組のコモンモードチョークコイルCMCと3本のアクロスコンデンサCLを接続して形成される、コモンモードノイズフィルタが設けられる。このコモンモードノイズフィルタにより、例えばスイッチングコンバータ側から商用交流電源ACに伝わるノイズを抑制する。
【0008】
そして、商用交流電源ACラインにおいて、上記したラインノイズフィルタの後段に対しては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧半波整流回路が設けられる。この倍電圧半波整流回路は、4本の低速リカバリ型の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成るブリッジ整流回路Diと、4本の平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bを備えて形成される。
【0009】
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードは、商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDcのカソードと整流ダイオードDdのカソードは、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1A,Ci1Bの正極端子に接続される。
整流ダイオードDaのアノードと整流ダイオードDbのアノードは一次側アースに接続される。
【0010】
また、整流ダイオードDdのアノードと整流ダイオードDbのカソードの接続点は、整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードの接続点と接続される。これにより、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流は、整流ダイオードDc//Ddに並列に流れる。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流は、整流ダイオードDa//Dbに並列に流れる。
【0011】
平滑コンデンサCi1A,Ci2Aは、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。同様にして、平滑コンデンサCi1B,Ci2Bも、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。また、平滑コンデンサCi1A−Ci2Aの接続点と、平滑コンデンサCi1B−Ci2Bの接続点が互いに接続される。この接続態様では、平滑コンデンサCi1A,CiBはアッパーサイド側で並列接続されていることになる。また、平滑コンデンサCi2A,Ci2Bもローアーサイド側で並列接続の関係にある。
【0012】
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作について、図8を参照して説明する。
図8では、説明を簡単にするために、倍電圧半波整流回路の基本的な構成を示しており、図7において実際に形成されている倍電圧半波整流回路との関係としては次のようになっている。
アッパーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi1A//Ci1Bは、平滑コンデンサCi1に相当する。同様にして、ローアーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi2A//Ci2Bは、平滑コンデンサCi2に相当する。
また、整流ダイオードDi1は、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流が並列に流れる整流ダイオードDc//Ddの組に相当する。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流が並列して流れる整流ダイオードDa//Dbは整流ダイオードDi2に相当する。
【0013】
先ず、交流入力電圧VACが正極性となる期間においては、整流ダイオードDi1(Dc//Dd)が導通して整流電流i1が流れ、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
また、交流入力電圧VACが負極性となる期間においては、整流ダイオードDi2(Da//Db)が導通して整流電流i2が流れ、ローアーサイドの平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
この結果、直列接続された平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)−Ci2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流電圧が得られることになる。また、アッパーサイドの平滑コンデンサに整流電流が流れる期間は、交流入力電圧VACが正となる半波の期間であり、ローアーサイドの平滑コンデンサが流れる期間は交流入力電圧VACが負となる半波の期間である。つまり、各平滑コンデンサに対応した半波整流動作により倍電圧を得る、倍電圧半波整流動作が行われている。
【0014】
ここで、図7に示す回路において、整流電流が2本の整流ダイオードに並列に流れるように構成し、また、平滑コンデンサについて、アッパーサイドとローアーサイドとで共に2本を並列に設けているのは、約600Wという重負荷の条件に対応する必要があることによる。
つまり、重負荷の条件になるほど、整流回路系に流れる整流電流は増加する。そこで、整流電流が流れる整流ダイオード及び平滑コンデンサについて、並列接続すれば平滑コンデンサに流れる整流電流は分岐することになる。つまり、1本の整流ダイオード及び平滑コンデンサに流れる電流レベルが抑制されることとなって、これらの部品にかかる負担が軽減される。
なお、平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bについては、例えば1000μF/200Vを選定し、瞬時停電であっても商用交流電源の1周期の動作が保証されるようにしている。また、整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddについては、25A品を選定するようにしている。また、これらの整流ダイオードDa〜Ddについては、低速リカバリ型が選定される。
【0015】
そして、図7に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件に対応するために、上記整流平滑電圧Eiとしての直流入力電圧を動作電源とする電流共振形コンバータについて、複数を備えることとしている。
また、この図に示す電流共振形コンバータは、後述するようにして部分共振回路が組み合わされることで、いわゆる複合共振形コンバータとしての構成をとる。 この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの複合共振形コンバータが設けられている。
なお、ここでの複合共振形コンバータとは、スイッチングコンバータの動作を共振形とするために備えられる共振回路に加えて、さらに一次側又は二次側に対して共振回路を付加し、これら複数の共振回路を1スイッチングコンバータ内において複合的に動作させる構成のスイッチングコンバータをいう。
【0016】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータとしての構成を採る。
【0017】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
【0018】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、抵抗Rsを介して入力される整流平滑電圧Eiが電源入力端子Vccに入力されるようになっている。また、アース端子Eは一次側アースに直接接続される。
【0019】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0020】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0021】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0022】
また、コントロールIC2の起動端子Vtには、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータ(ここでは図示せず)から出力される立ち上げ信号Vt1が入力される。
コントロールIC2は、この立ち上げ信号が入力されたタイミングで起動して動作を開始するようになっている。つまり、ドライブ信号出力端子VGH、及びドライブ信号出力端子VGLからのドライブ信号出力を開始する。従って、第1コンバータ部201の動作開始タイミングは、コントロールIC2の立ち上げ信号Vt1の入力タイミングによって決定されることになる。
【0023】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0024】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
このように、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して他の共振回路が組み合わされた、複合共振形コンバータとしての形式を採っている。
【0025】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線として、2組の二次巻線N2a,N2bが互いに独立するようにして巻装される。
この場合の二次巻線N2aに対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCo1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCo1の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo1が得られる。この二次側直流出力電圧Eo1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0026】
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧Eo1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧Eo1のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0027】
また、この場合においては、二次側直流出力電圧Eo1を分岐して、二次側出力電圧Eo,Eo2を生成するように回路が形成されている。
二次側出力電圧Eoを生成する回路系は、MOS−FETによるスイッチング素子Q7、整流ダイオードDcn1,高周波ノイズ除去用のチョークコイルL11,平滑コンデンサCo、及びPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する制御回路7を図示するようにして接続した、降圧形コンバータとして形成される。
スイッチング素子Q7は、制御回路7によってスイッチング駆動されることで、二次側出力電圧Eo1をスイッチングして交番出力を得る。この交番出力は、チョークコイルL11、整流ダイオードDcn及び平滑コンデンサCoから成る半波整流回路によって整流平滑化されることになって、平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次側直流出力電圧Eoを生成する。
ここで、制御回路7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、PWM制御を実行する。これにより、スイッチング素子Q7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、スイッチング周波数は一定とされた上で、1スイッチング周期内のオン期間が可変されるようにしてスイッチング動作が制御される。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベルが一定となるように制御されることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0028】
二次側出力電圧Eo1を生成する回路系としても、MOS−FETによるスイッチング素子Q8、整流ダイオードDcn,チョークコイルL12,平滑コンデンサCo2、及び制御回路7を、上記した二次側出力電圧Eo1を生成する回路系と同様の態様により接続した、降圧形コンバータとして形成される。
従って、この場合にも、平滑コンデンサCo2の両端電圧としては、制御回路7のPWM制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo1が得られることになる。
【0029】
また、二次巻線N2bに対しては、ブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCo3から成る全波整流回路が形成されており、この全波整流回路の整流平滑動作によって、平滑コンデンサCo3の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo3を得るようにされている。
【0030】
第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1等を、上記第1コンバータ部201と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。
また、第2コンバータ部202の二次側は、二次巻線N2のセンタータップを二次側アースに接続したうえで、この二次巻線N2に対して、図示するようにして、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo4,Co5、ノイズ除去用の抵抗R1から成る両波整流回路が形成される。これにより、平滑コンデンサCo5の両端電圧として、二次側直流出力電圧Eo4が生成される。
また、第2コンバータ部202においては、制御回路7が、平滑コンデンサCo4の両端に得られる二次側整流平滑電圧のレベルに基づいて、一次側コンバータのスイッチング周波数制御を実行する結果、二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化が図られるようにされている。
また、第2コンバータ部202において、コントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3が入力される。
【0031】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1、二次巻線N2、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo6,Co7、抵抗R2を、第2コンバータ部202と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。そして、この第3コンバータ部203においても、制御回路7によるスイッチング周波数制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo5が得られる。
また、第3コンバータ部203のコントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt2が入力される。
【0032】
上記構成では、二次側から、6つの二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が得られることになるが、これら二次側直流出力電圧の用途、負荷仕様については、例えば下記のようになっている。
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
そして、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部201:75W
第2コンバータ部202:175W
第3コンバータ部203:350W
であり、総合で600Wとなる。
また、上記したような各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力に応じて、絶縁コンバータトランスについては、次のようにしてコアが選定される。
PIT−1:EER−35
PIT−2:EER−40
PIT−3:EER−42
また、降圧形コンバータにおけるチョークコイルL11,L12は、それぞれ、EE−25のフェライトコアである。
【0033】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が使用される場合においては、電源が起動して直流入力電圧(整流平滑電圧Ei(375V))が立ち上がったときに、各二次側直流出力電圧について、しかるべき順序で以て、順次立ち上がらせる必要がある。
具体的には、先ず、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにする。
【0034】
上記したような二次側直流出力電圧の立ち上げ順序とするために、マイクロコンピュータは、各コンバータ部(201,202,203)におけるコントロールIC2の起動端子Vtに対して、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力して制御を行っている。この立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3による二次側直流出力電圧の立ち上げ順序の制御動作を、図9のタイミングチャートに示す。
【0035】
ここで、図7に示す電源回路は、いわゆるメイン電源の構成であり、ここにはスタンバイ電源は示していない。マイクロコンピュータは、このスタンバイ電源が供給されているからメイン電源が起動されていない状態でも、動作することが可能である。
そして、メイン電源である図7に示す回路を起動させるために、メインスイッチSWがオフからオンに切り換えられたとすると、商用交流電源ACが回路に投入されて整流平滑電圧Eiが得られることになる。そして、この整流平滑電圧Eiが規定レベル(例えば375V)にまで上昇したことがマイクロコンピュータによって検出されると、マイクロコンピュータは、図9に示す時点t1のタイミングで、図9(a)に示すようにして、立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。これにより、立ち上げ信号Vt1が入力されている第1コンバータ部201のコントロールIC2は、時点t1からスイッチング駆動動作を開始する。そして、これに応じて、第1コンバータ部201の二次側にて得られる二次側直流出力電圧Eoは、図9(b)に示すようにして、時点t1における0レベルから上昇を開始して或る時間が経過した時点で、規定のレベル(5V)にまで上昇する。そして、以降は、降圧形コンバータによる定電圧制御動作によって、この12Vで安定化された状態を維持する。
なお、確認のために述べておくと、同じ第1コンバータ部201にて生成される残りの二次側直流出力電圧Eo1,Eo2,Eo3も、二次側直流出力電圧Eoとほぼ同じタイミングで立ち上がることになる。
【0036】
そして、立ち上げ信号Vt2は、上記のようにして、時点t1から二次側直流出力電圧Eo1が規定レベルに上昇して安定した後の時点t2において、図9(c)に示すように、Lレベルからレベルに切り換えて出力されるように設定されている。
これにより、第3コンバータ部203のコントロールICが時点t2において起動する。これに応じて、時点t2以降においては、図9(d)に示す二次側直流出力電圧Eo5が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(200V)で一定となるようにして立ち上がることになる。
【0037】
また、上記のように二次側直流出力電圧Eo5が規定レベルで安定した状態となった後の時点t3において、マイクロコンピュータは、図9(e)に示す立ち上げ信号Vt3をLレベルからHレベルに切り換える。これに応じて、第2コンバータ部202のコントロールICが時点t3において起動し、時点t3以降において、図9(f)に示す二次側直流出力電圧Eo4が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(70V)で一定となるようにして立ち上がる。
このようにして、図7に示す電源回路では、二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングをコントロールして、電源回路としての適切な起動動作を得るようにしている。
【0038】
上記図7に示す電源回路は、AC100V系のみの単レンジとしての商用交流電源入力に対応する構成とされていたのであるが、電源回路としては、例えば交流入力電圧VAC=85V〜288Vに対応するようにも構成する場合がある。つまり、AC100V系とAC200V系の両者の商用交流電源入力に対応した、いわゆるワイドレンジ対応(ワールドワイド仕様)の構成を採るものも知られている。
【0039】
そして、ワイドレンジ対応の電源回路に対して力率改善機能を与えるのにあたっては、整流回路系において、アクティブフィルタを設ける構成を採ることができる。アクティブフィルタは、PWM制御方式の昇圧型コンバータを備えて力率を1に近付けるように動作するもので、力率改善のための手段の1つとして広く知られている。(例えば特許文献2参照)。
【0040】
図10の回路図は、このようなアクティブフィルタの基本構成を示している。
この図においては、商用交流電源ACにブリッジ整流回路Diを接続している。このブリッジ整流回路Diの正極/負極ラインに対しては並列に出力コンデンサCoutが接続される。ブリッジ整流回路Diの整流出力が出力コンデンサCoutに供給されることで、出力コンデンサCoutの両端電圧として、直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷10に入力電圧として供給される。
【0041】
また、力率改善のための構成としては、図示するようにして、インダクタL、高速リカバリ型のダイオードD、抵抗Ri、スイッチング素子Q、及び乗算器11を備える。
インダクタL、ダイオードDは、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。
抵抗Riは、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子(一次側アース)と出力コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。
また、スイッチング素子Q1は、この場合には、MOS−FETが選定されており、図示するようにして、インダクタLとダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
【0042】
乗算器11に対しては、フィードフォワード回路として、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLwが接続され、フィードバック回路として電圧検出ラインLVが接続される。
乗算器11は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流レベルを検出する。
また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutの変動差分を検出する。つまり、負荷10に入力すべき直流入力電圧の変動差分を検出する。
そして、乗算器11からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
【0043】
電流検出ラインLIから乗算器11に対しては、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流が入力される。乗算器11では、この電流検出ラインLIから入力された整流電流レベルを検出する。また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Vout(直流入力電圧)の変動差分を検出する。また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
【0044】
乗算器11では、先ず、上記のようにして電流検出ラインLIから検出した整流電流レベルと、上記電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分と乗算する。そして、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した交流入力電圧の波形とによって、交流入力電圧VACと同一波形の電流指令値を生成する。
【0045】
さらに、この場合の乗算器11では、上記電流指令値と実際の交流入力電流レベル(電流検出ラインL1からの入力に基づいて検出される)を比較し、この差に応じてPWM信号についてPWM制御を行い、PWM信号に基づいたドライブ信号を生成する。スイッチング素子Qは、このドライブ信号によってスイッチング駆動される。この結果、交流入力電流は交流入力電圧と同一波形となるように制御されて、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。また、この場合には、乗算器11によって生成される電流指令値は、直流入力電圧(Vout)の変動差分に応じて振幅が変化するように制御されるため、直流入力電圧(Vout)の変動も抑制されることになる。
【0046】
図11(a)は、上記図10に示したアクティブフィルタ回路に入力される入力電圧Vin及び入力電流Iinを示している。電圧Vinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電圧波形に対応し、電流Iinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電流波形に対応する。ここで、電流Iinの波形は、ブリッジ整流回路Diの整流出力電圧(電圧Vin)と同じ導通角となっているが、これは、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diに流れる交流入力電流の波形も、この電流Iinと同じ導通角となっていることを示す。つまり、ほぼ1に近い力率が得られている。
【0047】
また、図11(b)は、出力コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)Pchgの変化を示す。出力コンデンサCoutは、入力電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、入力電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。
図11(c)は、上記出力コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。この充放電電流Ichgは、上記図11(b)の入出力エネルギーPchgの波形と同位相となっていることからも分かるように、出力コンデンサCoutにおけるエネルギーPchgの蓄積/放出動作に対応して流れる電流である。
【0048】
上記充放電電流Ichgは、入力電流Vinとは異なり、交流ライン電圧(商用交流電源AC)の第2高調波とほぼ同一の波形となる。交流ライン電圧には、出力コンデンサCoutとの間のエネルギーの流れによって、図11(d)に示すようにして、第2高調波成分にリップル電圧Vdが生じる。このリップル電圧Vdは、無効なエネルギー保存のために、図11(c)に示す充放電電流Ichgに対して、90°の位相差を有する。出力コンデンサCoutの定格は、第2高調波のリップル電流と、その電流を変調するブースト・コンバータ・スイッチからの高周波リップル電流を処理することを考慮して決定するようにされる。
【0049】
また、図12には、図10の回路構成を基として、基本的なコントロール回路系を備えたアクティブフィルタの構成例を示している。なお、図10と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子間には、スイッチングプリレギュレータ15が備えられる。このスイッチングプリレギュレータ15は、図10においては、スイッチング素子Q、インダクタL、及びダイオードDなどにより形成される部位となる。
【0050】
そして、乗算器11を含むコントロール回路系は、他に、電圧誤差増幅器12、除算器13、二乗器14を備えて成る。
電圧誤差増幅器12では、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutを、分圧抵抗Rvo−Rvdにより分圧してオペアンプ15の非反転入力に入力する。オペアンプ15の反転入力には基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ15では、基準電圧Vrefに対する分圧された直流電圧Voutの誤差に応じたレベルの電圧を、帰還抵抗Rvl、コンデンサCvlによって決定される増幅率により増幅して、誤差出力電圧Vveaとして除算器13に出力する。
【0051】
また、二乗器14には、いわゆるフィードフォワード電圧Vffが入力される。このフィードフォワード電圧Vffは、入力電圧Vinを平均化回路16(Rf11,Rf12,Rf13,Cf11,Cf12)により平均化した出力(平均入力電圧)とされる。二乗器14では、このフィードフォワード電圧Vffを二乗して除算器13に出力する。
【0052】
除算器13では、電圧誤差増幅器12からの誤差出力電圧Vveaについて、二乗器14から出力された平均入力電圧の二乗値により除算を行いい、この除算結果としての信号を乗算器11に出力する。
つまり、電圧ループは、二乗器14、除算器13、乗算器11の系から成るものとされる。そして、電圧誤差増幅器12から出力される誤差出力電圧Vveaは、乗算器11で整流入力信号Ivacにより乗算される前の段階で、平均入力電圧(Vff)の二乗により除算されることになる。この回路によって、電圧ループの利得は、平均入力電圧(Vff)の二乗として変化することなく、一定に維持される。平均入力電圧(Vff)は、電圧ループ内において順方向に送られる開ループ補正の機能を有する。
【0053】
乗算器11には、上記除算器11により誤差出力電圧Vveaを除算した出力と、抵抗Rvacを介したブリッジ整流回路Diの正極出力端子(整流出力ライン)の整流出力(Iac)が入力される。ここでは、整流出力を電圧によるのではなく、電流(Iac)として示している。乗算器11では、これらの入力を乗算することによって、電流プログラミング信号(乗算器出力信号)Imoを生成して出力する。これは、図10にて説明した電流指令値に相当する。出力電圧Voutは、この電流プログラミング信号の平均振幅を可変することで制御される。つまり、電流プログラミング信号の平均振幅の変化に応じたPWM信号が生成され、このPWM信号に基づいたドライブ信号によってスイッチング駆動が行われることによって、出力電圧Voutのレベルをコントロールするものである。
したがって、電流プログラミング信号は、入力電圧と出力電圧を制御する平均振幅の波形を有する。なお、アクティブフィルタは、出力電圧Voutのみではなく、入力電流Vinも制御するようになっている。そして、フィードフォワード回路における電流ループは、整流ライン電圧によってプログラムされるということがいえるので、後段のコンバータ(負荷10)への入力は抵抗性になる。
【0054】
図13は、ワイドレンジ対応で、約600Wの負荷電力に対応する電源回路として、上記図12に示した構成に基づくアクティブフィルタを備えて構成した例を示すものである。
この図に示す電源回路は、ワイドレンジ対応として交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲に対応する。また、アクティブフィルタの後段におけるスイッチングコンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた、複合共振形コンバータとしての構成を採る。この図に示す電源回路も、例えばプラズマディスプレイなどに搭載される。
なお、図7と同一部分に対しては同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
この図13に示す電源回路の場合、商用交流電源ACラインには、図示する接続態様により、2組のコモンモードチョークコイルCMC,CMCと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
また、この場合には、電源を起動/停止するためのメインスイッチSWを商用交流電源ACラインに直列に挿入して示している。
【0056】
商用交流電源ACの正/負のラインに対しては、それぞれ、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極入力端子と負極入力端子が共通に接続される。また、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子どうしと、負極出力端子(アース接地)どうしが接続されるようになっている。つまり、この場合には、商用交流電源ACに対して、2段のブリッジ整流回路が備えられていることになる。
【0057】
また、上記ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子と負極出力端子(一次側アース)間には、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CN,CNを図示するようにして接続して成るノーマルモードノイズフィルタ4が接続される。
【0058】
上記ノーマルモードノイズフィルタ4の後段に対して、アクティブフィルタ回路8が備えられる。
このアクティブフィルタ回路8は、図10により説明した構成に基づいているものである。つまり、ブリッジ整流回路Di1,Di2から入力される整流出力についてスイッチングを行う、PWM制御方式の昇圧型コンバータを備える。このような昇圧型コンバータは、例えばスイッチング素子と、このスイッチング素子をPWM制御方式によって駆動するためのコントロール回路系を備えて形成される。
【0059】
また、この場合のようにして、例えば負荷電力Po=600W以上の重負荷の条件に対応する場合には、昇圧型コンバータを形成するスイッチング素子を複数設け、これらを並列接続することなどが行われる。重負荷時において、特に交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れる電流が非常に高くなる。そこで、このようにして複数のスイッチング素子を並列接続することで、各スイッチング素子に流れるスイッチング電流のピークレベルは抑えられることになる。これによりアクティブフィルタ回路8としての信頼性が高められることとなる、
【0060】
また、コントロール回路系は、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成され、例えば1石のICとされる。図12に示した乗算器11、誤差電圧増幅器12、除算器13、及び二乗器14などに相当する回路部は、このコントロール回路系としてのIC内に搭載されていることになる。そして、このコントロール回路系としてのICに対して、図10及び図12にて説明したようにして、フィードバック回路系及びフィードフォワード回路系が接続され、これらの回路系からの帰還出力に基づいて、スイッチング素子をPWM制御によって駆動する。
【0061】
そして、上記構成によるアクティブフィルタ回路8内のスイッチング素子のスイッチング駆動は、図10及び図12により説明したようにして、整流出力電流の導通角が、整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるように、PWM制御に基づくドライブ信号によって行われる。整流出力電流の導通角が整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるということは、即ち、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となることであり、結果的に、力率が1に近づくように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。実際においては、負荷電力Po=600W時において、力率PF=0.995程度となる特性が得られる。
【0062】
また、この図13に示すアクティブフィルタ回路8によっては、整流平滑電圧Ei(図10では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲で定電圧化するようにも動作する。つまり、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。
上記交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲は、商用交流電源AC100V系と200V系を連続的にカバーするものであり、従って、後段のスイッチングコンバータには、商用交流電源AC100V系と200V系とで、同じレベルで安定化された直流入力電圧(Ei)が供給されることとなる。つまり、図13に示す電源回路は、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応の電源回路として構成されている。
【0063】
そして、この場合においては、アクティブフィルタ回路8の後段には、3本で1組とされる平滑コンデンサCiA,CiB,CiCが並列に接続されている。
上記平滑コンデンサ[CiA//CiB//CiC]の組は、図10及び図12における出力コンデンサCoutに相当する。従って、この場合においては、この並列接続された平滑コンデンサ[CiA//CiB//CiC]の組の両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られることになる。この整流平滑電圧Eiが、後段の各コンバータ部201、202、203に対して直流入力電圧として供給される。そして、上記もしているように、この場合の平滑コンデンサ[CiA//CiB//CiC]の両端電圧(整流平滑電圧Ei)としては、375Vで安定化されるものとなる。
【0064】
そして、この図に示す電源回路においても、前述したような重負荷の条件に対応するために、上記整流平滑電圧Eiとしての直流入力電圧を動作電源とする複数の複合共振形コンバータが備えられる。この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの複合共振形コンバータが設けられている。
なお、これら第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の構成は図7と同様であることから、ここでの説明は省略する。
【0065】
【特許文献1】
特開平7−263262(図19)
【特許文献2】
特開平6−327246号公報(図11)
【0066】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図7及び図13に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、図7の電源回路において力率改善のために備えられるパワーチョークコイルPCHは、例えば珪素鋼板のコアと、銅線による巻線とによって構成される。このため、コアの鉄損と、銅線の抵抗による銅損が生じ、その分、このパワーチョークコイルPCHの部分での電力損失が増加することになる。
また、チョークコイルのインダクタンスと抵抗成分によって、交流入力電圧VACの電圧降下も生じることになる。特に負荷電力600に近い重負荷の条件では60V以上低下する。これにより、交流入力電圧VACを整流して得られる直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)も低下することになる。
このようなことから、直流入力電圧を入力して動作する複合共振形コンバータとしての電力変換効率は低下して、交流入力電力も増加することとなる。
【0067】
例えば図7に示す電源回路の場合、パワーチョークコイルPCHの挿入によって、重負荷時においても力率PFは0.55から0.75に改善されるが、負荷電力Po=600W時における総合的な電力変換効率ηAC→DCは、交流入力電圧VAC=100V時では、85.9%にまで低下する。また、交流入力電力Pinは、698.4Wであり、そのうち98.4Wが電力損失分に相当する。
【0068】
また、パワーチョークコイルPCHは、電源回路を構成する部品の中でも大型で重量があることから、基板における占有面積が大きく、また、回路基板も重量化してしまうという問題を有している。さらに、パワーチョークコイルPCHは、漏洩磁束の発生も比較的大きい部品となるが、部品の配置や、漏洩磁束量などの条件によっては、パワーチョークコイルPCHの漏洩磁束が負荷側に影響を与える場合がある。このような場合には、パワーチョークコイルPCHから輻射する漏洩磁束を抑える対策として、磁気シールドなどの部品を追加することになり、基板の大型化、重量化が助長されてしまうことがある。
【0069】
また、図7に示す回路の場合においては、必要数の二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を得るのに、第1、第2、及び第3コンバータ部201,202,203による、3段の複合共振形コンバータを備えているが、このようにして、電力変換の段数が多いことによっても、電力変換効率の低下を招いている。また、構成部品点数もそれだけ多くなって回路基板サイズが拡大し、コストアップにもつながる。
【0070】
さらに、図7に示す回路としては、3組の複合共振形コンバータに加えて、2組の降圧形コンバータを備えていることになるので、これらのスイッチングノイズも無視できない程度に大きなものとなる。特に、降圧形コンバータはハードスイッチング動作であるから、スイッチングノイズ発生量は多い。
【0071】
さらに、スイッチング周波数については、第1〜第3コンバータ部201〜203における複合共振形コンバータは、70KHz〜150KHzの範囲であるのに対して、第1コンバータ部201における降圧形コンバータは、例えば100KHzとなる。
このようにして、各スイッチングコンバータにおけるスイッチング周波数が異なる場合においては、1次側と二次側のアース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0072】
また、アクティブフィルタを備えて力率改善を図るようにされた、図13に示す電源回路では、次の問題を有する。
図13に示す電源回路における電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータ(第1、第2、第3コンバータ部201,202,203)のDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
【0073】
ここで、第1、第2、第3コンバータ部201,202,203におけるDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)は、95%程度である。
また、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は、交流入力電圧VAC=100V時では、93%、交流入力電圧VAC=230W時では95%となる。
従って、総合電力変換効率としては、交流入力電圧VAC=100V時では、
93%×95%=88.3%
となる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、
95%×95%=90.2%
となる。
また、これに対応して、交流入力電力は、交流入力電圧VAC=100V時では679.5W、交流入力電力230V時では、665.2Wとなる。
つまり、交流入力電圧VAC=230V(AC100V系)時に対して、交流入力電圧VAC=100V(AC200V系)時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0074】
また、図13に示す回路では、負荷電力Po=600W以上の条件のもとで、上記した電力変換効率の特性を下回ることが無いように、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)ついては、例えば交流入力電圧VAC=100V〜230Vの範囲で、94%〜97%で維持されるように設計する必要がある。
また、図7の回路と同じように3組の複合共振形コンバータと2組の降圧形コンバータを備えているが、図13に示す回路では、さらに、アクティブフィルタ回路8における昇圧型コンバータが追加されることになる。この昇圧型コンバータのスイッチング動作も、dv/di,di/dtによるもので、ハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きい。このようなことから、より重度のノイズ抑制対策が必要となる。
【0075】
このため、図13に示す電源回路としては、先ず商用交流電源ACを整流する整流回路系において、ブリッジ整流回路Di1,Di2の2組を備えている。
また、アクティブフィルタ回路8内には、複数組のパワーチョークコイルを備える必要がある。さらに、スイッチングのための半導体素子については、複数組のスイッチング素子(トランジスタ、ダイオード等)を並列接続したうえで、これらが適正に駆動されるように駆動回路を付加する必要がある。そして、これらの半導体素子に対しては、大型の放熱板を取り付ける必要もある。
また、図13に示す回路としても、商用交流電源ACのラインに対して、2組のコモンモードチョークコイルと、3組のアクロスコンデンサによるラインノイズフィルタを形成している。つまり、2段以上のラインノイズフィルタを必要としている。
さらに、整流出力ラインに対しては、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサCNから成るノーマルモードノイズフィルタ4を設けている。さらに、アクティブフィルタ回路8内においては、スイッチング素子に対して、RCスナバ回路を設けるなどの必要性も出てくる。特に、図13の回路のように重負荷に対応する場合、RCスナバ回路を形成する抵抗は、セメント抵抗であり大型である。
このようにして、実際の回路としては、非常に多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
【0076】
また、図13に示すスイッチング電源回路では、アクティブフィルタ回路8における昇圧型コンバータ、第1〜第3コンバータ部201〜203を形成する複合共振形コンバータ、第1コンバータ部201に付加される降圧形コンバータの、3種のスイッチングコンバータが混在していることになる。
この場合において、アクティブフィルタ回路8の昇圧型コンバータのスイッチング周波数は50KHzであるのに対して、前述もしているように、第1〜第3コンバータ部201〜203における複合共振形コンバータのスイッチング周波数は70KHz〜150KHzの範囲であり、第1コンバータ部201における降圧形コンバータは、例えば100KHzのスイッチング周波数である。
従って、この場合にも、各スイッチングコンバータにおけるスイッチング周波数が異なることで、一次側と二次側のアース電位が干渉する問題が生じていることになる。
【0077】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は上記した課題を考慮してスイッチング電源回路として次のようにして構成することとした。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源の2倍に対応するとされるレベルの上記整流平滑電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路を備える整流回路と、上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。
そして、上記複数のスイッチングコンバータ部の各々は、直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスを備える。また、少なくとも、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路を備える。また、各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。また、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、1以上の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧のレベルに応じてスイッチング駆動手段を制御して、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、所要の1つの二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された周波数制御型定電圧制御手段を備える。また、直流出力電圧生成手段により複数の二次側直流出力電圧が生成される場合において、周波数制御型定電圧制御手段により定電圧制御される以外の、定電圧化を必要とする所要の二次側直流出力電圧ごとに対応して設けられるもので、制御巻線と被制御巻線が巻装された可飽和リアクトルとしての制御トランスの上記被制御巻線を、二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路に挿入し、入力された二次側直流出力電圧レベルに応じて、制御巻線に流すべき制御電流レベルを可変して上記被制御巻線のインダクタンスを可変することで、この二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成されたインダクタンス制御型定電圧制御手段と、力率を改善する力率改善回路とを備える。
また、上記力率改善回路は、一次側直列共振回路に対して直列に挿入される力率改善用一次巻線と、整流平滑手段として形成される整流電流経路に挿入される力率改善用二次巻線とを巻装し、これら力率改善用一次巻線と力率改善用二次巻線とが疎結合となるようにして構成される力率改善用トランスと、整流電流経路の所要部位に挿入され、力率改善用一次巻線によって力率改善用二次巻線に励起された交番電圧に基づいてスイッチング動作を行うことで整流電流を断続する整流ダイオード素子とを備えて形成することとした。
【0078】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路は、重負荷の条件に対応するのにあたって、整流平滑電圧(直流入力電圧)を入力して動作する複数のスイッチングコンバータ部を複数備えることができる。
そして、各スイッチングコンバータ部としては、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分電圧共振回路を組み合わせた構成を採っていることになる。
また、力率改善は、疎結合による力率改善用トランスによって、複合共振形コンバータのスイッチング出力を整流電流経路に電圧帰還して、整流ダイオードにより整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図る構成が採られる。
そして、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、商用交流電源レベルに応じて倍電圧全波整流整流回路を備えることとしている。
これにより、例えば力率改善回路を備える電源回路としてワイドレンジ対応の構成とするのにあたっては、スイッチングコンバータへの直流入力電圧の安定化を図るアクティブフィルタを備える必要は無いこととなる。
また、二次側直流出力電圧を複数出力する場合においては、一次側のスイッチング手段のスイッチング周波数を制御する周波数制御型と、二次側に備えられる制御トランスにより、二次巻線に接続された被制御巻線のインダクタンスを可変制御するインダクタンス制御型とを組み合わせるようにされている。例えばこれにより、二次側直流出力電圧を安定化するために降圧形コンバータなどのハードスイッチング回路を設ける必要はなくなる。
【0079】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図7に示した回路と同様に、負荷電力Po=600W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系(AC85V〜144V)の単レンジで動作する構成を採る。
【0080】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2組のアクロスコンデンサCLから成るラインノイズフィルタが備えられる。つまり、この場合には、コモンモードノイズを除去するラインノイズフィルタとしては1段のみが設けられる。
【0081】
また、このラインノイズフィルタの後段における商用交流電源ACの正/負の各ラインに対しては、それぞれチョークコイルLN,LNが直列に挿入される。そして、チョークコイルLN,LNと、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子/負極入力端子との接続点間に対して、2本の並列接続されたフィルタコンデンサCN//CNが接続される。
これらチョークコイルLN,LN及びフィルタコンデンサCN//CNによっては、ノーマルモードノイズフィルタ4が形成され、商用交流電源の整流電流経路に発生するノーマルモードノイズを抑制する。このノーマルモードノイズフィルタ4は、力率改善回路3の一部となる。
【0082】
そして、本実施の形態の電源回路では、商用交流電源ACに対して、整流回路系を含んで形成される力率改善回路3が接続される構成を採る。この力率改善回路3は、図示するようにして、高速リカバリ型の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成るブリッジ整流回路Di、平滑コンデンサCiA,CiB,CiC、フィルタコンデンサCN//CN、及び疎結合トランス(力率改善用トランス)VFT−1,VFT−2を備えて形成される。疎結合トランスVFT−1は、第1コンバータ部101に対応して備えられ、疎結合トランスVFT−2は、第2コンバータ部102に対応して備えられる。
【0083】
そして、本実施の形態において、上記力率改善回路3に含まれる整流回路としては倍電圧全波整流回路が形成される。この倍電圧全波整流回路は、上記力率改善回路3を形成する部位のうち、ブリッジ整流回路Di(整流ダイオードDa,Db,Dc,Dd)、及び3本の平滑コンデンサCiA,CiB,CiCから成る。
整流ダイオードDaのアノードと、整流ダイオードDdの接続点は、疎結合トランスVFT−1の二次巻線N12の直列接続を介して、商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDbのアノードと整流ダイオードDcのカソードは、商用交流電源ACの負極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDbのカソードは、平滑コンデンサCiA,Cicの正極端子に対して接続される。
整流ダイオードDd,Dcの各アノードは一次側アースに接続される。
【0084】
また、倍電圧全波整流回路の平滑回路系としては、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCを、並列に接続して形成している。
つまり、平滑コンデンサCiAの負極端子と平滑コンデンサCiBの正極端子を接続した上で、平滑コンデンサCiAの正極端子を、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続する。
また、直列接続された平滑コンデンサCiA−CiBの接続点は、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)に対して接続している。
また、平滑コンデンサCiCの正極端子は、平滑コンデンサCiAの正極端子と同じく、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続される。
平滑コンデンサCiB,CiCの負極端子は、共に一次側アースに対して接続される。
【0085】
上記のようにして形成される倍電圧全波整流回路の動作について、図3を参照して説明する。図3には、図1から倍電圧全波整流回路を形成する回路部分を抜き出して示している。また、この図では、説明を簡単にするために、整流ダイオードDa,Ddの接続点と商用交流電源ACの正極ライン間に挿入される、疎結合トランスVFT−1の二次巻線N12は省略している。
【0086】
先ず交流入力電圧VACが正極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDa,Dcが導通する。これにより、図3(a)に示すようにして、商用交流電源ACの正極ライン側から流れる整流電流i1は、先ず、整流ダイオードDaを流れる。そして、この後において、整流電流i1は、平滑コンデンサCiAに流れる整流電流i1aと平滑コンデンサCiCに流れる整流電流i1bとに分岐する。
平滑コンデンサCiAに流入した整流電流i1aは、そのまま商用交流電源ACの負極ラインに流入する。平滑コンデンサCiCに流入した整流電流i1bは、一次側アースを介して整流ダイオードDcを流れた後、商用交流電源ACの負極ラインに流れる。つまり、整流電流i1a,i1bは、商用交流電源ACの負極ライン側で合流し、整流電流i1(=i1a+i1b)として流れる。
このような整流電流の経路によって、平滑コンデンサCiAと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積される。
【0087】
また、交流入力電圧VACが負極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDb,Ddが導通する。これにより、図3(b)に示すようにして、商用交流電源ACの負極ライン側から流れる整流電流i2は、先ず、平滑コンデンサCiBに流れる整流電流i2aと、整流ダイオードDbに流れる整流電流i2bとに分岐する。
整流電流i2aは、平滑コンデンサCiBに流入した後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。また、整流電流i2bは、平滑コンデンサCiCを流れた後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。この場合も、整流電流i2a,i2bは、商用交流電源ACの正極ライン側で合流し、整流電流i2(=i2a+i2b)として流れることになる。
そして、上記した整流電流経路によっては、平滑コンデンサCiBと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積されることとなる。
【0088】
ここで、平滑コンデンサCiA,CiBの各々に対しては、交流入力電圧VACが正/負となる各半周期において、交流入力電圧VACに対応する電位による充電が行われる。このため、平滑コンデンサCiA,CiBのそれぞれの両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧(直流電圧)が得られる。従って、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
このため、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路に対して並列接続される平滑コンデンサCiCに対する充電により得られる両端電圧としても、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
【0089】
このような動作の結果、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCとの並列接続により形成される平滑回路部の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが得られることになる。また、平滑コンデンサCiCに対する整流平滑動作としては、交流入力電圧VACが正/負極性の両期間により充電が行われる全波整流動作が得られている。つまり、倍電圧全波整流動作が得られているものである。
なお、このような整流回路系を含んで形成される本実施の形態の力率改善回路3による力率改善動作については後述する。
【0090】
図1に示す回路において、上記した平滑回路部(平滑コンデンサ[CiA−CiB]//CiC)の両端電圧として得られる直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を入力して動作するスイッチングコンバータとしては、図示するようにして第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の2つが備えられる。これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)に対して並列となるようにして接続される。
また、これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、それぞれ他励式のハーフブリッジ方式による電流共振形コンバータに対して、一次側部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータとしての構成を採る。また、第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、それぞれ、電圧帰還方式による力率改善回路3を形成する疎結合トランスVFT−1,VFT−2を備えることで力率改善を図るようにも構成される。
【0091】
ここで、第1コンバータ部101の構成について説明する。
この第1コンバータ部101は、上記もしているように、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。このスイッチング素子Q1,Q2のハーフブリッジ結合による回路は、整流平滑電圧Eiに対して並列に接続される。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0092】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0093】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、整流平滑電圧Eiが抵抗Rsを介して電源入力端子Vccに入力されている。
また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0094】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートに印加される。また、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるドライブ信号は、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートに印加される。
【0095】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2に対しては、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が備えられる。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるように、レベルシフトされる。
【0096】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0097】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号が印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図4(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図4(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0098】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図4(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図4(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図4(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0099】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCpにおける充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0100】
絶縁コンバータトランスPIT−1はスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と、所要数の二次巻線が巻装される。
絶縁トランスPIT−1の一次巻線N1の一端は、この場合、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に対して、一次側直列共振コンデンサC1と疎結合トランスVFT−1の一次巻線N11の直列接続を介して接続される。また、他端は、一次側アースに接続される。
【0101】
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPIT−1のリーケージインダクタンスL1によっては、一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0102】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す第1コンバータ部101は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採っている。
【0103】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPIT−1の構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線をEE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
【0104】
この場合の絶縁コンバータトランスPITにおいては、二次巻線N2,N2A,N2Bの3つの二次巻線がそれぞれ独立するようにして巻装される。
先ず、二次巻線N2からは、二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2を生成するようにされており、このうち、二次側直流出力電圧Eoを生成するための回路系は次のようになる。
つまり、二次巻線N2に形成したタップ出力を二次側アースに接地させた上で、このタップ出力をセンター位置とした所定の巻数分の位置から、1つずつ両端タップを引き出す。そして、各両端タップに対して、直交型制御トランスPRT−1の被制御巻線NR1,NR2の直列接続を介して整流ダイオードDo1、Do2を接続し、また、平滑コンデンサCoを接続することで、両波整流回路を形成する。この両波整流回路によって、平滑コンデンサCoの両端電圧として二次側直流出力電圧Eoが得られる。
ここで、二次側直流出力電圧Eoは、安定化のために、分岐して制御回路7に対して入力される。
【0105】
直交型制御トランスPRT−1は、例えば制御巻線Ncに対して、被制御巻線NR1,NR2の巻方向が直交する関係となるようにして、制御巻線Nc及び制御巻線NR1,NR2をコアに巻装して構成される。このようにして構成される直交型制御トランスPRT−1は、可飽和リアクトルとなる。
この場合の制御回路7では、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、そのレベルを可変した直流電流を制御電流として出力する。この制御電流レベルの変化に応じて、可飽和リアクトルである直交型制御トランスPRT−1では、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが可変される。被制御巻線NR1,NR2は、二次側直流出力電圧Eoのための整流回路系において直列に挿入されているので、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが変化すれば、平滑コンデンサCoに流入する整流電流量が変化することになって、二次側直流出力電圧Eoのレベルが変化することになる。このようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを可変制御することで定電圧制御が行われることになる。
【0106】
また、二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系は、図示するようにして、二次巻線N2の一方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−2の被制御巻線NR−整流ダイオードDo3を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo1を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系においても、直交型制御トランスPRT−2及び制御回路7を備えることで、上述のようにして、二次側直流出力電圧Eo1についての定電圧化が図られる。
【0107】
また、二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系も、二次巻線N2の他方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−3の被制御巻線NR−整流ダイオードDo4を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo2を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系としても、直交型制御トランスPRT−3及び制御回路7を備えており、二次側直流出力電圧Eo2についての定電圧化が図られる。
【0108】
また、二次側直流出力電圧Eo3は、二次巻線N2Aに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Aのセンタータップを0電位に接続した上で、整流ダイオードDo5,Do6及び平滑コンデンサCo3から成る。
そして、両波整流回路に対しては、直交型制御トランスPRT−4の被制御巻線NR1,NR2が図示するようにして直列に挿入され、制御回路7は二次側直流出力電圧Eo3に応じたレベルの制御電流を直交型制御トランスPRT−4の制御巻線Ncに対して出力するようにされている。つまり、二次側直流出力電圧Eo3についての定電圧化が図られるようになっている。
【0109】
さらに、二次側直流出力電圧Eo4については、二次巻線N2Bに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Bのセンタータップを二次側アースに接続するとともに、整流ダイオードDo7,Do8及び平滑コンデンサCo5を接続して、先ずは、直流電圧E4を得るようにされ、この直流電圧E4のラインと、平滑コンデンサCo6の間に、DCスイッチ回路6のトランジスタQ5を直列に挿入して形成される。二次側直流出力電圧Eo4は、平滑コンデンサCo6の両端電圧として得られる。
【0110】
この二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化は、スイッチング周波数制御方式によって行われる。つまり、二次側直流出力電圧Eo4は分岐して、検出電圧として制御回路1に入力される。制御回路1では、二次側直流出力電圧Eo4のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力として、第1コンバータ部101内のコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。このコントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになる。この結果、二次側直流出力電圧Eo4のレベルが一定となるように定電圧制御が行われる。
【0111】
DCスイッチ回路6は、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3に応じて、二次側直流出力電圧Eo4の立ち上げタイミングをコントロールするために設けられる。
このDCスイッチ回路6は、図示するようにして、MOS−FETのトランジスタQ5、バイポーラのトランジスタQ6、ツェナーダイオードDZ、抵抗R1,R2,R3,R4、及び時定数コンデンサC3を図示するようにして接続して形成される。
つまり、トランジスタQ5のドレインを平滑コンデンサCo5の正極端子と接続し、ソースを平滑コンデンサCo6の正極端子と接続する。トランジスタQ5のゲートは、抵抗R2を介してトランジスタQ6のコレクタに接続される。また、トランジスタQ5のゲート−ドレイン間には、抵抗R1//ツェナーダイオードDZの並列回路が接続される。ここでは、ツェナーダイオードDZのアノードがトランジスタQ5のゲート側で、カソードがドレイン側となるようにされる。
トランジスタQ6のベースには抵抗R4を介した立ち上げ信号Vt3が、オン/オフ制御信号として入力されるようになっている。また、トランジスタQ6のベース−エミッタ間には、抵抗R3が挿入される。トランジスタQ6のエミッタは二次側アースに接続される。
そして、時定数コンデンサC3は、正極端子をトランジスタQ6のベースに接続し、負極端子を二次側アースに接続するようにされる。この時定数コンデンサC3には、例えば電解コンデンサが用いられる。
また、この場合には、DCスイッチ回路6に入力されるオン/オフ制御信号として、第2コンバータ部102の二次側直流出力電圧Eo5を入力するようにしている。
【0112】
このような構成では、二次側直流出力電圧Eo5がオン/オフ制御信号として入力開始される時点から、トランジスタQ6が完全にオン状態となる時点について、抵抗R4と時定数コンデンサC3の時定数に応じて設定された所定の遅延時間が与えられることになる。
【0113】
ここで、オン/オフ制御信号である二次側直流出力電圧Eo5が0レベルである場合、トランジスタQ6はオフ状態を維持するが、このときには、トランジスタQ5におけるゲート−ソース間電圧が閾値を満たさないことから、トランジスタQ5もオフとなる。このため、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子とは接続されないことになって、平滑コンデンサCo6への整流電流の充電は行われないことになる。このため、平滑コンデンサCo5の両端に直流電圧E4が得られているとしても、平滑コンデンサCo6の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo4は0レベルのままである。
これに対して、二次側直流出力電圧Eo5が所定レベルにまで立ち上がって所定の正極レベルが得られると、上記抵抗R4と時定数コンデンサC3の時定数に応じて設定された遅延時間を経過した後に、トランジスタQ6は完全なオン状態に切り換わって、抵抗R2の両端に電位を生じさせる。
これによって、ツェナーダイオードDZのアノードは、トランジスタQ6のコレクタ−エミッタを介して二次側アースに対して接続されることとなって、直流電圧E4によって導通することになる。ツェナーダイオードDZが導通することによっては、トランジスタQ5のゲートに対して閾値を満たすレベルのゲート電圧が印加されることになって、トランジスタQ5もオンとなる。これにより、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子が接続されることとなって、平滑コンデンサCo6で整流電流が充放電される。これにより、二次側直流出力電圧Eo4が発生することになる。
【0114】
第2コンバータ部102は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1、二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1、疎結合トランスVFT−2、第1コンバータ部101と同様にして接続している。これにより、一次側スイッチングコンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータと、部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータを形成している。
【0115】
また、この場合の第2コンバータ部102の二次側においては、DCスイッチ回路6Aを備えた両波整流回路が形成されている。
この両波整流回路は、先ず、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次巻線N2に設けたセンタータップを二次側アースに接地したうえで、図示するようにして、整流ダイオードDo9,Do10、及び平滑コンデンサCo7を接続している。
そして、DCスイッチ回路6Aを形成するMOS−FETのトランジスタQ7のドレイン−ソースを介して、平滑コンデンサCo7と、平滑コンデンサCo8の正極端子が接続されている。
先ず、整流ダイオードDo9,Do10、及び平滑コンデンサCo7から成る整流回路により両波整流が行われることで、平滑コンデンサCo7の両端電圧として直流電圧E5が得られる。このとき、DCスイッチ回路6AにおいてトランジスタQ7がオン状態にあるとすると、この直流電圧E5による平滑コンデンサCo8への充電が行われ、平滑コンデンサCo8の両端電圧として、二次側直流出力電圧Eo5が得られることになる。
この二次側直流出力電圧Eo5に対する定電圧制御としては、制御回路1が直流電圧E5を入力して、コントロールIC2に出力を行っていることからも分かるように、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御方式により行われる。
【0116】
DCスイッチ回路6Aは、MOS−FETのトランジスタQ7、バイポーラのトランジスタQ8、ツェナーダイオードDZ、抵抗R8,R9,R10、時定数コンデンサC8を、DCスイッチ回路6の場合とほぼ同様に接続して形成される。従って、このDCスイッチ回路6Aとしても、オン/オフ制御信号の入力が開始されてからトランジスタQ7が完全にオンとなるまでの時間について、抵抗R8と時定数コンデンサC8の時定数に応じた遅延が与えられる。そして、DCスイッチ回路6Aにおいては、オン/オフ制御信号として、第1コンバータ部101側で生成される二次側直流出力電圧Eoが入力される。
【0117】
図7の回路で説明したようにして、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号はVt1,Vt2,Vt3の3つとされているが、図1に示す電源回路が使用する立ち上げ信号はVt1のみとされている。この場合、立ち上げ信号Vt1は、第1コンバータ部101のコントロールIC2の起動端子Vtに入力するようにしている。
【0118】
続いて、上記のようにして構成される図1に示す電源回路における力率改善のための構成について説明する。
この図に示す回路においては、力率改善のために力率改善回路3が備えられる。この力率改善回路3は、商用交流電源ACを整流平滑化する整流回路系に対して、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を電圧帰還する構成を採る。そして、この場合においては、スイッチング出力を電圧帰還するための手段として、疎結合トランスVFT−1、VFT−2を備える。
【0119】
ここで、疎結合トランスVFT(VFT−1、VFT−2)の構造例を図5に示しておく。
この図に示すように、疎結合トランスVFTは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアを備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N11が巻装される。また、他方の巻装部に対して二次巻線N12が巻装される。このようにして一次巻線及び二次巻線が巻装されたボビンBを上記EE型コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE型コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにして疎結合トランスVFT全体としての構造が得られる。
また、この場合には、中央磁脚の接合部分に対して所要のギャップ長のギャップGを形成するようにしており、これにより、結合係数について0.75以下となる疎結合の状態が得られるようにしている。
【0120】
そして、力率改善回路3による力率改善動作としては次のようになる。
先ず、説明を分かりやすくするため、第1コンバータ部101側のみによる力率改善動作について述べる。
第1コンバータ部101に備えられる疎結合トランスVFT−1においては、一次巻線N11に対して、第1コンバータ部101における一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力が伝達される。これに応じて、疎結合トランスVFTの二次巻線N12には、交番電圧が励起されることになる。
ここで、疎結合トランスVFTの二次巻線N12は、商用交流電源ACの正極ラインと、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Ddの接続点との間に挿入されている。つまり、疎結合トランスVFTの二次巻線N12は整流電流経路に挿入されていることになる。疎結合トランスVFTによっては、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を整流電流経路に電圧帰還する動作が得られることになる。
【0121】
上記のようにして整流電流経路に対してスイッチング出力が電圧帰還されることで、先に図3により説明したようにして、ブリッジ整流回路Diを形成する高速リカバリ型の整流ダイオード(Da〜Dd)に整流電流が流れるとき、これらの整流ダイオードでは、疎結合トランスVFTの二次巻線N12に励起された交番電圧によって、スイッチング動作を行うように駆動される。
これにより、整流ダイオードに流れる整流電流は、スイッチングにより断続されることになり、整流電流としては交番波形となる。つまり、交流入力電流IACを源として流れる整流電流について高周波成分が重畳される。
このようにして整流電流が断続されることで、整流出力電圧レベルが整流平滑電圧Eiのレベルよりも低いとされる期間にも平滑コンデンサCiへの充電電流が流れるようにされる。
この結果、交流入力電流の平均的な波形が交流入力電圧の波形に近付くようにされることで、交流入力電流IACの導通角が拡大される。このようにして、交流入力電流IACの導通角が拡大される結果、力率改善が図られることになる。
【0122】
そして、図1に示す力率改善回路3の実際としては、第2コンバータ部102の疎結合トランスVFT−2も備えた構成となっている。
ここで、疎結合トランスVFT−2の二次巻線N12は、第1コンバータ部101の疎結合トランスVFT−2の二次巻線N12に対して並列に接続されている。従って、上記した整流電流経路においては、実際には、疎結合トランスVFT−1,VFT−2の各二次巻線N12//N12の並列回路に整流電流が流れることになり、二次巻線N12//N12の並列回路が整流電流経路内に含まれることになる。
これは、疎結合トランスVFT−1,VFT−2によって、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の両方のスイッチング出力を整流電流経路に帰還するように構成していることを意味する。
つまり、本実施の形態では、第1コンバータ部101に対応しては疎結合トランスVFT−1により電圧帰還して力率改善を図り、また、第2コンバータ部102に対応しては疎結合トランスVFT−2により電圧帰還して力率改善を図る構成を採っているものである。なお、疎結合トランスVFT−1,VFT−2の各一次巻線N11、二次巻線N12のインダクタンス値については、例えば、力率PF=0.8程度が得られるようにして選定を行うようにされる。
【0123】
また、図1に示す電源回路の構成によると、第1コンバータ部101において、二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo4の5つの二次側直流出力電圧を生成し、第2コンバータ部102において二次側直流出力電圧Eo5を生成するようにしている。
つまり、本実施の形態としても、図7にて説明した先行技術の場合と同様にして、
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
を得るようにされている。
但し、本実施の形態においては、第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の、2つのコンバータ部によって上記6つの負荷(二次側直流出力電圧)をまかなうこととしており、従って、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部101:250W
第3コンバータ部102:350W
となって、これにより総合で600Wとなるようにしている。
【0124】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を生成して負荷に供給する構成の下では、図7においても説明したように、電源起動時において、二次側直流出力電圧についてしかるべき順序で以て立ち上がらせる必要がある。つまり、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにすることが要求される。
【0125】
このような二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御について、図6を参照して説明する。
ここで、二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御のため、図1においては図示していないマイクロコンピュータからは、立ち上げ信号(起動制御信号)Vt1,Vt2,Vt3を出力可能とされている。しかしながら、前述もしたように、図1に示す回路において、二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御のために、利用する立ち上げ信号は、最も早いタイミングの立ち上げ信号Vt1のみである。なお、ここでいうマイクロコンピュータとは、図1に示す電源回路が搭載される機器に備えられているものとされる。そして、図1に示す電源回路は、メイン電源であり、このメイン電源がオフとなっているときには、マイクロコンピュータは、ここでは図示していないスタンバイ電源によって動作している。従って、メイン電源が立ち上がっていなくとも、スタンバイ電源によって動作しているために、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力することは可能とされている。
【0126】
立ち上げ信号Vt1は、第1コンバータ部101のコントロールIC2における起動端子Vtに対して入力されるようになっている。
マイクロコンピュータは、メイン電源がオンとなったことを認識すると、図6(a)に示すように、時点t1とされる所定のタイミングにより立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。これに応じて、図6(b)に示すように、第1コンバータ部101も時点1から起動することとなって、二次側直流出力電圧Eoが立ち上がることになる。
【0127】
また、この時点t1に対応しては、同じ第1コンバータ部101の二次側にて得られる二次側直流出力電圧も立ち上がることになる。ただし、この場合にも、二次側直流出力電圧Eo4については、図6(h)に示すように、時点t1において立ち上がることはない。その前段の直流出力電圧E4は、図6(c)に示すように第1コンバータ部101の起動に応じて時点t1から立ち上がる。
【0128】
また、立ち上げ信号Vt1がHレベルとなる時点t1は、ほぼメイン電源のオン時点に対応している。この図に示す第2コンバータ部102の起動端子には、立ち上げ信号が入力されることなくオープンとなっている。この場合には、電源入力端子Vccから入力される起動時の電圧に応じて、コントロールIC2が動作を開始することになる。
このため、第2コンバータ部102も、時点t1とほぼ同じタイミングでスイッチング動作を開始するようにして起動することになる。そして、これに応じては、図6(d)に示すように、第2コンバータ部102の二次側に備えられる平滑コンデンサCo7の両端電圧である直流電圧E5も、ほぼ時点t1から立ち上がることになる。ただし、この時点では、DCスイッチ回路6AのトランジスタQ7はオフ状態となっているので、平滑コンデンサCo8の両端電圧となる二次側直流出力電圧Eo5は、図6(f)に示すように立ち上がってはいない。
【0129】
ここでは、二次側直流出力電圧Eoが、時点t1から或る時間経過した時点t1Aにおいて規定レベルに達した状態となる。これに応じて、オン/オフ制御信号として二次側直流出力電圧Eoが入力される、第2コンバータ部102のDCスイッチ回路6Aでは、例えばこの時点t1Aのタイミングで、図6(e)に示すようにしてトランジスタQ8のベース電圧が徐々に上昇していくようにされる。このベース電圧の上昇の傾きは、抵抗R8と時定数コンデンサC8の時定数によって決定される。
そして、例えば時点t2において、トランジスタQ8のベース電圧が所定レベルにまで至ったとされると、このときにトランジスタQ8が完全にオン状態とされることになる。そして、このときにはトランジスタQ7も完全にオンとなる状態が得られており、図6(d)に示す平滑コンデンサCo7の両端電圧である直流電圧E5が、トランジスタQ7を介して、平滑コンデンサCo8に供給されることになる。これにより、平滑コンデンサCo8の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo5は、図6(f)に示すようにして、時点t2から立ち上がるようにされる。
【0130】
そして、上記のようにして時点t2において立ち上がった二次側直流出力電圧Eo5は、第1コンバータ部101側のDCスイッチ回路6に対してオン/オフ制御信号として入力されることになる。
これに応じて、DCスイッチ回路6では、図6(g)に示すようにして、抵抗R4と時定数コンデンサC3の時定数によって決定される時間で以て、トランジスタQ6のベース電圧が上昇していく動作が得られる。
そして、例えば時点t3において、トランジスタQ6のベース電圧が所定レベルにまで至って完全にオン状態になったとされると、トランジスタQ5も完全にオンとなる状態が得られることになる。この結果、図6(c)に示す直流電圧E4が、トランジスタQ5を介して、平滑コンデンサCo6に供給されることになる。これにより、平滑コンデンサCo6の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo4は、図6(h)に示すようにして、時点t3から立ち上がることになる。
このようにして、図1に示す電源回路においては、図7の回路と同様の、二次側直流出力電圧の立ち上げタイミングが得られるようにされている。
【0131】
なお、参考までに、図1に示す電源回路において備えられる各トランスのコアの形状サイズについて記しておく。
PIT−1:EER−40
PIT−2:EER−42
VFT−1,VFT−2:EE−28
PRT:フェライトコア(15mm×15mm×20mm)
【0132】
このようにして構成される図1に示す本実施の形態の電源回路と、先行技術として示した図7の回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、実験結果によると、図7に示した電源回路では、力率PF>0.75となるのは、負荷電力Po600W〜500Wの範囲である。これに対して、図1に示す回路では負荷電力Po600W〜100Wの範囲で、力率PF>0.75となる特性が得られ、例えば国内高調波歪み規制をクリアする範囲が拡大されることになる。
【0133】
また図1に示す回路では、パワーチョークコイルPCHが省略され、代わりに、疎結合トランスVFTが設けられている。
これにより、図1に示す回路では、パワーチョークコイルPCHのインダクタンスによる整流平滑電圧のレベル低下がなくなることから、より高い電力変換効率が得られることになる。特に、本実施の形態では、スイッチング出力の電圧帰還分が整流電流経路に重畳されるので、この点でも、整流平滑電圧Eiのレベル低下が有効に抑制される。
また、パワーチョークコイルPCHは、相当に重量があり、また、大型なものであることから、基板サイズ及び基板重量を大幅に拡大させていた。
これに対して、図1に示す回路の場合、力率改善に必要とされる疎結合トランスVFTとフィルタコンデンサCNを総合しても、パワーチョークコイルPCHと比較した場合には、相当に軽量で小型なものとなる。つまり、本実施の形態の電源回路は、力率改善機能を有する負荷電力Po=600W以上に対応可能な電源回路として、図7に示す電源回路よりも、大幅な小型、軽量化が図られることになる。
例えば重量に関しては、図7に示す回路に備えられるパワーチョークコイルPCHは1つあたり250gであり、2つ合わせて500gとなるのに対して、図1に示す回路に備えられる疎結合トランスVFTは1つあたり50gであり、2つ合わせて100gとなる。つまり、重量的に見ただけでも、図1に示す回路では、力率改善のための回路部品の重量について、ほぼ1/5にまで削減されている。
【0134】
また、パワーチョークコイルPCHが省略されることで、このパワーチョークコイルPCHにて発生する漏洩磁束による負荷側への影響も考慮する必要がない。このため、例えばパワーチョークコイルPCHに磁気シールド板を施すような対策も不要となるから、この点でも、回路の小型軽量化に寄与することになる。
【0135】
また、図1に示す電源回路では、一次側において直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路を、倍電圧全波整流回路としている。この倍電圧整流回路の平滑回路系は、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と平滑コンデンサCiCとを並列接続して整流電流経路を分流させている。これにより、交流入力電圧VACが正の期間において、整流ダイオードDa,Dcに流れるのは、整流電流i1が分流した整流電流i1bの成分のみとなる。また、交流入力電圧VACが負の期間においては、整流ダイオードDbには、整流電流i2が分流した整流電流i1bの成分のみが流れる。
これにより、上記各整流ダイオードに流れる整流電流のピークレベルは、例えば図7の回路における倍電圧半波整流回路よりも抑制されることになり、これらの整流ダイオードの順方向電圧降下による電力損失も低減される。そして、これにより、電源回路としての電力変換効率(ηAC→DC)の大幅な向上に寄与することになる。
【0136】
また、図7に示す回路においては、二次側直流電圧の安定化のために、スイッチング周波数制御方式に対して、降圧型コンバータを組み合わせた構成を採っているが、降圧形コンバータによるPWM制御は、例えば負荷電流の増加に応じて電力損失が増加して、電力変換効率を低下させる要因となる。これは、例えば降圧形コンバータ以外の定電圧化の手段として、3端子のシリーズレギュレータやトロイダルコアを備えるマグアンプ(磁気増幅器)の回路等を備えた場合にも同様のことがいえる。
これに対して、本実施の形態では、直交型制御トランスPRTを備えて、整流電流経路に挿入した直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRのインダクタンスを可変することで安定化を図ることとしている。直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRにおける電力損失は少なく、被制御巻線NRのインダクタンス可変のために制御回路等が必要とする制御電力は0.4W程度となる。これによっても、電力変換効率の向上に寄与している。
【0137】
このようにして、図1に示す回路では、大幅な電力変換効率の向上が図られている。
例えば、図7の電源回路ではAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が85.9%、交流入力電力が698.4Wであるのに対して、図1の電源回路では、AC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が91.4%で5.5%向上している。また、交流入力電力は656.5Wであり41.9W低減している。
また、直交型制御トランスPRTを備える安定化のための回路構成は、低コストでもある。
【0138】
また、図1に示す回路では、倍電圧整流回路の平滑回路部を上記のようにして形成していることで、平滑コンデンサCiCについては、その両端電圧が整流平滑電圧Eiレベルとして得られるようになっている。つまり、平滑コンデンサCiCについては、図5に示す回路における平滑回路部のようにして、アッパーサイドとローアーサイドの平滑コンデンサのリップルが二重に重畳された整流平滑電圧Eiを生成することにはならない。
この結果、図1の整流回路の整流平滑電圧Eiのリップル電圧は、図5の整流回路の約1/2にまで抑制され、これに伴って、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の各二次側直流出力電圧に現れるリップル電圧も約1/2に抑制されることになる。なお、本実施の形態において、例えば平滑コンデンサCiA,CiBについては、1000μF/200V,平滑コンデンサCiCについては、560μF/400Vを選定することで、瞬時停電が生じても、商用交流電源の1周期の動作を保証することができる。
また、図7に示す電源回路では、整流平滑電圧Eiを生成するための平滑コンデンサとして4本を備えているが、図1に示す回路では、上記平滑コンデンサCiA,CiB,CiCの3本であり、これによる回路規模の縮小、及び低コスト化も図られることになる。
【0139】
また、図1に示す電源回路では、降圧形コンバータが省略されており、ハードスイッチング動作をするコンバータが無くなっていることが分かる。本実施の形態においては、直交型制御トランスPRT及び制御回路7を備えて、直流的な制御電流供給によって二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2などの安定化を図る構成としていることで、降圧形コンバータの省略を可能としている。
これにより、図1の電源回路を形成する第1コンバータ部101、第2コンバータ部102及び力率改善回路3の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作のみとなるから、図7に示した電源回路と比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
また、図7に示す電源回路では、3段の複合共振形コンバータ部が設けられているのに対して、図1に示す電源回路では、第1及び第2コンバータ部101,102の2つとしている。このようにして複合共振形コンバータ部の数が削減されることによっても、上記した回路の小型軽量化が促進され、また、電力変換効率向上の一要因にもなっている。また、ソフトスイッチング動作であるから、もともとスイッチングノイズは少ないものの、複合共振形コンバータ部の数が削減されれば、それだけスイッチングノイズも減少されることとなって、この点でのメリットも得られている。
【0140】
このため、図1に示した回路では、1組のコモンモードチョークコイルCMCと2本のアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格値をクリアすることが充分に可能とされる。
このようにしてノイズフィルタとしての部品点数が削減されることによっても、電源回路のコストダウンと、回路基板の小型軽量化は促進される。
【0141】
また、図7に示す電源回路の場合には、3組のコンバータ部201,202,203と、2組の降圧形コンバータが、それぞれ異なるスイッチング周波数で動作する構成となっていた。
これに対して、本実施の形態では、互いに異なるスイッチング周波数によって独立してスイッチング動作を実行するのは、2組のコンバータ部101,102のみとなる。コンバータ部101,102のスイッチング周波数は、定電圧化のために、例えば70KHz〜150KHzの範囲で、二次側直流出力電圧E4,Eo5のレベルに応じてそれぞれ変化する。
このようして、異なるスイッチング周波数によりスイッチング動作するコンバータの数が削減されることによっては、一次側と二次側のアース電位の干渉もそれだけ少なくなるから、電源回路の動作もより安定することとなる。
【0142】
ところで、図6に示す回路において、複合共振形コンバータとして、コンバータ部201,202,203の3つを設けているのは、図9にも示したように、時点t1,t2,t3の3段階で二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングを制御しなければならないことも要因となっている。
つまり、時点t1,t2,t3ごとに出力される立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3ごとに対応して、二次側直流出力電圧を立ち上げようとした場合に、これに応じて、3つの複合共振形コンバータを備え、各複合共振形コンバータのコントロールIC2の起動を、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3によりコントロールするという構成が、これまでにおいて行われてきたからである。
【0143】
これに対して、図1に示す回路では、DCスイッチ回路6,6Aを設け、立ち上げ信号Vt1のみにより、これらDCスイッチ回路6,6Aのオン/オフ状態を制御して、二次側直流出力電圧Eo4についての立ち上げをコントロールするようにしている。これにより、二次側直流出力電圧の立ち上げコントロールに必要なコントロールICが削減可能となった結果、図1に示す回路では、コンバータ部を1つ削減することが可能となっているものである。
【0144】
図2は、本発明の第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図13に示した回路と同様に、負荷電力Po=600W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系(AC85V〜288V)とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
なお、この図において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0145】
この図2に示す電源回路は、先に図1に示した電源回路を基本構成として、ワイドレンジの商用交流電源に対応する構成を採っている。このために、整流回路切換モジュール5が備えられている。
【0146】
整流回路切換モジュール5は、リレーRLを駆動することで、整流回路系の動作をAC100V系とAC200V系とで切り換えるために設けられる。このために、検出端子T11には、商用交流電源ACを、ダイオードD10及びコンデンサC10により半波整流して得た直流電圧が、検出電圧として入力されるようになっている。検出端子T11から入力される直流電圧レベルは、商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)のレベルに応じた変化を示す。つまり、整流回路切換モジュール5は、整流平滑電圧Eiのレベルを検出することで、商用交流電源ACのレベルを検出するようになっている。
また、リレー駆動端子T12,T13間に対してはリレーRLが接続される。なお、リレーRLは、自身の導通状態に応じて、リレースイッチSをオン/オフ制御する。また、ここでは、リレーRLが導通状態ではリレースイッチSがオン、リレーRLが非導通状態ではリレースイッチSがオフとなるようにされている。
また、端子T15は、整流回路切換モジュール5のアースラインを一次側アースに接地させるための端子である。
【0147】
また、上記リレーRLによってオン/オフ制御されるスイッチSは、平滑コンデンサCiA−CiBの接続点と、整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)との間に対して直列に挿入される。
【0148】
上記した構成による整流回路系の切り換え動作は次のようになる。
整流回路切換モジュール5では、検出端子T11に入力される交流入力電圧VACのレベルと所定の基準電圧とを比較する。検出端子T11に入力される電圧レベルは、交流入力電圧VAC=150V以上であるときには上記基準電圧以上となり、交流入力電圧VACが150V以下であるときには上記基準電圧以下となる。つまり、基準電圧は、交流入力電圧VAC=150Vに対応したレベルとなっている。
そして、整流回路切換モジュール5では、入力された直流電圧のレベルが基準電圧以下であるときには、リレーRLをオンとし、基準電圧以上であるときには、リレーRLをオフとするように駆動する。
【0149】
ここで、例えばAC200V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以上に対応するレベルが入力されたとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが基準電圧以上となるので、整流回路切換モジュール5は、リレーRLをオフとする。これに応じて、リレースイッチS1もオフ(オープン)となる。
リレースイッチS1がオフの状態では、平滑コンデンサCiA−CiBの接続点と、整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)が、接続されない状態となる。
このため、交流入力電圧VACが正/負となる各期間において、交流入力電圧VACをブリッジ整流回路Diで整流して得られる整流電流により、平滑コンデンサCiA−CiBの直列接続回路と平滑コンデンサCiCとを並列接続して形成される平滑回路部に対して充電する動作が得られる。
これは、通常のブリッジ整流回路を備えた全波整流回路による整流動作となる。これにより、平滑コンデンサCiA−CiBの直列接続回路と平滑コンデンサCiCの並列接続から成る平滑回路の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiが得られる。
【0150】
これに対して、AC100V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以下に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが上記基準電圧以下となって、整流回路切換モジュール5はリレーRLをオンとするので、リレースイッチS1はオン(クローズ)となるように制御される。
リレースイッチS1がオンの状態では、平滑コンデンサCiA−CiBの接続点と、整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)が、接続される状態となる。従って、整流動作としては、先に図3により説明した倍電圧全波整流動作が得られる。
【0151】
このようにして、図2に示す回路では、商用交流電源AC100V系の場合には、倍電圧全波整流動作により、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成し、商用交流電源AC200V系の場合には、例えば通常の全波整流回路による等倍電圧整流動作によって、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。つまり、商用交流電源AC100V系の場合と、AC200V系の場合とで、結果的に同等レベルの整流平滑電圧Eiが得られるようにしており、これによって、ワイドレンジ対応としているものである。
【0152】
図2に示す回路における第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の構成、力率改善回路3による力率改善動作、及び二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御などのための構成としては、図1の場合と同様であることからここでの説明は省略する。
また、確認のために述べておくと、AC200V系時において全波整流回路による等倍電圧整流動作が行われる場合にも、疎結合トランスVFTにより電圧帰還されるスイッチング出力によって、整流ダイオードが整流電流をスイッチングする動作が得られ、力率改善が図られることになる。
【0153】
なお、このようにして構成される図2の電源回路における力率改善特性としては、交流入力電圧VAC=100V時では、負荷電力Po=600W〜25Wの範囲で力率PF>7.5であり、国内高調波歪規制をクリアする。また、交流入力電圧VAC=230V時では、負荷電力Po=600W〜300Wの範囲で、欧州の規制値をクリア可能な力率の値が得られている。
【0154】
また、図2に示す電源回路における、各トランス(PIT−1,PIT−2,VFT−1,VFT−2、PRT−1〜PRT−4)、平滑コンデンサCiA,CiB,CiCについては、図1の回路と同様のコアサイズ、定数のものを選定することができる。
【0155】
このようにして構成される図2に示す電源回路と、図13に示した電源回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図13に示す電源回路では、力率改善のためにアクティブフィルタを備えており、このアクティブフィルタの出力が例えば375Vで一定に制御されることを利用して、AC100V系時とAC200V系時にかかわらず、後段の複合共振形コンバータの直流入力電圧を一定としている。つまり、ワイドレンジ対応の電源回路を構成している。
これに対して、図2に示す電源回路では、疎結合トランスVFTによってスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還することで力率改善を図っている。また、AC100V系時に倍電圧全波整流回路を形成し、AC200V系では全波整流回路を形成するように整流回路系を切り換えることで、ワイドレンジ対応としている。つまり、図2に示す電源回路では、ワイドレンジ対応で力率改善機能を有する電源回路として、アクティブフィルタが省略された構成を採っているものである。
【0156】
アクティブフィルタは、1組のコンバータを構成するものであり、図13による説明からも分かるように、実際には、複数本のスイッチング素子と、これらを駆動するためのIC等を始め、多くの部品点数により構成される。
これに対して、図1に示す電源回路に備えられる力率改善回路3は、疎結合トランスVFT−1,VFT−2を整流電流経路に追加するのみであり、また、疎結合トランスVFT−1,VFT−2は、前述もしたように、EE−28型の小型なコアによる部品素子である。従って、アクティブフィルタと比較すれば相当に少ない部品点数となり、また、部品素子の基板実装面積も縮小する。
これにより、図1に示す電源回路としては、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応の電源回路として、図13に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
【0157】
また、アクティブフィルタは、ハードスイッチング動作をする昇圧型コンバータを備えて成るものであり、従って、スイッチングノイズが大きい。図2に示す回路では、このアクティブフィルタが省略されていることで、スイッチングノイズのレベルが大幅に低減されることになる。
また、図2の回路でも、図1の回路と同様にして、直交型制御トランスPRT及び制御回路7によるインダクタンス制御とすることで、二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2などの安定化を図る構成を採っており、また、DCスイッチ回路6,6Aを備えることで、立ち上げ信号Vt1のみによって、所要数の二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御が行われるようにされている。
これにより、二次側の降圧形コンバータが省略される。また、図13に示す電源回路では、複合共振形コンバータ部の数が3であるのに対して、図2に示す電源回路でも、第1及び第2コンバータ部101,102の2つとなる。
この結果、図2の電源回路もスイッチングコンバータ部の数が削減されているものであり、その分の部品点数の削減及びコスト削減が図られることになる。
【0158】
また、図13に示す電源回路の総合電力変換効率は、前段のアクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC/DC)とにより決定されるものであった。これに対して、図1に示す電源回路は、アクティブフィルタを前段に備えていないから、総合電力変換効率は、この電流共振形コンバータのAC−DC電力変換効率として見ればよいことになる。そして、本実施の形態のようにして、電圧帰還方式による力率改善回路を備える場合、その電力変換効率は、力率改善回路を備えない場合の複合共振形コンバータとほぼ同等であることが分かっている。
これにより、図1に示す電源回路としては、前述もしたように、電力変換効率について、図13に示す電源回路よりも大幅に向上されることになる。
【0159】
そのうえで、さらに図2に示す回路では、AC100V系時において倍電圧全波整流回路が形成されるようになっている。これにより、例えばAC100V系時において、倍電圧半波整流回路が形成される構成と比較すれば、図1としても説明したように、この整流回路系における電力損失も大幅に低減され、この点でも電力変換効率の向上に寄与することになる。
実験結果としては、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=230V時においては、AC−DC電力変換効率(ηAC/DC)は94.0%であり、図13に示す回路よりも2.3%向上している。交流入力電力は、638.3Wであり、図13の回路に対して26.9W低減している。力率PF=0.78となる結果が得られた。
負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100V時においては、AC−DC電力変換効率(ηAC/DC)は91.4%であり、図13に示す回路に対して3.1%向上している。上記しているように、交流入力電圧VAC=230V時のAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)の向上分が2.3%であることと比較しても、倍電圧全波整流回路による電力損失の低減が、電力変換効率の向上に大きく寄与していることが分かる。交流入力電力は、657.2Wであり、図13に示す回路よりも22.3W低減している。また、この条件では、力率PF=0.83となる結果が得られた。
【0160】
また、図2に示す回路としても、図13に示す回路と比較すれば、一次側と二次側のアース電位の干渉が少なくなって、電源回路の動作が安定する効果が得られる。
つまり、図13に示す回路の場合、アクティブフィルタ回路8と、3組のコンバータ部201,202,203と、2組の降圧形コンバータが、それぞれ異なるスイッチング周波数で動作する構成となっていた。
これに対して図2に示す回路では、定電圧化のために、コンバータ部101,102のスイッチング周波数が、例えば70KHz〜150KHzの範囲で、二次側直流出力電圧E4,Eo5のレベルに応じてそれぞれ変化するのみとなる。つまり、互いに異なるスイッチング周波数によって独立してスイッチング動作を実行するのは、2組のコンバータ部101,102のみとされている。
また、上記のようにして、スイッチングコンバータ数が削減されることによってよっても、スイッチングノイズは、さらに低減されることになる。しかも、この場合には、コンバータ部101,102は共にノイズの少ない共振形であるから、ノイズ低減の効果は大きい。これにより、図2に示した回路としても、1組のコモンモードチョークコイルCMCと2本のアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格値をクリアすることが充分に可能となるものである。
【0161】
また、本発明としては、これまでに説明した上記各実施の形態としての電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0162】
また、力率改善回路3の構成としても、上記各実施の形態として示したもの以外に限定されるものではなく、これまでに本出願人が提案してきた各種の電圧帰還方式による回路構成のうちから、適用可能なものを採用してよい。
【0163】
また、本発明に基づく電源回路としては、スイッチングコンバータ部の段数についても、例えば実施の形態として示したように2段(コンバータ部101,102)であることに限定される必要はなく、この段数は、例えば対応すべき負荷電力や、必要とされる二次側直流出力電圧の数などに応じて適宜変更されてよい。また、これらの各コンバータ部において生成する二次側直流出力電圧の数としても特に限定されるものではない。そのうえでも、本発明によっては、実施の形態において説明したように、DCスイッチ回路6,6A等を備える構成を採ることで、同数の二次側直流出力電圧を得る場合において必要とされるスイッチングコンバータ部の数は、先行技術に基づいて、同一の負荷条件及び二次側直流出力電圧数に対応する電源回路を構成した場合よりも少なくなるものである。
【0164】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明は、力率改善機能を備える単レンジ対応又はワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、パワーチョークコイル又はアクティブフィルタを備えない構成を採る。これにより、例えばアクティブフィルタによって力率改善を図る場合よりも電力変換効率が向上されるという効果を有している。
さらに、例えばAC100V系の商用交流電源入力に対応して上記直流入力電圧(整流平滑電圧)を生成するための整流回路としては、倍電圧全波整流回路としており、分岐した整流電流が整流ダイオードに流れる整流電流経路が在るようにされる。これにより、例えば倍電圧半波整流回路の場合よりも、整流ダイオードにおける電力損失は低減される。つまり、この点でも、電力変換効率の向上に大きく寄与している。
【0165】
また、本発明のスイッチングコンバータ部は、電流共振形コンバータを基本構成とする複合共振形コンバータと、力率改善用トランス(疎結合トランス)によりスイッチング出力を電圧帰還する力率改善回路を備える構成であり、ソフトスイッチング動作となる。これによっては、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタを強化する必要もなくなる。
このために、本発明としては、例えばパワーチョークコイルなどの大型部品の省略、あるいは、アクティブフィルタなどの多くの部品点数からなる回路が省略されることになる。さらには、スイッチングノイズが大幅に低減されることによるノイズフィルタのための部品点数も削減される。この結果、電源回路サイズの小型/軽量化を有効に図ることが可能となる。また、それだけコストダウンが図られることにもなる。
特に本発明によるスイッチング電源回路は、重負荷の条件に対応するものであるが、重負荷に対応する場合、チョークインプット方式では例えば正/負の各ラインに対して複数個のパワーチョークコイルを挿入する必要が生じたり、また、アクティブフィルタ方式の場合には、実際のアクティブフィルタの回路構成としてさらに多くの部品を必要とする。従って、本発明によりパワーチョークコイル又はアクティブフィルタが省略されることによる、回路の小型軽量化とコストダウンの効果は、非常に有効なものとなる。
さらに、本発明としての構成によれば、これまでよりも一次側と二次側のアース電位の干渉が少なくなるので、アース電位が安定することとなって、信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図3】実施の形態としての倍電圧全波整流回路の動作を示す回路図である。
【図4】実施の形態のコントロールICによるスイッチング素子の駆動タイミングを示すを示す波形図である。
【図5】疎結合トランスの構造例を示す断面図である。
【図6】実施の形態の電源回路における二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【図7】先行技術としてパワーチョークコイルを備えるスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図8】倍電圧半波整流回路の動作を示す回路図である。
【図9】先行技術の電源回路における二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【図10】アクティブフィルタの基本的回路構成を示す回路図である。
【図11】図10に示すアクティブフィルタにおける動作を示す波形図である。
【図12】アクティブフィルタのコントロール回路系の構成を示す回路図である。
【図13】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 制御回路、2 コントロールIC、3 力率改善回路、4 ノーマルモードノイズフィルタ、5 整流回路切換モジュール、6 DCスイッチ回路、7 制御回路、101 第1コンバータ部、102 第2コンバータ部、Di,DBRブリッジ整流回路、CiA,CiB,CiC,Co7,Co8,Co9 平滑コンデンサ、Q1,Q2,Q3,Q4 スイッチング素子、PIT−1,PIT−2 絶縁コンバータトランス、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1 一次巻線、CMC コモンモードチョークコイル、CL アクロスコンデンサ、LN チョークコイル、CN フィルタコンデンサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、力率改善のための回路を備えたスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波の比較的大きい電流及び電圧に耐えることができるスイッチング素子の開発によって、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。
スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
【0003】
ところで、一般に商用電源を整流すると平滑回路に流れる電流は歪み波形になるため、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。
また、歪み電流波形となることによって発生する高調波を抑圧するための対策が必要とされている。
そこで、力率改善のための構成を付加したスイッチング電源回路が各種提案されている。このようなスイッチング電源回路の1つとして、商用交流電源ラインに対してパワーチョークコイルを直列に挿入することで、交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図るように構成した、いわゆるチョークインプット方式のものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、近年においては、テレビジョン受像機、モニタ装置としてプラズマディスプレイなどが普及してきている。このようなプラズマディスプレイに備えられる電源回路としては、例えば負荷電力600W程度の、これまでのテレビジョン受像機やモニタ装置の電源回路よりも重負荷の条件に対応することが要求される。
【0005】
図7は、プラズマディスプレイなどに搭載され、約600Wの負荷電力に対応可能な電源回路として、チョークインプット方式による力率改善機能を付加した構成例を示している。また、この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=85V〜144Vの範囲に対応する。つまり、例えばAC100V系の商用交流電源に対応する。
【0006】
この図に示す電源回路の場合には、先ず、商用交流電源ACの正/負の各ラインに対してパワーチョークコイルPCHをそれぞれ直列に挿入している。ここで、商用交流電源ACの正/負の何れか一方のラインのみではなく、両ラインにパワーチョークコイルPCHを挿入することとしているのは、負荷電力600W程度の比較的重負荷の条件に対応して充分な力率改善効果が得られるようにするためである。
このようにして、商用交流電源ACのラインに対してパワーチョークコイルPCHを挿入することで、周知のようにして、パワーチョークコイルPCHのインダクタンスの作用によって、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diを形成する整流ダイオードに流入する交流入力電流は、その高調波が抑制されることになる。つまり、交流入力電流IACの導通角が拡大されて力率改善が図られる。
【0007】
また、商用交流電源ACに対しては、2組のコモンモードチョークコイルCMCと3本のアクロスコンデンサCLを接続して形成される、コモンモードノイズフィルタが設けられる。このコモンモードノイズフィルタにより、例えばスイッチングコンバータ側から商用交流電源ACに伝わるノイズを抑制する。
【0008】
そして、商用交流電源ACラインにおいて、上記したラインノイズフィルタの後段に対しては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧半波整流回路が設けられる。この倍電圧半波整流回路は、4本の低速リカバリ型の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成るブリッジ整流回路Diと、4本の平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bを備えて形成される。
【0009】
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードは、商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDcのカソードと整流ダイオードDdのカソードは、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1A,Ci1Bの正極端子に接続される。
整流ダイオードDaのアノードと整流ダイオードDbのアノードは一次側アースに接続される。
【0010】
また、整流ダイオードDdのアノードと整流ダイオードDbのカソードの接続点は、整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードの接続点と接続される。これにより、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流は、整流ダイオードDc//Ddに並列に流れる。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流は、整流ダイオードDa//Dbに並列に流れる。
【0011】
平滑コンデンサCi1A,Ci2Aは、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。同様にして、平滑コンデンサCi1B,Ci2Bも、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。また、平滑コンデンサCi1A−Ci2Aの接続点と、平滑コンデンサCi1B−Ci2Bの接続点が互いに接続される。この接続態様では、平滑コンデンサCi1A,CiBはアッパーサイド側で並列接続されていることになる。また、平滑コンデンサCi2A,Ci2Bもローアーサイド側で並列接続の関係にある。
【0012】
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作について、図8を参照して説明する。
図8では、説明を簡単にするために、倍電圧半波整流回路の基本的な構成を示しており、図7において実際に形成されている倍電圧半波整流回路との関係としては次のようになっている。
アッパーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi1A//Ci1Bは、平滑コンデンサCi1に相当する。同様にして、ローアーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi2A//Ci2Bは、平滑コンデンサCi2に相当する。
また、整流ダイオードDi1は、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流が並列に流れる整流ダイオードDc//Ddの組に相当する。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流が並列して流れる整流ダイオードDa//Dbは整流ダイオードDi2に相当する。
【0013】
先ず、交流入力電圧VACが正極性となる期間においては、整流ダイオードDi1(Dc//Dd)が導通して整流電流i1が流れ、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
また、交流入力電圧VACが負極性となる期間においては、整流ダイオードDi2(Da//Db)が導通して整流電流i2が流れ、ローアーサイドの平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
この結果、直列接続された平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)−Ci2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流電圧が得られることになる。また、アッパーサイドの平滑コンデンサに整流電流が流れる期間は、交流入力電圧VACが正となる半波の期間であり、ローアーサイドの平滑コンデンサが流れる期間は交流入力電圧VACが負となる半波の期間である。つまり、各平滑コンデンサに対応した半波整流動作により倍電圧を得る、倍電圧半波整流動作が行われている。
【0014】
ここで、図7に示す回路において、整流電流が2本の整流ダイオードに並列に流れるように構成し、また、平滑コンデンサについて、アッパーサイドとローアーサイドとで共に2本を並列に設けているのは、約600Wという重負荷の条件に対応する必要があることによる。
つまり、重負荷の条件になるほど、整流回路系に流れる整流電流は増加する。そこで、整流電流が流れる整流ダイオード及び平滑コンデンサについて、並列接続すれば平滑コンデンサに流れる整流電流は分岐することになる。つまり、1本の整流ダイオード及び平滑コンデンサに流れる電流レベルが抑制されることとなって、これらの部品にかかる負担が軽減される。
なお、平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bについては、例えば1000μF/200Vを選定し、瞬時停電であっても商用交流電源の1周期の動作が保証されるようにしている。また、整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddについては、25A品を選定するようにしている。また、これらの整流ダイオードDa〜Ddについては、低速リカバリ型が選定される。
【0015】
そして、図7に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件に対応するために、上記整流平滑電圧Eiとしての直流入力電圧を動作電源とする電流共振形コンバータについて、複数を備えることとしている。
また、この図に示す電流共振形コンバータは、後述するようにして部分共振回路が組み合わされることで、いわゆる複合共振形コンバータとしての構成をとる。 この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの複合共振形コンバータが設けられている。
なお、ここでの複合共振形コンバータとは、スイッチングコンバータの動作を共振形とするために備えられる共振回路に加えて、さらに一次側又は二次側に対して共振回路を付加し、これら複数の共振回路を1スイッチングコンバータ内において複合的に動作させる構成のスイッチングコンバータをいう。
【0016】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータとしての構成を採る。
【0017】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
【0018】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、抵抗Rsを介して入力される整流平滑電圧Eiが電源入力端子Vccに入力されるようになっている。また、アース端子Eは一次側アースに直接接続される。
【0019】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0020】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0021】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0022】
また、コントロールIC2の起動端子Vtには、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータ(ここでは図示せず)から出力される立ち上げ信号Vt1が入力される。
コントロールIC2は、この立ち上げ信号が入力されたタイミングで起動して動作を開始するようになっている。つまり、ドライブ信号出力端子VGH、及びドライブ信号出力端子VGLからのドライブ信号出力を開始する。従って、第1コンバータ部201の動作開始タイミングは、コントロールIC2の立ち上げ信号Vt1の入力タイミングによって決定されることになる。
【0023】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0024】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
このように、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して他の共振回路が組み合わされた、複合共振形コンバータとしての形式を採っている。
【0025】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線として、2組の二次巻線N2a,N2bが互いに独立するようにして巻装される。
この場合の二次巻線N2aに対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCo1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCo1の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo1が得られる。この二次側直流出力電圧Eo1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0026】
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧Eo1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧Eo1のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0027】
また、この場合においては、二次側直流出力電圧Eo1を分岐して、二次側出力電圧Eo,Eo2を生成するように回路が形成されている。
二次側出力電圧Eoを生成する回路系は、MOS−FETによるスイッチング素子Q7、整流ダイオードDcn1,高周波ノイズ除去用のチョークコイルL11,平滑コンデンサCo、及びPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する制御回路7を図示するようにして接続した、降圧形コンバータとして形成される。
スイッチング素子Q7は、制御回路7によってスイッチング駆動されることで、二次側出力電圧Eo1をスイッチングして交番出力を得る。この交番出力は、チョークコイルL11、整流ダイオードDcn及び平滑コンデンサCoから成る半波整流回路によって整流平滑化されることになって、平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次側直流出力電圧Eoを生成する。
ここで、制御回路7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、PWM制御を実行する。これにより、スイッチング素子Q7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、スイッチング周波数は一定とされた上で、1スイッチング周期内のオン期間が可変されるようにしてスイッチング動作が制御される。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベルが一定となるように制御されることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0028】
二次側出力電圧Eo1を生成する回路系としても、MOS−FETによるスイッチング素子Q8、整流ダイオードDcn,チョークコイルL12,平滑コンデンサCo2、及び制御回路7を、上記した二次側出力電圧Eo1を生成する回路系と同様の態様により接続した、降圧形コンバータとして形成される。
従って、この場合にも、平滑コンデンサCo2の両端電圧としては、制御回路7のPWM制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo1が得られることになる。
【0029】
また、二次巻線N2bに対しては、ブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCo3から成る全波整流回路が形成されており、この全波整流回路の整流平滑動作によって、平滑コンデンサCo3の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo3を得るようにされている。
【0030】
第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1等を、上記第1コンバータ部201と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。
また、第2コンバータ部202の二次側は、二次巻線N2のセンタータップを二次側アースに接続したうえで、この二次巻線N2に対して、図示するようにして、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo4,Co5、ノイズ除去用の抵抗R1から成る両波整流回路が形成される。これにより、平滑コンデンサCo5の両端電圧として、二次側直流出力電圧Eo4が生成される。
また、第2コンバータ部202においては、制御回路7が、平滑コンデンサCo4の両端に得られる二次側整流平滑電圧のレベルに基づいて、一次側コンバータのスイッチング周波数制御を実行する結果、二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化が図られるようにされている。
また、第2コンバータ部202において、コントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3が入力される。
【0031】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1、二次巻線N2、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo6,Co7、抵抗R2を、第2コンバータ部202と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。そして、この第3コンバータ部203においても、制御回路7によるスイッチング周波数制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo5が得られる。
また、第3コンバータ部203のコントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt2が入力される。
【0032】
上記構成では、二次側から、6つの二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が得られることになるが、これら二次側直流出力電圧の用途、負荷仕様については、例えば下記のようになっている。
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
そして、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部201:75W
第2コンバータ部202:175W
第3コンバータ部203:350W
であり、総合で600Wとなる。
また、上記したような各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力に応じて、絶縁コンバータトランスについては、次のようにしてコアが選定される。
PIT−1:EER−35
PIT−2:EER−40
PIT−3:EER−42
また、降圧形コンバータにおけるチョークコイルL11,L12は、それぞれ、EE−25のフェライトコアである。
【0033】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が使用される場合においては、電源が起動して直流入力電圧(整流平滑電圧Ei(375V))が立ち上がったときに、各二次側直流出力電圧について、しかるべき順序で以て、順次立ち上がらせる必要がある。
具体的には、先ず、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにする。
【0034】
上記したような二次側直流出力電圧の立ち上げ順序とするために、マイクロコンピュータは、各コンバータ部(201,202,203)におけるコントロールIC2の起動端子Vtに対して、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力して制御を行っている。この立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3による二次側直流出力電圧の立ち上げ順序の制御動作を、図9のタイミングチャートに示す。
【0035】
ここで、図7に示す電源回路は、いわゆるメイン電源の構成であり、ここにはスタンバイ電源は示していない。マイクロコンピュータは、このスタンバイ電源が供給されているからメイン電源が起動されていない状態でも、動作することが可能である。
そして、メイン電源である図7に示す回路を起動させるために、メインスイッチSWがオフからオンに切り換えられたとすると、商用交流電源ACが回路に投入されて整流平滑電圧Eiが得られることになる。そして、この整流平滑電圧Eiが規定レベル(例えば375V)にまで上昇したことがマイクロコンピュータによって検出されると、マイクロコンピュータは、図9に示す時点t1のタイミングで、図9(a)に示すようにして、立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。これにより、立ち上げ信号Vt1が入力されている第1コンバータ部201のコントロールIC2は、時点t1からスイッチング駆動動作を開始する。そして、これに応じて、第1コンバータ部201の二次側にて得られる二次側直流出力電圧Eoは、図9(b)に示すようにして、時点t1における0レベルから上昇を開始して或る時間が経過した時点で、規定のレベル(5V)にまで上昇する。そして、以降は、降圧形コンバータによる定電圧制御動作によって、この12Vで安定化された状態を維持する。
なお、確認のために述べておくと、同じ第1コンバータ部201にて生成される残りの二次側直流出力電圧Eo1,Eo2,Eo3も、二次側直流出力電圧Eoとほぼ同じタイミングで立ち上がることになる。
【0036】
そして、立ち上げ信号Vt2は、上記のようにして、時点t1から二次側直流出力電圧Eo1が規定レベルに上昇して安定した後の時点t2において、図9(c)に示すように、Lレベルからレベルに切り換えて出力されるように設定されている。
これにより、第3コンバータ部203のコントロールICが時点t2において起動する。これに応じて、時点t2以降においては、図9(d)に示す二次側直流出力電圧Eo5が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(200V)で一定となるようにして立ち上がることになる。
【0037】
また、上記のように二次側直流出力電圧Eo5が規定レベルで安定した状態となった後の時点t3において、マイクロコンピュータは、図9(e)に示す立ち上げ信号Vt3をLレベルからHレベルに切り換える。これに応じて、第2コンバータ部202のコントロールICが時点t3において起動し、時点t3以降において、図9(f)に示す二次側直流出力電圧Eo4が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(70V)で一定となるようにして立ち上がる。
このようにして、図7に示す電源回路では、二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングをコントロールして、電源回路としての適切な起動動作を得るようにしている。
【0038】
上記図7に示す電源回路は、AC100V系のみの単レンジとしての商用交流電源入力に対応する構成とされていたのであるが、電源回路としては、例えば交流入力電圧VAC=85V〜288Vに対応するようにも構成する場合がある。つまり、AC100V系とAC200V系の両者の商用交流電源入力に対応した、いわゆるワイドレンジ対応(ワールドワイド仕様)の構成を採るものも知られている。
【0039】
そして、ワイドレンジ対応の電源回路に対して力率改善機能を与えるのにあたっては、整流回路系において、アクティブフィルタを設ける構成を採ることができる。アクティブフィルタは、PWM制御方式の昇圧型コンバータを備えて力率を1に近付けるように動作するもので、力率改善のための手段の1つとして広く知られている。(例えば特許文献2参照)。
【0040】
図10の回路図は、このようなアクティブフィルタの基本構成を示している。
この図においては、商用交流電源ACにブリッジ整流回路Diを接続している。このブリッジ整流回路Diの正極/負極ラインに対しては並列に出力コンデンサCoutが接続される。ブリッジ整流回路Diの整流出力が出力コンデンサCoutに供給されることで、出力コンデンサCoutの両端電圧として、直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷10に入力電圧として供給される。
【0041】
また、力率改善のための構成としては、図示するようにして、インダクタL、高速リカバリ型のダイオードD、抵抗Ri、スイッチング素子Q、及び乗算器11を備える。
インダクタL、ダイオードDは、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。
抵抗Riは、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子(一次側アース)と出力コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。
また、スイッチング素子Q1は、この場合には、MOS−FETが選定されており、図示するようにして、インダクタLとダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
【0042】
乗算器11に対しては、フィードフォワード回路として、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLwが接続され、フィードバック回路として電圧検出ラインLVが接続される。
乗算器11は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流レベルを検出する。
また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutの変動差分を検出する。つまり、負荷10に入力すべき直流入力電圧の変動差分を検出する。
そして、乗算器11からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
【0043】
電流検出ラインLIから乗算器11に対しては、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流が入力される。乗算器11では、この電流検出ラインLIから入力された整流電流レベルを検出する。また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Vout(直流入力電圧)の変動差分を検出する。また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
【0044】
乗算器11では、先ず、上記のようにして電流検出ラインLIから検出した整流電流レベルと、上記電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分と乗算する。そして、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した交流入力電圧の波形とによって、交流入力電圧VACと同一波形の電流指令値を生成する。
【0045】
さらに、この場合の乗算器11では、上記電流指令値と実際の交流入力電流レベル(電流検出ラインL1からの入力に基づいて検出される)を比較し、この差に応じてPWM信号についてPWM制御を行い、PWM信号に基づいたドライブ信号を生成する。スイッチング素子Qは、このドライブ信号によってスイッチング駆動される。この結果、交流入力電流は交流入力電圧と同一波形となるように制御されて、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。また、この場合には、乗算器11によって生成される電流指令値は、直流入力電圧(Vout)の変動差分に応じて振幅が変化するように制御されるため、直流入力電圧(Vout)の変動も抑制されることになる。
【0046】
図11(a)は、上記図10に示したアクティブフィルタ回路に入力される入力電圧Vin及び入力電流Iinを示している。電圧Vinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電圧波形に対応し、電流Iinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電流波形に対応する。ここで、電流Iinの波形は、ブリッジ整流回路Diの整流出力電圧(電圧Vin)と同じ導通角となっているが、これは、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diに流れる交流入力電流の波形も、この電流Iinと同じ導通角となっていることを示す。つまり、ほぼ1に近い力率が得られている。
【0047】
また、図11(b)は、出力コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)Pchgの変化を示す。出力コンデンサCoutは、入力電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、入力電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。
図11(c)は、上記出力コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。この充放電電流Ichgは、上記図11(b)の入出力エネルギーPchgの波形と同位相となっていることからも分かるように、出力コンデンサCoutにおけるエネルギーPchgの蓄積/放出動作に対応して流れる電流である。
【0048】
上記充放電電流Ichgは、入力電流Vinとは異なり、交流ライン電圧(商用交流電源AC)の第2高調波とほぼ同一の波形となる。交流ライン電圧には、出力コンデンサCoutとの間のエネルギーの流れによって、図11(d)に示すようにして、第2高調波成分にリップル電圧Vdが生じる。このリップル電圧Vdは、無効なエネルギー保存のために、図11(c)に示す充放電電流Ichgに対して、90°の位相差を有する。出力コンデンサCoutの定格は、第2高調波のリップル電流と、その電流を変調するブースト・コンバータ・スイッチからの高周波リップル電流を処理することを考慮して決定するようにされる。
【0049】
また、図12には、図10の回路構成を基として、基本的なコントロール回路系を備えたアクティブフィルタの構成例を示している。なお、図10と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子間には、スイッチングプリレギュレータ15が備えられる。このスイッチングプリレギュレータ15は、図10においては、スイッチング素子Q、インダクタL、及びダイオードDなどにより形成される部位となる。
【0050】
そして、乗算器11を含むコントロール回路系は、他に、電圧誤差増幅器12、除算器13、二乗器14を備えて成る。
電圧誤差増幅器12では、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutを、分圧抵抗Rvo−Rvdにより分圧してオペアンプ15の非反転入力に入力する。オペアンプ15の反転入力には基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ15では、基準電圧Vrefに対する分圧された直流電圧Voutの誤差に応じたレベルの電圧を、帰還抵抗Rvl、コンデンサCvlによって決定される増幅率により増幅して、誤差出力電圧Vveaとして除算器13に出力する。
【0051】
また、二乗器14には、いわゆるフィードフォワード電圧Vffが入力される。このフィードフォワード電圧Vffは、入力電圧Vinを平均化回路16(Rf11,Rf12,Rf13,Cf11,Cf12)により平均化した出力(平均入力電圧)とされる。二乗器14では、このフィードフォワード電圧Vffを二乗して除算器13に出力する。
【0052】
除算器13では、電圧誤差増幅器12からの誤差出力電圧Vveaについて、二乗器14から出力された平均入力電圧の二乗値により除算を行いい、この除算結果としての信号を乗算器11に出力する。
つまり、電圧ループは、二乗器14、除算器13、乗算器11の系から成るものとされる。そして、電圧誤差増幅器12から出力される誤差出力電圧Vveaは、乗算器11で整流入力信号Ivacにより乗算される前の段階で、平均入力電圧(Vff)の二乗により除算されることになる。この回路によって、電圧ループの利得は、平均入力電圧(Vff)の二乗として変化することなく、一定に維持される。平均入力電圧(Vff)は、電圧ループ内において順方向に送られる開ループ補正の機能を有する。
【0053】
乗算器11には、上記除算器11により誤差出力電圧Vveaを除算した出力と、抵抗Rvacを介したブリッジ整流回路Diの正極出力端子(整流出力ライン)の整流出力(Iac)が入力される。ここでは、整流出力を電圧によるのではなく、電流(Iac)として示している。乗算器11では、これらの入力を乗算することによって、電流プログラミング信号(乗算器出力信号)Imoを生成して出力する。これは、図10にて説明した電流指令値に相当する。出力電圧Voutは、この電流プログラミング信号の平均振幅を可変することで制御される。つまり、電流プログラミング信号の平均振幅の変化に応じたPWM信号が生成され、このPWM信号に基づいたドライブ信号によってスイッチング駆動が行われることによって、出力電圧Voutのレベルをコントロールするものである。
したがって、電流プログラミング信号は、入力電圧と出力電圧を制御する平均振幅の波形を有する。なお、アクティブフィルタは、出力電圧Voutのみではなく、入力電流Vinも制御するようになっている。そして、フィードフォワード回路における電流ループは、整流ライン電圧によってプログラムされるということがいえるので、後段のコンバータ(負荷10)への入力は抵抗性になる。
【0054】
図13は、ワイドレンジ対応で、約600Wの負荷電力に対応する電源回路として、上記図12に示した構成に基づくアクティブフィルタを備えて構成した例を示すものである。
この図に示す電源回路は、ワイドレンジ対応として交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲に対応する。また、アクティブフィルタの後段におけるスイッチングコンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた、複合共振形コンバータとしての構成を採る。この図に示す電源回路も、例えばプラズマディスプレイなどに搭載される。
なお、図7と同一部分に対しては同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
この図13に示す電源回路の場合、商用交流電源ACラインには、図示する接続態様により、2組のコモンモードチョークコイルCMC,CMCと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
また、この場合には、電源を起動/停止するためのメインスイッチSWを商用交流電源ACラインに直列に挿入して示している。
【0056】
商用交流電源ACの正/負のラインに対しては、それぞれ、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極入力端子と負極入力端子が共通に接続される。また、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子どうしと、負極出力端子(アース接地)どうしが接続されるようになっている。つまり、この場合には、商用交流電源ACに対して、2段のブリッジ整流回路が備えられていることになる。
【0057】
また、上記ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子と負極出力端子(一次側アース)間には、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CN,CNを図示するようにして接続して成るノーマルモードノイズフィルタ4が接続される。
【0058】
上記ノーマルモードノイズフィルタ4の後段に対して、アクティブフィルタ回路8が備えられる。
このアクティブフィルタ回路8は、図10により説明した構成に基づいているものである。つまり、ブリッジ整流回路Di1,Di2から入力される整流出力についてスイッチングを行う、PWM制御方式の昇圧型コンバータを備える。このような昇圧型コンバータは、例えばスイッチング素子と、このスイッチング素子をPWM制御方式によって駆動するためのコントロール回路系を備えて形成される。
【0059】
また、この場合のようにして、例えば負荷電力Po=600W以上の重負荷の条件に対応する場合には、昇圧型コンバータを形成するスイッチング素子を複数設け、これらを並列接続することなどが行われる。重負荷時において、特に交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れる電流が非常に高くなる。そこで、このようにして複数のスイッチング素子を並列接続することで、各スイッチング素子に流れるスイッチング電流のピークレベルは抑えられることになる。これによりアクティブフィルタ回路8としての信頼性が高められることとなる、
【0060】
また、コントロール回路系は、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成され、例えば1石のICとされる。図12に示した乗算器11、誤差電圧増幅器12、除算器13、及び二乗器14などに相当する回路部は、このコントロール回路系としてのIC内に搭載されていることになる。そして、このコントロール回路系としてのICに対して、図10及び図12にて説明したようにして、フィードバック回路系及びフィードフォワード回路系が接続され、これらの回路系からの帰還出力に基づいて、スイッチング素子をPWM制御によって駆動する。
【0061】
そして、上記構成によるアクティブフィルタ回路8内のスイッチング素子のスイッチング駆動は、図10及び図12により説明したようにして、整流出力電流の導通角が、整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるように、PWM制御に基づくドライブ信号によって行われる。整流出力電流の導通角が整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるということは、即ち、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となることであり、結果的に、力率が1に近づくように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。実際においては、負荷電力Po=600W時において、力率PF=0.995程度となる特性が得られる。
【0062】
また、この図13に示すアクティブフィルタ回路8によっては、整流平滑電圧Ei(図10では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲で定電圧化するようにも動作する。つまり、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。
上記交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲は、商用交流電源AC100V系と200V系を連続的にカバーするものであり、従って、後段のスイッチングコンバータには、商用交流電源AC100V系と200V系とで、同じレベルで安定化された直流入力電圧(Ei)が供給されることとなる。つまり、図13に示す電源回路は、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応の電源回路として構成されている。
【0063】
そして、この場合においては、アクティブフィルタ回路8の後段には、3本で1組とされる平滑コンデンサCiA,CiB,CiCが並列に接続されている。
上記平滑コンデンサ[CiA//CiB//CiC]の組は、図10及び図12における出力コンデンサCoutに相当する。従って、この場合においては、この並列接続された平滑コンデンサ[CiA//CiB//CiC]の組の両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られることになる。この整流平滑電圧Eiが、後段の各コンバータ部201、202、203に対して直流入力電圧として供給される。そして、上記もしているように、この場合の平滑コンデンサ[CiA//CiB//CiC]の両端電圧(整流平滑電圧Ei)としては、375Vで安定化されるものとなる。
【0064】
そして、この図に示す電源回路においても、前述したような重負荷の条件に対応するために、上記整流平滑電圧Eiとしての直流入力電圧を動作電源とする複数の複合共振形コンバータが備えられる。この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの複合共振形コンバータが設けられている。
なお、これら第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の構成は図7と同様であることから、ここでの説明は省略する。
【0065】
【特許文献1】
特開平7−263262(図19)
【特許文献2】
特開平6−327246号公報(図11)
【0066】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図7及び図13に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、図7の電源回路において力率改善のために備えられるパワーチョークコイルPCHは、例えば珪素鋼板のコアと、銅線による巻線とによって構成される。このため、コアの鉄損と、銅線の抵抗による銅損が生じ、その分、このパワーチョークコイルPCHの部分での電力損失が増加することになる。
また、チョークコイルのインダクタンスと抵抗成分によって、交流入力電圧VACの電圧降下も生じることになる。特に負荷電力600に近い重負荷の条件では60V以上低下する。これにより、交流入力電圧VACを整流して得られる直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)も低下することになる。
このようなことから、直流入力電圧を入力して動作する複合共振形コンバータとしての電力変換効率は低下して、交流入力電力も増加することとなる。
【0067】
例えば図7に示す電源回路の場合、パワーチョークコイルPCHの挿入によって、重負荷時においても力率PFは0.55から0.75に改善されるが、負荷電力Po=600W時における総合的な電力変換効率ηAC→DCは、交流入力電圧VAC=100V時では、85.9%にまで低下する。また、交流入力電力Pinは、698.4Wであり、そのうち98.4Wが電力損失分に相当する。
【0068】
また、パワーチョークコイルPCHは、電源回路を構成する部品の中でも大型で重量があることから、基板における占有面積が大きく、また、回路基板も重量化してしまうという問題を有している。さらに、パワーチョークコイルPCHは、漏洩磁束の発生も比較的大きい部品となるが、部品の配置や、漏洩磁束量などの条件によっては、パワーチョークコイルPCHの漏洩磁束が負荷側に影響を与える場合がある。このような場合には、パワーチョークコイルPCHから輻射する漏洩磁束を抑える対策として、磁気シールドなどの部品を追加することになり、基板の大型化、重量化が助長されてしまうことがある。
【0069】
また、図7に示す回路の場合においては、必要数の二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を得るのに、第1、第2、及び第3コンバータ部201,202,203による、3段の複合共振形コンバータを備えているが、このようにして、電力変換の段数が多いことによっても、電力変換効率の低下を招いている。また、構成部品点数もそれだけ多くなって回路基板サイズが拡大し、コストアップにもつながる。
【0070】
さらに、図7に示す回路としては、3組の複合共振形コンバータに加えて、2組の降圧形コンバータを備えていることになるので、これらのスイッチングノイズも無視できない程度に大きなものとなる。特に、降圧形コンバータはハードスイッチング動作であるから、スイッチングノイズ発生量は多い。
【0071】
さらに、スイッチング周波数については、第1〜第3コンバータ部201〜203における複合共振形コンバータは、70KHz〜150KHzの範囲であるのに対して、第1コンバータ部201における降圧形コンバータは、例えば100KHzとなる。
このようにして、各スイッチングコンバータにおけるスイッチング周波数が異なる場合においては、1次側と二次側のアース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0072】
また、アクティブフィルタを備えて力率改善を図るようにされた、図13に示す電源回路では、次の問題を有する。
図13に示す電源回路における電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータ(第1、第2、第3コンバータ部201,202,203)のDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
【0073】
ここで、第1、第2、第3コンバータ部201,202,203におけるDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)は、95%程度である。
また、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は、交流入力電圧VAC=100V時では、93%、交流入力電圧VAC=230W時では95%となる。
従って、総合電力変換効率としては、交流入力電圧VAC=100V時では、
93%×95%=88.3%
となる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、
95%×95%=90.2%
となる。
また、これに対応して、交流入力電力は、交流入力電圧VAC=100V時では679.5W、交流入力電力230V時では、665.2Wとなる。
つまり、交流入力電圧VAC=230V(AC100V系)時に対して、交流入力電圧VAC=100V(AC200V系)時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0074】
また、図13に示す回路では、負荷電力Po=600W以上の条件のもとで、上記した電力変換効率の特性を下回ることが無いように、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)ついては、例えば交流入力電圧VAC=100V〜230Vの範囲で、94%〜97%で維持されるように設計する必要がある。
また、図7の回路と同じように3組の複合共振形コンバータと2組の降圧形コンバータを備えているが、図13に示す回路では、さらに、アクティブフィルタ回路8における昇圧型コンバータが追加されることになる。この昇圧型コンバータのスイッチング動作も、dv/di,di/dtによるもので、ハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きい。このようなことから、より重度のノイズ抑制対策が必要となる。
【0075】
このため、図13に示す電源回路としては、先ず商用交流電源ACを整流する整流回路系において、ブリッジ整流回路Di1,Di2の2組を備えている。
また、アクティブフィルタ回路8内には、複数組のパワーチョークコイルを備える必要がある。さらに、スイッチングのための半導体素子については、複数組のスイッチング素子(トランジスタ、ダイオード等)を並列接続したうえで、これらが適正に駆動されるように駆動回路を付加する必要がある。そして、これらの半導体素子に対しては、大型の放熱板を取り付ける必要もある。
また、図13に示す回路としても、商用交流電源ACのラインに対して、2組のコモンモードチョークコイルと、3組のアクロスコンデンサによるラインノイズフィルタを形成している。つまり、2段以上のラインノイズフィルタを必要としている。
さらに、整流出力ラインに対しては、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサCNから成るノーマルモードノイズフィルタ4を設けている。さらに、アクティブフィルタ回路8内においては、スイッチング素子に対して、RCスナバ回路を設けるなどの必要性も出てくる。特に、図13の回路のように重負荷に対応する場合、RCスナバ回路を形成する抵抗は、セメント抵抗であり大型である。
このようにして、実際の回路としては、非常に多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
【0076】
また、図13に示すスイッチング電源回路では、アクティブフィルタ回路8における昇圧型コンバータ、第1〜第3コンバータ部201〜203を形成する複合共振形コンバータ、第1コンバータ部201に付加される降圧形コンバータの、3種のスイッチングコンバータが混在していることになる。
この場合において、アクティブフィルタ回路8の昇圧型コンバータのスイッチング周波数は50KHzであるのに対して、前述もしているように、第1〜第3コンバータ部201〜203における複合共振形コンバータのスイッチング周波数は70KHz〜150KHzの範囲であり、第1コンバータ部201における降圧形コンバータは、例えば100KHzのスイッチング周波数である。
従って、この場合にも、各スイッチングコンバータにおけるスイッチング周波数が異なることで、一次側と二次側のアース電位が干渉する問題が生じていることになる。
【0077】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は上記した課題を考慮してスイッチング電源回路として次のようにして構成することとした。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源の2倍に対応するとされるレベルの上記整流平滑電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路を備える整流回路と、上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。
そして、上記複数のスイッチングコンバータ部の各々は、直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスを備える。また、少なくとも、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路を備える。また、各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。また、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、1以上の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧のレベルに応じてスイッチング駆動手段を制御して、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、所要の1つの二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された周波数制御型定電圧制御手段を備える。また、直流出力電圧生成手段により複数の二次側直流出力電圧が生成される場合において、周波数制御型定電圧制御手段により定電圧制御される以外の、定電圧化を必要とする所要の二次側直流出力電圧ごとに対応して設けられるもので、制御巻線と被制御巻線が巻装された可飽和リアクトルとしての制御トランスの上記被制御巻線を、二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路に挿入し、入力された二次側直流出力電圧レベルに応じて、制御巻線に流すべき制御電流レベルを可変して上記被制御巻線のインダクタンスを可変することで、この二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成されたインダクタンス制御型定電圧制御手段と、力率を改善する力率改善回路とを備える。
また、上記力率改善回路は、一次側直列共振回路に対して直列に挿入される力率改善用一次巻線と、整流平滑手段として形成される整流電流経路に挿入される力率改善用二次巻線とを巻装し、これら力率改善用一次巻線と力率改善用二次巻線とが疎結合となるようにして構成される力率改善用トランスと、整流電流経路の所要部位に挿入され、力率改善用一次巻線によって力率改善用二次巻線に励起された交番電圧に基づいてスイッチング動作を行うことで整流電流を断続する整流ダイオード素子とを備えて形成することとした。
【0078】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路は、重負荷の条件に対応するのにあたって、整流平滑電圧(直流入力電圧)を入力して動作する複数のスイッチングコンバータ部を複数備えることができる。
そして、各スイッチングコンバータ部としては、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分電圧共振回路を組み合わせた構成を採っていることになる。
また、力率改善は、疎結合による力率改善用トランスによって、複合共振形コンバータのスイッチング出力を整流電流経路に電圧帰還して、整流ダイオードにより整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図る構成が採られる。
そして、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、商用交流電源レベルに応じて倍電圧全波整流整流回路を備えることとしている。
これにより、例えば力率改善回路を備える電源回路としてワイドレンジ対応の構成とするのにあたっては、スイッチングコンバータへの直流入力電圧の安定化を図るアクティブフィルタを備える必要は無いこととなる。
また、二次側直流出力電圧を複数出力する場合においては、一次側のスイッチング手段のスイッチング周波数を制御する周波数制御型と、二次側に備えられる制御トランスにより、二次巻線に接続された被制御巻線のインダクタンスを可変制御するインダクタンス制御型とを組み合わせるようにされている。例えばこれにより、二次側直流出力電圧を安定化するために降圧形コンバータなどのハードスイッチング回路を設ける必要はなくなる。
【0079】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図7に示した回路と同様に、負荷電力Po=600W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系(AC85V〜144V)の単レンジで動作する構成を採る。
【0080】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2組のアクロスコンデンサCLから成るラインノイズフィルタが備えられる。つまり、この場合には、コモンモードノイズを除去するラインノイズフィルタとしては1段のみが設けられる。
【0081】
また、このラインノイズフィルタの後段における商用交流電源ACの正/負の各ラインに対しては、それぞれチョークコイルLN,LNが直列に挿入される。そして、チョークコイルLN,LNと、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子/負極入力端子との接続点間に対して、2本の並列接続されたフィルタコンデンサCN//CNが接続される。
これらチョークコイルLN,LN及びフィルタコンデンサCN//CNによっては、ノーマルモードノイズフィルタ4が形成され、商用交流電源の整流電流経路に発生するノーマルモードノイズを抑制する。このノーマルモードノイズフィルタ4は、力率改善回路3の一部となる。
【0082】
そして、本実施の形態の電源回路では、商用交流電源ACに対して、整流回路系を含んで形成される力率改善回路3が接続される構成を採る。この力率改善回路3は、図示するようにして、高速リカバリ型の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成るブリッジ整流回路Di、平滑コンデンサCiA,CiB,CiC、フィルタコンデンサCN//CN、及び疎結合トランス(力率改善用トランス)VFT−1,VFT−2を備えて形成される。疎結合トランスVFT−1は、第1コンバータ部101に対応して備えられ、疎結合トランスVFT−2は、第2コンバータ部102に対応して備えられる。
【0083】
そして、本実施の形態において、上記力率改善回路3に含まれる整流回路としては倍電圧全波整流回路が形成される。この倍電圧全波整流回路は、上記力率改善回路3を形成する部位のうち、ブリッジ整流回路Di(整流ダイオードDa,Db,Dc,Dd)、及び3本の平滑コンデンサCiA,CiB,CiCから成る。
整流ダイオードDaのアノードと、整流ダイオードDdの接続点は、疎結合トランスVFT−1の二次巻線N12の直列接続を介して、商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDbのアノードと整流ダイオードDcのカソードは、商用交流電源ACの負極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDbのカソードは、平滑コンデンサCiA,Cicの正極端子に対して接続される。
整流ダイオードDd,Dcの各アノードは一次側アースに接続される。
【0084】
また、倍電圧全波整流回路の平滑回路系としては、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCを、並列に接続して形成している。
つまり、平滑コンデンサCiAの負極端子と平滑コンデンサCiBの正極端子を接続した上で、平滑コンデンサCiAの正極端子を、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続する。
また、直列接続された平滑コンデンサCiA−CiBの接続点は、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)に対して接続している。
また、平滑コンデンサCiCの正極端子は、平滑コンデンサCiAの正極端子と同じく、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続される。
平滑コンデンサCiB,CiCの負極端子は、共に一次側アースに対して接続される。
【0085】
上記のようにして形成される倍電圧全波整流回路の動作について、図3を参照して説明する。図3には、図1から倍電圧全波整流回路を形成する回路部分を抜き出して示している。また、この図では、説明を簡単にするために、整流ダイオードDa,Ddの接続点と商用交流電源ACの正極ライン間に挿入される、疎結合トランスVFT−1の二次巻線N12は省略している。
【0086】
先ず交流入力電圧VACが正極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDa,Dcが導通する。これにより、図3(a)に示すようにして、商用交流電源ACの正極ライン側から流れる整流電流i1は、先ず、整流ダイオードDaを流れる。そして、この後において、整流電流i1は、平滑コンデンサCiAに流れる整流電流i1aと平滑コンデンサCiCに流れる整流電流i1bとに分岐する。
平滑コンデンサCiAに流入した整流電流i1aは、そのまま商用交流電源ACの負極ラインに流入する。平滑コンデンサCiCに流入した整流電流i1bは、一次側アースを介して整流ダイオードDcを流れた後、商用交流電源ACの負極ラインに流れる。つまり、整流電流i1a,i1bは、商用交流電源ACの負極ライン側で合流し、整流電流i1(=i1a+i1b)として流れる。
このような整流電流の経路によって、平滑コンデンサCiAと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積される。
【0087】
また、交流入力電圧VACが負極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDb,Ddが導通する。これにより、図3(b)に示すようにして、商用交流電源ACの負極ライン側から流れる整流電流i2は、先ず、平滑コンデンサCiBに流れる整流電流i2aと、整流ダイオードDbに流れる整流電流i2bとに分岐する。
整流電流i2aは、平滑コンデンサCiBに流入した後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。また、整流電流i2bは、平滑コンデンサCiCを流れた後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。この場合も、整流電流i2a,i2bは、商用交流電源ACの正極ライン側で合流し、整流電流i2(=i2a+i2b)として流れることになる。
そして、上記した整流電流経路によっては、平滑コンデンサCiBと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積されることとなる。
【0088】
ここで、平滑コンデンサCiA,CiBの各々に対しては、交流入力電圧VACが正/負となる各半周期において、交流入力電圧VACに対応する電位による充電が行われる。このため、平滑コンデンサCiA,CiBのそれぞれの両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧(直流電圧)が得られる。従って、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
このため、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路に対して並列接続される平滑コンデンサCiCに対する充電により得られる両端電圧としても、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
【0089】
このような動作の結果、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCとの並列接続により形成される平滑回路部の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが得られることになる。また、平滑コンデンサCiCに対する整流平滑動作としては、交流入力電圧VACが正/負極性の両期間により充電が行われる全波整流動作が得られている。つまり、倍電圧全波整流動作が得られているものである。
なお、このような整流回路系を含んで形成される本実施の形態の力率改善回路3による力率改善動作については後述する。
【0090】
図1に示す回路において、上記した平滑回路部(平滑コンデンサ[CiA−CiB]//CiC)の両端電圧として得られる直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を入力して動作するスイッチングコンバータとしては、図示するようにして第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の2つが備えられる。これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)に対して並列となるようにして接続される。
また、これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、それぞれ他励式のハーフブリッジ方式による電流共振形コンバータに対して、一次側部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータとしての構成を採る。また、第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、それぞれ、電圧帰還方式による力率改善回路3を形成する疎結合トランスVFT−1,VFT−2を備えることで力率改善を図るようにも構成される。
【0091】
ここで、第1コンバータ部101の構成について説明する。
この第1コンバータ部101は、上記もしているように、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。このスイッチング素子Q1,Q2のハーフブリッジ結合による回路は、整流平滑電圧Eiに対して並列に接続される。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0092】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0093】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、整流平滑電圧Eiが抵抗Rsを介して電源入力端子Vccに入力されている。
また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0094】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートに印加される。また、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるドライブ信号は、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートに印加される。
【0095】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2に対しては、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が備えられる。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるように、レベルシフトされる。
【0096】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0097】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号が印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図4(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図4(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0098】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図4(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図4(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図4(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0099】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCpにおける充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0100】
絶縁コンバータトランスPIT−1はスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と、所要数の二次巻線が巻装される。
絶縁トランスPIT−1の一次巻線N1の一端は、この場合、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に対して、一次側直列共振コンデンサC1と疎結合トランスVFT−1の一次巻線N11の直列接続を介して接続される。また、他端は、一次側アースに接続される。
【0101】
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPIT−1のリーケージインダクタンスL1によっては、一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0102】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す第1コンバータ部101は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採っている。
【0103】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPIT−1の構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線をEE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
【0104】
この場合の絶縁コンバータトランスPITにおいては、二次巻線N2,N2A,N2Bの3つの二次巻線がそれぞれ独立するようにして巻装される。
先ず、二次巻線N2からは、二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2を生成するようにされており、このうち、二次側直流出力電圧Eoを生成するための回路系は次のようになる。
つまり、二次巻線N2に形成したタップ出力を二次側アースに接地させた上で、このタップ出力をセンター位置とした所定の巻数分の位置から、1つずつ両端タップを引き出す。そして、各両端タップに対して、直交型制御トランスPRT−1の被制御巻線NR1,NR2の直列接続を介して整流ダイオードDo1、Do2を接続し、また、平滑コンデンサCoを接続することで、両波整流回路を形成する。この両波整流回路によって、平滑コンデンサCoの両端電圧として二次側直流出力電圧Eoが得られる。
ここで、二次側直流出力電圧Eoは、安定化のために、分岐して制御回路7に対して入力される。
【0105】
直交型制御トランスPRT−1は、例えば制御巻線Ncに対して、被制御巻線NR1,NR2の巻方向が直交する関係となるようにして、制御巻線Nc及び制御巻線NR1,NR2をコアに巻装して構成される。このようにして構成される直交型制御トランスPRT−1は、可飽和リアクトルとなる。
この場合の制御回路7では、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、そのレベルを可変した直流電流を制御電流として出力する。この制御電流レベルの変化に応じて、可飽和リアクトルである直交型制御トランスPRT−1では、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが可変される。被制御巻線NR1,NR2は、二次側直流出力電圧Eoのための整流回路系において直列に挿入されているので、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが変化すれば、平滑コンデンサCoに流入する整流電流量が変化することになって、二次側直流出力電圧Eoのレベルが変化することになる。このようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを可変制御することで定電圧制御が行われることになる。
【0106】
また、二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系は、図示するようにして、二次巻線N2の一方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−2の被制御巻線NR−整流ダイオードDo3を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo1を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系においても、直交型制御トランスPRT−2及び制御回路7を備えることで、上述のようにして、二次側直流出力電圧Eo1についての定電圧化が図られる。
【0107】
また、二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系も、二次巻線N2の他方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−3の被制御巻線NR−整流ダイオードDo4を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo2を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系としても、直交型制御トランスPRT−3及び制御回路7を備えており、二次側直流出力電圧Eo2についての定電圧化が図られる。
【0108】
また、二次側直流出力電圧Eo3は、二次巻線N2Aに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Aのセンタータップを0電位に接続した上で、整流ダイオードDo5,Do6及び平滑コンデンサCo3から成る。
そして、両波整流回路に対しては、直交型制御トランスPRT−4の被制御巻線NR1,NR2が図示するようにして直列に挿入され、制御回路7は二次側直流出力電圧Eo3に応じたレベルの制御電流を直交型制御トランスPRT−4の制御巻線Ncに対して出力するようにされている。つまり、二次側直流出力電圧Eo3についての定電圧化が図られるようになっている。
【0109】
さらに、二次側直流出力電圧Eo4については、二次巻線N2Bに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Bのセンタータップを二次側アースに接続するとともに、整流ダイオードDo7,Do8及び平滑コンデンサCo5を接続して、先ずは、直流電圧E4を得るようにされ、この直流電圧E4のラインと、平滑コンデンサCo6の間に、DCスイッチ回路6のトランジスタQ5を直列に挿入して形成される。二次側直流出力電圧Eo4は、平滑コンデンサCo6の両端電圧として得られる。
【0110】
この二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化は、スイッチング周波数制御方式によって行われる。つまり、二次側直流出力電圧Eo4は分岐して、検出電圧として制御回路1に入力される。制御回路1では、二次側直流出力電圧Eo4のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力として、第1コンバータ部101内のコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。このコントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになる。この結果、二次側直流出力電圧Eo4のレベルが一定となるように定電圧制御が行われる。
【0111】
DCスイッチ回路6は、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3に応じて、二次側直流出力電圧Eo4の立ち上げタイミングをコントロールするために設けられる。
このDCスイッチ回路6は、図示するようにして、MOS−FETのトランジスタQ5、バイポーラのトランジスタQ6、ツェナーダイオードDZ、抵抗R1,R2,R3,R4、及び時定数コンデンサC3を図示するようにして接続して形成される。
つまり、トランジスタQ5のドレインを平滑コンデンサCo5の正極端子と接続し、ソースを平滑コンデンサCo6の正極端子と接続する。トランジスタQ5のゲートは、抵抗R2を介してトランジスタQ6のコレクタに接続される。また、トランジスタQ5のゲート−ドレイン間には、抵抗R1//ツェナーダイオードDZの並列回路が接続される。ここでは、ツェナーダイオードDZのアノードがトランジスタQ5のゲート側で、カソードがドレイン側となるようにされる。
トランジスタQ6のベースには抵抗R4を介した立ち上げ信号Vt3が、オン/オフ制御信号として入力されるようになっている。また、トランジスタQ6のベース−エミッタ間には、抵抗R3が挿入される。トランジスタQ6のエミッタは二次側アースに接続される。
そして、時定数コンデンサC3は、正極端子をトランジスタQ6のベースに接続し、負極端子を二次側アースに接続するようにされる。この時定数コンデンサC3には、例えば電解コンデンサが用いられる。
また、この場合には、DCスイッチ回路6に入力されるオン/オフ制御信号として、第2コンバータ部102の二次側直流出力電圧Eo5を入力するようにしている。
【0112】
このような構成では、二次側直流出力電圧Eo5がオン/オフ制御信号として入力開始される時点から、トランジスタQ6が完全にオン状態となる時点について、抵抗R4と時定数コンデンサC3の時定数に応じて設定された所定の遅延時間が与えられることになる。
【0113】
ここで、オン/オフ制御信号である二次側直流出力電圧Eo5が0レベルである場合、トランジスタQ6はオフ状態を維持するが、このときには、トランジスタQ5におけるゲート−ソース間電圧が閾値を満たさないことから、トランジスタQ5もオフとなる。このため、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子とは接続されないことになって、平滑コンデンサCo6への整流電流の充電は行われないことになる。このため、平滑コンデンサCo5の両端に直流電圧E4が得られているとしても、平滑コンデンサCo6の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo4は0レベルのままである。
これに対して、二次側直流出力電圧Eo5が所定レベルにまで立ち上がって所定の正極レベルが得られると、上記抵抗R4と時定数コンデンサC3の時定数に応じて設定された遅延時間を経過した後に、トランジスタQ6は完全なオン状態に切り換わって、抵抗R2の両端に電位を生じさせる。
これによって、ツェナーダイオードDZのアノードは、トランジスタQ6のコレクタ−エミッタを介して二次側アースに対して接続されることとなって、直流電圧E4によって導通することになる。ツェナーダイオードDZが導通することによっては、トランジスタQ5のゲートに対して閾値を満たすレベルのゲート電圧が印加されることになって、トランジスタQ5もオンとなる。これにより、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子が接続されることとなって、平滑コンデンサCo6で整流電流が充放電される。これにより、二次側直流出力電圧Eo4が発生することになる。
【0114】
第2コンバータ部102は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1、二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1、疎結合トランスVFT−2、第1コンバータ部101と同様にして接続している。これにより、一次側スイッチングコンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータと、部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータを形成している。
【0115】
また、この場合の第2コンバータ部102の二次側においては、DCスイッチ回路6Aを備えた両波整流回路が形成されている。
この両波整流回路は、先ず、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次巻線N2に設けたセンタータップを二次側アースに接地したうえで、図示するようにして、整流ダイオードDo9,Do10、及び平滑コンデンサCo7を接続している。
そして、DCスイッチ回路6Aを形成するMOS−FETのトランジスタQ7のドレイン−ソースを介して、平滑コンデンサCo7と、平滑コンデンサCo8の正極端子が接続されている。
先ず、整流ダイオードDo9,Do10、及び平滑コンデンサCo7から成る整流回路により両波整流が行われることで、平滑コンデンサCo7の両端電圧として直流電圧E5が得られる。このとき、DCスイッチ回路6AにおいてトランジスタQ7がオン状態にあるとすると、この直流電圧E5による平滑コンデンサCo8への充電が行われ、平滑コンデンサCo8の両端電圧として、二次側直流出力電圧Eo5が得られることになる。
この二次側直流出力電圧Eo5に対する定電圧制御としては、制御回路1が直流電圧E5を入力して、コントロールIC2に出力を行っていることからも分かるように、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御方式により行われる。
【0116】
DCスイッチ回路6Aは、MOS−FETのトランジスタQ7、バイポーラのトランジスタQ8、ツェナーダイオードDZ、抵抗R8,R9,R10、時定数コンデンサC8を、DCスイッチ回路6の場合とほぼ同様に接続して形成される。従って、このDCスイッチ回路6Aとしても、オン/オフ制御信号の入力が開始されてからトランジスタQ7が完全にオンとなるまでの時間について、抵抗R8と時定数コンデンサC8の時定数に応じた遅延が与えられる。そして、DCスイッチ回路6Aにおいては、オン/オフ制御信号として、第1コンバータ部101側で生成される二次側直流出力電圧Eoが入力される。
【0117】
図7の回路で説明したようにして、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号はVt1,Vt2,Vt3の3つとされているが、図1に示す電源回路が使用する立ち上げ信号はVt1のみとされている。この場合、立ち上げ信号Vt1は、第1コンバータ部101のコントロールIC2の起動端子Vtに入力するようにしている。
【0118】
続いて、上記のようにして構成される図1に示す電源回路における力率改善のための構成について説明する。
この図に示す回路においては、力率改善のために力率改善回路3が備えられる。この力率改善回路3は、商用交流電源ACを整流平滑化する整流回路系に対して、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を電圧帰還する構成を採る。そして、この場合においては、スイッチング出力を電圧帰還するための手段として、疎結合トランスVFT−1、VFT−2を備える。
【0119】
ここで、疎結合トランスVFT(VFT−1、VFT−2)の構造例を図5に示しておく。
この図に示すように、疎結合トランスVFTは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアを備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N11が巻装される。また、他方の巻装部に対して二次巻線N12が巻装される。このようにして一次巻線及び二次巻線が巻装されたボビンBを上記EE型コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE型コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにして疎結合トランスVFT全体としての構造が得られる。
また、この場合には、中央磁脚の接合部分に対して所要のギャップ長のギャップGを形成するようにしており、これにより、結合係数について0.75以下となる疎結合の状態が得られるようにしている。
【0120】
そして、力率改善回路3による力率改善動作としては次のようになる。
先ず、説明を分かりやすくするため、第1コンバータ部101側のみによる力率改善動作について述べる。
第1コンバータ部101に備えられる疎結合トランスVFT−1においては、一次巻線N11に対して、第1コンバータ部101における一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力が伝達される。これに応じて、疎結合トランスVFTの二次巻線N12には、交番電圧が励起されることになる。
ここで、疎結合トランスVFTの二次巻線N12は、商用交流電源ACの正極ラインと、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Ddの接続点との間に挿入されている。つまり、疎結合トランスVFTの二次巻線N12は整流電流経路に挿入されていることになる。疎結合トランスVFTによっては、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を整流電流経路に電圧帰還する動作が得られることになる。
【0121】
上記のようにして整流電流経路に対してスイッチング出力が電圧帰還されることで、先に図3により説明したようにして、ブリッジ整流回路Diを形成する高速リカバリ型の整流ダイオード(Da〜Dd)に整流電流が流れるとき、これらの整流ダイオードでは、疎結合トランスVFTの二次巻線N12に励起された交番電圧によって、スイッチング動作を行うように駆動される。
これにより、整流ダイオードに流れる整流電流は、スイッチングにより断続されることになり、整流電流としては交番波形となる。つまり、交流入力電流IACを源として流れる整流電流について高周波成分が重畳される。
このようにして整流電流が断続されることで、整流出力電圧レベルが整流平滑電圧Eiのレベルよりも低いとされる期間にも平滑コンデンサCiへの充電電流が流れるようにされる。
この結果、交流入力電流の平均的な波形が交流入力電圧の波形に近付くようにされることで、交流入力電流IACの導通角が拡大される。このようにして、交流入力電流IACの導通角が拡大される結果、力率改善が図られることになる。
【0122】
そして、図1に示す力率改善回路3の実際としては、第2コンバータ部102の疎結合トランスVFT−2も備えた構成となっている。
ここで、疎結合トランスVFT−2の二次巻線N12は、第1コンバータ部101の疎結合トランスVFT−2の二次巻線N12に対して並列に接続されている。従って、上記した整流電流経路においては、実際には、疎結合トランスVFT−1,VFT−2の各二次巻線N12//N12の並列回路に整流電流が流れることになり、二次巻線N12//N12の並列回路が整流電流経路内に含まれることになる。
これは、疎結合トランスVFT−1,VFT−2によって、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の両方のスイッチング出力を整流電流経路に帰還するように構成していることを意味する。
つまり、本実施の形態では、第1コンバータ部101に対応しては疎結合トランスVFT−1により電圧帰還して力率改善を図り、また、第2コンバータ部102に対応しては疎結合トランスVFT−2により電圧帰還して力率改善を図る構成を採っているものである。なお、疎結合トランスVFT−1,VFT−2の各一次巻線N11、二次巻線N12のインダクタンス値については、例えば、力率PF=0.8程度が得られるようにして選定を行うようにされる。
【0123】
また、図1に示す電源回路の構成によると、第1コンバータ部101において、二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo4の5つの二次側直流出力電圧を生成し、第2コンバータ部102において二次側直流出力電圧Eo5を生成するようにしている。
つまり、本実施の形態としても、図7にて説明した先行技術の場合と同様にして、
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
を得るようにされている。
但し、本実施の形態においては、第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の、2つのコンバータ部によって上記6つの負荷(二次側直流出力電圧)をまかなうこととしており、従って、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部101:250W
第3コンバータ部102:350W
となって、これにより総合で600Wとなるようにしている。
【0124】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を生成して負荷に供給する構成の下では、図7においても説明したように、電源起動時において、二次側直流出力電圧についてしかるべき順序で以て立ち上がらせる必要がある。つまり、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにすることが要求される。
【0125】
このような二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御について、図6を参照して説明する。
ここで、二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御のため、図1においては図示していないマイクロコンピュータからは、立ち上げ信号(起動制御信号)Vt1,Vt2,Vt3を出力可能とされている。しかしながら、前述もしたように、図1に示す回路において、二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御のために、利用する立ち上げ信号は、最も早いタイミングの立ち上げ信号Vt1のみである。なお、ここでいうマイクロコンピュータとは、図1に示す電源回路が搭載される機器に備えられているものとされる。そして、図1に示す電源回路は、メイン電源であり、このメイン電源がオフとなっているときには、マイクロコンピュータは、ここでは図示していないスタンバイ電源によって動作している。従って、メイン電源が立ち上がっていなくとも、スタンバイ電源によって動作しているために、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力することは可能とされている。
【0126】
立ち上げ信号Vt1は、第1コンバータ部101のコントロールIC2における起動端子Vtに対して入力されるようになっている。
マイクロコンピュータは、メイン電源がオンとなったことを認識すると、図6(a)に示すように、時点t1とされる所定のタイミングにより立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。これに応じて、図6(b)に示すように、第1コンバータ部101も時点1から起動することとなって、二次側直流出力電圧Eoが立ち上がることになる。
【0127】
また、この時点t1に対応しては、同じ第1コンバータ部101の二次側にて得られる二次側直流出力電圧も立ち上がることになる。ただし、この場合にも、二次側直流出力電圧Eo4については、図6(h)に示すように、時点t1において立ち上がることはない。その前段の直流出力電圧E4は、図6(c)に示すように第1コンバータ部101の起動に応じて時点t1から立ち上がる。
【0128】
また、立ち上げ信号Vt1がHレベルとなる時点t1は、ほぼメイン電源のオン時点に対応している。この図に示す第2コンバータ部102の起動端子には、立ち上げ信号が入力されることなくオープンとなっている。この場合には、電源入力端子Vccから入力される起動時の電圧に応じて、コントロールIC2が動作を開始することになる。
このため、第2コンバータ部102も、時点t1とほぼ同じタイミングでスイッチング動作を開始するようにして起動することになる。そして、これに応じては、図6(d)に示すように、第2コンバータ部102の二次側に備えられる平滑コンデンサCo7の両端電圧である直流電圧E5も、ほぼ時点t1から立ち上がることになる。ただし、この時点では、DCスイッチ回路6AのトランジスタQ7はオフ状態となっているので、平滑コンデンサCo8の両端電圧となる二次側直流出力電圧Eo5は、図6(f)に示すように立ち上がってはいない。
【0129】
ここでは、二次側直流出力電圧Eoが、時点t1から或る時間経過した時点t1Aにおいて規定レベルに達した状態となる。これに応じて、オン/オフ制御信号として二次側直流出力電圧Eoが入力される、第2コンバータ部102のDCスイッチ回路6Aでは、例えばこの時点t1Aのタイミングで、図6(e)に示すようにしてトランジスタQ8のベース電圧が徐々に上昇していくようにされる。このベース電圧の上昇の傾きは、抵抗R8と時定数コンデンサC8の時定数によって決定される。
そして、例えば時点t2において、トランジスタQ8のベース電圧が所定レベルにまで至ったとされると、このときにトランジスタQ8が完全にオン状態とされることになる。そして、このときにはトランジスタQ7も完全にオンとなる状態が得られており、図6(d)に示す平滑コンデンサCo7の両端電圧である直流電圧E5が、トランジスタQ7を介して、平滑コンデンサCo8に供給されることになる。これにより、平滑コンデンサCo8の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo5は、図6(f)に示すようにして、時点t2から立ち上がるようにされる。
【0130】
そして、上記のようにして時点t2において立ち上がった二次側直流出力電圧Eo5は、第1コンバータ部101側のDCスイッチ回路6に対してオン/オフ制御信号として入力されることになる。
これに応じて、DCスイッチ回路6では、図6(g)に示すようにして、抵抗R4と時定数コンデンサC3の時定数によって決定される時間で以て、トランジスタQ6のベース電圧が上昇していく動作が得られる。
そして、例えば時点t3において、トランジスタQ6のベース電圧が所定レベルにまで至って完全にオン状態になったとされると、トランジスタQ5も完全にオンとなる状態が得られることになる。この結果、図6(c)に示す直流電圧E4が、トランジスタQ5を介して、平滑コンデンサCo6に供給されることになる。これにより、平滑コンデンサCo6の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo4は、図6(h)に示すようにして、時点t3から立ち上がることになる。
このようにして、図1に示す電源回路においては、図7の回路と同様の、二次側直流出力電圧の立ち上げタイミングが得られるようにされている。
【0131】
なお、参考までに、図1に示す電源回路において備えられる各トランスのコアの形状サイズについて記しておく。
PIT−1:EER−40
PIT−2:EER−42
VFT−1,VFT−2:EE−28
PRT:フェライトコア(15mm×15mm×20mm)
【0132】
このようにして構成される図1に示す本実施の形態の電源回路と、先行技術として示した図7の回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、実験結果によると、図7に示した電源回路では、力率PF>0.75となるのは、負荷電力Po600W〜500Wの範囲である。これに対して、図1に示す回路では負荷電力Po600W〜100Wの範囲で、力率PF>0.75となる特性が得られ、例えば国内高調波歪み規制をクリアする範囲が拡大されることになる。
【0133】
また図1に示す回路では、パワーチョークコイルPCHが省略され、代わりに、疎結合トランスVFTが設けられている。
これにより、図1に示す回路では、パワーチョークコイルPCHのインダクタンスによる整流平滑電圧のレベル低下がなくなることから、より高い電力変換効率が得られることになる。特に、本実施の形態では、スイッチング出力の電圧帰還分が整流電流経路に重畳されるので、この点でも、整流平滑電圧Eiのレベル低下が有効に抑制される。
また、パワーチョークコイルPCHは、相当に重量があり、また、大型なものであることから、基板サイズ及び基板重量を大幅に拡大させていた。
これに対して、図1に示す回路の場合、力率改善に必要とされる疎結合トランスVFTとフィルタコンデンサCNを総合しても、パワーチョークコイルPCHと比較した場合には、相当に軽量で小型なものとなる。つまり、本実施の形態の電源回路は、力率改善機能を有する負荷電力Po=600W以上に対応可能な電源回路として、図7に示す電源回路よりも、大幅な小型、軽量化が図られることになる。
例えば重量に関しては、図7に示す回路に備えられるパワーチョークコイルPCHは1つあたり250gであり、2つ合わせて500gとなるのに対して、図1に示す回路に備えられる疎結合トランスVFTは1つあたり50gであり、2つ合わせて100gとなる。つまり、重量的に見ただけでも、図1に示す回路では、力率改善のための回路部品の重量について、ほぼ1/5にまで削減されている。
【0134】
また、パワーチョークコイルPCHが省略されることで、このパワーチョークコイルPCHにて発生する漏洩磁束による負荷側への影響も考慮する必要がない。このため、例えばパワーチョークコイルPCHに磁気シールド板を施すような対策も不要となるから、この点でも、回路の小型軽量化に寄与することになる。
【0135】
また、図1に示す電源回路では、一次側において直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路を、倍電圧全波整流回路としている。この倍電圧整流回路の平滑回路系は、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と平滑コンデンサCiCとを並列接続して整流電流経路を分流させている。これにより、交流入力電圧VACが正の期間において、整流ダイオードDa,Dcに流れるのは、整流電流i1が分流した整流電流i1bの成分のみとなる。また、交流入力電圧VACが負の期間においては、整流ダイオードDbには、整流電流i2が分流した整流電流i1bの成分のみが流れる。
これにより、上記各整流ダイオードに流れる整流電流のピークレベルは、例えば図7の回路における倍電圧半波整流回路よりも抑制されることになり、これらの整流ダイオードの順方向電圧降下による電力損失も低減される。そして、これにより、電源回路としての電力変換効率(ηAC→DC)の大幅な向上に寄与することになる。
【0136】
また、図7に示す回路においては、二次側直流電圧の安定化のために、スイッチング周波数制御方式に対して、降圧型コンバータを組み合わせた構成を採っているが、降圧形コンバータによるPWM制御は、例えば負荷電流の増加に応じて電力損失が増加して、電力変換効率を低下させる要因となる。これは、例えば降圧形コンバータ以外の定電圧化の手段として、3端子のシリーズレギュレータやトロイダルコアを備えるマグアンプ(磁気増幅器)の回路等を備えた場合にも同様のことがいえる。
これに対して、本実施の形態では、直交型制御トランスPRTを備えて、整流電流経路に挿入した直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRのインダクタンスを可変することで安定化を図ることとしている。直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRにおける電力損失は少なく、被制御巻線NRのインダクタンス可変のために制御回路等が必要とする制御電力は0.4W程度となる。これによっても、電力変換効率の向上に寄与している。
【0137】
このようにして、図1に示す回路では、大幅な電力変換効率の向上が図られている。
例えば、図7の電源回路ではAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が85.9%、交流入力電力が698.4Wであるのに対して、図1の電源回路では、AC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が91.4%で5.5%向上している。また、交流入力電力は656.5Wであり41.9W低減している。
また、直交型制御トランスPRTを備える安定化のための回路構成は、低コストでもある。
【0138】
また、図1に示す回路では、倍電圧整流回路の平滑回路部を上記のようにして形成していることで、平滑コンデンサCiCについては、その両端電圧が整流平滑電圧Eiレベルとして得られるようになっている。つまり、平滑コンデンサCiCについては、図5に示す回路における平滑回路部のようにして、アッパーサイドとローアーサイドの平滑コンデンサのリップルが二重に重畳された整流平滑電圧Eiを生成することにはならない。
この結果、図1の整流回路の整流平滑電圧Eiのリップル電圧は、図5の整流回路の約1/2にまで抑制され、これに伴って、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の各二次側直流出力電圧に現れるリップル電圧も約1/2に抑制されることになる。なお、本実施の形態において、例えば平滑コンデンサCiA,CiBについては、1000μF/200V,平滑コンデンサCiCについては、560μF/400Vを選定することで、瞬時停電が生じても、商用交流電源の1周期の動作を保証することができる。
また、図7に示す電源回路では、整流平滑電圧Eiを生成するための平滑コンデンサとして4本を備えているが、図1に示す回路では、上記平滑コンデンサCiA,CiB,CiCの3本であり、これによる回路規模の縮小、及び低コスト化も図られることになる。
【0139】
また、図1に示す電源回路では、降圧形コンバータが省略されており、ハードスイッチング動作をするコンバータが無くなっていることが分かる。本実施の形態においては、直交型制御トランスPRT及び制御回路7を備えて、直流的な制御電流供給によって二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2などの安定化を図る構成としていることで、降圧形コンバータの省略を可能としている。
これにより、図1の電源回路を形成する第1コンバータ部101、第2コンバータ部102及び力率改善回路3の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作のみとなるから、図7に示した電源回路と比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
また、図7に示す電源回路では、3段の複合共振形コンバータ部が設けられているのに対して、図1に示す電源回路では、第1及び第2コンバータ部101,102の2つとしている。このようにして複合共振形コンバータ部の数が削減されることによっても、上記した回路の小型軽量化が促進され、また、電力変換効率向上の一要因にもなっている。また、ソフトスイッチング動作であるから、もともとスイッチングノイズは少ないものの、複合共振形コンバータ部の数が削減されれば、それだけスイッチングノイズも減少されることとなって、この点でのメリットも得られている。
【0140】
このため、図1に示した回路では、1組のコモンモードチョークコイルCMCと2本のアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格値をクリアすることが充分に可能とされる。
このようにしてノイズフィルタとしての部品点数が削減されることによっても、電源回路のコストダウンと、回路基板の小型軽量化は促進される。
【0141】
また、図7に示す電源回路の場合には、3組のコンバータ部201,202,203と、2組の降圧形コンバータが、それぞれ異なるスイッチング周波数で動作する構成となっていた。
これに対して、本実施の形態では、互いに異なるスイッチング周波数によって独立してスイッチング動作を実行するのは、2組のコンバータ部101,102のみとなる。コンバータ部101,102のスイッチング周波数は、定電圧化のために、例えば70KHz〜150KHzの範囲で、二次側直流出力電圧E4,Eo5のレベルに応じてそれぞれ変化する。
このようして、異なるスイッチング周波数によりスイッチング動作するコンバータの数が削減されることによっては、一次側と二次側のアース電位の干渉もそれだけ少なくなるから、電源回路の動作もより安定することとなる。
【0142】
ところで、図6に示す回路において、複合共振形コンバータとして、コンバータ部201,202,203の3つを設けているのは、図9にも示したように、時点t1,t2,t3の3段階で二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングを制御しなければならないことも要因となっている。
つまり、時点t1,t2,t3ごとに出力される立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3ごとに対応して、二次側直流出力電圧を立ち上げようとした場合に、これに応じて、3つの複合共振形コンバータを備え、各複合共振形コンバータのコントロールIC2の起動を、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3によりコントロールするという構成が、これまでにおいて行われてきたからである。
【0143】
これに対して、図1に示す回路では、DCスイッチ回路6,6Aを設け、立ち上げ信号Vt1のみにより、これらDCスイッチ回路6,6Aのオン/オフ状態を制御して、二次側直流出力電圧Eo4についての立ち上げをコントロールするようにしている。これにより、二次側直流出力電圧の立ち上げコントロールに必要なコントロールICが削減可能となった結果、図1に示す回路では、コンバータ部を1つ削減することが可能となっているものである。
【0144】
図2は、本発明の第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図13に示した回路と同様に、負荷電力Po=600W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系(AC85V〜288V)とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
なお、この図において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0145】
この図2に示す電源回路は、先に図1に示した電源回路を基本構成として、ワイドレンジの商用交流電源に対応する構成を採っている。このために、整流回路切換モジュール5が備えられている。
【0146】
整流回路切換モジュール5は、リレーRLを駆動することで、整流回路系の動作をAC100V系とAC200V系とで切り換えるために設けられる。このために、検出端子T11には、商用交流電源ACを、ダイオードD10及びコンデンサC10により半波整流して得た直流電圧が、検出電圧として入力されるようになっている。検出端子T11から入力される直流電圧レベルは、商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)のレベルに応じた変化を示す。つまり、整流回路切換モジュール5は、整流平滑電圧Eiのレベルを検出することで、商用交流電源ACのレベルを検出するようになっている。
また、リレー駆動端子T12,T13間に対してはリレーRLが接続される。なお、リレーRLは、自身の導通状態に応じて、リレースイッチSをオン/オフ制御する。また、ここでは、リレーRLが導通状態ではリレースイッチSがオン、リレーRLが非導通状態ではリレースイッチSがオフとなるようにされている。
また、端子T15は、整流回路切換モジュール5のアースラインを一次側アースに接地させるための端子である。
【0147】
また、上記リレーRLによってオン/オフ制御されるスイッチSは、平滑コンデンサCiA−CiBの接続点と、整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)との間に対して直列に挿入される。
【0148】
上記した構成による整流回路系の切り換え動作は次のようになる。
整流回路切換モジュール5では、検出端子T11に入力される交流入力電圧VACのレベルと所定の基準電圧とを比較する。検出端子T11に入力される電圧レベルは、交流入力電圧VAC=150V以上であるときには上記基準電圧以上となり、交流入力電圧VACが150V以下であるときには上記基準電圧以下となる。つまり、基準電圧は、交流入力電圧VAC=150Vに対応したレベルとなっている。
そして、整流回路切換モジュール5では、入力された直流電圧のレベルが基準電圧以下であるときには、リレーRLをオンとし、基準電圧以上であるときには、リレーRLをオフとするように駆動する。
【0149】
ここで、例えばAC200V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以上に対応するレベルが入力されたとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが基準電圧以上となるので、整流回路切換モジュール5は、リレーRLをオフとする。これに応じて、リレースイッチS1もオフ(オープン)となる。
リレースイッチS1がオフの状態では、平滑コンデンサCiA−CiBの接続点と、整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)が、接続されない状態となる。
このため、交流入力電圧VACが正/負となる各期間において、交流入力電圧VACをブリッジ整流回路Diで整流して得られる整流電流により、平滑コンデンサCiA−CiBの直列接続回路と平滑コンデンサCiCとを並列接続して形成される平滑回路部に対して充電する動作が得られる。
これは、通常のブリッジ整流回路を備えた全波整流回路による整流動作となる。これにより、平滑コンデンサCiA−CiBの直列接続回路と平滑コンデンサCiCの並列接続から成る平滑回路の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiが得られる。
【0150】
これに対して、AC100V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以下に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが上記基準電圧以下となって、整流回路切換モジュール5はリレーRLをオンとするので、リレースイッチS1はオン(クローズ)となるように制御される。
リレースイッチS1がオンの状態では、平滑コンデンサCiA−CiBの接続点と、整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)が、接続される状態となる。従って、整流動作としては、先に図3により説明した倍電圧全波整流動作が得られる。
【0151】
このようにして、図2に示す回路では、商用交流電源AC100V系の場合には、倍電圧全波整流動作により、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成し、商用交流電源AC200V系の場合には、例えば通常の全波整流回路による等倍電圧整流動作によって、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。つまり、商用交流電源AC100V系の場合と、AC200V系の場合とで、結果的に同等レベルの整流平滑電圧Eiが得られるようにしており、これによって、ワイドレンジ対応としているものである。
【0152】
図2に示す回路における第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の構成、力率改善回路3による力率改善動作、及び二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御などのための構成としては、図1の場合と同様であることからここでの説明は省略する。
また、確認のために述べておくと、AC200V系時において全波整流回路による等倍電圧整流動作が行われる場合にも、疎結合トランスVFTにより電圧帰還されるスイッチング出力によって、整流ダイオードが整流電流をスイッチングする動作が得られ、力率改善が図られることになる。
【0153】
なお、このようにして構成される図2の電源回路における力率改善特性としては、交流入力電圧VAC=100V時では、負荷電力Po=600W〜25Wの範囲で力率PF>7.5であり、国内高調波歪規制をクリアする。また、交流入力電圧VAC=230V時では、負荷電力Po=600W〜300Wの範囲で、欧州の規制値をクリア可能な力率の値が得られている。
【0154】
また、図2に示す電源回路における、各トランス(PIT−1,PIT−2,VFT−1,VFT−2、PRT−1〜PRT−4)、平滑コンデンサCiA,CiB,CiCについては、図1の回路と同様のコアサイズ、定数のものを選定することができる。
【0155】
このようにして構成される図2に示す電源回路と、図13に示した電源回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図13に示す電源回路では、力率改善のためにアクティブフィルタを備えており、このアクティブフィルタの出力が例えば375Vで一定に制御されることを利用して、AC100V系時とAC200V系時にかかわらず、後段の複合共振形コンバータの直流入力電圧を一定としている。つまり、ワイドレンジ対応の電源回路を構成している。
これに対して、図2に示す電源回路では、疎結合トランスVFTによってスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還することで力率改善を図っている。また、AC100V系時に倍電圧全波整流回路を形成し、AC200V系では全波整流回路を形成するように整流回路系を切り換えることで、ワイドレンジ対応としている。つまり、図2に示す電源回路では、ワイドレンジ対応で力率改善機能を有する電源回路として、アクティブフィルタが省略された構成を採っているものである。
【0156】
アクティブフィルタは、1組のコンバータを構成するものであり、図13による説明からも分かるように、実際には、複数本のスイッチング素子と、これらを駆動するためのIC等を始め、多くの部品点数により構成される。
これに対して、図1に示す電源回路に備えられる力率改善回路3は、疎結合トランスVFT−1,VFT−2を整流電流経路に追加するのみであり、また、疎結合トランスVFT−1,VFT−2は、前述もしたように、EE−28型の小型なコアによる部品素子である。従って、アクティブフィルタと比較すれば相当に少ない部品点数となり、また、部品素子の基板実装面積も縮小する。
これにより、図1に示す電源回路としては、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応の電源回路として、図13に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
【0157】
また、アクティブフィルタは、ハードスイッチング動作をする昇圧型コンバータを備えて成るものであり、従って、スイッチングノイズが大きい。図2に示す回路では、このアクティブフィルタが省略されていることで、スイッチングノイズのレベルが大幅に低減されることになる。
また、図2の回路でも、図1の回路と同様にして、直交型制御トランスPRT及び制御回路7によるインダクタンス制御とすることで、二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2などの安定化を図る構成を採っており、また、DCスイッチ回路6,6Aを備えることで、立ち上げ信号Vt1のみによって、所要数の二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御が行われるようにされている。
これにより、二次側の降圧形コンバータが省略される。また、図13に示す電源回路では、複合共振形コンバータ部の数が3であるのに対して、図2に示す電源回路でも、第1及び第2コンバータ部101,102の2つとなる。
この結果、図2の電源回路もスイッチングコンバータ部の数が削減されているものであり、その分の部品点数の削減及びコスト削減が図られることになる。
【0158】
また、図13に示す電源回路の総合電力変換効率は、前段のアクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC/DC)とにより決定されるものであった。これに対して、図1に示す電源回路は、アクティブフィルタを前段に備えていないから、総合電力変換効率は、この電流共振形コンバータのAC−DC電力変換効率として見ればよいことになる。そして、本実施の形態のようにして、電圧帰還方式による力率改善回路を備える場合、その電力変換効率は、力率改善回路を備えない場合の複合共振形コンバータとほぼ同等であることが分かっている。
これにより、図1に示す電源回路としては、前述もしたように、電力変換効率について、図13に示す電源回路よりも大幅に向上されることになる。
【0159】
そのうえで、さらに図2に示す回路では、AC100V系時において倍電圧全波整流回路が形成されるようになっている。これにより、例えばAC100V系時において、倍電圧半波整流回路が形成される構成と比較すれば、図1としても説明したように、この整流回路系における電力損失も大幅に低減され、この点でも電力変換効率の向上に寄与することになる。
実験結果としては、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=230V時においては、AC−DC電力変換効率(ηAC/DC)は94.0%であり、図13に示す回路よりも2.3%向上している。交流入力電力は、638.3Wであり、図13の回路に対して26.9W低減している。力率PF=0.78となる結果が得られた。
負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100V時においては、AC−DC電力変換効率(ηAC/DC)は91.4%であり、図13に示す回路に対して3.1%向上している。上記しているように、交流入力電圧VAC=230V時のAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)の向上分が2.3%であることと比較しても、倍電圧全波整流回路による電力損失の低減が、電力変換効率の向上に大きく寄与していることが分かる。交流入力電力は、657.2Wであり、図13に示す回路よりも22.3W低減している。また、この条件では、力率PF=0.83となる結果が得られた。
【0160】
また、図2に示す回路としても、図13に示す回路と比較すれば、一次側と二次側のアース電位の干渉が少なくなって、電源回路の動作が安定する効果が得られる。
つまり、図13に示す回路の場合、アクティブフィルタ回路8と、3組のコンバータ部201,202,203と、2組の降圧形コンバータが、それぞれ異なるスイッチング周波数で動作する構成となっていた。
これに対して図2に示す回路では、定電圧化のために、コンバータ部101,102のスイッチング周波数が、例えば70KHz〜150KHzの範囲で、二次側直流出力電圧E4,Eo5のレベルに応じてそれぞれ変化するのみとなる。つまり、互いに異なるスイッチング周波数によって独立してスイッチング動作を実行するのは、2組のコンバータ部101,102のみとされている。
また、上記のようにして、スイッチングコンバータ数が削減されることによってよっても、スイッチングノイズは、さらに低減されることになる。しかも、この場合には、コンバータ部101,102は共にノイズの少ない共振形であるから、ノイズ低減の効果は大きい。これにより、図2に示した回路としても、1組のコモンモードチョークコイルCMCと2本のアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格値をクリアすることが充分に可能となるものである。
【0161】
また、本発明としては、これまでに説明した上記各実施の形態としての電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0162】
また、力率改善回路3の構成としても、上記各実施の形態として示したもの以外に限定されるものではなく、これまでに本出願人が提案してきた各種の電圧帰還方式による回路構成のうちから、適用可能なものを採用してよい。
【0163】
また、本発明に基づく電源回路としては、スイッチングコンバータ部の段数についても、例えば実施の形態として示したように2段(コンバータ部101,102)であることに限定される必要はなく、この段数は、例えば対応すべき負荷電力や、必要とされる二次側直流出力電圧の数などに応じて適宜変更されてよい。また、これらの各コンバータ部において生成する二次側直流出力電圧の数としても特に限定されるものではない。そのうえでも、本発明によっては、実施の形態において説明したように、DCスイッチ回路6,6A等を備える構成を採ることで、同数の二次側直流出力電圧を得る場合において必要とされるスイッチングコンバータ部の数は、先行技術に基づいて、同一の負荷条件及び二次側直流出力電圧数に対応する電源回路を構成した場合よりも少なくなるものである。
【0164】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明は、力率改善機能を備える単レンジ対応又はワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、パワーチョークコイル又はアクティブフィルタを備えない構成を採る。これにより、例えばアクティブフィルタによって力率改善を図る場合よりも電力変換効率が向上されるという効果を有している。
さらに、例えばAC100V系の商用交流電源入力に対応して上記直流入力電圧(整流平滑電圧)を生成するための整流回路としては、倍電圧全波整流回路としており、分岐した整流電流が整流ダイオードに流れる整流電流経路が在るようにされる。これにより、例えば倍電圧半波整流回路の場合よりも、整流ダイオードにおける電力損失は低減される。つまり、この点でも、電力変換効率の向上に大きく寄与している。
【0165】
また、本発明のスイッチングコンバータ部は、電流共振形コンバータを基本構成とする複合共振形コンバータと、力率改善用トランス(疎結合トランス)によりスイッチング出力を電圧帰還する力率改善回路を備える構成であり、ソフトスイッチング動作となる。これによっては、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタを強化する必要もなくなる。
このために、本発明としては、例えばパワーチョークコイルなどの大型部品の省略、あるいは、アクティブフィルタなどの多くの部品点数からなる回路が省略されることになる。さらには、スイッチングノイズが大幅に低減されることによるノイズフィルタのための部品点数も削減される。この結果、電源回路サイズの小型/軽量化を有効に図ることが可能となる。また、それだけコストダウンが図られることにもなる。
特に本発明によるスイッチング電源回路は、重負荷の条件に対応するものであるが、重負荷に対応する場合、チョークインプット方式では例えば正/負の各ラインに対して複数個のパワーチョークコイルを挿入する必要が生じたり、また、アクティブフィルタ方式の場合には、実際のアクティブフィルタの回路構成としてさらに多くの部品を必要とする。従って、本発明によりパワーチョークコイル又はアクティブフィルタが省略されることによる、回路の小型軽量化とコストダウンの効果は、非常に有効なものとなる。
さらに、本発明としての構成によれば、これまでよりも一次側と二次側のアース電位の干渉が少なくなるので、アース電位が安定することとなって、信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図3】実施の形態としての倍電圧全波整流回路の動作を示す回路図である。
【図4】実施の形態のコントロールICによるスイッチング素子の駆動タイミングを示すを示す波形図である。
【図5】疎結合トランスの構造例を示す断面図である。
【図6】実施の形態の電源回路における二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【図7】先行技術としてパワーチョークコイルを備えるスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図8】倍電圧半波整流回路の動作を示す回路図である。
【図9】先行技術の電源回路における二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【図10】アクティブフィルタの基本的回路構成を示す回路図である。
【図11】図10に示すアクティブフィルタにおける動作を示す波形図である。
【図12】アクティブフィルタのコントロール回路系の構成を示す回路図である。
【図13】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 制御回路、2 コントロールIC、3 力率改善回路、4 ノーマルモードノイズフィルタ、5 整流回路切換モジュール、6 DCスイッチ回路、7 制御回路、101 第1コンバータ部、102 第2コンバータ部、Di,DBRブリッジ整流回路、CiA,CiB,CiC,Co7,Co8,Co9 平滑コンデンサ、Q1,Q2,Q3,Q4 スイッチング素子、PIT−1,PIT−2 絶縁コンバータトランス、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1 一次巻線、CMC コモンモードチョークコイル、CL アクロスコンデンサ、LN チョークコイル、CN フィルタコンデンサ
Claims (4)
- 商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源の2倍に対応するとされるレベルの上記整流平滑電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路を備える整流回路と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備え、
上記複数のスイッチングコンバータ部の各々は、
上記直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、
上記各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスと、
少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、
上記各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、
上記1以上の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記所要の1つの二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された周波数制御型定電圧制御手段と、
上記直流出力電圧生成手段により複数の二次側直流出力電圧が生成される場合において、上記周波数制御型定電圧制御手段により定電圧制御される以外の、定電圧化を必要とする所要の二次側直流出力電圧ごとに対応して設けられるもので、制御巻線と被制御巻線が巻装された可飽和リアクトルとしての制御トランスの上記被制御巻線を、二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路に挿入し、入力された二次側直流出力電圧レベルに応じて、制御巻線に流すべき制御電流レベルを可変して上記被制御巻線のインダクタンスを可変することで、この二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成されたインダクタンス制御型定電圧制御手段と、
力率を改善する力率改善回路とを備え、
上記力率改善回路は、
上記一次側直列共振回路に対して直列に挿入される力率改善用一次巻線と、上記整流平滑手段として形成される整流電流経路に挿入される力率改善用二次巻線とを巻装し、これら力率改善用一次巻線と力率改善用二次巻線とが疎結合となるようにして構成される力率改善用トランスと、
上記整流電流経路の所要部位に挿入され、上記力率改善用一次巻線によって力率改善用二次巻線に励起された交番電圧に基づいてスイッチング動作を行うことで整流電流を断続する整流ダイオード素子と、を備えて形成される、
ことを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記整流回路は、
入力される商用交流電源のレベルに応じて、商用交流電源レベルの等倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する等倍電圧全波整流回路と、上記倍電圧全波整流回路とで切り換えが行われるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 所要の二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路をオン/オフするものとされ、
入力される起動制御信号として、上記所要の二次側直流出力電圧以外の二次側直流出力電圧のうちの所定の二次側直流出力電圧が所定以上のレベルにより入力されるのに応じて、上記二次側整流電流経路をオフからオンに切り換えるように動作するスイッチ回路、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記直流出力電圧生成手段により生成される複数の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧が入力され、この入力された二次側直流出力電圧が立ち上がったとされる時点から、時定数回路によって得られる時間差を有して、他の所要の1つの二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路がオフ状態からオン状態となるようにして形成されるスイッチ回路、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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