JP2004166462A - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】力率改善機能を備えるワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、コストダウン及び回路の小型軽量化を図る。
【解決手段】ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた複合共振形コンバータにおいて、直流入力電圧(Ei)を生成する整流回路について、AC150V以下では倍電圧整流回路で、AC150V以上では全波整流回路となるように切り換え制御を行う構成とする。力率改善は、絶縁コンバータトランスPITに巻装した三次巻線N3に伝達されたスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還して整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大する力率改善回路3を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた複合共振形コンバータにおいて、直流入力電圧(Ei)を生成する整流回路について、AC150V以下では倍電圧整流回路で、AC150V以上では全波整流回路となるように切り換え制御を行う構成とする。力率改善は、絶縁コンバータトランスPITに巻装した三次巻線N3に伝達されたスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還して整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大する力率改善回路3を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、力率改善のための回路を備えたスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波の比較的大きい電流及び電圧に耐えることができるスイッチング素子の開発によって、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。
スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
【0003】
ところで、一般に商用電源を整流すると平滑回路に流れる電流は歪み波形になるため、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。
また、歪み電流波形となることによって発生する高調波を抑圧するための対策が必要とされている。
【0004】
そこで、スイッチング電源回路において力率を改善する力率改善手段として、整流回路系においてPWM制御方式の昇圧型コンバータを設けて力率を1に近付ける、いわゆるアクティブフィルタを設ける方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
図11の回路図は、このようなアクティブフィルタの基本構成を示している。
この図においては、商用交流電源ACにブリッジ整流回路Diを接続している。このブリッジ整流回路Diの正極/負極ラインに対しては並列に出力コンデンサCoutが接続される。ブリッジ整流回路Diの整流出力が出力コンデンサCoutに供給されることで、出力コンデンサCoutの両端電圧として、直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷10に入力電圧として供給される。
【0006】
また、力率改善のための構成としては、図示するようにして、インダクタL、高速リカバリ型のダイオードD、抵抗Ri、スイッチング素子Q、及び乗算器11を備える。
インダクタL、ダイオードDは、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。
抵抗Riは、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子(一次側アース)と出力コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。
また、スイッチング素子Q1は、この場合には、MOS−FETが選定されており、図示するようにして、インダクタLとダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
【0007】
乗算器11に対しては、フィードフォワード回路として、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLwが接続され、フィードバック回路として電圧検出ラインLVが接続される。
乗算器11は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流レベルを検出する。
また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。
そして、乗算器11からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
【0008】
電流検出ラインLIから乗算器11に対しては、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流が入力される。乗算器11では、この電流検出ラインLIから入力された整流電流レベルを検出する。また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
【0009】
乗算器11では、先ず、上記のようにして電流検出ラインLIから検出した整流電流レベルと、上記電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分と乗算する。そして、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した交流入力電圧の波形とによって、交流入力電圧VACと同一波形の電流指令値を生成する。
【0010】
さらに、この場合の乗算器11では、上記電流指令値と実際の交流入力電流レベル(電流検出ラインL1からの入力に基づいて検出される)を比較し、この差に応じてPWM信号についてPWM制御を行い、PWM信号に基づいたドライブ信号を生成する。そして、スイッチング素子Qは、このドライブ信号によってスイッチング駆動される。この結果、交流入力電流は交流入力電圧と同一波形となるように制御されて、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。また、この場合には、乗算器によって生成される電流指令値は、整流平滑電圧の変動差分に応じて振幅が変化するように制御されるため、整流平滑電圧の変動も抑制されることになる。
【0011】
図12(a)は、上記図11に示したアクティブフィルタ回路に入力される入力電圧Vin及び入力電流Iinを示している。電圧Vinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電圧波形に対応し、電流Iinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電流波形に対応する。ここで、電流Iinの波形は、ブリッジ整流回路Diの整流出力電圧(電圧Vin)と同じ導通角となっているが、これは、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diに流れる交流入力電流の波形も、この電流Iinと同じ導通角となっていることを示す。つまり、ほぼ1に近い力率が得られている。
【0012】
また、図12(b)は、出力コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)Pchgの変化を示す。出力コンデンサCoutは、入力電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、入力電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。
図12(c)は、上記出力コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。この充放電電流Ichgは、上記図12(b)の入出力エネルギーPchgの波形と同位相となっていることからも分かるように、出力コンデンサCoutにおけるエネルギーPchgの蓄積/放出動作に対応して流れる電流である。
【0013】
上記充放電電流Ichgは、入力電流Vinとは異なり、交流ライン電圧(商用交流電源AC)の第2高調波とほぼ同一の波形となる。交流ライン電圧には、出力コンデンサCoutとの間のエネルギーの流れによって、図12(d)に示すようにして、第2高調波成分にリップル電圧Vdが生じる。このリップル電圧Vdは、無効なエネルギー保存のために、図12(c)に示す充放電電流Ichgに対して、90°の位相差を有する。出力コンデンサCoutの定格は、第2高調波のリップル電流と、その電流を変調するブースト・コンバータ・スイッチからの高周波リップル電流を処理することを考慮して決定するようにされる。
【0014】
また、図13には、図11の回路構成を基として、基本的なコントロール回路系を備えたアクティブフィルタの構成例を示している。なお、図11と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子間には、スイッチングプリレギュレータ15が備えられる。このスイッチングプリレギュレータ15は、図11においては、スイッチング素子Q、インダクタL、及びダイオードDなどにより形成される部位となる。
【0015】
そして、乗算器11を含むコントロール回路系は、他に、電圧誤差増幅器12、除算器13、二乗器14を備えて成る。
電圧誤差増幅器12では、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutを、分圧抵抗Rvo−Rvdにより分圧してオペアンプ15の非反転入力に入力する。オペアンプ15の反転入力には基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ15では、基準電圧Vrefに対する分圧された直流電圧Voutの誤差に応じたレベルの電圧を、帰還抵抗Rvl、コンデンサCvlによって決定される増幅率により増幅して、誤差出力電圧Vveaとして除算器13に出力する。
【0016】
また、二乗器14には、いわゆるフィードフォワード電圧Vffが入力される。このフィードフォワード電圧Vffは、入力電圧Vinを平均化回路16(Rf11,Rf12,Rf13,Cf11,Cf12)により平均化した出力(平均入力電圧)とされる。二乗器14では、このフィードフォワード電圧Vffを二乗して除算器13に出力する。
【0017】
除算器13では、電圧誤差増幅器12からの誤差出力電圧Vveaについて、二乗器14から出力された平均入力電圧の二乗値により除算を行い、この除算結果としての信号を乗算器11に出力する。
つまり、電圧ループは、二乗器14、除算器13、乗算器11の系から成るものとされる。そして、電圧誤差増幅器12から出力される誤差出力電圧Vveaは、乗算器11で整流入力信号Ivacにより乗算される前の段階で、平均入力電圧(Vff)の二乗により除算されることになる。この回路によって、電圧ループの利得は、平均入力電圧(Vff)の二乗として変化することなく、一定に維持される。平均入力電圧(Vff)は、電圧ループ内において順方向に送られる開ループ補正の機能を有する。
【0018】
乗算器11には、上記除算器11により誤差出力電圧Vveaを除算した出力と、抵抗Rvacを介したブリッジ整流回路Diの正極出力端子(整流出力ライン)の整流出力(Iac)が入力される。ここでは、整流出力を電圧によるのではなく、電流(Iac)として示している。乗算器11では、これらの入力を乗算することによって、電流プログラミング信号(乗算器出力信号)Imoを生成して出力する。これは、図11にて説明した電流指令値に相当する。出力電圧Voutは、この電流プログラミング信号の平均振幅を可変することで制御される。つまり、電流プログラミング信号の平均振幅の変化に応じたPWM信号が生成され、このPWM信号に基づいたドライブ信号によってスイッチング駆動が行われることによって、出力電圧Voutのレベルをコントロールするものである。
したがって、電流プログラミング信号は、入力電圧と出力電圧を制御する平均振幅の波形を有する。なお、アクティブフィルタは、出力電圧Voutのみではなく、入力電流Vinも制御するようになっている。そして、フィードフォワード回路における電流ループは、整流ライン電圧によってプログラムされるということがいえるので、後段のコンバータ(負荷10)への入力は抵抗性になる。
【0019】
図14は、上記図13に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、AC100V系とAC200V系の両者の交流入力電圧(商用交流電源)に対応する、いわゆるワイドレンジ対応(ワールドワイド仕様)とされている。また、負荷電力300W以上の条件に対応可能な構成を採っている。また、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
【0020】
この図14に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続され、この後段にブリッジ整流回路Diが接続される。
また、ブリッジ整流回路Diの整流出力ラインには、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを図示するようにして接続して成るノーマルモードノイズフィルタ4が接続される。
【0021】
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、上記チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcと、高速リカバリ型の整流ダイオードD10の直列接続を介して、平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。この平滑コンデンサCiは、図11,図13における出力コンデンサCoutに相当する。また、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcとダイオードD10は、それぞれ、図11に示したインダクタLとダイオードDに相当する。
また、この図における整流ダイオードD10には、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
【0022】
スイッチング素子Q11,Q12から成るスイッチング素子の組は、図11におけるスイッチング素子Q10に相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合には、2つのスイッチング素子Q11,Q12を1組としており、これらのスイッチング素子Q11,Q12を、それぞれ、パワーチョークコイルLpcと高速リカバリ型の整流ダイオードD10の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に並列に挿入するようにしている。
【0023】
このようにして、2つのスイッチング素子を備えるのは、信頼性確保のためである。
つまり、例えば交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れるドレイン電流が総合で14Ap程度と非常に高くなる。そこで、2つのスイッチング素子を並列に接続することで、各スイッチング素子に流れるドレイン電流のピークレベルを抑えているものである。
この場合のスイッチング素子Q11,Q12には、MOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q11,Q12の各ゲート−ソース間には、それぞれ、ゲート−ソース間抵抗R52,R54が接続されている。
【0024】
アクティブフィルタコントロール回路20は、この場合には力率を1に近付けるように力率改善を行うアクティブフィルタの動作を制御するもので、例えば1石の集積回路(IC)とされている。
この場合、アクティブフィルタコントロール回路20は、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成される。図**に示した乗算器11、誤差電圧増幅器12、除算器13、及び二乗器14などに相当する回路部は、このアクティブフィルタコントロール回路20内に搭載される。
【0025】
この場合、フィードバック回路は平滑コンデンサCiの両端電圧(整流平滑電圧Ei)を分圧抵抗R55,R56,R57により分圧した電圧値を、アクティブフィルタコントロール回路20の端子T1に入力するようにして形成される。
【0026】
また、フィードフォワード回路としては、先ず、抵抗R58を介して整流出力が端子T3に入力される。これによって、交流入力電圧波形の検出と、平均化回路のための対応するフィードフォワード回路が形成されている。
また、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子と一次側アース間に挿入される抵抗R61との接続点から、抵抗R60を介して、端子T6に対して整流電流レベルを入力するようにしている。つまり、図14における電流検出ラインLIに相当するラインとしてのフィードフォワード回路が形成されている。
【0027】
また、端子T4には、起動抵抗Rsを介したブリッジ整流回路Diの正極の整流出力が、起動電圧として入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、電源起動時において、この端子T4に入力される起動電圧によって起動される。
また、パワーチョークコイルPCCにおいては、インダクタLpcとトランス結合された巻線N5が巻装されている。この巻線N5に励起された交番電圧は、ダイオードD11及びコンデンサC11とから成る半波整流回路により所定の低圧直流電圧に変換されるが、上記端子T4には、この低圧直流電圧も入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、上記起動電圧により起動した後は、この低圧直流電圧を電源として入力して動作するようになっている。
また、端子T5は、抵抗R59を介して、一次側アースと接続されている。
【0028】
端子T2からは、スイッチング素子を駆動するためのドライブ信号が出力される。そして、この端子T2に対しては、トランジスタQ21,Q21及びツェナーダイオードZDから成る、いわゆるトーテムポール回路が接続されている。この場合のトーテムポール回路は、1つのドライブ信号によって2つのスイッチング素子Q11,Q12を駆動するのに必要な電力を得るためにドライブ信号を増幅することと、周知のようにして、MOS−FETとしてのスイッチング素子Q11,Q12を安定して高速スイッチングすることを目的として設けられている。
このトーテムポール回路から出力されたドライブ信号は、分岐して、それぞれ抵抗R51,R53を介してスイッチング素子Q11,Q12のゲートに対して出力される。
スイッチング素子Q11では、上記のようにして印加されるドライブ信号に応じて、ゲート−ソース間抵抗R52の両端にゲート電圧が発生するようになっている。そして、ゲート電圧が閾値以上となることでオンとなり、閾値以下となるとオフとなるようにしてスイッチング動作を行う。
スイッチング素子Q12も同様にして、ドライブ信号によってゲート−ドレイン抵抗R54の両端電圧であるゲート電圧が閾値以上/以下で変化するのに応じて、上記スイッチング素子Q11と同じオン/オフタイミングでスイッチング動作を行う。
【0029】
そして、上記したスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング駆動は、図11及び図13により説明したようにして、整流出力電流の導通角が、整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるように、PWM制御に基づくドライブ信号によって行われる。整流出力電流の導通角が整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるということは、即ち、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となることであり、結果的に、力率がほぼ1となるように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。実際においては、力率PF=0.99〜0.98となる特性が得られている。
【0030】
また、この図14に示すアクティブフィルタコントロール回路20によっては、整流平滑電圧Ei(図13では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲で定電圧化するようにも動作する。つまり、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。
上記交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲は、商用交流電源AC100V系と200V系を連続的にカバーするものであり、従って、後段のスイッチングコンバータには、商用交流電源AC100V系と200V系とで、同じレベルで安定化された直流入力電圧(Ei)が供給されることとなる。つまり、図14に示す電源回路は、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応の電源回路としても構成されている。
【0031】
アクティブフィルタの後段の電流共振形コンバータは、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
【0032】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
スイッチング素子Q1,Q2は、ドライブ回路21によって、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動される。また、ドライブ回路21は、後述する二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じてスイッチング周波数を可変制御し、これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化を図るようにされる。
【0033】
絶縁コンバータトランスPITは、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の端部は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は、直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって直列共振回路を形成する。この直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0034】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には二次巻線N2が巻装される。
この場合の二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCOから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCOの両端電圧として二次側直流出力電圧EOが得られる。この二次側直流出力電圧EOは、図示しない負荷側に供給されるとともに、ドライブ回路21のための検出電圧としても分岐して入力される。前述もしたように、ドライブ回路21は、入力される二次側直流出力電圧EOのレベルに基づいて、二次側直流出力電圧EOが安定化されるようにスイッチング周波数を可変するようにしてスイッチング素子Q1,Q2を駆動する。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化を行う。
【0035】
図15は、先に図13に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成としての、他の例を示している。
この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=85V〜288Vに対応する。つまり、この図に示す電源回路も、この図14に示した回路と同様に、商用交流電源についてAC100V系とAC200V系の両者の交流入力電圧に対応する、いわゆるワイドレンジ対応とされている。ただし、対応可能な負荷電力としては600W以上とされている。また、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
このような、より重負荷の条件に対応するものとされる図15に示す電源回路は、例えばプラズマディスプレイパネルを備えたテレビジョン受像機、モニタ装置などに搭載される。
なお、図14と同一部分には同一符号を付すこととして、ここでは、主として、図14の電源回路との相違点について説明する。
【0036】
この場合の商用交流電源ACラインにも、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
【0037】
また、図15の電源回路では、商用交流電源ACを整流する整流回路として、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2が設けられる。これらブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極入力端子と負極入力端子は、商用交流電源ACの正/負のラインに対して共通に接続される。また、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子どうしと、負極出力端子どうしが接続されるようになっている。このようにして、商用交流電源ACに対しては、2段のブリッジ整流回路が備えられていることになる。
【0038】
また、この場合のノーマルモードノイズフィルタ4は、上記ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子と負極出力端子間に、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CN,CNを図示するようにして接続して形成されている。つまり、図14の電源回路におけるノーマルモードノイズフィルタ4が2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを備えるのに対して、この図15におけるノーマルモードノイズフィルタ4では、フィルタコンデンサCNが1組追加されており、ノイズ抑制効果を強化するようにしている。後述するようにして、図15に示す回路では、より重負荷の条件に対応するために、アクティブフィルタのスイッチング素子数を増加させている。これによって、スイッチングノイズの発生量は増加することになるが、上記のようにしてノーマルモードノイズフィルタ4としてのノイズ抑制効果を強化することで、スイッチングノイズの増加を解消しているものである。
【0039】
また、この場合には、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子は、上記チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCC−1のインダクタLpc1と、パワーチョークコイルPCC−2のインダクタLpc2の直列接続を介して、並列接続された2本の高速リカバリ型の整流ダイオード[D10//D10]のアノードの接続点と接続される。整流ダイオード[D10//D10]のカソードの接続点は、平滑コンデンサCiA,CiBの各正極端子に接続される。
平滑コンデンサCiA,CiBは、図示するようにして、2本で1組となるようにして並列に接続されている。平滑コンデンサCiA,CiBの正極端子は、上記もしているように、整流ダイオード[D10//D10]−インダクタLpc2−インダクタLpc1−チョークコイルLNの直列接続を介して、ブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極出力端子に対して接続される。また、平滑コンデンサCiA,CiBの負極端子は、ブリッジ整流回路Di1,Di2の各負極出力端子(一次側アース)に対して接続される。
【0040】
上記平滑コンデンサ[CiA//CiB]の組は、図11,図13における出力コンデンサCoutに相当する。従って、この場合においては、この並列接続された平滑コンデンサ[CiA//CiB]の組の両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られることになる。この整流平滑電圧Eiが、後段の各コンバータ部201、202、203に対して直流入力電圧として供給される。
また、パワーチョークコイルPCC−1、PCC−2のインダクタLpc1,Lpc2の直列接続は、図11に示したインダクタLに相当する。ダイオード[D10//D10]は、図15に示したとダイオードDに相当する。
また、この図におけるダイオードD10//D10の並列回路に対しては、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
【0041】
スイッチング素子Q11,Q12,Q13から成るスイッチング素子の組は、図11におけるスイッチング素子Qに相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合には、3つのスイッチング素子Q11,Q12,Q13を1組としており、これらのスイッチング素子Q11,Q12,Q13を、それぞれ、パワーチョークコイルLpc2と高速リカバリ型の整流ダイオード[D10//D10]の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に並列に挿入するようにしている。
【0042】
このようにして、3つのスイッチング素子を備えるのは、信頼性確保のためである。
つまり、負荷電力Po=600W以上程度の重負荷の条件である場合、例えば交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れる総合的なドレイン電流(スイッチング電流)がより高くなる。そこで、この場合には、3つのスイッチング素子を並列に接続することで、各スイッチング素子に流れるドレイン電流のピークレベルを抑えているものである。
この場合のスイッチング素子Q11,Q12,Q13には、MOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q11,Q12,Q13の各ゲート−ソース間には、それぞれ、ゲート−ソース間抵抗R52,R54,R64が接続されている。
【0043】
さらには、先に説明した整流回路系の接続態様を、図14の電源回路と比較してみると、図15に示した回路では、先ず、パワーチョークコイルを1組追加して2組(PCC−1,PCC−2)としていることが分かる。
また、高速リカバリ型の整流ダイオードD10についても、1本追加して2本備えることとして、これら2本の整流ダイオードD10を並列接続している。
さらに、整流平滑電圧Eiを供給する平滑コンデンサとしても、1本追加して2本(CiA,CiB)備えることとし、これらの平滑コンデンサを並列に設けるようにしている。
このような部品の追加も、負荷電力の条件が300W以上から600W以上にまで重くなったことに応じて、例えば回路に流れる電流が増加することに対応して行われるものである。
【0044】
この図15に示すアクティブフィルタコントロール回路20も、力率をほぼ1に近づけるようにアクティブフィルタの動作を制御する。この場合には、例えば図14と同様のICにより構成されている。
なお、このアクティブフィルタコントロール回路20の各端子(T1〜T6)と接続される周辺回路の構成は図14と同様とされているので、ここでの説明は省略する。
【0045】
そして、図15に示す回路において、アクティブフィルタコントロール回路20によりスイッチング素子Q11,Q12,Q13をスイッチング駆動することによっては、図14の場合と同様に、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となるように制御され、結果的に、力率が1に近づくようにして力率改善が図られる。実際においては、負荷電力Po=600W時において、力率PF=0.995程度となる特性が得られる。
【0046】
また、この図15に示すアクティブフィルタとしても、整流平滑電圧Ei(図13では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲で定電圧化するように動作する。従って、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。つまり、図15に示す電源回路も、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応を可能としている。
【0047】
そして、この図に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件(負荷電力600W以上)に対応するために、平滑コンデンサ[CiA//CiB]を直流入力電圧として動作電源とする複数の電流共振形コンバータが並列に設けられている。この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの電流共振形コンバータが設けられており、それぞれ、所定レベルに安定化された二次側直流出力電圧EO1、EO2、EO3を出力可能とされている。
【0048】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
【0049】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ゲート−ソース間には、それぞれゲート−ソース間抵抗RG1,RG2が挿入されている。
【0050】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。
【0051】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0052】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2の端子Vsに対して、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が接続される。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるようにレベルシフトされる。
【0053】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0054】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0055】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0056】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線N2が巻装される。この場合の二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧EO1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧E01のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0057】
なお、第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、ゲート−ソース間抵抗RG3,RG4、コントロールIC2,絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1,二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1、整流ダイオードDO3,D04、平滑コンデンサCO2を備え、上記第1コンバータ部201と同様の接続態様による構成を採る。
【0058】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、ゲート−ソース間抵抗RG5,RG6、コントロールIC2,絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1,二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1を備え、第1コンバータ部201と同様の接続態様による一次側構成を採る。
但し、第3コンバータ部203の絶縁コンバータトランスPIT−3の二次側においては、図示するようにして、二次巻線N2に対して整流ダイオードDO5,D06,D07,D08及び平滑コンデンサCO3,CO4を接続していることで、整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路と、整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路との2組の両波整流回路が形成されることになる。
整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路によっては二次側直流出力電圧EO3が生成される。整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路によっては、二次側直流出力電圧EO3よりも低圧レベルの二次側直流出力電圧E04が生成される。
【0059】
ここで、第1コンバータ部201の二次側直流出力電圧EO1が対応する負荷電力は300W、第2コンバータ部202の二次側直流出力電圧EO2が対応する負荷電力は200W、第3コンバータ部203の二次側直流出力電圧EO3,E04により対応する負荷電力は100Wとなっており、これにより、総合的に負荷電力Po=600W以上に対応可能に構成されているものである。
【0060】
【特許文献1】
特開平6−327246(図11)
【0061】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの説明から分かるように、先行技術として図14及び図15に示した電源回路は、従来から知られている図11及び図13に示したアクティブフィルタを実装して構成されている。このような構成を採ることによって、力率改善が図っている。また、図14及び図15に示す電源回路は、それぞれ負荷電力300W以上、負荷電力600W以上の条件の下で、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作する、いわゆるワイドレンジ対応としている。
【0062】
しかしながら、上記図14及び図15に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、図14に示す電源回路についてみると、電力変換効率としては、図に示しているように、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
そして、AC100V系時に対応する交流入力電圧VAC=100Vの条件では、ηAC→DC=94%、ηDC→DC=96%であり、総合効率は90.2%となる。これに対して、AC200V系時に対応する交流入力電圧VAC=240Vの条件では、ηAC→DC=97%、ηDC→DC=96%となり、総合効率は93.1%となる。つまり、交流入力電圧VAC=240V時に対して、交流入力電圧VAC=100V時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0063】
上記した電力変換効率の低下という問題は、同じくアクティブフィルタを備える、図15に示す電源回路においても同様である。
図15に示す電源回路についても、電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータ(第1、第2、第3コンバータ部201,202,203)のDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
そして、第1、第2、第3コンバータ部201,202,203におけるDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)は、96%程度である。
また、負荷電力Po=600Wの条件のもとで、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は、交流入力電圧VAC=100V時では、94%、交流入力電圧VAC=230W時では97%となる。
従って、総合電力変換効率としては、交流入力電圧VAC=100V時では、
94%×96%=90.2%
となる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、
97%×96%=93.1%
となる。
また、交流入力電力は、交流入力電圧VAC=100V時では665.2W、交流入力電力230V時では、644.5Wとなる。
つまり、図15に示す電源回路においても、交流入力電圧VAC=230V(AC100V系)時に対して、交流入力電圧VAC=100V(AC200V系)時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0064】
また、図14及び図15に示す回路では、上記した電力変換効率の特性を下回ることが無いように、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)ついては、例えば交流入力電圧VAC=100V〜230V(又は240V)の範囲で、94%〜97%で維持されるように設計する必要がある。
そして、図14に示すアクティブフィルタであれば、スイッチング素子Q11,Q12及び高速リカバリ型の整流ダイオードD10がスイッチング動作を行うことになる。また、図15に示すアクティブフィルタでは、スイッチング素子Q11,Q12,Q13及び高速リカバリ型の整流ダイオードD10//D10の並列回路がスイッチング動作を行うことになる。
これらのスイッチング動作は、dv/di,di/dtによるもので、ハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きいため、比較的重度のノイズ抑制対策が必要となる。
【0065】
この必要性から、先ず、図14に示す電源回路のアクティブフィルタを例に挙げれば、スイッチングのための半導体素子については、2組のスイッチング素子Q11,Q12を並列接続して、スイッチング素子に流れるドレイン電流(スイッチング出力電流)のピークレベルを抑制して信頼性を確保する必要が生じる。
しかしながら、これに対して、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20は、ドライブ信号の出力端子として、端子T2の1つしか備えていない。このために、アクティブフィルタコントロール回路20からのドライブ信号出力を分岐して各スイッチング素子Q11,Q12に印加する必要があるが、そのままでは電力が不足して高い信頼性でもってスイッチング素子を駆動することが難しい。そこで、図14にも示したように、トランジスタQ21,Q22を備えたトーテムポール回路が必要となるが、これによっても、部品点数が増加していることになる。
【0066】
さらに、図14に示す回路では、商用交流電源ACのラインに対して、2組のラインフィルタートランスLFTと、3組のアクロスコンデンサによるラインノイズフィルタを形成している。つまり、2段以上のラインノイズフィルタが必要となっている。
また、整流出力ラインに対しては、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサCN,CNから成るノーマルモードノイズフィルタ4を設けている。さらに、整流用の高速リカバリ型のダイオードD10の並列回路に対しては、RCスナバ回路を設けている。
このようにして、実際の回路としては、非常に多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
【0067】
そして、図15に示す電源回路のアクティブフィルタでは、図14の電源回路よりも重負荷の条件に対応するために回路に流れる電流量がさらに増加する。このために、スイッチングのための半導体素子は3組(スイッチング素子Q11,Q12,Q13)に増加する。さらには、高速リカバリ型の整流ダイオードD10についても2本に増加する必要が生じてくる。
また、ノーマルモードノイズフィルタ4を形成する素子としては、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサCNとなり、ここでもフィルタコンデンサCNとしてのフィルムコンデンサが1つ増加する。
さらには、図15の回路のように重負荷に対応する場合、RCスナバ回路を形成する抵抗Rsnは、セメント抵抗などを採用することになって大型となる。
このように、図15に示す回路では、重負荷の条件に対応するために、さらにコストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化が助長されることになる。
【0068】
さらに、図14及び図15に示す電源回路の構成では、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20によって動作するスイッチング素子Q11,Q12,及びQ13のスイッチング周波数は50KHzであるのに対して、後段の電流共振形コンバータのスイッチング周波数は70KHz〜150KHzの範囲となっている。これにより、1次側アース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0069】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成する。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源のレベルに応じて、商用交流電源レベルの等倍に対応するレベルの整流平滑電圧を生成する等倍電圧整流動作と、商用交流電源レベルの所定倍に対応するレベルの整流平滑電圧を生成する倍電圧整流動作とで切り換えが行われる整流平滑手段を備える。
また、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段を備える。
また、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される第1の一次巻線と、この第1の一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される第1の二次巻線とを巻装して形成される第1の絶縁コンバータトランスを備える。
また、少なくとも、第1の一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、第1の一次巻線に直列接続された第1の一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、スイッチング手段の動作を電流共振形とする第1の一次側直列共振回路を備える。
また、ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、少なくとも第1の一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、各スイッチング素子がターンオン又はターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。
また、第1の二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の第1の二次側直流出力電圧を生成するように構成された第1の直流出力電圧生成手段と、第1の二次側直流出力電圧のレベルに応じてスイッチング駆動手段を制御して、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、第1の二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された第1の定電圧制御手段を備える。
また、第1の絶縁コンバータトランスの一次側に巻装した第1の三次巻線に励起される交番電圧を利用して整流電流成分を断続して、整流平滑手段における整流電流経路に対して供給するように構成される第1の力率改善回路を備えることとした。
【0070】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路は、一次側スイッチングコンバータとして、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた構成を採っていることになる。また、力率改善は、絶縁コンバータトランスに巻装した三次巻線に伝達されたスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還して整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図る構成が採られる。
そして、ワイドレンジ対応とするのにあたっては、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑手段について、商用交流電源レベルに応じて等倍電圧整流動作と倍電圧整流動作とで整流動作の切り換えが行われるように構成する。
これにより、例えば力率改善回路を備える電源回路としてワイドレンジ対応の構成とするのにあたっては、スイッチングコンバータへの直流入力電圧の安定化を図るアクティブフィルタを備える必要は無いこととなる。
【0071】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図14に示した回路と同様に、負荷電力Po=300W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
【0072】
この図1に示す電源回路においては、先ず商用交流電源ACのラインに対して、各1組のアクロスコンデンサCL及びラインフィルタトランスLFTとから成る、ラインノイズフィルタが接続される。つまり、この場合には、1段のラインノイズフィルタのみが設けられる。
そして、商用交流電源ACのラインにおいては、上記ラインノイズフィルタの後段に対して、1組のフィルタコンデンサCNが並列に接続される。このフィルタコンデンサCNは、次に説明するブリッジ整流回路Diの整流出力ラインに発生するノーマルモードノイズを抑制するためのものとされる。
【0073】
この場合、商用交流電源から整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路系は、ブリッジ整流回路Diと、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を備えて成る。平滑コンデンサCi1,Ci2は同じキャパシタンスを有する。
ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と負極入力端子は、それぞれ、上記フィルタコンデンサCNの両端と商用交流電源ACの正/負の各ラインとの接続点に対して接続される。また、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
平滑コンデンサCi1,Ci2は、図示するようにして、平滑コンデンサCi1の正極端子と、平滑コンデンサCi2の負極端子とが接続されるようにして直列に接続される。そして、平滑コンデンサCi1側の正極端子は、上記もしたように、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と接続される。平滑コンデンサCi2側の負極端子は一次側アースに接続される。整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)は、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧として得られる。
【0074】
また、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子と、平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点との間には、リレースイッチS1を挿入している。このリレースイッチS1は、整流回路切換モジュール5に接続されたリレーRLの駆動状態に応じて、オン/オフされる。
【0075】
整流回路切換モジュール5は、リレーRLを駆動することで、上記のようにして形成される整流回路系の動作をAC100V系とAC200V系とで切り換えるために設けられる。このために、検出端子T11には、整流平滑電圧Eiが入力されるようになっている。検出端子T11から入力される整流平滑電圧Eiのレベルは、商用交流電源ACのレベルに応じた変化を示す。つまり、整流回路切換モジュール5は、整流平滑電圧Eiのレベルを検出することで、商用交流電源ACのレベルを検出するようになっている。
また、リレー駆動端子T12,T13間に対してはリレーRLが接続される。なお、リレーRLは、自身の導通状態に応じて、リレースイッチS1をオン/オフ制御する。なお、ここでは、リレーRLが導通状態ではリレースイッチS1がオン、リレーRLが非導通状態ではリレースイッチS1がオフとなるようにされている。
また、整流回路切換モジュール5の電源入力端子T14には5Vの低圧直流電圧が入力されている。整流回路切換モジュール5は、この電源入力端子T14に入力された直流電圧を入力電源として動作するようになっている。端子T15は、整流回路切換モジュール5のアースラインを一次側アースに接地させるための端子である。
【0076】
上記した構成による整流回路の切り換え動作は次のようになる。
整流回路切換モジュール5では、検出端子T11に入力される整流平滑電圧Eiのレベルと所定の基準電圧とを比較する。検出端子T11に入力される電圧レベルは、交流入力電圧VAC=150V以上であるときには上記基準電圧以上となり、交流入力電圧VACが150V以下であるときには上記基準電圧以下となる。つまり、基準電圧は、交流入力電圧VAC=150Vに対応したレベルとなっている。
そして、整流回路切換モジュール5では、分圧レベルが基準電圧以下であるときには、リレーRLをオンとし、基準電圧以上であるときには、リレーRLをオフとするように駆動する。
【0077】
ここで、例えばAC200V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以上に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが基準電圧以上となるので、整流回路切換モジュール5は、リレーRLをオフとする。これに応じて、リレースイッチS1もオフ(オープン)となる。
リレースイッチS1がオフの状態では、交流入力電圧VACが正/負となる各期間において、交流入力電圧VACをブリッジ整流回路Diにより整流して平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路に整流電流を充電する動作が得られる。つまり、通常のブリッジ整流回路を備えた全波整流回路による整流動作が得られる。これにより、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiが得られる。
【0078】
これに対して、AC100V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以下に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが上記基準電圧以下となって、整流回路切換モジュール5はリレーRLをオンとするので、リレースイッチS1はオン(クローズ)となるように制御される。
リレースイッチS1がオンの状態では、交流入力電圧VACが正の期間では、ブリッジ整流回路Diによる整流出力が、平滑コンデンサCi1のみに充電される整流電流経路が形成される。一方、交流入力電圧VACが負の期間では、ブリッジ整流回路Diによる整流出力が、平滑コンデンサCi2のみに充電される整流電流経路が形成される。
このようにして整流動作が行われる結果、平滑コンデンサCi1,Ci2の各両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルが生じることになる。従って、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧である整流平滑電圧Eiとしては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルが得られる。つまり、いわゆる倍電圧整流回路が形成されるものである。
【0079】
このようにして、図1に示す回路では、商用交流電源AC100V系の場合には、倍電圧整流動作により、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成し、商用交流電源AC200V系の場合には、例えば全波整流回路による等倍電圧整流動作によって、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。つまり、商用交流電源AC100V系の場合と、AC200V系の場合とで、結果的に同等レベルの整流平滑電圧Eiが得られるようにしており、これによって、ワイドレンジ対応としているものである。そして、この整流平滑電圧Eiは、後段のスイッチングコンバータに対して、直流入力電圧として入力される。
【0080】
上記直流入力電圧を入力して動作するスイッチングコンバータとしては、この場合、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
また、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間には、ゲート−ソース間抵抗R12が接続される。このゲート−ソース間抵抗R12の両端には、後述するようにしてスイッチング素子Q1のゲートに印加されるドライブ信号によってゲート電圧VGH1が発生する。同様に、スイッチング素子Q2に対しても、ゲート−ソース間抵抗R22が接続され、ゲートに印加されるドライブ信号によってはゲート電圧VGL1が発生する。
【0081】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0082】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0083】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ゲート抵抗R11を介してハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ゲート抵抗R21を介してローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0084】
また、この場合には、1組のブートストラップ回路が設けられる。このブートストラップ回路は、図示するようにして、コンデンサCBS,ダイオードDBS、及びコンデンサCbを備えている。コンデンサCBSの負極端子は、一次側アースに接続され、正極端子は、ダイオードDBSのアノードと、コントロールIC2の端子Vc2との接続点に接続される。
また、ダイオードDBSのカソードは、端子VBと接続されると共に、コンデンサCbを介して端子Vsに対して接続される。端子Vsは、ゲート−ソース間抵抗R12を介してスイッチング素子Q1のゲートに対して接続されている。このようにしてブートストラップ回路が設けられることで、ハイサイドのスイッチング素子Q1に対して印加されるドライブ信号は、スイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるように、レベルシフトが行われることになる。
【0085】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力する。
【0086】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号がゲート抵抗R11を介して印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図3(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図3(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0087】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が、ゲート抵抗R21を介して印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図3(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図3(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図3(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0088】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCp1,Cp2における充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0089】
(第1の)絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。また、本実施の形態では後述する力率改善回路3を形成する三次巻線N3も巻装される。
この絶縁トランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に接続される。また、他端は、一次側並列共振コンデンサC1の直列接続を介して一次側アースに接続される。
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1によっては、(第1の)一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0090】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた形式を採っていることになる。本明細書では、このようなスイッチングコンバータについて、複合共振形コンバータということにする。
【0091】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1(三次巻線N3)の組と、次に説明する二次巻線N2,N2Aを、EE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
そして、EE型コアの中央磁脚に対しては1.0mm〜1.5mmのギャップを形成するようにしている。これによって、0.7〜0.8程度の結合係数による疎結合の状態を得るようにしている。
【0092】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2が巻装されている。この二次巻線N2には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCOから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCOの両端電圧として二次側直流出力電圧EOが得られる。この二次側直流出力電圧EOは、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0093】
制御回路1は、例えば二次側の直流出力電圧EOのレベルに応じて、そのレベルが可変される電流又は電圧を制御出力として得る。この制御出力は、コントロールIC2の制御端子Vcに対して出力される。
コントロールIC2では、制御端子Vcに入力された制御出力レベルに応じて、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号とについて、互いに交互にオン/オフさせるタイミングを保たせたうえで、各ドライブ信号の周波数を同期させた状態で可変するように動作する。
これにより、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数は、制御端子Vcに入力された制御出力レベル(つまり二次側直流出力電圧レベル)に応じて、可変制御されることになる。
スイッチング周波数が可変されることによっては、一次側直列共振回路における共振インピーダンスが変化することになる。このようにして共振インピーダンスが変化することによっては、一次側の直列共振回路の一次巻線N1に供給される電流量が変化して二次側に伝送される電力も変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧E0のレベルが変化することとなって定電圧制御が図られることになる。
【0094】
そして、図1に示す電源回路においては、これまで説明した構成に対して、力率改善のための(第1の)力率改善回路3が備えられる。
この図に示す力率改善回路3は、先に説明したようにして、商用交流電源ACのライン側において、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と負極入力端子間に並列に挿入されるフィルタコンデンサCNを含むものとされる。そして、このフィルタコンデンサCNの一端とブリッジ整流回路Diの正極入力端子の接続点に対し、図示するように、インダクタL20−三次巻線N3−高速リカバリ型ダイオードD1を直列接続する。この場合、高速リカバリ型ダイオードD1のアノード側が三次巻線N3と接続されるようになっている。そして、高速リカバリ型ダイオードD1のカソードを、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子に対して接続するようにしている。
【0095】
また、高速リカバリ型ダイオードD1のアノードに対しては、もう1つの高速リカバリ型ダイオードD2のカソードを接続している。高速リカバリ型ダイオードD2のアノードは、一次側アースに接地させている。
【0096】
このような構成による力率改善回路3の動作を図4の波形図を参照して説明する。
例えば図4(a)示す周期により交流入力電圧VACが得られているとすると、商用交流電源ACの正極ラインに得られる整流電流I1は、図4(d)に示すようにして、交流入力電圧VACが正/負の期間において、それぞれ正極性/負極性となるようにして流れる。
また、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と、力率改善回路3内のインダクタの接続点の電位V1は、図4(c)に示す波形が得られる。
また、三次巻線N3には、一次巻線N1に得られる交番電圧に基づいて、図4(e)に示す波形の電圧V2が得られるが、この電圧V2は、正/負のピークとなる期間においてスイッチング周期に応じた交番電圧が生じている。この波形は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力が電圧帰還されることで得られる。
そして、電圧V2について正/負のピークとなって交番波形が得られる期間は、電位V1よりも、その絶対値レベルが高くなる期間であり、この期間において、力率改善回路3内においては、図4(f)に示すスイッチング周期による交番電流I2が流れる。
【0097】
交流入力電圧VACが正の期間では、正極性の整流電流I1は、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子から、このブリッジ整流回路Diを形成するダイオードDaに流入する成分と、交番電流I2としてインダクタL20側に流入する成分とに分岐される。
そして、このときの交番電流I2は、インダクタL20→三次巻線N3→高速リカバリ型ダイオードD1の経路で平滑コンデンサCi1の正極端子に流入する。そして、交流入力電圧VACがAC100V系であるのに対応して倍電圧整流回路が形成されている場合には、平滑コンデンサCi1を流れた交番電流I2は、リレースイッチS1を介して商用交流電源ACの負極ラインからフィルタコンデンサCNに流入する。また、AC200V系に対応して全波整流回路が形成されている場合には、平滑コンデンサCi1を流れた交番電流I2は、ブリッジ整流回路DiのダイオードDdを介して商用交流電源ACの負極ラインからフィルタコンデンサCNに流入する。
【0098】
また、交流入力電圧VACが負の期間では、負極性の整流電流I1は、倍電圧整流回路が形成されている場合には、平滑コンデンサCi2を介した後において、ブリッジ整流回路DiのダイオードDcに流れる成分と、平滑コンデンサCi2を介して高速リカバリ型ダイオードD2に流入して負極性の交番電流I2となる成分とに分岐する。
また、全波整流回路が形成されている場合には、ブリッジ整流回路DiのダイオードDb→平滑コンデンサCi1→Ci2を介した後において、ブリッジ整流回路DiのダイオードDcに流れる成分と、高速リカバリ型ダイオードD2に流入して負極性の交番電流I2となる成分とに分岐する。
【0099】
そして、上記のように高速リカバリ型ダイオードD2に流入した負極性の交番電流I2は、先ず、高速リカバリ型ダイオードD2→三次巻線N3→インダクタL20の経路で流れ、商用交流電源ACの正極ライン側からフィルタコンデンサCNに流入する。
【0100】
このようにして、交番電流I2は、正極性のときには高速リカバリ型ダイオードD1によりスイッチング(断続)され、負極性のときには高速リカバリ型ダイオードD2によりスイッチング(断続)されることで交番波形とされて、整流電流経路に流れるようにされる。
そして、図4(f)と図4(d)とを比較して分かるように、高速リカバリ型ダイオードD1,D2によりスイッチングされて得られる交番電流I2は、整流電流I1よりも導通角が拡大されているとともに、帰還されたスイッチング出力により増幅されて振幅も大きくなっていることが分かる。
【0101】
このようにして、高速リカバリ型ダイオードD1,D2によって、整流電流がスイッチングされるようにして断続されることで、整流出力電圧レベルが整流平滑電圧Eiのレベルよりも低いとされる期間にも平滑コンデンサCi1,Ci2への充電電流が流れるようにされる。
この結果、交流入力電流の平均的な波形が交流入力電圧の波形に近付くようにされることで、図4(b)に示すようにして、AC100V系時(VAC=100V)とAC200V系時(VAC=230V)とで共に、交流入力電流IACの導通角が拡大される。このようにして、交流入力電流IACの導通角が拡大される結果、力率改善が図られることになる。
【0102】
図5には、図1に示した構成による電源回路の特性として、負荷電力Po=0〜300Wの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC/DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。
また、図6には、図1に示した構成による電源回路の特性として、AC100V系では交流入力電圧VAC=80V〜150V、AC200系では交流入力電圧VAC=160V〜300Vの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC/DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。
なお、これらの図においては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧整流回路とした場合の特性を実線により示し、全波整流回路とした場合の特性を破線により示している。
また、図5の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路とした場合は、交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件、全波整流動作とした場合は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。また、図6に示す実験結果は、負荷電力Po=300Wで一定の条件で得ている。
【0103】
また、参考として、上記図5及び図6に示した実験結果を得るにあたっての、図1に示した回路の各部の定数を示しておく。
絶縁コンバータトランスPIT:EER−40のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=35T
二次巻線N2:センタータップを分割位置として23T+23T(ターン)
三次巻線N3=7T
一次側直列共振コンデンサC1=0.033μF
一次側部分共振コンデンサCp=680pF
インダクタL20=39μH
フィルタコンデンサCN=1μF
【0104】
これら図5及び図6によっては、負荷電力Po=300Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、力率PF=0.82、電力変換効率ηAC→DC=93.9%となる特性が得られている。また、負荷電力Po=300Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件における特性は、力率PF=0.77、電力変換効率ηAC→DC=96.0%となっている。
この結果から、負荷電力Po=300W時における力率としては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。また、図14に示した先行技術としての電源回路と比較すると、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電力変換効率が大幅に向上していることがわかる。
【0105】
ここで、本実施の形態である図1の電源回路と、先行技術としての図14の電源回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図1に示した回路では、電圧帰還方式による力率改善回路3を備える構成としていることでアクティブフィルタが省略される。アクティブフィルタは、1組のコンバータを構成するものであり、図14による説明からも分かるように、実際には、2本のスイッチング素子と、これらを駆動するためのIC、及びトーテムポール回路等を始め、多くの部品点数により構成される。
これに対して、図1に示す電源回路に備えられる力率改善回路3は、絶縁コンバータトランスPITに巻装する三次巻線N3と、インダクタL20、フィルタコンデンサCN、高速リカバリ型ダイオードD1,D2の2本を備えているのみであるから、アクティブ回路と比較すれば非常に少ない部品点数となっている。
これにより、図1に示す電源回路としては、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応の電源回路として、図14に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
【0106】
また、図1に示す電源回路では、共振形コンバータ及び力率改善回路3の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作であるから、図14に示したアクティブフィルタと比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
このため、図1にも示したように、各1組のラインフィルタトランスLFTとアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、図1にも示しているように、1つのフィルタコンデンサCNのみにより対策を行っている。
このようにしてノイズフィルタとしての部品点数が削減されることによっても、電源回路のコストダウンと、回路基板の小型軽量化は促進される。
【0107】
また、図14に示す電源回路の総合電力変換効率は、前段のアクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とにより決定されるものであった。これに対して、図1に示す電源回路は、アクティブフィルタを前段に備えていないから、総合電力変換効率は、この電流共振形コンバータのAC-DC電力変換効率として見ればよいことになる。
これにより、図1に示す電源回路の総合電力変換効率としては、図14に示す電源回路よりも大幅に向上されることになる。
先に図5及び図6の特性図によっても示したように、図1に示す回路は、負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、総合電力変換効率(AC-DC電力変換効率)は、93.9%であり、図14に示した回路と比較して、交流入力電力は13.1W低減するという結果が得られた。負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、総合電力変換効率(AC-DC電力変換効率)は、96.0%であり、交流入力電力は9.7W低減している。
【0108】
また、図1に示す電源回路の場合、一次側のスイッチングコンバータのスイッチング周波数は、交流入力電圧VAC及び負荷電力の変化などに応じて、定電圧化のために例えば70KHz〜150KHzの範囲で変化するのであるが、このスイッチングコンバータを形成する各スイッチング素子Q1,Q2は、同期してスイッチング動作する。従って、一次側アース電位としては、図14の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定することとなる。
【0109】
続いては、第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成について、図2を参照して説明する。なお、この図において、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0110】
この図2に示す電源回路においては、リレーRLにより切り換えが制御されるリレースイッチとして、整流回路切り換えのためのリレースイッチS1に加えて、三次巻線N3の巻数を切り換えるためのリレースイッチS2が備えられる。
【0111】
このリレースイッチS2は、端子t1に対して端子t2又は端子t3が択一的に接続されるようにして切り換えが行われる、いわゆる2接点となっている。
この場合には、リレーRLが、リレースイッチS1、S2を連動的に制御することになり、また、リレースイッチS2については2接点とする必要がある。このために、電磁リレーの部品としては、2回路2接点の仕様のものを用いることとしている。図1の場合と異なり、リレースイッチS1が2接点となっているのはこのような部品選定の都合による。この図に示すリレースイッチS1では、端子t1に対してブリッジ整流回路Diの負極入力端子が接続され、端子T3に対して、平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点が接続される。端子t2はオープンとしている。
【0112】
この場合、力率改善回路3を形成するために絶縁コンバータトランスPITに巻装される三次巻線N3としては、タップ出力が設けられることで、巻線部N3Aと巻線部N3Bとに分割される。そして、このタップ出力が上記リレースイッチS2の端子t3に接続される。また、巻線部N3B側の端部がリレースイッチS2の端子t2に接続される。
【0113】
そして、この場合におけるリレーRLによる切り換え動作は次のようになる。
この場合のリレーRLは、交流入力電圧VAC=150V以下(AC100V系)である場合と、交流入力電圧VAC=150V以上(AC200V系)である場合とに応じて、整流回路切換モジュール5によって導通/非導通の状態の切換が行われる。
【0114】
そして、交流入力電圧VAC=150V以下(AC100V系)の場合には、リレーRLによって、リレースイッチS1,S2は、共に、端子t1に対して端子t3が接続される状態となるように切り換えが行われる。
先ず、リレースイッチS1側において端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子と平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点が接続される状態となる。これにより、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、倍電圧整流回路が形成される。
また、リレースイッチS2側において端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、力率改善回路3を形成する三次巻線N3としては、巻線部N3Aのみが有効とされることになる。
【0115】
これに対して、交流入力電圧VAC=150V以上(AC200V系)の場合には、リレーRLによって、リレースイッチS1,S2は、共に、端子t1に対して端子t2が接続される状態となるように切り換えが行われる。
リレースイッチS1側において端子t1と端子t2が接続されることによっては、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子と平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点は接続されない状態となる。これにより、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、通常の全波整流回路が形成される。
また、リレースイッチS2側において端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、力率改善回路3を形成する三次巻線N3としては、巻線部N3Aと巻線部N3Bとを直列接続した巻線が有効とされることになる。
【0116】
つまり、この図2に示す回路においては、先ず、整流回路系については、AC100V系では倍電圧整流回路が形成され、AC200V系では、全波整流回路が形成されることになる。この点では、図1に示した回路と同様の動作が得られていることになる。
そして、力率改善回路3においては、AC100V系時よりもAC200V系時のほうが、力率改善回路3を形成する三次巻線N3についての巻数が増加するようにして切り換えが行われるものである。
【0117】
三次巻線N3としての巻線数が変化すれば、この三次巻線N3と一次巻線N1との巻線比が変化することになって、三次巻線N3に励起されて整流電流経路に帰還されるべき交番電圧レベルも変化することになる。
そして、上記のようにして、AC200V系時に三次巻線N3の巻線数が増加することによっては、三次巻線N3に励起される交番電圧レベルも上昇して、整流電流経路に帰還される交番電圧レベルも増加することになる。これによっては、力率改善回路3において帰還されるエネルギーが増加するために、より高い力率を得ることが可能となる。
先の第1の実施の形態の電源回路では、図5及び図6に示したように、AC100V系時と比較した場合には、AC200V系時の力率が低下していたものであるが、この第2の実施の形態では、この特性を改善しているものである。
【0118】
図7及び図8は、第2の実施の形態の電源回路の特性を示している。
図7は、負荷電力Po=0〜300Wの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示す。また、図8は、負荷電力Po=300Wの条件の下で、AC100V系としては交流入力電圧VAC=80V〜150V、AC200系としては交流入力電圧VAC=160V〜300Vの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。また、これらの図においても、フルブリッジ動作とした場合の特性を実線により示し、ハーフブリッジ動作とした場合の特性を破線により示している。
また、この場合にも、図7の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路としたときの特性は交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件とし、また、全波整流回路としたときの特性は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。また、図8に示す実験結果は、負荷電力Po=300Wで一定とした条件で得ている。
また、ここでは、三次巻線N3の巻数(ターン数T)として、[巻線部N3A=6T,巻線部N3B=1T]とした組み合わせの場合と、[巻線部N3A=7T,巻線部N3B=2T]とした組み合わせの場合との、両者の構成に対応した特性を示している。
[巻線部N3A=6T,巻線部N3B=1T]とした組み合わせの場合、AC100V系時では、三次巻線N3=N3A=6Tとなり、AC200V系時においては、三次巻線N3=N3A(6T)+N3B(1T)=7Tとなる。
また、[巻線部N3A=7T,巻線部N3B=2T]とした組み合わせの場合、AC100V系時では、三次巻線N3=N3A=7Tとなり、AC200V系時においては、三次巻線N3=N3A(7T)+N3B(2T)=9Tとなる。
【0119】
これら図7及び図8と、先の第1の実施の形態の電源回路の特性図を示した図5及び図6と比較して分かるように、第2の実施の形態の電源回路では、AC200V系に対応して全波整流回路が形成されている場合において、特に重負荷の条件となるのに従って、力率が向上されていることがわかる。そして、負荷電力Po=300Wの条件では、AC200V系時の力率は、AC100V系時とほぼ同等となるまでに引き上げられていることが分かる。
この第2の実施の形態における力率特性と高調波歪規制との関係としては、例えば交流入力電圧VAC=100Vでは、三次巻線N3=6Tとすれば、負荷電力Po=25W〜300Wの範囲で、力率PF=0.75〜0.88が得られ、我が国(日本国)の高調波歪規制値をクリアする。また、交流入力電圧VAC=230Vでは、三次巻線N=9Tとなるようにすれば、負荷電力Po=150W〜300Wの範囲で、力率PF=0.75〜0.80であり、欧州の高調波歪み規制値をクリアする。
【0120】
図9は、第3の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。
この図に示す電源回路は、先行技術として図15に示した回路と同様に、負荷電力Po=600W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
なお、この図において、図1及び図2と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0121】
この図9に示す電源回路は、負荷電力Po=600W以上の条件に対応するために、先ず、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2が備えられる。
ブリッジ整流回路Di1の正極入力端子と負極入力端子は、それぞれ、商用交流電源ACの正/負の各ラインに対して接続される。また、ブリッジ整流回路Di1の正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
【0122】
ブリッジ整流回路Di2も同様にして、正極入力端子と負極入力端子の各々が商用交流電源ACの正/負の各ラインに対して接続される。また、正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
つまり、図9に示す回路では、商用交流電源ACを整流するためのブリッジ整流回路を2段備え、商用交流電源ACのラインに対して並列に接続しているものである。
【0123】
また、この場合には、2組のフィルタコンデンサCN,CNを並列接続して、図示するように商用交流電源ACの正/負のライン間に対して接続している。
【0124】
また、この図9の電源回路においては、2つの絶縁コンバータトランスPIT−1,PIT−2が備えられる。これらのうち、絶縁コンバータトランスPIT−1が、例えば図1又は図2に示した電源回路における絶縁コンバータトランスPIT(第1の絶縁コンバータトランス)に相当するものであり、絶縁コンバータトランスPIT−2は、図1又は図2に示した回路構成に対してあらたに追加されたものとして扱うことができる(第2の絶縁コンバータトランス)。
【0125】
そして、この場合においては、2つの絶縁コンバータトランスPIT−1,PIT−2の二次側からそれぞれ2つの二次側直流出力電圧を生成することとしており、計4つの二次側直流出力電圧を負荷に供給するようにして、負荷電力Po=600W以上をまかなうことになる。そして、絶縁コンバータトランスPIT−1と、絶縁コンバータトランスPIT−2とで、それぞれ負荷電力Po=300Wをまかなうようにされる。
【0126】
先ず、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側においては、例えば200Vの二次側直流出力電圧Eo1と、24Vの二次側直流出力電圧Eo2とを生成するための整流回路系が備えられる。
このために、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には、図示するように、二次巻線N2,N2Aの2つの二次巻線が独立して巻装される。そして、二次巻線N2に対しては、アースに接続したセンタータップを設けると共に、図示する接続態様によって整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCo1を接続して両波整流回路を形成する。この両波整流回路によって、平滑コンデンサCo1の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo1が生成される。
また、二次巻線N2Aに対しても同様にして、アースに接続したセンタータップを設けると共に、整流ダイオードDo3,Do4、及び平滑コンデンサCo2から成る両波整流回路を接続し、二次側直流出力電圧Eo2を生成するようにされる。
【0127】
この場合には、制御回路1は、上記二次側直流出力電圧Eo1と二次側直流出力電圧Eo2のうち、メインとなる二次側直流出力電圧Eo1を検出電圧として入力し、制御出力をコントロールIC2の制御端子Vcに入力している。従って、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数制御によっては、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側にて生成される二次側直流出力電圧(Eo1,Eo2)を定電圧化することになる。
なお、この図に示すコントロールIC2は、図1及び図2に示したものと同様であり、周辺の外付け部品の接続態様等も同じでよいものとされるが、ここでは、例えばブートストラップ回路に関する部品や端子などの図示については省略している。
【0128】
続いては、絶縁コンバータトランスPIT−2側の構成について説明する。
先ず、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側には、一次巻線N1Aが巻装されている。この一次巻線N1Aは、その端部が、スイッチング素子Q1のドレインと、スイッチング素子Q2のソースの接続点(スイッチング出力点)と接続され、他端は、直列共振コンデンサC1Aの直列接続を介して一次側アースと接続される。ここで、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1Aのリーケージインダクタンスと、直列共振コンデンサC1Aのキャパシタンスとによっても、一次側スイッチングコンバータを電流共振形とするための直列共振回路が形成される。
つまり、図9に示す回路では、電流共振形コンバータを形成する直列共振回路として、一次巻線N1−直列共振コンデンサC1から成る(第1の)直列共振回路と、一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1Aから成る(第2の)直列共振回路との2つの直列共振回路が備えられ、これら2つの直列共振回路が並列に接続されていることになる。
【0129】
また、直列共振コンデンサC1Aに対しては、補助直列共振コンデンサC1Bと、補助スイッチング素子Q20とクランプダイオードDD20を並列接続して形成したスイッチング回路との直列接続回路が、並列に接続される。
この場合の補助スイッチング素子Q20は、MOS−FETとされ、ドレインが補助直列共振コンデンサC1Bを介して、一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1Aの接続点と接続される。ソースは、一次側アースに接続される。
また、具体的な定数例は後述するが、補助コンデンサC1Bと直列共振コンデンサC1Aは、互いのキャパシタンスについてC1B>>C1Aとなるように選定されている。
【0130】
スイッチング回路(Q20//DD20)を駆動するための駆動回路系は、駆動巻線Ng、コンデンサCg、ゲート抵抗Rg、及びゲート−ソース間抵抗Rsgを図示するようにして接続して形成される。
駆動巻線Ngは、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側に巻装されることで、例えば一次巻線(N1,N1A)によって交番電圧が誘起される。なお、駆動巻線Ngのターン数は、例えば1Tとされる。
そして、この駆動巻線Ngに得られた交番電圧は、コンデンサCgからゲート抵抗Rgを介するようにして、スイッチング素子Q20のゲートに印加される。これにより、ゲート−ソース間抵抗Rgsにはゲート電圧が発生する。そして、このゲート電圧が所定の閾値以上となるレベルとなったときにスイッチング素子Q20がオンとなり、閾値以下となったときにオフとなるように制御されることになる。このようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)は、スイッチング動作を行うことになる。ここで、駆動巻線Ngに発生する交番電圧は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力に基づいて励起されたものであるから、スイッチング回路(Q20//DD20)のスイッチング動作も、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数に同期したものとなる。
【0131】
このスイッチング回路(Q20//DD20)は、絶縁コンバータトランスPIT−2側の二次側直流出力電圧(Eo3,Eo4)を定電圧化するために設けられるものであるが、この点については後述する。
【0132】
また、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側には、さらに、三次巻線N3が巻装される。この絶縁コンバータトランスPIT−2に巻装される三次巻線N3は、図示するようにして、(第2の)力率改善回路3−1を形成する。なお、この力率改善回路3−1については、回路を形成する部品素子及びその接続態様、また、力率改善のための動作は、力率改善回路3と同様であることから、ここでの説明は省略する。
このようにして、本実施の形態では、2つの絶縁コンバータトランスPIT−1,絶縁コンバータトランスPIT−2が備えられることに応じて、三次巻線N3を備えて整流電流経路にスイッチング出力を電圧帰還する構成の力率改善回路も2系統備えられることになる。
【0133】
続いて、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側の構成について説明する。
絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側においては、例えば100Vの二次側直流出力電圧Eo3と、50Vの二次側直流出力電圧Eo4とを生成するための整流回路系が備えられる。
これに応じて、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には、図示するように、二次巻線N2B,N2Cの2つの二次巻線が独立して巻装される。
二次巻線N2Bに対しては、アースに接続したセンタータップを設けると共に、整流ダイオードDo5,Do6、及び平滑コンデンサCo3から成る両波整流回路を接続する。この両波整流回路によって二次側直流出力電圧Eo4が生成される。
また、二次巻線N2Cに対しても同様にして、アースに接続したセンタータップを設けると共に、整流ダイオードDo7,Do8、及び平滑コンデンサCo4から成る両波整流回路を接続し、二次側直流出力電圧Eo4を得る。
【0134】
上記のようにして生成される二次側直流出力電圧Eo3,Eo4は、それぞれ負荷に供給されるが、二次側直流出力電圧Eo3は、分岐して制御回路1Aに対して検出電圧として入力される。
制御回路1Aでは、入力された二次側直流出力電圧Eo3のレベルを検出して、制御出力として、所要の基準となるレベル(100V)との誤差に応じたレベルの電圧を出力する。この制御出力としての電圧は、スイッチング回路(Q20//DD20)のスイッチング素子Q20のゲートに印加される。このような制御出力がスイッチング素子Q20のゲートに印加されることによっては、二次側直流出力電圧Eo3のレベルに応じて、ゲート電圧が可変制御されることになる。このような動作によって、絶縁コンバータトランスPIT−2側で得られる二次側直流出力電圧に対する定電圧制御が行われる。
【0135】
図10は、スイッチング回路(Q20//DD20)による定電圧制御動作を説明するための波形図である。
図10(a)は、一次側スイッチングコンバータを形成するスイッチング素子のうち、ローサイドに接続されるスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2を示す。
図10(b)は、スイッチング出力点(スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2の接続点)から、直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)に流入するスイッチング出力電流I1Aを示している。
図10(c)は、スイッチング素子Q20の両端電圧VQ3を示し、図10(d)はスイッチング回路(Q20//DD20)に流れるスイッチング電流IQ3を示す。
【0136】
図10(a)に示すスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数に対応した周期により、スイッチング素子Q2がオフとなる期間では正極性の矩形波パルスが得られ、スイッチング素子Q2がオンとなる期間では0レベルとなる波形が得られている。なお、ハイサイドのスイッチング素子Q1の両端電圧は、図10(a)に示す波形と180°の位相差を有するものとなる。
そして、上記図10(a)に示される周期タイミングでスイッチング素子がスイッチング動作を行うのに応じて、直列共振回路(N1A−C1A)には、図10(b)に示すスイッチング出力電流I1Aが流れる。このスイッチング出力電流I1Aは、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数に応じて、正極性と負極性とで反転する正弦波状の波形となる。スイッチング出力電流I1Aが正弦波状となるのは、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を入力して、直列共振回路(N1A−C1A)が共振動作を行うことに依る。
【0137】
前述もしたように、スイッチング回路(Q20//DD20)を形成する補助スイッチング素子Q20は、駆動巻線Ng、コンデンサCg、ゲート抵抗Rg、及びゲート−ソース間抵抗Rsgから成る駆動回路系によって、スイッチング周期でオン/オフするように動作する。そして、このスイッチング動作は、図10(c)(d)に示される。
つまり、例えば図10(d)に示すスイッチング電流IQ3は、スイッチング出力であるスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2が立ち上がる直前の短期間ではクランプダイオードDD20から補助コンデンサC1Bを介して負極正により、ダンパー電流として流れる。この後、両端電圧VQ2が立ち上がるタイミングで以て、補助スイッチング素子Q20がオンとなる。そして、この補助スイッチング素子Q20がオンとなる期間TONにおいては、スイッチング電流IQ3は、補助コンデンサC1Bから補助スイッチング素子Q20のドレイン−ソースの方向により正極性で流れる。
このようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)がオンとなる期間は、クランプダイオードDD20にダンパー電流が流れる期間と、これに続いて補助スイッチング素子Q20がオンとなる期間とから成る。
【0138】
また、スイッチング素子Q20の両端電圧VQ3は、図10(c)に示すようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)がオンとなる期間では0レベルとなる。
また、スイッチング回路(Q20//DD20)がオフとなって電流が流れない期間においては、正極性による正弦波状の波形が得られる。
直列共振コンデンサC1Aと補助コンデンサC1Bとについて、キャパシタンスの関係がC1B>>C1Aとされていることで、スイッチング回路(Q20//DD20)がオンとなる期間では、スイッチング出力電流IA1は、補助コンデンサC1Bにほとんど流れる。これに対して、スイッチング回路(Q20//DD20)がオフとなる期間では、スイッチング出力電流IA1は、補助コンデンサC1Bに流れなくなる代わりに、直列共振コンデンサC1Aに充放電されることになる。このため、スイッチング回路(Q20//DD20)がオフとなる期間においては、スイッチング素子Q20の両端電圧VQ3の波形が正弦波状となるものである。
【0139】
このようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)は、スイッチング周期に応じてオン/オフの期間が生じる。
そして、スイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間においては、直列共振コンデンサC1Aと補助コンデンサC1Bが並列接続される回路が形成されることになる。このようにして、直列共振コンデンサC1Aと補助コンデンサC1Bが並列接続される場合には、キャパシタンスが増加することになる。これは即ち、直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)の共振回路の共振条件が可変されことを意味する。共振条件が変化すれば、このときにおける直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)の共振出力も変化する。つまり、絶縁コンバータトランスPIT−2において、一次巻線N1Aから二次巻線(N2A,N2B)側に伝送される電力も変化することになる。
【0140】
そして、絶縁コンバータトランスPIT−2側に備えられる制御回路1Aは、前述もしたように、二次側直流出力電圧Eo3のレベルに応じて、補助スイッチング素子Q20のゲート電圧を可変制御する。そしてゲート電圧が可変されることによっては、補助スイッチング素子Q20がオンとなる期間TON(図10)が可変されることになる。期間TONが可変されることは、即ち、この期間TONを含んで形成される、スイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間が可変制御されることを意味する。また、このスイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間の可変制御は、1スイッチング周期ごとに行われるから、スイッチング周波数の条件の下でのPWM制御となる。
このようにしてスイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間が可変制御されることによっては、上記したように、直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)におけるキャパシタンスが増加する期間が変化することとなって、これにより、1スイッチング周期内において、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側から二次側に伝送される電力も可変されることとなる。二次側に伝送される電力が変化すれば、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側で生成される出力電圧のレベルも変化することとなる。この結果、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側直流出力電圧を定電圧化する動作が得られることとなる。
【0141】
ここで、上記図9に示した構成による電源回路についての実験結果として、電力変換効率ηAC→DC、及び力率改善回路(3,3−1)の動作により得られる力率の特性を述べておく。
なお、参考として、実験結果を得るにあたっての、図9に示した回路の各部の定数を示しておく。
絶縁コンバータトランスPIT−1,PIT−2:EER−42のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=34T
二次巻線N2=センタータップを分割位置として25T+25T(ターン)
三次巻線N3=8T
一次側直列共振コンデンサC1=0.033μF
インダクタL20,L20,=39μH
一次側直列共振コンデンサC1A=0.033μF
補助コンデンサC1B=0.15μF
【0142】
実験結果として、先ず、力率については、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、力率PF=0.85となる結果が得られた。また、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件における特性は、力率PF=0.80という結果が得られた。
なお、力率に関しては、2つの力率改善回路(3,3−1)により力率改善を行った結果得られた値であることから、電圧帰還方式としては、比較的高い値の特性となっている。
また、交流入力電圧VAC=100V時での負荷電力Po=600W〜100Wの変動範囲に対しては、力率PF>0.75を維持しており、この特性であれば、国内の電源高調波歪規制を満足する。また、交流入力電圧VAC=230V時での負荷電力Po=600W〜300Wの変動範囲における力率の値であれば、欧州の電源高調波歪規制を満足する。
このように、力率特性としては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。
【0143】
また、電力変換効率ηAC→DCについては、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、電力変換効率ηAC→DC=93.5%、交流入力電力は641.7Wとなる結果が得られた。また、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、電力変換効率ηAC→DC=95.7%、交流入力電力は647.7Wという結果が得られた。
例えば、同じ負荷電力Po=600W以上に対応する構成を採る図15に示した先行技術の回路では、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、電力変換効率ηAC→DC=90.2%、交流入力電力665.2Wとされていた。従って、図9に示す回路では、電力変換効率ηAC→DCについては3.3%向上し、交流入力電力は23.5W低減していることになる。
また、負荷電力Po=300Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、図15の回路は電力変換効率ηAC→DC=93.1%、交流入力電力665.2Wであるから、電力変換効率ηAC→DCは2.6%向上し、交流入力電力は17.5W低減していることになる。
このようにして、同じ負荷電力Po=600W以上の条件に対応し、力率改善を図る電源回路として、図9に示した実施の形態と図15に示した先行技術としての電源回路とを比較すると、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電力変換効率が大幅に向上していることがわかる。
【0144】
また、この図9に示した電源回路についても、同等の負荷条件に対応する図15の回路と比較すれば、力率改善のための回路構成としては、アクティブフィルタから、より少ない部品点数の力率改善回路3,3−1となる。また、ノイズ抑制のための各種部品も削減される。これにより、部品点数の削減による低コスト化及び電源回路の小型軽量化が図られることになる。
【0145】
特に、図15の回路構成と比較した場合において、図15の回路では、スイッチングコンバータとして、3組のスイッチングコンバータを備える必要があり、このために、絶縁コンバータトランスとしても3組必要とされていた。これに対して、図9に示す回路では、1組のスイッチングコンバータと、このスイッチングコンバータから分岐した2組の絶縁コンバータトランスの組み合わせにより、同等の4つの二次側直流出力電圧を供給可能な構成としている。つまり、同等の負荷条件に対応する場合において、図15に基づく回路構成と比較すれば、より少ないコンバータ数、及び絶縁コンバータトランス数により構成することができ、この点でも、部品点数の削減による低コスト化及び電源回路の小型軽量化が促進されることになる。
【0146】
そして、この図9に示す回路としても、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することは無いから、一次側アース電位は安定する。
【0147】
なお、図9に示す第3の実施の形態としての電源回路に対しても、図2に示した第2の実施の形態としての構成を付加することができる。つまり、三次巻線N3について、AC100V系時とAC200V系時とで巻線数が変更されるようにして切り換えを行い、これによって、AC200V系時における力率の値を高めることが可能となる。
図9に示す回路の場合、この三次巻線N3の巻線数切り換えの構成を適用するのにあたっては、力率改善回路3,3−1の各力率改善回路に備えるようにすることが考えられる。また、例えばメインとなる絶縁コンバータトランスPIT−1側の力率改善回路3においてのみ、三次巻線N3の巻線数切り換えの構成を備えるようにしても、AC200V系時における力率の改善効果は充分に得ることが可能である。
【0148】
また、本発明としては、これまでに説明した電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0149】
また、力率改善回路3(3−1)の構成としても、上記各実施の形態として示したもの以外に限定されるものではなく、これまでに本出願人が提案してきた各種の電圧帰還方式による回路構成として、倍電圧整流回路に適用可能なものを採用することも可能である。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明は、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、アクティブフィルタを備えない構成を採る。これにより、例えばアクティブフィルタによって力率改善を図る場合よりも電力変換効率が向上されるという効果を有している。
【0151】
また、本発明の電源回路としては、アクティブフィルタを構成するための多数の部品素子が不要となる。また、電源回路を構成する電流共振形コンバータ、及び力率改善回路はソフトスイッチング動作であり、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタを強化する必要もなくなる。
このために、先行技術と比較しては、部品点数が大幅に削減されることになって、電源回路サイズの小型/軽量化を図るすることが可能となる。また、それだけコストダウンが図られることにもなる。
【0152】
さらには、アクティブフィルタが省略されたことで、一次側アース電位の干渉が無くなるので、一次側アース電位も安定することとなって、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図3】実施の形態の電源回路におけるスイッチング素子のゲート−ソース間電圧を示す波形図である。
【図4】本実施の形態の要部の動作を、商用交流電源周期により示す波形図である。
【図5】第1の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の電源回路についての、交流入力電圧の変化に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の電源回路についての、交流入力電圧の変化に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図9】第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図10】第3の実施の形態の電源回路における、スイッチング回路による定電圧制御動作を示す波形図である。
【図11】アクティブフィルタの基本的回路構成を示す回路図である。
【図12】図11に示すアクティブフィルタにおける動作を示す波形図である。
【図13】アクティブフィルタのコントロール回路系の構成を示す回路図である。
【図14】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【図15】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
1,1A 制御回路、2 コントロールIC、3−1 力率改善回路、5 整流回路切換モジュール、Di ブリッジ整流回路、Ci1,Ci2 平滑コンデンサ、Q1,Q2 スイッチング素子、PIT,PIT−1,PIT−2 絶縁コンバータトランス、C1,C1A 一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1,N1A 一次巻線、N2,N2A,N2B,N2C 二次巻線、RL リレー、S1,S2 リレースイッチ、L20 インダクタ、D1,D2 高速リカバリ型ダイオード、CN フィルタコンデンサ、N3 三次巻線、N3A,N3B 巻線部、LFT ラインフィルタトランス、CL アクロスコンデンサ、Q3 補助スイッチング素子、C1B 補助コンデンサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、力率改善のための回路を備えたスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波の比較的大きい電流及び電圧に耐えることができるスイッチング素子の開発によって、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。
スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
【0003】
ところで、一般に商用電源を整流すると平滑回路に流れる電流は歪み波形になるため、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。
また、歪み電流波形となることによって発生する高調波を抑圧するための対策が必要とされている。
【0004】
そこで、スイッチング電源回路において力率を改善する力率改善手段として、整流回路系においてPWM制御方式の昇圧型コンバータを設けて力率を1に近付ける、いわゆるアクティブフィルタを設ける方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
図11の回路図は、このようなアクティブフィルタの基本構成を示している。
この図においては、商用交流電源ACにブリッジ整流回路Diを接続している。このブリッジ整流回路Diの正極/負極ラインに対しては並列に出力コンデンサCoutが接続される。ブリッジ整流回路Diの整流出力が出力コンデンサCoutに供給されることで、出力コンデンサCoutの両端電圧として、直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷10に入力電圧として供給される。
【0006】
また、力率改善のための構成としては、図示するようにして、インダクタL、高速リカバリ型のダイオードD、抵抗Ri、スイッチング素子Q、及び乗算器11を備える。
インダクタL、ダイオードDは、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。
抵抗Riは、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子(一次側アース)と出力コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。
また、スイッチング素子Q1は、この場合には、MOS−FETが選定されており、図示するようにして、インダクタLとダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
【0007】
乗算器11に対しては、フィードフォワード回路として、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLwが接続され、フィードバック回路として電圧検出ラインLVが接続される。
乗算器11は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流レベルを検出する。
また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。
そして、乗算器11からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
【0008】
電流検出ラインLIから乗算器11に対しては、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流が入力される。乗算器11では、この電流検出ラインLIから入力された整流電流レベルを検出する。また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
【0009】
乗算器11では、先ず、上記のようにして電流検出ラインLIから検出した整流電流レベルと、上記電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分と乗算する。そして、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した交流入力電圧の波形とによって、交流入力電圧VACと同一波形の電流指令値を生成する。
【0010】
さらに、この場合の乗算器11では、上記電流指令値と実際の交流入力電流レベル(電流検出ラインL1からの入力に基づいて検出される)を比較し、この差に応じてPWM信号についてPWM制御を行い、PWM信号に基づいたドライブ信号を生成する。そして、スイッチング素子Qは、このドライブ信号によってスイッチング駆動される。この結果、交流入力電流は交流入力電圧と同一波形となるように制御されて、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。また、この場合には、乗算器によって生成される電流指令値は、整流平滑電圧の変動差分に応じて振幅が変化するように制御されるため、整流平滑電圧の変動も抑制されることになる。
【0011】
図12(a)は、上記図11に示したアクティブフィルタ回路に入力される入力電圧Vin及び入力電流Iinを示している。電圧Vinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電圧波形に対応し、電流Iinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電流波形に対応する。ここで、電流Iinの波形は、ブリッジ整流回路Diの整流出力電圧(電圧Vin)と同じ導通角となっているが、これは、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diに流れる交流入力電流の波形も、この電流Iinと同じ導通角となっていることを示す。つまり、ほぼ1に近い力率が得られている。
【0012】
また、図12(b)は、出力コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)Pchgの変化を示す。出力コンデンサCoutは、入力電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、入力電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。
図12(c)は、上記出力コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。この充放電電流Ichgは、上記図12(b)の入出力エネルギーPchgの波形と同位相となっていることからも分かるように、出力コンデンサCoutにおけるエネルギーPchgの蓄積/放出動作に対応して流れる電流である。
【0013】
上記充放電電流Ichgは、入力電流Vinとは異なり、交流ライン電圧(商用交流電源AC)の第2高調波とほぼ同一の波形となる。交流ライン電圧には、出力コンデンサCoutとの間のエネルギーの流れによって、図12(d)に示すようにして、第2高調波成分にリップル電圧Vdが生じる。このリップル電圧Vdは、無効なエネルギー保存のために、図12(c)に示す充放電電流Ichgに対して、90°の位相差を有する。出力コンデンサCoutの定格は、第2高調波のリップル電流と、その電流を変調するブースト・コンバータ・スイッチからの高周波リップル電流を処理することを考慮して決定するようにされる。
【0014】
また、図13には、図11の回路構成を基として、基本的なコントロール回路系を備えたアクティブフィルタの構成例を示している。なお、図11と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子間には、スイッチングプリレギュレータ15が備えられる。このスイッチングプリレギュレータ15は、図11においては、スイッチング素子Q、インダクタL、及びダイオードDなどにより形成される部位となる。
【0015】
そして、乗算器11を含むコントロール回路系は、他に、電圧誤差増幅器12、除算器13、二乗器14を備えて成る。
電圧誤差増幅器12では、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutを、分圧抵抗Rvo−Rvdにより分圧してオペアンプ15の非反転入力に入力する。オペアンプ15の反転入力には基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ15では、基準電圧Vrefに対する分圧された直流電圧Voutの誤差に応じたレベルの電圧を、帰還抵抗Rvl、コンデンサCvlによって決定される増幅率により増幅して、誤差出力電圧Vveaとして除算器13に出力する。
【0016】
また、二乗器14には、いわゆるフィードフォワード電圧Vffが入力される。このフィードフォワード電圧Vffは、入力電圧Vinを平均化回路16(Rf11,Rf12,Rf13,Cf11,Cf12)により平均化した出力(平均入力電圧)とされる。二乗器14では、このフィードフォワード電圧Vffを二乗して除算器13に出力する。
【0017】
除算器13では、電圧誤差増幅器12からの誤差出力電圧Vveaについて、二乗器14から出力された平均入力電圧の二乗値により除算を行い、この除算結果としての信号を乗算器11に出力する。
つまり、電圧ループは、二乗器14、除算器13、乗算器11の系から成るものとされる。そして、電圧誤差増幅器12から出力される誤差出力電圧Vveaは、乗算器11で整流入力信号Ivacにより乗算される前の段階で、平均入力電圧(Vff)の二乗により除算されることになる。この回路によって、電圧ループの利得は、平均入力電圧(Vff)の二乗として変化することなく、一定に維持される。平均入力電圧(Vff)は、電圧ループ内において順方向に送られる開ループ補正の機能を有する。
【0018】
乗算器11には、上記除算器11により誤差出力電圧Vveaを除算した出力と、抵抗Rvacを介したブリッジ整流回路Diの正極出力端子(整流出力ライン)の整流出力(Iac)が入力される。ここでは、整流出力を電圧によるのではなく、電流(Iac)として示している。乗算器11では、これらの入力を乗算することによって、電流プログラミング信号(乗算器出力信号)Imoを生成して出力する。これは、図11にて説明した電流指令値に相当する。出力電圧Voutは、この電流プログラミング信号の平均振幅を可変することで制御される。つまり、電流プログラミング信号の平均振幅の変化に応じたPWM信号が生成され、このPWM信号に基づいたドライブ信号によってスイッチング駆動が行われることによって、出力電圧Voutのレベルをコントロールするものである。
したがって、電流プログラミング信号は、入力電圧と出力電圧を制御する平均振幅の波形を有する。なお、アクティブフィルタは、出力電圧Voutのみではなく、入力電流Vinも制御するようになっている。そして、フィードフォワード回路における電流ループは、整流ライン電圧によってプログラムされるということがいえるので、後段のコンバータ(負荷10)への入力は抵抗性になる。
【0019】
図14は、上記図13に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、AC100V系とAC200V系の両者の交流入力電圧(商用交流電源)に対応する、いわゆるワイドレンジ対応(ワールドワイド仕様)とされている。また、負荷電力300W以上の条件に対応可能な構成を採っている。また、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
【0020】
この図14に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続され、この後段にブリッジ整流回路Diが接続される。
また、ブリッジ整流回路Diの整流出力ラインには、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを図示するようにして接続して成るノーマルモードノイズフィルタ4が接続される。
【0021】
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、上記チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcと、高速リカバリ型の整流ダイオードD10の直列接続を介して、平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。この平滑コンデンサCiは、図11,図13における出力コンデンサCoutに相当する。また、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcとダイオードD10は、それぞれ、図11に示したインダクタLとダイオードDに相当する。
また、この図における整流ダイオードD10には、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
【0022】
スイッチング素子Q11,Q12から成るスイッチング素子の組は、図11におけるスイッチング素子Q10に相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合には、2つのスイッチング素子Q11,Q12を1組としており、これらのスイッチング素子Q11,Q12を、それぞれ、パワーチョークコイルLpcと高速リカバリ型の整流ダイオードD10の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に並列に挿入するようにしている。
【0023】
このようにして、2つのスイッチング素子を備えるのは、信頼性確保のためである。
つまり、例えば交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れるドレイン電流が総合で14Ap程度と非常に高くなる。そこで、2つのスイッチング素子を並列に接続することで、各スイッチング素子に流れるドレイン電流のピークレベルを抑えているものである。
この場合のスイッチング素子Q11,Q12には、MOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q11,Q12の各ゲート−ソース間には、それぞれ、ゲート−ソース間抵抗R52,R54が接続されている。
【0024】
アクティブフィルタコントロール回路20は、この場合には力率を1に近付けるように力率改善を行うアクティブフィルタの動作を制御するもので、例えば1石の集積回路(IC)とされている。
この場合、アクティブフィルタコントロール回路20は、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成される。図**に示した乗算器11、誤差電圧増幅器12、除算器13、及び二乗器14などに相当する回路部は、このアクティブフィルタコントロール回路20内に搭載される。
【0025】
この場合、フィードバック回路は平滑コンデンサCiの両端電圧(整流平滑電圧Ei)を分圧抵抗R55,R56,R57により分圧した電圧値を、アクティブフィルタコントロール回路20の端子T1に入力するようにして形成される。
【0026】
また、フィードフォワード回路としては、先ず、抵抗R58を介して整流出力が端子T3に入力される。これによって、交流入力電圧波形の検出と、平均化回路のための対応するフィードフォワード回路が形成されている。
また、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子と一次側アース間に挿入される抵抗R61との接続点から、抵抗R60を介して、端子T6に対して整流電流レベルを入力するようにしている。つまり、図14における電流検出ラインLIに相当するラインとしてのフィードフォワード回路が形成されている。
【0027】
また、端子T4には、起動抵抗Rsを介したブリッジ整流回路Diの正極の整流出力が、起動電圧として入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、電源起動時において、この端子T4に入力される起動電圧によって起動される。
また、パワーチョークコイルPCCにおいては、インダクタLpcとトランス結合された巻線N5が巻装されている。この巻線N5に励起された交番電圧は、ダイオードD11及びコンデンサC11とから成る半波整流回路により所定の低圧直流電圧に変換されるが、上記端子T4には、この低圧直流電圧も入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、上記起動電圧により起動した後は、この低圧直流電圧を電源として入力して動作するようになっている。
また、端子T5は、抵抗R59を介して、一次側アースと接続されている。
【0028】
端子T2からは、スイッチング素子を駆動するためのドライブ信号が出力される。そして、この端子T2に対しては、トランジスタQ21,Q21及びツェナーダイオードZDから成る、いわゆるトーテムポール回路が接続されている。この場合のトーテムポール回路は、1つのドライブ信号によって2つのスイッチング素子Q11,Q12を駆動するのに必要な電力を得るためにドライブ信号を増幅することと、周知のようにして、MOS−FETとしてのスイッチング素子Q11,Q12を安定して高速スイッチングすることを目的として設けられている。
このトーテムポール回路から出力されたドライブ信号は、分岐して、それぞれ抵抗R51,R53を介してスイッチング素子Q11,Q12のゲートに対して出力される。
スイッチング素子Q11では、上記のようにして印加されるドライブ信号に応じて、ゲート−ソース間抵抗R52の両端にゲート電圧が発生するようになっている。そして、ゲート電圧が閾値以上となることでオンとなり、閾値以下となるとオフとなるようにしてスイッチング動作を行う。
スイッチング素子Q12も同様にして、ドライブ信号によってゲート−ドレイン抵抗R54の両端電圧であるゲート電圧が閾値以上/以下で変化するのに応じて、上記スイッチング素子Q11と同じオン/オフタイミングでスイッチング動作を行う。
【0029】
そして、上記したスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング駆動は、図11及び図13により説明したようにして、整流出力電流の導通角が、整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるように、PWM制御に基づくドライブ信号によって行われる。整流出力電流の導通角が整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるということは、即ち、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となることであり、結果的に、力率がほぼ1となるように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。実際においては、力率PF=0.99〜0.98となる特性が得られている。
【0030】
また、この図14に示すアクティブフィルタコントロール回路20によっては、整流平滑電圧Ei(図13では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲で定電圧化するようにも動作する。つまり、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。
上記交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲は、商用交流電源AC100V系と200V系を連続的にカバーするものであり、従って、後段のスイッチングコンバータには、商用交流電源AC100V系と200V系とで、同じレベルで安定化された直流入力電圧(Ei)が供給されることとなる。つまり、図14に示す電源回路は、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応の電源回路としても構成されている。
【0031】
アクティブフィルタの後段の電流共振形コンバータは、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
【0032】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
スイッチング素子Q1,Q2は、ドライブ回路21によって、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動される。また、ドライブ回路21は、後述する二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じてスイッチング周波数を可変制御し、これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化を図るようにされる。
【0033】
絶縁コンバータトランスPITは、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の端部は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は、直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって直列共振回路を形成する。この直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0034】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には二次巻線N2が巻装される。
この場合の二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCOから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCOの両端電圧として二次側直流出力電圧EOが得られる。この二次側直流出力電圧EOは、図示しない負荷側に供給されるとともに、ドライブ回路21のための検出電圧としても分岐して入力される。前述もしたように、ドライブ回路21は、入力される二次側直流出力電圧EOのレベルに基づいて、二次側直流出力電圧EOが安定化されるようにスイッチング周波数を可変するようにしてスイッチング素子Q1,Q2を駆動する。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化を行う。
【0035】
図15は、先に図13に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成としての、他の例を示している。
この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=85V〜288Vに対応する。つまり、この図に示す電源回路も、この図14に示した回路と同様に、商用交流電源についてAC100V系とAC200V系の両者の交流入力電圧に対応する、いわゆるワイドレンジ対応とされている。ただし、対応可能な負荷電力としては600W以上とされている。また、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
このような、より重負荷の条件に対応するものとされる図15に示す電源回路は、例えばプラズマディスプレイパネルを備えたテレビジョン受像機、モニタ装置などに搭載される。
なお、図14と同一部分には同一符号を付すこととして、ここでは、主として、図14の電源回路との相違点について説明する。
【0036】
この場合の商用交流電源ACラインにも、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
【0037】
また、図15の電源回路では、商用交流電源ACを整流する整流回路として、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2が設けられる。これらブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極入力端子と負極入力端子は、商用交流電源ACの正/負のラインに対して共通に接続される。また、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子どうしと、負極出力端子どうしが接続されるようになっている。このようにして、商用交流電源ACに対しては、2段のブリッジ整流回路が備えられていることになる。
【0038】
また、この場合のノーマルモードノイズフィルタ4は、上記ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子と負極出力端子間に、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CN,CNを図示するようにして接続して形成されている。つまり、図14の電源回路におけるノーマルモードノイズフィルタ4が2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを備えるのに対して、この図15におけるノーマルモードノイズフィルタ4では、フィルタコンデンサCNが1組追加されており、ノイズ抑制効果を強化するようにしている。後述するようにして、図15に示す回路では、より重負荷の条件に対応するために、アクティブフィルタのスイッチング素子数を増加させている。これによって、スイッチングノイズの発生量は増加することになるが、上記のようにしてノーマルモードノイズフィルタ4としてのノイズ抑制効果を強化することで、スイッチングノイズの増加を解消しているものである。
【0039】
また、この場合には、ブリッジ整流回路Di1,Di2の正極出力端子は、上記チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCC−1のインダクタLpc1と、パワーチョークコイルPCC−2のインダクタLpc2の直列接続を介して、並列接続された2本の高速リカバリ型の整流ダイオード[D10//D10]のアノードの接続点と接続される。整流ダイオード[D10//D10]のカソードの接続点は、平滑コンデンサCiA,CiBの各正極端子に接続される。
平滑コンデンサCiA,CiBは、図示するようにして、2本で1組となるようにして並列に接続されている。平滑コンデンサCiA,CiBの正極端子は、上記もしているように、整流ダイオード[D10//D10]−インダクタLpc2−インダクタLpc1−チョークコイルLNの直列接続を介して、ブリッジ整流回路Di1,Di2の各正極出力端子に対して接続される。また、平滑コンデンサCiA,CiBの負極端子は、ブリッジ整流回路Di1,Di2の各負極出力端子(一次側アース)に対して接続される。
【0040】
上記平滑コンデンサ[CiA//CiB]の組は、図11,図13における出力コンデンサCoutに相当する。従って、この場合においては、この並列接続された平滑コンデンサ[CiA//CiB]の組の両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られることになる。この整流平滑電圧Eiが、後段の各コンバータ部201、202、203に対して直流入力電圧として供給される。
また、パワーチョークコイルPCC−1、PCC−2のインダクタLpc1,Lpc2の直列接続は、図11に示したインダクタLに相当する。ダイオード[D10//D10]は、図15に示したとダイオードDに相当する。
また、この図におけるダイオードD10//D10の並列回路に対しては、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
【0041】
スイッチング素子Q11,Q12,Q13から成るスイッチング素子の組は、図11におけるスイッチング素子Qに相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合には、3つのスイッチング素子Q11,Q12,Q13を1組としており、これらのスイッチング素子Q11,Q12,Q13を、それぞれ、パワーチョークコイルLpc2と高速リカバリ型の整流ダイオード[D10//D10]の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に並列に挿入するようにしている。
【0042】
このようにして、3つのスイッチング素子を備えるのは、信頼性確保のためである。
つまり、負荷電力Po=600W以上程度の重負荷の条件である場合、例えば交流入力電圧VACが100V以下となる条件では、スイッチング素子に流れる総合的なドレイン電流(スイッチング電流)がより高くなる。そこで、この場合には、3つのスイッチング素子を並列に接続することで、各スイッチング素子に流れるドレイン電流のピークレベルを抑えているものである。
この場合のスイッチング素子Q11,Q12,Q13には、MOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q11,Q12,Q13の各ゲート−ソース間には、それぞれ、ゲート−ソース間抵抗R52,R54,R64が接続されている。
【0043】
さらには、先に説明した整流回路系の接続態様を、図14の電源回路と比較してみると、図15に示した回路では、先ず、パワーチョークコイルを1組追加して2組(PCC−1,PCC−2)としていることが分かる。
また、高速リカバリ型の整流ダイオードD10についても、1本追加して2本備えることとして、これら2本の整流ダイオードD10を並列接続している。
さらに、整流平滑電圧Eiを供給する平滑コンデンサとしても、1本追加して2本(CiA,CiB)備えることとし、これらの平滑コンデンサを並列に設けるようにしている。
このような部品の追加も、負荷電力の条件が300W以上から600W以上にまで重くなったことに応じて、例えば回路に流れる電流が増加することに対応して行われるものである。
【0044】
この図15に示すアクティブフィルタコントロール回路20も、力率をほぼ1に近づけるようにアクティブフィルタの動作を制御する。この場合には、例えば図14と同様のICにより構成されている。
なお、このアクティブフィルタコントロール回路20の各端子(T1〜T6)と接続される周辺回路の構成は図14と同様とされているので、ここでの説明は省略する。
【0045】
そして、図15に示す回路において、アクティブフィルタコントロール回路20によりスイッチング素子Q11,Q12,Q13をスイッチング駆動することによっては、図14の場合と同様に、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となるように制御され、結果的に、力率が1に近づくようにして力率改善が図られる。実際においては、負荷電力Po=600W時において、力率PF=0.995程度となる特性が得られる。
【0046】
また、この図15に示すアクティブフィルタとしても、整流平滑電圧Ei(図13では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜288Vの範囲で定電圧化するように動作する。従って、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。つまり、図15に示す電源回路も、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジ対応を可能としている。
【0047】
そして、この図に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件(負荷電力600W以上)に対応するために、平滑コンデンサ[CiA//CiB]を直流入力電圧として動作電源とする複数の電流共振形コンバータが並列に設けられている。この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの電流共振形コンバータが設けられており、それぞれ、所定レベルに安定化された二次側直流出力電圧EO1、EO2、EO3を出力可能とされている。
【0048】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
【0049】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ゲート−ソース間には、それぞれゲート−ソース間抵抗RG1,RG2が挿入されている。
【0050】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。
【0051】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0052】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2の端子Vsに対して、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が接続される。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるようにレベルシフトされる。
【0053】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0054】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0055】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0056】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線N2が巻装される。この場合の二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧EO1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧E01のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0057】
なお、第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、ゲート−ソース間抵抗RG3,RG4、コントロールIC2,絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1,二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1、整流ダイオードDO3,D04、平滑コンデンサCO2を備え、上記第1コンバータ部201と同様の接続態様による構成を採る。
【0058】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、ゲート−ソース間抵抗RG5,RG6、コントロールIC2,絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1,二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1を備え、第1コンバータ部201と同様の接続態様による一次側構成を採る。
但し、第3コンバータ部203の絶縁コンバータトランスPIT−3の二次側においては、図示するようにして、二次巻線N2に対して整流ダイオードDO5,D06,D07,D08及び平滑コンデンサCO3,CO4を接続していることで、整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路と、整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路との2組の両波整流回路が形成されることになる。
整流ダイオードDO5,D06及び平滑コンデンサCO3から成る両波整流回路によっては二次側直流出力電圧EO3が生成される。整流ダイオードDO7,D08及び平滑コンデンサCO4から成る両波整流回路によっては、二次側直流出力電圧EO3よりも低圧レベルの二次側直流出力電圧E04が生成される。
【0059】
ここで、第1コンバータ部201の二次側直流出力電圧EO1が対応する負荷電力は300W、第2コンバータ部202の二次側直流出力電圧EO2が対応する負荷電力は200W、第3コンバータ部203の二次側直流出力電圧EO3,E04により対応する負荷電力は100Wとなっており、これにより、総合的に負荷電力Po=600W以上に対応可能に構成されているものである。
【0060】
【特許文献1】
特開平6−327246(図11)
【0061】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの説明から分かるように、先行技術として図14及び図15に示した電源回路は、従来から知られている図11及び図13に示したアクティブフィルタを実装して構成されている。このような構成を採ることによって、力率改善が図っている。また、図14及び図15に示す電源回路は、それぞれ負荷電力300W以上、負荷電力600W以上の条件の下で、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作する、いわゆるワイドレンジ対応としている。
【0062】
しかしながら、上記図14及び図15に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、図14に示す電源回路についてみると、電力変換効率としては、図に示しているように、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
そして、AC100V系時に対応する交流入力電圧VAC=100Vの条件では、ηAC→DC=94%、ηDC→DC=96%であり、総合効率は90.2%となる。これに対して、AC200V系時に対応する交流入力電圧VAC=240Vの条件では、ηAC→DC=97%、ηDC→DC=96%となり、総合効率は93.1%となる。つまり、交流入力電圧VAC=240V時に対して、交流入力電圧VAC=100V時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0063】
上記した電力変換効率の低下という問題は、同じくアクティブフィルタを備える、図15に示す電源回路においても同様である。
図15に示す電源回路についても、電力変換効率としては、前段のアクティブフィルタに対応するAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータ(第1、第2、第3コンバータ部201,202,203)のDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とを総合したものとなる。
そして、第1、第2、第3コンバータ部201,202,203におけるDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)は、96%程度である。
また、負荷電力Po=600Wの条件のもとで、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は、交流入力電圧VAC=100V時では、94%、交流入力電圧VAC=230W時では97%となる。
従って、総合電力変換効率としては、交流入力電圧VAC=100V時では、
94%×96%=90.2%
となる。また、交流入力電圧VAC=230V時では、
97%×96%=93.1%
となる。
また、交流入力電力は、交流入力電圧VAC=100V時では665.2W、交流入力電力230V時では、644.5Wとなる。
つまり、図15に示す電源回路においても、交流入力電圧VAC=230V(AC100V系)時に対して、交流入力電圧VAC=100V(AC200V系)時においては、アクティブフィルタ回路側における電力変換効率が低下して、総合効率が低下してしまう。
【0064】
また、図14及び図15に示す回路では、上記した電力変換効率の特性を下回ることが無いように、アクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)ついては、例えば交流入力電圧VAC=100V〜230V(又は240V)の範囲で、94%〜97%で維持されるように設計する必要がある。
そして、図14に示すアクティブフィルタであれば、スイッチング素子Q11,Q12及び高速リカバリ型の整流ダイオードD10がスイッチング動作を行うことになる。また、図15に示すアクティブフィルタでは、スイッチング素子Q11,Q12,Q13及び高速リカバリ型の整流ダイオードD10//D10の並列回路がスイッチング動作を行うことになる。
これらのスイッチング動作は、dv/di,di/dtによるもので、ハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きいため、比較的重度のノイズ抑制対策が必要となる。
【0065】
この必要性から、先ず、図14に示す電源回路のアクティブフィルタを例に挙げれば、スイッチングのための半導体素子については、2組のスイッチング素子Q11,Q12を並列接続して、スイッチング素子に流れるドレイン電流(スイッチング出力電流)のピークレベルを抑制して信頼性を確保する必要が生じる。
しかしながら、これに対して、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20は、ドライブ信号の出力端子として、端子T2の1つしか備えていない。このために、アクティブフィルタコントロール回路20からのドライブ信号出力を分岐して各スイッチング素子Q11,Q12に印加する必要があるが、そのままでは電力が不足して高い信頼性でもってスイッチング素子を駆動することが難しい。そこで、図14にも示したように、トランジスタQ21,Q22を備えたトーテムポール回路が必要となるが、これによっても、部品点数が増加していることになる。
【0066】
さらに、図14に示す回路では、商用交流電源ACのラインに対して、2組のラインフィルタートランスLFTと、3組のアクロスコンデンサによるラインノイズフィルタを形成している。つまり、2段以上のラインノイズフィルタが必要となっている。
また、整流出力ラインに対しては、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサCN,CNから成るノーマルモードノイズフィルタ4を設けている。さらに、整流用の高速リカバリ型のダイオードD10の並列回路に対しては、RCスナバ回路を設けている。
このようにして、実際の回路としては、非常に多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、コストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
【0067】
そして、図15に示す電源回路のアクティブフィルタでは、図14の電源回路よりも重負荷の条件に対応するために回路に流れる電流量がさらに増加する。このために、スイッチングのための半導体素子は3組(スイッチング素子Q11,Q12,Q13)に増加する。さらには、高速リカバリ型の整流ダイオードD10についても2本に増加する必要が生じてくる。
また、ノーマルモードノイズフィルタ4を形成する素子としては、1組のチョークコイルLNと、3組のフィルタコンデンサCNとなり、ここでもフィルタコンデンサCNとしてのフィルムコンデンサが1つ増加する。
さらには、図15の回路のように重負荷に対応する場合、RCスナバ回路を形成する抵抗Rsnは、セメント抵抗などを採用することになって大型となる。
このように、図15に示す回路では、重負荷の条件に対応するために、さらにコストアップ及び電源回路基板の実装面積の大型化が助長されることになる。
【0068】
さらに、図14及び図15に示す電源回路の構成では、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20によって動作するスイッチング素子Q11,Q12,及びQ13のスイッチング周波数は50KHzであるのに対して、後段の電流共振形コンバータのスイッチング周波数は70KHz〜150KHzの範囲となっている。これにより、1次側アース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0069】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成する。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源のレベルに応じて、商用交流電源レベルの等倍に対応するレベルの整流平滑電圧を生成する等倍電圧整流動作と、商用交流電源レベルの所定倍に対応するレベルの整流平滑電圧を生成する倍電圧整流動作とで切り換えが行われる整流平滑手段を備える。
また、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段を備える。
また、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される第1の一次巻線と、この第1の一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される第1の二次巻線とを巻装して形成される第1の絶縁コンバータトランスを備える。
また、少なくとも、第1の一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、第1の一次巻線に直列接続された第1の一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、スイッチング手段の動作を電流共振形とする第1の一次側直列共振回路を備える。
また、ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、少なくとも第1の一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、各スイッチング素子がターンオン又はターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。
また、第1の二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の第1の二次側直流出力電圧を生成するように構成された第1の直流出力電圧生成手段と、第1の二次側直流出力電圧のレベルに応じてスイッチング駆動手段を制御して、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、第1の二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された第1の定電圧制御手段を備える。
また、第1の絶縁コンバータトランスの一次側に巻装した第1の三次巻線に励起される交番電圧を利用して整流電流成分を断続して、整流平滑手段における整流電流経路に対して供給するように構成される第1の力率改善回路を備えることとした。
【0070】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路は、一次側スイッチングコンバータとして、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分共振電圧回路を組み合わせた構成を採っていることになる。また、力率改善は、絶縁コンバータトランスに巻装した三次巻線に伝達されたスイッチング出力を整流電流経路に対して電圧帰還して整流電流を断続し、これにより交流入力電流の導通角を拡大して力率改善を図る構成が採られる。
そして、ワイドレンジ対応とするのにあたっては、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑手段について、商用交流電源レベルに応じて等倍電圧整流動作と倍電圧整流動作とで整流動作の切り換えが行われるように構成する。
これにより、例えば力率改善回路を備える電源回路としてワイドレンジ対応の構成とするのにあたっては、スイッチングコンバータへの直流入力電圧の安定化を図るアクティブフィルタを備える必要は無いこととなる。
【0071】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示している。この図に示す電源回路は、先行技術として図14に示した回路と同様に、負荷電力Po=300W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
【0072】
この図1に示す電源回路においては、先ず商用交流電源ACのラインに対して、各1組のアクロスコンデンサCL及びラインフィルタトランスLFTとから成る、ラインノイズフィルタが接続される。つまり、この場合には、1段のラインノイズフィルタのみが設けられる。
そして、商用交流電源ACのラインにおいては、上記ラインノイズフィルタの後段に対して、1組のフィルタコンデンサCNが並列に接続される。このフィルタコンデンサCNは、次に説明するブリッジ整流回路Diの整流出力ラインに発生するノーマルモードノイズを抑制するためのものとされる。
【0073】
この場合、商用交流電源から整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路系は、ブリッジ整流回路Diと、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を備えて成る。平滑コンデンサCi1,Ci2は同じキャパシタンスを有する。
ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と負極入力端子は、それぞれ、上記フィルタコンデンサCNの両端と商用交流電源ACの正/負の各ラインとの接続点に対して接続される。また、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
平滑コンデンサCi1,Ci2は、図示するようにして、平滑コンデンサCi1の正極端子と、平滑コンデンサCi2の負極端子とが接続されるようにして直列に接続される。そして、平滑コンデンサCi1側の正極端子は、上記もしたように、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と接続される。平滑コンデンサCi2側の負極端子は一次側アースに接続される。整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)は、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧として得られる。
【0074】
また、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子と、平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点との間には、リレースイッチS1を挿入している。このリレースイッチS1は、整流回路切換モジュール5に接続されたリレーRLの駆動状態に応じて、オン/オフされる。
【0075】
整流回路切換モジュール5は、リレーRLを駆動することで、上記のようにして形成される整流回路系の動作をAC100V系とAC200V系とで切り換えるために設けられる。このために、検出端子T11には、整流平滑電圧Eiが入力されるようになっている。検出端子T11から入力される整流平滑電圧Eiのレベルは、商用交流電源ACのレベルに応じた変化を示す。つまり、整流回路切換モジュール5は、整流平滑電圧Eiのレベルを検出することで、商用交流電源ACのレベルを検出するようになっている。
また、リレー駆動端子T12,T13間に対してはリレーRLが接続される。なお、リレーRLは、自身の導通状態に応じて、リレースイッチS1をオン/オフ制御する。なお、ここでは、リレーRLが導通状態ではリレースイッチS1がオン、リレーRLが非導通状態ではリレースイッチS1がオフとなるようにされている。
また、整流回路切換モジュール5の電源入力端子T14には5Vの低圧直流電圧が入力されている。整流回路切換モジュール5は、この電源入力端子T14に入力された直流電圧を入力電源として動作するようになっている。端子T15は、整流回路切換モジュール5のアースラインを一次側アースに接地させるための端子である。
【0076】
上記した構成による整流回路の切り換え動作は次のようになる。
整流回路切換モジュール5では、検出端子T11に入力される整流平滑電圧Eiのレベルと所定の基準電圧とを比較する。検出端子T11に入力される電圧レベルは、交流入力電圧VAC=150V以上であるときには上記基準電圧以上となり、交流入力電圧VACが150V以下であるときには上記基準電圧以下となる。つまり、基準電圧は、交流入力電圧VAC=150Vに対応したレベルとなっている。
そして、整流回路切換モジュール5では、分圧レベルが基準電圧以下であるときには、リレーRLをオンとし、基準電圧以上であるときには、リレーRLをオフとするように駆動する。
【0077】
ここで、例えばAC200V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以上に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが基準電圧以上となるので、整流回路切換モジュール5は、リレーRLをオフとする。これに応じて、リレースイッチS1もオフ(オープン)となる。
リレースイッチS1がオフの状態では、交流入力電圧VACが正/負となる各期間において、交流入力電圧VACをブリッジ整流回路Diにより整流して平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路に整流電流を充電する動作が得られる。つまり、通常のブリッジ整流回路を備えた全波整流回路による整流動作が得られる。これにより、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiが得られる。
【0078】
これに対して、AC100V系であるのに対応して、交流入力電圧VAC=150V以下に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが発生したとする。
この場合には、検出端子T11に入力される電圧レベルが上記基準電圧以下となって、整流回路切換モジュール5はリレーRLをオンとするので、リレースイッチS1はオン(クローズ)となるように制御される。
リレースイッチS1がオンの状態では、交流入力電圧VACが正の期間では、ブリッジ整流回路Diによる整流出力が、平滑コンデンサCi1のみに充電される整流電流経路が形成される。一方、交流入力電圧VACが負の期間では、ブリッジ整流回路Diによる整流出力が、平滑コンデンサCi2のみに充電される整流電流経路が形成される。
このようにして整流動作が行われる結果、平滑コンデンサCi1,Ci2の各両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルが生じることになる。従って、平滑コンデンサCi1−Ci2の直列接続回路の両端電圧である整流平滑電圧Eiとしては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルが得られる。つまり、いわゆる倍電圧整流回路が形成されるものである。
【0079】
このようにして、図1に示す回路では、商用交流電源AC100V系の場合には、倍電圧整流動作により、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成し、商用交流電源AC200V系の場合には、例えば全波整流回路による等倍電圧整流動作によって、交流入力電圧VACの等倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。つまり、商用交流電源AC100V系の場合と、AC200V系の場合とで、結果的に同等レベルの整流平滑電圧Eiが得られるようにしており、これによって、ワイドレンジ対応としているものである。そして、この整流平滑電圧Eiは、後段のスイッチングコンバータに対して、直流入力電圧として入力される。
【0080】
上記直流入力電圧を入力して動作するスイッチングコンバータとしては、この場合、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
また、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間には、ゲート−ソース間抵抗R12が接続される。このゲート−ソース間抵抗R12の両端には、後述するようにしてスイッチング素子Q1のゲートに印加されるドライブ信号によってゲート電圧VGH1が発生する。同様に、スイッチング素子Q2に対しても、ゲート−ソース間抵抗R22が接続され、ゲートに印加されるドライブ信号によってはゲート電圧VGL1が発生する。
【0081】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0082】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0083】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ゲート抵抗R11を介してハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ゲート抵抗R21を介してローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0084】
また、この場合には、1組のブートストラップ回路が設けられる。このブートストラップ回路は、図示するようにして、コンデンサCBS,ダイオードDBS、及びコンデンサCbを備えている。コンデンサCBSの負極端子は、一次側アースに接続され、正極端子は、ダイオードDBSのアノードと、コントロールIC2の端子Vc2との接続点に接続される。
また、ダイオードDBSのカソードは、端子VBと接続されると共に、コンデンサCbを介して端子Vsに対して接続される。端子Vsは、ゲート−ソース間抵抗R12を介してスイッチング素子Q1のゲートに対して接続されている。このようにしてブートストラップ回路が設けられることで、ハイサイドのスイッチング素子Q1に対して印加されるドライブ信号は、スイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるように、レベルシフトが行われることになる。
【0085】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力する。
【0086】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号がゲート抵抗R11を介して印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図3(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図3(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0087】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が、ゲート抵抗R21を介して印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図3(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図3(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図3(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0088】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCp1,Cp2における充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0089】
(第1の)絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。また、本実施の形態では後述する力率改善回路3を形成する三次巻線N3も巻装される。
この絶縁トランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に接続される。また、他端は、一次側並列共振コンデンサC1の直列接続を介して一次側アースに接続される。
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1によっては、(第1の)一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0090】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた形式を採っていることになる。本明細書では、このようなスイッチングコンバータについて、複合共振形コンバータということにする。
【0091】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1(三次巻線N3)の組と、次に説明する二次巻線N2,N2Aを、EE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
そして、EE型コアの中央磁脚に対しては1.0mm〜1.5mmのギャップを形成するようにしている。これによって、0.7〜0.8程度の結合係数による疎結合の状態を得るようにしている。
【0092】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2が巻装されている。この二次巻線N2には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCOから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCOの両端電圧として二次側直流出力電圧EOが得られる。この二次側直流出力電圧EOは、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0093】
制御回路1は、例えば二次側の直流出力電圧EOのレベルに応じて、そのレベルが可変される電流又は電圧を制御出力として得る。この制御出力は、コントロールIC2の制御端子Vcに対して出力される。
コントロールIC2では、制御端子Vcに入力された制御出力レベルに応じて、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号とについて、互いに交互にオン/オフさせるタイミングを保たせたうえで、各ドライブ信号の周波数を同期させた状態で可変するように動作する。
これにより、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数は、制御端子Vcに入力された制御出力レベル(つまり二次側直流出力電圧レベル)に応じて、可変制御されることになる。
スイッチング周波数が可変されることによっては、一次側直列共振回路における共振インピーダンスが変化することになる。このようにして共振インピーダンスが変化することによっては、一次側の直列共振回路の一次巻線N1に供給される電流量が変化して二次側に伝送される電力も変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧E0のレベルが変化することとなって定電圧制御が図られることになる。
【0094】
そして、図1に示す電源回路においては、これまで説明した構成に対して、力率改善のための(第1の)力率改善回路3が備えられる。
この図に示す力率改善回路3は、先に説明したようにして、商用交流電源ACのライン側において、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と負極入力端子間に並列に挿入されるフィルタコンデンサCNを含むものとされる。そして、このフィルタコンデンサCNの一端とブリッジ整流回路Diの正極入力端子の接続点に対し、図示するように、インダクタL20−三次巻線N3−高速リカバリ型ダイオードD1を直列接続する。この場合、高速リカバリ型ダイオードD1のアノード側が三次巻線N3と接続されるようになっている。そして、高速リカバリ型ダイオードD1のカソードを、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子に対して接続するようにしている。
【0095】
また、高速リカバリ型ダイオードD1のアノードに対しては、もう1つの高速リカバリ型ダイオードD2のカソードを接続している。高速リカバリ型ダイオードD2のアノードは、一次側アースに接地させている。
【0096】
このような構成による力率改善回路3の動作を図4の波形図を参照して説明する。
例えば図4(a)示す周期により交流入力電圧VACが得られているとすると、商用交流電源ACの正極ラインに得られる整流電流I1は、図4(d)に示すようにして、交流入力電圧VACが正/負の期間において、それぞれ正極性/負極性となるようにして流れる。
また、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子と、力率改善回路3内のインダクタの接続点の電位V1は、図4(c)に示す波形が得られる。
また、三次巻線N3には、一次巻線N1に得られる交番電圧に基づいて、図4(e)に示す波形の電圧V2が得られるが、この電圧V2は、正/負のピークとなる期間においてスイッチング周期に応じた交番電圧が生じている。この波形は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力が電圧帰還されることで得られる。
そして、電圧V2について正/負のピークとなって交番波形が得られる期間は、電位V1よりも、その絶対値レベルが高くなる期間であり、この期間において、力率改善回路3内においては、図4(f)に示すスイッチング周期による交番電流I2が流れる。
【0097】
交流入力電圧VACが正の期間では、正極性の整流電流I1は、ブリッジ整流回路Diの正極入力端子から、このブリッジ整流回路Diを形成するダイオードDaに流入する成分と、交番電流I2としてインダクタL20側に流入する成分とに分岐される。
そして、このときの交番電流I2は、インダクタL20→三次巻線N3→高速リカバリ型ダイオードD1の経路で平滑コンデンサCi1の正極端子に流入する。そして、交流入力電圧VACがAC100V系であるのに対応して倍電圧整流回路が形成されている場合には、平滑コンデンサCi1を流れた交番電流I2は、リレースイッチS1を介して商用交流電源ACの負極ラインからフィルタコンデンサCNに流入する。また、AC200V系に対応して全波整流回路が形成されている場合には、平滑コンデンサCi1を流れた交番電流I2は、ブリッジ整流回路DiのダイオードDdを介して商用交流電源ACの負極ラインからフィルタコンデンサCNに流入する。
【0098】
また、交流入力電圧VACが負の期間では、負極性の整流電流I1は、倍電圧整流回路が形成されている場合には、平滑コンデンサCi2を介した後において、ブリッジ整流回路DiのダイオードDcに流れる成分と、平滑コンデンサCi2を介して高速リカバリ型ダイオードD2に流入して負極性の交番電流I2となる成分とに分岐する。
また、全波整流回路が形成されている場合には、ブリッジ整流回路DiのダイオードDb→平滑コンデンサCi1→Ci2を介した後において、ブリッジ整流回路DiのダイオードDcに流れる成分と、高速リカバリ型ダイオードD2に流入して負極性の交番電流I2となる成分とに分岐する。
【0099】
そして、上記のように高速リカバリ型ダイオードD2に流入した負極性の交番電流I2は、先ず、高速リカバリ型ダイオードD2→三次巻線N3→インダクタL20の経路で流れ、商用交流電源ACの正極ライン側からフィルタコンデンサCNに流入する。
【0100】
このようにして、交番電流I2は、正極性のときには高速リカバリ型ダイオードD1によりスイッチング(断続)され、負極性のときには高速リカバリ型ダイオードD2によりスイッチング(断続)されることで交番波形とされて、整流電流経路に流れるようにされる。
そして、図4(f)と図4(d)とを比較して分かるように、高速リカバリ型ダイオードD1,D2によりスイッチングされて得られる交番電流I2は、整流電流I1よりも導通角が拡大されているとともに、帰還されたスイッチング出力により増幅されて振幅も大きくなっていることが分かる。
【0101】
このようにして、高速リカバリ型ダイオードD1,D2によって、整流電流がスイッチングされるようにして断続されることで、整流出力電圧レベルが整流平滑電圧Eiのレベルよりも低いとされる期間にも平滑コンデンサCi1,Ci2への充電電流が流れるようにされる。
この結果、交流入力電流の平均的な波形が交流入力電圧の波形に近付くようにされることで、図4(b)に示すようにして、AC100V系時(VAC=100V)とAC200V系時(VAC=230V)とで共に、交流入力電流IACの導通角が拡大される。このようにして、交流入力電流IACの導通角が拡大される結果、力率改善が図られることになる。
【0102】
図5には、図1に示した構成による電源回路の特性として、負荷電力Po=0〜300Wの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC/DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。
また、図6には、図1に示した構成による電源回路の特性として、AC100V系では交流入力電圧VAC=80V〜150V、AC200系では交流入力電圧VAC=160V〜300Vの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC/DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。
なお、これらの図においては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧整流回路とした場合の特性を実線により示し、全波整流回路とした場合の特性を破線により示している。
また、図5の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路とした場合は、交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件、全波整流動作とした場合は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。また、図6に示す実験結果は、負荷電力Po=300Wで一定の条件で得ている。
【0103】
また、参考として、上記図5及び図6に示した実験結果を得るにあたっての、図1に示した回路の各部の定数を示しておく。
絶縁コンバータトランスPIT:EER−40のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=35T
二次巻線N2:センタータップを分割位置として23T+23T(ターン)
三次巻線N3=7T
一次側直列共振コンデンサC1=0.033μF
一次側部分共振コンデンサCp=680pF
インダクタL20=39μH
フィルタコンデンサCN=1μF
【0104】
これら図5及び図6によっては、負荷電力Po=300Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、力率PF=0.82、電力変換効率ηAC→DC=93.9%となる特性が得られている。また、負荷電力Po=300Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件における特性は、力率PF=0.77、電力変換効率ηAC→DC=96.0%となっている。
この結果から、負荷電力Po=300W時における力率としては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。また、図14に示した先行技術としての電源回路と比較すると、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電力変換効率が大幅に向上していることがわかる。
【0105】
ここで、本実施の形態である図1の電源回路と、先行技術としての図14の電源回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図1に示した回路では、電圧帰還方式による力率改善回路3を備える構成としていることでアクティブフィルタが省略される。アクティブフィルタは、1組のコンバータを構成するものであり、図14による説明からも分かるように、実際には、2本のスイッチング素子と、これらを駆動するためのIC、及びトーテムポール回路等を始め、多くの部品点数により構成される。
これに対して、図1に示す電源回路に備えられる力率改善回路3は、絶縁コンバータトランスPITに巻装する三次巻線N3と、インダクタL20、フィルタコンデンサCN、高速リカバリ型ダイオードD1,D2の2本を備えているのみであるから、アクティブ回路と比較すれば非常に少ない部品点数となっている。
これにより、図1に示す電源回路としては、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応の電源回路として、図14に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
【0106】
また、図1に示す電源回路では、共振形コンバータ及び力率改善回路3の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作であるから、図14に示したアクティブフィルタと比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
このため、図1にも示したように、各1組のラインフィルタトランスLFTとアクロスコンデンサCLから成る1段のラインノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、図1にも示しているように、1つのフィルタコンデンサCNのみにより対策を行っている。
このようにしてノイズフィルタとしての部品点数が削減されることによっても、電源回路のコストダウンと、回路基板の小型軽量化は促進される。
【0107】
また、図14に示す電源回路の総合電力変換効率は、前段のアクティブフィルタにおけるAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)と、後段の電流共振形コンバータのDC−DC電力変換効率(ηDC→DC)とにより決定されるものであった。これに対して、図1に示す電源回路は、アクティブフィルタを前段に備えていないから、総合電力変換効率は、この電流共振形コンバータのAC-DC電力変換効率として見ればよいことになる。
これにより、図1に示す電源回路の総合電力変換効率としては、図14に示す電源回路よりも大幅に向上されることになる。
先に図5及び図6の特性図によっても示したように、図1に示す回路は、負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、総合電力変換効率(AC-DC電力変換効率)は、93.9%であり、図14に示した回路と比較して、交流入力電力は13.1W低減するという結果が得られた。負荷電力Po=300W、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、総合電力変換効率(AC-DC電力変換効率)は、96.0%であり、交流入力電力は9.7W低減している。
【0108】
また、図1に示す電源回路の場合、一次側のスイッチングコンバータのスイッチング周波数は、交流入力電圧VAC及び負荷電力の変化などに応じて、定電圧化のために例えば70KHz〜150KHzの範囲で変化するのであるが、このスイッチングコンバータを形成する各スイッチング素子Q1,Q2は、同期してスイッチング動作する。従って、一次側アース電位としては、図14の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定することとなる。
【0109】
続いては、第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成について、図2を参照して説明する。なお、この図において、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0110】
この図2に示す電源回路においては、リレーRLにより切り換えが制御されるリレースイッチとして、整流回路切り換えのためのリレースイッチS1に加えて、三次巻線N3の巻数を切り換えるためのリレースイッチS2が備えられる。
【0111】
このリレースイッチS2は、端子t1に対して端子t2又は端子t3が択一的に接続されるようにして切り換えが行われる、いわゆる2接点となっている。
この場合には、リレーRLが、リレースイッチS1、S2を連動的に制御することになり、また、リレースイッチS2については2接点とする必要がある。このために、電磁リレーの部品としては、2回路2接点の仕様のものを用いることとしている。図1の場合と異なり、リレースイッチS1が2接点となっているのはこのような部品選定の都合による。この図に示すリレースイッチS1では、端子t1に対してブリッジ整流回路Diの負極入力端子が接続され、端子T3に対して、平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点が接続される。端子t2はオープンとしている。
【0112】
この場合、力率改善回路3を形成するために絶縁コンバータトランスPITに巻装される三次巻線N3としては、タップ出力が設けられることで、巻線部N3Aと巻線部N3Bとに分割される。そして、このタップ出力が上記リレースイッチS2の端子t3に接続される。また、巻線部N3B側の端部がリレースイッチS2の端子t2に接続される。
【0113】
そして、この場合におけるリレーRLによる切り換え動作は次のようになる。
この場合のリレーRLは、交流入力電圧VAC=150V以下(AC100V系)である場合と、交流入力電圧VAC=150V以上(AC200V系)である場合とに応じて、整流回路切換モジュール5によって導通/非導通の状態の切換が行われる。
【0114】
そして、交流入力電圧VAC=150V以下(AC100V系)の場合には、リレーRLによって、リレースイッチS1,S2は、共に、端子t1に対して端子t3が接続される状態となるように切り換えが行われる。
先ず、リレースイッチS1側において端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子と平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点が接続される状態となる。これにより、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、倍電圧整流回路が形成される。
また、リレースイッチS2側において端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、力率改善回路3を形成する三次巻線N3としては、巻線部N3Aのみが有効とされることになる。
【0115】
これに対して、交流入力電圧VAC=150V以上(AC200V系)の場合には、リレーRLによって、リレースイッチS1,S2は、共に、端子t1に対して端子t2が接続される状態となるように切り換えが行われる。
リレースイッチS1側において端子t1と端子t2が接続されることによっては、ブリッジ整流回路Diの負極入力端子と平滑コンデンサCi1−Ci2の接続点は接続されない状態となる。これにより、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、通常の全波整流回路が形成される。
また、リレースイッチS2側において端子t1に対して端子t3が接続されることによっては、力率改善回路3を形成する三次巻線N3としては、巻線部N3Aと巻線部N3Bとを直列接続した巻線が有効とされることになる。
【0116】
つまり、この図2に示す回路においては、先ず、整流回路系については、AC100V系では倍電圧整流回路が形成され、AC200V系では、全波整流回路が形成されることになる。この点では、図1に示した回路と同様の動作が得られていることになる。
そして、力率改善回路3においては、AC100V系時よりもAC200V系時のほうが、力率改善回路3を形成する三次巻線N3についての巻数が増加するようにして切り換えが行われるものである。
【0117】
三次巻線N3としての巻線数が変化すれば、この三次巻線N3と一次巻線N1との巻線比が変化することになって、三次巻線N3に励起されて整流電流経路に帰還されるべき交番電圧レベルも変化することになる。
そして、上記のようにして、AC200V系時に三次巻線N3の巻線数が増加することによっては、三次巻線N3に励起される交番電圧レベルも上昇して、整流電流経路に帰還される交番電圧レベルも増加することになる。これによっては、力率改善回路3において帰還されるエネルギーが増加するために、より高い力率を得ることが可能となる。
先の第1の実施の形態の電源回路では、図5及び図6に示したように、AC100V系時と比較した場合には、AC200V系時の力率が低下していたものであるが、この第2の実施の形態では、この特性を改善しているものである。
【0118】
図7及び図8は、第2の実施の形態の電源回路の特性を示している。
図7は、負荷電力Po=0〜300Wの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示す。また、図8は、負荷電力Po=300Wの条件の下で、AC100V系としては交流入力電圧VAC=80V〜150V、AC200系としては交流入力電圧VAC=160V〜300Vの変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、力率PF、及び整流平滑電圧Eiの変化を示している。また、これらの図においても、フルブリッジ動作とした場合の特性を実線により示し、ハーフブリッジ動作とした場合の特性を破線により示している。
また、この場合にも、図7の実験結果を得るのにあたっては、倍電圧整流回路としたときの特性は交流入力電圧VAC=100Vで一定の条件とし、また、全波整流回路としたときの特性は、交流入力電圧VAC=230Vで一定の条件としている。また、図8に示す実験結果は、負荷電力Po=300Wで一定とした条件で得ている。
また、ここでは、三次巻線N3の巻数(ターン数T)として、[巻線部N3A=6T,巻線部N3B=1T]とした組み合わせの場合と、[巻線部N3A=7T,巻線部N3B=2T]とした組み合わせの場合との、両者の構成に対応した特性を示している。
[巻線部N3A=6T,巻線部N3B=1T]とした組み合わせの場合、AC100V系時では、三次巻線N3=N3A=6Tとなり、AC200V系時においては、三次巻線N3=N3A(6T)+N3B(1T)=7Tとなる。
また、[巻線部N3A=7T,巻線部N3B=2T]とした組み合わせの場合、AC100V系時では、三次巻線N3=N3A=7Tとなり、AC200V系時においては、三次巻線N3=N3A(7T)+N3B(2T)=9Tとなる。
【0119】
これら図7及び図8と、先の第1の実施の形態の電源回路の特性図を示した図5及び図6と比較して分かるように、第2の実施の形態の電源回路では、AC200V系に対応して全波整流回路が形成されている場合において、特に重負荷の条件となるのに従って、力率が向上されていることがわかる。そして、負荷電力Po=300Wの条件では、AC200V系時の力率は、AC100V系時とほぼ同等となるまでに引き上げられていることが分かる。
この第2の実施の形態における力率特性と高調波歪規制との関係としては、例えば交流入力電圧VAC=100Vでは、三次巻線N3=6Tとすれば、負荷電力Po=25W〜300Wの範囲で、力率PF=0.75〜0.88が得られ、我が国(日本国)の高調波歪規制値をクリアする。また、交流入力電圧VAC=230Vでは、三次巻線N=9Tとなるようにすれば、負荷電力Po=150W〜300Wの範囲で、力率PF=0.75〜0.80であり、欧州の高調波歪み規制値をクリアする。
【0120】
図9は、第3の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。
この図に示す電源回路は、先行技術として図15に示した回路と同様に、負荷電力Po=600W以上に対応可能で、かつ、商用交流電源AC100V系とAC200V系とで動作するワイドレンジ対応としての構成を採る。
なお、この図において、図1及び図2と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0121】
この図9に示す電源回路は、負荷電力Po=600W以上の条件に対応するために、先ず、2組のブリッジ整流回路Di1,Di2が備えられる。
ブリッジ整流回路Di1の正極入力端子と負極入力端子は、それぞれ、商用交流電源ACの正/負の各ラインに対して接続される。また、ブリッジ整流回路Di1の正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
【0122】
ブリッジ整流回路Di2も同様にして、正極入力端子と負極入力端子の各々が商用交流電源ACの正/負の各ラインに対して接続される。また、正極出力端子は、平滑コンデンサCi1側の正極端子に接続され、負極出力端子は、一次側アースに接続される。
つまり、図9に示す回路では、商用交流電源ACを整流するためのブリッジ整流回路を2段備え、商用交流電源ACのラインに対して並列に接続しているものである。
【0123】
また、この場合には、2組のフィルタコンデンサCN,CNを並列接続して、図示するように商用交流電源ACの正/負のライン間に対して接続している。
【0124】
また、この図9の電源回路においては、2つの絶縁コンバータトランスPIT−1,PIT−2が備えられる。これらのうち、絶縁コンバータトランスPIT−1が、例えば図1又は図2に示した電源回路における絶縁コンバータトランスPIT(第1の絶縁コンバータトランス)に相当するものであり、絶縁コンバータトランスPIT−2は、図1又は図2に示した回路構成に対してあらたに追加されたものとして扱うことができる(第2の絶縁コンバータトランス)。
【0125】
そして、この場合においては、2つの絶縁コンバータトランスPIT−1,PIT−2の二次側からそれぞれ2つの二次側直流出力電圧を生成することとしており、計4つの二次側直流出力電圧を負荷に供給するようにして、負荷電力Po=600W以上をまかなうことになる。そして、絶縁コンバータトランスPIT−1と、絶縁コンバータトランスPIT−2とで、それぞれ負荷電力Po=300Wをまかなうようにされる。
【0126】
先ず、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側においては、例えば200Vの二次側直流出力電圧Eo1と、24Vの二次側直流出力電圧Eo2とを生成するための整流回路系が備えられる。
このために、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には、図示するように、二次巻線N2,N2Aの2つの二次巻線が独立して巻装される。そして、二次巻線N2に対しては、アースに接続したセンタータップを設けると共に、図示する接続態様によって整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCo1を接続して両波整流回路を形成する。この両波整流回路によって、平滑コンデンサCo1の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo1が生成される。
また、二次巻線N2Aに対しても同様にして、アースに接続したセンタータップを設けると共に、整流ダイオードDo3,Do4、及び平滑コンデンサCo2から成る両波整流回路を接続し、二次側直流出力電圧Eo2を生成するようにされる。
【0127】
この場合には、制御回路1は、上記二次側直流出力電圧Eo1と二次側直流出力電圧Eo2のうち、メインとなる二次側直流出力電圧Eo1を検出電圧として入力し、制御出力をコントロールIC2の制御端子Vcに入力している。従って、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数制御によっては、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側にて生成される二次側直流出力電圧(Eo1,Eo2)を定電圧化することになる。
なお、この図に示すコントロールIC2は、図1及び図2に示したものと同様であり、周辺の外付け部品の接続態様等も同じでよいものとされるが、ここでは、例えばブートストラップ回路に関する部品や端子などの図示については省略している。
【0128】
続いては、絶縁コンバータトランスPIT−2側の構成について説明する。
先ず、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側には、一次巻線N1Aが巻装されている。この一次巻線N1Aは、その端部が、スイッチング素子Q1のドレインと、スイッチング素子Q2のソースの接続点(スイッチング出力点)と接続され、他端は、直列共振コンデンサC1Aの直列接続を介して一次側アースと接続される。ここで、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1Aのリーケージインダクタンスと、直列共振コンデンサC1Aのキャパシタンスとによっても、一次側スイッチングコンバータを電流共振形とするための直列共振回路が形成される。
つまり、図9に示す回路では、電流共振形コンバータを形成する直列共振回路として、一次巻線N1−直列共振コンデンサC1から成る(第1の)直列共振回路と、一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1Aから成る(第2の)直列共振回路との2つの直列共振回路が備えられ、これら2つの直列共振回路が並列に接続されていることになる。
【0129】
また、直列共振コンデンサC1Aに対しては、補助直列共振コンデンサC1Bと、補助スイッチング素子Q20とクランプダイオードDD20を並列接続して形成したスイッチング回路との直列接続回路が、並列に接続される。
この場合の補助スイッチング素子Q20は、MOS−FETとされ、ドレインが補助直列共振コンデンサC1Bを介して、一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1Aの接続点と接続される。ソースは、一次側アースに接続される。
また、具体的な定数例は後述するが、補助コンデンサC1Bと直列共振コンデンサC1Aは、互いのキャパシタンスについてC1B>>C1Aとなるように選定されている。
【0130】
スイッチング回路(Q20//DD20)を駆動するための駆動回路系は、駆動巻線Ng、コンデンサCg、ゲート抵抗Rg、及びゲート−ソース間抵抗Rsgを図示するようにして接続して形成される。
駆動巻線Ngは、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側に巻装されることで、例えば一次巻線(N1,N1A)によって交番電圧が誘起される。なお、駆動巻線Ngのターン数は、例えば1Tとされる。
そして、この駆動巻線Ngに得られた交番電圧は、コンデンサCgからゲート抵抗Rgを介するようにして、スイッチング素子Q20のゲートに印加される。これにより、ゲート−ソース間抵抗Rgsにはゲート電圧が発生する。そして、このゲート電圧が所定の閾値以上となるレベルとなったときにスイッチング素子Q20がオンとなり、閾値以下となったときにオフとなるように制御されることになる。このようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)は、スイッチング動作を行うことになる。ここで、駆動巻線Ngに発生する交番電圧は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力に基づいて励起されたものであるから、スイッチング回路(Q20//DD20)のスイッチング動作も、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数に同期したものとなる。
【0131】
このスイッチング回路(Q20//DD20)は、絶縁コンバータトランスPIT−2側の二次側直流出力電圧(Eo3,Eo4)を定電圧化するために設けられるものであるが、この点については後述する。
【0132】
また、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側には、さらに、三次巻線N3が巻装される。この絶縁コンバータトランスPIT−2に巻装される三次巻線N3は、図示するようにして、(第2の)力率改善回路3−1を形成する。なお、この力率改善回路3−1については、回路を形成する部品素子及びその接続態様、また、力率改善のための動作は、力率改善回路3と同様であることから、ここでの説明は省略する。
このようにして、本実施の形態では、2つの絶縁コンバータトランスPIT−1,絶縁コンバータトランスPIT−2が備えられることに応じて、三次巻線N3を備えて整流電流経路にスイッチング出力を電圧帰還する構成の力率改善回路も2系統備えられることになる。
【0133】
続いて、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側の構成について説明する。
絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側においては、例えば100Vの二次側直流出力電圧Eo3と、50Vの二次側直流出力電圧Eo4とを生成するための整流回路系が備えられる。
これに応じて、絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には、図示するように、二次巻線N2B,N2Cの2つの二次巻線が独立して巻装される。
二次巻線N2Bに対しては、アースに接続したセンタータップを設けると共に、整流ダイオードDo5,Do6、及び平滑コンデンサCo3から成る両波整流回路を接続する。この両波整流回路によって二次側直流出力電圧Eo4が生成される。
また、二次巻線N2Cに対しても同様にして、アースに接続したセンタータップを設けると共に、整流ダイオードDo7,Do8、及び平滑コンデンサCo4から成る両波整流回路を接続し、二次側直流出力電圧Eo4を得る。
【0134】
上記のようにして生成される二次側直流出力電圧Eo3,Eo4は、それぞれ負荷に供給されるが、二次側直流出力電圧Eo3は、分岐して制御回路1Aに対して検出電圧として入力される。
制御回路1Aでは、入力された二次側直流出力電圧Eo3のレベルを検出して、制御出力として、所要の基準となるレベル(100V)との誤差に応じたレベルの電圧を出力する。この制御出力としての電圧は、スイッチング回路(Q20//DD20)のスイッチング素子Q20のゲートに印加される。このような制御出力がスイッチング素子Q20のゲートに印加されることによっては、二次側直流出力電圧Eo3のレベルに応じて、ゲート電圧が可変制御されることになる。このような動作によって、絶縁コンバータトランスPIT−2側で得られる二次側直流出力電圧に対する定電圧制御が行われる。
【0135】
図10は、スイッチング回路(Q20//DD20)による定電圧制御動作を説明するための波形図である。
図10(a)は、一次側スイッチングコンバータを形成するスイッチング素子のうち、ローサイドに接続されるスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2を示す。
図10(b)は、スイッチング出力点(スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2の接続点)から、直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)に流入するスイッチング出力電流I1Aを示している。
図10(c)は、スイッチング素子Q20の両端電圧VQ3を示し、図10(d)はスイッチング回路(Q20//DD20)に流れるスイッチング電流IQ3を示す。
【0136】
図10(a)に示すスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2は、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数に対応した周期により、スイッチング素子Q2がオフとなる期間では正極性の矩形波パルスが得られ、スイッチング素子Q2がオンとなる期間では0レベルとなる波形が得られている。なお、ハイサイドのスイッチング素子Q1の両端電圧は、図10(a)に示す波形と180°の位相差を有するものとなる。
そして、上記図10(a)に示される周期タイミングでスイッチング素子がスイッチング動作を行うのに応じて、直列共振回路(N1A−C1A)には、図10(b)に示すスイッチング出力電流I1Aが流れる。このスイッチング出力電流I1Aは、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数に応じて、正極性と負極性とで反転する正弦波状の波形となる。スイッチング出力電流I1Aが正弦波状となるのは、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を入力して、直列共振回路(N1A−C1A)が共振動作を行うことに依る。
【0137】
前述もしたように、スイッチング回路(Q20//DD20)を形成する補助スイッチング素子Q20は、駆動巻線Ng、コンデンサCg、ゲート抵抗Rg、及びゲート−ソース間抵抗Rsgから成る駆動回路系によって、スイッチング周期でオン/オフするように動作する。そして、このスイッチング動作は、図10(c)(d)に示される。
つまり、例えば図10(d)に示すスイッチング電流IQ3は、スイッチング出力であるスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2が立ち上がる直前の短期間ではクランプダイオードDD20から補助コンデンサC1Bを介して負極正により、ダンパー電流として流れる。この後、両端電圧VQ2が立ち上がるタイミングで以て、補助スイッチング素子Q20がオンとなる。そして、この補助スイッチング素子Q20がオンとなる期間TONにおいては、スイッチング電流IQ3は、補助コンデンサC1Bから補助スイッチング素子Q20のドレイン−ソースの方向により正極性で流れる。
このようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)がオンとなる期間は、クランプダイオードDD20にダンパー電流が流れる期間と、これに続いて補助スイッチング素子Q20がオンとなる期間とから成る。
【0138】
また、スイッチング素子Q20の両端電圧VQ3は、図10(c)に示すようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)がオンとなる期間では0レベルとなる。
また、スイッチング回路(Q20//DD20)がオフとなって電流が流れない期間においては、正極性による正弦波状の波形が得られる。
直列共振コンデンサC1Aと補助コンデンサC1Bとについて、キャパシタンスの関係がC1B>>C1Aとされていることで、スイッチング回路(Q20//DD20)がオンとなる期間では、スイッチング出力電流IA1は、補助コンデンサC1Bにほとんど流れる。これに対して、スイッチング回路(Q20//DD20)がオフとなる期間では、スイッチング出力電流IA1は、補助コンデンサC1Bに流れなくなる代わりに、直列共振コンデンサC1Aに充放電されることになる。このため、スイッチング回路(Q20//DD20)がオフとなる期間においては、スイッチング素子Q20の両端電圧VQ3の波形が正弦波状となるものである。
【0139】
このようにして、スイッチング回路(Q20//DD20)は、スイッチング周期に応じてオン/オフの期間が生じる。
そして、スイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間においては、直列共振コンデンサC1Aと補助コンデンサC1Bが並列接続される回路が形成されることになる。このようにして、直列共振コンデンサC1Aと補助コンデンサC1Bが並列接続される場合には、キャパシタンスが増加することになる。これは即ち、直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)の共振回路の共振条件が可変されことを意味する。共振条件が変化すれば、このときにおける直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)の共振出力も変化する。つまり、絶縁コンバータトランスPIT−2において、一次巻線N1Aから二次巻線(N2A,N2B)側に伝送される電力も変化することになる。
【0140】
そして、絶縁コンバータトランスPIT−2側に備えられる制御回路1Aは、前述もしたように、二次側直流出力電圧Eo3のレベルに応じて、補助スイッチング素子Q20のゲート電圧を可変制御する。そしてゲート電圧が可変されることによっては、補助スイッチング素子Q20がオンとなる期間TON(図10)が可変されることになる。期間TONが可変されることは、即ち、この期間TONを含んで形成される、スイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間が可変制御されることを意味する。また、このスイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間の可変制御は、1スイッチング周期ごとに行われるから、スイッチング周波数の条件の下でのPWM制御となる。
このようにしてスイッチング回路(Q20//DD20)のオン期間が可変制御されることによっては、上記したように、直列共振回路(一次巻線N1A−直列共振コンデンサC1A)におけるキャパシタンスが増加する期間が変化することとなって、これにより、1スイッチング周期内において、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次側から二次側に伝送される電力も可変されることとなる。二次側に伝送される電力が変化すれば、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側で生成される出力電圧のレベルも変化することとなる。この結果、絶縁コンバータトランスPIT−2の二次側直流出力電圧を定電圧化する動作が得られることとなる。
【0141】
ここで、上記図9に示した構成による電源回路についての実験結果として、電力変換効率ηAC→DC、及び力率改善回路(3,3−1)の動作により得られる力率の特性を述べておく。
なお、参考として、実験結果を得るにあたっての、図9に示した回路の各部の定数を示しておく。
絶縁コンバータトランスPIT−1,PIT−2:EER−42のフェライトコア、ギャップ長Gap=1mm
一次巻線N1=34T
二次巻線N2=センタータップを分割位置として25T+25T(ターン)
三次巻線N3=8T
一次側直列共振コンデンサC1=0.033μF
インダクタL20,L20,=39μH
一次側直列共振コンデンサC1A=0.033μF
補助コンデンサC1B=0.15μF
【0142】
実験結果として、先ず、力率については、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、力率PF=0.85となる結果が得られた。また、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件における特性は、力率PF=0.80という結果が得られた。
なお、力率に関しては、2つの力率改善回路(3,3−1)により力率改善を行った結果得られた値であることから、電圧帰還方式としては、比較的高い値の特性となっている。
また、交流入力電圧VAC=100V時での負荷電力Po=600W〜100Wの変動範囲に対しては、力率PF>0.75を維持しており、この特性であれば、国内の電源高調波歪規制を満足する。また、交流入力電圧VAC=230V時での負荷電力Po=600W〜300Wの変動範囲における力率の値であれば、欧州の電源高調波歪規制を満足する。
このように、力率特性としては、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電源高調波歪規制を満足する値が得られていることが分かる。
【0143】
また、電力変換効率ηAC→DCについては、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、電力変換効率ηAC→DC=93.5%、交流入力電力は641.7Wとなる結果が得られた。また、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、電力変換効率ηAC→DC=95.7%、交流入力電力は647.7Wという結果が得られた。
例えば、同じ負荷電力Po=600W以上に対応する構成を採る図15に示した先行技術の回路では、負荷電力Po=600Wで、交流入力電圧VAC=100Vの条件では、電力変換効率ηAC→DC=90.2%、交流入力電力665.2Wとされていた。従って、図9に示す回路では、電力変換効率ηAC→DCについては3.3%向上し、交流入力電力は23.5W低減していることになる。
また、負荷電力Po=300Wで、交流入力電圧VAC=230Vの条件では、図15の回路は電力変換効率ηAC→DC=93.1%、交流入力電力665.2Wであるから、電力変換効率ηAC→DCは2.6%向上し、交流入力電力は17.5W低減していることになる。
このようにして、同じ負荷電力Po=600W以上の条件に対応し、力率改善を図る電源回路として、図9に示した実施の形態と図15に示した先行技術としての電源回路とを比較すると、AC100V系時とAC200V系時とで共に、電力変換効率が大幅に向上していることがわかる。
【0144】
また、この図9に示した電源回路についても、同等の負荷条件に対応する図15の回路と比較すれば、力率改善のための回路構成としては、アクティブフィルタから、より少ない部品点数の力率改善回路3,3−1となる。また、ノイズ抑制のための各種部品も削減される。これにより、部品点数の削減による低コスト化及び電源回路の小型軽量化が図られることになる。
【0145】
特に、図15の回路構成と比較した場合において、図15の回路では、スイッチングコンバータとして、3組のスイッチングコンバータを備える必要があり、このために、絶縁コンバータトランスとしても3組必要とされていた。これに対して、図9に示す回路では、1組のスイッチングコンバータと、このスイッチングコンバータから分岐した2組の絶縁コンバータトランスの組み合わせにより、同等の4つの二次側直流出力電圧を供給可能な構成としている。つまり、同等の負荷条件に対応する場合において、図15に基づく回路構成と比較すれば、より少ないコンバータ数、及び絶縁コンバータトランス数により構成することができ、この点でも、部品点数の削減による低コスト化及び電源回路の小型軽量化が促進されることになる。
【0146】
そして、この図9に示す回路としても、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することは無いから、一次側アース電位は安定する。
【0147】
なお、図9に示す第3の実施の形態としての電源回路に対しても、図2に示した第2の実施の形態としての構成を付加することができる。つまり、三次巻線N3について、AC100V系時とAC200V系時とで巻線数が変更されるようにして切り換えを行い、これによって、AC200V系時における力率の値を高めることが可能となる。
図9に示す回路の場合、この三次巻線N3の巻線数切り換えの構成を適用するのにあたっては、力率改善回路3,3−1の各力率改善回路に備えるようにすることが考えられる。また、例えばメインとなる絶縁コンバータトランスPIT−1側の力率改善回路3においてのみ、三次巻線N3の巻線数切り換えの構成を備えるようにしても、AC200V系時における力率の改善効果は充分に得ることが可能である。
【0148】
また、本発明としては、これまでに説明した電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0149】
また、力率改善回路3(3−1)の構成としても、上記各実施の形態として示したもの以外に限定されるものではなく、これまでに本出願人が提案してきた各種の電圧帰還方式による回路構成として、倍電圧整流回路に適用可能なものを採用することも可能である。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明は、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、アクティブフィルタを備えない構成を採る。これにより、例えばアクティブフィルタによって力率改善を図る場合よりも電力変換効率が向上されるという効果を有している。
【0151】
また、本発明の電源回路としては、アクティブフィルタを構成するための多数の部品素子が不要となる。また、電源回路を構成する電流共振形コンバータ、及び力率改善回路はソフトスイッチング動作であり、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタを強化する必要もなくなる。
このために、先行技術と比較しては、部品点数が大幅に削減されることになって、電源回路サイズの小型/軽量化を図るすることが可能となる。また、それだけコストダウンが図られることにもなる。
【0152】
さらには、アクティブフィルタが省略されたことで、一次側アース電位の干渉が無くなるので、一次側アース電位も安定することとなって、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図3】実施の形態の電源回路におけるスイッチング素子のゲート−ソース間電圧を示す波形図である。
【図4】本実施の形態の要部の動作を、商用交流電源周期により示す波形図である。
【図5】第1の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の電源回路についての、交流入力電圧の変化に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の電源回路についての、交流入力電圧の変化に対する力率、電力変換効率、整流平滑電圧レベルの特性を示す図である。
【図9】第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図10】第3の実施の形態の電源回路における、スイッチング回路による定電圧制御動作を示す波形図である。
【図11】アクティブフィルタの基本的回路構成を示す回路図である。
【図12】図11に示すアクティブフィルタにおける動作を示す波形図である。
【図13】アクティブフィルタのコントロール回路系の構成を示す回路図である。
【図14】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【図15】先行技術として、アクティブフィルタを実装した電源回路の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
1,1A 制御回路、2 コントロールIC、3−1 力率改善回路、5 整流回路切換モジュール、Di ブリッジ整流回路、Ci1,Ci2 平滑コンデンサ、Q1,Q2 スイッチング素子、PIT,PIT−1,PIT−2 絶縁コンバータトランス、C1,C1A 一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1,N1A 一次巻線、N2,N2A,N2B,N2C 二次巻線、RL リレー、S1,S2 リレースイッチ、L20 インダクタ、D1,D2 高速リカバリ型ダイオード、CN フィルタコンデンサ、N3 三次巻線、N3A,N3B 巻線部、LFT ラインフィルタトランス、CL アクロスコンデンサ、Q3 補助スイッチング素子、C1B 補助コンデンサ
Claims (3)
- 商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源のレベルに応じて、商用交流電源レベルの等倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する等倍電圧整流動作と、商用交流電源レベルの所定倍に対応するレベルの上記整流平滑電圧を生成する倍電圧整流動作とで切り換えが行われる整流平滑手段と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、
上記各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される第1の一次巻線と、該第1の一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される第1の二次巻線とを巻装して形成される第1の絶縁コンバータトランスと、
少なくとも、上記第1の一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記第1の一次巻線に直列接続された第1の一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする第1の一次側直列共振回路と、
上記ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、少なくとも上記第1の一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記各スイッチング素子がターンオン又はターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路と、
上記第1の二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の第1の二次側直流出力電圧を生成するように構成された第1の直流出力電圧生成手段と、
上記第1の二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記第1の二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された第1の定電圧制御手段と、
上記第1の絶縁コンバータトランスの一次側に巻装した第1の三次巻線に励起される交番電圧を利用して整流電流成分を断続して、上記整流平滑手段における整流電流経路に対して供給するように構成される第1の力率改善回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源回路。 - 少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される第2の一次巻線と、該第2の一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される第2の二次巻線とを巻装して形成される第2の絶縁コンバータトランスと、
少なくとも、上記第2の一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記第2の一次巻線に直列接続された第2の一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする第2の一次側直列共振回路と、
上記第2の二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の第2の二次側直流出力電圧を生成するように構成された第2の直流出力電圧生成手段と、
上記第2の二次側直流出力電圧のレベルに応じて、第2の一次側直列共振回路の共振周波数を可変することにより、第2の二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された第2の定電圧制御手段と、
上記第2の絶縁コンバータトランスの一次側に巻装した第2の三次巻線に励起される交番電圧を利用して整流電流成分を断続して、上記整流平滑手段における整流電流経路に対して供給するように構成される第2の力率改善回路とを、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記商用交流電源のレベルに応じて、上記三次巻線としての巻数を切り換える巻数切り換え手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
Priority Applications (1)
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JP2002343899A JP2004166462A (ja) | 2002-09-27 | 2002-11-27 | スイッチング電源回路 |
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JP (1) | JP2004166462A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN102545635A (zh) * | 2012-02-09 | 2012-07-04 | 杭州电子科技大学 | 一种高功率因数的无桥反激变换器 |
-
2002
- 2002-11-27 JP JP2002343899A patent/JP2004166462A/ja active Pending
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