JP2004266955A - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】重負荷に対応する電源回路の電力変換効率の向上。
【解決手段】重負荷の条件に対応するために、整流平滑電圧(直流入力電圧)を入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。また、各スイッチングコンバータ部としては、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分電圧共振回路を組み合わせた構成を採る。そして、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、倍電圧全波整流回路を備える。倍電圧整流回路では、入力電圧(商用交流電源)が正/負の両期間において整流電流経路が分岐され、この分岐された整流電流が流れる整流ダイオードがあるようにされる。これにより、整流ダイオードを流れる整流電流のピークレベルは、倍電圧半波整流回路の場合よりも低減される。
【選択図】 図1
【解決手段】重負荷の条件に対応するために、整流平滑電圧(直流入力電圧)を入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。また、各スイッチングコンバータ部としては、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分電圧共振回路を組み合わせた構成を採る。そして、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、倍電圧全波整流回路を備える。倍電圧整流回路では、入力電圧(商用交流電源)が正/負の両期間において整流電流経路が分岐され、この分岐された整流電流が流れる整流ダイオードがあるようにされる。これにより、整流ダイオードを流れる整流電流のピークレベルは、倍電圧半波整流回路の場合よりも低減される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることが分かっている。
そこで、スイッチング電源回路として各種の共振形コンバータが提案され、また、実用化されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
そして、このような共振形コンバータを備える電源回路として、スイッチング周波数制御によって二次側直流出力電圧の安定化を図るように構成した電流共振形コンバータが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、近年においては、テレビジョン受像機、モニタ装置としてプラズマディスプレイなどが普及してきている。このようなプラズマディスプレイに備えられる電源回路としては、例えば負荷電力600W程度の、これまでのテレビジョン受像機やモニタ装置の電源回路よりも重負荷の条件に対応することが要求される。
【0004】
図6は、プラズマディスプレイに搭載され、約600Wの負荷電力に対応可能な電源回路として、電流共振形コンバータを備えた電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路における電流共振形コンバータは他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。また、この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=100V〜144Vに対応する。つまり、例えば北米などのAC100V系の商用交流電源に対応する。
【0005】
この場合の商用交流電源ACラインには、図示する接続態様により、2組のコモンモードチョークコイルCMC,CMCと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
【0006】
そして、商用交流電源ACラインにおいて、上記したラインノイズフィルタの後段に対しては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧半波整流回路が設けられる。この倍電圧半波整流回路は、4本の低速リカバリ型の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成るブリッジ整流回路Diと、4本の平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bを備えて形成される。
【0007】
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードは、商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDcのカソードと整流ダイオードDdのカソードは、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1A,Ci1Bの正極端子に接続される。
整流ダイオードDaのアノードと整流ダイオードDbのアノードは一次側アースに接続される。
【0008】
また、整流ダイオードDdのアノードと整流ダイオードDbのカソードの接続点は、整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードの接続点と接続される。これにより、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流は、整流ダイオードDc//Ddに並列に流れる。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流は、整流ダイオードDa//Dbに並列に流れる。
【0009】
平滑コンデンサCi1A,Ci2Aは、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。同様にして、平滑コンデンサCi1B,Ci2Bも、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。また、平滑コンデンサCi1A−Ci2Aの接続点と、平滑コンデンサCi1B−Ci2Bの接続点が互いに接続される。この接続態様では、平滑コンデンサCi1A,CiBはアッパーサイド側で並列接続されていることになる。また、平滑コンデンサCi2A,Ci2Bもローアーサイド側で並列接続の関係にある。
【0010】
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作について、図7を参照して説明する。
図7では、説明を簡単にするために、倍電圧半波整流回路の基本的な構成を示しており、図6において実際に形成されている倍電圧半波整流回路との関係としては次のようになっている。
アッパーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi1A//Ci1Bは、平滑コンデンサCi1に相当する。同様にして、ローアーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi2A//Ci2Bは、平滑コンデンサCi2に相当する。
また、整流ダイオードDi1は、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流が並列に流れる整流ダイオードDc//Ddの組に相当する。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流が並列して流れる整流ダイオードDa//Dbは整流ダイオードDi2に相当する。
【0011】
先ず、交流入力電圧VACが正極性となる期間においては、整流ダイオードDi1(Dc//Dd)が導通して整流電流i1が流れ、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
また、交流入力電圧VACが負極性となる期間においては、整流ダイオードDi2(Da//Db)が導通して整流電流i2が流れ、ローアーサイドの平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
この結果、直列接続された平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)−Ci2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流電圧が得られることになる。また、アッパーサイドの平滑コンデンサに整流電流が流れる期間は、交流入力電圧VACが正となる半波の期間であり、ローアーサイドの平滑コンデンサが流れる期間は交流入力電圧VACが負となる半波の期間である。つまり、各平滑コンデンサに対応した半波整流動作により倍電圧を得る、倍電圧半波整流動作が行われている。
【0012】
ここで、図6に示す回路において、整流電流が2本の整流ダイオードに並列に流れるように構成し、また、平滑コンデンサについて、アッパーサイドとローアーサイドとで共に2本を並列に設けているのは、約600Wという重負荷の条件に対応する必要があることによる。
つまり、重負荷の条件になるほど、整流回路系に流れる整流電流は増加する。そこで、整流電流が流れる整流ダイオード及び平滑コンデンサについて、並列接続すれば平滑コンデンサに流れる整流電流は分岐することになる。つまり、1本の整流ダイオード及び平滑コンデンサに流れる電流レベルが抑制されることとなって、これらの部品にかかる負担が軽減される。
なお、平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bについては、例えば1000μF/200Vを選定し、瞬時停電であっても商用交流電源の1周期の動作が保証されるようにしている。また、整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddについては、25A品を選定するようにしている。また、これらの整流ダイオードDa〜Ddについては、低速リカバリ型が選定される。
【0013】
そして、図6に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件に対応するために、上記整流平滑電圧Eiとしての直流入力電圧を動作電源とする電流共振形コンバータについて、複数を備えることとしている。
また、この図に示す電流共振形コンバータは、後述するようにして部分共振回路が組み合わされることで、いわゆる複合共振形コンバータとしての構成をとる。 この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの複合共振形コンバータが設けられている。
なお、ここでの複合共振形コンバータとは、スイッチングコンバータの動作を共振形とするために備えられる共振回路に加えて、さらに一次側又は二次側に対して共振回路を付加し、これら複数の共振回路を1スイッチングコンバータ内において複合的に動作させる構成のスイッチングコンバータをいう。
【0014】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータとしての構成を採る。
【0015】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
【0016】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、抵抗Rsを介して入力される整流平滑電圧Eiが電源入力端子Vccに入力されるようになっている。また、アース端子Eは一次側アースに直接接続される。
【0017】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0018】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0019】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0020】
また、コントロールIC2の起動端子Vtには、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータ(ここでは図示せず)から出力される立ち上げ信号Vt1が入力される。
コントロールIC2は、この立ち上げ信号が入力されたタイミングで起動して動作を開始するようになっている。つまり、ドライブ信号出力端子VGH、及びドライブ信号出力端子VGLからのドライブ信号出力を開始する。従って、第1コンバータ部201の動作開始タイミングは、コントロールIC2の立ち上げ信号Vt1の入力タイミングによって決定されることになる。
【0021】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0022】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
このように、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して他の共振回路が組み合わされた、複合共振形コンバータとしての形式を採っている。
【0023】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線として、2組の二次巻線N2a,N2bが互いに独立するようにして巻装される。
この場合の二次巻線N2aに対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCo1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCo1の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo1が得られる。この二次側直流出力電圧Eo1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0024】
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧Eo1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧Eo1のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0025】
また、この場合においては、二次側直流出力電圧Eo1を分岐して、二次側出力電圧Eo,Eo2を生成するように回路が形成されている。
二次側出力電圧Eoを生成する回路系は、MOS−FETによるスイッチング素子Q7、整流ダイオードDcn1,高周波ノイズ除去用のチョークコイルL11,平滑コンデンサCo、及びPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する制御回路7を図示するようにして接続した、降圧形コンバータとして形成される。
スイッチング素子Q7は、制御回路7によってスイッチング駆動されることで、二次側出力電圧Eo1をスイッチングして交番出力を得る。この交番出力は、チョークコイルL11、整流ダイオードDcn及び平滑コンデンサCoから成る半波整流回路によって整流平滑化されることになって、平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次側直流出力電圧Eoを生成する。
ここで、制御回路7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、PWM制御を実行する。これにより、スイッチング素子Q7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、スイッチング周波数は一定とされた上で、1スイッチング周期内のオン期間が可変されるようにしてスイッチング動作が制御される。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベルが一定となるように制御されることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0026】
二次側出力電圧Eo1を生成する回路系としても、MOS−FETによるスイッチング素子Q8、整流ダイオードDcn,チョークコイルL12,平滑コンデンサCo2、及び制御回路7を、上記した二次側出力電圧Eo1を生成する回路系と同様の態様により接続した、降圧形コンバータとして形成される。
従って、この場合にも、平滑コンデンサCo2の両端電圧としては、制御回路7のPWM制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo1が得られることになる。
【0027】
また、二次巻線N2bに対しては、ブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCo3から成る全波整流回路が形成されており、この全波整流回路の整流平滑動作によって、平滑コンデンサCo3の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo3を得るようにされている。
【0028】
第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1等を、上記第1コンバータ部201と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。
また、第2コンバータ部202の二次側は、二次巻線N2のセンタータップを二次側アースに接続したうえで、この二次巻線N2に対して、図示するようにして、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo4,Co5、ノイズ除去用の抵抗R1から成る両波整流回路が形成される。これにより、平滑コンデンサCo5の両端電圧として、二次側直流出力電圧Eo4が生成される。
また、第2コンバータ部202においては、制御回路7が、平滑コンデンサCo4の両端に得られる二次側整流平滑電圧のレベルに基づいて、一次側コンバータのスイッチング周波数制御を実行する結果、二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化が図られるようにされている。
また、第2コンバータ部202において、コントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3が入力される。
【0029】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1、二次巻線N2、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo6,Co7、抵抗R2を、第2コンバータ部202と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。そして、この第3コンバータ部203においても、制御回路7によるスイッチング周波数制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo5が得られる。
また、第3コンバータ部203のコントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt2が入力される。
【0030】
上記構成では、二次側から、6つの二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が得られることになるが、これら二次側直流出力電圧の用途、負荷仕様については、例えば下記のようになっている。
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
そして、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部201:75W
第2コンバータ部202:175W
第3コンバータ部203:350W
であり、総合で600Wとなる。
また、上記したような各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力に応じて、絶縁コンバータトランスについては、次のようにしてコアが選定される。
PIT−1:EER−35
PIT−2:EER−40
PIT−3:EER−42
また、降圧形コンバータにおけるチョークコイルL11,L12は、それぞれ、EE−25のフェライトコアである。
【0031】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が使用される場合においては、電源が起動して直流入力電圧(整流平滑電圧Ei(375V))が立ち上がったときに、各二次側直流出力電圧について、しかるべき順序で以て、順次立ち上がらせる必要がある。
具体的には、先ず、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにする。
【0032】
上記したような二次側直流出力電圧の立ち上げ順序とするために、マイクロコンピュータは、各コンバータ部(201,202,203)におけるコントロールIC2の起動端子Vtに対して、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力して制御を行っている。この立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3による二次側直流出力電圧の立ち上げ順序の制御動作を、図8のタイミングチャートに示す。
【0033】
ここで、図6に示す電源回路は、いわゆるメイン電源の構成であり、ここにはスタンバイ電源は示していない。マイクロコンピュータは、このスタンバイ電源が供給されているからメイン電源が起動されていない状態でも、動作することが可能である。
そして、メイン電源である図6に示す回路を起動させるために、メインスイッチSWがオフからオンに切り換えられたとすると、商用交流電源ACが回路に投入されて整流平滑電圧Eiが得られることになる。そして、この整流平滑電圧Eiが規定レベル(例えば375V)にまで上昇したことがマイクロコンピュータによって検出されると、マイクロコンピュータは、図8に示す時点t1のタイミングで、図8(a)に示すようにして、立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。これにより、立ち上げ信号Vt1が入力されている第1コンバータ部201のコントロールIC2は、時点t1からスイッチング駆動動作を開始する。そして、これに応じて、第1コンバータ部201の二次側にて得られる二次側直流出力電圧Eoは、図8(b)に示すようにして、時点t1における0レベルから上昇を開始して或る時間が経過した時点で、規定のレベル(5V)にまで上昇する。そして、以降は、降圧形コンバータによる定電圧制御動作によって、この12Vで安定化された状態を維持する。
なお、確認のために述べておくと、同じ第1コンバータ部201にて生成される残りの二次側直流出力電圧Eo1,Eo2,Eo3も、二次側直流出力電圧Eoとほぼ同じタイミングで立ち上がることになる。
【0034】
そして、立ち上げ信号Vt2は、上記のようにして、時点t1から二次側直流出力電圧Eo1が規定レベルに上昇して安定した後の時点t2において、図8(c)に示すように、Lレベルからレベルに切り換えて出力されるように設定されている。
これにより、第3コンバータ部203のコントロールICが時点t2において起動する。これに応じて、時点t2以降においては、図8(d)に示す二次側直流出力電圧Eo5が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(200V)で一定となるようにして立ち上がることになる。
【0035】
また、上記のように二次側直流出力電圧Eo5が規定レベルで安定した状態となった後の時点t3において、マイクロコンピュータは、図8(e)に示す立ち上げ信号Vt3をLレベルからHレベルに切り換える。これに応じて、第2コンバータ部202のコントロールICが時点t3において起動し、時点t3以降において、図8(f)に示す二次側直流出力電圧Eo4が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(70V)で一定となるようにして立ち上がる。
このようにして、図6に示す電源回路では、二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングをコントロールして、電源回路としての適切な起動動作を得るようにしている。
【0036】
【特許文献1】
特開平2−41084号公報
【0037】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの説明から分かるように、先行技術として図6に示した電源回路は、例えば負荷電力600W程度の重負荷の条件に対応するため、直流入力電圧(Ei)に対して3つの複合共振形コンバータを並列に接続している。
また、第1コンバータ部201としての複合共振形コンバータにおいては、二次側直流出力電圧Eo,Eo2を得るための、降圧形コンバータを設けている。つまり、スイッチング制御方式による定電圧制御のための回路系と、二次側に設けられる所要数の降圧形コンバータとを組み合わせることによって、各二次側直流出力電圧の安定化を図っている。
【0038】
しかしながら、上記図6に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路は倍電圧半波整流回路として形成されている。この倍電圧半波整流回路では、例えば負荷電力Po=600W、交流入力電圧VAC=120V時の条件では、交流入力電圧VACが正/負の各期間で流れる整流電流i1,i2のピークレベルは、共に29Ap程度となる。整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddとしては、前述もしたように25A品として並列接続させているのであるが、上記した程度に整流電流のi1,i2のピークレベルが大きいことから、各整流ダイオードにおける順方向電圧降下による電力損失は相当に大きいものとなる。このため、例えば実際の測定結果として、AC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は86.5%であり、交流入力電力は693.6Wとなっている。
【0039】
また、上記のようにして、倍電圧半波整流回路を形成している場合、アッパーサイド側とローアーサイド側の各平滑コンデンサの両端電圧に商用交流電源周期のリップル成分が重畳することになる。直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)は、アッパーサイド側とローアーサイド側の平滑コンデンサを直列接続した回路の両端電圧である。従って、直流入力電圧のリップル成分は、アッパーサイド側とローアーサイド側の平滑コンデンサのリップル成分が二重に重畳されたものとなって、結果的に、直流入力電圧に生じるリップル電圧が増加することになる。これに伴って、二次側直流出力電圧のリップルも増加してしまう。
【0040】
また、図6に示す回路の場合においては、必要数の二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を得るのに、第1、第2、及び第3コンバータ部201,202,203による、3段の複合共振形コンバータを備えているが、このようにして、電力変換の段数が多いことによっても、電力変換効率の低下を招いている。また、構成部品点数もそれだけ多くなって回路基板サイズが拡大し、コストアップにもつながる。
【0041】
さらに、図6に示す回路としては、3組の複合共振形コンバータに加えて、2組の降圧形コンバータを備えていることになるので、これらのスイッチングノイズも無視できない程度に大きなものとなる。特に、降圧形コンバータはハードスイッチング動作であるから、スイッチングノイズ発生量は多い。
【0042】
さらに、スイッチング周波数については、第1〜第3コンバータ部201〜203における複合共振形コンバータは、70KHz〜150KHzの範囲であるのに対して、第1コンバータ部201における降圧形コンバータは、例えば100KHzとなる。
このようにして、各スイッチングコンバータにおけるスイッチング周波数が異なる場合においては、1次側と二次側のアース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0043】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成する。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源の2倍に対応するとされるレベルの上記整流平滑電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路と、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。そして、複数のスイッチングコンバータ部の各々は、直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスを備える。また、少なくとも、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路を備える。また、各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。また、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段を備える。また、1以上の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧のレベルに応じてスイッチング駆動手段を制御して、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、所要の1つの二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された周波数制御型定電圧制御手段を備える。また、直流出力電圧生成手段により複数の二次側直流出力電圧が生成される場合において、周波数制御型定電圧制御手段により定電圧制御される以外の、定電圧化を必要とする所要の二次側直流出力電圧ごとに対応して設けられるもので、制御巻線と被制御巻線が巻装された可飽和リアクトルとしての制御トランスの被制御巻線を、二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路に挿入し、入力された二次側直流出力電圧レベルに応じて、制御巻線に流すべき制御電流レベルを可変して上記被制御巻線のインダクタンスを可変することで、この二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成されたインダクタンス制御型定電圧制御手段とを備えることとした。
【0044】
上記構成によれば、本発明のスイッチング電源回路は、重負荷の条件に対応するのにあたって、整流平滑電圧(直流入力電圧)を入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。また、各スイッチングコンバータ部としては、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分電圧共振回路を組み合わせた構成を採っていることになる。
そして、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、倍電圧全波整流回路を備えることとされている。倍電圧全波整流回路では、入力電圧(商用交流電源)が正/負の両期間において整流電流経路が分岐され、この分岐された整流電流が倍電圧全波整流回路を形成する整流ダイオードに流れる整流電流経路が形成される。
【0045】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、例として、商用交流電源がAC100V系で、負荷電力Po=600W以上の比較的重負荷の条件に対応可能な構成を採る。また、このような本実施の形態のスイッチング電源回路は、例えばプラズマディスプレイ装置の電源回路として用いることができる。
【0046】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、2組のコモンモードチョークコイルCMCと、3組のアクロスコンデンサCLから成る、コモンモードノイズを除去するためのラインノイズフィルタが備えられる。
【0047】
また、上記ラインノイズフィルタの後段に対しては、商用交流電源ACから整流平滑電圧Eiを生成するための整流回路が備えられる。
本実施の形態の場合の上記整流回路としては倍電圧全波整流回路とされる。この倍電圧全波整流回路は、ブリッジ整流回路Di、及び3本の平滑コンデンサCiA,CiB,CiCから成る。
【0048】
ブリッジ整流回路Diは、4本の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成る。これらの整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddには、例えば低速リカバリ型を選定するようにされる。
整流ダイオードDaのアノードと、整流ダイオードDdの接続点は商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDbのアノードと整流ダイオードDcのカソードは、商用交流電源ACの負極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDbのカソードは、平滑コンデンサCiA,Cicの正極端子に対して接続される。
整流ダイオードDd,Dcの各アノードは一次側アースに接続される。
【0049】
また、倍電圧全波整流回路の平滑回路系としては、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCを、並列に接続して形成している。
つまり、平滑コンデンサCiAの負極端子と平滑コンデンサCiBの正極端子を接続した上で、平滑コンデンサCiAの正極端子を、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続する。また、直列接続された平滑コンデンサCiA−CiBの接続点は、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)に対して接続される。
また、平滑コンデンサCiCの正極端子は、平滑コンデンサCiAの正極端子と同じく、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続される。
平滑コンデンサCiB,CiCの負極端子は、共に一次側アースに対して接続される。
【0050】
上記のようにして形成される倍電圧全波整流回路の動作について、図3を参照して説明する。図3には、図1から倍電圧全波整流回路を形成する回路部分を抜き出して示している。
先ず交流入力電圧VACが正極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDa,Dcが導通する。これにより、図3(a)に示すようにして、商用交流電源ACの正極ライン側から流れる整流電流i1は、先ず、整流ダイオードDaを流れる。そして、この後において、整流電流i1は、平滑コンデンサCiAに流れる整流電流i1aと平滑コンデンサCiCに流れる整流電流i1bとに分岐する。
平滑コンデンサCiAに流入した整流電流i1aは、そのまま商用交流電源ACの負極ラインに流入する。平滑コンデンサCiCに流入した整流電流i1bは、一次側アースを介して整流ダイオードDcを流れた後、商用交流電源ACの負極ラインに流れる。つまり、整流電流i1a,i1bは、商用交流電源ACの負極ライン側で合流し、整流電流i1(=i1a+i1b)として流れる。
このような整流電流の経路によって、平滑コンデンサCiAと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積される。
【0051】
また、交流入力電圧VACが負極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDb,Ddが導通する。これにより、図3(b)に示すようにして、商用交流電源ACの負極ライン側から流れる整流電流i2は、先ず、平滑コンデンサCiBに流れる整流電流i2aと、整流ダイオードDbに流れる整流電流i2bとに分岐する。
整流電流i2aは、平滑コンデンサCiBに流入した後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。また、整流電流i2bは、平滑コンデンサCiCを流れた後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。この場合も、整流電流i2a,i2bは、商用交流電源ACの正極ライン側で合流し、整流電流i2(=i2a+i2b)として流れることになる。
そして、上記した整流電流経路によっては、平滑コンデンサCiBと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積されることとなる。
【0052】
ここで、平滑コンデンサCiA,CiBの各々に対しては、交流入力電圧VACが正/負となる各半周期において、交流入力電圧VACに対応する電位による充電が行われる。このため、平滑コンデンサCiA,CiBのそれぞれの両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧(直流電圧)が得られる。従って、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
このため、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路に対して並列接続される平滑コンデンサCiCに対する充電により得られる両端電圧としても、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
【0053】
このような動作の結果、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCとの並列接続により形成される平滑回路部の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが得られることになる。また、平滑コンデンサCiCに対する整流平滑動作としては、交流入力電圧VACが正/負極性の両期間により充電が行われる全波整流動作が得られている。つまり、倍電圧全波整流動作が得られているものである。
【0054】
図1に示す回路において、上記した平滑回路部(平滑コンデンサ[CiA−CiB]//CiC)の両端電圧として得られる直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を入力して動作するスイッチングコンバータとしては、図示するようにして第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の2つが備えられる。これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)に対して並列となるようにして接続される。
また、これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、それぞれ他励式のハーフブリッジ方式による電流共振形コンバータに対して、一次側部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータとしての構成を採る。
【0055】
ここで、第1コンバータ部101の構成について説明する。
この第1コンバータ部101は、上記もしているように、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。このスイッチング素子Q1,Q2のハーフブリッジ結合による回路は、整流平滑電圧Eiに対して並列に接続される。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0056】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0057】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、整流平滑電圧Eiが抵抗Rsを介して電源入力端子Vccに入力されている。
また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0058】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートに印加される。また、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるドライブ信号は、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートに印加される。
【0059】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2に対しては、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が備えられる。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるように、レベルシフトされる。
【0060】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0061】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号が印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図2(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図2(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0062】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図2(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図2(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図3(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0063】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCpにおける充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0064】
絶縁コンバータトランスPIT−1はスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と、所要数の二次巻線が巻装される。
絶縁トランスPIT−1の一次巻線N1の一端は、この場合、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に対して、一次側直列共振コンデンサC1と疎結合トランスVFT−1の一次巻線N11の直列接続を介して接続される。また、他端は、一次側アースに接続される。
【0065】
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPIT−1のリーケージインダクタンスL1によっては、一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0066】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す第1コンバータ部101は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採っている。
【0067】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPIT−1の構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線をEE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
【0068】
この場合の絶縁コンバータトランスPITにおいては、二次巻線N2,N2A,N2Bの3つの二次巻線がそれぞれ独立するようにして巻装される。
先ず、二次巻線N2からは、二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2を生成するようにされており、このうち、二次側直流出力電圧Eoを生成するための回路系は次のようになる。
つまり、二次巻線N2に形成したタップ出力を二次側アースに接地させた上で、このタップ出力をセンター位置とした所定の巻数分の位置から、1つずつ両端タップを引き出す。そして、各両端タップに対して、直交型制御トランスPRT−1の被制御巻線NR1,NR2の直列接続を介して整流ダイオードDo1、Do2を接続し、また、平滑コンデンサCoを接続することで、両波整流回路を形成する。この両波整流回路によって、平滑コンデンサCoの両端電圧として二次側直流出力電圧Eoが得られる。
ここで、二次側直流出力電圧Eoは、安定化のために、分岐して制御回路7に対して入力される。
【0069】
直交型制御トランスPRT−1は、例えば制御巻線Ncに対して、被制御巻線NR1,NR2の巻方向が直交する関係となるようにして、制御巻線Nc及び制御巻線NR1,NR2をコアに巻装して構成される。このようにして構成される直交型制御トランスPRT−1は、可飽和リアクトルとなる。
この場合の制御回路7では、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、そのレベルを可変した直流電流を制御電流として出力する。この制御電流レベルの変化に応じて、可飽和リアクトルである直交型制御トランスPRT−1では、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが可変される。被制御巻線NR1,NR2は、二次側直流出力電圧Eoのための整流回路系において直列に挿入されているので、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが変化すれば、平滑コンデンサCoに流入する整流電流量が変化することになって、二次側直流出力電圧Eoのレベルが変化することになる。このようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを可変制御することで定電圧制御が行われることになる。
【0070】
また、二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系は、図示するようにして、二次巻線N2の一方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−2の被制御巻線NR−整流ダイオードDo3を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo1を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系においても、直交型制御トランスPRT−2及び制御回路7を備えることで、上述のようにして、二次側直流出力電圧Eo1についての定電圧化が図られる。
【0071】
また、二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系も、二次巻線N2の他方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−3の被制御巻線NR−整流ダイオードDo4を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo2を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系としても、直交型制御トランスPRT−3及び制御回路7を備えており、二次側直流出力電圧Eo2についての定電圧化が図られる。
【0072】
また、二次側直流出力電圧Eo3は、二次巻線N2Aに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Aのセンタータップを0電位に接続した上で、整流ダイオードDo5,Do6及び平滑コンデンサCo3から成る。
そして、両波整流回路に対しては、直交型制御トランスPRT−4の被制御巻線NR1,NR2が図示するようにして直列に挿入され、制御回路7は二次側直流出力電圧Eo3に応じたレベルの制御電流を直交型制御トランスPRT−4の制御巻線Ncに対して出力するようにされている。つまり、二次側直流出力電圧Eo3についての定電圧化が図られるようになっている。
【0073】
さらに、二次側直流出力電圧Eo4については、二次巻線N2Bに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Bのセンタータップを二次側アースに接続するとともに、整流ダイオードDo7,Do8及び平滑コンデンサCo5を接続して、先ずは、直流電圧E4を得るようにされ、この直流電圧E4のラインと、平滑コンデンサCo6の間に、DCスイッチ回路6のトランジスタQ5を直列に挿入して形成される。二次側直流出力電圧Eo4は、平滑コンデンサCo6の両端電圧として得られる。
【0074】
この二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化は、スイッチング周波数制御方式によって行われる。つまり、二次側直流出力電圧Eo4は分岐して、検出電圧として制御回路1に入力される。制御回路1では、二次側直流出力電圧Eo4のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力として、第1コンバータ部101内のコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。このコントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになる。この結果、二次側直流出力電圧Eo4のレベルが一定となるように定電圧制御が行われる。
【0075】
DCスイッチ回路6は、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3に応じて、二次側直流出力電圧Eo4の立ち上げタイミングをコントロールするために設けられる。
このDCスイッチ回路6は、図示するようにして、MOS−FETのトランジスタQ5、バイポーラのトランジスタQ6、ツェナーダイオードDZ、及び抵抗R1,R2,R3,R4を図示するようにして接続して形成される。つまり、トランジスタQ5のドレインを平滑コンデンサCo5の正極端子と接続し、ソースを平滑コンデンサCo6の正極端子と接続する。トランジスタQ5のゲートは、抵抗R2を介してトランジスタQ6のコレクタに接続される。また、トランジスタQ5のゲート−ドレイン間には、抵抗R1//ツェナーダイオードDZの並列回路が接続される。ここでは、ツェナーダイオードDZのアノードがトランジスタQ5のゲート側で、カソードがドレイン側となるようにされる。
トランジスタQ6のベースには抵抗R4を介した立ち上げ信号Vt3が、オン/オフ制御信号として入力されるようになっている。また、トランジスタQ6のベース−エミッタ間には、抵抗R3が挿入される。トランジスタQ6のエミッタは二次側アースに接続される。
【0076】
後述もするように、立ち上げ信号Vt3は、LレベルとHレベルで切り換えが行われる信号である。立ち上げ信号Vt3がLレベル(0レベル)である場合、トランジスタQ6はオフ状態を維持するが、このときには、トランジスタQ5におけるゲート−ソース間電圧が閾値を満たさないことから、トランジスタQ5もオフとなる。このため、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子とは接続されないことになって、平滑コンデンサCo6への整流電流の充電は行われないことになる。このため、平滑コンデンサCo5の両端に直流電圧E4が得られているとしても、平滑コンデンサCo6の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo4は0レベルのままである。
これに対して、立ち上げ信号Vt3がHレベルに立ち上がって所定の正極レベルが得られると、トランジスタQ6はオン状態に切り換わって、抵抗R2の両端に電位が生じる。これによって、ツェナーダイオードDZのアノードは、トランジスタQ6のコレクタ−エミッタを介して二次側アースに対して接続されることとなって、直流電圧E4によって導通することになる。ツェナーダイオードDZが導通することによっては、トランジスタQ5のゲートに対して閾値を満たすレベルのゲート電圧が印加されることになって、トランジスタQ5もオンとなる。これにより、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子が接続されることとなって、平滑コンデンサCo6で整流電流が充放電される。これにより、二次側直流出力電圧Eo4が発生することになる。
【0077】
第2コンバータ部102は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1、二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1を第1コンバータ部101と同様にして接続している。これにより、一次側スイッチングコンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータと、部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータを形成している。
【0078】
また、この場合の第2コンバータ部102の二次側としては、絶縁コンバータトランスPIT−2に対して1組の二次巻線N2を設けることとしている。そして、この二次巻線N2に対して、図示するようにして、ブリッジ整流回路DBR及び3本の平滑コンデンサCo7,Co8,Co9から成る倍電圧全波整流回路を設けている。なお、倍電圧半波整流回路としての回路構成は、商用交流電源ACから整流平滑電圧Eiを生成するための倍電圧半波整流回路(Di,CiA,CiB,CiCと同様とされることから、ここでの説明は省略する。なお、ブリッジ整流回路DBRを形成する整流ダイオードD11,D12,D13,D14には、高速リカバリ型が用いられる。
この二次側の倍電圧全波整流回路は、二次巻線N2に励起される交番電圧を入力して倍電圧全波整流動作を行うことで、平滑コンデンサCo7−Co8の直列接続回路と平滑コンデンサCo9との並列接続から成る平滑回路部の両端電圧として、二次巻線N2の交番電圧の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eo5を生成する。
この二次側直流出力電圧Eo5に対する定電圧制御は、制御回路1を備えていることからも分かるように、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御方式により行われる。
【0079】
また、図1に示す電源回路の構成によると、第1コンバータ部101において、二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo4の5つの二次側直流出力電圧を生成し、第2コンバータ部102において二次側直流出力電圧Eo5を生成するようにしている。
つまり、本実施の形態としても、図6にて説明した先行技術の場合と同様にして、
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
を得るようにされている。
但し、本実施の形態においては、第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の、2つのコンバータ部によって上記6つの負荷(二次側直流出力電圧)をまかなうこととしており、従って、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部101:250W
第3コンバータ部102:350W
となって、これにより総合で600Wとなるようにしている。
【0080】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を生成して負荷に供給する構成の下では、図8によっても説明したように、電源起動時において、二次側直流出力電圧についてしかるべき順序で以て立ち上がらせる必要がある。つまり、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにすることが要求される。
【0081】
図1に示す電源回路では、このような二次側直流出力電圧の順次立ち上げを、次のようにして行うこととしている。
先ず、二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御のため、図1においては図示していないマイクロコンピュータからは、立ち上げ信号(起動制御信号)Vt1,Vt2,Vt3を出力可能とされている。
なお、ここでいうマイクロコンピュータとは、図1に示す電源回路が搭載される機器に備えられているものとされる。そして、図1に示す電源回路は、メイン電源であり、このメイン電源がオフとなっているときには、マイクロコンピュータは、ここでは図示していないスタンバイ電源によって動作している。従って、メイン電源が立ち上がっていなくとも、スタンバイ電源によって動作しているために、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力することは可能とされている。
【0082】
そして、立ち上げ信号Vt1は、第1コンバータ部101のコントロールIC2における起動端子Vtに対して入力されるようになっている。立ち上げ信号Vt2は、第2コンバータ部102における起動端子Vtに対して入力される。また、立ち上げ信号Vt3については、先にも説明したように、第1コンバータ部101の二次側において、二次側直流出力電圧Eo4の整流回路に備えられる、DCスイッチ回路のトランジスタQ6をオン/オフするためのオン/オフ制御信号として入力されている。
【0083】
ここで、図5(a)(d)(f)に示すようにして、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3は、それぞれ、時点t1、t2、t3のタイミングで、順次、LレベルからHレベルに切り換わるようにして出力されるようにされている。また、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3が全てLレベルとなっている時点t1以前においては、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102は起動していない状態にある。
【0084】
例えばマイクロコンピュータは、メイン電源がオンとなって、整流平滑電圧Eiが規定のレベルにまで立ち上がったことを認識すると、先ず、時点t1とされる所定のタイミングにより、図5(a)に示すようにして立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。
これにより、時点t1において、第1コンバータ部101のコントロールIC2が起動する。つまり、第1コンバータ部101が起動を開始することになる。これに応じて、第1コンバータ部101の二次側にて得られる各二次側直流出力電圧が立ち上ることになる。つまり、例えば図5(b)に示すようにして、二次側直流出力電圧Eoは、時点t1以前では0レベルであったが、時点t1以降において、平滑コンデンサCoの充電量が増加していくのに応じて上昇するようにして立ち上がっている。そして、規定レベルに至ったとされると、以降はこの規定レベルにより定電圧制御された状態が維持される。
ただし、二次側直流出力電圧Eo4については、図5(c)に示す直流電圧E4が時点t1で立ち上がっているのにかかわらず、図5(g)に示すようにして、同様には立ち上がらない。これは、時点t1のタイミングでは、オン/オフ制御されるDCスイッチ回路6において、トランジスタQ5がオフ状態だからである。前述したように、DCスイッチ回路6では、オン/オフ制御信号である立ち上げ信号Vt3がLレベルでは、トランジスタQ5をオフ状態とするように動作する。トランジスタQ5をオフ状態であるとき、平滑コンデンサCo6には整流電流が充電されず、二次側直流出力電圧Eo4が生成されることはない。
【0085】
そして、図5(d)に示す立ち上げ信号Vt2は、上記Vt1がHレベルに変化した時点t1の後の時点t2においてHレベルに切り換わって出力される。なお、この時点t2のタイミングは、例えば時点t1にHレベルとされた立ち上げ信号Vt1に応じて、例えば二次側直流出力電圧Eoが規定レベルにまで完全に立ち上がることで、二次側直流出力電圧Eoを電源とする回路部の動作の開始が保証される時点以降となるように設定される。
【0086】
そして、立ち上げ信号Vt2がHレベルに切り換わるのに応じては、第2コンバータ部102のコントロールIC2が起動することになる。これにより、時点t2からは、図5(e)に示すようにして、二次側直流出力電圧Eo5が立ち上がることになる。
【0087】
そして、二次側直流出力電圧Eo5が規定レベルにまで完全に立ち上がって定電圧化された状態が得られている時点t3のタイミングにより、図5(f)に示すようにして、最後の立ち上げ信号Vt3がHレベルに切り換えられる。
この場合には、立ち上げ信号Vt3がHレベルとなるのに応じて、DCスイッチ回路6におけるトランジスタQ5がオン状態に切り換わることになる。これに応じて、直流電圧E4は、トランジスタQ5のドレイン−ソースを介して平滑コンデンサCo6に充電されることになり、ここではじめて、図5(g)に示すようにして二次側直流出力電圧Eo4が立ち上がることになる。
このようにして、本実施の形態では、電源起動時における二次側直流出力電圧の立ち上げ順として、図6の電源回路の場合と同等の適正なものとなるように制御している。
【0088】
なお、上記した二次側直流出力電圧の立ち上げ順を得るのにあたっては、他に次のような構成が考えられる。
つまり、DCスイッチ回路6において、トランジスタQ6のベース−エミッタ間抵抗R3に対して、時定数コンデンサを並列に接続する。そして、抵抗R4を介してトランジスタQ6のベースに入力すべきオン/オフ制御信号は、立ち上げ信号Vt3に代えて、第2コンバータ部102にて得られる、二次側直流出力電圧Eo5とするものである。
この構成では、オン/オフ制御信号である二次側直流出力電圧Eo5が所定レベルにまで立ち上がった時点から、トランジスタQ6が完全にオンとなるまでの時点は、上記時定数コンデンサと抵抗R4の時定数に応じた遅延時間が与えられることになる。そこで、この時定数コンデンサと抵抗R4の時定数について、二次側直流出力電圧Eo5が立ち上がった時点から、二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるべき時点に対応する遅延時間が得られるように設定する。このようにすれば、図5と同等の適切なタイミングで二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げることが可能となる。
【0089】
なお、参考までに、図1に示す電源回路において備えられる各トランスのコアの形状サイズについて記しておく。
PIT−1:EER−40
PIT−2:EER−40
VFT−1,VFT−2:EE−28
PRT:フェライトコア(15mm×15mm×20mm)
【0090】
このようにして構成される図1に示す本実施の形態の電源回路と、先行技術として示した図6の回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図1に示す電源回路では、一次側において直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路を、倍電圧全波整流回路としている。この倍電圧整流回路の平滑回路系は、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と平滑コンデンサCiCとを並列接続して整流電流経路を分流させている。これにより、交流入力電圧VACが正の期間において、整流ダイオードDa,Dcに流れるのは、整流電流i1が分流した整流電流i1bの成分のみとなる。また、交流入力電圧VACが負の期間においては、整流ダイオードDbには、整流電流i2が分流した整流電流i1bの成分のみが流れる。
これにより、上記各整流ダイオードに流れる整流電流のピークレベルは、例えば図6の回路における倍電圧半波整流回路よりも抑制されることになり、これらの整流ダイオードの順方向電圧降下による電力損失も低減される。そして、これにより、電源回路としての電力変換効率(ηAC→DC)が向上することになる。
【0091】
また、図6に示す回路においては、二次側直流電圧の安定化のために、スイッチング周波数制御方式に対して、降圧型コンバータを組み合わせた構成を採っているが、降圧形コンバータによるPWM制御は、例えば負荷電流の増加に応じて電力損失が増加して、電力変換効率を低下させる要因となる。これは、例えば降圧形コンバータ以外の定電圧化の手段として、3端子のシリーズレギュレータやトロイダルコアを備えるマグアンプ(磁気増幅器)の回路等を備えた場合にも同様のことがいえる。
これに対して、本実施の形態では、直交型制御トランスPRTを備えて、整流電流経路に挿入した直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRのインダクタンスを可変することで安定化を図ることとしている。直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRにおける電力損失は少なく、被制御巻線NRのインダクタンス可変のために制御回路等が必要とする制御電力は0.4W程度となる。これによっても、電力変換効率の向上に寄与している。
例えば、図6の電源回路ではAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が86.5%、交流入力電力が693.6Wであるのに対して、図1の電源回路では、AC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が87.0%で0.5%向上している。また、交流入力電力は689.6Wであり4.0W低減している。
また、直交型制御トランスPRTを備える安定化のための回路構成は、低コストでもある。
【0092】
また、図1に示す回路では、倍電圧整流回路の平滑回路部を上記のようにして形成していることで、平滑コンデンサCiCについては、その両端電圧が整流平滑電圧Eiレベルとして得られるようになっている。つまり、平滑コンデンサCiCについては、図5に示す回路における平滑回路部のようにして、アッパーサイドとローアーサイドの平滑コンデンサのリップルが二重に重畳された整流平滑電圧Eiを生成することにはならない。
この結果、図1の整流回路の整流平滑電圧Eiのリップル電圧は、図5の整流回路の約1/2にまで抑制され、これに伴って、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の各二次側直流出力電圧に現れるリップル電圧も約1/2に抑制されることになる。
なお、本実施の形態において、例えば平滑コンデンサCiA,CiBについては、1000μF/200V,平滑コンデンサCiCについては、560μF/400Vを選定することができる。また、図6に示す電源回路では、整流平滑電圧Eiを生成するための平滑コンデンサとして4本を備えているが、図1に示す回路では、上記平滑コンデンサCiA,CiB,CiCの3本であり、これによる回路規模の縮小、及び低コスト化も図られることになる。
【0093】
また、図1に示す電源回路では、降圧形コンバータが省略されており、ハードスイッチング動作をするコンバータが無くなっていることが分かる。本実施の形態においては、直交型制御トランスPRT及び制御回路7を備えて、直流的な制御電流供給によって二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2などの安定化を図る構成としていることで、降圧形コンバータの省略を可能としている。
これにより、図1の電源回路を形成する第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作のみとなるから、図6に示した電源回路と比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
また、図6に示す電源回路では、3段の複合共振形コンバータ部が設けられているのに対して、図1に示す電源回路では、第1及び第2コンバータ部101,102の2つとしている。このようにして複合共振形コンバータ部の数が削減されることによっても、上記した回路の小型軽量化が促進される。また、ソフトスイッチング動作であるから、もともとスイッチングノイズは少ないものの、複合共振形コンバータ部の数が削減されれば、それだけスイッチングノイズも減少されることとなって、この点でのメリットも得られている。
【0094】
また、図6に示す電源回路の場合には、3組のコンバータ部201,202,203と、2組の降圧形コンバータが、それぞれ異なるスイッチング周波数で動作する構成となっていた。
これに対して、本実施の形態では、互いに異なるスイッチング周波数によって独立してスイッチング動作を実行するのは、2組のコンバータ部101,102のみとなる。コンバータ部101,102のスイッチング周波数は、定電圧化のために、例えば70KHz〜150KHzの範囲で、二次側直流出力電圧E4,Eo5のレベルに応じてそれぞれ変化する。
このようして、異なるスイッチング周波数によりスイッチング動作するコンバータの数が削減されることによっては、一次側と二次側のアース電位の干渉もそれだけ少なくなるから、電源回路の動作もより安定することとなる。
【0095】
ところで、図6に示す回路において、複合共振形コンバータとして、コンバータ部201,202,203の3つを設けているのは、図8にも示したように、時点t1,t2,t3の3段階で二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングを制御しなければならないことも要因となっている。
つまり、時点t1,t2,t3ごとに出力される立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3ごとに対応して、二次側直流出力電圧を立ち上げようとした場合に、これに応じて、3つの複合共振形コンバータを備え、各複合共振形コンバータのコントロールIC2の起動を、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3によりコントロールするという構成が、これまでにおいて行われてきたからである。
【0096】
これに対して、図1に示す回路では、DCスイッチ回路6を設け、立ち上げ信号Vt3によっては、このDCスイッチ回路6のオン/オフ状態を制御して、二次側直流出力電圧Eo4についての立ち上げをコントロールするようにしている。これにより、二次側直流出力電圧の立ち上げコントロールに必要なコントロールICは、1つ削減されることになる。つまり、コンバータ部を1つ削減することが可能となるものである。
【0097】
また、図6に示す電源回路の第3コンバータ部203において、二次側直流出力電圧Eo5を生成する整流回路は、センタータップが接地された二次巻線N2と、2本の高速リカバリ型の整流ダイオードDo1,Do2とから成る両波整流回路とされている。この場合、実際の二次巻線N2としては、2組の巻線をセンタータップ位置で接続するようにして形成する必要がある。また、各組の巻線は、二次側直流出力電圧Eo5としての所要のレベルに対応した巻数をそれぞれ有している必要がある。また、高速リカバリ型の整流ダイオードDo1,Do2としては、それぞれ600Vの耐圧品を選定する必要がある。
これに対して、図1に示す電源回路では、上記と同じ二次側直流出力電圧Eo5を生成するための整流回路についても、倍電圧全波整流回路としている。これにより、本実施の形態では、図6の場合と同程度のレベルの二次側直流出力電圧Eo5を生成する場合には、二次巻線N2の巻数を大幅に削減することができる。
例えば具体的には、図6に示す第3コンバータ部203では、一次巻線N1を24Tとした場合の二次巻線N2の巻数については、センタータップを中心に25T+25Tとなる。
これに対して、図1に示す第2コンバータ部102では、一次巻線N1を25Tとした場合の二次巻線N2の巻数は、13Tとなるものであり、図6の回路と比較して約1/4にまで削減される。これにより、例えば絶縁コンバータトランスPIT−2に用いるフェライトコアを、例えば先にも記述したように、EER−42からEER40として、より小型軽量なものとすることが可能になる。
なお、本実施の形態において、平滑コンデンサCi7,Ci8については、1000μF/160V,平滑コンデンサCi9については、560μF/250Vを選定することができる。
【0098】
また、本実施の形態としては、上記第2コンバータ部102における二次側の倍電圧全波整流回路の構成として、図4に示す構成を採ることもできる。
この場合には、絶縁コンバータトランスPIT−2に対して、センタータップを設けた二次巻線N2が巻装される。この場合の二次巻線N2は、同じ巻数である巻線部を2組備え、これらの巻線の接続点がセンタータップ位置となるようにして形成される。
そして、この二次巻線N2に対して、図示するようにして整流ダイオードD11〜D14から成るブリッジ整流回路DBRと2本の平滑コンデンサCo7,Co9が接続される。整流ダイオードD11〜D14には、例えば高速リカバリ型が用いられる。
【0099】
二次巻線N2の交番電圧が正極性となる半周期においては、整流電流は、平滑コンデンサCo7→整流ダイオードD13に流れて平滑コンデンサCo7を充電する成分と、整流ダイオードD12→平滑コンデンサCo9→(二次側アース)→整流ダイオードD13に流れて平滑コンデンサCo9を充電する成分とに分岐する。
また、二次巻線N2の交番電圧が負極性となる半周期の整流電流は、平滑コンデンサCo7→整流ダイオードD11に流れて平滑コンデンサCo7を充電する成分と、整流ダイオードD14→平滑コンデンサCo9→(二次側アース)→整流ダイオードD11に流れて平滑コンデンサCo9を充電する成分とに分岐する。
上記した整流電流経路によって整流電流が流れることで、平滑コンデンサCo7には、センタータップ位置で2分割された片側の巻線部の巻数に対応して励起される交番電圧の等倍に対応するレベルの両端電圧が得られる。そして、平滑コンデンサCo9に対する充電は、センタータップ位置で2分割された片側の巻線部に励起される交番電圧レベルに対して、上記平滑コンデンサCo7の両端電圧が重畳された電圧レベルによって行われる。この結果、平滑コンデンサCo9の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo5としては、通常の両波整流回路に対して約2倍のレベルが得られることになる。
つまり、二次側直流出力電圧Eo5は、倍電圧整流動作により得られることになる。また、この場合にも、平滑コンデンサCo7,Co9には、二次巻線N2の交番電圧が正/負の両期間において充電が行われる全波整流動作となっており、従って、倍電圧全波整流動作が得られていることになる。
【0100】
また、本発明としては、これまでに説明した電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0101】
また、本発明に基づく電源回路としては、スイッチングコンバータ部の段数についても、例えば実施の形態として示したように2段(コンバータ部101,102)であることに限定される必要はなく、この段数は、例えば対応すべき負荷電力や、必要とされる二次側直流出力電圧の数などに応じて適宜変更されてよい。また、これらの各コンバータ部において生成する二次側直流出力電圧の数としても特に限定されるものではない。そのうえでも、本発明によっては、実施の形態において説明したように、DCスイッチ回路6に相当する回路を備える構成を採ることで、同数の二次側直流出力電圧を得る場合において必要とされるスイッチングコンバータ部の数は、先行技術に基づいて、同一の負荷条件及び二次側直流出力電圧数に対応する電源回路を構成した場合よりも少なくなるものである。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明の電源回路は、比較的重負荷の条件に対応するために、直流入力電圧を入力して動作する複合共振形のスイッチングコンバータ部を複数段備える構成を採っている。
そのうえで、上記直流入力電圧(整流平滑電圧)を生成するための整流回路としては、倍電圧全波整流回路としており、分岐した整流電流が整流ダイオードに流れる整流電流経路が在るようにされる。これにより、例えば倍電圧半波整流回路の場合よりも、整流ダイオードにおける電力損失は低減され、それだけ、電力変換効率の向上が図られることになる。
また、これにより、直流入力電圧のリップル電圧も低減されるので、これに応じて二次側直流電圧のリップルも低減されることになる。
また、複数の二次側直流電圧を個々に安定化するのにあたっては、スイッチングコンバータのスイッチング周波数を可変制御するスイッチング周波数制御方式と、可飽和リアクトルとしての制御トランスのインダクタンスを可変制御するインダクタンス制御方式を組み合わせることとしているが、これによって、二次側直流電圧の安定化のために、例えばハードスイッチング動作の降圧形コンバータを設ける必要はない。これにより、ノイズが低減され、また、異なるスイッチング周波数で動作するスイッチングコンバータの数が削減されることにもなるから、一次側と二次側のアース電位の干渉が少なくなってアース電位も安定し、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態のコントロールICによるスイッチング素子の駆動タイミングを示すを示す波形図である。
【図3】図1に示す電源回路に備えられる一次側の倍電圧全波整流回路の動作を示す回路図である。
【図4】図1に示す電源回路において二次側に備えられる倍電圧全波整流回路の他の回路構成例を示す回路図である。
【図5】実施の形態における二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【図6】先行技術としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図7】図6に示す電源回路の一次側に備えられる倍電圧半波整流回路の動作を示す回路図である。
【図8】図6に示す電源回路における、二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 制御回路、2 コントロールIC、6 DCスイッチ回路、7 制御回路、101 第1コンバータ部、102 第2コンバータ部、Di,DBR ブリッジ整流回路、CiA,CiB,CiC,Co7,Co8,Co9 平滑コンデンサ、Q1,Q2,Q3,Q4 スイッチング素子、PIT−1,PIT−2 絶縁コンバータトランス、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1 一次巻線、CMC コモンモードチョークコイル、CL アクロスコンデンサ、
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることが分かっている。
そこで、スイッチング電源回路として各種の共振形コンバータが提案され、また、実用化されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
そして、このような共振形コンバータを備える電源回路として、スイッチング周波数制御によって二次側直流出力電圧の安定化を図るように構成した電流共振形コンバータが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、近年においては、テレビジョン受像機、モニタ装置としてプラズマディスプレイなどが普及してきている。このようなプラズマディスプレイに備えられる電源回路としては、例えば負荷電力600W程度の、これまでのテレビジョン受像機やモニタ装置の電源回路よりも重負荷の条件に対応することが要求される。
【0004】
図6は、プラズマディスプレイに搭載され、約600Wの負荷電力に対応可能な電源回路として、電流共振形コンバータを備えた電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路における電流共振形コンバータは他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。また、この図に示す電源回路は、交流入力電圧VAC=100V〜144Vに対応する。つまり、例えば北米などのAC100V系の商用交流電源に対応する。
【0005】
この場合の商用交流電源ACラインには、図示する接続態様により、2組のコモンモードチョークコイルCMC,CMCと、3組のアクロスコンデンサCLが接続されて、コモンモードノイズのためのラインノイズフィルタを形成する。
【0006】
そして、商用交流電源ACラインにおいて、上記したラインノイズフィルタの後段に対しては、整流平滑電圧Eiを生成する整流回路として、倍電圧半波整流回路が設けられる。この倍電圧半波整流回路は、4本の低速リカバリ型の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成るブリッジ整流回路Diと、4本の平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bを備えて形成される。
【0007】
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードは、商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDcのカソードと整流ダイオードDdのカソードは、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1A,Ci1Bの正極端子に接続される。
整流ダイオードDaのアノードと整流ダイオードDbのアノードは一次側アースに接続される。
【0008】
また、整流ダイオードDdのアノードと整流ダイオードDbのカソードの接続点は、整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDcのアノードの接続点と接続される。これにより、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流は、整流ダイオードDc//Ddに並列に流れる。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流は、整流ダイオードDa//Dbに並列に流れる。
【0009】
平滑コンデンサCi1A,Ci2Aは、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。同様にして、平滑コンデンサCi1B,Ci2Bも、それぞれアッパーサイドとローアーサイドの関係となるようにして直列接続される。また、平滑コンデンサCi1A−Ci2Aの接続点と、平滑コンデンサCi1B−Ci2Bの接続点が互いに接続される。この接続態様では、平滑コンデンサCi1A,CiBはアッパーサイド側で並列接続されていることになる。また、平滑コンデンサCi2A,Ci2Bもローアーサイド側で並列接続の関係にある。
【0010】
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作について、図7を参照して説明する。
図7では、説明を簡単にするために、倍電圧半波整流回路の基本的な構成を示しており、図6において実際に形成されている倍電圧半波整流回路との関係としては次のようになっている。
アッパーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi1A//Ci1Bは、平滑コンデンサCi1に相当する。同様にして、ローアーサイド側で並列接続される平滑コンデンサCi2A//Ci2Bは、平滑コンデンサCi2に相当する。
また、整流ダイオードDi1は、交流入力電圧VACが正の期間における整流電流が並列に流れる整流ダイオードDc//Ddの組に相当する。また、交流入力電圧VACが負の期間における整流電流が並列して流れる整流ダイオードDa//Dbは整流ダイオードDi2に相当する。
【0011】
先ず、交流入力電圧VACが正極性となる期間においては、整流ダイオードDi1(Dc//Dd)が導通して整流電流i1が流れ、アッパーサイドの平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
また、交流入力電圧VACが負極性となる期間においては、整流ダイオードDi2(Da//Db)が導通して整流電流i2が流れ、ローアーサイドの平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)に充電される。これにより、平滑コンデンサCi2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧が得られる。
この結果、直列接続された平滑コンデンサCi1(Ci1A//Ci1B)−Ci2(Ci2A//Ci2B)の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流電圧が得られることになる。また、アッパーサイドの平滑コンデンサに整流電流が流れる期間は、交流入力電圧VACが正となる半波の期間であり、ローアーサイドの平滑コンデンサが流れる期間は交流入力電圧VACが負となる半波の期間である。つまり、各平滑コンデンサに対応した半波整流動作により倍電圧を得る、倍電圧半波整流動作が行われている。
【0012】
ここで、図6に示す回路において、整流電流が2本の整流ダイオードに並列に流れるように構成し、また、平滑コンデンサについて、アッパーサイドとローアーサイドとで共に2本を並列に設けているのは、約600Wという重負荷の条件に対応する必要があることによる。
つまり、重負荷の条件になるほど、整流回路系に流れる整流電流は増加する。そこで、整流電流が流れる整流ダイオード及び平滑コンデンサについて、並列接続すれば平滑コンデンサに流れる整流電流は分岐することになる。つまり、1本の整流ダイオード及び平滑コンデンサに流れる電流レベルが抑制されることとなって、これらの部品にかかる負担が軽減される。
なお、平滑コンデンサCi1A,Ci1B,Ci2A,Ci2Bについては、例えば1000μF/200Vを選定し、瞬時停電であっても商用交流電源の1周期の動作が保証されるようにしている。また、整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddについては、25A品を選定するようにしている。また、これらの整流ダイオードDa〜Ddについては、低速リカバリ型が選定される。
【0013】
そして、図6に示す電源回路においては、前述したような重負荷の条件に対応するために、上記整流平滑電圧Eiとしての直流入力電圧を動作電源とする電流共振形コンバータについて、複数を備えることとしている。
また、この図に示す電流共振形コンバータは、後述するようにして部分共振回路が組み合わされることで、いわゆる複合共振形コンバータとしての構成をとる。 この図では、第1コンバータ部201,第2コンバータ部202、第3コンバータ部203の3つの複合共振形コンバータが設けられている。
なお、ここでの複合共振形コンバータとは、スイッチングコンバータの動作を共振形とするために備えられる共振回路に加えて、さらに一次側又は二次側に対して共振回路を付加し、これら複数の共振回路を1スイッチングコンバータ内において複合的に動作させる構成のスイッチングコンバータをいう。
【0014】
例えば、第1コンバータ部201の構成としては、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータとしての構成を採る。
【0015】
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応して上記スイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にクランプダイオードDD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらクランプダイオードDD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
【0016】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、抵抗Rsを介して入力される整流平滑電圧Eiが電源入力端子Vccに入力されるようになっている。また、アース端子Eは一次側アースに直接接続される。
【0017】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHは、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートと接続される。また、ドライブ信号出力端子VGLは、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートと接続される。
これにより、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q1のゲートに対して印加され、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号は、スイッチング素子Q2のゲートに対して印加されることになる。
【0018】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。ここで、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号は、互いに180°の位相差を有する関係となるようにして生成される。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0019】
このようなハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号が、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ印加されることによって、ドライブ信号がHレベルとなる期間に応じては、スイッチング素子Q1,Q2のゲート電圧がゲート閾値以上となってオン状態となる。またドライブ信号がLレベルとなる期間では、ゲート電圧がゲート閾値以下となってオフ状態となる。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動されることになる。
【0020】
また、コントロールIC2の起動端子Vtには、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータ(ここでは図示せず)から出力される立ち上げ信号Vt1が入力される。
コントロールIC2は、この立ち上げ信号が入力されたタイミングで起動して動作を開始するようになっている。つまり、ドライブ信号出力端子VGH、及びドライブ信号出力端子VGLからのドライブ信号出力を開始する。従って、第1コンバータ部201の動作開始タイミングは、コントロールIC2の立ち上げ信号Vt1の入力タイミングによって決定されることになる。
【0021】
絶縁コンバータトランスPIT−1は、上記スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。
絶縁コンバータトランスPIT−1の一次巻線N1の一方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1を介してスイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって一次側直列共振回路を形成する。この一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
【0022】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
このように、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して他の共振回路が組み合わされた、複合共振形コンバータとしての形式を採っている。
【0023】
絶縁コンバータトランスPIT−1の二次側には二次巻線として、2組の二次巻線N2a,N2bが互いに独立するようにして巻装される。
この場合の二次巻線N2aに対しては、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCo1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCo1の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo1が得られる。この二次側直流出力電圧Eo1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0024】
制御回路1では、入力される二次側直流出力電圧Eo1のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力としてコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。コントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになるが、このようにしてスイッチング周波数が可変されることによっては、二次側直流出力電圧Eo1のレベルが一定となるように制御される。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化が行われる。
【0025】
また、この場合においては、二次側直流出力電圧Eo1を分岐して、二次側出力電圧Eo,Eo2を生成するように回路が形成されている。
二次側出力電圧Eoを生成する回路系は、MOS−FETによるスイッチング素子Q7、整流ダイオードDcn1,高周波ノイズ除去用のチョークコイルL11,平滑コンデンサCo、及びPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する制御回路7を図示するようにして接続した、降圧形コンバータとして形成される。
スイッチング素子Q7は、制御回路7によってスイッチング駆動されることで、二次側出力電圧Eo1をスイッチングして交番出力を得る。この交番出力は、チョークコイルL11、整流ダイオードDcn及び平滑コンデンサCoから成る半波整流回路によって整流平滑化されることになって、平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次側直流出力電圧Eoを生成する。
ここで、制御回路7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、PWM制御を実行する。これにより、スイッチング素子Q7は、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、スイッチング周波数は一定とされた上で、1スイッチング周期内のオン期間が可変されるようにしてスイッチング動作が制御される。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベルが一定となるように制御されることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0026】
二次側出力電圧Eo1を生成する回路系としても、MOS−FETによるスイッチング素子Q8、整流ダイオードDcn,チョークコイルL12,平滑コンデンサCo2、及び制御回路7を、上記した二次側出力電圧Eo1を生成する回路系と同様の態様により接続した、降圧形コンバータとして形成される。
従って、この場合にも、平滑コンデンサCo2の両端電圧としては、制御回路7のPWM制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo1が得られることになる。
【0027】
また、二次巻線N2bに対しては、ブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCo3から成る全波整流回路が形成されており、この全波整流回路の整流平滑動作によって、平滑コンデンサCo3の両端電圧として二次側直流出力電圧Eo3を得るようにされている。
【0028】
第2コンバータ部202は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2の一次巻線N1等を、上記第1コンバータ部201と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。
また、第2コンバータ部202の二次側は、二次巻線N2のセンタータップを二次側アースに接続したうえで、この二次巻線N2に対して、図示するようにして、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo4,Co5、ノイズ除去用の抵抗R1から成る両波整流回路が形成される。これにより、平滑コンデンサCo5の両端電圧として、二次側直流出力電圧Eo4が生成される。
また、第2コンバータ部202においては、制御回路7が、平滑コンデンサCo4の両端に得られる二次側整流平滑電圧のレベルに基づいて、一次側コンバータのスイッチング周波数制御を実行する結果、二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化が図られるようにされている。
また、第2コンバータ部202において、コントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3が入力される。
【0029】
また、第3コンバータ部203も、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q5,Q6、クランプダイオードDD5,DD6、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−3(一次巻線N1、二次巻線N2、整流ダイオードDo1,Do2、平滑コンデンサCo6,Co7、抵抗R2を、第2コンバータ部202と同様の態様によって接続することで、電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採る。そして、この第3コンバータ部203においても、制御回路7によるスイッチング周波数制御によって安定化された二次側直流出力電圧Eo5が得られる。
また、第3コンバータ部203のコントロールIC2の起動端子Vtに対しては、マイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt2が入力される。
【0030】
上記構成では、二次側から、6つの二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が得られることになるが、これら二次側直流出力電圧の用途、負荷仕様については、例えば下記のようになっている。
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
そして、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部201:75W
第2コンバータ部202:175W
第3コンバータ部203:350W
であり、総合で600Wとなる。
また、上記したような各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力に応じて、絶縁コンバータトランスについては、次のようにしてコアが選定される。
PIT−1:EER−35
PIT−2:EER−40
PIT−3:EER−42
また、降圧形コンバータにおけるチョークコイルL11,L12は、それぞれ、EE−25のフェライトコアである。
【0031】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5が使用される場合においては、電源が起動して直流入力電圧(整流平滑電圧Ei(375V))が立ち上がったときに、各二次側直流出力電圧について、しかるべき順序で以て、順次立ち上がらせる必要がある。
具体的には、先ず、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにする。
【0032】
上記したような二次側直流出力電圧の立ち上げ順序とするために、マイクロコンピュータは、各コンバータ部(201,202,203)におけるコントロールIC2の起動端子Vtに対して、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力して制御を行っている。この立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3による二次側直流出力電圧の立ち上げ順序の制御動作を、図8のタイミングチャートに示す。
【0033】
ここで、図6に示す電源回路は、いわゆるメイン電源の構成であり、ここにはスタンバイ電源は示していない。マイクロコンピュータは、このスタンバイ電源が供給されているからメイン電源が起動されていない状態でも、動作することが可能である。
そして、メイン電源である図6に示す回路を起動させるために、メインスイッチSWがオフからオンに切り換えられたとすると、商用交流電源ACが回路に投入されて整流平滑電圧Eiが得られることになる。そして、この整流平滑電圧Eiが規定レベル(例えば375V)にまで上昇したことがマイクロコンピュータによって検出されると、マイクロコンピュータは、図8に示す時点t1のタイミングで、図8(a)に示すようにして、立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。これにより、立ち上げ信号Vt1が入力されている第1コンバータ部201のコントロールIC2は、時点t1からスイッチング駆動動作を開始する。そして、これに応じて、第1コンバータ部201の二次側にて得られる二次側直流出力電圧Eoは、図8(b)に示すようにして、時点t1における0レベルから上昇を開始して或る時間が経過した時点で、規定のレベル(5V)にまで上昇する。そして、以降は、降圧形コンバータによる定電圧制御動作によって、この12Vで安定化された状態を維持する。
なお、確認のために述べておくと、同じ第1コンバータ部201にて生成される残りの二次側直流出力電圧Eo1,Eo2,Eo3も、二次側直流出力電圧Eoとほぼ同じタイミングで立ち上がることになる。
【0034】
そして、立ち上げ信号Vt2は、上記のようにして、時点t1から二次側直流出力電圧Eo1が規定レベルに上昇して安定した後の時点t2において、図8(c)に示すように、Lレベルからレベルに切り換えて出力されるように設定されている。
これにより、第3コンバータ部203のコントロールICが時点t2において起動する。これに応じて、時点t2以降においては、図8(d)に示す二次側直流出力電圧Eo5が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(200V)で一定となるようにして立ち上がることになる。
【0035】
また、上記のように二次側直流出力電圧Eo5が規定レベルで安定した状態となった後の時点t3において、マイクロコンピュータは、図8(e)に示す立ち上げ信号Vt3をLレベルからHレベルに切り換える。これに応じて、第2コンバータ部202のコントロールICが時点t3において起動し、時点t3以降において、図8(f)に示す二次側直流出力電圧Eo4が0レベルから上昇を開始して、或る時間を経過した時点で、規定レベル(70V)で一定となるようにして立ち上がる。
このようにして、図6に示す電源回路では、二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングをコントロールして、電源回路としての適切な起動動作を得るようにしている。
【0036】
【特許文献1】
特開平2−41084号公報
【0037】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの説明から分かるように、先行技術として図6に示した電源回路は、例えば負荷電力600W程度の重負荷の条件に対応するため、直流入力電圧(Ei)に対して3つの複合共振形コンバータを並列に接続している。
また、第1コンバータ部201としての複合共振形コンバータにおいては、二次側直流出力電圧Eo,Eo2を得るための、降圧形コンバータを設けている。つまり、スイッチング制御方式による定電圧制御のための回路系と、二次側に設けられる所要数の降圧形コンバータとを組み合わせることによって、各二次側直流出力電圧の安定化を図っている。
【0038】
しかしながら、上記図6に示した構成による電源回路では次のような問題を有している。
先ず、直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路は倍電圧半波整流回路として形成されている。この倍電圧半波整流回路では、例えば負荷電力Po=600W、交流入力電圧VAC=120V時の条件では、交流入力電圧VACが正/負の各期間で流れる整流電流i1,i2のピークレベルは、共に29Ap程度となる。整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddとしては、前述もしたように25A品として並列接続させているのであるが、上記した程度に整流電流のi1,i2のピークレベルが大きいことから、各整流ダイオードにおける順方向電圧降下による電力損失は相当に大きいものとなる。このため、例えば実際の測定結果として、AC−DC電力変換効率(ηAC→DC)は86.5%であり、交流入力電力は693.6Wとなっている。
【0039】
また、上記のようにして、倍電圧半波整流回路を形成している場合、アッパーサイド側とローアーサイド側の各平滑コンデンサの両端電圧に商用交流電源周期のリップル成分が重畳することになる。直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)は、アッパーサイド側とローアーサイド側の平滑コンデンサを直列接続した回路の両端電圧である。従って、直流入力電圧のリップル成分は、アッパーサイド側とローアーサイド側の平滑コンデンサのリップル成分が二重に重畳されたものとなって、結果的に、直流入力電圧に生じるリップル電圧が増加することになる。これに伴って、二次側直流出力電圧のリップルも増加してしまう。
【0040】
また、図6に示す回路の場合においては、必要数の二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を得るのに、第1、第2、及び第3コンバータ部201,202,203による、3段の複合共振形コンバータを備えているが、このようにして、電力変換の段数が多いことによっても、電力変換効率の低下を招いている。また、構成部品点数もそれだけ多くなって回路基板サイズが拡大し、コストアップにもつながる。
【0041】
さらに、図6に示す回路としては、3組の複合共振形コンバータに加えて、2組の降圧形コンバータを備えていることになるので、これらのスイッチングノイズも無視できない程度に大きなものとなる。特に、降圧形コンバータはハードスイッチング動作であるから、スイッチングノイズ発生量は多い。
【0042】
さらに、スイッチング周波数については、第1〜第3コンバータ部201〜203における複合共振形コンバータは、70KHz〜150KHzの範囲であるのに対して、第1コンバータ部201における降圧形コンバータは、例えば100KHzとなる。
このようにして、各スイッチングコンバータにおけるスイッチング周波数が異なる場合においては、1次側と二次側のアース電位が干渉しあって、電源回路としての動作が不安定になりやすいという問題も有している。
【0043】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成する。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源の2倍に対応するとされるレベルの上記整流平滑電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路と、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。そして、複数のスイッチングコンバータ部の各々は、直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、この一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスを備える。また、少なくとも、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路を備える。また、各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路を備える。また、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段を備える。また、1以上の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧のレベルに応じてスイッチング駆動手段を制御して、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、所要の1つの二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された周波数制御型定電圧制御手段を備える。また、直流出力電圧生成手段により複数の二次側直流出力電圧が生成される場合において、周波数制御型定電圧制御手段により定電圧制御される以外の、定電圧化を必要とする所要の二次側直流出力電圧ごとに対応して設けられるもので、制御巻線と被制御巻線が巻装された可飽和リアクトルとしての制御トランスの被制御巻線を、二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路に挿入し、入力された二次側直流出力電圧レベルに応じて、制御巻線に流すべき制御電流レベルを可変して上記被制御巻線のインダクタンスを可変することで、この二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成されたインダクタンス制御型定電圧制御手段とを備えることとした。
【0044】
上記構成によれば、本発明のスイッチング電源回路は、重負荷の条件に対応するのにあたって、整流平滑電圧(直流入力電圧)を入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備える。また、各スイッチングコンバータ部としては、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータに対して、部分電圧共振回路を組み合わせた構成を採っていることになる。
そして、整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流回路としては、倍電圧全波整流回路を備えることとされている。倍電圧全波整流回路では、入力電圧(商用交流電源)が正/負の両期間において整流電流経路が分岐され、この分岐された整流電流が倍電圧全波整流回路を形成する整流ダイオードに流れる整流電流経路が形成される。
【0045】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路は、例として、商用交流電源がAC100V系で、負荷電力Po=600W以上の比較的重負荷の条件に対応可能な構成を採る。また、このような本実施の形態のスイッチング電源回路は、例えばプラズマディスプレイ装置の電源回路として用いることができる。
【0046】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、2組のコモンモードチョークコイルCMCと、3組のアクロスコンデンサCLから成る、コモンモードノイズを除去するためのラインノイズフィルタが備えられる。
【0047】
また、上記ラインノイズフィルタの後段に対しては、商用交流電源ACから整流平滑電圧Eiを生成するための整流回路が備えられる。
本実施の形態の場合の上記整流回路としては倍電圧全波整流回路とされる。この倍電圧全波整流回路は、ブリッジ整流回路Di、及び3本の平滑コンデンサCiA,CiB,CiCから成る。
【0048】
ブリッジ整流回路Diは、4本の整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddから成る。これらの整流ダイオードDa,Db,Dc,Ddには、例えば低速リカバリ型を選定するようにされる。
整流ダイオードDaのアノードと、整流ダイオードDdの接続点は商用交流電源ACの正極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDbのアノードと整流ダイオードDcのカソードは、商用交流電源ACの負極ラインに対して接続される。
整流ダイオードDaのカソードと整流ダイオードDbのカソードは、平滑コンデンサCiA,Cicの正極端子に対して接続される。
整流ダイオードDd,Dcの各アノードは一次側アースに接続される。
【0049】
また、倍電圧全波整流回路の平滑回路系としては、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCを、並列に接続して形成している。
つまり、平滑コンデンサCiAの負極端子と平滑コンデンサCiBの正極端子を接続した上で、平滑コンデンサCiAの正極端子を、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続する。また、直列接続された平滑コンデンサCiA−CiBの接続点は、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDc,Dbの接続点(商用交流電源ACの負極ライン)に対して接続される。
また、平滑コンデンサCiCの正極端子は、平滑コンデンサCiAの正極端子と同じく、ブリッジ整流回路Diの整流ダイオードDa,Dbの接続点に対して接続される。
平滑コンデンサCiB,CiCの負極端子は、共に一次側アースに対して接続される。
【0050】
上記のようにして形成される倍電圧全波整流回路の動作について、図3を参照して説明する。図3には、図1から倍電圧全波整流回路を形成する回路部分を抜き出して示している。
先ず交流入力電圧VACが正極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDa,Dcが導通する。これにより、図3(a)に示すようにして、商用交流電源ACの正極ライン側から流れる整流電流i1は、先ず、整流ダイオードDaを流れる。そして、この後において、整流電流i1は、平滑コンデンサCiAに流れる整流電流i1aと平滑コンデンサCiCに流れる整流電流i1bとに分岐する。
平滑コンデンサCiAに流入した整流電流i1aは、そのまま商用交流電源ACの負極ラインに流入する。平滑コンデンサCiCに流入した整流電流i1bは、一次側アースを介して整流ダイオードDcを流れた後、商用交流電源ACの負極ラインに流れる。つまり、整流電流i1a,i1bは、商用交流電源ACの負極ライン側で合流し、整流電流i1(=i1a+i1b)として流れる。
このような整流電流の経路によって、平滑コンデンサCiAと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積される。
【0051】
また、交流入力電圧VACが負極性となる半周期の期間においては、整流ダイオードDb,Ddが導通する。これにより、図3(b)に示すようにして、商用交流電源ACの負極ライン側から流れる整流電流i2は、先ず、平滑コンデンサCiBに流れる整流電流i2aと、整流ダイオードDbに流れる整流電流i2bとに分岐する。
整流電流i2aは、平滑コンデンサCiBに流入した後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。また、整流電流i2bは、平滑コンデンサCiCを流れた後、一次側アースを介するようにして整流ダイオードDdに流れ、商用交流電源ACの正極ラインに流れる。この場合も、整流電流i2a,i2bは、商用交流電源ACの正極ライン側で合流し、整流電流i2(=i2a+i2b)として流れることになる。
そして、上記した整流電流経路によっては、平滑コンデンサCiBと平滑コンデンサCiCに対して充電が行われて電荷が蓄積されることとなる。
【0052】
ここで、平滑コンデンサCiA,CiBの各々に対しては、交流入力電圧VACが正/負となる各半周期において、交流入力電圧VACに対応する電位による充電が行われる。このため、平滑コンデンサCiA,CiBのそれぞれの両端電圧として、交流入力電圧VACの等倍に対応するレベルの平滑電圧(直流電圧)が得られる。従って、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
このため、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路に対して並列接続される平滑コンデンサCiCに対する充電により得られる両端電圧としても、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの直流電圧が得られる。
【0053】
このような動作の結果、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と、平滑コンデンサCiCとの並列接続により形成される平滑回路部の両端電圧としては、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの整流平滑電圧Eiが得られることになる。また、平滑コンデンサCiCに対する整流平滑動作としては、交流入力電圧VACが正/負極性の両期間により充電が行われる全波整流動作が得られている。つまり、倍電圧全波整流動作が得られているものである。
【0054】
図1に示す回路において、上記した平滑回路部(平滑コンデンサ[CiA−CiB]//CiC)の両端電圧として得られる直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を入力して動作するスイッチングコンバータとしては、図示するようにして第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の2つが備えられる。これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)に対して並列となるようにして接続される。
また、これら第1コンバータ部101、第2コンバータ部102は、それぞれ他励式のハーフブリッジ方式による電流共振形コンバータに対して、一次側部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータとしての構成を採る。
【0055】
ここで、第1コンバータ部101の構成について説明する。
この第1コンバータ部101は、上記もしているように、電流共振形コンバータとしての基本構成を採る。そして、ここでは、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1(ハイサイド),Q2(ローサイド)をハーフブリッジ結合により接続している。このスイッチング素子Q1,Q2のハーフブリッジ結合による回路は、整流平滑電圧Eiに対して並列に接続される。
また、スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0056】
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0057】
コントロールIC2は、電流共振形コンバータを他励式により駆動するための発振回路、制御回路、及び保護回路等を備えて構成されるもので、内部にバイポーラトランジスタを備えた汎用のアナログIC(Integrated Circuit)とされる。
このコントロールIC2は、電源入力端子Vccに入力される直流電圧により動作する。この場合には、整流平滑電圧Eiが抵抗Rsを介して電源入力端子Vccに入力されている。
また、このコントロールIC2は、アース端子Eにより一次側アースに接地させるようにしている。
【0058】
そして、コントロールIC2においては、スイッチング素子に対してドライブ信号(ゲート電圧)を出力するための端子として、2つのドライブ信号出力端子VGH,VGLが備えられる。
ドライブ信号出力端子VGHからは、ハイサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力され、ドライブ信号出力端子VGLからは、ローサイドのスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号が出力される。
そして、この場合には、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1のゲートに印加される。また、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるドライブ信号は、ローサイドのスイッチング素子Q2のゲートに印加される。
【0059】
また、この図では図示を省略しているが、コントロールIC2に対しては、外付けの回路として、1組のブートストラップ回路が備えられる。このブートストラップ回路によりドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号は、ハイサイドのスイッチング素子Q1を適正にドライブ可能なレベルとなるように、レベルシフトされる。
【0060】
コントロールIC2では、内部の発振回路により所要の周波数の発振信号を生成する。なお、この発振回路は、後述するようにして制御回路1から端子Vcに入力される制御出力のレベルに応じて、発振信号の周波数を可変するようにされている。
そして、コントロールIC2では、上記発振回路にて生成された発振信号を利用して、ハイサイド用のドライブ信号と、ローサイド用のドライブ信号を生成する。そして、ハイサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGHから出力し、ローサイド用のドライブ信号をドライブ信号出力端子VGLから出力するようにされる。
【0061】
上記説明によると、スイッチング素子Q1に対しては、ドライブ信号出力端子VGHから出力されるハイサイド用のドライブ信号が印加される。これによって、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1としては、このハイサイド用のドライブ信号に対応した波形が得られることになる。
つまり、図2(a)に示すようにして、1スイッチング周期内において、正極性による矩形波のパルスが発生する期間と、0Vとなる期間が得られることになる。
そして、この図2(a)に示されるゲート−ソース間電圧VGH1によって、スイッチング素子Q1は、先ず、1スイッチング周期内において、正極性の矩形波パルスが得られるタイミングでオン状態となるようにされる。つまり、スイッチング素子Q1がオンとなるには、ゲート閾値電圧(≒5V)以上の適切なレベルの電圧が印加されることが必要である。上記正極性のパルスとしてのゲート−ソース間電圧VGH1は10Vとなるように設定されているから、この正極性のパルスが印加される期間に対応してオンとなる状態が得られることになる。そして、ゲート−ソース間電圧VGH1が0Vでゲート閾値電圧以下となると、オフ状態に切り換わることになる。このようなタイミングにより、スイッチング素子Q1は、オン/オフするようにしてスイッチング動作を行うことになる。
【0062】
一方、スイッチング素子Q2に対しては、ドライブ信号出力端子VGLから出力されるローサイド用のドライブ信号が印加されるようになっている。このドライブ信号に応じては、図2(b)に示す波形によるスイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧VGL1が得られる。
つまり、ゲート−ソース間電圧VGL1は、図2(a)に示したスイッチング素子Q1のゲート−ソース間電圧VGH1と同じ波形とされたうえで、タイミングとしては、ゲート−ソース間電圧VGH1に対して180°の位相差を有した波形が得られているものである。このことから、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と交互にオン/オフするタイミングによりスイッチング駆動されることになる。
また、図3(a)(b)によると、スイッチング素子Q1がターンオフしてスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間と、スイッチング素子Q2がターンオフして、スイッチング素子Q1がターンオンするまでの間には期間tdが形成されるようになっている。
【0063】
この期間tdは、スイッチング素子Q1,Q2が共にオフとなるデッドタイムである。このデッドタイムとしての期間tdは、部分電圧共振動作として、スイッチング素子Q1,Q2がターンオン/ターンオフするタイミングでの短時間において、部分共振コンデンサCpにおける充放電の動作が確実に得られるようにすることを目的として形成している。そして、このような期間tdとしての時間長は、例えばコントロールIC2側で設定することができるようになっており、コントロールIC2では、設定された時間長による期間tdが形成されるように、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号についてのパルス幅のデューティ比を可変する。
【0064】
絶縁コンバータトランスPIT−1はスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するものであり、一次巻線N1と、所要数の二次巻線が巻装される。
絶縁トランスPIT−1の一次巻線N1の一端は、この場合、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に対して、一次側直列共振コンデンサC1と疎結合トランスVFT−1の一次巻線N11の直列接続を介して接続される。また、他端は、一次側アースに接続される。
【0065】
ここで、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPIT−1のリーケージインダクタンスL1によっては、一次側直列共振回路が形成される。そして、上記のようにして、この一次側直列共振回路がスイッチング出力点に対して接続されていることで、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が一次側直列共振回路に伝達されることになる。一次側直列共振回路では伝達されたスイッチング出力に応じて共振動作するが、これによって、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
【0066】
上記説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す第1コンバータ部101は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採っている。
【0067】
ここでの図示による説明は省略するが、絶縁コンバータトランスPIT−1の構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線をEE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
【0068】
この場合の絶縁コンバータトランスPITにおいては、二次巻線N2,N2A,N2Bの3つの二次巻線がそれぞれ独立するようにして巻装される。
先ず、二次巻線N2からは、二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2を生成するようにされており、このうち、二次側直流出力電圧Eoを生成するための回路系は次のようになる。
つまり、二次巻線N2に形成したタップ出力を二次側アースに接地させた上で、このタップ出力をセンター位置とした所定の巻数分の位置から、1つずつ両端タップを引き出す。そして、各両端タップに対して、直交型制御トランスPRT−1の被制御巻線NR1,NR2の直列接続を介して整流ダイオードDo1、Do2を接続し、また、平滑コンデンサCoを接続することで、両波整流回路を形成する。この両波整流回路によって、平滑コンデンサCoの両端電圧として二次側直流出力電圧Eoが得られる。
ここで、二次側直流出力電圧Eoは、安定化のために、分岐して制御回路7に対して入力される。
【0069】
直交型制御トランスPRT−1は、例えば制御巻線Ncに対して、被制御巻線NR1,NR2の巻方向が直交する関係となるようにして、制御巻線Nc及び制御巻線NR1,NR2をコアに巻装して構成される。このようにして構成される直交型制御トランスPRT−1は、可飽和リアクトルとなる。
この場合の制御回路7では、二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、そのレベルを可変した直流電流を制御電流として出力する。この制御電流レベルの変化に応じて、可飽和リアクトルである直交型制御トランスPRT−1では、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが可変される。被制御巻線NR1,NR2は、二次側直流出力電圧Eoのための整流回路系において直列に挿入されているので、被制御巻線NR1,NR2のインダクタンスが変化すれば、平滑コンデンサCoに流入する整流電流量が変化することになって、二次側直流出力電圧Eoのレベルが変化することになる。このようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを可変制御することで定電圧制御が行われることになる。
【0070】
また、二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系は、図示するようにして、二次巻線N2の一方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−2の被制御巻線NR−整流ダイオードDo3を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo1を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo1のための整流回路系においても、直交型制御トランスPRT−2及び制御回路7を備えることで、上述のようにして、二次側直流出力電圧Eo1についての定電圧化が図られる。
【0071】
また、二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系も、二次巻線N2の他方の端部から引き出したラインに対して、直交型制御トランスPRT−3の被制御巻線NR−整流ダイオードDo4を直列接続するとともに、平滑コンデンサCo2を接続することで、半波整流回路として形成される。
そして、この二次側直流出力電圧Eo2のための整流回路系としても、直交型制御トランスPRT−3及び制御回路7を備えており、二次側直流出力電圧Eo2についての定電圧化が図られる。
【0072】
また、二次側直流出力電圧Eo3は、二次巻線N2Aに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Aのセンタータップを0電位に接続した上で、整流ダイオードDo5,Do6及び平滑コンデンサCo3から成る。
そして、両波整流回路に対しては、直交型制御トランスPRT−4の被制御巻線NR1,NR2が図示するようにして直列に挿入され、制御回路7は二次側直流出力電圧Eo3に応じたレベルの制御電流を直交型制御トランスPRT−4の制御巻線Ncに対して出力するようにされている。つまり、二次側直流出力電圧Eo3についての定電圧化が図られるようになっている。
【0073】
さらに、二次側直流出力電圧Eo4については、二次巻線N2Bに対して形成される両波整流回路によって得られるようになっている。この両波整流回路は、二次巻線N2Bのセンタータップを二次側アースに接続するとともに、整流ダイオードDo7,Do8及び平滑コンデンサCo5を接続して、先ずは、直流電圧E4を得るようにされ、この直流電圧E4のラインと、平滑コンデンサCo6の間に、DCスイッチ回路6のトランジスタQ5を直列に挿入して形成される。二次側直流出力電圧Eo4は、平滑コンデンサCo6の両端電圧として得られる。
【0074】
この二次側直流出力電圧Eo4に対する安定化は、スイッチング周波数制御方式によって行われる。つまり、二次側直流出力電圧Eo4は分岐して、検出電圧として制御回路1に入力される。制御回路1では、二次側直流出力電圧Eo4のレベルに応じてそのレベルが可変された電圧又は電流を制御出力として、第1コンバータ部101内のコントロールIC2の制御入力端子Vcに供給する。このコントロールIC2では、制御入力端子Vcに入力された制御出力に応じて、例えば発振信号の周波数を可変することで、ドライブ信号出力端子VGH,VGLから出力すべきドライブ信号の周波数を可変する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、スイッチング周波数が可変制御されることになる。この結果、二次側直流出力電圧Eo4のレベルが一定となるように定電圧制御が行われる。
【0075】
DCスイッチ回路6は、この図に示す電源回路が搭載される機器に備えられるマイクロコンピュータから出力される立ち上げ信号Vt3に応じて、二次側直流出力電圧Eo4の立ち上げタイミングをコントロールするために設けられる。
このDCスイッチ回路6は、図示するようにして、MOS−FETのトランジスタQ5、バイポーラのトランジスタQ6、ツェナーダイオードDZ、及び抵抗R1,R2,R3,R4を図示するようにして接続して形成される。つまり、トランジスタQ5のドレインを平滑コンデンサCo5の正極端子と接続し、ソースを平滑コンデンサCo6の正極端子と接続する。トランジスタQ5のゲートは、抵抗R2を介してトランジスタQ6のコレクタに接続される。また、トランジスタQ5のゲート−ドレイン間には、抵抗R1//ツェナーダイオードDZの並列回路が接続される。ここでは、ツェナーダイオードDZのアノードがトランジスタQ5のゲート側で、カソードがドレイン側となるようにされる。
トランジスタQ6のベースには抵抗R4を介した立ち上げ信号Vt3が、オン/オフ制御信号として入力されるようになっている。また、トランジスタQ6のベース−エミッタ間には、抵抗R3が挿入される。トランジスタQ6のエミッタは二次側アースに接続される。
【0076】
後述もするように、立ち上げ信号Vt3は、LレベルとHレベルで切り換えが行われる信号である。立ち上げ信号Vt3がLレベル(0レベル)である場合、トランジスタQ6はオフ状態を維持するが、このときには、トランジスタQ5におけるゲート−ソース間電圧が閾値を満たさないことから、トランジスタQ5もオフとなる。このため、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子とは接続されないことになって、平滑コンデンサCo6への整流電流の充電は行われないことになる。このため、平滑コンデンサCo5の両端に直流電圧E4が得られているとしても、平滑コンデンサCo6の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo4は0レベルのままである。
これに対して、立ち上げ信号Vt3がHレベルに立ち上がって所定の正極レベルが得られると、トランジスタQ6はオン状態に切り換わって、抵抗R2の両端に電位が生じる。これによって、ツェナーダイオードDZのアノードは、トランジスタQ6のコレクタ−エミッタを介して二次側アースに対して接続されることとなって、直流電圧E4によって導通することになる。ツェナーダイオードDZが導通することによっては、トランジスタQ5のゲートに対して閾値を満たすレベルのゲート電圧が印加されることになって、トランジスタQ5もオンとなる。これにより、平滑コンデンサCo5の正極端子と、平滑コンデンサCo6の正極端子が接続されることとなって、平滑コンデンサCo6で整流電流が充放電される。これにより、二次側直流出力電圧Eo4が発生することになる。
【0077】
第2コンバータ部102は、ハーフブリッジ結合されたスイッチング素子Q3,Q4、クランプダイオードDD3,DD4、部分共振コンデンサCp、コントロールIC2、絶縁コンバータトランスPIT−2(一次巻線N1、二次巻線N2)、一次側直列共振コンデンサC1を第1コンバータ部101と同様にして接続している。これにより、一次側スイッチングコンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータと、部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータを形成している。
【0078】
また、この場合の第2コンバータ部102の二次側としては、絶縁コンバータトランスPIT−2に対して1組の二次巻線N2を設けることとしている。そして、この二次巻線N2に対して、図示するようにして、ブリッジ整流回路DBR及び3本の平滑コンデンサCo7,Co8,Co9から成る倍電圧全波整流回路を設けている。なお、倍電圧半波整流回路としての回路構成は、商用交流電源ACから整流平滑電圧Eiを生成するための倍電圧半波整流回路(Di,CiA,CiB,CiCと同様とされることから、ここでの説明は省略する。なお、ブリッジ整流回路DBRを形成する整流ダイオードD11,D12,D13,D14には、高速リカバリ型が用いられる。
この二次側の倍電圧全波整流回路は、二次巻線N2に励起される交番電圧を入力して倍電圧全波整流動作を行うことで、平滑コンデンサCo7−Co8の直列接続回路と平滑コンデンサCo9との並列接続から成る平滑回路部の両端電圧として、二次巻線N2の交番電圧の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eo5を生成する。
この二次側直流出力電圧Eo5に対する定電圧制御は、制御回路1を備えていることからも分かるように、一次側スイッチングコンバータのスイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御方式により行われる。
【0079】
また、図1に示す電源回路の構成によると、第1コンバータ部101において、二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo4の5つの二次側直流出力電圧を生成し、第2コンバータ部102において二次側直流出力電圧Eo5を生成するようにしている。
つまり、本実施の形態としても、図6にて説明した先行技術の場合と同様にして、
Eo:ロジック電源、5V/6A〜2A
Eo1:アナログICドライブ用電源、12V/0.4A
Eo2:デジタルICドライブ用電源、3.3V/1.5A
Eo3:音声出力用電源、26V/1.3A〜0.1A
Eo4:データ電源、70V/2.5A〜0.35A
Eo5:維持電源、200V/1.75A〜0.1A
を得るようにされている。
但し、本実施の形態においては、第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の、2つのコンバータ部によって上記6つの負荷(二次側直流出力電圧)をまかなうこととしており、従って、各コンバータ部が対応すべき最大負荷電力は、
第1コンバータ部101:250W
第3コンバータ部102:350W
となって、これにより総合で600Wとなるようにしている。
【0080】
そして、上記のようにして二次側直流出力電圧Eo,Eo1〜Eo5を生成して負荷に供給する構成の下では、図8によっても説明したように、電源起動時において、二次側直流出力電圧についてしかるべき順序で以て立ち上がらせる必要がある。つまり、ロジック電源である二次側直流出力電圧Eoを立ち上がらせ、続いて、順次、維持電源である二次側直流出力電圧Eo5、データ電源である二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるようにすることが要求される。
【0081】
図1に示す電源回路では、このような二次側直流出力電圧の順次立ち上げを、次のようにして行うこととしている。
先ず、二次側直流出力電圧の順次立ち上げ制御のため、図1においては図示していないマイクロコンピュータからは、立ち上げ信号(起動制御信号)Vt1,Vt2,Vt3を出力可能とされている。
なお、ここでいうマイクロコンピュータとは、図1に示す電源回路が搭載される機器に備えられているものとされる。そして、図1に示す電源回路は、メイン電源であり、このメイン電源がオフとなっているときには、マイクロコンピュータは、ここでは図示していないスタンバイ電源によって動作している。従って、メイン電源が立ち上がっていなくとも、スタンバイ電源によって動作しているために、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3を出力することは可能とされている。
【0082】
そして、立ち上げ信号Vt1は、第1コンバータ部101のコントロールIC2における起動端子Vtに対して入力されるようになっている。立ち上げ信号Vt2は、第2コンバータ部102における起動端子Vtに対して入力される。また、立ち上げ信号Vt3については、先にも説明したように、第1コンバータ部101の二次側において、二次側直流出力電圧Eo4の整流回路に備えられる、DCスイッチ回路のトランジスタQ6をオン/オフするためのオン/オフ制御信号として入力されている。
【0083】
ここで、図5(a)(d)(f)に示すようにして、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3は、それぞれ、時点t1、t2、t3のタイミングで、順次、LレベルからHレベルに切り換わるようにして出力されるようにされている。また、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3が全てLレベルとなっている時点t1以前においては、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102は起動していない状態にある。
【0084】
例えばマイクロコンピュータは、メイン電源がオンとなって、整流平滑電圧Eiが規定のレベルにまで立ち上がったことを認識すると、先ず、時点t1とされる所定のタイミングにより、図5(a)に示すようにして立ち上げ信号Vt1をLレベルからHレベルに切り換えて出力する。
これにより、時点t1において、第1コンバータ部101のコントロールIC2が起動する。つまり、第1コンバータ部101が起動を開始することになる。これに応じて、第1コンバータ部101の二次側にて得られる各二次側直流出力電圧が立ち上ることになる。つまり、例えば図5(b)に示すようにして、二次側直流出力電圧Eoは、時点t1以前では0レベルであったが、時点t1以降において、平滑コンデンサCoの充電量が増加していくのに応じて上昇するようにして立ち上がっている。そして、規定レベルに至ったとされると、以降はこの規定レベルにより定電圧制御された状態が維持される。
ただし、二次側直流出力電圧Eo4については、図5(c)に示す直流電圧E4が時点t1で立ち上がっているのにかかわらず、図5(g)に示すようにして、同様には立ち上がらない。これは、時点t1のタイミングでは、オン/オフ制御されるDCスイッチ回路6において、トランジスタQ5がオフ状態だからである。前述したように、DCスイッチ回路6では、オン/オフ制御信号である立ち上げ信号Vt3がLレベルでは、トランジスタQ5をオフ状態とするように動作する。トランジスタQ5をオフ状態であるとき、平滑コンデンサCo6には整流電流が充電されず、二次側直流出力電圧Eo4が生成されることはない。
【0085】
そして、図5(d)に示す立ち上げ信号Vt2は、上記Vt1がHレベルに変化した時点t1の後の時点t2においてHレベルに切り換わって出力される。なお、この時点t2のタイミングは、例えば時点t1にHレベルとされた立ち上げ信号Vt1に応じて、例えば二次側直流出力電圧Eoが規定レベルにまで完全に立ち上がることで、二次側直流出力電圧Eoを電源とする回路部の動作の開始が保証される時点以降となるように設定される。
【0086】
そして、立ち上げ信号Vt2がHレベルに切り換わるのに応じては、第2コンバータ部102のコントロールIC2が起動することになる。これにより、時点t2からは、図5(e)に示すようにして、二次側直流出力電圧Eo5が立ち上がることになる。
【0087】
そして、二次側直流出力電圧Eo5が規定レベルにまで完全に立ち上がって定電圧化された状態が得られている時点t3のタイミングにより、図5(f)に示すようにして、最後の立ち上げ信号Vt3がHレベルに切り換えられる。
この場合には、立ち上げ信号Vt3がHレベルとなるのに応じて、DCスイッチ回路6におけるトランジスタQ5がオン状態に切り換わることになる。これに応じて、直流電圧E4は、トランジスタQ5のドレイン−ソースを介して平滑コンデンサCo6に充電されることになり、ここではじめて、図5(g)に示すようにして二次側直流出力電圧Eo4が立ち上がることになる。
このようにして、本実施の形態では、電源起動時における二次側直流出力電圧の立ち上げ順として、図6の電源回路の場合と同等の適正なものとなるように制御している。
【0088】
なお、上記した二次側直流出力電圧の立ち上げ順を得るのにあたっては、他に次のような構成が考えられる。
つまり、DCスイッチ回路6において、トランジスタQ6のベース−エミッタ間抵抗R3に対して、時定数コンデンサを並列に接続する。そして、抵抗R4を介してトランジスタQ6のベースに入力すべきオン/オフ制御信号は、立ち上げ信号Vt3に代えて、第2コンバータ部102にて得られる、二次側直流出力電圧Eo5とするものである。
この構成では、オン/オフ制御信号である二次側直流出力電圧Eo5が所定レベルにまで立ち上がった時点から、トランジスタQ6が完全にオンとなるまでの時点は、上記時定数コンデンサと抵抗R4の時定数に応じた遅延時間が与えられることになる。そこで、この時定数コンデンサと抵抗R4の時定数について、二次側直流出力電圧Eo5が立ち上がった時点から、二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げるべき時点に対応する遅延時間が得られるように設定する。このようにすれば、図5と同等の適切なタイミングで二次側直流出力電圧Eo4を立ち上げることが可能となる。
【0089】
なお、参考までに、図1に示す電源回路において備えられる各トランスのコアの形状サイズについて記しておく。
PIT−1:EER−40
PIT−2:EER−40
VFT−1,VFT−2:EE−28
PRT:フェライトコア(15mm×15mm×20mm)
【0090】
このようにして構成される図1に示す本実施の形態の電源回路と、先行技術として示した図6の回路とを比較した場合には次のようなことがいえる。
先ず、図1に示す電源回路では、一次側において直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路を、倍電圧全波整流回路としている。この倍電圧整流回路の平滑回路系は、平滑コンデンサCiA−CiBの直列回路と平滑コンデンサCiCとを並列接続して整流電流経路を分流させている。これにより、交流入力電圧VACが正の期間において、整流ダイオードDa,Dcに流れるのは、整流電流i1が分流した整流電流i1bの成分のみとなる。また、交流入力電圧VACが負の期間においては、整流ダイオードDbには、整流電流i2が分流した整流電流i1bの成分のみが流れる。
これにより、上記各整流ダイオードに流れる整流電流のピークレベルは、例えば図6の回路における倍電圧半波整流回路よりも抑制されることになり、これらの整流ダイオードの順方向電圧降下による電力損失も低減される。そして、これにより、電源回路としての電力変換効率(ηAC→DC)が向上することになる。
【0091】
また、図6に示す回路においては、二次側直流電圧の安定化のために、スイッチング周波数制御方式に対して、降圧型コンバータを組み合わせた構成を採っているが、降圧形コンバータによるPWM制御は、例えば負荷電流の増加に応じて電力損失が増加して、電力変換効率を低下させる要因となる。これは、例えば降圧形コンバータ以外の定電圧化の手段として、3端子のシリーズレギュレータやトロイダルコアを備えるマグアンプ(磁気増幅器)の回路等を備えた場合にも同様のことがいえる。
これに対して、本実施の形態では、直交型制御トランスPRTを備えて、整流電流経路に挿入した直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRのインダクタンスを可変することで安定化を図ることとしている。直交型制御トランスPRTの被制御巻線NRにおける電力損失は少なく、被制御巻線NRのインダクタンス可変のために制御回路等が必要とする制御電力は0.4W程度となる。これによっても、電力変換効率の向上に寄与している。
例えば、図6の電源回路ではAC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が86.5%、交流入力電力が693.6Wであるのに対して、図1の電源回路では、AC−DC電力変換効率(ηAC→DC)が87.0%で0.5%向上している。また、交流入力電力は689.6Wであり4.0W低減している。
また、直交型制御トランスPRTを備える安定化のための回路構成は、低コストでもある。
【0092】
また、図1に示す回路では、倍電圧整流回路の平滑回路部を上記のようにして形成していることで、平滑コンデンサCiCについては、その両端電圧が整流平滑電圧Eiレベルとして得られるようになっている。つまり、平滑コンデンサCiCについては、図5に示す回路における平滑回路部のようにして、アッパーサイドとローアーサイドの平滑コンデンサのリップルが二重に重畳された整流平滑電圧Eiを生成することにはならない。
この結果、図1の整流回路の整流平滑電圧Eiのリップル電圧は、図5の整流回路の約1/2にまで抑制され、これに伴って、第1コンバータ部101及び第2コンバータ部102の各二次側直流出力電圧に現れるリップル電圧も約1/2に抑制されることになる。
なお、本実施の形態において、例えば平滑コンデンサCiA,CiBについては、1000μF/200V,平滑コンデンサCiCについては、560μF/400Vを選定することができる。また、図6に示す電源回路では、整流平滑電圧Eiを生成するための平滑コンデンサとして4本を備えているが、図1に示す回路では、上記平滑コンデンサCiA,CiB,CiCの3本であり、これによる回路規模の縮小、及び低コスト化も図られることになる。
【0093】
また、図1に示す電源回路では、降圧形コンバータが省略されており、ハードスイッチング動作をするコンバータが無くなっていることが分かる。本実施の形態においては、直交型制御トランスPRT及び制御回路7を備えて、直流的な制御電流供給によって二次側直流出力電圧Eo,Eo1,Eo2などの安定化を図る構成としていることで、降圧形コンバータの省略を可能としている。
これにより、図1の電源回路を形成する第1コンバータ部101、第2コンバータ部102の動作は、いわゆるソフトスイッチング動作のみとなるから、図6に示した電源回路と比較すれば、スイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
また、図6に示す電源回路では、3段の複合共振形コンバータ部が設けられているのに対して、図1に示す電源回路では、第1及び第2コンバータ部101,102の2つとしている。このようにして複合共振形コンバータ部の数が削減されることによっても、上記した回路の小型軽量化が促進される。また、ソフトスイッチング動作であるから、もともとスイッチングノイズは少ないものの、複合共振形コンバータ部の数が削減されれば、それだけスイッチングノイズも減少されることとなって、この点でのメリットも得られている。
【0094】
また、図6に示す電源回路の場合には、3組のコンバータ部201,202,203と、2組の降圧形コンバータが、それぞれ異なるスイッチング周波数で動作する構成となっていた。
これに対して、本実施の形態では、互いに異なるスイッチング周波数によって独立してスイッチング動作を実行するのは、2組のコンバータ部101,102のみとなる。コンバータ部101,102のスイッチング周波数は、定電圧化のために、例えば70KHz〜150KHzの範囲で、二次側直流出力電圧E4,Eo5のレベルに応じてそれぞれ変化する。
このようして、異なるスイッチング周波数によりスイッチング動作するコンバータの数が削減されることによっては、一次側と二次側のアース電位の干渉もそれだけ少なくなるから、電源回路の動作もより安定することとなる。
【0095】
ところで、図6に示す回路において、複合共振形コンバータとして、コンバータ部201,202,203の3つを設けているのは、図8にも示したように、時点t1,t2,t3の3段階で二次側直流出力電圧の立ち上がりタイミングを制御しなければならないことも要因となっている。
つまり、時点t1,t2,t3ごとに出力される立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3ごとに対応して、二次側直流出力電圧を立ち上げようとした場合に、これに応じて、3つの複合共振形コンバータを備え、各複合共振形コンバータのコントロールIC2の起動を、立ち上げ信号Vt1,Vt2,Vt3によりコントロールするという構成が、これまでにおいて行われてきたからである。
【0096】
これに対して、図1に示す回路では、DCスイッチ回路6を設け、立ち上げ信号Vt3によっては、このDCスイッチ回路6のオン/オフ状態を制御して、二次側直流出力電圧Eo4についての立ち上げをコントロールするようにしている。これにより、二次側直流出力電圧の立ち上げコントロールに必要なコントロールICは、1つ削減されることになる。つまり、コンバータ部を1つ削減することが可能となるものである。
【0097】
また、図6に示す電源回路の第3コンバータ部203において、二次側直流出力電圧Eo5を生成する整流回路は、センタータップが接地された二次巻線N2と、2本の高速リカバリ型の整流ダイオードDo1,Do2とから成る両波整流回路とされている。この場合、実際の二次巻線N2としては、2組の巻線をセンタータップ位置で接続するようにして形成する必要がある。また、各組の巻線は、二次側直流出力電圧Eo5としての所要のレベルに対応した巻数をそれぞれ有している必要がある。また、高速リカバリ型の整流ダイオードDo1,Do2としては、それぞれ600Vの耐圧品を選定する必要がある。
これに対して、図1に示す電源回路では、上記と同じ二次側直流出力電圧Eo5を生成するための整流回路についても、倍電圧全波整流回路としている。これにより、本実施の形態では、図6の場合と同程度のレベルの二次側直流出力電圧Eo5を生成する場合には、二次巻線N2の巻数を大幅に削減することができる。
例えば具体的には、図6に示す第3コンバータ部203では、一次巻線N1を24Tとした場合の二次巻線N2の巻数については、センタータップを中心に25T+25Tとなる。
これに対して、図1に示す第2コンバータ部102では、一次巻線N1を25Tとした場合の二次巻線N2の巻数は、13Tとなるものであり、図6の回路と比較して約1/4にまで削減される。これにより、例えば絶縁コンバータトランスPIT−2に用いるフェライトコアを、例えば先にも記述したように、EER−42からEER40として、より小型軽量なものとすることが可能になる。
なお、本実施の形態において、平滑コンデンサCi7,Ci8については、1000μF/160V,平滑コンデンサCi9については、560μF/250Vを選定することができる。
【0098】
また、本実施の形態としては、上記第2コンバータ部102における二次側の倍電圧全波整流回路の構成として、図4に示す構成を採ることもできる。
この場合には、絶縁コンバータトランスPIT−2に対して、センタータップを設けた二次巻線N2が巻装される。この場合の二次巻線N2は、同じ巻数である巻線部を2組備え、これらの巻線の接続点がセンタータップ位置となるようにして形成される。
そして、この二次巻線N2に対して、図示するようにして整流ダイオードD11〜D14から成るブリッジ整流回路DBRと2本の平滑コンデンサCo7,Co9が接続される。整流ダイオードD11〜D14には、例えば高速リカバリ型が用いられる。
【0099】
二次巻線N2の交番電圧が正極性となる半周期においては、整流電流は、平滑コンデンサCo7→整流ダイオードD13に流れて平滑コンデンサCo7を充電する成分と、整流ダイオードD12→平滑コンデンサCo9→(二次側アース)→整流ダイオードD13に流れて平滑コンデンサCo9を充電する成分とに分岐する。
また、二次巻線N2の交番電圧が負極性となる半周期の整流電流は、平滑コンデンサCo7→整流ダイオードD11に流れて平滑コンデンサCo7を充電する成分と、整流ダイオードD14→平滑コンデンサCo9→(二次側アース)→整流ダイオードD11に流れて平滑コンデンサCo9を充電する成分とに分岐する。
上記した整流電流経路によって整流電流が流れることで、平滑コンデンサCo7には、センタータップ位置で2分割された片側の巻線部の巻数に対応して励起される交番電圧の等倍に対応するレベルの両端電圧が得られる。そして、平滑コンデンサCo9に対する充電は、センタータップ位置で2分割された片側の巻線部に励起される交番電圧レベルに対して、上記平滑コンデンサCo7の両端電圧が重畳された電圧レベルによって行われる。この結果、平滑コンデンサCo9の両端電圧である二次側直流出力電圧Eo5としては、通常の両波整流回路に対して約2倍のレベルが得られることになる。
つまり、二次側直流出力電圧Eo5は、倍電圧整流動作により得られることになる。また、この場合にも、平滑コンデンサCo7,Co9には、二次巻線N2の交番電圧が正/負の両期間において充電が行われる全波整流動作となっており、従って、倍電圧全波整流動作が得られていることになる。
【0100】
また、本発明としては、これまでに説明した電源回路の構成に限定されるものではない。
例えばスイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他励式に使用可能な素子であれば、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。
また、本発明としては、自励式でハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能とされる。この場合には、スイッチング素子として例えばバイポーラトランジスタを選定することができる。
さらには、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側において二次側直流出力電圧を生成するための回路構成としても、適宜変更されて構わない。
【0101】
また、本発明に基づく電源回路としては、スイッチングコンバータ部の段数についても、例えば実施の形態として示したように2段(コンバータ部101,102)であることに限定される必要はなく、この段数は、例えば対応すべき負荷電力や、必要とされる二次側直流出力電圧の数などに応じて適宜変更されてよい。また、これらの各コンバータ部において生成する二次側直流出力電圧の数としても特に限定されるものではない。そのうえでも、本発明によっては、実施の形態において説明したように、DCスイッチ回路6に相当する回路を備える構成を採ることで、同数の二次側直流出力電圧を得る場合において必要とされるスイッチングコンバータ部の数は、先行技術に基づいて、同一の負荷条件及び二次側直流出力電圧数に対応する電源回路を構成した場合よりも少なくなるものである。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したようにして本発明の電源回路は、比較的重負荷の条件に対応するために、直流入力電圧を入力して動作する複合共振形のスイッチングコンバータ部を複数段備える構成を採っている。
そのうえで、上記直流入力電圧(整流平滑電圧)を生成するための整流回路としては、倍電圧全波整流回路としており、分岐した整流電流が整流ダイオードに流れる整流電流経路が在るようにされる。これにより、例えば倍電圧半波整流回路の場合よりも、整流ダイオードにおける電力損失は低減され、それだけ、電力変換効率の向上が図られることになる。
また、これにより、直流入力電圧のリップル電圧も低減されるので、これに応じて二次側直流電圧のリップルも低減されることになる。
また、複数の二次側直流電圧を個々に安定化するのにあたっては、スイッチングコンバータのスイッチング周波数を可変制御するスイッチング周波数制御方式と、可飽和リアクトルとしての制御トランスのインダクタンスを可変制御するインダクタンス制御方式を組み合わせることとしているが、これによって、二次側直流電圧の安定化のために、例えばハードスイッチング動作の降圧形コンバータを設ける必要はない。これにより、ノイズが低減され、また、異なるスイッチング周波数で動作するスイッチングコンバータの数が削減されることにもなるから、一次側と二次側のアース電位の干渉が少なくなってアース電位も安定し、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態のコントロールICによるスイッチング素子の駆動タイミングを示すを示す波形図である。
【図3】図1に示す電源回路に備えられる一次側の倍電圧全波整流回路の動作を示す回路図である。
【図4】図1に示す電源回路において二次側に備えられる倍電圧全波整流回路の他の回路構成例を示す回路図である。
【図5】実施の形態における二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【図6】先行技術としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図7】図6に示す電源回路の一次側に備えられる倍電圧半波整流回路の動作を示す回路図である。
【図8】図6に示す電源回路における、二次側直流出力電圧の立ち上げ制御を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 制御回路、2 コントロールIC、6 DCスイッチ回路、7 制御回路、101 第1コンバータ部、102 第2コンバータ部、Di,DBR ブリッジ整流回路、CiA,CiB,CiC,Co7,Co8,Co9 平滑コンデンサ、Q1,Q2,Q3,Q4 スイッチング素子、PIT−1,PIT−2 絶縁コンバータトランス、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp 部分共振コンデンサ、N1 一次巻線、CMC コモンモードチョークコイル、CL アクロスコンデンサ、
Claims (3)
- 商用交流電源を入力して整流平滑電圧を生成するものとされ、入力される商用交流電源の2倍に対応するとされるレベルの上記整流平滑電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力して動作するスイッチングコンバータ部を複数備え、
上記複数のスイッチングコンバータ部の各々は、
上記直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うものとされ、ハイサイドのスイッチング素子と、ローサイドのスイッチング素子とをハーフブリッジ結合して形成されるスイッチング手段と、
上記各スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される一次巻線と、該一次巻線に得られたスイッチング出力としての交番電圧が励起される二次巻線とを巻装して形成される絶縁コンバータトランスと、
少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、
上記各ハーフブリッジ回路を形成する2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子に対して並列接続された部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記各スイッチング素子がターンオン及びターンオフするタイミングに応じてのみ電圧共振動作が得られる一次側部分電圧共振回路と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して、整流動作を行うことで1以上の二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、
上記1以上の二次側直流出力電圧のうち、所要の1つの二次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記所要の1つの二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された周波数制御型定電圧制御手段と、
上記直流出力電圧生成手段により複数の二次側直流出力電圧が生成される場合において、上記周波数制御型定電圧制御手段により定電圧制御される以外の、定電圧化を必要とする所要の二次側直流出力電圧ごとに対応して設けられるもので、制御巻線と被制御巻線が巻装された可飽和リアクトルとしての制御トランスの上記被制御巻線を、二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路に挿入し、入力された二次側直流出力電圧レベルに応じて、制御巻線に流すべき制御電流レベルを可変して上記被制御巻線のインダクタンスを可変することで、この二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成されたインダクタンス制御型定電圧制御手段と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記直流出力電圧生成手段は、
入力される二次巻線に得られる交番電圧の2倍に対応するとされるレベルの上記二次側直流出力電圧を、全波整流動作を含む整流動作により生成する倍電圧全波整流回路を備えて形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記スイッチング電源回路の外部から供給される、スイッチングコンバータ部を起動させるための起動制御信号の入力に応じて、所要の二次側直流出力電圧を生成するための二次側整流電流経路をオン/オフするようにして形成されるスイッチ回路、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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JP2011166965A (ja) * | 2010-02-10 | 2011-08-25 | Sanken Electric Co Ltd | アクティブスナバ回路及び電源回路 |
-
2003
- 2003-03-03 JP JP2003055842A patent/JP2004266955A/ja active Pending
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