JP2004204284A - スパッタリングターゲット、Al合金膜および電子部品 - Google Patents

スパッタリングターゲット、Al合金膜および電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】異常放電の発生が少なく安定した状態でスパッタリングを実施することができるようなAl合金ターゲットを実現し、得られるAl合金膜厚の面内均一性を大幅に改善することを可能にするスパッタリングターゲットを提供すると共に、このスパッタターゲットを用いることにより、スパッタ面積が広い場合においても特性が均一なAl合金膜およびそのようなAl合金膜を用いた電子部品を提供する。
【解決手段】Alを主成分とし、Y、Nd、Ta、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の金属元素を含むAl合金スパッタリングターゲットであって、スパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきが20%以内であることを特徴とするスパッタリングターゲットである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリングターゲット、Al合金膜および電子部品に係り、特に液晶やLSI、PDP(プラズマディスプレイパネル)等のエレクトロニクス分野、磁気記録分野の電子機器において、均一性が優れ高特性を有するAl合金膜を形成することが可能なスパッタリングターゲット、そのターゲットのスパッタリングにより形成されるAl合金膜およびそのAl合金膜を備える電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス基板上に電気配線膜や薄膜電極を形成した薄膜デバイスとして液晶表示装置(Liquid Crystal Display:以下LCDと略記する)や薄膜センサーなどの電子機器部品が広く普及している。上記電子機器部品の電気配線膜や薄膜電極は、従来からCr,Ti,Ta,Mo,Mo−Ta等の高融点材料から成る高純度ターゲットをスパッタリングする方法で形成されている。
【0003】
液晶表示装置(LCD)は、従来のブラウン管に比較してより薄型化、軽量化、低消費電力化が図れる上に、高い解像度を有する画像が得られるため、各種画像表示装置の主要構成部品として、近年その用途が拡大しつつある。さらに表示画像の品質を高めるために、スイッチング素子として薄膜トランジスター(ThinFilm Transistor:TFT)をLCD内部に組み込んだ構造のLCDも提案され広く使用されている。上記TFT駆動タイプのLCDのゲート配線や信号配線等として用いられる配線膜,電極膜も、通常スパッタ法により形成されている。
【0004】
しかしながら、LCDの画面サイズの大型化に伴って、より低抵抗の配線膜が求められている。例えば、10インチ以上の大型LCDにおいては、10μm以下の低抵抗配線が求められている。そこで、ゲート線や信号線を構成する配線膜材料としては、低抵抗のAl配線膜が注目されている。
【0005】
上記Al配線膜によれば、低抵抗配線が実現可能であるものの、Al配線膜は配線形成後の熱処理やCVDプロセスによる473〜773K程度の加熱処理によって、ヒロックと呼ばれる小突起を生じる問題を有している。上記加熱に伴うAl膜のストレスの解放過程で、Al原子は例えば結晶粒界に沿って拡散し、このAl原子の拡散に伴って小突起(ヒロック)が生じる。このような小突起がAl配線に生じると、その後のプロセスに悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
上記LCDに要求される特性は種々あるが、低電気抵抗率、高いヒロック耐性、高いボイド耐性、高い耐食性等が特に重要視され、上記の特性に優れた半導体用電極材料およびそれを形成するためのスパッタリングターゲットが提案されている。
【0007】
例えば、Al配線を形成するターゲットに微量の遷移金属元素や希土類元素を添加することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。また、ターゲット組織および組成を均一化することも試行されている。上記の金属元素等はAlと金属間化合物を形成するため、Alのトラップ材として機能するため、前記したヒロックの形成を抑制することができる。
【0008】
【特許文献1】
再公表特許 WO97/13885号公報(第1頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のようにターゲット組織および組成を均一化するだけでは、特性的に均一なAl合金膜を効果的に量産することが困難であり、またスパッタリング時に発生する異常放電を完全には解消しえずボイド(気孔)が多い不均一な膜しか製造できず、このAl合金膜を使用した電子機器部品の品質のばらつきおよび製品歩留りを改善することは困難であるという問題点があった。
【0010】
すなわち、近年、LCDについては益々画面サイズの大型化が進んでいるが、従来のAl合金ターゲットを用いて得られたAl合金膜は、良好な面内の膜厚均一性が得られないという課題を抱えている。今後、表示画面サイズを規定するガラス基板サイズが730×920mmと大型のものが主流になってくると、大画面における画像の均一再生を実現する観点から、形成するAl合金膜の全面内における膜厚均一性が良好であるものが益々必要となってくる。
【0011】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、異常放電の発生が少なく安定した状態でスパッタリングを実施することができるようなAl合金ターゲットを実現し、得られるAl合金膜厚の面内均一性を大幅に改善することを可能にするスパッタリングターゲットを提供することを目的としており、またそのようなスパッタターゲットを用いることにより、スパッタ面積が広い場合においても特性が均一なAl合金膜およびそのようなAl合金膜を用いた電子部品を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、ターゲットの各種物性がスパッタリング操作の安定性や得られるAl合金膜の品質特性に及ぼす影響を鋭意実験によって調査確認した。その結果、特にターゲット表面のビッカース硬度やそのビッカース硬度のばらつきの大小が上記スパッタリング操作の安定性や得られるAl合金膜の品質特性に大きな影響を与えることが判明した。特にターゲット全体における硬度の平均値または硬度の場所によるばらつきを20%以内に調整することにより、従来達成することが出来なかった膜厚均一性を4%以下に低減することが初めて実現するという知見を得た。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明に係るスパッタリングターゲットは、Alを主成分とし、Y、Nd、Ta、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の金属元素を含むAl合金スパッタリングターゲットであって、スパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきが20%以内であることを特徴とする。
【0014】
また、上記スパッタリングターゲットにおいて、前記Y、Nd、Ta、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の金属元素の合計含有量が0.3〜7原子%であることが好ましい。
【0015】
さらに、上記スパッタリングターゲットのスパッタ面の面積が0.1m以上であるような大型のターゲットとして、1回のスパッタリング操作で広面積の基板上にAl合金膜を形成する場合に、全面積に亘って品質特性が均一な膜が形成できるので極めて有利である。
【0016】
また、上記スパッタリングターゲットにおいて、前記ビッカース硬度のばらつきが10%以内であることがさらに好ましい。
【0017】
さらに、上記スパッタリングターゲットにおいて、前記ビッカース硬度の平均値が30以上80以下であることが、スパッタリング操作時の安定した放電状態を長期にわたって継続する上で好ましい。
【0018】
本発明に係るAl合金膜は、上記のようにビッカース硬度及びそのばらつき、ビッカース硬度の平均値および合金組成等を調整したスパッタリングターゲットを使用し、スパッタ法に準拠して成膜して構成される。
【0019】
また、上記Al合金膜において、該Al合金膜の膜厚のばらつきが4%以内であることが、膜特性の均一化を図る上でより好ましい。
【0020】
さらに、本発明に係る電子部品は、上記のように調製したAl合金膜を具備することを特徴とする。
【0021】
本発明に係るスパッタリングターゲットは、Alを主成分とする一方、Y、Nd、Ta、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の金属元素を従成分として所定量含有する。これらの金属元素はスパッタリングによって基板上に形成されたAl合金膜と基板との熱膨張差に起因する圧縮応力を緩和し、Al合金膜から電子部品を製造する際に必要な熱処理を実施しても前記のような小突起(ヒロック)や微小な凹部(ボイド、気孔)の発生を防止し平坦で均一なAl合金膜を形成するために添加される成分である。
【0022】
上記Y、Nd等の金属成分のターゲットにおける合計含有量は0.3〜7原子%の範囲であることが好ましい。この金属成分のターゲットにおける合計含有量が0.3原子%未満のターゲットを使用して形成した薄膜材料は、LCD製造工程途中の電極用薄膜蒸着後の熱処理工程において300〜400℃程度の熱履歴を受けるために、前記したようなヒロックといわれる微小な凸部が欠陥として発生し易くなる。このヒロックは、基板と薄膜との熱膨張係数の相違に起因する圧縮応力が駆動力となり発生すると考えられる。また、ボイドといわれる微小な凹部が薄膜の表面に発生し易くなる。このボイドは、基板と薄膜との熱膨張係数の相違に起因する引張応力が駆動力となって発生すると考えられる。上記ヒロックやボイドなどの欠陥が発生すると、電極用薄膜の上部に他の膜を平坦に積層し得なくなる。また、絶縁体薄膜を上部に積層させた電極用薄膜にヒロックが発生すると、このヒロックが上部の絶縁体薄膜を突き破り、層間における電気的な短絡(絶縁不良)を引き起こすという問題が生じる。更に、電極用薄膜にボイドが発生すると、このボイド周辺において電気的な断線(導通不良)を引き起こすという問題が生じるためである。
【0023】
一方、上記金属成分のターゲットにおける合計含有量が7原子%を超えたターゲットを使用して形成した薄膜材料では、電気抵抗率が6μΩcmを超えてしまい、低電気抵抗率が要求されるLCDの電極用薄膜として使用することは極めて困難になるからである。
【0024】
また、本発明に係るAl合金スパッタリングターゲットにおいて、スパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきは20%以内に抑制することが重要である。上記ビッカース硬度のばらつきが20%を超えるように過大になると、高面積のガラス基板全面に形成するAl合金膜の各部位における厚さが異なることになり、ガラス基板全面に亘って特性が均一なAl合金膜(スパッタ膜)を形成することが困難になる。
【0025】
なお、従来のように直径が300mm程度までの小面積(0.07m)の小型ターゲットでは膜形成面積も狭いために、膜厚さのばらつきは大きくならない。しかしながら、LCDの大画面化に対応して、より大型のターゲットを用いて一度の成膜操作で高面積の薄膜を形成する場合には、上記膜厚のばらつきに対する考慮が必須となる。特に、上記スパッタリングターゲットのスパッタ面の面積が0.1m以上であるような大型のターゲットを使用して、1回のスパッタリング操作で広面積の基板上にAl合金膜を形成する場合に、上記のようにターゲットのスパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきを20%以内に抑制することにより、全面積に亘って品質特性が均一な膜が形成できるので極めて有利である。特に、スパッタ面の面積が0.5m以上である場合には、面内の膜厚均一性を高める効果がより顕著になるので好ましい。
【0026】
上記観点から、スパッタリングターゲットのスパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきは10%以内であることがより好ましく、さらには5%以内であることがさらに好ましい。
【0027】
また、上記スパッタリングターゲットにおいて、スパッタリング操作時の異常放電の発生を防止し、安定した放電状態を長期にわたって継続させるために、ターゲットのビッカース硬度の平均値が30以上80以下であることが好ましい。このビッカース硬度Hvの平均値が80を超えると、ターゲット表面全体が硬いことになり、Ar+イオンが衝突しても、ターゲット構成原子などを弾き出し放出する効率が低下してしまい、ターゲット表面にAr+イオンが帯電し、異常放電を引き起こし易くなる。また、逆に、ビッカース硬度の平均値が30未満と過小になると、衝突するAr+イオンがターゲット表面に打ち込まれて埋没してしまい、ターゲット表面が+に帯電し、同様に異常放電を引き起こし易くなる。
【0028】
ここで、上記ターゲットのビッカース硬度の平均値およびそのスパッタ表面での場所によるばらつきは、図1に示すスパッタリングターゲットの17点から採取される試料片に基づいて測定される。すなわち、円盤状のターゲットの中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線の中心から外周部に向かって90%の距離の位置(位置2〜9)および中心から50%の距離の位置(位置10〜17)とから、それぞれ試料片を採取した。
【0029】
そして、ビッカース硬度の測定は、ターゲット(TG)から切り出した10mm角程度の試料片を#1000のサンドペーパー(紙ヤスリ)で研磨し、さらにバフ研磨を実施して表面を鏡面状態にしたものを、ビッカース硬さサンプルとし、ビッカース圧痕試験機(島津製作所製Shimadzu HMV200型)を用い荷重200g重(荷重負荷時間10sec)を付加し、各試料片について10回以上硬さ測定を行いその平均値をその部位のビッカース硬度平均値とした。
【0030】
また、ターゲット表面全体としてのビッカース硬さのばらつきは、上記のようにして得た17点のビッカース硬度平均値のうちの最大値および最小値から下記(1)式に基づいて求めた値とする。
【0031】
【数1】
Figure 2004204284
【0032】
また、上記のようなターゲットを用いて成膜したAl合金膜の膜厚のばらつきについても、図1に示すターゲットにおける試料片の採取位置と同様の対応する17点から採取した膜試料片の各厚さを測定し、その最大値および最小値から上記(1)式に基づいて求めた値とする。
【0033】
上記のようにスパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきが20%以内であるような本発明のスパッタリングターゲットは、例えば、以下に示すような工程を組み合わせたプロセスを経て製造することができる。
【0034】
工程1:(i)AlおよびY,Ndなどの所定の第2成分を含有または混合した原料を溶融後、分散凝固せしめたガスアトマイズ粉、(ii)Al粉とY,Ndなどの第2成分粉末との混合粉、または(iii)スプレーフォーミング粉などのターゲット原料粉を調整する。
【0035】
工程2:(i)ホットプレス法または(ii)熱間静水圧法(HIP)でターゲット原料粉を焼結する。ここで焼結温度は500〜600℃が好適である。
【0036】
工程3:焼結完了直後において、焼結温度から冷却して200℃に達するまでの温度範囲における冷却速度が1℃/min以下となるように徐冷する。この徐冷操作により、ターゲット組織の再結晶化が進み、ターゲット全体におけるビッカース硬度の平均値を適正な範囲に調整できると共に、ターゲット全面におけるビッカース硬度の場所によるばらつきを20%以内に調整することが可能になる。なお、上記徐冷処理において、徐冷温度範囲を200℃までとした理由は、Al合金の再結晶温度は200℃より高いので、それ以下の温度範囲(200℃〜室温)での徐冷は実質的な効果が得られないからである。
【0037】
工程4:必要に応じ、得られたターゲット焼結体を所定形状に仕上げるための塑性加工を実施する。
【0038】
工程5:ターゲット組織の再結晶化による均質化を促進するために、ターゲット焼結体を温度300〜400℃で焼鈍する再結晶化アニール処理を実施する。
【0039】
工程6:再結晶化アニール処理直後のターゲット焼結体の冷却速度を1℃/min以下として徐冷する。この徐冷操作により、ターゲット全面におけるビッカース硬度の場所によるばらつきをさらに低減することが可能になる。
【0040】
上記工程3における徐冷操作および工程6における徐冷操作のどちらか一方を実施した場合においては、ターゲット全面におけるビッカース硬度のばらつきを20%以下に低減することが可能である。
【0041】
特に、上記工程3および工程6における徐冷操作の両方を実施することにより、ターゲット全面におけるビッカース硬度のばらつきを10%以下に低減することが可能になる。
【0042】
上記構成に係るスパッタリングターゲットによれば、スパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきが20%以内に規定調整されているため、このスパッタリングターゲットを使用してスパッタリング操作を実施して広面積の基板上に成膜した場合でも、スパッタ面の各部位における放電状態が均一で常に安定しており、面内の膜厚均一性に優れたAl合金膜を作製することができる。従って、このようなスパッタリングターゲットを用いて成膜した本発明のAl合金膜及び電子部品によれば、製品歩留まりを大幅に向上させることが可能となる。
【0043】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について下記の実施例および比較例を参照して具体的に説明する。なお、以下の各実施例および比較例において、実施例および比較例の試料番号に付されたA、B、Cの記号は、それぞれターゲットの製造方法の差異を表す。すなわち、記号Aは所定組成または配合比率を有する金属材料を真空溶解法により溶解し、この溶湯をガスアトマイズ法により微細に分散後、凝固せしめた合金粉末とした材料から粉末冶金法によりスパッタリングターゲットを製作したことを意味する。
【0044】
また、記号Bは各金属粉末をボールミルにより所定比率で混合した混合粉体材料を用いて粉末冶金法によりスパッタリングターゲットを製作したことを意味する。一方、記号Cはスプレーフォーミング法によりAl合金インゴットとした材料を用いスパッタリングターゲットを作製したことを示す。ここで、上記スプレーフォーミング法とは、不活性ガス雰囲気中のチャンバー内でAl合金溶湯流に高圧の不活性ガスを吹き付けて紛霧化し、半凝固状態の紛霧化粒子を受け皿に堆積させてインゴットを作製する方法である。
【0045】
(実施例Aおよび比較例A)
Alを主成分とし、表1に示すYおよびNdを添加した組成の電解材料を真空溶解し、得られた合金溶湯をガスアトマイズ法により分散凝固せしめて各合金粉末を作製した。その後、得られた各合金粉末を篩分けし、粒度選別を実施した。この合金粉末をカーボン製成形型にセットし、真空度2×10−2Pa、昇温速度5℃/分、焼結温度550℃で、焼結圧力10MPaで5時間ホットプレス処理を実施してターゲット焼結体を調製した。
【0046】
各ターゲット焼結体について、ホットプレス完了後に、焼結温度から200℃までの温度範囲において表1に示す降温速度に設定して徐冷処理または急冷処理(降温速度:>3℃/min)を実施した(>3℃/minは3℃/min以上を示す)。また、200℃から室温までは、Ar雰囲気中で冷却ファンにより強制冷却を実施した。
【0047】
得られた各ターゲット焼結体を鍛造、圧延して所定の円盤形状に加工した後に、さらに温度350℃で5hrの再結晶アニ−ル処理を実施し、その直後に表1に示す降温速度で徐冷処理または急冷処理(降温速度:>3℃/min)を実施した。その後、機械加工して直径400mm×厚さ16mm(スパッタ面の面積:0.125m)のスパッタリングターゲットを作製した。
【0048】
このように調製した各実施例Aおよび比較例Aに係るターゲットについて、前記の測定計算方法にしたがって、ビッカース硬度の平均値およびそのばらつきを測定し、表1に示す結果を得た。
【0049】
また、これらのスパッタリングターゲットを用い、スパッタ法により直径300mmのガラス基板上に合金薄膜を形成した。このスパッタリング条件は、到達真空度が1×10−5Paであり、放電パワーが10W/cmであり、基板間距離は40mmとして膜厚500nmの合金薄膜を形成した。そして、ガラス基板全面に形成された合金薄膜について、図1に示す17箇所の測定ポイント毎に膜厚を測定し、その最大値および最小値から前記(1)式にしたがって膜厚のばらつきを算出した。算出結果を表1に示す。
【0050】
(実施例Bおよび比較例B)
Alを主成分とし、表1に示すYおよびNdなどの第2成分を添加組成とし、平均粒径が50μmの金属粉末をAr雰囲気中で24時間ボールミル混合を実施して各ターゲット原料混合粉末を調製した。次に各原料混合粉末をカーボン製の成形型にセットし、真空度が2×10−2Paの雰囲気中で、昇温速度を5℃/分に設定して加熱し、焼結圧力を10MPaとして温度550℃で5時間保持することにより、ホットプレス処理を実施した。
【0051】
各ターゲット焼結体について、ホットプレス処理完了後に、焼結温度から200℃までの温度範囲において表1に示す降温速度に設定して徐冷処理または急冷処理(降温速度:>3℃/min)を実施した。また、200℃から室温までは、Ar雰囲気中で冷却ファンにより強制冷却を実施した。
【0052】
得られた各ターゲット焼結体を鍛造加工および圧延加工して所定の円盤形状に加工した後に、さらに温度350℃で5hrの再結晶アニ−ル処理を実施し、その直後に表1に示す降温速度で徐冷処理または急冷処理(降温速度:>3℃/min)を実施した。その後、機械加工して直径400mm×厚さ16mm(面積:0.125m)のスパッタリングターゲットを作製した。
【0053】
このように調製した各実施例Bおよび比較例Bに係るターゲットについて、実施例Aと同様な測定計算方法にしたがって、ビッカース硬度の平均値およびそのばらつきを測定すると共に、これらのスパッタリングターゲットを用い、実施例Aと同様なスパッタリング条件で、ガラス基板上に膜厚500nmの合金薄膜を形成した。そして、ガラス基板全面に形成された合金薄膜について、図1に示す17箇所の測定ポイント毎に膜厚を測定し、その最大値および最小値から前記(1)式にしたがって膜厚のばらつきを算出した。算出結果を表1に示す。
【0054】
(実施例Cおよび比較例C)
Alを主成分とし、表1に示すYおよびNdなどの第2成分を添加組成とするインゴットをスプレーフォーミング法により作製した。次に、得られた各スプレーフォーミングインゴットを密封缶に挿入し挿入口を封止した後に、加圧圧力を100MPaに設定し温度550℃で5時間熱間静水圧プレス処理(キャニング−HIP処理)を実施して緻密化した。
【0055】
次に各ターゲット焼結体について、HIP処理完了後に、HIP処理温度から200℃までの温度範囲において表1に示す降温速度に設定して徐冷処理または急冷処理(降温速度:>3℃/min)を実施した。また、200℃から室温までは、Ar雰囲気中で冷却ファンにより強制冷却を実施した。
【0056】
得られた各ターゲット焼結体を鍛造加工および圧延加工して所定の円盤形状に加工した後に、さらに温度350℃で5hrの再結晶アニ−ル処理を実施し、その直後に表1に示す降温速度で徐冷処理または急冷処理(降温速度:>3℃/min)を実施した。その後、機械加工して直径400mm×厚さ16mm(面積:0.125m)のスパッタリングターゲットを作製した。
【0057】
このように調製した各実施例Cおよび比較例Cに係るターゲットについて、実施例Aと同様な測定計算方法にしたがって、ビッカース硬度の平均値およびそのばらつきを測定すると共に、これらのスパッタリングターゲットを用い、実施例Aと同様なスパッタリング条件で、ガラス基板上に膜厚500nmの合金薄膜を形成した。そして、ガラス基板全面に形成された合金薄膜について、図1に示す17箇所の測定ポイント毎に膜厚を測定し、その最大値および最小値から前記(1)式にしたがって膜厚のばらつきを算出した。算出結果を下記表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 2004204284
【0059】
表1に示す結果から明らかなように、ホットプレス後の降温速度および再結晶アニール処理後の降温速度を1℃/min以下に設定して製作した実施例A−1〜実施例C−4に係るスパッタリングターゲット全体のビッカース硬度のばらつきは全ての実施例において20%以下となり、優れた均一性を有することが確認できた。均一な組成のアトマイズ紛を原料として使用して製造された実施例Aおよび比較例Aのスパッタリングターゲットを比較しても、実施例Aのように徐冷をすることによって、応力のひずみが緩和され、ビッカース硬度のばらつきが小さくなる効果がある。
【0060】
また、上記の各実施例に係るスパッタリングターゲットを用いて、成膜した各Al合金膜の面内の膜厚ばらつきも1.8〜3.9%と全て4%以下となり、非常に良好な結果を示した。特に、実施例Aの合金粉末法、実施例Cのスプレーフォーミング法により作製したターゲットを用いて、成膜したAl合金膜は面内の膜厚ばらつきが1〜2%代の膜が多く非常に良好な結果を示した。
【0061】
一方、比較例A−1〜比較例C−2のように、焼結後の降温速度を制御せずに、Ar雰囲気中で冷却ファンにより強制冷却(急冷)を行ったスパッタリングターゲットにおいては、ビッカース硬度のばらつきが全ての比較例において20%以上であった。また、上記の各比較例に係るスパッタリングターゲットを用いて、成膜したAl合金膜の面内の膜厚ばらつきは、5.6〜7.3%と全て5%以上であった。
【0062】
これらの結果より、再結晶アニール処理後の降温速度を1℃/min以下に制御して徐冷することにより、スパッタリングターゲット表面のビッカース硬度のばらつきが低減され、このスパッタリングターゲットを用いて成膜したAl合金膜の膜厚のばらつきも低減でき、広面積の基板上にAl合金膜を形成した場合においても品質特性にむらの無い均一な薄膜を効率的に形成できることが判明した。
【0063】
なお、上記各実施例においては、Alを主成分としYおよびNdを第2成分として添加したAl合金製ターゲットを例にとって説明したが、第2成分として他のTa、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の元素を添加した場合においても、同様な結果が得られている。
【0064】
(実施例A−1´および比較例A−1´)
スパッタリングターゲットのスパッタ面の大きさを530mm×700mm(スパッタ面の面積0.371m)とした以外は実施例A−1、比較例A−1と同様に処理して実施例A−1´、比較例A−1´のターゲットとした。ガラス基板のサイズを360mm×460mmのものを用意して、実施例A−1と同様に成膜した。さらに実施例A−1と同様の方法を用いて、ターゲットの特性および膜厚のばらつきを測定した。その結果を下記表2に示す。
【0065】
【表2】
Figure 2004204284
【0066】
上記表2から明らかなように、本実施例に係るスパッタリングターゲットは大型化したとしてもビッカース硬度のばらつきは小さい。このようなターゲットを用いて成膜したAl合金膜は、その膜厚のばらつきも小さくて済むことが判明した。このような結果を鑑みると、本実施例は大型のディスプレイ等の電子部品に特に有効であると言える。
【0067】
【発明の効果】
以上説明の通り、本発明に係るスパッタリングターゲットによれば、スパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきが20%以内に規定調整されているため、このスパッタリングターゲットを使用してスパッタリング操作を実施して広面積の基板上に成膜した場合でも、スパッタ面の各部位における放電状態が均一で常に安定しており、面内の膜厚均一性に優れたAl合金膜を作製することができる。従って、このようなスパッタリングターゲットを用いて成膜した本発明のAl合金膜及び電子部品によれば、製品歩留まりを大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るスパッタリングターゲットのスパッタ面におけるビッカース硬度を測定するための試料片の採取位置またはターゲットによって形成されたAl合金膜の膜厚を測定する位置を示す平面図。
【符号の説明】
1〜17 試料片の採取位置またはAl合金膜厚の測定位置。

Claims (8)

  1. Alを主成分とし、Y、Nd、Ta、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の金属元素を含むAl合金スパッタリングターゲットであって、スパッタ表面におけるビッカース硬度のばらつきが20%以内であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. 請求項1記載のスパッタリングターゲットにおいて、前記Y、Nd、Ta、Ti、Zr、Cr、Mn、W、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Si、Geから選択される少なくとも1種の金属元素の合計含有量が0.3〜7原子%であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  3. 請求項1または2記載のスパッタリングターゲットにおいて、該スパッタリングターゲットのスパッタ面の面積が0.1m以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のスパッタリングターゲットにおいて、前記ビッカース硬度のばらつきが10%以内であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のスパッタリングターゲットにおいて、前記ビッカース硬度の平均値が30以上80以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなるAl合金膜。
  7. 請求項6記載のAl合金膜において、該Al合金膜の膜厚のばらつきが4%以内であることを特徴とするAl合金膜。
  8. 請求項6または7記載のAl合金膜を具備することを特徴とする電子部品。
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