JP2019131850A - 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット - Google Patents

積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット Download PDF

Info

Publication number
JP2019131850A
JP2019131850A JP2018013605A JP2018013605A JP2019131850A JP 2019131850 A JP2019131850 A JP 2019131850A JP 2018013605 A JP2018013605 A JP 2018013605A JP 2018013605 A JP2018013605 A JP 2018013605A JP 2019131850 A JP2019131850 A JP 2019131850A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
alloy
less
atomic
oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018013605A
Other languages
English (en)
Inventor
悠人 歳森
Yuto TOSHIMORI
悠人 歳森
野中 荘平
Sohei Nonaka
荘平 野中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2018013605A priority Critical patent/JP2019131850A/ja
Publication of JP2019131850A publication Critical patent/JP2019131850A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Electrodes Of Semiconductors (AREA)

Abstract

【課題】5nm以下の薄い膜厚のAg合金膜を有し、電気特性及び光学特性に優れ、透明導電配線膜あるいは透明電極に特に適した積層膜を提供する。【解決手段】Ag合金膜11と、このAg合金膜11の一方の面又は両面に積層された透明導電酸化物膜12と、を備えた積層膜10であって、Ag合金膜11は、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされ、Ag合金膜11の膜厚が3nm以上5nm以下の範囲内とされ、積層膜10のシート抵抗が40Ω/□以下とされるとともに、積層膜10の波長380nmから780nmにおける平均透過率が90%以上とされ、面内の複数の箇所で測定されたシート抵抗の平均値μRと標準偏差σRとによって定義されるシート抵抗の分布DR=(σR/μR)×100が20%以下とされている。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、ディスプレイあるいはタッチパネル等の透明導電配線膜あるいは透明電極として利用可能な積層膜、及び、この積層膜を構成するAg合金膜を成膜する際に用いられるAg合金スパッタリングターゲットに関するものである。
例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、タッチパネル等においては、配線として、例えば特許文献1−3に示すように、透明導電酸化物膜とAg又はAg合金からなるAg膜との積層構造とされた積層膜が適用されている。この積層膜には、可視光域の光の透過率が高く、かつ、電気抵抗の低いものが要求される。
また、ガラス基板等にAg又はAg合金からなるAg膜を成膜する場合には、例えば特許文献4に開示されているように、Ag又はAg合金からなるスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法が広く利用されている。
特開平09−291356号公報 特開平10−239697号公報 特開2016−040411号公報 特開2016−164305号公報
ところで、最近では、ディスプレイあるいはタッチパネル等においては、配線及び電極の微細化がさらに進められており、さらに、大画面化によって配線及び電極の長さが長くなってきており、透明導電配線膜あるいは透明電極として、従来にも増して電気抵抗が低く、かつ、可視光域の透過率に優れた積層膜が求められている。すなわち、この積層膜には、優れた電気特性及び光学特性が求められている。
ここで、透明導電酸化物膜とAg又はAg合金からなるAg膜との積層構造とされた積層膜において、さらなる電気抵抗の低下及び透過率の向上を図るためには、Ag又はAg合金からなるAg膜の膜厚を薄くする必要がある。
しかしながら、単にAg膜を薄くした場合には、Agが凝集しやすいため、Ag膜が不連続膜となってしまい、電気抵抗が増加してしまうといった問題があった。
また、Agの凝集によって、かえって透過率が大幅に低下してしまうといった問題があった。
特に、膜厚を5nm以下とすると、Agが凝集してAg膜が不連続膜となりやすく、電気特性及び光学特性に優れた積層膜を得ることができなかった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、5nm以下の薄い膜厚のAg合金膜を有し、電気特性及び光学特性に優れ、透明導電配線膜あるいは透明電極に特に適した積層膜、及び、この積層膜を構成するAg合金膜を成膜する際に用いられるAg合金スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の積層膜は、Ag合金膜と、このAg合金膜の一方の面又は両面に積層された透明導電酸化物膜と、を備えた積層膜であって、前記Ag合金膜は、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされ、前記Ag合金膜の膜厚が3nm以上5nm以下の範囲内とされ、前記積層膜のシート抵抗が40Ω/□以下とされるとともに、前記積層膜の波長380nmから780nmにおける平均透過率が90%以上とされ、面内の複数の箇所で測定された前記シート抵抗の平均値μと標準偏差σとによって定義されるシート抵抗の分布D=(σ/μ)×100が、20%以下とされていることを特徴としている。
本発明の積層膜によれば、前記Ag合金膜は、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含んでいるので、Agの拡散がこれらの元素によって抑制され、Ag合金膜の膜厚を3nm以上5nm以下と薄く形成した場合であっても、Agの凝集を抑制することができ、Ag合金膜が不連続膜となることを抑制できる。
また、前記積層膜のシート抵抗が40Ω/□以下とされるとともに、前記積層膜の波長380nmから780nmにおける平均透過率が90%以上とされているので、電気特性及び光学特性に優れており、透明導電配線膜あるいは透明電極に特に適している。
そして、面内の複数の箇所で測定された前記シート抵抗の平均値μと標準偏差σとによって定義されるシート抵抗の分布D=(σ/μ)×100が、20%以下とされているので、積層膜の面内においてシート抵抗等の特性が安定している。すなわち、Ag合金膜の膜厚を3nm以上5nm以下と薄く形成した場合であっても、比較的均一な膜厚のAg合金膜が形成されていることになる。
ここで、本発明の積層膜においては、前記Ag合金膜は、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされている構成としてもよい。
この場合、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含んでいるので、積層膜の耐環境性をより向上させることが可能となる。一方、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされているので、積層膜の電気特性及び光学特性を確保することができる。
また、本発明の積層膜においては、前記透明導電酸化物膜は、In酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Al酸化物、Ga酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含む構成としてもよい。
この場合、Ag合金膜に積層される前記透明導電酸化物膜が、In酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Al酸化物、Ga酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含んでいるので、前記透明導電酸化物膜における電気特性及び光学特性に優れており、積層膜全体としての光学特性及び電気特性を向上させることができる。
本発明のAg合金スパッタリングターゲットは、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされ、さらに、結晶粒径の平均値が200μm以下であり、スパッタ面の複数の箇所で測定された結晶粒径の平均値μGSと結晶粒径の標準偏差σGSとによって定義される結晶粒径の分布DGS=(σGS/μGS)×100が、25%以下とされていることを特徴としている。
この構成のAg合金スパッタリングターゲットによれば、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされているので、Agの拡散がこれらの元素によって抑制され、Ag合金膜の膜厚を3nm以上5nm以下と薄く形成した場合であっても、Agの凝集を抑制することができ、比較的均一な膜厚のAg合金膜を形成することが可能となる。
また、結晶粒径の平均値が200μm以下であり、スパッタ面の複数の箇所で測定された結晶粒径の平均値μGSと結晶粒径の標準偏差σGSとによって定義される結晶粒径の分布DGS=(σGS/μGS)×100が、25%以下とされているので、スパッタ面全体でスパッタレートが比較的一定となり、3nm以上5nm以下の膜厚のAg合金膜を安定して成膜することができる。
ここで、本発明のAg合金スパッタリングターゲットにおいては、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされている構成としてもよい。
この場合、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含んでいるので、成膜したAg合金膜の耐環境性をより向上させることが可能となる。一方、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされているので、成膜したAg合金膜の電気特性及び光学特性を確保することができる。
本発明によれば、5nm以下の薄い膜厚のAg合金膜を有し、電気特性及び光学特性に優れ、透明導電配線膜あるいは透明電極に特に適した積層膜、及び、この積層膜を構成するAg合金膜を成膜する際に用いられるAg合金スパッタリングターゲットを提供することが可能となる。
本発明の実施形態である積層膜の断面説明図である。 本発明の実施形態である積層膜の面内におけるシート抵抗の測定位置を示す説明図である。 本発明の実施形態であるAg合金スパッタリングターゲットのスパッタ面における結晶粒径の測定位置を示す説明図である。 本発明の他の実施形態である積層膜の断面説明図である。 本発明の他の実施形態である積層膜の断面説明図である。 本発明の他の実施形態である積層膜の断面説明図である。 円板型スパッタリングターゲットにおけるスパッタ面の結晶粒径の測定位置を示す説明図である。 円筒型スパッタリングターゲットにおけるスパッタ面の結晶粒径の測定位置を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態である積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲットについて説明する。
本実施形態である積層膜10は、各種ディスプレイ及びタッチパネルの透明導電配線膜あるいは透明電極として使用されるものである。
<積層膜>
本実施形態である積層膜10は、図1に示すように、ガラス等からなる基板1の一面側に成膜されたAg合金膜11と、このAg合金膜11の両面にそれぞれ形成された透明導電酸化物膜12と、を備えている。
Ag合金膜11は、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされている。
なお、Ag合金膜11は、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされていてもよい。
また、このAg合金膜11の膜厚は、3nm以上5nm以下の範囲内とされている。
透明導電酸化物膜12は、例えば、In酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Al酸化物、Ga酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含む透明導電酸化物で構成されている。具体的には、In−Sn酸化物(ITO)、Al−Zn酸化物(AZO)、In−Zn酸化物(IZO)、Zn−Sn酸化物(ZTO)、Zn−Sn−Al酸化物(AZTO)、Ga−Zn酸化物(GZO)、Zn−Y酸化物(ZYO)、Ga−Zn−Y酸化物(GZYO)等が挙げられる。
また、この透明導電酸化物膜12の膜厚は 例えば5nm以上50nm以下の範囲内とされている。
そして、本実施形態である積層膜10においては、シート抵抗が40Ω/□以下とされている。
また、積層膜10の面内の複数の箇所で測定されたシート抵抗の平均値μと標準偏差σとによって定義されるシート抵抗の分布D=(σ/μ)×100が、20%以下とされている。
さらに、本実施形態である積層膜10においては、波長380nmから780nmにおける平均透過率が90%以上とされている。
ここで、本実施形態である積層膜10において、成分組成、シート抵抗、平均透過率を、上述のように規定した理由について説明する。
(Cu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上)
上述のCu、Sn、Inといった元素は、Ag原子の拡散移動を抑制し、Ag合金膜11におけるAgの凝集を抑制する作用効果を有している。
ここで、Cu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上の元素の合計含有量が3.0原子%未満の場合には、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Cu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上の元素の合計含有量が15.0原子%を超える場合には、シート抵抗等の電気特性及び透過率等の光学特性が不十分となるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、Ag合金膜11におけるCu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上の合計含有量を、3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内に設定している。
なお、Ag原子の拡散移動を抑制してAg合金膜11におけるAgの凝集をさらに抑制するためには、Ag合金膜11におけるCu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上の合計含有量の下限を4.0原子%以上とすることが好ましく、5.0原子%以上とすることがさらに好ましい。
一方、シート抵抗等の電気特性及び透過率等の光学特性を確実に確保するためには、Ag合金膜11におけるCu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上の合計含有量の上限を12.0原子%以下とすることが好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
(Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素)
上述のPd、Pt、Auといった元素は、Ag合金膜11の耐環境性(熱湿環境への耐性)を向上させる作用効果を有する。このため、Ag合金膜11の耐環境性が求められる場合には、適宜、添加することが好ましい。
ここで、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素の合計含有量が0.05原子%未満の場合には、上述の作用効果を十分に奏することができないおそれがある。一方、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%を超える場合には、シート抵抗等の電気特性及び透過率等の光学特性が不十分となるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、Ag合金膜11において、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を添加する場合には、Cu、Sn、Inから選択される一種又は二種以上の合計含有量を0.05原子%以上とし、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量を15.0原子%以下としている。
なお、Ag合金膜11の耐環境性(熱湿環境への耐性)をさらに向上させるためには、Ag合金膜11におけるPd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素の合計含有量の下限を0.1原子%以上とすることが好ましく、0.2原子%以上とすることがさらに好ましい。
一方、シート抵抗等の電気特性及び透過率等の光学特性を確実に確保するためには、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量の上限を12.0原子%以下とすることが好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
なお、上述のPd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素は、不純物として含有される場合には、0.05原子%未満で含有してもよい。
(Ag合金膜11の膜厚)
積層膜10においては、Ag合金膜11の膜厚を薄くすることで透過率を向上させることが可能となる。
ここで、Ag合金膜11の膜厚が3nm未満の場合には、Ag合金膜11が島状なって不連続となり、電気抵抗が大幅に上昇する。また、均一な膜が形成されないため、透過率も大幅に低下することになる。一方、Ag合金膜11の膜厚が5nmを超えると、透過率が不十分となるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、Ag合金膜11の膜厚を3nm以上5nm以下の範囲内に設定している。
(シート抵抗)
本実施形態においては、積層膜10のシート抵抗が40Ω/□以下とされているので、電気特性に優れており、透明導電配線膜、透明電極として特に適している。
そして、面内の複数の箇所で測定されたシート抵抗の平均値μと標準偏差σとによって定義されるシート抵抗の分布D=(σ/μ)×100が、20%以下とされている。なお、本実施形態においては、図2に示すように、積層膜10の面内において、対角線が交差する交点(1)と、各対角線上の角部(2)、(3)、(4)、(5)の5点でそれぞれシート抵抗の測定を行い、シート抵抗の平均値μと標準偏差σと分布Dとを算出した。
このようにして算出されたシート抵抗の分布Dが20%以下とされているので、Ag合金膜11が不連続膜とならず、比較的に均一な膜厚で形成されていることになる。
(平均透過率)
本実施形態においては、積層膜10の波長380nmから780nmにおける平均透過率が90%以上とされているので、光学特性に優れており、透明導電配線膜、透明電極として特に適している。
<Ag合金スパッタリングターゲット>
次に、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20について説明する。このAg合金スパッタリングターゲット20は、上述した本実施形態である積層膜10を構成するAg合金膜11を成膜するために用いられるものである。
なお、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20において、比較的大型の基板1に対して成膜を行う場合には、スパッタ面の面積が0.25m以上であることが好ましい。
本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20は、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされている。
なお、Ag合金膜11は、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされていてもよい。
そして、Ag合金スパッタリングターゲット20は、結晶粒径の平均値が200μm以下であり、スパッタ面の複数の箇所で測定された結晶粒径の平均値μGSと結晶粒径の標準偏差σGSとによって定義される結晶粒径の分布DGS=(σGS/μGS)×100が、25%以下とされている。
ここで、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20において、成分組成、結晶粒径を、上述のように規定した理由について説明する。
(成分組成)
本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20においては、上述のAg合金膜11を成膜するものであるから、Ag合金膜11の成分組成に応じて設定される。
よって、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20においては、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素の含有量は、合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲とされる。
また、成膜したAg合金膜11の耐環境性を向上させる際には、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされている。
(結晶粒径)
本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20においては、結晶粒径の平均値を200μm以下とすることにより、スパッタが進行した場合であってもスパッタ面の表面粗さが粗くなることを抑制できる。これにより、スパッタ時の異常放電の発生を抑え、安定してスパッタ成膜を行うことが可能となる。
そして、スパッタ面の複数の箇所で測定された結晶粒径の平均値μGSと結晶粒径の標準偏差σGSとによって定義される結晶粒径の分布DGS=(σGS/μGS)×100が、25%以下とされているので、スパッタ面全体でスパッタレートが比較的一定となり、3nm以上5nm以下の膜厚のAg合金膜11を安定して成膜することができる。
なお、本実施形態においては、図3に示すように、Ag合金スパッタリングターゲット20のスパッタ面において、対角線が交差する交点(1)と、各対角線上の角部(2)、(3)、(4)、(5)の5点で結晶粒径の測定を行い、結晶粒径の平均値μGSと標準偏差σGSと分布DGSとを算出した。
このように、スパッタ面において結晶粒径の分布DGSが25%以下に抑えられているので、膜厚が均一なAg合金膜11を成膜することが可能となる。
<Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法>
次に、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20の製造方法について説明する。
まず、純度99.9mass%以上のAg原料と、純度99.9mass%以上のSn原料、In原料、Cu原料、Au原料、Pd原料、Pt原料を用意する。
次に、溶解炉を用いて、Ag原料を、高真空下又は不活性ガス雰囲気下で溶解し、得られたAg溶湯に所定量のSn原料、In原料、Cu原料、Au原料、Pd原料、Pt原料を添加する。その後、高真空下又は不活性ガス雰囲気下で溶解し、所定の組成のAg合金インゴットを作成する。
ここで、Ag原料の溶解は、溶解炉内部を一度高真空にした後、Arで置換した雰囲気下で行い、溶解後、Ar雰囲気下で副原料を投入することが好ましい。
なお、原料として、Sn、In、Cu、Au、Pd、Ptといった元素を含有する母合金を用いてもよい。
続いて、得られたインゴットを鍛造・圧延する。圧延は、熱間圧延もしくは冷間圧延で実施する。
熱間圧延を用いる場合、圧延開始前の均質化熱処理工程として、600℃以上900℃以下の温度で1時間以上10時間以下保持する条件の熱処理を行うことが好ましい。600℃未満だと均質化が不十分となり、900℃を超えるとAgの融点に近くなりターゲットが軟化・溶解するおそれがある。また熱処理時間は、1時間以未満だと均質化が不十分となり、10時間を超えるとAg中の副原料が内部酸化するおそれがある。均質化熱処理工程の後に熱間圧延を行うが、圧延終了時温度は500℃以上700℃以下であることが好ましく、場合に応じて中間焼鈍を入れることが好ましい。
圧延の際には、累計圧下率は70%以上であることが好ましく、また少なくとも圧延の最後1パスの圧下率は20%以上であることが好ましい。圧下率が20%未満だと結晶粒径の微細化が十分でなく、また内部の結晶粒径も均一化が不十分となる。
なお、圧延機の能力の関係で、実質的に1パス辺り50%以上の圧下率は現実的ではない。
圧延の後、ターゲット材の結晶組織の均一化及び加工硬化除去のため、熱処理を実施する。熱処理温度は600℃以上750℃以下の範囲で1時間以上5時間以下保持の条件で実施するのが好ましい。600℃未満だと加工硬化除去の効果が十分でなく、750℃を超えると結晶粒が粗大化する。また、熱処理時間が1時間未満だと均一化が不十分となる。熱処理後は空冷又は水冷で急冷する。
上述の工程によって、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20が製造される。
<積層膜の製造方法>
次に、本実施形態である積層膜10の製造方法について説明する。
まず、ガラス等からなる基板1の表面に、透明導電酸化物膜12を形成する。本実施形態では、上述した透明導電酸化物からなるスパッタリングターゲットを用いて成膜する。なお、スパッタリングターゲットの導電性等を考慮して、DC(直流)スパッタ、RF(高周波)スパッタ、MF(中周波)スパッタ、AC(交流)スパッタ等を適宜選択して使用することが好ましい。
そして、成膜された透明導電酸化物膜12の上に、上述した本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20を用いて、Ag合金膜11を成膜する。このとき、Ag合金膜11の膜厚が3nm以上5nm以下の範囲内となるように、スパッタ条件を適宜調整する。
なお、スパッタリング時には、一定時間成膜した際の膜厚を段差測定計(DEKTAK−XT)で測定することでスパッタリングレートを測定し、その値から成膜時間を調整して、狙い膜厚となるように成膜する。
また、Ag合金膜11の膜厚が5nm以下と非常に薄いため、スパッタリングレートはできるだけ遅くすることが膜厚制御の観点から好ましく、そのためスパッタ電力はできるだけ低めに設定することが好ましい。
上述のようにして成膜されたAg合金膜11の上に、上述した透明導電酸化物からなるスパッタリングターゲットを用いて、透明導電酸化物膜12を成膜する。
このようにして、本実施形態である積層膜10が成膜される。
以上のような構成とされた本実施形態である積層膜10においては、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含むAg合金膜11を有し、このAg合金膜11の膜厚を3nm以上5nm以下としているので、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素によってAgの拡散が抑制され、Ag合金膜11が島状となることがなく、比較的均一な膜厚となる。これにより、シート抵抗及び透過率が向上することになる。
具体的には、積層膜10のシート抵抗が40Ω/□以下とされるとともに、前記積層膜の波長380nmから780nmにおける平均透過率が90%以上とされており、電気特性及び光学特性に優れている。
また、本実施形態である積層膜10においては、面内の複数の箇所で測定されたシート抵抗の平均値μと標準偏差σとによって定義されるシート抵抗の分布D=(σ/μ)×100が、20%以下とされているので、積層膜10の面内で特性が安定しており、膜厚が3nm以上5nm以下であっても比較的均一な膜厚のAg合金膜11が形成されていることになる。
また、本実施形態である積層膜10において、Ag合金膜11が、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされている場合には、積層膜10の電気特性及び光学特性を確保したまま、積層膜10の耐環境性をより向上させることが可能となる。
また、本実施形態である積層膜10においては、透明導電酸化物膜12が、In酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Al酸化物、Ga酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含む構成とされているので、透明導電酸化物膜12における電気特性及び光学特性に優れており、積層膜10全体としての光学特性及び電気特性を向上させることができる。
さらに、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20においては、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされているので、Agの拡散がこれらの元素によって抑制され、Ag合金膜11の膜厚を3nm以上5nm以下と薄く形成した場合であっても、Agの凝集を抑制することができ、比較的均一な膜厚のAg合金膜11を形成することが可能となる。
また、結晶粒径の平均値が200μm以下であり、スパッタ面の複数の箇所で測定された結晶粒径の平均値μGSと結晶粒径の標準偏差σGSとによって定義される結晶粒径の分布DGS=(σGS/μGS)×100が、25%以下とされているので、スパッタ面全体でスパッタレートが比較的一定となり、3nm以上5nm以下の膜厚のAg合金膜11を安定して成膜することができる。
また、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲット20が、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされている場合には、成膜したAg合金膜11の電気特性及び光学特性を確保したまま、Ag合金膜11の耐環境性をより向上させることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ガラス基板に積層膜を成膜するものとして説明したが、これに限定されることはなく、樹脂基板や樹脂フィルム等に本実施形態である積層膜を成膜してもよい。
また、本実施形態では、図1に示すように、Ag合金膜11を1層形成し、このAg合金膜11の両面に透明導電酸化物膜12を形成した3層構造の積層膜として説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図4に示すように、Ag合金膜11を2層形成し、このAg合金膜11の両面に透明導電酸化物膜12が積層された5層構造の積層膜110としてもよいし、Ag合金膜を3層以上形成し、それぞれのAg合金膜の両面に透明誘電体膜を形成した積層膜であってもよい。
さらに、図5に示すように、基板1の上にAg合金膜11を成膜し、このAg合金膜11の上に透明導電酸化物膜12を成膜した積層膜210であってもよい。
また、図6に示すように、基板1の上に透明導電酸化物膜12を成膜し、この透明導電酸化物膜12の上にAg合金膜11を成膜した積層膜310であってもよい。
すなわち、Ag合金膜11の一面側にのみ透明導電酸化物膜12を成膜した積層膜であってもよい。
さらに、本実施形態では、透明誘電体膜を、酸化物及び窒化物からなるスパッタリングターゲットを用いて成膜したものとして説明したが、これに限定されることはなく、上述の金属(Zn,Al,Sn,Ti,Si,Zr,Ta,In)からなるスパッタリングターゲットを用いて、酸素雰囲気で反応スパッタを行うことによって成膜してもよい。
また、本実施形態では、スパッタ面が矩形状をなすものとして説明したが、これに限定されることはなく、スパッタ面が円形をしていてもよいし、円筒面となる円筒型スパッタリングターゲットであってもよい。
なお、スパッタ面が円形状をなすスパッタリングターゲットにおいては、図7に示すように、円の中心(1)、及び、円の中心を通過するとともに互いに直交する2本の直線上の外周部分(2)、(3)、(4)、(5)の5点で、結晶粒径を測定することが好ましい。
また、スパッタ面が円筒面となる円筒型スパッタリングターゲットにおいては、図8に示すように、軸線O方向に半分の地点から外周方向に90°間隔の(1)、(2)、(3)、(4)の4点で、結晶粒径を測定することが好ましい。
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
純度99.9mass%以上のAg原料を準備し、このAg原料を真空雰囲気下で溶解し、Arガスに置換した後、純度99.9mass%以上のSn、In、Cu、Au、Pd、Ptの副原料を添加し、所定の組成のAg合金溶湯を溶製した。そして、このAg合金溶湯を、鋳造してAg合金インゴットを製造した。
(成分組成)
得られたAg合金インゴットから分析用サンプルを採取して、ICP発光分光分析法によって成分組成を測定した。この測定結果をAg合金スパッタリングターゲットの成分組成として表1に示す。
得られたAg合金インゴットに対して、700℃×1時間の条件で均質化処理を行った。この均質化処理を行った後、熱間圧延を実施した。圧延終了温度を500℃とし、累計圧下率を80%とした。また、圧延の最終パスの圧下率を20%とした。
熱間圧延後に、650℃×1時間の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷にて急冷した。
なお、比較例9においては、圧延の累計圧下率を40%とし、圧延後の熱処理条件を500℃×20分とし、比較例10においては、圧延の累計圧下率を80%、圧延後の熱処理条件を900℃×1時間とし、比較例11においては、圧延の累計圧下率を40%、圧延後の熱処理条件を650℃×1時間とした。
以上により、長さ2000mm、幅200mm,厚さ8mmの板材を得た。
(結晶粒径)
得られた板材において、スパッタ面おける結晶粒径の平均値及び分布を以下のように測定した。
図3に示す位置より測定試料を採取し、各測定試料のスパッタ面を観察面として研磨した後、エッチング処理を行った。
次に、エッチング液として過酸化水素水とアンモニア水との混合液を用いて、このエッチング液に室温で1〜2秒浸漬することによって、観察面のエッチングを行った。
エッチング後の観察面を光学顕微鏡で観察し、組織写真を得た。この組織写真を用いて、国際規格ASTM E−112に基づく切断法により、粒径測定を行い、ASTM粒度番号Gを算出し、ASTM粒度番号Gに対応した平均粒径を求めた。このとき、双晶は測定から除外した。1つの測定試料につき3視野で測定し、その平均値を当該測定試料の結晶粒径とした。なお、粒径の大きさに応じて、観察倍率を適宜選択して観察を実施した。
各5箇所の測定試料から得られた結晶粒径の5点平均から板材全体としての結晶粒径の平均値μGS、及び、標準偏差σGSを算出した。そして、これら結晶粒径の平均値μGS、及び、標準偏差σGSを用いて、分布DGS=(σGS/μGS)×100(%)を算出した。この測定結果をAg合金スパッタリングターゲットの結晶粒径として表1に示す。
次に、上述の板材を切断して機械加工することにより、所定寸法(126mm×178mm×厚さ6mm)のAg合金スパッタリングターゲットを製作した。
上述のAg合金スパッタリングターゲットを用いて、以下のようにして、積層膜を成膜した。
まず、基板として、10cm×30cmのガラス基板(コーニング社製EAGLEXG)を準備した。
また、透明導電酸化物膜を成膜するスパッタリングターゲットとして、以下の組成のスパッタリングターゲットを準備した。
ITO:In−10mass%SnO
IZO:In−10mass%ZnO
TiO:TiO
NbO:Nb
上述のスパッタリングターゲット及びAg合金スパッタリングターゲットを、無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これをスパッタ装置に装着した。本実施形態では、マグネトロンDCスパッタ装置を用いた。また、本実施形態では、基板搬送式のスパッタ装置を用いた。
そして、以下の条件でスパッタを行い、基板の上に、透明導電酸化物膜及びAg合金膜を成膜し、表2及び表3に示す層構成の積層膜を得た。なお、成膜後には、赤外線イメージ炉を用いて大気中で230℃×15分の熱処理を実施した。
成膜開始真空度:1.0×10−4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:100W
なお、積層膜とは別に、基板上にAg合金膜を厚さ1000nmで成膜し、これをICP発光分光分析法によって成分組成を測定した。これにより、Ag合金膜の成分組成が、Ag合金スパッタリングターゲットの成分組成と同等であることを確認した。
そして、上述のようにして得られた積層膜について、以下のようにして、膜厚測定、シート抵抗、透過率、耐環境性について評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
(膜厚測定)
積層膜の膜厚は、透過電子顕微鏡(TEM)によって積層膜の断面を観察することで確認し、狙い値通りの膜厚が成膜されていることを確認した。TEM観察のための試料作製には、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)や、集束イオンビーム(FIB)を用いることができる。
(シート抵抗)
積層膜のシート抵抗を、三菱化学製抵抗測定器ロレスタGPによる四探針法により測定した。
また、10cm×30cmのガラス基板の図2に示す各点より基板片を採取し、シート抵抗を評価し、シート抵抗の5点測定における平均値μとシート抵抗の5点測定における標準偏差σとを測定し、シート抵抗D=(σ/μ)×100(%)を算出した。
(透過率)
積層膜の透過率を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製U−4100)を用いて測定した。表2及び表3には、波長380nmから780nmにおける透過率の平均値を記載した。
なお、測定に際し、測定ベースラインをガラス基板で測定しているため、表中記載の値は基板の透過率を100とした際の相対的透過率とした。
(耐環境性)
積層膜に対し、恒温恒湿試験として、温度85℃、湿度85%の環境下に250時間保持し、試験後の膜のシート抵抗を測定し、試験前後の変化率を評価した。
(変化率)=(試験後シート抵抗−試験前シート抵抗)/(試験前シート抵抗)×100(%)
Figure 2019131850
Figure 2019131850
Figure 2019131850
比較例101,103,105においては、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素の含有量が本発明の範囲よりも低い比較例1,3,5のAg合金スパッタリングターゲットを用いてAg合金膜を成膜しており、透過率が低く、かつ、シート抵抗も高く、かつ、面内でばらついていた。また、耐環境性にも劣っていた。Ag合金膜において、Agが凝集して島状となったためと推測される。
比較例102,104,106,107,108においては、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素の含有量が本発明の範囲よりも多い比較例2,4,6,7,8のAg合金スパッタリングターゲットを用いてAg合金膜を成膜しており、透過率が低く、かつ、シート抵抗も高くなった。
比較例109においては、結晶粒径が243μmとされ、結晶粒径の分布が40%とされた比較例9のAg合金スパッタリングターゲットを用いてAg合金膜を成膜しており、シート抵抗の分布が大きくなった。
また、比較例110においては、結晶粒径が280μmとされ、結晶粒径の分布が24%とされた比較例10のAg合金スパッタリングターゲットを用いてAg合金膜を成膜しており、シート抵抗の分布が大きくなった。
さらに、比較例111においては、結晶粒径が185μmとされ、結晶粒径の分布が38%とされた比較例11のAg合金スパッタリングターゲットを用いてAg合金膜を成膜しており、シート抵抗の分布が大きくなった。
比較例109〜111においては、結晶粒径の平均値が大きく、分布も大きいため、Ag合金膜を安定して成膜することができなかったためと推測される。
比較例112においては、本発明例2のAg合金スパッタリングターゲットを用いて膜厚2nmのAg合金膜を成膜しており、シート抵抗も高く、かつ、面内でばらついていた。また、耐環境性にも劣っていた。
比較例113においては、本発明例2のAg合金スパッタリングターゲットを用いて膜厚7nmのAg合金膜を成膜しており、透過率が低くなった。
これに対して、本発明例1〜19のAg合金スパッタリングターゲットを用いて、膜厚3nm以上5nm以下のAg合金膜を成膜した本発明例101〜126の積層膜においては、積層膜のシート抵抗が40Ω/□以下とされるとともに、積層膜の透過率が90%以上とされており、電気特性及び光学特性に優れていることが確認された。また、恒温恒湿試験後のシート抵抗の変化率も小さく、耐環境性にも優れていることが確認された。
さらに、面内の複数の箇所で測定されたシート抵抗の分布が20%以下とされており、均一な膜厚のAg合金膜が成膜されていることが確認された。
また、本発明例123においては、Ag合金膜の一方の面に透明導電酸化物膜を成膜したが、同様の効果が確認された。
以上のことから、本発明例によれば、Ag合金膜の膜厚を5nm以下として、電気特性及び光学特性に優れ、透明導電配線膜あるいは透明電極に特に適した積層膜、及び、この積層膜を構成するAg合金膜を成膜する際に用いられるAg合金スパッタリングターゲットを提供できることが確認された。
10,110,210,310 積層膜
11 Ag合金膜
12 透明導電酸化物膜
20 Ag合金スパッタリングターゲット

Claims (5)

  1. Ag合金膜と、このAg合金膜の一方の面又は両面に積層された透明導電酸化物膜と、を備えた積層膜であって、
    前記Ag合金膜は、Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされ、
    前記Ag合金膜の膜厚が3nm以上5nm以下の範囲内とされ、
    面内の複数の箇所で測定された前記シート抵抗の平均値μと標準偏差σとによって定義されるシート抵抗の分布D=(σ/μ)×100が、20%以下とされていることを特徴とする積層膜。
  2. 前記Ag合金膜は、さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の積層膜。
  3. 前記透明導電酸化物膜は、In酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Al酸化物、Ga酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層膜。
  4. Cu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で3.0原子%以上15.0原子%以下の範囲内で含み、残部がAg及び不可避不純物とされた組成とされ、
    さらに、結晶粒径の平均値が200μm以下であり、
    スパッタ面の複数の箇所で測定された結晶粒径の平均値μGSと結晶粒径の標準偏差σGSとによって定義される結晶粒径の分布DGS=(σGS/μGS)×100が、25%以下とされていることを特徴とするAg合金スパッタリングターゲット。
  5. さらに、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素を合計で0.05原子%以上含み、かつ、Pd、Pt、Auから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素とCu、Sn、Inから選択されるいずれか一種又は二種以上の元素との合計含有量が15.0原子%以下とされていることを特徴とする請求項4に記載のAg合金スパッタリングターゲット。
JP2018013605A 2018-01-30 2018-01-30 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット Pending JP2019131850A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018013605A JP2019131850A (ja) 2018-01-30 2018-01-30 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018013605A JP2019131850A (ja) 2018-01-30 2018-01-30 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019131850A true JP2019131850A (ja) 2019-08-08

Family

ID=67547254

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018013605A Pending JP2019131850A (ja) 2018-01-30 2018-01-30 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019131850A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112768617A (zh) * 2021-01-06 2021-05-07 武汉华星光电半导体显示技术有限公司 显示面板及其制备方法、显示装置
WO2021157063A1 (ja) * 2020-02-07 2021-08-12 シャープ株式会社 表示装置

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006132413A1 (ja) * 2005-06-10 2006-12-14 Tanaka Kikinzoku Kogyo K.K. 電極、配線及び電磁波遮蔽用の銀合金
JP2013204052A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Mitsubishi Materials Corp 銀系円筒ターゲット及びその製造方法
JP2016040411A (ja) * 2014-08-12 2016-03-24 三菱マテリアル株式会社 積層膜、積層配線膜及び積層配線膜の製造方法
JP2016065308A (ja) * 2014-09-18 2016-04-28 三菱マテリアル株式会社 Ag合金スパッタリングターゲット、Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法、Ag合金膜およびAg合金膜の製造方法
US20170166999A1 (en) * 2014-07-25 2017-06-15 Heraeus Deutschland GmbH & Co. KG Silver-alloy based sputtering target

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006132413A1 (ja) * 2005-06-10 2006-12-14 Tanaka Kikinzoku Kogyo K.K. 電極、配線及び電磁波遮蔽用の銀合金
JP2013204052A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Mitsubishi Materials Corp 銀系円筒ターゲット及びその製造方法
US20170166999A1 (en) * 2014-07-25 2017-06-15 Heraeus Deutschland GmbH & Co. KG Silver-alloy based sputtering target
JP2016040411A (ja) * 2014-08-12 2016-03-24 三菱マテリアル株式会社 積層膜、積層配線膜及び積層配線膜の製造方法
JP2016065308A (ja) * 2014-09-18 2016-04-28 三菱マテリアル株式会社 Ag合金スパッタリングターゲット、Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法、Ag合金膜およびAg合金膜の製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021157063A1 (ja) * 2020-02-07 2021-08-12 シャープ株式会社 表示装置
CN112768617A (zh) * 2021-01-06 2021-05-07 武汉华星光电半导体显示技术有限公司 显示面板及其制备方法、显示装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2019203194A (ja) 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット
WO2012137461A1 (ja) 導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法
KR101854009B1 (ko) 도전성 막 형성용 은 합금 스퍼터링 타겟 및 그 제조 방법
WO2019221257A1 (ja) 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット
JP6278136B2 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット、Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法およびAg合金膜の製造方法
JP4022891B2 (ja) 配線膜用Al合金膜および配線膜形成用スパッタリングターゲット材
JP2022008503A (ja) 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット
JP2019131850A (ja) 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット
JP2015007280A (ja) Cu−Mn合金膜およびCu−Mn合金スパッタリングターゲット材ならびにCu−Mn合金膜の成膜方法
KR102588050B1 (ko) 은 합금-기반 스퍼터링 표적
CN107075614A (zh) Cu合金膜和Cu层叠膜
JP5669014B2 (ja) 導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法
JP5830907B2 (ja) 導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法
JP5830908B2 (ja) 導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法
WO2016043183A1 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット、Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法、Ag合金膜およびAg合金膜の製造方法
JP6207406B2 (ja) スパッタリングターゲット材及び配線積層体
TW201627505A (zh) 濺鍍靶及層合膜
WO2020162221A1 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット、及び、Ag合金膜
WO2020070824A1 (ja) 積層膜、及び、Ag合金スパッタリングターゲット
JP6033493B1 (ja) 銅基合金スパッタリングターゲット
WO2021090581A1 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット、及び、Ag合金膜
WO2020162206A1 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット、及び、Ag合金膜

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200929

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210630

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210713

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210909

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220201

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20220726