JP2004191274A - ダイオキシン類の分析用試料採取方法 - Google Patents

ダイオキシン類の分析用試料採取方法 Download PDF

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克久 本田
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Abstract

【課題】ダイオキシン類を含む流体の存在現場において、流体中に含まれるダイオキシン類の分析用試料を確保する。
【解決手段】分析用試料採取方法は、排気ガスの一部を煙道2から採取してフイルタ8に通過させる工程と、フイルタ8により採取されたダイオキシン類を抽出するための第一抽出用溶媒をフイルタ8に対して供給する工程と、フイルタ8からの第一抽出用溶媒を、極性物質を捕捉可能でありかつダイオキシン類が通過可能な固定相が充填された第一カラム34に続けて供給する工程と、第一カラム34を通過した第一抽出用溶媒を、ダイオキシン類を捕捉可能な固定相が充填された第二カラム45に続けて供給する工程と、第一抽出用溶媒が通過後の第二カラム45に対し、第一抽出用溶媒の供給方向とは逆方向に、ダイオキシン類を抽出可能でありかつ第一抽出用溶媒よりもダイオキシン類を溶解しやすい第二抽出用溶媒を続けて供給する工程とを含んでいる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイオキシン類の分析用試料採取方法、特に、ダイオキシン類を含む流体の存在現場において、流体に含まれるダイオキシン類の分析用試料を採取するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業廃棄物や一般家庭ごみなどの廃棄物を焼却処理するための焼却施設から発生する排気ガス中には、ダイオキシン類が含まれている場合がある。ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン類(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)およびコプラナーPCB(Co−PCBs)等の総称であり、周知の如く極めて毒性の強い環境汚染物質であるため、環境保全の観点から、排気ガスや廃水などの流体中から取り除くための方策の確立が緊急の課題となっており、同時に、そのような流体中に含まれるダイオキシン類を分析するための手法の確立が世界的規模で急がれている。
【0003】
ところで、流体中に含まれるダイオキシン類を分析する際には、先ず、分析対象となる流体からダイオキシン類の分析用試料を入手する必要がある。例えば、排気ガス中に含まれるダイオキシン類を分析する場合は、排気ガスが通過する煙道から試料ガスを一定量採取し、この試料ガス中に含まれるダイオキシン類を分析用試料として採取する必要がある。
【0004】
そこで、非特許文献1は、排気ガス中に含まれるダイオキシン類の採取装置を具体的に例示している。この採取装置は、排気ガスが流れる煙道から試料ガスを採取するための採取管、採取管により採取された試料ガスを通過させるためのフイルタ材を備えた第一捕捉器、および第一捕捉器を通過した試料ガスをさらに通過させるための第二捕捉器を主に備えている。第二捕捉器は、主に、吸収液を入れた複数のガラス製インピンジャーからなる液体捕集部と吸着剤(例えばXAD−2)を配置した吸着捕集部とを備え、試料ガス中に含まれるダイオキシン類をインピンジャー内の吸収液と吸着剤とにより捕捉し得るように構成されている。
【0005】
【非特許文献1】
1999年9月20日制定の日本工業規格JIS K 0311:1999
【0006】
このような採取装置を用いてダイオキシン類の分析用試料を採取する場合は、先ず、採取管を通じて煙道から一定量の試料ガスを採取し、この試料ガスを第一捕捉器および第二捕捉器の順に通過させる。この際、試料ガス中に含まれるダイオキシン類は、第一捕捉器のフイルタ材並びに第二捕捉器の液体捕集部および吸着剤により捕捉され、試料ガス中から取り除かれる。そして、フイルタ材、液体捕集部および吸着剤により捕捉されたダイオキシン類を、溶媒を用いてこれらの部材から抽出すると、目的とする分析用試料が得られる。得られた分析用試料は、精製および濃縮操作などの前処理が適宜施された後、GC/MSのような分析装置に適用され、定性的にまたは定量的に分析される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような分析用試料の採取方法において用いられる採取装置は、ガラス製器具を備えた複雑な構成であるため、取扱いが困難である。また、当該採取装置において採取されたダイオキシン類の分析用試料を確保するためには、試料ガスの採取場所とは異なる別の場所において手作業で抽出作業を実施し、その際の抽出液を精製したり濃縮したりする必要がある。このため、分析用試料を入手するための作業は、複雑かつ煩雑であり、また、長時間を要する。
【0008】
本発明の目的は、ダイオキシン類を含む流体の存在現場において、流体中に含まれるダイオキシン類の分析用試料を容易にかつ迅速に確保することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るダイオキシン類の分析用試料採取方法は、ダイオキシン類を含む流体の存在現場において、流体に含まれるダイオキシン類の分析用試料を採取するための方法であり、次の工程を含んでいる。
◎流体の一部を試料流体として採取し、ダイオキシン類を捕捉して採取可能なフイルタに試料流体を通過させる採取工程。
◎フイルタにより採取されたダイオキシン類をフイルタから抽出するための第一抽出用溶媒を、フイルタに対して供給するための第一供給工程。
◎フイルタからの第一抽出用溶媒を、極性物質を捕捉可能でありかつダイオキシン類が通過可能な第一固定相が充填された第一カラムに引き続き供給する第二供給工程。
◎第一カラムを通過した第一抽出用溶媒を、ダイオキシン類を捕捉可能な第二固定相が充填された第二カラムに引き続き供給する第三供給工程。
◎第一抽出用溶媒が通過後の第二カラムに対し、第一抽出用溶媒の供給方向とは逆方向に、ダイオキシン類を抽出可能でありかつ第一抽出用溶媒よりもダイオキシン類を溶解しやすい第二抽出用溶媒を引き続き供給する第四供給工程。
【0010】
このような分析用試料採取方法において、流体から採取された試料流体中に含まれるダイオキシン類は、採取工程において、フイルタにより捕捉されて採取される。フイルタにより採取されたダイオキシン類は、続く第一供給工程において、第一抽出用溶媒中に溶出し、フイルタから抽出される。抽出されたダイオキシン類を含む第一抽出用溶媒は、続く第二供給工程において、極性物質、すなわち不純物が第一固定相により取り除かれ、精製された状態で第一カラムを通過する。第一カラムを通過した第一抽出用溶媒に含まれるダイオキシン類は、続く第三供給工程において第二固定相により捕捉され、第一抽出用溶媒から取り除かれる。この結果、第三供給工程においては、第一抽出用溶媒のみが第二カラムを通過することになる。続く第四供給工程において、第一抽出用溶媒の供給方向とは逆方向に第二抽出用溶媒を第二カラムに供給すると、第二カラムにより捕捉されたダイオキシン類は、第二抽出用溶媒中に溶出し、第二カラムから抽出される。ここで、第二抽出用溶媒は、第一抽出用溶媒よりもダイオキシン類を溶解しやすので、第一抽出用溶媒に比べて少量の使用で第二カラムに捕捉されたダイオキシン類を速やかに抽出することができる。これにより、ダイオキシン類を含む第二抽出用溶媒、すなわち、精製されかつ濃縮されたダイオキシン類の分析用試料がダイオキシン類を含む流体の存在現場において得られる。
【0011】
このような分析用試料採取方法では、例えば、フイルタ、第一カラムおよび第二カラムのそれぞれを少なくとも二つ用い、採取工程を実施後のフイルタに対する第一供給工程と、他のフイルタを用いた採取工程とを並行して実施すると共に、フイルタ毎に第一カラムおよび第二カラムをそれぞれ交換するのが好ましい。
【0012】
このようにすれば、フイルタに採取されたダイオキシン類の抽出作業(すなわち、第一供給工程以下の工程)と、他の別の試料流体中に含まれるダイオキシン類の採取作業(すなわち、採取工程)とを並行して実施することができるので、流体から採取した異なる試料流体のそれぞれに含まれるダイオキシン類の分析用試料、すなわち複数の分析用試料を効率的に採取することができる。
【0013】
また、この分析用試料採取方法では、通常、第二供給工程において第一カラムを加熱するのが好ましい。また、この採取方法において用いられる第一固定相は、例えば硫酸シリカゲルである。これらの場合、第二供給工程において、第一抽出用溶媒中に含まれる極性物質をより効果的に第一固定相に捕捉させることができ、第一抽出用溶媒の精製効率を高めることができる。
【0014】
さらに、この方法において用いられる第二固定相は、例えば炭素系材料である。この場合、第一抽出用溶媒中に含まれるダイオキシン類を効果的に捕捉して第一抽出用溶媒から取除くことができ、また、第四供給工程において、第二固定相により捕捉されたダイオキシン類を第二抽出用溶媒中により容易に抽出することができる。
【0015】
さらに、この方法において用いられる第一抽出用溶媒は、例えばn−ヘキサンである。この場合、40〜65℃に加熱された第一抽出用溶媒を2〜5ml/分の流速でフイルタに供給するのが好ましい。第一供給工程の条件をこのように設定すると、少量の第一抽出用溶媒により、フイルタに捕捉されたダイオキシン類を迅速に抽出することができる。
【0016】
さらに、この方法において用いられる第二抽出用溶媒は、例えばジメチルスルホキシドである。このような第二抽出用溶媒は、第二カラムにおいて捕捉されたダイオキシン類をより少量で効果的に抽出することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係るダイオキシン類の分析用試料採取方法を実施するための分析用試料採取装置を説明する。図において、分析用試料採取装置1は、廃棄物の焼却炉の煙道2を流れる排気ガス(流体の一例)中に含まれるダイオキシン類を分析するための分析用試料を採取するためのものであり、採取部3、案内部4および第一抽出溶媒供給部5、精製部31および濃縮部41を主に備えている。
【0018】
採取部3は、フイルタ保持体6と、このフイルタ保持体6を回転させるための第一駆動装置7とを備えている。フイルタ保持体6は、一定の厚みを有する円板状に形成されており、軸方向が水平になるように配置されている。また、フイルタ保持体6は、図2に示すように、同一の円周上において、中心を挟んで対向する2つの貫通孔6aを有している。各貫通孔6aは、フイルタ保持体6の厚さ方向に開口しており、フイルタ8が装着されている。すなわち、この実施の形態において、フイルタ保持体6には、2つのフイルタ8が装着されている。
【0019】
フイルタ8は、排気ガス中に含まれるダイオキシン類を捕捉して採取するためのものであり、流体通過性(この実施の形態では通気性)を有する、三次元網目構造の成形体からなる。因みに、このフイルタ8は、JIS K 0311:1999に例示されたダイオキシン類の採取装置と同等にダイオキシン類を採取可能なものであり、JIS K 0311:1999に例示された採取装置に代えて利用可能なものである。
【0020】
このようなフイルタ8は、例えばWO01/91883号公報において既に知られており、通常、図3に示すように、一端が閉鎖された円筒状に形成されている。なお、フイルタ8は、開口側が後述する第1移送管10に連絡するよう貫通孔6a内に挿入されている。
【0021】
フイルタ8を構成する上述の成形体は、繊維材料(繊維材料の群)と無機系結合材とを含んでいる。ここで用いられる繊維材料は、ダイオキシン類と実質的に化学反応しないものであり、通常、繊維状活性炭、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維(好ましくは活性アルミナ繊維)、シリカ繊維およびフッ素樹脂繊維(例えばテフロン繊維:テフロンは登録商標)のうちの少なくとも一つである。一方、無機系結合材は、繊維材料同士を結合して繊維材料からなる群を一体化し、繊維材料からなる群に一定の成形形状を付与する性質を有するもの、すなわち、繊維材料からなる群を一定の成形形状に保持するバインダーとして機能するものである。この実施の形態においてより具体的には、繊維材料からなる群を、フイルタ8の形状、すなわち一端が閉鎖された円筒状に設定するためのものである。
【0022】
ここで利用可能な無機系結合材は、上述の性能を有し、しかも繊維材料と同様にダイオキシン類と実質的に化学反応しないものであれば特に限定されるものではないが、吸着性能、特にダイオキシン類に対する吸着性能を有するものが好ましい。このような無機系結合材としては、例えば、アルミナ(好ましくは活性アルミナ)、ゼオライト(好ましくは合成ゼオライト)、二酸化ケイ素(シリカ)、酸性白土およびアパタイトなどを挙げることができ、これらの無機系結合材は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。また、無機系結合材は、形態が特に限定されるものではないが、通常は粒子状のものが用いられる。また、無機系結合材は、タールの吸着性を有するものが特に好ましい。このような特徴を有する無機系結合材を用いた場合、フイルタ8は、例えば排気ガス中に含まれる一酸化炭素に由来して生成するタールを効果的に吸着することができ、そのようなタール中に溶け込んだダイオキシン類をもより確実に捕捉して採取することができる。なお、タールを吸着可能な無機系結合材としては、アルミナ、ゼオライトおよび二酸化ケイ素を例示することができる。これらのタールを吸着可能な無機系結合材は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
【0023】
また、上述の成形体は、通常、嵩密度が0.1〜1g/cm3に設定されているのが好ましく、0.3〜0.7g/cm3に設定されているのがより好ましい。成形体の嵩密度が0.1g/cm3未満の場合は、排気ガス中に含まれるダイオキシン類の一部がフイルタ8を通過してしまう場合があり、排気ガス中に含まれるダイオキシン類を安定かつ確実に採取するのが困難になる可能性がある。逆に、嵩密度が1g/cm3を超える場合は、フイルタ8において、排気ガス中に含まれる粒子状物を捕捉した際に圧損が高まるおそれがあり、その結果、排気ガスが通過しにくくなって上述のJIS規格(JIS K 0311:1999)で規定されている等速吸引が困難になる可能性がある。また、フイルタ8により採取されたダイオキシン類を抽出する際において、抽出率の低下を招くおそれがある。
【0024】
フイルタ8を構成する成形体として好ましいものは、繊維材料として活性アルミナ繊維を用い、無機系結合材として粒子状の活性アルミナを用いたものである。特に、このような成形体であって、さらに嵩密度が0.3〜0.7g/cm3の範囲に設定されているものが最も好ましい。
【0025】
なお、上述のようなフイルタ8の製造方法は、上に挙げたWO01/91883号公報に記載の通りである。
【0026】
第一駆動装置7は、フイルタ保持体6を図2の時計回りに回転させるためのものであり、フイルタ保持体6の中心に装着された回転軸9aとモータ9とを主に備えている。モータ9は、回転軸9aを180度ずつ断続的に回転させることができるものである。
【0027】
案内部4は、煙道2内を流れる排気ガスの一部(試料流体の一例であり、以下、試料ガスという)を採取して採取部3に案内するためのものであり、採取部3のフイルタ保持体6を挟んで配置された、第一移送管10と第二移送管11とを備えている。第一移送管10は、一端が煙道2内に配置されており、他端がフイルタ保持体6に設けられた貫通孔6aのうちの一つ(図1および図2において、フイルタ保持体6の上部に位置する貫通孔6a)に連絡している。また、第一移送管10は、試料ガスの温度が100〜120℃になるよう設定するための温度調節装置12を有している。一方、第二移送管11は、第一移送管10が連絡している貫通孔6aの反対側に一端が連絡しており、また、他端にはドレントラップ13と吸引ポンプ14とをこの順に有している。ここで、ドレントラップ13は、試料ガス中の水分を捕集するためのものであり、また、吸引ポンプ14は、煙道2内を流れる排気ガスを安定に吸引するためのものである。
【0028】
また、第二移送管11は、温度センサー15を有している。この温度センサー15は、第二移送管11内を流れる試料ガスの温度を測定するためのものであり、温度調節装置12に連絡している。そして、温度調節装置12は、温度センサー15による測定結果に基づいて、第一移送管10内を流れる試料ガスの温度を調節可能に設定されている。
【0029】
第一抽出用溶媒供給部5は、フイルタ保持体6に保持されたフイルタ8に対してダイオキシン類の抽出用溶媒(第一抽出用溶媒)を供給するためのものであり、フイルタ保持体6を挟んで配置された、第一抽出用溶媒供給路19と第一抽出用溶媒排出路20とを備えている。第一抽出用溶媒供給路19は、第一供給ポンプ21を有しており、一端がフイルタ保持体6に設けられた貫通孔6aのうち、案内部4が連絡しているものとは異なる別の貫通孔6a(図1および図2において、フイルタ保持体6の下部に位置する貫通孔6a)に連絡している。なお、第一抽出用溶媒供給路19は、第一移送管10の反対側(すなわち、第二移送管11の連絡側)から貫通孔6aに連絡している。
【0030】
また、第一抽出用溶媒供給路19の他端は、ダイオキシン類の抽出用溶媒が貯留された第一溶媒タンク22内に配置されている。第一溶媒タンク22内に貯留されている第一抽出用溶媒は、フイルタ8により捕捉されたダイオキシン類を抽出することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常はダイオキシン類を含む各種の炭化水素化合物を効率的に抽出可能なもの、例えばn−ヘキサンを用いるのが好ましい。
【0031】
なお、第一抽出用溶媒供給路19および第一溶媒タンク22は、図示しない温度調節装置を備えており、フイルタ8に供給する第一抽出用溶媒の温度を所望の温度に設定することができる。例えば、第一抽出用溶媒としてn−ヘキサンを用いる場合、当該第一抽出用溶媒の温度は、後述する理由により、40〜65℃に設定するのが好ましく、55〜65℃(特に、60℃)に設定するのがより好ましい。
【0032】
第一抽出用溶媒排出路20は、第一抽出用溶媒供給路19が連絡している貫通孔6aの反対側に一端が連絡しており、また、他端が開口している。
【0033】
精製部31は、第一カラム保持体32と、この第一カラム保持体32を回転させるための第二駆動装置33とを主に備えている。第一カラム保持体32は、一定の厚みを有する円板状に形成されており、軸方向が垂直になるよう第一抽出用溶媒供給部5の第一抽出用溶媒排出路20の下方に配置されている。また、第一カラム保持体32は、図4(平面図)に示すように、同一の円周上において、中心を挟んで対向する2つの貫通孔32aを有している。各貫通孔32aは、第一カラム保持体32の厚さ方向に開口しており、それぞれに第一カラム34が装着されている。すなわち、この実施の形態において、第一カラム保持体32には、2つの第一カラム34が装着されている。
【0034】
第一カラム34は、上下方向に開口する筒状体内に固定相(第一固定相)を充填したものである。ここで用いられる固定相は、極性物質を捕捉可能でありかつダイオキシン類を捕捉しないものである。このような固定相としては、例えば、シリカゲルを用いることができる。特に、硫酸シリカゲルを用いるのが好ましい。また、固定相として用いられるシリカゲルは、種類の異なるシリカゲルを多層に配置したもの、例えば、硝酸銀シリカゲルと硫酸シリカゲルとを多層に配置したものであってもよい。固定相として硫酸シリカゲル若しくは異種のシリカゲルを多層に配置したものを用いると、後述する精製処理をより効果的かつ迅速に実施することができる。
【0035】
なお、第一カラム保持体32に設けられた2つの貫通孔32aのうちの一つは、その上方に、第一抽出用溶媒排出路20の開口端側が配置されている。また、当該貫通孔32aの下方には、第二抽出用溶媒排出路35が配置されている。
【0036】
第二駆動装置33は、第一カラム保持体32を、図4の時計回りに回転させるためのものであり、第一カラム保持体32の中心に装着された回転軸36とモータ37とを主に備えている。モータ37は、回転軸36を180度ずつ断続的に回転させることができるものである。
【0037】
濃縮部41は、第二カラム保持体42、この第二カラム保持体42を回転させるための第三駆動装置43および第二抽出用溶媒供給部44を主に備えている。第二カラム保持体42は、一定の厚みを有する円板状に形成されており、軸方向が垂直になるよう精製部31の第二抽出用溶媒排出路35の下方に配置されている。また、第二カラム保持体42は、図5(平面図)に示すように、同一の円周上において、中心を挟んで対向する2つの貫通孔42aを有している。各貫通孔42aは、第二カラム保持体42の厚さ方向に開口しており、それぞれに第二カラム45が装着されている。すなわち、この実施の形態において、第二カラム保持体42には、2つの第二カラム45が装着されている。
【0038】
第二カラム45は、上下方向に開口する筒状体内に固定相(第二固定相)を充填したものである。ここで用いられる固定相は、ダイオキシン類を捕捉可能なものである。このような固定相としては、ダイオキシン類の吸着性能が高いもの、例えば、活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ若しくはフラーレン等の炭素材料を用いることができる。因みに、ここで用いられる炭素材料は、比表面積が30〜250m2/g、特に、50〜100m2/gの非多孔性で微粒状のもの(例えば、120〜400メッシュ程度のもの)が好ましい。このような炭素材料は、ダイオキシン類を効果的に吸着して捕捉することができるにもかかわらず、捕捉したダイオキシン類を抽出用溶媒中に容易に溶出させることができる。このような炭素材料の具体例としては、米国シグマアルドリッチグループの一社であるスペルコ社の商品名“Supelclean ENVI−Carb”を挙げることができる。
【0039】
なお、第二カラム保持体42に設けられた2つの貫通孔42aのうちの一つは、その上方に、第二抽出用溶媒排出路35が配置されている。
【0040】
第三駆動装置43は、第二カラム保持体42を、図5の時計回りに回転させるためのものであり、第二カラム保持体42の中心に装着された回転軸46とモータ47とを主に備えている。モータ47は、回転軸46を180度ずつ断続的に回転させることができるものである。
【0041】
第二抽出用溶媒供給部44は、第二カラム保持体42に保持された第二カラム45に対してダイオキシン類の抽出用溶媒(第二抽出用溶媒)を供給するためのものであり、第二カラム保持体42を挟んで配置された、第二抽出用溶媒供給路50と第三抽出用溶媒排出路51とを備えている。第二抽出用溶媒供給路50は、第二供給ポンプ52を有しており、一端が第二カラム保持体42に設けられた貫通孔42aのうち、第二抽出用溶媒排出路35が配置されているものとは異なる別の貫通孔42aの下方に連絡している。また、第二抽出用溶媒供給路50の他端は、第二抽出用溶媒が貯留された第二溶媒タンク53内に配置されている。第二溶媒タンク53内に貯留されている第二抽出用溶媒は、第二カラム45の固定相に捕捉されたダイオキシン類を少量で効果的に抽出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばトルエンやジメチルスルホキシド(DMSO)を用いるのが好ましい。
【0042】
第三抽出用溶媒排出路51は、第二抽出用溶媒供給路50が連絡している貫通孔42aの上側に一端が連絡しており、また、他端が第二カラム保持体42の下方に延びかつ開口している。
【0043】
上述の分析用試料採取装置1において、モータ9,37,47、吸引ポンプ14、第一供給ポンプ21および第二供給ポンプ52は、シーケンス制御やコンピュータ制御により、以下に説明するような順序で自動的に作動する。
【0044】
次に、上述の分析用試料採取装置1の動作、すなわち、分析用試料採取装置1を用いたダイオキシン類の分析用試料採取方法を説明する。
先ず、採取部3において、モータ9が作動し、フイルタ保持体6が回転する。これにより、フイルタ保持体6の各貫通孔6aに保持された2つのフイルタ8のうちの一つが案内部4の第一移送管10と第二移送管11との間に挟まれるように配置される。このとき、フイルタ保持体6に保持された他のフイルタ8は、第一抽出用溶媒供給部5の第一抽出用溶媒供給路19と第一抽出用溶媒排出路20との間に挟まれるように配置される(図1)。
【0045】
また、モータ37が作動し、第一カラム保持体32に装着された2つの第一カラム34のうちの一方が第一抽出用溶媒排出路20の下方に位置しかつ第二抽出用溶媒排出路35の上方に位置するよう配置される。さらに、モータ47が作動し、第二カラム保持体42に装着された2つの第二カラム45のうちの一つが第二抽出用溶媒排出路35の下方に位置するように配置される。この際、他方の第二カラム45は、第二抽出用溶媒供給路50と第三抽出用溶媒排出路51との間に位置するように配置される。
【0046】
以上のような初期動作の後、吸引ポンプ14が作動する。この結果、煙道2内の排気ガスの一部は、試料ガス(試料流体の一例)として第一移送管10内に連続的に吸引され、温度調節装置12において上述の温度範囲に温度が調節された後、フイルタ8を通過して第二移送管11内に移動する(採取工程)。この際、試料ガス中に含まれるガス状態および粒子状態の両方のダイオキシン類は、フイルタ8により捕捉され、試料ガス中から取り除かれる。第二移送管11内に移動した試料ガスは、引き続き吸引ポンプ14により吸引され、ドレントラップ13により水分が捕集された後に排出される。
【0047】
上述のような試料ガスの採取は、吸引ポンプ14を予め定めた一定時間作動させることにより実施する。これにより、フイルタ8は、一定量の試料ガスが通過することになり、また、当該一定量の試料ガス中に含まれるダイオキシン類を捕捉して採取することになる。なお、ここでの一定時間は、焼却炉において焼却する廃棄物の種類に応じて適宜設定するのが好ましく、通常は、上述のJIS K0311:1999に規定された時間に設定するのが好ましい。
【0048】
上述の一定時間の経過後、モータ9が作動し、図2に矢印で示すように、フイルタ保持体6を図の時計回りに180度回転させる。これにより、ダイオキシン類を採取したフイルタ8は、第一抽出用溶媒供給部5の第一抽出用溶媒供給路19と第一抽出用溶媒排出路20との間に挟まれるように配置される。また、同時に、他方のフイルタ8は、案内部4の第一移送管10と第二移送管11との間に挟まれるように配置される。すなわち、採取部3は、他方のフイルタ8が試料ガスを案内可能に設定され、同時に、ダイオキシン類を採取したフイルタ8が第一抽出用溶媒供給路19からの抽出用溶媒を供給可能な状態に設定されることになる。換言すると、採取部3は、煙道2からの異なる試料ガスを採取するために、フイルタ8を切り替えた状態に設定されることになる。
【0049】
このような状態で、吸引ポンプ14が上述の一定時間再度作動する。この結果、他方のフイルタ8は、煙道2からの異なる試料ガスが通過し、当該試料ガス中に含まれるダイオキシン類を採取することができる。
【0050】
一方、このような状態において、第一供給ポンプ21が同時に作動する。この結果、第一溶媒タンク22内に貯留されている第一抽出用溶媒は、第一抽出用溶媒供給路19を通じ、先にダイオキシン類を採取したフイルタ8に対して連続的に供給される(第一供給工程)。フイルタ8に供給された第一抽出用溶媒は、フイルタ8を第一抽出用溶媒排出路20方向に通過し、第一抽出用溶媒排出路20を経由して精製部31に供給される。この際、フイルタ8に捕捉されているダイオキシン類は、フイルタ8を通過する第一抽出用溶媒により抽出され、第一抽出用溶媒と共に第一抽出用溶媒排出路20を経由して精製部31に供給される。
【0051】
このような第一供給工程において用いる第一抽出用溶媒、すなわち、第一溶媒タンク22に貯留されている抽出用溶媒は、既述の通り、n−ヘキサンが好ましい。特に、図示しない上述の温度調節装置により温度が60℃に設定されたn−ヘキサンを用いるのが好ましい。また、そのように温度設定されたn−ヘキサンを第一抽出用溶媒として用いる場合、当該抽出用溶媒は、第一供給ポンプ21の動作を制御することにより、フイルタ8への供給時の流速を2〜5ml/分に設定するのが好ましい。抽出用溶媒の流速をこのように設定すると、フイルタ8により捕捉されたダイオキシン類は、100ml程度の必要最小限量の抽出用溶媒の使用により、フイルタ8から効果的に抽出されることになる。なお、当該流速が2ml/分未満の場合、フイルタ8に捕捉されたダイオキシン類の全量を抽出できなくなるおそれがある。逆に、5ml/分を超える場合、フイルタ8に捕捉されたダイオキシン類の全量を抽出するために必要な抽出用溶媒の量が100mlを超えて大幅に増加するおそれがあり、不経済になる可能性がある。
【0052】
第一抽出用溶媒排出路20からのダイオキシン類を含む第一抽出用溶媒(以下、ダイオキシン類含有抽出液という)は、精製部31において、第一カラム保持体32に装着された一方の第一カラム34に対して供給される(第二供給工程)。第一カラム34に供給されたダイオキシン類含有抽出液は、第一カラム34内に充填された第一固定相を通過し、第二抽出用溶媒排出路35を通じて濃縮部41に供給される。この際、ダイオキシン類含有抽出液中に含まれる、ダイオキシン類以外の不純物、すなわち、フイルタ8により上述の試料ガス中からダイオキシン類と共に除去された各種の極性物質は、第一固定相に捕捉され、ダイオキシン類含有抽出液から除去される。
【0053】
なお、上述のようにしてダイオキシン類含有抽出液が精製された後、モータ37は、図4に矢印で示すように、第一カラム保持体32を時計回りに180度回転させる。これにより、第一抽出用溶媒排出路20と第二抽出用溶媒排出路35との間には、別の第一カラム34が配置されることになり、当該別の第一カラム34は、採取部3における別のフイルタ8に由来するダイオキシン類含有抽出液を続いて精製することができる。すなわち、この分析用試料採取装置1では、フイルタ8毎に、第一カラム34を切り替えることができる。
【0054】
続いて、第一カラム34を通過した第一抽出用溶媒、すなわち、精製部31において精製されたダイオキシン類含有抽出液(以下、精製抽出液という)は、濃縮部41において、第二抽出用溶媒排出路35に対応する第二カラム45に対して引き続き供給される(第三供給工程)。
【0055】
第二カラム45に供給された精製抽出液は、第二カラム45内に充填された第二固定相を通過する。この際、精製抽出液中に含まれるダイオキシン類は、第二固定相に捕捉され、第二カラム45内、特に、第二カラム45の上部に留まる。一方、精製抽出液中の第一抽出用溶媒は、第二固定相を通過し、第二カラム45の下部から排出される。
【0056】
精製部31からの精製抽出液の全量が第二カラム45を通過した後、モータ47は、図5に矢印で示すように、第二カラム保持体42を時計回りに180度回転させる。これにより、精製抽出液の全量が通過した第二カラム45は、第二抽出用溶媒供給路50と第三抽出用溶媒排出路51との間に位置するように配置される。そして、この状態で第二供給ポンプ52が作動し、当該第二カラム45の下方から、第二抽出用溶媒供給路50を通じて第二溶媒タンク53内の第二抽出用溶媒が連続的に第二カラム45に対して供給される(第四供給工程)。第二カラム45に供給された第二抽出用溶媒は、第二固定相に捕捉されたダイオキシン類を抽出し、第三抽出用溶媒排出路51を通じて排出される。したがって、第三抽出用溶媒排出路51から排出される、ダイオキシン類を含む第二抽出用溶媒を捕集すると、ダイオキシン類の分析用試料を確保することができる。
【0057】
因みに、第二固定相により捕捉されたダイオキシン類は、主に第二カラム45の上部に留まっており、また、第二抽出用溶媒が第一抽出用溶媒よりもダイオキシン類を溶解し易いため、必要最小限量の第二抽出用溶媒を第二カラム45の下方から上方に向けて供給することにより、速やかに第二固定相から抽出され得る。
【0058】
なお、ここで確保することができる分析用試料は、第二カラム45において捕捉されたダイオキシン類を抽出するために必要な最少量の抽出用溶媒を含むものであるため、精製部31からの精製抽出液に比べて分量が少なくなっており、結果的にダイオキシン類が濃縮された状態にある。したがって、この分析用試料は、そのまま、若しくは必要に応じてさらに僅かに濃縮するだけで、例えばGC/MS等の分析機器に適用すると、定性的または定量的に分析することができる。
【0059】
因みに、上述のような第四供給工程、すなわち第二固定相からのダイオキシン類の抽出動作時において、第二カラム保持体42に保持された他方の第二カラム45は、第二抽出用溶媒排出路35の下方に配置された状態にあるため、精製部31の別の第一カラム34からの精製抽出液を同時に受け入れることができる。すなわち、この分析用試料採取装置1では、精製部31の第一カラム34毎に第二カラム45を切り替えることができ、第二カラム45に対する精製部31からの精製抽出液の供給と、他の第二カラム45で先に捕捉されたダイオキシン類の抽出とを並行して同時に実施することができる。
【0060】
上述のような分析用試料採取装置1を用いたこの実施の形態の分析用試料採取方法では、採取部3において試料ガス中に含まれるダイオキシン類を採取し、また、第一抽出用溶媒供給部5から採取部3に対して第一抽出用溶媒を供給することにより、フイルタ8で採取したダイオキシン類を速やかに抽出することができ、さらにこれにより得られたダイオキシン類含有抽出液を精製部31および濃縮部41において精製、濃縮することができるので、ダイオキシン類を含む流体の存在現場から採取した試料ガス中に含まれるダイオキシン類の分析用試料をその場において容易にかつ迅速に確保することができる。
【0061】
また、この分析用試料採取装置1では、採取部3のフイルタ保持体6が上述のように回転可能に構成され、しかもフイルタ8を2つ有しているので、採取部3において、フイルタ8による試料ガスからのダイオキシン類の採取と、他のフイルタ8により採取されたダイオキシン類の分析用試料の調製作業とを並行して効率的に実施することができる。
【0062】
なお、この実施の形態に係る分析用試料採取方法において用いられるフイルタ8は、採取したダイオキシン類が抽出用溶媒により抽出されたとき、実質的に洗浄された状態になる。したがって、ダイオキシン類が抽出された後のフイルタ8は、異なる試料ガス中に含まれるダイオキシン類を採取するために繰り返し再利用することができる。
【0063】
ところで、ダイオキシン類の分析方法として、ダイオキシン類の一種である2,3,4,7,8−PeCDFを指標とし、この指標物質に特異性を有する抗体による抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ技術が開発されている。このような分析方法においては、分析対象となるダイオキシン類の試料をジメチルスルホキシドに溶解し、その溶液に所定の抗体を加えて分析用試料を調製する必要があるが、この実施の形態に係る分析用試料採取方法において、第二抽出用溶媒としてジメチルスルホキシドを用いた場合、所要の抗体を加えるだけで上述の分析方法に直接適用可能な分析用試料を入手することができる。
【0064】
したがって、上述の採取方法に対して上述のイムノアッセイ技術を利用したダイオキシン類の分析装置を組合せれば、より具体的には、第三抽出溶媒供給路51と上述の分析装置の試料導入部とを接続すれば、試料ガスからのダイオキシン類の採取からその分析までをオンライン状態で速やかに実施することができる。
【0065】
[他の実施の形態]
(1)上述の分析用試料採取装置1において、フイルタ保持体6は、図2に一点鎖線で示すように、貫通孔6aの周囲にフイルタ8を加熱するためのヒータ6bを内蔵していてもよい。フイルタ8に対して第一抽出用溶媒供給部5から第一抽出用溶媒を供給する際に、このヒータ6bによりフイルタ8を加熱すると、フイルタ8で捕捉されたダイオキシン類をより少量の第一抽出用溶媒で抽出することができる。特に、第一抽出用溶媒として60℃に加熱されたn−ヘキサンを用いる場合は、フイルタ8での抽出操作時において、n−ヘキサンの温度を維持することができ、抽出効率を高めることができる。
【0066】
(2)上述の分析用試料採取装置1において、第一カラム保持体32は、図4に一点鎖線で示すように、各貫通孔32aの周囲に第一カラム34を加熱するためのヒータ38を内蔵していてもよい。このヒータ38により第一カラム34を加熱すると、第一抽出用溶媒排出路20からのダイオキシン類含有抽出液中に含まれる不純物が第一固定相においてより効果的に捕捉されるため、第一カラム34におけるダイオキシン類含有抽出液の精製効率をより高めることができる。
【0067】
(3)上述の分析用試料採取装置1において、第二カラム保持体42は、図5に一点鎖線で示すように、各貫通孔42aの周囲に第二カラム45を加熱するためのヒータ63を内蔵していてもよい。このヒータ63により第二カラム45を加熱すると、第二カラム45で捕捉されたダイキシン類をより少量の第二抽出用溶媒で抽出することができ、分析用試料の濃縮効率を高めることができる。
【0068】
(4)上述の各実施の形態では、採取部3において2つのフイルタ8を装着しているが、必要に応じて採取部3には3つ以上のフイルタ8を装着してもよい。この場合、精製部31および濃縮部41においてそれぞれ装着する第一カラム34および第二カラム45の個数は、フイルタ8の個数に応じて設定するのが好ましい。
【0069】
(5)上述の実施の形態では、フイルタ8、第一カラム34および第二カラム45をそれぞれ複数個用い、フイルタ8による試料ガスからのダイオキシン類の採取と、他のフイルタ8により採取されたダイオキシン類の分析用試料の調製作業とを並行して実施する場合について説明したが、本発明は、フイルタ8、第一カラム34および第二カラム45を一つずつ用い、試料ガスからのダイオキシン類の採取と当該ダイオキシン類の分析用試料の調製作業とからなる一連の作業を試料ガス毎に個別に繰り返しながら実施することもできる。
【0070】
(6)上述の各実施の形態では、フイルタ8として、繊維材料と無機系結合材とを含む成形体からなるものを用いているが、フイルタ8は、JIS K 0311:1999に例示されたダイオキシン類の採取装置と同等にダイオキシン類を採取可能なもの、すなわち、ガス状態および粒子状態の両方のダイオキシン類を同時に捕捉して採取可能なものであれば、他の形態のものが用いられてもよい。因みに、他の形態のフイルタとしては、例えば、WO99/37987号公報において開示されたもの、例えば、無機質ファイバーと活性炭とを含む成形体からなるものを挙げることができる。
【0071】
(7)上述の各実施の形態では、廃棄物の焼却炉から排出される排気ガス中に含まれるダイオキシン類の分析用試料を採取する場合について説明したが、本発明の分析用試料採取方法は、排気ガス以外の流体中に含まれるダイオキシン類の分析用試料を採取する場合についても同様に実施することができる。例えば、環境大気中に含まれるダイオキシン類、並びに工場廃水、海水、淡水および水道水等の水中に含まれるダイオキシン類の分析用試料を採取する場合においても、本発明の分析用試料採取方法を同様に実施することができる。
【0072】
実験例
粒子状のアルミナ(無機系結合材)を約20重量%含むアルミナ水分散液を調製し、このアルミナ水分散液中に繊維材料として平均繊維径が6μmで平均アスペクト比が2,000のアルミナ繊維(γ−アルミナ72重量%とシリカ28重量%とを含むもの)を加えて混合した。得られた成形材料を一端が閉鎖された円筒状に成形し、200℃で焼結した。これにより、開口端側の外径が19mm、閉鎖端側の外径が18mm、厚さが5mmおよび長さが120mmにそれぞれ設定された、重量が8.5gで嵩密度が0.38g/cm3の通気性を有する円筒状の成形体(フイルタ8の一例)を得た。なお、この成形体中に含まれるアルミナ繊維および粒子状のアルミナの量は、それぞれ5.7gおよび2.8gであった。
【0073】
得られた成形体に所定量のダイオキシン類を含む水溶液を通過させたところ、成形体を通過後の水溶液中には実質的にダイオキシン類が含まれていないことが確認できた。これより、上記成形体は、流体中に含まれるダイオキシン類の全量を実質的に捕捉して採取できることを確認した。
【0074】
次に、ダイオキシン類を採取した成形体を乾燥し、水分を除去した。そして、乾燥後の成形体に対して60℃に加熱されたn−ヘキサンを100ml供給し、成形体に採取されたダイオキシン類を抽出した。ここで、n−ヘキサンの流速は、表1に示すように設定した。そして、抽出に用いたn−ヘキサン中に含まれるダイオキシン類量をGC/MSを用いて定量分析した。結果を表1に示す。なお、表1に示すダイオキシン類量は、成形体に通過させた水溶液中に含まれるダイオキシン類量に対する割合である。表1によると、n−ヘキサンの流速を2〜5ml/分に設定した場合(実験例2、3および4の場合)、成形体に採取されたダイオキシン類の実質的に全量を抽出できたことがわかる。
【0075】
【表1】
Figure 2004191274
【0076】
次に、上述と同様にしてダイオキシン類を採取しかつ乾燥された成形体に対して60℃に加熱されたn−ヘキサンを1ml/分の流速(実験例1と同条件)で1,000ml供給し、成形体に採取されたダイオキシン類を抽出した。そして、n−ヘキサン中に含まれるダイオキシン類量をGC/MSを用いて定量分析したところ、n−ヘキサンを多量に用いたにも関わらず、成形体に通過させた水溶液中に含まれるダイオキシン類量の92%のダイオキシン類しか抽出できていないことが判明した。これより、成形体に供給するn−ヘキサンの流速を2ml/分未満に設定した場合、成形体により採取されたダイオキシン類の全量を抽出するのは困難なことがわかる。
【0077】
また、上述と同様にしてダイオキシン類を採取しかつ乾燥された成形体に対して60℃に加熱されたn−ヘキサンを6ml/分の流速(実験例5と同条件)で200ml供給し、成形体に採取されたダイオキシン類を抽出した。そして、n−ヘキサン中に含まれるダイオキシン類量をGC/MSを用いて定量分析したところ、成形体に通過させた水溶液中に含まれるダイオキシン類量の実質的に全量を抽出できたことが判明した。これより、成形体に供給するn−ヘキサンの流速を5ml/分より速く設定した場合、成形体により採取されたダイオキシン類の全量を抽出するのに多量のn−ヘキサンが必要なことがわかる。
【0078】
【発明の効果】
本発明に係るダイオキシン類の分析用試料採取方法は、上述の工程を含んでいるため、ダイオキシン類を含む流体の存在現場において、流体中に含まれるダイオキシン類の分析用試料を容易にかつ迅速に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係るダイオキシン類の分析用試料採取方法を実施するために用いられる分析用試料採取装置の概略図。
【図2】前記分析用試料採取装置において用いられるフイルタ保持体の右側面図。
【図3】前記分析用試料採取装置において用いられるフイルタの断面図。
【図4】前記分析用試料採取装置において用いられる第一カラム保持体の平面図。
【図5】前記分析用試料採取装置において用いられる第二カラム保持体の平面図。
【符号の説明】
1 分析用試料採取装置
5 第一抽出用溶媒供給部
8 フイルタ
34 第一カラム
44 第二抽出用溶媒供給部
45 第二カラム

Claims (8)

  1. ダイオキシン類を含む流体の存在現場において、前記流体に含まれる前記ダイオキシン類の分析用試料を採取するための方法であって、
    前記流体の一部を試料流体として採取し、前記ダイオキシン類を捕捉して採取可能なフイルタに前記試料流体を通過させる採取工程と、
    前記フイルタにより採取された前記ダイオキシン類を前記フイルタから抽出するための第一抽出用溶媒を、前記フイルタに対して供給するための第一供給工程と、
    前記フイルタからの前記第一抽出用溶媒を、極性物質を捕捉可能でありかつ前記ダイオキシン類が通過可能な第一固定相が充填された第一カラムに引き続き供給する第二供給工程と、
    前記第一カラムを通過した前記第一抽出用溶媒を、前記ダイオキシン類を捕捉可能な第二固定相が充填された第二カラムに引き続き供給する第三供給工程と、
    前記第一抽出用溶媒が通過後の前記第二カラムに対し、前記第一抽出用溶媒の供給方向とは逆方向に、前記ダイオキシン類を抽出可能でありかつ前記第一抽出用溶媒よりもダイオキシン類を溶解しやすい第二抽出用溶媒を引き続き供給する第四供給工程と、
    を含むダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  2. 前記フイルタ、前記第一カラムおよび前記第二カラムのそれぞれを少なくとも二つ用い、前記採取工程を実施後の前記フイルタに対する前記第一供給工程と、他の前記フイルタを用いた前記採取工程とを並行して実施すると共に、前記フイルタ毎に前記第一カラムおよび前記第二カラムをそれぞれ交換する、請求項1に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  3. 前記第二供給工程において前記第一カラムを加熱する、請求項1または2に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  4. 前記第一固定相が硫酸シリカゲルである、請求項1、2または3に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  5. 前記第二固定相が炭素系材料である、請求項1、2、3または4に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  6. 前記第一抽出用溶媒がn−ヘキサンである、請求項1、2、3、4または5に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  7. 40〜65℃に加熱された前記第一抽出用溶媒を2〜5ml/分の流速で前記フイルタに供給する、請求項6に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
  8. 前記第二抽出用溶媒がジメチルスルホキシドである、請求項1、2、3、4、5、6または7に記載のダイオキシン類の分析用試料採取方法。
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