JP2004143399A - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100重量部、針状又は板状無機物10〜60重量部及びその他の配合物からなる塩化ビニル系樹脂組成物であって、該塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、上記針状又は板状無機物を添加し、ミキサーにおいて周速度が5〜40m/sec又は剪断エネルギーが0.1〜20J/gの条件で混合してなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩化ビニル系樹脂は機械的強度、耐薬品性等に優れた特性を有する材料として多くの用途に使われており、雨樋や窓枠部材に使用する際には、熱収縮性、線膨張率を小さくするために塩化ビニル系樹脂に針状又は板状無機物を添加することが提案されている。
【0003】
しかし、このような無機物を添加することで耐衝撃性が悪くなるという欠点を有しており、耐衝撃性を改良するために種々の衝撃改良剤を添加することが提案されている。
【0004】
例えば、塩化ビニル系樹脂と針状又は板状無機充填剤と塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選択される衝撃改良剤と樹脂繊維からなる塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000―355646号公報
【0006】
しかしながら、上記塩化ビニル系樹脂組成物に、このような衝撃改良剤を添加しすぎると、得られた成形体は針状又は板状無機充填剤の添加の効果が得られなくなり、機械的強度、線膨張率、耐衝撃性等の性能が不足するという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、従来品に比べて優れた線膨張率、耐衝撃性を有する成形体を得ることができる塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部、針状又は板状無機物10〜60重量部及びその他の配合物からなる塩化ビニル系樹脂組成物であって、該塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、上記針状又は板状無機物を添加し、ミキサーにおいて周速度が5〜40m/secの条件で混合してなることを特徴とする。
【0009】
本発明で使用される塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体又は塩化ビニルを主成分とする塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。これらは単独で用いられても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0010】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のαオレフィン類;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。これらのその他の共重合性モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0011】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は600〜3000が好ましく、更に好ましくは800〜2000である。平均重合度が600未満であると機械的強度が不足する可能性があり、逆に平均重合度が3000を超えると成形が困難になることがある。
【0012】
尚、本発明において、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する
【0013】
又、本発明で使用される塩化ビニル系樹脂の好適な例として、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体が挙げられる。
【0014】
上記エラストマー成分は、塩化ビニル系樹脂に耐衝撃性を向上させるためのものであり、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である、少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなるアクリル系共重合体が好ましい。
【0015】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0016】
上記(メタ)アクリレートは、室温で柔軟性を有するのが好ましく、その単独重合体のガラス転移温度は−140℃以上0℃未満が好ましい。充分な柔軟性を、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂に付与するためには、その単独重合体のガラス転移温度は0℃未満が好ましく、工業的に一般に使用される(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、2−メチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘプチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、2−メチルノニル(メタ)アクリレート、2−エチルオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる
【0018】
尚、本発明において、単独重合体のガラス転移温度は、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」(1986年、培風館社)によった。
【0019】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;その単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満の範囲にはいらない(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0020】
上記多官能性モノマーは、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させ、更に、上記アクリル系共重合体を製造する際及び製造後の上記アクリル系共重合体の粒子の合着を抑制する効果を有している。
【0021】
上記多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記アクリル共重合体は、上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーと、上記多官能性モノマーとからなり、上記多官能性モノマーの配合量は、上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜10重量部である。
【0023】
上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0024】
又、異なる好適なエラストマー成分は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上−60℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなるアクリル系共重合体40〜90重量%に、単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と多官能性モノマー1.5〜10重量部の混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコア−シェル構造からなる共重合体である。
【0025】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0026】
上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上−60℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、共重合体粒子の中心部(以下コアとする)を形成し、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させるものであり、高速の歪みに対しても充分な柔軟性を有するのが好ましく、単独重合体のガラス転移温度が−60℃未満であることが好ましく、工業的に一般に使用される(メタ)アクリレート重合体のガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が好ましい。
【0027】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メチルヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ノニルアクリレート、2−メチルオクチルアクリレート、2−エチルヘプチルアクリレート、n−デシルアクリレート、2−メチルノニルアクリレート、2−エチルオクチルアクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;その単独重合体のガラス転移温度は−140℃以上−60℃未満の範囲にはいらない、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0029】
上記アクリル系共重合体は、上記ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーよりなるが、多官能性モノマーとしては前述の多官能性モノマーが使用される。又、上記多官能性モノマーの配合量は、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
【0030】
上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0031】
上記共重合体は、上記アクリル系共重合体40〜90重量%に、単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と多官能性モノマー1.5〜10重量部の混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコアーシェル構造からなる共重合体である。
【0032】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0033】
上記単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーはコアポリマー存在下で重合され、共重合体粒子の外殻部(以下シェルとする)の主成分を形成し、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させると共にコアの低ガラス転移温度のポリマーを被覆して共重合体粒子の粘着性を低減させる。
【0034】
従って、単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上であることが好ましく、ある程度の柔軟性を保持する上で0℃未満が好ましい。
【0035】
上記単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec −ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メチルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−エチルヘプチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、2−メチルノニルメタクリレート、2−エチルオクチルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;その単独重合体のガラス転移温度は−55℃以上0℃未満の範囲にはいらない(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0037】
上記混合モノマーは、上記ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーよりなるが、多官能性モノマーとしては前述の多官能性モノマーが使用される。
又、上記多官能性モノマーの配合量は、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、1.5〜10重量部が好ましい。
【0038】
上記多官能性モノマーの配合量は、少なくなると共重合体の粒子が合着しやすくなり、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0039】
上記共重合体は、前記アクリル系共重合体40〜90重量%に、混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコア−シェル構造からなる共重合体である。
【0040】
前記アクリル系共重合体の量は少なくなると、塩化ビニル系樹脂の柔軟性が減少して耐衝撃性が低下し、多くなると、共重合体粒子表面の粘着性が増し、塩化ビニル系樹脂の製造が困難になるので上記範囲が好ましい。
【0041】
上記ラジカル重合性モノマーと上記多官能性モノマーとを共重合する方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられ、これらの中では、耐衝撃性の発現性がよく、アクリル系共重合体の粒子径の制御が行い易い点から乳化重合法が好ましい。尚、上記共重合とは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等すべての共重合をいう。
【0042】
上記乳化重合法は、従来公知の任意の方法で行うことができ、例えば、必要に応じて、乳化分散剤、重合開始剤、pH調整剤、酸化防止剤等を添加して重合してもよい。
【0043】
上記乳化分散剤は、ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマーとの混合物(以下、モノマー混合物ともいう)の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率的に行うために用いるものである。
【0044】
上記乳化分散剤としては、乳化重合で一般に使用されている乳化分散剤であれば、特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。
【0045】
これらの中では、アニオン系界面活性剤が好ましく、上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート(第一工業製薬社製「ハイテノールN−08」)等が挙げられる。
【0046】
上記重合開始剤としては、乳化重合で一般に使用されている乳化分散剤であれば、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0047】
上記乳化重合法の種類は、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0048】
上記一括重合法は、重合反応器内に純水、乳化分散剤及びモノマー混合物を一括して添加し、窒素気流中で撹拌して充分乳化した後、反応器内を所定の温度に昇温して重合させる方法である。
【0049】
上記モノマー滴下法は、重合反応器内に純水、乳化分散剤及び重合開始剤を添加し、窒素気流下による酸素除去を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、モノマー混合物を一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0050】
上記エマルジョン滴下法は、モノマー混合物、乳化分散剤及び純水を撹拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、重合反応器内に純水及び重合開始剤を供給し、窒素気流下による酸素除去を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0051】
上記コア−シェル構造の共重合体の製造方法も、特に限定されず、例えば、先ず、コア部を形成する、上記ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマー、純水及び乳化剤から調整した乳化モノマーに重合開始剤を加えて重合反応を行い、コア部の樹脂粒子を形成し、次いでシェル部を構成する混合モノマー(上記ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマー)、純水及び乳化剤から調整した乳化モノマーを添加し、上記コア部にシェル部をグラフト共重合させる方法等が挙げられる。
【0052】
このようにして得られた共重合体は、コア部の表面をシェル部が三次元的に覆い、シェル部を構成する共重合体とコア部を構成する共重合体とが部分的に共有結合し、シェル部が三次元的な架橋構造を形成している。
【0053】
上記方法において、上記シェル部のグラフト共重合は、上記コア部の重合と同一の重合行程で連続して行ってもよい。
【0054】
上記コア部とシェル部の割合は、上記乳化重合法において、コア部を形成する混合モノマーとシェル部を形成する混合モノマーとの割合を調整することによって調節可能である。
【0055】
上記したような重合方法において、反応終了後に得られるアクリル系共重合体の固形分比率は、アクリル系共重合体の生産性、重合反応の安定性の点から10〜60重量%が好ましい。
【0056】
エラストマー成分の平均粒子径は、0.01μmより小さくなると微粒子を多数含むことになり成形時の金型付着、外観不良の原因となり、また平均粒子径が大きすぎても耐衝撃性、機械的強度がともに低下するので0.01〜1μmが好ましい。
【0057】
上記グラフト共重合体は、エラストマー成分が少なくなると耐衝撃性が低下し、逆に多くなると曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下するので、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%がグラフト共重合されるのが好ましく、より好ましくはエラストマー成分4〜20重量%と塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー80〜96重量%である。
【0058】
上記塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーは、塩化ビニルを主体とする。即ち、塩化ビニル単独若しくは塩化ビニルを主体(50重量%以上含む)とする、塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0059】
上記塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0060】
上記グラフト共重合体中のポリ塩化ビニルの重合度は、小さすぎても大きすぎても充分な成形品の成形性が得られにくくなるため、300〜4000が好ましく、より好ましくは400〜1600である。
【0061】
上記エラストマー成分に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト重合する方法としては、特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられ、懸濁重合法が好ましい。
【0062】
上記懸濁重合法により重合を行う際には、分散剤、重合開始剤等を用いてもよい。
【0063】
上記分散剤は、上記エラストマー成分の分散安定性を向上させ、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーのグラフト重合を効率的に行う目的で添加されるものであり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩−アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤がグラフト共重合に有利であるという理由から好適に用いられる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、 αー クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0065】
又、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合する際に、重合中に重合槽内に付着するスケールを減少させる目的で、上記エラストマー成分の分散溶液に凝集剤を添加しても良い。更に、必要に応じて、pH調整剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0066】
上記懸濁重 法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、温度調整機及び撹拌機を備えた反応容器に、純水、エラストマー成分分散溶液、分散剤、重合開始剤及び必要に応じて水溶性増粘剤、重合度調節剤を投入する。
【0067】
その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に撹拌条件下で塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーを投入した後、反応容器内をジャケットにより加熱し、グラフト重合を行う。
【0068】
このとき、重合温度は30〜90℃、重合時間は2〜20時間が好ましい。
上記した懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、つまり重合温度を制御することが可能である。
【0069】
反応終了後は、未反応の塩化ビニル等を除去してスラリー状にし、更に脱水乾燥することによりグラフト共重合体が得られる。
【0070】
上記の製造方法で得られたグラフト共重合体は、アクリル系共重合体にポリ塩化ビニルが直接グラフト結合しているので、耐衝撃性に優れるとともに機械的強度にも優れる。
【0071】
本発明で使用される無機物は針状又は板状の無機物である。針状とは長径が短径の3倍以上の針状、紡錘状、円柱状等の粒子形を意味する。また、板状とはいわゆる板状だけでなく、鱗片状、薄片状の形状のものも意味する。
【0072】
上記針状無機物としては、例えば、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、板状無機物としては、例えば、タルク、マイカや合成ハイドロサルタイトが挙げられ、ウォラストナイトが好適に使用される。
【0073】
これらの無機物の添加量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、10〜60重量部である。添加量が10重量部未満では、線膨張率の改善効果が不十分であり、また60重量部を越えると耐衝撃性、成形加工性が低下する。
【0074】
本発明において使用されるその他の配合剤とは、塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に一般的に添加されている配合剤であり、例えば、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、無機充填剤、可塑剤等が挙げられる。
【0075】
上記熱安定剤としては、塩化ビニル樹脂系組成物を成形する際に使用されている熱安定剤であれば、特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
上記安定化助剤としては、塩化ビニル樹脂系組成物を成形する際に使用されている安定化助剤であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記滑剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている滑剤であれば、特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている加工助剤であれば、特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
上記酸化防止剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている酸化防止剤であれば、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
上記光安定剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている光安定剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記顔料としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている顔料であれば、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記無機充填剤としては塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている無機充填剤であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は上記塩化ビニル系樹脂、針状又は板状無機物及びその他の配合物からなるが、塩化ビニル系樹脂とその他の配合物を混合した後に針状又は板状無機物をミキサーの周速度が5〜40m/secの条件で混合する。
【0085】
針状又は板状無機物をその他の配合物より先に、あるいは同時に混合すると、混合時に過度の剪断がかかり針状又は板状無機物が折れ、アスペクト比が小さくなってしまい線膨張率が悪化してしまうので、塩化ビニル系樹脂とその他の配合物を混合した後に針状又は板状無機物を混合するのである。
【0086】
又、針状又は板状無機物の混合する場合のミキサーの周速度が5m/secより遅いと、針状又は板状無機物の分散が悪くなり、成形品に凝集物が発生し、物性低下や外観不良を起こす。一方、ミキサーの周速度が40m/secより速いと針状又は板状無機物が折れ、アスペクト比が小さくなってしまい線膨張率が悪化してしまうので5〜40m/secの条件で混合するのであり、好ましくは10〜30m/secである。
【0087】
又、針状又は板状無機物を混合する際の混合時間は、短いと針状又は板状無機物の分散が悪くなり、成形品に凝集物が発生し、物性低下や外観不良が発生し、長くなると針状又は板状無機物が折れ、アスペクト比が小さくなってしまい線膨張率が悪化してしまうので30秒〜10分が好ましく、より好ましくは1分〜5分である。
【0088】
請求項2記載の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部、針状又は板状無機物10〜60重量部及びその他の配合物からなる塩化ビニル系樹脂組成物であって、該塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、上記針状又は板状無機物を添加し、ミキサーにおいて剪断エネルギーが0.1〜20J/gの条件で混合してなることを特徴とする。
【0089】
塩化ビニル系樹脂組成物をミキサーで混合する際に、塩化ビニル系樹脂組成物が受ける剪断エネルギーE(J/g)は下記式で求められる。
E=4000W×T×Y
尚、式中、Wは使用時負荷(ミキサーに塩化ビニル系樹脂組成物を供給して回転した時の負荷)−無負荷(空のミキサーを回転した時の負荷)(KW)、Tは混合時間(分)、Yはバッチ仕込量(Kg)を示す。
【0090】
剪断エネルギーが0.1J/ g未満で混合された際には、針状又は板状無機物の分散が悪くなり、成形品に凝集物が発生し、物性低下や外観不良が発生する。一方、剪断エネルギーが20J/ g以上になると、針状又は板状無機物が折れ、アスペクト比が小さくなってしまい線膨張率が悪化してしまうので、混合の際の剪断エネルギーは0.1〜20J/ gであり、好ましくは、1〜15J/ gである。
【0091】
混合方法については、ホットブレンドとコールドブレンドのいずれの方法を用いても良いが、針状又は板状無機物の分散性の優れたホットブレンドが好ましい。
【0092】
上記ミキサーとしては、一般に塩化ビニル系樹脂のコンパウンディングに用いられるミキサーであれば良く、例えば、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等が挙げられる。
【0093】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から成形体を成形する方法は、従来公知の任意の方法が採用でき、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等が挙げられる。
【0094】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の例に限定されるものではない。
【0095】
乳化モノマーの調製
2−エチルヘキシルアクリレート40重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.2重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート0.5重量部及び純水24重量部を混合して、コア層形成用乳化モノマーを調製した。
【0096】
又、n−ブチルアクリレート60重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.3重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート0.5重量部及び純水36重量部混合して、シェル層形成用乳化モノマーを調製した。
【0097】
アクリル系共重合体の作製
次に撹拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、純水160重量部を供給し、反応器内の酸素を窒素により置換した後、撹拌下で純水の温度を70℃まで昇温した。昇温終了後、反応器に過硫酸アンモニウム0.5重量部とコア層形成用乳化モノマーの50重量%を一括して投入し、重合を開始した。
【0098】
続いて、コア層形成用モノマーの残りを滴下した。更に、コア層形成用モノマーの滴下が終了次第、シェル層形成用乳化モノマーを順次滴下した。
【0099】
全ての乳化モノマーの滴下を3時間で終了し、その後、1時間の熟成期間をおいた後、重合を終了して固形分濃度約30重量%、粒子径0.1μmのアクリル系共重合体ラテックス(以下「ラテックス」という)を得た。
【0100】
グラフト共重合体の作製
撹拌機及びジャケットを備えた重合器に、純水170重量部、上記ラテックス9重量部、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールL−8)の3重量%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、メトローズ60SH50)の3重量%水溶液2. 5重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0. 03重量部及び硫酸アルミニウムをアクリル系共重合体固形分9重量部に対してアルミニウムイオンが3000ppmとなるよう一括投入した。
【0101】
次いで、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、攪拌条件下で塩化ビニルモノマー100重量部を投入した。その後、ジャケット温度の制御により重合温度57.5℃にてグラフト重合を開始した。
【0102】
重合器内の圧力が0.72MPaの圧力まで低下したところで塩化ビニルモノマーの重合率が80%になるので反応終了を確認し、消泡剤(東レ社製、東レシリコンSH5510)を加圧添加した後に反応を停止した。
【0103】
その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系樹脂を得た。得られた塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルの重合度は約1000であり、アクリル系共重合体の含有量は5重量%であった。
【0104】
(実施例1〜4、6)
得られた塩化ビニル系樹脂100重量部、有機錫系熱安定剤(三共有機合成社製、商品名:ONZ−7F)1.0重量部、滑剤A(三井化学社製、商品名:HIWAX220MP)0.5重量部及び滑剤B(理研ビタミン社製、商品名:SL−02)0.5重量部の比率で20Lスーパーミキサー(カワタ社製)に供給し、32m/secの周速度で攪拌しながら110℃まで昇温した。
【0105】
その後、ウォラストナイト(キンセイマテック社製、商品名:SH600)40重量部を添加し、表1に示した周速度で3分間攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。尚、塩化ビニル系樹脂組成物の1バッチ仕込量は7Kgであった。
【0106】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物をラボプラストミル押出機(ブラベンダー社製、20mmコニカル)に供給し、樹脂温度190℃、押出量5kg/hrの条件で押出を行い、幅30mm、厚さ2mmの長尺板状成形体を得た。
【0107】
得られた板状成形体を用いて、線膨張率と耐衝撃性を測定し、外観を観察してその結果を表1に示した。
【0108】
(実施例5、7)
20Lスーパーミキサー(カワタ社製)に代えて、200Lスーパーミキサー(カワタ社製)を用い、塩化ビニル系樹脂組成物の仕込量を表1に示した通り変更し、ウォラストナイトの添加後に表1に示した周速度で攪拌混合した以外は実施例1で行ったと同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0109】
(実施例8、9)
20Lスーパーミキサー(カワタ社製)に代えて、500Lスーパーミキサー(カワタ社製)を用い、塩化ビニル系樹脂組成物の仕込量を表1に示した通り変更し、ウォラストナイトの添加後に表1に示した周速度で攪拌混合した以外は実施例1で行ったと同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0110】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を押出機(プラスチック工学研究所社製、商品名:BT−50、50mmパラレル)に供給し、樹脂温度195℃、押出量20kg/hrの条件で押出を行い、雨樋形状の成形体を得た。
【0111】
得られた雨樋形状の成形体を用いて、線膨張率と耐衝撃性を測定し、外観を観察してその結果を表1に示した。
【0112】
(比較例1)
得られた塩化ビニル系樹脂100重量部、ウォラストナイト(キンセイマテック社製、商品名:SH600)40重量部、有機錫系熱安定剤(三共有機合成社製、商品名:ONZ−7F)1.0重量部、滑剤A(三井化学社製、商品名:HIWAX220MP)0.5重量部及び滑剤B(理研ビタミン社製、商品名:SL−02)0.5重量部を同時に200Lスーパーミキサー(カワタ社製)に供給し、32m/secの周速度で攪拌しながら110℃まで昇温し攪拌混合した。尚、塩化ビニル系樹脂組成物の1バッチ仕込量は70Kgであった。
【0113】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、実施例1で行ったと同様にして雨樋形状の成形体を得、線膨張率と耐衝撃性を測定し、外観を観察してその結果を表1に示した。
【0114】
(比較例2)
20Lスーパーミキサー(カワタ社製)に代えて、210Lリボンブレンダー(カワタ社製)を用い、ウォラストナイトの添加後に表1に示した周速度で攪拌混合した以外は実施例1で行ったと同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。尚、塩化ビニル系樹脂組成物の1バッチ仕込量は70Kgであった。
【0115】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、実施例1で行ったと同様にして雨樋形状の成形体を得、線膨張率と耐衝撃性を測定し、外観を観察してその結果を表1に示した。
【0116】
線膨張率と耐衝撃性の測定方法及び外観の評価方法は以下の通りである。
(1)線膨張率
プラスチックの線膨張試験方法(JIS K 7197)に準拠し、線膨張率を測定した。測定温度は23℃〜70℃であり、昇温速度は5℃/min、単位は(10−5/℃)である。
【0117】
(2)耐衝撃性
硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法(JIS K 7111)に準拠し、エッジワイズ衝撃試験片でシャルピー衝撃強度を測定した。測定温度は23℃であり、単位は(Kj/m2 )である。SI単位換算:1Kgf・cm/cm2 =0.9807Kj/m2
【0118】
(3)外観
得られた成形体の外観を目視で下記の通り評価した。
○;表面に異物なし
×;表面に異物あり
【0119】
【表1】
【0120】
【発明の効果】
請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物の構成は上述の通りであり、塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、針状又は板状無機物を添加し、ミキサーの周速度が5〜40m/secの条件で混合するので、針状又は板状無機物が細かく破断されることがなく、初期のアスペクト比を保持した針状又は板状無機物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
【0121】
請求項2記載の塩化ビニル系樹脂組成物の構成は上述の通りであり、塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、針状又は板状無機物を添加しミキサーにおいて剪断エネルギーが0.1〜20J/gの条件で混合するので、針状又は板状無機物が細かく破断されることがなく、初期のアスペクト比を保持した針状又は板状無機物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
【0122】
請求項3記載の塩化ビニル系樹脂組成物は、針状又は板状無機物が塩化ビニル系樹脂100重量部に対し10〜60重量部添加されているので、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から得られる成形体は、線膨張率が小さく、耐衝撃性が優れており、外観も美麗である。
【0123】
請求項4記載の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂が、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂であるとより耐衝撃性が優れている。
【0124】
従って、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から得られる成形体は雨樋、窓枠部材等の住宅資材、硬質塩化ビニル管、継手などの管工機材等で特に線膨張率、耐衝撃性を必要とする用途に好適に用いられる。
Claims (4)
- 塩化ビニル系樹脂100重量部、針状又は板状無機物10〜60重量部及びその他の配合物からなる塩化ビニル系樹脂組成物であって、該塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、上記針状又は板状無機物を添加し、ミキサーにおいて周速度が5〜40m/secの条件で混合してなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部、針状又は板状無機物10〜60重量部及びその他の配合物からなる塩化ビニル系樹脂組成物であって、該塩化ビニル系樹脂にその他の配合剤を混合した後に、上記針状又は板状無機物を添加し、ミキサーにおいて剪断エネルギーが0.1〜20J/gの条件で混合してなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
- 塩化ビニル系樹脂が、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 針状無機物がウォラストナイトであることを特徴とする請求項12又は3記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
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