JPH1087762A - 塩化ビニル系グラフト共重合体及びその製造方法 - Google Patents

塩化ビニル系グラフト共重合体及びその製造方法

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JPH1087762A
JPH1087762A JP24196096A JP24196096A JPH1087762A JP H1087762 A JPH1087762 A JP H1087762A JP 24196096 A JP24196096 A JP 24196096A JP 24196096 A JP24196096 A JP 24196096A JP H1087762 A JPH1087762 A JP H1087762A
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JP
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copolymer
monomer
layer
vinyl chloride
acrylate
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Application number
JP24196096A
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English (en)
Inventor
Takahiro Oomura
貴宏 大村
Shigeru Tanaka
茂 田中
Yoshinobu Suenaga
義伸 末永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩化ビニル系樹脂の機械的強度を保持した状
態で、耐衝撃性の優れた成形品が得られる塩化ビニル系
樹脂及びその製造法を提供する。 【解決手段】 高ガラス転移温度樹脂/低ガラス転移温
度樹脂/高ガラス転移温度樹脂からなる特定の3層構造
を有するアクリル系共重合体ラテックスに、塩化ビニル
又は塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフ
ト共重合することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐衝撃性の優れた
塩化ビニル系グラフト共重合体及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】本来、塩化ビニル系樹脂は、機械的強
度、耐候性、耐薬品性に於いて優れた材料であるため、
硬質塩化ビニル管、雨樋、サイディング材など多くの用
途に使用されている。しかし、長期耐候性と耐衝撃性が
要求される屋外の硬質塩化ビニル系樹脂の用途には、ポ
リブタジエン、スチレン−ブタジエンゴムなどの従来の
不飽和弾性体をベースとした耐衝撃改良剤では不十分で
あった。その為、ガラス転移温度が低く、耐候性の優れ
たアクリル系共重合体に塩化ビニルをグラフト共重合さ
せた塩化ビニル系樹脂が提案され、例えば、特開昭60
−255813号公報には、乳化重合によって得られた
アクリル系共重合体ラテックスの存在下で、塩化ビニル
を懸濁重合する方法が開示されている。
【0003】しかし、硬質塩化ビニル系樹脂に上述のよ
うなガラス転移温度が低い弾性体成分を混和すると、得
られた組成物は、一般に、弾性体成分の混和量の増加と
共に、引張強度、曲げ弾性率などの機械的強度が低下す
る傾向にあり、機械的強度を維持しながら、耐衝撃性を
向上させることが、工業的に要望され続けてきた。これ
を改善する方法として、例えば、特開昭61−1951
06号公報には、単独重合体の2次転移温度が−10℃
以下のアルキル(メタ)アクリレートとガラス転移温度
が室温より高いスチレンモノマー及び多官能性モノマー
との3者のアクリル系共重合に塩化ビニルをグラフト共
重合させる方法が提案されている。しかし、曲げ弾性率
などの機械的強度を維持しながら、耐衝撃性を向上させ
るには十分ではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の問題
点を解消して、従来の塩化ビニル系樹脂の機械的強度を
保持した状態で、耐衝撃性の優れた成形品が得られる塩
化ビニル系グラフト共重合体及びその製造法を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1に記載の
発明(以下、第1発明という)の塩化ビニル系グラフト
共重合体の製造方法は、単独重合体のガラス転移温度が
高いラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーとから
なる第1層共重合体の粒子表面に、単独重合体のガラス
転移温度が低い(メタ)アクリレートと多官能性モノマ
ーとからなる混合モノマーをグラフト共重合させて、第
1層共重合体の上に第2層共重合体を形成させ、該第2
層共重合体の表面に、さらに単独重合体のガラス転移温
度が高いラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーと
からなる混合モノマーをグラフト共重合させて、第2層
共重合体の上に第3層共重合体を形成させ、得られた3
層構造のアクリル系共重合体ラテックスに、塩化ビニル
または塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラ
フト共重合することを特徴とする。
【0006】本願の請求項2に記載の発明(以下、第2
発明という)の塩化ビニル系グラフト共重合体の製造方
法は、第1発明に於いて、第1層共重合体及び第3層共
重合体を形成するラジカル重合性モノマーが、単独重合
体のガラス転移温度が30以上180℃以下であり、第
2層共重合体を形成するラジカル重合性モノマーが、単
独重合体のガラス転移温度が−140℃以上30℃未満
であることを特徴とする。
【0007】本願の請求項3に記載の発明(以下、第3
発明という)の塩化ビニル系グラフト共重合体は、第1
発明又は第2発明の製造方法によって得られることを特
徴とする。
【0008】第1発明の塩化ビニル系グラフト共重合体
の製造方法は、下記に説明する特定の3層構造を有する
アクリル系共重合体ラテックスに、塩化ビニル又は塩化
ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合
することを特徴とする。
【0009】特定の3層構造を有するアクリル系共重合
体ラテックスは、上述の第1層〜第3層共重合体の3種
類の共重合体から構成される微粒子であって、第1層共
重合体は、上記の微粒子の芯を構成し、その芯の外表面
に第2層共重合体、更にその外表面に第3層共重合体が
覆われた構造になり、第1層共重合体と第2層共重合体
との界面及び第2層共重合体と第3層共重合体との界面
は、それぞれの界面を構成する成分のモノマーのグラフ
ト共重合体が形成され、各層の界面は、強固に相溶・結
合している。
【0010】上記3層構造を有するアクリル系共重合体
ラテックスに於いて、第1層及び第3層共重合体は、い
ずれも、単独重合体のガラス転移温度が高いラジカル重
合性モノマー(A)と多官能性モノマー(B)との共重
合体であり、第2層共重合体は、単独重合体のガラス転
移温度が低い(メタ)アクリレート(C)と多官能性モ
ノマー(B)との共重合体との共重合体からなる。
【0011】従って、第1層及び第3層共重合体は、第
2層共重合体よりも、相対的に、ガラス転移温度が高く
て硬い骨格の高分子鎖を有する高分子化合物であり、こ
れを形成する単独重合体のガラス転移温度が高いラジカ
ル重合性モノマー(A)は、第2発明の如く、単独重合
体のガラス転移温度が30以上180℃以下であるもの
が好ましく、これを用いて得られる塩化ビニル系グラフ
ト共重合体が、常温で使用される場合に充分な靱性があ
るものとなる。30℃未満の場合は、グラフト共重合体
が柔軟過ぎて、機械的強度が低くなり、180℃を超え
ると、硬すぎて耐衝撃性が低くなる。尚、第1層及び第
3層共重合体は、同一であってもよいし、異なっていて
もよい。
【0012】単独重合体のガラス転移温度が30以上1
80℃以下のラジカル重合性モノマー(A)としては、
例えば、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレ
ート、n−プロピルメタアクリレート、イソプロピルメ
タアクリレート、イソブチルメタアクリレート、sec
−ブチルメタアクリレート、t−ブチル(メタ)アクリ
レート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタア
クリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアク
リレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒド
ロキシエチルメタアクリレート、2−アクリロイルオキ
シエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチ
レン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−
クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニ
トリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸
ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルなどが
挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、併用さ
れてもよい。
【0013】第2層共重合体で、柔軟な骨格の高分子鎖
を形成する単独重合体のガラス転移温度が低い(メタ)
アクリレート(C)としては、第2発明の如く、単独重
合体のガラス転移温度が−140以上30℃未満である
ものが好ましく、これを用いて得られる塩化ビニル系グ
ラフト共重合体が、常温使用に於いて、充分な耐衝撃性
のものとなる。−140℃未満の場合は、これを用いて
得られる塩化ビニル系グラフト共重合体が、常温に於い
て、低温耐衝撃性は満たされるが、柔軟すぎて充分な機
械的強度が低くなり、30℃以上になると、耐衝撃性が
低くなる。
【0014】単独重合体のガラス転移温度が−140以
上30℃未満の(メタ)アクリレート(C)としては、
例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n
−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、
n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレ
ート、sec−ブチルアクリレート、クミルアクリレー
ト、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル
(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレ
ート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−
エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メ
タ)アクリレート、2−メチルオクチル(メタ)アクリ
レート、2−エチルヘプチル(メタ)アクリレート、n
−デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル
(メタ)アクリレート、パルミチルメタアクリレート、
ステアリルメタアクリレート等のアルキル(メタ)アク
リレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒ
ドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げら
れ、これらは単独で使用されてもよいし、併用されても
よい。
【0015】多官能性モノマー(B)は、3層構造のア
クリル系共重合体ラテックス粒子を重合するに当たり、
主に3つの役割がある。即ち、第1には、各層のラテッ
クス共重合体を架橋して、塩化ビニル系グラフト共重合
体の耐衝撃性を向上させること、第2には、重合時や重
合後に、水中分散液でラテックスが合着するのを防止す
ること、第3には、3つの層のラテックスを段階的に重
合する時、添加するモノマーが、重合を完了した層に拡
散して、混合するのを抑えて、理想的な3層構造の粒子
を合成することにある。
【0016】多官能性モノマー(B)としては、ジ(メ
タ)アクリレートとして、例えば、エチレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)ア
クリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリ
レート等が挙げられ、トリ(メタ)アクリレートとし
て、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アク
リレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール
トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】又、他の多官能性モノマーとして、例え
ば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレー
ト、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリル
フマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシ
アヌレートなどのジアリル又はトリアリル化合物、ジビ
ニルベンゼン、ブタジエンなどのジビニル化合物などが
挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、併用さ
れてもよい。
【0018】ラテックスの第1層から第3層の共重合体
を形成するに当たり、上記多官能性モノマー(B)の添
加量は、特に、限定されるものではないが、ラジカル重
合性モノマー(A)又は(C)100重量部に対して、
0.1〜30重量部が好ましく、さらに好ましくは、
0.3〜8重量部である。0.1重量部未満の場合は、
各層のモノマー成分の混合が起こって、塩化ビニル系グ
ラフト共重合体の耐衝撃性が低下し、30重量部を超え
ると、過度の架橋が起こり、得られる塩化ビニル系グラ
フト共重合体の耐衝撃性が得られなくなる。
【0019】3層構造のアクリル系共重合体ラテックス
を構成する各層の重量比は、特に限定されるものではな
いが、耐衝撃性の向上を行う上で、弾性成分である第2
層共重合体100重量部に対し、第1層共重合体は、5
〜150重量部、第3層共重合体は、10〜200重量
部が好ましい。上記範囲を逸脱すると、充分な耐衝撃性
を有する塩化ビニル系グラフト共重合体が得られない。
【0020】上記3層構造のアクリル系共重合体ラテッ
クスを得る方法としては、特に限定されるものではない
が、例えば、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられ
る。これらの中で、耐衝撃性が発現し易く、ラテックス
粒子の制御が容易である点から、乳化重合法が好まし
い。
【0021】乳化重合に使用される乳化分散剤は、モノ
マーを水中で乳化させて、安定した粒子して重合をする
目的で添加され、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニ
オン系界面活性剤、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、セルロー
ス系分散剤、ゼラチン等が挙げられ、特に、アニオン系
界面活性剤のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテ
ルサルフェート(第一工業製薬社製、商品名「ハイテノ
ールN−08」)が好適に使用される。
【0022】乳化重合の重合開始剤としては、例えば、
過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等
の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウ
ロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイ
ソブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。又、
上記乳化重合法では、必要に応じて、pH調節剤、酸化
防止剤等が添加されても良い。
【0023】乳化重合法には、モノマーの添加方法の相
違から、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴
下法の3つに大別される方法がある。一括重合法とは、
例えば、ジャケット付き重合反応容器内に純水、乳化分
散剤、重合開始剤、モノマー類を一括して添加し、窒素
ガスを導入して、酸素を除去し、次に、窒素ガスで加圧
して、十分攪拌して乳化させ、しかる後に、ジャケット
に熱媒体を導入して加熱重合する方法である。
【0024】モノマー滴下法とは、例えば、ジャケット
付き重合反応容器内に純水、乳化分散剤、重合開始剤を
入れ、窒素ガスを導入して、酸素を除去し、次に、窒素
ガスで加圧して、十分攪拌して乳化させ、しかる後に、
ジャケットに熱媒体を導入して反応容器を加熱して置い
て、モノマーを所定量ずつ滴下して徐々に重合する方法
である。
【0025】エマルジョン滴下法とは、モノマー、純
水、乳化分散剤を攪拌して十分に乳化することにより、
予め乳化モノマーを調製して置き、次いで、ジャケット
付き重合反応容器内に純水、重合開始剤を入れて攪拌
し、窒素ガスを導入して、酸素を除去し、次に、窒素ガ
スで加圧して、しかる後に、ジャケットに熱媒体を導入
して反応容器を加熱して置いて、乳化モノマーを所定量
ずつ滴下して重合する方法である。更に、エマルジョン
滴下法に於いて、重合初期に上記乳化モノマーの一部を
一括添加(以下、シードモノマーと呼ぶ)し、しかる後
に、残りの乳化モノマーを滴下する方法を用いれば、シ
ードモノマーの量を変化させることにより、ラテックス
の粒子径を容易に制御することができる。
【0026】3層構造のアクリル系共重合体ラテックス
を形成するには、上述の3つのモノマー添加方法のいず
れを採用しても構わない。具体的に例示すると、高ガラ
ス転移温度の第1層共重合体ラテックスを作製する為
に、混合モノマー又は乳化モノマーを一括添加若しくは
滴下して、乳化重合を行って、その第1層共重合体ラテ
ックス粒子を合成する。続いて、得られた第1層共重合
体ラテックス存在下に、新たに第2層共重合体となる混
合モノマー又は乳化モノマーを一括添加若しくは滴下し
て、乳化重合を行って、第1層共重合体ラテックスの外
側に、第2層共重合体である弾性成分の共重合体が形成
されたラテックスが得られる。第3層共重合体について
も、第2層共重合体と同様にして、高ガラス転移温度の
第3層になる混合モノマーを添加して乳化重合を行い、
3層構造のアクリル系共重合体ラテックスが得られる。
【0027】3層構造のアクリル系共重合体ラテックス
の樹脂固形分は、特に限定されるものではないが、ラテ
ックスの生産性、重合反応の安定性から考慮して、10
〜60重量%が好ましい。又、該アクリル系共重合体ラ
テックスの平均樹脂粒子径は、0.01〜1μmが好ま
しい。0.01μm未満の場合は、塩化ビニル系グラフ
ト共重合体の耐衝撃性が低下する傾向にあり、1μmを
超えると、耐衝撃性、引張強度が共に低下する。
【0028】3層構造のアクリル系共重合体ラテックス
には、ラテックスの機械的安定性を向上させる目的で、
ラテックス重合反応終了後、所定量の保護コロイドが、
適宜、添加されても構わない。
【0029】3層構造のアクリル系共重合体(ラテック
スの固形分)の塩化ビニル系グラフト共重合体に占める
割合は、特に、限定されるものではないが、1〜30重
量%が好ましく、さらに好ましくは、4〜10重量%で
ある。1重量%未満では、充分な耐衝撃性が得られず、
30重量%を超えると、曲げ強度や引張強度等の機械的
強度が低下する。
【0030】3層構造のアクリル系共重合体ラテックス
に、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主成分とするモノ
マーをグラフト共重合させる方法に於いて、塩化ビニル
を主成分とするモノマーとは、50重量%以上の塩化ビ
ニルとこれと共重合可能なビニルモノマーとの混合物を
意味し、共重合可能なビニルモノマーは、通常公知のビ
ニルモノマーであって、例えば、酢酸ビニル、アルキル
(メタ)アクリレート、アルキルビニルエーテル、エチ
レン、フッ化ビニル、マレイミドなどが挙げられ、これ
らは単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
【0031】3層構造のアクリル系共重合体ラテックス
に、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主成分とするモノ
マーをグラフト共重合させる方法としては、特に、限定
されるものではないが、塊状重合法、溶液重合法、乳化
重合法、懸濁重合法が挙げられるが、経済性及び得られ
る塩化ビニル系樹脂の熱安定性などの諸物性から考慮し
て、懸濁重合法が好適である。懸濁重合法には、分散剤
及び油溶性重合開始剤が使用され、重合中に、重合槽内
に、スケールが付着するのを減少させるために、3層構
造のアクリル系共重合体ラテックスに、凝集剤を添加さ
せても良い。
【0032】分散剤としては、3層構造のアクリル系共
重合体の分散安定性を向上させ、塩化ビニル単独又は塩
化ビニルを主成分とするモノマーのグラフト重合を効果
的に行う目的で添加され、例えば、ポリ(メタ)アクリ
ル酸、(メタ)アクリル酸塩−アルキルアクリレート共
重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコー
ル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル及びその部
分鹸化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプ
ン、無水マレイン酸−スチレン共重合体などが挙げら
れ、これらは単独で使用されてもよいし、併用されても
よい。
【0033】油溶性重合開始剤は、水溶性重合開始剤よ
りも該アクリル系共重合体に対する塩化ビニルのグラフ
ト効率が向上するという理由から選択され、例えば、ラ
ウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレ
ート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオ
クチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキ
シネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノ
エート等の有機パーオキサイド類、2,2−アゾビスイ
ソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチ
ルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。又、
懸濁重合法では、必要に応じて、pH調整剤、酸化防止
剤などが添加されてもよい。
【0034】上記懸濁重合法の具体的な方法を例示する
と、攪拌機、ジャケットを備えた耐圧反応容器に、純
水、3層構造のアクリル系共重合体ラテックス、分散
剤、油溶性重合開始剤及び水溶性増粘剤(保護コロイ
ド)、必要に応じて、重合調節剤を投入する。 しかる
後に、真空ポンプで反応容器内の空気を排除し、攪拌し
ながら、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主成分とする
モノマーを投入し、反応容器をジャケットを通じて加熱
し、重合を開始させる。上記の重合反応は発熱を伴うの
で、ジャケットの温度を調節することにより、反応温度
が制御できる。反応終了後は、未反応の塩化ビニルなど
のモノマーを除去して、スラリー状にし、更に脱水乾燥
して、耐衝撃性の塩化ビニル系グラフト共重合体が製造
される。
【0035】上記塩化ビニル系樹脂の中のグラフトして
いない塩化ビニル系樹脂の重合度は、300〜2000
が好ましく、更に好ましくは、400〜1600であ
る。300未満では、得られる塩化ビニル系グラフト共
重合体の物性が充分得られず、2000を超えると、成
形時の流動性に乏しく、各種成形に困難を生じる。
【0036】第3発明の塩化ビニル系グラフト共重合体
は、第1発明又は第2発明の製造方法によって得られ、
成形する時に必要に応じて、熱安定剤、安定化助剤、滑
剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤、顔料な
どが添加される。
【0037】熱安定剤としては、例えば、ジメチル錫メ
ルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカ
プト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマ
ー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリ
マー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポ
リマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜
燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−
亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カ
ドミウム系安定剤等が挙げられ、これらは単独で使用さ
れてもよいし、併用されてもよい。
【0038】安定化助剤としては、例えば、エポキシ化
大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロ
フタレート、エポキシ化ポリブタジエン、燐酸エステル
等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、併
用されてもよい。
【0039】滑剤としては、例えば、モンタン酸ワック
ス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステ
アリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチル
等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、併
用されてもよい。
【0040】加工助剤としては、例えば、重量平均分子
量10〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメ
タクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げ
られ、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート
共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメ
タクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げ
られ、これらは単独で使用されてもよいし、併用されて
もよい。
【0041】酸化防止剤としては、例えば、フェノール
系抗酸化剤等が挙げられる。光安定剤としては、例え
ば、サルチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾ
トリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収
剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤が挙げられ、これ
らは単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
【0042】充填剤としては、例えば、炭酸カルシウ
ム、タルク等が挙げられる。顔料としては、例えば、ア
ゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の
有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・
セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙
げられる。
【0043】又、塩化ビニル系グラフト共重合体には、
成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加され
ても構わなく、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−
エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルア
ジペート等が挙げられる。
【0044】上記の各種添加剤を塩化ビニル系グラフト
共重合体に混合する方法としては、ホットブレンド、コ
ールドブレンドいずれでもよく、成形方法としては、押
出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形
法などが挙げらる。
【0045】
【作用】本発明の第1発明の製造方法は、上述したよう
に、高ガラス転移温度樹脂/低ガラス転移温度樹脂/高
ガラス転移温度樹脂(即ち、架橋硬質樹脂/架橋ゴム状
弾性体/架橋硬質樹脂)の3層構造のアクリル系共重合
体ラテックスに、塩化ビニルを主成分とするビニルモノ
マーがグラフト共重合されるので、得られた本発明の塩
化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム状弾性体成分が増
大しても、引張強度、曲げ弾性率が維持されたままで、
耐衝撃性が優れた樹脂になる。
【0046】上述の性能が得られる理由は、下記の様に
想定される。即ち、架橋硬質樹脂/架橋ゴム状弾性体/
架橋硬質樹脂の構造の3層構造のラテックス粒子は、ゴ
ム弾性体成分が塩化ビニル系樹脂と同様な機械的強度を
有する硬質樹脂により格納された構造の微粒子であり、
この微粒子に更に塩化ビニル系モノマーがグラフト共重
合されるから、マトリックス樹脂の塩化ビニル系樹脂
に、良好に分散・相溶する性能を持ち、工程上、本発明
の塩化ビニル系グラフト共重合体は、均一にリアクター
ブレンドされた形態になっており、ゴム弾性体成分の硬
質樹脂格納体(3層構造ラテックス粒子)は、熱成形加
工されても、充分溶融変形せずに、塩化ビニル系樹脂の
中に均一に分散されているからである。
【0047】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳しく説明する為
に、実施例、比較例を挙げる。
【0048】実施例1〜5 (1)3層構造のアクリル系共重合体ラテックスの作製 (a)各層の混合モノマーの調整 (第1層用乳化混合モノマー)表1に示された配合組成
に従い、所定量の純水、乳化分散剤(ポリオキシエチレ
ンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェー
ト)、メチルメタアクリレート(ガラス転移温度:10
5℃、以下、MMAとする)又はスチレン(ガラス転移
温度:100℃)、トリメチロールプロパントリアクリ
レート(以下、TMPTAとする)を混合、攪拌し、乳
化混合モノマーを調整した。
【0049】(第2層用乳化混合モノマー)表1に示さ
れた配合組成に従い、所定量の純水、乳化分散剤(ポリ
オキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサ
ルフェート)、n−ブチルアクリレート(ガラス転移温
度−54℃、以下、n−BAとする)又は2−エチルヘ
キシルアクリレート(ガラス転移温度−70℃、以下、
2−EHAとする)、TMPTAを混合、攪拌し、乳化
混合モノマーを調整した。
【0050】(第3層用乳化混合モノマー)表1に示さ
れた配合組成に従い、所定量の純水、乳化分散剤(ポリ
オキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサ
ルフェート)、MMA又はスチレン、TMPTAを混
合、攪拌し、乳化混合モノマーを調整した。
【0051】(b)ラテックスの乳化重合 次に、攪拌機と還流冷却器を備えた反応容器に純水を入
れ、容器内の酸素を窒素に置換した後、攪拌しながら反
応容器を70℃に昇温した。昇温が完了した後、反応容
器に、過硫酸アンモニウム(以下、APSとする)と第
1層用乳化混合モノマーの半分とを一括して投入して、
乳化重合を開始し、続いて、残りの第1層用乳化混合モ
ノマーの半分を滴下した。第1層用乳化混合モノマーの
滴下が終了した時、直ちに、第2層用乳化混合モノマー
の滴下を開始し、この滴下が終了し次第、第3層用乳化
混合モノマーの滴下を開始した。全ての乳化混合モノマ
ーの滴下を3時間で終了し、その後、1時間の熟成期間
を置いて、乳化重合を終了して、固形分30重量%の3
層構造のアクリル系共重合体ラテックス(以下、ラテッ
クスとする)を得た。
【0052】(2)塩化ビニル系グラフト共重合体の作
製 攪拌機とジャケットを備えた反応容器に、表2に示すよ
うに、純水、上記ラテックス、部分鹸化ポリ酢酸ビニル
の3重量%水溶液、t−ブチルパーオキシネオデカノエ
ート、α−クミルパーオキシネオデカノエートとを一括
して投入した。しかる後に、真空ポンプで重合容器内の
空気を排出し、攪拌しながら塩化ビニルを投入し、反応
容器の温度を50℃に制御して重合を開始した。反応容
器の圧力が、5kg/cm2 まで低下したことで、反応
の終了を確認して、反応を停止した。
【0053】その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除
去し、更に、脱水乾燥して、塩化ビニル系樹脂中の塩化
ビニル樹脂の重合度が約1400の塩化ビニル系グラフ
ト共重合体を得た。結果は表2に示す。尚、本発明の実
施例、比較例では、3層構造のラテックス効果を比較す
る為、従来の耐衝撃性の決定要因であった塩化ビニル系
グラフト共重合体の中の弾性成分の含有率を6.0重量
%と一定とした。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】比較例1 表1の配合組成に従い、アクリル系共重合体ラテックス
の第1層共重合体がないものを作製したこと以外は実施
例1〜5と同様にして、塩化ビニル系グラフト共重合体
を合成した。結果は表2に示す。
【0057】比較例2 表1の配合組成に従い、アクリル系共重合体ラテックス
の第1層共重合体及び第3層共重合体がないものを作製
したこと以外は実施例1〜5と同様にして、塩化ビニル
系グラフト共重合体を合成した。結果は表2に示す。
【0058】評価方法 (耐衝撃性)シャルピー衝撃試験を、JIS K711
1に準拠し、測定温度23℃で行った。試料は、塩化ビ
ニル系グラフト共重合体100重量部に対し、有機錫系
安定剤0.5重量部、モンタン酸系滑剤1.0重量部を
混合した樹脂組成物を、200℃で3分間ロール混練し
た後、200℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3
mmのプレス板より作製した。
【0059】(引張強度)温度23℃で、JIS K7
113に準拠して行った。試料は、上記シャルピー衝撃
試験に用いたプレス板より作製した。
【0060】
【発明の効果】本発明の製造方法は、上述のように構成
されているので、引張強度、曲げ弾性率を低下させず
に、優れた耐衝撃性の本発明の塩化ビニル系グラフト共
重合体が得られる。それ故に、これを用いて得られる成
形体は、寒冷地の配管材料、樋、サイディング材など広
範囲の用途に利用できる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単独重合体のガラス転移温度が高いラジ
    カル重合性モノマーと多官能性モノマーとからなる第1
    層共重合体の粒子表面に、単独重合体のガラス転移温度
    が低い(メタ)アクリレートと多官能性モノマーとから
    なる混合モノマーをグラフト共重合させて、第1層共重
    合体の上に第2層共重合体を形成させ、該第2層共重合
    体の表面に、さらに単独重合体のガラス転移温度が高い
    ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーとからなる
    混合モノマーをグラフト共重合させて、第2層共重合体
    の上に第3層共重合体を形成させ、得られた3層構造の
    アクリル系共重合体ラテックスに、塩化ビニルまたは塩
    化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重
    合することを特徴とする塩化ビニル系グラフト共重合体
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 第1層共重合体及び第3層共重合体を形
    成するラジカル重合性モノマーが、単独重合体のガラス
    転移温度が30以上180℃以下であり、第2層共重合
    体を形成するラジカル重合性モノマーが、単独重合体の
    ガラス転移温度が−140以上30℃未満であることを
    特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系グラフト共重合
    体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の製造方法に
    よって得られることを特徴とする塩化ビニル系グラフト
    共重合体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007052429A1 (ja) * 2005-11-07 2007-05-10 Kaneka Corporation 熱可塑性樹脂組成物
JP2014111730A (ja) * 2012-11-07 2014-06-19 Kaneka Corp 湿熱強度に優れたポリマー微粒子分散樹脂組成物、及びその製造方法

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