JP2004091518A - 塩化ビニル系樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、線膨張率が小さく、耐衝撃性の優れた塩化ビニル系樹脂成形品を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100重量部と、ウォラストナイト30〜50重量部よりなり、該ウォラストナイトの平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂成形品であり、塩化ビニル系樹脂は、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体が好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100重量部と、ウォラストナイト30〜50重量部よりなり、該ウォラストナイトの平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂成形品であり、塩化ビニル系樹脂は、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体が好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩化ビニル系樹脂は機械的強度、耐薬品性等に優れた特性を有する材料として多くの用途に使われており、雨樋や窓枠部材に使用する際には、熱収縮性や線膨張率を小さくするために塩化ビニル系樹脂に針状又は板状無機物を添加することが提案されている。
【0003】
例えば、特開2000―355646号公報には、塩化ビニル系樹脂と針状又は板状無機充填剤と塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選択される衝撃改良剤と樹脂繊維からなる塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、成形品を成形するために、樹脂組成物を溶融混練し押出成形すると、押出成形時に針状無機物又は板状無機物に剪断力がかかって破砕され、最大長10μm以下の微粒子の無機フィラーが大量に発生し、成形品の物性が低下してしまうという欠点があった。又、針状無機物又は板状無機物の精製分別が十分でなく、繊維長の短いものを多く含むものを用いて成形した場合も同様であった。
【0005】
更に、上記塩化ビニル系樹脂組成物に、このような衝撃改良剤を添加しすぎると、得られた成形品は針状又は板状無機充填剤の添加の効果が得られなくなり、機械的強度、線膨張率、耐衝撃性等の性能が不足するという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点に鑑みてなされたものであり、線膨張率が小さく、耐衝撃性の優れた塩化ビニル系樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、ウォラストナイト30〜50重量部よりなり、該ウォラストナイトの平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明で使用される塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体又は塩化ビニルを主成分とする塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。これらは単独で用いられても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0009】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。これらのその他の共重合性モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0010】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、小さくなると機械的強度が低下し、大きくなると成形性が低下するので、300〜4000が好ましく、より好ましくは600〜2500である。
【0011】
尚、本発明において、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0012】
又、本発明で使用される塩化ビニル系樹脂の好適な例として、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体が挙げられる。
【0013】
上記エラストマー成分は、塩化ビニル系樹脂に耐衝撃性を向上させるためのものであり、単独重合体のガラス転移温度が−140℃〜30℃である、少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜30重量部とからなるアクリル系共重合体が好ましい。
【0014】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0015】
上記(メタ)アクリレートは、室温で柔軟性を有するのが好ましく、その単独重合体のガラス転移温度は−140℃〜30℃である。充分な柔軟性を、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂に付与するためには、その単独重合体のガラス転移温度は30℃以下が好ましく、工業的に一般に使用される(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、2−メチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘプチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、2−メチルノニル(メタ)アクリレート、2−エチルオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
尚、本発明において、単独重合体のガラス転移温度は、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」(1986年、培風館社)によった。
【0018】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーは、成形時の低粘着化、成形品の耐候性、耐薬品性等の向上のために添加されるものであり、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のその単独重合体のガラス転移温度は−140℃〜30℃の範囲にはいらないアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記多官能性モノマーは、(メタ)アクリレートを架橋し、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させ、更に、上記アクリル系共重合体を製造する際及び製造後の上記アクリル系共重合体の粒子の合着を抑制する効果を有している。
【0020】
上記多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記アクリル共重合体は、上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーと、上記多官能性モノマーとからなり、上記多官能性モノマーの配合量は、上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜30重量部である。
【0022】
上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、30重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0023】
又、異なる好適なエラストマー成分は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃〜−60℃である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜30重量部とからなるアクリル系共重合体40〜90重量%に、単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と多官能性モノマー1.5〜10重量部の混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコア−シェル構造からなる共重合体である。
【0024】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0025】
上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃〜−60℃である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、共重合体粒子の中心部(以下コアとする)を形成し、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させるものであり、高速の歪みに対しても充分な柔軟性を有するのが好ましく、単独重合体のガラス転移温度が−60℃以下であることが好ましく、工業的に一般に使用される(メタ)アクリレート重合体のガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が好ましい。
【0026】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メチルヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ノニルアクリレート、2−メチルオクチルアクリレート、2−エチルヘプチルアクリレート、n−デシルアクリレート、2−メチルノニルアクリレート、2−エチルオクチルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のその単独重合体のガラス転移温度は−140℃〜−60℃の範囲にはいらないアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記アクリル系共重合体は、上記ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーよりなるが、多官能性モノマーとしては前述の多官能性モノマーが使用される。又、上記多官能性モノマーの配合量は、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましい。
【0029】
上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、30重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0030】
上記共重合体は、上記アクリル系共重合体40〜90重量%に、単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と多官能性モノマー1.5〜10重量部の混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコアーシェル構造からなる共重合体である。
【0031】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0032】
上記単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーはコアポリマー存在下で重合され、共重合体粒子の外殻部(以下シェルとする)の主成分を形成し、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させると共にコアの低ガラス転移温度のポリマーを被覆して共重合体粒子の粘着性を低減させる。
【0033】
従って、単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上であることが好ましく、ある程度の柔軟性を保持する上で30℃以下が好ましい。
【0034】
上記単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec −ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メチルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−エチルヘプチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、2−メチルノニルメタクリレート、2−エチルオクチルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のその単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃の範囲にはいらないアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記混合モノマーは、上記ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーよりなるが、多官能性モノマーとしては前述の多官能性モノマーが使用される。
又、上記多官能性モノマーの配合量は、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、1.5〜10重量部が好ましい。
【0037】
上記多官能性モノマーの配合量は、少なくなると共重合体の粒子が合着しやすくなり、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0038】
上記共重合体は、前記アクリル系共重合体40〜90重量%に、混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコア−シェル構造からなる共重合体である。
【0039】
前記アクリル系共重合体の量は少なくなると、塩化ビニル系樹脂の柔軟性が減少して耐衝撃性が低下し、多くなると、共重合体粒子表面の粘着性が増し、塩化ビニル系樹脂の製造が困難になるので上記範囲が好ましい。
【0040】
上記ラジカル重合性モノマーと上記多官能性モノマーとを共重合する方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられ、これらの中では、耐衝撃性の発現性がよく、アクリル系共重合体の粒子径の制御が行い易い点から乳化重合法が好ましい。尚、上記共重合とは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等すべての共重合をいう。
【0041】
上記乳化重合法は、従来公知の任意の方法で行うことができ、例えば、必要に応じて、乳化分散剤、重合開始剤、pH調整剤、酸化防止剤等を添加して重合してもよい。
【0042】
上記乳化分散剤は、ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマーとの混合物(以下、モノマー混合物ともいう)の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率的に行うために用いるものである。
【0043】
上記乳化分散剤としては、乳化重合で一般に使用されている乳化分散剤であれば、特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。
【0044】
これらの中では、アニオン系界面活性剤が好ましく、上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート(第一工業製薬社製「ハイテノールN−08」)等が挙げられる。
【0045】
上記重合開始剤としては、乳化重合で一般に使用されている乳化分散剤であれば、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0046】
上記乳化重合法の種類は、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0047】
上記一括重合法は、重合反応器内に純水、乳化分散剤及びモノマー混合物を一括して添加し、窒素気流中で撹拌して充分乳化した後、反応器内を所定の温度に昇温して重合させる方法である。
【0048】
上記モノマー滴下法は、重合反応器内に純水、乳化分散剤及び重合開始剤を添加し、窒素気流下による酸素除去を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、モノマー混合物を一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0049】
上記エマルジョン滴下法は、モノマー混合物、乳化分散剤及び純水を撹拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、重合反応器内に純水及び重合開始剤を供給し、窒素気流下による酸素除去を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0050】
上記コア−シェル構造の共重合体の製造方法も、特に限定されず、例えば、先ず、コア部を形成する、上記ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマー、純水及び乳化剤から調整した乳化モノマーに重合開始剤を加えて重合反応を行い、コア部の樹脂粒子を形成し、次いでシェル部を構成する混合モノマー(上記ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマー)、純水及び乳化剤から調整した乳化モノマーを添加し、上記コア部にシェル部をグラフト共重合させる方法等が挙げられる。
【0051】
このようにして得られた共重合体は、コア部の表面をシェル部が三次元的に覆い、シェル部を構成する共重合体とコア部を構成する共重合体とが部分的に共有結合し、シェル部が三次元的な架橋構造を形成している。
【0052】
上記方法において、上記シェル部のグラフト共重合は、上記コア部の重合と同一の重合行程で連続して行ってもよい。
【0053】
上記コア部とシェル部の割合は、上記乳化重合法において、コア部を形成する混合モノマーとシェル部を形成する混合モノマーとの割合を調整することによって調節可能である。
【0054】
上記したような重合方法において、反応終了後に得られるアクリル系共重合体の固形分比率は、アクリル系共重合体の生産性、重合反応の安定性の点から10〜60重量%が好ましい。
【0055】
エラストマー成分の平均粒子径は、0.01μmより小さくなると微粒子を多数含むことになり成形時の金型付着、外観不良の原因となり、また平均粒子径が大きすぎても耐衝撃性、機械的強度がともに低下するので0.01〜1μmが好ましい。
【0056】
上記グラフト共重合体は、エラストマー成分が少なくなると耐衝撃性が低下し、逆に多くなると曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下するので、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%がグラフト共重合されるのが好ましく、より好ましくはエラストマー成分4〜20重量%と塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー80〜96重量%である。
【0057】
上記塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーは、塩化ビニルを主体とする。即ち、塩化ビニル単独若しくは塩化ビニルを主体(50重量%以上含む)とする、塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0058】
上記塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0059】
上記グラフト共重合体中のポリ塩化ビニルの重合度は、小さすぎても大きすぎても充分な成形品の成形性が得られにくくなるため、300〜4000が好ましく、より好ましくは400〜1600である。
【0060】
上記エラストマー成分に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト重合する方法としては、特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられ、懸濁重合法が好ましい。
【0061】
上記懸濁重合法により重合を行う際には、分散剤、重合開始剤等を用いてもよい。
【0062】
上記分散剤は、上記エラストマー成分の分散安定性を向上させ、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーのグラフト重合を効率的に行う目的で添加されるものであり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩−アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤がグラフト共重合に有利であるという理由から好適に用いられる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、 αー クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0064】
又、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合する際に、重合中に重合槽内に付着するスケールを減少させる目的で、上記エラストマー成分の分散溶液に凝集剤を添加しても良い。更に、必要に応じて、pH調整剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0065】
上記懸濁重合法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、温度調整機及び撹拌機を備えた反応容器に、純水、エラストマー成分分散溶液、分散剤、重合開始剤及び必要に応じて水溶性増粘剤、重合度調節剤を投入する。
【0066】
その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に撹拌条件下で塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーを投入した後、反応容器内をジャケットにより加熱し、グラフト重合を行う。
【0067】
このとき、重合温度は30〜90℃、重合時間は2〜20時間が好ましい。
上記した懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、つまり重合温度を制御することが可能である。
【0068】
反応終了後は、未反応の塩化ビニル等を除去してスラリー状にし、更に脱水乾燥することによりグラフト共重合体が得られる。
【0069】
上記の製造方法で得られたグラフト共重合体は、アクリル系共重合体にポリ塩化ビニルが直接グラフト結合しているので、耐衝撃性に優れるとともに機械的強度にも優れる。
【0070】
本発明で使用されるウォラストナイトは、βメタ珪酸カルシウムを主成分とする無機鉱物であり、白色針状結晶で、不純物としてアルミニウムや鉄を含んでおり、天然物と人工物とがある。
【0071】
本発明においては、平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上のウォラストナイトが塩化ビニル系樹脂成形品中に存在している。
【0072】
ウォラストナイトの平均繊維長が短くなると、熱膨張を抑止する効果が低下し、成形品の線膨張率が高くなり、長くなると耐衝撃性が低下するので、平均繊維長は25〜60μmである。
【0073】
ウォラストナイトの平均繊維径は太くなると成形品の耐衝撃性が低下するので、15μm以下である。
【0074】
ウォラストナイトの平均アスペクト比は、小さくなると熱膨張を抑止する効果が低下し、成形品の線膨張率が低くなるので、3以上である。
【0075】
尚、本発明においてウォラストナイトの平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比の測定方法は下記の通り(値は全て体積基準のものである。)である。(1)塩化ビニル系樹脂成形品をテトラヒドロフランに浸漬し、塩化ビニル系樹脂を溶解し、ウォラストナイトの分散溶液を得る。
【0076】
(2)超音波洗浄器を用いて、分散溶液中のウォラストナイトを均一に分散させた後、分散溶液をスライドグラス上の展開し、テトラヒドロフランを蒸発させて画像分析用試料を作成する。得られた試料からマイクロスコープを用いてウォラストナイト像を倍率200倍、画素数2304×1536の電子画像ファイルとして取り込む。
【0077】
(3)取り込んだウォラストナイト画像を画像解析装置(ニコレ社製、商品名ルーゼックスAP)を用い、二値化、ノイズ成分を除いた後、ウォラストナイトの摘出処理を行い、ウォラストナイトの繊維長、繊維径及びアスペクト比の解析を行い、各平均値を求める。
【0078】
又、ウォラストナイトの添加量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、30〜50重量部である。添加量が30重量部未満では、線膨張率の改善効果が不十分であり、また50重量部を越えると耐衝撃性、成形加工性が低下する。
【0079】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は、上記塩化ビニル系樹脂とウォラストナイトよりなるが、従来から塩化ビニル系樹脂成形品を製造する際に一般的に添加されている熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、無機充填剤、可塑剤等が添加されてもよい。
【0080】
上記熱安定剤としては、塩化ビニル樹脂系成形品を成形する際に使用されている熱安定剤であれば、特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記安定化助剤としては、塩化ビニル樹脂系成形品を成形する際に使用されている安定化助剤であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記滑剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている滑剤であれば、特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている加工助剤であれば、特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記酸化防止剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている酸化防止剤であれば、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
上記光安定剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている光安定剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
上記顔料としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている顔料であれば、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
上記無機充填剤としては塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている無機充填剤であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品の製造方法は従来公知の任意の方法が採用されて良く、一般に塩化ビニル系樹脂とウォラストナイトを混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得、次いで塩化ビニル系樹脂組成物を溶融成形する。
【0090】
上記混合方法については、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等のミキサーによるホットブレンドとコールドブレンド挙げられるが、針状の無機物であるウォラストナイトの分散性の優れたヘンシェルミキサーによるホットブレンドが好ましい。
【0091】
又、混合によりウォラストナイトが破砕されないように、低速で混合するのが好ましい。混合するウォラストナイトは混合及び溶融成形の際に破砕され平均繊維長が短くなるので、平均繊維長が40〜180μmのものを混合するのが好ましい。
【0092】
上記溶融成形は、従来公知の任意の方法が採用でき、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等が挙げられるが、混練押出機により溶融混練し押出しする際には、混練によりウォラストナイトが破砕されないように、低剪断のスクリューを用いて混練するのが好ましい。
【0093】
又、より低い線膨張率の塩化ビニル系樹脂成形品を得るために、ウォラストナイトの配向度が高くなるように設計された金型を用いるのが好ましい。
【0094】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の例に限定されるものではない。
【0095】
乳化モノマーの調製
2−エチルヘキシルアクリレート40重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.2重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート0.5重量部及び純水24重量部を混合して、コア層形成用乳化モノマーを調製した。
【0096】
又、n−ブチルアクリレート60重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.3重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート0.5重量部及び純水36重量部混合して、シェル層形成用乳化モノマーを調製した。
【0097】
アクリル系共重合体の作製
次に撹拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、純水160重量部を供給し、反応器内の酸素を窒素により置換した後、撹拌下で純水の温度を70℃まで昇温した。昇温終了後、反応器に過硫酸アンモニウム0.5重量部とコア層形成用乳化モノマーの50重量%を一括して投入し、重合を開始した。
【0098】
続いて、コア層形成用モノマーの残りを滴下した。更に、コア層形成用モノマーの滴下が終了次第、シェル層形成用乳化モノマーを順次滴下した。
【0099】
全ての乳化モノマーの滴下を3時間で終了し、その後、1時間の熟成期間をおいた後、重合を終了して固形分濃度約30重量%、粒子径0.1μmのアクリル系共重合体ラテックス(以下「ラテックス」という)を得た。
【0100】
グラフト共重合体の作製
撹拌機及びジャケットを備えた重合器に、純水170重量部、上記ラテックス9重量部、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールL−8)の3重量%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、メトローズ60SH50)の3重量%水溶液2. 5重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0. 03重量部及び硫酸アルミニウムをアクリル系共重合体固形分9重量部に対してアルミニウムイオンが3000ppmとなるよう一括投入した。
【0101】
次いで、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、攪拌条件下で塩化ビニルモノマー100重量部を投入した。その後、ジャケット温度の制御により重合温度57.5℃にてグラフト重合を開始した。
【0102】
重合器内の圧力が0.72MPaの圧力まで低下したところで塩化ビニルモノマーの重合率が80%になるので反応終了を確認し、消泡剤(東レ社製、東レシリコンSH5510)を加圧添加した後に反応を停止した。
【0103】
その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系樹脂を得た。得られた塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルの重合度は約1000であり、アクリル系共重合体の含有量は5重量%であった。
【0104】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
得られた塩化ビニル系樹脂100重量部、有機錫系熱安定剤(三共有機合成社製、商品名:ONZ−7F)1.0重量部、滑剤(三井化学社製、商品名:HIWAX220MP)0.5重量部、滑剤(理研ビタミン社製、商品名:SL−02)0.5重量部及び下記ウォラストナイト40重量部をヘンシェルミキサーに供給しホットブレンドして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0105】
使用したウォラストナイト
実施例1 キンセイマティック社製、商品名SH600
実施例2 キンセイマティック社製、商品名SH1250
実施例3 関西マティック社製、商品名KTP−H01
【0106】
比較例1 キンセイマティック社製、商品名SH400
比較例2 関西マティック社製、商品名KTP−N01
比較例3 関西マティック社製、商品名KTP−170
比較例4 川鉄工業社製、商品名KH−120
【0107】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を二軸異方向回転押出機(PLABOR社製、口径50mm)に供給し、樹脂温度195℃、押出量20kg/hrの条件で溶融押出し、冷却サイジングを行って、断面コ字状、厚み1.5mmの成形品を得た。
【0108】
得られた成形品の線膨張率とシャルピー衝撃値を測定すると共に、成形品中のウォラストナイトの平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比を測定してその結果を表1に示した。
【0109】
線膨張率及びシャルピー衝撃値の測定方法は以下の通りである。
(1)線膨張率
プラスチックの線膨張試験方法(JIS K 7197)に準拠し、線膨張率を測定した。測定温度は0℃〜50℃であり、昇温速度は5℃/min、単位は(10−5/℃)である。
【0110】
(2)シャルピー衝撃値
硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法(JIS K 7111)に準拠し、エッジワイズ衝撃試験片でシャルピー衝撃強度を測定した。測定温度は23℃であり、単位は(Kj/m2 )である。SI単位換算:1Kgf・cm/cm2 =0.9807Kj/m2
【0111】
【表1】
【0112】
【発明の効果】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品の構成は上述の通りであり、塩化ビニル系樹脂成形品中に平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であるウォラストナイト30〜50重量部が存在しているので、線膨張率が小さく、耐衝撃性が優れている。
【0113】
更に、塩化ビニル系樹脂が、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂であるとより耐衝撃性が優れている。
【0114】
従って、本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は雨樋、窓枠部材等の住宅資材、硬質塩化ビニル管、継手などの管工機材等で特に線膨張率、耐衝撃性を必要とする用途に好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩化ビニル系樹脂は機械的強度、耐薬品性等に優れた特性を有する材料として多くの用途に使われており、雨樋や窓枠部材に使用する際には、熱収縮性や線膨張率を小さくするために塩化ビニル系樹脂に針状又は板状無機物を添加することが提案されている。
【0003】
例えば、特開2000―355646号公報には、塩化ビニル系樹脂と針状又は板状無機充填剤と塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選択される衝撃改良剤と樹脂繊維からなる塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、成形品を成形するために、樹脂組成物を溶融混練し押出成形すると、押出成形時に針状無機物又は板状無機物に剪断力がかかって破砕され、最大長10μm以下の微粒子の無機フィラーが大量に発生し、成形品の物性が低下してしまうという欠点があった。又、針状無機物又は板状無機物の精製分別が十分でなく、繊維長の短いものを多く含むものを用いて成形した場合も同様であった。
【0005】
更に、上記塩化ビニル系樹脂組成物に、このような衝撃改良剤を添加しすぎると、得られた成形品は針状又は板状無機充填剤の添加の効果が得られなくなり、機械的強度、線膨張率、耐衝撃性等の性能が不足するという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点に鑑みてなされたものであり、線膨張率が小さく、耐衝撃性の優れた塩化ビニル系樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、ウォラストナイト30〜50重量部よりなり、該ウォラストナイトの平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明で使用される塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体又は塩化ビニルを主成分とする塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。これらは単独で用いられても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0009】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。これらのその他の共重合性モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0010】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、小さくなると機械的強度が低下し、大きくなると成形性が低下するので、300〜4000が好ましく、より好ましくは600〜2500である。
【0011】
尚、本発明において、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0012】
又、本発明で使用される塩化ビニル系樹脂の好適な例として、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体が挙げられる。
【0013】
上記エラストマー成分は、塩化ビニル系樹脂に耐衝撃性を向上させるためのものであり、単独重合体のガラス転移温度が−140℃〜30℃である、少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜30重量部とからなるアクリル系共重合体が好ましい。
【0014】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0015】
上記(メタ)アクリレートは、室温で柔軟性を有するのが好ましく、その単独重合体のガラス転移温度は−140℃〜30℃である。充分な柔軟性を、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂に付与するためには、その単独重合体のガラス転移温度は30℃以下が好ましく、工業的に一般に使用される(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、2−メチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘプチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、2−メチルノニル(メタ)アクリレート、2−エチルオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
尚、本発明において、単独重合体のガラス転移温度は、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」(1986年、培風館社)によった。
【0018】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーは、成形時の低粘着化、成形品の耐候性、耐薬品性等の向上のために添加されるものであり、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のその単独重合体のガラス転移温度は−140℃〜30℃の範囲にはいらないアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記多官能性モノマーは、(メタ)アクリレートを架橋し、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させ、更に、上記アクリル系共重合体を製造する際及び製造後の上記アクリル系共重合体の粒子の合着を抑制する効果を有している。
【0020】
上記多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記アクリル共重合体は、上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーと、上記多官能性モノマーとからなり、上記多官能性モノマーの配合量は、上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜30重量部である。
【0022】
上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、30重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0023】
又、異なる好適なエラストマー成分は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃〜−60℃である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜30重量部とからなるアクリル系共重合体40〜90重量%に、単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と多官能性モノマー1.5〜10重量部の混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコア−シェル構造からなる共重合体である。
【0024】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0025】
上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃〜−60℃である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、共重合体粒子の中心部(以下コアとする)を形成し、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させるものであり、高速の歪みに対しても充分な柔軟性を有するのが好ましく、単独重合体のガラス転移温度が−60℃以下であることが好ましく、工業的に一般に使用される(メタ)アクリレート重合体のガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が好ましい。
【0026】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メチルヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ノニルアクリレート、2−メチルオクチルアクリレート、2−エチルヘプチルアクリレート、n−デシルアクリレート、2−メチルノニルアクリレート、2−エチルオクチルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のその単独重合体のガラス転移温度は−140℃〜−60℃の範囲にはいらないアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記アクリル系共重合体は、上記ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーよりなるが、多官能性モノマーとしては前述の多官能性モノマーが使用される。又、上記多官能性モノマーの配合量は、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましい。
【0029】
上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、30重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0030】
上記共重合体は、上記アクリル系共重合体40〜90重量%に、単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と多官能性モノマー1.5〜10重量部の混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコアーシェル構造からなる共重合体である。
【0031】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを主体とする。即ち、(メタ)アクリレート単独若しくは(メタ)アクリレートを主体(50重量%以上含む)とする、(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0032】
上記単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーはコアポリマー存在下で重合され、共重合体粒子の外殻部(以下シェルとする)の主成分を形成し、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させると共にコアの低ガラス転移温度のポリマーを被覆して共重合体粒子の粘着性を低減させる。
【0033】
従って、単独重合体のガラス転移温度が−55℃以上であることが好ましく、ある程度の柔軟性を保持する上で30℃以下が好ましい。
【0034】
上記単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃である(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec −ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メチルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−エチルヘプチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、2−メチルノニルメタクリレート、2−エチルオクチルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のその単独重合体のガラス転移温度が−55℃〜30℃の範囲にはいらないアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記混合モノマーは、上記ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーよりなるが、多官能性モノマーとしては前述の多官能性モノマーが使用される。
又、上記多官能性モノマーの配合量は、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、1.5〜10重量部が好ましい。
【0037】
上記多官能性モノマーの配合量は、少なくなると共重合体の粒子が合着しやすくなり、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10重量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲が好ましい。
【0038】
上記共重合体は、前記アクリル系共重合体40〜90重量%に、混合モノマー10〜60重量%をグラフト共重合したコア−シェル構造からなる共重合体である。
【0039】
前記アクリル系共重合体の量は少なくなると、塩化ビニル系樹脂の柔軟性が減少して耐衝撃性が低下し、多くなると、共重合体粒子表面の粘着性が増し、塩化ビニル系樹脂の製造が困難になるので上記範囲が好ましい。
【0040】
上記ラジカル重合性モノマーと上記多官能性モノマーとを共重合する方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられ、これらの中では、耐衝撃性の発現性がよく、アクリル系共重合体の粒子径の制御が行い易い点から乳化重合法が好ましい。尚、上記共重合とは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等すべての共重合をいう。
【0041】
上記乳化重合法は、従来公知の任意の方法で行うことができ、例えば、必要に応じて、乳化分散剤、重合開始剤、pH調整剤、酸化防止剤等を添加して重合してもよい。
【0042】
上記乳化分散剤は、ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマーとの混合物(以下、モノマー混合物ともいう)の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率的に行うために用いるものである。
【0043】
上記乳化分散剤としては、乳化重合で一般に使用されている乳化分散剤であれば、特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。
【0044】
これらの中では、アニオン系界面活性剤が好ましく、上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート(第一工業製薬社製「ハイテノールN−08」)等が挙げられる。
【0045】
上記重合開始剤としては、乳化重合で一般に使用されている乳化分散剤であれば、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0046】
上記乳化重合法の種類は、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0047】
上記一括重合法は、重合反応器内に純水、乳化分散剤及びモノマー混合物を一括して添加し、窒素気流中で撹拌して充分乳化した後、反応器内を所定の温度に昇温して重合させる方法である。
【0048】
上記モノマー滴下法は、重合反応器内に純水、乳化分散剤及び重合開始剤を添加し、窒素気流下による酸素除去を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、モノマー混合物を一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0049】
上記エマルジョン滴下法は、モノマー混合物、乳化分散剤及び純水を撹拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、重合反応器内に純水及び重合開始剤を供給し、窒素気流下による酸素除去を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0050】
上記コア−シェル構造の共重合体の製造方法も、特に限定されず、例えば、先ず、コア部を形成する、上記ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマー、純水及び乳化剤から調整した乳化モノマーに重合開始剤を加えて重合反応を行い、コア部の樹脂粒子を形成し、次いでシェル部を構成する混合モノマー(上記ラジカル重合性モノマー成分と多官能性モノマー)、純水及び乳化剤から調整した乳化モノマーを添加し、上記コア部にシェル部をグラフト共重合させる方法等が挙げられる。
【0051】
このようにして得られた共重合体は、コア部の表面をシェル部が三次元的に覆い、シェル部を構成する共重合体とコア部を構成する共重合体とが部分的に共有結合し、シェル部が三次元的な架橋構造を形成している。
【0052】
上記方法において、上記シェル部のグラフト共重合は、上記コア部の重合と同一の重合行程で連続して行ってもよい。
【0053】
上記コア部とシェル部の割合は、上記乳化重合法において、コア部を形成する混合モノマーとシェル部を形成する混合モノマーとの割合を調整することによって調節可能である。
【0054】
上記したような重合方法において、反応終了後に得られるアクリル系共重合体の固形分比率は、アクリル系共重合体の生産性、重合反応の安定性の点から10〜60重量%が好ましい。
【0055】
エラストマー成分の平均粒子径は、0.01μmより小さくなると微粒子を多数含むことになり成形時の金型付着、外観不良の原因となり、また平均粒子径が大きすぎても耐衝撃性、機械的強度がともに低下するので0.01〜1μmが好ましい。
【0056】
上記グラフト共重合体は、エラストマー成分が少なくなると耐衝撃性が低下し、逆に多くなると曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下するので、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%がグラフト共重合されるのが好ましく、より好ましくはエラストマー成分4〜20重量%と塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー80〜96重量%である。
【0057】
上記塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーは、塩化ビニルを主体とする。即ち、塩化ビニル単独若しくは塩化ビニルを主体(50重量%以上含む)とする、塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとの混合物である。
【0058】
上記塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0059】
上記グラフト共重合体中のポリ塩化ビニルの重合度は、小さすぎても大きすぎても充分な成形品の成形性が得られにくくなるため、300〜4000が好ましく、より好ましくは400〜1600である。
【0060】
上記エラストマー成分に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト重合する方法としては、特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられ、懸濁重合法が好ましい。
【0061】
上記懸濁重合法により重合を行う際には、分散剤、重合開始剤等を用いてもよい。
【0062】
上記分散剤は、上記エラストマー成分の分散安定性を向上させ、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーのグラフト重合を効率的に行う目的で添加されるものであり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩−アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤がグラフト共重合に有利であるという理由から好適に用いられる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、 αー クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0064】
又、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーをグラフト共重合する際に、重合中に重合槽内に付着するスケールを減少させる目的で、上記エラストマー成分の分散溶液に凝集剤を添加しても良い。更に、必要に応じて、pH調整剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0065】
上記懸濁重合法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、温度調整機及び撹拌機を備えた反応容器に、純水、エラストマー成分分散溶液、分散剤、重合開始剤及び必要に応じて水溶性増粘剤、重合度調節剤を投入する。
【0066】
その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に撹拌条件下で塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーを投入した後、反応容器内をジャケットにより加熱し、グラフト重合を行う。
【0067】
このとき、重合温度は30〜90℃、重合時間は2〜20時間が好ましい。
上記した懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、つまり重合温度を制御することが可能である。
【0068】
反応終了後は、未反応の塩化ビニル等を除去してスラリー状にし、更に脱水乾燥することによりグラフト共重合体が得られる。
【0069】
上記の製造方法で得られたグラフト共重合体は、アクリル系共重合体にポリ塩化ビニルが直接グラフト結合しているので、耐衝撃性に優れるとともに機械的強度にも優れる。
【0070】
本発明で使用されるウォラストナイトは、βメタ珪酸カルシウムを主成分とする無機鉱物であり、白色針状結晶で、不純物としてアルミニウムや鉄を含んでおり、天然物と人工物とがある。
【0071】
本発明においては、平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上のウォラストナイトが塩化ビニル系樹脂成形品中に存在している。
【0072】
ウォラストナイトの平均繊維長が短くなると、熱膨張を抑止する効果が低下し、成形品の線膨張率が高くなり、長くなると耐衝撃性が低下するので、平均繊維長は25〜60μmである。
【0073】
ウォラストナイトの平均繊維径は太くなると成形品の耐衝撃性が低下するので、15μm以下である。
【0074】
ウォラストナイトの平均アスペクト比は、小さくなると熱膨張を抑止する効果が低下し、成形品の線膨張率が低くなるので、3以上である。
【0075】
尚、本発明においてウォラストナイトの平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比の測定方法は下記の通り(値は全て体積基準のものである。)である。(1)塩化ビニル系樹脂成形品をテトラヒドロフランに浸漬し、塩化ビニル系樹脂を溶解し、ウォラストナイトの分散溶液を得る。
【0076】
(2)超音波洗浄器を用いて、分散溶液中のウォラストナイトを均一に分散させた後、分散溶液をスライドグラス上の展開し、テトラヒドロフランを蒸発させて画像分析用試料を作成する。得られた試料からマイクロスコープを用いてウォラストナイト像を倍率200倍、画素数2304×1536の電子画像ファイルとして取り込む。
【0077】
(3)取り込んだウォラストナイト画像を画像解析装置(ニコレ社製、商品名ルーゼックスAP)を用い、二値化、ノイズ成分を除いた後、ウォラストナイトの摘出処理を行い、ウォラストナイトの繊維長、繊維径及びアスペクト比の解析を行い、各平均値を求める。
【0078】
又、ウォラストナイトの添加量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、30〜50重量部である。添加量が30重量部未満では、線膨張率の改善効果が不十分であり、また50重量部を越えると耐衝撃性、成形加工性が低下する。
【0079】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は、上記塩化ビニル系樹脂とウォラストナイトよりなるが、従来から塩化ビニル系樹脂成形品を製造する際に一般的に添加されている熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、無機充填剤、可塑剤等が添加されてもよい。
【0080】
上記熱安定剤としては、塩化ビニル樹脂系成形品を成形する際に使用されている熱安定剤であれば、特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記安定化助剤としては、塩化ビニル樹脂系成形品を成形する際に使用されている安定化助剤であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記滑剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている滑剤であれば、特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている加工助剤であれば、特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記酸化防止剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている酸化防止剤であれば、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
上記光安定剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている光安定剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
上記顔料としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている顔料であれば、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
上記無機充填剤としては塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている無機充填剤であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂成形品を成形する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品の製造方法は従来公知の任意の方法が採用されて良く、一般に塩化ビニル系樹脂とウォラストナイトを混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得、次いで塩化ビニル系樹脂組成物を溶融成形する。
【0090】
上記混合方法については、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等のミキサーによるホットブレンドとコールドブレンド挙げられるが、針状の無機物であるウォラストナイトの分散性の優れたヘンシェルミキサーによるホットブレンドが好ましい。
【0091】
又、混合によりウォラストナイトが破砕されないように、低速で混合するのが好ましい。混合するウォラストナイトは混合及び溶融成形の際に破砕され平均繊維長が短くなるので、平均繊維長が40〜180μmのものを混合するのが好ましい。
【0092】
上記溶融成形は、従来公知の任意の方法が採用でき、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等が挙げられるが、混練押出機により溶融混練し押出しする際には、混練によりウォラストナイトが破砕されないように、低剪断のスクリューを用いて混練するのが好ましい。
【0093】
又、より低い線膨張率の塩化ビニル系樹脂成形品を得るために、ウォラストナイトの配向度が高くなるように設計された金型を用いるのが好ましい。
【0094】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の例に限定されるものではない。
【0095】
乳化モノマーの調製
2−エチルヘキシルアクリレート40重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.2重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート0.5重量部及び純水24重量部を混合して、コア層形成用乳化モノマーを調製した。
【0096】
又、n−ブチルアクリレート60重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.3重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート0.5重量部及び純水36重量部混合して、シェル層形成用乳化モノマーを調製した。
【0097】
アクリル系共重合体の作製
次に撹拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、純水160重量部を供給し、反応器内の酸素を窒素により置換した後、撹拌下で純水の温度を70℃まで昇温した。昇温終了後、反応器に過硫酸アンモニウム0.5重量部とコア層形成用乳化モノマーの50重量%を一括して投入し、重合を開始した。
【0098】
続いて、コア層形成用モノマーの残りを滴下した。更に、コア層形成用モノマーの滴下が終了次第、シェル層形成用乳化モノマーを順次滴下した。
【0099】
全ての乳化モノマーの滴下を3時間で終了し、その後、1時間の熟成期間をおいた後、重合を終了して固形分濃度約30重量%、粒子径0.1μmのアクリル系共重合体ラテックス(以下「ラテックス」という)を得た。
【0100】
グラフト共重合体の作製
撹拌機及びジャケットを備えた重合器に、純水170重量部、上記ラテックス9重量部、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールL−8)の3重量%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、メトローズ60SH50)の3重量%水溶液2. 5重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0. 03重量部及び硫酸アルミニウムをアクリル系共重合体固形分9重量部に対してアルミニウムイオンが3000ppmとなるよう一括投入した。
【0101】
次いで、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、攪拌条件下で塩化ビニルモノマー100重量部を投入した。その後、ジャケット温度の制御により重合温度57.5℃にてグラフト重合を開始した。
【0102】
重合器内の圧力が0.72MPaの圧力まで低下したところで塩化ビニルモノマーの重合率が80%になるので反応終了を確認し、消泡剤(東レ社製、東レシリコンSH5510)を加圧添加した後に反応を停止した。
【0103】
その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系樹脂を得た。得られた塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルの重合度は約1000であり、アクリル系共重合体の含有量は5重量%であった。
【0104】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
得られた塩化ビニル系樹脂100重量部、有機錫系熱安定剤(三共有機合成社製、商品名:ONZ−7F)1.0重量部、滑剤(三井化学社製、商品名:HIWAX220MP)0.5重量部、滑剤(理研ビタミン社製、商品名:SL−02)0.5重量部及び下記ウォラストナイト40重量部をヘンシェルミキサーに供給しホットブレンドして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0105】
使用したウォラストナイト
実施例1 キンセイマティック社製、商品名SH600
実施例2 キンセイマティック社製、商品名SH1250
実施例3 関西マティック社製、商品名KTP−H01
【0106】
比較例1 キンセイマティック社製、商品名SH400
比較例2 関西マティック社製、商品名KTP−N01
比較例3 関西マティック社製、商品名KTP−170
比較例4 川鉄工業社製、商品名KH−120
【0107】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を二軸異方向回転押出機(PLABOR社製、口径50mm)に供給し、樹脂温度195℃、押出量20kg/hrの条件で溶融押出し、冷却サイジングを行って、断面コ字状、厚み1.5mmの成形品を得た。
【0108】
得られた成形品の線膨張率とシャルピー衝撃値を測定すると共に、成形品中のウォラストナイトの平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比を測定してその結果を表1に示した。
【0109】
線膨張率及びシャルピー衝撃値の測定方法は以下の通りである。
(1)線膨張率
プラスチックの線膨張試験方法(JIS K 7197)に準拠し、線膨張率を測定した。測定温度は0℃〜50℃であり、昇温速度は5℃/min、単位は(10−5/℃)である。
【0110】
(2)シャルピー衝撃値
硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法(JIS K 7111)に準拠し、エッジワイズ衝撃試験片でシャルピー衝撃強度を測定した。測定温度は23℃であり、単位は(Kj/m2 )である。SI単位換算:1Kgf・cm/cm2 =0.9807Kj/m2
【0111】
【表1】
【0112】
【発明の効果】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品の構成は上述の通りであり、塩化ビニル系樹脂成形品中に平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であるウォラストナイト30〜50重量部が存在しているので、線膨張率が小さく、耐衝撃性が優れている。
【0113】
更に、塩化ビニル系樹脂が、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られる塩化ビニル系樹脂であるとより耐衝撃性が優れている。
【0114】
従って、本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は雨樋、窓枠部材等の住宅資材、硬質塩化ビニル管、継手などの管工機材等で特に線膨張率、耐衝撃性を必要とする用途に好適に用いられる。
Claims (2)
- 塩化ビニル系樹脂100重量部と、ウォラストナイト30〜50重量部よりなり、該ウォラストナイトの平均繊維長が25〜60μm、平均繊維径が15μm以下及び平均アスペクト比が3以上であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂成形品。
- 塩化ビニル系樹脂が、エラストマー成分1〜30重量%に塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー70〜99重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂成形品。
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JP2009097175A (ja) * | 2007-10-15 | 2009-05-07 | Denki Kagaku Kogyo Kk | 雨樋 |
CN109280298A (zh) * | 2018-09-28 | 2019-01-29 | 安徽金日包装有限公司 | 一种弹性抗静电耐磨损pvc材料 |
US20220072737A1 (en) * | 2018-11-05 | 2022-03-10 | Tundra Composites Llc | Silicate Fiber Polymer Composite |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002251318A patent/JP2004091518A/ja active Pending
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