JP2004161870A - 塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性があり、かつ安定して耐衝撃性を発現できる塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管を提供する。
【解決手段】単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有されてなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管。
【選択図】 なし
【解決手段】単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有されてなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂は、機械的強度、耐候性、耐薬品性等に優れており、多くの用途に用いられている。しかしながら、従来より用いられている塩化ビニル系樹脂は、例えば、外壁、窓枠、サッシ等の建材、パイプ、継手等の硬質製品に用いるには、耐熱性が充分ではない等の欠点があるため、これらの欠点を解消するための種々の改良方法が提案されている。
電力・通信分野においては、電カケーブル防護管等にも塩化ビニル系樹脂が使用されているが、この用途では、地中埋設される為にツルハシによる衝撃に対抗するための耐衝撃性に加え、ケーブルの発熱によって70℃以上になるため、耐熱性も必要とされる。
このため、従来の技術として(例えば、特許文献1参照)、塩化ビニル系樹脂に塩素化塩化ビニル系樹脂と衝撃強化剤として塩素化ポリエチレンを添加することにより、耐衝撃性と耐熱性を付与する方法が用いられている。この特許文献1には、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂とが重量比で4:6〜6:4の範囲で混合された混合物に、塩素化ポリエチレンが該混合物100重量部に対し6重量部以上にしてかつ前記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して12〜20重量部の範囲で添加されてなる組成物からなる地中線用ケーブル防護管が記載されている。
【0003】
しかしながら、上記のような塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂と衝撃強化剤を用いた防護管は、成形条件により、耐衝撃性の物性発現牲が安定しない場合がある。このため、ツルハシによる衝撃に対して、やはり破損する場合があるという欠点を有していた。
【0004】
一方、近年では、プラスチックは年々使用量の増加に伴い、廃棄物量も増加する傾向にあり、既存の焼却施設や最終処分場の処理能力は限界に達してきている。各種材料にて新規処理技術やリサイクル技術が検討されてきている。塩化ビニル系樹脂も、リサイクルの動きが高まっており、電カケーブル防護管も回収・再利用を望まれている。
しかしながら、特許文献1に示してあるような塩化ビニル系樹脂に塩素化塩化ビニル系樹脂と衝撃強化剤を添加した系に、例えば市中より、回収した電力ケーブル防護管の粉砕品を添加して成形した場合、成形条件等によって衝撃強化剤の分散が悪くなり、耐衝撃性が低下するといった間題があった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭60−40248号公報(第1頁〜第4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、上記の問題点を解決し、耐熱性があり、かつ安定して耐衝撃性を発現できる塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管を提供することを目的とする。
また、本発明は、一部に、回収したリサイクル原料を用いた場合でも、安定して耐衝撃性を発現できる塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1記載の発明(以下、発明1という)は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有してなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【0008】
また、請求項2記載の発明(以下、発明2という)は、上記塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂5〜30重量部の代わりに、回収された塩化ビニル系樹脂製電カケーブル防護管粉砕物が1〜100量量部含有してなることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【0009】
上記塩化ビニル系グラフト共重合体は、アクリル系共重合体(a)に直接塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)がグラフト共重合体されていることにより、従来までの塩化ビニル系樹脂に塩素化ポリエチレンやMBS等の衝撃強化剤を加えた系に、リサイクル原料を加えた場合に生ずる衝撃強化剤の分散不良による耐衝撃性のバラツキをなくすことができ、安定した耐衝撃性を発現することが可能となる。
また、請求項3記載の発明(以下、発明3という)は、請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる電力ケーブル防護管を提供する。
【0010】
以下に本発明を詳述する。
上記(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル系共重合体を形成し、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂の耐衝撃性を向上させるために配合するものであり、室温での柔軟性を要するため、その単独重合体のガラス転移温度は−140℃以上0℃未満である。充分な柔軟性を塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂に付与するため、0℃未満であれば特に種類は限定されないが、工業的に一般に使用されるポリマーのガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が適当である。
【0011】
上記(メタ)アクリレートモノマーとしては、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満のものであれば特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート(Tg=−54℃、以下かっこ内に温度のみを示す)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃〉、n−オク
チルアクリレート(−85℃)、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート(−85℃)、n−デシルアクリレート(−70℃)、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート(−65℃〉、エチルアクリレート(−24℃〉、n−プロピルアクリレート(−37℃)、n−ブチルアクリレート(−54℃)、イソブチルアクリレート(−24℃)、sec−ブチルアクリレート(−21℃)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃〉、n−オクチルメタクリレート(−25℃)、イソオクチルアクリレート(−45℃)、n−ノニルメタクリレート(−35℃)、n−デシルメタクリレート(−45℃)等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のガラス転移温度は、高分子学会績「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」(1986年、培風館社)によった。
【0012】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーのうち上記(メタ)アクリレート以外のモノマーは、ラジカル重合が可能なモノマーであれば特に限定はなく、例えば単独重合体のガラス転移温度が上記範囲以外の(メタ)アクリレート、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル等の不飽和二トリル、酢酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。
【0013】
上記多官能性モノマーは、上記アクリル系共重合体を製造する際、及び、製造後の上記アクリル系共重合体の粒子の構造を保持するために配合するものである。
上記多官能性モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ〉アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、その他の多官能性モノマーとしては、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネ−ト、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記アクリル系共重合体(a)における上記多官能性モノマーの配合量は、アクリル系共重合体を形成する、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートと、これと共重合可能なラジカル重合性モノマーから成る混合モノマー成分100量量部に対して、0.1〜10量量部である。上記多官能性モノマーの配合量が、0.1量量部未満では、アクリル共重合体が塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10量量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲に限定される。
【0015】
本発明において、上記アクリル系モノマー成分及びラジカル重合性モノマーと上記多官能性モノマーとを共重合させる方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
これらの中では、耐衝撃性の発現性がよく、アクリル系共重合体の粒子径の制御が行い易い点から乳化重合法が望ましい。なお、上記共重合とは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等すべての共重合をいう。
【0016】
上記乳化重合法により重合を行う際には、乳化分散剤、重合開始剤を用いる。また、必要に応じて、PH調整剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0017】
上記乳化分散剤は、アクリル系モノマー成分と多官能性モノマーとの混合物(以下、混合モノマーともいう)の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率的に行うために用いるものである。
上記乳化分散剤としては特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。これらの中では、アニオン系界面活性剤が好ましく、上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフエート(第一工業製薬社製「ハイテノール225L」、「ハイテノールM−08」)等が挙げられる。
【0018】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、べンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソプチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0019】
上記乳化重合法の種類は特に限定されず、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0020】
上記一括重合法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、及び、混合モノマーを一括して添加し、窒素気流加圧下で攪拌して充分乳化した後、反応器内をジャケットで所定の温度に昇温し、その後重合させる方法である。
【0021】
上記モノマ一滴下法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、及び、重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内をジャケットにより所定の温度に昇温した後、混合モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0022】
上記エマルジョン滴下法は、混合モノマー、乳化分散剤、及び、純水を攪拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、ジャケット付重合反応器内に純水、及び、重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内をジャケットにより所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0023】
また、上記エマルジョン滴下法では、重合初期に上記乳化モノマーの一部を一括添加し(この一括添加したモノマーを以下シードモノマーと呼ぶ)、その後残りの乳化モノマーを滴下する方法を用いれば、シードモノマーの量を変化させることにより、生成するアクリル系共重合体の粒径を容易に制御することができる。
【0024】
さらに、シードモノマー及び滴下する乳化モノマーの種類及び組成を順次、変更、区別することにより、コアシェル構造などの多層構造を形成することも可能である。
【0025】
上記したような重合方法において、反応終了後に得られるアクリル系共重合体の固形分比率は、アクリル系共重合体の生産性、重合反応の安定性の点から10〜60量量%が好ましい。
【0026】
また、上記したような重合方法においては、反応終了後のアクリル系共重合体の機械的安定性を向上させる目的で保護コロイド等を添加しても良い。
【0027】
本発明の塩化ビニル系グラフト共重合体の製造方法においては、上記アクリル系共重合体1〜50重量%と塩化ビニル50〜99量量%とをグラフト重合させる上記アクリル系共重合体の配合量が1重量%未満では、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体が充分な耐衝撃性を得ることができず、50重量%を越えると、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体の曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低くなるため上記範囲に限定される。
上記アクリル系共重合体の好ましい配合量は、5〜20重量%である。
【0028】
上記塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂中のポリ塩化ビニルの重合度は、300〜2000が好ましく、400〜1600がより好ましい。重合度が300未満であったり、2000を越えると、本発明の製造方法を用いて製造した塩化ビニル系グラフト共重合体を成形する際の成形性が悪くなることがある。
【0029】
上記アクリル系共重合体に、塩化ビニルをグラフト共重合させる方法としては、特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられる。これらの中では、懸濁重合法が好ましい。
【0030】
上記懸濁重合法により重合を行う際には、分散剤、重合開始剤を用いる。
【0031】
上記分散剤としては、特に限定はされないが、上記アクリル系共重合体の分散安定性を向上させ、塩化ビニルのグラフト重合を効率的に行う目的で添加される。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ〉アクリル酸塩−アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル
メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤がグラフト共重合に有利であるという理由から好適に用いられる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、2、2−アゾビスー2、4一ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0033】
塩化ビニルをグラフト共重合させる隙に、重合中に重合槽内に付着するスケールを減少させる目的で、上記アクリル系共重合体の分散溶液に、凝集剤を添加しても良い。
更に、必要に応じて、PH調整剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。
【0034】
上記懸濁重合法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。すなわち、温度調整機、及び、攪拌機を備えた反応容器に、純水、上記アクリル系共重合体分散溶液、分散剤、重合開始剤、及び、必要に応じて水溶性増粘剤、重合度調節剤を投入する。その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に攪拌条件下で塩化ビニル、また必要に応じて他のビニルモノマーも投入した後、反応容器内をジャケットにより加熱し、塩化ビニルのグラフト共重合を行う。
【0035】
このとき、重合温度は所望の塩ビ重合度に対応した温度に制御する。一般には、例えば、重合度800の場合は64℃、重合度900の場合は61.5℃、重合度1000の鳩舎は57.5℃、重合度1200の場合は53.5℃、重合度2400の場合は39.5℃である。
【0036】
上記した懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、つまり重合温度を制御することが可能である。
反応終了後は、未反応の塩化ビニル等を除去しスラリー状にし、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系グラフト共重合体が製造される。
【0037】
上記の製造方法で得られた塩化ビニル系グラフト共重合体は、アクリル系共重合体(a)にポリ塩化ビニルの一部が直接結合しているので、耐衝撃性に優れるとともに機械的強度にも優れる。
【0038】
発明1において用いられる塩素化塩化ビニル系樹脂は、例えば塩化ビニル系樹脂粉末を単独又は塩素化炭化水素溶媒とともに水に懸濁した状態で塩素を付加するなど、従来公知の方法によって製造されたもので、塩素含有率は64〜67重畳%の範囲のものが好ましい。塩素含有率が64重量%未満であると耐熱性が低下し、また67重量%を越えると溶融粘度が高く、加工性が悪くなるとともに、塩化ビニル系樹脂(塩素含有率56.7量量%)と相溶しにくくなり、引張強度、耐侯性、耐衝撃性等の物性が低下する傾向がある。
【0039】
塩素化塩化ビニル系樹脂の製造に用いられる塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体であってもよく、また塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの塩化ビニル系共重合体であってもよい。
【0040】
共重合可能なモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリル酸ビニルなどのビニルエステル類:メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類;ジブチルマレート、ジエチルマレートなどのマレイン酸エステル類;ジブチルフマレート、ジエチルフマレートなどのフマール酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;エチレン、プロピレン、n−ブテンなどのオレフイン類;塩化ビニリデン、臭化ビニルなどの塩化ビニル以外のハロゲン化ビニリデン類又はハロゲン化ビニル類などが挙げられる。
【0041】
発明1において、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系グラフト共重合体の混合比率は、塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂を5〜30重量部の範囲に限定される。塩素化塩化ビニル系樹脂の混合比率が5重量部未満であると充分な耐熱性が得られず、30重畳部を超えると耐衝撃性が低下し、加工性も低下する。
【0042】
発明2で用いられる、例えば市中から、回収された塩化ビニル系樹脂製電力ケーブル防護管の粉砕物は、好ましくは、例えば、塩化ビニル管・継手協会が定めるところのリサイクル原料基準のIII類に含まれる電力管のリサイクル原料があげ
られる。
【0043】
上記回収電力管粉砕物の添加部数は、塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して1〜100重量部に限定される。1量量部未満の場合には、リサイクル原料を使用するという目的に外れ、100量部以上では、成形時の肉厚の寸法が安定しなくなる。好ましくは、10〜50重量部である。
上記回収電力管粉砕物の大きさは、入手の際には特に限定されないが、取り扱いの容易さから、最大厚み15mm以下の粉砕品が好ましい。さらに好ましくは1〜10mmである。
【0044】
さらに上記回収電力管粉砕品を上記塩化ビニル系樹脂に添加して使用する堵合は、1000μm以下の粉砕品であることが好ましい。1000μm以上であると、成形時に充分な混線が困難になり、リサイクル原料が均−に分散し難くなる。さらに好ましくは150〜600μmである。
【0045】
本発明においては、塩化ビニル系樹脂組成物に、必要に応じて、安定剤、滑剤、加工助剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料などの添加剤が添加されていてもよい。
【0046】
上記安定剤としては特に限定されず、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤などが挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカブト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル銀ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基 の鉛系安定剤;カルシウムー亜鉛系安定剤;バリウムー亜鉛系安定剤;バリウム−カドミウム系安定剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。
上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。
上記外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフインワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば量量平均分子10万〜200万のアルキルアクリレートーアルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−プチルアクリレートーメチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートーメチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フエニルマレイミド系などが挙げられる。
【0051】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤などが挙げられる。
【0052】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0053】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、べンゾフエノン系、べンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0054】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フエロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記添加剤を上記塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0057】
発明1及び発明2の塩化ビニル系組成物の成形方法としては、特に限定されないが、押出成形法、射出成形法、ロール成形法、ブロー成形法、プレス成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0058】
電力ケーブル防護管の成形方法としては押出成形法が好適に用いられる。
本発明における塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に用いる成形機としては特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸異方向パラレル押出機、二軸異方向コニカル押出機、二軸同方向押出機等が挙げられる.又、樹脂温度、成形条件は、特に限定されない.
【0059】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに許しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
(アクリル系共重合体の製造)
表1に示した、コア層、及びシェル層を形成するためのモノマー(以下、それぞれをコア層形成用モノマー、シェル層形成用モノマーという)をそれぞれ、所定量の純水(モノマー100量量部に対し60量量部が望ましい)、多官能性モノマー、及び、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテルアンモニウムサルフェート(乳化分散剤〉と混合、攪拌し、それぞれの乳化モノマーを調製した。
また、表中、nBAはn−ブチルアクリレートを表し、2EHAは2−エチルヘキシルアクリレート、TMPTAはトリメテロールプロパントリアクリレートを表す。
【0061】
次に攪拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、純水を入れ(全モノマー100量量部に対し160部が望ましい)、容器内の酸素を窒素により置換した後、攪拌下で反応温度を70℃まで昇温した。昇温終了後、反応器に開始剤(過硫酸アンモニウム)、及び、コア層形成用モノマーの30%を一括して投入し、重合を開始した。続いて、コア層形成用モノマーの残りを滴下した。更に、コア層形成用モノマーの滴下が終了次第、シェル層形成用モノマーを順次滴下した。
全ての乳化モノマーの滴下を3時間で終了し、その後、1時間の熟成期間をおいた後、重合を終了して固形分濃度約30重量%、粒子径0.1μmのアクリル系共重合体ラテックス(以下ラテックスと呼ぶ)の粒子を得た。
【0062】
(塩化ビニル系グラフト共重合体の製造〉
ついで、攪拌機及びジャケットを備えた重合器に、鈍水170重量部、上記アクリル系共重合体ラテックス17重量部(アクリル系共重合体固形分5.1量量部)、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールL−8)の3%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、メトローズ60SH50〉の3%水溶液2.5量量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.03重量部、及び硫酸アルミをアクリル系共重合体固形分5.1量量部に対してアルミニウムイオンが3000ppmとなるように、一括投入し、その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に攪拌条件下で塩化ビニル100重量部を投入した。その後、ジャケット温度の制御により重合温度57℃にてグラフト重合を開始した。
【0063】
重合器内の圧力が0.72MPaの圧力まで低下したところで塩化ビニルモノマーの重合率が約80%になる。消泡剤(東レ社製、東レシリコンSH5510)を加圧添加した後に反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系グラフト共重合を得た。この共重合中の塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルの重合度は1000であった。
【0064】
【表1】
【0065】
(塩化ビニル系樹脂組成物の作製)
(実施例1〜5、比較例1〜5)
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体と塩素化塩化ビニル系樹脂とを表2の組成に従って混合し、有機錫系安定剤を2.0部、滑剤を1.0部づつ、加工助剤を1.0部を.スーパーミキサー(100Lカワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0066】
なお、塩素化塩化ビニル樹脂としては徳山積水工業社製のHA−54H(塩素含有率65.3重量%、平均重合度1050)を、錫系安定剤としては三共有機合成社製のSNT−461Kを、滑剤としては三井化学社製のHiwax220MPと花王社製のS−30とを、加工助剤としては三菱レイヨン社製のP501Aを用いた。
また、比較例で用いた塩化ビニル樹脂としては、徳山積水工業製のTS1000R(平均重合度1000)を、塩素化ポリエチレンとしてはダイソー社製ダイソーJMR135Cを、MBSとしては鐘淵化学社製M511を用いた。
【0067】
(実施例6〜9、比較例6〜9)
得られた塩化ビニル系共重合体と塩素化塩化ビニル樹脂、及び市中から回収された塩化ビニル系樹脂製電力ケーブル防護管を粉砕(平均径450μm)して得た粉砕物を表4の組成に従って混合し、有機錫系安定剤を2.0部、滑剤を1.0部づつ、加工助剤1.0部をスーパーミキサー(100L カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。塩化ビニル系樹脂製電力ケーブル防護管の組成は概略、塩素化塩化ビニル樹脂70重量部、塩化ビニル樹脂重量部である。
樹脂、添加剤などは、表4記載の如く、実施例1〜5、比較例1〜5と同様のメーカー、グレードのものを用いた。
【0068】
〔電力ケーブル防護管の作成〕
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を、二軸異方向押出機(長田製作所製SLM−50)に供給し、外径26mm、内径20mmの塩化ビニル系樹脂管(パイプ)を得た。
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を長田製作所社製SLM−50に供し、押出量40Kg/h、スクリュー回転数40rpm、樹脂温度195℃で成形し、溶融体を得た。得られた溶融体を20℃の水で冷却し、外径26mm、内径20mmの塩化ビニル系樹脂管(パイプ)を得た。
【0069】
以上のようにして製管した管の諸物性についてそれぞれ次に列挙する方法で測定を行った。
【0070】
1)耐衝撃性(シヤルピー衝撃試験)
硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験法(JIS K 7111)に基づき、エッジワイズ衝撃試験片でシャルピー衝撃試験を実施した。測定温度は0℃であり、単位は(kJ/m2)である。
2)ビカット軟化温度
JIS K 7206により5kgfの荷重で行った。
評価結果を表3、表5に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【発明の効果】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有されてなるため、前記塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる電力ケーブル防護管は、ポリ塩化ビニル樹脂に衝撃強化剤を添加する系と比較して、耐熱性を保持しつつ耐衝撃性を安定して向上させることができ、電力ケーブルや通信ケーブル等を地中に埋設する際に、これらケーブルの保護管として好適に利用される。
また、請求項2記載の本発明の塩化ビニル系樹脂組成物、およびこれを成形してなる電力ケーブル防護管は、リサイクル原料を使用した場合でも安定して耐衝撃性を発現することができ、リサイクル効率を向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂は、機械的強度、耐候性、耐薬品性等に優れており、多くの用途に用いられている。しかしながら、従来より用いられている塩化ビニル系樹脂は、例えば、外壁、窓枠、サッシ等の建材、パイプ、継手等の硬質製品に用いるには、耐熱性が充分ではない等の欠点があるため、これらの欠点を解消するための種々の改良方法が提案されている。
電力・通信分野においては、電カケーブル防護管等にも塩化ビニル系樹脂が使用されているが、この用途では、地中埋設される為にツルハシによる衝撃に対抗するための耐衝撃性に加え、ケーブルの発熱によって70℃以上になるため、耐熱性も必要とされる。
このため、従来の技術として(例えば、特許文献1参照)、塩化ビニル系樹脂に塩素化塩化ビニル系樹脂と衝撃強化剤として塩素化ポリエチレンを添加することにより、耐衝撃性と耐熱性を付与する方法が用いられている。この特許文献1には、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂とが重量比で4:6〜6:4の範囲で混合された混合物に、塩素化ポリエチレンが該混合物100重量部に対し6重量部以上にしてかつ前記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して12〜20重量部の範囲で添加されてなる組成物からなる地中線用ケーブル防護管が記載されている。
【0003】
しかしながら、上記のような塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂と衝撃強化剤を用いた防護管は、成形条件により、耐衝撃性の物性発現牲が安定しない場合がある。このため、ツルハシによる衝撃に対して、やはり破損する場合があるという欠点を有していた。
【0004】
一方、近年では、プラスチックは年々使用量の増加に伴い、廃棄物量も増加する傾向にあり、既存の焼却施設や最終処分場の処理能力は限界に達してきている。各種材料にて新規処理技術やリサイクル技術が検討されてきている。塩化ビニル系樹脂も、リサイクルの動きが高まっており、電カケーブル防護管も回収・再利用を望まれている。
しかしながら、特許文献1に示してあるような塩化ビニル系樹脂に塩素化塩化ビニル系樹脂と衝撃強化剤を添加した系に、例えば市中より、回収した電力ケーブル防護管の粉砕品を添加して成形した場合、成形条件等によって衝撃強化剤の分散が悪くなり、耐衝撃性が低下するといった間題があった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭60−40248号公報(第1頁〜第4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、上記の問題点を解決し、耐熱性があり、かつ安定して耐衝撃性を発現できる塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管を提供することを目的とする。
また、本発明は、一部に、回収したリサイクル原料を用いた場合でも、安定して耐衝撃性を発現できる塩化ビニル系樹脂組成物及び電力ケーブル防護管を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1記載の発明(以下、発明1という)は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有してなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【0008】
また、請求項2記載の発明(以下、発明2という)は、上記塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂5〜30重量部の代わりに、回収された塩化ビニル系樹脂製電カケーブル防護管粉砕物が1〜100量量部含有してなることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【0009】
上記塩化ビニル系グラフト共重合体は、アクリル系共重合体(a)に直接塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)がグラフト共重合体されていることにより、従来までの塩化ビニル系樹脂に塩素化ポリエチレンやMBS等の衝撃強化剤を加えた系に、リサイクル原料を加えた場合に生ずる衝撃強化剤の分散不良による耐衝撃性のバラツキをなくすことができ、安定した耐衝撃性を発現することが可能となる。
また、請求項3記載の発明(以下、発明3という)は、請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる電力ケーブル防護管を提供する。
【0010】
以下に本発明を詳述する。
上記(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル系共重合体を形成し、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂の耐衝撃性を向上させるために配合するものであり、室温での柔軟性を要するため、その単独重合体のガラス転移温度は−140℃以上0℃未満である。充分な柔軟性を塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂に付与するため、0℃未満であれば特に種類は限定されないが、工業的に一般に使用されるポリマーのガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が適当である。
【0011】
上記(メタ)アクリレートモノマーとしては、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満のものであれば特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート(Tg=−54℃、以下かっこ内に温度のみを示す)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃〉、n−オク
チルアクリレート(−85℃)、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート(−85℃)、n−デシルアクリレート(−70℃)、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート(−65℃〉、エチルアクリレート(−24℃〉、n−プロピルアクリレート(−37℃)、n−ブチルアクリレート(−54℃)、イソブチルアクリレート(−24℃)、sec−ブチルアクリレート(−21℃)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃〉、n−オクチルメタクリレート(−25℃)、イソオクチルアクリレート(−45℃)、n−ノニルメタクリレート(−35℃)、n−デシルメタクリレート(−45℃)等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のガラス転移温度は、高分子学会績「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」(1986年、培風館社)によった。
【0012】
上記(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマーのうち上記(メタ)アクリレート以外のモノマーは、ラジカル重合が可能なモノマーであれば特に限定はなく、例えば単独重合体のガラス転移温度が上記範囲以外の(メタ)アクリレート、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル等の不飽和二トリル、酢酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。
【0013】
上記多官能性モノマーは、上記アクリル系共重合体を製造する際、及び、製造後の上記アクリル系共重合体の粒子の構造を保持するために配合するものである。
上記多官能性モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ〉アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、その他の多官能性モノマーとしては、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネ−ト、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記アクリル系共重合体(a)における上記多官能性モノマーの配合量は、アクリル系共重合体を形成する、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートと、これと共重合可能なラジカル重合性モノマーから成る混合モノマー成分100量量部に対して、0.1〜10量量部である。上記多官能性モノマーの配合量が、0.1量量部未満では、アクリル共重合体が塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10量量部を越えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲に限定される。
【0015】
本発明において、上記アクリル系モノマー成分及びラジカル重合性モノマーと上記多官能性モノマーとを共重合させる方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
これらの中では、耐衝撃性の発現性がよく、アクリル系共重合体の粒子径の制御が行い易い点から乳化重合法が望ましい。なお、上記共重合とは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等すべての共重合をいう。
【0016】
上記乳化重合法により重合を行う際には、乳化分散剤、重合開始剤を用いる。また、必要に応じて、PH調整剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0017】
上記乳化分散剤は、アクリル系モノマー成分と多官能性モノマーとの混合物(以下、混合モノマーともいう)の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率的に行うために用いるものである。
上記乳化分散剤としては特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。これらの中では、アニオン系界面活性剤が好ましく、上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフエート(第一工業製薬社製「ハイテノール225L」、「ハイテノールM−08」)等が挙げられる。
【0018】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、べンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソプチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0019】
上記乳化重合法の種類は特に限定されず、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0020】
上記一括重合法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、及び、混合モノマーを一括して添加し、窒素気流加圧下で攪拌して充分乳化した後、反応器内をジャケットで所定の温度に昇温し、その後重合させる方法である。
【0021】
上記モノマ一滴下法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、及び、重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内をジャケットにより所定の温度に昇温した後、混合モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0022】
上記エマルジョン滴下法は、混合モノマー、乳化分散剤、及び、純水を攪拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、ジャケット付重合反応器内に純水、及び、重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内をジャケットにより所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0023】
また、上記エマルジョン滴下法では、重合初期に上記乳化モノマーの一部を一括添加し(この一括添加したモノマーを以下シードモノマーと呼ぶ)、その後残りの乳化モノマーを滴下する方法を用いれば、シードモノマーの量を変化させることにより、生成するアクリル系共重合体の粒径を容易に制御することができる。
【0024】
さらに、シードモノマー及び滴下する乳化モノマーの種類及び組成を順次、変更、区別することにより、コアシェル構造などの多層構造を形成することも可能である。
【0025】
上記したような重合方法において、反応終了後に得られるアクリル系共重合体の固形分比率は、アクリル系共重合体の生産性、重合反応の安定性の点から10〜60量量%が好ましい。
【0026】
また、上記したような重合方法においては、反応終了後のアクリル系共重合体の機械的安定性を向上させる目的で保護コロイド等を添加しても良い。
【0027】
本発明の塩化ビニル系グラフト共重合体の製造方法においては、上記アクリル系共重合体1〜50重量%と塩化ビニル50〜99量量%とをグラフト重合させる上記アクリル系共重合体の配合量が1重量%未満では、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体が充分な耐衝撃性を得ることができず、50重量%を越えると、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体の曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低くなるため上記範囲に限定される。
上記アクリル系共重合体の好ましい配合量は、5〜20重量%である。
【0028】
上記塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂中のポリ塩化ビニルの重合度は、300〜2000が好ましく、400〜1600がより好ましい。重合度が300未満であったり、2000を越えると、本発明の製造方法を用いて製造した塩化ビニル系グラフト共重合体を成形する際の成形性が悪くなることがある。
【0029】
上記アクリル系共重合体に、塩化ビニルをグラフト共重合させる方法としては、特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられる。これらの中では、懸濁重合法が好ましい。
【0030】
上記懸濁重合法により重合を行う際には、分散剤、重合開始剤を用いる。
【0031】
上記分散剤としては、特に限定はされないが、上記アクリル系共重合体の分散安定性を向上させ、塩化ビニルのグラフト重合を効率的に行う目的で添加される。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ〉アクリル酸塩−アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル
メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤がグラフト共重合に有利であるという理由から好適に用いられる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、2、2−アゾビスー2、4一ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0033】
塩化ビニルをグラフト共重合させる隙に、重合中に重合槽内に付着するスケールを減少させる目的で、上記アクリル系共重合体の分散溶液に、凝集剤を添加しても良い。
更に、必要に応じて、PH調整剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。
【0034】
上記懸濁重合法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。すなわち、温度調整機、及び、攪拌機を備えた反応容器に、純水、上記アクリル系共重合体分散溶液、分散剤、重合開始剤、及び、必要に応じて水溶性増粘剤、重合度調節剤を投入する。その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に攪拌条件下で塩化ビニル、また必要に応じて他のビニルモノマーも投入した後、反応容器内をジャケットにより加熱し、塩化ビニルのグラフト共重合を行う。
【0035】
このとき、重合温度は所望の塩ビ重合度に対応した温度に制御する。一般には、例えば、重合度800の場合は64℃、重合度900の場合は61.5℃、重合度1000の鳩舎は57.5℃、重合度1200の場合は53.5℃、重合度2400の場合は39.5℃である。
【0036】
上記した懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、つまり重合温度を制御することが可能である。
反応終了後は、未反応の塩化ビニル等を除去しスラリー状にし、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系グラフト共重合体が製造される。
【0037】
上記の製造方法で得られた塩化ビニル系グラフト共重合体は、アクリル系共重合体(a)にポリ塩化ビニルの一部が直接結合しているので、耐衝撃性に優れるとともに機械的強度にも優れる。
【0038】
発明1において用いられる塩素化塩化ビニル系樹脂は、例えば塩化ビニル系樹脂粉末を単独又は塩素化炭化水素溶媒とともに水に懸濁した状態で塩素を付加するなど、従来公知の方法によって製造されたもので、塩素含有率は64〜67重畳%の範囲のものが好ましい。塩素含有率が64重量%未満であると耐熱性が低下し、また67重量%を越えると溶融粘度が高く、加工性が悪くなるとともに、塩化ビニル系樹脂(塩素含有率56.7量量%)と相溶しにくくなり、引張強度、耐侯性、耐衝撃性等の物性が低下する傾向がある。
【0039】
塩素化塩化ビニル系樹脂の製造に用いられる塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体であってもよく、また塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの塩化ビニル系共重合体であってもよい。
【0040】
共重合可能なモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリル酸ビニルなどのビニルエステル類:メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類;ジブチルマレート、ジエチルマレートなどのマレイン酸エステル類;ジブチルフマレート、ジエチルフマレートなどのフマール酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;エチレン、プロピレン、n−ブテンなどのオレフイン類;塩化ビニリデン、臭化ビニルなどの塩化ビニル以外のハロゲン化ビニリデン類又はハロゲン化ビニル類などが挙げられる。
【0041】
発明1において、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系グラフト共重合体の混合比率は、塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂を5〜30重量部の範囲に限定される。塩素化塩化ビニル系樹脂の混合比率が5重量部未満であると充分な耐熱性が得られず、30重畳部を超えると耐衝撃性が低下し、加工性も低下する。
【0042】
発明2で用いられる、例えば市中から、回収された塩化ビニル系樹脂製電力ケーブル防護管の粉砕物は、好ましくは、例えば、塩化ビニル管・継手協会が定めるところのリサイクル原料基準のIII類に含まれる電力管のリサイクル原料があげ
られる。
【0043】
上記回収電力管粉砕物の添加部数は、塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して1〜100重量部に限定される。1量量部未満の場合には、リサイクル原料を使用するという目的に外れ、100量部以上では、成形時の肉厚の寸法が安定しなくなる。好ましくは、10〜50重量部である。
上記回収電力管粉砕物の大きさは、入手の際には特に限定されないが、取り扱いの容易さから、最大厚み15mm以下の粉砕品が好ましい。さらに好ましくは1〜10mmである。
【0044】
さらに上記回収電力管粉砕品を上記塩化ビニル系樹脂に添加して使用する堵合は、1000μm以下の粉砕品であることが好ましい。1000μm以上であると、成形時に充分な混線が困難になり、リサイクル原料が均−に分散し難くなる。さらに好ましくは150〜600μmである。
【0045】
本発明においては、塩化ビニル系樹脂組成物に、必要に応じて、安定剤、滑剤、加工助剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料などの添加剤が添加されていてもよい。
【0046】
上記安定剤としては特に限定されず、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤などが挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカブト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル銀ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基 の鉛系安定剤;カルシウムー亜鉛系安定剤;バリウムー亜鉛系安定剤;バリウム−カドミウム系安定剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。
上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。
上記外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフインワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば量量平均分子10万〜200万のアルキルアクリレートーアルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−プチルアクリレートーメチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートーメチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フエニルマレイミド系などが挙げられる。
【0051】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤などが挙げられる。
【0052】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0053】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、べンゾフエノン系、べンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0054】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フエロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記添加剤を上記塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0057】
発明1及び発明2の塩化ビニル系組成物の成形方法としては、特に限定されないが、押出成形法、射出成形法、ロール成形法、ブロー成形法、プレス成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0058】
電力ケーブル防護管の成形方法としては押出成形法が好適に用いられる。
本発明における塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に用いる成形機としては特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸異方向パラレル押出機、二軸異方向コニカル押出機、二軸同方向押出機等が挙げられる.又、樹脂温度、成形条件は、特に限定されない.
【0059】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに許しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
(アクリル系共重合体の製造)
表1に示した、コア層、及びシェル層を形成するためのモノマー(以下、それぞれをコア層形成用モノマー、シェル層形成用モノマーという)をそれぞれ、所定量の純水(モノマー100量量部に対し60量量部が望ましい)、多官能性モノマー、及び、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテルアンモニウムサルフェート(乳化分散剤〉と混合、攪拌し、それぞれの乳化モノマーを調製した。
また、表中、nBAはn−ブチルアクリレートを表し、2EHAは2−エチルヘキシルアクリレート、TMPTAはトリメテロールプロパントリアクリレートを表す。
【0061】
次に攪拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、純水を入れ(全モノマー100量量部に対し160部が望ましい)、容器内の酸素を窒素により置換した後、攪拌下で反応温度を70℃まで昇温した。昇温終了後、反応器に開始剤(過硫酸アンモニウム)、及び、コア層形成用モノマーの30%を一括して投入し、重合を開始した。続いて、コア層形成用モノマーの残りを滴下した。更に、コア層形成用モノマーの滴下が終了次第、シェル層形成用モノマーを順次滴下した。
全ての乳化モノマーの滴下を3時間で終了し、その後、1時間の熟成期間をおいた後、重合を終了して固形分濃度約30重量%、粒子径0.1μmのアクリル系共重合体ラテックス(以下ラテックスと呼ぶ)の粒子を得た。
【0062】
(塩化ビニル系グラフト共重合体の製造〉
ついで、攪拌機及びジャケットを備えた重合器に、鈍水170重量部、上記アクリル系共重合体ラテックス17重量部(アクリル系共重合体固形分5.1量量部)、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールL−8)の3%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、メトローズ60SH50〉の3%水溶液2.5量量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.03重量部、及び硫酸アルミをアクリル系共重合体固形分5.1量量部に対してアルミニウムイオンが3000ppmとなるように、一括投入し、その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に攪拌条件下で塩化ビニル100重量部を投入した。その後、ジャケット温度の制御により重合温度57℃にてグラフト重合を開始した。
【0063】
重合器内の圧力が0.72MPaの圧力まで低下したところで塩化ビニルモノマーの重合率が約80%になる。消泡剤(東レ社製、東レシリコンSH5510)を加圧添加した後に反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系グラフト共重合を得た。この共重合中の塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルの重合度は1000であった。
【0064】
【表1】
【0065】
(塩化ビニル系樹脂組成物の作製)
(実施例1〜5、比較例1〜5)
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体と塩素化塩化ビニル系樹脂とを表2の組成に従って混合し、有機錫系安定剤を2.0部、滑剤を1.0部づつ、加工助剤を1.0部を.スーパーミキサー(100Lカワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0066】
なお、塩素化塩化ビニル樹脂としては徳山積水工業社製のHA−54H(塩素含有率65.3重量%、平均重合度1050)を、錫系安定剤としては三共有機合成社製のSNT−461Kを、滑剤としては三井化学社製のHiwax220MPと花王社製のS−30とを、加工助剤としては三菱レイヨン社製のP501Aを用いた。
また、比較例で用いた塩化ビニル樹脂としては、徳山積水工業製のTS1000R(平均重合度1000)を、塩素化ポリエチレンとしてはダイソー社製ダイソーJMR135Cを、MBSとしては鐘淵化学社製M511を用いた。
【0067】
(実施例6〜9、比較例6〜9)
得られた塩化ビニル系共重合体と塩素化塩化ビニル樹脂、及び市中から回収された塩化ビニル系樹脂製電力ケーブル防護管を粉砕(平均径450μm)して得た粉砕物を表4の組成に従って混合し、有機錫系安定剤を2.0部、滑剤を1.0部づつ、加工助剤1.0部をスーパーミキサー(100L カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。塩化ビニル系樹脂製電力ケーブル防護管の組成は概略、塩素化塩化ビニル樹脂70重量部、塩化ビニル樹脂重量部である。
樹脂、添加剤などは、表4記載の如く、実施例1〜5、比較例1〜5と同様のメーカー、グレードのものを用いた。
【0068】
〔電力ケーブル防護管の作成〕
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を、二軸異方向押出機(長田製作所製SLM−50)に供給し、外径26mm、内径20mmの塩化ビニル系樹脂管(パイプ)を得た。
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を長田製作所社製SLM−50に供し、押出量40Kg/h、スクリュー回転数40rpm、樹脂温度195℃で成形し、溶融体を得た。得られた溶融体を20℃の水で冷却し、外径26mm、内径20mmの塩化ビニル系樹脂管(パイプ)を得た。
【0069】
以上のようにして製管した管の諸物性についてそれぞれ次に列挙する方法で測定を行った。
【0070】
1)耐衝撃性(シヤルピー衝撃試験)
硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験法(JIS K 7111)に基づき、エッジワイズ衝撃試験片でシャルピー衝撃試験を実施した。測定温度は0℃であり、単位は(kJ/m2)である。
2)ビカット軟化温度
JIS K 7206により5kgfの荷重で行った。
評価結果を表3、表5に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【発明の効果】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有されてなるため、前記塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる電力ケーブル防護管は、ポリ塩化ビニル樹脂に衝撃強化剤を添加する系と比較して、耐熱性を保持しつつ耐衝撃性を安定して向上させることができ、電力ケーブルや通信ケーブル等を地中に埋設する際に、これらケーブルの保護管として好適に利用される。
また、請求項2記載の本発明の塩化ビニル系樹脂組成物、およびこれを成形してなる電力ケーブル防護管は、リサイクル原料を使用した場合でも安定して耐衝撃性を発現することができ、リサイクル効率を向上させることができる。
Claims (3)
- 単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートを主成分とするラジカル重合性モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10量量部とからなるアクリル系共重合体(a)1〜50重量%に、塩化ビニルを主成分とするビニルモノマー(b)を50〜99量量%グラフト共重合して得られる塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂が5〜30重量部含有されてなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物
- 上記塩化ビニル系樹脂を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂5〜30重量部の代わりに、市中から回収された塩化ビニル系樹脂製電カケーブル防護管の粉砕物が1〜100量量部含有されてなることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる電力ケーブル防護管。
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