JP2004093947A - 反射防止膜、反射防止フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents
反射防止膜、反射防止フィルムおよび画像表示装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する粒子径1〜200nmの反応性微粒子を含有し、含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖にラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する重合単位とを含んでなる共重合性組成物の硬化皮膜からなる低屈折率層を有する反射防止膜。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射防止膜、反射防止フィルムならびにそれを用いた表示装置(特に液晶表示装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜や反射防止フィルムは一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する様ディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止膜や反射防止フィルムは、支持体上に高屈折率層、さらにその上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。生産性の観点からは各層をウェット塗布で形成できることが好ましい。
低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止膜や反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。材料の屈折率を下げるには、▲1▼フッ素原子を導入する、▲2▼密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるがいずれも皮膜強度が損なわれ耐擦傷性が低下する方向であり、低い屈折率と高い耐傷性の両立は困難な課題であった。
【0004】
低屈折率の含フッ素ポリマーを硬化させる手段としては、種々の方法が知られており、例えば特開昭57−34107号、同61−258852号、同61−275311号、同62−185740号、同62−292848号、特開平8−92323号公報等に例示されているが、これらの硬化皮膜は1.44以下の低屈折率化と高耐傷性の両立という観点からは不十分であった。これに対して特開平11−228631号、12−17028号公報には、ポリシロキサン成分を含フッ素ポリマーに導入することにより、皮膜の摩擦係数を下げて耐傷性を向上させる技術が記載されている。この手法はある程度の効果があるが、本質的な皮膜の力学特性を改良するものではなく限界があった。また耐傷性改良手段として特開2001−100006号公報に記載のごとく含フッ素ポリマーに無機微粒子を添加することも行われてきた。この手法でもある程度の耐傷性改良効果が認められる場合はあるが、無機微粒子と含フッ素ポリマー間の界面の結合力に問題があり、改良が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第1に大量生産に適した塗布型の反射防止膜を提供することであり、第2に反射率が低く、耐擦傷性に優れた反射防止膜を提供することにあり、第3に透明支持体上に該反射防止膜を設けた反射防止フィルムを提供することに有り、第4に表面の耐傷性に優れ反射が防止された画像表示装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、以下に示す1)〜8)の本発明によって達成された。
1)ラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する粒子径1〜200nmの反応性微粒子を含有し、含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖にラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する重合単位を必須の構成成分とする共重合性組成物の硬化皮膜からなる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
2)反応性微粒子がラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有するシリカ微粒子であることを特徴とする上記1)に記載の反射防止膜。
3)反応性微粒子および含フッ素ポリマーがともに、(メタ)アクリロイル基を含有することを特徴とすることを特徴とする上記1)または2)に記載の反射防止膜。
4)上記1)〜3)に記載の共重合体が下記一般式1で表わされることを特徴とする上記1)に記載の反射防止膜。
【0007】
【化1】
【0008】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていても良い。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。
【0009】
5)上記一般式1に記載の共重合体が下記一般式2で表されることを特徴とする上記1)〜4)に記載の反射防止膜。
【0010】
【化2】
【0011】
一般式2中、X、x、yはそれぞれ一般式1の説明と同じである。Bは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていても良い。z1およびz2はそれぞれの構成成分のモル%を表し、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。nは2≦n≦10を満たす整数を表す。
6)上記1)〜5)に記載の低屈折率層と支持体との間に、無機微粒子および多官能(メタ)アクリレート樹脂を含有する高屈折率層を有することを特徴とする上記1)〜5)に記載の反射防止膜。
7)透明支持体上に上記1)〜6)に記載の反射防止膜を設置したことを特徴とする反射防止フィルム。
8)上記7)に記載の反射防止フィルムを配置したことを特徴とする画像表示装置。
なお、上記一般式1又は2で表される共重合体の重合形態は特に限定するものではなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれでもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の反射防止膜は低屈折率層のみからなる単層構成でもよく、また、中・高・低屈折率層、ハードコート層などと積層した多層構成であってもよい。好ましくは多層構成の形態であり、特に好ましくは中・高・低屈折率層の3層以上の層を積層してなる形態である。この反射防止膜は、画像表示装置などに直接(その場で)形成し配置してもよいが、前もって反射防止フィルムを形成してから画像表示装置に配置することが好ましい。
【0013】
[反射防止膜の代表的層構成]
以下に本発明の反射防止膜の代表的な層構成を図1を参照して説明する。
図1は、反射防止膜の様々な層構成を示す断面模式図である。図1の(a)に示す態様は、透明支持体4、ハードコート層3、高屈折率層2、そして低屈折率層1の順序の層構成を有する。(a)のように、高屈折率層2と低屈折率層1とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層が下記式(I)、低屈折率層が下記式(II)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0014】
【数1】
【0015】
式中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率層の屈折率であり、そして、d1は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0016】
【数2】
【0017】
式中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率層の屈折率であり、そして、d2は低屈折率層の層厚(nm)である。
高屈折率層の屈折率n1は、好ましくは透明支持体より少なくとも0.05高く、そして、低屈折率層の屈折率n2は、好ましくは高屈折率層の屈折率より少なくとも0.1低くかつ透明支持体より少なくとも0.05低い。更に、高屈折率層の屈折率n1は、好ましくは1.57〜2.40の範囲にある。
【0018】
図1の(b)に示す態様は、透明支持体4、ハードコート層3、中屈折率層5、高屈折率層2、そして低屈折率層1の順序の層構成を有する。(b)のように、中屈折率層5、高屈折率層2と低屈折率層1とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記式(III)、高屈折率層が下記式(IV)、低屈折率層が下記式(V)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0019】
【数3】
【0020】
式中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。
【0021】
【数4】
【0022】
式中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0023】
【数5】
【0024】
式中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0025】
中屈折率層の屈折率n3は、一般に1.5〜1.7の範囲にあり、高屈折率層の屈折率n4は、一般に1.7〜2.2の範囲にある。
【0026】
また、式(I)〜(V)中のλは可視光線の波長であり、380〜680nmの範囲の値である。ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。例えば中屈折率層は高屈折率層に添加する高屈折率無機微粒子の含率をかえるなどの方法で作製される。
以上の層構成を有する反射防止膜に、本発明に従い改良された低屈折率層を用いる。
【0027】
[低屈折率層]
低屈折率層は図1の(a)(b)に示すごとく高屈折率層の上層に配置される。低屈折率層の上側が反射防止膜の表面である。
【0028】
本発明の低屈折率層は、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基を含有する反応性微粒子を含有し、含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖にラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する重合単位とを含んでなる共重合性組成物の硬化皮膜よりなる。
【0029】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であることが好ましく、1.20〜1.45であることがより好ましく、1.20〜1.44であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0030】
本発明に用いられる反応性微粒子は、特開平10−319211号、同11−6902号公報に記載されるような、有機系微粒子であってもよいが、好ましくはシリカやフッ化マグネシウムの無機微粒子であり、特に好ましくはシリカ微粒子である。これらの、添加する微粒子の屈折率としては1.36〜1.48が好ましく、1.38〜1.46がより好ましい。また、低屈折率層中の微粒子の含有量は、5〜80質量%の範囲であり、好ましくは10〜50質量%であり、特に好ましくは20〜40質量%の場合である。
これらの微粒子への重合性基の導入方法としては、重合性基含有シランカップリング剤(例えば、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、反応性基含有カルボン酸((メタ)アクリル酸等)・エステル((メタ)アクリル酸メチル等)・酸ハライド(アクリル酸クロリド)等で粒子表面を修飾する方法、重合性基を有する粒子前駆体モノマー(シランカップリング剤等)を用いて粒子を合成する方法等が挙げられるが、好ましくはあらかじめ合成された粒子の表面を修飾する方法である。重合性を重合性基を有する化合物で付与する場合、その化合物は表面に物理吸着した形態であっても良いが、化学的に結合していることが好ましい。
【0031】
本発明の微粒子に導入される重合性基はラジカル重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等)、またはカチオン重合性基(例えばエポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)であり、含フッ素共重合体の重合性基に合わせて選択されるが、好ましくは、微粒子および含フッ素共重合体に導入される重合性基がともにラジカル重合性基の場合であり特に好ましくは、(メタ)アクリロイル基の場合である。本発明に用いられる微粒子の粒子径は1〜200nmであり、好ましくは5〜100nm、特に好ましくは10〜50nmである。重合性基は10−2〜10mmol/gの範囲で粒子中に導入されていることが好ましく、5×10−2〜5mmol/gの場合がより好ましく、0.1〜1mmol/gの場合が特に好ましい。
粒子中の重合性基の反応率は5〜100%であることが好ましく、より好ましくは30〜100%であり、特に好ましくは50〜100%である。
【0032】
本発明で特に有用な反応性微粒子としては、メタノールシリカゾル、MA−ST−M、IPA−ST(以上商品名 日産化学工業(株)製)、AEROSIL300、同AEROSIL130、 同AEROSIL50(以上商品名 日産化学工業(株)製)等のシリカ粒子に対して、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を混合し、0〜200℃、好ましくは40〜150℃、特に好ましくは50〜100℃の温度範囲で、0.5〜20時間程度加熱することにより表面修飾を行なった粒子が挙げられる。
【0033】
以下に本発明の低屈性率層に用いられる共重合体について説明する。
含フッ素ビニルモノマーは重合したときにフッ素が主鎖の位置にあっても、側鎖の位置にあっても良いが、好ましくは主鎖の部分にフッ素があることが好ましい。
含フッ素ビニルモノマーの例としてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名 大阪有機化学製)やM−2020(商品名 ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
【0034】
本発明の共重合体は側鎖にラジカル重合性基またはカチオン重合性基を必須の構成成分として含有する。これらの重合性基の例としては反応性微粒子に導入される重合性基の例として上記したものが挙げられるが、好ましくは、ラジカル重合性基であり、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0035】
共重合体中へのこれらの重合性基の導入方法は特に制限されるものではないが、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の2種類の反応性の異なる重合性基を含有するモノマーをラジカル重合法あるいはイオン重合法等によって一方の重合性基のみ重合させる方法、あるいはあらかじめ水酸基等の反応性基含有共重合体を合成した後に高分子反応によって重合性基を導入する方法等が挙げられる。
【0036】
特に共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入方法としては下記▲1▼〜▲6▼の手法が好ましい。▲1▼水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、▲2▼上記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、▲3▼上記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、▲4▼エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、▲5▼カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、▲6▼3―クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法。これらの中でも、特に水酸基を含有するポリマーに対して▲1▼または▲2▼の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。
【0037】
含フッ素ビニルモノマー重合単位の種類によっても異なるが、上記重合性基含有重合単位は共重合体の構成成分中、5〜70mol%を占めることが好ましく、10〜60mol%を占めることがより好ましく、20〜55mol%を占めることが特に好ましい。
【0038】
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマー重合単位およびラジカルまたはカチオン重合性基を有する重合単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65mol%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40mol%の範囲であることがより好ましく、0〜30mol%の範囲であることが特に好ましい。
【0039】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N‐ジメチルメタクリルアミド)、アクリロ二トリル等を挙げることができる。
【0040】
本発明に用いられる共重合体の好ましい形態として前記一般式1のものが挙げられる。一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*‐(CH2)2−O−**,*−(CH2)2−NH−**,*−(CH2)4−O−**,*−(CH2)6−O−**,*−(CH2)2−O−(CH)2−O−**,−CONH−(CH2)3−O−**,*−CH2CH(OH)CH2−O−*,*−CH2CH2OCONH(CH2)3−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表わす。
【0041】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0042】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0043】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を例として挙げることができるが、好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0044】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、20≦y≦60、0≦z≦25の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、25≦y≦55、0≦z≦20の場合である。
【0045】
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式2が挙げられる。一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表わし、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表わし、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーの重合単位を単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2はそれぞれの重合単位のmol%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表わす。それぞれ0≦z1≦25、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦20、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0046】
一般式1又は2で表わされる共重合体は、例えばヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0047】
以下に本発明で有用な共重合体の好ましい例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化3】
【0049】
【化4】
【0050】
【化5】
【0051】
【化6】
【0052】
【化7】
【0053】
【化8】
【0054】
【化9】
【0055】
本発明に用いられる共重合体は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合等によって合成することができる。あるいはこれらの手法によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基等を導入することにより合成することができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。
【0056】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0057】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
【0058】
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0059】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0060】
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0061】
本発明の低屈折率層形成組成物は、通常、液の形態をとり前記共重合性成分を必須の構成成分とし、必要に応じて各種添加剤およびラジカル重合開始剤を適当な溶剤に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0062】
また本発明の反射防止膜低屈折率層には多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低n層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0063】
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低n層全固形分の0〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0〜5質量%の場合である。
【0064】
ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、あるいは光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
【0065】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾービスーイソブチロニトリル、2−アゾービスープロピオニトリル、2−アゾ−ビスーシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0066】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。
このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0067】
熱または光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合を開始できる量であれば良いが、一般的には低屈折率層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%の場合である。
【0068】
低屈折率層塗布液組成物に含まれる溶剤としては、含フッ素共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解または分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶剤を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
【0069】
その他低屈折率層形成組成物には各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加しても良い。
【0070】
[高・中屈折率層]
本発明の反射防止膜が、多層膜の態様をとる場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、前記の高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。
【0071】
上記低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性皮膜(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱皮膜形成用組成物(例、メラミン皮膜、フェノール皮膜、またはエポキシ皮膜などを硬化剤とする皮膜組成物);ウレタン形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ);およびラジカル重合性組成物(上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性皮膜またはプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。上記より高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。上記に使用される有機材料としては、一般に無機系微粒子が高屈折率を有するため有機材料単独で用いられる場合よりも低屈折率のものも用いることができる。そのような材料として、上記に述べた有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド皮膜、繊維素系重合体、ウレタン皮膜およびこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0072】
さらに有機置換されたケイ素系化合物をこれに含めることができる。これらのケイ素系化合物は下記一般式で表される化合物、あるいはその加水分解生成物である。
:Ra mRb n SiZ(4−m−n)(ここでRa及びRbは、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子〜アシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nは1または2であり、かつm及びnはそれぞれ0、1または2である。)
【0073】
これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、即ち粉末または水および/またはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用する。
【0074】
上記より高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料(例、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。これらの好適な例としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec −ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec −ブトキシド及びジルコニウムテトラ−tert−ブトキシドなどの金属アルコレート化合物;ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジエトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトンジルコニウム)、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート及びトリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテートなどのキレート化合物;さらには炭素ジルコニルアンモニウムあるいはジルコニウムを主成分とする無機ポリマーなどを挙げることができる。上記に述べた他に、屈折率が比較的低いが上記の化合物と併用できるものとしてとくに各種のアルキルシリケート類もしくはその加水分解物、微粒子状シリカとくにコロイド状に分散したシリカゲルも使用することができる。
【0075】
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。屈折率は、アッベ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmあることが好ましく、10nm〜1μmあることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmあることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0076】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0077】
[その他の層]
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。二種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上である好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0078】
[透明支持体]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は透明支持体上に形成し、反射防止フィルムとして用いてもよい。透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフイルムの方が好ましい。プラスチックフイルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。透明支持体に、表面処理を実施してもよい。
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0079】
[反射防止膜の形成]
反射防止膜が、単層又は前記のように多層の構成をとる場合は、各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができる。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0080】
本発明の反射防止膜の各層の硬化は電離放射線または/および熱の作用によって行われる。電離放射線の照射は、高圧水銀ランプを用いて行うことが好ましい。この際、酸素濃度0.5%以下の条件で紫外線照射を行うことが好ましく、より好ましくは酸素濃度0.3%以下の条件であり、特に好ましくは0.2%以下の条件である。照射エネルギーは300mJ/cm2〜1500mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは400mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲であり、特に好ましくは500mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲である。
【0081】
加熱を行う場合には30〜200℃程度の温度範囲が好ましく、より好ましくは80〜180℃であり、特に好ましくは100〜150℃の場合である。加熱時間は30秒〜100時間の範囲が好ましく、より好ましくは1分〜1時間であり、特に好ましくは2分〜15分である。
【0082】
反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。具体的には450〜650nmの波長領域での鏡面平均反射率が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。微粒子を使用した低屈折率層では、微粒子により反射防止膜の表面に凹凸が形成できる。微粒子により得られるアンチグレア機能では不充分な場合は、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層あるいはハードコート層に比較的大きな粒子(粒径:50nm〜200nmを少量(0.1〜50質量%)添加してもよい。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜は、偏光板や、ディスプレイ装置、例えば液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。反射防止膜は、高屈折率層が画像表示装置の画像表示面側になるように配置する。反射防止膜が透明支持体上に設けられ、反射防止フィルムとして用いられる場合は、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。反射防止膜は、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0083】
【実施例】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
<合成例>
反応性微粒子分散液(1)の合成
メタノールシリカゾル((商品名)日産化学工業(株)社製;粒子径10〜15nmのシリカ粒子メタノール分散物(固形分30質量%))の50gおよびアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(商品名)信越化学工業(株)社製)の12.3gおよびジメトキシエタン57gを混合し、10時間加熱還流した後、未反応のKBM5103をシリカゲルに吸着させろ過することにより、アクリル修飾シリカ分散液(1)(固形分20質量%)を得た。29SiNMRおよび元素分析より、粒子表面が直接アクリロイル基含有シランカップリング剤で修飾されており、粒子へのアクリロイル基導入率は0.5mmol/gであることを確認した。
【0085】
同様にして、メタノールシリカゾル((商品名)日産化学工業(株)社製)をメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503(商品名)日産化学工業(株)社製)で修飾した粒子(メタクリロイル基導入率0.4mmol/g)の分散液(2)(固形分20質量%)、およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランで修飾した粒子(グリシジル基導入率0.2mmol/g)の分散液(3)(固形分20質量%)を合成した。
【0086】
含フッ素共重合体(P−1)の合成
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体の28gを得た。得られたポリマーの屈折率は1.406であった。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド4.6gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることにより含フッ素共重合体(P−1)を15g得た。得られたポリマーの数平均分子量は2.9万であり、屈折率は1.415であった。
【0087】
3)含フッ素共重合体(P−28)の合成
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブ(耐圧硝子工業社製)に酢酸エチル25ml、およびエチルビニルエーテルの2.07g、2−グリシジルオキシエチルビニルエーテル5.61g、過酸化ジラウロイル0.23gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)10.77gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.1kg/cm2であった。該温度を保持し8時間撹拌を続け、圧力が2.8kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。濃縮後、ポリマーを少量の酢酸エチルに溶解し、n−ヘキサンにて再沈殿を行った。得られたポリマーを更に二回n−ヘキサンにて再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。該ポリマーを減圧下乾燥させることにより含フッ素共重合体P−28を13g得た。得られたポリマーの数平均分子量は3.1万であり、屈折率は1.407であった。
【0088】
本発明の他のポリマーも同様にして合成できる。
【0089】
[実施例1]反射防止膜の評価
下記表1に示す各成分を混合し、メチルイソブチルケトンに溶解した後、孔径1μmポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
また表中、DPHA(商品名)は日本化薬(株)製ジペンタエリスロトールヘキサアクリレートを表す。メタノールシリカゾル(商品名)およびMEK−ST(商品名)は日産化学工業(株)社製シリカ微粒子分散物を表す。TMS−シリカは特開平11−43319号公報、実施例1記載の手法に準じて合成した表面トリメチルシリル基修飾シリカ粒子を表す。
IRG907はチバガイギー(株)社製光ラジカル重合開始剤イルガキュア907(商品名)を表す。UVI6990はユニオンカーバイド日本(株)社製光カチオン重合開始剤UVI6990(商品名)を表す。( )内は各成分の固形分の質量部を表わす。
【0090】
【表1】
【0091】
第一層(ハードコート層)用塗布液の調製
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA(商品名)、日本化薬(株)製)125gおよびウレタンアクリレートオリゴマー(UV−6300B(商品名)、日本合成化学工業(株)製)125gを、439gの工業用変性エタノールに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ−ガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュア−DETX(商品名)、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。混合物を撹拌した後、1ミクロンメッシュのフィルターでろ過してハードコート層の塗布液を調整した。
【0092】
二酸化チタン分散物の調製
コア/シェル構造の二酸化チタン微粒子(TTO−55B(商品名)、石原産業(株)製)30質量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21(商品名)、日本化薬(株)製)4.5質量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA(商品名)、興人(株)製)0.3質量部およびメチルエチルケトン65.2質量部を、サンドグラインダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調整した。
【0093】
第二層(中屈折率層)塗布液の調製
シクロヘキサノン151.9gおよびメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ−ガイギー社製)0.14gおよび光増感剤(カヤキュア−DETX(商品名)、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。さらに上記二酸化チタン分散物6.1gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間撹拌した後、1ミクロンのメッシュのフィルターでろ過して、中屈折率層用塗布液を調整した。
【0094】
第三層(高屈折率層)塗布液の調製
シクロヘキサノン152.8gおよびメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ−ガイギー社製)0.06gおよび光増感剤(カヤキュア−DETX(商品名)、日本化薬(株)製)0.02gを溶解した。さらに、二酸化チタン分散物13.13gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA(商品名)、日本化薬(株)製)0.76gを加え、室温で30分間撹拌した後、1ミクロンのメッシュのフィルターでろ過して、高屈折率層用塗布液を調整した。
【0095】
反射防止フィルムの作成
80ミクロンの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U(商品名)、富士写真フイルム(株)製)に、ゼラチン下塗り層を設け、ゼラチン下塗り層の上に、上記のハードコート層の塗布液を、バーコータを用いて塗布し、120℃で乾燥した。次に窒素雰囲気下酸素濃度0.1%にして、500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して、塗布層を硬化させ、厚さ7.5μmのハードコート層を形成した。
続いて、上記中屈折率層用の塗布液をハードコート層の上にバーコータを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、窒素雰囲気下紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率:1.72、厚さ:81nm)を形成した。続いて、中屈折率層の上に上記高屈折率層用塗布液をバーコータを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、窒素雰囲気下酸素濃度0.1%にして、500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率:1.92、厚さ:53nm)を形成した。さらに、上記表1に示した低屈折率層用塗布液(本発明Ln1〜Ln12および比較例Ln13〜20)を高屈折率層上にバーコータを用いて厚さ85nmとなる様に塗布し、窒素雰囲気下酸素濃度0.1%にして、750mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して、低屈折率層を形成した。
【0096】
塗設フィルムの性能評価
こうして得られた第1〜4層を塗設したフィルム(本発明実施例1〜12、比較例13〜20)について、下記性能評価を実施した。
【0097】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの鏡面平均反射率を用いた。
【0098】
(2)鉛筆硬度評価
反射防止フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JISK 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0099】
(3)耐傷性試験
膜表面をスチールウール#0000を用いて、500gの荷重下で10往復擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全く傷がつかない :◎
わずかに傷がつく :○
細かい傷が目立つ :△
傷が著しい :×
得られた結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
本実施例から明らかなように、本発明の反射防止膜(1)〜(12)は広い波長領域で、非常に低い表面反射率、かつ十分に強靱な皮膜強度を有しているのに対して、比較例の反射防止膜(1)〜(8)は皮膜の強度に劣り、比較例の反射防止膜(9)は屈折率、反射率が高いことが分かる。
【0102】
[反射防止膜を設置した表示装置の作成]
上記で作成した実施例(1)〜(12)、比較例(1)〜(8)の反射防止膜を日本電気株式会社より入手したパーソナルコンピューターPC9821NS/340Wの液晶ディスプレイ表面に貼り付け、表面装置サンプルを作成し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。本発明の実施例(1)〜(12)の反射防止膜を設置した表示装置は周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度を有するものであったのに対し、比較例(1)〜(8)の膜を設置した表示装置は周囲の映り込みはある程度低減できるものの表面強度に劣るものであった。
【0103】
【発明の効果】
本発明の反射防止膜は、反射防止性能が高く、耐傷性に優れる。この反射防止膜を用いた偏光板及び液晶表示装置は、外光の映り込みが十分に防止されているうえ、耐傷性も高という優れた性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止膜が複合膜の場合の層構成を示す断面模式図であり、(a)は4層構成、(b)は5層構成の例を示す。
【符号の説明】
1 低屈折率層
2 高屈折率層
3 ハードコート層
4 透明支持体
5 中屈折率層
Claims (3)
- ラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する粒子径1〜200nmの反応性微粒子を含有し、含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖にラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有する重合単位とを含んでなる共重合性組成物の硬化皮膜からなる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
- 透明支持体上に請求項1に記載の反射防止膜を設置したことを特徴とする反射防止フィルム。
- 請求項2に記載の反射防止フィルムを配置したことを特徴とする画像表示装置。
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