JP2004026944A - 熱可塑性ポリイミド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性とウェルド強度のバランスに優れる熱可塑性ポリイミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、一般に、耐熱性、機械特性、耐薬品性等の点で通常の汎用エンジニアリングプラスチックより大幅に優れており、スーパーエンジニアリングプラスチックのひとつに数えられている。このポリイミド樹脂には、熱可塑性を有するものと、熱硬化性のものがあるが、特に熱可塑性のものは加工が容易なので、近年、種々の分野において需要が増えている。
【0003】
スーパーエンジニアリングプラスチックは、本来、加工し難く比重が大きい金属材料の代替材料として意義がある。したがって、近年は、より高い耐熱性や強度が求められ、種々の改良が施されるようになって来た。
【0004】
一方、本発明者らは、特開2000−103854号公報に記載のように、下記化学式(1)
【0005】
【化3】
【0006】
で表される繰り返し単位を有する熱可塑性かつ結晶性のポリイミド樹脂について既に特許出願している。このポリイミド樹脂は、融点が高く、かつ結晶化速度が大きい。したがって、通常の成形サイクルでの射出成形でも結晶化が完了し、熱可塑性樹脂の中ではトップクラスの耐熱性を有する。
【0007】
本発明者らは、上述した化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂の成形方法につき、さらに検討を進めた。その結果、このポリイミド樹脂を射出成形した場合において、ウェルド部(射出合流部)の強度が低い傾向にあることを見出した。
【0008】
この点に関し、本発明者らは、溶融流動状態のポリイミド樹脂は分子鎖配向が強く、金型内のウェルド部において分子鎖の絡み合いが上手く形成されず、溶融状態のポリイミド樹脂がうまく合流しないことが原因であろうと考えた。ただし、この考察は一つの可能性を提示するものであって、本願発明を狭く解釈する根拠となるものではない。
【0009】
このウェルド部の強度低下の問題は、化学式(1)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を射出成形するときには、避けて通れない問題である。本発明者らの知見によれば、例えば、孔が空いた成形品を製造する為の金型を用いる場合は、ウェルド部が多いので問題が生じ易い。また、孔が無い成形品を製造する場合でも、複数のゲートを有する金型を用いると、樹脂が複数の方向からキャビティ内に流入するので問題が生じ易い。
【0010】
さらに、本発明者らは、特開2000−191907号公報に記載のように、化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂と、下記化学式(4)
【0011】
【化4】
【0012】
で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂からなる組成物について、既に特許出願している。
【0013】
この化学式(4)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂は、結晶性であるが、結晶化速度が小さく、通常の射出成形では結晶化しない点で、化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂とは大きく異なる。本発明者らの知見によれば、このように結晶化速度が異なり、溶融時に互いに完全相溶する2種以上のポリイミド樹脂からなる組成物は、ユニークな挙動を示す。すなわち、冷却過程で化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂の結晶化が起こると、化学式(4)の熱可塑性ポリイミド樹脂の結晶化が加速されるという現象が観察されるのである。したがって、両者の微結晶が細かなレベルで混合した状態をとり、結果として、広い温度領域で弾性率の安定した組成物となるのである。ただし、本発明者らの知見によれば、このような組成物であっても、耐熱性とウェルド強度の両立は困難である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した各従来技術の課題を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明の目的は、耐熱性とウェルド強度のバランスに優れる熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の熱可塑性ポリイミド樹脂を組み合わせることにより、非常に優れた結果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、下記化学式(1)
【0017】
【化5】
【0018】
で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と、
下記数式(I)
th=t0−t1 (I)
[式(I)中、thは、半結晶化時間(分)であり、t0は、熱可塑性樹脂を示差走査型熱量計(DSC)解析において溶融状態から所定温度Tc(ガラス転移点以上融点以下の温度)まで急冷させたときの時間(分)であり、t1は、熱可塑性樹脂を所定温度Tcで保持し結晶化させたとき、示差走査型熱量計(DSC)解析において観察される発熱ピークのピークトップを示す時間である。]
で表される半結晶化時間が、50分間以上の熱可塑性ポリイミド樹脂(B)と
を含んでなることを特徴とする熱可塑性ポリイミド樹脂組成物である。
【0019】
さらに本発明は、上記熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を製造するための方法であって、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)とを溶融混合する際に、一相状態を経由することを特徴とする熱可塑性ポリイミド樹脂組成物の製造方法である。
【0020】
【発明の実施形態】
本発明に使用する熱可塑性ポリイミド樹脂(A)は、下記化学式(1)
【0021】
【化6】
【0022】
で表される繰り返し構造単位を有するものである。この化学式(1)で表される繰り返し構造単位は、ポリマー分子鎖中の全繰り返し構造単位中、50%以上存在することが好ましく、80%以上存在することがより好ましい。
【0023】
この熱可塑性ポリイミド樹脂(A)は、例えば、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを、有機溶媒の存在下又は非存在下で反応させ、得られたポリアミド酸を化学的に又は熱的にイミド化する方法等により製造できる。この製造の際には、無水フタル酸等の芳香族カルボン酸一無水物を用いて、分子鎖の末端封止と分子量調整を行うことが好ましい。
【0024】
熱可塑性ポリイミド樹脂の分子量は、一般に、粘度により評価される。この熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の粘度は、対数粘度で0.1〜3.0dl/gが好ましく、0.3〜2.0dl/gがより好ましく、0.5〜1.5dl/gが特に好ましい。上記各範囲の下限値は、機械的物性等の点で意義がある。また、上限値は、流動性およびこれに起因する射出成形性等の点で意義がある。この対数粘度は、p−クロロフェノール/フェノール(質量比9/1)の混合溶媒100mlに、熱可塑性ポリイミド樹脂粉0.50gを加熱溶解し、35℃において測定した値である。
【0025】
本発明に使用する熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、下記数式(I)
th=t0−t1 (I)
[式(I)中、thは、半結晶化時間(分)であり、t0は、熱可塑性樹脂を示差走査型熱量計(DSC)解析において溶融状態から所定温度Tc(ガラス転移点以上融点以下の温度)まで急冷させたときの時間(分)であり、t1は、熱可塑性樹脂を所定温度Tcで保持し結晶化させたとき、示差走査型熱量計(DSC)解析において観察される発熱ピークのピークトップを示す時間である。]
で表される半結晶化時間が50分間以上の熱可塑性ポリイミド樹脂である。
【0026】
熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、例えば、25℃から融点まで示差走査熱量計(DSC)解析をしたときに、ガラス転移点に帰属されるピークが一つであるものが好ましい。
【0027】
数式(I)で表される半結晶化時間を求める為には、例えば、まず、熱可塑性樹脂を昇温して十分に溶融させ、次いで所定の温度Tc(ガラス転移点以上融点以下)まで急冷させる。この時の時刻をt0とする。そのまま、その温度Tcで一定に保つと結晶化が始まり、DSC上は結晶化の発熱ピークが観察される。この発熱ピークのピークトップを与える時間をt1とする。このt1とt0の時間の差が、半結晶化時間である。このような測定法は、例えば「高分子測定法 上」(高分子学会、1973年、培風館発行)や「熱測定」(22巻、16頁、1995年、高橋ら、日本熱測定学会発行)等に記載されている。
【0028】
この半結晶化時間の値が小さな樹脂ほど、結晶化が速い樹脂といえる。なお、通常、この半結晶化時間は結晶化させる温度に対して依存性があり、ガラス転移点と融点の間のある温度で最小をとなる。したがって、ガラス転移点と融点の間の複数の温度条件で測定を繰り返し、それらの測定値の中で最小の半結晶化時間が、50分間以上という条件を満たすかどうかで判断すればよい。
【0029】
例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)単独では、半結晶化時間はTc310℃で0.2分間であるが、この温度以下では半結晶化時間が短すぎて上手く測定できない。何れにしても、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)は30秒から1分間程度の通常の射出成形の冷却時間で十分に結晶化が完了する。
【0030】
一方、熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、半結晶化時間が50分間以上であり、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)とは反対に結晶化速度の大変遅いものである。
しかしながら、先に述べたように、結晶化速度の比較的小さい熱可塑性ポリイミド樹脂(B)でも、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)との溶融時に相溶のポリマーアロイが形成されると、冷却過程で起こる熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の結晶化に伴い熱可塑性ポリイミド樹脂(B)自身の結晶化も促進され、結果として相分離が速くなる傾向にある。
【0031】
この場合、半結晶化時間が50分間未満の熱可塑性ポリイミド樹脂を使用すると、組成物が金型内に流入する時点で分離がある程度進んでしまい、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の分子鎖配向が緩和された状態でのウェルド部の合流が起こらない。例えば、従来技術として先に述べた化学式(4)の熱可塑性ポリイミド樹脂は半結晶化時間が約15分間であるが、上述の理由からウェルド強度が改良されない。一方、本発明においては、半結晶化時間が50分間以上の熱可塑性ポリイミド樹脂(B)を用いているので、組成物の相溶状態をある程度保ちながらウェルド部で合流させることができ、ウェルド強度の改善効果が得られるのである。
【0032】
熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、半結晶化時間が50分間以上であり、かつ溶融状態において熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と相溶状態を形成し得るものであればよく、その分子構造に特に制限は無い。ただし、この熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、下記化学式(2)及び/又は下記化学式(3)
【0033】
【化7】
【0034】
(化学式(2)において、Qは芳香族ジアミン由来構造単位を示し、また、nとmの合計モル数を基準として、nは50〜97モル%、mは3〜50モル%である。化学式(3)において、Aは、芳香族カルボン酸二無水物由来構造単位を示し、また、xとyの合計モル数を基準として、xは40〜90モル%、yは10〜60モル%である。)。
で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂組成物であることが好ましい。
【0035】
なお、化学式(2)及び(3)は、コポリマーの繰り返し単位の種類とその比率を表す為の模式的な化学式である。したがって、その分子構造については、ランダムコポリマーであってもよいし、ブロックコポリマーであってもよい。
【0036】
化学式(2)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂組成物(B)は、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと他の芳香族ジアミンを併用し、ピロメリット酸二無水物と共に有機溶媒の存在下又は非存在下で反応させ、得られたポリアミド酸を化学的に又は熱的にイミド化する方法等により製造できる。この製造の際には、無水フタル酸等の芳香族カルボン酸一無水物を用いて、分子鎖の末端封止と分子量調整を行うことが好ましい。
【0037】
併用する他の芳香族ジアミンの具体例としては、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。これらは、一種を又は二種以上を組合わせて用いることができる。なかでも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
【0038】
4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと他の芳香族ジアミンのモル比は、50/50〜97/3が好ましく、70/30〜95/5がより好ましい。4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルの比率が50モル%以上であれば、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)との相溶性が良好となる傾向にある。また、97モル%以下であれば、半結晶化時間が50分間以上となり易く、ウェルド強度の改良効果が顕著に発現する傾向にある。
【0039】
化学式(3)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリイミド樹脂組成物(B)は、例えば、ピロメリット酸二無水物と他の芳香族カルボン酸二無水物を併用し、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと共に有機溶媒の存在下又は非存在下で反応させ、得られたポリアミド酸を化学的に又は熱的にイミド化する方法等により製造できる。この製造の際には、無水フタル酸等の芳香族カルボン酸一無水物を用いて、分子鎖の末端封止と分子量調整を行うことが好ましい。
【0040】
併用する他の芳香族カルボン酸二無水物の具体例としては、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは、一種を又は二種以上を組合わせて用いることができる。なかでも、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0041】
ピロメリット酸二無水物と他の芳香族カルボン酸二無水物のモル比は、40/60〜90/10が好ましく、50/50〜80/20がより好ましい。ピロメリット酸二無水物の比率が40モル%以上であれば、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)との相溶性が良好となる傾向にある。また、90モル%以下であれば、半結晶化時間が50分間以上となり易く、ウェルド強度の改良効果が顕著に発現する傾向にある。
【0042】
熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の粘度は、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と同様に、対数粘度で0.1〜3.0dl/gが好ましく、0.3〜2.0dl/gがより好ましく、0.5〜1.5dl/gが特に好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、上述した熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)とを含んでなるものである。熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の含有量は、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の両者の合計100質量部を基準として、75〜98質量部が好ましく、80〜95質量部がより好ましく、85〜90質量部が特に好ましい。また、熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の含有量は、2〜25質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましく、10〜15質量部が特に好ましい。熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の含有量の各範囲の下限値は熱変形温度等の点で意義があり、各範囲の上限値はウェルド強度等の点で意義がある。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、さらに補強材(特に無機補強材)を添加することも好ましい。この補強材としては、例えば、繊維状、針状、板状、粒状、その他の形態のものがある。これらは、一種を単独で又は複数を組合わせて用いることができる。繊維状補強材の具体例としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維等が挙げられる。針状補強材の具体例としては、チタン酸カリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、カーボンウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイト、酸化亜鉛ウィスカー、酸化チタンウィスカー等が挙げられる。板状補強材の具体例としては、雲母、ガラスフレーク、タルク、セリサイト、カオリナイト、窒化ほう素、黒鉛、金属フレーク等が挙げられる。粒状補強材の具体例としては、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、シリカ、硫酸バリウム、金属粉等が挙げられる。また、所望の性質改良を目的として、ケイ石粉、二硫化モリブデン等の耐摩耗性向上材;三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃性向上材;アスベスト等の耐トラッキング向上材;メタケイ酸カルシウム等の耐酸性向上材;その他、ケイ藻土、アルミナ、シラスバルン、水和アルミナ、ハイドロタルサイト、ゼオライト等の金属酸化物;などを用いることもできる。これらは、単独で又は複数を組合わせて用いることができる。
【0045】
補強材の添加量は、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の両者の合計100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。この添加量が1質量部以上であれば補強効果が向上し、100質量部未満であれば成形時の流動性が害されない傾向にある。
【0046】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損ねない範囲内において、他の種類の熱可塑性樹脂を所望により適当量配合することも可能である。その具体例としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルニトリル、液晶ポリマー、および、樹脂(A)及び(B)以外の熱可塑性ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂や、シリコーン樹脂類を適当量配合することは、樹脂組成物の離型性を改善する上で効果が大きい。また、芳香族ポリアミド繊維等を適当量配合することは、機械的特性を向上する上で好ましい。これらは、単独で又は複数を組合わせて用いることができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)を溶融混合することにより得られる。特に、この溶融混合の際に一相状態を経由することにより簡易かつ良好に製造することができる。
【0048】
溶融混合は、通常は、各成分を均一混合し、一軸あるいは多軸の押出機を用いて連続的に行う。ただし、混合ロール、ニーダー、ブラベンダー等のバッチ式方法も実施可能である。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、主に射出成形により成形して、各種用途に用いられる。ただし、押出成形、圧縮成形、トランスファー成形等、従来より知られる各種の方法により成形することも可能である。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、熱変形温度とウェルド強度のバランスに優れるので、特に形状の複雑な成形品に広く応用可能である。例えば、半導体容器の分野では、IC包装用トレー、IC製造工程用トレー、ICソケット、ウェハーキャリア等に有効である。電気・電子部品の分野では、コネクター、ソケット、ボビン等のほか、ハードディスクキャリア、液晶ディスプレイキャリア、水晶発振器製造用トレー等の製造用治具に有効である。事務機器部品の分野では、コピー機用分離爪、コピー機用断熱軸受け、コピー機用ギア等に有効である。自動車部品の分野では、スラストワッシャー、トランスミッションリング、ピストンリング、オイルシールリング等に有効である。産業機器部品の分野では、ベアリングリテーナー、ポンプギア、コンベアチェーン、ストレッチマシン用スライドブッシュ等に有効である。
【0051】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例、参考例及び比較例における樹脂の物性測定と評価は、以下の要領で実施した。
【0052】
(1)半結晶化時間:
示差走査型熱量計(DSC)を用いて、等温結晶化試験によりt0及びt1測定して、前記数式(I)に従い、半結晶化時間を求めた。具体的には、樹脂を昇温して十分に溶融させ、次いで所定の温度Tcまで急冷させ、この時の時刻をt0とした。そして、そのままその温度Tcで一定に保つと結晶化が始まり、DSC上は結晶化の発熱ピークが観察されたので、この発熱ピークのピークトップを与える時間をt1とした。
【0053】
通常、この半結晶化時間は結晶化させる温度に対して依存性があり、ガラス転移点と融点の間のある温度で最小をとなる。したがって、ここでは温度を190℃から320℃まで変えて繰返し測定した中で、最小の半結晶化時間を記した。また、半結晶化時間が短く、0.2分間未満で測定が出来ない場合は「<0.2」のように表記した。
【0054】
(2)ウェルド強度:
中央部にウェルドが生じるよう両端にゲートを設けた金型を用い、射出成形によって、幅5mm、厚さ2mm、長さ75mmの試験片を作製し、3点曲げ試験を行ない(スパン間距離50mm)、得られた応力−歪み曲線の積分値をもってウェルド強度とした。この値は断面積が10mm2の場合の曲げ破断エネルギーであり、値が大きいほどウェルド強度が優れているといえる。
【0055】
(3)荷重たわみ温度:
ASTM D−648に準じ、荷重41.2N(4.2kgf)で測定した。この値が大きいほど、たわみ強度が優れているといえる。
【0056】
[熱可塑性ポリイミド樹脂の製造例]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器に、表1に示す割合で、芳香族ジアミン、芳香族カルボン酸二無水物、及び無水フタル酸を装入し、m−クレゾール中、窒素雰囲気下で攪拌しながら220℃まで加熱した(濃度10質量%)。その後220℃で8時間反応させて重合を完了し、室温まで冷却し、生成ポリマーを反応マスと等量のトルエンで再沈させ、濾別、乾燥し、ポリイミド1〜9を得た。
【0057】
なお、表1中の略号は、各々、以下の化合物を意味する。
「APB−R」:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン。
「m−BP」:4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル。
「ODA」:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル。
「PMDA」:ピロメリット酸二無水物。
「BPDA」:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物。
【0058】
得られたポリイミド1〜9の半結晶化時間および対数粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例1及び2]
製造例1で得たポリイミド1及びポリイミド2を、表2に示す割合で配合し、タンブラーミキサーで十分に混合して、スクリュー直径37mm、L/D=32の二軸押出機にて420℃、スクリュー回転数80rpmで溶融混合し、押出してペレット化した。このペレットを用い、シリンダー温度420℃、金型温度200℃の条件で射出成形を行って、試験片を得た。評価結果を表2に示す。
【0060】
[実施例3〜8]
ポリイミド2に代えて、表2に示すようにポリイミド3〜5を用いたこと以外は、実施例1及び2と同様にして熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0061】
[参考例1〜8]
ポリイミドの混合比率を、表3に示すように好適範囲を外れた比率に変更したこと以外は、実施例1〜8と同様にして熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0062】
[比較例1〜8]
ポリイミド2に代えて、表4に示すようにポリイミド6〜9を用いたこと以外は、実施例1及び2と同様にして熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表4に示す。
【0063】
[比較例9]
ポリイミド1単体に対して同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、耐熱性とウェルド強度のバランスに優れる熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を提供できる。熱可塑性ポリイミド樹脂組成物は、このような優れた特性を有するので、従来の熱可塑性ポリイミド樹脂と比較して用途が制限されず、特に形状の複雑な成形品に広く応用可能である。
Claims (6)
- 下記化学式(1)
下記数式(I)
th=t0−t1 (I)
[式(I)中、thは、半結晶化時間(分)であり、t0は、熱可塑性樹脂を示差走査型熱量計(DSC)解析において溶融状態から所定温度Tc(ガラス転移点以上融点以下の温度)まで急冷させたときの時間(分)であり、t1は、熱可塑性樹脂を所定温度Tcで保持し結晶化させたとき、示差走査型熱量計(DSC)解析において観察される発熱ピークのピークトップを示す時間である。]
で表される半結晶化時間が、50分間以上の熱可塑性ポリイミド樹脂(B)と
を含んでなることを特徴とする熱可塑性ポリイミド樹脂組成物。 - 25℃から融点まで示差走査熱量計(DSC)解析をしたときに、ガラス転移点に帰属されるピークが一つである請求項1又は2記載の熱可塑性ポリイミド樹脂組成物。
- 熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の両者の合計100質量部を基準として、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)75〜98質量部、及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)2〜25質量部を含む請求項1〜3の何れか一項記載の熱可塑性ポリイミド樹脂組成物。
- 熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の両者の合計100質量部に対して、更に補強材1〜100質量部を含む請求項1〜4の何れか一項記載の熱可塑性ポリイミド樹脂組成物。
- 請求項1〜5の何れか一項記載の熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を製造するための方法であって、熱可塑性ポリイミド樹脂(A)と熱可塑性ポリイミド樹脂(B)とを溶融混合する際に、一相状態を経由することを特徴とする熱可塑性ポリイミド樹脂組成物の製造方法。
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