JP3708348B2 - ポリイミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い耐熱性、高温における優れた寸法安定性、高温における高い曲げ弾性率を発現する成形品の製造に好適な樹脂組成物と、それを成形して得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、一般に、耐熱性・機械特性・耐薬品性などの点で通常の汎用エンジニアリングプラスチックよりも大幅に優れており、スーパーエンジニアリングプラスチックのひとつに数えられている。
【0003】
ポリイミド樹脂は、熱可塑性のものと、硬化性のものとがあるが、前者は、加工が容易であるので、近年特に、種々の分野において需要が増加している。
【0004】
スーパーエンジニアリングプラスチックの使用は、本来、加工しにくく、比重が大きい金属の代替という点で意義が深い。このような観点から、最近では、従来よりも耐熱性、寸法精度および生産性について、より高い機能が求められるようになり、そのような機能を発現するための改良が望まれるようになってきた。
【0005】
化学式(1)の繰り返し単位を有するポリイミドについて
化学式(1)(化1)の繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(1))は、例えば米国特許第4,847,311号(特開昭62−236858号)、および第4,847,349号(特開昭62−68817号)に開示されている。
【0006】
このポリイミド(1)は、結晶性であり、ガラス転移点(約245℃)、融点(約388℃)はともに高く、熱可塑性樹脂の中では、トップクラスの耐熱性を有する。しかしながら、このポリイミド(1)は、結晶性とはいっても、結晶化速度が遅く、すなわち結晶化に要する時間が長く、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度の射出成形サイクルで得られる成形品は、非晶質である。
【0007】
そのために、このようにして得られた成形品は、ガラス転移点以下の温度で使用する限りにおいては、寸法精度と曲げ弾性率に優れるという特徴を有する。
【0008】
一方、このようにして得られた成形品を、ガラス転移点以上の温度条件下で使用すると、弾性率が著しく低下し、成形品の形状を維持できず、継続的な使用が困難となる。
【0009】
このポリイミド(1)からなる成形品を、ガラス転移点以上の温度条件下で継続的に使用しようとする場合は、非晶質な成形品に熱処理を施して結晶化させればよい。しかし、結晶化に伴い成形品の寸法が大きく変化するなどの問題を生じる場合がある。
【0010】
化学式(2)の繰り返し単位を有するポリイミドについて
一方、化学式(2)(化1)の繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(2))は、例えば、Macromolecules,29巻・135〜142頁(1996年)等に開示されている。
【0011】
このポリイミド(2)は、結晶性であり、ガラス転移点(約190℃)と融点(約395℃)との差が大きく(約205℃)、しかも大変に結晶化が速い、すなわち、結晶化に要する時間が短い。因に、ポリイミド(1)の場合は、ガラス転移点と融点(約395℃)との差は、約143℃である。
【0012】
このポリイミド(2)は、上述したように、結晶性であり、しかも、結晶化速度が大変に速いため、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度の射出成形サイクル、で得られる成形品は、成形した段階で結晶化がほぼ完了し、熱処理しても寸法の変化は小さい。
【0013】
一般に、結晶化の速い樹脂は、分子鎖の運動性が高いために、融点とガラス転移点の差が大きい。すなわち、ポリイミド(2)のガラス転移点は約190℃であり、ポリイミド(1)と比較して約55℃低い。このため、ポリイミド(2)からなる成形品の150〜200℃の様な中程度の温度条件における曲げ弾性率は、実質的に非晶質でありかつガラス転移点の高いポリイミド(1)の成形品の曲げ弾性率よりも低い、という問題を生ずる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来の技術における問題点に鑑み、ポリイミド(1)と、ポリイミド(2)の長所のみを活かし、ポリイミド(1)とポリイミド(2)の短所が低減されたポリマーアロイを提供することである。
【0015】
本発明が解決しようとする課題の一つは、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサイクルで射出成形しても、結晶性の成形品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供することである。
【0016】
本発明が解決しようとする他の課題の一つは、例えば、230℃以上の高温、例えば、230〜300℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合に、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサイクルで射出成形しても、寸法精度に優れた成形品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供することである。
【0017】
本発明が解決しようとする課題の一つは、例えば、230℃以上の高温、例えば、230〜300℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合に、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサイクルで射出成形しても、曲げ弾性率に優れた成形品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、溶融時には互いに相溶する特定の2種のポリイミドを用い、これらを特定の組成比で混合することにより、優れた性能を発揮することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、次の内容により特徴づけられる。
1. 化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(1))5〜60重量%と、化学式(2)の繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(2))40〜95重量%を含有してなる、ICトレー、電気・電子部品、事務機器部品、自動車部品、及び産業機械部品からなる群より選ばれる成形品用のポリイミド樹脂組成物を提供するものである。
【0020】
【化2】
Figure 0003708348
2. 上記した本発明のポリイミド樹脂組成物においては、半結晶化時間が、0.5分以下であることが好ましい。
3. 前記1または2に記載したポリイミド樹脂組成物100重量部に対し、充填材1〜100重量部を含有することが好ましい。
4. 前記1または2に記載したポリイミド樹脂組成物100重量部に対し、充填材5〜70重量部を含有することがより好ましい。
5. 前記3ないし4において、充填材が、炭素繊維、カーボンブラック、マイカ、タルクおよびガラス繊維からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。
6. 前記3〜4において、充填剤が、炭素繊維および/またはカーボンブラックであることが好ましい。
7. 本発明はまた、前記1〜6の何れかに記載したポリイミド樹脂組成物を含有してなる成形品を提供するものである。
8. 前記成形品は、昇温速度10℃/分、測定温度範囲20〜420℃で示差走査熱量測定(DSC)をしたときに、260〜300℃において結晶化発熱ピークが観察されないことを特徴とする。
9. 前記成形品としては、例えば、ICトレー、電気・電子部品、事務機器部品、自動車部品、産業機械部品を例示することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
ポリイミド(1)
化学式(1)(化1)の繰り返し単位を有するポリイミド(1)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと、ピロメリット酸二無水物とを、有機溶媒の存在下、または、非存在下で反応させ、得られたポリアミド酸を化学的にまたは熱的にイミド化して製造することができる。
【0022】
このポリイミド(1)の粘度は、対数粘度を基準として、一般的には0.1〜3.0dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0dl/g、最も好ましくは0.5〜1.5dl/gの範囲である。
【0023】
対数粘度が0.1dl/g未満では、機械的物性が不十分な場合があり、3.0dl/gを超えると、流動性に劣り、射出成形などに不適となる場合がある。
【0024】
なお、ここで云う対数粘度とは、p−クロロフェノール/フェノール(重量比9/1)の混合溶媒100mlに、ポリイミド粉0.50gを加熱溶解後、35℃において測定した値である。
【0025】
このポリイミド(1)は、好ましい態様では、ガラス転移点が245℃、融点が388℃程度である。
【0026】
このポリイミド(1)は、オーラム(三井化学(株)製)の商品名で市場より入手可能である。
【0027】
ポリイミド(2)
化学式(2)(化1)の繰り返し単位を有するポリイミド(2)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを、有機溶媒の存在下または非存在下で反応させ、得られたポリアミド酸を化学的にまたは熱的にイミド化して製造することができる。
【0028】
このポリイミド(2)の粘度は、対数粘度を基準として、0.1〜3.0dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0dl/g、最も好ましくは0.5〜1.5dl/gの範囲である。
【0029】
対数粘度が0.1dl/g未満では、機械的物性が不十分な場合があり、3.0dl/gを超えると、流動性に劣り、射出成形法などの採用において不適となる場合がある。ここで云う対数粘度は、前記したとおりである。
【0030】
このポリイミド(2)は、好ましい態様では、そのガラス転移温度が190℃、融点が395℃程度である。
【0031】
ポリイミドの組成比
本発明における重要な特定事項は、ポリイミド(1)とポリイミド(2)の(重量基準)の混合比率である。
【0032】
ポリイミド(1)とポリイミド(2)の混合比率を、『重量基準として(1)/(2)』で表記すると、60/40〜5/95の範囲が好ましく、さらに好ましくは50/50〜10/90、最も好ましくは40/60〜20/80の範囲である。ポリイミド(2)が40重量%未満では230℃以上の使用に耐えない場合があり、95重量%を超えると150〜200℃の範囲の曲げ弾性率が改善されない場合がある。
【0033】
本発明に係るポリイミド樹脂組成物の特徴
本発明に係るポリイミド樹脂組成物の特徴について、以下に説明する。
【0034】
例えば、150〜250℃のような高温下の使用を睨む場合、成形品の形状維持の観点から、必ず曲げ弾性率が大きな問題となる。つまり、常温から高温までの曲げ弾性率をある程度平均的に保ち、寸法精度とのバランスを取ることが肝要である。
【0035】
ポリイミド(1)は、結晶化に要する時間が長く、すなわち結晶化速度が遅く、通常の射出成形では、実質上、非晶性の成形品しか得られない。
【0036】
このようなポリイミド(1)の非晶性成形品の使用可能温度、すなわち、一般的耐熱温度は、ガラス転移点に依存し、230℃付近までに限定される。
【0037】
この耐熱温度でも、かなり優れているとはいえるが、さらに230℃以上の高温、例えば、230〜300℃や230〜250℃で使用したいという市場の要求が大きくなってきている。熱処理による結晶化を施せば、使用可能温度は融点に依存するようになるが、結晶化に伴う収縮が大きくなり寸法精度は満足できなくなる。この様に、一長一短の関係にある。
【0038】
一方、ポリイミド(2)は、結晶化に要する時間が短く、最初から結晶化した成形品が得られ、これを熱処理しても寸法の変動は少ない。一般に、結晶化の速度は、分子鎖の運動性に依存し、同種のポリマーでは、ガラス転移点と融点の温度差が大きいほど、結晶化速度も大となる傾向がある。実際、ポリイミド(1)との比較では、融点は7℃だけ高いが、ガラス転移点は55℃も低い。ポリイミド(2)では、通常の成形で十分に結晶化が進むが、150〜200℃のような、ガラス転移点付近の温度における曲げ弾性率は、むしろポリイミド(1)よりも劣る。
【0039】
組成比の臨界的意義
本発明に係るポリイミド樹脂組成物の組成比は、臨界的意義を有する。
すなわち、特定の組成比においてのみ、本願発明の作用効果が発揮される。
【0040】
本発明に係るポリイミド樹脂組成物の臨界的作用効果の発現メカニズムは、必ずしも明確ではないが、以下に本発明者らの考察を述べる。
【0041】
本発明が解決しようとする課題を解決するためには、単純に、結晶性ポリイミドと非晶性ポリイミドとを混合すればよいように思われるかもしれない。しかしながら、そうではない。
【0042】
非晶性樹脂のマトリックス中に結晶性樹脂の微結晶が浮かんでいる状態では、結局、本発明で得られるような効果が得られない上に、結晶性樹脂の結晶化が阻害されてしまうのが普通である。
【0043】
本発明の態様においては、組成物を加熱溶融工程を経て賦形することを前提としている。しかしながら、本発明の態様は、単純に非晶性樹脂のマトリックス中に結晶性樹脂の微結晶が浮かんでいるような状態とは異なることが、示差走査型熱量計(以下、DSCと略記する)による測定結果から強く示唆されている。
【0044】
すなわち、ポリイミド(1)の成形品を常温から昇温していくと、300℃付近に結晶化の発熱ピークが現れる。さらに温度を上げると、融解の吸熱ピークが現れるが、このときの熱量は、結晶化の発熱量とほぼ同じである。つまり、最初の状態では、まったく結晶化していないことがわかる。
【0045】
一方、ポリイミド(2)の成形品では結晶化の発熱は、観察されず、融解の吸熱のみ現れる。しかも、この吸熱ピークの熱量は先のポリイミド(1)の場合と同等である。つまり、最初の状態でほぼ結晶化が完了しているのである。
【0046】
本発明の樹脂組成物による成形物においては、結晶化の発熱が現れず、融解の吸熱のみが見られ、その熱量は、ポリイミド(1)またはポリイミド(2)単体の場合とほぼ同等である。すなわち、組成物中のポリイミド(1)およびポリイミド(2)はいずれも、結晶化が進んでおり、ポリイミド(2)だけが結晶化しているのではない。 従って、「非晶プラス結晶」ではなく「結晶プラス結晶」の性質が得られるのであって、このことが弾性率保持と収縮のバランスを付与する原因と考えられる。
【0047】
両ポリイミドは、溶融混練時には完全に相溶しており透明であるが、冷却過程で直ちに結晶化して濁る。すなわち、冷却過程におけるスピノーダル相分離や、ポリイミド(2)の結晶化などにより、他方のポリイミド(1)の分子がはじき出され、結果としてポリイミド(1)の分子鎖配列に秩序を与えて結晶核発生を促したり、結晶成長表面への分子鎖の供給を加速することなどにより、ポリイミド(1)の結晶化の速度を高めていることが推測される。
【0048】
このように、結晶化の速度が異なり、かつ、溶融混練時には完全相溶して、冷却過程で分離を伴う特定のポリイミドを組み合わせることで課題を解決できることは、これまでは、まったく予想し得なかったことである。
【0049】
しかしながら、ポリイミド(1)の混合比率が60重量%を超えると、やはり、結晶化しなくなってしまう。すなわち、ポリイミド(2)が、ポリイミド(1)によって希釈されすぎると、効果がなくなり、この場合は相溶した状態で透明のまま固化し、非晶状態で成形品が得られる。
【0050】
この混合比率については、DSCを用いた等温結晶化試験により得られる、半結晶化時間からも理解される。ここでいう、半結晶化時間とは、以下に説明するとおりの意味であり、結晶化の速度の尺度として代表的な量である。
【0051】
組成物を昇温して十分に溶融させ、次いで所定の温度、すなわち、ガラス転移点以上、融点以下まで急冷させる。このときの時刻をt0とする。そのまま、その温度で一定に保つと結晶化が始まり、DSC上は結晶化の発熱ピークが観察される。この発熱ピークのピークトップを与える時間をt1とする。
【0052】
ここで半結晶化時間thは、数式(1)(数1)で表わされる。
【0053】
【数1】
th=t1−t0 (1)
半結晶化時間の測定法は、例えば、Macromolecules,29巻・135〜142頁(1996年)、「高分子測定法・上」(高分子学会編、1973年、培風館発行)や「熱測定」22巻,16頁(1995年)などに記載されており、この値が小さいほど結晶化が速い。通常、この半結晶化時間は結晶化させる温度に対して依存性があり、ガラス転移点と融点の間のある温度で最小を採る。
【0054】
ポリイミド(1)単体の最小半結晶化時間は320℃近傍で得られ、約15分間である。一方、ポリイミド(2)のそれは310℃で0.2分間であるが、この温度以下では半結晶化時間が短すぎてうまく測定できない。いずれにしても、ポリイミド(2)はポリイミド(1)よりも2桁程度も半結晶化時間が短く、それだけ結晶化が速いことが分かる。
【0055】
本発明の態様であるポリイミド(1)が、60重量%未満の組成物でもポリイミド(2)単体とほぼ同じオーダーの半結晶時間を示し、0.5分間以下である。しかしながら、ポリイミド(1)の混合比率が60重量%を超える場合は、半結晶化時間が1桁以上大きくなる。すなわち、通常の射出成形などでは結晶化出来なくなる場合があり、好ましくない。
【0056】
以下、他の実施の態様について説明する。
【0057】
本発明に係るポリイミド樹脂組成物に添加することができる充填材は、特に限定されるものではない。充填材の具体例としては、例えば、無機補強剤を挙げることができる。無機補強剤は、繊維状・針状・板状・粒状・その他の形態の物があり、いずれも用いることができる。
【0058】
繊維状のものとしては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられる。
【0059】
また、針状のものとしては、チタン酸カリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、カーボンウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイト、酸化亜鉛ウィスカー、酸化チタンウィスカーなどが挙げられる。
【0060】
また、板状のものとしては、雲母、ガラスフレーク、タルク、セリサイト、カオリナイト、窒化ほう素、黒鉛、金属フレークなどが挙げられる。
【0061】
また、粒状のものとしては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、シリカ、硫酸バリウム、金属粉などが挙げられる。
【0062】
その他のものとしては、種々の性質改良に鑑み、ケイ石粉、二硫化モリブデンなどの耐摩耗性向上材、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの難燃性向上材、アスベストなどの耐トラッキング向上材、メタケイ酸カルシウム等の耐酸性向上材、あるいはケイ藻土、アルミナ、シラスバルン、水和アルミナ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、各種の金属酸化物、カーボンブラック類等が挙げられる。 これらの無機補強材は、一種、または、複数のものを選択して用いることができ、ポリイミド樹脂組成物100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは3〜85重量部、より好ましくは5〜70重量部を添加して用いることができる。
【0063】
1重量部未満では、補強効果を発揮しない場合があり、100重量部を超えると成形時の流動性を害する場合がある。
【0064】
本発明に係るポリイミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、第三成分の樹脂を、目的に応じて適当量添加することができる。本発明に係るポリイミド樹脂組成物に添加することができる第三成分の樹脂は、特に限定されるものではない。 第三成分の樹脂の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂を挙げることができる。他の熱可塑性樹脂を目的に応じて適当量配合することも可能である。配合することができる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、ポリカーボネート、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリケトン類、ポリエーテルニトリル、液晶ポリマー、本発明で使用するものと異なる構造を有するポリイミドなどが挙げられる。
【0065】
また、熱可塑性ではないが、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂やシリコーン樹脂類は組成物の離型性や摺動性を改善する上で効果が大きい。また、芳香族ポリアミド繊維なども機械的特性を向上する上で好ましい。これらは一種または複数のものを選択し用いることができる。
【0066】
着色料、離型剤、各種安定剤、可塑剤、オイル類なども、本発明の目的を損なわない範囲で、添加可能である。
【0067】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、ポリイミド(1)、ポリイミド(2)およびその他必要とする成分を均一混合した後、一軸または多軸の押出機を用いて連続な生産が可能である。混合ロール、ニーダー、ブラベンダー等のバッチ式方法も実施可能である。 本発明のポリイミド樹脂組成物は、主に射出成形により実用に供されるが、押出成形、圧縮成形、トランスファー成形などの公知の成形法によることも可能である。
【0068】
このようにして得られた本発明のポリイミド樹脂組成物は、広い温度範囲での弾性率に優れ、寸法の変動が少なく、特に、230℃以上の高温下で使用される成形品、寸法精度の要求される成形品に広く応用可能である。
【0069】
半導体容器の分野では、IC包装用トレー、IC製造工程用トレー、ICソケット、 ウェハーキャリアなどに有効である。
【0070】
電気・電子部品の分野では、コネクター、ソケット、ボビンなどのほか、ハードディスクキャリア、液晶ディスプレイキャリア、水晶発振器製造用トレーなどの製造用治具などに有効である。
【0071】
事務機器部品の分野では、コピー機用分離爪、コピー機用断熱軸受け、コピー機用ギアなどに有効である。
【0072】
自動車部品の分野では、スラストワッシャー、トランスミッションリング、ピストンリング、オイルシールリングなどに有効である。
産業機器部品の分野では、ベアリングリテーナー、ポンプギア、コンベアチェーン、ストレッチマシン用スライドブッシュなどに有効である。
【0073】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例における樹脂の物性測定、評価は以下の要領で実施した。
【0074】
(A) 半結晶化時間
半結晶化時間測定の方法論については既に述べた。
【0075】
すなわち、示差走査型熱量計(DSC)を用い、等温結晶化試験により測定する。組成物を昇温して十分に溶融させ、次いで所定の温度まで急冷させる。このときの時刻をt0とする。そのまま、その温度で一定に保つと結晶化が始まり、DSC上は結晶化の発熱ピークが観察される。この発熱ピークのピークトップを与える時間をt1とする。ここで、半結晶化時間thは、数式(1)(数2)で表わされる量である。
【0076】
【数2】
th=t1−t0 (1)
この値が小さいほど結晶化が速く起きるといえる。通常、この半結晶化時間は結晶化させる温度に対して依存性があり、ガラス転移点と融点の間のある温度で最小を採る。従って、ここでは、温度を190℃から320℃まで変えて測定した中で、最小の半結晶化時間を記してある。半結晶化時間が短く、0.2分間未満の場合は測定ができないため、<0.2のように表記する。
【0077】
(B) 寸法変化
ASTM1号ダンベル(ASTM D−638)に300℃で2時間の熱処理を施し、ダンベルの平行部分の幅の寸法をノギスで測定して、処理前後の寸法変化を観察した。
【0078】
(C)曲げ弾性率
ASTM D−790に拠った。試験片には(B)と同様の条件で熱処理したものを用い、温度を変えて測定した。測定温度は23℃、150℃、250℃の3水準とした。
【0079】
ポリイミド(2)の製造例
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器に1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン204.4g(0.7モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物199.6g(0.679モル)、無水フタル酸6.22g(0.06モル)、m−クレゾール1480gを装入し、窒素雰囲気下で攪拌しながら200℃まで加熱した。その後、200℃で4時間反応させたところ、約9mlの水の留出が確認された。反応終了後室温まで冷却し、約2000mlのトルエンを装入後、ポリイミド(2)の粉を濾別し、乾燥した。得られたポリイミド(2)の対数粘度は、0.9dl/gであった。
【0080】
実施例1〜5
ポリイミド(1)(三井化学(株)製、商品名AURUM PD450、対数粘度は0.45dl/g)、製造例で得られたポリイミド(2)、および、炭素繊維(東邦レーヨン(株)製、商品名HTA−C6)を表1に示す割合で配合した後、タンブラーミキサーで十分に混合して、スクリュー径37mm、L/D=32の二軸押出機にて420℃、スクリュー回転数80rpmで溶融混合し、押出してペレット化した。このペレットを用いて半結晶化時間を測定した。また、同様にこのペレットを用い、シリンダー温度420℃、金型温度210℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形を行い、得られた試験片を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
比較例1〜2
ポリイミド(1)とポリイミド(2)の混合比率を好適ではない範囲とし、実施例1〜3と同様の評価をした。結果を表2に示す。
【0082】
比較例3
ポリイミド(1)単体の場合について、実施例1〜3と同様の評価をした。結果を表2に示す。
【0083】
比較例4
ポリイミド(2)単体の場合について、実施例1〜3と同様の評価をした。結果を表2に示す。
【0084】
上記実施例および比較例で得られたオーラム組成比と150℃における曲げ弾性率、熱処理前後の寸法変化および半結晶時間との関係を図1に示した。
【0085】
【表1】
Figure 0003708348
【0086】
【表2】
Figure 0003708348
【0087】
【発明の効果】
本発明により、ポリイミド(1)と、ポリイミド(2)の長所のみを活かし、ポリイミド(1)と、ポリイミド(2)の短所が低減されたポリマーアロイを提供することができる。
【0088】
本発明の効果の一つは、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサイクルで射出成形しても、結晶性の成形品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供できることである。
【0089】
本発明の他の効果の一つは、例えば、230℃以上の高温、例えば230〜300℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合に、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサイクルで射出成形しても、寸法精度に優れた成形品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供することができることである。
【0090】
更に、本発明の効果の一つは、例えば、230℃以上の高温、例えば、230〜300℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合に、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度で射出成形しても、曲げ弾性率に優れた成形品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供することできることである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例で得られたオーラム組成比と150℃における曲げ弾性率、熱処理前後の寸法変化、および半結晶時間との関係の1例を示す図である。

Claims (13)

  1. 化学式(1)(化1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(1))5〜60重量%と、
    化学式(2)(化1)の繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(2))40〜95重量%
    を含有してなる、ICトレー、電気・電子部品、事務機器部品、自動車部品、及び産業機械部品からなる群より選ばれる成形品用のポリイミド樹脂組成物。
    Figure 0003708348
  2. 半結晶化時間が、0.5分以下であることを特徴とする請求項1に記載したポリイミド樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載した樹脂組成物100重量部に対し、充填材1〜100重量部を含有することを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
  4. 請求項1または2に記載した樹脂組成物100重量部に対し、充填材5〜70重量部を含有することを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
  5. 充填材が、炭素繊維、カーボンブラック、マイカ、タルクおよびガラス繊維からなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項3〜4の何れかに記載したポリイミド樹脂組成物。
  6. 充填材が、炭素繊維および/またはカーボンブラックであることを特徴とする請求項3〜4の何れかに記載したポリイミド樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載したポリイミド樹脂組成物を含有してなる成形品。
  8. 昇温速度10℃/分、測定温度範囲20〜420℃で示差走査熱量測定(DSC)をしたときに、260〜300℃において結晶化発熱ピークが観察されないことを特徴とする請求項7に記載した成形品。
  9. 成形品が、ICトレーである請求項7または8に記載した成形品。
  10. 成形品が、電気・電子部品である請求項7または8に記載した成形品。
  11. 成形品が、事務機器部品である請求項7または8に記載した成形品。
  12. 成形品が、自動車部品である請求項7または8に記載した成形品。
  13. 成形品が、産業機械部品である請求項7または8に記載した成形品。
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