JP2002146040A - 結晶化度の高い射出成形物 - Google Patents

結晶化度の高い射出成形物

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JP2002146040A
JP2002146040A JP2000344540A JP2000344540A JP2002146040A JP 2002146040 A JP2002146040 A JP 2002146040A JP 2000344540 A JP2000344540 A JP 2000344540A JP 2000344540 A JP2000344540 A JP 2000344540A JP 2002146040 A JP2002146040 A JP 2002146040A
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polyimide
injection
molded product
temperature
molding
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Takashi Kuroki
貴志 黒木
Atsushi Shibuya
篤 渋谷
Masaji Tamai
正司 玉井
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【解決手段】 化学式(1)で表される繰り返し単位を
有するポリイミドを含んで成り、該ポリイミドの結晶化
度が20〜30%であることを特徴とする射出成形物。 【効果】本発明の、十分に結晶化したポリイミドを含ん
で成る射出成形物は、少なくとも以下の〜の優れた
特性を有する。 高い耐熱性を有する。すなわち、
高い結晶性を有するので、ガラス転移温度(Tg)以上
の温度においても優れた機械強度を有する。 生産
性に優れる。すなわち、射出成形時に金型内で結晶化す
るため、成形後に熱処理を加える等、特別な熱処理操作
を施すことなく、十分に結晶化した射出成形物を生産で
きる。 寸法精度に優れる。すなわち、射出成形時
に金型内で結晶化しており、射出成形後の熱処理や高温
での使用時に結晶化が進行する程度が小さいため、結晶
化に伴う収縮や変形が小さい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性ポリイミ
ドを含んで成る高い結晶化度を有する射出成形物に関す
る。本発明の射出成形物は、少なくとも以下の〜に
示す優れた特性を有する。
【0002】 高い耐熱性を有する。すなわち、高い
結晶性を有するので、ガラス転移温度(Tg)以上の温
度においても優れた機械強度を有する。
【0003】 生産性に優れる。すなわち、射出成形
時に金型内で結晶化するため、成形後に熱処理を加える
等、特別な熱処理操作を施すことなく、十分に結晶化し
た射出成形物を生産できる。
【0004】 寸法精度に優れる。すなわち、射出成
形時に金型内で結晶化しており、射出成形後の熱処理や
高温での使用時に結晶化が進行する程度が小さいため、
結晶化に伴う収縮や変形が小さい。
【0005】
【従来の技術】 ポリイミドの特性と用途 ポリイミドは、その優れた耐熱性に加え、機械物性、耐
薬品性、難燃性、電気特性等において優れた特性を有す
るため、成形材料、複合材料、電気・電子部品等の分野
において幅広く用いられている。
【0006】 『Vespel』(デュポン社製)・
『Upimol』(宇部興産社製) 成形材料、複合材料用ポリイミドとしては、商品名『V
espel』(デュポン社製)、商品名『Upimo
l』(宇部興産社製)等が知られているが、いずれのポ
リイミドも不溶不融であるため成形加工性に問題があっ
た。すなわち、これらポリイミドの成形体を得るために
は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を経由して、
焼結成形等の特殊な手段により成形する必要があった。
焼結成形によったのでは、複雑な形状を有する加工品を
得ることが困難であるという点も問題であった。複雑な
形状を有する加工品を得るためには、NC旋盤等の切削
機械を使用して、ポリイミドのブロックから、目的の形
状を削り出す必要があり、複雑・煩雑な加工工程や成形
加工に要するコスト等に問題があった。
【0007】 『Ultem』(ゼネラルエレクトリ
ック社製) 成形加工性が改善された射出成形可能な熱可塑性ポリイ
ミドとしては、商品名『Ultem』(ゼネラルエレク
トリック社製)が知られている(米国特許第3,84
7,867号、同3,847,869号等)。
【0008】しかしながら、このポリイミドは完全非晶
性であり、ガラス転移温度(Tg)が215℃であるこ
とから、高温領域での使用と想定すると、必ずしも、十
分な耐熱性を有しているとはいえない。すなわち、実質
的な使用限界温度を示す荷重撓み温度(DTUL)で評
価すると、ニートの『Ultem』は200℃であり、
炭素繊維30重量%含有(CF30)『Ultem』は
212℃であるので、どちらも、高温領域での使用と想
定すると、必ずしも、スーパーエンプラとして高い数値
であるとはいえない。
【0009】 『AURUM』(三井化学社製) さらに新しくは、成形加工性が改善された射出成形可能
な熱可塑性ポリイミドとして、商品名『AURUM』
(三井化学社製)が、開発された(特開昭62−688
17号等)。このポリイミドは、溶融時の流動安定性に
優れ、押出成形や射出成形等の溶融成形に好適に供され
ている。
【0010】『AURUM』はガラス転移温度(Tg)
245℃、融点(Tm)388℃の結晶性樹脂であり、
十分に結晶化した成形物の荷重たわみ温度(DUTL)
はニートで260℃、炭素繊維(30重量%)強化(C
F30)品で349℃と、極めて高い耐熱性を有してい
る。
【0011】しかしながら、『AURUM』は結晶化が
遅い(結晶化に要する時間が長い)ため、一般的な射出
成形条件で得られる成形物は非晶質である。この非晶質
の成形物のDUTLはニートで238℃、炭素繊維(3
0重量%)強化(CF30)品で248℃と、結晶化し
た成形物に比べ著しく低い。また、非晶質の成形物は、
ガラス転移点以下の温度で使用する限りにおいては寸法
精度と曲げ弾性率に優れるが、ガラス転移点以上の温度
条件下では弾性率の著しい低下、成形品の形状変化をお
こすため使用できない。
【0012】そのため、一般的な射出成形条件で得られ
る非晶質の成形物をガラス転移点以上の温度条件下で使
用する場合は、射出成形物に熱処理を施して結晶化させ
る必要がある。しかし、長い時間を要する熱処理操作
は、生産性を著しく低下させ、さらには、結晶化に伴う
収縮により、寸法変化、変形、表面粗化等の問題を生じ
る。
【0013】『AURUM』の射出成形物が、成型時に
金型内で十分に結晶化すれば、これらの問題は生じな
い。そのため、『AURUM』に有機低分子量化合物や
耐熱性の低い結晶性樹脂を添加し、結晶化を促進する技
術が開発された(特開平9−104756号、特開平9
−188813号等)。しかしながら、これらの方法で
は、低分子量化合物や耐熱性の低い樹脂を添加するた
め、耐熱性や耐薬品性が低下するという問題を有する。
【0014】 化学式(1)(化2)で表される繰り
返し単位を有するポリイミド 化学式(1)(化2)で表される繰り返し単位を有する
ポリイミドは、特許2748992号公報に開示され、
Tg247℃、Tm401℃、結晶性で溶融流動安定性
に優れることが示されている。しかしながら、このポリ
イミドから一般的な射出成形条件で得られる成形物も非
晶質であり、ガラス転移点以上の温度条件下では弾性率
の著しい低下、成形品の形状変化をおこすため使用でき
なかった。
【0015】
【化2】
【0016】 その他の熱可塑性結晶性ポリイミド 前述のポリイミドと異なる構造を有する結晶性ポリイミ
ドも数多く報告されている。しかしながら、そのほとん
どは分子構造中に脂肪族鎖あるいはエステル結合を有し
ているため、前述のポリイミドに比べTmが著しく低
い。さらに、これらのポリイミドは、射出成形時に脂肪
族鎖あるいはエステル結合が解裂し、分子量低下やガス
の発生等を起こすため、射出成形用途に共することがで
きなかった。なお、結晶性樹脂はそのTm以上でなけれ
ば溶融流動しないため、射出成形時には、樹脂温をTm
以上にあげる必要がある。
【0017】Macromolecules,29巻・
135〜142頁(1996年)、Macromole
cules誌30巻1012〜1022頁(1997
年)等には、脂肪族鎖やエステル結合を有さない熱可塑
性結晶性ポリイミドが開示されている。しかしながら、
このポリイミドでさえ、融点以上の温度で保持した場合
にはその流動性が経時的に低下するため、射出成形に共
することができなかった。
【0018】なお、特開2000−103854号公報
等には、特殊な製造・精製方法により得られた原料モノ
マーを用いた場合にのみ、得られるポリイミドの溶融流
動安定性が向上できることが開示されている。しかしな
がら、開示された原料モノマーの製造・精製方法は工業
的には困難であり、また、得られるポリイミドの溶融流
動安定性も十分に高いとは言い難い。また、このポリイ
ミドから得られる非繊維強化成形物のDUTLは227
℃と比較的低い。
【0019】 従来技術の問題点 以上のことから、溶融流動安定性に優れ、かつ、射出成
形により十分に結晶化した成形物が得られるポリイミド
は見いだされていなかった。そのため、高い耐熱性を
有し、生産性に優れ、寸法精度に優れる射出成形物
は得られていなかった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、少なく
とも以下の〜に示す優れた特性を有する射出成形物
を提供することを、本発明が解決しようとする課題とし
た。
【0021】 高い耐熱性を有する。すなわち、高い
結晶性を有するので、ガラス転移温度(Tg)以上の温
度においても優れた機械強度を有する。
【0022】 生産性に優れる。すなわち、射出成形
時に金型内で結晶化するため、成形後に熱処理を加える
等、特別な熱処理操作を施すことなく、十分に結晶化し
た射出成形物を生産できる。
【0023】 寸法精度に優れる。すなわち、射出成
形時に金型内で結晶化しており、射出成形後の熱処理や
高温での使用時に結晶化が進行する程度が小さいため、
結晶化に伴う収縮や変形が小さい。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の課題
を解決すべく、鋭意検討を推進した結果、特許2748
992号公報に開示されている化学式(1)(化1)で
表される繰り返し単位を有し溶融流動安定性に優れた熱
可塑性結晶性ポリイミドが、特殊な射出条件下に於いて
は金型内で十分に結晶化すること、得られる射出成形物
が上記課題を解決することを見い出し、本発明を完成す
るに至った。
【0025】すなわち本発明は、化学式(1)(化3)
で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含んで成
り、該ポリイミドの結晶化度が15〜30%であること
を特徴とする射出成形物およびその製造方法に関する。
【0026】
【化3】
【0027】ここで、本発明の射出成形物は、成形時の
金型温度を230〜300℃とすることにより得ること
ができるが、金型温度をこのような高温とすることは容
易に達成されるものではない。
【0028】すなわち、金型を通常の熱媒ではなく電気
ヒーターにより加熱し、かつ、金型材質の熱膨張を十分
に考慮した金型設計を施した場合にのみ、金型温度を2
30〜300℃とすることができる。なお、ポリエーテ
ルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホ
ン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリ
マー等の各種スーパーエンプラであっても、射出成形時
の金型温度は200℃以下であり、熱可塑性樹脂を金型
温度230〜300℃の高温条件下で射出成形すること
は非常に特異的である(「プラスチック成形加工データ
ブック」日刊工業新聞社(1988年)等参照)。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明の射出成形物は、化学式
(1)(化4)で表される繰り返し単位を有するポリイ
ミドを含んで成り、射出成形後に熱処理を加えなくて
も、該ポリイミドの結晶化度が15〜30%、好ましく
は20〜30%、さらに好ましくは25〜30%である
射出成形物である。
【0030】
【化4】
【0031】本発明で用いる化学式(1)(化4)で表
される繰り返し単位を有するポリイミドは、特許274
8992号公報に開示されている方法により得ることが
できる。すなわち、3,4’−ジアミノジフェニルエー
テル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物および無水フタル酸を反応させて得られるポ
リアミド酸を熱的又は化学的にイミド化して得ることが
できる。ここで、反応を加熱下に行うことにより、ポリ
アミド酸の生成とイミド化を同時に行うことも可能であ
る。
【0032】なお、このポリイミド用の原料モノマーで
ある3,4’−ジアミノジフェニルエーテルは帝人化成
社製アラミド繊維「テクノーラ」用モノマーとして、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物は宇部興産社製ポリイミド「ユーピレックス」用モ
ノマーとして工業的かつ安価に入手できる。
【0033】本発明で用いる化学式(1)(化4)で表
される繰り返し単位を有するポリイミドは、特許274
8992号公報に開示されているように、その良好な物
性、すなわちその結晶性や溶融流動安定性を損なわない
範囲内で他のモノマーを共重合した、すなわち、化学式
(1)(化4)で表される繰り返し単位と化学式(1)
(化1)とは異なる繰り返し単位とを有するポリイミド
であってもよい。
【0034】本発明で用いる化学式(1)(化4)で表
される繰り返し単位を有するポリイミドの分子量に特に
限定はなく、目的とする成形物の物性や成形時の溶融粘
度等にあわせ、適宜選択できる。
【0035】本発明の射出成形物は、化学式(1)(化
4)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの他
に、炭素繊維及び/又はガラス繊維を含んでいても良
い。これらの繊維を含有することにより、成形物の機械
強度及び荷重たわみ温度(DUTL)が大きく向上す
る。なお、繊維を含む場合、その含有量はポリイミド1
00重量部に対して1〜100重量部、好ましくは3〜
70重量部、より好ましくは5〜50重量部であること
が好ましい。繊維の含有量が1重量部未満では、物性の
向上効果を発揮しない場合があり、100重量部を超え
ると成形時の流動性を害する場合がある。また、繊維の
種類や配合方法は目的とする用途に合わせ適宜選択でき
る。
【0036】本発明の射出成形物は、目的とする用途に
合わせ、化学式(1)(化4)で表される繰り返し単位
を有するポリイミド及び繊維の他に、他の充填材を含ん
でいても良く、充填材の種類、量および配合方法に何ら
制限はない。充填材の具体例としては、例えば、グラフ
ァイト、カーボランダム、ケイ石粉、二硫化モリブデ
ン、フッ素系樹脂等に代表される耐摩耗性向上剤、三酸
化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等に
代表される難燃性向上剤、クレー、マイカ等に代表され
る電気的特性向上剤、アスベスト、シリカ、グラファイ
ト等に代表される耐トラッキング向上剤、硫酸バリウ
ム、シリカ、メタケイ酸カルシウム等等に代表される耐
酸性向上剤、鉄粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、銅粉等に
代表される熱伝導度向上剤、その他ガラスビーズ、ガラ
ス球、タルク、ケイ藻度、アルミナ、シラスバルン、水
和アルミナ、金属酸化物、着色料、顔料、離型剤、安定
剤、可塑剤、オイル類等を挙げることができる。また、
ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂やシリ
コーン樹脂類は組成物の離型性や摺動性を改善する上で
好ましい。
【0037】本発明の射出成形物は、含有するポリイミ
ドの結晶化度が20〜30%、好ましくは25〜30%
の射出成形物である。本発明の射出成形物は含有するポ
リイミドの結晶化度が十分に高いため、高い耐熱性、す
なわち、ガラス転移温度(Tg)以上の温度においても
優れた機械強度を有する。また、本発明の射出成形物は
含有するポリイミドの結晶化が十分に進行おり、射出成
形後の熱処理や高温での使用時に結晶化が進行する程度
が小さいため、結晶化に伴う収縮や変形が小さい。
【0038】本発明の射出成形物において、含有するポ
リイミドの結晶化度は、射出成形物のX線回折強度、密
度あるいは熱収支を測定することにより求めることがで
きる。X線回折測定を用いる場合には、結晶部の回折ピ
ーク強度と非晶部のハロー強度の比較により結晶化度が
求められる。
【0039】ただし、射出成形物が繊維や充填材等ポリ
イミド以外の物質を含む場合は、これらの回折ピークが
現れる場合があるため好ましくない。密度測定を用いる
場合には、まず、射出成形物の密度を測定し、各充填材
の量と密度を勘案して、含有するポリイミドの密度を求
める。この密度と、繊維や充填材を含まない成形物のX
線回折測定及び密度測定より求めたポリイミドの結晶化
度と密度の関係式とを用いることにより、結晶化度を求
めることができる。熱収支測定を用いる場合には、ま
ず、DSC(示差走査型熱量計)により射出成形物の昇
温時の熱収支を測定、結晶化エネルギーと融解エネルギ
ーの差より成形時に結晶化した部分の結晶化エネルギー
を算出する。この成形時の結晶化エネルギーと、繊維や
充填材を含まない成形物のX線回折測定及び融解エネル
ギー測定より求めたポリイミドの結晶化度と融解エネル
ギーの関係式とを用いることにより、結晶化度を求める
ことができる。
【0040】本発明の射出成形物の製造方法は、化学式
(1)(化4)で表される繰り返し単位を有するポリイ
ミドを含む樹脂組成物をシリンダー温度400〜440
℃、金型温度230〜300℃、好ましくは240〜2
80℃、さらに好ましくは250〜270℃で射出成形
することを特徴とする射出成形物の製造方法である。式
(1)のポリイミドはTmが400℃であるため、シリ
ンダー温度400℃未満では樹脂組成物が十分に溶解せ
ず、成形が困難である。シリンダー温度が高すぎる場合
には、樹脂が一部分解、架橋等好ましくない反応を起こ
し、溶融粘度の変化、分解ガスの発生、成形物の着色等
が起こるため好ましくない。
【0041】金型温度230℃未満では、得られる射出
成形物は十分に結晶化しておらず、射出成形後の熱処理
あるいは高温での使用時に結晶化が進行し、それに伴う
収縮や変形が起こるため好ましくない。金型温度が高す
ぎる場合には、樹脂の固化に時間を要し、成形サイクル
が長くなるため生産性が低下したり、樹脂の固化が不十
分で、金型から取り出した後に成形物が変形するため好
ましくない。なお、本発明の射出成形物の製造方法にお
いては、上記範囲のシリンダー温度および金型温度であ
れば、その射出成形機の種類、シリンダー形状、型締め
圧等は、任意に選択でき、何ら制限はない。
【0042】本発明の射出成形物は成形加工時に金型内
で結晶化するため、成形後に熱処理を加える操作等の特
別な熱処理操作を施すことなく、十分に結晶化した高耐
熱の射出成形物であり、成形後の熱処理あるいは使用時
の結晶化の進行に伴う収縮や変形がちいさいため、寸法
精度に優れている。なお、本発明の射出成形物は、射出
成形時に十分に結晶化しているが、成形物の結晶化度や
成形物の使用環境に応じ、さらにアニール等の熱処理を
施すこともできる。
【0043】本発明の射出成形物は、化学式(1)(化
4)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含ん
で成り、該ポリイミドの結晶化度が15〜30%であれ
ば、その形状や用途に制限はない。本発明の射出成形物
は優れた物性を有し、様々な分野において有用であり、
その形状、用途は何ら制限されるものではないが、中で
も、広い温度範囲での弾性率に優れ、寸法の変動が少な
いといった特徴を活かした、250℃以上、好ましくは
300℃以上の高温下で使用されることを目的とした部
品、容器あるいは治具等、寸法精度の要求される部品、
容器あるい治具等に有用である。なお、本発明の射出成
形物は十分に結晶化しているので、ガラス転移温度以上
の温度においても高い弾性率を維持しており、高い温度
での使用が可能である。
【0044】本発明の射出成形物としては、具体的に
は、IC包装用トレー、IC製造工程用トレー、ICソ
ケット、ウェハーキャリア等の半導体製造用治具、コネ
クター、ソケット、ボビン等の電気・電子部品、ハード
ディスクキャリア、液晶ディスプレイキャリア、水晶発
振器製造用トレー等の電気・電子部品製造用治具、コピ
ー機用分離爪、コピー機用断熱軸受け、コピー機用ギア
等の事務機器部品、スラストワッシャー、トランスミッ
ションリング、ピストンリング、オイルシールリング等
の自動車部品、ベアリングリテーナー、ポンプギア、コ
ンベアチェーン、ストレッチマシン用スライドブッシュ
等の産業機器部品等が挙げられる。
【0045】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれにより何ら制限されるものではな
い。なお、ポリイミドの物性は以下の方法により測定し
た。
【0046】 対数粘度(ηinh) 対数粘度(ηinh)は、p−クロロフェノール90重量
%/フェノール10重量%混合溶媒に、ポリイミド粉を
0.5g/100gの濃度で溶解した後、35℃におい
て、ウベローデ粘度計で測定した。
【0047】 溶融粘度(MV) 溶融粘度(MV)は、日本工業規格(JIS) K72
10〔流れ試験方法(参考試験)〕に準拠し、フローテ
スター(島津製作所製・高化式フローテスターCFT5
00A)により、シリンダー温度420℃、荷重100
kg(圧力9.8MPa)で測定した。ここで、シリン
ダー内で5分間保持した際の溶融粘度をMV5、30分
間保持した際の溶融粘度をMV30とした。
【0048】 ガラス転移温度(Tg)、融点(T
m) ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)は、DSC(示
差走査型熱量計、セイコー電子工業社製・EXSTAR
6200)により、25℃から430℃まで、昇温速度
10[℃/分]で測定した。
【0049】 射出成形物中のポリイミドの結晶化度 射出成形物中のポリイミドの結晶化度は、射出成形物の
DSC測定による熱収支より求めた。ポリイミドの結晶
化度と融解エネルギーの関係式は、繊維や充填材を含ま
ないニートのポリイミドパウダーを、425℃10分間
加熱プレスした後、液体窒素にて急冷した非晶質の急冷
フィルムと、該急冷フィルムをプレス機中で300℃1
0分間アニールして結晶化したアニールフィルムの、X
線回折測定とDSC測定より求めた。
【0050】 射出成形物の機械物性 ダンベル状の成形物を用い、引張強度(ASTM D−
638)、曲げ強度(D−790)及び荷重たわみ温度
(ASTM D−648)を測定した。
【0051】 射出成形物の成形収縮率 ダンベル状の成形物を用い、樹脂流れ方向の収縮率(A
STM D−955)を測定し、成形収縮率とした。ま
た、熱処理前後の樹脂流れ方向の収縮率を熱処理時の収
縮率とした。
【0052】 射出成形物の熱処理 ダンベル状の成形物をオーブン中で300℃1時間保持
し、結晶化度と熱処理時の収縮率を測定した。
【0053】なお、以下の実施例及び比較例において
は、射出成形に用いるペレットは、得られたポリイミド
粉を、直径25mm単軸押出機により、425℃で溶融
押出しすることにより製造した。また、機械物性評価用
の射出成形物は、通常の射出成形機を用い、以下の成形
条件でペレットを成形することにより製造した。
【0054】〈射出成形条件〉 シリンダー温度 425℃ 金型温度 210〜280℃ 射出圧力 147MPa 金型内保持時間 60秒
【0055】
【実施例1】攪拌機、還流冷却器及び窒素導入装置を備
えた容量30リットルの反応器に、和歌山精化社製3,
4’−ジアミノジフェニルエーテル600.8g(3m
ol)、宇部興産社製3,3’,4,4’−ビフェニル
テトラカルボン酸二無水物838.5g(2.85mo
l)、無水フタル酸44.4g(0.3mol)、m−
クレゾール5502gを装入し、窒素雰囲気下において
撹拌しながら、200℃まで加熱昇温し、その後、20
0℃で8時間反応を行った。その間に、約110mlの
水の留出が確認された。なお、反応中、マスは薄黄色透
明であった。反応終了後、反応系を室温まで冷却し、ト
ルエン10kgを約2時間かけて滴下し、ポリイミドを
析出させた。このスラリー液を濾過、得られたポリイミ
ドケーキをトルエンで洗浄した後、窒素中300℃で4
時間乾燥して黄色のポリイミド粉を得た。
【0056】得られたポリイミドの物性は、以下のとお
りであった。 収量 1329[g] 収率 96.7[%] 対数粘度 0.55[dl/g] MV5 580[Pa・sec] MV30 580[Pa・sec] 融点(Tm) 401[℃] 得られたポリイミド粉を、425℃10分間加熱プレス
した後、液体窒素にて急冷し、非晶質の急冷フィルムを
調整した。該フィルムの熱収支を測定したところ、結晶
化発熱量32J/g、溶融吸熱量32J/gであった。
また、X線回折測定においては、結晶部の回折ピークを
示さなかった(結晶化度0%)。該急冷フィルムをプレ
ス機中で300℃10分間アニールしてアニールフィル
ムを調整した。該フィルムの熱収支は、結晶化発熱量0
J/g、溶融吸熱量32J/gであった。また、X線回
折測定においては、結晶部の強い回折ピークを示し、結
晶化度は28%であった。得られたポリイミド粉を42
5℃で溶融押出しペレット化したのち、金型温度250
℃で射出成形し、ダンベル状の射出成形物を得た。得ら
れた成形物の結晶化度は26%であった。得られた成形
物の機械物性及び収縮率を表1に示す。
【0057】
【実施例2、3、比較例1】金型温度を表1に示す温度
にした以外は実施例1と同様にして射出成形物を得た。
得られた射出成形物の物性を表1に示す。
【0058】
【実施例4】実施例1で得られたポリイミド粉70重量
部と炭素繊維(東邦レーヨン社製:HTA−C6−T
X)30重量部を混合し、実施例1と同様にしてペレッ
ト化した。実施例1と同様にして得られた射出成形物の
物性を表2に示す。
【0059】
【実施例5,6、比較例2】金型温度を表2に示す温度
にした以外は実施例2と同様にして射出成形物を得た。
得られた射出成形物の物性を表2に示す。
【0060】
【比較例3】蒸留生成した1,3−ビス(4−アミノフ
ェノキシ)ベンゼン(純度99.2%、アゾ化合物の含
有量0.09%)を用い、ポリイミドを製造した。攪拌
機、還流冷却器及び窒素導入装置を備えた容量0.1m
3の反応器に、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)
ベンゼン877.1g(3.000mol)、3,
3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
857.9g(2.916mol)、無水フタル酸2
4.9g(0.168mol)、m−クレゾール15.
0kgを装入し、窒素雰囲気下において撹拌しながら、
200℃まで加熱昇温し、その後、200℃で8時間反
応を行った。8時間経過後、無水フタル酸24.9gを
添加して、さらに4時間反応を行った。その間に、約1
10mlの水の留出が確認された。なお、反応中、マス
は薄黄色透明であった。
【0061】反応終了後、反応系を室温まで冷却し、ト
ルエン37.5kgを約2時間かけて滴下し、ポリイミ
ドを析出させた。このスラリー液を濾過、得られたポリ
イミドケーキをトルエンで洗浄した後、窒素中300℃
で4時間乾燥して黄色のポリイミド粉を得た。
【0062】得られたポリイミドの物性は、以下のとお
りであった。 収量 1580[g] 収率 95.6[%] 対数粘度 1.00[dl/g] MV5 960[Pa・sec] MV30 1120[Pa・sec] 融点(Tm) 398[℃] 上記に示した通り、本比較例のポリイミドは420℃で
30分間保持した際、溶融粘度が増加した。得られたポ
リイミド粉を用い、実施例1と同様にして射出成形物を
得た。得られた射出成形物の物性を表1に示す。
【0063】
【比較例4】比較例3で得られたポリイミド粉を用い、
実施例4と同様にして射出成形物を得た。得られた射出
成形物の物性を表2に示す。
【0064】
【発明の効果】本発明の、十分に結晶化したポリイミド
を含んで成る射出成形物は、少なくとも以下の〜に
示す優れた特性を有する。
【0065】 高い耐熱性を有する。すなわち、高い
結晶性を有するので、ガラス転移温度(Tg)以上の温
度においても優れた機械強度を有する。
【0066】 生産性に優れる。すなわち、射出成形
時に金型内で結晶化するため、成形後に熱処理を加える
等、特別な熱処理操作を施すことなく、十分に結晶化し
た射出成形物を生産できる。
【0067】 寸法精度に優れる。すなわち、射出成
形時に金型内で結晶化しており、射出成形後の熱処理や
高温での使用時に結晶化が進行する程度が小さいため、
結晶化に伴う収縮や変形が小さい。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のポリイミド(パウダー、急冷フィ
ルム、アニールフィルム)のX線回折スペクトル。
【図2】 実施例1のポリイミド(パウダー、急冷フィ
ルム、アニールフィルム)のDSCチャート。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 79/08 C08L 79/08 B // B29K 79:00 B29K 79:00 105:06 105:06 Fターム(参考) 4F071 AA60 AA89 AB03 AB28 AD01 AF45 BA01 BB05 4F202 AA40 AB18 AB25 AD16 AH17 AH33 AR06 CA11 CB01 CN01 4F206 AA40 AB18 AB25 AD16 AH17 AH33 AR064 JA07 JL02 JM04 JN43 JP17 JQ81 4J002 CM041 DA016 DL006 FA046 FD016

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学式(1)(化1)で表される繰り返
    し単位を有するポリイミドを含んで成り、該ポリイミド
    の結晶化度が15〜30%であることを特徴とする射出
    成形物。 【化1】
  2. 【請求項2】 炭素繊維及び/又はガラス繊維を含むこ
    とを特徴とする請求項1記載の射出成形物。
  3. 【請求項3】 射出成形時の金型温度が230〜300
    ℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の射出成
    形物の製造方法。
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