JP2000204249A - ポリイミド樹脂組成物 - Google Patents

ポリイミド樹脂組成物

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JP2000204249A
JP2000204249A JP712899A JP712899A JP2000204249A JP 2000204249 A JP2000204249 A JP 2000204249A JP 712899 A JP712899 A JP 712899A JP 712899 A JP712899 A JP 712899A JP 2000204249 A JP2000204249 A JP 2000204249A
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polyimide
resin composition
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polyimide resin
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JP712899A
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Takashi Kuroki
貴志 黒木
Atsushi Shibuya
篤 渋谷
Masaji Tamai
正司 玉井
Takayasu Kido
敬恭 木戸
Masaji Yoshimura
正司 吉村
Ikunori Yoshida
育紀 吉田
Kayako Yanagihara
香弥子 柳原
Hideaki Oikawa
英明 及川
Tomohito Koba
友人 木場
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリイミド(1)とポリイミド(2)の長所
のみを活かし、ポリイミド(1)とポリイミド(2)の
短所が低減されたポリマーアロイを提供すること。ま
た、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度
のサイクルで射出成形しても、結晶化した成形品が得ら
れるポリイミド樹脂組成物を提供できること、さらに
は、230℃以上の高温、例えば230〜300℃や2
30〜250℃の使用温度を想定した場合に、上記のよ
うな一般的な成形サイクルで射出成形しても、寸法精度
と曲げ弾性率に優れた成形品が得られるポリイミド樹脂
組成物を提供すること。 【解決手段】 化学式(1)で表される繰り返し単位を
有するポリイミド(ポリイミド(1))5〜60重量%
と、化学式(2)の繰り返し単位を有するポリイミド
(ポリイミド(2))40〜95重量%を含有してなる
樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い耐熱性、高温
における優れた寸法安定性、高温における高い曲げ弾性
率を発現する成形品の製造に好適な樹脂組成物と、それ
を成形して得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】[技術的背景] ポリイミドの特性と用途 ポリイミドは、その優れた耐熱性に加え、機械物性、耐
薬品性、難燃性、電気特性等において優れた特性を有す
るため、成形材料、複合材料、電気・電子部品等の分野
において幅広く用いられている。 『Vespel』(デュポン社製)・『Upimo
l』(宇部興産社製) 成形材料、複合材料用ポリイミドとしては、商品名『V
espel』(デュポン社製)、あるいは、繰り返し単
位が、化学式(A)(化7)で表される商品名『Upi
mol』(宇部興産社製)が知られているが、いずれの
ポリイミドも不溶不融であるため成形加工性に問題があ
った。すなわち、これらポリイミドの成形体を得るため
には、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を経由し
て、焼結成形等の特殊な手段により成形する必要があっ
た。焼結成形によったのでは、複雑な形状を有する加工
品を得ることが困難であるという点も問題であった。複
雑な形状を有する加工品を得るためには、NC旋盤等の
切削機械を使用して、ポリイミドのブロックから、目的
の形状を削り出す必要があり、複雑・煩雑な加工工程や
成形加工に要するコスト等に問題があった。
【0003】
【化4】
【0004】 『Ultem』(ゼネラルエレクトリ
ック社製) 成形加工性が改善された射出成形可能な熱可塑性ポリイ
ミドとしては、繰り返し単位が、化学式(B)(化7)
で表される商品名『Ultem』(ゼネラルエレクトリ
ック社製)が知られている(米国特許第3,847,8
67号、同3,847,869号)。しかしながら、こ
のポリイミドは完全非晶性であり、ガラス転移温度(T
g)が215℃であることから、高温領域での使用と想
定すると、必ずしも、十分な耐熱性を有しているとはい
えない。すなわち、実質的な使用限界温度を示す荷重撓
み温度(DTUL)で評価すると、ニートの『Ulte
m』は200℃であり、炭素繊維30重量%含有(CF
30)『Ultem』は212℃であるので、どちら
も、高温領域での使用と想定すると、必ずしも、スーパ
ーエンプラとして高い数値であるとはいえない。
【0005】 『AURUM』(三井化学社製)(ポ
リイミド(1))の特性 さらに新しくは、成形加工性が改善された射出成形可能
な熱可塑性ポリイミドとして、繰り返し単位が、化学式
(1)(化1)で表される商品名『AURUM』(三井
化学社製)が、開発された(特開昭62−68817号
等)。このポリイミドは、溶融時の熱安定性に優れ、押
出成形や射出成形等の溶融成形に好適に供されている。
なお、このポリイミドは、数式(1)(数1)により計
算される溶融粘度比MRが、数式(2)(数2)に示さ
れる数値範囲内にある。このポリイミドのガラス転移温
度(Tg)は、245℃であり、荷重撓み温度(DTU
L)で評価すると、ニート『AURUM』は238℃で
あり、炭素繊維30重量%含有(CF30)『AURU
M』は、248℃であるので、『Ultem』と比較す
ると、耐熱性に優れる。また、『AURUM』は本質的
に結晶性であり、成形後に熱処理(アニール処理、アニ
ーリング)を施すことにより結晶化させることができ
る。結晶化させた場合、『AURUM』のDUTLは、
ニート『AURUM』で260℃であり、炭素繊維30
重量%含有(CF30)『AURUM』で349℃であ
り、結晶化していない場合と比較して、顕著に高い耐熱
性を有している。このように、ポリイミド(1)の典型
的な態様である『AURUM』は、結晶性であり、ガラ
ス転移点、融点は、ともに高く、熱可塑性樹脂の中で
は、トップクラスの耐熱性を有する。しかしながら、こ
のポリイミド(1)は、結晶性とはいっても、結晶化速
度が遅く、すなわち結晶化に要する時間が長く、一般的
な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度の射出成形
サイクルで得られる成形品は、非晶質である。そのため
に、このようにして得られた成形品は、ガラス転移点以
下の温度で使用する限りにおいては、寸法精度と曲げ弾
性率に優れるという特徴を有する。一方、このようにし
て得られた成形品を、ガラス転移点以上の温度条件下で
使用すると、弾性率が著しく低下し、成形品の形状を維
持できず、継続的な使用が困難となる。このポリイミド
(1)からなる成形品を、ガラス転移点以上の温度条件
下で継続的に使用しようとする場合は、非晶質な成形品
に熱処理を施して結晶化させればよい。しかし、結晶化
に伴い成形品の寸法が大きく変化するなどの問題を生じ
る場合がある。『AURUM』を成形することにより得
られた成形加工品が、特別な熱処理(金型内での徐冷、
成形後熱処理等)を必要とせずに、十分に結晶化すれ
ば、これらの問題は生じない。そのため、『AURU
M』に有機低分子量化合物や耐熱性の低い結晶性樹脂を
添加し、結晶化を促進する技術が開発された(特開平9
−104756号、特開平9−188813号等)。し
かしながら、これらの方法では、低分子量化合物や耐熱
性の低い樹脂を添加するため、耐熱性や耐薬品性が低下
するという問題があった。
【0006】 ポリイミド(2)の特性 特開昭61−143433号、特開昭62−11727
号、特開昭63−172735号、Macromole
cules,29巻・135〜142頁(1996
年)、及び、Macromolecules誌30巻1
012〜1022頁(1997年)等に開示されている
ポリイミド(2)は、結晶性であり、ガラス転移点(約
190℃)と融点(約395℃)との差が大きく(約2
05℃)、しかも、大変に結晶化が速い、すなわち、結
晶化に要する時間が短い。因に、ポリイミド(1)の
『AURUM』の場合は、ガラス転移点と融点との差
は、約140℃である。このポリイミド(2)は、上述
したように、結晶性であり、しかも、結晶化速度が大変
に速いため、一般的な成形サイクル、例えば、30〜6
0秒程度の射出成形サイクルで得られる成形品は、成形
した段階で結晶化がほぼ完了し、熱処理しても寸法の変
化は小さい。一般に、結晶化の速い樹脂は、分子鎖の運
動性が高いために、融点とガラス転移点の差が大きい。
すなわち、ポリイミド(2)のガラス転移点は約190
℃であり、ポリイミド(1)と比較して約55℃低い。
このため、ポリイミド(2)からなる成形品の150〜
200℃の様な中程度の温度条件における曲げ弾性率
は、実質的に非晶質であり、かつ、ガラス転移点の高い
ポリイミド(1)の成形品の曲げ弾性率よりも低い、と
いう問題を生ずる。また、前記の開示に従って製造され
たポリイミド(2)は、その高分子主鎖末端に芳香族ア
ミン、及び/又は、芳香族ジカルボン酸により不活性か
してもなお、熱安定性が顕著に低く、溶融時にその流動
性が短時間で急激に低下してしまう。そのため、これら
の開示に従って製造されたポリイミド(2)を、押出成
形や射出成形等の溶融成形に供することは現実的ではな
かった。それゆえ、これらの開示に従って製造されたポ
リイミド(2)の用途は、ホットメルト接着剤等に限定
されていた。
【0007】[従来の技術における問題点]ポリイミド
の技術分野において、ポリイミド特有の優れた耐熱性や
耐薬品性のみならず、高い結晶化速度をも併有する溶融
成形用結晶性ポリイミドが希求されているにもかかわら
ず、このようなポリイミドが存在しなかったことが実状
であった。すなわち、従来の技術により得られたポリイ
ミド(2)であって、分子末端が、化学式(3)(化
1)、及び/又は、化学式(4)(化1)で構成される
結晶性ポリイミドは、溶融時の熱安定性に劣り、数式
(1)[数1]により計算される溶融粘度比MRが、
2.0を超えている点で問題であった。したがって、ポ
リイミド(2)の熱安定性が低いため、ポリイミド
(1)とポリイミド(2)のポリマーアロイを調製しよ
うとする試みは、当業者によりなされることはなかっ
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、上記従来の技術における問題点に鑑み、ポ
リイミド(1)と、ポリイミド(2)の長所のみを活か
し、ポリイミド(1)とポリイミド(2)の短所が低減
されたポリマーアロイを提供することである。
【0009】本発明が解決しようとする課題の一つは、
溶融成形用途に好適な溶融粘度を有し、さらに溶融時の
熱安定性に優れたポリイミド樹脂組成物を提供すること
である。
【0010】本発明が解決しようとする課題の一つは、
一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサ
イクルで射出成形しても、結晶化した成形品が得られる
ようなポリイミド樹脂組成物を提供することである。
【0011】本発明が解決しようとする他の課題の一つ
は、例えば、230℃以上の高温、例えば、230〜3
00℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合
に、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度
のサイクルで射出成形しても、寸法精度に優れた成形品
が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供すること
である。
【0012】本発明が解決しようとする課題の一つは、
例えば、230℃以上の高温、例えば、230〜300
℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合に、一
般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度のサイ
クルで射出成形しても、曲げ弾性率に優れた成形品が得
られるようなポリイミド樹脂組成物を提供することであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の技
術により得られる、熱安定性に問題があったポリイミド
(2)について、鋭意検討を進めた結果、熱安定性が顕
著に改善されたポリイミド(2)を発明した。すなわ
ち、この熱安定性が顕著に改善されたポリイミド(2)
は、その溶融粘度比MRが、数式(2)[数2]にも示
したとおり、1.0〜2.0であるという特徴を有す
る。この熱安定性が顕著に改善されたポリイミド(2)
は、420℃において、実質的に熱分解を起こすことは
ないので、溶融粘度比MRは、1.0以上である。ま
た、本発明に係るポリイミドは、共重合体主鎖骨格末端
が高度に封止されているので、溶融粘度比MRは、2.
0以下である。
【0014】本発明者らは、上記課題を解決すべく、さ
らに、鋭意検討を進めた結果、ポリイミド(1)と、本
発明者らが発明した熱安定性が顕著に改善されたポリイ
ミド(2)を、特定の組成比で混合することにより、溶
融時には互いに相溶し、ポリイミド(1)と、ポリイミ
ド(2)の長所のみを活かし、ポリイミド(1)とポリ
イミド(2)の短所が低減されたポリマーアロイを調製
できることを見い出し、本発明を完成するに至った。本
発明は、以下の[1]〜[18]に記載した事項により
特定される。
【0015】[1] 化学式(1)(化5)で表される
繰り返し単位を有するポリイミド(ポリイミド(1))
5〜60重量%と、化学式(2)(化5)の繰り返し単
位を有するポリイミド(ポリイミド(2))40〜95
重量%を含有してなるポリイミド樹脂組成物であって、
ポリイミド(2)の分子末端が、化学式(3)(化
5)、及び/又は、化学式(4)(化5)で構成され、
かつ、ポリイミド(2)の、数式(1)[数5]により
計算される溶融粘度比MRが、数式(2)[数7]に示
される数値範囲にあることを特徴とする、ポリイミド樹
脂組成物。
【0016】
【化5】
【0017】(化学式(3)において、Vは、1価の芳
香族基であり、化学式(4)において、Tは、2価の芳
香族基である。) [数5] MR = MV30 ÷ MV5 (1) (数式(1)において、MV5は、試料を420℃で5
分間保持して溶融させ、30〜500[sec-1]の範
囲の剪断速度で測定した溶融粘度([Pa・sec])
であり、MV30は、試料を420℃で30分間保持して
溶融させ、30〜500[sec-1]の範囲の剪断速度
で測定した溶融粘度([Pa・sec])である。) [数6] 1.0 ≦ MR ≦ 2.0 (2) (数式(2)において、MRは、数式(1)により計算
される溶融粘度比である。) [2] 化学式(3)(化5)において、1価の芳香族
基Vが、化学式(タ)〜(ウ)(化6)からなる1価芳
香族基群から選択される少なくとも一つであり、及び/
又は、化学式(4)(化5)において、2価の芳香族基
Tが、化学式(ヰ)〜(ヤ)(化6)からなる2価芳香
族基群から選択される少なくとも一つであることを特徴
とする、[1]に記載した、ポリイミド樹脂組成物。
【0018】
【化6】
【0019】[3] 化学式(3)(化5)における1
価の芳香族基V、及び、化学式(4)(化5)における
2価の芳香族基Tの芳香族環の水素原子の少なくとも一
部が、化学式(I)〜(XII)(化7)からなる置換基
群から選択される少なくとも一つの置換基で置換された
ものであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載
した、ポリイミド樹脂組成物。
【0020】
【化7】
【0021】[4] ポリイミド(2)の溶融粘度MV
5が、数式(3)[数7]に示される数値範囲にあるこ
とを特徴とする、[1]乃至[3]の何れかに記載し
た、ポリイミド樹脂組成物。 [数7] 2×102[Pa・sec]≦MV5 ≦5×103[Pa・sec] (3) (数式(3)において、MV5は、試料を420℃で5
分間保持して溶融させ、30〜500[sec-1]の範
囲の剪断速度で測定した溶融粘度である。) [5] ポリイミド(2)の対数粘度ηinhが、数式
(4)[数8]示される数値範囲にあることを特徴とす
る、[1]乃至[4]の何れかに記載したポリイミド樹
脂組成物。 [数8] 0.6[dl/g]≦ ηinh[dl/g] ≦1.3[dl/g] (4) (数式(4)において、ηinhは、p−クロロフェノー
ル90重量%/フェノール10重量%混合溶媒に、試料
を0.5重量%で溶解し、35℃で測定したときの対数
粘度である。) [6] 半結晶化時間が、0.5分以下であることを特
徴とする[1]乃至[5]の何れかに記載したポリイミ
ド樹脂組成物。
【0022】[7] [1]乃至[6]の何れかに記載
した樹脂組成物100重量部に対し、充填材1〜100
重量部を含有することを特徴とするポリイミド樹脂組成
物。 [8] [1]乃至[6]の何れかに記載した樹脂組成
物100重量部に対し、充填材5〜70重量部を含有す
ることを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
【0023】[9] 充填材が、炭素繊維、カーボンブ
ラック、マイカ、タルクおよびガラス繊維からなる群か
ら選択された少なくとも一種であることを特徴とする、
[7]又は[8]に記載したポリイミド樹脂組成物。 [10] 充填材が、炭素繊維および/またはカーボン
ブラックであることを特徴とする、[7]又は[8]に
記載したポリイミド樹脂組成物。
【0024】[11] [1]乃至[10]の何れかに
記載したポリイミド樹脂組成物を含有してなる [12] 昇温速度10℃/分、測定温度範囲20〜4
20℃で示差走査熱量測定(DSC)をしたときに、2
60〜300℃において結晶化発熱ピークが観察されな
いことを特徴とする[11]に記載した成形品。
【0025】[13] 成形品が、ICトレーである
[11]又は[12]に記載した成形品。 [14] 成形品が、電気・電子部品である[11]又
は[12]に記載した成形品。
【0026】[15] 成形品が、事務機器部品である
[11]又は[12]に記載した成形品。 [16] 成形品が、自動車部品である[11]又は
[12]に記載した成形品。 [17] 成形品が、産業機械部品である[11]又は
[12]に記載した成形品。
【0027】
【発明の実施の形態】[ポリイミド(1)]化学式
(1)(化8)の繰り返し単位を有するポリイミド
(1)の製造方法は、特に限定されるものではないが、
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフ
ェニルと、ピロメリット酸二無水物とを、有機溶媒の存
在下、または、非存在下で反応させ、得られたポリアミ
ド酸を化学的にまたは熱的にイミド化して製造すること
ができる。このポリイミド(1)の粘度は、対数粘度を
基準として、一般的には、0.1〜3.0dl/gの範
囲が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0dl/
g、最も好ましくは0.5〜1.5dl/gの範囲であ
る。対数粘度が0.1dl/g未満では、機械的物性が
不十分な場合があり、3.0dl/gを超えると、流動
性に劣り、射出成形などに不適となる場合がある。な
お、ここで云う対数粘度とは、p−クロロフェノール/
フェノール(重量比9/1)の混合溶媒100mlに、
ポリイミド粉0.50gを加熱溶解後、35℃において
測定した値である。このポリイミド(1)は、好ましい
態様では、ガラス転移点が245℃、融点が388℃程
度である。このポリイミド(1)は、『AURUM』
(オーラム、三井化学(株)製)の商品名で市場より入
手可能である。
【0028】
【化8】
【0029】(化学式(3)において、Vは、1価の芳
香族基であり、化学式(4)において、Tは、2価の芳
香族基である。) [ポリイミド(2)]本発明において、化学式(2)
(化8)の繰り返し単位を有するポリイミド(2)は、
分子末端が、化学式(3)(化8)、及び/又は、化学
式(4)(化8)で構成され、かつ、ポリイミド(2)
の、数式(1)[数9]により計算される溶融粘度比M
Rが、数式(2)[数10]に示される数値範囲にある
ことを特徴とする。 [数9] MR = MV30 ÷ MV5 (1) (数式(1)において、MV5は、試料を420℃で5
分間保持して溶融させ、30〜500[sec-1]の範
囲の剪断速度で測定した溶融粘度([Pa・sec])
であり、MV30は、試料を420℃で30分間保持して
溶融させ、30〜500[sec-1]の範囲の剪断速度
で測定した溶融粘度([Pa・sec])である。) [数10] 1.0 ≦ MR ≦ 2.0 (2) (数式(2)において、MRは、数式(1)により計算
される溶融粘度比である。) 化学式(3)(化8)において、1価の芳香族基Vは、
化学式(タ)〜(ウ)(化9)からなる1価芳香族基群
から選択される少なくとも一つが好ましい。であり、及
び/又は、化学式(4)(化8)において、2価の芳香
族基Tは、化学式(ヰ)〜(ヤ)(化9)からなる2価
芳香族基群から選択される少なくとも一つであることが
好ましい。
【0030】
【化9】
【0031】化学式(3)(化8)における1価の芳香
族基V、及び、化学式(4)(化8)における2価の芳
香族基Tの芳香族環の水素原子の少なくとも一部は、化
学式(I)〜(XII)(化10)からなる置換基群から
選択される少なくとも一つの置換基で置換されてもよ
い。
【0032】
【化10】
【0033】ポリイミド(2)の溶融粘度MV5は、、
数式(3)[数11]に示される数値範囲にあることが
好ましい。 [数11] 2×102[Pa・sec]≦MV5 ≦5×103[Pa・sec] (3) (数式(3)において、MV5は、試料を420℃で5
分間保持して溶融させ、30〜500[sec-1]の範
囲の剪断速度で測定した溶融粘度である。)ポリイミド
(2)の対数粘度ηinhは、数式(4)[数12]示さ
れる数値範囲にあることが好ましい。 [数12] 0.6[dl/g]≦ ηinh[dl/g] ≦1.3[dl/g] (4) (数式(4)において、ηinhは、p−クロロフェノー
ル90重量%/フェノール10重量%混合溶媒に、試料
を0.5重量%で溶解し、35℃で測定したときの対数
粘度である。)
【0034】[ポリイミド(2)の製造方法]本発明で
使用するポリイミド(2)の製造方法は、特に制限され
るものではないが、例えば、前記ポリイミドを製造する
重合反応の反応系に装入する単量体として、化学式
(5)(化11)で表されるジアミン、すなわち、1,
3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び、化
学式(6)(化11)で表されるテトラカルボン酸二無
水物、すなわち、3,3’,4,4’−ビフェニルテト
ラカルボン酸二無水物を使用し、並びに、末端封止剤と
して、化学式(7)(化11)で表されるモノアミン、
及び/又は、化学式(8)(化11)で表されるジカル
ボン酸無水物を使用し、前記単量体と前記末端封止剤の
使用量が、化学式(6)(化11)で表されるテトラカ
ルボン酸二無水物のモル数を基準として、化学式(5)
(化11)で表されるジアミン90〜110モル%、化
学式(7)(化11)で表されるモノアミンと、化学式
(8)(化11)で表されるジカルボン酸無水物の合計
が0.1〜100モル%であり、前記ポリイミドを製造
する重合反応の反応系に装入する有機溶媒として、フェ
ノール、クレゾール類、キシレノール類、及び、ハロゲ
ン化フェノール類からなる有機溶媒群から選択された少
なくとも1種の有機溶媒を使用し、前記有機溶媒の使用
量が、反応系における単量体の濃度が、5〜30重量%
の範囲に相当する量であり、かつ、前記ポリイミドを製
造する重合反応の反応系の反応温度が、130℃以上、
有機溶媒の還流温度以下の温度範囲であることを特徴と
する製造方法を挙げることができる。
【0035】
【化11】
【0036】本発明で使用するポリイミド(2)の製造
方法においては、以下の〜に示す条件を選択するこ
とにより、得られるポリイミドのイミド化が十分に進行
し、さらに共重合体主鎖骨格末端を、高度に封止するこ
とができるので、溶融粘度比MRを2.0以下とするこ
とができる。すなわち、このような〜に示す条件を
選択することにより、初めて、得られるポリイミドの溶
融粘度比MRを2.0以下とすることができたのであ
る。 反応系に化学量論的に共重合体主鎖骨格末端のモル
数に相当する量以上の封止剤を仕込む。 反応系に装入する有機溶媒として、フェノール、ク
レゾール類、キシレノール類、及び、ハロゲン化フェノ
ール類からなる有機溶媒群から選択された有機溶媒を使
用する。 反応系における有機溶媒中の単量体の濃度を、5〜
30重量%とする。 反応系の反応温度を、130℃以上、有機溶媒の還
流温度以下とする。
【0037】ポリイミドの製造方法において、以下の
〜に示す条件を選択することは、当業者により、容易
に想到できるものではなく、本発明者らが、労を厭わ
ず、種々の重合条件の組合せを、虱潰しに鋭意検討した
結果、初めて到達し得た知見である。
【0038】このポリイミド(2)の粘度は、対数粘度
を基準として、0.1〜3.0dl/gの範囲が好まし
く、より好ましくは0.3〜2.0dl/g、最も好ま
しくは0.5〜1.5dl/gの範囲である。対数粘度
が0.1dl/g未満では、機械的物性が不十分な場合
があり、3.0dl/gを超えると、流動性に劣り、射
出成形法などの採用において不適となる場合がある。こ
こで云う対数粘度は、前記したとおりである。このポリ
イミド(2)は、好ましい態様では、そのガラス転移温
度が190℃、融点が395℃程度である。
【0039】[化学式(5)で表されるジアミン]化学
式(5)(化11)で表されるジアミンは、1,3−ビ
ス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンである。1,3−
ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンの製造方法は特
に制限されるものではないが、その具体例としては、例
えば、塩基の存在下、レゾルシンと、p−ニトロクロロ
ベンゼンを、非プロトン性極性溶剤中で反応させ、得ら
れた1,3−ビス(4−ニトロフェノキシ)ベンゼンを
水素により還元する製造方法が挙げられる。化学式
(5)[化8]で表されるジアミンの使用量は、一般的
には、化学式(6)[化8]で表されるテトラカルボン
酸二無水物のモル数を基準として、90〜110モル%
の範囲である。
【0040】[化学式(6)で表されるテトラカルボン
酸二無水物]化学式(6)(化11)で表されるテトラ
カルボン酸二無水物、すなわち、3,3’,4,4’−
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(別名;3,
3’,4,4’−ビスフェニルテトラカルボン酸二無水
物)は、市販されており、工業的に容易に使用すること
ができる。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカル
ボン酸二無水物は、例えば、商品名『UPILEX』
(宇部興産社製)の単量体としても知られている。
【0041】[化学式(7)で表されるモノアミン]化
学式(7)(化11)で表されるモノアミンは、芳香族
モノアミンである。化学式(7)(化11)において、
Vは、1価の芳香族基である。1価の芳香族基Vの具体
例としては、例えば、化学式(タ)〜(ウ)(化9)か
らなる1価芳香族基群が挙げられる。化学式(8)(化
11)で表されるモノアミンの使用量は、一般的には、
化学式(9)(化11)で表されるジカルボン酸無水物
との合計使用量が、化学式(6)(化11)で表される
テトラカルボン酸二無水物ジアミンのモル数を基準とし
て、0.1〜100モル%、好ましくは1〜50モル%
となる範囲である。この末端封止剤の芳香族環の水素原
子は、共重合体分子末端のアミンやジカルボン酸無水物
と反応性を有しない置換基で置換されていてもよい。こ
のような芳香族基の水素原子の置換基の具体例として
は、例えば、化学式(I)〜(XII)(化10)に示す
ものが挙げられる。
【0042】[化学式(7)で表されるモノアミンの具
体例]化学式(7)(化11)で表されるモノアミンの
具体例としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、
m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジ
ン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5
−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリ
ン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブ
ロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−フルオロアニ
リン、m−フルオロアニリン、p−フルオロアニリン、
o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o
−フェネジン、m−フェネジン、p−フェネジン、2−
アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノ
ビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3
−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニ
ルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−
アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2
−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェ
ニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニル
スルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3
−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニ
ルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチ
ルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−
1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−ア
ミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、
7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフト
ール、8−アミノ−2−ナフトール等が挙げられる。こ
れらは、単独で、又は、二種類以上を組み合わせて使用
することができる。
【0043】[化学式(8)で表されるジカルボン酸無
水物]化学式(8)(化11)で表されるジカルボン酸
無水物は、芳香族ジカルボン酸無水物である。化学式
(8)(化11)において、Tは、2価の芳香族基であ
る。2価の芳香族基Tの具体例としては、例えば、化学
式(ヰ)〜(ヤ)(化9)からなる2価芳香族基群が挙
げられる。化学式(8)(化11)で表されるジカルボ
ン酸無水物の使用量は、一般的には、化学式(8)(化
11)で表されるモノアミンとの合計使用量が、化学式
(6)(化11)で表されるテトラカルボン酸二無水物
のモル数を基準として、0.1〜100モル%、好まし
くは1〜50モル%となる範囲である。この末端封止剤
の芳香族環の水素原子は、共重合体分子末端のアミンや
ジカルボン酸無水物と反応性を有しない置換基で置換さ
れていてもよい。このような芳香族基の水素原子の置換
基の具体例としては、例えば、化学式(I)〜(XII)
(化9)に示すものが挙げられる。
【0044】[化学式(8)で表されるジカルボン酸無
水物の具体例]化学式(8)で表されるジカルボン酸無
水物の具体例としては、無水フタル酸、クロロ無水フタ
ル酸、ブロモ無水フタル酸、フルオロ無水フタル酸、
2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−
ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボ
キシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカル
ボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフ
ェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカル
ボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニル
スルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニ
ルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェ
ニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニル
フェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカル
ボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水
物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物等が挙げら
れる。
【0045】[ポリイミドの組成比]本発明における重
要な発明特定事項は、ポリイミド(1)とポリイミド
(2)の(重量基準)の混合比率である。ポリイミド
(1)とポリイミド(2)の混合比率を、『重量基準と
して(1)/(2)』で表記すると、60/40〜5/
95の範囲が好ましく、さらに好ましくは50/50〜
10/90、最も好ましくは40/60〜20/80の
範囲である。ポリイミド(2)が40重量%未満では2
30℃以上の使用に耐えない場合があり、95重量%を
超えると150〜200℃の範囲の曲げ弾性率が改善さ
れない場合がある。
【0046】[本発明に係るポリイミド樹脂組成物の特
徴]本発明に係るポリイミド樹脂組成物の特徴につい
て、以下に説明する。例えば、150〜250℃のよう
な高温下の使用を睨む場合、成形品の形状維持の観点か
ら、必ず曲げ弾性率が大きな問題となる。つまり、常温
から高温までの曲げ弾性率をある程度平均的に保ち、寸
法精度とのバランスを取ることが肝要である。ポリイミ
ド(1)は、結晶化に要する時間が長く、すなわち結晶
化速度が遅く、通常の射出成形では、実質上、非晶性の
成形品しか得られない。このようなポリイミド(1)の
非晶性成形品の使用可能温度、すなわち、一般的耐熱温
度は、ガラス転移点に依存し、230℃付近までに限定
される。この耐熱温度でも、かなり優れているとはいえ
るが、さらに230℃以上の高温、例えば、230〜3
00℃や230〜250℃で使用したいという市場の要
求が大きくなってきている。熱処理による結晶化を施せ
ば、使用可能温度は融点に依存するようになるが、結晶
化に伴う収縮が大きくなり寸法精度は満足できなくな
る。この様に、一長一短の関係にある。一方、ポリイミ
ド(2)は、結晶化に要する時間が短く、最初から結晶
化した成形品が得られ、これを熱処理しても寸法の変動
は少ない。一般に、結晶化の速度は、分子鎖の運動性に
依存し、同種のポリマーでは、ガラス転移点と融点の温
度差が大きいほど、結晶化速度も大となる傾向がある。
実際、ポリイミド(1)との比較では、融点は7℃だけ
高いが、ガラス転移点は55℃も低い。ポリイミド
(2)では、通常の成形で十分に結晶化が進むが、15
0〜200℃のような、ガラス転移点付近の温度におけ
る曲げ弾性率は、むしろ、ポリイミド(1)よりも劣
る。
【0047】[組成比の臨界的意義]本発明に係るポリ
イミド樹脂組成物の組成比は、臨界的意義を有する。す
なわち、特定の組成比においてのみ、本願発明の作用効
果が発揮される。本発明に係るポリイミド樹脂組成物の
臨界的作用効果の発現メカニズムは、必ずしも明確では
ないが、以下に本発明者らの考察を述べる。本発明が解
決しようとする課題を解決するためには、単純に、結晶
性ポリイミドと非晶性ポリイミドとを混合すればよいよ
うに思われるかもしれない。しかしながら、そうではな
い。非晶性樹脂のマトリックス中に結晶性樹脂の微結晶
が浮かんでいる状態では、結局、本発明で得られるよう
な効果が得られない上に、結晶性樹脂の結晶化が阻害さ
れてしまうのが普通である。本発明の態様においては、
組成物を加熱溶融工程を経て賦形することを前提として
いる。しかしながら、本発明の態様は、単純に非晶性樹
脂のマトリックス中に結晶性樹脂の微結晶が浮かんでい
るような状態とは異なることが、示差走査型熱量計(以
下、DSCと略記する)による測定結果から強く示唆さ
れている。すなわち、ポリイミド(1)の成形品を常温
から昇温していくと、300℃付近に結晶化の発熱ピー
クが現れる。さらに温度を上げると、融解の吸熱ピーク
が現れるが、このときの熱量は、結晶化の発熱量とほぼ
同じである。つまり、最初の状態では、まったく結晶化
していないことがわかる。一方、ポリイミド(2)の成
形品では結晶化の発熱は、観察されず、融解の吸熱のみ
現れる。しかも、この吸熱ピークの熱量は先のポリイミ
ド(1)の場合と同等である。つまり、最初の状態でほ
ぼ結晶化が完了しているのである。本発明の樹脂組成物
による成形物においては、結晶化の発熱が現れず、融解
の吸熱のみが見られ、その熱量は、ポリイミド(1)ま
たはポリイミド(2)単体の場合とほぼ同等である。す
なわち、組成物中のポリイミド(1)およびポリイミド
(2)はいずれも、結晶化が進んでおり、ポリイミド
(2)だけが結晶化しているのではない。
【0048】従って、「非晶プラス結晶」ではなく「結
晶プラス結晶」の性質が得られるのであって、このこと
が弾性率保持と収縮のバランスを付与する原因と考えら
れる。両ポリイミドは、溶融混練時には完全に相溶して
おり透明であるが、冷却過程で直ちに結晶化して濁る。
すなわち、冷却過程におけるスピノーダル相分離や、ポ
リイミド(2)の結晶化などにより、他方のポリイミド
(1)の分子がはじき出され、結果としてポリイミド
(1)の分子鎖配列に秩序を与えて結晶核発生を促した
り、結晶成長表面への分子鎖の供給を加速することなど
により、ポリイミド(1)の結晶化の速度を高めている
ことが推測される。
【0049】このように、結晶化の速度が異なり、か
つ、溶融混練時には完全相溶して、冷却過程で分離を伴
う特定のポリイミドを組み合わせることで課題を解決で
きることは、これまでは、まったく予想し得なかったこ
とである。しかしながら、ポリイミド(1)の混合比率
が60重量%を超えると、やはり、結晶化しなくなって
しまう。すなわち、ポリイミド(2)が、ポリイミド
(1)によって希釈されすぎると、効果がなくなり、こ
の場合は相溶した状態で透明のまま固化し、非晶状態で
成形品が得られる。この混合比率については、DSCを
用いた等温結晶化試験により得られる、半結晶化時間か
らも理解される。ここでいう、半結晶化時間とは、以下
に説明するとおりの意味であり、結晶化の速度の尺度と
して代表的な量である。組成物を昇温して十分に溶融さ
せ、次いで所定の温度、すなわち、ガラス転移点以上、
融点以下まで急冷させる。このときの時刻をt0とす
る。そのまま、その温度で一定に保つと結晶化が始ま
り、DSC上は結晶化の発熱ピークが観察される。この
発熱ピークのピークトップを与える時間をt1とする。
ここで、半結晶化時間thは、数式(5)(数13)で
表わされる。 [数13] th = t1−t0 (5) 半結晶化時間の測定法は、例えば、Macromole
cules,29巻・135〜142頁(1996
年)、『高分子測定法・上』(高分子学会編、1973
年、培風館発行)や「熱測定」22巻,16頁(199
5年)などに記載されており、この値が小さいほど結晶
化が速い。通常、この半結晶化時間は結晶化させる温度
に対して依存性があり、ガラス転移点と融点の間のある
温度で最小を採る。
【0050】ポリイミド(1)単体の最小半結晶化時間
は320℃近傍で得られ、約15分間である。一方、ポ
リイミド(2)のそれは310℃で0.2分間である
が、この温度以下では半結晶化時間が短すぎてうまく測
定できない。いずれにしても、ポリイミド(2)は、ポ
リイミド(1)よりも2桁程度も半結晶化時間が短く、
それだけ結晶化が速いことが分かる。
【0051】本発明の態様であるポリイミド(1)が、
60重量%未満の組成物でもポリイミド(2)単体とほ
ぼ同じオーダーの半結晶時間を示し、0.5分間以下で
ある。しかしながら、ポリイミド(1)の混合比率が6
0重量%を超える場合は、半結晶化時間が1桁以上大き
くなる。すなわち、通常の射出成形などでは結晶化出来
なくなる場合があり、好ましくない。
【0052】以下、他の実施の態様について説明する。
本発明に係るポリイミド樹脂組成物に添加することがで
きる充填材は、特に限定されるものではない。充填材の
具体例としては、例えば、無機補強剤を挙げることがで
きる。無機補強剤は、繊維状・針状・板状・粒状・その
他の形態の物があり、いずれも用いることができる。
【0053】繊維状のものとしては、炭素繊維、ガラス
繊維、金属繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロ
ン繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられる。また、針状
のものとしては、チタン酸カリウムウィスカー、ほう酸
アルミニウムウィスカー、カーボンウィスカー、炭酸カ
ルシウムウィスカー、ワラストナイト、酸化亜鉛ウィス
カー、酸化チタンウィスカーなどが挙げられる。
【0054】また、板状のものとしては、雲母、ガラス
フレーク、タルク、セリサイト、カオリナイト、窒化ほ
う素、黒鉛、金属フレークなどが挙げられる。また、粒
状のものとしては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウ
ム、ガラスビーズ、シリカ、硫酸バリウム、金属粉など
が挙げられる。
【0055】その他のものとしては、種々の性質改良に
鑑み、ケイ石粉、二硫化モリブデンなどの耐摩耗性向上
材、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マ
グネシウムなどの難燃性向上材、アスベストなどの耐ト
ラッキング向上材、メタケイ酸カルシウム等の耐酸性向
上材、あるいはケイ藻土、アルミナ、シラスバルン、水
和アルミナ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、各種の
金属酸化物、カーボンブラック類等が挙げられる。
【0056】これらの無機補強材は、一種、または、複
数のものを選択して用いることができ、ポリイミド樹脂
組成物100重量部に対して1〜100重量部、好まし
くは3〜85重量部、より好ましくは5〜70重量部を
添加して用いることができる。1重量部未満では、補強
効果を発揮しない場合があり、100重量部を超えると
成形時の流動性を害する場合がある。
【0057】本発明に係るポリイミド樹脂組成物には、
本発明の目的を損なわない範囲で、第三成分の樹脂を、
目的に応じて適当量添加することができる。本発明に係
るポリイミド樹脂組成物に添加することができる第三成
分の樹脂は、特に限定されるものではない。
【0058】第三成分の樹脂の具体例としては、例え
ば、熱可塑性樹脂を挙げることができる。他の熱可塑性
樹脂を目的に応じて適当量配合することも可能である。
配合することができる熱可塑性樹脂としては、ポリオレ
フィン類、ポリスチレン類、ポリカーボネート、ポリエ
ステル類、ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリフェ
ニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポ
リフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリケトン
類、ポリエーテルニトリル、液晶ポリマー、本発明で使
用するものと異なる構造を有するポリイミドなどが挙げ
られる。また、熱可塑性ではないが、ポリテトラフルオ
ロエチレンなどのフッ素系樹脂やシリコーン樹脂類は組
成物の離型性や摺動性を改善する上で効果が大きい。ま
た、芳香族ポリアミド繊維なども機械的特性を向上する
上で好ましい。これらは一種または複数のものを選択し
用いることができる。着色料、離型剤、各種安定剤、可
塑剤、オイル類なども、本発明の目的を損なわない範囲
で、添加可能である。
【0059】本発明のポリイミド樹脂組成物は、ポリイ
ミド(1)、ポリイミド(2)、及び、その他必要とす
る成分を均一混合した後、一軸または多軸の押出機を用
いて連続な生産が可能である。混合ロール、ニーダー、
ブラベンダー等のバッチ式方法も実施可能である。
【0060】本発明のポリイミド樹脂組成物は、主に射
出成形により実用に供されるが、押出成形、圧縮成形、
トランスファー成形などの公知の成形法によることも可
能である。このようにして得られた本発明のポリイミド
樹脂組成物は、広い温度範囲での弾性率に優れ、寸法の
変動が少なく、特に、230℃以上の高温下で使用され
る成形品、寸法精度の要求される成形品に広く応用可能
である。
【0061】半導体容器の分野では、IC包装用トレ
ー、IC製造工程用トレー、ICソケット、ウェハーキ
ャリアなどに有効である。
【0062】電気・電子部品の分野では、コネクター、
ソケット、ボビンなどのほか、ハードディスクキャリ
ア、液晶ディスプレイキャリア、水晶発振器製造用トレ
ーなどの製造用治具などに有効である。
【0063】事務機器部品の分野では、コピー機用分離
爪、コピー機用断熱軸受け、コピー機用ギアなどに有効
である。
【0064】自動車部品の分野では、スラストワッシャ
ー、トランスミッションリング、ピストンリング、オイ
ルシールリングなどに有効である。産業機器部品の分野
では、ベアリングリテーナー、ポンプギア、コンベアチ
ェーン、ストレッチマシン用スライドブッシュなどに有
効である。
【0065】
【実施例】以下実施例によって本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって限定されるもの
ではない。なお、実施例、比較例における樹脂の物性測
定、評価は以下の要領で実施した。
【0066】(A) 半結晶化時間 半結晶化時間測定の方法論については既に述べた。すな
わち、示差走査型熱量計(DSC)を用い、等温結晶化
試験により測定する。組成物を昇温して十分に溶融さ
せ、次いで所定の温度まで急冷させる。このときの時刻
をt0とする。そのまま、その温度で一定に保つと結晶
化が始まり、DSC上は結晶化の発熱ピークが観察され
る。この発熱ピークのピークトップを与える時間をt1
とする。ここで、半結晶化時間thは、数式(5)(数
14)で表わされる量である。 [数14] th = t1−t0 (5) この値が小さいほど結晶化が速く起きるといえる。通
常、この半結晶化時間は結晶化させる温度に対して依存
性があり、ガラス転移点と融点の間のある温度で最小を
採る。従って、ここでは、温度を190℃から320℃
まで変えて測定した中で、最小の半結晶化時間を記して
ある。半結晶化時間が短く、0.2分間未満の場合は測
定ができないため、<0.2のように表記する。
【0067】(B) 寸法変化 ASTM1号ダンベル(ASTMD−638)に300
℃で2時間の熱処理を施し、ダンベルの平行部分の幅の
寸法をノギスで測定して、処理前後の寸法変化を観察し
た。
【0068】(C) 曲げ弾性率 ASTMD−790に拠った。試験片には(B)と同様
の条件で熱処理したものを用い、温度を変えて測定し
た。測定温度は23℃、150℃、250℃の3水準と
した。
【0069】[ポリイミド(2)の製造実施例1]攪拌
機、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器に1,3−ビ
ス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン204.4g
(0.7モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテト
ラカルボン酸二無水物199.6g(0.679モ
ル)、無水フタル酸6.22g(0.06モル)、m−
クレゾール3500gを装入し、窒素雰囲気下で攪拌し
ながら200℃まで加熱した。その後、200℃で8時
間反応を行ない、無水フタル酸6.22g(0.06モ
ル)を添加してさらに4時間反応を行なった。その間
に、約25mlの水の留出が確認された。反応終了後室
温まで冷却し、トルエン9000mlを1時間かけて滴
下して、ポリイミド(2)を析出させた。スラリー液を
濾過し、得られたポリイミドケーキをトルエンで洗浄し
た後、窒素中300℃で4時間乾燥して黄色のポリイミ
ド粉362.7g(収率94.2%)を得た。得られた
ポリイミド(2)の融点(Tm)、5%重量減少温度、
対数粘度(ηin h)、ポリイミド粉をフローテスターの
シリンダー内で420℃で5分間保持し溶融させた際の
溶融粘度(MV5)、ポリイミド粉をフローテスターの
シリンダー内で420℃で30分間溶融させた際の溶融
粘度(MV30)、及び、MV5とMV30との溶融粘度比
(MR)は、以下のとおりであった。 Tm = 395[℃] T5% = 557[℃] ηinh = 0.9[dl/g] MV5 = 710[Pa・sec] MV30 = 1210[Pa・sec] MR = 1.71
【0070】[ポリイミド(2)の製造比較例1]m−
クレゾール3500gの代わりに、N−メチル−ピロリ
ドン3500gとo−ジクロロベンゼン700gを用
い、180℃、o−ジクロロベンゼン還流下に反応を行
った他は実施例1に従い、ポリイミド粉353.8g
(収率91.9%)を得た。なお、重合開始1時間後よ
り黄色粉が析出、スラリー状になった。得られたポリイ
ミド(2)の融点(Tm)、5%重量減少温度、対数粘
度(ηin h)、ポリイミド粉をフローテスターのシリン
ダー内で420℃で5分間保持し溶融させた際の溶融粘
度(MV5)、ポリイミド粉をフローテスターのシリン
ダー内で420℃で30分間溶融させた際の溶融粘度
(MV30)、及び、MV5とMV30との溶融粘度比(M
R)は、以下のとおりであった。製造比較例1で得られ
たポリイミド(2)は、製造実施例1で得られたものと
比較して、熱安定性に劣っていた。 Tm = 395[℃] T5% = 558[℃] ηinh = 0.9[dl/g] MV5 = 680[Pa・sec] MV30 = 1560[Pa・sec] MR = 2.29
【0071】[実施例1〜5]ポリイミド(1)(三井
化学(株)製、商品名AURUMPD450、対数粘度
は0.45dl/g)、製造実施例1で得られたポリイ
ミド(2)、および、炭素繊維(東邦レーヨン(株)
製、商品名HTA−C6)を表1に示す割合で配合した
後、タンブラーミキサーで十分に混合して、スクリュー
径37mm、L/D=32の二軸押出機にて420℃、
スクリュー回転数80rpmで溶融混合し、押出してペ
レット化した。このペレットを用いて半結晶化時間を測
定した。また、同様にこのペレットを用い、シリンダー
温度420℃、金型温度210℃、成形サイクル30秒
の条件で射出成形を行い、得られた試験片を用いて評価
を行った。結果を表1に示す。
【0072】[比較例1〜2]ポリイミド(1)とポリ
イミド(2)の混合比率を好適ではない範囲とし、実施
例1〜3と同様の評価をした。結果を表2に示す。
【0073】[比較例3]ポリイミド(1)単体の場合
について、実施例1〜3と同様の評価をした。結果を表
2に示す。
【0074】[比較例4]ポリイミド(2)単体の場合
について、実施例1〜3と同様の評価をした。結果を表
2に示す。上記実施例および比較例で得られたオーラム
組成比と150℃における曲げ弾性率、熱処理前後の寸
法変化および半結晶時間との関係を図1に示した。
【0075】[比較例5]製造実施例1で得られた熱安
定性に優れたポリイミド(2)の代わりに、従来の技術
による典型的な製造方法である製造比較例1により得ら
れた熱安定性に劣るポリイミド(2)を使用すること以
外は、実施例1と全く同様に試験片を作成し、得られた
試験片を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】[実施例6]実施例1で得られたペレット
を使用し、シリンダー温度420℃、金型温度200
℃、射出圧力147MPa、流動肉厚1mm、成形サイ
クル120秒で、スパイラル流動長を測定した。1ショ
ット目と10ショット目の流動長の比率を、溶融時の流
動性保持率とし、流動安定性の指標とした。結果を以下
に示す。 スパイラル流動長( 1ショット目) 440mm スパイラル流動長(10ショット目) 290mm 流動性保持率 65%
【0077】[比較例6]比較例5で得られたペレット
を使用し、実施例6と同様に、スパイラル流動長を測定
した。1ショット目と10ショット目の流動長の比率
を、溶融時の流動性保持率とし、流動安定性の指標とし
た。結果を以下に示す。 スパイラル流動長( 1ショット目) 390mm スパイラル流動長(10ショット目) 140mm 流動性保持率 35%
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】本発明により、ポリイミド(1)と、ポ
リイミド(2)の長所のみを活かし、ポリイミド(1)
と、ポリイミド(2)の短所が低減されたポリマーアロ
イを提供することができる。本発明の効果の一つは、溶
融成形用途に好適な溶融粘度を有し、さらに、溶融時の
熱安定性に優れたポリイミド樹脂組成物を提供できるこ
とである。
【0081】本発明の効果の一つは、一般的な成形サイ
クル、例えば、30〜60秒程度のサイクルで射出成形
しても、結晶化した成形品が得られるようなポリイミド
樹脂組成物を提供できることである。本発明の他の効果
の一つは、例えば、230℃以上の高温、例えば230
〜300℃や230〜250℃の使用温度を想定した場
合に、一般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程
度のサイクルで射出成形しても、寸法精度に優れた成形
品が得られるようなポリイミド樹脂組成物を提供するこ
とができることである。更に、本発明の効果の一つは、
例えば、230℃以上の高温、例えば、230〜300
℃や230〜250℃の使用温度を想定した場合に、一
般的な成形サイクル、例えば、30〜60秒程度で射出
成形しても、曲げ弾性率に優れた成形品が得られるよう
なポリイミド樹脂組成物を提供することできることであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例で得られたオーラム組成比
と150℃における曲げ弾性率、熱処理前後の寸法変
化、および半結晶時間との関係の1例を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 3/04 C08K 3/04 3/34 3/34 7/14 7/14 (72)発明者 木戸 敬恭 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 (72)発明者 吉村 正司 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 (72)発明者 吉田 育紀 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 (72)発明者 柳原 香弥子 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 (72)発明者 及川 英明 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 (72)発明者 木場 友人 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 Fターム(参考) 4F072 AA02 AA03 AA05 AA07 AA09 AB08 AB09 AB10 AB11 AD45 AE06 AE23 AE25 AF01 AF02 AF03 AF04 AF06 AL11 AL16 4J002 CM04W CM04X DA016 DA036 DE106 DE136 DE146 DE186 DE236 DJ006 DJ046 DJ056 DK006 DL006 FA046 FA066 FA076 FA086 FD016 GM00 GN01 GQ00 4J043 PA04 PB08 PB15 RA35 SA06 SB03 TA14 TA22 TB01 UA122 UA141 UA151 UB131 UB402 VA021 VA061 VA081 ZB51

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学式(1)(化1)で表される繰り返
    し単位を有するポリイミド(ポリイミド(1))5〜6
    0重量%と、化学式(2)(化1)の繰り返し単位を有
    するポリイミド(ポリイミド(2))40〜95重量%
    を含有してなるポリイミド樹脂組成物であって、ポリイ
    ミド(2)の分子末端が、化学式(3)(化1)、及び
    /又は、化学式(4)(化1)で構成され、かつ、ポリ
    イミド(2)の、数式(1)[数1]により計算される
    溶融粘度比MRが、数式(2)[数2]に示される数値
    範囲にあることを特徴とする、ポリイミド樹脂組成物。 【化1】 (化学式(3)において、Vは、1価の芳香族基であ
    り、化学式(4)において、Tは、2価の芳香族基であ
    る。) [数1] MR = MV30 ÷ MV5 (1) (数式(1)において、MV5は、試料を420℃で5
    分間保持して溶融させ、30〜500[sec-1]の範
    囲の剪断速度で測定した溶融粘度([Pa・sec])
    であり、MV30は、試料を420℃で30分間保持して
    溶融させ、30〜500[sec-1]の範囲の剪断速度
    で測定した溶融粘度([Pa・sec])である。) [数2] 1.0 ≦ MR ≦ 2.0 (2) (数式(2)において、MRは、数式(1)により計算
    される溶融粘度比である。)
  2. 【請求項2】 化学式(3)(化1)において、1価の
    芳香族基Vが、化学式(タ)〜(ウ)(化2)からなる
    1価芳香族基群から選択される少なくとも一つであり、
    及び/又は、化学式(4)(化1)において、2価の芳
    香族基Tが、化学式(ヰ)〜(ヤ)(化2)からなる2
    価芳香族基群から選択される少なくとも一つであること
    を特徴とする、請求項1に記載した、ポリイミド樹脂組
    成物。 【化2】
  3. 【請求項3】 化学式(3)(化1)における1価の芳
    香族基V、及び、化学式(4)(化1)における2価の
    芳香族基Tの芳香族環の水素原子の少なくとも一部が、
    化学式(I)〜(XII)(化3)からなる置換基群から
    選択される少なくとも一つの置換基で置換されたもので
    あることを特徴とする、請求項1又は2に記載した、ポ
    リイミド樹脂組成物。 【化3】
  4. 【請求項4】 ポリイミド(2)の溶融粘度MV5が、
    数式(3)[数3]に示される数値範囲にあることを特
    徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載した、ポリイ
    ミド樹脂組成物。 [数3] 2×102[Pa・sec]≦MV5 ≦5×103[Pa・sec] (3) (数式(3)において、MV5は、試料を420℃で5
    分間保持して溶融させ、30〜500[sec-1]の範
    囲の剪断速度で測定した溶融粘度である。)
  5. 【請求項5】 ポリイミド(2)の対数粘度ηinhが、
    数式(4)[数4]示される数値範囲にあることを特徴
    とする、請求項1乃至4の何れかに記載したポリイミド
    樹脂組成物。 [数4] 0.6[dl/g]≦ ηinh[dl/g] ≦1.3[dl/g] (4) (数式(4)において、ηinhは、p−クロロフェノー
    ル90重量%/フェノール10重量%混合溶媒に、試料
    を0.5重量%で溶解し、35℃で測定したときの対数
    粘度である。)
  6. 【請求項6】 半結晶化時間が、0.5分以下であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載したポリ
    イミド樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6の何れかに記載した樹脂
    組成物100重量部に対し、充填材1〜100重量部を
    含有することを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至6の何れかに記載した樹脂
    組成物100重量部に対し、充填材5〜70重量部を含
    有することを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 充填材が、炭素繊維、カーボンブラッ
    ク、マイカ、タルクおよびガラス繊維からなる群から選
    択された少なくとも一種であることを特徴とする、請求
    項7又は8に記載したポリイミド樹脂組成物。
  10. 【請求項10】 充填材が、炭素繊維および/またはカ
    ーボンブラックであることを特徴とする、請求項7又は
    8に記載したポリイミド樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 請求項1乃至10の何れかに記載した
    ポリイミド樹脂組成物を含有してなる成形品。
  12. 【請求項12】 昇温速度10℃/分、測定温度範囲2
    0〜420℃で示差走査熱量測定(DSC)をしたとき
    に、260〜300℃において結晶化発熱ピークが観察
    されないことを特徴とする請求項11に記載した成形
    品。
  13. 【請求項13】 成形品が、ICトレーである請求項1
    1又は12に記載した成形品。
  14. 【請求項14】 成形品が、電気・電子部品である請求
    項11又は12に記載した成形品。
  15. 【請求項15】 成形品が、事務機器部品である請求項
    11又は12に記載した成形品。
  16. 【請求項16】 成形品が、自動車部品である請求項1
    1又は12に記載した成形品。
  17. 【請求項17】 成形品が、産業機械部品である請求項
    11又は12に記載した成形品。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004026944A (ja) * 2002-06-24 2004-01-29 Mitsui Chemicals Inc 熱可塑性ポリイミド樹脂組成物
JP2006326892A (ja) * 2005-05-24 2006-12-07 Toray Ind Inc プリフォーム用バインダー組成物、プリフォーム用強化繊維基材、プリフォームの製造方法および繊維強化複合材料の製造方法
JP2007254676A (ja) * 2006-03-24 2007-10-04 Toho Tenax Co Ltd 繊維強化プリプレグ及びそれから得られる複合材料

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