JP2003257479A - 非水電解液およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents

非水電解液およびそれを用いたリチウム二次電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 過充電防止効果が高く、かつ高温保存特性
に優れ、リチウム二次電池用として好適な非水電解液の
提供。 【解決手段】フッ素原子置換芳香族化合物、炭素と水素
のみからなる芳香族炭化水素化合物、非水溶媒およびリ
チウム含有電解質からなる非水電解液。フッ素原子置換
芳香族化合物は電解液中0.1〜20重量%、芳香族炭
化水素化合物は0.1〜3重量%含有される。フッ素原
子置換芳香族化合物がフッ素原子置換ナフタレン類、フ
ルオレン類又はビフェニル類である電解液、また芳香族
炭化水素化合物がアルキル基又はシクロヘキシル基置換
ベンゼン類やビフェニル類である電解液は好ましい態様
である。電解液は更にビニレンカ−ボネ−ト類、アルケ
ニルエチレンカ−ボネ−ト類、不飽和炭化水素基含有ス
ルトン類、アリール基含有スルホン酸エステル、飽和炭
化水素基含有スルトン類、スルホン酸イミドの添加で高
温保存特性を向上できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過充電防止効果を
有し、かつ高温保存特性に優れた非水電解液、およびそ
れを用いた過充電時の安全性に優れたリチウム二次電池
に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】非水電解液を用いた電池は、高電
圧でかつ高エネルギ−密度を有しており、また貯蔵性な
どの信頼性も高いので、民生用電子機器の電源として広
く用いられている。
【0003】そのような電池は二次電池としても製造さ
れており、その代表例はリチウムイオン二次電池であ
る。この電池は、リチウムを吸蔵、放出が可能な活物質
を含む負極と、リチウムと遷移金属との複合酸化物を含
む正極と、電解液などから構成されている。電解液に
は、プロピレンカ−ボネ−トやエチレンカ−ボネ−トな
どの高誘電率カ−ボネ−ト溶媒と、ジエチルカ−ボネ−
ト、メチルエチルカ−ボネ−トやジメチルカ−ボネ−ト
などの低粘度カ−ボネ−ト溶媒との混合溶媒に、LiB
、LiPFなどのリチウム電解質を混合した溶液
が用いられている。
【0004】ところで、リチウムイオン二次電池の熱安
定性は、電池の充電状態に関連していることが報告され
ている。電池を規定電圧値以上に充電すると、すなわち
過充電すると、負極上に金属リチウムが析出したり、あ
るいは正極の酸化度が高まって、電解液との化学反応が
起こりやすくなり、電池の熱安定性が低下する。熱安定
性が低下した電池を高温条件下におくと、自己発熱反応
によって熱暴走が起こることが考えられるので、電池を
過充電させないことが重要である。
【0005】そこで、特開平9−171840号、特開
2000−58116号、特開2001−15155号
公報などでは、ビフェニル類やアルキルベンゼン類を添
加した電解液の使用を提案している。また、特開平11
−162512号公報には2個の芳香族基で置換された
アルキル化合物やフッ素原子置換芳香族化合物類など
が、高温特性が改良された過充電防止剤として提案され
ている。
【0006】ビフェニル類、アルキルベンゼン類、芳香
族基で置換されたアルキル化合物やフッ素原子置換芳香
族化合物類は、リチウム電池に使用される一般的な溶媒
に比べて酸化電位が低いため、これらを添加した電解液
は、電気分解され易くなる。このため、電池が過充電さ
れる代わりに、電解液が電気分解されるため、過充電を
防止する効果がある。以降、このような機能を有する化
合物を過充電防止剤と呼ぶ。
【0007】一方で、過充電防止剤は、酸化電位が低い
ために、通常の使用状態で高温の条件でも、少量ながら
も電気分解が起り、高温保存特性が低下することがあ
る。すなわち、過充電防止剤を添加した電解液におい
て、過充電防止作用と高温保存特性はトレードオフの関
係にある。
【0008】例えば、本発明者らの検討によると、前記
したビフェニル類やアルキルベンゼン類は、室温におけ
る電池特性に及ぼす影響は小さいが、4.2Vの電圧で
85℃以上の高温にすると、電池特性が大幅に低下する
実験結果が得られている。また、例えば、本発明者らの
検討によると、フッ素原子置換芳香族化合物類は、ビフ
ェニルに比較して、高温保存特性が若干改善されたもの
の、過充電の防止作用が低くなる実験結果が得られてい
る。これは、フッ素原子置換芳香族化合物類が、ビフェ
ニル類やアルキルベンゼン類よりも酸化電位が若干高い
ため、高温条件下での電気分解は起り難くなったもの
の、電池を過充電状態にしたときにも電気分解が起り難
くなり、過充電の防止作用が低くなったものと思われ
る。
【0009】また、特開平11−162512号公報で
は、フッ素原子置換芳香族化合物類の添加量は、2.5
重量%で十分であると記されている。しかし、本発明者
らの検討によると、前述のように、フッ素原子置換芳香
族化合物類は、ビフェニルに比較して、過充電の防止作
用が若干低いため、フッ素原子置換芳香族化合物類のみ
で過充電時の電池の安全性を高めるためには、添加量を
3重量%以上にすることが必要であり、その場合には、
フッ素原子置換芳香族化合類を使用したとしても、高温
下での電池特性の劣化が大きくなる。
【0010】また、電池の高温保存特性を改善する方法
として、ビニレンカーボネート類(特許3066126
号)やアルケニルエチレンカーボネート類(特開200
1−57232号公報)やスルトン類(特開平10−5
0342号公報)、芳香族スルホン酸エステル類(特開
2002−158035号公報)を電解液に添加するこ
とが報告されている。これらの方法を、さらに過充電防
止剤を添加した電解液に適用することにより、過充電防
止剤の高温保存特性を改良することが考えられる。とこ
ろが、本発明者の検討によると、過充電防止剤としてビ
フェニルを使用した電池に、これらの添加剤を使用して
も、高温保存特性の改善作用がほとんどなかった。
【0011】
【特許文献1】特開平11−162512号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたように、過
充電防止特性に優れ、高温保存特性に優れた非水電解
液、およびリチウム二次電池はまだ得られていない。そ
こで本発明は、過充電防止効果が高く、かつ高温保存特
性に優れた非水電解液の提供を目的にする。また本発明
は、そのような非水電解液を含み、過充電時の安全性を
高めた二次電池の提供を目的にする。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、フッ
素原子置換芳香族化合物、炭素原子と水素原子のみから
なる芳香族炭化水素化合物、その他の非水溶媒およびリ
チウム含有電解質とからなる電解液であって、フッ素原
子置換芳香族化合物は電解液中に0.1〜20重量%、
また芳香族炭化水素化合物は電解液中に0.1〜3重量
%含有されている非水電解液を提供する。
【0014】前記のフッ素原子置換芳香族化合物が、フ
ッ素原子置換ナフタレン類、フッ素原子置換フルオレン
類、およびフッ素原子置換ビフェニル類からなる群から
選ばれる少なくとも1種の化合物である前記非水電解液
は、本発明の好ましい態様である。
【0015】前記の芳香族炭化水素化合物が、アルキル
基またはシクロアルキル基置換ベンゼン類およびビフェ
ニル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物
である前記非水電解液は、本発明の好ましい態様であ
る。
【0016】また本発明は、前記の電解液が、さらに下
記一般式(1)で示されるビニレンカ−ボネ−ト類、下
記一般式(2)で示されるアルケニルエチレンカ−ボネ
−ト類、および下記一般式(3)で示される不飽和炭化
水素基を有するスルトン類、下記一般式(4)で表され
るアリール基を有するスルホン酸エステル、飽和炭化水
素基を有するスルトン類、およびスルホン酸イミドから
なる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、電解液
中に0.01〜10重量%含有している非水電解液を提
供する。これらを、フッ素原子置換芳香族化合物、炭素
原子と水素原子のみからなる芳香族炭化水素化合物の混
合物と併用した場合は、高温保存特性を大幅に改良する
ことができる。
【0017】
【化5】 [式(1)において、RおよびRは、互いに同一で
あってもよいし異なっていてもよく、水素原子、ハロゲ
ン原子または炭素数が1〜12のハロゲン原子を含んで
いてもよいアルキル基を表す。]
【0018】
【化6】 [式(2)において、R〜Rは、互いに同一であっ
てもよいし異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原
子、炭素数が1〜12のハロゲン原子を含んでいてもよ
い炭化水素基、または炭素数が2〜12のアルケニル基
であって、その内少なくとも一つは炭素数が2〜12ア
ルケニル基である。]
【0019】
【化7】 [式(3)において、R〜R10は、互いに同一であ
ってもよいし異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン
原子、または炭素数が1〜12のハロゲン原子を含んで
いてもよいアルキル基であって、nは0から3の整数で
ある。]
【0020】
【化8】 [式(4)において、R11〜R16は、互いに同一で
あってもよいし異なっていてもよく、水素原子、リチウ
ム原子、ハロゲン原子、スルホン酸エステル基、カルボ
ン酸エステル基、スルホン酸リチウム基、および炭素数
1〜12のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基
からなる群から選ばれる原子または基である。]
【0021】さらに本発明は、負極、正極および電解液
を含む二次電池であって、電解液が前記した非水電解液
であるリチウム二次電池を提供する。
【0022】また本発明は、電池内部のガス圧力が所定
値以上になると充電を遮断する電流遮断機構を備えてい
る前記のリチウム二次電池を提供する。
【0023】またさらに本発明は、電池の温度が所定値
以上になると充電を遮断する電流遮断機構を備えている
前記のリチウム二次電池を提供する。
【0024】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る非水電解液お
よびその非水電解液を用いたリチウム二次電池につい
て、その構成を具体的に説明する。本発明の非水電解液
は、フッ素原子置換芳香族化合物、炭素原子と水素原子
のみからなる芳香族炭化水素化合物、その他の非水溶媒
およびリチウム含有電解質とからなる電解液であって、
フッ素原子置換芳香族化合物は電解液中に0.1〜20
重量%、また芳香族炭化水素化合物は電解液中に0.1
〜3重量%含有されている非水電解液である。このよう
な非水電解液は、優れた過充電防止効果を示すと共に、
高温保存特性の低下を可能な限り抑制することができ
る。
【0025】フッ素原子置換芳香族化合物 本発明に係わる非水電解液の一成分であるフッ素原子置
換芳香族化合物は、過充電防止剤として機能する物質で
あって、芳香族環に結合した水素原子の一部または全部
がフッ素原子で置換された化合物である。ここで芳香族
環を有する化合物とは、π電子の非局在化によって実質
的に安定化される環状化合物を示している。
【0026】そのような化合物の例として、フッ素原子
置換ベンゼン類、フッ素原子置換ナフタレン類、フッ素
原子置デカリン類、フッ素原子置換フルオレン類、フッ
素原子置換ビフェニル類、フッ素原子置換ジフェニルメ
タン類、フッ素原子置換アントラセン類、フッ素原子置
換タ−フェニル類、フッ素原子置換フェニルエ−テル
類、フッ素原子置換チオフェン類、フッ素原子置換フラ
ン類、フッ素原子置換ピロ−ル類、フッ素原子置換イン
ド−ル類、フッ素原子置換ピリジン類などを挙げること
ができる。これらの中でも、フッ素原子置換ナフタレン
類、フッ素原子置換フルオレン類およびフッ素原子置換
ビフェニル類が、過充電防止効果が高く、かつ高温条件
下でも電池特性の劣化が比較的に小さいために好まし
く、特にフッ素原子置換ビフェニル類がより好ましい。
これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上
を組み合わせて用いてもよい。
【0027】次に、フッ素原子置換ナフタレン類の具体
例を挙げる。 (1)フッ素原子置換ナフタレン類:1−フルオロナフ
タレン、2−フルオロナフタレン、3−フルオロナフタ
レン、1,2−ジフルオロナフタレン、1,3−ジフル
オロナフタレン、1,4−ジフルオロナフタレン、1,
5−ジフルオロナフタレン、1,6−ジフルオロナフタ
レン、1,7−ジフルオロナフタレン、1,8−ジフル
オロナフタレン、2,3−ジフルオロナフタレン、2,
6−ジフルオロナフタレン、2,7−ジフルオロナフタ
レン、1,3,5−トリフルオロナフタレン、1,3,
7−トリフルオロナフタレン、1,3,5,7−テトラ
フルオロナフタレン、ペンタフルオロナフタレン、ヘキ
サフルオロナフタレン、ヘプタフルオロナフタレン、パ
−フルオロナフタレン
【0028】(2)アルキル基およびフッ素原子置換ナ
フタレン類:1−フルオロ−3−メチルナフタレン (3)アルキルオキシ基およびフッ素原子置換ナフタレ
ン類:1−フルオロ−3−メトキシナフタレン (4)塩素原子およびフッ素原子置換ナフタレン類:1
−フルオロ−3−クロロナフタレン これらのフッ素原子置換ナフタレン類において、その1
分子当りのフッ素原子置換数は、2〜4個が望ましい。
フッ素原子置換数が前記の範囲内にあると、優れた過充
電防止効果を生じると共に、高温保存下での電池特性の
劣化が小さくなる。
【0029】次に、フッ素原子置換フルオレン類の具体
例を挙げる。 (1)フッ素原子置換フルオレン類:1−フルオロフル
オレン、2−フルオロフルオレン、3−フルオロフルオ
レン、4−フルオロフルオレン、9−フルオロフルオレ
ン、1,2−ジフルオロフルオレン、1,3−ジフルオ
ロフルオレン、1,4−ジフルオロフルオレン、1,5
−ジフルオロフルオレン、1,6−ジフルオロフルオレ
ン、1,7−ジフルオロフルオレン、1,8−ジフルオ
ロフルオレン、2,3−ジフルオロフルオレン、2,6
−ジフルオロフルオレン、2,7−ジフルオロフルオレ
ン、2,8−ジフルオロフルオレン、3,4−ジフルオ
ロフルオレン、3,5−ジフルオロフルオレン、3,6
−ジフルオロフルオレン、4,5−ジフルオロフルオレ
ン、9,9−ジフルオロフルオレン、1,3,5−トリ
フルオロフルオレン、2,3,7−トリフルオロフルオ
レン、1,3,5,7−テトラフルオロフルオレン、ペ
ンタフルオロフルオレン、ヘキサフルオロフルオレン、
ヘプタフルオロフルオレン、パ−フルオロフルオレン
【0030】(2)アルキル基およびフッ素原子置換フ
ルオレン類:1−フルオロ−3−メチルフルオレン (3)アルキルオキシ基およびフッ素原子置換フルオレ
ン類:1−フルオロ−3−メトキシフルオレン (4)塩素原子およびフッ素原子置換フルオレン類:1
−フルオロ−3−クロロフルオレン
【0031】これらのフッ素原子置換フルオレン類にお
いて、その1分子当りのフッ素原子置換数は、2〜4個
が望ましい。フッ素原子置換数がこの範囲にあると、優
れた過充電防止効果が得られ、かつ高温保存下での電池
特性の劣化が小さくなる。
【0032】次に、フッ素原子置換ビフェニル類の具体
例を挙げる。 (1)フッ素原子置換ビフェニル類:2−フルオロビフ
ェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェ
ニル、2,3−ジフルオロビフェニル、2,4−ジフル
オロビフェニル、2,5−ジフルオロビフェニル、2,
6−ジフルオロビフェニル、2,2’−ジフルオロビフ
ェニル、2,3’−ジフルオロビフェニル、2,4’−
ジフルオロビフェニル、2,5’−ジフルオロビフェニ
ル、2,6’−ジフルオロビフェニル、3,3’−ジフ
ルオロビフェニル、3,4’−ジフルオロビフェニル、
3,5’−ジフルオロビフェニル、3,6’−ジフルオ
ロビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル、トリ
フルオロビフェニル、テトラフルオロビフェニル、ペン
タフルオロビフェニル、ヘキサフルオロビフェニル、ヘ
プタフルオロビフェニル、オクタフルオロビフェニル、
ノナフルオロビフェニル、パ−フルオロビフェニル
【0033】(2)アルキル基およびフッ素原子置換ビ
フェニル類 2−フルオロ−4−メチルビフェニル、4−フルオロ−
2−メチルビフェニル、2−フルオロ−2’−メチルビ
フェニル (3)アルキルオキシ基およびフッ素原子置換ビフェニ
ル類 2−フルオロ−4−メトキシビフェニル、4−フルオロ
−2−メトキシビフェニル、2−フルオロ−2’−メト
キシビフェニル (4)塩素原子およびフッ素原子置換ビフェニル類 2−フルオロ−4−クロロビフェニル
【0034】これらのフッ素原子置換ビフェニル類にお
いて、その1分子当りのフッ素原子置換数は、1〜3個
が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさ
らに好ましい。フッ素原子置換数が前記の範囲にある
と、優れた過充電防止効果が得られる。
【0035】フッ素原子モノ置換ビフェニル類の場合、
そのフッ素原子置換位置は、2位置または4位置が望ま
しく、さらには2位置が最も望ましい。2位置が置換さ
れると、フッ素原子の電子吸引効果だけでなく立体効果
によっても、ビフェニルの電気分解電圧がコントロ−ル
され、高温保存下での電池特性の劣化を可能な限り抑制
でき、かつ過充電防止効果を高めることができる。
【0036】フッ素原子ジ置換ビフェニル類の場合、そ
のフッ素原子置換位置は、二つの環の2位置または4位
置が望ましく、さらには4位置および4’位置が最も望
ましい。フッ素原子が前記の置換位置に結合している
と、ビフェニルの電気分解電圧が適度にコントロ−ルさ
れ、高温保存下での電池特性の劣化を抑制し、過充電防
止効果を高めることができる。
【0037】前記したフッ素原子置換ビフェニル類の中
でも、2−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニ
ル、4,4’−ジフルオロビフェニルが好ましく、特に
2−フルオロビフェニルが好ましい。
【0038】芳香族炭化水素化合物 本発明に係わる非水電解液では、その構成成分の一つと
して炭素原子と水素原子のみからなる芳香族炭化水素化
合物を添加する。それによって、フッ素原子置換芳香族
化合物の過充電防止効果をより一層高める効果を得るこ
とができる。そのような芳香族炭化水素化合物として、
ベンゼン類、ビフェニル類、タ−フェニル類、ナフタレ
ン類などを挙げることができ、それらは1種類を用いて
もよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】次に、それら芳香族炭化水素化合物の具体
例を挙げる。 (1)ベンゼン類:ベンゼン、トルエン、キシレン、ク
メン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン (2)ビフェニル類:ビフェニル、2−メチルビフェニ
ル、3−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、2
−エチルビフェニル、2,2’−ジメチルビフェニル (3)タ−フェニル類:オルトタ−フェニル、メタタ−
フェニル、パラタ−フェニル、メチルタ−フェニル (4)ナフタレン類:ナフタレン、1−メチルナフタレ
ン、2−メチルナフタレン
【0040】これらの芳香族炭化水素化合物の中でも、
アルキル基またはシクロアルキル基置換ベンゼン類とビ
フェニル類が好ましく、さらにはシクロヘキシルベンゼ
ンとビフェニルがより好ましく、ビフェニルが最も好ま
しい。これらの化合物を少量添加する場合は、高温保存
時の電池特性の低下を最小限にしつつ、フッ素原子置換
芳香族化合物の過充電防止効果を高めることができる。
【0041】その他の化合物 本発明に係わる非水電解液では、先に記した2成分に加
えて、さらに一般式(1)で示されるビニレンカ−ボネ
−ト類、一般式(2)で示されるアルケニルエチレンカ
−ボネ−ト類、一般式(3)で示される不飽和炭化水素
基を有するスルトン類、一般式(4)で表されるアリー
ル基を有するスルホン酸エステル、飽和炭化水素基を有
するスルトン類、およびスルホン酸イミドからなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の化合物を加えることが望ま
しい。
【0042】過充電防止剤が、先に示した2成分の場合
は、上述の化合物を加えることで、過充電防止剤を添加
することで起こる高温保存時の電池特性の低下を大幅に
抑制することができる。上述の化合物として、次に記す
化合物を例示することができる。それらは単独で用いて
もよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 (1)一般式(1)で示されるビニレンカ−ボネ−ト類 (2)一般式(2)で示されるアルケニルエチレンカ−
ボネ−ト類 (3)一般式(3)で示される不飽和炭化水素基を有す
るスルトン類 (4)一般式(4)で表されるアリール基を有するスル
ホン酸エステル (5)飽和炭化水素基を有するスルトン類 (6)スルホン酸イミド
【0043】ビニレンカ−ボネ−ト類は、次に示す一般
式(1)で表される。
【化9】
【0044】式(1)において、RおよびRは、互
いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原
子、ハロゲン原子、または炭素数が1〜12のハロゲン
原子を含んでいてもよいアルキル基を表す。ハロゲン原
子としては、フッ素原子または塩素原子が好ましく、さ
らにはフッ素原子がより好ましい。
【0045】式(1)で表されるビニレンカ−ボネ−ト
類の具体例として、ビニレンカ−ボネ−ト、フルオロビ
ニレンカ−ボネ−ト、メチルビニレンカ−ボネ−ト、フ
ルオロメチルビニレンカ−ボネ−ト、エチルビニレンカ
−ボネ−ト、プロピルビニレンカ−ボネ−ト、ブチルビ
ニレンカ−ボネ−ト、ジメチルビニレンカ−ボネ−ト、
ジエチルビニレンカ−ボネ−ト、ジプロピルビニレンカ
−ボネ−トなどを挙げることができる。これらの化合物
の内、ビニレンカ−ボネ−トが最も望ましい。
【0046】アルケニルエチレンカ−ボネ−ト類は、次
に示す一般式(2)で表される。
【化10】
【0047】式(2)において、R〜Rは、互いに
同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子、
ハロゲン原子、炭素数が1〜12のハロゲン原子を含ん
でいてもよい炭化水素基、または、炭素数が2〜12の
アルケニル基であって、R〜Rの内の少なくとも一
つは炭素数が2〜12アルケニル基である。アルケニル
基の例として、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ブ
テニル基などを挙げることができる。
【0048】式(2)で表されるアルケニルエチレンカ
−ボネ−ト類の具体例として、ビニルエチレンカ−ボネ
−ト、プロペニルエチレンカ−ボネ−ト、4,4−ジビ
ニルエチレンカ−ボネ−ト、4,5−ジビニルエチレン
カ−ボネ−ト、4−メチル−4−ビニルエチレンカ−ボ
ネ−ト、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカ−ボネ−
ト、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4−メチル−5−ビニルエチレンカ−ボネ−ト、4−エ
チル−4−ビニルエチレンカ−ボネ−トなどを挙げるこ
とができる。これら化合物の内、ビニルエチレンカ−ボ
ネ−トおよびジビニルエチレンカ−ボネ−トが最も望ま
しい。
【0049】不飽和炭化水素基を有するスルトン類は、
次に示す一般式(3)で表される。
【化11】
【0050】式(3)において、R〜R10は、互い
に同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原
子、ハロゲン原子、または炭素数が1〜12のハロゲン
原子を含んでいてもよいアルキル基であって、nは0か
ら3の整数である。
【0051】式(3)で表される不飽和炭化水素基を有
するスルトン類の具体例として、エチレンスルトン、
1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン、
1,5−ペンテンスルトン、1−メチル−1,3−プロ
ペンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロペンスルト
ン、2−メチル−1,3−プロペンスルトン、3−メチ
ル−1,3−プロペンスルトン、1−トリフルオロメチ
ル−1,3−プロペンスルトンなどを挙げることができ
る。これらの化合物のうちでも、1,3−プロペンスル
トンおよび1,4−ブテンスルトンが最も望ましい。
【0052】アリール基を有するスルホン酸エステルと
しては、次に示す一般式(4)のものが例示される。
【化12】
【0053】式(4)において、R11〜R16は、互いに
同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子、
リチウム原子、ハロゲン原子、スルホン酸エステル基、
カルボン酸エステル基、スルホン酸リチウム基、および
炭素数1〜12のハロゲン原子を含んでいてもよいアル
キル基からなる群から選ばれる原子または基である。
【0054】式(4)で表されるアリール基を有するス
ルホン酸エステル類の具体例として、ベンゼンスルホン
酸エチル、ベンゼンジ(スルホン酸メチル)、ベンゼン
ジ(スルホン酸エチル)、ベンゼンジ(スルホン酸プロ
ピル)、ベンゼン(スルホン酸メチル)(スルホン酸エ
チル)、ベンゼンジ(スルホン酸アリル)、ベンゼンジ
(スルホン酸ビニル)、ベンゼンジ(スルホン酸エチニ
ル)、ベンゼントリ(スルホン酸メチル)、スルホ安息
香酸無水物、スルホ安息香酸ジメチル、トルエンスルホ
ン酸メチル、トルエンジ(スルホン酸エチル)、トルエ
ントリ(スルホン酸プロピル)、トリフルオロメチルベ
ンゼンスルホン酸メチル、トリフルオロメチルベンゼン
ジ(スルホン酸メチル)、トリフルオロメチルベンゼン
トリ(スルホン酸エチル)、ナフタレンスルホン酸リチ
ウム塩、ベンゼンスルホン酸リチウム塩、トリフルオロ
メチルベンゼンスルホン酸リチウム塩、ベンゼンジスル
ホン酸ジリチウム塩、トリフルオロメチルベンゼンジス
ルホン酸ジリチウム塩、ベンゼントリスルホン酸トリリ
チウム塩、スルホ安息香酸ジリチウム塩、トルエンスル
ホン酸リチウム塩、トルエンジスルホン酸ジリチウム塩
などを挙げることができる。これらの化合物の中でも、
ベンゼンジ(スルホン酸エステル)が好ましく、特にメ
タ位置置換のベンゼンジ(スルホン酸エステル)が好ま
しい。
【0055】飽和炭化水素基を有するスルトン類とし
て、1、3―プロパンスルトン、1、4―ブタンスルト
ン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスル
トン、1−メチルー1、3―プロパンスルトン、2―メ
チル1、3―プロパンスルトン、3―メチル1、3―プ
ロパンスルトン、1―メチル−1、4―ブタンスルト
ン、2―メチル−1、4―ブタンスルトン、3―メチル
−1、4―ブタンスルトン、4―メチル−1、4―ブタ
ンスルトンなどを例示することができる。これらのうち
で、1、3―プロパンスルトンと1、4―ブタンスルト
ンが望ましい。
【0056】スルホン酸イミドとして、N−メチル−ジ
(メタンスルホン酸)イミド、N,N−ジメチル−メタ
ンスルホン酸イミド、トリス(トリフルオロメタンスル
ホン酸)イミド、N−メチル−ジ(トリフルオロメタン
スルホン酸)イミド、ジ(トリフルオロメタンスルホン
酸)イミドリチウム塩、N,N−ジメチル−トリフルオ
ロメタンスルホン酸イミド、N−エチル−ジ(トリフル
オロメタンスルホン酸)イミド、N,N−ジエチル−ト
リフルオロメタンスルホン酸イミド、N−メチル−ジ
(ペンタフルオロエタンスルホン酸)イミド、ジ(ペン
タフルオロエタンスルホン酸)イミドリチウム塩、N,
N−ジメチル−ペンタフルオロエタンスルホン酸イミ
ド、N−メチル−ジ(パーフルオロプロパンスルホン
酸)イミド、N,N−ジメチル−パーフルオロプロパン
スルホン酸イミド、N−メチル−ジ(パーフルオロブタ
ンスルホン酸)イミド、N,N−ジメチル−パーフルオ
ロブタンスルホン酸イミドなどを例示することができ
る。
【0057】これらの化合物の中でも、ジ(トリフルオ
ロメタンスルホン酸)イミド類、ジ(ペンタフルオロエ
タンスルホン酸)イミド類が好ましく、特にジ(トリフ
ルオロメタンスルホン酸)イミドリチウム塩やジ(ペン
タフルオロスルホン酸)イミドリチウム塩は、電解質と
しても作用し、電解液のイオン伝導性を向上させるので
望ましい。
【0058】前記した化合物のうち、一般式(1)で表
されるビニレンカ−ボネ−ト類、および一般式(3)で
表される不飽和炭化水素基を有するスルトン類が望まし
い。具体的には、ビニレンカーボネートと1,3−プロ
ペンスルトンが好ましい。
【0059】また、一般式(1)で表されるビニレンカ
−ボネ−ト類と、一般式(3)で表される不飽和炭化水
素基を有するスルトン類とを同時に添加すると、高温保
存性の効果が相乗して加わるために好ましく、その一例
としてビニレンカーボネートと1,3−プロペンスルト
ンとの組み合わせを挙げることができる。
【0060】その他の非水溶媒 本発明に係わる非水電解液は、非水溶媒と電解質とから
基本的に構成されており、その非水溶媒は、前記したフ
ッ素原子置換芳香族化合物、および炭素原子と水素原子
のみからなる芳香族炭化水素化合物に加えて、通常使用
されている非水溶媒を用いる。ここでは、「通常使用さ
れている非水溶媒」を「その他の非水溶媒」と呼び、次
に具体的に説明する。
【0061】使用可能なその他の非水溶媒として、環状
の非プロトン性溶媒および/または鎖状の非プロトン性
溶媒を挙げることができる。その内、環状の非プロトン
性溶媒としては、エチレンカ−ボネ−トのような環状カ
−ボネ−ト、γ−ブチロラクトンのような環状エステ
ル、スルホランのような環状スルホン、ジオキソランの
ような環状エ−テルを例示することができる。また鎖状
の非プロトン性溶媒としては、ジメチルカ−ボネ−トの
ような鎖状カ−ボネ−ト、プロピオン酸メチルのような
鎖状カルボン酸エステル、ジメトキシエタンのような鎖
状エ−テルを例示することができる。
【0062】電池の負荷特性や低温特性の向上を特に意
図した場合には、環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プ
ロトン性溶媒とを混合して用いることが望ましい。ま
た、電解液の電気化学的安定性を重視する場合には、環
状の非プロトン性溶媒として環状カ−ボネ−トを、鎖状
の非プロトン性溶媒として鎖状カ−ボネ−トを選択して
混合使用することが望ましい。
【0063】環状カ−ボネ−トの例として、エチレンカ
−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト、1,2−ブチレ
ンカ−ボネ−ト、2,3−ブチレンカ−ボネ−ト、1,
2−ペンチレンカ−ボネ−ト、2,3−ペンチレンカ−
ボネ−トを挙げることができる。誘電率の高いエチレン
カ−ボネ−トとプロピレンカ−ボネ−トは、好適であ
る。負極活物質に黒鉛を使用する場合には、特にエチレ
ンカ−ボネ−トが好ましい。これら環状カ−ボネ−ト
は、2種類以上を混合使用してもよい。
【0064】鎖状カ−ボネ−トの例として、ジメチルカ
−ボネ−ト、メチルエチルカ−ボネ−ト、ジエチルカ−
ボネ−ト、メチルプロピルカ−ボネ−ト、メチルイソプ
ロピルカ−ボネ−ト、ジプロピルカ−ボネ−ト、メチル
ブチルカ−ボネ−ト、ジブチルカ−ボネ−ト、エチルプ
ロピルカ−ボネ−ト、メチルトリフルオロエチルカ−ボ
ネ−トを挙げることができる。粘度の低いジメチルカ−
ボネ−ト、メチルエチルカ−ボネ−ト、ジエチルカ−ボ
ネ−トは好適に使用できる。これら鎖状カ−ボネ−ト
は、2種類以上を混合使用してもよい。
【0065】環状カ−ボネ−トと鎖状カ−ボネ−トとの
混合割合(環状カ−ボネ−ト:鎖状カ−ボネ−ト)は、
重量比で表して、好ましくは1:99〜99:1、より
好ましくは5:95〜70:30、さらに好ましくは1
0:90〜60:40である。このような混合割合の範
囲内であると、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解
離度を高めることができるので、電池の充放電特性に関
わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0066】一方、電池の火災安全性向上の観点から溶
媒の引火点を高くする場合には、その他の非水溶媒とし
て、環状の非プロトン性溶媒を単独で使用するか、ある
いは鎖状の非プロトン性溶媒の混合割合をその他の非水
溶媒全体に対して20重量%以下に調整することが望ま
しい。
【0067】この場合の環状の非プロトン性溶媒として
は、特に、エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ
−ト、スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチルオ
キサゾリノンから選ばれる1種またはこれらを組み合わ
せて用いることが望ましい。具体的な溶媒の組み合わせ
としては、エチレンカ−ボネ−トとスルホラン、エチレ
ンカ−ボネ−トとプロピレンカ−ボネ−ト、エチレンカ
−ボネ−トとγ−ブチロラクトン、エチレンカ−ボネ−
トとプロピレンカ−ボネ−トとγ−ブチロラクトンを挙
げることができる。
【0068】鎖状の非プロトン性溶媒をその他の非水溶
媒全体に対して20重量%以下の割合で使用する場合に
は、鎖状の非プロトン性溶媒として、鎖状カ−ボネ−
ト、鎖状カルボン酸エステル、鎖状リン酸エステルを使
用することができる。特に、ジメチルカ−ボネ−ト、ジ
エチルカ−ボネ−ト、ジプロピルカ−ボネ−ト、ジブチ
ルカ−ボネ−ト、ジヘプチルカ−ボネ−ト、ジオクチル
カーボネート、メチルエチルカ−ボネ−ト、メチルプロ
ピルカ−ボネ−ト、メチルブチルカ−ボネ−ト、メチル
ヘプチルカ−ボネ−ト、メチルオクチルカーボネートな
どの鎖状カ−ボネ−トが望ましい。環状カ−ボネ−トと
鎖状カ−ボネ−トとの混合割合(環状カ−ボネ−ト:鎖
状カ−ボネ−ト)は、重量比で表して、80:20〜9
9.5:0.5が望ましく、さらには90:10〜9
9:1が望ましい。
【0069】その他の非水溶媒には、本発明の目的から
逸脱しない範囲内で前記以外の溶媒を含んでいてもよ
い。そのような溶媒としては、具体的には、ジメチルホ
ルムアミドなどのアミド類、メチル−N,N−ジメチル
カ−バメ−トなどの鎖状カ−バメ−ト類、N−メチルピ
ロリドンなどの環状アミド類、N,N−ジメチルイミダ
ゾリジノンなどの環状ウレア類、ほう酸トリメチル、ほ
う酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチ
ル、ほう酸トリ(トリメチルシリル)などのホウ酸エス
テル類、、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン
酸トリス(トリメチルシリル)のような鎖状リン酸エス
テルおよびエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、ジエ
チレングリコ−ルジメチルエ−テル、ポリエチレングリ
コ−ルジメチルエ−テルのようなエチレングリコ−ル誘
導体などを例示することができる。
【0070】リチウム含有電解質 本発明の非水電解液に使用可能なリチウムを含有する電
解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用さ
れているものであれば、特に制限されることなくいずれ
をも使用することができる。
【0071】電解質の具体例として、LiPF、Li
BF、LiClO、LiAsF 、LiSi
、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の
整数)、LiPF{C(2k+1)(6−n)
(n=1〜5の整数、k=1〜8の整数)などのリチウ
ム塩が挙げられる。
【0072】また、次の一般式で示されるリチウム塩も
使用することができる。すなわち、LiC(SO
17)(SO18)(SO19)、LiN(S
OR20)(SOOR21)、LiN(SO
22)(SOOR23)、LiN(SO24
(SO25)。ここで、R17〜R25は、互いに
同一であってもよいし異なっていてもよく、炭素数1〜
8のパ−フルオロアルキル基である。これらの内、特
に、LiPF、LiBF、およびLiN(SO
24)(SO25)が好ましい。
【0073】なお、ここで例示した化合物の中には前記
したスルホン酸イミドと部分的に重複しているものがあ
るが、それらの化合物は、電解質として作用すると同時
に、非水電解液の高温条件下における電池特性の劣化を
抑制する効果を併せ持っているので、いずれの目的で使
用してもよく、リチウム含有電解質として使用すること
が望ましい。
【0074】これらのリチウム塩は単独で使用してもよ
いし、また2種類以上を混合して使用してもよい。2種
類以上を混合して使用する組み合わせとしては、LiP
とLiBF、LiPFとLiN(SO
24)(SO25)、LiBFとLiN(S
24)(SO25)、およびLiPFとL
iBF とLiN(SO24)(SO25)が
例示される。
【0075】非 水 電 解 液 本発明に係わる非水電解液は、その構成成分として、フ
ッ素原子置換芳香族化合物、炭素原子と水素原子のみか
らなる芳香族炭化水素化合物、およびその他の非水溶媒
とを含む非水溶媒、およびリチウム含有電解質とを少な
くとも含有している。
【0076】フッ素原子置換芳香族化合物の含有量は、
電解液全体に対して0.1〜20重量%、好ましくは
0.5〜20重量%、さらに好ましくは3〜20重量
%、さらには3〜10重量%が望ましい。この範囲内で
あると、高い過充電防止効果が得られると共に、高温保
存特性の低下が最小限に抑えられ、また電解液のリチウ
ムイオン伝導度の低下がほとんどないので電池の負荷特
性を良好に保つことができる。
【0077】炭素原子と水素原子のみからなる芳香族炭
化水素化合物の含有量は、電解液全体に対して0.1〜
3重量%、好ましくは0.1〜2重量%、より好ましく
は0.1〜1重量%が望ましい。この範囲内であると、
フッ素原子置換芳香族化合物との相乗効果によって、優
れた過充電防止効果が得られ、また高温保存時の電池特
性の低下も最小限に抑制される。
【0078】またリチウム含有電解質は、好ましくは
0.1〜3モル/リットル、より好ましくは0.5〜2
モル/リットルの濃度で非水電解液中に含まれているこ
とが望ましい。それによって、良好な負荷特性、低温特
性などの電気特性を得ることができる。
【0079】本発明に係わる非水電解液の一態様とし
て、前記したフッ素原子置換芳香族化合物、炭素原子と
水素原子のみからなる芳香族炭化水素化合物、その他の
非水溶媒および電解質を含む基本構成に加えて、さらに
前述の「その他の化合物」を添加した構成へと変えるこ
とができる。その含有量は、電解液全体に対して、好ま
しくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05
〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%が望ま
しい。添加量がこの範囲内にあると、前記した過充電防
止剤を添加したときに起る高温保存時における電池特性
の低下を大幅に抑制することができる。
【0080】前述した構成の本発明に係る非水電解液
は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適である
ばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャ
パシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタやアルミ
電解コンデンサ用の非水電解液としても用いることがで
きる。
【0081】二 次 電 池 本発明に係るリチウム二次電池は、負極、正極、それら
を互いに分離するセパレ−タ−、および前記した非水電
解液とから基本的に構成されている。
【0082】負極を構成する負極活物質としては、金属
リチウム、リチウム含有合金、またはリチウムとの合金
化が可能なシリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金、
リチウムイオンのド−プ・脱ド−プが可能な酸化スズ、
酸化シリコン、リチウムイオンのド−プ・脱ド−プが可
能な遷移金属酸化物、リチウムイオンのド−プ・脱ド−
プが可能な遷移金属窒素化合物、リチウムイオンのド−
プ・脱ド−プが可能な炭素材料、あるいはこれらの混合
物のいずれをも用いることができる。
【0083】炭素材料としては、カ−ボンブラック、活
性炭、人造黒鉛、天然黒鉛、非晶質炭素材料などを挙げ
ることができる。その形態は繊維状、球状、ポテト状、
フレ−ク状などのいずれであってもよい。 非晶質炭素
材料として、具体的にはハ−ドカ−ボン、コ−クス、1
500℃以下で焼成したメソカ−ボンマイクロビ−ズ
(MCMB)、メソフェ−ズピッチカ−ボンファイバ−
(MCF)などを例示することができる。黒鉛材料とし
ては、天然黒鉛、黒鉛化コ−クス、黒鉛化MCMB、黒
鉛化MCFなど、またホウ素を含有するもの、さらに
金、白金、銀、銅、Sn、Siなど金属で被覆したも
の、あるいは非晶質炭素で被覆したものなどを使用する
ことができる。これらの炭素材料は、1種類を使用して
もよいし、2種類以上を適宜組み合わせて混合使用して
もよい。また、導電助剤として、カーボンブラック、ア
モルファスウイスカーカーボンなどを加えて使用しても
よい。
【0084】炭素材料としては、特にX線回折法で測定
した(002)面の面間隔(d002)が0.340n
m以下の炭素材料が好ましく、真密度が1.70g/c
以上である黒鉛またはそれに近い性質を有する高結
晶性炭素材料が望ましい。このような炭素材料を使用す
ると、電池のエネルギ−密度を高くすることができる。
【0085】正極を構成する正極活物質としては、Fe
、MoS、TiS、MnO 、Vなどの
遷移金属硫化物または遷移金属酸化物、LiCoO
LiMnO、LiMn、LiNiO、LiN
Co(1−X)、LiNiCoMn
(1−x−y)などのリチウムと遷移金属の複合酸
化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ル、
ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾ
−ル・ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料、フ
ッ素化炭素、活性炭などの炭素材料などを挙げることが
できる。
【0086】これらの中でも、特にリチウムと遷移金属
との複合酸化物は過充電時の電池電圧の増加が大きいの
で、過充電防止剤を電気分解させやすく好ましい。正極
活物質は1種類を使用してもよいし、2種類以上を混合
使用してもよい。正極活物質は通常導電性が十分でない
ために、導電助剤をともに使用して正極を構成する。そ
のような導電助剤としては、カ−ボンブラック、アモル
ファスウィスカ−カ−ボン、グラファイトなどの炭素材
料を例示することができる。
【0087】セパレ−タは、正極と負極とを電気的に絶
縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜であればよ
く、多孔性膜や高分子電解質が使用される。多孔性膜と
しては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質
としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリ
デン、ポリエステルなどが例示される。特に、多孔性ポ
リオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポ
リエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、
または多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレン
フィルムとの多層フィルムを例示することができる。こ
れら多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に
優れた他の樹脂がコ−ティングされていてもよい。
【0088】高分子電解質としては、リチウム塩を溶解
した高分子物質や、電解液で膨潤した高分子物質などが
挙げられる。本発明の非水電解液は、高分子物質を膨潤
させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0089】このような構成のリチウム二次電池は、円
筒型、コイン型、角型、フィルム型、その他任意の形状
に形成することができる。しかし、電池の基本構造は形
状によらずほぼ同じであり、目的に応じて設計変更を施
すことができる。
【0090】本発明に係わるリチウム二次電池には、非
水電解液の持つ過充電防止効果を発揮させるために、電
池内部のガス圧力が所定値以上になると充電を遮断する
電流遮断機構、および/または電池の温度が所定値以上
になると充電を遮断する電流遮断機構を備えていること
が好ましい。
【0091】一般に電池を過充電すると、電解液が電気
分解されてガスおよび熱を発生する。前記した電流遮断
機構は、このガスおよび/または熱を検知して電池の充
電を遮断し、電池が過充電されることを防止する機構で
ある。本発明に係わる非水電解液は、電池の電圧が一定
値以上に高くなると電気分解されて電池の充電をそれ以
上進めない機能の他に、この電気分解時にガスおよび熱
が発生することから、電流遮断機構を早く作動させるこ
とができる。従って、電池の過充電時の安全性をより一
層高めることができる。
【0092】電池内部のガス圧力が所定値以上になると
充電を遮断する電流遮断機構としては、電池の内圧が上
昇することによって変形して充電電流接点が切れる機
構、電池の内圧をセンサ−で検知して充電を停止する外
部回路、電池の内圧による電池の変形をセンサ−で検知
して充電を停止する外部回路、電池の内圧が上昇するこ
とによって変形して正極と負極とを短絡させて電池が充
電されないようにする機構などを例示することができ
る。この内、電池の内圧が上昇することによって変形し
て充電電流の接点が切れる機構は、シンプルな構造であ
ってかつ効果が高いので好ましい。
【0093】電池の温度が所定値以上になると充電を遮
断する電流遮断機構としては、電池の温度上昇をセンサ
−で検知して充電を停止する外部回路、電池の温度が上
昇すると溶融して目詰まりを起こしイオンの通過を阻止
するセパレ−タ−、電池の温度が上昇すると電池の不活
性化物質を放散するカプセル類、電池の温度が上昇する
と電気抵抗が上昇する素子、電池の温度が上昇すると溶
融して充電電流の接点が切れる機構、電池の温度が上昇
すると電気抵抗が上昇する導電材を含んだ電極などを例
示することができる。
【0094】次に、円筒型およびコイン型電池の構造の
一例について説明するが、各電池を構成する負極活物
質、正極活物質およびセパレ−タは、前記したものを共
通して使用することができる。
【0095】円筒型リチウム二次電池では、銅箔などの
負極集電体に負極活物質を塗布した負極と、アルミニウ
ム箔などの正極集電体に正極活物質を塗布した正極と
を、非水電解液を注入したセパレ−タを介して巻回し、
巻回体の上下に絶縁板を載置した状態で電池缶に収納さ
れている。そして、電池の内圧が上昇すると変形して切
れる電流接点や、電池の温度が上昇すると電気抵抗が上
昇する素子が取り付けられた封口体を用いて、電池缶に
蓋をして電池缶の端部をかしめた構造になっている。
【0096】コイン型リチウム二次電池では、円盤状負
極、非水電解液を注入したセパレ−タ、円盤状正極、必
要に応じて、ステンレスまたはアルミニウムなどのスペ
−サ−板が、この順序に積層された状態でコイン型電池
缶に収納されている。また、電池の内圧による電池の変
形を検知する歪みゲ−ジなどが取り付けられていてもよ
い。
【0097】
【実施例】次に実施例を通して本発明をより詳細に説明
するが、本発明はそれらの実施例によって何ら制限され
るものではない。
【0098】1.電池の作製 <非水電解液の調製>非水溶媒として、エチレンカ−ボ
ネ−ト(EC)とメチルエチルカ−ボネ−ト(MEC)
とをEC:MEC=4:6(重量比)の割合で混合し、
次に電解質であるLiPFを前記した非水溶媒に溶解
し、電解質濃度が1.0モル/リットルになるように非
水電解液を調製した。
【0099】次にこの非水電解液に対して、表1に記載
した各種の化合物を所定量添加し、19種類の電解液を
調製した。なお、表1において、添加剤の種類を次のよ
うに略して記した。 FBP:2−フルオロビフェニル、BP:ビフェニル、
VC:ビニレンカ−ボネ−ト、PES:1,3−プロペ
ンスルトン、DPM:ジフェニルメタン、CHB:シク
ロヘキシルベンゼン、BD:メタベンゼンジスルホン酸
ジメチルエステル、TF:ジ(トリフルオロメタンスル
ホン酸)イミドリチウム PS:1,3−プロパンスルトン また、カッコ内の数値は、各化合物の電解液中における
含有量を重量%で示した値である。
【表1】
【0100】<負極の作製>メソカーボンマイクロビー
ズ(大阪ガス(株)製 MCMB10−28)74重量
部、天然黒鉛((株)中越黒鉛工業所製 LF18A)
20重量部、および結着剤のポリフッ化ビニリデン(P
VDF)6重量部を混合し、溶剤のN−メチルピロリジ
ノンに分散させて負極合剤スラリ−を調製した。次に、
この負極合剤スラリ−を厚さ18μmの帯状銅箔製の負
極集電体に塗布し、乾燥した。
【0101】<正極の作製>LiCoO(本荘FMC
エナジ−システムズ(株)製 HLC−22)82重量
部、導電剤の黒鉛7重量部、アセチレンブラック3重量
部、および結着剤のポリフッ化ビニリデン8重量部を混
合し、溶剤のN−メチルピロリドンに分散させてLiC
oO合剤スラリ−を調製した。このLiCoO合剤
スラリ−を厚さ20μmのアルミ箔に塗布し、乾燥し
た。
【0102】<コイン型電池の作製>コイン型電池用負
極には、前記の負極を圧縮成型し、直径14mmの円盤
状に打ち抜いてコイン状の負極を得た。負極合剤の厚さ
は70μm、重量は20mg/14mmφであった。コ
イン型電池用正極には、前記の正極を圧縮成型し、直径
13.5mmの円盤状に打ち抜いてコイン状のLiCo
正極を得た。LiCoO合剤の厚さは70μm、
重量は42mg/13.5mmφであった。直径14m
mの負極、直径13.5mmの正極、および厚さ25μ
mで直径16mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムか
らできたセパレ−タを、ステンレス製の2032サイズ
の電池缶内に負極、セパレ−タ−、正極の順序で積層し
た。その後、セパレ−タに前記の非水電解液0.04m
lを注入し、さらにアルミニウム製の板(厚さ1.2m
m、直径16mm)およびバネを収納した。最後に、ポ
リプロピレン製のガスケットを介して電池缶蓋をかしめ
ることによって電池内の気密性を保持し、直径20m
m、高さ3.2mmのコイン型電池を作製した。
【0103】<ラミネ−ト電池の作製>前記したと同一
の電極を使用して寸法21mm×21mmの負極、およ
び寸法20mm×20mmの正極を切り出し、幅25m
m×長さ50mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムか
らできたセパレ−タを介して対向させて電極体とした。
この電極体を、アルミニウムラミネ−トフィルム(昭和
ラミネ−ト工業(株)製)で作製した筒状の袋に、正極
と負極の両リ−ド線が片方の開放部から引き出されるよ
うに収容し、そしてリ−ド線が引き出された側を熱融着
して閉じた。次に、電解液0.15mlを電極体に注入
して含浸させ、その後、残った開放部を熱融着して電極
体を袋中に密封し、ラミネ−ト電池を得た。
【0104】2.電池特性の評価 <過充電防止効果の評価方法1:過充電時のガス発生量
の測定>前述のラミネ−ト電池を4.1Vに充電し、4
5℃で24時間保存後、4.2Vから3.0Vの充放電
を行い、電池の容量を確認した。このときの電池の容量
は10mAhであった。この電池を5mAの定電流で5
時間充電し、電池を過充電させた。過充電前の電池の容
積と過充電後の電池の容積とを測定し、その差分から過
充電時の発生ガス量を測定した。測定に使用した電解液
の種類と過充電時に発生したガス量の測定結果を表2に
示した。
【0105】<過充電防止効果の評価方法2:電解液の
酸化電流の測定>電解液の酸化電圧は、グローブボック
ス中にて、電解液を80℃に加熱した状態で、作用極を
グラッシーカーボン、対極および参照極を金属リチウム
とし、3V〜5Vの範囲にて、10mV/secでサイ
クリックボルタンメトリーを行い測定した。80℃で測
定を行ったのは、電池を過充電すると、電解液の電気分
解熱により電池は発熱するため、高温での電解液の酸化
電流が実効的に重要であるためである。測定に使用した
電解液の種類と、4.65Vのときの酸化電流値を表3
に示した。
【0106】<高温保存特性の評価方法>前述のコイン
型電池を4.1Vに充電し、45℃で7日間保存後、
4.2Vから3.0Vの充放電を行い、電池の容量を確
認した。このときの電池の容量は5mAhであった。コ
イン型電池の保存試験は、同じ電池について、電池を
4.1Vに充電後45℃で7日間保存する条件(「エ−
ジング」と呼ぶ)と、電池を4.2Vに充電後85℃で
3日間保存する条件(「高温保存」と呼ぶ)との2条件
で続けて行った。保存前後での電池の「5mA放電容
量」を測定し、その後「放電容量比」を算出し、その結
果から高温保存特性の評価を行った。測定に使用した電
解液の種類と、高温保存特性の評価結果を表4に示し
た。「放電容量比」は、保存後(エ−ジング後または高
温保存後)の5mA放電容量を未保存時の5mA放電容
量に対する比率で表し、それぞれエ−ジング後の放電容
量比、高温保存後の放電容量比とした。 放電容量比=(C/D) ×100 (%) C=保存後の5mA放電容量 D=未保存時の5mA放電容量 ここで、電池の「5mA放電容量」は、コイン型電池を
4.2Vに充電後、5mAの電流で放電させたときの放
電容量である。
【0107】<結果>
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】表2および表3の結果より、フッ素原子置
換芳香族化合物(2−フルオロビフェニル)および炭素
原子と水素原子のみからなる芳香族炭化水素化合物(ビ
フェニル、シクロヘキシルベンゼン)の両化合物を加え
た電解液は、過充電時のガス発生量が多く(実施例1〜
4)、酸化電流値はフッ素原子置換芳香族化合物単独の
場合(比較例5)よりも大幅に高くなった(実施例5〜
9)。従ってこの電解液は、電池内の圧力に連動して充
電を停止する機構を備えた電池に適用すると、過充電時
の安全性を高めた電池が得られることを示している。
【0110】また、実施例1〜3の実験を熱量計(セタ
ラム社 C−80)内で行い、電池からの発熱量を測定
したところ、添加剤を含まない電解液(比較例1)より
も多くの発熱が起こっていることを確認した。従って、
この電解液は、特に、電池内の温度に連動して充電を停
止する機構を有する電池に適用すると、過充電時の安全
性を高め、高温保存時の劣化が小さい電池が得られるこ
とを示している。
【0111】
【表4】
【0112】表4の結果より、フッ素原子置換芳香族化
合物および炭素原子と水素原子のみからなる芳香族炭化
水素化合物の両化合物を含む電解液(実施例10、1
1、12)は、フッ素原子置換芳香族化合物のみを添加
した電解液(比較例8)と比べて、高温保存特性の低下が
最小限に抑えられていることが分かる。これに対して、
炭素原子と水素原子のみからなる芳香族炭化水素化合物
のみを含む電解液(比較例9)は、高温保存特性が大幅
に劣化した。
【0113】また、さらに、前述の「その他の化合物」
をさらに添加した電解液(実施例13〜20)は、高温
保存特性がさらに向上しており、過充電防止剤を含まな
い電解液(比較例7)と比較しても、優れた高温保存特
性を示した。これに対して、過充電防止剤が炭素原子と
水素原子のみからなる芳香族炭化水素化合物だけの場合
は、「その他の化合物」をさらに添加した電解液でも高
温保存特性の改善度は低い(比較例12)、あるいは全
く改善されなかった(比較例10、11)。
【0114】
【発明の効果】本発明に係わる非水電解液は、過充電時
に発生するガス量が多く、酸化電流が多く流れることか
ら高い過充電防止効果が得られる。また、コイン電池で
の高温保存試験結果から高温保存特性に優れている。従
って、この非水電解液を含むリチウム二次電池は、過充
電したときの安全性が高められており、また高温保存特
性にも優れている。また、この非水電解液を電池の内圧
および/または温度に連動して充電を停止する機構を備
えた電池に適用すると、電池の過充電時における安全性
が高く、高温保存時の劣化が小さい電池を得ることがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 達麗 東京都千代田区霞が関三丁目2番5号 三 井化学株式会社内 (72)発明者 齊藤 有紀 千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株 式会社内 Fターム(参考) 5H024 BB07 FF11 FF38 HH02 5H029 AJ02 AJ04 AJ12 AK02 AK03 AK04 AK05 AK08 AK16 AK18 AL01 AL06 AL07 AL08 AL12 AL18 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 CJ08 HJ01 HJ02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フッ素原子置換芳香族化合物、炭素原子と
    水素原子のみからなる芳香族炭化水素化合物、その他の
    非水溶媒およびリチウム含有電解質とからなる電解液で
    あって、フッ素原子置換芳香族化合物は電解液中に0.
    1〜20重量%、また芳香族炭化水素化合物は電解液中
    に0.1〜3重量%含有されていることを特徴とする非
    水電解液。
  2. 【請求項2】前記のフッ素原子置換芳香族化合物が、フ
    ッ素原子置換ナフタレン類、フッ素原子置換フルオレン
    類、およびフッ素原子置換ビフェニル類から選ばれる少
    なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1
    に記載の非水電解液。
  3. 【請求項3】前記の芳香族炭化水素化合物が、アルキル
    基またはシクロアルキル基置換ベンゼン類およびビフェ
    ニル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物
    であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の電解液は、さらに下記一
    般式(1)で示されるビニレンカ−ボネ−ト類、下記一
    般式(2)で示されるアルケニルエチレンカ−ボネ−ト
    類、下記一般式(3)で示される不飽和炭化水素基を有
    するスルトン類、下記一般式(4)で表されるアリール
    基を有するスルホン酸エステル、飽和炭化水素基を有す
    るスルトン類、およびスルホン酸イミドからなる群から
    選ばれる少なくとも1種の化合物を、電解液中に0.0
    1〜10重量%含有していることを特徴とする非水電解
    液。 【化1】 [式(1)において、RおよびRは、互いに同一で
    あってもよいし異なっていてもよく、水素原子、ハロゲ
    ン原子または炭素数が1〜12のハロゲン原子を含んで
    いてもよいアルキル基を表す。] 【化2】 [式(2)において、R〜Rは、互いに同一であっ
    てもよいし異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原
    子、炭素数が1〜12のハロゲン原子を含んでいてもよ
    い炭化水素基、または炭素数が2〜12のアルケニル基
    であって、その内少なくとも一つは炭素数が2〜12の
    アルケニル基である。] 【化3】 [式(3)において、R〜R10は、互いに同一であ
    ってもよいし異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン
    原子、または炭素数が1〜12のハロゲン原子を含んで
    いてもよいアルキル基であって、nは0から3の整数で
    ある。] 【化4】 [式(4)において、R11〜R16は、互いに同一で
    あってもよいし異なっていてもよく、水素原子、リチウ
    ム原子、ハロゲン原子、スルホン酸エステル基、カルボ
    ン酸エステル基、スルホン酸リチウム基、および炭素数
    1〜12のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基
    からなる群から選ばれる原子または基である。]
  5. 【請求項5】負極、正極および電解液を含む二次電池で
    あって、電解液が請求項1〜4のいずれかに記載の非水
    電解液であることを特徴とするリチウム二次電池。
  6. 【請求項6】電池内部のガス圧力が所定値以上になると
    充電を遮断する電流遮断機構を備えていることを特徴と
    する請求項5に記載のリチウム二次電池。
  7. 【請求項7】電池の温度が所定値以上になると充電を遮
    断する電流遮断機構を備えていることを特徴とする請求
    項5に記載のリチウム二次電池。
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