JP2003041315A - 高清浄鋼の製造方法 - Google Patents

高清浄鋼の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スラグ改質剤としての過剰のAl添加を防止
しつつ、取鍋等の溶鋼保持容器に収容された溶鋼のスラ
グによる再酸化を防止して、酸化物系介在物が極めて少
ない高清浄鋼を安定して製造する。 【解決手段】 精錬炉で精錬した溶鋼1を溶鋼保持容器
3に出鋼した後、この溶鋼上に存在するスラグ2へAl
を含有するスラグ改質剤4を添加してスラグを改質する
際に、スラグ改質剤添加前のスラグ中FeO濃度の分析
値とスラグ量とに応じて、下記の(1)式を満足するよ
うにスラグ改質剤をスラグ上へ添加してスラグの酸化度
を低減させる。但し(1)式において、(%FeO)はスラ
グ中のFeO濃度(質量%)、Ws はスラグ量(kg/ton
-steel)、QAlはスラグ改質剤中のAl添加量(kg/ton
-steel)である。 (%FeO)Ws/300≦QAl≦(%FeO)Ws/100…(1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、清浄性に優れた鋼
の製造方法に関し、詳しくは、取鍋等の溶鋼保持容器に
収容された溶鋼の清浄性を高める方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼材料の高機能化及び高品質化への要
求の高まりから、鋼中の不純物元素を極限まで低減する
ことが望まれており、溶鋼段階での鋼の高純度化及び高
清浄度化のための技術が必要とされている。鋼中の不純
物元素の1つである酸素は、鋼中に酸化物として存在し
た場合、鋼板における欠陥の原因となる。
【0003】鋼の精錬段階において、鋼中に酸化物を生
成させる要因の1つとして、取鍋等の溶鋼保持容器に収
容された溶鋼と溶鋼上に浮遊するスラグとの反応、即
ち、スラグ中のFeOやMnO等の低級酸化物による溶
鋼の再酸化が挙げられており、こうした背景からスラグ
による溶鋼の再酸化を防止する対策が実施されている。
【0004】従来、この対策は溶鋼保持容器内のスラグ
にAl等の脱酸剤(還元剤とも云う)を添加し、スラグ
を還元する方法が採られている。例えば、特開平2−3
0711号公報には、精錬炉から取鍋への出鋼直後、未
脱酸状態の溶鋼上で浮遊するスラグ上に脱酸剤を添加し
てスラグ中のFeOを還元する方法が開示され、特開平
2−93017号公報には、RH真空脱ガス装置におけ
る真空脱炭処理後に取鍋内スラグにAlを添加してスラ
グ中のFeOを還元する方法が開示され、又、特開平7
−34117号公報には、出鋼中若しくは出鋼直後に取
鍋内スラグにスラグ還元に必要な量の一部の脱酸剤を添
加し、真空脱ガス精錬中に残りの脱酸剤を取鍋内スラグ
に添加する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
3つの公報を始めとして従来のスラグ改質方法では、ス
ラグ還元用の脱酸剤を添加する際に、スラグ中の低級酸
化物濃度が不明であるため、添加する脱酸剤が不足する
場合には、スラグの還元が十分に行われず、一方、添加
する脱酸剤が過剰の場合には、スラグの還元用に添加し
た脱酸剤が溶鋼中に歩留まり、溶鋼中のAl濃度の調整
が困難になるという問題点がある。
【0006】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、
その目的とするところは、スラグ改質剤としての過剰の
Al添加を防止しつつ、取鍋等の溶鋼保持容器に収容さ
れた溶鋼のスラグによる再酸化を防止して、酸化物系介
在物が極めて少ない高清浄鋼を安定して製造する方法を
提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた。以下に研究結果を
説明する。
【0008】スラグを還元するために必要なAl量は、
スラグ中のFeO濃度に依存しており、従って、Alを
過剰に添加すればスラグ還元用に添加したAlが溶鋼中
に歩留まり、溶鋼中のAl濃度の調整が困難になり、一
方、添加するAlが不足する場合にはスラグの還元が十
分に行われない。そこで、溶鋼上に存在するスラグのF
eO濃度を測定し、測定したFeO濃度に応じて添加す
るAl量を決めれば、過不足なくAlを添加することが
できるとの知見を得た。
【0009】この場合、Al添加後にスラグを撹拌して
スラグとAlとを強制的に混合した場合と、強制的に混
合しない場合とで、スラグ還元に必要なAl量に差が生
じることも判明した。即ち、強制的に混合した場合に
は、必要最小限のAl量でスラグの還元が行われるとい
う知見も得た。
【0010】本発明は、これらの知見に基づきなされた
もので、第1の発明による高清浄鋼の製造方法は、精錬
炉で精錬した溶鋼を溶鋼保持容器に出鋼した後、この溶
鋼上に存在するスラグへAlを含有するスラグ改質剤を
添加してスラグを改質する際に、スラグ改質剤添加前の
スラグ中FeO濃度の分析値とスラグ量とに応じて、下
記の(1)式を満足するようにスラグ改質剤をスラグ上
へ添加してスラグの酸化度を低減させることを特徴とす
るものである。但し、(1)式において、(%FeO)はス
ラグ中のFeO濃度(質量%)、Ws はスラグ量(kg/t
on-steel)、Q Alはスラグ改質剤中のAl添加量(kg/t
on-steel)を表すものである。
【0011】
【数1】
【0012】第2の発明による高清浄鋼の製造方法は、
精錬炉で精錬した溶鋼を溶鋼保持容器に出鋼した後、こ
の溶鋼上に存在するスラグへAlを含有するスラグ改質
剤を添加してスラグを改質する際に、スラグ改質剤添加
前のスラグ中FeO濃度の分析値とスラグ量とに応じ
て、下記の(2)式を満足するようにスラグ改質剤をス
ラグ上へ添加し、次いで、スラグ又は溶鋼を不活性ガス
により撹拌してスラグの酸化度を低減させることを特徴
とするものである。但し、(2)式において、(%FeO)
はスラグ中のFeO濃度(質量%)、Ws はスラグ量
(kg/ton-steel)、QAlはスラグ改質剤中のAl添加量
(kg/ton-steel)を表すものである。
【0013】
【数2】
【0014】第3の発明による高清浄鋼の製造方法は、
第1の発明又は第2の発明において、スラグ中のFeO
濃度を、固体電解質を用いた酸素センサーにより測定す
ることを特徴とするものである。
【0015】第4の発明による高清浄鋼の製造方法は、
第1の発明ないし第3の発明の何れかにおいて、その最
大径が溶鋼上に存在するスラグの厚みより小さいAlを
含有するスラグ改質剤を用いることを特徴とするもので
ある。
【0016】スラグ中の鉄酸化物をAlにより還元する
反応は、下記の(3)式に例示するように、鉄酸化物の
形態に関わらず、3個のFe原子と2個のAl原子とが
反応して還元反応が行われる。
【0017】
【数3】
【0018】従って、スラグ中の全ての鉄酸化物をAl
により還元する場合には、スラグ中のFeO濃度(質量
%)と、溶鋼上に存在するスラグ量Ws (kg/ton-stee
l)と、スラグ改質剤中のAl添加量QAl(kg/ton-stee
l)即ちスラグ還元用のAl添加量との間には、Fe及
びAlの原子量から化学量論的に下記の(4)式が成立
する。(4)式の左辺はスラグ中の酸素量と添加するA
l量との比を表している。
【0019】
【数4】
【0020】それ故、(4)式の左辺に示す[(%FeO)
Ws /QAl]の比(以下「酸素/Al比」と記す)が3
97を越える場合には、添加するAlが不足する状態を
表し、一方、酸素/Al比が397よりも小さくなる場
合には、添加するAlが過剰である状態を表すことにな
る。
【0021】そこで、溶鋼上に存在するスラグのFeO
濃度及びスラグの質量を測定すると共に、スラグ還元用
のAl添加量を種々変更して酸素/Al比を変更し、薄
鋼板における酸化物系介在物による欠陥発生率に及ぼす
酸素/Al比の影響を調査した。この場合、Al添加後
にスラグに浸漬させたランスからArを吹き込み、スラ
グを強制的に撹拌した場合と、強制的に撹拌しない場合
の2水準について試験した。
【0022】その結果、以下のことが判明した。スラグ
の強制撹拌の有無に拘わらず、酸素/Al比が大きくな
るほど薄鋼板における欠陥発生率は増加するが、スラグ
を強制的に撹拌しない場合には、酸素/Al比が300
以下であれば、スラグによる溶鋼の再酸化は清浄性への
影響がほとんどないレベルまで低減し、欠陥発生率は目
標とする範囲に収まることが分かった。このようにAl
添加量が(4)式に示した化学量論量以上に必要な理由
は、Al添加後にスラグの攪拌を実施しないので、空気
との反応によりAlが酸化し、効率が落ちるためであ
る。一方、酸素/Al比が100未満では、溶鋼の清浄
性の改善効果は飽和して変わらずに、過剰に添加される
Alが無駄になるために製造コストの上昇を招くと共
に、溶鋼のAl濃度が増加して成分規格を越える場合が
発生する。
【0023】従って、スラグを強制的に撹拌しない場合
を前提とした第1の発明では、酸素/Al比が100〜
300の範囲となるように、即ち、上記の(1)式を満
足する範囲でスラグ還元用のAl添加量を設定すること
にした。
【0024】又、スラグを強制的に撹拌した場合には、
酸素/Al比が400以下であれば、スラグによる溶鋼
の再酸化は清浄性への影響がほとんどないレベルまで低
減し、欠陥発生率は目標とする範囲に収まることが分か
った。一方、酸素/Al比が300未満では、溶鋼の清
浄性の改善効果は飽和して変わらずに、過剰に添加され
るAlが無駄になるために製造コストの上昇を招くと共
に、溶鋼のAl濃度が増加して成分規格を越える場合が
発生する。
【0025】従って、スラグを強制的に撹拌する場合を
前提とした第2の発明では、酸素/Al比が300〜4
00の範囲となるように、即ち、上記の(2)式を満足
する範囲でスラグ還元用のAl添加量を設定することに
した。
【0026】この場合、スラグのFeO濃度の測定は、
オンラインでの迅速測定が可能であるので、固体電解質
を用いた酸素センサーにより行うことが好ましい。又、
様々な大きさのAlを含有するスラグ改質剤を取鍋内ス
ラグへ添加し、スラグ組成及びメタル組成を調査した結
果、Alの最大径が取鍋内溶鋼上のスラグ厚みより大き
いスラグ改質剤をスラグ上へ添加した場合には、Alが
スラグを突き抜けて溶鋼へ到達し、溶鋼組成に影響を及
ぼす場合も生じることが判明した。従って、これを防止
するためには、その最大径が溶鋼保持容器内溶鋼上のス
ラグ厚みより小さいAlを含有する改質剤を使用するこ
とが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の実施の形態を説明する。先ず、第1の実施の形態につ
いて、図1に基づき説明する。図1は、本発明の第1の
実施の形態を示す図であって、溶鋼保持容器内にスラグ
改質剤を投入する様子を示す概略図である。
【0028】転炉や電気炉等の一次精錬炉にて脱炭精錬
を行い、得られた溶鋼1を取鍋等の溶鋼保持容器3に出
鋼する。出鋼の際に脱炭精錬により発生した一次精錬炉
内のスラグ2もその一部が溶鋼1と共に溶鋼保持容器3
内に注入される。出鋼後、溶鋼保持容器3内の溶鋼1を
覆っているスラグ2上にAlを含有するスラグ改質剤4
を添加する。この場合、出鋼時に溶鋼1をAl等で脱酸
しても良く、又、未脱酸のままでも良い。即ち、Alを
含有するスラグ改質剤4を添加する際に溶鋼1は脱酸さ
れていても又は未脱酸のままでもどちらでも良い。又、
スラグ改質剤4を添加する時期は、連続鋳造工程の前で
あれば転炉等の一次精錬炉からの出鋼直後でも、RH真
空脱ガス装置や取鍋精錬炉等の二次精錬炉での処理中若
しくは処理後でも構わない。又、スラグ改質剤4をスラ
グ2上に分散して添加できる装置であれば、特に専用の
添加設備を用いる必要はない。
【0029】Alを含有するスラグ改質剤4の添加直前
にスラグ2中のFeO濃度を測定する。FeO濃度の測
定はスラグ2を採取して化学分析により求めることも可
能ではあるが、固体電解質を用いた酸素センサー5を用
いてFeO濃度を測定することが好ましい。この場合、
酸素センサー5によりスラグ2の酸素ポテンシャルを測
定し、酸素ポテンシャルとFeO濃度との検量線を予め
作成しておくことで、瞬時にスラグ2のFeO濃度を測
定することができる。
【0030】又、溶鋼保持容器3内のスラグ2の質量を
測定する。スラグ2の質量は、スラグ2の厚みの測定又
は溶鋼1を覆うスラグ2の面積率の目視測定等により測
定することができる。溶鋼保持容器3内に収容された溶
鋼量から、溶鋼トン当たりのスラグ量(Ws )を求め
る。スラグ2の質量測定は、スラグ改質剤4の添加前に
予め行えば良い。又、溶鋼量は転炉等の一次精錬炉から
溶鋼保持容器3への出鋼時に溶鋼保持容器3を秤量する
ことで把握することができる。
【0031】このようにして測定したスラグ2のFeO
濃度(%FeO)とスラグ量(Ws )とを前述の(1)式に
代入し、スラグ2の還元に必要なAl添加量(QAl)の
範囲を設定する。そして、スラグ改質剤4のAl含有量
に応じて、Al添加量が(1)式の範囲内の任意の量に
なるように設定し、投入装置6を介してスラグ2上へ添
加する。
【0032】Alを含有するスラグ改質剤4としては、
金属Al、Al灰、金属Al又はAl灰とCaOやAl
23 等のフラックスとの混合物等を用いることができ
る。スラグ改質剤4中のAlの大きさは、溶鋼成分へ影
響を及ぼさないために最大径がスラグ厚みより小さいこ
とが望ましく、又、小さすぎると飛散して歩留まりが低
下するので、歩留まり向上の観点から、添加時に飛散し
ない程度であることが好ましい。
【0033】その後、次工程の二次精錬設備や連続鋳造
設備や普通造塊設備等の鋳造設備に溶鋼保持容器3を搬
出する。
【0034】このようにしてスラグ2を処理すること
で、溶鋼1にAlが添加されることなく、スラグ2のF
eO濃度を迅速に且つ安定して低くすることができ、そ
の結果、溶鋼1のスラグ2による再酸化が抑制され、酸
化物系介在物が極めて少ない高清浄鋼を安定して製造す
ることが可能となる。
【0035】次に、第2の実施の形態について図2に基
づき説明する。図2は、本発明の第2の実施の形態を示
す図であって、溶鋼保持容器内にスラグ改質剤を投入す
る様子を示す概略図である。第2の実施の形態は第1の
実施の形態と基本的に同一であり、従って重複する点が
多いが、以下に詳細に説明する。
【0036】転炉や電気炉等の一次精錬炉にて脱炭精錬
を行い、得られた溶鋼1を取鍋等の溶鋼保持容器3に出
鋼する。出鋼の際に脱炭精錬により発生した一次精錬炉
内のスラグ2もその一部が溶鋼1と共に溶鋼保持容器3
内に注入される。出鋼後、溶鋼保持容器3内の溶鋼1を
覆っているスラグ2上にAlを含有するスラグ改質剤4
を添加する。この場合、出鋼時に溶鋼1をAl等で脱酸
しても良く、又、未脱酸のままでも良い。即ち、Alを
含有するスラグ改質剤4を添加する際に溶鋼1は脱酸さ
れていても又は未脱酸のままでもどちらでも良い。又、
スラグ改質剤4を添加する時期は、連続鋳造工程の前で
あれば転炉等の一次精錬炉からの出鋼直後でも、RH真
空脱ガス装置や取鍋精錬炉等の二次精錬炉での処理中若
しくは処理後でも構わない。又、スラグ改質剤4をスラ
グ2上に分散して添加できる装置であれば、特に専用の
添加設備を用いる必要はない。
【0037】Alを含有するスラグ改質剤4の添加直前
にスラグ2中のFeO濃度を測定する。FeO濃度の測
定はスラグ2を採取して化学分析により求めることも可
能ではあるが、固体電解質を用いた酸素センサー5を用
いてFeO濃度を測定することが好ましい。この場合、
酸素センサー5によりスラグ2の酸素ポテンシャルを測
定し、酸素ポテンシャルとFeO濃度との検量線を予め
作成しておくことで、瞬時にスラグ2のFeO濃度を測
定することができる。
【0038】又、溶鋼保持容器3内のスラグ2の質量を
測定する。スラグ2の質量は、スラグ2の厚みの測定又
は溶鋼1を覆うスラグ2の面積率の目視測定等により測
定することができる。溶鋼保持容器3内に収容された溶
鋼量から、溶鋼トン当たりのスラグ量(Ws )を求め
る。スラグ2の質量測定は、スラグ改質剤4の添加前に
予め行えば良い。又、溶鋼量は転炉等の一次精錬炉から
溶鋼保持容器3への出鋼時に溶鋼保持容器3を秤量する
ことで把握することができる。
【0039】このようにして測定したスラグ2のFeO
濃度(%FeO)とスラグ量(Ws )とを前述の(2)式に
代入し、スラグ2の還元に必要なAl添加量(QAl)の
範囲を設定する。そして、スラグ改質剤4のAl含有量
に応じて、Al添加量が(2)式の範囲内の任意の量に
なるように設定し、投入装置6を介してスラグ2上へ添
加する。
【0040】Alを含有するスラグ改質剤4としては、
金属Al、Al灰、金属Al又はAl灰とCaOやAl
23 等のフラックスとの混合物等を用いることができ
る。スラグ改質剤4中のAlの大きさは、溶鋼成分へ影
響を及ぼさないために最大径がスラグ厚みより小さいこ
とが望ましく、又、小さすぎると飛散して歩留まりが低
下するので、歩留まり向上の観点から、添加時に飛散し
ない程度であることが好ましい。
【0041】スラグ改質剤4の添加に前後して、スラグ
2或いは溶鋼1に浸漬させたバブリングランス7からA
r等の不活性ガスを吹き込み、ガス気泡8によりスラグ
2を強制的に攪拌する。この攪拌により、添加したAl
とスラグ2中の鉄酸化物との反応が迅速に起こり、スラ
グ2中のFeO濃度は3%以下まで低下し、それ以降の
スラグ2による溶鋼1の再酸化を抑制することができ
る。
【0042】その後、次工程の二次精錬設備や連続鋳造
設備や普通造塊設備等の鋳造設備に溶鋼保持容器3を搬
出する。
【0043】このようにしてスラグ2を処理すること
で、溶鋼1にAlが添加されることなく、スラグ2のF
eO濃度を迅速に且つ安定して低くすることができ、そ
の結果、溶鋼1のスラグ2による再酸化が抑制され、酸
化物系介在物が極めて少ない高清浄鋼を安定して製造す
ることが可能となる。
【0044】
【実施例】[実施例1]炭素濃度が0.02〜0.06
質量%である約250トンの溶鋼を転炉から取鍋に未脱
酸状態のまま出鋼し、出鋼後、取鍋内のスラグのFeO
濃度を酸素センサーにより測定し、スラグ改質剤として
金属Alを用いて、酸素/Al比が50〜400の範囲
となるように最大径が1〜10cm程度の金属Alの添
加量を調整してスラグ上に添加し、溶鋼の清浄性に及ぼ
す酸素/Al比の影響を調査した。取鍋内のスラグ量
(Ws )はスラグ厚みと取鍋の内径から算出した。取鍋
内スラグの組成はCaO−SiO2 −Al23 −Mg
O系であった。この試験では、Al添加後にスラグ及び
溶鋼の強制的な撹拌は行わなかった。
【0045】その後、取鍋をRH真空脱ガス装置に搬送
して必要な精錬を施した後、連続鋳造機にてスラブ鋳片
に鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延を経て、薄鋼板製品と
し、薄鋼板製品における酸化物系介在物による表面欠陥
の発生率を調査した。溶鋼の清浄性は、この表面欠陥の
発生率を指数化した製品欠陥指数で評価した。製品欠陥
指数が低いほど、清浄性が高いことを表しており、本発
明では製品欠陥指数が0.5以下を清浄性に優れると評
価した。
【0046】表1に各試験における試験条件及び試験結
果を示し、又、図3に酸素/Al比と製品欠陥指数との
関係を示す。
【0047】
【表1】
【0048】表1及び図3に示すように、酸素/Al比
が300を越えると、製品欠陥指数が0.5を越えて清
浄性が劣化することが分かった。又、酸素/Al比が1
00未満になると、製品欠陥指数は低く、清浄性の点か
らは全く問題なかったが、過剰にAlが添加されている
ため、添加後のスラグを採取してみると、未反応のAl
が見られ、経済的に問題があることが分かった。
【0049】又、本実施例ではスラグの厚みは5.1c
m以上であり、最大径がそれ以上のAlを添加した場合
(試験No.12,13)には、Alが一部溶鋼へ達した
ため、酸素/Al比がほぼ同一である試験No.3〜5に
比較してスラグの還元がやや不足したが、製品欠陥指数
は0.5以下を確保できた。このように、酸素/Al比
が100〜300の範囲では清浄性の高い薄鋼板製品を
得ることができ、特に、Alの最大径が5cm以下の場
合では清浄性が高く、又、スラグ中に未反応のAlも残
留していなかった。
【0050】従来、スラグの酸素濃度を測定しないでス
ラグ改質を実施した場合にも、酸素/Al比が偶然10
0〜300の範囲だったものは製品欠陥指数が低くなっ
たが、その割合は70%程度であった。尚、表1の備考
欄には、本発明の範囲内で製造した試験は実施例と表示
し、金属Alの添加量が本発明の範囲を外れた試験は比
較例と表示した。
【0051】[実施例2]炭素濃度が0.02〜0.0
6質量%である約250トンの溶鋼を転炉から取鍋に未
脱酸状態のまま出鋼し、RH真空脱ガス装置に搬送して
精錬した。RH真空脱ガス装置では、先ず真空脱炭処理
し、次いで、溶鋼中の溶解酸素量を酸素センサーで測定
して、溶解酸素を脱酸するために必要な金属Al量と製
品成分規格(0.02〜0.04質量%)を満足するた
めに必要な金属Al量との合計量を添加した。
【0052】その後、環流用Ar流量を3000Nl/
min、真空槽内の圧力を66.7〜266.6Pa
(0.5〜2torr)の状態に維持したまま、スラグ
改質剤として直径が1cm程度の金属Alを取鍋内のス
ラグ上に添加した。その際、取鍋内のスラグのFeO濃
度を酸素センサーにより測定し、酸素/Al比が50〜
350の範囲となるように金属Al量を調整して添加
し、溶鋼の清浄性に及ぼす酸素/Al比の影響を調査し
た。取鍋内のスラグ量(Ws )はスラグ厚みと取鍋の内
径から算出した。取鍋内スラグの組成はCaO−SiO
2 −Al23 −MgO系であった。スラグ改質剤添加
後、必要に応じて溶鋼を環流させてRH真空脱ガス装置
による精錬を終了した。この環流中、溶鋼の成分調整を
行った。
【0053】その後、連続鋳造機にてスラブ鋳片に鋳造
し、熱間圧延及び冷間圧延を経て、薄鋼板製品とし、薄
鋼板製品における酸化物系介在物による表面欠陥の発生
率を調査した。
【0054】表2に各試験における試験条件及び試験結
果を示し、又、図4に酸素/Al比と製品欠陥指数との
関係を示す。
【0055】
【表2】
【0056】表2及び図4に示すように、酸素/Al比
が300を越えると、製品欠陥指数が0.5を越えて清
浄性が劣化することが分かった。又、酸素/Al比が1
00未満になると、製品欠陥指数は低く、清浄性の点か
らは全く問題なかったが、過剰にAlが添加されている
ため、添加後のスラグを採取してみると、未反応のAl
が見られ、経済的に問題があることが分かった。一方、
酸素/Al比が100〜300の範囲では清浄性が高
く、又、スラグ中に未反応のAlも残留していなかっ
た。
【0057】従来、RH真空脱ガス装置においてスラグ
の酸素濃度を測定しないで金属Alを添加してスラグ改
質を実施した場合にも、酸素/Al比が偶然100〜3
00の範囲だったものは製品欠陥指数が低くなったが、
その割合は75%程度であった。尚、表2の備考欄に
は、本発明の範囲内で製造した試験は実施例と表示し、
金属Alの添加量が本発明の範囲を外れた試験は比較例
と表示した。
【0058】[実施例3]炭素濃度が0.02〜0.0
6質量%である約250トンの溶鋼を転炉から取鍋に未
脱酸状態のまま出鋼し、出鋼後、取鍋内のスラグのFe
O濃度を酸素センサーにより測定し、取鍋の周方向4箇
所に設置したランスを取鍋内の溶鋼に浸漬させ、これら
のランスからArを吹き込んでスラグを攪拌しつつ、ス
ラグ改質剤として金属Alを用いて、酸素/Al比が2
50〜450の範囲となるように最大径が1〜10cm
程度の金属Alの添加量を調整してスラグ上に添加し、
溶鋼の清浄性に及ぼす酸素/Al比の影響を調査した。
取鍋内のスラグ量(Ws )はスラグ厚みと取鍋の内径か
ら算出した。取鍋内スラグの組成はCaO−SiO2
Al23 −MgO系であった。
【0059】その後、取鍋をRH真空脱ガス装置に搬送
して必要な精錬を施した後、連続鋳造機にてスラブ鋳片
に鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延を経て、薄鋼板製品と
し、薄鋼板製品における酸化物系介在物による表面欠陥
の発生率を調査した。
【0060】表3に各試験における試験条件及び試験結
果を示し、又、図5に酸素/Al比と製品欠陥指数との
関係を示す。
【0061】
【表3】
【0062】表3及び図5に示すように、酸素/Al比
が400を越えると、製品欠陥指数が0.5を越えて清
浄性が劣化することが分かった。又、酸素/Al比が3
00未満でも、製品欠陥指数は低く、清浄性の点からは
全く問題なかったが、溶鋼のAl濃度が増加するので成
分調整に配慮する必要があり、過剰にAlが添加されて
いるため、経済的にも問題があることが分かった。
【0063】又、本実施例ではスラグの厚みは5.1c
m以上であり、最大径がそれ以上のAlを添加した場合
(試験No.11,12)には、Alが一部溶鋼へ達した
ため、酸素/Al比がほぼ同一である試験No.3〜5に
比較してスラグの還元がやや不足したが、製品欠陥指数
は0.5以下を確保できた。このように、酸素/Al比
が300〜400の範囲では清浄性の高い薄鋼板製品を
得ることができ、特に、Alの最大径が5cm以下の場
合では清浄性が高く、又、スラグ中に未反応のAlも残
留していなかった。
【0064】従来、スラグの酸素濃度を測定しないでス
ラグ改質を実施した場合にも、酸素/Al比が偶然30
0〜400の範囲だったものは製品欠陥指数が低くなっ
たが、その割合は70%程度であった。尚、表3の備考
欄には、本発明の範囲内で製造した試験は実施例と表示
し、金属Alの添加量が本発明の範囲を外れた試験は比
較例と表示した。
【0065】[実施例4]炭素濃度が0.02〜0.0
6質量%である約250トンの溶鋼を転炉から取鍋に未
脱酸状態のまま出鋼し、RH真空脱ガス装置に搬送して
精錬した。RH真空脱ガス装置では、先ず真空脱炭処理
し、次いで、溶鋼中の溶解酸素量を酸素センサーで測定
して、溶解酸素を脱酸するために必要な金属Al量と製
品成分規格(0.02〜0.04質量%)を満足するた
めに必要な金属Al量との合計量を添加した。
【0066】その後、環流用Ar流量を3000Nl/
min、真空槽内の圧力を66.7〜266.6Pa
(0.5〜2torr)の状態に維持したまま、取鍋の
周方向4箇所に設置したランスを取鍋内の溶鋼に浸漬さ
せ、これらのランスからArを吹き込んでスラグを攪拌
しつつ、スラグ改質剤として直径が1cm程度の金属A
lを取鍋内のスラグ上に添加した。その際、取鍋内のス
ラグのFeO濃度を酸素センサーにより測定し、酸素/
Al比が250〜450の範囲となるように金属Al量
を調整して添加し、溶鋼の清浄性に及ぼす酸素/Al比
の影響を調査した。取鍋内のスラグ量(Ws )はスラグ
厚みと取鍋の内径から算出した。取鍋内スラグの組成は
CaO−SiO2 −Al23 −MgO系であった。ス
ラグ改質剤添加後、必要に応じて溶鋼を環流させてRH
真空脱ガス装置による精錬を終了した。この環流中、溶
鋼の成分調整を行った。
【0067】その後、連続鋳造機にてスラブ鋳片に鋳造
し、熱間圧延及び冷間圧延を経て、薄鋼板製品とし、薄
鋼板製品における酸化物系介在物による表面欠陥の発生
率を調査した。
【0068】表4に各試験における試験条件及び試験結
果を示し、又、図6に酸素/Al比と製品欠陥指数との
関係を示す。
【0069】
【表4】
【0070】表4及び図6に示すように、酸素/Al比
が400を越えると、製品欠陥指数が0.5を越えて清
浄性が劣化することが分かった。又、酸素/Al比が3
00未満になると、製品欠陥指数は低く、清浄性の点か
らは全く問題なかったが、過剰にAlが添加されている
ため、経済的に問題があることが分かった。酸素/Al
比が300〜400の範囲では清浄性が高く、又、スラ
グ中に未反応のAlも残留していなかった。
【0071】従来、RH真空脱ガス装置においてスラグ
の酸素濃度を測定しないで金属Alを添加してスラグ改
質を実施した場合にも、酸素/Al比が偶然300〜4
00の範囲だったものは製品欠陥指数が低くなったが、
その割合は75%程度であった。尚、表4の備考欄に
は、本発明の範囲内で製造した試験は実施例と表示し、
金属Alの添加量が本発明の範囲を外れた試験は比較例
と表示した。
【0072】
【発明の効果】本発明によれば、スラグ還元用Alをス
ラグ中のFeO濃度に応じて添加するので、過剰なAl
を添加することなく、スラグのFeO濃度を安定して低
くすることができ、その結果、溶鋼のスラグによる再酸
化が抑制され、酸化物系介在物が極めて少ない高清浄鋼
を安定して製造することが可能となり、工業上有益な効
果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスラグ改質の実施の形態の例を示
す模式図である。
【図2】本発明によるスラグ改質の実施の形態の例を示
す模式図である。
【図3】実施例1における酸素/Al比と製品欠陥指数
との関係を示す図である。
【図4】実施例2における酸素/Al比と製品欠陥指数
との関係を示す図である。
【図5】実施例3における酸素/Al比と製品欠陥指数
との関係を示す図である。
【図6】実施例4における酸素/Al比と製品欠陥指数
との関係を示す図である。
【符号の説明】 1 溶鋼 2 スラグ 3 溶鋼保持容器 4 スラグ改質剤 5 酸素センサー 6 投入装置 7 バブリングランス 8 ガス気泡
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊地 良輝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 櫻井 栄司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K013 AA07 BA08 CA01 CF01 DA13 FA05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 精錬炉で精錬した溶鋼を溶鋼保持容器に
    出鋼した後、この溶鋼上に存在するスラグへAlを含有
    するスラグ改質剤を添加してスラグを改質する際に、ス
    ラグ改質剤添加前のスラグ中FeO濃度の分析値とスラ
    グ量とに応じて、下記の(1)式を満足するようにスラ
    グ改質剤をスラグ上へ添加してスラグの酸化度を低減さ
    せることを特徴とする高清浄鋼の製造方法。 (%FeO)Ws/300≦QAl≦(%FeO)Ws/100…(1) 但し、(1)式において各符号は以下を表すものであ
    る。 (%FeO):スラグ中のFeO濃度(質量%) Ws :スラグ量(kg/ton-steel) QAl:スラグ改質剤中のAl添加量(kg/ton-steel)
  2. 【請求項2】 精錬炉で精錬した溶鋼を溶鋼保持容器に
    出鋼した後、この溶鋼上に存在するスラグへAlを含有
    するスラグ改質剤を添加してスラグを改質する際に、ス
    ラグ改質剤添加前のスラグ中FeO濃度の分析値とスラ
    グ量とに応じて、下記の(2)式を満足するようにスラ
    グ改質剤をスラグ上へ添加し、次いで、スラグ又は溶鋼
    を不活性ガスにより撹拌してスラグの酸化度を低減させ
    ることを特徴とする高清浄鋼の製造方法。 (%FeO)Ws/400≦QAl≦(%FeO)Ws/300…(2) 但し、(2)式において各符号は以下を表すものであ
    る。 (%FeO):スラグ中のFeO濃度(質量%) Ws :スラグ量(kg/ton-steel) QAl:スラグ改質剤中のAl添加量(kg/ton-steel)
  3. 【請求項3】 スラグ中のFeO濃度を、固体電解質を
    用いた酸素センサーにより測定することを特徴とする請
    求項1又は請求項2に記載の高清浄鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 その最大径が溶鋼上に存在するスラグの
    厚みより小さいAlを含有するスラグ改質剤を用いるこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1つに
    記載の高清浄鋼の製造方法。
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