JP2003014714A - ヘモグロビン類の測定方法 - Google Patents

ヘモグロビン類の測定方法

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JP2003014714A
JP2003014714A JP2001198865A JP2001198865A JP2003014714A JP 2003014714 A JP2003014714 A JP 2003014714A JP 2001198865 A JP2001198865 A JP 2001198865A JP 2001198865 A JP2001198865 A JP 2001198865A JP 2003014714 A JP2003014714 A JP 2003014714A
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Yuji Setoguchi
雄二 瀬戸口
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特に安定型ヘモグロビンA1cを短時間で分
離し、その比率を高精度で測定することができるヘモグ
ロビン類の測定方法を提供する。 【解決手段】 カチオン交換液体クロマトグラフィーに
よるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶
血させる際に用いるpHが5.0〜10.0の溶血試
薬、および、ヘモグロビンA0よりも前に溶出するヘモ
グロビン類を溶出させるための溶離液Aとヘモグロビン
A0を溶出させるための溶離液Bとの少なくとも2種類
の溶離液を用い、上記溶血試薬および/または上記溶離
液Aにアジ化物イオンが含有され、かつ、上記溶離液A
にカオトロピックイオンが含有され、上記溶離液Bのp
Hが溶離液AのpHより0.1〜8.0高く、かつ、上
記溶離液Bの塩濃度が溶離液Aの塩濃度より10〜10
00mM高いことを特徴とするヘモグロビン類の測定方
法、ならびに、溶離液Bにカオトロピックイオンが含有
されることを特徴とする上記ヘモグロビン類の測定方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カチオン交換液体
クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】ヘモグロビンA1c(以下、「HbA1
c」と記す)は、血液中の糖が赤血球に入った後に、ヘ
モグロビンと不可逆的に結合して生成したものであり、
過去1〜2カ月間の血液中の平均的な血糖値(血液中の
グルコース濃度)を反映する。このため、HbA1c
は、糖尿病のスクリーニング検査や糖尿病患者の血糖管
理状態を把握する等の糖尿病診断の指標として広く利用
されている。
【0003】HbA1cは、血液中のグルコースとヘモ
グロビンA(以下、「HbA」と記す)とが反応して生
成された糖化ヘモグロビン(以下、「GHb」と記す)
であり、これが可逆的に反応したものを不安定型HbA
1cと言い、不安定型HbA1cを経て不可逆的に反応
したものを安定型HbA1cと言う。そして、上記糖尿
病診断の指標としては、安定型HbA1cを用いること
が好ましく、臨床検査分野においては、安定型HbA1
cの比率を高精度で測定し得る方法の開発が強く望まれ
ている。
【0004】従来、このHbA1cの測定方法として
は、一般に液体クロマトグラフィー法や免疫法が用いら
れている。
【0005】液体クロマトグラフィー法によるHbA1
cの測定は、例えば、特公平8−7198号公報に開示
されているように、主としてカチオン交換液体クロマト
グラフィー法により行われている。溶血液試料をカチオ
ン交換液体クロマトグラフィーにより分離すると、通
常、ヘモグロビンA1a(以下、「HbA1a」と記
す)およびヘモグロビンA1b(以下、「HbA1b」
と記す)、ヘモグロビンF(以下、「HbF」と記
す)、不安定型HbA1c、安定型HbA1cならびに
ヘモグロビンA0(以下、「HbA0」と記す)などの
ピークが出現する。また、HbA1a、HbA1bおよ
びHbA1cは、HbAが糖化されたGHbであり、H
bFは、α鎖とγ鎖とからなる胎児性ヘモグロビンであ
り、該HbF値は、溶血性貧血の診断指標としても用い
られている。
【0006】なお、糖尿病の診断の指標として使用され
ているHbA1cは、最近では、前述したように安定型
HbA1cであり、この安定型HbA1cは、全ヘモグ
ロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの
面積の比率(%)として求められている。
【0007】ところが、安定型HbA1cピークと不安
定型HbA1cピークとの分離は一般的に困難であるた
め、例えば、特開昭63−298063号公報では、血
液中の少なくとも赤血球および/またはヘモグロビンを
含む試料を、リン酸縮合体および/またはリン酸縮合体
の塩を含む解離用媒質と接触させて、該赤血球および/
またはヘモグロビンに含まれる不安定型HbA1cをヘ
モグロビンとグルコースとに解離させる工程、および、
該解離後の試料中のヘモグロビンをイオン交換クロマト
グラフィーで各ヘモグロビン成分に分離し、該試料中に
存在する安定型HbA1cを測定する工程、を包含する
糖化ヘモグロビンの測定方法が開示されている。
【0008】しかし、上記公報に開示されている測定方
法では、安定型HbA1cの分離が不十分なため、測定
精度が悪いという問題点がある。
【0009】また、液体クロマトグラフィー法によるヘ
モグロビン類の測定方法においては、アセチル化ヘモグ
ロビンやカルバミル化ヘモグロビンなどの修飾ヘモグロ
ビンの影響を受けると言われ、これら修飾ヘモグロビン
のピークも安定型HbA1cのピーク付近に溶出するた
め、安定型HbA1cを短時間で分離することが困難で
あるという問題点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来の問題点に鑑み、特に安定型HbA1cを短時間で
分離し、その比率を高精度で測定することができるヘモ
グロビン類の測定方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よるヘモグロビン類の測定方法は、カチオン交換液体ク
ロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法にお
いて、血液検体を溶血させる際に用いるpHが5.0〜
10.0の溶血試薬、および、ヘモグロビンA0よりも
前に溶出するヘモグロビン類を溶出させるための溶離液
AとヘモグロビンA0を溶出させるための溶離液Bとの
少なくとも2種類の溶離液を用い、上記溶血試薬および
/または上記溶離液Aにアジ化物イオンが含有され、か
つ、上記溶離液Aにカオトロピックイオンが含有され、
上記溶離液BのpHが溶離液AのpHより0.1〜8.
0高く、かつ、上記溶離液Bの塩濃度が溶離液Aの塩濃
度より10〜1000mM高いことを特徴とする。
【0012】また、請求項2に記載の発明によるヘモグ
ロビン類の測定方法は、上記請求項1に記載のヘモグロ
ビン類の測定方法において、溶離液Bにカオトロピック
イオンが含有されることを特徴とする。
【0013】本発明のヘモグロビン類の測定方法では、
血液検体を溶血させる際にpHが5〜10の溶血試薬が
用いられる。
【0014】本発明で用いられる溶血試薬は、赤血球よ
り低張な水溶液であれば良い。なお、ここで言う溶血と
は、赤血球膜が破れ、血色素などの内容物(例えば、ヘ
モグロビン類)が赤血球外に出ることを意味する。
【0015】本発明においては、上記溶血試薬のpHが
5.0〜10.0であることが必要であり、好ましくは
5.5〜9.5であり、より好ましくは6.0〜9.0
である。
【0016】溶血試薬のpHが5.0未満であると、ア
ジ化水素が発生しやすくなったり、ヘモグロビン類が変
性しやすくなり、逆に溶血試薬のpHが10.0を超え
ると、溶血時にヘモグロビン類が変性し、高精度で測定
することができなくなる。
【0017】本発明で用いられる溶血試薬には、本発明
の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えばホ
ウ酸などの公知の各種不安定型HbA1c除去試薬が含
有されていても良い。これらの不安定型HbA1c除去
試薬は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用
されても良い。不安定型HbA1c除去処理を行う場合
には、上記除去試薬を添加した後、30〜60℃で加温
することが好ましい。また、室温で不安定型HbA1c
除去処理を行う場合には、処理時間を10分〜5時間と
することが好ましい。
【0018】また、本発明で用いられる溶血試薬には、
本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例
えば、無機酸、有機酸、無機酸もしくは有機酸の塩、有
機物、一般にグッド(Good)の緩衝液と呼称される
ものを構成する物質などの緩衝剤が含有されていても良
い。これらの緩衝剤は、単独で用いられても良いし、2
種類以上が併用されても良い。
【0019】上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホ
ウ酸、炭酸等が挙げられる。これらの無機酸は、単独で
用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0020】上記有機酸や有機物としては、例えば、カ
ルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキ
シカルボン酸、アミノ酸、アミン類、イミダゾール類、
ピリジン、カコジル酸、トリス(ヒドロキシメチル)ア
ミノメタン、グリシルグリシン、ビロリン酸等が挙げら
れる。これらの有機酸や有機物は、単独で用いられても
良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】カルボン酸としては、例えば、酢酸やプロ
ピオン酸等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例え
ば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マ
レイン酸、フタル酸、フマル酸等が挙げられる。カルボ
ン酸誘導体としては、例えば、β,β−ジメチルグルタ
ル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸等が挙げられる。ヒ
ドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石
酸、乳酸等が挙げられる。アミノ酸としては、例えば、
アスパラギン酸、アスパラギン、グリシン等が挙げられ
る。アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ジ
エタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ
る。イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、
5(4)−メチルイミダゾール、2,5(4)−ジメチ
ルイミダゾール等が挙げられる。
【0022】上記無機酸もしくは有機酸の塩としては、
公知のもので良く、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩
等が挙げられる。これらの無機酸もしくは有機酸の塩
は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用され
ても良い。
【0023】上記一般にグッド(Good)の緩衝液と
呼称されるものを構成する物質としては、例えば、2−
(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−
2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホ
ン酸(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イ
ミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistr
is)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(T
ris)、ADA、PIPES、Bistrispro
pane、ACEA、MOPS、BES、TES、HE
PPS、Tricine、Bicine、TAPS、C
APS等が挙げられる。これらの物質は、単独で用いら
れても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0024】溶血試薬中における上記緩衝剤の濃度は、
水に溶解された状態で緩衝作用を発現する範囲であれば
良く、特に限定されるものではないが、0.1〜100
0mMであることが好ましく、より好ましくは1〜50
0mMであり、さらに好ましくは2〜200mMであ
る。
【0025】さらに、本発明で用いられる溶血試薬に
は、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じ
て、後述する溶離液Aに含有されていても良い添加剤、
例えば、無機塩類、pH調節剤、水溶性有機溶媒、ヘモ
グロビンの安定剤、アミン類、界面活性剤等の各種添加
剤の1種類もしくは2種類以上が含有されていても良
い。
【0026】本発明のヘモグロビン類の測定方法では、
HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類を溶出させ
るための溶離液AとHbA0を溶出させるための溶離液
Bとの少なくとも2種類の溶離液が用いられる。
【0027】本発明においては、前記溶血試薬および/
または上記溶離液Aにアジ化物イオンが含有されてい
る。すなわち、アジ化物イオンは、溶血試薬および溶離
液Aのいずれか一方に含有されていても良いし、双方に
含有されていても良い。
【0028】また、本発明においては、上記溶離液Aに
カオトロピックイオンが含有されている。
【0029】上記溶離液Aとしては、特定のpHおよび
塩濃度を有する1種類の溶離液Aを用いても良いし、異
なるpHおよび/または塩濃度を有する2種類以上の溶
離液Aを併用しても良い。
【0030】上記アジ化物イオンの生成源としては、水
溶液中で解離してアジ化物イオンを生成するものであれ
ば良く、特に限定されるものではないが、例えば、公知
の各種アジ化物塩等が挙げられ、好適に用いられるが、
なかでもアジ化ナトリウムやアジ化バリウム等がより好
適に用いられる。これらのアジ化物イオンの生成源は、
単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても
良い。
【0031】溶血試薬中および/または溶離液A中にお
ける上記アジ化物イオンの生成源の濃度は、特に限定さ
れるものではないが、0.15〜76.9mM(0.0
01〜0.5重量%)であることが好ましく、より好ま
しくは0.77〜61.5mM(0.005〜0.4重
量%)である。アジ化物イオンの生成源の上記濃度が
0.15mM(0.001重量%)未満であると、Hb
Fの分離性が悪くなることがあり、逆にアジ化物イオン
の生成源の上記濃度が76.9mM(0.5重量%)を
超えても、もはやHbFの分離性はそれ以上向上しな
い。
【0032】本発明におけるカオトロピックイオンと
は、水溶液に解離して生じたイオンにより、水の構造が
破壊され、疎水性物質と水とが接触したときに起こる、
水のエントロピー減少を抑制するものであり、例えば、
陰イオンや陽イオンが挙げられる。これらのカオトロピ
ックイオンは、単独で用いられても良いし、2種類以上
が併用されても良い。
【0033】上記陰イオンとしては、例えば、トリブロ
モ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イ
オン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸
イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、酢
酸イオン、尿素イオン等が挙げられ、好適に用いられ
る。これらの陰イオンは、単独で用いられても良いし、
2種類以上が併用されても良い。
【0034】また、上記陽イオンとしては、例えば、バ
リウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオ
ン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオ
ン、グアニジンイオン等が挙げられ、好適に用いられ
る。これらの陽イオンは、単独で用いられても良いし、
2種類以上が併用されても良い。
【0035】上記カオトロピックイオンのなかでも、安
定型HbA1cの測定精度をより向上させることができ
ることから、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イ
オン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸
イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオ
ン等の陰イオンや、バリウムイオン、カルシウムイオ
ン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイ
オン、グアニジンイオン等の陽イオンがより好適に用い
られ、とりわけ、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢
酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩
素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、グアニ
ジンイオン等がさらに好適に用いられる。
【0036】溶離液A中における上記カオトロピックイ
オンの濃度は、特に限定されるものではないが、0.1
〜3000mMであることが好ましく、より好ましくは
1〜1000mMであり、さらに好ましくは10〜50
0mMである。カオトロピックイオンの上記濃度が0.
1mM未満であると、ヘモグロビン類の分離効果が低下
して、測定精度が悪くなることがあり、逆にカオトロピ
ックイオンの上記濃度が3000mMを超えても、もは
やヘモグロビン類の分離効果はそれ以上向上しないの
で、測定精度もそれ以上向上しない。
【0037】本発明で用いられる溶離液Aには、本発明
の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、水に溶解
された状態で溶離液AのpHを4.0〜6.8にする緩
衝作用を発現する、例えば、無機酸、有機酸、無機酸も
しくは有機酸の塩等の緩衝剤が含有されていても良い。
これらの緩衝剤は、単独で用いられても良いし、2種類
以上が併用されても良い。
【0038】上記無機酸としては、例えば、リン酸や炭
酸等が挙げられる。これらの無機酸は、単独で用いられ
ても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】上記有機酸としては、例えば、カルボン
酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカル
ボン酸、カコジル酸、アミノ酸等が挙げられる。これら
の有機酸は、単独で用いられても良いし、2種類以上が
併用されても良い。
【0040】カルボン酸としては、例えば、酢酸やプロ
ピオン酸等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例え
ば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マ
レイン酸、フタル酸、フマル酸等が挙げられる。カルボ
ン酸誘導体としては、例えば、β,β−ジメチルグルタ
ル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸等が挙げられる。ヒ
ドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石
酸、乳酸等が挙げられる。アミノ酸としては、例えば、
アスパラギン酸やヒスチジン等が挙げられる。
【0041】上記無機酸もしくは有機酸の塩としては、
公知のもので良く、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩
等が挙げられる。これらの無機酸もしくは有機酸の塩
は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用され
ても良い。
【0042】上記無機酸や有機酸等の緩衝剤として、酸
解離定数値(pKa値)が2.15〜6.39の範囲に
ある物質と、pKa値が6.40〜10.50の範囲に
ある物質とを組み合わせて用いても良い。また、このよ
うに2種以上の物質を組み合わせて用いる代わりに、p
Ka値が2.15〜6.39の範囲と6.40〜10.
50の範囲との両方にある単一の物質を用いても良い。
なお、pKa値のより好ましい範囲は、2.61〜6.
39および6.40〜10.50であり、さらに好まし
い範囲は、2.80〜6.35および6.80〜10.
00であり、特に好ましい範囲は、3.50〜6.25
および7.00〜9.50である。
【0043】溶離液A中における上記緩衝剤の濃度は、
水に溶解された状態で溶離液AのpHを4.0〜6.8
にする緩衝作用を発現する範囲であれば良く、特に限定
されるものではないが、1〜1000mMであることが
好ましく、より好ましくは10〜500mMである。
【0044】本発明で用いられる溶離液Aは、特に限定
されるものではないが、pHが4.0〜6.8であるこ
とが好ましく、より好ましくは4.5〜5.8である。
溶離液AのpHが4.0未満であると、ヘモグロビン類
が変性することがあり、逆に溶離液AのpHが6.8を
超えると、ヘモグロビン類のプラス電荷が減少して、カ
チオン交換基に保持されにくくなり、分離能力が悪くな
ることがある。
【0045】本発明で用いられる溶離液Aには、本発明
の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、
無機塩類、pH調節剤、水溶性有機溶媒、ヘモグロビン
の安定剤、アミン類、界面活性剤等の各種添加剤の1種
類もしくは2種類以上が含有されていても良い。
【0046】上記無機塩類としては、例えば、塩化ナト
リウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウ
ム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの無機塩
類は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用さ
れても良い。また、溶離液A中における上記無機塩類の
濃度は、特に限定されるものではないが、1〜1500
mMであることが好ましい。
【0047】上記pH調節剤としては、公知の酸や塩基
が用いられて良く、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸
等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化
リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸
化カルシウム等の塩基が挙げられる。これらのpH調節
剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用さ
れても良い。また、溶離液A中における上記pH調節剤
の濃度は、特に限定されるものではないが、0.001
〜500mMであることが好ましい。
【0048】上記水溶性有機溶媒としては、例えば、メ
タノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン等が
挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、単独で用いら
れても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、
溶離液A中における上記水溶性有機溶媒の濃度は、特に
限定されるものではないが、80体積%以下であること
が好ましく、かつ、前記カオトロピックイオンや緩衝剤
等が析出しない濃度であることが好ましい。
【0049】上記ヘモグロビンの安定剤としては、公知
の安定剤が用いられて良く、例えば、エチレンジアミン
四酢酸(EDTA)などのキレート剤、グルタチオンな
どの還元剤、各種酸化防止剤等が挙げられる。これらの
ヘモグロビンの安定剤は、単独で用いられても良いし、
2種類以上が併用されても良い。
【0050】上記アミン類としては、ヘモグロビンの非
特異的吸着を少なくし得るものであれば公知のアミン類
が用いられて良く、例えば、好ましくは分子量20〜5
00の第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン等が
挙げられる。これらのアミン類は、単独で用いられても
良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0051】上記界面活性剤としては、例えば、ノニオ
ン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界
面活性剤等が挙げられ、なかでもノニオン性界面活性剤
が好適に用いられる。これらの界面活性剤は、単独で用
いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。ま
た、溶離液A中における上記界面活性剤の濃度は、特に
限定されるものではないが、0.01〜10重量%であ
ることが好ましい。
【0052】上記ノニオン性界面活性剤としては、例え
ば、ポリオキシエチレンエーテル類{以下、ポリオキシ
エチレンをPOEと記し、エチレンオキシド付加モル数
を(n)と記す}や、モノラウリン酸ソルビタン、モノ
パルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタ
ン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウ
リン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソル
ビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、P
OE(n)モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
また、上記ポリオキシエチレンエーテル類の具体例とし
ては、例えば、POE(7)デシルエーテル、POE
(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエ
ーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE
(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテ
ル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セ
チルステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニ
ルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル等が
挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤は、単独で
用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0053】溶離液A中および/または溶血試薬中に界
面活性剤を含有させることにより、溶血を効率的に行う
ことができるとともに、例えば高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)等で測定を行う場合に、溶血試薬の通
過する流路等を洗浄する効果も得られる。
【0054】本発明のヘモグロビン類の測定方法では、
HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類を溶出させ
るための上述した溶離液AとHbA0を溶出させるため
の溶離液Bとの少なくとも2種類の溶離液が用いられ
る。
【0055】一般に、カチオン交換液体クロマトグラフ
ィーで分離されるヘモグロビン類のうち、HbA等から
なるHbA0は、HbA1cより後に溶出し、カラム中
の充填剤に強く保持されるので、測定時間が長くなる傾
向にある。
【0056】このため、HbA0の溶出には、充填剤と
の相互作用を弱めるために、例えば、(1)溶離液のp
Hを高くする方法、(2)溶離液の塩濃度を高くする方
法、(3)溶離液のpHを高くし、さらに塩濃度を高く
する方法等が採られるが、なかでも、HbA0の溶出、
分離をより短時間に良好に行うことができることから、
(3)溶離液のpHを高くし、さらに塩濃度を高くする
方法を採ることが好ましい。
【0057】本発明で用いられるHbA0を溶出させる
ための溶離液Bは、そのpHが溶離液AのpHより0.
1〜8.0高いこと、すなわち、溶離液BのpH−溶離
液AのpHが0.1〜8.0であることが必要であり、
好ましくは0.3〜7.0であり、より好ましくは0.
5〜6.0である。
【0058】溶離液BのpH−溶離液AのpHが0.1
未満であると、HbA0の溶出、分離に時間がかかり、
逆に溶離液BのpH−溶離液AのpHが8.0を超える
と、カラム中の充填剤の分解が起こり、ヘモグロビン類
の測定値に好ましくない影響を及ぼす欠点が生じる。
【0059】また、本発明で用いられるHbA0を溶出
させるための溶離液Bは、その塩濃度が溶離液Aの塩濃
度より10〜1000mM高いこと、すなわち、溶離液
Bの塩濃度−溶離液Aの塩濃度が10〜1000mMで
あることが必要であり、好ましくは30〜800mMで
あり、より好ましくは50〜600mMである。尚、こ
こで言う塩濃度とは、溶離液中の総陰イオン濃度を意味
する。
【0060】溶離液Bの塩濃度−溶離液Aの塩濃度が1
0mM未満であると、HbA0の溶出、分離に時間がか
かり、逆に溶離液Bの塩濃度−溶離液Aの塩濃度が10
00mMを超えると、カラムの圧力変動が大きくなる欠
点が生じる。
【0061】本発明で用いられる溶離液Bには、カオト
ロピックイオンが含有されていることが好ましい。前記
溶離液A中のみならず、溶離液B中にもカオトロピック
イオンを含有させることにより、HbA0の溶出、分離
をより効果的に行うことができる。
【0062】上記カオトロピックイオンとしては、前記
溶離液Aに含有させるものと同様の各種陰イオンや各種
陽イオンが挙げられる。これらのカオトロピックイオン
は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用され
ても良い。
【0063】溶離液B中におけるカオトロピックイオン
の濃度は、特に限定されるものではないが、1〜300
0mMであることが好ましく、より好ましくは10〜1
000mMであり、さらに好ましくは50〜500mM
である。カオトロピックイオンの上記濃度が1mM未満
であると、HbA0の溶出、分離効果が十分に向上しな
いことがあり、逆にカオトロピックイオンの上記濃度が
3000mMを超えても、もはやHbA0の溶出、分離
効果はそれ以上向上しないので、測定精度もそれ以上向
上しない。
【0064】また、上記溶離液Bには、アジ化物イオン
が含有されていても良い。上記アジ化物イオンの生成源
としては、前記溶血試薬および/または前記溶離液Aに
含有させるものと同様の各種アジ化物塩等が挙げられ
る。これらのアジ化物イオンの生成源は、単独で用いら
れても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0065】本発明で用いられる溶離液Bには、本発明
の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、
無機酸、有機酸、無機酸もしくは有機酸の塩、有機物、
一般にグッド(Good)の緩衝液と呼称されるものを
構成する物質などの緩衝剤が含有されていても良い。
【0066】上記緩衝剤の具体例としては、例えば、リ
ン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸またはその塩;クエン酸
などのヒドロキシカルボン酸、β,β−ジメチルグルタ
ル酸などのカルボン酸誘導体、マレイン酸などのジカル
ボン酸、カコジル酸等の有機酸またはその塩;2−(N
−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−2−
ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸
(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ
トリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bistri
s)、Tris、ADA、PIPES、Bistris
propane、ACES、MOPS、BES、TE
S、HEPES、HEPPS、Tricine、Bic
ine、グリシルグリシン、TAPS、CAPS等の一
般にグッド(Good)の緩衝液と呼称されるものを構
成する物質;BrittonとRobinsonの緩衝
液;GTA緩衝液;イミダゾール等のイミダゾール類;
エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリ
エチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールア
ミン等のアミン類;グリシン、β−アラニン、アスパラ
ギン酸、アスパラギン等のアミノ酸類等が挙げられる。
これらの緩衝剤は、単独で用いられても良いし、2種類
以上が併用されても良い。
【0067】また、本発明で用いられる溶離液Bには、
本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例
えば、無機塩類、pH調節剤、水溶性有機溶媒、ヘモグ
ロビンの安定剤、アミン類、界面活性剤等の各種添加剤
の1種類もしくは2種類以上が含有されていても良い。
【0068】上記各種添加剤の具体例としては、前記溶
血試薬や前記溶離液Aに含有させても良いものと同様の
ものがそれぞれ挙げられる。これらの各種添加剤は、単
独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良
い。
【0069】本発明のヘモグロビン類の測定方法におい
ては、溶離液Aおよび溶離液Bに加うるに、本発明の課
題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、他の溶離液の
1種類もしくは2種類以上が併用されても良い。
【0070】本発明のヘモグロビン類の測定方法におい
て、溶離液の送液方法としては、例えば、段階溶出法、
グラディエント溶出法、ステップアップグラディエント
溶出法等の公知の方法が挙げられ、いずれの方法が採ら
れても良い。
【0071】本発明のヘモグロビン類の測定方法で用い
られる充填剤は、少なくとも1種類のカチオン交換基を
有している粒子よりなるものであり、例えば、高分子粒
子に少なくとも1種類のカチオン交換基を導入すること
により得られる。
【0072】上記粒子としては、例えば、シリカ、ジル
コニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、
キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリア
クリル酸エステルなどの合成高分子粒子;公知の非多孔
性粒子等が挙げられる。これらの粒子は、単独で用いら
れても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0073】上記粒子の平均粒子径は、特に限定される
ものではないが、0.5〜20μmであることが好まし
く、より好ましくは1〜10μmである。また、上記粒
子の粒度分布は、特に限定されるものではないが、変動
係数値{CV値(100×粒子径の標準偏差/平均粒子
径)}で40%以下であることが好ましく、より好まし
くは30%以下である。
【0074】また、上記粒子は、導入されるカチオン交
換基以外の構成成分がより親水性であることが好まし
い。さらに、上記粒子として高分子粒子を用いる場合、
高分子粒子は、より良好な耐圧性や耐膨潤性を得るため
に、架橋度の高いものであることが好ましい。
【0075】上記粒子に導入されるカチオン交換基とし
ては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸
基などの公知の各種カチオン交換基が挙げられる。これ
らのカチオン交換基は、単独で導入されても良いし、2
種類以上が導入されても良い。
【0076】粒子へのカチオン交換基の導入方法として
は、例えば、粒子を調製した後、粒子が有する官能基
(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等)
に化学反応でカチオン交換基を導入することにより、カ
チオン交換基が導入された粒子を得る方法、例えばカチ
オン交換基含有単量体を架橋性単量体などと混合し、重
合開始剤の存在下で重合させるように、カチオン交換基
含有単量体を重合させることにより、カチオン交換基が
導入された高分子粒子を得る方法、例えば(メタ)アク
リル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどのカチオ
ン交換基含有重合性エステルを架橋性単量体などと混合
し、重合開始剤の存在下で重合させた後、得られた高分
子粒子を加水分解処理して、エステルをカチオン交換基
に変換させることにより、カチオン交換基が導入された
高分子粒子を得る方法、例えば特公平8−7197号公
報に記載されているように、架橋高分子粒子を調製した
後、カチオン交換基含有単量体を添加して、架橋高分子
粒子の表面部分でカチオン交換基含有単量体を重合させ
ることにより、カチオン交換基が導入された高分子粒子
を得る方法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良
い。
【0077】上記充填剤(カチオン交換基が導入された
粒子もしくは高分子粒子)は、カラムに充填されて、液
体クロマトグラフィー測定に用いられる。
【0078】上記カラムのサイズは、特に限定されるも
のではないが、内径が0.1〜50mm、長さが1〜3
00mmであるものが好ましく、より好ましくは、内径
が0.2〜30mm、長さが5〜200mmのものであ
る。カラムの内径が0.1mm未満であるか、長さが1
mm未満であると、作業性や分離能力が悪くなることが
あり、逆にカラムの内径が50mmを超えるか、長さが
200mmを超えると、充填剤の必要量が多くなるのみ
ならず、分離能力が悪くなることがある。
【0079】充填剤のカラムへの充填方法としては、公
知の任意の充填方法が採られて良いが、なかでもスラリ
ー充填法を採ることが好ましい。具体的には、例えば、
先ず粒子状の充填剤を溶離液Aや溶離液Bなどに分散さ
せたスラリーを調製し、このスラリーを送液ポンプなど
でカラム中に圧入することにより、充填剤をカラムへ充
填すれば良い。
【0080】上記カラムの素材としては、例えば、ステ
ンレスなどの金属、ガラス、ポリエーテルエーテルケト
ン(PEEK)などの合成樹脂等の公知の各種素材が挙
げられる。これらのカラムの素材は、単独で用いられて
も良いし、2種類以上が併用されても良い。また、充填
剤とカラム本体が接する部位を不活性(イナート)な素
材で被覆しても良く、そのイナートな素材としては、例
えば、PEEK、ポリエチレン、テフロン(登録商
標)、チタン化合物、珪素化合物、シリコン膜等が挙げ
られる。これらのイナートな素材は、単独で用いられて
も良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0081】本発明で用いられるカラムフィルターおよ
び/またはプレフィルターとしては、イナートな素材か
らなるフィルター、または、フィルターの表面がイナー
トな素材で被覆されているフィルターを用いることが好
ましい。上記イナートな素材としては、例えば、セルロ
ースエステル、セルロースアセテート、セルローストリ
アセテート、セルロース、セルロースナイトレート、ポ
リテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフロライ
ド、ポリスルフォン、ポリエチレン、PEEK、ポリエ
ーテルスルホン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリフッ
化ビニリデン、ガラス素材、アクリル共重合体、酸化物
セラミック、炭化物セラミック、窒化物セラミック、珪
化物セラミック、硼化物セラミック、チタン等が挙げら
れる。これらのイナートな素材は、単独で用いられても
良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0082】また、例えばステンレスなどのイナートで
ない素材を用いる場合には、例えば、上記イナートな素
材で被覆する方法、シリコーン処理などのイナート化処
理を施す方法、例えば牛血清アルブミン、ゼラチン、カ
ゼイン、グロブリン、ヘモグロビンなどのブロッキング
試薬によりブロッキングする方法等を採ることが好まし
い。
【0083】本発明のヘモグロビン類の測定方法に使用
される液体クロマトグラフィー装置は、公知のもので良
く、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、
カラム、検出器などから構成される。また、上記液体ク
ロマトグラフィー装置には、例えば、カラム恒温槽や溶
離液の脱気装置などの他の付属装置が備えられていても
良い。
【0084】ヘモグロビン類を測定する際のカラム温度
は、特に限定されるものではないが、安定型HbA1c
の溶出や分離を良くするために、25〜60℃であるこ
とが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。
【0085】また、ヘモグロビン類を測定する際のカラ
ム圧力は、特に限定されるものではないが、カラムや装
置の耐久性を良くするために、9.8×104 〜3.9
×106 Pa(1〜40kgf/cm2 )であることが
好ましく、より好ましくは2.0×105 〜3.4×1
6 Pa(2〜35kgf/cm2 )である。
【0086】本発明のヘモグロビン類の測定方法におけ
る他の測定条件は、公知の条件で良く、例えば、溶離液
Aや溶離液Bの流速は、特に限定されるものではない
が、0.05〜5ml/分であることが好ましく、より
好ましくは0.2〜3ml/分である。また、ヘモグロ
ビン類の検出は、波長415nmの可視光を用いて行う
方法が好ましいが、特に上記方法に限定されるものでは
ない。さらに、測定用試料としては、前記溶血試薬によ
り溶血された試料を用いる。上記測定用試料の液体クロ
マトグラフィー装置への注入量は、希釈倍率によっても
異なるが、一般的には0.1〜100μl程度であるこ
とが好ましい。
【0087】溶離液の送液方法を段階溶出法として測定
を行う場合の装置の構成例を図1に示す。溶離液A、溶
離液B、溶離液Cおよび溶離液Dは、それぞれ溶出力が
異なる、すなわち、pHおよび/または塩濃度が異なる
溶離液であり、電磁弁1によって設定時間ごとに各溶離
液に切り替えられるように構成されている。各溶離液
は、送液ポンプ2により、試料注入部3から導入された
測定用試料とともにカラム4に導かれ、各成分が検出器
5により検出される。各ピーク面積、高さ等はインテグ
レータ6により算出される。
【0088】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳しく説明するた
め以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみ
に限定されるものではない。
【0089】(実施例1) 1.充填剤の調製 テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化
学社製)450gおよび2−ヒドロキシ−1,3−ジメ
タクリロキシプロパン(和光純薬工業社製)50gの混
合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬工業社製)2gを溶
解した。これをポリビニルアルコール(日本合成化学社
製)の4重量%水溶液2500mlに分散させ、撹拌し
ながら窒素雰囲気下で80℃に昇温し、1.5時間重合
反応を行った。次いで、重合反応系を35℃に冷却した
後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン
酸(東京化成社製)の50重量%水溶液400gおよび
メタノール400mlを添加し、1時間攪拌しながら再
び80℃に昇温し、1.3時間重合反応を行った。重合
反応終了後、洗浄、乾燥、分級の工程を経て、平均粒子
径が6.5μmの粒子状の充填剤を調製した。
【0090】2.充填剤のカラムへの充填 上記で得られた充填剤を以下のようにしてカラムに充填
した。充填剤0.7gを50mMリン酸緩衝液(pH
5.8)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、
均一に撹拌混合した。次いで、その全量をステンレス製
の空カラム(内径4.6mm、長さ35mm)を接続し
たパッカー(梅谷精機社製)に注入した。上記パッカー
に送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力約3×
107 Pa(300kgf/cm2 )の定圧で充填剤を
カラムへ充填した。
【0091】3.ヘモグロビン類の測定 上記で得られたカラムを用いて以下の測定条件でヘモグ
ロビン類の測定を行った。 〔測定条件〕 1)システム (1)送液ポンプ:LC−9A(島津製作所社製) (2)オートサンプラ:ASU−420(積水化学工業
社製) (3)検出器:SPD−6AV(島津製作所社製) 2)溶離液 (1)溶離液A:45mMの過塩素酸および4.6mM
(0.03重量%)のアジ化ナトリウムを含有する50
mMのリン酸緩衝液(pH5.3) (2)溶離液B:200mMの過塩素酸および4.6m
M(0.03重量%)のアジ化ナトリウムを含有する5
0mMのリン酸緩衝液(pH8.4) 3)測定開始より0〜3分の間は上記溶離液Aを流し、
3〜3.2分の間は上記溶離液Bを流し、3.2〜5分
の間は上記溶離液Aを流した。 4)流速:2.0ml/分 5)検出波長:415nm 6)測定用試料注入量:10μl
【0092】4.測定用試料(a)の調製 HbF高値患者血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化
ナトリウムを10mg/ml(血液)となるように添加
した。これに、150倍量の溶血試薬{界面活性剤とし
てポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニル
エーテル(商品名「トリトンX−100」、東京化成社
製)0.1重量%を含有するリン酸緩衝液(pH7.
0)}を添加し、溶血して、測定用試料(a)を調製し
た。
【0093】5.測定結果 上記測定条件により、測定用試料(a)のヘモグロビン
類を測定して得られたクロマトグラムを図2に示した。
ピーク7はHbA1aおよびHbA1b、ピーク8はH
bF、ピーク9は不安定型HbA1c、ピーク10は安
定型HbA1c、ピーク11はHbA0をそれぞれ表
す。図2から明らかなように、ピーク8、ピーク9およ
びピーク10が良好に分離されていることが分かる。
【0094】(実施例2)溶離液および溶血試薬を以下
に示す組成としたこと以外は、実施例1の場合とと同様
にして、測定用試料(a)のヘモグロビン類を測定し
た。得られたクロマトグラムは図2と同様であり、各ピ
ーク間の分離は良好であった。 溶離液A:50mMの過塩素酸を含有する、25mMコ
ハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH5.3) 溶離液B:250mMの過塩素酸を含有する、20mM
コハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH8.4) 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」および9.2mM(0.06重量%)のアジ化ナ
トリウムを含有するリン酸緩衝液(pH7.0)
【0095】(実施例3)溶離液および溶血試薬を以下
に示す組成としたこと以外は、実施例1の場合とと同様
にして、測定用試料(a)のヘモグロビン類を測定し
た。得られたクロマトグラムは図2と同様であり、各ピ
ーク間の分離は良好であった。 溶離液A:48mMの過塩素酸および9.2mM(0.
06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、25mM
コハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH5.3) 溶離液B:250mMの過塩素酸および9.2mM
(0.06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、2
0mMコハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH8.4) 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」および12.3mM(0.08重量%)のアジ化
ナトリウムを含有するリン酸緩衝液(pH7.0)
【0096】(実施例4)実施例1の場合と同様にし
て、平均粒子径が3.0μmの充填剤を調製した。次い
で、実施例1の場合と同様にして、ステンレス製の空カ
ラム(内径1.5mm、長さ50mm)へ上記で得られ
た充填剤を充填した。
【0097】上記で得られたカラムを用い、測定条件を
以下に示す条件としたこと以外は、実施例1の場合と同
様にして、測定用試料(a)のヘモグロビン類を測定し
た。得られたクロマトグラムは図2と同様であり、各ピ
ーク間の分離は良好であり、かつ、ヘモグロビン類のピ
ークがシャープになった。 〔測定条件〕 1)システム (1)送液ポンプ:イナートポンプ2001、NANO
SPACE SI−1(資生堂社製) (2)オートサンプラ:2003(資生堂社製) (3)検出器:UV−VIS検出器2002(資生堂社
製) 2)溶離液 (1)溶離液A:48mMの過塩素酸および9.2mM
(0.06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、2
5mMコハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH5.3) (2)溶離液B:250mMの過塩素酸および9.2m
M(0.06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、
20mMコハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH8.
4) 3)溶血試薬 0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−100」およ
び12.3mM(0.08重量%)のアジ化ナトリウム
を含有するリン酸緩衝液(pH7.0) 4)流速:0.25ml/分 5)検出波長:415nm 6)測定用試料注入量:3μl
【0098】(比較例1)溶離液および溶血試薬を以下
に示す組成としたこと以外は、実施例1の場合とと同様
にして、測定用試料(a)のヘモグロビン類を測定し
た。得られたクロマトグラムを図3に示す。図3から明
らかなように、図2と比較して、ピーク8、ピーク9お
よびピーク10の分離が悪かった。 溶離液A:200mMのリン酸緩衝液(pH5.3) 溶離液B:330mMのリン酸緩衝液(pH6.0) 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」を含有するリン酸緩衝液(pH7.0)
【0099】(比較例2)溶離液および溶血試薬を以下
に示す組成としたこと以外は、実施例1の場合とと同様
にして、測定用試料(a)のヘモグロビン類を測定し
た。得られたクロマトグラムを図4に示す。図4から明
らかなように、図2と比較して、ピーク8およびピーク
9の分離が悪かった。 溶離液A:45mMの過塩素酸を含有する50mMのリ
ン酸緩衝液(pH5.3) 溶離液B:200mMの過塩素酸を含有する50mMの
リン酸緩衝液(pH8.4) 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」を含有するリン酸緩衝液(pH7.0)
【0100】(比較例3)溶離液および溶血試薬を以下
に示す組成としたこと以外は、実施例1の場合とと同様
にして、測定用試料(a)のヘモグロビン類を測定し
た。得られたクロマトグラムは図3と同様であり、図2
と比較して、ピーク8、ピーク9およびピーク10の分
離が悪かった。 溶離液A:4.6mM(0.03重量%)のアジ化ナト
リウムを含有する200mMのリン酸緩衝液(pH5.
3) 溶離液B:4.6mM(0.03重量%)のアジ化ナト
リウムを含有する330mMのリン酸緩衝液(pH6.
0) 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」を含有するリン酸緩衝液(pH7.0)
【0101】実施例1〜実施例4、および、比較例1〜
比較例3における測定用試料(a)の測定結果(HbF
およびHbA1cの測定精度)を表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】表1から明らかなように、実施例1〜実施
例4におけるHbF測定値は、2.00〜2.01%で
あり、CV値は、0.00〜0.76%であり、また、
HbA1c測定値は、7.03〜7.04%であり、C
V値は、0.00〜0.08%であり、測定精度(CV
値)が非常に優れていた。これに対し、比較例1〜比較
例3におけるHbF測定値は、順に2.89%、2.7
4%、2.97%であり、CV値は、順に16.10
%、14.35%、9.30%であり、実施例と比較し
て、測定精度が非常に悪かった。また、HbA1c測定
値については、比較例2は、比較例1および比較例3と
比較すると、良好な測定精度であったが、実施例と比較
すると、比較例1〜比較例3のいずれも測定精度が悪か
った。
【0104】(実施例5〜実施例10)ならびに(比較
例4および比較例5) 溶離液および溶血試薬を以下に示す組成とし、測定条件
を以下に示す条件とし、測定用試料を以下に示す測定用
試料(b)としたこと以外は実施例1の場合と同様にし
て、ヘモグロビン類の測定を行った。 溶離液A:30mMのトリクロロ酢酸および9.2mM
(0.06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、2
5mMコハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH5.3) 溶離液B:150mMのトリクロロ酢酸および9.2m
M(0.06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、
20mMコハク酸−20mMリン酸緩衝液(pH8.
4) 測定開始より0〜3分の間は上記溶離液Aを流し、3〜
3.2分の間は上記溶離液Bを流し、3.2〜5分の間
は上記溶離液Aを流した。 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」を含有するリン酸緩衝液、但し、溶血試薬のpH
は次のように調節した。実施例5:pH5.0、実施例
6:pH6.0、実施例7:pH7.0、実施例8:p
H8.0、実施例9:pH9.0、実施例10:pH1
0.0、比較例4:pH4.5、比較例5:pH10.
5 流速:2.0ml/分 検出波長:415nm 試料注入量:10μl 測定用試料:安定型HbA1c値が8.1%の患者血を
採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10m
g/ml(血液)となるように添加した。これを上記の
ようにpH調節した各溶血試薬により150倍に希釈し
たものを測定用試料(b)とした。
【0105】上記測定用試料(b)の安定型HbA1c
値をn=5で測定し、その平均値を図5に示した。図5
から明らかなように、溶血試薬のpHを5〜10(実施
例5〜実施例10)に調節した場合、ヘモグロビンの分
離パターンに影響がなく、安定型HbA1c値を精度良
く測定できた。これに対し、溶血試薬のpHを4.5
(比較例4)あるいは10.5(比較例5)に調節した
場合、ヘモグロビンの分離パターンが悪化し、安定型H
bA1c値を正確に測定できなかった。
【0106】(実施例11)溶離液および溶血試薬を以
下に示す組成とし、測定条件を以下に示す条件とし、測
定用試料を以下に示す測定用試料(c)としたこと以外
は実施例1の場合と同様にして、ヘモグロビン類の測定
を行った。 溶離液A:45mMの過塩素酸および9.2mM(0.
06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、50mM
のリン酸緩衝液(pH5.4) 溶離液B:200mMのリン酸緩衝液(pH6.8) 測定開始より0〜3分の間は上記溶離液Aを流し、3〜
3.2分の間は上記溶離液Bを流し、3.2〜4分の間
は上記溶離液Aを流した。 溶血試薬:0.1重量%の界面活性剤「トリトンX−1
00」を含有するリン酸緩衝液(pH7.0) 流速:2.0ml/分 検出波長:415nm 試料注入量:10μl 測定用試料:安定型HbA1c値が8.1%で、HbF
値が高値の患者血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化
ナトリウムを10mg/ml(血液)となるように添加
した。これを上記のように調製した溶血試薬により15
0倍に希釈したものを測定用試料(c)とした。
【0107】上記測定用試料(c)のヘモグロビン類を
連続的に測定し、安定型HbA1c値の変動を調べた。
【0108】(実施例12)溶離液Bを以下に示す組成
としたこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモ
グロビン類の測定を行った。溶離液B:200mMのリ
ン酸緩衝液(pH8.5)
【0109】(実施例13)溶離液Bを以下に示す組成
としたこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモ
グロビン類の測定を行った。溶離液B:200mMのリ
ン酸緩衝液(pH12.0)
【0110】(実施例14)溶離液Bを以下に示す組成
としたこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモ
グロビン類の測定を行った。 溶離液B:300mMの過塩素酸を含有する、25mM
コハク酸−30mMリン酸緩衝液(pH6.8)
【0111】(実施例15)溶離液Bを以下に示す組成
としたこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモ
グロビン類の測定を行った。 溶離液B:200mMの過塩素酸を含有する、25mM
コハク酸−30mMリン酸緩衝液(pH8.5)
【0112】(実施例16)溶離液Bを以下に示す組成
としたこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモ
グロビン類の測定を行った。 溶離液B:100mMの過塩素酸を含有する、25mM
コハク酸−30mMリン酸緩衝液(pH12.0)
【0113】(実施例17)測定用試料(c)を100
試料連続的に測定する毎に、以下に示すカラム洗浄液
I、カラム洗浄液IIおよびカラム洗浄シークエンスで
カラムの洗浄を行ったこと以外は実施例11の場合と同
様にして、ヘモグロビン類の測定を行った。 カラム洗浄液I:45mMの過塩素酸および9.2mM
(0.06重量%)のアジ化ナトリウムを含有する、2
5mMコハク酸−30mMリン酸緩衝液(pH5.3) カラム洗浄液II:200mMの過塩素酸を含有する、
25mMコハク酸−30mMリン酸緩衝液(pH8.
5) カラム洗浄シークエンス:上記洗浄液IIを1分間流し
た後、上記洗浄液Iを3分間流す
【0114】(比較例6)溶離液を以下に示す組成とし
たこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモグロ
ビン類の測定を行った。 溶離液A:45mMの過塩素酸を含有する50mMのリ
ン酸緩衝液(pH5.4) 溶離液B:200mMのリン酸緩衝液(pH5.4)
【0115】(比較例7)溶離液を以下に示す組成とし
たこと以外は実施例11の場合と同様にして、ヘモグロ
ビン類の測定を行った。 溶離液A:45mMの過塩素酸を含有する、20mMリ
ン酸−20mMリン酸緩衝液(pH5.4) 溶離液B:200mMのリン酸緩衝液(pH5.4)
【0116】実施例11の測定で得られたクロマトグラ
ムを図6に示した。また、比較例6の測定で得られたク
ロマトグラムを図7に示した。なお、実施例12〜実施
例17の測定で得られたクロマトグラムは図6とほぼ同
様であり、比較例7の測定で得られたクロマトグラムは
図7とほぼ同様であった。図6から明らかなように、実
施例11〜実施例17の測定では、実施例1の場合と同
様に、HbF、安定型HbA1cおよびHbA0が良好
に分離できるとともに、実施例1の場合と比較して、よ
り短時間で測定することができた。これに対し、図7か
ら明らかなように、比較例6および比較例7の測定で
は、ピーク8およびピーク9間の分離が悪く、しかもH
bA0のピークが広がり、そのためにHbA0の溶出時
間が長くなり、結果として、実施例11〜実施例17の
場合と比較して、測定時間が長くなってしまった。
【0117】また、実施例11〜実施例17、ならび
に、比較例6および比較例7の条件により1500試料
を連続的に測定した際の耐久性評価結果を図8に示し
た。図8から明らかなように、比較例6および比較例7
の測定では、200試料を連続的に測定するまでに、安
定型HbA1c値が8.1%より次第に高くなった。こ
の原因は、カラムが劣化し、保持が弱くなったためであ
る。これに対し、実施例11〜実施例13の測定では、
HbA0溶出液(溶離液B)のpHおよび塩濃度を溶離
液AのpHおよび塩濃度より高くしているために、10
00試料を連続的に測定した後でも、安定型HbA1c
値は、初期値とほとんど変動しなかった。また、カオト
ロピックイオンを添加した実施例14〜実施例16の測
定では、1500試料を連続的に測定した後でも、安定
型HbA1c値は、初期値とほとんど変動しなかった。
さらに、連続的な測定の間に定期的にカラム洗浄を行っ
た実施例17の測定では、1500試料を連続的に測定
した後も、安定型HbA1c値は、8.1%を維持して
おり、全く変化がなかった。
【0118】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のヘモグロビ
ン類の測定方法によれば、カチオン交換液体クロマトグ
ラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血
液検体を溶血させる際に用いるpHが5.0〜10.0
の溶血試薬、および、ヘモグロビンA0よりも前に溶出
するヘモグロビン類を溶出させるための溶離液Aとヘモ
グロビンA0を溶出させるための溶離液Bとの少なくと
も2種類の溶離液を用い、上記溶血試薬および/または
上記溶離液Aにアジ化物イオンが含有され、かつ、上記
溶離液Aにカオトロピックイオンが含有され、上記溶離
液Bの塩濃度が溶離液Aの塩濃度より10〜1000m
M高く、かつ、上記溶離液BのpHが溶離液AのpHよ
り0.1〜8.0高い構成とされているので、ヘモグロ
ビン類、特に安定型HbA1cを短時間で分離し、高精
度に測定することができる。
【0119】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるカチオン交換液体クロマト
グラフィー装置の一例を示す図である。
【図2】実施例1の測定条件により、測定用試料(a)
のヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマト
グラムを示す図である。
【図3】比較例1の測定条件により、測定用試料(a)
のヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマト
グラムを示す図である。
【図4】比較例2の測定条件により、測定用試料(a)
のヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマト
グラムを示す図である。
【図5】実施例5〜実施例10、ならびに、比較例4お
よび比較例5の測定条件により、測定用試料(b)のH
bA1c値を求めた結果を示す図である。
【図6】実施例11の測定条件により、測定用試料
(c)のヘモグロビン類の測定を行った際に得られたク
ロマトグラムを示す図である。
【図7】比較例6の測定条件により、測定用試料(c)
のヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマト
グラムを示す図である。
【図8】実施例11〜実施例17、ならびに、比較例6
および比較例7の測定条件により、測定用試料(c)の
安定型HbA1c値を連続的に測定した際のHbA1c
値の変動を示す図である。
【符号の説明】
A、B、C、D 溶離液 1 電磁弁 2 送液ポンプ 3 試料注入部 4 カラム 5 検出器 6 インテグレータ 7 HbA1aおよびHbA1bのピー
ク 8 HbFのピーク 9 不安定型HbA1cのピーク 10 安定型HbA1cのピーク 11 HbA0のピーク

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カチオン交換液体クロマトグラフィーに
    よるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶
    血させる際に用いるpHが5.0〜10.0の溶血試
    薬、および、ヘモグロビンA0よりも前に溶出するヘモ
    グロビン類を溶出させるための溶離液Aとヘモグロビン
    A0を溶出させるための溶離液Bとの少なくとも2種類
    の溶離液を用い、上記溶血試薬および/または上記溶離
    液Aにアジ化物イオンが含有され、かつ、上記溶離液A
    にカオトロピックイオンが含有され、上記溶離液Bのp
    Hが溶離液AのpHより0.1〜8.0高く、かつ、上
    記溶離液Bの塩濃度が溶離液Aの塩濃度より10〜10
    00mM高いことを特徴とするヘモグロビン類の測定方
    法。
  2. 【請求項2】 溶離液Bにカオトロピックイオンが含有
    されることを特徴とする請求項1に記載のヘモグロビン
    類の測定方法。
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