JP4109395B2 - ヘモグロビン類の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖化ヘモグロビン、特にヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)は糖尿病診断の指標として広く利用されている。HbA1cとは血液中の糖が赤血球に入った後に、ヘモグロビンと不可逆的に結合して生成したものであり、過去1〜2カ月間の血液中の平均的な糖濃度を反映する。
【0003】
このHbA1cの測定方法としては、一般に液体クロマトグラフィー法や免疫法が用いられている。
【0004】
液体クロマトグラフィー法によるHbA1cの測定は、主にカチオン交換液体クロマトグラフィー法により行われている(特公平8−7198号公報など)。溶血液試料をカチオン交換液体クロマトグラフィーにより分離すると、通常、ヘモグロビンA1a(以下、HbA1aという)及びヘモグロビンA1b(以下、HbA1bという)、ヘモグロビンF(以下、HbFという)、不安定型HbA1c、安定型HbA1c並びにヘモグロビンA0(以下、HbA0という)などのピークが出現する。なお、糖尿病の診断の指標として使用されているHbA1cは、最近では、上記のうちの安定型HbA1cであり、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)として求められている。
【0005】
このような、カチオン交換液体クロマトグラフィーによりHbA1c測定を行う場合、一般に、HbA1cを溶出させたあとに、HbA0を溶出させるが、測定毎に完全に溶出されないHbA0成分等のヘモグロビンや他の蛋白質が充填剤に吸着していき、カラム内に残ると、カラム劣化の原因になるという問題があった。また、HbA0は全ヘモグロビンの90%以上を占めるため、そのピーク幅を狭めることが測定時間短縮の問題となっていた。
このため、溶離液の塩濃度とpHを変化させることによりHbA0を溶出させている。しかし、塩濃度によって溶出力を変化させた場合は、塩濃度変化に起因する光の屈折率の変化によってベースラインが変動するため測定値の再現性が悪くなる場合があり、問題となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記ヘモグロビン類の測定方法の問題を解決するためのものであり、従来より測定値の再現性のよいヘモグロビン類の測定方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、溶離液の塩濃度をベースラインが変動しない程度に一致させ、pHの変化だけでヘモグロビン類の溶出力を制御することを特徴とするヘモグロビン類の測定方法である。
【0008】
請求項1記載の発明は、ヘモグロビンA0成分を溶出するための溶離液として、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点よりアルカリ側になるようにpHを設定した溶離液を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法である。
【0009】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明で用いられる溶離液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸又は、その塩;カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、カコジル酸、ピロリン酸などの有機酸又は、その塩;アミノ酸、アニリン又はアニリン誘導体、アミン、イミダゾール、ピリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリシルグリシンなどの有機物;からなる緩衝液が挙げられる。その他、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、Tris等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものも使用できる。
【0010】
上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などが挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられる。上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β、β−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸などが挙げられる。上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシンなどが挙げられる。上記アニリン誘導体としては、例えば、ジメチルアニリンが挙げられる。上記アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。上記イミダゾールとしては、例えば、イミダゾール、5(4)−メチルイミダゾール、2,5(4)−ジメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0011】
上記無機酸又は有機酸の塩としては、公知のものでよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0012】
また、無機酸;有機酸;無機酸又は有機酸の塩;有機物は、複数混合して用いても良く、また、有機酸、無機酸及び有機物を混合しても良い。
【0013】
HbA0成分より前の成分(ヘモグロビンA1a及びb、HbF、HbA1c)を分離するための溶離液のpHは、4.0〜6.8が好ましく、4.5〜5.8がより好ましい。溶離液のpHが4未満であると、ヘモグロビンが変性する可能性があり、pHが6.8をこえると、ヘモグロビンのプラス荷電が減少し、カチオン交換樹脂に保持されにくくなり、ヘモグロビン類の分離が悪くなる恐れがある。
【0014】
HbA0成分を溶出するための溶離液は、カラム耐久性の向上と測定時間短縮のため、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点(ヘモグロビンの等電点については、理化学事典(第4版、1987年9月、岩波書店、久保亮五ら編集)、1178頁に記載あるように、pH6.8〜7.0である)よりアルカリ側になるようにpHを設定した緩衝液を用いるのが好ましい。その溶離液のpHは8.0以上である。溶離液のpHが6.8以下になるとHbA0成分の溶出が不十分となり易く、pHが10より高いと充填剤の分解が考えられる。
また、充填剤の分解が測定に影響ない場合は、溶離液のpHを10以上にするのが好ましい。より好ましくは、10〜13.5が好ましい。但し、溶離液のpHを10以上にした時、充填剤の分解が測定に影響する場合であっても、溶離液を流す時間を短くすることにより、充填剤の分解を最小限に抑えることができる。
【0015】
HbA0の溶出に好適に用いられる、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点(pH6.8〜7.0)よりアルカリ側になるようにpHを設定した溶離液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸などの無機酸又は、その塩;クエン酸などのヒドロキシカルボン酸、β、β−ジメチルグルタル酸などのカルボン酸誘導体、マレイン酸などのジカルボン酸、カコジル酸、などの有機酸又は、その塩からなる緩衝液が挙げられる。その他、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、Tris等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものも使用できる。また、イミダゾール等のイミダゾール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類;グリシンなどのアミノ酸類;などの有機物も使用できる。また、無機酸;有機酸;無機酸又は有機酸の塩;有機物は、複数混合して用いても良く、また、有機酸、無機酸及び有機物を混合しても良い。
【0016】
上記緩衝液の濃度は、水溶液状態で緩衝作用があれば良く、1〜1000mMが好ましく、10〜500mMがより好ましい。
【0017】
上記溶離液には、以下の物質を添加してもよい。
(1)無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウムなど)を添加してもよい。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜1500mMである。
(2)カオトロピックイオンを添加してもよい。
カオトロピックイオンとは、水溶液に溶けると解離して生じたイオンにより、水の構造が破壊され、疎水性物質と水が接触したときに起こる、水のエントロピー減少を抑制するもので、具体的には、陰イオンとして、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。また、陽イオンとしては、バリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、グアニジンイオン等が挙げられる。
ヘモグロビン類の分離能を良くするためには、陰イオンとして、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン等を、陽イオンとして、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、グアニジンイオン等を用いるのが好ましい。さらに、より好ましくは、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、グアニジンイオン等を用いる。
カオトロピックイオンは、測定サンプルと接触する液、例えば、溶血液(溶血試薬)、サンプル希釈液などにも添加してもよい。
【0018】
(3)pH調節剤として、公知の酸、塩基を加えてもよい。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等が、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カドミウム等が挙げられる。これらの酸、塩基の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜500mMである。
(4)メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンなどの水溶性有機溶媒と混合してもよい。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0〜80%(v/v)であり、無機酸、有機酸、これらの塩、無機塩類、カオトロピックイオン、pH調節剤などが析出しない程度で用いるのが好ましい。
【0019】
(5)アジ化ナトリウムなど防腐剤を添加してもよい。
(6)ヘモグロビンの安定剤として、公知の安定剤、例えば、EDTA等のキレート剤、グルタチオン、アジ化ナトリウムなどの還元剤・酸化防止剤などを添加してもよい。
(7)また、HbA0の溶出液には、アンチカオトロピックイオン、例えば、硫酸イオン、フッ素イオンを添加しても良い。
【0020】
本発明における溶離法としては、グラディエント溶出法、ステップアップグラディエント溶出法のどちらを用いてもよい。
【0021】
本発明の測定方法において、溶離液は少なくとも2液以上が用いられるが、それらの溶離液の塩濃度をベースラインが変動しない程度に一致させることが必要である。
そして、それぞれの溶離液のpHを変化させることによりヘモグロビン類の溶出力を制御する。上記のベースラインが変動しない程度とは、ベースライン変動が測定値に影響を与えない程度ということを意味する。ベースライン変動が測定値に影響を与えない溶離液の塩濃度差は、例えば、リン酸などの無機酸では、100mM、より好ましくは50mM、特に好ましくは10mMである。コハク酸、マレイン酸などの有機酸では、50mM、より好ましくは20mM、特に好ましくは5mMである。また、チオシアン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムなどのカオトロピックイオンを生成する化学物質では、400mM、より好ましくは300mM、特に好ましくは200mMである。
【0022】
上記カチオン交換液体クロマトグラフィーにおいて、充填剤は、少なくとも1種以上のカチオン交換基を有している粒子よりなるものであり、例えば、高分子粒子にカチオン交換基を導入することで得られる。
【0023】
該カチオン交換基は、公知のものでよく特に制限はない。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのカチオン交換基等が挙げられる。また、このカチオン交換基は、複数種導入しても良い。
【0024】
上記粒子の直径は、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。
また、粒度分布は、変動係数値(CV値)(粒径の標準偏差÷平均直径×100)として、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0025】
上記高分子粒子としては、例えば、シリカ、ジルコニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリアクリル酸エステルなどの合成高分子粒子などが挙げられる。
上記高分子粒子は、導入されるイオン交換基以外の構成成分は、より親水性であることが好ましい。また耐圧性・耐膨潤性の点から架橋度の高いものが好ましい。
【0026】
上記高分子粒子へのカチオン交換基の導入は、公知の方法により行うことができるが、例えば、高分子粒子を調製後、粒子が有する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基など)に、化学反応でカチオン交換基を粒子に導入させる方法により行うことができる。
また、カチオン交換基を有する単量体を重合して高分子粒子を調製する方法によってもカチオン交換充填剤を調製できる。例えば、カチオン交換基含有単量体と架橋性単量体等とを混合し、重合開始剤の存在下に重合する方法などが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの重合性カチオン交換基含有エステルを架橋性単量体などと混合し、重合開始剤存在下で重合した後、得られた粒子を加水分解処理し、エステルをカチオン交換基に変換させてもよい。
更に、特公平8−7197号公報に記載のように、架橋重合体粒子を調製した後、カチオン交換基を有する単量体を添加して、重合体粒子の表面付近に、該単量体を重合させても良い。
【0027】
上記充填剤はカラムに充填されて本発明の液体クロマトグラフィー測定に用いられる。上記カラムは公知のステンレス製、ガラス製、樹脂製など、特に限定されない。カラムサイズとしては、内径0.1〜50mm、長さ1〜300mmのものが好ましく、内径0.2〜30mm、長さ5〜200mmのものがより好ましい。充填剤のカラムへの充填方法は、公知の任意の方法が使用できるがスラリー充填法がより好ましい。具体的には、例えば、充填剤粒子を溶離液などの緩衝液に分散させたスラリーを送液ポンプなどによりカラムに圧入することにより行う。
【0028】
本発明の測定に使用される液体クロマトグラフは、公知のものでよく、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、カラム、検出器などから構成される。また、他の付属装置(カラム恒温槽や溶離液の脱気装置など)が適宜付属されてもよい。
【0029】
上記測定方法における、他の測定条件としては、公知の条件でよく、溶離液の流速は、好ましくは0.05〜5ml/分、より好ましくは0.2〜3ml/分である。ヘモグロビン類の検出は、415nmの可視光が好ましいが、特にこれのみに限定されるわけではない。測定試料は、通常、界面活性剤など溶血活性を有する物質を含む溶液により溶血された溶血液(溶血試薬)を希釈したものを用いる。液体クロマトグラフへの試料注入量は、希釈倍率により異なるが、好ましくは0.1〜100μl程度である。
【0030】
【作用】
請求項1記載の本発明では、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、それぞれの溶離液の塩濃度をベースラインが変動しない程度(ベースライン変動が測定値に影響を与えない程度)に一致させ、pHの変化だけでヘモグロビン類の溶出力を制御するので、溶離液の塩濃度変化に起因する光の屈折率の変動はなく、ベースラインが安定するため測定値の再現性が優れる。
また、請求項1記載の本発明では、ヘモグロビンA0の溶出に、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点よりアルカリ側になるようにpHを設定した溶離液を用いるので、充填剤官能基とヘモグロビンの電荷の反発力でヘモグロビンA0が溶出する。そのため、カラム劣化を抑え、カラム耐久性を向上できる。また、ヘモグロビンA0ピーク幅も狭くなり測定時間の短縮にも寄与できる。
【0031】
【発明の実施の形態】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
〔充填剤の調製〕
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0033】
〔カラムの充填〕
得られた粒子をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH5.8)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(4.6φ×30mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力300kg/cm2 で定圧充填した。
【0034】
〔ヘモグロビン類の測定〕
得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。
(測定条件)
【0035】
(測定試料)
健常人血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10mg/mlとなるよう添加した。これに、150倍量の溶血試薬(界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100、東京化成社製)のリン酸緩衝液溶液(pH7.0))を添加して溶血し、測定試料とした。
【0036】
(測定結果)
上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図1に示す。ピーク1はHbA1a及びb、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0を示す。
また、実施例1のクロマトグラムのベースラインを図2に示した。
また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)(標準偏差÷平均値×100)を表1に示した。
【0037】
(実施例2)
実施例1における溶離液を以下の通りとしたことの他は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムのベースラインは図2と同様であった。また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)を表1に示した。
【0038】
(実施例3)
実施例1における溶離液を以下の通りとしたことの他は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムのベースラインは図2と同様であった。また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)を表1に示した。
【0039】
(実施例4)
実施例1における溶離液を以下の通りとしたことの他は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムのベースラインは図2と同様であった。また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)を表1に示した。
【0040】
(実施例5)
実施例1における溶離液を以下の通りとしたことの他は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムのベースラインは図2と同様であった。また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)を表1に示した。
【0041】
(実施例6)
実施例1における溶離液を以下の通りとしたことの他は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムのベースラインは図2と同様であった。また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
実施例1における溶離液を以下の通りとしたことの他は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムを図3に示す。また、得られたクロマトグラムのベースラインを図4に示した。また、同一測定試料を10回繰り返し測定した時の安定型HbA1cの測定値、その平均値、標準偏差、変動係数値(CV値)を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1〜6、比較例1において得られたクロマトグラムは、ほぼ同等であったが、HbA0溶出時間は実施例1〜6に比較して比較例1の方では長くなった。
実施例1〜6のベースラインは安定しているが、比較例1のベースラインは溶離液の切り換えによる屈折率の変動により不安定である。
実施例1〜6の方が、比較例1よりも再現性がよい。
【0045】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明では、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、それぞれの溶離液の塩濃度をベースラインが変動しない程度(ベースライン変動が測定値に影響を与えない程度)に一致させ、pHの変化だけでヘモグロビン類の溶出力を制御するので、ヘモグロビン類測定値の再現性が優れる。
また、請求項1記載の本発明では、ヘモグロビンA0の溶出に、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点よりアルカリ側になるようにpHを設定した溶離液を用いるので、カラム耐久性が向上し、さらにヘモグロビン類の短時間測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の測定条件により、ヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図2】実施例1の測定条件によるベースラインを示す図。
【図3】比較例1の測定条件により、ヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図4】比較例1の測定条件によるベースラインを示す図。
【符号の説明】
1 HbA1a及びbのピーク
2 HbFのピーク
3 不安定型HbA1cのピーク
4 安定型HbA1cのピーク
5 HbA0のピーク
Claims (1)
- カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、溶離液の塩濃度をベースラインが変動しない程度に一致させ、pHの変化だけでヘモグロビン類の溶出力を制御するヘモグロビン類の測定方法であって、ヘモグロビンA0成分を溶出するための溶離液として、カラムに流入する際のpHが8.0〜13.5の溶離液を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
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