JP2014095637A - 安定型ヘモグロビンA1cの測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カチオン交換クロマトグラフィーによる安定型ヘモグロビンA1cの測定方法であって、下記(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有する溶離液と、カチオン交換基を有するカラム充填剤とを用い、測定系に生じる圧力値を9.8×103Pa以上19.6×105Pa以下に設定する安定型ヘモグロビンA1cの測定方法。
(1)カオトロピックイオン
(2)酸解離定数を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩
(3)酸解離定数を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩
【選択図】なし
Description
(1)カオトロピックイオン
(2)酸解離定数を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩
(3)酸解離定数を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩
以下に本発明を詳述する。
なお、本明細書において、「pKa値を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩」とは、「pKa値を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸」又は「pKa値を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸」の塩を意味する。
なお、二つ以上のpKa値を有する酸の場合、そのうちの少なくとも1つのpKa値が3.5以上6.5未満であれば、この酸又はその塩は成分(2)のpKa値の条件を満たすものとする。
成分(2)のモノカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ギ酸、酢酸等が挙げられる。
成分(2)のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、オキサロ酢酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
成分(2)のトリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、イソクエン酸等が挙げられる。
成分(2)のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、β−アラニン、ヒスチジン、グルタミン酸等が挙げられる。
なかでも、ジカルボン酸又はその塩、トリカルボン酸又はその塩が好ましく、コハク酸又はその塩、クエン酸又はその塩がより好ましい。
溶離液は、二種類以上の成分(2)を含有してもよい。
なお、本明細書において、「pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩」とは、「pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸」又は「pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸」の塩を意味する。
なお、二つ以上のpKa値を有する酸の場合、そのうちの少なくとも1つのpKa値が6.5以上9.5以下であれば、この酸又はその塩は成分(3)のpKa値の条件を満たすものとする。
成分(3)の無機オキソ酸としては、例えば、リン酸、ピロリン酸、ホウ酸等が挙げられる。
成分(3)のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、チロシン、アルギニン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、システイン、グルタミン等が挙げられる。
なかでも、無機オキソ酸又はその塩が好ましく、リン酸又はその塩がより好ましい。溶離液は、二種類以上の成分(3)を含有してもよい。
また、溶離液が成分(2)の条件及び成分(3)の条件の両方を満たす一種類以上の酸又はその塩を含有する場合は、当該溶離液は成分(2)及び成分(3)の両方を含有することとする。
この場合、少なくとも溶離液Aは、(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有する。また、溶離液Aに加えて、溶離液Bも(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有することが好ましい。溶離液Bにも(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分又は(1)、(2)、及び、(3)の一部の成分を含有させる場合、該当する成分の種類は、溶離液Aに含まれる成分と同一の種類であることが好ましい。
ステップワイズグラディエント法では、安定型ヘモグロビンA1cを含む、ヘモグロビンA0よりも早い保持時間を有する成分を溶離液Aで溶出した後、溶離液Bに切り替えてヘモグロビンA0を含む成分を溶出することが好ましい。
リニアグラディエント法では、溶離液Aを主成分とする溶離液により安定型ヘモグロビンA1cを含む、ヘモグロビンA0よりも早い保持時間を有する成分を溶離液Aで溶出した後、溶離液Bを主成分とする溶離液によりヘモグロビンA0を含む成分を溶出することが好ましい。
カチオン交換基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、スルホン酸基が好ましい。
なお、本発明の測定方法でいうカチオン交換基には、該カチオン交換基に付随する構造は問わないため、カチオン交換基を末端に有する全ての官能基を含む。例えば、本発明の測定方法でいう「カルボキシル基」とは、カルボキシルエチル基、カルボキシルプロピル基等、カルボキシル基が結合する官能基類全てを含む。
また、上記架橋重合体粒子は、表面に複数種のカチオン交換基を有していてもよい。
なお、本明細書において、「アクリル系架橋重合体」とは、アクリル基又はメタクリル基を有する架橋性単量体(以下、「アクリル系架橋性単量体」ともいう)の重合物を意味する。また、後述する「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」であることを示し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸又はメタクリル酸」を示す。
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)−ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ウレタン(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデガン−2,6,10−トリオール等が挙げられる。
分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのアクリル系架橋性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非架橋性単量体は、アクリル系単量体(以下、「アクリル系非架橋性単量体」ともいう)であることが好ましい。
アクリル系非架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル類、水酸基を有するアクリル系非架橋性単量体等が挙げられる。
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2、3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのアクリル系非架橋性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン交換基含有単量体は、アクリル系のカチオン交換基含有単量体であることがより好ましい。
リン酸基を有するアクリル系のカチオン交換基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート及びこれらの誘導体等が挙げられる。
スルホン酸基を有するアクリル系のカチオン交換基含有単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体類等、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(3−スルホプロピル)−イタコン酸、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
これらのアクリル系のカチオン交換基含有単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非イオン性の親水性基としては、水酸基、グリコール基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられる。なかでも、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基が好ましく、水酸基、エポキシ基、グリシジル基がより好ましい。
反応性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類や、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類や、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類や、エポキシ化又はヒドロキシル化(メタ)アクリレート類や、アミノ化(メタ)アクリレート類や、アルデヒド化又はシアノ化(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ化又はヒドロキシル化(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ化(メタ)アクリレート類としては、例えば、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2、3−ジアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アルデヒド化又はシアノ化(メタ)アクリレート類としては、例えば、(メタ)アクロレイン、シアノ(メタ)アクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの反応性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において「測定系に生じる圧力値(以下、単に「圧力値」ともいう)」とは、クロマトグラフィーの流路系において、カラムを含む、送液ポンプ以降の配管系流路全体により発生する圧力値を意味する。例えば、送液ポンプとカラムとの間に接続した圧力計により測定できる値である。
また、本発明の安定型ヘモグロビンA1cの測定方法では、安定型ヘモグロビンA1cとともに、健常人血に含まれるヘモグロビン類、例えば、ヘモグロビンA0、ヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)を短時間内に高精度に測定できる。
製造例1では、カチオン交換基を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)170g、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80g、及び、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(カチオン交換基含有単量体、東亞合成社製)100gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。
反応系を300rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して10時間重合反応を行い、カチオン交換基を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、粒度分布測定装置(PSS社製、「アキュサイザーS788/SIS」)により測定したところ、6.7μmであった。
製造例2では、架橋重合体の表面でカチオン交換基含有単量体を重合し、カチオン交換基を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)20g、トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)150g、及び、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。反応系を350rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して1.2時間重合反応を行い、架橋重合体粒子を得た。
上記「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸200gを溶解したイオン交換水200mLを添加した後、80℃で2時間重合反応を行い、表面にカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、6.7μmであった。
製造例3では、架橋重合体の表面に反応性基を有する親水性重合体を調製して、カチオン交換性化合物を反応させることにより、表面にカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
上記製造例2の「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系に2,3−ジヒドロキシルプロピルメタクリレート(反応性単量体、日油社製)100gを添加した後、80℃で2.5時間重合反応を行い、架橋重合体の表面に反応性基含有親水性重合体を有する重合物を得た。この重合物10gを、1,3−プロパンスルトン10gを溶解した2%水酸化ナトリウム水溶液200mL中に添加して60℃で撹拌し、表面にカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、6.6μmであった
製造例4では、カチオン交換基を有さない架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)20g、トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)150g、及び、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。反応系を300rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して8時間重合反応を行い、カチオン交換基を有さない架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、6.8μmであった。
実施例1では、製造例1で得られたカラム充填剤を充填したカラムを用いて、健常人血中の安定型ヘモグロビンA1c(HbA1c)を測定した。
製造例1で得られたカラム充填剤0.8gを、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)30mLに分散して撹拌しスラリー化した。5分間超音波処理した後、スラリー全量を、ステンレス製エンプティカラム(4.6φ×35mm)を接続したパッカー(アズワン社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(GLサイエンス社製、「PU−614」)を接続し、圧力20MPaで送液して定圧充填した。
フッ化ナトリウム採血した健常人血を、0.05%のTritonX−100(Sigma−Aldrich社製)を含むリン酸緩衝液(pH6.7)により100倍に溶血希釈した。
カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表2に、それ以外の条件を表3に示す。
溶離液Aは、成分(1)として30mmol/Lの過塩素酸ナトリウムを含み、成分(2)として8mmol/Lのコハク酸(pKa値4.2及び5.6)を含み、成分(3)として105mmol/Lのリン酸ナトリウム(リン酸のpKa値7.2)を含む。溶離液AのpHは5.3に調整した。
また、溶離液Bは250mmol/Lの過塩素酸ナトリウム、及び、50mmol/Lのリン酸ナトリウムを含む。溶離液BのpHは7.9に調整した。
なお、圧力値は、以下の方法により測定した。即ち、各カラムを液体クロマトグラフに接続し、送液ポンプとカラムとの間に、デジタル圧力計(長野計器社製、「GC61」)を接続し、溶離液Aを送液した時の圧力表示値を読み取った。
得られたクロマトグラムを図1に示す。各ピークが短時間で良好に分離できることを確認した。
実施例2では、製造例2で得られたカラム充填剤を充填したカラムを用いて、健常人血中のHbA1cを測定した。
製造例2で得られたカラム充填剤を、実施例1と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填し、実施例1と同様の方法で健常人血試料を測定した。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表2に示す。
得られたクロマトグラムは図1と同様、各ピークが短時間で良好に分離できた。
実施例3では、製造例3のカラム充填剤を充填したカラムを用いて、健常人血中のHbA1cを測定した。
製造例3で得られたカラム充填剤を、実施例1と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填し、実施例1と同様の方法で健常人血試料を測定した。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表2に示す。
得られたクロマトグラムは図1と同様、各ピークが短時間で良好に分離できた。
実施例4〜7では、実施例2における溶離液A及び溶離液Bに含まれる成分を変更して実施例1と同様の測定を行った。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表2に示す。
実施例4及び実施例5は溶離液Aの成分(1)の種類を変更した場合、実施例6は溶離液Aの成分(2)の種類を変更した場合、実施例7は溶離液A及び溶離液Bの成分(3)の種類を変更した場合を示す。
得られたクロマトグラムはいずれも図1と同様、各ピークが短時間で良好に分離できた。
比較例1では、製造例4で得られたカラム充填剤を充填したカラムを用いて、健常人血中のHbA1cを測定した。
製造例4で得られたカラム充填剤を、実施例1と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填し、実施例1と同様の方法で健常人血試料を測定した。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表4に示す。
得られたクロマトグラムを図2に示す。カチオン交換基を有するカラム充填剤を用いない場合は、(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有する溶離液を用い、本発明で規定する設定圧力値の範囲内で測定を行ってもHbA1cは分離できなかった。
比較例2〜8では、製造例2で得られたカラム充填剤を用い、(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有する溶離液を用いずに、健常人血中のHbA1cを測定した。
カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表4に示す。
比較例2は、溶離液Aとして、成分(1)を含まない溶離液を用いた例を示す。
比較例3は、溶離液Aとして、成分(2)を含まない溶離液を用いた例を示す。
比較例4は、溶離液Aとして、成分(2)に代えて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸以外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。
比較例5は、溶離液Aとして、成分(2)に代えて、pKa値が成分(2)の規定範囲外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。
比較例6は、溶離液Aとして、成分(3)を含まない溶離液を用いた例を示す。
比較例7は、溶離液Aとして、成分(3)に代えて、無機オキソ酸及びアミノ酸以外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。なお、表4中、「HEPES」は、「2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸」を示す。
比較例8は、溶離液Aとして、成分(3)に代えて、pKa値が成分(3)の規定範囲外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。
以上の実施例4〜7及び比較例2〜8の結果から、本発明の規定範囲内の溶離液を用いることにより、HbA1cを良好に分離できることがわかった。また、本発明の規定範囲内の溶離液を用いなかった場合、設定圧力値が本発明の規定範囲内であっても、HbA1cの分離が悪いことがわかった。
製造例1〜3のカラム充填剤を用い、実施例1〜7及び比較例2〜8の溶離液を用いて以下の評価を行った。
実施例1「(2)測定試料の調製」の健常人血から得られた試料を、20回連続測定して得られたHbA1c値のCV値(以下、単に「CV値」ともいう)を表2及び表4に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いた実施例1〜7では、HbA1c値のCV値はいずれも1.0%以下と良好であった。
カラム充填剤の異なる実施例1〜3では、特に製造例2及び製造例3のカラム充填剤を用いた場合にHbA1c値のCV値が良好であり、その中でも製造例2で得られたカラム充填剤を用いた実施例2において良好であった。
また、溶離液Aの成分を本発明の規定範囲内で変更した実施例4〜7においてもHbA1c値のCV値は良好であり、特に実施例6において良好であった。
本発明の規定範囲内の溶離液を用いなかった比較例2〜8のCV値は3.0%以上と悪く、糖尿病患者のHbA1c値の精度管理を行えるレベルではなかった。
人為的に調製した修飾ヘモグロビン類を多く含む試料の測定を行った。修飾ヘモグロビン類を含む試料として、不安定型ヘモグロビンA1c含有試料(試料L)、アセチル化ヘモグロビン含有試料(試料A)、カルバミル化ヘモグロビン含有試料(試料C)の3種類を、以下の方法により調製した。
試料Lは、健常人血に、グルコースを2500mg/dLとなるように添加し、37℃で3時間加温することにより調製した。試料Aは、健常人血に、アセトアルデヒドを60mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。試料Cは、健常人血に、シアン酸ナトリウムを60mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。
分離性能は、修飾ヘモグロビン類を含む試料のHbA1c値から、修飾ヘモグロビン類を含む試料の調製に用いた健常人血試料(非修飾品)のHbA1c値を差し引いた値(Δ値)を算出して比較することにより評価した。結果を表2及び表4に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いた実施例1〜7では、Δ値がいずれも0.15以下と良好であった。特に製造例2、製造例3で得られたカラム充填剤を用いた実施例2、実施例3が良好であり、その中でも製造例2のカラム充填剤を用いた実施例2が良好であった。
溶離液Aの成分を本発明の規定範囲内で変更した実施例4〜7においてもΔ値は良好であり、特に実施例6において良好であった。
本発明の規定範囲内の溶離液を用いなかった比較例2〜8のΔ値は0.4以上と悪く、HbA1c値が修飾ヘモグロビンの影響を受けた。
実施例1、2、3、6及び比較例2、3、6、8のカラム充填剤及び溶離液を用いて、実施例1「(2)測定試料の調製」の健常人血から得られた試料を3000回繰り返し測定し、HbA1c値の推移を確認した。測定回数とHbA1c値との関係を図4及び図5に示す。
図4に示した実施例の結果において、実施例1〜3ではHbA1c値は安定であった。特に製造例2、製造例3で得られたカラム充填剤を用いた実施例2、実施例3が良好であった。また溶離液Aの成分を変更した実施例6においてもHbA1c値は安定であった。
一方、図5に示した比較例の結果においては、HbA1c値がいずれも低下した。
本発明の規定範囲内の溶離液を用いなかった場合は、カラム耐久性が悪くなることを確認した。
製造例5及び製造例6では、本発明に規定する設定圧力値の検討を行うため、製造例2と同様の組成及び同様の方法によるが、平均粒子径が異なるカラム充填剤を調製した。
まず製造例5では、製造例2より平均粒子径が小さいカラム充填剤を調製した。
ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)20g、トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)150g、及び、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。反応系を400rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して1.2時間重合反応を行い、架橋重合体粒子を得た。
上記「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸200gを溶解したイオン交換水200mLを添加した後、80℃で2時間重合反応を行い、表面にスルホン酸基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、4.2μmであった。
製造例6では、製造例2よりも平均粒子径が大きいカラム充填剤を調製した。
製造例5「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系の撹拌速度を400rpmから250rpmに変更した以外は製造例5と同様に操作してカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、9.5μmであった。
設定圧力値を変更した場合の同時再現性及び測定安定性への影響を確認した。
設定圧力値は、平均粒径値が異なるカラム充填剤を用いること、及び、測定時の流速を変更することにより行った。
平均粒径値が異なるカラム充填剤は、製造例2、製造例5及び製造例6で得られた各カラム充填剤を用いた。各カラム充填剤を、実施例1「(1)カラム充填剤の充填」と同様にしてステンレス製エンプティカラム充填して得られたカラムを用いた。溶離液としては実施例2の溶離液を用いた。また、測定時の流速は、0.1〜3.3mL/分の間で変更した。
同時再現性試験は評価1、測定安定性試験は評価3の方法に準じて行った。
各測定時の設定圧力値と同時再現性試験時のCV値との関係を図6に示す。CV値は、本発明で規定する設定圧力値の範囲(9.8×103Pa以上19.6×105Pa以下)において良好であった。しかしながら、本発明で規定する設定圧力値の範囲を外れた場合、本発明の規定範囲内のカラム充填剤及び溶離液を用いた場合でも再現性が低下した。
また、製造例2で得られたカラム充填剤を用いて流速を変更し、測定時の設定圧力値の異なる測定系における測定安定性試験を実施した。測定回数とHbA1c値との関係を図7に示す。実施例2と同様の測定条件の場合は設定圧力値が860×103Pa(図7中には「860」と表示)であり3000回測定まで安定していた。一方、設定圧力値が9×103Paの場合(図7中には「9」と表示)は、約500回でHbA1c値が低下し、設定圧力値が2108×103Paの場合(図7中には「2108」と表示)は、約1500回でHbA1c値が低下した。これらの挙動は、製造例5、製造例6で得られたカラム充填剤を用いた場合でも同様であった。
本発明で規定する設定圧力値の範囲を外れた場合、本発明の規定範囲内のカラム充填剤及び溶離液を用いた場合でもカラム耐久性が悪くなることを確認できた。
設定圧力値による同時再現性及び測定安定性への影響は、カラム充填剤の平均粒径値を変更した場合でも、測定時の溶離液の流速を変更した場合でも同様であった。従って、カラム耐久性への影響は、充填剤の平均粒径値や流速の影響ではなく、設定圧力値の影響である。
特に、カラム充填剤としてカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体を用いた場合、成分(2)としてジカルボン酸又はその塩か、トリカルボン酸又はその塩を用いた場合、成分(3)として無機オキソ酸又はその塩を用いた場合に性能が良好であった。
12 ヘモグロビンA1c
13 ヘモグロビンA0
Claims (5)
- カチオン交換クロマトグラフィーによる安定型ヘモグロビンA1cの測定方法であって、
下記(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有する溶離液と、カチオン交換基を有するカラム充填剤とを用い、
測定系に生じる圧力値を9.8×103Pa以上19.6×105Pa以下に設定する
ことを特徴とする安定型ヘモグロビンA1cの測定方法。
(1)カオトロピックイオン
(2)酸解離定数を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩
(3)酸解離定数を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩 - 成分(2)は、ジカルボン酸又はその塩か、トリカルボン酸又はその塩の少なくともいずれかであり、成分(3)は、無機オキソ酸又はその塩であることを特徴とする請求項1記載の安定型ヘモグロビンA1cの測定方法。
- カチオン交換基を有するカラム充填剤、及び、安定型ヘモグロビンA1cを含む成分を溶出させる溶離液Aと、ヘモグロビンA0を含む成分を溶出させる溶離液Bとの少なくとも2種類の溶離液を用い、
前記溶離液Aは、(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含有し、かつ、pHが4.0〜6.0であり、
前記溶離液Bは、pHが7.0〜10.0であり、
測定系に生じる圧力値を9.8×103Pa以上19.6×105Pa以下に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の安定型ヘモグロビンA1cの測定方法。 - カチオン交換基を有するカラム充填剤は、架橋重合体粒子の表面に、カチオン交換基含有重合体を有するカラム充填剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の安定型ヘモグロビンA1cの測定方法。
- 架橋重合体粒子を構成する架橋重合体、及び、カチオン交換基含有重合体は、アクリル系重合体であることを特徴とする請求項4記載の安定型ヘモグロビンA1cの測定方法。
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